説明

バクテリオファージを用いた、微生物同定のための方法および装置

自動化血液培養装置中などで、細菌の存在に関して試料を試験する。細菌が存在していると決定された場合、バクテリオファージに基づく細菌同定プロセスを実行して、存在する細菌を同定する。細菌同定プロセスの前に、血液培養試験およびグラム染色試験などの複数の細菌検出プロセスを行ってもよい。バクテリオファージに基づく抗生物質耐性試験または抗生物質感受性試験もまた、試料に対して実施する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
発明の背景
1.発明の分野
本発明は、一般的に、顕微鏡的生存生物の同定の分野に、そしてより詳細には、バクテリオファージを用いた微生物の同定に関する。
2.問題の記載
微生物の同定のための標準的な微生物学的方法は、特定の細菌病原体の存在に関して試験する、基質に基づくアッセイに頼ってきた。Robert H. Bordner, John A. Winter,およびPasquale Scarpino, Microbiological Methods For Monitoring The Environment, EPA Report No. EPA−600/8−78−017, U.S. Environmental Protection Agency, Cincinnati, Ohio, 45268, December 1978を参照されたい。これらの技術は、一般的に、実行が容易であり、高価な補給品または実験施設を必要とせず、そして高いレベルの選択性を提供する。しかし、これらの方法は緩慢である。基質に基づくアッセイは、ターゲットとされる生物をまず増殖させるかまたは純粋な培養物を培養する必要があり、これに数日を要しうることによって遅らされる。この時間的制約は、微生物の悪性株の存在に対する迅速な反応を提供するための有効性を非常に制限する。
【0002】
標準法を用いて微生物を同定するのに長い時間がかかることは、深刻な問題であり、かなりの人的コストおよび経済的コストを生じている。したがって、この問題を克服するため、多くの科学的研究がなされており、そしてなされつつあることは驚くべきことではない。いくつかの例は、免疫磁気分離、ELISA、ドットブロットアッセイ、フローサイトメトリー、およびポリメラーゼ連鎖反応(PCR)である。しかし、これらの方法のいずれも、基質に基づくアッセイの感度を実現せず、そしてこれらはすべて古典的な基質に基づく方法より、高価であり、そして典型的にはより高度な訓練を受けた技術者を必要とする。
【0003】
バクテリオファージに基づく方法は、微生物同定を加速する方法として示唆されてきた。例えば、どちらもStuart Mark Wilsonに対する、1999年11月16日発行の米国特許第5,985,596号、および10月8日発行の第6,461,833 B1号、Ulitzurらに対する1989年8月29日発行の米国特許第4,861,709号、Schererらに対する1998年10月20日発行の米国特許第5,824,468号、Jurgensenらに対する1997年8月12日発行の米国特許第5,656,424号、Jacobs, Jr.らに対する2001年10月9日発行の米国特許第6,300,061 B1号、Hiroshi Nakayamaに対する2003年4月29日発行の米国特許第6,555,312 B1号、Saylerらに対する2003年4月8日発行の米国特許第6,544,729 B2号、Michael F. Sandersに対する1999年3月30日発行の米国特許第5,888,725号、Cherwonogrodzkyらに対する2002年8月20日発行の米国特許第6,436,652 B1号、Adamsらに対する2002年8月20日発行の米国特許第6,436,661 B1号、Reesらに対する1996年3月12日発行の米国特許第5,498,525号、Angelo J. Madonna, Sheila VanCuykおよびKent J. Voorhees, “Detection Of Esherichia ColiI Using lmmunomagnetic Separation And Bacteriophage Amplification Coupled With Matrix−Assisted Laser Desorption/Ionization Time−Of−Flight Mass Spectrometry”, Wiley InterScience, DOI:10.1002/rem.900, 24 December 2002、および2004年11月11日公開の米国特許出願公報第2004/0224359号を参照されたい。バクテリオファージは、それ自体を複製する手段として細菌を使用するよう自然に進化してきたウイルスである。バクテリオファージ(またはファージ)は、自身を細菌に付着させ、そして遺伝物質を細菌内に注入し、細菌が、何10倍〜何1000倍にファージを複製するように誘導することによって、これを行う。溶菌性バクテリオファージと呼ばれるいくつかのバクテリオファージは、宿主細菌を破裂させ、子孫ファージを環境内に放出させて、他の細菌を探させる。親ファージによる細菌感染、子孫ファージを産生するための細菌中のファージ増加(増幅)、および溶菌後の子孫ファージの放出のための総インキュベーション時間は、ファージ、細菌、および環境条件に応じて、1時間程度しかかからない可能性もある。したがって、バクテリオファージまたはバクテリオファージ・マーカーに関する試験と組み合わせて、バクテリオファージ増幅を使用すると、伝統的な基質に基づく同定に比較した際、アッセイ時間を有意に短くしうる可能性もあることが提唱されてきている。しかし、上記のバクテリオファージ同定アッセイは、一般的に、バクテリオファージまたはバクテリオファージ・マーカーを検出するには、洗練された、複雑で、長い、そして/または高価な試験が必要であること、親ファージから子孫ファージを区別することに関連する困難、および特定の微生物を同定する際に非常に成功することが証明されたバクテリオファージ株が、一般的に入手可能ではないという事実など、大きな問題を有する。したがって、微生物を検出するのにより短い時間枠が約束されているにもかかわらず、商業的で実用的なファージに基づくアッセイは開発されていない。
【0004】
したがって、基質に基づく方法の特異性、正確性および経済性を実現する、より迅速な微生物検出法に対する必要性がなお存在する。
発明の概要
本発明は、試料中の生存微生物の存在の確認と、バクテリオファージ・プロセス以外のプロセスを組み合わせて、そしてバクテリオファージを用いて微生物を同定することによって、先行技術の上記の問題、ならびに他の問題を解決する。好ましくは、非バクテリオファージ・プロセスを、バクテリオファージ・プロセスより前に実行するが、バクテリオファージ・プロセスと平行して実行してもよい。
【0005】
