説明

バグフィルター用濾材

【課題】粉塵除去作業を容易なものとすることができるバグフィルター用濾材を提供する。
【解決手段】通気性を有する基材層10と、捕塵用ナノ繊維からなる捕塵用ナノ繊維層20と、基材層10と捕塵用ナノ繊維層20とを接合するための接合部材30とを備え、補塵用ナノ繊維20には少なくとも一種類の導電体が付着されており、かつ、基材層10と捕塵用複合ナノ繊維層20とを接合部材30で接合した構造を有する。このような構成とすることにより、捕塵用ナノ繊維層20に導電性を持たせることができ、捕塵用ナノ繊維層20を電気的に接地することによって、バグフィルター用濾材1Aには静電気が蓄積しにくくなり、粉塵除去作業を容易なものとすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バグフィルター用濾材、バグフィルター用濾材製造装置、バグフィルター用濾材製造方法及びバグフィルターに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、通気性を有する基材層と粉塵を捕捉するためのナノ繊維層(捕塵用ナノ繊維層という。)とを接合した構造を有するバグフィルター用濾材が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
図10は、従来のバグフィルター用濾材900を説明するために示す図である。従来のバグフィルター用濾材900は、図10に示すように、通気性を有する基材層910と捕塵用ナノ繊維層920とを接合した構造を有する。このように構成された従来のバグフィルター用濾材900は、基材層910と捕塵用ナノ繊維層920とを接合した構造となっているため、高い機械的強度を有するとともに高い粉塵捕捉能力を有するバグフィルター用濾材とすることが可能となる。このため、このようなバグフィルター用濾材900を用いて製造されたバグフィルターは、高い粉塵捕捉能力を有し、かつ、捕捉した粉塵を適宜に除去することにより、長期間使用することができる優れたバグフィルターとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2010−525938号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、この種のバグフィルター用濾材は、静電気が蓄積しやすいといった課題がある。このため、このようなバグフィルター用濾材を用いてバグフィルターを製造した場合、当該バグフィルターも静電気が蓄積しやすいものとなり、当該バグフィルターの粉塵除去を行う際、捕捉した粉塵を除去する作業(粉塵除去作業という。)が困難となるといった課題がある。
【0006】
そこで本発明は、粉塵除去作業を容易なものとすることができるバグフィルター用濾材を提供するとともにこのようなバグフィルター用濾材を製造可能なバグフィルター用濾材製造装置及びバグフィルター用濾材製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、このようなバグフィルター用濾材を用いることによって、粉塵除去作業を容易なものとすることができるバグフィルターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[1]本発明のバグフィルター用濾材は、基材層と、捕塵用ナノ繊維からなる捕塵用ナノ繊維層と、前記基材層と前記捕塵用ナノ繊維層とを接合するための接合部材とを備え、前記捕塵用ナノ繊維には導電体が付着されており、かつ、前記基材層と前記捕塵用ナノ繊維層とを前記接合部材で接合した構造を有することを特徴とする。
【0008】
本発明のバグフィルター用濾材によれば、捕塵用ナノ繊維には導電性物質が付着されている構成となっているため、捕塵用ナノ繊維層に導電性を持たせることができ、捕塵用ナノ繊維層の所定箇所を電気的に接地することによって、バグフィルター用濾材には静電気が帯電しにくくなり、粉塵除去作業を容易なものとすることができる。また、捕塵用ナノ繊維に導電体を付着させておくと、静電気の蓄積を抑制することができるといった効果の他に、特定の種類の粉塵を効率よく吸着可能とするといった効果も得られる。
【0009】
[2]本発明のバグフィルター用濾材においては、前記導電体は、導電体蒸着法によって付着されていることが好ましい。
【0010】
これにより、導電体を捕塵用ナノ繊維全体を被覆するように付着させることができるため、捕塵用ナノ繊維層は全体的に導電性を有するものとなる。
【0011】
[3]本発明のバグフィルター用濾材においては、前記導電体として、複数種類の導電体を用いることを特徴とするバグフィルター用濾材。
【0012】
このように、複数種類の導電体を捕塵用ナノ繊維に付着すさせておくことにより、複数種類の各導電体に対応した特定の粉塵を効率的に吸着できるといった効果が得られる。
