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バクテリオファージ含有治療薬
説明

バクテリオファージ含有治療薬

【課題】緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)種の病原性細菌により引き起こされる動物及びヒトの感染症に対する制御薬として、バクテリオファージの組み合わせを含む治療用組成物の提供、および生物膜形成を特徴とする細菌感染症、特に、例えばイヌの耳感染症のような緑膿菌感染症を含む感染症を処置する目的での、抗生物質と併用したバクテリオファージの使用方法の提供。
【解決手段】(i)1若しくはそれ以上のバクテリオファージ、及び(ii)1若しくはそれ以上の抗生物質、を同時、別個又は連続投与するための複合製品の製造における、(i)及び(ii)の使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細菌を死滅させるウイルス(バクテリオファージ)を含む治療用及び診断用調製物に関する。特に、本発明は好ましい態様において、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)種の病原性細菌により引き起こされる動物及びヒトの感染症に対する制御薬として、バクテリオファージの組み合わせを含む治療用組成物を提供する。本発明はまた、生物膜形成を特徴とする細菌感染症、特に、例えばイヌの耳感染症のような緑膿菌感染症を含む感染症を処置する目的での、抗生物質と併用したバクテリオファージの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
抗生物質は、長年の間、細菌感染症という問題に対する「解答」としてとらえられてきた。この見方は、最近10年間のうちに見られた抗生物質に対する広範囲な(時には完全な)抵抗性の確立まで続いた。多くの場合、高価な「最終手段の薬剤」(例えば黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)に対するバンコマイシン)を使用することが必要であり、それらの薬剤は、通常複雑な投与経路を要し、毒性副作用を示し、長期の病院での処置を必然的に伴う。
【0003】
これらの薬剤に対してさえ、抵抗性は憂慮すべきレベルに達しつつある。現在、細菌はいかなる抗生物質に抵抗するようにも適合しうることが明らかになっている。リネゾリドのような新世代薬剤でさえ、すでに抵抗性が生じてきており[Mutnickら(2003) An. Pharmacother. 37:769-774;Rahimら(2003) Clin Infect Dis 36: E146-148]、そして、新規の抗生物質が生成され、評価され、規制認可を受けるよりも速く、抵抗性が確立することが近年の発達により明らかである。
【0004】
抗生物質処置のさらなる欠点は、その特異性の欠如である。抗生物質は広範囲の細菌を死滅させ、このことは、好ましくない、多くの場合有害な細菌による、身体への再定着を引き起こしうる。それゆえ、特定の細菌種に対する特異性を示し、それにより正常細菌叢においてほとんど抵抗性を引き起こさない抗細菌処置が必要とされている。
【0005】
抗細菌治療の新規の形態の必要性は、グラム陰性好気性細菌である緑膿菌の感染症の場合によってよく例示される。
【0006】
緑膿菌は、重篤な日和見感染細菌性病原体である。緑膿菌により引き起こされる感染症としては以下のものが挙げられる:
イヌの外耳炎及び中耳炎、体表での生物膜に基づく定着を典型とし、同系交配(純血種)のイヌに一般的な耳感染症;
ヒトの外耳炎(「スイマーズイヤー」)並びに、ヒトの他の耳感染症及び他の局所感染症(緑膿菌性角膜炎及び緑膿菌性毛包炎を含む);
ヒトでの熱傷部及び皮膚移植片の感染症;
院内感染症;
嚢胞性線維症(CF)患者での肺感染症。
【0007】
院内(病院内獲得)感染症の10〜15%は緑膿菌によるものであり、米国だけで年間200万症例である。一部の場合には、発生頻度は更に高い。1年間に米国の病院及び熱傷治療センターで処置される150,000人前後の熱傷患者のうち、26%が緑膿菌感染症を有している。緑膿菌は抗生物質に対するその抵抗性で有名であり、従ってこれによって引き起こされる感染症は処置が難しい場合がある。その自然界での生息場所の1つは土壌であり、そこで抗生物質を産生する生物に晒されている。このことが、染色体上の遺伝子及びプラスミドとして知られる移動可能な遺伝的エレメントの両者によってコードされる抵抗性メカニズムの発達をもたらしてきたと考えられる。緑膿菌外膜の性質は、抵抗性の付与において重要である。さらなる抵抗性メカニズムは、生物膜として知られる複雑な層として利用可能な表面上での増殖傾向であり[Donlan (2002) Emerging Infectious Diseases 8: 881-890、http://www.cdc.gov/ncidod/EID/vol8no9/02-0063.htm;Fletcher & Decho (2001) Biofilms in Encyclopaedia of Life Sciences, Nature Publishing, London;http://www.els.net]、これは個々の細胞を死滅させるために必要とする濃度よりもはるかに高い濃度の抗生物質に抵抗性である[Chenら(2002) Pseudomonas infection;http://www.emedicine.com/PED/topic2701.htm;Qarahら(2001) Pseudomonas aeruginosa infections;http://www.emedicine.com/MED/topic1943.htm;Todar K. (2002) Todar’s Online Textbook of Bacteriology: Pseudomonas aeruginosa;http://textbookofbacteriology.net/pseudomonas.html;Iglewski B.H (1996) Pseudomonas. Medical Microbiology 第4版, S. Baron (編). University of Texas;http://gsbs.utmb.edu/microbook/ch027.htm]。このことの実際上の効果は嚢胞性線維症患者での感染症によって示されており、これら患者のほとんど全員が最終的に、(たとえ単離株が実験室では感受性であるように見えたとしても)抗生物質の使用によって排除することができない細菌株に感染することになる[Hoiby N (1998) Pseudomonas in cystic fibrosis: past, present, future. European Cystic Fibrosis Society Joseph Levy Memorial Lecture;http://www.ecfsoc.org/pa_review/nh_lect.html]。
【0008】
緑膿菌は、生物膜形成に寄与する細胞外成分を産生する一定範囲の遺伝子(最も顕著なものはalgC遺伝子)を発現し、これらは多くの場合、本質的には多糖である(Friedman及びKolter, Mol. Microbiol. (2004) 3, 675-690)。そのような生物膜形成は現在、抗生物質に対する増大する抵抗性に寄与する、多くの重要な病原性細菌の性質として知られている。そのような生物膜は、分泌された細胞外マトリックスにより支持され且つ取り囲まれた2以上のタイプの細菌を含み、細菌が海洋礁(marine reef)から歯牙エナメル質に至る表面に定着するのを助けることがある。生物膜は、細菌を表面に付着させ、それがなければ支えきれないであろう集団密度を達成させる。これらは、抗生物質に対するのみならず、重金属、漂白剤及び他の洗浄剤のような多くの環境ストレスに対する抵抗性を増大させる。かつては、抗生物質抵抗性への生物膜形成の貢献は主として拡散の制限による物理的なプロセスに起因するものであると考えられていたが、一部の生物膜は抗生物質を捕捉する特異的な能力を有しているようであるとのことが、より最近の証拠から示されてきている(Mahら, Nature (2003) 426, 306-310)。生物膜内の細菌は、単一細胞(「プランクトン性」)形態で増殖する同株の細菌よりも、抗生物質に対して100〜1000倍抵抗性を有することが知られている。この増大した抵抗性は、実験室試験では抗生物質に対して感受性であるかに見える細菌が、臨床的環境では治療に抵抗性でありうることを意味する。たとえ一部分が除去されても、生物膜は、抗生物質が存在しなくなったとたん迅速な定着をもたらす抵抗性貯蔵庫を提供しうる。従って、生物膜が多くのヒトの疾患において主要な因子であることは明らかである。
【0009】
化学的処置は生物膜に対して用いるには適さず、なぜならこれはまさに生物膜が対抗すべく進化してきたものであり、生物膜が細菌性病原体を支援する多くの表面は、厳しい研磨にはあまり適していないからである。物理的磨耗は生物膜を破壊する手段を提供する。しかしながら、生物膜が細菌性病原体を支援する多くの表面は、厳しい磨耗にはあまり適していない。例えば、創傷部又は熱傷部の表面は著しく敏感でデリケートである。磨耗に適していて通常用いられているところであっても、生物膜の除去は制限される。歯牙表面の口腔内歯垢は生物膜であり、習慣的な歯磨きによって部分的に除去される。しかしながら、細菌は磨かれなかった表面(例えば歯の間の隙間)に維持され、除去された表面に迅速且つ効果的に再定着しうる。このことから、生物膜を除去する既存の手法は有効性に限度があることが明らかである。
【0010】
生物膜の問題に加えて、いずれの場合もほんのわずかな抗生物質(例えばフルオロキノロン類、ゲンタマイシン及びイミペネム)しか緑膿菌に対して有効な作用をもたらすことができず、これらの抗生物質でさえ、全ての株に対して有効ではない。多剤抵抗性は一般的であり、増加してきている[Friedland I.ら(2003). Diagnostic Microbiology and Infectious Disease 45:245-50;Henwood ら(2001). Journal of Antimicrobial Chemotherapy 47: 789-799]。1999年6月のU.S. National Nosocomial Infections Surveillance System Report[Gerberding J.ら(2001). National Nosocomial Infections Surveliance (NNIS) System Report, 1992年1月〜2001年6月のデータのまとめ, 2001年8月刊行. U.S. Department of Health and Human Services, Atlanta, http://www.cdc.gov/ncidod/hip/NNIS/2001nnis_report.PDF]は、1999年にICUの患者の院内感染から単離した緑膿菌の抗生物質抵抗性が、調査した全てのクラスの抗生物質に対して、1994〜98年の期間に比べて増加していたと述べている。従って、緑膿菌感染症の制御に対する新規な手法の必要性が実証されている。これについて、本発明者は新規のバクテリオファージに基づく治療の使用によってこの問題に対処している。