バクテリオファージ・プロセスとは独立に生存微生物の存在を確認することによって、先行技術のバクテリオファージ同定法でのいくつかの問題を解決する。第一に、非バクテリオファージ・プロセスを、バクテリオファージ・プロセスの前に行った場合、バクテリオファージ・プロセスを実行しなければならない試料の数が有意に制限される。次に、バクテリオファージ同定は、慣用的な同定プロセスよりも、本質的にはるかに迅速であるため、いくつかのバクテリオファージ周期を実行してもよく、そして本発明の全プロセスは、慣用的な基質培養プロセスより、なお迅速であろう。非バクテリオファージ・プロセスは、微生物が存在しない試料をすでに排除しておくため、反復バクテリオファージ周期のコストが、保証され、そしてかつ最小限にされる。さらなる周期は、バクテリオファージ・プロセスの信頼性を増加させる。第三に、先行技術のバクテリオファージ・プロセスの正確さおよび速度の問題は、ターゲット微生物の十分な数が存在しない場合、バクテリオファージが微生物を迅速に発見することを確実にするため、多数の親バクテリオファージを用いなければならず、これが子孫バクテリオファージを区別するプロセスを非常に複雑にするという事実であった。本発明の方法は、非バクテリオファージ・プロセスを実行している間の時間を用いて、存在する微生物の数を増加させることも可能であり、このことがより少数の親バクテリオファージを用いることを可能にし、これがバクテリオファージ検出プロセスのシグナル対ノイズ比を有意に増加させるため、この問題を解決する。
【0006】
本発明の方法はまた、試料中に存在する微生物を同定する方法であって:(a)前記微生物を同定することなく、前記試料中の微生物の存在を検出可能な試験を前記試料に対して実行し;そして(b)ファージに基づく微生物同定プロセスを用いて、前記試料中に存在する微生物を同定する工程を含む、前記方法も提供する。
【0007】
1つの態様において、本発明は、試料中に存在する微生物を同定する方法であって:(a)微生物を同定することなく、試料中の微生物の存在を検出可能な試験を試料に対して実行し;(b)実行が微生物の存在を検出しなかった場合、陰性結果を宣言し;そして(c)実行が、試料中の微生物の存在を検出した場合、ファージに基づく微生物同定プロセスを用いて、試料中に存在する微生物を同定する工程を含む、前記方法を提供する。好ましくは、方法は、試料に対する抗生物質耐性試験または抗生物質感受性試験を実施することをさらに含む。好ましくは、同定は、第一の試料に対して実行され、実施は、第二の試料に対する抗生物質耐性試験を実施することを含み、そして抗生物質感受性試験は:第一の試料中の微生物の同定、および第二の試料に対する抗生物質耐性試験の実施を含む。好ましくは、実施は、複数の試料に対する複数の抗生物質耐性試験を実施することを含み、抗生物質耐性試験各々は、異なる抗生物質または抗生物質の異なる濃度を利用する。好ましくは、抗生物質耐性試験または抗生物質感受性試験は、ファージに基づく抗生物質耐性試験またはファージに基づく抗生物質感受性試験を含む。好ましくは、同定は比色試験を含む。好ましくは、実行は、試料中の微生物の存在を検出可能な複数の異なる試験を行うことを含む。好ましくは、微生物は細菌であり、そして複数の異なる試験は、血液培養、自己蛍光、グラム染色、ライト染色、アクリジンオレンジptl、グルコース、ディップスティック、シリコン・チップ上窒化物、マイクロ波共鳴空洞、または免疫学的方法からなる群より選択される。好ましくは、複数の試験は、自動化血液培養試験およびグラム染色試験を含む。好ましくは、ファージに基づく微生物同定プロセスは:イムノアッセイ法、アプタマーに基づくアッセイ、MALDIを含む質量分析、およびフローサイトメトリーからなる群より選択される1以上の試験を含む。好ましくは、イムノアッセイ法は、ELISA、ウェスタンブロット、ラジオイムノアッセイ、免疫蛍光、側方流動イムノクロマトグラフィー(LFI)、およびSILAS表面を用いる試験からなる群より選択される。好ましくは、微生物は細菌であり、そして実行は、血液培養、自己蛍光、グラム染色、ライト染色、アクリジンオレンジptl、グルコース、ディップスティック、シリコン・チップ上窒化物、マイクロ波共鳴空洞、または免疫学的方法からなる群より選択される、1以上の方法を含む。
【0008】
別の態様において、本発明は、試料中に存在する微生物を同定する方法であって:(a)微生物を同定することなく、試料中の微生物の存在を検出可能な試験を試料に対して実行し;そして(b)実行を行いながら、ファージに基づく微生物同定プロセスを用いて、試料中に存在する微生物を同定する工程を含む、前記方法を提供する。好ましくは、方法は、実行が微生物の存在を検出しなかった場合、陰性結果を宣言することをさらに含む。
【0009】
別の側面において、本発明は、血液試料中に存在する細菌を同定する方法であって:(a)前記血液試料、および細菌の増殖に適した栄養培地を混合して;(b)自動化血液培養装置中に、前記混合試料の前記の少なくとも第一の部分を入れて、細菌が前記血液試料中に存在するかどうかを決定し;そして前記の混合試料の前記の第一の部分または別の部分に対して、ファージに基づく微生物同定プロセスを実行して、前記血液中に存在する細菌を同定する工程を含む、前記方法を提供する。
【0010】
1つの態様において、本発明は、血液試料中に存在する細菌を同定する方法であって:(a)血液試料、および細菌の増殖に適した栄養培地を混合して;(b)混合試料を、自動化血液培養装置中に入れて、血液試料中に細菌が存在するかどうかを決定して;そして(c)自動化血液培養装置中で、細菌が存在すると決定された場合、混合試料に対して、ファージに基づく微生物同定プロセスを実行して、血液中に存在する細菌を同定する工程を含む、前記方法を提供する。好ましくは、方法は、混合試料に対して、抗生物質耐性試験または抗生物質感受性試験を実施することをさらに含む。好ましくは、抗生物質耐性試験または抗生物質感受性試験は、ファージに基づく抗生物質耐性試験またはファージに基づく抗生物質感受性試験を含む。好ましくは、ファージに基づく同定プロセスは、比色試験である。好ましくは、方法は、自動化血液培養装置中で、細菌が存在すると決定された場合、混合試料に対して、グラム染色分析を行うことをさらに含む。
【0011】
別の態様において、本発明は、血液試料中に存在する細菌を同定する方法であって:(a)血液試料の少なくとも第一の部分、および細菌の増殖に適した栄養培地を混合して、細菌増殖試料を産生し;(b)自動化血液培養装置中に、細菌増殖試料の少なくとも第一の部分を入れて、細菌が血液試料中に存在するかどうかを決定し;そして(c)血液培養装置が、細菌が血液試料中に存在するかどうかを決定するのと同時に、ファージに基づく微生物同定プロセスを実行して、血液中に存在するいかなる細菌も同定する工程を含む、前記方法を提供する。好ましくは、ファージに基づく微生物同定プロセスの実行は、細菌増殖試料の第二の部分に対して行われる。好ましくは、混合は、血液試料の第二の部分を、細菌に付着可能であるかまたは感染可能な量のファージと混合して、ファージ曝露試料を生成することを含み、そして実行は、ファージ曝露試料に対して、ファージに基づく微生物同定プロセスを行うことを含む。好ましくは、混合は、細菌増殖に適した栄養培地と、第二の部分または血液試料を混合することを含む。好ましくは、方法は、ファージ曝露試料を第一の分画および第二の分画に分割することをさらに含み;そして実行は、第一の分画に対してファージに基づく同定プロセスを行い、そして第二の分画に対して抗生物質耐性試験または抗生物質感受性試験を実施することを含む。