【0013】
[4]本発明のバグフィルター用濾材においては、前記基材層を構成する材料の融点をT1、前記接合部材を構成する材料の融点をT2、前記捕塵用ナノ繊維層を構成する材料の融点をT3としたとき、「T1>T2」かつ「T3>T2」の関係を満たすことが好ましい。
【0014】
これにより、熱圧着によって基材層と捕塵用複合ナノ繊維層とを接合部材で接合した構造とすることができ、そのとき、基材層及び捕塵用ナノ繊維層に与える影響を少なくすることができる。
【0015】
[5]本発明のバグフィルター用濾材においては、前記基材層を構成する材料の融点T1、前記接合用ナノ繊維層を構成する材料の融点T2、前記捕塵用ナノ繊維層を構成する材料の融点T3は、「T1−T2≧10℃」かつ「T3−T2≧10℃」の関係を満たすことが好ましい。
【0016】
接合部材に融点をこのように設定することにより、基材層及び捕塵用ナノ繊維層に殆ど影響を与えることなく、確実に基材層と捕塵用複合ナノ繊維層とを接合部材で接合させることができる。
【0017】
[6]本発明のバグフィルター用濾材においては、前記捕塵用ナノ繊維層は、前記結部材との接合面と反対側の面に、当該捕塵用ナノ繊維層を保護するためのカバー層が形成されていることが好ましい。
【0018】
このような構成とすることにより、捕塵用ナノ繊維層を保護することができ、本発明のバグフィルター用濾材を用いてバグフィルターを製造した場合、当該バグフィルターを長寿命とすることができる。
【0019】
[7]本発明のバグフィルター用濾材においては、前記捕塵用ナノ繊維層は、電解紡糸法により形成され、前記接合部材は、接合用ナノ繊維からなる接合用ナノ繊維層として形成され、かつ、当該接合用ナノ繊維層は、電解紡糸法によって形成されていることが好ましい。
【0020】
捕塵用ナノ繊維層及び接合用ナノ繊維層が電界紡糸法により形成されたものであるため、通気性に優れ、高い粉塵捕捉能力を有するバグフィルター用濾材とすることができる。
【0021】
[8]本発明のバグフィルター用濾材においては、前記結合用ナノ繊維層の目付量は、0.01g/m〜20g/mの範囲内にあることが好ましい。
【0022】
接合用ナノ繊維層の接合用ナノ繊維層の目付量をこのような範囲内に設定することにより、基材層と捕塵用ナノ繊維層とを接合するために十分な量の接合ナノ繊維を有することから基材層と捕塵用ナノ繊維層とを剥がれにくくすることができ、かつ、バグフィルター用濾材の空隙を埋めるほどの量でもないことから十分な通気度を保持することができる。
【0023】
[9]本発明のバグフィルター用濾材においては、前記捕塵用ナノ繊維の平均径をD1とし、前記接合用ナノ繊維の平均径をD2としたとき、「0.01≦D2/D1≦0.50」の関係を満たすことが好ましい。
【0024】
このような構成とすることにより、接合用ナノ繊維層が基材層と捕塵用ナノ繊維層とを接合させる際に、基材層と捕塵用ナノ繊維層との接合状態を適切なものとすることができる。すなわち、「D2/D1」が0.01未満の場合には、基材層と捕塵用ナノ繊維層とを十分に接合させることができず、「D2/D1」が0.50を越える場合には、接合用ナノ繊維の平均径が大きくなりバグフィルター用濾材の通気度を低下させてしまう可能性があることから、「0.01≦D2/D1≦0.50」の関係を満たすことが好ましい。
【0025】
[10]本発明のバグフィルター用濾材製造装置は、[1]に記載のバグフィルター用濾材を製造するためのバグフィルター用濾材製造装置であって、基材層と、捕塵用ナノ繊維からなる捕塵用ナノ繊維層と、前記基材層と前記捕塵用ナノ繊維層とを接合するための接合部材とを備え、前記基材層と前記捕塵用ナノ繊維層とを前記接合部材で接合した構造を有するナノ繊維複合体を製造するナノ繊維複合体製造装置と、前記捕塵用ナノ繊維に少なくとも一種類の導電体を付着させるための導電体付着装置と備えることを特徴とする。
【0026】
このような構成とすることにより、上記本発明のバグフィルター用濾材を製造することができる。
【0027】
[11]本発明のバグフィルター用濾材製造装置においては、前記ナノ繊維複合体製造装置は、前記基材層と前記捕塵用ナノ繊維層との間に前記接合部材を介在させた状態で熱圧着することにより、前記基材層と前記捕塵用ナノ繊維層とを接合する接合装置を有することが好ましい。
【0028】
このような構成とすることにより、前記基材層と前記捕塵用ナノ繊維層とを接合部材によって高い強度で接合させることができる。
【0029】
[12]本発明のバグフィルター用濾材製造装置においては、前記導電体付着装置は、導電体蒸着装置であって、当該導電体蒸着装置によって前記補塵用ナノ繊維層に前記導電体を付着させることが好ましい。
【0030】
