説明

バグフィルター用濾布およびバグフィルター

【課題】光触媒機能を十分に発揮し、しかも繰り返し使用中に光触媒の脱落を極限まで少なくした、バグフィルター用濾布およびバグフィルターの提供をする。
【解決手段】本発明のバグフィルター用濾布は、光触媒がフッ素樹脂中に分散して担持されてなるフッ素繊維を含むバグフィルター用濾布であって、前記光触媒を含むフッ素樹脂は、前記フッ素繊維の少なくとも表面の周方向に渡って存在していることを特徴とする。本発明のバグフィルターは、上記バグフィルター用濾布を袋状に縫製したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温の排ガス中に含まれるダストを高い捕集効率にて濾過するためのバグフィルター濾布およびバグフィルターに関するもので、詳しくは、光触媒を担持したフッ素繊維を含むバグフィルター濾布およびバグフィルターに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、空気を清浄化するフィルターには、内部濾過フィルターと表面濾過フィルターとがあり、集塵機分野では一般に表面濾過フィルターが用いられる。表面濾過とは、ダストをフィルター表面で捕集してダスト層を形成させ、そのダスト層によって次々にダストを捕集し、ダストがある程度の厚さになったら、フィルター表面からダスト層を除去し、再びフィルター表面にダスト層を形成させる操作を繰り返すものである。
【0003】
ダスト層の除去過程においては、フィルターから高効率でダストを除去することが求められる。それは、フィルター表面に高剥離性を付与することで達成される。高剥離性付与の具体的方法としては、フィルター表面を加圧加熱(カレンダー)処理して表面を平滑にしたもの、表面にシリコーン樹脂やフッ素樹脂を加工したもの、あるいはフッ素樹脂製微多孔膜をラミネートしたものなどが挙げられる。
【0004】
しかしながら、上記の高剥離性は、いずれも粘着性物質のダストに対しては効果を十分に発揮することができず、粘着性物質が表面に付着するとそのフィルターは、ダスト層の除去効率が著しく低下してしまうといった欠点があった。
【0005】
また、高温排ガス中には、SOxやNOx、あるいはダイオキシンといった有害ガスが含まれている事が多く、これらはフィルターで除去することが不可能であるために、別に除去機構を設けて、ガスを除去する必要があった。
【0006】
かかる問題を解決するために、近年は空気や水の浄化や抗菌用途に活用できる有効な物質として注目を集めている酸化チタン等の光触媒を利用することが提案されている。特にフッ素樹脂は光触媒により侵されない有機物であるため、フッ素樹脂を光触媒の担持体としたフィルターが提案されている。
【0007】
かかるフッ素樹脂を光触媒の担持体とした従来技術におけるフィルターとしては、特許文献1にあるように、光触媒機能を有する金属化合物を含有するフッ素樹脂繊維で形成されたフィルターが提案されている。しかしながら、この文献中の方法で作製された繊維は、シートに光触媒を塗布した後でシートを引っ掻いて繊維を得ているため、光触媒の分布が均一でなく、光触媒が存在しない表面が多くなってしまうため、光触媒効果が十分に発揮されなかった。
【0008】
また、特許文献2にあるように、耐熱性繊維集合体に光触媒反応生成物質が担持せしめられているフィルターを用いることもできる。しかしながら、この文献中での担持方法では、光触媒反応生成物質の耐熱性繊維集合体への付与が単にバインダーを介していたり、耐熱性繊維集合体に光触媒反応生成物質が単に含浸・付着したのみの方法であったため、光触媒の担持力が十分でなく、繰り返し使用中に光触媒が脱落してしまうといった問題点があった。
【特許文献1】特開平11−19431号公報(段落0018、0022)
【特許文献2】特開2003−299926号公報(請求項2、4、段落0021)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記従来技術における問題点の解決を課題として検討した結果、達成されたもので、光触媒機能を十分に発揮し、しかも繰り返し使用中に光触媒の脱落を極限まで少なくした、バグフィルター用濾布およびバグフィルターの提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明のバグフィルター用濾布は、次の手段を採用する。すなわち、
