バクテリオファージを使用した微生物を検出するための装置および方法
原試料中の1つ以上の標的細菌を検出する方法であり、各標的細菌に特異的なバクテリオファージを原試料に添加し、この試験試料をインキュベートし、試験試料を、当該バクテリオファージまたは該バクテリオファージに関連する生物物質が存在すると色が変化する基板に塗布する。基板は各ファージに特異的に結合する抗体を含む。試験試料中の細菌は、バクテリオファージに曝露されたサンプルに微生物リゾチームを加えることによって溶菌してもよい。親ファージを、検出プロセスに先立って子孫ファージから分離できるような様式で標識する。ファージは、インキュベーションプロセス後に解離させて、試料に対して、個々のカプシドタンパク質またはファージ核酸の存在について調べることもできる。本発明は、兵家器細菌の抗生物質耐性を調べるために用いることもができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の背景)
(1.発明の分野)
本発明は、一般には微生物の検出の分野に関し、より詳細にはバクテリオファージを利用した細菌の検出に関する。
【背景技術】
【0002】
(2.問題の記載)
微生物の検出に対する標準的な微生物学的方法は、特異的細菌病原体の有無を調べるための基板に基づくアッセイに依拠している。Robert H.Bordner,John A.WinterおよびPasquale Scarpino,Microbiological Methods For Monitoring The Environment,EPA報告書No.EPA−600/8−78−017,U.S.Environmental Protection Agency,オハイオ州シンシナティ45268番地,1978年12月を参照のこと。これらの技術は、一般に実施し易く、高額な備品または研究設備を必要とせず、高いレベルの選択性を与える。しかしながら、上記方法は遅い。基板に基づいたアッセイの障壁となるのは、最初に標的とする生物の純粋培養物を増殖または培養しなければならず、これには24時間以上を要する場合もあることである。この時間的制約が、微生物の毒性株の存在に対する迅速な応答を与えるための有効性を大幅に限定してしまうことになる。
【0003】
分子生物学技術は、標準的な微生物学的試験に代わるものとして急速に受け入れられるようになってきている。標的とする微生物に対するマトリックスの宿主を評価するために、血清学的方法が広く利用されるようになってきている。David T.KingsburyおよびStanley Falkow,Rapid Detection And Identification of Infectious Agents,Academic Press,Inc.,ニューヨーク、1985年およびG.M.Wyatt,H.A.LeeおよびM.R.A.Morgan,Chapman&Hall,ニューヨーク、1992年を参照のこと。これらの試験は、複合生物混合物中の他の構成要素から、標的とする生物を最初に捕捉し、その後、分離するために、抗体を用いることに焦点を当てている。一旦単離されると、捕捉された有機物は、生物検体の培養を必要としない様々な方法によって濃縮および検出することができる。そのような手法の一つ「免疫磁気分離法(IMS)」と呼ばれる手法は、抗体を球体の微小な磁性または常磁性ビーズに固定化し、これらのビーズを用いて液体媒体から標的とする微生物を捕捉することを含む。これらのビーズは、標的とする生物の回収と濃縮を容易にする磁界の影響下で簡単に操作される。さらに、ビーズはその小さいサイズと形状のために、試料中に均一に分散することができ、ビーズと標的の間の相互作用を加速することになる。これらの好ましい特徴により、アッセイ時間を短縮し、分析手順の能率化の一助となり、より高い試料処理能力と自動化に適したものになる。
【0004】
IMSとともに以前に用いられていた下流検出法としては、ELISA(Kofitsyo S.Cudjoe,Therese Hagtvedt,およびRichard Dainty,“Immunomagnetic Separation of Salmonella From Foods And Their Detection Using Immunomagnetic Particle”,International Journal of Food Microbiology,271(995)11−25)、ドットブロットアッセイ(Eystein Skjerve,Liv Marit Rorvik,およびOrjan Olsvick,“Detection Of Listeria Monocytogenes In Foods By Immunomagnetic Separation”,Applied and Environmental Microbiology,1990年11月,3478〜3481頁)、電気化学発光(HaoYuおよびJohn G.Bruno,“Immunomagnetic−Electrochemiluminescent Detection Of Escherichia coli 0157 and Salmonella typhimurium In Foods and Environmental Water Samples”,Applied and Environmental Microbiology,1996年2月,587〜562頁)、およびフローサイトメトリー(Barry H.Pyle,Susan C.Broadway,およびGordon A.McFeters,“Sensitive Detection of Escherichia coli 0157: H7 In Food and Water By Immunomagnetic Separation And Solid−Phase Laser Cytometry”,Applied and Environmental Microbiology,1999年5月、1966〜1972頁)があげられる。これらの試験は満足な結果を与えるものの、実施に労力がかかり、標的以外の検体との交差反応により、擬陽性結果に対して影響を受けやすい二重反応(yes/no)を与える。全細胞微生物を同定するための別の方法は、マトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)飛行時間型(TOF)質量分析(MS)(Hollandら,1996;van Barr,2000;Madonnaら,2000)を用いる。
【0005】
これらの新しい手法のすべては、従来の微生物方法に比べて迅速に結果を与えることができる。しかしながら、これらは、基板に基づくアッセイで達成される感度レベルを達成することができず、また費用もかかり、典型的には古典的な基板に基づく方法の場合よりも熟練した技術者が必要となる。
【0006】
近年、大きな注目を浴びている他の分子生物学的技術としては、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法がある。試料中の特定の微生物のPCR検出には、試料中の遺伝物質(RNAおよび/またはDNA)の抽出と、関心微生物に特異的な標的遺伝配列の増幅と、増幅された遺伝物質の検出とが含まれる。PCR技術は、検出される遺伝物質の独自性による高い選択性と、標的遺伝物質の実質的増幅による高い感度と、潜在的に迅速な増幅プロセスによる迅速な結果を与える。しかしながら、PCR機器および試薬は相当に高額であり、試験を行うには高度に熟練した技術者が必要である。いまのところ、PCR機器は、期待されている感度または特異性を与えていない。
【0007】
バクテリオファージ感染および/または増幅を用いて、基板に基づく古典的な細菌検出の向上を図ろうとするいくつかの試みがなされている。バクテリオファージは、自らの複製の手段として細菌を用いるように自然界で進化してきたウィルスである。バクテリオファージ(またはファージ)は、このことを、自身を細菌に付着させ、自身の遺伝物質を該細菌に注入して、数十から数千倍のファージ複製を誘発することによって行う。溶菌バクテリオファージと呼ばれるいくつかのバクテリオファージは、宿主細菌を破裂させて、他の細菌を探し出すように、子孫ファージを環境中に放出する。細菌のファージ感染、細菌中でのファージ複製(増幅)、および溶菌後の子孫ファージの放出のための全インキュベーション時間は、ファージ、細菌および環境条件によってはわずかに1時間しかかからない。微生物学者達は、細菌を種レベルまたは株レベルで特異的に標的とする多くのものを含む5,000種を超えるファージを単離およびキャラクタライズしている。米国特許第5,985,596号および第6,461,833号(Wilson)は、そのようなファージに基づくアッセイ法を開示している。この方法は、関心細菌を含む可能性のある試料に溶菌ファージを感染させることを含む。その後、遊離のファージを試料から除去し、標的細菌を溶菌し、子孫ファージを第2の細菌に感染させるが、この第2の細菌は標的細菌よりも短い倍加時間を有している。調製した試料を基板上で培養する。プラークが形成されると、元の試料中に標的細菌が存在することがわかる。この方法では、培養インキュベーション時間が必要であるために、まだなお時間または日数がかかるものの、伝統的な基板に基づいたアッセイのアッセイ時間を短縮することができる。この方法に伴う他の問題点としては、標的細菌よりもより迅速に倍加する細菌にも感染する非特異的ファージが存在するような細菌を検出するためにしか適用できないことである。非特異的ファージの使用は、試験試料中の少なくとも第2の細菌に対する交差反応性の可能性に繋がるものである。したがって、このファージに基づいたプラークアッセイ法は、迅速ではなく、適当な非特異的ファージが利用できる場合にのみ適用可能であり、交差反応の問題を起こしやすく、実験室設備において行わなければならない。
【0008】
他の細菌病原体の検出では、基板に基づくプアラーク検出方法を完全に放棄している。これらの方法の多くは、試料中に標的細菌が存在する場合にのみ発現され、修飾ファージが感染するlux遺伝子で遺伝的に修飾されたバクテリオファージを使用する。米国特許第4,861,709号(Ulitzur)は典型的な例である。標的病原体に特異的に感染するファージは、lux遺伝子を含むように修飾される。修飾されたファージが標的細菌を含んだ試料に添加されると、該ファージは細菌に感染して、細菌中でルシフェラーゼが生産され、発光が起こる。米国特許第5,824,468号(Schererら)は、類似した方法を記載している。ルシフェラーゼ生産遺伝子マーカーに加えて、Schererらは、検出可能のタンパク質または核酸として発現される遺伝子マーカーを記載している。米国特許第5,656,424号(Jurgensenら)は、ルシフェラーゼ(またはβ−ガラクトシダーゼ)レポータファージを利用してミコバクテリアを検出する方法を開示している。該特許では、さらに抗生物質感受性の試験についても記載している。米国特許第6,300,061号(Jacobs Jr.ら)は、細菌感染後にルシフェラーゼを含むいくつかのレポータ分子のうちの1つを生産する、遺伝的に修飾されたファージを用いたミコバクテリア検出のためのさらに別の方法を記載している。米国特許第6,555,312B1号(Nakayama)は、発光性のものではなく蛍光性のタンパク質マーカーを生産する遺伝子を利用する方法を記載している。これらのすべての方法は、感染細菌内でのファージ増幅の潜在的利点を利用したものである。試料中の感染した各標的細菌に対して、子孫ファージが生産されていく間にマーカー遺伝子が何度も発現される。米国特許第6,544,729号(Saylerら)は、さらに別の増幅プロセスを付け加えている。ファージのDNAをlux遺伝子を含むように修飾する。バイオレポータ細胞もlux遺伝子を含むように修飾する。上記遺伝的に修飾されたファージおよびバイオレポータ細胞を試料に加える。ファージが標的細菌に感染すると、標的細菌が誘導されて、ルシフェラーゼだけでなくアシルエンホモセリンラクトンN−(3−オキソヘキサノイル)ホモセリンラクトン(AHL)を生産する。AHLは、バイオレポータ細胞に進路を見いだし、さらなる光およびさらなるAHLの生産を刺激し、これがさらなるバイオレポータ細胞に進路を見いだし、さらなる光が生産されることになる。このようにして、標的細菌のファージ感染が引き金となって、光シグナルが増幅される。原理上は、遺伝的に修飾されたファージを利用するこれらの方法のすべてが、1)選択的に感染するファージを利用するために高い選択性と、2)マーカー遺伝子産物を亭レベルで検出できるために高い感度と、3)シグナルを1または2ファージ感染サイクル以内に検出できることから基板に基づく方法に比べて迅速な結果を可能にする。これらは2つの大きな欠点を有する。第一に、被験病原体ごとに適切なファージを遺伝的に修飾しなければならないために、費用がかかるとともに実施が難しい。第2に、マーカーシグナル(光)を検出するための機器を必要とすることが多く、これが遺伝的に修飾されたファージを利用する試験の費用を引き上げることになる。
【0009】
米国特許第5,888,725号(Sanders)は、試料中の標的細菌への感染のために、修飾されていない高度に特異的な溶菌ファージを利用する方法を記載している。ファージに誘導される溶菌により、細菌細胞から、既知の技術によって検出可能なATPなどの特定のヌクレオチドが放出される。ファージ感染後に試料中ヌクレオチド濃度の上昇が検出されれば、該試料中に標的細菌が存在すると判定できる。米国特許第6,436,661B1号(Adamsら)は、ファージを用いて、試料中の標的細菌に感染して溶菌させて、細胞内酵素を放出し、これが固定化酵素基板と反応して、検出可能なシグナルを発生する方法を記載している。これらの方法は、非修飾ファージを使用するという利点を有するが、ファージ増幅から何の恩恵も引き出していない。検出されたマーカー(ヌクレオチドまたは酵素)の濃度は、試料中の標的細菌の濃度に正比例する。
【0010】
米国特許第5,498,525号(Reesら)は、非修飾ファージと、検出可能なシグナルを増大させるためのファージ増幅とを使用した病原体検出方法を記載している。この方法は、試料に高濃度の溶菌ファージを添加することを請求している。試料はファージが試料中の標的細菌に感染するのに十分な時間インキュベートする。溶菌が起こる前に、試料を処理して、感染細菌内で複製される子孫ファージに影響を及ぼすことなく試料中の遊離ファージを除去、破壊またはいずれにせよ不活性化させる。必要であれば、続いて、前もって試料に添加したあらゆる抗ウィルス剤を中和するための処理を行う。溶菌によって放出された子孫ファージは、子孫ファージの直接アッセイを用いて、または試料中に子孫ファージが存在することを示すシグナルを発生する遺伝的に修飾されたバイオレポータ細菌を用いることによって、検出する。いずれの場合も、測定されたシグナルは、試料中の標的細菌の数ではなく、子孫ファージの数に比例するので、ファージ増幅の結果として強くなる。この方法の主たる欠点は、処理試料中の遊離ファージを破壊、除去または不活性化した後に、子孫ファージが溶菌後に生存できるように殺ウィルス条件の逆転を行わねばならないことである。これらの追加のプロセスが、本方法を用いたアッセイを複雑にし、高額化させる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
基板に基づくアッセイの感度、簡潔性、および/または低コストと、分子生物学診断テストによって与えられる迅速な結果とを組み合わせた、検出方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(発明の要旨)
本発明は、ファージ増幅の原理を用いた、生きた微生物を検出するための方法および装置を提供することにより、上記の問題ならびに先行技術の他の問題を解決する。好ましい実施形態において、標的微生物に特異的なファージを、サンプルに導入する。導入されたファージの量は、好ましくはファージの検出限界未満の量である。標的微生物が存在すれば、ファージは感染し、微生物内で増殖する。好ましくは、微生物は、ファージ増殖の結果として自然に、または、微生物が細菌であれば細菌リゾチームなどの能動的溶菌プロセスのいずれかによって溶菌される。好ましい実施形態において、ファージは、好ましくは、バクテリオファージ解離剤を加えることにより、解離される。別の実施形態において、検出プロセスに先立って、親ファージに対して、子孫ファージから物理的に除去または分離可能なように標識を行い、これにより、潜在的感受性を増大するか、および/または方法の全分析時間を短縮する。次に試料中のファージまたはバクテリオファージに付随する生物物質を検定する。何らかのファージまたは生物物質が検出されると、標的微生物の存在が証明される。ファージまたは生物物質が検出されなければ、標的とする微生物は存在しないことになる。感染、複製、および溶菌からなる全インキュベーションプロセスには数分しかかからない。前述の実施形態のすべては、細菌および他の微生物の抗生物質耐性または感受性を判定するために用いることができる。バクテリオファージまたは生物物質は、ラテラルフローストリップ、SILAS表面、またはMALDI質量分析などを用いた任意の適切な様式で検出することができる。
【0013】
好ましい実施形態において、本発明はサンプル中の微生物の有無を検出する方法を提供し、該方法は、試料を、標的微生物に感染できる親バクテリオファージと組み合わせて、バクテリオファージに曝露されたサンプルを作製する工程と;バクテリオファージに曝露されたサンプルに対して、バクテリオファージが標的微生物に感染して、該標的微生物中で増幅して、子孫バクテリオファージを産生するとともに、アッセイで利用できる解離したバクテリオファージ物質を産生するのに十分な条件を与える工程と;バクテリオファージに曝露されたサンプルの検定を行って、試料中の標的微生物の有無の指標となる、バクテリオファージ物質の有無を判定する工程とを含む。上記の要約において、バクテリオファージ物質とは、解離したバクテリオファージ物質であると同時に、バクテリオファージに関連したものであると理解すべきである。
【0014】
別の好ましい実施形態において、本発明は、サンプル中の微生物の有無の検出方法を提供し、該方法は、(a)試料を、標的微生物に感染できる親バクテリオファージと組み合わせて、バクテリオファージに曝露されたサンプルを作製する工程と;(b)バクテリオファージに曝露されたサンプルに対して、バクテリオファージが標的微生物に感染して、該標的微生物中で増幅して、検出可能な量のバクテリオファージまたは該バクテリオファージに曝露されたサンプル中のバクテリオファージに関連する生物物質のいずれかを産生するのに十分な条件を与える工程と;(c)微生物を能動的に溶菌する工程と、(d)バクテリオファージに曝露されたサンプルの検定を行って、バクテリオファージまたは該バクテリオファージに曝露されたサンプル中のバクテリオファージに関連する生物物質の有無を検出し、標的微生物の有無を判定する工程とを含む。好ましくは、前記能動的に溶菌する工程は、バクテリオファージに曝露されたサンプルに微生物リゾチームを添加することを含む。好ましくは、前記能動的に溶菌する工程は、バクテリオファージに曝露されたサンプルへのクロロホルムの添加、酸によるバクテリオファージに曝露されたサンプルの処理、およびバクテリオファージに曝露されたサンプルの物理的プロセシングからなる群より選択される方法を含む。
【0015】
好ましくは、前記プロセスは、増幅されたファージが基板における色変化を誘導するような装置および方法を用いて実現される。好ましい実施形態において、本発明は、標的微生物を検出するための装置を提供し、該装置は、基板と、基板上の固定化ゾーンであって、バクテリオファージまたはバクテリオファージに関連する生物物質を固定化するための固定化剤を含んだ固定化ゾーンと、バクテリオファージまたはバクテリオファージに関連する生物物質と相互作用するように設計された色調節剤とを含み、これにより、バクテリオファージまたはバクテリオファージに関連する生物物質の存在が、固定化ゾーンの色の変化をもたらすようにしている。好ましくは、固定化ゾーンは抗体を含む。好ましくは色調節剤は着色ビーズを含む。別の実施形態において、色調節剤は、反応剤と、反応すると沈殿剤を形成する酵素とを含む。当該方法の好ましい実施形態において、バクテリオファージに曝露されたサンプルを基板に塗布し、前記バクテリオファージに曝露されたサンプル中にバクテリオファージまたはバクテリオファージに関連する生物物質が存在するとその少なくとも一部の色が変わるようにする。
【0016】
本発明は、サンプル中の標的微生物の有無を判定するためのキットも提供し、該キットは、標的微生物に感染可能なバクテリオファージを収容した第1の容器と、少なくとも一部の色が、バクテリオファージに曝露されたサンプル中にバクテリオファージまたはバクテリオファージに関連する生物物質のいずれかが存在する場合に変化する基板とを含む。好ましくは前記キットは、緩衝溶液を収容した第2の容器をさらに含む。好ましくは、基板は、ラテラルフローストリップまたはSILAS表面からなる。好ましくは、第1の容器は、所定の大きさの液滴を放出するように設計された点滴器(dropper)を含む。
【0017】
本発明は、微生物、好ましくは細菌の試験基板を製造する方法も提供し、該方法は、基板と、バクテリオファージまたはバクテリオファージに関連する生物物質に付着しうる生物物質とを提供する工程と、基板上に生物物質のラインを形成する工程と、基板を前記ラインと略垂直な方向に裁断する工程とを含む。好ましくは、基板は多孔性膜である。好ましくは生物物質は抗体である。
【0018】
本発明の目的は、バクテリオファージに曝露されたサンプル中において親ファージの破壊、除去、中和または不活性化を行わない、微生物を検出するファージ増幅方法を提供することである。
【0019】
本発明の目的は、特異性の高い細菌検出方法を提供することである。
【0020】
本発明のさらなる目的は、広スペクトル細菌検出方法を提供することである。
【0021】
本発明の別の目的は、低濃度の細菌を検出するために用いることができる細菌検出方法を提供することである。
【0022】
本発明のさらに別の目的は、広範囲の濃度にわたって細菌を検出することのできる細菌検出方法を提供することである。
【0023】
本発明のさらなる目的は、大半の既存の検出方法に比べて迅速な結果を与える細菌検出方法を提供することである。
【0024】
本発明のさらに別の目的は、既存の細菌検出方法に比べて低価格な細菌検出方法を提供することである。
【0025】
本発明のさらに別の目的は、実施が容易で、高度に熟練した技術者または複雑な装置を必要としない細菌検出方法を提供することである。
【0026】
本発明のさらなる目的は、野外または看護地点において実施しうる細菌検出方法を提供することである。
【0027】
本発明のさらなる目的は、複数の細菌が試験試料中で検出されるように、迅速に倍加する細菌検出方法を提供することである。
【0028】
本発明のさらに別の目的は、試料中に存在する標的細菌を検出するための代用物として特異的ファージ生物マーカーの検出を用いる細菌検出方法を提供することである。
【0029】
本発明のさらに別の目的は、試料中の前記標的細菌の存在を特異的に検出する手段として、標的細菌の高度に特異的なファージ感染を利用する細菌検出方法を提供することである。
【0030】
本発明のさらなる目的は、適切なファージが存在する任意の細菌を検出するために、使用しうる細菌検出方法を提供することである。
【0031】
本発明のさらなる目的は、遺伝的に修飾されていないファージを利用する細菌検出方法を提供することである。
【0032】
本発明のさらに別の目的は、遺伝的に修飾されたバクテリオファージを利用する微生物検出方法を提供することである。たとえば、バクテリオファージは、感染プロセスの所望の特性を強化するように、検出可能な生物マーカーを過剰発現させるように、酵素を発現するように、またはカプシドタンパク質上で標的を発現するように、遺伝的に修飾することができる。
【0033】
本発明のさらなる目的は、高い感度を達成する手段としてファージ増幅を使用する細菌検出方法を提供することである。
【0034】
本発明のさらなる目的は、ファージのカプシド鞘などのファージに関連する特異的生物マーカーを検出することにより、ファージを検出する細菌検出方法を提供することである。
【0035】
本発明のさらに別の目的は、ファージ生物マーカーが、ファージからの別個の解離タンパク質である細菌検出方法を提供することである。
【0036】
本発明のさらなる目的は、ファージ生物マーカーがファージ核酸である細菌検出方法を提供することである。
【0037】
本発明のさらなる目的は、検出プロセスの前に、ファージを解離させることからなる第2の増幅プロセスを利用する細菌検出方法を提供することである。
【0038】
本発明の別の目的は、ファージ増幅によって生産される子孫ファージとは区別できる標識された親ファージを利用する細菌検出方法を提供することである。
【0039】
本発明のさらなる目的は、抗体−ファージ複合体を生産するファージ生物マーカーに結合する抗体を使用する細菌検出方法を提供することである。
【0040】
本発明のさらに別の目的は、抗体−ファージ複合体を検出するための手段としての特異的抗体−抗原結合事象を検出するために既存の免疫学的検定技術を使用し、これにより、試料中の標的細菌の存在を検出する細菌検出方法を提供することである。
【0041】
本発明のさらに別の目的は、ファージを検出するためにラテラルフローストリップを利用し、これにより、試料中の標的細菌の存在を検出する細菌検出方法を提供することである。
【0042】
本発明のさらに別の目的は、細菌の抗生物質耐性株を検出する方法を提供することである。
【0043】