これにより、捕塵用ナノ繊維全体に導電体を粒子状に付着させることができ、捕塵用ナノ繊維全体が導電体によって被覆された状態となり、それによって、捕塵用ナノ繊維層は全体的に導電性を有するものとなる。
【0031】
[13]本発明のバグフィルター用濾材製造装置においては、前記捕塵用ナノ繊維層の前記結合部材との接合面と反対側の面に、当該捕塵用ナノ繊維層を保護するためのカバー層を形成するためのカバー層形成装置をさらに備えることが好ましい。
【0032】
このような構成とすることにより、捕塵用ナノ繊維層にカバー層を形成することができ、それによって捕塵用ナノ繊維層を保護することができ、本発明のバグフィルター用濾材を用いてバグフィルターを製造した場合、当該バグフィルターを長寿命とすることができる。
【0033】
[14]本発明のバグフィルター用濾材製造装置においては、前記接合部材は、接合用ナノ繊維からなる接合用ナノ繊維層として形成されており、前記ナノ繊維複合体製造装置は、前記接合用ナノ繊維の原料となるポリマー材料を含有する第1ポリマー溶液を用いて電界紡糸法により、前記基材層上に前記接合用ナノ繊維からなる前記接合用ナノ繊維層を形成することによって、前記基材層と前記接合用ナノ繊維層とが積層した構造を有する第1ナノ繊維複合体を生成する第1電界紡糸装置と、前記捕塵用ナノ繊維の原料となるポリマー材料を含有する第2ポリマー溶液を用いて電界紡糸法により、前記第1ナノ繊維複合体上に前記捕塵用ナノ繊維からなる捕塵用ナノ繊維層を形成することによって、前記第1ナノ繊維複合体と前記捕塵用ナノ繊維層とが積層した構造を有する第2ナノ繊維複合体を生成する第2電界紡糸装置とを有することが好ましい。
【0034】
このように、結合部材を接合用ナノ繊維層とすることにより、通気性かつ強度的にも優れたバグフィルター用濾材とすることができる。また、ナノ繊維複合体製造装置が上記第1電界紡糸装置及び第2電界紡糸装置を含む構成となっていることにより、本発明のバグフィルター用濾材を効率的に製造することができ、安定した品質のバグフィルター用濾材を大量生産することができる。
【0035】
[15]本発明のバグフィルター用濾材製造方法においては、[1]に記載のバグフィルター用濾材を製造するためのバグフィルター用濾材製造方法であって、基材層と、捕塵用ナノ繊維からなる捕塵用ナノ繊維層と、前記基材層と前記捕塵用ナノ繊維層とを接合するための接合部材とを備え、前記基材層と前記捕塵用ナノ繊維層とを前記接合部材で接合した構造を有するナノ繊維複合体を製造するナノ繊維複合体製造工程と、前記捕塵用ナノ繊維に導電体を付着させるための導電体付着工程と有することを特徴とする。
【0036】
このような工程を行うことによって、上記本発明のバグフィルター用濾材を製造することができる。
【0037】
[16]本発明のバグフィルター用濾材製造方法においては、前記ナノ繊維複合体製造工程は、前記基材層と前記捕塵用ナノ繊維層との間に前記接合部材を介在させた状態で熱圧着することにより、前記基材層と前記捕塵用ナノ繊維層とを接合する接合工程を含むことが好ましい。
【0038】
これにより、前記基材層と前記捕塵用ナノ繊維層とを接合部材によって高い強度で接合させることができる。
【0039】
[17]本発明のバグフィルター用濾材製造方法においては、前記導電体付着工程は、導電体蒸着装置によって前記補塵用ナノ繊維層に前記導電体を付着させることが好ましい。
【0040】
これにより、捕塵用ナノ繊維全体に導電体を粒子状に付着させることができ、捕塵用ナノ繊維全体が導電体によって被覆された状態となり、それによって、捕塵用ナノ繊維層は全体的に導電性を有するものとなる。
【0041】
[18]本発明のバグフィルター用濾材製造方法おいては、前記捕塵用ナノ繊維層の前記結合部材との接合面と反対側の面に、当該捕塵用ナノ繊維層を保護するためのカバー層を形成するためのカバー層形成工程をさらに有することが好ましい。
【0042】
このようなカバー層形成工程を行うことにより、捕塵用ナノ繊維層にカバー層を形成することができる。それによって捕塵用ナノ繊維層を保護することができ、本発明のバグフィルター用濾材を用いてバグフィルターを製造した場合、当該バグフィルターを長寿命とすることができる。
【0043】
[19]本発明のバグフィルター用濾材製造方法においては、前記接合部材は、接合用ナノ繊維からなる接合用ナノ繊維層として形成され、前記ナノ繊維複合体製造工程は、前記接合用ナノ繊維の原料となるポリマー材料を含有する第1ポリマー溶液を用いて電界紡糸法により、前記基材層上に前記接合用ナノ繊維からなる前記接合用ナノ繊維層を形成することによって、前記基材層と前記接合用ナノ繊維層とが積層した構造を有する第1ナノ繊維複合体を生成する第1電界紡糸工程と、前記捕塵用ナノ繊維の原料となるポリマー材料を含有する第2ポリマー溶液を用いて電界紡糸法により、前記第1ナノ繊維複合体上に前記捕塵用ナノ繊維からなる捕塵用ナノ繊維層を形成することによって、前記第1ナノ繊維複合体と前記捕塵用ナノ繊維層とが積層した構造を有する第2ナノ繊維複合体を生成する第2電界紡糸工程とを含むことが好ましい。