(1)光触媒がフッ素樹脂中に分散して担持されてなるフッ素繊維を含むバグフィルター用濾布であって、前記光触媒を含むフッ素樹脂は、前記フッ素繊維の少なくとも表面の周方向に渡って存在していることを特徴とする。
(2)前記光触媒を含むフッ素樹脂は、フッ素繊維表面積の50%以上100%以内の範囲で前記フッ素繊維表面の周方向に渡って被覆されていることを特徴とする、前記(1)に記載のバグフィルター用濾布である。
(3)前記フッ素繊維の横断面は、芯鞘構造を有しており、かつ該鞘部分が光触媒を含むフッ素樹脂で構成されていることを特徴とする、前記(1)に記載のバグフィルター用濾布である。
(4)前記光触媒は、該光触媒粒子表面積の10%以上90%以下の範囲が前記フッ素樹脂表面から露出していることを特徴とする、前記(1)〜(3)のいずれかに記載のバグフィルター用濾布である。
(5)前記フッ素繊維は、さらに吸着粒子を含有することを特徴とする、前記(1)〜(4)のいずれかに記載のバグフィルター用濾布である。
(6)前記光触媒は、酸化チタンおよび酸化チタン変性物のうちの少なくとも一種を含むことを特徴とする、前記(1)〜(5)のいずれかに記載のバグフィルター用濾布である。
(7)前記フッ素繊維は、ポリテトラフルオロエチレン繊維であることを特徴とする、前記(1)〜(6)のいずれかに記載のバグフィルター用濾布である。
(8)前記ポリテトラフルオロエチレン繊維は、ポリテトラフルオロエチレン樹脂粉末と、セルロース系樹脂とを含む分散液を、口金から凝固浴中に吐出して紡糸し、凝固することにより繊維状物を得る湿式紡糸法で得られたものであることを特徴とする、前記(7)に記載のバグフィルター用濾布である。
(9)前記フッ素繊維の断面は、略円形であることを特徴とする、前記(1)〜(8)のいずれかに記載のバグフィルター用濾布である。
【0011】
また、本発明のバグフィルターは、前記(1)〜(9)のいずれかに記載のバグフィルター用濾布を袋状に縫製してなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、以下に説明するとおり、優れた光触媒効果を得ることができる。
【0013】
(1)フッ素繊維の少なくとも表面の周方向に渡って存在する光触媒の作用により、粘着物質を含んだ廃棄ガスの集塵においても繊維表面からの光触媒の脱落が防止できるため、光触媒機能を十分に発揮できる。したがって、バグフィルター使用中は常時フィルター表面において粘着物質を分解することができ、ダスト払い落とし時においても、濾布からのダストの剥離性に極めて優れる光触媒効果を有するバグフィルター濾布およびバグフィルターを得ることが出来る。
【0014】
(2)繊維表面に単にバインダーにより光触媒を担持するのではなく、光触媒を含むフッ素樹脂により光触媒を担持するので、ダストの衝突による衝撃や、払い落としのパルスによる衝撃によっても光触媒が脱落することなく濾過効果を持続させることができ、よって光触媒効果も長寿命となる。
【0015】
(3)従来技術のように光触媒を含んだフィルムと、光触媒を含まないフィルムとの積層物をスリットして得られるフッ素繊維を用いるのではなく、フッ素繊維の表面を光触媒を含むフッ素樹脂で被覆しているので、フッ素繊維表面には光触媒効果を有さない表面の存在が無く、より効果的に光触媒効果を発揮することが出来る。
【0016】
(4)また、フッ素繊維の断面が実質円形断面であると、織布や不織布に加工するときの工程通過性が良好であり、出来上がった濾布は圧力損失が低いバグフィルター用濾布およびバグフィルターを得ることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0018】