上記の要約は、本発明を理解しやくするために、本発明の目的、特徴および利点のいくつかの例を説明することを目的としている。本発明のいくつかの実施形態において、上記目的のただ1つだけが実現される場合もあるし、他の例では、上記目的の複数が実現される場合もある。しかしながら、上記の目的はすべてが包括的ではなく例示を目的としており、ある特定の実施形態においては上記の目的のいずれも実現されていない場合もある。たとえば、本発明の方法および装置は、細菌以外の微生物、例えば、真菌、マイコプラズマ、原生動物、および他の微生物を検出するために用いることもできる。しがたって、上記目的における用語「細菌」をより広義の用語「微生物」と置き換えると、本発明に有効な目的が表現される。本発明の数多くの他の特徴、目的、利点が、以下の説明を添付の図面とともに読むことにより、明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
(好ましい実施形態の詳細な説明)
(1.序論)
本発明の方法は、試料中の細菌などの標的微生物(微生物)の存在を検出するために、バクテリオファージ、あるいは単にファージを使用することに依存する。本開示において、バクテリオファージおよびファージという用語は、バクテリオファージ、ファージ、ミコバクテリオファージ(TBおよびパラTBに対するものなど)、ミコファージ(真菌に対するものなど)、ミコプラズマファージまたはミコプラズマのファージ、ならびに、生きた細菌、真菌、ミコプラズマ、原生生物および他の微生物に侵入して、これらを使って自身を複製することのできるウィルスのことをいう他の任意の用語を含んでいる。ここで、「微視的」とは、最大寸法が1ミリメートル以下のものを意味する。バクテリオファージは、細菌を自身の複製の手段として使用するように自然界において進化してきたウィルスである。ファージはこのことを、自身を細菌に付着し、自身のDNAを細菌に注入し、該細菌に該ファージを何百倍、または何千倍にも複製させるように誘導することによって行う。溶菌バクテリオファージと呼ばれるバクテリオファージでは、宿主細菌を破裂させ、他の細菌に進路を見いだすために子孫ファージを環境中に放出する。細菌の溶菌のための、細菌のファージ感染、ファージ増殖または細菌中における増殖のため全インキュベーション時間は、いずれの場合でも、当該ファージおよび細菌ならびに環境条件によって数十分から数時間である。
【0045】
開示した検出方法は、現在知られているどの微生物検出方法よりも優れた特異性、感度、簡便性、速度、および/または費用を併せて提供する。ここで教示する方法は、試料中の1つ以上の標的細菌の存在を間接的に検出するために、バクテリオファージを使用することに依存している。典型的なバクテリオファージ70、この場合MS2−E.coliを図5に示す。構造的には、バクテリオファージ70は、ウィルス核酸74、すなわちDNAおよび/またはRNAを封入する、ヘッドと呼ばれることもあるタンパク質殻またはカプシド72を含む。バクテリオファージは、内部タンパク質75、ネック76、尾部鞘77、尾部繊維78、および端板79、およびピン80をさらに含んでいてももよい。カプシド72は、1つ以上のタンパク質の反復コピーから構成される。図10を参照して、ファージ150が細菌152に感染すると、該ファージは自身が細菌壁または膜151の適当部位に付着し、その核酸154を細菌中に注入して、ファージが数十から数千コピーに複製されるように誘導する。このプロセスを図10に概略的に示す。DNAは初期mRNAS155および初期タンパク質156に展開し、そのうちのいくつかがライン157に沿って膜成分となり、他のものが宿主の染色体159からの細菌ヌクレアーゼを利用してライン164に沿ってDNA前駆体になる。他のものは方向170に沿って移動し、ライン166に沿ったDNAを取り込むヘッド前駆体になる。膜成分は、経路160に沿って発達して、鞘、端板、およびピンを形成する。他のタンパク質は経路172に沿って発達し、尾部繊維を形成する。ヘッドは形成されると、膜151から遊離し、経路174に沿った尾部鞘を接合し、尾部鞘とヘッドが176において尾部繊維と接合して、バクテリオファージ70を形成する。溶菌バクテリオファージとよばれるある種のバクテリオファージは、180で示される宿主細菌を破壊し、他の細菌への進路を見いだすために、子孫ファージを環境中に放出する。本願で開示する方法においては溶菌ファージを典型的に使用する。しかしながら、特に、子孫ファージが宿主細菌に感染した後に子孫ファージまたは子孫ファージの一部を放出するように非溶菌ファージまたは細菌を活性化することができる場合には、非溶菌ファージを用いることもできる。
【0046】
細菌の溶菌のための、細菌のファージ感染、ファージ増殖または細菌中における増殖のための合計周期時間は、いずれの場合でも、当該ファージおよび細菌ならびに環境条件によって数十分から数時間である。一例として、MS2バクテリオファージは、大腸菌(Escherichia coli)の株に感染し、標的細胞への付着後40分以内に、自身のコピーを10,000から20,000個産生することができる。MS2ファージのカプシドは、180コピーの同一のタンパク質を含む。このことは、MS2に感染した各E.coliに対して、1.8×106個以上の個別のカプシドタンパク質が産生されることを意味する。感染事象毎に多数のファージ、ならびにさらに多くのカプシドタンパク質が生産されるファージ感染のプロセスは、ファージ増幅と呼ばれる。
【0047】
微生物学者達は、たいていのヒト細菌病原体に対する特異的ファージを含む、何千ものファージ種を単離し、キャラクタライズしてきた。バクテリオファージ種には、細菌ファミリーに感染するもの、個々の種に感染するもの、または特定の株に感染するものがある。表1は、そのようなファージのいくつかと、該ファージが感染する細菌をあげている。
【0048】
【表1−1】
【0049】
【表1−2】
本発明は、高度に特異的なファージ−細菌感染、ファージ増幅、および短いインキュベーション時間などのバクテリオファージの既存の特性を利用しており、標的細菌に高度に特異的で、非常に感度が高く、迅速で、実施が容易であり、および/または相当に経済的である細菌検出方法を編み出している。さらに、他のファージに基づく細菌検出方法とは違って、本願に記載する好ましい方法は、バイオレポータまたはインデューサ遺伝子を含むような遺伝的修飾を受けていないファージを利用している。このことにより、本発明を使用した特異的細菌試験の開発に伴う時間および費用が大幅に削減される。
【0050】
(2.詳細な説明)
図1は、試料中の特定の細菌を検出するための方法の第1の実施形態10を示す。第1の「ファージの添加」プロセス12において、標的細菌14に感染することになる親バクテリオファージ18を、細菌14の原試料11と混合する。好ましい実施形態において、好ましくは懸濁液または溶液16中のバクテリオファージを、所定の濃度で細菌14の原試料11に添加する。ここで、「原試料」という用語は、ファージを添加する前の試料のことをいう。原試料/ファージ混合物は、ここでは「試験試料24」または「バクテリオファージに曝露されたサンプル24」とよぶ。方法の目的が、種または株レベルで特定の細菌を検出することであれば、これに応じた特定のファージを該方法において用いる。たとえば、Y.Pestis.を特異的に検出するためには、φA1122ファージを用いることができる。これに対し、試料中のより広範な細菌を検出するためには、より特異性の低いファージを用いるとよい。ファージMS2は、Enterococciだけでなく多くの異なるE.coli種に感染するので、水中の糞便汚染を検出するのに非常に適している。
【0051】
複数の細菌を検出するためには、各標的細菌に対して1つの種のバクテリオファージを原試料に加え、すべての標的細菌と関連するファージを含む1つの試料を与える。簡略化のために、本方法については、1つの細菌の検出に適用するものとして、下記に記述する。当業者であれば、各標的細菌を検出するために、唯一の細菌/ファージ組み合わせを用いた1つの試験試料と、方法の各プロセスをどのようにして同期して実施するかが明らかであろう。
【0052】
標的細菌14を含んだ原試料11は、一般には液体であるが、固体または粉体であることもある。原試料は、多くの異なる有機および無機化合物を含んだ混合物または懸濁液であることもある。原試料は、試験用に調製するために、様々な方法で前処理されていてもよい。たとえば、原試料は、不要な成分を除去するために、または標的細菌を濃縮するために精製またはろ過されていてもよい。また、標的細菌のインキュベーションをもたらすように、または標的細菌をより見やすい状態にするような培地中で培養したものであってもよい。原試料は、相対的に未処理の状態、例えば、唾液、血液、または水試料のようなものであってもよい。当業者にとっては、前試験試料調製物が広範は適切なプロセスの任意のものを含んでいてもよく、原試料が多種多様な形態をとってよいことが明らかであろう。
【0053】
ファージ自体を様々な形態の試料に添加してもよい。乾燥状態で加えてもよい。ファージは、液体試薬混合物中に混合または懸濁してもよい。ファージは、原試料を添加するバイアル中で懸濁してもよい。ファージは、任意の他の適切な形態をとってもよい。原試料に添加するファージを、ここでは「親ファージ」と呼ぶ。
【0054】
図1に戻って、試験試料24を好ましくは所定時間インキュベートする。本方法に対しては、試験試料は、好ましくは、インキュベーションプロセス前に、標的細菌のファージ感染を助けるような条件におくべきである。このことは、当業者によって知られる様々な方法によって達成できる。たとえば、親ファージは、原試料に添加されると感染を助ける試験試料をもたらす試薬中に混合してもよい。試験試料は、ファージ感染を助ける条件を確立するための様々な方法によって調製してもよい。
【0055】
「インキュベート」プロセス20を図2に示す。親ファージ18は、自身を標的の細胞壁に付着させることにより、標的細菌14に感染し(32)、ウィルス核酸を注入して、感染細菌23を作り出す。そして、図10に示すような子孫ファージの複製34が、宿主細菌内で進む。溶菌ファージを用いる場合には、宿主は溶菌プロセス36において破裂し、子孫ファージ37を試験試料中に放出し、ここで他の標的細菌に感染することもある。このインキュベーションプロセスは、1回以上の感染、増幅、および溶菌のサイクルのあいだに進行させてもよい。原試料中に標的細菌が存在すると想定すると、試験試料は、インキュベーションプロセスの間に感染された個々の細菌に対して多数の子孫ファージを含むであろう。
【0056】
「インキュベート」プロセスの最後で、感染標的細菌のうちのいくらかが溶菌されていないかもしれない。そうした状況において、多くのまたはすべての子孫ファージがまだ宿主細菌内に保持されており、これは直接検出することができないかもしれない。この潜在的問題に取り組むために、21において、試験試料に特定の微生物に対する微生物リゾチーム22を加えて、プロセス25において、試験試料24中に存在する細菌などの本質的にすべての個々の微生物の細胞壁を破壊して、そこに含まれる本質的にすべての子孫ファージを放出させることにより、図1で示すようにオプションのプロセス21および25「細菌の溶菌」を行う。微生物の、またはより詳細には細菌のリゾチームを使用することで、本願に教示する方法を実施するのに必要な時間を短縮することができる。これは、標的細菌のすべてが自ら溶菌するのを待つ必要がなくなるからである。ゆっくり溶菌するファージに対しては、このことは、実質的な違いをもたらしうる。本発明の目的のために、「リゾチーム」という用語は、微生物宿主の破壊を誘導して、試料中への子孫ファージを放出させる任意の材料、装置、またはプロセスのことをいい、限定はされないが、従来のリゾチームやクロロホルムなどの化学的手段、または酸処理または物理的プロセス、たとえば、浸透圧の付加などが含まれる。
【0057】
図1に示す実施形態のプロセス28「ファージの検出」は、ファージに関連する生物マーカーを検出することを含む。この生物マーカーが検出されると、これは、原試料中に標的細菌が存在することを間接的に示すものである。これから記載する方法の実施形態に対して、原試料に添加される親ファージと子孫ファージとは、インキュベーションプロセスのあいだに産生されたならば、同一である。このことは、試験試料中に標的細菌が存在しないとしても、関連するバックグラウンドシグナルを上昇させうるファージが検出プロセス28のあいだに存在することを意味している。この問題を解決するための方法は、試験試料中の親ファージの初期濃度を、それらが与えるバックグラウンドシグナルが検出プロセス28において検出不能となるように制御することである。したがって、ファージ増幅が起こっていないなど、試験試料に標的細菌が存在しない場合には、試験の最後にシグナルは検出されない。バックグラウンドシグナルを親プラス子孫ファージからのシグナル上昇と区別できる場合に限り、より高濃度の親ファージを用いることもできる。プロセス28において得られるシグナルがバックグラウンドシグナルあら区別できるような最低の細菌濃度が、本方法の感度限界を表す。これを行う簡単な方法は、細菌が存在しないことがわかっている対照試料に対して試験を行うことである。これにより、試験試料からの対応する結果と比較できる対照結果を作製することができる。試験試料からの試験結果が、はっきりと対照試料よりも高いシグナルレベルを示す場合には、標的細菌が存在することがわかる。
【0058】
本発明の目的のために、ファージに関連する任意の生物マーカーを、原試料中の標的細菌の間接的検出手段として用いることができる。これには、図5および図10に示すファージの任意の部分が含まれる。たとえば、図11は、バクテリオファージT4に対して、質量に対する強度百分率を表したMALDIスペクトル200を示している。スペクトル200は、溶菌ホリンタンパク質に対する顕著なピーク201と、ヘッドタンパク質に対する顕著なピーク204と、hoc外部カプシドタンパク質に対する顕著なピーク206と、フィブリチンに対する顕著なピーク208を示している。これらの大きなピークは、これらのファージ部分のいずれも、後で検討するMALDI検出法における生物マーカーとして使用可能であることを示している。非常に有用なファージ生物マーカーは、ファージカプシド72である。このカプシドは、たいていは、100コピーを超える多くのコピーの1つ以上のタンパク質を含んでいる。したがって、検出目的で使用できる複数の同一の結合部位が個々のファージ粒子のそれぞれの周囲に存在する。これにより、試験試料中に含まれる各ファージ粒子から得られる潜在的シグナルレベルが上昇する。溶菌した標的細菌に関連する生物マーカーを直接検出することに対する、ファージまたはファージ関連生物マーカーを検出することの利点は、感度が劇的に上昇することである。インキュベートされた試験試料中のファージ濃度は、ファージ増幅のために、標的細菌原試料中の標的細菌の濃度よりもはるかに高くなっている。ファージ増幅は、原試料中に存在する個々の細菌のそれぞれに関連するシグナルを、何桁倍、たとえば、10倍に増強することができる。したがって、ファージ増幅プロセスを用いない他の方法よりも低い濃度の細菌を、この方法では検出することができる。
【0059】
ファージに関連する何らかの生物マーカーを検出するどの検出方法または装置も、この方法28には十分である。好ましい方法は、ELISA、フローサイトメトリー、ウェスタンブロット、アプタマーに基づくアッセイ、ラジオイムノアッセイ、免疫蛍光法、およびラテラルフローイムノクロマトグラフィー(LFI)を含む、検出可能なシグナルを発生するために抗体結合事象を利用する免疫検定法である。他の方法としては、本明細書ではMALDIと呼ぶ、マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析(MALDI−TOF−MS)、ならびに、検出指標として色が変化するSILAS表面を用いることがあげられる。1つの免疫検定であるLFIについては、図3、5および19と関連して以下に詳細に検討し、SILAS色指標法については、図12〜18と関連して以下に詳細に検討し、MALDI法については、図11および図24〜27に関連して以下に詳細に検討する。
【0060】
図3は、試験試料中のファージの存在を検出するためのLFIを、ラテラルフローストリップ40を用いてどのように具現できるかを説明するものである。ラテラルフローストリップ40の断面図を図4に示す。ラテラルフローストリップ40は好ましくは、試料塗布パッド41と、共役物パッド43と、検出ライン46および内部標準ライン48が形成された基板64と、吸収パッド52とを含み、これらのすべては、好ましくはプラスチックである裏張り62上に搭載されている。基板64は好ましくは多孔性の網または膜である。これは、ライン43、46、および随意でライン48を前記基板の長いシート上に形成し、基板をこれらのラインと垂直な方向に裁断して、複数の基板64を形成することによって作製する。接合物パッド43は、それぞれが、ここでは第1抗体−ビーズ共役物を形成する第1の抗体とよぶ、第1の抗体44に接合されたカラービーズ45を含んでいる。第1の抗体44は、試験試料中のファージ51に選択的に結合する。検出ライン46および対照ライン48は、いずれも試薬ラインであり、それぞれが固定化ゾーンを形成している。すなわち、バクテリオファージまたは他の生物マーカーと適切な様式で相互作用する材料を含んでいる。好ましい実施形態において、相互作用は、バクテリオファージまたは他の生物マーカーを固定化するようなものである。検出ライン46は、固定化された第2の抗体47を含み、抗体ライン46が、ストリップに沿った流れ方向に垂直となり、流れ中のファージの有意な部分を捕捉するのに十分な密度を有している。第2の抗体47もまた、ファージ51に特異的に結合する。第1の抗体44および第2の抗体47は、同一であってもなくてもよい。いずれかがポリクローナルまたはモノクローナル抗体であってもよい。随意で、ストリップ40は、第3の抗体49を含む第2の試薬ライン48を含んでいてもよい。第3の抗体49は、第1および第2の抗体の1つ以上と同一であってもなくてもよい。第2の試薬ライン48は、アッセイが適切に機能するかどうかを調べるための内部標準ゾーンとして機能させてもよい。
【0061】
1滴以上の試験試料50を、図3Aに示すように試料パッドに加える。試験試料50は好ましくは、元の原試料に標的が存在する場合には、親ファージならびに子孫ファージを含んでいる。試験試料は、ストリップの対向端部にある吸収パッド52に向けてラテラルフローストリップ40に沿って流れる。ファージ粒子は共役物パッドに沿って膜に向けて流れる際に、図3Bに示すように、ファージ−ビーズ複合体54を形成する第1の抗体−ビーズ共役物42の1つ以上を取り込む。ファージ−ビーズ複合体は第2抗体47の列46上を移動する際に、図3Cに示すように、固定化され、濃縮された第1の抗体−ビーズ−ファージ−第2の抗体複合体58を形成する。十分なファージ−ビーズ複合体が固定化された第2抗体の列46に結合すると、着色されたライン59が裸眼で視認できるようになる。可視ライン59は、標的細菌が原試料中に存在したことを示す。ラインが形成されない場合には、標的細菌は原試料中に存在しなかったか、あるいはラテラルフローストリップ40で検出できないほど低濃度でしか存在しなかったことになる。この試験の信頼性を得るために、原試料に加える親ファージの濃度は、親ファージ単独では、ラテラルフローストリップ上の可視ラインを形成できるほどの量が存在しないように、十分に低くすべきである。抗体−ビーズ共役物45は、バクテリオファージまたはバクテリオファージに関連する生物物質に相互作用するように設計された調色剤である。抗体−ビーズ共役物45は、固定化ゾーン46に固定化されると、固定化ゾーンに色の変化をもたらす。
【0062】
図6は、本発明に従う標的細菌を検出するための方法の第2の実施形態90を示し、該方法90は感度が向上している。「ファージの添加」、「インキュベート」および「細菌の溶菌」からなるプロセス12,20、およびオプションのプロセス21は、図1に関して記載した対応するプロセスと同じである。オプションプロセス21の後、原試料中に標的細菌に存在する場合には、試験試料はファージ粒子を豊富に含んでいる。
【0063】
図6に示すように、第2実施形態90のプロセス94、「ファージの解離」は、ファージ解離剤92を試験試料に添加することを含む。ファージ解離剤92は、ファージ粒子を、個々のカプシドタンパク質およびウィルス核酸を含むそれらの構成成分97に分解する。ファージ解離剤の例としては、酸処理、尿素、変性剤および酵素があげられる。任意の適切なファージ解離剤を用いることができる。このプロセスにおいて、解離されたバクテリオファージ物質97が生産される。
【0064】
図6に示す実施形態のプロセス99「ファージ小成分の検出」は、生物マーカー、すなわち、解離したファージ小成分に関連する解離されたバクテリオファージ物質97を検出することを含む。上記の議論に関して、バクテリオファージ物質は、解離したバクテリオファージ物質と同時に、バクテリオファージに結合したものの両方でありうることを理解すべきである。すなわち、「解離したバクテリオファージ物質」という用語は、もはや全バクテリオファージの一部ではないものをさし、「バクテリオファージに関連した」という用語は、該物質はある時点ではバクテリオファージの一部であったか、バクテリオファージ複製の過程で生産されたものである。プロセス94においてファージ解離剤を使用することによって、プロセス99において検出可能な豊富な個々のカプシドタンパク質97が存在する。第1実施形態と同様に、これらは、確立された抗原−抗体に基づく免疫検定技術を用いて検出することができる。さらに、露出したウィルス遺伝物質は、PCR、遺伝的プローブバイオセンサー、光アプタマー、分子ビーコン、またはゲル電気泳動を含む他の確立された技術を用いて検出することができる。任意の適切なファージ生物マーカー検出方法または装置を用いることができる。
【0065】
試験試料の親ファージの濃度をバックグラウンド検出限界未満に保持することにより、原試料にファージを加え、インキュベートし、ファージ生物マーカーを検出するだけの簡単な方法にすることができる。しかしながら、潜在的な欠点もある。潜在的に低濃度の親ファージは、試験試料における標的細菌に対する親ファージの比が1未満になる条件、すなわち、感染多重度(MOI)が低い条件を生み出してしまう。試験試料中のすべての標的細菌が、高確率で感染されるようにするために、プロセス20におけるインキュベーション時間はたとえば、感染および溶菌のサイクル2回以上と同等の時間など長くすることができる。このように、試験の簡潔性を潜在的に長い試験時間によって埋め合わせる。この潜在的限界は、親ファージに関連するシグナルを排除できるか、より高濃度の親ファージを利用できる(MOIが5を超える)ように著しく減少させることができれば、克服することができる。上記の限界は、生物マーカーとしてカプシドタンパク質を使用するなどして、子孫ファージによるシグナルを増強するか、遺伝的に増強されたファージを用いることによっても、克服することができ、そのいずれも本願で詳細に検討する。
【0066】
図7は、試料中の標的細菌を検出するための本発明の第3実施形態100を示し、この実施形態ではより迅速な結果を達成可能である。本願の本実施形態において、原試料と混合する親ファージ102を標識して、タグ印104で示して、試験試料からあとで除去することができ、バクテリオファージを検出する試験試料の部分から単離できるようにするか、さもなくば最初にタグを外した子孫ファージが検出されるシグナルに寄与するように分析に先立って中和する。たとえば、1実施形態において、ビオチン化ファージを親ファージとして使用する。ビオチン化バクテリオファージは、ストレプトアビジンに強力に引きつけられる。この強力な親和性を用いて、以下に検討するように、試験試料から標識した親ファージを後に分離した。標識した親ファージは、たとえば、プローブまたは網目構造物を親バクテリオファージでコーティングするか、またはファージを基板に科学的に結合することにより、物理的基板に付着させることもできる。標識したバクテリオファージは、試験試料から基板を除去することにより、あるいは、基板より分離された試験試料中の部分中のバクテリオファージを検出することにより、子孫バクテリオファージから分離することができる。
【0067】
本実施形態のプロセス105,107および108,「ファージの添加」、「インキュベート」および「細菌の溶菌」は、それぞれ、プロセス105において原試料に加える親ファージ103の溶液が、標識されたファージ102を含み、したがって、バクテリオファージに曝露されたサンプル109が、細菌外の標識されたファージ102と、細菌内の、非標識子孫ファージ106との両方を含むということ以外は、図1および6のプロセス12,20および21と同じである。したがって、溶菌溶液112は、標識ファージと非標識ファージの両方を含むことになる。プロセス114、「標識したファージの抽出」において、標識された親ファージは、該ファージを試験試料から抽出または実質的に除去する、もしくは親ファージを子孫ファージから単離して、それらが分析されるシグナルに寄与しないようにすることにより、子孫バクテリオファージから分離される。プロセス105において原試料に添加される際に標識された親ファージが物理的基板に付加されている場合には、基板および付随する親ファージは、プロセス114において試験試料から物理的に分離することが好ましい。物理的基板に付加されていないビオチン化ファージもまた、試験試料から迅速に分離または除去することができる。一実施形態において、ストレプトアビジンでコートした磁気ビーズを試験試料に添加し、ここで、ビオチン化親ファージを急速に回収するようにした。その後、磁気を用いて、磁気ビーズを結合した親ファージとともに試験試料から分離および除去する。下記図28に関連する磁気抽出の検討を参照のこと。同様に、別の実施形態において、ストレプトアビジンでコートした網を試験試料を通して攪拌し、試験試料からビオチン化親ファージの実質的に全部を回収する。網以外の他の物理的基板またはプローブを用いてもよい。別の実施形態において、ラテラルフロー装置を用いた。抗体ストリップ46の前の網基板64の部分66(図4)にストレプトアビジンを含浸させ、網の遷移をコーティングする。ストレプトアビジンでコートした網を回収し、抗体ストリップ46に到達する前に親ファージを部分66に結合させることにより標識した親ファージを固定化する。子孫ファージは、ストレプトアビジンに結合せず、したがって、ストリップを自由に流下し、視覚的に検出された。同様に、試験試料を滴下する試料パッド41のように、ラテラルフロー装置の他の部分もストレプトアビジンでコーティングまたは含浸させることができる。