【0044】
このように、結合部材を接合用ナノ繊維層とすることにより、通気性かつ強度的にも優れたバグフィルター用濾材とすることができる。また、ナノ繊維複合体製造工程が上記第1電界紡糸工程及び第2電界紡糸工程を含んでいることにより、本発明のバグフィルター用濾材を効率的に製造することができ、安定した品質のバグフィルター用濾材を大量生産することができる。
【0045】
[20]本発明のバグフィルターは、[1]〜[9]のいずれかに記載のバグフィルター用濾材を用いて製造されていることを特徴とする。
【0046】
このように、[1]〜[9]のいずれかに記載のバグフィルター用濾材を用いることにより、本発明のバグフィルターは、[1]〜[9]のいずれかに記載のバグフィルター用濾材と同様の効果を有する。このようなバグフィルターは広い範囲に使用可能であり、プラントなどの集塵装置のフィルターとして好適なものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】実施形態1に係るバグフィルター用濾材1Aを説明するための図である。
【図2】実施形態1に係るバグフィルター用濾材製造装置100Aを説明するために示す図である。
【図3】実施形態1に係るバグフィルター用濾材製造方法を説明するためのフローチャートである。
【図4】実施形態1に係るバグフィルター用濾材製造方法における各工程を説明するために示す模式図である。
【図5】実施形態1に係るバグフィルター用濾材1Aを用いて製造されたバグフィルター500Aを説明するために示す図である。
【図6】実施形態1に係るバグフィルター500Aのパルスジェット洗浄について説明するために示す図である。
【図7】実施形態2に係るバグフィルター用濾材1Bを説明するための図である。
【図8】実施形態2に係るバグフィルター用濾材製造装置100Bにおけるカバー層形成装置103を説明するために示す図である。
【図9】実施形態1に係るバグフィルター用濾材製造方法を説明するためのフローチャートである。
【図10】従来のバグフィルター用濾材900を説明するために示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0049】
[実施形態1]
1.実施形態1に係るバグフィルター用濾材1Aの構成
図1は、実施形態1に係るバグフィルター用濾材1Aを説明するために示す図である。図1(a)は芯材(符号を図示せず。)に巻いたロール状の状態のバグフィルター用濾材1Aの斜視図であり、図1(b)はバグフィルター用濾材1Aの拡大断面図であり、図1(c)は図1(b)において破線円Pで示す範囲をさらに拡大して示す図である。なお、構成などを示す図は全て模式図であり、実際の大きさ、厚さなどの関係と必ずしも一致するものではない。
【0050】
実施形態1に係るバグフィルター用濾材1は、図1に示すように、通気性を有する基材層10と、捕塵用として用いられる捕塵用ナノ繊維22とからなり、気体(大気など)に含まれ微小な粉塵を捕捉可能な捕塵用ナノ繊維層20と、基材層10と捕塵用ナノ繊維層20とを接合するための接合部材30とを備え、基材層10と捕塵用ナノ繊維層20とを接合部材30で接合した構造を有している。
【0051】
捕塵用ナノ繊維層20は、捕塵用ナノ繊維22に導電体24が蒸着(例えば真空蒸着)によって付着した構造となっている。また、接合部材30は、実施形態1に係るバグフィルター用濾材1Aにおいては、接合用ナノ繊維からなる接合用ナノ繊維層として形成されている。以下、「接合部材30」を「接合用ナノ繊維層30」ともいう。
【0052】
そして、基材層10、接合用ナノ繊維層30及び捕塵用ナノ繊維層20がこの順で積層され、接合用ナノ繊維層30における接合用ナノ繊維の少なくとも一部が溶融した状態となっていることにより、基材層10と捕塵用ナノ繊維層20とを接合用ナノ繊維層30で接合した構造を有している。なお、図1(c)において、灰色で塗りつぶした部分は、接合用ナノ繊維の少なくとも一部が溶融した状態となっていることを示している。このように、接合用ナノ繊維の少なくとも一部が溶融することにより、基材層10と捕塵用ナノ繊維層20とが接合用ナノ繊維層30によって接合された状態となる。
【0053】
基材層10は長尺シートの形態を取っており、各種材料からなる不織布、織物、編物、紙等、通気性のあるものを用いることができる。なお、実施形態においては、基材層10として、平均径1000nmのPTFEからなる不織布を用いる。図1(c)中、符号12で示すのは基材層10中のPTFEの繊維である。基材層10の目付は、例えば、350g/m〜800g/mの範囲内にある。また、基材層10の通気度は、例えば、0.5cm/cm/s〜50cm/cm/sの範囲内にある。基材層10は、例えば、10m〜10kmの長さのものを用いることができる。なお、基材層として長尺シートではないもの(例えば、短冊状のもの)を用いることもできる。
