説明

バクテリオシン産生ラクトバチルス・ペントーサスならびに食品および医薬組成物におけるその使用

本発明は、グラム陰性菌、好ましくは腸球菌、大腸菌群、および大腸菌による感染症の予防的または治療的処置のための医薬品として使用するためラクトバチルス・ペントーサスの選択株に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラム陰性菌、好ましくは腸球菌、大腸菌群(Coliforms)、および大腸菌(E.coli)による感染症の予防的または治療的処置のための医薬品として使用するためのラクトバチルス・ペントーサス(Lactobacillus pentosus)の選択株に関する。
【0002】
特に、本発明は、グラム陰性菌、好ましくは腸球菌、大腸菌群、および大腸菌の存在と闘う、これを減少させる、もしくは阻害するための食品または医薬組成物を調製するための、ラクトバチルス・ペントーサスの前記株を含む組成物に関する。
【0003】
さらに、本発明は、特にグラム陰性菌、好ましくは腸球菌、大腸菌群、および大腸菌による感染症を処置するための、グラム陰性菌、好ましくは腸球菌、大腸菌群、および大腸菌の存在と闘う、これを減少させる、または阻害するための医薬品を調製するための、ラクトバチルス・ペントーサスの前記選択株の使用に関する。
【0004】
最後に、本発明は、乳製品を調製するための種培養(starter culture)に添加するための技術的添加物を調製するための、ラクトバチルス・ペントーサスの前記選択株の使用に関する。
【背景技術】
【0005】
大腸菌は、例えば、細菌性膀胱炎、胃腸炎、および胃腸結腸炎(gastroenterocolitis)などの多数の細菌感染症、時に重度の細菌感染症の原因でもある広範なグラム陰性菌の例であることが知られている。一般に、グラム陰性菌による感染症は、例えば、抗生物質などの薬物を使用して処置する。
【0006】
しかしながら、一部のグラム陰性菌は時間と共に通常使用する薬物に対するある程度の耐性を獲得し、これにより薬物の使用および得られる結果が時に限定される。
【0007】
さらに、一般的医療行為では、細菌感染症は、可能な限り有効な薬理療法に頼ることにより直ちに処置される。このアプローチは、通常、どの細菌が関与しており、その細菌が弱いのはどの抗生物質なのかを明らかにする微生物学的試験を待たずして採用される。
【0008】
このように、感染症の原因であると考えられる細菌の科に最も有効であると考えられる既知の抗生物質を投与して、経験的に進める。
【0009】
しかしながら、上記アプローチは、このような療法が問題の解決および結果としての回復をもたらすどうか前もって知ることなしに、相当量の薬物、例えば抗生物質を投与することを意味する。その上、周知のように、体にとってプラスの有用な細菌叢にも影響する抗生物質の投与に関連した、可能性のある副作用は見過ごすべきではない。
【0010】
そのため、抗生物質を時に無差別に使用することから生じる欠点を克服するために、伝統的な薬物の代替としてまたはこれと組み合わせて使用することができる、グラム陰性菌による感染症の予防的または治療的処置のための療法を有することが望ましい。
【0011】
微生物は、例えば、バクテリオシンの産生により調節されるものなどの一連の防御システムを活性化することができることが知られている。
【0012】
「バクテリオシン」という用語は、グラム陽性菌およびグラム陰性菌の両方により産生され、産生株とは異なるがこれと密接に関連する細菌株に対する阻害作用を賦与するタンパク質性化合物を示すのに使用される。
【0013】
バクテリオシンは、乳酸菌により産生されるタンパク質であり、著しい抗微生物活性を示し、それにより、バクテリオシンは、中でも臨床および技術/食品部門で大きな関心を呼び起こしてきた。
【0014】
臨床部門での適用に関する限り、バクテリオシンは抗生物質の有効な代替に相当する。
【0015】
食品部門では、バクテリオシンを、中毒、および例えば、乳製品中の食品基質の腐敗の原因である望ましくない細菌集団を制御し、抑制する生物的保存剤(biopreservative)として使用することができる。
【0016】
そのため、食品部門および医薬部門でのバクテリオシンの使用は、長期間いかなる交替もなく完全な安定性を維持し、その固有の感覚特性を維持する「高品質」製品として定義されるものの製造に使用するための、技術的に正しく有効な手段であり得る。
【0017】
最終的に、抗菌性物質としてのバクテリオシンの有効な適用は、食事性プロバイオティクスとしてのバクテリオシン産生細菌培養液の使用を伴うであろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