【0011】
バクテリオファージ(単に「ファージ」としても知られる)は細菌内で増殖するウイルスである。その名前は、「細菌の捕食者」と訳され、ほとんどのバクテリオファージが、それらが増殖する際に、次世代のバクテリオファージを放出しつつ細菌宿主を死滅させる事実を反映している。バクテリオファージに関する初期の研究は、多くの要因により妨げられ、そのうちの1つは、バクテリオファージには1つのタイプしかない、すなわち全ての細菌を死滅させる非特異的なウイルスしかないと広く信じられていたことである。実際には、バクテリオファージの宿主域(それらが感染可能な細菌のスペクトル)は多くの場合非常に特異的である。この特異性は、バクテリオファージの集団を、標的細菌のみを特異的に排除するために選択しうるという治療上の長所として考えることができる。一方で、抗生物質は広範な細菌を死滅させ、それらの使用は結果として正常細菌叢の破壊をもたらし、好ましくない、多くの場合有害な細菌による身体への再定着を引き起こす。
【0012】
バクテリオファージの宿主特異性によりもたらされる治療上の利点にもかかわらず、この特性は標的株の範囲の広さを達成することが困難でありうるという欠点を有する。この理由から、特定のタイプの細菌感染症との関係で広い標的化能を有するバクテリオファージの組み合わせを見出すことに関心が持たれてきた(例えば、Pirsi, The Lancet (2000) 355,1418を参照)。
【0013】
これについて、本発明者は緑膿菌に対してそれぞれ異なる株特異性を有する6種類のバクテリオファージからなり、緑膿菌感染症(特に、例えばイヌの耳感染症)の広範な標的化に特に好適なバクテリオファージの組み合わせを確立している。この組み合わせは、イヌの外耳炎及び他のイヌの耳感染症から採取した緑膿菌株の90%を破壊することが可能であることが明らかになった。さらに、そのようなファージの組み合わせは、抗生物質処置と相乗的に用いて有効性を改善しうることが証明されている。結果として、ここで、ファージ/抗生物質併用治療は、生物膜形成を特徴とする細菌感染症に取り組むための新規の一般的で有利な手法を提供することが推測される。
【0014】
ファージ及び抗生物質治療は、以前に東ヨーロッパで一緒に用いられてきているが(例えばBradbury, The Lancet (February 2004) 363, 624-625を参照)、生物膜形成との特異的な関連は全くなかった。さらに、バクテリオファージが複製に細菌の代謝機構を利用しており、抗生物質によってこれが阻害されるので、抗生物質はバクテリオファージ治療の使用に悪影響を及ぼしうることが示唆されてきた(Payne及びJanssen, Clinical Pharmacokinetics (2002) 42, 315-325)。
【発明の開示】
【0015】
発明の概要
従って、一態様では、本発明は生物膜形成を特徴とする細菌感染症(例えば緑膿菌を含むか又はそれからなる細菌感染症)を処置する目的で、(i)1若しくはそれ以上のバクテリオファージ、及び(ii)1若しくはそれ以上の抗生物質、を同時、別個、又は連続投与するための複合製品の製造における、(i)及び(ii)の使用を提供する。
【0016】
本明細書において、そのような細菌感染症の処置とは、治療的処置又は予防的処置のいずれかを意味することが理解されるであろう。バクテリオファージは比類なく予防用途に適している。なぜなら:
化学薬剤は、有効であるためには、特異的な最小レベルを超えて用いなければならない。より低いレベルでは、良い場合でも効果がない。最悪の場合、それらは抵抗性の発達を促しうる。
対照的に、複製型の生物学的薬剤は、非常に低い投入量でさえも、必要なときに必要な治療的用量をもたらす内在的な能力を有している。
【0017】
本発明はまた、緑膿菌に対して活性で、それぞれ異なる株特異性を示すバクテリオファージの集団(panel)を提供する。より具体的には、本発明は2003年6月24日にNational Collection of Industrial and Marine Bacteria、Aberdeen、英国に、NCIMB41174、NCIMB41175、NCIMB41176、NCIMB41177、NCIMB41178、NCIMB41179、NCIMB41180及びNCIMB41181として寄託された8種類のバクテリオファージ、並びに緑膿菌を標的とする能力を保持したそれらの変異株を提供する。該集団のメンバーは個別に用いてもよいが、これらのファージの組み合わせを用いることが好ましく、それにより標的株有効性を広げることができる。上記のように、これらのファージのうち6種類、とりわけN41174〜N41179の組み合わせは、特に抗生物質処置との併用において、緑膿菌を含むイヌの耳感染症の処置に特に有利であることが見出されており、また他の緑膿菌感染症の処置にも有利に用いることができる。そのようなファージ処置又はファージと抗生物質との併用処置はまた、アルギナーゼの使用と組み合わせてもよい。さらに、それらの処置は予防的処置を包含するものと理解されるであろう。
【0018】
本発明はまた、生物膜形成を特徴とする細菌汚染を排除、軽減又は防止する、非治療的方法にも及ぶ。一実施形態では、該方法は、該汚染の細菌を標的とすることが可能な1若しくはそれ以上のバクテリオファージ及びそれと同時、別個、又は連続して1若しくはそれ以上の抗生物質又は消毒剤を、汚染部位若しくはその予測部位に対して適用することを含む。別の実施形態では、緑膿菌を含むか又はそれからなる細菌汚染を排除、軽減又は防止する方法であって、上記の寄託バクテリオファージの1若しくはそれ以上を汚染部位又はその予測部位に対して適用することを含む方法が提供される。
【0019】
また、本発明のファージを、標的緑膿菌株の存在を検出する方法に用いてもよい。従って、本発明は、in vitroサンプル(例えば診断のための、ヒト又は動物に由来する生物学的サンプル)中の緑膿菌を検出する方法であって、該サンプルを本発明の1若しくはそれ以上のバクテリオファージと接触させ、そして該バクテリオファージが当該サンプル中の細菌を死滅させることが可能かどうか決定することを含む方法を提供する。
【0020】
本発明はまた、上記において挙げられた8種類の寄託バクテリオファージから選択されるバクテリオファージの指標となる細菌株を特定する方法であって、いくつかの細菌株における該バクテリオファージによるプラーク形成を測定するステップ、及び該寄託バクテリオファージのうちの他のいずれよりも、当該バクテリオファージにより少なくとも1000倍多くのプラーク形成を可能にする株を選択するステップを含む方法を提供する。
【0021】
治療用途を意図する調製物中に存在するバクテリオファージを特定するために、及び/又は該治療用途中若しくはその後に取得した組織サンプル中に存在する株を特定するために用いることができる方法によって特定される細菌株もまた提供される。該細菌株はまた、バクテリオファージ調製物中の、株に感染することが可能な特定のバクテリオファージ量を測定するために、対応株(count strain)として用いることもできる。
【0022】
図面の簡単な説明
図1
緑膿菌の個々の株に対するバクテリオファージの有効性を示す。名前が太字で示されている株は抵抗性であった。
□:プラークが観察された
■:プラークなし
×:(1)ある程度の希釈可能な阻害が観察されたが、明らかなプラークはなし、又は(2)目視評価では、緑膿菌単離株はあまり感受性ではないようである、かのいずれか
ND:不実施。
6種類のバクテリオファージBC−BP−01、BC−BP−02、BC−BP−03、BC−BP−04、BC−BP−05及びBC−BP−06(それぞれ寄託バクテリオファージNCIMB41174、NCIMB41175、NCIMB41176、NCIMB41177、NCIMB41178及びNCIMB41179に対応する)は併せて、スクリーニングを行った緑膿菌株の全部のうち90%をカバーした。
【0023】

【0024】
図2
BC−BP−03対応株(count strain)の特定を示す。感染させた対応株の平板は以下の通りである:
A:未感染
B:BC−BP−03(1,000,000倍希釈)感染
C:BC−BP−01(10倍希釈)感染
D:BC−BP−04(10倍希釈)感染
E:BC−BP−02(10倍希釈)感染
【0025】
図3
バクテリオファージBC−BP−04を用いて処置したイヌ耳の感染症の解消を示す:
A:BC−BP−04の400感染単位を用いた処置の24時間後の右耳外観
B:バクテリオファージ処置を受けていない左耳外観
【0026】
図4
6種類のバクテリオファージNCIMB41174〜NCIMB41179を含有する複合バクテリオファージ調製物(BioVet−PA)を用いた処置2日後の、抗生物質抵抗性耳炎の6頭のイヌにおける、初期レベルに対する%としての総合臨床スコア(閉塞、紅斑、潰瘍、排出物タイプ、排出物容量、異臭)の改善を示す(太実線が平均)。
【0027】
図5
処置2日後の、同じ処置グループのイヌの初期レベルに対する%としての、シュードモナス(Pseudomonas)細菌数/デトリタスgを示す(太実線が平均)。
【0028】
図6
処置2日後の、同じ処置グループのイヌの最初のレベルに対する%(対数目盛)としての、バクテリオファージ数/デトリタスgを示す(太実線が平均)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
発明の詳細な説明
本発明は、病原性細菌に感染する自然発生ウイルスの集団(panel)を利用する。そのような集団は、臨床試験プロセスを通じた評価に好適な治療用医薬へと製剤化することができる。上記のように、一態様では、本発明は生物膜形成を特徴とする細菌感染症を処置する目的で、(i)1若しくはそれ以上のバクテリオファージ、及び(ii)1若しくはそれ以上の抗生物質を同時、別個、又は連続投与するための複合製品の製造における、(i)及び(ii)の使用を提供する。この目的のために、2若しくはそれ以上のバクテリオファージからなる集団を、単一の複合バクテリオファージ調製物の製造において用いてもよい。選択された集団のバクテリオファージは、好ましくは同一の細菌種に感染することが可能であり、且つ異なる株特異性を示すものとしうる。
【0030】
使用する抗生物質は、生物膜中に存在することが知られているか又は存在しているかもしれないと考えられている細菌種のうちいずれかに対して活性であると分かっている、いずれのクラスに属するものでもよい。好ましくは、1若しくはそれ以上の抗生物質を、1若しくはそれ以上のバクテリオファージの後に投与し、それにより抗生物質処置が開始される前にバクテリオファージの複製が確立されているようになる。この場合、抗生物質処置は1若しくはそれ以上のバクテリオファージの投与から数日まで遅延することができ、好ましくは1〜2、3、4、5、6、7、8、9又は10日まで遅延することができる。好ましくは、抗生物質処置が開始される前にバクテリオファージの複製が起こっていることをチェックするために、感染部位からサンプルを採取する。集団の各メンバーがそれぞれ異なる株特異性を示すものであるバクテリオファージの集団を用いる場合、該集団の少なくとも一部分が細菌感染症を標的とすることができれば十分である。これは1種類のバクテリオファージであってもよいし、又は2種類以上のバクテリオファージでもよい。