まず、本発明のバグフィルター用濾布は、上述したように、光触媒がフッ素樹脂中に分散して担持されてなるフッ素繊維を含むバグフィルター用濾布であって、前記光触媒を含むフッ素樹脂は、前記フッ素繊維の少なくとも表面の周方向に渡って存在していることを特徴とする。
【0019】
ここで、バグフィルター用濾布の基材としては、例えばポリエステル繊維、ガラス繊維、フッ素繊維などを用いることができ、その形態としては不織布、織布などである。
【0020】
本発明では、これら基材中に少なくともフッ素繊維が含まれてバグフィルター用濾布としての布帛が構成されていることが必要である。
【0021】
フッ素繊維とは、フッ素樹脂で構成される繊維を指す。そのフッ素樹脂としては、重合体の繰り返し構造単位の90%以上が、主鎖または側鎖にフッ素原子を1個以上含むモノマーで構成された樹脂であれば、いずれのものでも使用することができる。その中でも、フッ素原子数の多いモノマーで構成された樹脂で構成される繊維である、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)繊維、4フッ化エチレン−6フッ化プロピレン共重合体(FEP)繊維、4フッ化エチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)繊維またはエチレン−4フッ化エチレン共重合体(ETFE)繊維が好ましく、中でも光触媒により発生するラジカルでは最も侵されにくいPTFE繊維がより好ましい。
【0022】
該フッ素繊維の単繊維繊度としては、5〜20μm、繊維長としては20〜200mm程度が好ましい。フッ素繊維の基材中の混合比率としては、フッ素繊維のみからなる必要は必ずしもないが、50wt%以上であることが好ましく、より好ましくは70wt%以上である。50wt%以上であると光触媒により発生するラジカルによる基材の劣化が抑制され、80wt%以上であると更に基材の劣化が抑制されるからである。しかし、50wt%未満であると基材が劣化してしまい、穴あき、ちぎれ、などの問題が発生する。
【0023】
本発明では、光触媒が分散して担持されたフッ素樹脂が、少なくともフッ素繊維表面の周方向に渡って存在していることが必要である。
【0024】
該フッ素樹脂に求められる性能は、前記フッ素繊維を構成するフッ素樹脂と同等であり、すなわち、PTFE樹脂、FEP樹脂、PFA樹脂、ETFE樹脂が好ましく、中でも光触媒により発生するラジカルでは侵されないPTFE樹脂がより好ましい。
【0025】
本発明で使用する光触媒としては、例えばTiO、ZnO、Fe等の金属酸化物や、CdS、CdSe、さらに、TiOにCuやCr、V、Sr、Pt等の金属をともに含有するTiO変性物などの如何なるものを用いてもよいが、中でも酸化力が強いTiO、TiO変性物が好ましく、TiOが最も好ましい。また、これらの光触媒は単体で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いても良い。
【0026】
この場合、例えばV等の光を当てずとも用いることのできる触媒を用いることもできるが、得られる効果が非常に小さい。本発明では、光のエネルギーを化学反応に利用できる上記光触媒を用いることで、前述の効果を大いに発揮することができるのである。
【0027】
フッ素繊維表面への光触媒の担持方法としては、特に限定するものではないが、フッ素樹脂の中に光触媒を練り込んで繊維状にする練り込み方式のものが好ましい。練り込む場合には、フッ素繊維内に均一に担持されていてもよいし、フッ素繊維の横断面が、フッ素樹脂の芯部分と、光触媒を含むフッ素樹脂の鞘部分とで構成された芯鞘構造になっていてもよい。
【0028】
また、フッ素繊維表面に光触媒が圧着されて担持しているものでもよい。この担持方法であれば、融点以下ではフッ素繊維表面も固体状態で存在し、光触媒が強固に担持されているため好ましい。このような担持方法のものはフッ素繊維の表面を熱溶融した状態で光触媒に圧力をかけることで容易に得られる。
【0029】