したがって、グラム陰性菌、好ましくは腸球菌、大腸菌群、および大腸菌の存在と殺菌作用を通して闘う、および/または静菌作用を通してこれを減少させるもしくは阻害することができる乳酸菌株を同定し選択する必要性が依然として存在する。
【0019】
特に、広いスペクトルのグラム陰性菌、好ましくは腸球菌、大腸菌群、および大腸菌と闘う、これを減少させる、または阻害することができ、それにより伝統的な抗生物質の全体的または部分的置換として、食品または医薬品部門で有効に使用することができる乳酸菌株を同定および選択する必要性が依然として存在する。
【0020】
さらに、混合物中に含まれるまたは腸内の腸内細菌叢中に既に存在する他の細菌に対する阻害作用が、各々の選択株中に存在しないために、混合物中で共に使用することができる乳酸菌株を同定および選択する必要性が依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0021】
出願人は、上記必要性に適切に対応することができるラクトバチルス・ペントーサスの株を同定および選択した。
【0022】
この理由のために、本発明の主題は、グラム陰性菌、好ましくは腸球菌、大腸菌群、および大腸菌による感染症の予防的または治療的処置のための医薬品として使用するための、DSM番号21980であり、ドイツのDSMZ研究所に寄託されたラクトバチルス・ペントーサスの株である。
【0023】
本発明のさらなる主題は、グラム陰性菌、好ましくは腸球菌、大腸菌群、および大腸菌の存在と闘う、これを減少させる、もしくは阻害するための食品または医薬組成物を調製するための、前記ラクトバチルス・ペントーサスDSM番号21980を含む組成物である。
【0024】
本発明のさらなる主題は、特にグラム陰性菌、好ましくは腸球菌、大腸菌群、および大腸菌による感染症を処置するための、グラム陰性菌、好ましくは腸球菌、大腸菌群、および大腸菌の存在と闘う、これを減少させる、または阻害するための医薬品を調製するための、前記ラクトバチルス・ペントーサスDSM番号21980株の使用である。
【0025】
本発明のさらなる主題は、乳製品を調製するための種培養に添加するための技術的添加物を調製するための、前記ラクトバチルス・ペントーサスDSM番号21980株の使用である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】ラクトバチルス・ペントーサスLPS01、DSM21980株による大腸菌ATCC8739の増殖阻害試験を示す図である。
【図2】ラクトバチルス・ペントーサスLPS01、DSM21980株による大腸菌ATCC10536の増殖阻害試験を示す図である。
【図3】ラクトバチルス・ペントーサスLPS01、DSM21980株による大腸菌ATCC35218の増殖阻害試験を示す図である。
【図4】ラクトバチルス・ペントーサスLPS01、DSM21980株による大腸菌ATCC25922の増殖阻害試験を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の他の好ましい実施形態は、以下の詳細な説明から明らかとなるだろう。
【0028】
表1は、一連の細菌株の大腸菌に対する阻害活性を試験した実験的試験を示す。表1では以下のように示される:(−)ハロー(halo)無し(阻害無し);(+)1〜2mmのハロー→(*)スポット内に大腸菌の多数のコロニー;(++)3〜5mmのハロー→(**)スポット内に大腸菌の少数のコロニー;(+++)5mmを超えるハロー→(***)大腸菌のコロニー無し(最大阻害)。
表2は、阻害試験を示す。
表3は、胃耐性試験を示す。
【0029】
出願人は、当業者に既知のラクトバチルス単離技術を使用して、自然のサイロに入れて貯蔵したトウモロコシからラクトバチルス・ペントーサスの株を同定および選択した。
【0030】
この株は、以下の書類番号:ラクトバチルス・ペントーサスDSM番号21980(LPS01)で、Probiotical S.p.A.、Novara−イタリアにより、2008年11月14日にドイツのDSMZに寄託された。DSM21980株は、ブダペスト条約に従って寄託された。
【0031】
好ましい実施形態では、ラクトバチルス・ペントーサスDSM番号21980(LPS01)は、グラム陰性菌、好ましくは腸球菌、大腸菌群、および大腸菌による再発している(再発性)感染症の予防的または治療的処置のために必要とされる。
【0032】
別の好ましい実施形態では、ラクトバチルス・ペントーサスDSM番号21980(LPS01)は、胃腸炎もしくは胃腸結腸炎の予防的または治療的処置のため、好ましくは下痢性排泄(diarrheic discharge)および結果としての脱水、悪心、下痢、発熱および身体虚弱を伴う腹部痙攣の予防的または治療的処置のために必要とされる。