【0012】
さらに別の側面において、本発明は、試料中に存在する微生物が、抗生物質に耐性であるかまたは感受性であるかを決定する方法であって:(a)微生物を同定することなく、試料中の微生物の存在を検出可能な試験を試料に対して実行し;(b)実行が微生物の存在を検出しなかった場合、陰性結果を宣言し;そして(c)実行が、試料中の微生物の存在を検出した場合、ファージに基づく抗生物質耐性または感受性プロセスを用いて、微生物が、抗生物質に耐性であるかまたは感受性であるかを決定する工程を含む、前記方法を提供する。好ましくは、実行は、自動化血液培養プロセスを含む。
【0013】
さらに別の側面において、本発明は、試料中に存在する微生物が、抗生物質に耐性であるかまたは感受性であるかを決定する方法であって:(a)微生物を同定することなく、試料中の微生物の存在を検出可能な試験を試料に対して実行し;そして(b)実行を行いながら、ファージに基づく抗生物質耐性または感受性プロセスを用いて、微生物が抗生物質に耐性であるかまたは感受性であるかを決定する工程を含む、前記方法を提供する。好ましくは、実行は、自動化血液培養プロセスを含む。
【0014】
本発明は、慣用的血液培養プロセスなどの、微生物の存在を検出する慣用的プロセスにおける長い経験を、商業的にはこれから立証されるべきバクテリオファージ同定プロセスのためのフェールセーフ機構とすることを可能にする。本発明の多くの他の特徴、目的、および利点は、付随する図と組み合わせて読むと、以下の説明から明らかになるであろう。
好ましい態様の詳細な説明
本発明は、微生物検出装置またはプロセスと、バクテリオファージに基づく細菌同定装置またはプロセスの組み合わせを含む。本開示において、「微生物検出」は、存在する特定の単数または複数の微生物を同定することなく、微生物の存在を確認することを意味する。「同定」は、微生物の特定の属、種、または系統を同定することを意味する。本開示において、用語「バクテリオファージ」および「ファージ」には、バクテリオファージ、ファージ、マイコバクテリオファージ(TBおよびパラTBに関するものなど)、マイコファージ(真菌に関するものなど)、マイコプラズマ・ファージまたはマイコプラズマのファージ、ならびに生存細菌、真菌、マイコプラズマ、原生動物、酵母および他の顕微鏡的生存生物に侵入可能であり、そしてこれらを用いて自身を複製するウイルスを指す、いかなる他の用語も含まれる。ここで、「顕微鏡的」は、最大寸法が1ミリメートル以下であることを意味する。バクテリオファージは、それ自体を複製する手段として細菌を使用するよう自然に進化してきたウイルスである。ファージは、自身を細菌に付着させ、そしてDNAをその細菌内に注入し、細菌が、何100倍または何1000倍にさえ、ファージを複製するよう誘導することによって、これを行う。溶菌性バクテリオファージと呼ばれるいくつかのバクテリオファージは、宿主細菌を破裂させ、子孫ファージを環境内に放出させて、他の細菌を探させる。細菌がファージに感染し、細菌中でファージが増加または増幅して、細菌を溶菌させるための総インキュベーション時間は、問題のファージおよび細菌、ならびに環境条件に応じて、数10分間から数時間の間のどの時点であることもある。
【0015】
図1は、本発明のプロセスのいくつかの好ましい態様を例示する。最も好ましい態様20を実線によって示し、一方、場合による態様を点線によって示す。最も好ましい態様において、微生物の存在を22で検出する。血液培養、自己蛍光、グラム染色、ライト染色、アクリジンオレンジptl、グルコース、ディップスティック、シリコン・チップ上窒化物、マイクロ波共鳴空洞、または免疫学的方法などの、非常に多様な微生物検出プロセスのいかなる1つを用いてもよい。上述の検出法はすべて当該技術分野に知られ、そしてしたがって本明細書で詳細に説明する必要はない。好ましい方法は、大部分の微生物によって産生される二酸化炭素の検出であり、最も好ましくは、自動化血液培養法におけるものである。この方法を以下により詳細に記載する。微生物検出プロセス22が陰性である、すなわち微生物がまったく検出されないならば、好ましくは、試験は、24で終了する。微生物に関して試験される大部分の血液培養試料は陰性試料であるため、これは、ファージに基づく試験を実行しなければならない試料の数を非常に減少させ、これによって、集中した、そして経済的な方式で、ファージに基づく多数の試験を実行することが可能になる。これはまた、すべてのプロセスを、ファージに基づく比較的新規の試験に、より依存性でなくする。
【0016】
本発明はまた、微生物検出プロセス22が、上述の方法の2以上の組み合わせなどの、複数の検出プロセスを含むことも意図する。例えば、1つの検出プロセスは、微生物が存在することを確認可能であり、そして第二のプロセスは、特異的に同定することなく、どの微生物が存在するかの可能性を狭めることも可能である。または、1つの検出プロセスは、微生物が存在しない確実性を70%以内で確認することも可能であり、そして第二のプロセスは、確実性を95%まで増加させることも可能である。陰性結果が見られる場合、試験が陰性である確実性は95%以上であることが好ましく、より好ましくは99%以上であり、そして最も好ましくは99.5%以上である。
【0017】
微生物検出プロセスが陽性である場合、プロセス20は、ファージに基づく微生物同定(ID)プロセス26に進む。ファージに基づく微生物IDプロセス26は、試料中の特定の微生物Aを同定するように設計されている。微生物Aが試料中に存在するならば、ファージに基づく微生物IDプロセス26の結果は陽性である。微生物Aが存在しない場合、結果は陰性である。本発明のプロセスにおいて、ファージに基づくいかなる微生物IDプロセスを用いてもよい。例えば、“Apparatus and Method For Detecting Microscopic Living Organisms Using Bacteriophage”と題される、米国特許公報第2005/0003346号に記載されるようなプロセスなどの、ファージ増幅プロセスを用いてもよい。または、“Apparatus And Method For Detecting Microorganisms Using Flagged Bacteriophage”と題される、PCT特許出願第PCT/US06/12371号に記載されるものなどの、微生物に付着させるプロセスを用いてもよい。ファージに基づく他のいかなる同定プロセスもまた使用可能である。
【0018】
好ましくは、抗生物質耐性試験30は、ファージに基づく微生物IDプロセス26と平行して、すなわち同時に、進行する。本発明のプロセスにおいて、当業者に知られる、いかなる抗生物質耐性試験を用いてもよい。しかし、元来の試料が、多数の微生物を含有しうる場合、抗生物質耐性試験30は、単一の微生物のみを特異的に試験すべきである。本明細書に解説する本発明の好ましい方法において、抗生物質耐性試験30は、ファージに基づく微生物IDプロセス26と類似であるかまたは同一であるが、あらかじめ決定した濃度の、選択した抗生物質の存在下で実行される。
【0019】