【0068】
ここに記載する方法は、親ファージを標識し、その後、試験試料中からこれを除去するか、該試験試料内で分離するという上記の例に限定されることはない。
【0069】
図7に示す実施形態のプロセス116、「ファージの検出」は、原試料中に存在する標的細菌に対する代理マーカーとしての子孫ファージに関連する生物マーカーを検出するために、試験試料を分析するためのものである。本実施形態で使用する検出手段は、それぞれ図1および6に図示する実施形態10および90のプロセス28および29に関して記載したものと同じである。先の実施形態と同様に、任意の適切な検出方法または装置を用いることができる。
【0070】
図8は、試料中の標的細菌を測定するための方法の第4実施形態120を示し、該方法120においては、より迅速な結果を達成でき、感度が向上している。実施形態120は、実施形態90および100で教示した方法の組み合わせである。プロセス105、107、108および114は、実施形態100で教示し、図7に図示したもの、すなわち「ファージの添加」、「インキュベート」、随意で「細菌の溶菌」および「標識したファージの検出」とそれぞれ同じである。具体的には、実施形態120は、プロセス105における標識した親ファージとプロセス114における親ファージ除去または分離を組み合わせたものである。
【0071】
プロセス121、「ファージの解離」において、実施形態90のプロセス94に教示され、図6に図示されるようにして、ファージ解離剤122を、試験試料124に添加する。好ましい実施形態において、標識した親ファージを、プロセス121においてファージ解離剤に暴露されないように単に分離するのではなく、プロセス114において試験試料から物理的に除去する。このようにして、試験試料124は、子孫ファージだけを含み、解離された試験試料126は、子孫ファージのみからのカプシドタンパク質128などの生物マーカー物質を含むことになる。このようにして、ファージカプシドタンパク質128の解離に関連する増幅が、プロセス107のファージ増幅と合わさって、全増幅が大幅に増大する。たとえば、ファージ増幅プロセスが、細菌あたり1000の増幅を与え、ファージが、100コピーの特定のカプシドタンパク質を有する場合には、組み合わせ増幅は、試験試料中で感染した標的細菌あたり103×102または105となる。親ファージを除去しない場合には、全増幅は、プロセス107でおこるファージ増幅だけ、すなわち、103になるが、これは、ファージの解離によっておこる増幅が、親ファージと子孫ファージの両方にたいして起こり、第2の増幅プロセスを相殺するためである。
【0072】
図6に示す実施形態120の「ファージ小成分の検出」プロセス130は、好ましくは、前出の実施形態のプロセス28,99および116のいずれかと同一である。
【0073】
図9は、標的細菌を検出し、存在する場合にはそれが1つ以上の抗生物質に耐性をもつかどうかを判定するために本発明の任意の実施形態を用いることができる、方法140を示す。標的細菌を含有する可能性のある試料142を、144で示す第1試料Aと、145で示す第2試料Bの2つに分ける。第1の抗生物質146を試料Bに加え、ここで、試料B中の標的細菌は、第1の抗生物質に耐性が無ければ殺される。試料AおよびBを148および149において分析し、それぞれの生きた標的細菌の存在を検出し、結果Aおよび結果Bを与える。本発明において教示するいずれの方法も、これらの分析のために用いることができる。結果Aが陽性であれば、標的細菌が元の試料に存在することを示す。結果Bも陽性であれば、標的細菌が第1の抗生物質に耐性であることを示す。一方、結果Bが陰性であれば、標的細菌は第1の抗生物質に耐性でないことを示す。ある範囲の抗生物質のいずれかに対する抗生物質耐性を同時にスクリーニングするために、標的細菌に対する分析に先立って、試料Bにすべての関心のある抗生物質を矩泡得る。標的細菌が純粋試料と抗生物質で処理した試料の両方で検出されると、試料中の標的細菌が加えた抗生物質の1つの耐性であることを示す。このプロセスは、細菌の抗生物質または他の除染装置に対する感受性を判定するために用いることもできる。また、細菌除染プロセスが成功したかどうかを調べるために用いることもできる。試料を対照部分と試験部分に分けることにより、細菌学的方法および物質の有効性を調べることができる。当業者であれば、生きた細菌が存在するかどうかを判定することが望ましいほぼすべての場合において、本発明のプロセスを用いることができることを理解するであろう。
【0074】
図12〜図18は、検出プロセス28,99,116および130の別の実施形態を示す。このプロセスは、SILAS表面220を用いる。SILAS表面220は、随意で付加ポリマー224で覆ったコーティング222を有していてもよい半導体または絶縁体ウェハ221からなる。技術上周知のように、SILAS表面は、特定の光波長を反射し、干渉により別のものを減衰するように設計されている。これらの表面は、光と、表面上に形成されたフィルムとの直接相互作用によって可視シグナルを発生する。薄いフィルムは、光学コーティングを含むか、および/または表面への特定の標的分子の結合によって創出される生物フィルムである。光の光路が表面上に蓄積した生物量によって延長されるために、陽性の結果は通常は、金色から紫色への色変化として認められる。フィルムの厚みと屈折率によって、観察される個々の色および陰影が決まる。一般に、入射光と同位相の表面上から反射した光の波長が加わるか、建設的干渉を受けて、視認できるようになる。入射光とは異なる位相の表面から反射する波長は、相殺的干渉によって減衰されて、フィルムから浮上することはない。好ましくは、ウェハ221はケイ素からなり、光学コーティングは窒化ケイ素からなり、付加ポリマーは疎水性ポリマーからなる。図13〜図16は、付加ポリマー224の表面上の実質的に均一に分配された多数の抗体/ファージ/抗体共役物231を示す、単一の大きく拡大された該構造物を利用して、SILAS表面をいかにして、ファージマーカーの存在を示すために用いるかを示した図である。図13において、カプシドタンパク質などのファージマーカーに特異的な第1抗体228を、付加ポリマーに付加して、該ポリマーの表面225を固定化ゾーンにする。試料溶液を表面224に接触させる。指定のファージ生物マーカー230が存在すれば、該マーカーは図14に示すように第1抗体228に付加する。図15において、生物マーカーが存在すれば、第2検出抗体232が表面224に接触されて、生物マーカー230に付加する。第2抗体232を、セイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)またはアルカリホスファターゼなどの反応試薬で標識する。そして、3,3’,5,5’テトラメチルベンジジン(TMB)などの酵素を表面に塗布し(236)、該酵素はHRPと反応して沈殿238を形成し、これが被膜層240(図16)を形成して、表面の色を変える。図16に示すように、表面245上に衝突した光242は、被膜層240が存在するか否かによって、244および246に示すように様々に反射する。このようにして、反応試薬で標識された第2抗体232と、酵素と、バクテリオファージまたはバクテリオファージに関連する生物物質と相互作用する調光剤235に対する光学コーティング222との組み合わせ、すなわちバクテリオファージまたはバクテリオファージに関連する生物物質の存在によって、固定化ゾーン225の色変化がもたらされる。
【0075】
図17および図18は、陰性の結果に対する被膜層240なしのSILAS表面(図17)と、陽性の結果に対する被膜層240ありのSILAS表面(図18)との間の反射率の違いを示したものである。反射率は、陰性結果に対しては橙色から赤色の波長において高くなって金色をもたらし、陽性結果に対しては、深青波長において高くなって紫色をもたらした。SILAS表面は、Thermo Electron Corporation,81Wyman Street,Waltham,MA 02454−9046より入手可能である。SILASプロセスの説明については、インターネット上のThermo Electron Corporationのウェブサイト、http://www.thermo.com.などで入手できる。
【0076】
図19は、微生物を検出するための例示的試験キット254を、試験キットを用いるための典型的な説明書とともに示したものである。図20も参照のこと。試験キット254は好ましくは、緩衝溶液258の容器256と、反応容器260と、保護ケース263に封入された1つ以上の検出要素266(図20)と、該キットを使用するための説明書270と、前出のキット部品を保持するための容器272とを含む。保護ケース263は、細菌が存在しない場合に予想される結果267を示す対照検出要素276を含んでいてもよい。たとえば、検出要素がラテラルフローストリップであれば、対照検出要素は、細菌が全く存在しないバクテリオファージの対照試料が塗布された同じラテラルフローストリップとするとよい。反応容器260は、容器本体267と、容器蓋264とを含む。好ましくは、反応容器本体は、瓶267であり、反応容器蓋は瓶キャップ264である。反応容器260はファージ268を含む。ファージ268は、好ましくは反応容器本体267の内壁269に付加された所定量のファージからなる。キャップ264は、好ましくは、瓶267の上部のネジと螺合する内ネジ262を有するネジ式キャップである。キャップ264は、好ましくは、所定の大きさの液滴を放出するように設計された滴下ヘッドである、ディスペンサ265を含むことが好ましい。本実施形態において、検出要素266はラテラルフローストリップ266であるが、図12〜16に関して説明したように、SILAS表面要素であってもよい。フローストリップ266は、試料パッド274(図20)と、検出ウィンドウ278とを含む。好ましくは、容器272は、試験キット部品の保持と試験終了後の便利な処分容器の2つの役割をはたすプラスチックバッグ272からなる。
【0077】
図20は、試験キット254を使用するための例示的説明書組270を示す。説明書270は、好ましくは、試験手順を示す文字および図を印刷した紙のシートからなる。説明書270は、微生物を検出するための例示的方法280も説明する。方法280は、プロセス281,282,284および286を含む。第1プロセス281において、キャップ264および滴下ヘッド265を外すことにより、反応瓶267をあけ、5ミリリットル(mL)の試料を加える。次に緩衝溶液258を加える。プロセス282において、滴下ヘッド265および瓶267上のキャップ264を戻し、蓋をした反応容器260を好ましくは例えば1分間などの所定時間だけ攪拌した後、好ましくは例えば1時間などの所定の時間量だけ放置することにより溶液をインキュベートする。キャップ264を取り外し、所定量のインキュベート後の試料を試料パッド278上に放出する。そして使用者は例えば3分間などの所定の時間量だけ待つ。プロセス286において、使用者は検出ウィンドウ278を覗いて結果を見る。先に検討したように、試料が試験キットが特定する細菌を含んでいれば、青などの第1の色の第1ライン288が現れる。第1の色のラインが現れない場合には、試験結果は陰性である。随意で、試験が有効であることを示すように、第2の色の第2ライン290が出現することが好ましい。第1ライン288は、図3の試薬ライン46に相当し、第2ライン290は、図3の内部標準ゾーン48に相当する。対照検出要素276(図19)を用いて、第1ライン288を対照ライン277と比較して試験が陽性または陰性のいずれであるかを判定するようにしてもよい。たとえば、第1ライン288が対照ライン277よりも明らかに深い青色であれば、陽性結果であることがわかる。
【0078】
図21は、感染プロセスの所望の特性を強化するように遺伝的に修飾されたバクテリオファージ302を用いた、本発明に従う例示的アッセイ300を示す。ここで「遺伝的に修飾されたバクテリオファージ」とは、DNAが何らかの方法で修飾または操作されたバクテリオファージと、特定の特性を増強するように選択的に繁殖されたバクテリオファージの両方を含む。所望の特性としては、バースト容積、バースト時間、および感染性などがあげられる。バースト容積とは、複製されるファージの量であり、バースト時間とは、ファージが標的細菌を破裂させるまでの時間であり、感染性とは、感染細菌におけるファージの有効性、すなわち、所定量のファージによって感染される利用可能な細菌の百分率である。ファージは、上記所望の特性および/または他の所望の特性の1つ以上を強化するように遺伝的に修飾されていてもよいし。図21に示すように、遺伝的に修飾されたファージ302を用いて、非修飾ファージの場合と同様に微生物の検出を行う。すなわち、ある量、好ましくは検出限界未満の遺伝的に修飾されたファージ302を、宿主微生物304の試料に加え(303)、感染させ、インキュベートし(305)、ファージ子孫を発生させ(306)、これを検出する(307)。親ファージ302は、感染プロセスの特性を強化するように遺伝的に改変されているので、検出は、より迅速に、より感度よく、および/またはより信頼性高くすることができる。
【0079】
図22は、タンパク質などの検出可能な生物マーカーを過剰発現するように遺伝的に修飾されたバクテリオファージ312を用いた、本発明に従う例示的アッセイ310を示したものである。図22に示すように、遺伝的に修飾されたファージ312を用いて、非修飾ファージの場合と同様に微生物の検出を行う。すなわち、ある量、好ましくは検出限界未満の遺伝的に修飾されたファージ312を、宿主微生物314の試料に加え(313)、感染させ、インキュベートし(315)、ファージ子孫を発生させ(316)、これを検出する(317)。親ファージ302は、検出可能な生物マーカーを過剰発現するように遺伝的に改変されているので、この生物マーカーはより容易に検出され、したがって、検出は、より迅速に、より感度よく進み、すなわち、より低いレベルの細菌を検出することができる。あるいは、これにより親ファージの使用量を少なくすることができる。
【0080】
図23は、酵素を発現するように遺伝的に修飾されたバクテリオファージバクテリオファージを用いた、本発明に従う例示的アッセイ331を示したものである。図23に示すように、ある量、好ましくは検出限界未満の遺伝的に修飾されたファージ322を、宿主微生物324の試料に加え(323)、感染させ、インキュベートし(325)、酵素を発生させる(326)。細菌は溶菌してもしなくてもよい。基板328を加え(327)、これが酵素と反応して(329)、酵素生成物330また他の酵素作用を与えるので、これを検出する。この遺伝的修飾により、より容易に実施でき、より迅速および/または高感度で進行できるか、親ファージの使用量を少なくできる代替検出方法を与えることができる。
【0081】
図24は、カプシドタンパク質上に標的を発現するように遺伝的に修飾されたバクテリオファージバクテリオファージを用いた、本発明に従う例示的アッセイを示したものである。図24に示すように、すなわち、ある量、好ましくは検出限界未満の遺伝的に修飾されたファージ332を、宿主微生物334の試料に加え(333)、感染させ、インキュベートし(355)、カプシドタンパク質335の表面上に生物マーカー336を含んだファージ子孫を発生させ(338)る。生物マーカーは、カプシドの外側にあるので、他のマーカーよりも容易に検出しうるか、および/またはファージ解離プロセスなしで検出することができ、検出速度の向上を図れる。
【実施例】
【0082】
(3.実施例)
(A.ラテラルフロー実施例)
以下の実施例において、図1のプロセスにおけるE.coliの検出のためにMS2ファージを用いる。図3および4に示すようなラテラルフローストリップを、MS2ファージに特異的に結合するポリクローナル抗体を用いて調製する。
【0083】
ラテラルフローストリップのMS2検出限界の決定−バクテリオファージMS2(ATCC15597−B1)は、コンフルーエントプレート上の感染E.coli(ATCC15597)細胞から調製した。この調製からの生きたMS2の濃度は、プラークアッセイによって2×107pfu/mLであった。このMS2ストックを、1×107pfu/mLから1×105pfu/mLの範囲を与えるように系列希釈した。MS2は、ラテラルフローストリップを用いて検出した。結果を表2に示す。
【0084】
【表2】
線強度は、試料をラテラルフローストリップに流してから15分後に目視で判定した。線強度は、最大線強度を示す「++」から、線を検出できない「−」までの尺度範囲上でランク付けした。「+/−」は、かろうじて検出可能な線を示す。このアッセイの結果は、上記試験のために調製したラテラルフローストリップ上でのMS2の検出限界が、1×106pfu/mLであることを示している。
【0085】
E.coli検出限界と全試験時間の決定−飽和培養からのE.coli(ATCC15597)を希釈して、1×108,1×107,1×106,1×105,1×104,1×103,および1×102細胞/mLの濃度を有する原試料を作製した。各原試料にMS2を加えて、1×106pfu/mLのMS2濃度を有する試験試料を与えた。試験試料を、37°Cで1時間から5時間インキュベートした。インキュベーション後、試験試料を、親MS2濃度が確立された検出限界未満の1×105pfu/mLとなるように10:1希釈した。次に、ラテラルフローストリップを用いて試験試料を分析した。結果を表3に示す。
【0086】
【表3】
これらの結果は、開示した発明を用いて、4時間後に100個のE.coli細胞を検出できたことを示す。より高いレベルのE.coli(1×105細胞以上)が1時間後に検出可能である。
【0087】
同様に、上述のラテラルフローストリッププロセスは、PRD−1バクテリオファージを用いて豚コレラ菌(salmonella choleraesuis)を、ガンマファージを用いて炭疽菌(bacillus anthracis)を、また、B−30バクテリオファージを用いて第8群ストレプトコッカスを検出するためにもうまく使用できた。
【0088】
(B.SILAS表面実施例)
方法:Thermo Electron Corporation,81 Wyman Street,Waltham,MA 02454−9046において開発された標準的な方法を用いて、コーティングされた表面と、HRP共役抗体を調製した。簡単に説明すると、表面を4ug/mlウサギ抗MS2抗体を含むHEPESバッファ(pH7.8)の溶液中で、48時間コーティングした。コーティング後、ウェハを洗浄し、糖:タンパク質保存剤でオーバーコートし、7mm四方のチップに分離した。
【0089】
共役化は、Nakaeの方法のThermo Electron modificationに従って進めた。過酸化ナトリウムを用いてHRPを活性かして、無水物をタンパク質の炭水化物部分上に導入した。活性化したHRPとウサギ抗MS2抗体を混合し、インキュベートした。共役物は、ホウ化水素ナトリウムを加えて、Sciff塩基を減らすことにより安定化した。
【0090】
与えられたMS2の検出能力を調べるための試験を行った。最初の形式では、同期および連続形式の両方を含んでいた。同期形式は、試料と共役物(共役物希釈物中1:100に希釈)を混合することと、コーティングされたOIAチップの表面に試料を加えることで構成した。インキュベーションに続いて、表面を洗浄して乾燥させた後、酵素基板(TMB)を加えた。1回目および2回目のインキュベーションは、5分間または10分間、平衡に保った。連続アッセイは、試料と共役物を混合せずに、個別にチップに加えたこと以外は、同期形式と同様に行った。インキュベーション工程は、洗浄とブロッティング工程に分割した。連続アッセイは、すべての工程に対して10分間のインキュベーションを用いた。
【0091】
結果:ここに記載する非最適化方法は、明らかに107においてMS2試料を検出することができたが、結果は104に対して混合していた。すべての場合における色変化は、深金橙から深紫であった。同時形式を用いて、弱く、かろうじて視認できる結果が、2回の10分間インキュベーションを用いて非希釈試料において検出された。連続方法を用いて、検出されるシグナルは107においてより強かった。3回の10分間インキュベーションによって、107シグナルは明確になり、104シグナルが視認できるようになったが、非常に弱かった。系列希釈は、107試料を、2倍希釈を用いて生理食塩水中に希釈することによって行った。陽性の結果が、107試料の1:16希釈まで検出された。これは、6.25×105と略等しい。
【0092】
(C.抗生物質耐性)
この実施例においては、Staphylococcus aureus(S.aureus)における抗生物質の最小阻害濃度(MIC)を、MALDI−MSを用いたバクテリオファージ増幅によって迅速に判定した。MICは、S.aureusの特定の株の増殖を阻害する最低の抗生物質濃度である。当該株が、検定濃度の抗生物質に感受性があれば、バクテリオファージ 生物マーカーシグナルは、抗生物質阻害、ひいてはファージ増幅の抑制のために、MALDI−MSによって検出されることはない。一方、ファージ生物マーカーシグナルが検出される場合は、MICが達成されておらず、抗生物質が有効でない点を表すことになる。本研究に対するMICを判定するためには、ストレプトマイシンおよびテトラサイクリンを選択した。
【0093】
S.aureus(ATCC27709,Manassas VA)の24時間培養を、抗生物質(ストレプトマイシンおよびテトラサイクリン)の存在および非存在下、BHIブロスにおいて行った。ファージ187およびS.aureus試料を、MALDIの検出限界未満に希釈した後、ファージを宿主中に感染させ、該宿主中で細胞が破裂するまでバクテリオファージの増幅を行った。次に試料を清浄化し、分析のために濃縮した。乾燥液滴(dried droplet)法を用いて、試料を、ギ酸、アセトニトリルおよびHPLCグレード水の溶液中に混合した15mg/mLフェルラサンマトリックスを有する疎水性標的プレート上に分析のためにプレーティングした。MALDI−TOF−MS PerSeptive Biosystems Voyager−DE STR Biospectrometry Workstation(Framingham,MA)を用いて、線形モードの質量スペクトルを得た。
【0094】
抗生物質中でS.aureusを培養することにより、その抗生物質の濃度が、細菌細胞を破壊するのに十分であるか否かがわかる。細菌細胞が生きていれば、それらは構成物質によって影響を受けておらず、細胞が感染された場合にファージ増幅が起こることを示す。バクテリオファージに対するタンパク質マーカーが、質量スペクトル中に見られるという結果が得られる。一方、生物マーカーが質量スペクトル中に見られない場合には、最小阻害濃度に達しているかこれを超えていることを示す。結論として、細胞が破壊され、したがって、バクテリオファージ増幅が全く起こりえないことになる。
【0095】
MALDI上での分析に先立って、半精製技術を用いて、試料をろ過および濃縮した。機器が塩に不耐性のために、試料を100kDaカットオフを用いてスピンろ過した。ファージ187からの質量スペクトルは、15,245Daの位置に、はっきりと区別できるタンパク質生物マーカーを示した。ファージ187も、超遠心分離および塩化セシウム勾配によって精製し、半精製ろ過技術によって生物マーカーが同定されることを確かめた。検出のMALDI MS限界を、細菌およびファージの両者について確立したところ、それぞれ、106細胞/mLおよび108ファージ/mLであった。シグナルが増幅ファージに由来するものであることを確認するために、実験のあいだ、細菌およびファージの濃度をMALDIの検出限界未満に保った。抗生物質の濃度が低い場合には、ファージからのタンパク質ピークがMALDIスペクトル中に存在し、細菌の増殖とファージの複製が未だ起こっていることが示された。濃度が高くなると、スペクトルはタンパク質ピークを欠き、MICに達したか超えたことが示された。
【0096】
本発明の好ましい実施形態の特徴は、バクテリオファージに曝露されたサンプルで親ファージが破壊、除去、中和または不活性化されないことである。従来の方法においては、細胞外バクテリオファージ、すなわち細菌または他の感染されている微生物の外のバクテリオファージがどこかの時点で破壊、除去、中和または不活性化される。このことが本発明では必要ない。特に、バクテリオファージを殺す薬剤の添加による細胞外バクテリオファージの破壊、中和または不活性化は、行わないことが好ましい。これは、これが方法を不要に複雑にし、薬剤が除去または中和されないと子孫バクテリオファージに影響を及ぼしかねないからである。
【0097】