本発明において、「光触媒を含むフッ素樹脂は、フッ素繊維の表面の周方向に渡って存在している」とは、フッ素繊維の外周面が光触媒を含むフッ素樹脂で覆われているという意味であり、その被覆割合は、外周面の面積の50%以上であれば光触媒効果を十分得ることができ、好ましくは80%以上、より好ましくはほぼ100%である。この場合、50%未満であると基材が受けた光の量を効率よく利用して光触媒効果を得ることができなくなり、好ましくない。この場合、光触媒を含むフッ素樹脂から、光触媒粒子が露出していても良いが、ダスト払い落とし時などにおける脱落防止のため、光触媒表面の少なくとも一部が樹脂中に埋もれている必要がある。フッ素樹脂からの光触媒粒子の露出量としては、当該光触媒粒子表面積の10%以上90%以下の範囲でフッ素樹脂から露出しているのが好ましい。露出量が10%未満であると、十分な光触媒効果を得ることはできず、90%を超えると光触媒粒子が脱落し易いからである。
【0030】
光触媒が担持されたフッ素繊維の断面は略円形であることが好ましい。略円形であると、基材との不織布化、織布化などの加工工程において、その工程通過性が良くなるからである。
【0031】
さらに、上記光触媒が担持されたフッ素繊維は、吸着剤を含有することが好ましい。吸着剤としては、活性炭、ゼオライト、アパタイト、多孔シリカ、など如何なるものでもよい。吸着剤は、空気中や水中に含まれる汚染物質を吸着する作用があるため、光が当たらず光触媒作用が発生しないときにも、吸着剤による汚染物質吸着作用が持続的に発揮される。そして、光が照射されて光触媒効果により、吸着剤に吸着された汚染物質を分解することで、再び吸着剤の吸着効果が発揮でき、空気や水等の浄化に一層効果的に使用することができる。
【0032】
そして、本発明のバグフィルターは、上述したいずれかのバグフィルター用濾布を袋状に縫製したものである。
【0033】
以上に説明した本発明のバグフィルター用濾布およびバグフィルターは、例えば次のようにして製造することができ、フッ素繊維としてPTFE繊維を用いた例について説明する。
【0034】
まず、PTFE繊維の製法は、PTFE樹脂粉末と潤滑剤とを混合し、ペースト押し出しし、シート状物を得て、延伸してフィルム状にし、それをスリットしてフィラメントを得るスリット法や、前記フィルムを擦過して開繊するスカイブ法、あるいは、PTFE樹脂粉末を含む分散液とビスコース等セルロース系樹脂とを含む分散液を減圧、脱泡しながら混合、撹拌し、口金から硫酸等の酸性の水溶液中に吐出した糸状物を加熱ロールに接触させて焼成して得る湿式凝固法などの方法により製造できる。
【0035】
次に、PTFE繊維に光触媒を練り込み担持する。これには、例えばPTFE樹脂粉末に潤滑剤と酸化チタン等の光触媒を混合して、ペースト押し出しし、シート状物を得て、それを延伸してフィルムを得てそれをスリットしてフィラメントを得るスリット法や、前記光触媒を含有するフィルムを擦過して開繊するいわゆるスカイブ法などを用いる。さらに好ましい担持方法としては、PTFE樹脂粉末を含む分散液とビスコース等セルロース系樹脂と光触媒粉末を含む分散液を減圧、脱泡しながら混合、撹拌し、紡糸口金から硫酸等の酸性の水溶液中に吐出した糸状物を加熱ロールに接触させて焼成して得る湿式凝固法が挙げられる。この湿式凝固法で得られた、光触媒が担持されたPTFE繊維を用いると、スリット法やスカイブ法よりも単糸が細く、かつ、繊度が均一な糸を得ることができて、後加工が施し易くなる。また、口金形状を円形にすることで、光触媒が担持された略円形のフッ素繊維フィラメント(長繊維)を得ることもできる。また、このフィラメントをステープルカッターにより切断して、フッ素繊維ステープル(短繊維)を得ることもできる。
【0036】
上述のフッ素繊維を用いて、バグフィルター用濾布を得る方法について述べる。フッ素繊維フィラメントや、フッ素繊維ステープルからなる紡績糸などを用いて、織物や編物とすることでバグフィルター濾布とすることもできるが、好ましくは、不織布であるとよい。不織布としては、フッ素繊維ステープルからなるウェブでもよく、また、ウェブをカレンダーしたり、樹脂により固化したものでもよいが、ニードルパンチ法により一体化させたものが好ましい。
【0037】
最後に上述したバグフィルター用濾布を袋状に縫製して本発明のバグフィルターを得る。