抗生物質耐性試験30を用いて、微生物Aが試料中に存在するならば、該微生物が特定の濃度の特定の抗生物質に耐性であるかどうかを決定する。該微生物が存在し、そして耐性であるならば、抗生物質耐性試験30の結果は陽性である。そうでないならば、試験30の結果は陰性である。
【0020】
好ましくは、26、32、および38のファージに基づく複数のIDプロセスは、平行して実行され、各々、異なるファージまたはファージの組み合わせおよび異なるターゲット微生物を伴う。好ましくは、30、36、および42の複数の抗生物質耐性試験もまた、平行して実行される。好ましくは、図5に示すように、抗生物質耐性試験30、36、および42の各々は、複数の試験に相当し、各々、異なる抗生物質および/または異なる抗生物質濃度を持つ。一般的に、図5に示すように、実行される抗生物質耐性試験の数は、IDプロセスの数と異なってもよい。さらに、ドット37は、ファージに基づくさらなるIDプロセスおよびさらなる抗生物質耐性試験の両方を実行してもよいことを示す。
【0021】
臨床的には、しばしば、抗生物質に対する微生物の耐性よりも、感受性を決定することにより価値がある。この情報に基づき、医師は、特定の投薬量の特定の抗生物質を用いて、患者の治療を成功させうることを知っている。ファージに基づく微生物IDプロセス26を抗生物質耐性試験30と一緒に用いて、微生物Aが試料中に存在するならば、該微生物の、所定の抗生物質濃度に対する感受性を決定してもよい。総合すると、プロセス26および試験30は、図1に示すように、抗生物質感受性試験29を構成する。抗生物質感受性試験30の結果は、a)ファージに基づく微生物IDプロセス26が陽性結果を生じ、試料中に微生物Aの存在が示され、そしてb)抗生物質耐性試験30が陰性結果を生じ、試験した抗生物質濃度に対して微生物Aが耐性でないことが示される場合に、陽性である。抗生物質感受性試験30の結果は、a)ファージに基づく微生物IDプロセス26が陽性結果を生じ、試料中に微生物Aの存在が示され、そしてb)抗生物質耐性試験30が陽性結果を生じ、試験した抗生物質濃度に対して微生物Aが耐性であることが示される場合に、陰性である。好ましくは29、35、および41の複数の抗生物質感受性試験は、平行して行われる。好ましくは、抗生物質感受性試験29、35および41の各々は、複数の試験に相当し、各々、異なる抗生物質および/または異なる抗生物質濃度を持つ。
【0022】
ファージに基づく微生物IDプロセスA〜Nおよび抗生物質感受性試験A〜Nが完了すると、微生物(単数または複数)および有効な抗生物質(単数または複数)および有効投薬量(単数または複数)が、50で同定される。
【0023】
あるいは、図1中の点線によって示されるように、ファージに基づく微生物IDプロセス26および抗生物質耐性試験28を連続して;すなわち順次、実行する。IDプロセス26および抗生物質耐性試験は、まとめて、抗生物質感受性試験27を構成する。ここでも、好ましくは、複数の微生物同定プロセス26、32、および38;複数の抗生物質耐性試験28、34および40;ならびに複数の抗生物質感受性試験27、33、および39がある。再び、抗生物質耐性研究28、34、および40は各々、複数の試験に相当し、各々、異なる抗生物質および/または抗生物質濃度を持つ。ドット37および45は、ファージに基づくさらなる微生物IDプロセスおよびさらなる抗生物質耐性または感受性試験の両方を実行してもよいことを示す。再び、ファージに基づく微生物IDプロセスA〜Nおよび抗生物質感受性試験A〜Nが完了すると、50で、微生物(単数または複数)が同定され、そして有効な抗生物質(単数または複数)および投薬量(単数または複数)が決定される。
【0024】
図1は、微生物検出22、および26などのバクテリオファージに基づくIDプロセスを連続して実行する、すなわちバクテリオファージに基づくIDプロセスが微生物検出に続く、本発明のプロセスの態様を例示する。図2は、血液微生物検出62およびバクテリオファージに基づくIDプロセス64を平行して実行し、すなわち、検出プロセスを実行すると同時に、バクテリオファージに基づくIDプロセスを実行する、本発明のプロセスの態様60を例示する。この態様は、微生物の存在が断定的に検出される前に、患者が、特に急性の感染を有するか、またはメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)などの特に悪性の病原体による感染が疑われる指標がある状況において、好ましい可能性もある。こうした場合、選択した微生物の同一性を迅速に決定すると、より大きい結果が得られ、したがって、同定プロセスをできるだけ早く開始することが適切であろう。再び、この態様において、ファージに基づく複数の微生物IDプロセス64、66、68が同時に実行される。再び、複数の抗生物質耐性試験70、72、および74もまた平行して実行される。再び、IDプロセス64および抗生物質耐性試験70は、一緒に、抗生物質感受性試験71を構成し、IDプロセス66および耐性試験72は、感受性試験73を構成し、そして抗生物質感受性試験75まで同様である。微生物検出62およびファージに基づくIDプロセスA 64は、好ましくは、試験すべき試料の別個の下位試料において実行されるが、また、同一の下位試料において実行されてもよい。ファージに基づく微生物IDプロセスA〜Nおよびファージに基づく感受性研究A〜Nが完了すると、78で、微生物(単数または複数)が同定され、そして有効な抗生物質(単数または複数)および投薬量(単数または複数)が決定される。
【0025】
図3を参照すると、微生物検出プロセス22および62の例が示される。試料が血液試料である場合の好ましい微生物検出プロセスは、自動化血液培養プロセス300である。こうしたプロセスにおいて、血液を310で抜き取り、そして瓶または血液収集試験管中で、細菌の増殖培地として働くのに適した栄養ブロスと混合する315。混合試料を血液培養装置350に入れ、ここでインキュベーションし320、そして定期的にチェックして325、細菌が存在するかどうかを決定する。血液培養装置350は、一般的に、培養内の「微生物増殖」の存在を決定するのに、CO(二酸化炭素)濃度の変化に頼る。細菌、酵母、カビの増殖、白血球細胞死などを含めて、二酸化炭素の異なるありうる供給源が多数あるため、本明細書において、微生物増殖は、引用符をつけて示される。血液培養装置350が、CO濃度が変化している330と決定したならば、検出は陽性を宣言し、そしてプロセスは、バクテリオファージに基づくIDプロセス340に進行する。血液培養装置350が、あらかじめ決定した期間に渡って、CO濃度が変化しないことを決定した334ならば、試験は陰性と見なされ、そして終了する336。IDプロセスを、細菌の存在を決定するプロセスを行うのと同じ試料に対して実行してもよい。または、細菌決定プロセスを混合試料の第一の部分に対して行い、そしてIDプロセスを第二の部分に対して実行してもよい。別の代替法として、血液試料の第一の部分を、栄養ブロスと混合し、そして第一の混合試料で細菌の存在を決定し、一方、血液試料の第二の部分を栄養ブロスの第二の部分と混合し、そしてこの第二の混合試料に対してIDプロセスを実行してもよい。当業者は、他の変動を設計してもよい。本明細書記載の自動化血液プロセスシステム300が好ましいが、いかなる慣用的な血液培養プロセスを用いてもよい。自動化血液培養プロセスおよび装置は、本明細書に完全に開示されるのと同じ度合いまで本明細書に援用される、Klaus W. Berndtに対して1998年10月6日に発行された米国特許第5,817,508 508号に記載される。血液培養プロセス300は当該技術分野に知られ、そして本明細書に、より詳細には記載されない。