選択された生物に特異的で、感度が良く、単純で、迅速で、および/または経済的であり、数々の新しい特徴を有する微生物検出方法について記載してきた。本発明は、ヒト臨床診断、獣医診断、食品病原体検出、環境試験および生物戦争検出を含む幅広い用途に用いることができる。図面に示しおよび本明細書中に記載する特定の実施形態は、例示を目的とし、本発明を限定するものと解釈すべきでない。本発明は以下の請求項において記載する。さらに、当業者であれば、本発明の概念から逸脱しない限りで、記載した特定の実施形態の多くの用途および変形を作り出すことができよう。均等な構造およびプロセスを、記載した様々な構造およびプロセスに置き換えてもよく、本発明の方法のサブプロセスは、いくつかの例において、異なる順序で実施してもよく、あるいは様々な異なる材料および要素を用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】図1は、ファージを試料に添加して、検出限界未満の初期濃度を与える本発明の第1の実施形態を示している。
【図2】図2は、ファージ感染、増幅、および細胞溶菌のインキュベーションプロセスを説明する。
【図3】図3A、3B、および3Cは、試験試料中のファージを検出するためのラテラルフロー装置の使用を説明する。
【図4】図4は、図3Aのフロー装置の側断面図である。
【図5】図5は、バクテリオファージの説明図である。
【図6】図6は、ファージを試料に添加して、検出限界未満の初期濃度を与える本発明の第2の実施形態を示しており、ここではファージは、ファージの小成分である生物マーカーが検出されるように解離されている。
【図7】図7は、標識されたファージが試料に添加される第3の実施形態を示す。
【図8】図8は、標識した親ファージを試料に加え、ファージ小成分である生物マーカーが検出されるように子孫ファージが解離されている本発明の第4の実施形態を示す。
【図9】図9は、本発明を用いた抗生物質耐性細菌の検出を示す。
【図10】図10はファージ増幅プロセスを示す。
【図11】図11は、いくつかの可能な生物マーカーを示すバクテリオファージT4に対する質量対強度を示すMALDIスペクトルである。
【図12】図12は、SILAS表面を用いたファージに基づくアッセイプロセスを示す。
【図13】図13は、SILAS表面を用いたファージに基づくアッセイプロセスを示す。
【図14】図14は、SILAS表面を用いたファージに基づくアッセイプロセスを示す。
【図15】図15は、SILAS表面を用いたファージに基づくアッセイプロセスを示す。
【図16】図16は、SILAS表面を用いたファージに基づくアッセイプロセスを示す。
【図17】図17は、図12〜16のアッセイからの陰性の結果を示す。
【図18】図18は、図12〜16のアッセイからの陽性の結果を示す。
【図19】図19は、本発明に従う試験キットを示す。
【図20】図20は、図19の試験キットを用いるための例示的指針を示すとともに、該試験キットの試料を説明する。
【図21】図21は、感染プロセスの所望の特性を強化するように遺伝的に修飾されたバクテリオファージを用いた本発明に従う例示的アッセイを示す。
【図22】図22は、検出可能な生物マーカーを過剰発現するように遺伝的に修飾されたバクテリオファージを用いる本発明に従う例示的アッセイを示す。
【図23】図23は、酵素を発現するように遺伝的に修飾されたバクテリオファージを用いる本発明に従う例示的アッセイを示す。
【図24】図24は、カプシドタンパク質上で標的を発現するように遺伝的に修飾されたバクテリオファージを利用した本発明に従う例示的アッセイを示す。
【技術分野】
【0001】
(発明の背景)
(1.発明の分野)
本発明は、一般には微生物の検出の分野に関し、より詳細にはバクテリオファージを利用した細菌の検出に関する。
【背景技術】
【0002】
(2.問題の記載)
微生物の検出に対する標準的な微生物学的方法は、特異的細菌病原体の有無を調べるための基板に基づくアッセイに依拠している。Robert H.Bordner,John A.WinterおよびPasquale Scarpino,Microbiological Methods For Monitoring The Environment,EPA報告書No.EPA−600/8−78−017,U.S.Environmental Protection Agency,オハイオ州シンシナティ45268番地,1978年12月を参照のこと。これらの技術は、一般に実施し易く、高額な備品または研究設備を必要とせず、高いレベルの選択性を与える。しかしながら、上記方法は遅い。基板に基づいたアッセイの障壁となるのは、最初に標的とする生物の純粋培養物を増殖または培養しなければならず、これには24時間以上を要する場合もあることである。この時間的制約が、微生物の毒性株の存在に対する迅速な応答を与えるための有効性を大幅に限定してしまうことになる。
【0003】
分子生物学技術は、標準的な微生物学的試験に代わるものとして急速に受け入れられるようになってきている。標的とする微生物に対するマトリックスの宿主を評価するために、血清学的方法が広く利用されるようになってきている。David T.KingsburyおよびStanley Falkow,Rapid Detection And Identification of Infectious Agents,Academic Press,Inc.,ニューヨーク、1985年およびG.M.Wyatt,H.A.LeeおよびM.R.A.Morgan,Chapman&Hall,ニューヨーク、1992年を参照のこと。これらの試験は、複合生物混合物中の他の構成要素から、標的とする生物を最初に捕捉し、その後、分離するために、抗体を用いることに焦点を当てている。一旦単離されると、捕捉された有機物は、生物検体の培養を必要としない様々な方法によって濃縮および検出することができる。そのような手法の一つ「免疫磁気分離法(IMS)」と呼ばれる手法は、抗体を球体の微小な磁性または常磁性ビーズに固定化し、これらのビーズを用いて液体媒体から標的とする微生物を捕捉することを含む。これらのビーズは、標的とする生物の回収と濃縮を容易にする磁界の影響下で簡単に操作される。さらに、ビーズはその小さいサイズと形状のために、試料中に均一に分散することができ、ビーズと標的の間の相互作用を加速することになる。これらの好ましい特徴により、アッセイ時間を短縮し、分析手順の能率化の一助となり、より高い試料処理能力と自動化に適したものになる。
【0004】
IMSとともに以前に用いられていた下流検出法としては、ELISA(Kofitsyo S.Cudjoe,Therese Hagtvedt,およびRichard Dainty,“Immunomagnetic Separation of Salmonella From Foods And Their Detection Using Immunomagnetic Particle”,International Journal of Food Microbiology,271(995)11−25)、ドットブロットアッセイ(Eystein Skjerve,Liv Marit Rorvik,およびOrjan Olsvick,“Detection Of Listeria Monocytogenes In Foods By Immunomagnetic Separation”,Applied and Environmental Microbiology,1990年11月,3478〜3481頁)、電気化学発光(HaoYuおよびJohn G.Bruno,“Immunomagnetic−Electrochemiluminescent Detection Of Escherichia coli 0157 and Salmonella typhimurium In Foods and Environmental Water Samples”,Applied and Environmental Microbiology,1996年2月,587〜562頁)、およびフローサイトメトリー(Barry H.Pyle,Susan C.Broadway,およびGordon A.McFeters,“Sensitive Detection of Escherichia coli 0157: H7 In Food and Water By Immunomagnetic Separation And Solid−Phase Laser Cytometry”,Applied and Environmental Microbiology,1999年5月、1966〜1972頁)があげられる。これらの試験は満足な結果を与えるものの、実施に労力がかかり、標的以外の検体との交差反応により、擬陽性結果に対して影響を受けやすい二重反応(yes/no)を与える。全細胞微生物を同定するための別の方法は、マトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)飛行時間型(TOF)質量分析(MS)(Hollandら,1996;van Barr,2000;Madonnaら,2000)を用いる。
【0005】
これらの新しい手法のすべては、従来の微生物方法に比べて迅速に結果を与えることができる。しかしながら、これらは、基板に基づくアッセイで達成される感度レベルを達成することができず、また費用もかかり、典型的には古典的な基板に基づく方法の場合よりも熟練した技術者が必要となる。
【0006】
近年、大きな注目を浴びている他の分子生物学的技術としては、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法がある。試料中の特定の微生物のPCR検出には、試料中の遺伝物質(RNAおよび/またはDNA)の抽出と、関心微生物に特異的な標的遺伝配列の増幅と、増幅された遺伝物質の検出とが含まれる。PCR技術は、検出される遺伝物質の独自性による高い選択性と、標的遺伝物質の実質的増幅による高い感度と、潜在的に迅速な増幅プロセスによる迅速な結果を与える。しかしながら、PCR機器および試薬は相当に高額であり、試験を行うには高度に熟練した技術者が必要である。いまのところ、PCR機器は、期待されている感度または特異性を与えていない。
【0007】
バクテリオファージ感染および/または増幅を用いて、基板に基づく古典的な細菌検出の向上を図ろうとするいくつかの試みがなされている。バクテリオファージは、自らの複製の手段として細菌を用いるように自然界で進化してきたウィルスである。バクテリオファージ(またはファージ)は、このことを、自身を細菌に付着させ、自身の遺伝物質を該細菌に注入して、数十から数千倍のファージ複製を誘発することによって行う。溶菌バクテリオファージと呼ばれるいくつかのバクテリオファージは、宿主細菌を破裂させて、他の細菌を探し出すように、子孫ファージを環境中に放出する。細菌のファージ感染、細菌中でのファージ複製(増幅)、および溶菌後の子孫ファージの放出のための全インキュベーション時間は、ファージ、細菌および環境条件によってはわずかに1時間しかかからない。微生物学者達は、細菌を種レベルまたは株レベルで特異的に標的とする多くのものを含む5,000種を超えるファージを単離およびキャラクタライズしている。米国特許第5,985,596号および第6,461,833号(Wilson)は、そのようなファージに基づくアッセイ法を開示している。この方法は、関心細菌を含む可能性のある試料に溶菌ファージを感染させることを含む。その後、遊離のファージを試料から除去し、標的細菌を溶菌し、子孫ファージを第2の細菌に感染させるが、この第2の細菌は標的細菌よりも短い倍加時間を有している。調製した試料を基板上で培養する。プラークが形成されると、元の試料中に標的細菌が存在することがわかる。この方法では、培養インキュベーション時間が必要であるために、まだなお時間または日数がかかるものの、伝統的な基板に基づいたアッセイのアッセイ時間を短縮することができる。この方法に伴う他の問題点としては、標的細菌よりもより迅速に倍加する細菌にも感染する非特異的ファージが存在するような細菌を検出するためにしか適用できないことである。非特異的ファージの使用は、試験試料中の少なくとも第2の細菌に対する交差反応性の可能性に繋がるものである。したがって、このファージに基づいたプラークアッセイ法は、迅速ではなく、適当な非特異的ファージが利用できる場合にのみ適用可能であり、交差反応の問題を起こしやすく、実験室設備において行わなければならない。
【0008】
他の細菌病原体の検出では、基板に基づくプアラーク検出方法を完全に放棄している。これらの方法の多くは、試料中に標的細菌が存在する場合にのみ発現され、修飾ファージが感染するlux遺伝子で遺伝的に修飾されたバクテリオファージを使用する。米国特許第4,861,709号(Ulitzur)は典型的な例である。標的病原体に特異的に感染するファージは、lux遺伝子を含むように修飾される。修飾されたファージが標的細菌を含んだ試料に添加されると、該ファージは細菌に感染して、細菌中でルシフェラーゼが生産され、発光が起こる。米国特許第5,824,468号(Schererら)は、類似した方法を記載している。ルシフェラーゼ生産遺伝子マーカーに加えて、Schererらは、検出可能のタンパク質または核酸として発現される遺伝子マーカーを記載している。米国特許第5,656,424号(Jurgensenら)は、ルシフェラーゼ(またはβ−ガラクトシダーゼ)レポータファージを利用してミコバクテリアを検出する方法を開示している。該特許では、さらに抗生物質感受性の試験についても記載している。米国特許第6,300,061号(Jacobs Jr.ら)は、細菌感染後にルシフェラーゼを含むいくつかのレポータ分子のうちの1つを生産する、遺伝的に修飾されたファージを用いたミコバクテリア検出のためのさらに別の方法を記載している。米国特許第6,555,312B1号(Nakayama)は、発光性のものではなく蛍光性のタンパク質マーカーを生産する遺伝子を利用する方法を記載している。これらのすべての方法は、感染細菌内でのファージ増幅の潜在的利点を利用したものである。試料中の感染した各標的細菌に対して、子孫ファージが生産されていく間にマーカー遺伝子が何度も発現される。米国特許第6,544,729号(Saylerら)は、さらに別の増幅プロセスを付け加えている。ファージのDNAをlux遺伝子を含むように修飾する。バイオレポータ細胞もlux遺伝子を含むように修飾する。上記遺伝的に修飾されたファージおよびバイオレポータ細胞を試料に加える。ファージが標的細菌に感染すると、標的細菌が誘導されて、ルシフェラーゼだけでなくアシルエンホモセリンラクトンN−(3−オキソヘキサノイル)ホモセリンラクトン(AHL)を生産する。AHLは、バイオレポータ細胞に進路を見いだし、さらなる光およびさらなるAHLの生産を刺激し、これがさらなるバイオレポータ細胞に進路を見いだし、さらなる光が生産されることになる。このようにして、標的細菌のファージ感染が引き金となって、光シグナルが増幅される。原理上は、遺伝的に修飾されたファージを利用するこれらの方法のすべてが、1)選択的に感染するファージを利用するために高い選択性と、2)マーカー遺伝子産物を亭レベルで検出できるために高い感度と、3)シグナルを1または2ファージ感染サイクル以内に検出できることから基板に基づく方法に比べて迅速な結果を可能にする。これらは2つの大きな欠点を有する。第一に、被験病原体ごとに適切なファージを遺伝的に修飾しなければならないために、費用がかかるとともに実施が難しい。第2に、マーカーシグナル(光)を検出するための機器を必要とすることが多く、これが遺伝的に修飾されたファージを利用する試験の費用を引き上げることになる。
【0009】
米国特許第5,888,725号(Sanders)は、試料中の標的細菌への感染のために、修飾されていない高度に特異的な溶菌ファージを利用する方法を記載している。ファージに誘導される溶菌により、細菌細胞から、既知の技術によって検出可能なATPなどの特定のヌクレオチドが放出される。ファージ感染後に試料中ヌクレオチド濃度の上昇が検出されれば、該試料中に標的細菌が存在すると判定できる。米国特許第6,436,661B1号(Adamsら)は、ファージを用いて、試料中の標的細菌に感染して溶菌させて、細胞内酵素を放出し、これが固定化酵素基板と反応して、検出可能なシグナルを発生する方法を記載している。これらの方法は、非修飾ファージを使用するという利点を有するが、ファージ増幅から何の恩恵も引き出していない。検出されたマーカー(ヌクレオチドまたは酵素)の濃度は、試料中の標的細菌の濃度に正比例する。
【0010】
米国特許第5,498,525号(Reesら)は、非修飾ファージと、検出可能なシグナルを増大させるためのファージ増幅とを使用した病原体検出方法を記載している。この方法は、試料に高濃度の溶菌ファージを添加することを請求している。試料はファージが試料中の標的細菌に感染するのに十分な時間インキュベートする。溶菌が起こる前に、試料を処理して、感染細菌内で複製される子孫ファージに影響を及ぼすことなく試料中の遊離ファージを除去、破壊またはいずれにせよ不活性化させる。必要であれば、続いて、前もって試料に添加したあらゆる抗ウィルス剤を中和するための処理を行う。溶菌によって放出された子孫ファージは、子孫ファージの直接アッセイを用いて、または試料中に子孫ファージが存在することを示すシグナルを発生する遺伝的に修飾されたバイオレポータ細菌を用いることによって、検出する。いずれの場合も、測定されたシグナルは、試料中の標的細菌の数ではなく、子孫ファージの数に比例するので、ファージ増幅の結果として強くなる。この方法の主たる欠点は、処理試料中の遊離ファージを破壊、除去または不活性化した後に、子孫ファージが溶菌後に生存できるように殺ウィルス条件の逆転を行わねばならないことである。これらの追加のプロセスが、本方法を用いたアッセイを複雑にし、高額化させる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
基板に基づくアッセイの感度、簡潔性、および/または低コストと、分子生物学診断テストによって与えられる迅速な結果とを組み合わせた、検出方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(発明の要旨)
本発明は、ファージ増幅の原理を用いた、生きた微生物を検出するための方法および装置を提供することにより、上記の問題ならびに先行技術の他の問題を解決する。好ましい実施形態において、標的微生物に特異的なファージを、サンプルに導入する。導入されたファージの量は、好ましくはファージの検出限界未満の量である。標的微生物が存在すれば、ファージは感染し、微生物内で増殖する。好ましくは、微生物は、ファージ増殖の結果として自然に、または、微生物が細菌であれば細菌リゾチームなどの能動的溶菌プロセスのいずれかによって溶菌される。好ましい実施形態において、ファージは、好ましくは、バクテリオファージ解離剤を加えることにより、解離される。別の実施形態において、検出プロセスに先立って、親ファージに対して、子孫ファージから物理的に除去または分離可能なように標識を行い、これにより、潜在的感受性を増大するか、および/または方法の全分析時間を短縮する。次に試料中のファージまたはバクテリオファージに付随する生物物質を検定する。何らかのファージまたは生物物質が検出されると、標的微生物の存在が証明される。ファージまたは生物物質が検出されなければ、標的とする微生物は存在しないことになる。感染、複製、および溶菌からなる全インキュベーションプロセスには数分しかかからない。前述の実施形態のすべては、細菌および他の微生物の抗生物質耐性または感受性を判定するために用いることができる。バクテリオファージまたは生物物質は、ラテラルフローストリップ、SILAS表面、またはMALDI質量分析などを用いた任意の適切な様式で検出することができる。
【0013】
好ましい実施形態において、本発明はサンプル中の微生物の有無を検出する方法を提供し、該方法は、試料を、標的微生物に感染できる親バクテリオファージと組み合わせて、バクテリオファージに曝露されたサンプルを作製する工程と;バクテリオファージに曝露されたサンプルに対して、バクテリオファージが標的微生物に感染して、該標的微生物中で増幅して、子孫バクテリオファージを産生するとともに、アッセイで利用できる解離したバクテリオファージ物質を産生するのに十分な条件を与える工程と;バクテリオファージに曝露されたサンプルの検定を行って、試料中の標的微生物の有無の指標となる、バクテリオファージ物質の有無を判定する工程とを含む。上記の要約において、バクテリオファージ物質とは、解離したバクテリオファージ物質であると同時に、バクテリオファージに関連したものであると理解すべきである。
【0014】
別の好ましい実施形態において、本発明は、サンプル中の微生物の有無の検出方法を提供し、該方法は、(a)試料を、標的微生物に感染できる親バクテリオファージと組み合わせて、バクテリオファージに曝露されたサンプルを作製する工程と;(b)バクテリオファージに曝露されたサンプルに対して、バクテリオファージが標的微生物に感染して、該標的微生物中で増幅して、検出可能な量のバクテリオファージまたは該バクテリオファージに曝露されたサンプル中のバクテリオファージに関連する生物物質のいずれかを産生するのに十分な条件を与える工程と;(c)微生物を能動的に溶菌する工程と、(d)バクテリオファージに曝露されたサンプルの検定を行って、バクテリオファージまたは該バクテリオファージに曝露されたサンプル中のバクテリオファージに関連する生物物質の有無を検出し、標的微生物の有無を判定する工程とを含む。好ましくは、前記能動的に溶菌する工程は、バクテリオファージに曝露されたサンプルに微生物リゾチームを添加することを含む。好ましくは、前記能動的に溶菌する工程は、バクテリオファージに曝露されたサンプルへのクロロホルムの添加、酸によるバクテリオファージに曝露されたサンプルの処理、およびバクテリオファージに曝露されたサンプルの物理的プロセシングからなる群より選択される方法を含む。
【0015】
好ましくは、前記プロセスは、増幅されたファージが基板における色変化を誘導するような装置および方法を用いて実現される。好ましい実施形態において、本発明は、標的微生物を検出するための装置を提供し、該装置は、基板と、基板上の固定化ゾーンであって、バクテリオファージまたはバクテリオファージに関連する生物物質を固定化するための固定化剤を含んだ固定化ゾーンと、バクテリオファージまたはバクテリオファージに関連する生物物質と相互作用するように設計された色調節剤とを含み、これにより、バクテリオファージまたはバクテリオファージに関連する生物物質の存在が、固定化ゾーンの色の変化をもたらすようにしている。好ましくは、固定化ゾーンは抗体を含む。好ましくは色調節剤は着色ビーズを含む。別の実施形態において、色調節剤は、反応剤と、反応すると沈殿剤を形成する酵素とを含む。当該方法の好ましい実施形態において、バクテリオファージに曝露されたサンプルを基板に塗布し、前記バクテリオファージに曝露されたサンプル中にバクテリオファージまたはバクテリオファージに関連する生物物質が存在するとその少なくとも一部の色が変わるようにする。
【0016】
本発明は、サンプル中の標的微生物の有無を判定するためのキットも提供し、該キットは、標的微生物に感染可能なバクテリオファージを収容した第1の容器と、少なくとも一部の色が、バクテリオファージに曝露されたサンプル中にバクテリオファージまたはバクテリオファージに関連する生物物質のいずれかが存在する場合に変化する基板とを含む。好ましくは前記キットは、緩衝溶液を収容した第2の容器をさらに含む。好ましくは、基板は、ラテラルフローストリップまたはSILAS表面からなる。好ましくは、第1の容器は、所定の大きさの液滴を放出するように設計された点滴器(dropper)を含む。
【0017】
本発明は、微生物、好ましくは細菌の試験基板を製造する方法も提供し、該方法は、基板と、バクテリオファージまたはバクテリオファージに関連する生物物質に付着しうる生物物質とを提供する工程と、基板上に生物物質のラインを形成する工程と、基板を前記ラインと略垂直な方向に裁断する工程とを含む。好ましくは、基板は多孔性膜である。好ましくは生物物質は抗体である。
【0018】
本発明の目的は、バクテリオファージに曝露されたサンプル中において親ファージの破壊、除去、中和または不活性化を行わない、微生物を検出するファージ増幅方法を提供することである。
【0019】
本発明の目的は、特異性の高い細菌検出方法を提供することである。
【0020】
本発明のさらなる目的は、広スペクトル細菌検出方法を提供することである。
【0021】
本発明の別の目的は、低濃度の細菌を検出するために用いることができる細菌検出方法を提供することである。
【0022】
本発明のさらに別の目的は、広範囲の濃度にわたって細菌を検出することのできる細菌検出方法を提供することである。
【0023】
本発明のさらなる目的は、大半の既存の検出方法に比べて迅速な結果を与える細菌検出方法を提供することである。
【0024】
本発明のさらに別の目的は、既存の細菌検出方法に比べて低価格な細菌検出方法を提供することである。
【0025】
本発明のさらに別の目的は、実施が容易で、高度に熟練した技術者または複雑な装置を必要としない細菌検出方法を提供することである。
【0026】
本発明のさらなる目的は、野外または看護地点において実施しうる細菌検出方法を提供することである。
【0027】
本発明のさらなる目的は、複数の細菌が試験試料中で検出されるように、迅速に倍加する細菌検出方法を提供することである。
【0028】
本発明のさらに別の目的は、試料中に存在する標的細菌を検出するための代用物として特異的ファージ生物マーカーの検出を用いる細菌検出方法を提供することである。
【0029】
本発明のさらに別の目的は、試料中の前記標的細菌の存在を特異的に検出する手段として、標的細菌の高度に特異的なファージ感染を利用する細菌検出方法を提供することである。
【0030】