【0038】
かくして得られる本発明の光触媒担持バグフィルター濾布およびバグフィルターは、紫外線領域の波長を持つ光の存在下で使用されるのが好ましい。先に挙げた光触媒は、通常紫外線領域の波長を持つ光の存在下で、より好適な触媒効果を発揮するためである。
【実施例】
【0039】
以下、本発明に係る光触媒担持バグフィルター濾布およびバグフィルターの実施例を記す。ただし、以下の実施例は本発明の一例であって、これに限定されるものではない。
【0040】
なお、性能評価方法は以下の通りとした。
【0041】
[フッ素繊維への光触媒を含むフッ素樹脂の被覆の割合]
繊維を周方向が観察できるよう切断し、その断面を電子顕微鏡にて観察し、その割合を目視により判断した。その割合が100%であれば◎、80%以上100%未満であれば○、50%以上80%未満であれば△、50%未満であれば×とした。
【0042】
[光触媒の性能]
光触媒製品技術協議会が制定した光触媒性能評価試験法のガスバッグA法に準拠して、アセトアルデヒドの分解実験を評価することにより、光触媒の性能評価をした。すなわちポリフッ化ビニリデンフィルムでできた容量5Lのバッグ中に、100ppmのアセトアルデヒドガスを3Lと、10cm四方のサンプルを入れたものを用意し、1.0mW/cmの紫外線を照射することによってサンプル中の光触媒を活性化させてアセトアルデヒドガスの分解度合いを評価する方法である。
【0043】
なお、評価基準として、初期濃度に対する紫外線照射開始後2時間後におけるアセトアルデヒド除去率が70%以上であれば○、30%以上70%未満であれば△、30%未満であれば×とした。
【0044】
[粉塵払い落としの耐久性能]
サンプルに対し、実使用条件に近い試験方法においてパルス衝撃による粉塵払い落としを行い、その後の光触媒性能評価を行った。すなわち、JIS Z8901−1(2005)「集じん用ろ布の試験方法−第1部:集じん性能」の試験条件(入り口側ダスト濃度5g/m、ろ過速度2m/min、パルス用圧力500kPa、払い落とし圧力損失1000Pa、パルス噴射時間50ms、という条件の下で30回パルスを打つまで処理し、5s間隔で5000回のパルス噴射を行い、その後元の条件で10回パルスを打って安定化させ、その元の条件のままで30回パルスを打つ)でサンプルの処理を行い、ダスト付着面を家庭用掃除機にて清掃した後、上記の光触媒の性能評価方法と同じ評価を行った。
【0045】
[実施例1]
本実施例は、前述の、PTFE繊維に光触媒を練り込み方式で担持させた湿式凝固法による例のものである。
【0046】
まず、分散剤としてアルキルアリルエーテルアルコールを用いて純水に分散されたPTFE系樹脂を60%含有するエマルジョン(A)と、ビスコース(B)(セルロース10%と苛性ソーダ5%、二硫化炭素29%/セルロース量、残りイオン交換水)と、光触媒として酸化チタンエマルジョン(C)(酸化チタン40%と純水60%とを撹拌しながら水酸化カリウムを添加し、pH12に調整したもの)とを、A:B:C=55:5:40の割合で混合し、8℃、1.333kPaで24時間脱泡混合して紡糸原液を得た。
【0047】
この原液を紡糸口金から凝固浴(硫酸10%、硫酸ソーダ15%を純水にて溶解した水溶液入り)中に吐出して得た凝固繊維を、純水の入った洗浄浴で洗浄し、これを370℃に加熱されたロールに接触させて焼成し、続いて350℃に加熱されたロールに接触させて延伸することにより、単糸繊度7.4dtex、フィラメント数60本、総繊度440dtexの光触媒担持フッ素繊維を得た。そして、この繊維をステープルカッターで繊維長を70mmに切断し、この短繊維を通常のカード装置に通してウェブ状に成型し、ニードルパンチにより不織布を作製した。これを袋状に縫製することで、構成繊維として光触媒担持フッ素繊維が100%の光触媒担持バグフィルターとした。
【0048】
得られた光触媒担持バグフィルターに対し、上記性能評価を行い、その結果を表1に示す。
【0049】
[実施例2]
本実施例は、前述の、湿式凝固法で得たフッ素繊維の表面に光触媒を圧着して担持させた例のものである。