【0031】
バクテリオファージの集団を用いる場合、バクテリオファージを単一の治療用組成物の形態で提供してもよいし、又は該集団の1若しくはそれ以上のメンバーをそれぞれ含む、複数の分離した組成物として提供してもよい。好適な集団は2若しくはそれ以上、3若しくはそれ以上、4若しくはそれ以上、5若しくはそれ以上、又は6若しくはそれ以上のバクテリオファージ株から構成される。そのような集団は、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20若しくはそれ以上の異なるバクテリオファージを含んでよい。バクテリオファージは、同一のウイルス分類群に由来するものでもよいし、異なる群に由来するものでもよい。
【0032】
細菌感染症を制御する可能性を有するバクテリオファージは、生物資源調査のプロセスにより特定することができる。これは、標的細菌に富む供給源に由来する物質のアッセイ、及び標的細菌の培養物中へのそのような物質の導入による、それら作用物質の特定を含む。好適なサンプルは病院、都市その他の供給源に由来する汚水から採取することができる。
【0033】
典型的には、汚水サンプルを粉末又は液体細菌増殖培地と混合し、そして特異的なバクテリオファージの単離が望まれる細菌の標的株と混合する。
【0034】
細菌細胞に対するそれらの作用をモニターすることにより、好適なバクテリオファージの存在についてサンプルをスクリーニングする。典型的には、これは固形基質上で増殖した細菌中での透明領域(「プラーク」)の形成又は液体培養物の濁度の低下を観察することにより細菌の死滅を測定することを含む。
【0035】
上述したファージと抗生物質の併用治療での使用のための集団の形成を目的として選択されるバクテリオファージ株の各々は、典型的には同一の標的細菌種に対する活性を有するであろう。活性とは、バクテリオファージが該細菌種に感染する能力、及び感染細胞に対して有害な作用を有する能力を意味する。これは感染細胞の一部又は全部の死滅で明らかになりうる。好ましくは、バクテリオファージは標的細菌種に対する活性を有するが、他の細菌種に対しては全く活性を持たないか、より低い活性を有するであろう。
【0036】
単離後は、バクテリオファージを、その活性及び特異性を決定するために、標的細菌種の複数の株(単離株)に対してアッセイすることができる。これらの単離株は、ある細菌種に感染しているか、それが定着している患者から採取することができる。好適な単離株はまた、土壌サンプルのような、細菌標的株の天然又は環境供給源から取得してもよい。そのようなサンプルから細菌を単離する方法は当技術分野で周知である。例えば、バクテリオファージ集団を試験するために好適な緑膿菌単離株は、外耳炎、局所感染症、熱傷後感染症、院内感染症、又は他の感染症のような公知の緑膿菌感染症から取得することができる。好適な単離株はまた、土壌サンプルのような緑膿菌の天然供給源から取得してもよい。
【0037】
上記のように、個々の選択されたファージのいずれかよりも標的細菌種に対して広い株特異性を示すファージ集団を形成することが望ましい。すなわち、バクテリオファージの集団は、個々の選択されたファージのいずれかよりも、標的細菌種の株又は単離株をより多くの数死滅させることができる。
【0038】
標的細菌単離株に対するそれぞれ異なった特異性を有する複数のバクテリオファージ株を調製物中に含め、それにより調製物に個々のバクテリオファージのいずれかよりも多数の株に対する総合的な効力を与えることにより、これを達成することができる。ファージ集団は、標的種の細菌単離株の広範なスペクトルに対して有効な1若しくはそれ以上のバクテリオファージ株を含み、それにより調製物中のバクテリオファージは重複する効力を有し、一部の特定の単離株が複数のバクテリオファージの標的となり、そして抵抗性の発達を最小限に抑えるのを助けることができる。従って、標的細菌種の個々の株は、調製物を構成する1若しくはそれ以上のバクテリオファージにより死滅させられうる。単離株の一定範囲(例えば少なくとも50の単離株)に対するバクテリオファージの活性について調べることができ、得られる情報を、標的細菌種に対する複合的効力(個々のバクテリオファージのいずれかの効力よりも大きい)を有する、少なくとも2種類の異なるバクテリオファージからなる群を特定するために関連づけることができる。そのような集団の開発は、図1に示されている緑膿菌に対して有効なバクテリオファージの集団の開発に例示されている。
【0039】
バクテリオファージは、高レベルの増殖を支援する宿主(又は近縁種)の株(増殖株)中で別々に増殖させ、力価を測定し、そして治療的な濃度で混合することができる。典型的には、これは混合物中の各バクテリオファージについて用量あたり100〜100,000,000感染単位の範囲である。
【0040】
用いる各バクテリオファージの量は、標的細菌種に対するその毒力(ビルレンス)に依存するであろう。対応細菌株(すなわち、個々の見込みのある集団のメンバーに対する指標である細菌株)を集団の開発に用いることができる。対応株は、ある見込みのあるファージ集団のメンバーによって、他のいずれよりも少なくとも1000倍多くのプラーク形成を起こさせるものである。このようにして、広範囲の細菌単離株に対して確実に有効な集団を獲得することができる。
【0041】
上記のように、本発明のファージ/抗生物質併用治療は、例えば緑膿菌を含むか又はそれからなる細菌感染症を標的とするのに特に有用である。そのような感染症は、例えば、皮膚熱傷部又は他の皮膚創傷部におけるものである。それは肺内のもの、眼感染症又は耳感染症であってもよい。本発明に関して、緑膿菌を含むそのような感染症は、本質的に緑膿菌からなる感染症を含むものと理解されるであろう。従って、本発明のファージ療法は、完全に、優勢に又は顕著に緑膿菌により構成される感染症に対して適用してよい。
【0042】
既に記載したように、本発明は、広範囲の緑膿菌単離株を死滅させるのに有効であると本明細書中に示される8種類の寄託バクテリオファージ、及び同一の細菌種を標的とする能力を保持したそれらの変異株を提供する。2003年6月24日にNational Collection of Industrial and Marine Bacteria(23 St Machar Drive, Aberdeen, AB24 3RY, Scotland, UK)に寄託された当該バクテリオファージ株は以下の通りである:

【0043】
これらのバクテリオファージは、緑膿菌感染症に対処するために、治療上個々に用いてもよいし、又はファージ集団の一部として用いてもよい。例えば、本発明の使用のためのファージ集団は、上記寄託株のうち、2、3、4、5、6、若しくは7、又は8種類全てを含んでもよい。前記寄託株のいずれをも、所望の緑膿菌特異性を示すそれらの変異株で置き換えてもよい。上記のように、6種類の株BC−BP−01、BC−BP−02、BC−BP−03、BC−BP−04、BC−BP−05及びBC−BP−06によりなる集団は、単独で、又はより好ましくは抗生物質治療との併用において、例えばイヌの耳感染症を標的とするための獣医学的使用に特に適していることが見出されている。しかしながら、このファージ集団の有用性はそのような使用にとどまらない。種々の臨床的状況での緑膿菌感染症の標的化における使用が見出されうる。
【0044】
さらなる態様では、本発明は上記の8種類の寄託バクテリオファージ株及び緑膿菌を標的とする能力を保持したその変異株から選択される1若しくはそれ以上のバクテリオファージを、製薬用担体又は希釈担体と共に含む医薬組成物を提供する。好適な担体及び希釈剤としては、等張生理食塩液、例えばリン酸緩衝生理食塩液が挙げられる。組成物は非経口、筋内、静脈内、皮下、経皮、眼又は耳投与のために製剤化することができ、例えば点眼薬又は点耳薬としての投与のための液体製剤であってもよい。そのようなバクテリオファージ調製物は、直接用いるか、凍結防止剤(例えば10%スクロース)を含む水溶液若しくは他の溶液中で凍結貯蔵するか、凍結乾燥し、使用の前に再水和させるか、又は錠剤、懸濁液、軟膏、含浸包帯若しくは他の用品を含む(がこれらに限定されない)他の製剤中に安定に供給されてもよい。
【0045】
さらに別の態様では、緑膿菌を含むか又はそれからなる細菌感染症を処置する目的での、バクテリオファージ集団の同時、別個、又は連続投与のための複合製品であって、該集団の各メンバーはそれぞれ異なる株特異性を有し、且つ該集団はNCIMB41174、NCIMB41175、NCIMB41176、NCIMB411177、NCIMB41178、NCIMB41179、NCIMB41180及びNCIMB41181あるいは緑膿菌を標的とする能力を保持したそれらの変異株から選択される2若しくはそれ以上のバクテリオファージからなる、複合製品が提供される。上記のように、実証された実施形態では、該集団はNCIMB41174〜NCIMB41179の6種類のバクテリオファージからなる。これらを個々に用いてもよいし、より好ましくは単一の医薬組成物中で用いてもよい。上記の寄託バクテリオファージのうち1若しくはそれ以上を含む複合製品又は組成物は、該1若しくはそれ以上のバクテリオファージとの同時、別個、又は連続投与のための1若しくはそれ以上の抗生物質をさらに含んでもよい。そのような複合製品又は組成物は、それの代わり、若しくはそれに加えて、アルギナーゼを含んでもよい。アルギナーゼはまた、選択された1若しくはそれ以上のバクテリオファージとの、同時、別個、又は連続投与のために提供されてもよい。
【0046】
バクテリオファージの標的特異性は、それを増殖させる基質の選択によって変化しうる。すなわち、異なる基質上で増殖させた場合に、2種類の遺伝学的に同一なバクテリオファージが異なる標的特異性を示しうる。この場合、バクテリオファージをそのゲノムのヌクレオチド配列により同定することができる。上記で挙げた8種類の寄託バクテリオファージのうちの1種類と同じゲノム配列を有するバクテリオファージは、それが示す標的特異性が寄託株のものと同一でないとしても、同じバクテリオファージであるとみなされる。
【0047】
上記のように、本発明は、標的種の細菌を死滅させる能力を保持した、寄託株の変異株にも及ぶ。特に、本発明は、その由来となる株と同様であるか又はそれより改善された標的特異性を保持するこれらの株の変異株に及ぶ。従って、本発明の組成物又は複合製品中の1若しくはそれ以上のバクテリオファージは、緑膿菌に感染し、且つそれに対する活性を示す能力を保持したこれらの寄託株に由来する変異株であってもよい。
【0048】