本発明のさらなる目的は、適切なファージが存在する任意の細菌を検出するために、使用しうる細菌検出方法を提供することである。
【0031】
本発明のさらなる目的は、遺伝的に修飾されていないファージを利用する細菌検出方法を提供することである。
【0032】
本発明のさらに別の目的は、遺伝的に修飾されたバクテリオファージを利用する微生物検出方法を提供することである。たとえば、バクテリオファージは、感染プロセスの所望の特性を強化するように、検出可能な生物マーカーを過剰発現させるように、酵素を発現するように、またはカプシドタンパク質上で標的を発現するように、遺伝的に修飾することができる。
【0033】
本発明のさらなる目的は、高い感度を達成する手段としてファージ増幅を使用する細菌検出方法を提供することである。
【0034】
本発明のさらなる目的は、ファージのカプシド鞘などのファージに関連する特異的生物マーカーを検出することにより、ファージを検出する細菌検出方法を提供することである。
【0035】
本発明のさらに別の目的は、ファージ生物マーカーが、ファージからの別個の解離タンパク質である細菌検出方法を提供することである。
【0036】
本発明のさらなる目的は、ファージ生物マーカーがファージ核酸である細菌検出方法を提供することである。
【0037】
本発明のさらなる目的は、検出プロセスの前に、ファージを解離させることからなる第2の増幅プロセスを利用する細菌検出方法を提供することである。
【0038】
本発明の別の目的は、ファージ増幅によって生産される子孫ファージとは区別できる標識された親ファージを利用する細菌検出方法を提供することである。
【0039】
本発明のさらなる目的は、抗体−ファージ複合体を生産するファージ生物マーカーに結合する抗体を使用する細菌検出方法を提供することである。
【0040】
本発明のさらに別の目的は、抗体−ファージ複合体を検出するための手段としての特異的抗体−抗原結合事象を検出するために既存の免疫学的検定技術を使用し、これにより、試料中の標的細菌の存在を検出する細菌検出方法を提供することである。
【0041】
本発明のさらに別の目的は、ファージを検出するためにラテラルフローストリップを利用し、これにより、試料中の標的細菌の存在を検出する細菌検出方法を提供することである。
【0042】
本発明のさらに別の目的は、細菌の抗生物質耐性株を検出する方法を提供することである。
【0043】
上記の要約は、本発明を理解しやくするために、本発明の目的、特徴および利点のいくつかの例を説明することを目的としている。本発明のいくつかの実施形態において、上記目的のただ1つだけが実現される場合もあるし、他の例では、上記目的の複数が実現される場合もある。しかしながら、上記の目的はすべてが包括的ではなく例示を目的としており、ある特定の実施形態においては上記の目的のいずれも実現されていない場合もある。たとえば、本発明の方法および装置は、細菌以外の微生物、例えば、真菌、マイコプラズマ、原生動物、および他の微生物を検出するために用いることもできる。しがたって、上記目的における用語「細菌」をより広義の用語「微生物」と置き換えると、本発明に有効な目的が表現される。本発明の数多くの他の特徴、目的、利点が、以下の説明を添付の図面とともに読むことにより、明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
(好ましい実施形態の詳細な説明)
(1.序論)
本発明の方法は、試料中の細菌などの標的微生物(微生物)の存在を検出するために、バクテリオファージ、あるいは単にファージを使用することに依存する。本開示において、バクテリオファージおよびファージという用語は、バクテリオファージ、ファージ、ミコバクテリオファージ(TBおよびパラTBに対するものなど)、ミコファージ(真菌に対するものなど)、ミコプラズマファージまたはミコプラズマのファージ、ならびに、生きた細菌、真菌、ミコプラズマ、原生生物および他の微生物に侵入して、これらを使って自身を複製することのできるウィルスのことをいう他の任意の用語を含んでいる。ここで、「微視的」とは、最大寸法が1ミリメートル以下のものを意味する。バクテリオファージは、細菌を自身の複製の手段として使用するように自然界において進化してきたウィルスである。ファージはこのことを、自身を細菌に付着し、自身のDNAを細菌に注入し、該細菌に該ファージを何百倍、または何千倍にも複製させるように誘導することによって行う。溶菌バクテリオファージと呼ばれるバクテリオファージでは、宿主細菌を破裂させ、他の細菌に進路を見いだすために子孫ファージを環境中に放出する。細菌の溶菌のための、細菌のファージ感染、ファージ増殖または細菌中における増殖のため全インキュベーション時間は、いずれの場合でも、当該ファージおよび細菌ならびに環境条件によって数十分から数時間である。
【0045】
開示した検出方法は、現在知られているどの微生物検出方法よりも優れた特異性、感度、簡便性、速度、および/または費用を併せて提供する。ここで教示する方法は、試料中の1つ以上の標的細菌の存在を間接的に検出するために、バクテリオファージを使用することに依存している。典型的なバクテリオファージ70、この場合MS2−E.coliを図5に示す。構造的には、バクテリオファージ70は、ウィルス核酸74、すなわちDNAおよび/またはRNAを封入する、ヘッドと呼ばれることもあるタンパク質殻またはカプシド72を含む。バクテリオファージは、内部タンパク質75、ネック76、尾部鞘77、尾部繊維78、および端板79、およびピン80をさらに含んでいてももよい。カプシド72は、1つ以上のタンパク質の反復コピーから構成される。図10を参照して、ファージ150が細菌152に感染すると、該ファージは自身が細菌壁または膜151の適当部位に付着し、その核酸154を細菌中に注入して、ファージが数十から数千コピーに複製されるように誘導する。このプロセスを図10に概略的に示す。DNAは初期mRNAS155および初期タンパク質156に展開し、そのうちのいくつかがライン157に沿って膜成分となり、他のものが宿主の染色体159からの細菌ヌクレアーゼを利用してライン164に沿ってDNA前駆体になる。他のものは方向170に沿って移動し、ライン166に沿ったDNAを取り込むヘッド前駆体になる。膜成分は、経路160に沿って発達して、鞘、端板、およびピンを形成する。他のタンパク質は経路172に沿って発達し、尾部繊維を形成する。ヘッドは形成されると、膜151から遊離し、経路174に沿った尾部鞘を接合し、尾部鞘とヘッドが176において尾部繊維と接合して、バクテリオファージ70を形成する。溶菌バクテリオファージとよばれるある種のバクテリオファージは、180で示される宿主細菌を破壊し、他の細菌への進路を見いだすために、子孫ファージを環境中に放出する。本願で開示する方法においては溶菌ファージを典型的に使用する。しかしながら、特に、子孫ファージが宿主細菌に感染した後に子孫ファージまたは子孫ファージの一部を放出するように非溶菌ファージまたは細菌を活性化することができる場合には、非溶菌ファージを用いることもできる。
【0046】
細菌の溶菌のための、細菌のファージ感染、ファージ増殖または細菌中における増殖のための合計周期時間は、いずれの場合でも、当該ファージおよび細菌ならびに環境条件によって数十分から数時間である。一例として、MS2バクテリオファージは、大腸菌(Escherichia coli)の株に感染し、標的細胞への付着後40分以内に、自身のコピーを10,000から20,000個産生することができる。MS2ファージのカプシドは、180コピーの同一のタンパク質を含む。このことは、MS2に感染した各E.coliに対して、1.8×106個以上の個別のカプシドタンパク質が産生されることを意味する。感染事象毎に多数のファージ、ならびにさらに多くのカプシドタンパク質が生産されるファージ感染のプロセスは、ファージ増幅と呼ばれる。
【0047】
微生物学者達は、たいていのヒト細菌病原体に対する特異的ファージを含む、何千ものファージ種を単離し、キャラクタライズしてきた。バクテリオファージ種には、細菌ファミリーに感染するもの、個々の種に感染するもの、または特定の株に感染するものがある。表1は、そのようなファージのいくつかと、該ファージが感染する細菌をあげている。
【0048】
【表1−1】
【0049】
【表1−2】
本発明は、高度に特異的なファージ−細菌感染、ファージ増幅、および短いインキュベーション時間などのバクテリオファージの既存の特性を利用しており、標的細菌に高度に特異的で、非常に感度が高く、迅速で、実施が容易であり、および/または相当に経済的である細菌検出方法を編み出している。さらに、他のファージに基づく細菌検出方法とは違って、本願に記載する好ましい方法は、バイオレポータまたはインデューサ遺伝子を含むような遺伝的修飾を受けていないファージを利用している。このことにより、本発明を使用した特異的細菌試験の開発に伴う時間および費用が大幅に削減される。
【0050】
(2.詳細な説明)
図1は、試料中の特定の細菌を検出するための方法の第1の実施形態10を示す。第1の「ファージの添加」プロセス12において、標的細菌14に感染することになる親バクテリオファージ18を、細菌14の原試料11と混合する。好ましい実施形態において、好ましくは懸濁液または溶液16中のバクテリオファージを、所定の濃度で細菌14の原試料11に添加する。ここで、「原試料」という用語は、ファージを添加する前の試料のことをいう。原試料/ファージ混合物は、ここでは「試験試料24」または「バクテリオファージに曝露されたサンプル24」とよぶ。方法の目的が、種または株レベルで特定の細菌を検出することであれば、これに応じた特定のファージを該方法において用いる。たとえば、Y.Pestis.を特異的に検出するためには、φA1122ファージを用いることができる。これに対し、試料中のより広範な細菌を検出するためには、より特異性の低いファージを用いるとよい。ファージMS2は、Enterococciだけでなく多くの異なるE.coli種に感染するので、水中の糞便汚染を検出するのに非常に適している。
【0051】
複数の細菌を検出するためには、各標的細菌に対して1つの種のバクテリオファージを原試料に加え、すべての標的細菌と関連するファージを含む1つの試料を与える。簡略化のために、本方法については、1つの細菌の検出に適用するものとして、下記に記述する。当業者であれば、各標的細菌を検出するために、唯一の細菌/ファージ組み合わせを用いた1つの試験試料と、方法の各プロセスをどのようにして同期して実施するかが明らかであろう。
【0052】
標的細菌14を含んだ原試料11は、一般には液体であるが、固体または粉体であることもある。原試料は、多くの異なる有機および無機化合物を含んだ混合物または懸濁液であることもある。原試料は、試験用に調製するために、様々な方法で前処理されていてもよい。たとえば、原試料は、不要な成分を除去するために、または標的細菌を濃縮するために精製またはろ過されていてもよい。また、標的細菌のインキュベーションをもたらすように、または標的細菌をより見やすい状態にするような培地中で培養したものであってもよい。原試料は、相対的に未処理の状態、例えば、唾液、血液、または水試料のようなものであってもよい。当業者にとっては、前試験試料調製物が広範は適切なプロセスの任意のものを含んでいてもよく、原試料が多種多様な形態をとってよいことが明らかであろう。
【0053】
ファージ自体を様々な形態の試料に添加してもよい。乾燥状態で加えてもよい。ファージは、液体試薬混合物中に混合または懸濁してもよい。ファージは、原試料を添加するバイアル中で懸濁してもよい。ファージは、任意の他の適切な形態をとってもよい。原試料に添加するファージを、ここでは「親ファージ」と呼ぶ。
【0054】
図1に戻って、試験試料24を好ましくは所定時間インキュベートする。本方法に対しては、試験試料は、好ましくは、インキュベーションプロセス前に、標的細菌のファージ感染を助けるような条件におくべきである。このことは、当業者によって知られる様々な方法によって達成できる。たとえば、親ファージは、原試料に添加されると感染を助ける試験試料をもたらす試薬中に混合してもよい。試験試料は、ファージ感染を助ける条件を確立するための様々な方法によって調製してもよい。
【0055】
「インキュベート」プロセス20を図2に示す。親ファージ18は、自身を標的の細胞壁に付着させることにより、標的細菌14に感染し(32)、ウィルス核酸を注入して、感染細菌23を作り出す。そして、図10に示すような子孫ファージの複製34が、宿主細菌内で進む。溶菌ファージを用いる場合には、宿主は溶菌プロセス36において破裂し、子孫ファージ37を試験試料中に放出し、ここで他の標的細菌に感染することもある。このインキュベーションプロセスは、1回以上の感染、増幅、および溶菌のサイクルのあいだに進行させてもよい。原試料中に標的細菌が存在すると想定すると、試験試料は、インキュベーションプロセスの間に感染された個々の細菌に対して多数の子孫ファージを含むであろう。
【0056】
「インキュベート」プロセスの最後で、感染標的細菌のうちのいくらかが溶菌されていないかもしれない。そうした状況において、多くのまたはすべての子孫ファージがまだ宿主細菌内に保持されており、これは直接検出することができないかもしれない。この潜在的問題に取り組むために、21において、試験試料に特定の微生物に対する微生物リゾチーム22を加えて、プロセス25において、試験試料24中に存在する細菌などの本質的にすべての個々の微生物の細胞壁を破壊して、そこに含まれる本質的にすべての子孫ファージを放出させることにより、図1で示すようにオプションのプロセス21および25「細菌の溶菌」を行う。微生物の、またはより詳細には細菌のリゾチームを使用することで、本願に教示する方法を実施するのに必要な時間を短縮することができる。これは、標的細菌のすべてが自ら溶菌するのを待つ必要がなくなるからである。ゆっくり溶菌するファージに対しては、このことは、実質的な違いをもたらしうる。本発明の目的のために、「リゾチーム」という用語は、微生物宿主の破壊を誘導して、試料中への子孫ファージを放出させる任意の材料、装置、またはプロセスのことをいい、限定はされないが、従来のリゾチームやクロロホルムなどの化学的手段、または酸処理または物理的プロセス、たとえば、浸透圧の付加などが含まれる。
【0057】
図1に示す実施形態のプロセス28「ファージの検出」は、ファージに関連する生物マーカーを検出することを含む。この生物マーカーが検出されると、これは、原試料中に標的細菌が存在することを間接的に示すものである。これから記載する方法の実施形態に対して、原試料に添加される親ファージと子孫ファージとは、インキュベーションプロセスのあいだに産生されたならば、同一である。このことは、試験試料中に標的細菌が存在しないとしても、関連するバックグラウンドシグナルを上昇させうるファージが検出プロセス28のあいだに存在することを意味している。この問題を解決するための方法は、試験試料中の親ファージの初期濃度を、それらが与えるバックグラウンドシグナルが検出プロセス28において検出不能となるように制御することである。したがって、ファージ増幅が起こっていないなど、試験試料に標的細菌が存在しない場合には、試験の最後にシグナルは検出されない。バックグラウンドシグナルを親プラス子孫ファージからのシグナル上昇と区別できる場合に限り、より高濃度の親ファージを用いることもできる。プロセス28において得られるシグナルがバックグラウンドシグナルあら区別できるような最低の細菌濃度が、本方法の感度限界を表す。これを行う簡単な方法は、細菌が存在しないことがわかっている対照試料に対して試験を行うことである。これにより、試験試料からの対応する結果と比較できる対照結果を作製することができる。試験試料からの試験結果が、はっきりと対照試料よりも高いシグナルレベルを示す場合には、標的細菌が存在することがわかる。
【0058】
本発明の目的のために、ファージに関連する任意の生物マーカーを、原試料中の標的細菌の間接的検出手段として用いることができる。これには、図5および図10に示すファージの任意の部分が含まれる。たとえば、図11は、バクテリオファージT4に対して、質量に対する強度百分率を表したMALDIスペクトル200を示している。スペクトル200は、溶菌ホリンタンパク質に対する顕著なピーク201と、ヘッドタンパク質に対する顕著なピーク204と、hoc外部カプシドタンパク質に対する顕著なピーク206と、フィブリチンに対する顕著なピーク208を示している。これらの大きなピークは、これらのファージ部分のいずれも、後で検討するMALDI検出法における生物マーカーとして使用可能であることを示している。非常に有用なファージ生物マーカーは、ファージカプシド72である。このカプシドは、たいていは、100コピーを超える多くのコピーの1つ以上のタンパク質を含んでいる。したがって、検出目的で使用できる複数の同一の結合部位が個々のファージ粒子のそれぞれの周囲に存在する。これにより、試験試料中に含まれる各ファージ粒子から得られる潜在的シグナルレベルが上昇する。溶菌した標的細菌に関連する生物マーカーを直接検出することに対する、ファージまたはファージ関連生物マーカーを検出することの利点は、感度が劇的に上昇することである。インキュベートされた試験試料中のファージ濃度は、ファージ増幅のために、標的細菌原試料中の標的細菌の濃度よりもはるかに高くなっている。ファージ増幅は、原試料中に存在する個々の細菌のそれぞれに関連するシグナルを、何桁倍、たとえば、10倍に増強することができる。したがって、ファージ増幅プロセスを用いない他の方法よりも低い濃度の細菌を、この方法では検出することができる。
【0059】
ファージに関連する何らかの生物マーカーを検出するどの検出方法または装置も、この方法28には十分である。好ましい方法は、ELISA、フローサイトメトリー、ウェスタンブロット、アプタマーに基づくアッセイ、ラジオイムノアッセイ、免疫蛍光法、およびラテラルフローイムノクロマトグラフィー(LFI)を含む、検出可能なシグナルを発生するために抗体結合事象を利用する免疫検定法である。他の方法としては、本明細書ではMALDIと呼ぶ、マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析(MALDI−TOF−MS)、ならびに、検出指標として色が変化するSILAS表面を用いることがあげられる。1つの免疫検定であるLFIについては、図3、5および19と関連して以下に詳細に検討し、SILAS色指標法については、図12〜18と関連して以下に詳細に検討し、MALDI法については、図11および図24〜27に関連して以下に詳細に検討する。
【0060】
図3は、試験試料中のファージの存在を検出するためのLFIを、ラテラルフローストリップ40を用いてどのように具現できるかを説明するものである。ラテラルフローストリップ40の断面図を図4に示す。ラテラルフローストリップ40は好ましくは、試料塗布パッド41と、共役物パッド43と、検出ライン46および内部標準ライン48が形成された基板64と、吸収パッド52とを含み、これらのすべては、好ましくはプラスチックである裏張り62上に搭載されている。基板64は好ましくは多孔性の網または膜である。これは、ライン43、46、および随意でライン48を前記基板の長いシート上に形成し、基板をこれらのラインと垂直な方向に裁断して、複数の基板64を形成することによって作製する。接合物パッド43は、それぞれが、ここでは第1抗体−ビーズ共役物を形成する第1の抗体とよぶ、第1の抗体44に接合されたカラービーズ45を含んでいる。第1の抗体44は、試験試料中のファージ51に選択的に結合する。検出ライン46および対照ライン48は、いずれも試薬ラインであり、それぞれが固定化ゾーンを形成している。すなわち、バクテリオファージまたは他の生物マーカーと適切な様式で相互作用する材料を含んでいる。好ましい実施形態において、相互作用は、バクテリオファージまたは他の生物マーカーを固定化するようなものである。検出ライン46は、固定化された第2の抗体47を含み、抗体ライン46が、ストリップに沿った流れ方向に垂直となり、流れ中のファージの有意な部分を捕捉するのに十分な密度を有している。第2の抗体47もまた、ファージ51に特異的に結合する。第1の抗体44および第2の抗体47は、同一であってもなくてもよい。いずれかがポリクローナルまたはモノクローナル抗体であってもよい。随意で、ストリップ40は、第3の抗体49を含む第2の試薬ライン48を含んでいてもよい。第3の抗体49は、第1および第2の抗体の1つ以上と同一であってもなくてもよい。第2の試薬ライン48は、アッセイが適切に機能するかどうかを調べるための内部標準ゾーンとして機能させてもよい。
【0061】
1滴以上の試験試料50を、図3Aに示すように試料パッドに加える。試験試料50は好ましくは、元の原試料に標的が存在する場合には、親ファージならびに子孫ファージを含んでいる。試験試料は、ストリップの対向端部にある吸収パッド52に向けてラテラルフローストリップ40に沿って流れる。ファージ粒子は共役物パッドに沿って膜に向けて流れる際に、図3Bに示すように、ファージ−ビーズ複合体54を形成する第1の抗体−ビーズ共役物42の1つ以上を取り込む。ファージ−ビーズ複合体は第2抗体47の列46上を移動する際に、図3Cに示すように、固定化され、濃縮された第1の抗体−ビーズ−ファージ−第2の抗体複合体58を形成する。十分なファージ−ビーズ複合体が固定化された第2抗体の列46に結合すると、着色されたライン59が裸眼で視認できるようになる。可視ライン59は、標的細菌が原試料中に存在したことを示す。ラインが形成されない場合には、標的細菌は原試料中に存在しなかったか、あるいはラテラルフローストリップ40で検出できないほど低濃度でしか存在しなかったことになる。この試験の信頼性を得るために、原試料に加える親ファージの濃度は、親ファージ単独では、ラテラルフローストリップ上の可視ラインを形成できるほどの量が存在しないように、十分に低くすべきである。抗体−ビーズ共役物45は、バクテリオファージまたはバクテリオファージに関連する生物物質に相互作用するように設計された調色剤である。抗体−ビーズ共役物45は、固定化ゾーン46に固定化されると、固定化ゾーンに色の変化をもたらす。
【0062】
図6は、本発明に従う標的細菌を検出するための方法の第2の実施形態90を示し、該方法90は感度が向上している。「ファージの添加」、「インキュベート」および「細菌の溶菌」からなるプロセス12,20、およびオプションのプロセス21は、図1に関して記載した対応するプロセスと同じである。オプションプロセス21の後、原試料中に標的細菌に存在する場合には、試験試料はファージ粒子を豊富に含んでいる。
【0063】
図6に示すように、第2実施形態90のプロセス94、「ファージの解離」は、ファージ解離剤92を試験試料に添加することを含む。ファージ解離剤92は、ファージ粒子を、個々のカプシドタンパク質およびウィルス核酸を含むそれらの構成成分97に分解する。ファージ解離剤の例としては、酸処理、尿素、変性剤および酵素があげられる。任意の適切なファージ解離剤を用いることができる。このプロセスにおいて、解離されたバクテリオファージ物質97が生産される。
【0064】
図6に示す実施形態のプロセス99「ファージ小成分の検出」は、生物マーカー、すなわち、解離したファージ小成分に関連する解離されたバクテリオファージ物質97を検出することを含む。上記の議論に関して、バクテリオファージ物質は、解離したバクテリオファージ物質と同時に、バクテリオファージに結合したものの両方でありうることを理解すべきである。すなわち、「解離したバクテリオファージ物質」という用語は、もはや全バクテリオファージの一部ではないものをさし、「バクテリオファージに関連した」という用語は、該物質はある時点ではバクテリオファージの一部であったか、バクテリオファージ複製の過程で生産されたものである。プロセス94においてファージ解離剤を使用することによって、プロセス99において検出可能な豊富な個々のカプシドタンパク質97が存在する。第1実施形態と同様に、これらは、確立された抗原−抗体に基づく免疫検定技術を用いて検出することができる。さらに、露出したウィルス遺伝物質は、PCR、遺伝的プローブバイオセンサー、光アプタマー、分子ビーコン、またはゲル電気泳動を含む他の確立された技術を用いて検出することができる。任意の適切なファージ生物マーカー検出方法または装置を用いることができる。
【0065】
試験試料の親ファージの濃度をバックグラウンド検出限界未満に保持することにより、原試料にファージを加え、インキュベートし、ファージ生物マーカーを検出するだけの簡単な方法にすることができる。しかしながら、潜在的な欠点もある。潜在的に低濃度の親ファージは、試験試料における標的細菌に対する親ファージの比が1未満になる条件、すなわち、感染多重度(MOI)が低い条件を生み出してしまう。試験試料中のすべての標的細菌が、高確率で感染されるようにするために、プロセス20におけるインキュベーション時間はたとえば、感染および溶菌のサイクル2回以上と同等の時間など長くすることができる。このように、試験の簡潔性を潜在的に長い試験時間によって埋め合わせる。この潜在的限界は、親ファージに関連するシグナルを排除できるか、より高濃度の親ファージを利用できる(MOIが5を超える)ように著しく減少させることができれば、克服することができる。上記の限界は、生物マーカーとしてカプシドタンパク質を使用するなどして、子孫ファージによるシグナルを増強するか、遺伝的に増強されたファージを用いることによっても、克服することができ、そのいずれも本願で詳細に検討する。
【0066】