【0026】
図4は、自動化血液培養システム410を、ファージに基づく微生物IDおよび抗生物質感受性システム450とともに取り込む、本発明記載の好ましいシステムおよびプロセス400を例示する。自動化血液培養プロセスにおいて、増殖培地中に血液試料を含有する収集試験管を、図3の機能350を行う自動化血液培養システム410(すなわち、Bactec, Becton, Dickinson, & Company; BacT/Alert, bioMerieux)に入れる。栄養ブロス中に試料を含有する血液収集試験管をインキュベーションし320、そして定期的にチェックして325、細菌が存在するかどうかを決定する。血液培養結果が陰性ならば、試験は終了する412。血液培養結果が陽性ならば、プロセスは、通常、枝414に沿って進行する。陽性自動化血液培養試験は、一般的に、分岐点422に示すように、ミリリットル(ml)あたり、およそ10以上の細菌を含む試料を生じる。この試料は、一般的に、複数の下位試料に分割され、これに対して、ファージに基づく複数の細菌IDプロセス、424、430を同時に行い、これらは各々、異なる亜種のバクテリオファージを使用する。ファージに基づくID微生物プロセスを以下により詳細に記載する。一般的に、抗生物質耐性試験426、432は、各微生物IDプロセス424、430と平行して実行される。図4に示すように、IDプロセス424および430は、抗生物質耐性試験426および432と組み合わされて、それぞれ、抗生物質感受性試験425および431を構成する。上に示すように、好ましくは、各抗生物質耐性試験426、432は、複数の試験を含み、各々、異なる抗生物質および/または異なる抗生物質濃度を持つ。しかし、本発明はまた、場合によって、抗生物質耐性試験428、438を、ファージに基づく微生物IDプロセス424、430と連続して実行してもよいことも意図する。図4に示すように、IDプロセス424および430は、抗生物質耐性試験428および438と組み合わされて、それぞれ、抗生物質感受性試験427および437を構成する。抗生物質耐性試験428、438が連続して実行される場合、平行試験426および432は、通常、実行されない。別の選択肢として、血液培養プロセス410、ならびにファージに基づく微生物IDプロセスおよび抗生物質耐性試験または抗生物質感受性試験450の間に、第二の細菌検出プロセス420を実行してもよい。好ましい代替法において、第二の細菌検出プロセス420は、グラム染色試験である。グラム染色試験420の実行は、存在しうる細菌の範囲を狭めることを補助し、そしてしたがって実行する必要がある、ファージに基づくIDプロセス424・・・430および抗生物質耐性試験または抗生物質感受性試験426・・・432の数を減少させる。試験410、424、425、426(または427および428)、430、431、および432(または437および438)の結果440は、感染を引き起こす細菌種、ならびに細菌を殺すかまたは細菌の増殖を遅延させるのに最適な抗生物質および投薬量の両方を、440で同定することである。
【0027】
図5は、本明細書に用いる、好ましい抗生物質耐性試験28、30、70、426等を例示し、すなわち、それによって、存在する細菌が、1以上の抗生物質に耐性であるかどうかを決定するために、いずれかのファージに基づく試験を使用可能な、方法140を例示する。ターゲット細菌を含有する試料142は、144によって示される第一の試料A、154によって示される第二の試料B、および試験すべきすべての抗生物質を試験するのに必要なだけ多くの、ドット160によって示されるような多くのさらなる試料に分割される。第一の抗生物質145が試料Aに添加され、第二の抗生物質(または異なる濃度の同じ抗生物質)155が試料Bに添加され、そして他の抗生物質(または濃度)が160で示される試料に添加される。試料中のターゲット細菌は、試料中の抗生物質に耐性でないならば、殺されるかまたは増殖が遅延される。抗生物質が細菌に作用するのに適した時間が経った後、多量のファージを148、158などを添加する。本発明はまた、バクテリオファージおよび抗生物質を同時に添加してもよいことも意図する。抗生物質耐性試験を、ファージに基づく微生物IDプロセスと平行して実行するプロセスにおいて、これが、一般的に好ましい。いかなる場合であっても、バクテリオファージを添加した後に、あらかじめ決定した時間が経った後、149および159などで、試料AおよびBなどを分析して、各々における生存ターゲット細菌の存在を検出する。これらの分析に、本開示に言及される方法などのいかなるバクテリオファージ検出法を用いてもよい。細菌が存在することが見出された場合、または細菌濃度が増加していた場合、細菌が抗生物質に耐性であることが示される。異なる抗生物質濃度を試験することによって、耐性の度合いを決定してもよい。抗生物質耐性に関して抗生物質群を同時にスクリーニングするため、関心対象のすべての抗生物質を1つの試料に添加して、そしてターゲット細菌に関して分析する。ターゲット細菌が抗生物質処理試料中に検出された場合、またはターゲット細菌が増加していた場合、試料中のターゲット細菌が、抗生物質群に耐性であることが示される。
【0028】
本発明者らは、ここで、ファージに基づく微生物IDプロセス、26、64、424など、および抗生物質耐性試験28、30、70、426などのファージ分析部分149、159などの詳細に取り掛かる。本発明において、特定の微生物が存在する場合、ファージまたはファージに関連する何らかのバイオマーカーを検出する、いかなるファージ同定法または装置を用いてもよい。好ましい方法は、抗体結合事象を利用して、検出可能なシグナルを産生するイムノアッセイ法であり、これには、ELISA、ウェスタンブロット、ラジオイムノアッセイ、免疫蛍光、側方流動イムノクロマトグラフィー(LFI)、および検出指標として色を変化させるSILAS表面の使用が含まれる。他の方法は、アプタマーに基づくアッセイ、本明細書において、MALDIと称される飛行時間型マトリックス支援レーザ脱離イオン化質量分析(MALDI−TOF−MS)などの質量分析、フローサイトメトリーである。1つのイムノアッセイ法、LFIを、図6と関連して、以下により詳細に論じる。
【0029】