【0050】
分散剤としてアルキルアリルエーテルアルコールを用いて純水に分散されたPTFE系樹脂を60%含有するエマルジョン(A)と、ビスコース(B)(セルロース10%と苛性ソーダ5%、二硫化炭素29%/セルロース量、残りイオン交換水)とを、A:B=85:15の割合で混合し、8℃、1.333kPaで24時間脱泡混合して紡糸原液を得た。
【0051】
これを紡糸口金から凝固浴(硫酸10%、硫酸ソーダ15%を純水にて溶解した水溶液入り)中に吐出して得た凝固繊維を、純水の入った洗浄浴で洗浄し、実施例1で用いたのと同じ酸化チタンエマルジョン(C)に浸し、これを370℃に加熱されたロールに接触させて焼成し、続いて350℃に加熱されたロールに接触させて延伸することにより、単糸繊度7.4dtex、フィラメント数60本、総繊度440dtexの光触媒担持フッ素繊維を得た。この繊維を通常のカード装置に通してウェブ状に成型し、ニードルパンチにより不織布を作製した。これを袋状に縫製することで、光触媒担持バグフィルターとした。
【0052】
得られた光触媒担持バグフィルターに対し、上記性能評価を行い、その結果を表1に示す。
【0053】
[実施例3]
本実施例は、前述の、ニードルパンチ法で得た不織布の構成繊維であるフッ素繊維の表面に、光触媒を熱プレスして担持させた例のものである。
【0054】
まず、フッ素繊維(東レ株式会社製トヨフロン(R)、 T201−7.4T70mm、PTFE製、繊度7.4dtex、カット長70mm)100%を通常のカード装置に通してウェブ状に成型し、ニードルパンチにより不織布を作製した。この不織布に、実施例1と同じ酸化チタンエマルジョン(C)をディップし、ローラーで絞り、350℃、0.73MPa、3分の条件で熱プレスを行うことにより、布帛を得た。これを袋状に縫製することで、光触媒担持バグフィルターとした。
【0055】
得られた光触媒担持バグフィルターに対し、上記性能評価を行い、その結果を表1に示す。
【0056】
[比較例1]
今度は酸化チタンエマルジョンを入れないで、分散剤として、アルキルアリルエーテルアルコールを用いて純水に分散されたPTFE系樹脂を60%含有するエマルジョン(A)と、ビスコース(B)(セルロース10%と苛性ソーダ5%、二硫化炭素29%/セルロース量、残りイオン交換水)のみを、A:B=85:15の割合で混合し、8℃、1.333kPaで24時間脱泡混合して紡糸原液を得た。
【0057】
これを紡糸口金から凝固浴(硫酸10%、硫酸ソーダ15%を純水にて溶解した水溶液入り)中に吐出して得た凝固繊維を、純水の入った洗浄浴で洗浄し、これを370℃に加熱されたロールに接触させて焼成し、続いて350℃に加熱されたロールに接触させて延伸することにより、単糸繊度7.4dtex、フィラメント数60本、総繊度440dtexのフッ素繊維を得た。
【0058】
そして、この繊維を通常のカード装置に通してウェブ状に成型し、ニードルパンチにより不織布を作製した。また、これを袋状に縫製することで、バグフィルターとした。
【0059】
得られた光触媒担持バグフィルターに対し、上記性能評価を行い、その結果を表1に示す。
【0060】
[比較例2]
フッ素繊維(東レ株式会社製トヨフロン(R)、 T201−7.4T70mm、PTFE製、繊度7.4dtex、カット長70mm)100%を通常のカード装置に通してウェブ状に成型し、ニードルパンチにより不織布を作製した。この不織布に、バインダーとして尿素樹脂加工を施した後に、実施例1で用いたのと同じ酸化チタンエマルジョン(C)を含浸、乾燥することにより、布帛を得た。これを袋状に縫製することで、バグフィルターとした。
【0061】
得られた光触媒担持バグフィルターの性能を表1に示す。
【0062】
[比較例3]
本比較例は、前述の背景技術の欄で述べた引っ掻き方式のものである。
【0063】
まず、PTFE樹脂にナフサを24wt%の割合で攪拌混合し、円筒状に予備成型し、押出成型し、圧延することで、PTFEシートを得た。このシートを280℃に加熱してナフサを蒸発除去し、PTFEシートを作製した。