好適な変異型バクテリオファージは、8種類の寄託株BC−BP−01、BC−BP−02、BC−BP−03、BC−BP−04、BC−BP−05、BC−BP−06、BC−BP−07及びBC−BP−08のいずれか1つに由来するものでありうる。好適な変異株は、その由来となる株と同じ標的特異性を保持していてもよい。すなわち、これが寄託バクテリオファージと同じ標的細菌種の単離株又は株に感染し、それを死滅させてもよい。同様に、これが寄託バクテリオファージと同じ細菌単離株又は細菌株に対して有効でないものであってもよい。あるいはまた、変化した標的特異性を有し、細菌標的種の特定の単離株若しくは株に感染し、それを死滅させることができる程度がより大きいか又はより小さい変異型バクテリオファージ株を用いてもよい。
【0049】
好適な変異型バクテリオファージ株は、寄託株と類似するゲノムを有していてもよい。すなわち、変異型バクテリオファージのゲノムのヌクレオチド配列が、その由来となる寄託バクテリオファージのゲノムとの配列同一性を保持していてもよい。好適な変異株は、ゲノムの全長にわたって、寄託株のゲノムとの少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%のヌクレオチド配列同一性を保持する。あるいはまた、これらの配列同一性のレベルがゲノムの一部分のみ(例えば標的特異性に必要なゲノムの部分)にわたって保持されていてもよい。一実施形態では、変異型バクテリオファージのゲノムは、以下に説明するように、さらなる治療的タンパク質をコードする遺伝子を含んでいてもよい。そのような場合、バクテリオファージゲノムは上述の程度のヌクレオチド配列同一性を有するゲノム、及び追加の治療的タンパク質の発現に必要な配列により構成されるものであってもよい。
【0050】
UWGCGパッケージは、(例えばそのデフォルト設定で用いて)配列同一性を計算するのに用いることができるBESTFITプログラムを提供する(Devereuxら(1984) Nucleic Acids Research 12, 387-395)。あるいは、例えば Altschul S. F. (1993) J Mol Evol 36:290-300;Altschul, S. F. ら(1990) J Mol Biol 215:403-10 に記載のように、同一性を計算し、又は配列を整列させるのに、PILEUP及びBLASTアルゴリズムを(典型的にはそのデフォルト設定で)用いることができる。従って、同一性はUWGCGパッケージによって、BESTFITプログラムをそのデフォルト設定で用いて計算してもよい。あるいはまた、配列同一性はPILEUP又はBLASTアルゴリズムを用いて計算することができる。BLASTはそのデフォルト設定で用いてもよい。
【0051】
BLAST解析を行うためのソフトウェアは、National Centre for Biotechnology Information (http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)から公に利用可能となっている。このアルゴリズムは、初めにハイスコア配列ペア(HSP)を特定することを含み、これは、問い合わせ配列(query sequence)中に長さWの短い文字列(word)であって、データベース配列中の同じ長さの文字列と整列したときに、一致するか又はいくつかの正に重み付けされた閾値スコアTを満たす文字列を特定することにより行われる。Tは近隣文字列スコア閾値と呼ばれる(Altschulら、上掲)。これらの最初の近隣文字列ヒットは、それらを含むHSPを見つける検索を開始するためのシード(seed)となる。文字列ヒットは、累積アライメントスコアが増大しうる限り、各配列に沿って両方向に伸長される。各方向での文字列ヒットの伸長は、以下の場合に停止する:累積アライメントスコアが、その最大達成値から量Xだけ減少したとき;負のスコアをもたらす残基アライメントが1つ以上蓄積して累積スコアが0以下になったとき;又は、いずれかの配列の末端に達したとき。BLASTアルゴリズムパラメータW、T及びXはアライメントの感度とスピードを決定する。BLASTプログラムは、デフォルト値として、文字列長(W)11、BLOSUM62スコアマトリクス(Henikoff及びHenikoff (1992) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89: 10915-10919 参照)アライメント(B)50、期待値(E)10、M=5、N=4、及び両方の鎖の比較を用いる。
【0052】
BLASTアルゴリズムでは、2つの配列の間の類似性の統計的解析を行う;例えば Karlin及びAltschul (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 5873-5787 を参照のこと。BLASTアルゴリズムによって提供される1つの類似性の尺度は最小合計確率(P(N))であり、これは、2つのポリヌクレオチド又はアミノ酸配列の間の一致が偶然に起こる確率についての指標を与える。例えば、第1の配列と第2の配列との比較における最小合計確率が約1未満、好ましくは約0.1未満、より好ましくは約0.01未満、そして最も好ましくは約0.001未満であれば、ある配列が別の配列に類似しているとみなされる。
【0053】
化学的、放射線学的方法又は当業者に周知の他の方法によって、特定のバクテリオファージに対して突然変異を作り出すことができる。そして、有用な特性を有する変異株を、感染性、物理的な又は遺伝的な特性(例えば以前には抵抗性であった細菌株への感染能力)のアッセイにより選別しうる。突然変異はまた、当業者に周知の相同組換え法により作り出してもよい。変異した配列は、欠失、挿入又は置換(それらのいずれも通常の技術により構築してよい)を含むことができる。挿入は、(例えばβ−ガラクトシダーゼ活性による)組換えウイルスのスクリーニングのための選択マーカー遺伝子(例えばlacZ)を含んでもよい。
【0054】
挿入はまた、以下により詳細に記載する、バクテリオファージとの同時投与が所望されるタンパク質をコードする配列を含んでもよい。例えば、本発明の調製物中の1若しくはそれ以上のバクテリオファージがアルギナーゼをコードする配列を含み、それにより感染細菌細胞内でアルギナーゼが発現するようにしてもよい。
【0055】
本発明のバクテリオファージ含有製品は、通常の抗生物質療法では解決が難しい多くの状況において用いることができる。また別の態様では、本発明は、生物膜形成を特徴とする細菌感染症の治療的又は予防的処置の方法であって、該感染症の細菌を標的とすることが可能な1若しくはそれ以上のバクテリオファージ及びそれと同時、別個、又は連続に1若しくはそれ以上の抗生物質を、それを必要とするヒト又は非ヒト動物に対して投与することを含む方法を提供する。一実施形態では、用いるバクテリオファージが緑膿菌感染症を標的とすることが可能な上記の寄託バクテリオファージのうちの1若しくはそれ以上であってもよい。本発明はまた、さらに別の態様において、緑膿菌を含むか又はそれからなる細菌感染症の治療的又は予防的処置の方法であって、1若しくはそれ以上の寄託バクテリオファージ又は上述のようなそれらの変異株を、それを必要とするヒト又は非ヒト動物に対して投与することを含む方法を提供する。
【0056】
特に、本発明の調製物若しくは株を、慢性的又は抗生物質抵抗性の感染症に対処するために用いてもよい。従って、特定されたようなバクテリオファージ調製物及び株の使用は、初めは、感染症が既存の抗生物質を用いて排除することが困難であると分かってきた場合の二次的処置であるか、又は感染症の排除が絶対に必要である場合の併用処置若しくは代替処置であってもよい。よって、特に、例えば緑膿菌感染症及び生物膜形成を特徴とする他の感染症に関して、抗生物質使用を補完又は補助するためにそれらを用いてもよい。
【0057】
処置される感染症は、ヒト又は動物(例えばイヌ又はネコ)におけるものであってよい。感染症は、例えば耳、眼、皮膚又は他の局所部位の中若しくはその上におけるものであってよい。感染症は全身性であってもよい。本発明の方法により処置されうる緑膿菌感染症としては、外耳炎及び他の耳感染症、角膜炎及び他の眼感染症、毛包炎、熱傷部及び誘導された移植片拒絶反応の感染症、創傷部の感染症、院内感染症及び肺の感染症(例えば嚢胞性線維症)が挙げられる。尿路感染症及び菌血症も処置されうる。
【0058】
本発明のファージの具体的な予防用途は以下のものである:
眼−点眼薬、コンタクトレンズ用溶液若しくは添加剤中に含めること、コンタクトレンズに包埋するか別の方法で含めること、又は緑膿菌感染症防止の目的で眼の中に投与するために他の方法で製剤化すること。
【0059】
耳−点耳薬、耳栓、含浸包帯(例えば脱脂綿)、移植のための装置(例えば鼓膜移植片、骨移植片)に含めること、又は緑膿菌感染症防止の目的で耳の中に投与するために他の方法で製剤化すること。創傷用包帯、軟膏、皮膚移植片及び緑膿菌による体表面または体内装置の感染症防止のための他の製剤。医療用装置(例えば人工関節)中への、又はその処置のための製剤化。
【0060】
本発明の調製物は、別の治療薬をさらに含むか、あるいはそれと同時、別個又は連続して投与してもよい。例えば、本発明の調製物又は株を用いた処置は、処置される症状に関連する別の薬剤と調和的に用いてもよい。本発明の調製物又は株は、抗生物質と一緒に、その作用を補完するか補助するために投与してもよい。本発明の調製物又は株は、患者の症状の他の側面に対処するための薬剤(例えば、炎症を軽減させる薬剤、免疫反応を刺激するか減少させる薬剤、痛みを和らげる薬剤又は他の方法により患者の症状を改善する薬剤)と一緒に投与してもよい。本発明の調製物又は株は、患者の処置に用いられている他の薬剤と一緒に投与してもよく、ここで該他の薬剤が細菌(例えば緑膿菌)感染症のリスクの増大を引き起こす可能性があるものでもよい。例えば、本発明の調製物又は株は、免疫抑制(例えば別の薬剤を用いた処置による局所的な免疫抑制)が起こっている患者に投与してもよい。
【0061】
一実施形態では、緑膿菌感染症(例えば肺感染症)を処置するための本発明の調製物又は株の使用を、アルギナーゼの投与により補助してもよい。上述のように、シュードモナスは生物膜として知られる複雑な層の中での増殖傾向を有している。生物膜は、細胞外高分子化合物(EPS)マトリックス中に封じ込められた表面結合微生物細胞の集合である。アルギン酸塩は緑膿菌のEPSマトリックスの主成分である。従って、アルギナーゼの使用はそのような緑膿菌生物膜の破壊を助け、感染症の排除を増強する。生物膜は種々の緑膿菌感染症(肺及び耳感染症を含む)中に存在しうる。本発明の調製物又は株とのアルギナーゼの共投与は、そのような症状の処置における使用に特に好適であるものと思われる。
【0062】
アルギナーゼは、1若しくはそれ以上のバクテリオファージと共に本発明の組成物中に含めてもよいし、あるいは1若しくはそれ以上のバクテリオファージとの別個又は連続投与のために別の組成物中に提供してもよい。アルギナーゼはバクテリオファージのゲノム中の配列からもたらされてもよい。これは、環境供給源からのそのようなバクテリオファージを単離してもよいし、又は例えば好適な調節配列と機能的に連結した該配列を含むようにバクテリオファージのゲノムを公知の方法で操作してもよい。
【0063】