側方流動ストリップ40の断面図を図6に示す。側方流動ストリップ640には、好ましくは、試料適用パッド641、コンジュゲート・パッド643、その中に検出ライン646および内部対照ライン648が形成されている支持体6 64、および吸収剤パッド652が含まれ、これらはすべて、好ましくはプラスチックである裏打ち662上にマウントされている。支持体664は、好ましくは多孔メッシュまたは膜である。これは、前記支持体の長いシート上に、ライン643、646、および場合によってライン648を形成し、次いで、支持体をラインに垂直方向で切って、複数の支持体664を形成することによって作成される。コンジュゲート・パッド643は、ビーズを含有し、これらは各々、第一の抗体にコンジュゲート化され、第一の抗体−ビーズ・コンジュゲートを形成する。第一の抗体は、試験試料中のファージに選択的に結合する。検出ライン646および対照ライン648は、どちらも試薬ラインであり、そして各々固定化ゾーンを形成し;すなわち、これらは適切な方式で、バクテリオファージまたは他の生物学的マーカーと相互作用する物質を含有する。好ましい態様において、相互作用は、バクテリオファージまたは他の生物学的マーカーを固定化するものである。検出ライン646は、好ましくは、固定化された第二の抗体を含み、抗体ライン646は、ストリップに沿った流れの方向に垂直であり、そして流れの中のファージのかなりの部分を捕捉するのに十分に密である。第二の抗体もまた、ファージに特異的に結合する。第一の抗体および第二の抗体は、同一であってもまたはなくてもよい。いずれも、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体であってもよい。場合によって、ストリップ640には、第三の抗体を含む第二の試薬ライン48が含まれてもよい。第三の抗体は、第一および第二の抗体の1以上に同一であってもまたはなくてもよい。第二の試薬ライン648は、アッセイが適切に機能したかどうかを試験するための内部対照ゾーンとして働きうる。
【0030】
試験試料の1以上の滴を試料パッドに添加する。ターゲット細菌が元来の未加工試料中に存在したならば、試験試料は、好ましくは、親ファージならびに子孫ファージを含有する。試験試料は、側方流動ストリップ640に沿って、ストリップの反対の端の吸着剤パッド652に向かって流動する。ファージ粒子はコンジュゲート・パッドに沿って膜に向かって流動するにつれて、第一の抗体−ビーズ・コンジュゲートの1以上を取り上げて、ファージ−ビーズ複合体を形成する。ファージ−ビーズ複合体が第二の抗体の列646上を移動するにつれて、複合体は、固定化され、そして濃縮された第一の抗体−ビーズ−ファージ−第二の抗体の複合体を形成する。十分なファージ−ビーズ複合体が、固定化された第二の抗体の列646に結合したならば、ラインは検出可能になる。ラインの検出可能性は、ビーズ複合体の種類に応じる。当該技術分野に知られるように、抗体は、色ラテックス、金粒子、あるいは蛍光磁性、常磁性、超常磁性、または超磁性マーカー、ならびに他のマーカーにコンジュゲート化されていてもよく、そして色として、または他の適切な指標によって、視覚的にまたは別の方式のいずれかで、検出されてもよい。ラインは、ターゲット微生物(単数または複数)が未加工試料中に存在したことを示す。ラインが形成されなければ、ターゲット微生物は未加工試料に存在しないか、または側方流動ストリップ640を用いて検出するにはあまりにも低い濃度でしか存在しなかったことになる。この試験が確実に働くためには、親ファージだけで側方流動ストリップ上に可視のラインが産生されるのに十分なほど親ファージが多くないように、未加工試料に添加される親ファージの濃度が十分に低くなければならない。抗体−ビーズ・コンジュゲートは、バクテリオファージまたはバクテリオファージに関連する生物学的物質と相互作用するように設計されている色減速剤(moderator)である。これらを固定化ゾーン646に固定すると、これらは、固定化ゾーンの変色を引き起こす。側方流動ストリップおよびプロセスのより完全な説明は、本明細書に完全に開示されるのと同じ度合いまで本明細書に援用される、2005年1月6日公開の米国特許出願公報第2005/0003346号に提供される。
【0031】
多くの他のファージに基づく方法および装置を用いて、微生物を同定し、そして/または抗生物質耐性試験または抗生物質感受性を決定してもよく、すなわちプロセス26、27、28、29、30、64、70、71、424、425、426、427、および428426などにおいて、用いるかまたは部分的に用いてもよい。こうしたプロセスの例は、以下の刊行物に開示されている:
米国特許:
David M. Youngに対する1978年8月1日発行の第4,104,126号
Teodorescuらに対する1989年1月10日発行の第4,797,363号
Ulitzurらに対する1989年8月29日発行の第4,861,709号
Douglas H. Keithに対する1992年2月4日発行の第5,085,982号
Entisらに対する1992年12月1日発行の第5,168,037号
Reesらに対する1996年3月12日発行の第5,498,525号
Jurgensenらに対する1997年8月12日発行の第5,656,424号
Rayらに対する1997年10月21日発行の第5,679,510号
Reesらに対する1998年3月3日発行の第5,723,330号
Schererらに対する1998年10月20日発行の第5,824,468号
Michael F. Sandersに対する1999年3月30日発行の第5,888,725号
Michael F. Sandersに対する1999年6月22日発行の第5,914,240号
Wicksらに対する1999年9月28日発行の第5,958,675号
Stuart Mark Wilsonに対する1999年11月16日発行の第5,985,596号
Wicksらに対する2000年7月18日発行の第6,090,541号
Corteseらに対する2001年7月24日発行の第6,265,169 B1号
Jacobs, Jr.らに対する2001年10月9日発行の第6,300,061 B1号
Cherwonogrodzkyらに対する2002年3月12日発行の第6,355,445 B2号
Changらに対する2002年8月6日発行の第6,428,976 B1号
Cherwonogrodzkyらに対する2002年8月20日発行の第6,436,652 B1号
Adamsらに対する2002年8月20日発行の第6,436,661 B1号
Stuart Mark Wilsonに対する2002年10月8日発行の第6,461,833 B1号
Stuart Mark Wilsonに対する2003年2月25日発行の第6,524,809 B1号
Saylerらに対する2003年4月8日発行の第6,544,729 B2号
Hiroshi Nakayamaに対する2003年4月29日発行の第6,555,312 B1号
米国公開出願
Stefan Millerによる2002年9月12日公開の第2002/0127547 A1号
Stefan Millerによる2004年6月24日公開の第2004/0121403 A1号
Andersonらによる2004年7月15日公開の第2004/0137430 A1号
Voorheesらによる2005年1月6日公開の第2005/0003346 A1号
外国特許公報
Bittnerらによる1991年7月31日公開のEPO 0 439 354 A3
Michael Frederick Sandersによる1994年3月31日公開のWO 94/06931
Michael John Gassonによる2003年4月9日公開のEPO 1 300 082 A2