【0033】
選択および単離した株は、糖発酵プロファイル(API 50 CHL bioMerieux)に基づいて特徴づけおよび分類した。種は、種特異的PCR増幅により確認した(Torriani S.、Felis G.E.、Dellaglio F.、Differentiation of Lactobacillus plantarum、L.pentosus、and L.paraplantarum by recA Gene Sequenze Analysis and Multiplex PCR Assay with recA Gene−Derived Primers.Appl Environ Microbiol.2001年8月;3450〜3454)。
【0034】
株は、PFGE(パルスフィールドゲル電気泳動)技術を使用して生物型に分けた(Tynkken S.、Satokari R.、Saarela M.、Mattila−Sandholm T.、Saxelin M.Comparison of Ribotyping、Randomly Amplified Polymorphic DNA Analysis、and Pulsed−Field Gel Electrophoresis in Typing of Lactobacillus rhamnosus and L.casei strains.Appl And Envirom Microb.1999年9月;3908〜3914)。
【実施例】
【0035】
出願人は、以下の大腸菌:ATCC35218、ATCC10536、ATCC8739、およびATCC25922に直接接触して置いた上記ラクトバチルス・ペントーサスDSM番号21980の抗大腸菌活性を試験した。
【0036】
しかしながら、比較の結果を得るために、下記のように、プロバイオティクス乳酸菌の他の株も試験した。
【0037】
1)ラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)ATCC53608、2種の市販の製品、すなわちReuterin(Noos)およびReuflor(Italchimici)の単独の微生物成分として存在する。
【0038】
1で言及した製品を、2種の製剤中に存在するATCC53608株がグラム陰性菌に対して活性のバクテリオシン(ロイテリンと呼ばれる)を産生する能力が知られているため、標準陽性試料として分析に供した。
【0039】
明らかに、2種の製品の製剤中に存在する添加剤のいかなる種類の直接作用も避けるために、最初に微生物ATCC53608を単離し、次いで培養ブロス中で培養し、その後分析に供した。
【0040】
2)ラクトバチルス・ラムノサス(L.rhamnosus)DSM番号21981(LR06)、別の対象株として。
【0041】
3)ラクトバチルス・ファーメンタム(L.fermentum)CNCM I−789(LF5)、膣カンジダに対して活性であり、このために、広い作用スペクトルを有する、バクテリオシンの産生における良い候補と考えられている。
【0042】
4)ラクトバチルス・ラムノサスGG、ATCC53103、有効な腸の生着菌(intestinal coloniser)として世界で最もよく知られ、最も研究されたプロバイオティクスの1つである。
【0043】
5)ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)LMG P−21020、LMG P−21021、LMG P−21022、およびLMG P−21023。4種の上記株LMG P−21020、LMG P−21021、LMG P−21022、およびLMG P−21023は、抗菌作用を有するバクテリオシン(プランタリシンと呼ばれる)を産生する能力を有する。本発明の株とラクトバチルス・プランタルムLMG P−21020、LMG P−21021、LMG P−21022、およびLMG P−21023の4株との間の比較は、操作条件が等しい状態で産生されたバクテリオシンの量を示すのに役立つ。
【0044】
6)ラクトバチルス・カゼイ亜種パラカゼイ(Lactobacillus casei sub.paracasei)LPC08、DSM21718、陰性標準試料として使用する。
【0045】
7)ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)DSM番号21717(LA02)、陰性標準試料として使用する。
【0046】
8)ラクトバチルス・ラクチス亜種クレモリス(Lactobacillus lactis sub.cremoris)DSM番号19072(NS01)、広い作用スペクトルを有する(例えば、リステリア(Listeria)およびクロストリジウム(Clostridia)に対して有効)バクテリオシンであるとして知られている、ナイシンの産生株として使用する。