投与するバクテリオファージの量は、処置する領域のサイズ、位置及び性質並びに用いる投与経路に依存するであろう。処置の成功によりバクテリオファージの増幅及び感染細菌の死滅がもたらされる場合、一部の処置(例えば局所的な感染を要するもの)には低用量のバクテリオファージしか必要はないと考えられる。この用量は感染単位で測定され、これは通常細菌培養用平板上に透明領域又は「プラーク」を形成する能力により定義される。そのような単位は「プラーク形成単位」または「pfu」として定義される。例えば、一部のケースでは、該用量は数百感染単位(pfu)以下でありうる。好適な用量は、10〜10pfu、好ましくは10〜10pfuである。他のケース(例えば全身性又は広範な感染症)では、バクテリオファージが全ての感染領域に到達することを確実にするために、より高い用量が必要であるかもしれない。そのようなケースでは、好適な用量は10〜1010pfu、好ましくは10〜10pfuの範囲内でありうる。注射する場合には、典型的には製薬上許容される好適な担体又は希釈剤中のバクテリオファージの10μl〜1mlを投与する。局所投与のためには、容量はより大きく、処置する領域のサイズ、位置及び性質に応じて、例えば100μl〜50mlでありうる。
【0064】
本発明のバクテリオファージ調製物又は組成物は、局所的に、全身的に、経口的に、又は処置する感染部位への有効用量の送達に好適な何らかの他の方法により、ヒト又は動物患者に対して投与する。バクテリオファージ投与は、バクテリオファージが感染部位で細菌内に組み込まれうるような方法で行う。記載した投与経路及び投与量は、単に指標であることを意図するものであり、技能を有する実施者はいかなる特定の患者及び症状に対しても、最適な投与経路及び投与量を決定することができるであろう。
【0065】
上記のように、本発明は生物膜形成を特徴とする細菌汚染を排除、軽減又は防止する非治療的方法にも及ぶ。また別の態様では、本発明は、適当な細菌を標的とすることが可能な1若しくはそれ以上のバクテリオファージ及びそれと同時、別個、又は連続して1若しくはそれ以上の抗生物質又は消毒剤を、該汚染部位又はその予測部位に対して適用することを含む方法を提供する。そのような方法を、例えば緑膿菌汚染に適用してもよく、この場合上記の寄託バクテリオファージ又はそれらの変異株のうち1若しくはそれ以上を再び用いることができる。同じバクテリオファージのうち1若しくはそれ以上を、緑膿菌を含むか又はそれからなる細菌汚染を標的とする目的で非治療的にのみ用いてもよい。該方法を医療的及び非医療的状況の両方で、種々の表面(例えばコンタクトレンズ、体内に移植するための装置の表面、管状器官、導管及び細菌感染が成立しうる他の表面)の処置に適用できる。
【0066】
本発明の調製物及び株はまた、緑膿菌の存在を検出するためのin vitroの診断方法に用いてもよい。該方法は、被験サンプルを、上述したような緑膿菌を標的とすることが可能な1若しくはそれ以上のバクテリオファージと接触させるステップ、及び添加されたバクテリオファージのいずれかが被験サンプル中の細菌を死滅させることができるかを決定するステップを含んでよい。好ましくは被験サンプルを、例えば存在する標的種の細菌のいずれを増殖させるのにも好適な条件下で、調製物又は株との接触に先立って培養する。好適な培養条件は当技術分野で公知であり、具体的な細菌標的種に応じて異なるであろう。
【0067】
緑膿菌を標的とすることが可能な本発明のバクテリオファージの集団は、それが広範なスペクトルの細菌株又は単離株を検出すると予想されるので、そのような方法には特に有用である。本発明の調製物からの単一のバクテリオファージは、ある特定の細菌種の株又は単離株のうち少ない割合(一部)しか検出しない可能性があり、従って、単にこの高い特異性のために、典型的には非常に高い偽陰性率をもたらしうる。しかしながら、2若しくはそれ以上のそのようなバクテリオファージを含む本発明の調製物の使用は、標的細菌種内の株のうち広範なスペクトルの検出を可能にするであろう。
【0068】
一実施形態では、被験サンプルを寒天平板のような固形増殖培地上で培養してもよい。サンプルは好ましくは該培地上で十分な時間にわたり、該サンプル中に存在するいずれの標的細菌が平板表面上で増殖するのにも好適な条件下で培養する。該平板の表面を本発明の調製物又は株と接触させることにより、添加したバクテリオファージのうちのいずれかが細菌に感染し、それを死滅させることが可能であるかを決定することができる。バクテリオファージが感染した培地は、バクテリオファージ感染及び複製に好適な条件下で維持してもよく、それによりバクテリオファージは平板上のいずれかの標的緑膿菌細胞に感染する機会を有する。このことは、細菌の死滅が起こった透明な区域(プラーク)の形成をもたらし、被験サンプルが標的細菌種を含有することを示すであろう。
【0069】
別の実施形態では、被験サンプルを液体培地中に維持してもよい。さらに、それを細菌増殖に好適な条件下で培養してもよい。本発明の調製物又は株の添加後、培地をさらなる期間にわたって維持して存在する、いずれかの標的細菌にバクテリオファージを感染させてもよい。このことは、細菌の死滅が起こったときに培地の濁度の低下をもたらし、またこのことは被験サンプルが標的細菌種を含有することを示すであろう。
【0070】
被験サンプルは標的細菌種の存在が疑われるどのようなサンプルでもよい。被験サンプルは環境的又は生物学的供給源に由来するものであってもよい。そのような被験サンプルは、患者から取得した体液若しくは組織サンプルから採取するか又はそれから誘導してもよい。サンプルは感染部位から取得してもよい。局所感染の場合には、サンプルは感染領域からスワブを採取することにより得られる。本発明の検出方法を、感染症の原因である緑膿菌の特定の株を決定するために用いてもよい。
【0071】
本発明の調製物又は株を用いて特定することが可能な感染症は、通常同じ調製物又は株を用いて処置しうるものであろう。すなわち、本発明のある調製物中のバクテリオファージが、感染領域から取得した細菌をin vitroで死滅させることが可能な場合には、それらは感染部位においてin situで同じ細菌を死滅させることも可能なはずである。
【0072】
従って、本発明の検出方法を、処置において用いるために好適な本発明の調製物又は株を特定するために用いてもよい。また、本発明の検出方法を、併用するよりはむしろ単独でそのような処置に用いるのに好適な単一のバクテリオファージを特定するために用いてもよい。すなわち、本発明の検出方法において、種々のバクテリオファージ又はバクテリオファージの組み合わせを用いることにより、特定の感染症の細菌株に対して最も大きな毒力を有するバクテリオファージを、処置における使用のために選択することができる。好ましくは、処置における使用のために、そのような活性を有する2若しくはそれ以上のバクテリオファージからなる組み合わせを選択する。
【0073】
本発明はまた、上記の寄託バクテリオファージに対する細菌「対応株」(count strain)の特定及び使用を含む。そのような細菌株は、特定された群に由来する1種類のバクテリオファージの増殖を支援するが、その群の全ての他のバクテリオファージ構成員の制限された増殖しか許容しない、標的(又は近縁)細菌の株として定義される。これらの対応株を、その後バクテリオファージストックの力価を評価するのに用いてもよい。
【0074】
本発明の調製物は少なくとも2種類のバクテリオファージを含む。細菌株の一定のスペクトルの中では、いずれかの1種類のバクテリオファージの増殖は種々の有効性で支援される(又は全く支援されない)であろう。結果として、細菌株の一定範囲にわたるアッセイにより得た力価は、相当に異なるものであろう。各患者に対して投与すべき治療的用量を決定する/標準化する方法を提供するために、「対応」細菌株を用いてもよい。この手法の原理は、各バクテリオファージの増殖が、該細菌株の範囲のうちの1種類によってのみ使用可能なレベルで支援されることである。従って、対応株を混合物中のバクテリオファージの各々に対して選択することができ、これは、バクテリオファージのうちの1種類の増殖は支援するが、該混合物中の他のバクテリオファージの増殖は支援しないか、低いレベルの増殖しか支援しない。混合物の各バクテリオファージ構成員の力価は、個々の対応株の各々において可能な増殖に基づいて計算してもよい。
【0075】
例えば、好適な対応株は、バクテリオファージの混合物中に用いられる他のバクテリオファージと比較して、1種類のバクテリオファージの、少なくとも1000倍多い、少なくとも1500倍多い、少なくとも2000倍多いか又はそれより多い増殖を可能にするものでもよい。
【0076】
示差的な増殖は、例えば一定の濃度範囲のバクテリオファージによる、固形増殖培地上で増殖した場合の細菌におけるプラーク形成を力価判定することにより評価してもよい。あるいはまた、示差的な増殖を、そのようにして形成されたプラークの大きさ及び性状を調べることにより評価してもよい。例えば、一実施形態では、対応株は、他のバクテリオファージと比較して1種類のバクテリオファージによるプラーク形成を少なくとも1000倍多くするものであってもよい。そのような細菌は、当該バクテリオファージに対する対応株とされるであろう。例えば、図2に示したように、BC−BP−03に対する好適な増殖株は、1,000,000倍希釈のBC−BP−03を用いた感染によって顕著なプラーク形成を示しうるが、10倍希釈(100,000倍高い濃度)の他のバクテリオファージ(ここではBC−BP−01、BC−BP−02及びBC−BP−04)を用いて感染させても、ほとんど又は全くプラーク形成を示さない。
【0077】
そのような対応株はまた、本発明の組成物で用いるためのバクテリオファージ生成のための増殖株として用いてもよい。例えば、本発明の組成物を、適当な量の必要とされる対応株と組み合わせることにより構成してもよい。従って、対応株はバクテリオファージ源としてそれ自体を治療的に用いることができる。
【0078】
この技術はまた、治療用組成物中の各バクテリオファージの複製が臨床的な状況で個々にモニターされることを可能にする。ある特定のバクテリオファージに特異的な対応株を、特に、例えば治療用途を意図する調製物中の、又は該治療用途の過程若しくはその後に取得した組織サンプル中の、当該バクテリオファージの存在を特定するのに用いてもよい。この方法によって、治療用バクテリオファージを患者に感染している株中に存在しうるいかなる無関係のバクテリオファージからも区別することが可能となると予想され、また投与された治療用混合物中のどのバクテリオファージが当該患者の細菌感染症に対して活性であるかの確認も可能となると予想される。「対応」細菌株を、バクテリオファージ療法の適用に先立って、無関係のバクテリオファージを「タイピング」することに用いることができる。従って、組成物又は医薬中の必要とされるバクテリオファージの存在を処置に先立って確かめてもよく、また処置部位でのバクテリオファージの存在を処置の間又はその後にモニターしてもよい。この情報は処置の実施計画をモニターし、適正化するために医師により用いられうる。
【0079】
以下の実施例は本発明を説明するものである。
【実施例1】
【0080】
I.緑膿菌に対して活性なバクテリオファージの初期選別
(a)緑膿菌に対して活性なバクテリオファージの単離:
(i) 適当な緑膿菌株の3×10コロニー形成単位(cfu)を沈殿処理済み汚水及び栄養培養液と共に培養した(総容量200ml)。
(ii) 懸濁液を37℃にて24時間インキュベートした。
(iii) 1mlのアリコートを取り出し、0.45μmシリンジトップフィルターに通して濾過した。
(iv) 濾過した溶解液をステップ(i)で用いたのと同じ緑膿菌株と共に培養し、バクテリオファージの存在について評価した(以下を参照)。
(v) 栄養寒天平板を37℃にて24時間インキュベートした。
(vi) 単一のプラークを、滅菌した1mm径の針金を用いて「回収」し、ステップ(i)で用いた緑膿菌株5×10cfu/mlを含む増殖培地(この培地の成分は抽出ごとに異なる)3mlに接種するのに用いた。
(vii) 懸濁液を細菌が完全に溶解するまで(これには通常5〜8時間かかる)37℃にてインキュベートし、目視で評価した。目視評価はバクテリオファージ含有細菌懸濁液の濁度を対照懸濁液のそれと比較することにより実施する。対照懸濁液にはバクテリオファージを加えないが、他の点は全て同様とする。
(viii) 溶解液を、0.1μmシリンジトップフィルターに通して濾過した。
(xi) 2%v/vグリセロールとなるように溶解液を調整し、バイアル中にアリコートに分け、そして−80℃にて保存した。
(xii) 適当な細菌株との共培養によって力価を評価した(以下を参照)。
【0081】
(b)マスターシードの調製:
以下のように、全てのバクテリオファージについてマスターシードストックを樹立する:
(i) 一次バクテリオファージ調製物を、寒天平板上で適当な緑膿菌増殖株と共培養した(以下を参照)。
(ii) 単一のプラークを、滅菌した1mm径の針金を用いて「回収」し、ステップ(i)で用いた緑膿菌株5×10コロニー形成単位(cfu)/mlを含む野菜ペプトン培養液4mlに接種するのに用いた。
(iii) 懸濁液を細菌が完全に溶解するまで(これには通常5〜8時間かかる)37℃にてインキュベートし、目視で評価した。目視評価はバクテリオファージ含有細菌懸濁液の濁度を対照懸濁液のそれと比較することにより実施する。対照懸濁液にはバクテリオファージを加えないが、他の点は全て同様とする。
(iv) 溶解液を、0.1μmシリンジトップフィルターに通して濾過した。
(v) 2%v/vグリセロールとなるようにマスターストックを調整し、バイアル中にアリコートに分け、そして−80℃にて保存した。
(vi) 適当な細菌株との共培養によって力価を評価した(以下を参照)。
【0082】
(c)混合集団中の個々のバクテリオファージの力価の評価:バクテリオファージ対緑膿菌「対応」細菌株
(i) 各バクテリオファージ(個々の懸濁液)を全ての対応株において二連でアッセイした。マスターシードを用いた。
(ii) 各バクテリオファージについて、それぞれの「対応」細菌株において力価を計算した。
(iii) ステップ(i)〜(ii)をさらに2回繰り返した。
(iv) 最後の回に、等比率の6種類の個々のバクテリオファージ調製物を含む混合バクテリオファージ懸濁液を、全ての「対応」細菌株において二連でアッセイした。
(v) 各「対応」細菌株におけるバクテリオファージ混合物の力価を計算した。
【0083】
3セット全ての実験において同様の結果を得て、平均した結果と共に表1に詳細に示してある。









【0084】
(d)精製バクテリオファージ懸濁液の調製:
以下のようにして、マスター懸濁液から使用のためにバクテリオファージを調製する:
(i) 野菜ペプトン培養液中の緑膿菌の適当な増殖株の懸濁液30mlに適当なバクテリオファージのマスターシードを重複感染度0.1にて接種した。
(ii) 懸濁液を細菌が完全に溶解するまで(これには通常5〜8時間かかる)37℃にてインキュベートし、目視で評価した。目視評価はバクテリオファージ含有細菌懸濁液の濁度を対照懸濁液のそれと比較することにより実施する。対照懸濁液にはバクテリオファージを加えないが、他の点は全て同様とする。
(iii) サブマスターシードを0.45μmシリンジトップフィルター、その後0.1μmシリンジトップフィルターに通して濾過した。
(iv) 36mlポリプロピレン遠沈管中で、5mlの10%w/vスクロースの「クッション」の上に27mlのサブマスターシードを慎重に重層した。スクロース「クッション」の目的は、エンドトキシンの沈降を防ぎ、且つウイルス粒子が遠沈管の底にペレットになるようにすることである。
(v) 全ての遠沈管及びバケットを十分に洗浄し、その後、使用の前に121℃にてオートクレーブした。
(vi) ベックマン超遠心機中で遠沈管を23,500rpm、4℃にて3時間遠心した。
(vii) 上清画分を除き、ペレットの水分を除いた。そしてペレットを1mlのPBS+10%v/vグリセロール中に再懸濁し、0.2μmシリンジトップフィルターに通して濾過した。
(vi) 適当な細菌株との共培養によって力価を評価した(以下を参照)。
【0085】
この材料はin vivoで用いるために、無菌度管理に供することができる:
(e)無菌度
以下のようにして、最終製品を無菌度について調べた:
(i) 治療用最終製品の0.6mlアリコート3本を無作為に選択した。
(ii) 各アリコートを、滅菌針金ループを用いて栄養寒天平板(シュードモナスを含む一定範囲の細菌種の増殖を許容できる)上に広げた。
(iii) 平板を37℃で48時間インキュベートした。
(iv) 細菌コロニーの存在について平板を調べた。
(調製された材料についてのこのような試験では細菌の増殖は見られなかった。)
【0086】
(f)有効性の評価:
イヌ外耳炎を引き起こす緑膿菌株に対処する目的で設計したバクテリオファージ製品に対しては、製品の開発にはこの役割を果たすために適当なバクテリオファージの選別が必要であった。これは、以下に示すようなイヌ外耳炎感染症に由来する100種類の臨床的緑膿菌単離株との、22種類のバクテリオファージの範囲の共培養によりなされた。これらの株のうち90%は、22株の当初集団からの6種類の候補バクテリオファージBC−BP−01〜BC−BP−06のうち少なくとも1種類に感受性であることが明らかになった(図1)。このin vitroデータが、該製品がin vivoで臨床的に有効であるという予測を支持することに基づいて、これら6種類のバクテリオファージが臨床試験に進められた。
【0087】
方法
(i) バクテリオファージ調製物を、室温にてPBSで10倍希釈系列に希釈した。
(ii) 100μlの適当な希釈物を、5×10cfuの対応する細菌を含む46℃の溶解寒天2.5mlに加えた。
(iii) 溶解寒天懸濁物を栄養寒天平板上に注ぎ、室温にて固まらせた。
(iv) 平板を37℃に移し、24時間インキュベートした。
(v) プラークを数え、その数を力価(pfu/ml)を計算するのに用いた。100プラーク/平板前後となる希釈物について数えるようにする。
【0088】
(g)安全性の評価
バクテリオファージ製品の毒性を評価するために、獣医臨床試験を行った。試験の合計期間は21日間であった。6頭のイヌ(オス3頭;メス3頭)に、試験の0、3及び6日目の3回、耳投与で、以下の処置処方を適用した:


【0089】
処置の適用は、外耳道に懸濁液を滴下し、その後浸透をよくするために揉むことにより行った。
【0090】
以下の研究を、試験の間に行った:
(i) 0、3及び6日目の微生物叢(サンプルは処置の適用の直前に採取した)を、耳スワブを以下のものの上で平板培養することにより評価した:
1) セトリミド寒天(Pseudomonas sppに選択的)
2) マンニトール塩寒天(Staphylococcus sppに選択的)
3) サブローデキストロース寒天(酵母及びカビに選択的)
4) FP寒天(ミクロコッカスに選択的)
5) 血液寒天(ほとんどの微生物の増殖を非選択的に許容する)
(ii) 耳鏡的獣医検査を、試験の8日目まで毎日、その後試験終了まで3日毎に行った。
(iii) 中核体温を毎日測定した。
【0091】
試験期間を通して:
(i) 耳鏡的獣医検査では、基準状態の記録及び対照群と比較して、被験群のイヌの耳の状態に顕著な変化は見られなかった。
(ii) 基準状態の記録及び対照群と比較して、被験群のイヌの耳内の微生物叢には顕著な変化はなかった。
(iii) 被験群で、中核体温記録は対照群又は基準状態で記録されたものと顕著に異なることはなかった。
【実施例2】
【0092】
II.選択されたバクテリオファージの臨床的有効性の評価
(a)致死的な緑膿菌感染症からのマウスの防御
1. 150,000,000感染単位(10LD50)の緑膿菌を、20匹のマウスの腹腔内に注射した。
2. 5匹のマウスからなる群を、4種類の異なる濃度のバクテリオファージBC−BP−08で処置した(細菌注射と同時に投与した)。


【0093】
(b)緑膿菌によるin vitroでのブタ皮膚の破壊の阻止
ヒト血漿に浸した酵素洗浄滅菌凍結乾燥ブタ真皮の4層からそれぞれなる、14個の創傷部モデルを作製した。100,000cfuの緑膿菌をそれぞれの上に置いた。創傷部モデルのうち7個には1,000,000感染単位のファージBC−BP−08を加え、残りを対照として残した。18時間のインキュベーション後、対照8個のうち7個は盲検的に腐敗したと評価されたが、ファージ処置モデルの全てが腐敗していないと評価された。細菌は、被処置ディスクのうち3個においてのみ検出することができた(中央値0;最大値12,000)。ファージは該モデルの最下層にまで浸透し、そこで複製していることが明らかとなった(インキュベーション後のモデル中の中央値:32,000,000;範囲14,000,000〜20,000,000,000)。
【0094】
(c)緑膿菌感染症からのモルモット体表の皮膚移植片の防御
1. 剃毛皮膚の0.2mm厚の長方形(2cm×1cm)を14頭のモルモットの背中から切除した。
2. 創傷部を切除された熱傷部と同様にするため、下層の皮膚層を取り除いた。
3. 600,000感染単位の緑膿菌を創傷部に加えた。
4. 7頭の動物の創傷部に12,000,000感染単位のバクテリオファージBC−BP−08を加え、他の7頭の創傷部にはバクテリオファージを加えなかった。
5. 長方形の皮膚を戻し、包帯をした。
6. 移植の成功を、5日後に評価した。


【0095】
(d)外耳炎を患ったイヌの外耳道中での投与された緑膿菌バクテリオファージの増殖
アトピーの病歴を有するイヌが両側性の慢性外耳炎を患った。抗生物質治療にもかかわらず、両耳のスワブでは、数ヶ月間、繰り返し緑膿菌が増殖していた。ファージ治療の前には、当該イヌは、周囲の耳介に及ぶ膿性分泌物及び多量の蝋状分泌物を伴って、両側の外耳道が赤く腫れ上がっていた。その時点でそれぞれの耳から採取したスワブでは、緑膿菌が増殖していた(API 20NE,Biomerieux,フランスにて同定した)。両耳からの単離株は、その生化学的反応及びその抗生物質感受性パターンにおいて若干異なっていた。広範囲の緑膿菌株に対して良好な溶解活性を示すものとして以前に特定されていたため、ファージのコレクションから該株に対して試験するために8種類を選択した。当該ファージのうち3種類は、該イヌから取得した両方の単離株に対して良好な溶解活性を示した。いかにわずかのプラーク形成単位で2種類の単離株の標準培養液培養物を溶解するかについて、ファージをさらに試験した。BC−BP−04(溶解に要したpfu数が最も低かったファージ)をin vivo試験のために選んだ。ストック溶液中のファージ濃度を力価判定しておき、該溶液の10倍希釈液0.2mlを注射器でイヌの右外耳道に投与した。この容量は約400感染単位(プラーク形成単位、p.f.u.)を含有していた。