【0054】
捕塵用ナノ繊維層20は、平均径が50nm〜1000nmの範囲内の捕塵用ナノ繊維22からなり、より好ましくは50nm〜500nmの範囲内にある。また、捕塵用ナノ繊維22の融点は100度以上である。また、捕塵用ナノ繊維層20は、導電体24が蒸着によって捕塵用ナノ繊維22全体を被覆した状態となっている(図1(c)参照。)。なお、図1(c)は拡大図であるため、粒子状の導電体24が捕塵用ナノ繊維22全体に付着している状態となっているが、全体的に見ると、導電体24が捕塵用ナノ繊維22を被覆する状態となっている。このため、捕塵用ナノ繊維層20は全体的に導電性を有するものとなる。また、捕塵用ナノ繊維層20の目付量は、例えば、0.05g/m〜50g/mの範囲内にあり、好ましくは0.1g/m〜10g/mの範囲内にある。
【0055】
また、捕塵用ナノ繊維22を構成する材料としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリ乳酸(PLA)、ポリプロピレン(PP)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリアミド(PA)、ポリウレタン(PUR)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ乳酸グリコール酸(PLGA)、シルク、セルロース、キトサン等、各種のポリマーを用いることができ、2以上のポリマーを混合した材料を用いることもできる。
【0056】
また、導電体24は、導電性に優れた物質であれば特に限定されるものではないが、本実施形態1及び後述する実施形態2で用いられる導電体としては、金属からなる導電体及びカーボンからなる導電体が挙げられる。金属としては、例えば、アルミニウム、銅、すず、亜鉛、ニッケル、クロム、チタン、シリコン、鉛、モリブデン、鉄、金、銀、白金、パラジウム、銅系合金、アルミニウム系合金、チタニウム系合金及び鉄系合金など各種の金属が挙げられる。なお、複数の金属を用いることもでき、さらにカーボンを加えるようにしてもよい。
【0057】
接合用ナノ繊維層30は、接合用ナノ繊維32は熱接合性を有する樹脂(例えば、熱可塑性樹脂)からなる。また、結合用ナノ繊維層30を構成する結合用ナノ繊維32の平均径は、例えば、50nm〜1000nmの範囲内とすることが好ましいが、捕塵用ナノ繊維22よりも小さい平均径を有する。すなわち、捕塵用ナノ繊維22の平均径をD1とし、接合用ナノ繊維32の平均径をD2としたとき、「0.01≦D2/D1≦0.50」の関係を満たすことが好ましい。
【0058】
また、接合用ナノ繊維層30を構成する材料(熱接合性を有する樹脂)の融点は、基材層10を構成する材料の融点をT1、接合用ナノ繊維層30を構成する材料の融点をT2、捕塵用ナノ繊維層20を構成する材料の融点をT3としたとき、「T1>T2」かつ「T3>T2」の関係を満たし、さらに言えば、「T1−T2≧10℃」かつ「T3−T2≧10℃」の関係を満たすことが好ましい。
【0059】
接合用ナノ繊維層30の目付量は、例えば、0.01g/m〜20g/mの範囲内にあり、好ましくは0.02g/m〜5g/mの範囲内にある。また、接合用ナノ繊維層30の厚さは、例えば、0.1μm〜5μmの範囲内とすることが好ましい。
また、
【0060】
接合用ナノ繊維層30の接合用ナノ繊維32を構成する材料としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリ乳酸(PLA)、ポリプロピレン(PP)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリアミド(PA)、ポリウレタン(PUR)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ乳酸グリコール酸(PLGA)等、各種のポリマーを用いることができ、2以上のポリマーを混合した材料を用いることもできる。また、異なる融点をもつポリマーであれば捕塵用ナノ繊維22と同じ種類のポリマーを用いることもできる。
【0061】
2.実施形態1に係るバグフィルター用濾材製造装置100Aの構成
図2は、実施形態1に係るバグフィルター用濾材製造装置100Aを説明するために示す図である。実施形態1に係るバグフィルター用濾材製造装置100A(以下、バグフィルター用濾材製造装置100Aという。)は、ナノ繊維複合体製造装置101と、導電体付着装置としての導電体蒸着装置102とを有しており、図2(a)はナノ繊維複合体製造装置101の構成を示す正面図であり、図2(b)は導電体蒸着装置102の構成の正面図である。図2においては、一部の部材は断面図として示している。