【0047】
9)ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)DSM番号18616(FP4)、陰性標準試料として使用する。
【0048】
標的株は、凍結乾燥形態で、少なくとも1×10CFU/gの量を有する、大腸菌:ATCC35218、ATCC10536、ATCC8739、およびATCC25922により表す。
【0049】
大腸菌の各々の株を、生理溶液(NaCl 0.8%)1mlで元に戻し、寒天化LaptG培地12〜15mlを含むペトリ皿当たり100μlの割合で使用した。LaptG培養ブロス1リットルは、Bacto Pepton15g、Bacto Tryptone10g、グルコース10g、酵母エキス10g、Tween80 1g、1000mlの蒸留水を含み、pH6.5〜6.6である。固相の(寒天化した)培地については、Bacto Agar15gを添加する。
【0050】
両培地(ブロスおよび寒天)を、121℃/15分で滅菌する(Font De Valdez,G,およびcoll.:Influence of the recovery medium on the viability of injured freeze−dried lactic acid bacteria Milchwissenschaft 40(9)518〜520(1985))。ペトリ皿に、熱い寒天化LaptG培地を調製し、層流フード下で凝固させた。その後、標的株100μlを、滅菌スパチュラ(spatula)を使用してLaptG培地の表面上に均等に分配した。インキュベートする前に、このように調製したペトリ皿を層流フード(laminar flow hood)下で乾燥させた。阻害分析の結果を表1に示す。
【0051】
ラクトバチルスは液体MRS培地(ブロス)およびLaptGブロス中で培養し、一方、ラクトコッカスは液体M17培地(ブロス)およびLaptGブロス中で培養した。
【0052】
培地の成分および組成は当業者に知られている。
【0053】
全ての細菌は、母培養(mother culture)から始めて、1%の割合で播種し、恒温槽中37℃で16〜18時間インキュベートした。
【0054】
インキュベーションの最後で、ブロス培地の最終pH値を測定した(表1中の列参照)。
【0055】
前記酸性度が、大腸菌増殖の阻害の原因である唯一のパラメータではないことを立証することが望ましいので、個々の細菌により産生される乳酸の量を決定することが重要である。
【0056】
インキュベーションの最後で、各々のブロス培地の一定分量を5000rpm/5分で遠心分離して、枯渇したブロス培地(exhausted culture broth)および細胞のペレットを得た。枯渇したブロス培地も、孔径0.22μmのシリンジフィルターを使用して濾過し、試験に供した。その後、細胞ペレットを滅菌水で一度洗浄して、培地の残留物を除去した。次いで、洗浄した細胞ペレットを生理溶液に再懸濁して、McFarlandスケールに基づく0.5の濁度となるようにした。この値は、全試験細菌について等しい細胞の初期量から開始することを可能にする。
【0057】
阻害分析の前に、LaptG寒天培地上に標的株を準備したペトリ皿の底に、試験に供するそれぞれのスポットの位置をつける。
【0058】
各々の細菌ブロス培地10μlを、標的株を播種した皿の表面上にスポットする。
【0059】
以下も分析に供する:
a)洗浄した細菌懸濁液。表1のデータ(洗浄した細胞の列参照)は、バクテリオシンの産生が試験細菌の複製代謝中に起こることを示している。これは、本発明に関するDSM21980株が、大腸菌の増殖を阻害する、これと闘う、および/または減少させることができることを示している。そのため、いったん元に戻し、基礎代謝を行う条件にある凍結乾燥DSM21980株は、大腸菌の増殖を阻害する、これと闘う、および/または減少させることができる。
b)種々の細菌から得られる枯渇したブロス培地。表1のデータ(濾過したブロスの列参照)は、どれだけ多くのバクテリオシンがブロス培地中に存在するかを示す。これは、バクテリオシンが外因性で、活性であり、大腸菌を阻害するのに十分な量存在することを示す。
c)ブロス培地の最終pHに近いpH(3.9〜4.5)に達するまで乳酸を添加することにより酸性化したブロス培地MRS、M17、およびLaptG。表1のデータ(下4行参照)は、大腸菌の阻害作用は、主としてバクテリオシンの産生のためであり、培地のpHのためではないことを示している。
d)滅菌水
【0060】
このように調製した皿をサーモスタット中で37℃/24時間インキュベートする。