図7は、試料中の標的細菌を検出するための本発明の第3実施形態100を示し、この実施形態ではより迅速な結果を達成可能である。本願の本実施形態において、原試料と混合する親ファージ102を標識して、タグ印104で示して、試験試料からあとで除去することができ、バクテリオファージを検出する試験試料の部分から単離できるようにするか、さもなくば最初にタグを外した子孫ファージが検出されるシグナルに寄与するように分析に先立って中和する。たとえば、1実施形態において、ビオチン化ファージを親ファージとして使用する。ビオチン化バクテリオファージは、ストレプトアビジンに強力に引きつけられる。この強力な親和性を用いて、以下に検討するように、試験試料から標識した親ファージを後に分離した。標識した親ファージは、たとえば、プローブまたは網目構造物を親バクテリオファージでコーティングするか、またはファージを基板に科学的に結合することにより、物理的基板に付着させることもできる。標識したバクテリオファージは、試験試料から基板を除去することにより、あるいは、基板より分離された試験試料中の部分中のバクテリオファージを検出することにより、子孫バクテリオファージから分離することができる。
【0067】
本実施形態のプロセス105,107および108,「ファージの添加」、「インキュベート」および「細菌の溶菌」は、それぞれ、プロセス105において原試料に加える親ファージ103の溶液が、標識されたファージ102を含み、したがって、バクテリオファージに曝露されたサンプル109が、細菌外の標識されたファージ102と、細菌内の、非標識子孫ファージ106との両方を含むということ以外は、図1および6のプロセス12,20および21と同じである。したがって、溶菌溶液112は、標識ファージと非標識ファージの両方を含むことになる。プロセス114、「標識したファージの抽出」において、標識された親ファージは、該ファージを試験試料から抽出または実質的に除去する、もしくは親ファージを子孫ファージから単離して、それらが分析されるシグナルに寄与しないようにすることにより、子孫バクテリオファージから分離される。プロセス105において原試料に添加される際に標識された親ファージが物理的基板に付加されている場合には、基板および付随する親ファージは、プロセス114において試験試料から物理的に分離することが好ましい。物理的基板に付加されていないビオチン化ファージもまた、試験試料から迅速に分離または除去することができる。一実施形態において、ストレプトアビジンでコートした磁気ビーズを試験試料に添加し、ここで、ビオチン化親ファージを急速に回収するようにした。その後、磁気を用いて、磁気ビーズを結合した親ファージとともに試験試料から分離および除去する。下記図28に関連する磁気抽出の検討を参照のこと。同様に、別の実施形態において、ストレプトアビジンでコートした網を試験試料を通して攪拌し、試験試料からビオチン化親ファージの実質的に全部を回収する。網以外の他の物理的基板またはプローブを用いてもよい。別の実施形態において、ラテラルフロー装置を用いた。抗体ストリップ46の前の網基板64の部分66(図4)にストレプトアビジンを含浸させ、網の遷移をコーティングする。ストレプトアビジンでコートした網を回収し、抗体ストリップ46に到達する前に親ファージを部分66に結合させることにより標識した親ファージを固定化する。子孫ファージは、ストレプトアビジンに結合せず、したがって、ストリップを自由に流下し、視覚的に検出された。同様に、試験試料を滴下する試料パッド41のように、ラテラルフロー装置の他の部分もストレプトアビジンでコーティングまたは含浸させることができる。
【0068】
ここに記載する方法は、親ファージを標識し、その後、試験試料中からこれを除去するか、該試験試料内で分離するという上記の例に限定されることはない。
【0069】
図7に示す実施形態のプロセス116、「ファージの検出」は、原試料中に存在する標的細菌に対する代理マーカーとしての子孫ファージに関連する生物マーカーを検出するために、試験試料を分析するためのものである。本実施形態で使用する検出手段は、それぞれ図1および6に図示する実施形態10および90のプロセス28および29に関して記載したものと同じである。先の実施形態と同様に、任意の適切な検出方法または装置を用いることができる。
【0070】
図8は、試料中の標的細菌を測定するための方法の第4実施形態120を示し、該方法120においては、より迅速な結果を達成でき、感度が向上している。実施形態120は、実施形態90および100で教示した方法の組み合わせである。プロセス105、107、108および114は、実施形態100で教示し、図7に図示したもの、すなわち「ファージの添加」、「インキュベート」、随意で「細菌の溶菌」および「標識したファージの検出」とそれぞれ同じである。具体的には、実施形態120は、プロセス105における標識した親ファージとプロセス114における親ファージ除去または分離を組み合わせたものである。
【0071】
プロセス121、「ファージの解離」において、実施形態90のプロセス94に教示され、図6に図示されるようにして、ファージ解離剤122を、試験試料124に添加する。好ましい実施形態において、標識した親ファージを、プロセス121においてファージ解離剤に暴露されないように単に分離するのではなく、プロセス114において試験試料から物理的に除去する。このようにして、試験試料124は、子孫ファージだけを含み、解離された試験試料126は、子孫ファージのみからのカプシドタンパク質128などの生物マーカー物質を含むことになる。このようにして、ファージカプシドタンパク質128の解離に関連する増幅が、プロセス107のファージ増幅と合わさって、全増幅が大幅に増大する。たとえば、ファージ増幅プロセスが、細菌あたり1000の増幅を与え、ファージが、100コピーの特定のカプシドタンパク質を有する場合には、組み合わせ増幅は、試験試料中で感染した標的細菌あたり103×102または105となる。親ファージを除去しない場合には、全増幅は、プロセス107でおこるファージ増幅だけ、すなわち、103になるが、これは、ファージの解離によっておこる増幅が、親ファージと子孫ファージの両方にたいして起こり、第2の増幅プロセスを相殺するためである。
【0072】
図6に示す実施形態120の「ファージ小成分の検出」プロセス130は、好ましくは、前出の実施形態のプロセス28,99および116のいずれかと同一である。
【0073】
図9は、標的細菌を検出し、存在する場合にはそれが1つ以上の抗生物質に耐性をもつかどうかを判定するために本発明の任意の実施形態を用いることができる、方法140を示す。標的細菌を含有する可能性のある試料142を、144で示す第1試料Aと、145で示す第2試料Bの2つに分ける。第1の抗生物質146を試料Bに加え、ここで、試料B中の標的細菌は、第1の抗生物質に耐性が無ければ殺される。試料AおよびBを148および149において分析し、それぞれの生きた標的細菌の存在を検出し、結果Aおよび結果Bを与える。本発明において教示するいずれの方法も、これらの分析のために用いることができる。結果Aが陽性であれば、標的細菌が元の試料に存在することを示す。結果Bも陽性であれば、標的細菌が第1の抗生物質に耐性であることを示す。一方、結果Bが陰性であれば、標的細菌は第1の抗生物質に耐性でないことを示す。ある範囲の抗生物質のいずれかに対する抗生物質耐性を同時にスクリーニングするために、標的細菌に対する分析に先立って、試料Bにすべての関心のある抗生物質を矩泡得る。標的細菌が純粋試料と抗生物質で処理した試料の両方で検出されると、試料中の標的細菌が加えた抗生物質の1つの耐性であることを示す。このプロセスは、細菌の抗生物質または他の除染装置に対する感受性を判定するために用いることもできる。また、細菌除染プロセスが成功したかどうかを調べるために用いることもできる。試料を対照部分と試験部分に分けることにより、細菌学的方法および物質の有効性を調べることができる。当業者であれば、生きた細菌が存在するかどうかを判定することが望ましいほぼすべての場合において、本発明のプロセスを用いることができることを理解するであろう。
【0074】
図12〜図18は、検出プロセス28,99,116および130の別の実施形態を示す。このプロセスは、SILAS表面220を用いる。SILAS表面220は、随意で付加ポリマー224で覆ったコーティング222を有していてもよい半導体または絶縁体ウェハ221からなる。技術上周知のように、SILAS表面は、特定の光波長を反射し、干渉により別のものを減衰するように設計されている。これらの表面は、光と、表面上に形成されたフィルムとの直接相互作用によって可視シグナルを発生する。薄いフィルムは、光学コーティングを含むか、および/または表面への特定の標的分子の結合によって創出される生物フィルムである。光の光路が表面上に蓄積した生物量によって延長されるために、陽性の結果は通常は、金色から紫色への色変化として認められる。フィルムの厚みと屈折率によって、観察される個々の色および陰影が決まる。一般に、入射光と同位相の表面上から反射した光の波長が加わるか、建設的干渉を受けて、視認できるようになる。入射光とは異なる位相の表面から反射する波長は、相殺的干渉によって減衰されて、フィルムから浮上することはない。好ましくは、ウェハ221はケイ素からなり、光学コーティングは窒化ケイ素からなり、付加ポリマーは疎水性ポリマーからなる。図13〜図16は、付加ポリマー224の表面上の実質的に均一に分配された多数の抗体/ファージ/抗体共役物231を示す、単一の大きく拡大された該構造物を利用して、SILAS表面をいかにして、ファージマーカーの存在を示すために用いるかを示した図である。図13において、カプシドタンパク質などのファージマーカーに特異的な第1抗体228を、付加ポリマーに付加して、該ポリマーの表面225を固定化ゾーンにする。試料溶液を表面224に接触させる。指定のファージ生物マーカー230が存在すれば、該マーカーは図14に示すように第1抗体228に付加する。図15において、生物マーカーが存在すれば、第2検出抗体232が表面224に接触されて、生物マーカー230に付加する。第2抗体232を、セイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)またはアルカリホスファターゼなどの反応試薬で標識する。そして、3,3’,5,5’テトラメチルベンジジン(TMB)などの酵素を表面に塗布し(236)、該酵素はHRPと反応して沈殿238を形成し、これが被膜層240(図16)を形成して、表面の色を変える。図16に示すように、表面245上に衝突した光242は、被膜層240が存在するか否かによって、244および246に示すように様々に反射する。このようにして、反応試薬で標識された第2抗体232と、酵素と、バクテリオファージまたはバクテリオファージに関連する生物物質と相互作用する調光剤235に対する光学コーティング222との組み合わせ、すなわちバクテリオファージまたはバクテリオファージに関連する生物物質の存在によって、固定化ゾーン225の色変化がもたらされる。
【0075】
図17および図18は、陰性の結果に対する被膜層240なしのSILAS表面(図17)と、陽性の結果に対する被膜層240ありのSILAS表面(図18)との間の反射率の違いを示したものである。反射率は、陰性結果に対しては橙色から赤色の波長において高くなって金色をもたらし、陽性結果に対しては、深青波長において高くなって紫色をもたらした。SILAS表面は、Thermo Electron Corporation,81Wyman Street,Waltham,MA 02454−9046より入手可能である。SILASプロセスの説明については、インターネット上のThermo Electron Corporationのウェブサイト、http://www.thermo.com.などで入手できる。
【0076】
図19は、微生物を検出するための例示的試験キット254を、試験キットを用いるための典型的な説明書とともに示したものである。図20も参照のこと。試験キット254は好ましくは、緩衝溶液258の容器256と、反応容器260と、保護ケース263に封入された1つ以上の検出要素266(図20)と、該キットを使用するための説明書270と、前出のキット部品を保持するための容器272とを含む。保護ケース263は、細菌が存在しない場合に予想される結果267を示す対照検出要素276を含んでいてもよい。たとえば、検出要素がラテラルフローストリップであれば、対照検出要素は、細菌が全く存在しないバクテリオファージの対照試料が塗布された同じラテラルフローストリップとするとよい。反応容器260は、容器本体267と、容器蓋264とを含む。好ましくは、反応容器本体は、瓶267であり、反応容器蓋は瓶キャップ264である。反応容器260はファージ268を含む。ファージ268は、好ましくは反応容器本体267の内壁269に付加された所定量のファージからなる。キャップ264は、好ましくは、瓶267の上部のネジと螺合する内ネジ262を有するネジ式キャップである。キャップ264は、好ましくは、所定の大きさの液滴を放出するように設計された滴下ヘッドである、ディスペンサ265を含むことが好ましい。本実施形態において、検出要素266はラテラルフローストリップ266であるが、図12〜16に関して説明したように、SILAS表面要素であってもよい。フローストリップ266は、試料パッド274(図20)と、検出ウィンドウ278とを含む。好ましくは、容器272は、試験キット部品の保持と試験終了後の便利な処分容器の2つの役割をはたすプラスチックバッグ272からなる。
【0077】
図20は、試験キット254を使用するための例示的説明書組270を示す。説明書270は、好ましくは、試験手順を示す文字および図を印刷した紙のシートからなる。説明書270は、微生物を検出するための例示的方法280も説明する。方法280は、プロセス281,282,284および286を含む。第1プロセス281において、キャップ264および滴下ヘッド265を外すことにより、反応瓶267をあけ、5ミリリットル(mL)の試料を加える。次に緩衝溶液258を加える。プロセス282において、滴下ヘッド265および瓶267上のキャップ264を戻し、蓋をした反応容器260を好ましくは例えば1分間などの所定時間だけ攪拌した後、好ましくは例えば1時間などの所定の時間量だけ放置することにより溶液をインキュベートする。キャップ264を取り外し、所定量のインキュベート後の試料を試料パッド278上に放出する。そして使用者は例えば3分間などの所定の時間量だけ待つ。プロセス286において、使用者は検出ウィンドウ278を覗いて結果を見る。先に検討したように、試料が試験キットが特定する細菌を含んでいれば、青などの第1の色の第1ライン288が現れる。第1の色のラインが現れない場合には、試験結果は陰性である。随意で、試験が有効であることを示すように、第2の色の第2ライン290が出現することが好ましい。第1ライン288は、図3の試薬ライン46に相当し、第2ライン290は、図3の内部標準ゾーン48に相当する。対照検出要素276(図19)を用いて、第1ライン288を対照ライン277と比較して試験が陽性または陰性のいずれであるかを判定するようにしてもよい。たとえば、第1ライン288が対照ライン277よりも明らかに深い青色であれば、陽性結果であることがわかる。
【0078】
図21は、感染プロセスの所望の特性を強化するように遺伝的に修飾されたバクテリオファージ302を用いた、本発明に従う例示的アッセイ300を示す。ここで「遺伝的に修飾されたバクテリオファージ」とは、DNAが何らかの方法で修飾または操作されたバクテリオファージと、特定の特性を増強するように選択的に繁殖されたバクテリオファージの両方を含む。所望の特性としては、バースト容積、バースト時間、および感染性などがあげられる。バースト容積とは、複製されるファージの量であり、バースト時間とは、ファージが標的細菌を破裂させるまでの時間であり、感染性とは、感染細菌におけるファージの有効性、すなわち、所定量のファージによって感染される利用可能な細菌の百分率である。ファージは、上記所望の特性および/または他の所望の特性の1つ以上を強化するように遺伝的に修飾されていてもよいし。図21に示すように、遺伝的に修飾されたファージ302を用いて、非修飾ファージの場合と同様に微生物の検出を行う。すなわち、ある量、好ましくは検出限界未満の遺伝的に修飾されたファージ302を、宿主微生物304の試料に加え(303)、感染させ、インキュベートし(305)、ファージ子孫を発生させ(306)、これを検出する(307)。親ファージ302は、感染プロセスの特性を強化するように遺伝的に改変されているので、検出は、より迅速に、より感度よく、および/またはより信頼性高くすることができる。
【0079】
図22は、タンパク質などの検出可能な生物マーカーを過剰発現するように遺伝的に修飾されたバクテリオファージ312を用いた、本発明に従う例示的アッセイ310を示したものである。図22に示すように、遺伝的に修飾されたファージ312を用いて、非修飾ファージの場合と同様に微生物の検出を行う。すなわち、ある量、好ましくは検出限界未満の遺伝的に修飾されたファージ312を、宿主微生物314の試料に加え(313)、感染させ、インキュベートし(315)、ファージ子孫を発生させ(316)、これを検出する(317)。親ファージ302は、検出可能な生物マーカーを過剰発現するように遺伝的に改変されているので、この生物マーカーはより容易に検出され、したがって、検出は、より迅速に、より感度よく進み、すなわち、より低いレベルの細菌を検出することができる。あるいは、これにより親ファージの使用量を少なくすることができる。
【0080】
図23は、酵素を発現するように遺伝的に修飾されたバクテリオファージバクテリオファージを用いた、本発明に従う例示的アッセイ331を示したものである。図23に示すように、ある量、好ましくは検出限界未満の遺伝的に修飾されたファージ322を、宿主微生物324の試料に加え(323)、感染させ、インキュベートし(325)、酵素を発生させる(326)。細菌は溶菌してもしなくてもよい。基板328を加え(327)、これが酵素と反応して(329)、酵素生成物330また他の酵素作用を与えるので、これを検出する。この遺伝的修飾により、より容易に実施でき、より迅速および/または高感度で進行できるか、親ファージの使用量を少なくできる代替検出方法を与えることができる。
【0081】
図24は、カプシドタンパク質上に標的を発現するように遺伝的に修飾されたバクテリオファージバクテリオファージを用いた、本発明に従う例示的アッセイを示したものである。図24に示すように、すなわち、ある量、好ましくは検出限界未満の遺伝的に修飾されたファージ332を、宿主微生物334の試料に加え(333)、感染させ、インキュベートし(355)、カプシドタンパク質335の表面上に生物マーカー336を含んだファージ子孫を発生させ(338)る。生物マーカーは、カプシドの外側にあるので、他のマーカーよりも容易に検出しうるか、および/またはファージ解離プロセスなしで検出することができ、検出速度の向上を図れる。
【実施例】
【0082】
(3.実施例)
(A.ラテラルフロー実施例)
以下の実施例において、図1のプロセスにおけるE.coliの検出のためにMS2ファージを用いる。図3および4に示すようなラテラルフローストリップを、MS2ファージに特異的に結合するポリクローナル抗体を用いて調製する。
【0083】
ラテラルフローストリップのMS2検出限界の決定−バクテリオファージMS2(ATCC15597−B1)は、コンフルーエントプレート上の感染E.coli(ATCC15597)細胞から調製した。この調製からの生きたMS2の濃度は、プラークアッセイによって2×107pfu/mLであった。このMS2ストックを、1×107pfu/mLから1×105pfu/mLの範囲を与えるように系列希釈した。MS2は、ラテラルフローストリップを用いて検出した。結果を表2に示す。
【0084】
【表2】
線強度は、試料をラテラルフローストリップに流してから15分後に目視で判定した。線強度は、最大線強度を示す「++」から、線を検出できない「−」までの尺度範囲上でランク付けした。「+/−」は、かろうじて検出可能な線を示す。このアッセイの結果は、上記試験のために調製したラテラルフローストリップ上でのMS2の検出限界が、1×106pfu/mLであることを示している。
【0085】
E.coli検出限界と全試験時間の決定−飽和培養からのE.coli(ATCC15597)を希釈して、1×108,1×107,1×106,1×105,1×104,1×103,および1×102細胞/mLの濃度を有する原試料を作製した。各原試料にMS2を加えて、1×106pfu/mLのMS2濃度を有する試験試料を与えた。試験試料を、37°Cで1時間から5時間インキュベートした。インキュベーション後、試験試料を、親MS2濃度が確立された検出限界未満の1×105pfu/mLとなるように10:1希釈した。次に、ラテラルフローストリップを用いて試験試料を分析した。結果を表3に示す。
【0086】
【表3】
これらの結果は、開示した発明を用いて、4時間後に100個のE.coli細胞を検出できたことを示す。より高いレベルのE.coli(1×105細胞以上)が1時間後に検出可能である。
【0087】
同様に、上述のラテラルフローストリッププロセスは、PRD−1バクテリオファージを用いて豚コレラ菌(salmonella choleraesuis)を、ガンマファージを用いて炭疽菌(bacillus anthracis)を、また、B−30バクテリオファージを用いて第8群ストレプトコッカスを検出するためにもうまく使用できた。
【0088】
(B.SILAS表面実施例)
方法:Thermo Electron Corporation,81 Wyman Street,Waltham,MA 02454−9046において開発された標準的な方法を用いて、コーティングされた表面と、HRP共役抗体を調製した。簡単に説明すると、表面を4ug/mlウサギ抗MS2抗体を含むHEPESバッファ(pH7.8)の溶液中で、48時間コーティングした。コーティング後、ウェハを洗浄し、糖:タンパク質保存剤でオーバーコートし、7mm四方のチップに分離した。
【0089】
共役化は、Nakaeの方法のThermo Electron modificationに従って進めた。過酸化ナトリウムを用いてHRPを活性かして、無水物をタンパク質の炭水化物部分上に導入した。活性化したHRPとウサギ抗MS2抗体を混合し、インキュベートした。共役物は、ホウ化水素ナトリウムを加えて、Sciff塩基を減らすことにより安定化した。
【0090】
与えられたMS2の検出能力を調べるための試験を行った。最初の形式では、同期および連続形式の両方を含んでいた。同期形式は、試料と共役物(共役物希釈物中1:100に希釈)を混合することと、コーティングされたOIAチップの表面に試料を加えることで構成した。インキュベーションに続いて、表面を洗浄して乾燥させた後、酵素基板(TMB)を加えた。1回目および2回目のインキュベーションは、5分間または10分間、平衡に保った。連続アッセイは、試料と共役物を混合せずに、個別にチップに加えたこと以外は、同期形式と同様に行った。インキュベーション工程は、洗浄とブロッティング工程に分割した。連続アッセイは、すべての工程に対して10分間のインキュベーションを用いた。
【0091】
結果:ここに記載する非最適化方法は、明らかに107においてMS2試料を検出することができたが、結果は104に対して混合していた。すべての場合における色変化は、深金橙から深紫であった。同時形式を用いて、弱く、かろうじて視認できる結果が、2回の10分間インキュベーションを用いて非希釈試料において検出された。連続方法を用いて、検出されるシグナルは107においてより強かった。3回の10分間インキュベーションによって、107シグナルは明確になり、104シグナルが視認できるようになったが、非常に弱かった。系列希釈は、107試料を、2倍希釈を用いて生理食塩水中に希釈することによって行った。陽性の結果が、107試料の1:16希釈まで検出された。これは、6.25×105と略等しい。
【0092】
(C.抗生物質耐性)
この実施例においては、Staphylococcus aureus(S.aureus)における抗生物質の最小阻害濃度(MIC)を、MALDI−MSを用いたバクテリオファージ増幅によって迅速に判定した。MICは、S.aureusの特定の株の増殖を阻害する最低の抗生物質濃度である。当該株が、検定濃度の抗生物質に感受性があれば、バクテリオファージ 生物マーカーシグナルは、抗生物質阻害、ひいてはファージ増幅の抑制のために、MALDI−MSによって検出されることはない。一方、ファージ生物マーカーシグナルが検出される場合は、MICが達成されておらず、抗生物質が有効でない点を表すことになる。本研究に対するMICを判定するためには、ストレプトマイシンおよびテトラサイクリンを選択した。
【0093】
S.aureus(ATCC27709,Manassas VA)の24時間培養を、抗生物質(ストレプトマイシンおよびテトラサイクリン)の存在および非存在下、BHIブロスにおいて行った。ファージ187およびS.aureus試料を、MALDIの検出限界未満に希釈した後、ファージを宿主中に感染させ、該宿主中で細胞が破裂するまでバクテリオファージの増幅を行った。次に試料を清浄化し、分析のために濃縮した。乾燥液滴(dried droplet)法を用いて、試料を、ギ酸、アセトニトリルおよびHPLCグレード水の溶液中に混合した15mg/mLフェルラサンマトリックスを有する疎水性標的プレート上に分析のためにプレーティングした。MALDI−TOF−MS PerSeptive Biosystems Voyager−DE STR Biospectrometry Workstation(Framingham,MA)を用いて、線形モードの質量スペクトルを得た。
【0094】