【0062】
ナノ繊維複合体製造装置101は、図2(a)に示すように、搬送装置110と、第1電界解紡糸装置121と、第2電界紡糸装置122と、接合装置130とを備える。
搬送装置110は、基材層10を繰り出す繰り出しローラー111、接合装置130を通過したバグフィルター用濾材1A’(後述する)を巻き取る巻き取りローラー112、基材層10の張りを調整するテンションローラー113,118と、補助ローラー114とを備える。繰り出しローラー111及び巻き取りローラー112は、図示しない駆動モーターにより回転駆動される構造となっている。
【0063】
第1電界紡糸装置120は、搬送装置110により所定速度で搬送されている基材層10上に接合用ナノ繊維32からなる接合用ナノ繊維層30を形成することによって、基材層10と接合用ナノ繊維層30とが積層した構造を有する第1ナノ繊維複合体40(図4(b)参照。)を生成する。
【0064】
第2電界紡糸装置120は、第1電界紡糸装置120によって生成された第1ナノ繊維複合体40上に、捕塵用ナノ繊維22からなる捕塵用ナノ繊維層20を形成することによって、第1ナノ繊維複合体40と捕塵用ナノ繊維層20とが積層した構造を有する第2ナノ繊維複合体50(図4(c)参照。)を生成する。
【0065】
なお、第1電界紡糸装置121及び第2電界紡糸装置122は、使用するポリマー溶液の種類などが異なるが、基本的には同じ構成を有しているので、ここでは、第1電界紡糸装置121の構成について説明する。第1電界紡糸装置121及び第2電界紡糸装置122において同一構成要素には、同一符号が付されている。
【0066】
第1電界紡糸装置121は、図2(a)に示すように、筐体200と、ノズルユニット210と、ポリマー溶液供給部230と、コレクター250と、電源装置260と、補助ベルト装置270とを備える。第1電界紡糸装置121は、複数の上向きノズル220の吐出口からポリマー溶液をオーバーフローさせながら吐出して、基材層1上に接合用ナノ繊維層30を形成する。
【0067】
筐体200は、導電性の部材からなり接地されている。ノズルユニット210は、複数の上向きノズル220を有する。ナノ繊維複合体製造装置101には、様々な大きさ及び様々な形状を有するノズルユニットを用いることができるが、実施形態1においては、ノズルユニット210は、上面から見たときに一辺が0.5m〜3mの長方形(正方形を含む)に見える大きさで、ブロック状の形状を有する。
【0068】
上向きノズル220は、ポリマー溶液供給部230から供給されるポリマー溶液を吐出口から上向きに吐出するノズルである。上向きノズル220を構成する材料としては導電体を用いることができ、例えば、銅、ステンレス鋼、アルミニウム等を用いることができる。
【0069】
上向きノズル220は、例えば、1.5cm〜6.0cmのピッチで配列されている。上向きノズル220の数は、例えば、36個(縦横同数に配列した場合、6個×6個)〜21904個(縦横同数に配列した場合、148個×148個)とすることができる。
【0070】
なお、実施形態1においては、ノズルとして上向きノズル220を用いているが、本発明はこれに限定されるものではない。ノズルとして横向きノズルを用いてもよいし、下向きノズルを用いてもよい。
【0071】
ポリマー溶液供給部230は、原料タンク232及びポリマー溶液供給装置234を備える。原料タンク232は、接合用ナノ繊維層30の原料となるポリマー溶液(第1ポリマー溶液という。)を貯蔵する。原料タンク232は、第1ポリマー溶液の分離や凝固を防ぐための撹拌装置233を内部に有する。また、原料タンク232には、第1ポリマー溶液供給装置234のパイプ236が接続されている。
【0072】
ポリマー溶液供給装置234は、第1ポリマー溶液を通過させるパイプ236及び供給動作を制御するバルブ238からなり、原料タンク232に貯蔵された第1ポリマー溶液をノズルユニット210に供給する。なお、ポリマー溶液供給装置234は1つのノズルユニットにつき最低1つあればよいが、複数あってもよい。
【0073】
コレクター250は、ノズルユニット210の上方に配置されている。コレクター250は導電体からなり、図2に示すように、絶縁部材252を介して筐体200に取り付けられている。
【0074】
電源装置260は、上向きノズル220と、コレクター250との間に高電圧を印加する。電源装置260の正極はコレクター250に接続され、電源装置260の負極は筐体200を介してノズルユニット210に接続されている。
【0075】