【0061】
インキュベーションの最後で、バクテリオシンが存在する領域を除いて、皿全体中に標的株の均一な増殖があるだろう。データを表1に示す。
【0062】
表1に示す結果の確認として、ラクトバチルス・ペントーサスLPS01、DSM21980株による大腸菌の増殖阻害の試験に関して実際の例を以下に示す。
【0063】
以下に示す4つの画像(図1〜4)において、以下のことに気づくだろう:
− 寒天化LaptG培地を含むペトリ皿は、その表面上にばらまかれた標的大腸菌株の一部を含んでいた。
− 記号および黒線は、種々の種類の試験試料に関係するセクター(sector)の範囲を定める。
− 「スポット」は、各々の試験試料10μlからなる。完全なブロス培地からなる試料の場合、スポットは、皿の残りの部分と比較してより不透明に見え、細菌の増殖が起こったことを示していることが指摘されよう。
− 阻害ハロー、バクテリオシンの作用のために標的株が増殖しなかった、各々の皿のセクター1−2−3−4−5に存在する暗い部分は、バクテリオシンの量に正比例する。
【0064】
種々のセクターを以下に説明する:
セクター1:ラクトバチルス・ペントーサスLPS01、DSM21980株の完全ブロス培地(細胞プラスLaptG培地)による阻害の効果。
セクター2:ラクトバチルス・ペントーサスLPS01、DSM21980株自体を増殖させた後のこの株の濾過ブロスによる阻害の効果。
バクテリオシンは細胞により分泌されるので、産生されるバクテリオシンが外因性であることを濃いハローの存在から推論することができる。産生されるバクテリオシンは、培養ブロス中で活性のままである。
セクター3:ラクトバチルス・ラムノサスDSM番号21981(LR06)株の完全ブロス培地(細胞プラスLaptG培地)による阻害の効果。
セクター4:ラクトバチルス・ロイテリATCC53608株の完全ブロス培地(細胞プラスLaptG培地)による阻害の効果。
セクター5:標的に及ぼす作用が、培地(培養ブロス)の酸性度によってのみ決定される可能性を除外するために、0.1Nソーダを添加してpHを6.8に中和した後の、ラクトバチルス・ペントーサスDSM21980(LPS01)株が増殖した濾過LaptGブロスによる阻害の効果。
セクター6:LaptG培養ブロスそれ自体としての阻害の効果。この場合、培養ブロスは阻害作用を有する成分を有さないので、ハローの形成は観察されない。
【0065】
4つの画像は、そのたびに同じ操作条件下であるが異なる大腸菌を使用して行った試験に関する:大腸菌ATCC8739(図1)、ATCC10536(図2)、ATCC35218(図3)、およびATCC25922(図4)。
【0066】
上記試験に基づいて、ラクトバチルス・ペントーサスDSM番号21980(LPS01)株は、大量のより有効なバクテリオシンを産生する能力により、全ての大腸菌株ATCC8739、ATCC10536、ATCC35218、およびATCC25922に対して優れた阻害能力を示したと推論することができる。
【0067】
上に報告された結果に基づいて、ラクトバチルス・ペントーサスDSM番号21980(LPS01)株は、全4種の試験大腸菌株の増殖と闘い、これを阻害し、および減少させることができるので、幅広いスペクトルの作用を有すると推論することができる。
【0068】
さらに、表1および図1〜4に示す結果に基づいて、ラクトバチルス・ペントーサスDSM番号21980(LPS01)株は、グラム陰性菌、好ましくは腸球菌、大腸菌群、および大腸菌の存在と殺菌作用を通して闘う、および/または静菌作用を通してこれを減少させるもしくは阻害することができると推論することができる。
【0069】
さらに、出願人は、個々に取得した他のプロバイオティクス株、すなわち、ラクトバチルス・ラムノサスDSM番号21981(LR06)株およびラクトバチルス・プランタルム番号LMG P−21021(LP01)株に対して、本発明に関するラクトバチルス・ペントーサスDSM番号21980(LPS01)株を試験した。この試験は、ラクトバチルス・ペントーサスDSM番号21980(LPS01)株によるバクテリオシンの産生が、バクテリオシンの存在のためにその増殖中に他の細菌ラクトバチルス・ラムノサスDSM番号21981(LR06)およびラクトバチルス・プランタルム番号LMG P−21021(LP01)を何らかの方法で阻害するかどうかを確かめる目的を有していた。
【0070】
したがって、ラクトバチルス・ラムノサスDSM番号21981(LR06)株およびラクトバチルス・プランタルム番号LMG P−21021(LP01)株を、上記分析と全く同じように、病原大腸菌と交配(crossed)させる試験を行った。
【0071】