【0096】
ファージ投与27時間後に、右耳中のデトリタスのスワブを採取した。スワブ採取の前後に重量を測定し、デトリタスの体積を測定した。寒天重層法を用いた連続10倍希釈物の平板培養により、デトリタス中のファージを計数した。スワブ上に存在したデトリタス0.032g中に1.6×10のファージがあり、従ってファージは100万倍を超えて増殖したようである。この増加は、右耳の著しい臨床的改善を伴っていた。炎症は少なくなり、膿の分泌はなくなり、そして蝋状分泌物の量は減少した(図3a)。左耳(ファージを投与しなかった)の外観は変化しないままであった(図3b)。当該変化を考慮に入れ、400pfuのファージを左耳に投与すると、24〜48時間後にはかなりの臨床的改善が見られた。ファージ投与2週間後、イヌの耳は悪化しており、両耳のスワブは培養で緑膿菌陽性であった。その後、耳の状態は何ヶ月もの間、悪化と改善を繰り返したが、飼い主と獣医は、ファージを投与する前よりも状態はよくなっていると判断した。ファージ投与9ヵ月後、両耳は完全に回復し、緑膿菌はそれから耳スワブから単離されていない。必要であると思われなかったので、ファージ投与後はイヌに対して抗生物質を与えなかった。
【0097】
(e)ヒト熱傷部の感染症の処置での緑膿菌バクテリオファージの使用
50%の熱傷を伴う27歳男性に対して、単一症例試験を行った。熱傷の治癒は、皮膚の崩壊の期間と交互に起こっていた。彼の背部と胸部の皮膚が崩壊しかけていたことが注目された。その時点で、医師(皮膚の崩壊の速さを憂慮していた)は彼の緑膿菌感染症を処置するためのファージを見つけることができないか依頼した。新規のファージBC−BP−07が活性であるとして特定された。in vitro試験では該株に対する非常に高い活性は示されなかったが、時間が限られていたため、それを次の試験のために選択した。精製懸濁液を作製し、ヒト表皮細胞の培養物に加えたときには、それについては毒性の徴候は示されなかった。約1000感染単位(p.f.u.)のBC−BP−07を直径25mmの2枚の濾紙ディスクのそれぞれに添加した。包帯交換の際に、患者の、緑膿菌が定着していることがわかっている領域にそれらを置いた。48時間後、ディスク中のファージ数は1.2×10及び4.3×10であり、1,200倍及び43倍に増加していた。この後、患者の熱傷部にファージを噴霧した。これに続いて患者の状態は徐々に改善し、彼は生き延びて最終的に全ての創傷部が治癒した。ファージが患者(抗生物質も与えられていた)の回復に寄与したか否かは不明であるが、ファージは熱傷部で増殖し、これは患者体内又は体表でのバクテリオファージの増殖を表すものなので、バクテリオファージによって細菌が死滅したことを示唆している。
【0098】
2003年6月24日のNCIMBへの寄託前には、本明細書中でBC−BP−01〜BC−BP−08として言及したバクテリオファージのいずれも公衆に利用可能となっておらず、従ってその日前の刊行物その他の開示物中のそのような株についてのいかなる言及も、先行技術として用いることができるものではない。
【0099】
以下に提供するさらなる例示において、NCIMB41174、NCIMB41175、NCIMB41176、NCIMB41177、NCIMB41178及びNCIMB41179の6種類のバクテリオファージの組み合わせ(BioVet−PA組成物)(これはイヌの耳感染症(外耳炎及び他の耳感染症)に由来する試験した緑膿菌単離株のうち90%に対して活性であることが見出されていた)を用いた。0.2mlのBioVet−PAは、上記の適当な対応株に対して測定したとき、6種類のバクテリオファージのそれぞれを1×10感染単位含有していた。
【0100】
6種類の個々の精製バクテリオファージ懸濁液を、10%v/vグリセロール/PBS中に約3×10pfu/mlの濃度まで希釈した。この希釈ステップは、バクテリオファージ懸濁液のサンプル(−80℃にて凍結されており、その後解凍してアッセイした)から計算した力価を根拠とした。希釈後、6種類の治療用バクテリオファージを等比率で混合し、従って各バクテリオファージは6分の1に希釈され、個々の成分の濃度は5×10pfu/mlとなった。これは、0.2mlの希釈液中の各治療用バクテリオファージ1×10pfuに相当する。この時点で、最終混合製品を0.6mlのアリコートに分け、−80℃で保存した。
【実施例3】
【0101】
III.イヌの耳感染症に対する複合ファージ組成物の試験
上記のように、緑膿菌により引き起こされるイヌの耳感染症(外耳炎及び中耳炎)は体表面での生物膜に基づく定着を伴う臨床疾患の例である。そのような感染症の臨床症状としては、痛み、炎症(紅斑)、潰瘍及び耳からの増加した量の物質の分泌が挙げられる。これは通常自然に化膿し、異臭を伴う。上記の6種類のバクテリオファージのBioVet−PA複合調製品は、2003年11月17日にBiocontrol Limitedに対して発行された動物試験認定証第20505/0001において、英国獣医学理事会によりそのような感染症についてのイヌでの試験が許可された。
【0102】
試験の実施
BioVet−PAは−80℃にて保存した。投与の直前に、該製品を解凍し、手で温めた。0.2ml(6種類のバクテリオファージのそれぞれを1×10感染単位含有する)を耳の中に滅菌1ml容量注射器を用いて滴下して投与した。耳の症状及び微生物学的状態を投与2日後に評価した。
【0103】
手順は以下の通りである:
特性決定(処置2〜14日前):
0日目 獣医が各耳からスワブを採取した。
それらのスワブを用いて実験室試験を行い、緑膿菌の存在を確かめた。
緑膿菌が検出されなかったら、そのイヌは試験からはずした。
1日目 緑膿菌が検出されたら、BioVet−PAに対する感受性について単離株を試験した。
イヌが感染している緑膿菌株がBioVet−PAに対して感受性でなかったら、そのイヌは試験からはずした。
【0104】
処置:
0日目 耳鏡で耳を検査し、その状態を評価した。
微生物学的解析のために各耳からスワブを採取した。
イヌの中核体温を測った。
イヌに、耳の中に0.2mlの用量のBioVet−PAを与えた(処置は滅菌1ml容量注射器を用いて滴下して投与し、浸透をよくするために耳道を揉んだ)。
1日目 耳を検査してその状態を評価した。
微生物学的解析のために各耳からスワブを採取した。
イヌの中核体温を測った。
2日目 耳を検査してその状態を評価した。
微生物学的解析のために各耳からスワブを採取した。
イヌの中核体温を測った。
【0105】
結果:
BioVet−PAで処置した重症の抗生物質抵抗性緑膿菌耳感染症を有する6頭のイヌについての試験では、処置の2日間に臨床症状の改善が示され(図4)、同じ時間軸にわたって細菌数の減少が示された(図5)。全てのイヌで、バクテリオファージの複製も観察された(図6)。臨床症状の改善についての解析では、それがt−検定及びWilcoxonマッチドペア検定のいずれによっても、信頼度95%で有意差があることが示された。
【実施例4】
【0106】
IV.イヌの耳感染症に対する抗生物質との複合ファージ組成物の試験
抗生物質を加えたBioVet−PA組成物を、抗生物質処置単独に対しては抵抗性であることが証明されているイヌの緑膿菌耳感染症に対して用いた。
【0107】
症例1
イヌMは両側性耳炎の病歴を有し、これはマルボフロキサシン及びゲンタマイシン(緑膿菌性耳炎の処置に用いられる)をはじめとする抗生物質を用いた繰り返し処置クールにもかかわらず、右耳での解消に失敗していた。ファージ試験の開始時(04年1月26日)には、右耳は緑膿菌及びG群β溶レン菌の両方に感染していた。検査により、紅斑、潰瘍及び異臭を伴う膿の分泌が示された。検査に続いて、イヌMをBioVet−PA(希釈剤0.2ml中の6種類のバクテリオファージそれぞれの100,000感染単位)を用いて処置した。
【0108】
処置に続く解析では、6種類のバクテリオファージのうち5種類が複製していることが示された。これは耳内に存在するシュードモナス細菌数の低下及び臨床症状の改善を伴った。バクテリオファージ処置に続く2日間の観察期間完了8日後に、イヌMを、付随する連鎖球菌感染についてSynulox(アモキシシリン及びクラバヌレート(clavanulate))を用いて処置した。この治療は、一部のシュードモナス株に対してもいくらか活性を有する。
【0109】
結果
04年3月8日に採取したスワブの解析ではシュードモナスは検出されず、低レベルの連鎖球菌が示された。このことは、抗生物質及び他の化学薬がそれまでに感染症を排除できなかった場合での、生物膜形成を特徴とする系での細菌感染症の解消におけるバクテリオファージの有効性を示し、同様に、そのような処置の後に抗生物質を投与した場合の改善された結果を示すものである。
【0110】
症例2
イヌRは両側性耳炎の病歴を有し、これはゲンタマイシン、マルボフロキサシン(緑膿菌性耳炎の処置に用いられる)、アンピシリン(他の細菌感染症に用いられる)及びリマダイル(抗炎症剤)を用いた処置にもかかわらず、解消に失敗していた。04年2月16日にイヌRを検査した。この時点で、両耳が緑膿菌及び腸内細菌の両方に感染していた。両耳が強い異臭を伴う膿性分泌物を産生していた。紅斑及び潰瘍も記録された。検査に続いて、イヌRをBioVet−PA(希釈剤0.2ml中の6種類のバクテリオファージそれぞれの100,000感染単位)を用いて処置した。処置に続く解析により、6種類のバクテリオファージのうち2種類が複製していることが示された。これは耳内に存在するシュードモナス細菌数の低下及び臨床症状の改善を伴っていた。バクテリオファージ処置後の4日間の観察期間に続いて、アモキシシリン・クラブラン酸錠(耳内に存在する腸内細菌に対して)及びCanaural点耳薬(フシジン酸ジエタノールアミン、硫酸フラマイセチン(framycetin)、ナイスタチン及びプレドニソロンを含む)を用いてイヌRを処置した。耳内に存在する緑膿菌は、フラマイセチンのようなアミノ配糖体系抗生物質に部分的に抵抗性であることが知られていた。Canaural製剤の他の成分は、シュードモナスに対して用いられるものではない(フシジン酸ジエタノールアミンは腸内細菌をはじめとする他の細菌感染症に対して用いられる抗生物質であり、ナイスタチンは抗真菌剤であり、プレドニソロンは抗炎症剤である)。腸内細菌感染症の抗生物質感受性は知られていないが、04年1月30日に完了したアンピシリンのクールは、該感染症を解消することができなかった。
【0111】
結果
04年3月1日のイヌRの検査により、両耳で、臨床症状は完全に解消したことが示された。紅斑及び潰瘍は見られず、分泌物は正常であり、異臭は検出されなかった。このことから、抗生物質及び他の化学薬が感染症を排除できなかった場合での、感染症の臨床症状の解消におけるバクテリオファージ投与後に行われた抗生物質処置の有効性が示された。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】緑膿菌の個々の株に対するバクテリオファージの有効性を示す。