Madonnaらによる2003年10月23日公開のWO 03/087772 A2
他の刊行物
Favrinら, “Development and Optimization of a Novel lmmunomagnetic Separation− Bacteriophage Assay for Detection of Salmonella enterica Serovar Enteritidis in Broth”, Applied and Environmental Microbiology, January 2001, pp.217−224, Volume 67, No. 1
前述の刊行物はすべて、本明細書に完全に開示されるのと同じ度合いまで本明細書に援用される。バクテリオファージに基づく他のいかなるプロセスもまた用いてもよい。
【0032】
本発明の特徴は、検出プロセス22、62、300または装置350およびファージに基づく微生物IDプロセスの組み合わせの相乗的な性質である。商業的に入手可能なファージに基づくIDプロセスが本開示以前に発展してこなかった理由は、今日までに最も有効である、ファージに基づくIDプロセスが、多数の細菌の存在を必要としたことである。しかし、本発明は、血液培養プロセス410などの典型的な検出プロセスが完了した際、10以上の細菌が存在することを認識する。本発明は、これが、ファージに基づくIDプロセスが迅速にそして有効に進行するために十分であることを認識する。一般的に、血液培養プロセス510は、完了まで6〜18時間かかる。先行技術の血液培養試験と組み合わせて用いられる慣用的細菌培養プロセスは、一般的に、完了まで12〜36時間かかる。先行技術の血液培養試験とともに用いられる慣用的な抗生物質感受性試験は、完了まで、24〜36時間の間のいずれかの時間がかかる。したがって、慣用的な血液培養試験は、細菌、およびその細菌に対して用いる最適な抗生物質を同定する、完全な結果に至るまで、42〜90時間の間のいずれかの時間がかかる。この時間のうち、細菌を同定し、そして最適な抗生物質を決定するのに、血液培養完了後36〜72時間が必要であった。比較すると、本発明記載の血液培養試験システムは、血液培養完了後、1〜6時間しかかからない。
【0033】
本発明の別の特徴は、ファージに基づく微生物IDプロセスが生存および死亡細菌を区別することである。これは、抗生物質耐性試験または抗生物質感受性試験、食物が放射線照射されているさいの食物適用、または死んだ細菌が存在している可能性もあるいかなる他の適用にも非常に重要である。したがって、本発明は、生存および死亡細菌を区別することが不可能であるかまたは困難である、核酸に基づく技術(PCRなど)、免疫学的試験、アプタマーなどの他の比較的迅速なID試験に勝る、重要な利点を提供する。
【0034】
本発明の別の特徴は、ファージに基づく微生物IDプロセスが、分子法などの他の細菌同定試験より、より単純でそしてより安価であることである。これは、比較的安価なままであり、一方、同時に、有意に加速された、血液培養システムを可能にする。本発明のさらなる特徴は、抗生物質耐性サブプロセス28、30、70、428、426などもまた単純であり、そして慣用的な抗生物質耐性試験または抗生物質感受性プロセスと類似のプロトコルにしたがうことが可能であり、したがって訓練がほとんど必要でないことである。
【0035】
本発明の別の特徴は、本発明は、血液培養プロセスなどの検出プロセスが、ファージに基づく微生物IDプロセスのための、優れたプレスクリーニング法として働くことを認識する。血液培養プロセスにおいて、プロセシングされる血液試料のおよそ93%が陰性結果を生じる。したがって、ファージに基づくアッセイは、試験する総血液試料の約7パーセントにしか適用する必要がなく、そしてこれらの試料の大部分が細菌を含有することが知られる。選択した生物に特異的であり、感度が高く、単純、迅速、および/または経済的であり、そして多くの新規特徴を有する、微生物検出法が記載されてきた。図に示し、そして本明細書内に記載する特定の態様は、例示の目的のためであり、そして本発明を限定すると見なしてはならず、本発明は、請求項に記載されることを理解しなければならない。さらに、当業者がここで、本発明の概念から逸脱することなく、多くの使用および記載する特定の態様の修飾を行ってもよいことが明らかである。同等の構造およびプロセスを、記載する多様な構造およびプロセスの代わりに用いてもよく;本発明の方法のサブプロセスは、いくつかの場合、異なる順で実行してもよく;または多様な異なる材料および要素を用いてもよい。その結果、本発明は、記載する微生物検出装置および方法に存在し、そして/またはそれらが所持する特徴のありとあらゆる新規特徴および特徴の新規組み合わせを含むと見なされるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】図1は、微生物検出試験とファージに基づく微生物同定プロセスを組み合わせて、微生物検出および微生物同定プロセスを連続して実行する、本発明記載の典型的なアッセイを例示する。
【図2】図2は、微生物検出および微生物同定プロセスを平行して実行する、本発明記載の別の典型的なアッセイを例示する。
【図3】図3は、血液培養細菌検出試験と、ファージに基づく微生物同定試験を組み合わせた、本発明記載の典型的なプロセスを例示する。
【図4】図4は、自動化血液培養細菌検出試験と、ファージに基づく微生物同定試験を組み合わせた、本発明記載の好ましいプロセスを例示する。
【図5】図5は、本発明記載の典型的な抗生物質耐性試験または抗生物質感受性試験を例示する。
【図6】図6は、本発明記載の側方流動微生物検出デバイスの側平面図を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料中に存在する微生物を同定する方法であって:
(a)前記微生物を同定することなく、前記試料中の微生物の存在を検出可能な試験を前記試料に対して実行し;
(b)前記実行が微生物の存在を検出しなかった場合、陰性結果を宣言し;そして
(c)前記実行が、前記試料中の微生物の存在を検出した場合、ファージに基づく微生物同定プロセスを用いて、前記試料中に存在する微生物を同定する
工程を含む、前記方法。
【請求項2】
前記試料に対する抗生物質耐性試験または抗生物質感受性試験を実施することをさらに含む請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記同定が、第一の試料に対して実行され、前記実施が、第二の試料に対する抗生物質耐性試験を実施することを含み、そして前記抗生物質感受性試験が:前記の第一の試料中の前記微生物の前記同定、および前記の第二の試料に対する前記抗生物質耐性試験の前記実施を含む、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記実施が、複数の試料に対する複数の抗生物質耐性試験を実施することを含み、前記抗生物質耐性試験各々が、異なる抗生物質または抗生物質の異なる濃度を利用する、請求項2記載の方法。
【請求項5】