使用株ラクトバチルス・ペントーサスDSM番号21980(LPS01);ラクトバチルス・ラムノサスDSM番号21981(LR06)およびラクトバチルス・プランタルム番号LMG P−21021(LP01)に関するデータを表2に示す。
【0072】
表2中、ハローが存在しない(阻害無し)ことが(−)で示されている。表2から分かるように、他の交配プロバイオティクス細菌に対する阻害能力を示した細菌はなかった。
【0073】
ラクトバチルス・ペントーサスDSM番号21980(LPS01)株は、他のプロバイオティクス細菌株または有益な細菌叢に干渉しない。
【0074】
本発明の好ましい実施形態は、グラム陰性菌、好ましくは腸球菌、大腸菌群、および大腸菌による感染症の予防的または治療的処置のための医薬品として使用するためのラクトバチルス・ペントーサスDSM番号21980(LPS01)株を含む組成物に関する。
【0075】
本発明の別の好ましい実施形態は、グラム陰性菌、好ましくは腸球菌、大腸菌群、および大腸菌による再発している感染症(再発性感染症)の予防的または治療的処置のための医薬品として使用するための組成物に関する。
【0076】
好ましくは、前記組成物は、胃腸炎もしくは胃腸結腸炎の予防的または治療的処置のために必要とされる。さらに好ましくは、前記組成物は、下痢性排泄および結果としての脱水、悪心、下痢、発熱および身体虚弱を伴う腹部痙攣の予防的または治療的処置のために必要とされる。
【0077】
上記組成物において、ラクトバチルス・ペントーサスDSM番号21980(LPS01)株は、生きていても死んでいてもよく、あるいは、その細胞性成分が存在していてもよい。
【0078】
好ましい実施形態では、生菌または死菌の形のラクトバチルス・ペントーサスDSM番号21980(LPS01)株、あるいはその細胞性成分を使用して、乳業における技術的添加物として、有効な用途を有する食事性組成物を調製することができる。前記食事性組成物は、乳製品を調製するための種培養に添加される。
【0079】
好ましい実施形態では、上記組成物はまた、ラクトバチルス・ペントーサスDSM番号21980(LPS01)株と共に、ラクトバチルス・ラムノサスDSM番号21981(LR06)株および/またはラクトバチルス・ペントーサスDSM番号21980(LPS01)株を含んでもよい。
【0080】
組成物は、組成物の総重量に対して1×10〜1×1011CFU/g、好ましくは1×10〜1×1010CFU/gの量の、生菌もしくは死菌としてのラクトバチルス・ペントーサスDSM番号21980(LPS01)株、またはその細胞性成分を含む。
【0081】
好ましい実施形態では、上記組成物は、1×10〜1×1011CFU/用量、好ましくは1×10〜1×1010CFU/用量の量の、生菌もしくは死菌としての株、またはその細胞性成分含む。用量は、例えば、1g、3g、5g、および10gであってよい。
【0082】
組成物はまた、食事および医薬品の観点から許容される添加物および共製剤化剤(co−formulant)を含むことができる。
【0083】
組成物は、ビタミン、例えば、葉酸、ビタミンB12、リボフラビン、ピリドキサールリン酸、ビタミンE、およびアスコルビン酸;抗酸化剤、例えば、ポリフェノール、フラバノイド、プロアントシアニジン、およびカテキン;アミノ酸、例えば、グルタミンおよびメチオニン;鉱物、例えば、セレン、銅、マグネシウム、および亜鉛;好ましくは乾燥抽出物の形の植物起源の活性物質、例えば、クランベリー、エキナセア、グレープフルーツ種子抽出物、トクサ、クマコケモモ、ローズマリー、およびプロポリスを含むことができる。
【0084】
好ましい実施形態では、組成物はまた、少なくとも1種の、組成物の総重量に対して1〜30重量%、好ましくは5〜20重量%の量の、プレバイオティクス特性(prebiotic properties)を有する物質を含む。
【0085】
前記プレバイオティクス物質は、フラクトオリゴ糖(FOS)、キシロオリゴ糖(XOS)、ガラクトオリゴ糖、イヌリン、アラビノガラクタン、およびグルコオリゴ糖を含む。
【0086】
好ましい実施形態では、ラクトバチルス・ペントーサスDSM番号21980(LPS01)株は、抗大腸菌バクテリオシンの刺激を介して大規模にバクテリオシンを産生するよう誘導される。上記大規模産生から得られたバクテリオシンを抽出して、本発明のバクテリオシンとして得る。グラム陰性菌、好ましくは腸球菌、大腸菌群、および大腸菌の存在と(殺菌作用によって)闘う、および/または(静菌作用によって)これを減少させるもしくは阻害するために、後者を、上記組成物中で使用することができる。
【0087】