補助ベルト装置270は、基材層10の搬送速度に同期して回転する補助ベルト272と、補助ベルト272の回転を助ける5つの補助ベルト用ローラー274とを有する。5つの補助ベルト用ローラー274のうち1つ又は2つ以上の補助ベルト用ローラーが駆動ローラーであり、残りの補助ベルト用ローラーが従動ローラーである。コレクター250と基材層10との間に補助ベルト272が配設されているため、基材層10は、正の高電圧が印加されているコレクター250に引き寄せられることなくスムーズに搬送されるようになる。
【0076】
第2電界紡糸装置122も第1電界紡糸装置121と同様の構成を有している。ただし、第2電界紡糸装置122におけるポリマー溶液供給部230の原料タンク232には、捕塵用ナノ繊維層20の原料となるポリマー溶液(第2ポリマー溶液という。)を貯蔵する点が第1電界紡糸装置121と異なる。
【0077】
接合装置130は、第2電界紡糸装置122の出力側に配置され、第2電界紡糸装置122によって形成された第2ナノ繊維複合体50を加熱しながら圧着(熱圧着という。)して、基材層10と捕塵用ナノ繊維層20とを接合用ナノ繊維層30を介して接合する。
【0078】
このような接合装置130としては、カレンダーロール131を備えた接合装置を例示することができる。なお、加熱するための手段としては、例えば、カレンダーロール131内にヒーター機能(図示せず。)を組み込んだものを用いる子ことができるが、これ以外にも、例えば、抵抗加熱器、赤外線加熱器、燃焼加熱器、乾燥器、熱風発生器などを用いることも可能である。なお、図2(a)においては、カレンダーロール131は、上下1個ずつのローラーによって第2ナノ繊維複合体50を挟むような構成のものを例示したが、このような構成に限られものではなく、上下2個ずつのローラーが存在するものなど種々の構成を有するカレンダ―ロールを使用することができる。
【0079】
図2(a)に示すような構成を有するナノ繊維複合体製造装置101によって第2ナノ繊維複合体50を熱圧着した状態のナノ繊維複合体を製造することができる。なお、第2ナノ繊維複合体50を熱圧着した状態のナノ繊維複合体は、バグフィルター用濾材として使用可能であるが、実施形態1においては、この段階では、製造途中のバグフィルター用濾材であるため、これを「バグフィルター用濾材1A’」とする。
【0080】
導電体蒸着装置102は、図2(b)に示すように、ナノ繊維複合体製造装置101によって生成されたバグフィルター用濾材1A’を繰り出す繰り出しローラー310と、繰り出しローラー310から繰り出されてくるバグフィルター用濾材1A’の捕塵用ナノ繊維22に導電体24(図1(c)参照。)を蒸着する導電体蒸着部320と、導電体24を蒸着した状態のバグフィルター用濾材(このバグフィルター用濾材をバグフィルター用濾材1Aとする。)を巻き取る巻き取りローラー330と、テンションローラー340と、補助ローラー350とを有している。
【0081】
このように構成された導電体蒸着装置102によって、捕塵用ナノ繊維層20には導電体24を蒸着することができる。これにより、巻き取りローラー330には、図1に示すようなバグフィルター用濾材1Aが巻き取られる。なお、バグフィルター用濾材1Aは、実施形態1においては、バグフィルター用濾材としての完成品である。
【0082】
3.実施形態1に係るバグフィルター用濾材製造方法の説明
図3は、実施形態1に係るバグフィルター用濾材製造方法を説明するためのフローチャートである。図4は、実施形態1に係るバグフィルター用濾材製造方法における各工程を説明するために示す模式図である。
【0083】
実施形態1に係るバグフィルター用濾材製造方法は、図3に示すように、基材層準備工程S1と、第1ナノ繊維複合体40を生成する第1電界紡糸工程S2と、第2ナノ繊維複合体50を製造する第2電界紡糸工程S3と、第2ナノ繊維複合体50を加熱することによって、基材層10と捕塵用ナノ繊維層20とを接合用ナノ繊維層30で接合する接合工程S4と、捕塵用ナノ繊維層20の捕塵用ナノ繊維22に、蒸着によって導電体24を付着させる導電体付着工程S5とを含む。以下、図3及び図4を参照して、実施形態1に係るバグフィルター用濾材1Aの製造方法における各工程について説明する。
【0084】
(基材層準備工程S1)
基材層準備工程S1は、基材層10を準備する工程であり、図4(a)は基材層10を示す図である。基材層10は長尺シートとして構成され、当該長尺シートを搬送装置110にセットし、その後、基材層10を繰り出しローラー111から巻き取りローラー112に向けて所定の搬送速度で搬送させながら、まずは、第1電界紡糸装置121において第1電界紡糸装工程を行う。
【0085】
(第1電界紡糸工程S2)