【図2】BC−BP−03対応株の特定を示す。
【図3】バクテリオファージBC−BP−04を用いて処置したイヌ耳の感染症の解消を示す。
【図4】6種類のバクテリオファージNCIMB41174〜NCIMB41179を含有する複合バクテリオファージ調製物(BioVet−PA)を用いた処置2日後の、抗生物質抵抗性耳炎の6頭のイヌの、初期レベルに対する%としての総合臨床スコア(閉塞、紅斑、潰瘍、排出物タイプ、排出物容量、異臭)における改善を示す(太実線が平均)。
【図5】処置2日後の、同じ処置グループのイヌの初期レベルに対する%としての、シュードモナス(Pseudomonas)細菌数/デトリタスgを示す(太実線が平均)。
【図6】処置2日後の、同じ処置グループのイヌの最初のレベルに対する%(対数目盛)としての、バクテリオファージ数/デトリタスgを示す(太実線が平均)。
【図1ab】

【図1cd】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物膜形成を特徴とする細菌感染症を処置する目的で、(i)1若しくはそれ以上のバクテリオファージ、及び(ii)1若しくはそれ以上の抗生物質、を同時、別個、又は連続投与するための複合製品の製造における、(i)及び(ii)の使用。
【請求項2】
単一の複合バクテリオファージ調製物の製造において2以上のバクテリオファージを用いる、請求項1記載の使用。
【請求項3】
前記複合バクテリオファージ調製物が、同じ細菌種に感染しうる複数種のバクテリオファージを含み、該複数種のバクテリオファージの各メンバーがそれぞれ異なる株特異性を有する、請求項2記載の使用。
【請求項4】
1若しくはそれ以上の抗生物質が、1若しくはそれ以上のバクテリオファージより後に投与される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の使用。
【請求項5】
前記細菌感染症が緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)を含むか又はそれからなる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の使用。
【請求項6】
前記感染症が、皮膚熱傷部若しくは他の皮膚創傷部の感染症、肺感染症、眼感染症又は耳感染症から選択される感染症である、請求項5記載の使用。
【請求項7】
前記感染症がイヌの耳感染症である、請求項6記載の使用。
【請求項8】
前記投与が予防的処置のためのものである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の使用。
【請求項9】
前記複合製品が、コンタクトレンズ用溶液又は添加剤である、請求項8記載の使用。
【請求項10】
NCIMB41174、NCIMB41175、NCIMB41176、NCIMB41177、NCIMB41178、NCIMB41179、NCIMB41180及びNCIMB41181(National Collection of Industrial and Marine Bacteria、Aberdeen、英国、に寄託されている)、並びに緑膿菌(P. aeruginosa)を標的とする能力を保持するこれらの変異株から選択される1若しくはそれ以上のバクテリオファージを用いる、請求項5〜9のいずれか1項に記載の使用。
【請求項11】
バクテリオファージの集団が用いられ、該集団の各メンバーは、それぞれ異なる株特異性を有し、且つNCIMB41174、NCIMB41175、NCIMB41176、NCIMB41177、NCIMB41178及びNCIMB41179、NCIMB41180及びNCIMB41181、並びに緑膿菌(P. aeruginosa)を標的とする能力を保持するこれらの変異株から選択される、請求項10記載の使用。
【請求項12】
用いられるバクテリオファージの集団が、NCIMB41174、NCIMB41175、NCIMB41176、NCIMB41177、NCIMB41178、NCIMB41179よりなるか、又は前記のバクテリオファージのいずれかが所望の標的株特異性を示すその変異株に置換されている点で前記集団とは異なる集団である、請求項11記載の使用。
【請求項13】
前記バクテリオファージの集団が、イヌの耳感染症の処置での使用ための単一の複合バクテリオファージ調製物の製造において用いられる、請求項12記載の使用。
【請求項14】
1若しくはそれ以上のバクテリオファージと、同時、別個又は連続投与するためのアルギナーゼの使用をさらに含む、請求項1〜13のいずれか1項に記載の使用。
【請求項15】
National Collection of Industrial and Marine Bacteria、Aberdeen、英国、に寄託されているバクテリオファージ株NCIMB41174、NCIMB41175、NCIMB41176、NCIMB41177、NCIMB41178、NCIMB41179、NCIMB41180及びNCIMB41181、又は緑膿菌(P. aeruginosa)を標的とする能力を保持するこれらの変異株から選択されるバクテリオファージ。
【請求項16】
請求項15記載の1若しくはそれ以上のバクテリオファージを製薬用担体又は希釈剤と共に含む、医薬組成物。
【請求項17】
緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)を含むか又はそれからなる細菌感染症を処置する目的で、バクテリオファージの集団を同時、別個、又は連続投与するための複合製品であって、該集団の各メンバーはそれぞれ異なる株特異性を有し、且つ該集団が、NCIMB41174、NCIMB41175、NCIMB41176、NCIMB41177、NCIMB41178、NCIMB41179、NCIMB41180、NCIMB41181及び緑膿菌を標的とする能力を保持するこれらの変異株から選択される2若しくはそれ以上のバクテリオファージからなる、上記複合製品。
【請求項18】
前記バクテリオファージの集団が、バクテリオファージNCIMB41174、NCIMB41175、NCIMB41176、NCIMB41177、NCIMB41178、NCIMB41179よりなるか、又は前記のバクテリオファージのいずれかが所望の標的株特異性を示すその変異株に置換されている点で前記集団とは異なる集団である、請求項17記載の複合製品。
【請求項19】
前記バクテリオファージの集団を製薬用担体又は希釈剤と共に含む単一の医薬組成物である、請求項17又は18記載の複合製品。
【請求項20】
1若しくはそれ以上のバクテリオファージに対して、同時、別個、又は連続投与するための1若しくはそれ以上の抗生物質を更に含む、請求項16〜19のいずれか1項に記載の組成物又は複合製品。
【請求項21】
1若しくはそれ以上のバクテリオファージに対して、同時、別個、又は連続投与するためのアルギナーゼを更に含む、請求項16〜20のいずれか1項に記載の組成物又は複合製品。
【請求項22】
緑膿菌(P. aeruginosa)を含むか又はそれからなる細菌感染症を処置するための医薬の製造における、請求項16〜21のいずれか1項に記載の組成物又は複合製品の使用。
【請求項23】
前記感染症が、皮膚熱傷部若しくは他の皮膚創傷部の感染症、肺感染症、眼感染症又は耳感染症から選択される感染症である、請求項22記載の使用。
【請求項24】
前記感染症がイヌの耳感染症である、請求項23記載の使用。
【請求項25】
前記医薬が予防的処置のために用いられる、請求項22記載の使用。
【請求項26】
生物膜形成を特徴とする細菌感染症の治療的又は予防的処置の方法であって、該感染症の細菌を標的とすることが可能な1若しくはそれ以上のバクテリオファージ及びそれと同時、別個、又は連続に1若しくはそれ以上の抗生物質を、それを必要とするヒト又は非ヒト動物に投与することを含む、上記方法。
【請求項27】
請求項10〜12のいずれか1項に規定される1若しくはそれ以上のバクテリオファージを用いる、請求項26記載の方法。
【請求項28】
緑膿菌(P. aeruginosa)を含むか又はそれからなる細菌感染症の治療的又は予防的処置の方法であって、請求項10〜12のいずれか1項に規定される1若しくはそれ以上のバクテリオファージを、それを必要とするヒト又は非ヒト動物に投与することを含む、上記方法。
【請求項29】
生物膜形成を特徴とする細菌汚染を排除、軽減、又は防止する非治療的方法であって、該汚染の細菌を標的とすることが可能な1若しくはそれ以上のバクテリオファージ及びそれと同時、別個、又は連続に1若しくはそれ以上の抗生物質又は消毒剤を、該汚染部位又はその予測部位に適用することを含む、上記方法。
【請求項30】
請求項10〜12のいずれか1項に規定される1若しくはそれ以上のバクテリオファージを用いる、請求項29記載の方法。
【請求項31】
緑膿菌(P. aeruginosa)を含むか又はそれからなる細菌汚染を排除、軽減、又は防止する非治療的方法であって、請求項10〜12のいずれか1項に規定される1若しくはそれ以上のバクテリオファージを該汚染部位又はその予測部位に適用することを含む、上記方法。
【請求項32】
in vitroサンプル中の緑膿菌(P. aeruginosa)の存在を検出する方法であって、該サンプルを請求項10〜12のいずれか1項に規定される1若しくはそれ以上のバクテリオファージと接触させ、そして該バクテリオファージがサンプル中の細菌を死滅させることが可能かどうか決定することを含む、上記方法。
【請求項33】
バクテリオファージNCIMB41174、NCIMB41175、NCIMB41176、NCIMB41177、NCIMB41178、NCIMB41179、NCIMB41180及びNCIMB41181のうち1種類に対して選択的な細菌株を特定する方法であって、いくつかの細菌株での該バクテリオファージによるプラーク形成を測定するステップ、及び前記の他のバクテリオファージよりも該バクテリオファージによって少なくとも1000倍多くのプラーク形成がなされる株を選択するステップを含む、上記方法。
【請求項34】
請求項32記載の方法により特定される細菌株。
【請求項35】
治療用途を意図する調製物中に存在するバクテリオファージを特定及び/若しくは定量するため、並びに/又は該治療用途中若しくはその後に取得した組織サンプル中に存在する株を特定するための、請求項33記載の1若しくはそれ以上の細菌株の使用。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−49700(P2013−49700A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−242956(P2012−242956)
【出願日】平成24年11月2日(2012.11.2)
【分割の表示】特願2006−520908(P2006−520908)の分割
【原出願日】平成16年7月23日(2004.7.23)
【出願人】(506023080)バイオコントロール リミテッド (2)
【Fターム(参考)】