前記抗生物質耐性試験または前記抗生物質感受性試験が、ファージに基づく抗生物質耐性試験またはファージに基づく抗生物質感受性試験を含む、請求項2記載の方法。
【請求項6】
前記同定が比色試験を含む、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記実行が、前記試料中の微生物の存在を検出可能な複数の異なる試験を行うことを含む、請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記微生物が細菌であり、そして前記の複数の異なる試験が、血液培養、自己蛍光、グラム染色、ライト染色、アクリジンオレンジptl、グルコース、ディップスティック、シリコン・チップ上窒化物、マイクロ波共鳴空洞、または免疫学的方法からなる群より選択される、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記の複数の試験が、自動化血液培養試験およびグラム染色試験を含む、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記のファージに基づく微生物同定プロセスが:イムノアッセイ法、アプタマーに基づくアッセイ、MALDIを含む質量分析、およびフローサイトメトリーからなる群より選択される1以上の試験を含む、請求項1記載の方法。
【請求項11】
前記イムノアッセイ法が、ELISA、ウェスタンブロット、ラジオイムノアッセイ、免疫蛍光、側方流動イムノクロマトグラフィー(LFI)、およびSILAS表面を用いる試験からなる群より選択される、請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記微生物が細菌であり、そして前記実行が、血液培養、自己蛍光、グラム染色、ライト染色、アクリジンオレンジptl、グルコース、ディップスティック、シリコン・チップ上窒化物、マイクロ波共鳴空洞、または免疫学的方法からなる群より選択される、1以上の方法を含む、請求項10記載の方法。
【請求項13】
試料中に存在する微生物を同定する方法であって:
(a)前記微生物を同定することなく、前記試料中の微生物の存在を検出可能な試験を前記試料に対して実行し;そして
(b)前記実行を行いながら、ファージに基づく微生物同定プロセスを用いて、前記試料中に存在する微生物を同定する
工程を含む、前記方法。
【請求項14】
前記実行が微生物の存在を検出しなかった場合、陰性結果を宣言することをさらに含む請求項13記載の方法。
【請求項15】
血液試料中に存在する細菌を同定する方法であって:
(a)前記血液試料、および細菌の増殖に適した栄養培地を混合して;
(b)前記混合試料を、自動化血液培養装置中に入れて、前記血液試料中に細菌が存在するかどうかを決定して;そして
(c)前記自動化血液培養装置中で、細菌が存在すると決定された場合、前記混合試料に対して、ファージに基づく微生物同定プロセスを実行して、前記血液中に存在する細菌を同定する
工程を含む、前記方法。
【請求項16】
前記混合試料に対して、抗生物質耐性試験または抗生物質感受性試験を実施することをさらに含む請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記抗生物質耐性試験または前記抗生物質感受性試験が、ファージに基づく抗生物質耐性試験またはファージに基づく抗生物質感受性試験を含む、請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記のファージに基づく同定プロセスが比色試験である、請求項15記載の方法。
【請求項19】
前記自動化血液培養装置中で、細菌が存在すると決定された場合、前記混合試料に対して、グラム染色分析を行うことをさらに含む請求項15記載の方法。
【請求項20】
血液試料中に存在する細菌を同定する方法であって:
(a)前記血液試料の少なくとも第一の部分、および細菌の増殖に適した栄養培地を混合して、細菌増殖試料を産生し;
(b)自動化血液培養装置中に、前記細菌増殖試料の少なくとも第一の部分を入れて、細菌が前記血液試料中に存在するかどうかを決定し;そして
(c)前記血液培養装置が、細菌が前記血液試料中に存在するかどうかを決定するのと同時に、ファージに基づく微生物同定プロセスを実行して、前記血液中に存在するいかなる細菌も同定する
工程を含む、前記方法。
【請求項21】
ファージに基づく微生物同定プロセスの前記実行が、前記細菌増殖試料の第二の部分に対して行われる、請求項20記載の方法。
【請求項22】
前記混合が、前記血液試料の第二の部分を、前記細菌に付着可能であるかまたは感染可能な量のファージと混合して、ファージ曝露試料を生成することを含み、そして前記実行が、前記ファージ曝露試料に対して、前記のファージに基づく微生物同定プロセスを行うことを含む、請求項20記載の方法。
【請求項23】
前記混合が、細菌増殖に適した栄養培地と、前記の第二の部分または前記血液試料を混合することを含む、請求項22記載の方法。
【請求項24】
前記のファージ曝露試料を第一の分画および第二の分画に分割することをさらに含み;そして前記実行が、前記の第一の分画に対して前記のファージに基づく同定プロセスを行い、そして前記の第二の分画に対して抗生物質耐性試験または抗生物質感受性試験を実施することを含む請求項23記載の方法。
【請求項25】
試料中に存在する微生物が、抗生物質に耐性であるかまたは感受性であるかを決定する方法であって:
(a)前記微生物を同定することなく、前記試料中の微生物の存在を検出可能な試験を前記試料に対して実行し;
(b)前記実行が微生物の存在を検出しなかった場合、陰性結果を宣言し;そして
(c)前記実行が、前記試料中の微生物の存在を検出した場合、ファージに基づく抗生物質耐性または感受性プロセスを用いて、前記微生物が、抗生物質に耐性であるかまたは感受性であるかを決定する
工程を含む、前記方法。
【請求項26】
前記実行が、自動化血液培養プロセスを含む、請求項25記載の方法。
【請求項27】
試料中に存在する微生物が、抗生物質に耐性であるかまたは感受性であるかを決定する方法であって:
(a)前記微生物を同定することなく、前記試料中の微生物の存在を検出可能な試験を前記試料に対して実行し;そして
(b)前記実行を行いながら、ファージに基づく抗生物質耐性または感受性プロセスを用いて、前記微生物が抗生物質に耐性であるかまたは感受性であるかを決定する
工程を含む、前記方法。
【請求項28】
前記実行が、自動化血液培養プロセスを含む、請求項27記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2009−508490(P2009−508490A)
【公表日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−531364(P2008−531364)
【出願日】平成18年9月15日(2006.9.15)
【国際出願番号】PCT/US2006/036070
【国際公開番号】WO2007/035504
【国際公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(508082164)マイクロファージ・インコーポレーテッド (3)
【Fターム(参考)】