さらに、ラクトバチルス・ペントーサスDSM番号21980(LPS01)株が、腸壁でコロニー形成するのに十分な多数腸に到達する能力を評価するために、胃耐性試験を設定した。この試験は、当技術分野で既知であり、添付のリストの参考文献(参考文献1〜5)で言及される方法に従って行った。ヒト由来のプランタルム科に属する株であり、腸でコロニー形成することができるので、ラクトバチルス・プランタルムDSM9843株を陽性標準とみなして、試験を設定した。さらに、よく研究されており、よく特徴づけられているプロバイオティクスラクトバチルスであるので、ラクトバチルス・ラムノサスATCC53103(LGG)株を試験した。データを表3に示す。
【0088】
表3は、37℃で異なる接触時間(5分、30分、および60分)後の、2つの異なる種類の人工胃液および人工膵臓分泌液に対するプロバイオティクス株の生存率を示す。
【0089】
胆汁酸塩もしくはヒト胆汁を添加したまたはしていない培地中で増殖するコロニーの数を比較することにより、胆汁分泌に対する生存率の結果が得られた。
【0090】
表3に提供されるデータに基づいて、ラクトバチルス・ペントーサスDSM番号21980(LPS01)株は、標準株ラクトバチルス・プランタルムDSM番号9843の生存率に完全に匹敵した、胃十二指腸通過時(gastroduodenal transit)の優れた生存率を示すと推論することができる。そのため、ラクトバチルス・ペントーサスDSM番号21980(LPS01)株は、胃腸障壁を通過し、腸管でコロニー形成することができる。
【0091】
表1、図1〜4、表2、および表3に提供されるデータは、グラム陰性菌による感染症の予防的または治療的処置における、伝統的な抗生物質の全体的または部分的置換としての、食品または医薬品部門におけるラクトバチルス・ペントーサスDSM番号21980(LPS01)株の使用をサポートする。
【0092】
(参考文献)
1. Human gastric juice -Met. Int. 006 (DAS)
Reference: Del Piano M., Morelli L., Strozzi GP., Allesina S., Barba M., Deidda F., Lorenzini P., Ballare M., Montino F., Orsello M., Sartori M., Garello E., Carmagnola S., Pagliarulo M., Capurso S.: Probiotics: from research to consumer.Dig Liver Dis. 2006 Dec;38 Suppl 2:S248-55. Review.
2. Artificial gastric juice - Met. Int. 022 (DAS)
Reference: Charteris WP. et al. Development and application of an in vitro methodology to determine the transit tolerance of potentially probiotic Lactobacillus and Bifidobacterium species in the upper human gastrointestinal tract. J Appl Microbiol. 1998 May;84 (5):759-68.
3. Simulated pancreatic juice - Met. Int. 023 (DAS)
Reference: Charteris WP. et al. Development and application of an in vitro methodology to determine the transit tolerance of potentially probiotic Lactobacillus and Bifidobacterium species in the upper human gastrointestinal tract. Journal of Applied Microbiology 1998 May;84 (5):759-68
Del Piano M., Strozzi GP., Barba M.; Allesina S.; Deidda F. Lorenzini P., Morelli L.; Carmagnola S.; Pagliarulo M.; Balzarini M.; Ballare M.; Orsello M.; Montino F.; Sartori M.; Garello E.; Capurso L. In Vitro Sensitivity of Probiotics to Human Pancreatic Juice. Journal of Clinical Gastroenterology. 2008 August 5.