抗生物質中でS.aureusを培養することにより、その抗生物質の濃度が、細菌細胞を破壊するのに十分であるか否かがわかる。細菌細胞が生きていれば、それらは構成物質によって影響を受けておらず、細胞が感染された場合にファージ増幅が起こることを示す。バクテリオファージに対するタンパク質マーカーが、質量スペクトル中に見られるという結果が得られる。一方、生物マーカーが質量スペクトル中に見られない場合には、最小阻害濃度に達しているかこれを超えていることを示す。結論として、細胞が破壊され、したがって、バクテリオファージ増幅が全く起こりえないことになる。
【0095】
MALDI上での分析に先立って、半精製技術を用いて、試料をろ過および濃縮した。機器が塩に不耐性のために、試料を100kDaカットオフを用いてスピンろ過した。ファージ187からの質量スペクトルは、15,245Daの位置に、はっきりと区別できるタンパク質生物マーカーを示した。ファージ187も、超遠心分離および塩化セシウム勾配によって精製し、半精製ろ過技術によって生物マーカーが同定されることを確かめた。検出のMALDI MS限界を、細菌およびファージの両者について確立したところ、それぞれ、106細胞/mLおよび108ファージ/mLであった。シグナルが増幅ファージに由来するものであることを確認するために、実験のあいだ、細菌およびファージの濃度をMALDIの検出限界未満に保った。抗生物質の濃度が低い場合には、ファージからのタンパク質ピークがMALDIスペクトル中に存在し、細菌の増殖とファージの複製が未だ起こっていることが示された。濃度が高くなると、スペクトルはタンパク質ピークを欠き、MICに達したか超えたことが示された。
【0096】
本発明の好ましい実施形態の特徴は、バクテリオファージに曝露されたサンプルで親ファージが破壊、除去、中和または不活性化されないことである。従来の方法においては、細胞外バクテリオファージ、すなわち細菌または他の感染されている微生物の外のバクテリオファージがどこかの時点で破壊、除去、中和または不活性化される。このことが本発明では必要ない。特に、バクテリオファージを殺す薬剤の添加による細胞外バクテリオファージの破壊、中和または不活性化は、行わないことが好ましい。これは、これが方法を不要に複雑にし、薬剤が除去または中和されないと子孫バクテリオファージに影響を及ぼしかねないからである。
【0097】
選択された生物に特異的で、感度が良く、単純で、迅速で、および/または経済的であり、数々の新しい特徴を有する微生物検出方法について記載してきた。本発明は、ヒト臨床診断、獣医診断、食品病原体検出、環境試験および生物戦争検出を含む幅広い用途に用いることができる。図面に示しおよび本明細書中に記載する特定の実施形態は、例示を目的とし、本発明を限定するものと解釈すべきでない。本発明は以下の請求項において記載する。さらに、当業者であれば、本発明の概念から逸脱しない限りで、記載した特定の実施形態の多くの用途および変形を作り出すことができよう。均等な構造およびプロセスを、記載した様々な構造およびプロセスに置き換えてもよく、本発明の方法のサブプロセスは、いくつかの例において、異なる順序で実施してもよく、あるいは様々な異なる材料および要素を用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】図1は、ファージを試料に添加して、検出限界未満の初期濃度を与える本発明の第1の実施形態を示している。
【図2】図2は、ファージ感染、増幅、および細胞溶菌のインキュベーションプロセスを説明する。
【図3】図3A、3B、および3Cは、試験試料中のファージを検出するためのラテラルフロー装置の使用を説明する。
【図4】図4は、図3Aのフロー装置の側断面図である。
【図5】図5は、バクテリオファージの説明図である。
【図6】図6は、ファージを試料に添加して、検出限界未満の初期濃度を与える本発明の第2の実施形態を示しており、ここではファージは、ファージの小成分である生物マーカーが検出されるように解離されている。
【図7】図7は、標識されたファージが試料に添加される第3の実施形態を示す。
【図8】図8は、標識した親ファージを試料に加え、ファージ小成分である生物マーカーが検出されるように子孫ファージが解離されている本発明の第4の実施形態を示す。
【図9】図9は、本発明を用いた抗生物質耐性細菌の検出を示す。
【図10】図10はファージ増幅プロセスを示す。
【図11】図11は、いくつかの可能な生物マーカーを示すバクテリオファージT4に対する質量対強度を示すMALDIスペクトルである。
【図12】図12は、SILAS表面を用いたファージに基づくアッセイプロセスを示す。
【図13】図13は、SILAS表面を用いたファージに基づくアッセイプロセスを示す。
【図14】図14は、SILAS表面を用いたファージに基づくアッセイプロセスを示す。
【図15】図15は、SILAS表面を用いたファージに基づくアッセイプロセスを示す。
【図16】図16は、SILAS表面を用いたファージに基づくアッセイプロセスを示す。
【図17】図17は、図12〜16のアッセイからの陰性の結果を示す。
【図18】図18は、図12〜16のアッセイからの陽性の結果を示す。
【図19】図19は、本発明に従う試験キットを示す。
【図20】図20は、図19の試験キットを用いるための例示的指針を示すとともに、該試験キットの試料を説明する。
【図21】図21は、感染プロセスの所望の特性を強化するように遺伝的に修飾されたバクテリオファージを用いた本発明に従う例示的アッセイを示す。
【図22】図22は、検出可能な生物マーカーを過剰発現するように遺伝的に修飾されたバクテリオファージを用いる本発明に従う例示的アッセイを示す。
【図23】図23は、酵素を発現するように遺伝的に修飾されたバクテリオファージを用いる本発明に従う例示的アッセイを示す。
【図24】図24は、カプシドタンパク質上で標的を発現するように遺伝的に修飾されたバクテリオファージを利用した本発明に従う例示的アッセイを示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験されるサンプル中の標的微生物(14)の有無を決定する方法であって、該方法は、以下:該標的微生物を感染させることのできる親バクテリオファージ(18)を該サンプルと合わせて(12)、バクテリオファージに暴露されたサンプル(16)を作製する工程;および、該バクテリオファージに暴露されたサンプルに、該バクテリオファージを該標的微生物に感染させて、該標的微生物中で複製させて、該バクテリオファージに暴露されたサンプル中に検出可能な量(37)の、該バクテリオファージまたは該バクテリオファージに関連する生物物質(97)のどちらかを産生するのに十分な条件を提供する(20)工程を包含し、該方法は、以下:
該バクテリオファージ、または該バクテリオファージに関連する生物物質のどちらかが、該バクテリオファージに暴露されたサンプル中に存在する場合、該バクテリオファージに暴露されたサンプルを、その少なくとも一部(46,240)が色を変える基板(64,220)に塗布する工程、および
該標的微生物の有無の指標として、該色変化の有無を決定する工程、
を特徴とする方法。
【請求項2】
前記塗布工程は、前記バクテリオファージに暴露されたサンプルを、ラテラルフローストリップ(40)に塗布する工程を包含することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記塗布工程は、前記バクテリオファージに暴露されたサンプルを、SILAS表面(220)に塗布する工程を包含することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記バクテリオファージ(70)は、遺伝的に改変されている(300,310,320,331)、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記バクテリオファージは、感染プロセスの所望の特性を増強するように遺伝的に改変されている(300)ことを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記バクテリオファージは、検出可能な生物マーカーを過剰発現するように遺伝的に改変されている(310)ことを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記バクテリオファージは、酵素を発現するように遺伝的に改変されている(320)ことを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記バクテリオファージは、カプシドタンパク質(72)上に標的を発現するように遺伝的に改変されている(331)ことを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項9】
微生物試験基板(40)の製造方法であって、該方法は、以下:
基板(64)およびバクテリオファージ(51)に付加できる生物物質(47)または該バクテリオファージに関連する生物物質を提供する工程;
該基板上に該生物物質のライン(46)を形成する工程;ならびに
該基板を、該ラインに本質的に垂直な方向に切断して、該試験基板を形成する工程、
を特徴とする方法。
【請求項10】
前記基板は、多孔性膜(64)であることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記生物物質は、抗体(47)であることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記提供する工程は、第1生物物質および第2生物物質を提供する工程を包含し、前記形成する工程は、該第1生物物質を有する第1ライン(46)および該第2生物物質を有する第2ライン(48)を形成する工程を包含し、該第1ラインおよび該第2ラインは実質的に平行であることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記提供する工程は、第3生物物質を提供する工程をさらに包含し、前記形成する工程は、該第3生物物質を有する第3ライン(66)を形成する工程を包含し、該第3ラインは、第1ラインおよび第2ラインと実質的に平行であることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
細菌学試験基板(220)の製造方法であって、該方法は、以下:基板(221)を提供する工程;および該基板上に光学コーティング(222)を形成する工程を包含し;該方法は、生物物質(228)を該光学コーティング上に固定する工程を特徴とし、該生物物質は、バクテリオファージ(230)または該バクテリオファージに関連する生物物質に付加することができる、方法。
【請求項15】
前記固定する工程は、付加ポリマー(224)を、前記光学コーティングに塗布する工程、および前記生物物質を該付加ポリマー上に蒸着する工程を包含することを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記生物物質(230)は、抗体であることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項17】
試験されるサンプル中の標的微生物の有無を決定する方法であって、該方法は、以下:該標的微生物を感染させることのできる一定量の親バクテリオファージを該サンプルと合わせて、バクテリオファージに暴露されたサンプルを作製する工程;および、該バクテリオファージに暴露されたサンプルに、該バクテリオファージを該標的微生物に感染させて、該標的微生物中で複製させて、該バクテリオファージに暴露されたサンプル中に検出可能な量の、該バクテリオファージまたは該バクテリオファージに関連する生物物質のどちらかを産生するのに十分な条件を提供する工程を包含し;該方法は、該バクテリオファージに暴露されたサンプルを、ラテラルフローストリップに塗布して、該標的微生物の有無を決定する工程を特徴とする方法。
【請求項18】
前記微生物は細菌であり、前記アッセイする工程は、前記バクテリオファージまたは前記バクテリオファージに関連する生物物質を、前記サンプル中に該標的細菌が存在することの指標として検出する工程を包含する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
試験されるサンプル中の標的微生物の有無を決定する方法であって、該方法は、以下:該標的微生物を感染させることのできる一定量の親バクテリオファージを該サンプルと合わせて、バクテリオファージに暴露されたサンプルを作製する工程;および、該バクテリオファージに暴露されたサンプルに、該バクテリオファージを該標的微生物に感染させて、該標的微生物中で複製させて、該バクテリオファージに暴露されたサンプル中に検出可能な量の、該バクテリオファージまたは該バクテリオファージに関連する生物物質のどちらかを産生するのに十分な条件を提供する工程を包含し、該方法は、該バクテリオファージに暴露されたサンプルを、SILAS表面に塗布して、該標的微生物の有無を決定する工程を特徴とする方法。
【請求項20】
前記微生物は細菌であり、前記アッセイする工程は、前記バクテリオファージまたは前記バクテリオファージに関連する生物物質を前記サンプル中に該標的細菌が存在することの指標として検出する工程を包含することを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項21】
標的微生物(14)を検出するための装置(40,220)であって、該装置は、基板(64,221);および該基板上の固定化ゾーン(46,225)を備え、該固定化ゾーンは、バクテリオファージ(51,230)またはバクテリオファージに関連する生物物質を固定化するように設計された固定化剤(47,228)を含み、該装置は、該バクテリオファージまたは該バクテリオファージに関連する生物物質のどちらかと相互作用するように設計された色調剤(45,235)を特徴とし、これにより該バクテリオファージまたは該バクテリオファージに関連する生物物質のどちらかの存在が、該固定化ゾーンの色変化を引き起こすことを特徴とする装置。
【請求項22】
前記固定化ゾーンは、抗体(47,230)を含むことを特徴とする請求項21に記載の装置。
【請求項23】
前記色調剤は、着色したビーズ(45)を含むことを特徴とする請求項22に記載の装置。
【請求項24】
前記色調剤は、反応した場合、沈殿剤(238)を形成する反応剤(232)および酵素(236)を含むことを特徴とする請求項22に記載の装置。
【請求項25】
前記反応剤は、セイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)およびアルカリホスファターゼからなる群より選択される物質を含み、前記酵素は、3,3’,5,5’テトラメチルベンジジン(TMB)を含むことを特徴とする請求項24に記載の装置。
【請求項26】
前記基板は、ラテラルフローストリップ(40)を備えることを特徴とする請求項21に記載の装置。
【請求項27】
前記基板は、SILAS表面(220)を備えることを特徴とする請求項21に記載の装置。
【請求項28】
前記微生物は、細菌であることを特徴とする請求項21に記載の装置。
【請求項29】
試験されるサンプル(11)中の標的微生物(14)の有無を決定するためのキット(254)であって、該キットは、該標的微生物に感染させることのできるバクテリオファージ(268)を収容した第1の容器(260)を備え、該キットは、該バクテリオファージに暴露されたサンプル中に該バクテリオファージまたは該バクテリオファージに関連する生物物質のどちらかが存在する場合、少なくとも一部(288)の色が変化する基板(266)を特徴とするキット。
【請求項30】
緩衝溶液(258)を収容する第2の容器(256)をさらに特徴とする請求項29に記載のキット。
【請求項31】
前記基板は、ラテラルフローストリップ(40,266)を備えることを特徴とする請求項29に記載のキット。
【請求項32】
前記基板は、SILAS表面(220)を備えることを特徴とする請求項29に記載のキット。
【請求項33】
前記第1容器は、所定の大きさの液滴を放出するように設計された点滴器(265)を備えることを特徴とする請求項29に記載のキット。
【請求項34】
前記標的微生物は、細菌であることを特徴とする請求項29に記載のキット。
【請求項35】
試験されるサンプル中の微生物の有無を検出する方法であって、該方法は、以下:該標的微生物を感染させることのできる親バクテリオファージを該サンプルと合わせて、バクテリオファージに暴露されたサンプルを作製する工程;および、該バクテリオファージに暴露されたサンプルに、該バクテリオファージを該標的微生物に感染させて、該標的微生物中で複製させて、子孫バクテリオファージを作製する工程を可能にするのに十分な条件を提供する工程;および該バクテリオファージに暴露されたサンプルをアッセイして、該サンプル中の該標的微生物の有無の指標としての該バクテリオファージ物質の有無を決定する工程を包含し;該方法は、該条件を提供する工程が、該アッセイに利用可能な解離したバクテリオファージ物質を生産するための条件を提供する工程をさらに包含することを特徴とする方法。
【請求項36】
前記微生物は細菌であり、前記アッセイする工程は、前記バクテリオファージ物質を、前記サンプル中に前記標的細菌が存在することの指標として検出する工程を包含することを特徴とする請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記提供する工程は、前記微生物を溶解して、前記バクテリオファージを放出する工程を包含することを特徴とする請求項35に記載の方法。
【請求項38】
前記溶解する工程は、微生物リゾチームを前記バクテリオファージに暴露されたサンプルに添加する工程を包含することを特徴とする請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記溶解する工程は、前記バクテリオファージに曝露されたサンプルにクロロホルムを添加する工程、該バクテリオファージに曝露されたサンプルを酸で処理する工程、および該バクテリオファージに曝露されたサンプルを物理的に加工する工程からなる群より選択される方法を包含する、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
前記提供する工程は、バクテリオファージ解離剤を、前記バクテリオファージに曝露されたサンプルに添加する工程を包含することを特徴とする請求項35に記載の方法。
【請求項41】
前記添加する工程は、酸、尿素、変性剤および酵素からなる群より選択される物質を添加する工程を包含することを特徴とする請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記合わせる工程は、前記親バクテリオファージを標識する工程を包含し、前記提供する工程は、該標識した親バクテリオファージを分離する工程、および次いで該バクテリオファージを解離させて、解離したバクテリオファージ物質を生成する工程を包含することを特徴とする請求項35に記載の方法。
【請求項43】
前記標識する工程は、前記親バクテリオファージをビオチン化する工程および該親バクテリオファージを物理的基板へ付加させる工程からなる群より選択されるプロセスを包含することを特徴とする請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記アッセイする工程は、前記バクテリオファージに曝露されたサンプルをラテラルフローストリップに塗布する工程を包含することを特徴とする請求項35に記載の方法。
【請求項45】
前記アッセイする工程は、前記バクテリオファージに曝露されたサンプルをSILAS表面に塗布する工程を包含することを特徴とする請求項35に記載の方法。
【請求項46】
前記アッセイする工程は、前記バクテリオファージに曝露されたサンプルの少なくとも一部を、MALDI質量分析計でアッセイする工程を包含することを特徴とする請求項35に記載の方法。
【請求項47】
前記生物物質は、カプシドタンパク質であることを特徴とする請求項35に記載の方法。
【請求項48】
前記バクテリオファージは、遺伝的に改変されていることを特徴とする請求項35に記載の方法。
【請求項49】
前記バクテリオファージは、感染プロセスの所望の特性を増強するように遺伝的に改変されていることを特徴とする請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記バクテリオファージは、検出可能な生物マーカーを過剰発現するように遺伝的に改変されていることを特徴とする請求項48に記載の方法。
【請求項51】
前記バクテリオファージは、酵素を発現するように遺伝的に改変されていることを特徴とする請求項48に記載の方法。
【請求項52】
前記バクテリオファージは、カプシドタンパク質上に標的を発現するように遺伝的に改変されていることを特徴とする請求項48に記載の方法。
【請求項53】
試験されるサンプル中の標的微生物の有無を決定する方法であって、該方法は、以下:該標的微生物を感染させることのできるバクテリオファージを提供する工程;該バクテリオファージを該サンプルと合わせて、バクテリオファージに曝露されたサンプルを作製する工程;該バクテリオファージに曝露されたサンプルに対して、該バクテリオファージを該標的微生物に感染させて、該標的微生物中で複製させて子孫バクテリオファージを作製するのに十分な条件を提供する工程;および、該バクテリオファージに曝露されたサンプルのアッセイを行って、該子孫バクテリオファージまたは該子孫バクテリオファージに関連する生物物質の有無を検出して、該標的微生物の有無を決定する工程を包含し、該方法は、
該標的微生物を感染させることのできるバクテリオファージの該サンプルを標識する工程;および
該アッセイの前に、該標識したバクテリオファージを該子孫バクテリオフージから分離する工程、
を特徴とする方法。
【請求項54】
前記標識する工程は、前記親バクテリオファージをビオチン化する工程および該親バクテリオファージを物理的基板へ付加する工程からなる群より選択されるプロセスを包含することを特徴とする請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記標識する工程は、前記親バクテリオファージをビオチン化する工程を包含し、前記分離する工程は、該ビオチン化バクテリオファージをストレプトアビジンに引きつける工程を包含することを特徴とする請求項53に記載の方法。
【請求項56】
前記アッセイする工程は、以下:サンプル塗布パッドおよび検出ラインを有するラテラルフローストリップを提供する工程、ならびに前記バクテリオファージに曝露されたサンプルを前記サンプル塗布パッドに塗布する工程を包含し;そして、
前記分離工程は、前記ビオチン化親バクテリオファージを、前記検出ラインの前の前記ラテラルストリップのストレプトアビジンでコーティングした部分に結合させる工程を包含することを特徴とする請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記標識する工程は、前記親バクテリオファージを物理的基板に接触させる工程を包含し、前記分離工程は、前記物理的基板を前記サンプル中の検出すべき前記バクテリオファージから単離する工程を包含することを特徴とする請求項53に記載の方法。
【請求項58】
前記単離工程は、前記物理的基板を前記試験サンプルから除去する工程を包含することを特徴とする請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記分離工程は、前記標識したバクテリオファージを前記バクテリオファージに曝露されたサンプルから除去する工程を包含することを特徴とする請求項53に記載の方法。
【請求項60】
前記除去工程は、前記標識したバクテリオファージを除去するために磁気ビーズを使用する工程を包含することを特徴とする請求項59に記載の方法。
【請求項61】
標的微生物の抗生物質に対する耐性または感受性を決定する方法であって、該方法は、該標的微生物を含むサンプルを提供する工程を包含し、該方法は、以下:
(b)該サンプルを第1サンプルおよび第2サンプルに分割する工程;
(c)該抗生物質を該第2サンプルに添加する工程;
(d)該第1サンプルおよび該第2サンプルのそれぞれを、該標的微生物に感染することのできるバクテリオファージと合わせて、第1のバクテリオファージに曝露されたサンプルおよび第2のバクテリオファージに曝露されたサンプルを作製する工程;
(e)該バクテリオファージに曝露されたサンプルに対して、該バクテリオファージを該標的微生物に感染させて、該標的微生物中で複製させ、検出可能な量の、該バクテリオファージまたは該バクテリオファージに関連する生物物質のどちらかを、該バクテリオファージに曝露されたサンプル中で産生するのに十分な条件を提供する工程;
(f)該バクテリオファージに曝露されたサンプルをアッセイして、該バクテリオファージまたは該バクテリオファージに関連する生物物質のどちらかの有無を検出し、該第1サンプルおよび該第2サンプル中の該標的微生物の有無を決定する工程;ならびに、
(g)該第1サンプルおよび該第2サンプルに対する該アッセイの結果を比較し、該抗生物質に対する該標的微生物の耐性または感受性を決定する工程、
を特徴とする方法。
【請求項62】
前記アッセイする工程は、前記第1サンプルを第1ラテラルフローストリップに塗布し、前記第2サンプルを第2ラテラルフローストリップに塗布する工程を包含することを特徴とする請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記アッセイする工程は、前記第1サンプルを第1SILAS表面に塗布し、前記第2サンプルを第2SILAS表面に塗布する工程を包含することを特徴とする請求項62に記載の方法。
【請求項64】
前記添加する工程は、複数の前記抗生物質を添加する工程を包含することを特徴とする請求項61に記載の方法。