【0064】
また、分散剤としてアルキルアリルエーテルアルコールを用いて純水に分散されたPTFE系樹脂を60%含有するエマルジョン(A)と、酸化チタン粉体(C)(石原産業製、ST−01)とをA:C=60:40となるよう混合し、PTFE混合液を得た。
そして、前述のPTFEシートに、PTFE混合液を塗布し、360℃で3分間焼成して、積層シートを得た。このシートを350℃に加熱しながら、長手方向に3倍に延伸した。この積層延伸シートを、多数の針を備えたブラシで引っ掻いて繊維を得た。
【0065】
この繊維を通常のカード装置に通してウェブ状に成型し、ニードルパンチにより不織布を作製した。これを袋状に縫製することで、バグフィルターとした。
【0066】
得られた光触媒担持バグフィルターの性能を表1に示す。
【0067】
【表1】

【0068】
表1の評価結果から明らかなように、実施例1〜3の光触媒担持布帛は、光触媒を含む樹脂が繊維に十分被覆されていることから、光触媒性能を持ち、かつ、粉塵払い落とし耐久性能を持つバグフィルターとなることが判った。それに対し、比較例1〜3は、光触媒性能を持たないか、あるいは光触媒性能を持ったとしても、粉塵払い落としに耐えないことが判った。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光触媒がフッ素樹脂中に分散して担持されてなるフッ素繊維を含むバグフィルター用濾布であって、前記光触媒を含むフッ素樹脂は、前記フッ素繊維の少なくとも表面の周方向に渡って存在していることを特徴とするバグフィルター用濾布。
【請求項2】
前記光触媒を含むフッ素樹脂は、フッ素繊維表面積の50%以上100%以内の範囲で前記フッ素繊維表面の周方向に渡って被覆されていることを特徴とする、請求項1に記載のバグフィルター用濾布。
【請求項3】
前記フッ素繊維の横断面は、芯鞘構造を有しており、かつ鞘部分が光触媒を含むフッ素樹脂で構成されていることを特徴とする、請求項1に記載のバグフィルター用濾布。
【請求項4】
前記光触媒は、光触媒粒子表面積の10%以上90%以下の範囲が前記フッ素樹脂表面から露出していることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のバグフィルター用濾布。
【請求項5】
前記フッ素繊維は、さらに吸着粒子を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のバグフィルター用濾布。
【請求項6】
光触媒は、酸化チタンおよび酸化チタン変性物のうちの少なくとも一種を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のバグフィルター用濾布。
【請求項7】
前記フッ素繊維は、ポリテトラフルオロエチレン繊維であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のバグフィルター用濾布。
【請求項8】
前記ポリテトラフルオロエチレン繊維は、ポリテトラフルオロエチレン樹脂粉末と、セルロース系樹脂とを含む分散液を、口金から凝固浴中に吐出して紡糸し、凝固することにより繊維状物を得る湿式紡糸法で得られたものであることを特徴とする請求項7に記載のバグフィルター用濾布。
【請求項9】
前記フッ素繊維の断面は、略円形であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のバグフィルター用濾布。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載のバグフィルター用濾布を袋状に縫製してなることを特徴とするバグフィルター。

【公開番号】特開2007−196182(P2007−196182A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−20197(P2006−20197)
【出願日】平成18年1月30日(2006.1.30)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】