4. Human bile - Met. Int. 024 (DAS)
Reference: Del Plano M., Morelli L., Strozzi GP., Allesina S., Barba M., Deidda F., Lorenzini P., Ballare M., Montino F., Orsello M., Sartori M., Garello E., Carmagnola S., Pagliarulo M., S. Capurso: Probiotics: from research to consumer.Dig Liver Dis. 2006 Dec;38 Suppl 2:S248-55. Review.
5. Bile Salts - Met. Int. 024 (DAS)
Reference: Charteris WP. et al. Development and application of an in vitro methodology to determine the transit tolerance of potentially probiotic Lactobacillus and Bifidobacterium species in the upper human gastrointestinal tract. J Appl Microbiol. 1998 May;84 (5):759-68.

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受託番号DSM21980で、ドイツ微生物細胞培養コレクションGmbH(Deutsche Sammlung von Mikrorganismen und Zellkulturen GmbH;DSMZ)に2008年11月14日に寄託された、ラクトバチルス・ペントーサス(Lactobacillus pentosus)LPS01。
【請求項2】
医薬品として使用するための、受託番号DSM21980でDSMZに2008年11月14日に寄託された、ラクトバチルス・ペントーサスLPS01。
【請求項3】
グラム陰性菌、好ましくは腸球菌、大腸菌群、大腸菌による感染症の予防的または治療的処置のための、受託番号DSM21980でDSMZに2008年11月14日に寄託された、ラクトバチルス・ペントーサスLPS01。
【請求項4】
グラム陰性菌、好ましくは腸球菌、大腸菌群、大腸菌による再発性感染症の予防的または治療的処置のための、請求項3に記載のラクトバチルス・ペントーサスLPS01。
【請求項5】
胃腸炎もしくは胃腸結腸炎の予防的または治療的処置のための、受託番号DSM21980でDSMZに2008年11月14日に寄託された、ラクトバチルス・ペントーサスLPS01。
【請求項6】
その後の脱水を伴う下痢性排泄、悪心、下痢、発熱および身体虚弱を伴う腹部痙攣の予防的または治療的処置のための、請求項5に記載のラクトバチルス・ペントーサスLPS01。
【請求項7】
グラム陰性菌、好ましくは腸球菌、大腸菌群、大腸菌の存在と闘う、これを減少させる、もしくは阻害するための食事性組成物または医薬組成物を調製するための、請求項1に記載の株を含む組成物。
【請求項8】
グラム陰性菌、好ましくは腸球菌、大腸菌群、大腸菌による感染症の予防的または治療的処置のための医薬品として使用するための、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
グラム陰性菌、好ましくは腸球菌、大腸菌群、大腸菌による再発性感染症の予防的または治療的処置のための医薬品として使用するための、請求項7または8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
胃腸炎もしくは胃腸結腸炎の予防的または治療的処置のための、請求項7から9の少なくとも一項に記載の組成物。
【請求項11】
その後の脱水を伴う下痢性排泄、悪心、下痢、発熱および身体虚弱を伴う腹部痙攣の予防的または治療的処置のための、請求項7から10の少なくとも一項に記載の組成物。
【請求項12】
乳製品を調製するための種培養に添加される技術的添加物として使用するための、請求項7に記載の食事性組成物。
【請求項13】
ラクトバチルス・ペントーサスDSM番号21980(LPS01)株と組み合わせて、ラクトバチルス・ラムノサスDSM番号21981(LR06)株および/またはラクトバチルス・ペントーサスDSM番号21980(LPS01)株を含む、請求項7から11の少なくとも一項に記載の組成物。
【請求項14】
グラム陰性菌、好ましくは腸球菌、大腸菌群、大腸菌の存在と闘う、これを減少させる、または阻害するための医薬品を調製するための、請求項1に記載の株の使用。
【請求項15】
グラム陰性菌、好ましくは腸球菌、大腸菌群、大腸菌による感染症を処置するための、請求項14に記載の使用。
【請求項16】
乳製品を調製するための種培養に添加される技術的添加物を調製するための、請求項1に記載の株の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2012−527884(P2012−527884A)
【公表日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−512470(P2012−512470)
【出願日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際出願番号】PCT/IB2010/001290
【国際公開番号】WO2010/136891
【国際公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【出願人】(309038720)
【氏名又は名称原語表記】PROBIOTICAL S.P.A.
【住所又は居所原語表記】Via Mattei,3,I−28100 Novara,Italy
【Fターム(参考)】