【請求項65】
試験されるサンプル中の微生物の有無を検出する方法であって、該方法は、以下:該標的微生物を感染させることのできる親バクテリオファージを該サンプルと合わせて、バクテリオファージに暴露されたサンプルを作製する工程;該バクテリオファージに暴露されたサンプルに、該バクテリオファージを該標的微生物に感染させて、該標的微生物中で複製させて、検出可能な量の、該バクテリオファージまたは該バクテリオファージに関連する生物物質のどちらかを、該バクテリオファージに曝露されたサンプルで作製するのに十分な条件を提供する工程;および該バクテリオファージに曝露されたサンプルをアッセイして、該バクテリオファージまたは該バクテリオファージに関連する生物物質のどちらかの有無を検出し、該標的微生物の有無を決定する工程を包含し、該方法は、該アッセイの前に能動的に該微生物を溶解する工程を特徴とする方法。
【請求項66】
前記微生物は細菌であり、前記アッセイする工程は、前記バクテリオファージまたは前記バクテリオファージに関連する生物物質を、前記サンプル中に前記標的細菌が存在することの指標として検出する工程を包含することを特徴とする請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記生物物質は、カプシドタンパク質であることを特徴とする請求項65に記載の方法。
【請求項68】
前記能動的溶解工程は、前記バクテリオファージに曝露されたサンプルに微生物リゾチームを添加する工程を包含することを特徴とする請求項65に記載の方法。
【請求項69】
前記能動的溶解工程は、前記バクテリオファージに曝露されたサンプルにクロロホルムを添加する工程、前記バクテリオファージに曝露されたサンプルを酸で処理する工程、および前記バクテリオファージに曝露されたサンプルを物理的に加工する工程からなる群より選択される方法を包含することを特徴とする請求項65に記載の方法。
【請求項1】
試験されるサンプル中の標的微生物(14)の有無を決定する方法であって、該方法は、以下:該標的微生物を感染させることのできる親バクテリオファージ(18)を該サンプルと合わせて(12)、バクテリオファージに暴露されたサンプル(16)を作製する工程;および、該バクテリオファージに暴露されたサンプルに、該バクテリオファージを該標的微生物に感染させて、該標的微生物中で複製させて、該バクテリオファージに暴露されたサンプル中に検出可能な量(37)の、該バクテリオファージまたは該バクテリオファージに関連する生物物質(97)のどちらかを産生するのに十分な条件を提供する(20)工程を包含し、該方法は、以下:
該バクテリオファージ、または該バクテリオファージに関連する生物物質のどちらかが、該バクテリオファージに暴露されたサンプル中に存在する場合、該バクテリオファージに暴露されたサンプルを、その少なくとも一部(46,240)が色を変える基板(64,220)に塗布する工程、および
該標的微生物の有無の指標として、該色変化の有無を決定する工程、
を特徴とする方法。
【請求項2】
前記塗布工程は、前記バクテリオファージに暴露されたサンプルを、ラテラルフローストリップ(40)に塗布する工程を包含することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記塗布工程は、前記バクテリオファージに暴露されたサンプルを、SILAS表面(220)に塗布する工程を包含することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記バクテリオファージ(70)は、遺伝的に改変されている(300,310,320,331)、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記バクテリオファージは、感染プロセスの所望の特性を増強するように遺伝的に改変されている(300)ことを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記バクテリオファージは、検出可能な生物マーカーを過剰発現するように遺伝的に改変されている(310)ことを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記バクテリオファージは、酵素を発現するように遺伝的に改変されている(320)ことを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記バクテリオファージは、カプシドタンパク質(72)上に標的を発現するように遺伝的に改変されている(331)ことを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項9】
微生物試験基板(40)の製造方法であって、該方法は、以下:
基板(64)およびバクテリオファージ(51)に付加できる生物物質(47)または該バクテリオファージに関連する生物物質を提供する工程;
該基板上に該生物物質のライン(46)を形成する工程;ならびに
該基板を、該ラインに本質的に垂直な方向に切断して、該試験基板を形成する工程、
を特徴とする方法。
【請求項10】
前記基板は、多孔性膜(64)であることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記生物物質は、抗体(47)であることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記提供する工程は、第1生物物質および第2生物物質を提供する工程を包含し、前記形成する工程は、該第1生物物質を有する第1ライン(46)および該第2生物物質を有する第2ライン(48)を形成する工程を包含し、該第1ラインおよび該第2ラインは実質的に平行であることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記提供する工程は、第3生物物質を提供する工程をさらに包含し、前記形成する工程は、該第3生物物質を有する第3ライン(66)を形成する工程を包含し、該第3ラインは、第1ラインおよび第2ラインと実質的に平行であることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
細菌学試験基板(220)の製造方法であって、該方法は、以下:基板(221)を提供する工程;および該基板上に光学コーティング(222)を形成する工程を包含し;該方法は、生物物質(228)を該光学コーティング上に固定する工程を特徴とし、該生物物質は、バクテリオファージ(230)または該バクテリオファージに関連する生物物質に付加することができる、方法。
【請求項15】
前記固定する工程は、付加ポリマー(224)を、前記光学コーティングに塗布する工程、および前記生物物質を該付加ポリマー上に蒸着する工程を包含することを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記生物物質(230)は、抗体であることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項17】
試験されるサンプル中の標的微生物の有無を決定する方法であって、該方法は、以下:該標的微生物を感染させることのできる一定量の親バクテリオファージを該サンプルと合わせて、バクテリオファージに暴露されたサンプルを作製する工程;および、該バクテリオファージに暴露されたサンプルに、該バクテリオファージを該標的微生物に感染させて、該標的微生物中で複製させて、該バクテリオファージに暴露されたサンプル中に検出可能な量の、該バクテリオファージまたは該バクテリオファージに関連する生物物質のどちらかを産生するのに十分な条件を提供する工程を包含し;該方法は、該バクテリオファージに暴露されたサンプルを、ラテラルフローストリップに塗布して、該標的微生物の有無を決定する工程を特徴とする方法。
【請求項18】
前記微生物は細菌であり、前記アッセイする工程は、前記バクテリオファージまたは前記バクテリオファージに関連する生物物質を、前記サンプル中に該標的細菌が存在することの指標として検出する工程を包含する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
試験されるサンプル中の標的微生物の有無を決定する方法であって、該方法は、以下:該標的微生物を感染させることのできる一定量の親バクテリオファージを該サンプルと合わせて、バクテリオファージに暴露されたサンプルを作製する工程;および、該バクテリオファージに暴露されたサンプルに、該バクテリオファージを該標的微生物に感染させて、該標的微生物中で複製させて、該バクテリオファージに暴露されたサンプル中に検出可能な量の、該バクテリオファージまたは該バクテリオファージに関連する生物物質のどちらかを産生するのに十分な条件を提供する工程を包含し、該方法は、該バクテリオファージに暴露されたサンプルを、SILAS表面に塗布して、該標的微生物の有無を決定する工程を特徴とする方法。
【請求項20】
前記微生物は細菌であり、前記アッセイする工程は、前記バクテリオファージまたは前記バクテリオファージに関連する生物物質を前記サンプル中に該標的細菌が存在することの指標として検出する工程を包含することを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項21】
標的微生物(14)を検出するための装置(40,220)であって、該装置は、基板(64,221);および該基板上の固定化ゾーン(46,225)を備え、該固定化ゾーンは、バクテリオファージ(51,230)またはバクテリオファージに関連する生物物質を固定化するように設計された固定化剤(47,228)を含み、該装置は、該バクテリオファージまたは該バクテリオファージに関連する生物物質のどちらかと相互作用するように設計された色調剤(45,235)を特徴とし、これにより該バクテリオファージまたは該バクテリオファージに関連する生物物質のどちらかの存在が、該固定化ゾーンの色変化を引き起こすことを特徴とする装置。
【請求項22】
前記固定化ゾーンは、抗体(47,230)を含むことを特徴とする請求項21に記載の装置。
【請求項23】
前記色調剤は、着色したビーズ(45)を含むことを特徴とする請求項22に記載の装置。
【請求項24】
前記色調剤は、反応した場合、沈殿剤(238)を形成する反応剤(232)および酵素(236)を含むことを特徴とする請求項22に記載の装置。
【請求項25】
前記反応剤は、セイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)およびアルカリホスファターゼからなる群より選択される物質を含み、前記酵素は、3,3’,5,5’テトラメチルベンジジン(TMB)を含むことを特徴とする請求項24に記載の装置。
【請求項26】
前記基板は、ラテラルフローストリップ(40)を備えることを特徴とする請求項21に記載の装置。
【請求項27】
前記基板は、SILAS表面(220)を備えることを特徴とする請求項21に記載の装置。
【請求項28】
前記微生物は、細菌であることを特徴とする請求項21に記載の装置。
【請求項29】
試験されるサンプル(11)中の標的微生物(14)の有無を決定するためのキット(254)であって、該キットは、該標的微生物に感染させることのできるバクテリオファージ(268)を収容した第1の容器(260)を備え、該キットは、該バクテリオファージに暴露されたサンプル中に該バクテリオファージまたは該バクテリオファージに関連する生物物質のどちらかが存在する場合、少なくとも一部(288)の色が変化する基板(266)を特徴とするキット。
【請求項30】
緩衝溶液(258)を収容する第2の容器(256)をさらに特徴とする請求項29に記載のキット。
【請求項31】
前記基板は、ラテラルフローストリップ(40,266)を備えることを特徴とする請求項29に記載のキット。
【請求項32】
前記基板は、SILAS表面(220)を備えることを特徴とする請求項29に記載のキット。
【請求項33】
前記第1容器は、所定の大きさの液滴を放出するように設計された点滴器(265)を備えることを特徴とする請求項29に記載のキット。
【請求項34】
前記標的微生物は、細菌であることを特徴とする請求項29に記載のキット。
【請求項35】
試験されるサンプル中の微生物の有無を検出する方法であって、該方法は、以下:該標的微生物を感染させることのできる親バクテリオファージを該サンプルと合わせて、バクテリオファージに暴露されたサンプルを作製する工程;および、該バクテリオファージに暴露されたサンプルに、該バクテリオファージを該標的微生物に感染させて、該標的微生物中で複製させて、子孫バクテリオファージを作製する工程を可能にするのに十分な条件を提供する工程;および該バクテリオファージに暴露されたサンプルをアッセイして、該サンプル中の該標的微生物の有無の指標としての該バクテリオファージ物質の有無を決定する工程を包含し;該方法は、該条件を提供する工程が、該アッセイに利用可能な解離したバクテリオファージ物質を生産するための条件を提供する工程をさらに包含することを特徴とする方法。
【請求項36】
前記微生物は細菌であり、前記アッセイする工程は、前記バクテリオファージ物質を、前記サンプル中に前記標的細菌が存在することの指標として検出する工程を包含することを特徴とする請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記提供する工程は、前記微生物を溶解して、前記バクテリオファージを放出する工程を包含することを特徴とする請求項35に記載の方法。
【請求項38】
前記溶解する工程は、微生物リゾチームを前記バクテリオファージに暴露されたサンプルに添加する工程を包含することを特徴とする請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記溶解する工程は、前記バクテリオファージに曝露されたサンプルにクロロホルムを添加する工程、該バクテリオファージに曝露されたサンプルを酸で処理する工程、および該バクテリオファージに曝露されたサンプルを物理的に加工する工程からなる群より選択される方法を包含する、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
前記提供する工程は、バクテリオファージ解離剤を、前記バクテリオファージに曝露されたサンプルに添加する工程を包含することを特徴とする請求項35に記載の方法。
【請求項41】
前記添加する工程は、酸、尿素、変性剤および酵素からなる群より選択される物質を添加する工程を包含することを特徴とする請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記合わせる工程は、前記親バクテリオファージを標識する工程を包含し、前記提供する工程は、該標識した親バクテリオファージを分離する工程、および次いで該バクテリオファージを解離させて、解離したバクテリオファージ物質を生成する工程を包含することを特徴とする請求項35に記載の方法。
【請求項43】
前記標識する工程は、前記親バクテリオファージをビオチン化する工程および該親バクテリオファージを物理的基板へ付加させる工程からなる群より選択されるプロセスを包含することを特徴とする請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記アッセイする工程は、前記バクテリオファージに曝露されたサンプルをラテラルフローストリップに塗布する工程を包含することを特徴とする請求項35に記載の方法。
【請求項45】
前記アッセイする工程は、前記バクテリオファージに曝露されたサンプルをSILAS表面に塗布する工程を包含することを特徴とする請求項35に記載の方法。
【請求項46】
前記アッセイする工程は、前記バクテリオファージに曝露されたサンプルの少なくとも一部を、MALDI質量分析計でアッセイする工程を包含することを特徴とする請求項35に記載の方法。
【請求項47】
前記生物物質は、カプシドタンパク質であることを特徴とする請求項35に記載の方法。
【請求項48】
前記バクテリオファージは、遺伝的に改変されていることを特徴とする請求項35に記載の方法。
【請求項49】
前記バクテリオファージは、感染プロセスの所望の特性を増強するように遺伝的に改変されていることを特徴とする請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記バクテリオファージは、検出可能な生物マーカーを過剰発現するように遺伝的に改変されていることを特徴とする請求項48に記載の方法。
【請求項51】
前記バクテリオファージは、酵素を発現するように遺伝的に改変されていることを特徴とする請求項48に記載の方法。
【請求項52】
前記バクテリオファージは、カプシドタンパク質上に標的を発現するように遺伝的に改変されていることを特徴とする請求項48に記載の方法。
【請求項53】
試験されるサンプル中の標的微生物の有無を決定する方法であって、該方法は、以下:該標的微生物を感染させることのできるバクテリオファージを提供する工程;該バクテリオファージを該サンプルと合わせて、バクテリオファージに曝露されたサンプルを作製する工程;該バクテリオファージに曝露されたサンプルに対して、該バクテリオファージを該標的微生物に感染させて、該標的微生物中で複製させて子孫バクテリオファージを作製するのに十分な条件を提供する工程;および、該バクテリオファージに曝露されたサンプルのアッセイを行って、該子孫バクテリオファージまたは該子孫バクテリオファージに関連する生物物質の有無を検出して、該標的微生物の有無を決定する工程を包含し、該方法は、
該標的微生物を感染させることのできるバクテリオファージの該サンプルを標識する工程;および
該アッセイの前に、該標識したバクテリオファージを該子孫バクテリオフージから分離する工程、
を特徴とする方法。
【請求項54】
前記標識する工程は、前記親バクテリオファージをビオチン化する工程および該親バクテリオファージを物理的基板へ付加する工程からなる群より選択されるプロセスを包含することを特徴とする請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記標識する工程は、前記親バクテリオファージをビオチン化する工程を包含し、前記分離する工程は、該ビオチン化バクテリオファージをストレプトアビジンに引きつける工程を包含することを特徴とする請求項53に記載の方法。
【請求項56】
前記アッセイする工程は、以下:サンプル塗布パッドおよび検出ラインを有するラテラルフローストリップを提供する工程、ならびに前記バクテリオファージに曝露されたサンプルを前記サンプル塗布パッドに塗布する工程を包含し;そして、
前記分離工程は、前記ビオチン化親バクテリオファージを、前記検出ラインの前の前記ラテラルストリップのストレプトアビジンでコーティングした部分に結合させる工程を包含することを特徴とする請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記標識する工程は、前記親バクテリオファージを物理的基板に接触させる工程を包含し、前記分離工程は、前記物理的基板を前記サンプル中の検出すべき前記バクテリオファージから単離する工程を包含することを特徴とする請求項53に記載の方法。
【請求項58】
前記単離工程は、前記物理的基板を前記試験サンプルから除去する工程を包含することを特徴とする請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記分離工程は、前記標識したバクテリオファージを前記バクテリオファージに曝露されたサンプルから除去する工程を包含することを特徴とする請求項53に記載の方法。
【請求項60】
前記除去工程は、前記標識したバクテリオファージを除去するために磁気ビーズを使用する工程を包含することを特徴とする請求項59に記載の方法。
【請求項61】
標的微生物の抗生物質に対する耐性または感受性を決定する方法であって、該方法は、該標的微生物を含むサンプルを提供する工程を包含し、該方法は、以下:
(b)該サンプルを第1サンプルおよび第2サンプルに分割する工程;
(c)該抗生物質を該第2サンプルに添加する工程;
(d)該第1サンプルおよび該第2サンプルのそれぞれを、該標的微生物に感染することのできるバクテリオファージと合わせて、第1のバクテリオファージに曝露されたサンプルおよび第2のバクテリオファージに曝露されたサンプルを作製する工程;
(e)該バクテリオファージに曝露されたサンプルに対して、該バクテリオファージを該標的微生物に感染させて、該標的微生物中で複製させ、検出可能な量の、該バクテリオファージまたは該バクテリオファージに関連する生物物質のどちらかを、該バクテリオファージに曝露されたサンプル中で産生するのに十分な条件を提供する工程;
(f)該バクテリオファージに曝露されたサンプルをアッセイして、該バクテリオファージまたは該バクテリオファージに関連する生物物質のどちらかの有無を検出し、該第1サンプルおよび該第2サンプル中の該標的微生物の有無を決定する工程;ならびに、
(g)該第1サンプルおよび該第2サンプルに対する該アッセイの結果を比較し、該抗生物質に対する該標的微生物の耐性または感受性を決定する工程、
を特徴とする方法。
【請求項62】
前記アッセイする工程は、前記第1サンプルを第1ラテラルフローストリップに塗布し、前記第2サンプルを第2ラテラルフローストリップに塗布する工程を包含することを特徴とする請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記アッセイする工程は、前記第1サンプルを第1SILAS表面に塗布し、前記第2サンプルを第2SILAS表面に塗布する工程を包含することを特徴とする請求項62に記載の方法。
【請求項64】
前記添加する工程は、複数の前記抗生物質を添加する工程を包含することを特徴とする請求項61に記載の方法。
【請求項65】
試験されるサンプル中の微生物の有無を検出する方法であって、該方法は、以下:該標的微生物を感染させることのできる親バクテリオファージを該サンプルと合わせて、バクテリオファージに暴露されたサンプルを作製する工程;該バクテリオファージに暴露されたサンプルに、該バクテリオファージを該標的微生物に感染させて、該標的微生物中で複製させて、検出可能な量の、該バクテリオファージまたは該バクテリオファージに関連する生物物質のどちらかを、該バクテリオファージに曝露されたサンプルで作製するのに十分な条件を提供する工程;および該バクテリオファージに曝露されたサンプルをアッセイして、該バクテリオファージまたは該バクテリオファージに関連する生物物質のどちらかの有無を検出し、該標的微生物の有無を決定する工程を包含し、該方法は、該アッセイの前に能動的に該微生物を溶解する工程を特徴とする方法。
【請求項66】
前記微生物は細菌であり、前記アッセイする工程は、前記バクテリオファージまたは前記バクテリオファージに関連する生物物質を、前記サンプル中に前記標的細菌が存在することの指標として検出する工程を包含することを特徴とする請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記生物物質は、カプシドタンパク質であることを特徴とする請求項65に記載の方法。
【請求項68】
前記能動的溶解工程は、前記バクテリオファージに曝露されたサンプルに微生物リゾチームを添加する工程を包含することを特徴とする請求項65に記載の方法。
【請求項69】
前記能動的溶解工程は、前記バクテリオファージに曝露されたサンプルにクロロホルムを添加する工程、前記バクテリオファージに曝露されたサンプルを酸で処理する工程、および前記バクテリオファージに曝露されたサンプルを物理的に加工する工程からなる群より選択される方法を包含することを特徴とする請求項65に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図2】
【図3】
【図4】
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【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
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【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
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【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【公表番号】特表2007−523628(P2007−523628A)
【公表日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−532405(P2006−532405)
【出願日】平成16年4月12日(2004.4.12)
【国際出願番号】PCT/US2004/011285
【国際公開番号】WO2005/001475
【国際公開日】平成17年1月6日(2005.1.6)
【出願人】(505375687)
【出願人】(505375702)
【出願人】(505375724)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年4月12日(2004.4.12)
【国際出願番号】PCT/US2004/011285
【国際公開番号】WO2005/001475
【国際公開日】平成17年1月6日(2005.1.6)
【出願人】(505375687)
【出願人】(505375702)
【出願人】(505375724)
【Fターム(参考)】
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