第1電界紡糸工程S2は、第1ナノ繊維複合体40を生成する工程である。すなわち、接合用ナノ繊維32の原料となるポリマー材料を含有する第1ポリマー溶液を用いて電界紡糸法により、基材層10上に接合用ナノ繊維32からなる接合用ナノ繊維層30を形成することによって、基材層10と接合用ナノ繊維層30とが積層した構造を有する第1ナノ繊維複合体40を生成する。図4(b)は第1電界紡糸工程S2によって生成された第1ナノ繊維複合体40を示している。なお、第1ポリマー溶液は、ポリマー溶液供給部230を通じてノズルユニット210へ供給される
【0086】
(第2電界紡糸工程S2)
第2電界紡糸工程S3は、第2ナノ繊維複合体50を生成する工程である。すなわち、捕塵用ナノ繊維22の原料となるポリマー材料を含有する第2ポリマー溶液を用いて電界紡糸法により、第1ナノ繊維複合体40上に捕塵用ナノ繊維22からなる捕塵用ナノ繊維層20を形成することによって、第1ナノ繊維複合体40と捕塵用ナノ繊維層20とが積層した構造を有する第2ナノ繊維複合体50を生成する。図4(c)は第2電界紡糸工程S3によって生成された第2ナノ繊維複合体50を示している。
【0087】
なお、第2ポリマー溶液は、第2電界紡糸装置122におけるポリマー溶液供給部230を通じてノズルユニット210へ供給される。
【0088】
(接合工程S4)
接合工程S4は、第2電界紡糸装置122によって生成された第2ナノ繊維複合体50を熱圧着することにより基材層10と捕塵用ナノ繊維層20とを接合用ナノ繊維層30を介して接合する工程である。
【0089】
上記基材層準備工程S1、第1電界紡糸工程S2、第2電界紡糸工程S3、接合工程S4は、基材層10と捕塵用ナノ繊維層20とを接合部材(接合用ナノ繊維層30)で接合した構造を有するナノ繊維複合体を製造するナノ繊維複合体製造工程であり、このナノ繊維複合体製造工程によって、ナノ繊維複合体としてのバグフィルター用濾材1A’を製造することができる。
【0090】
(導電体蒸着工程S5)
導電体蒸着工程S5は、捕塵用ナノ繊維層20における捕塵用ナノ繊維22に粒子状の導電体24を蒸着によって捕塵用ナノ繊維22に付着させる工程である。この導電体蒸着工程S5により捕塵用ナノ繊維22は導電体24が被覆された状態(図1(c)参照。)となり、それによって、捕塵用ナノ繊維層20aは全体的に導電性を有するものとなる。
【0091】
なお、実施形態1及び後述する実施形態2で用いられる導電体24としては、上記したような各種の金属及びカーボンを用いることができ、複数種類の導電体を用いることが好ましい。複数種類の導電体を捕塵用ナノ繊維22に付着させることにより、バグフィルター用濾材1Aをバグフィルターとして用いた場合、各導電体に対応した特定の粉塵を効率的に吸着できるといった効果が得られる。このように、捕塵用ナノ繊維22に導電体を付着させておくということは、静電気の蓄積を抑制できるといった効果の他に、様々な種類の粉塵を効率よく吸着可能とするといった効果も得られる。
【0092】
このように、上記基材層準備工程S1、第1電界紡糸工程S2、第2電界紡糸工程S3、接合工程S4に加えて導電体蒸着工程S5を行うことによって、実施形態1に係るバグフィルター用濾材1A(図1参照。)を製造することができる。
【0093】
以下に、実施形態1における紡糸条件を例示的に示す。
第1ポリマー溶液を製造するためのポリマー材料および第2ポリマー溶液を製造するためのポリマー材料は、「1.実施形態1に係るバグフィルター用濾材1Aの構成」で例示したポリマー材料と同じであるため、説明を省略する。
【0094】
また、第1ポリマー溶液及び第2ポリマー溶液を製造するための溶媒としては、例えば、ジクロロメタン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、メチルエチルケトン、クロロホルム、アセトン、水、蟻酸、酢酸、シクロヘキサン、THFなどを用いることができる。複数種類の溶媒を混合して用いてもよい。なお、第1ポリマー溶液及び第2ポリマー溶液には、導電性向上剤などの添加剤を含有させてもよい。
【0095】
搬送速度は、例えば0.2m/分〜100m/分に設定することができ、1m/分〜80m/分に設定することが好ましい。コレクター250とノズルユニット210とに印加する電圧は、10kV〜80kVに設定することができ、40kV〜60kVに設定することが好ましい。紡糸区域の温度は、例えば25℃に設定することができる。紡糸区域の湿度は、例えば30%に設定することができる。
【0096】
実施形態1に係るバグフィルター用濾材1Aによれば、捕塵用ナノ繊維層20の捕塵用ナノ繊維22には、粒子状の導電体24がほぼ全体に付着した構造となり(図1(c)参照。)、それによって、捕塵用ナノ繊維層20は、全体的に見ると、導電体24が捕塵用ナノ繊維22を被覆する状態となっている。このため、捕塵用ナノ繊維層20全体が導電性を有するものとなり、捕塵用ナノ繊維層20の所定箇所を電気的に接地することによって、捕塵用ナノ繊維層20全体が電気的に接地された状態となる。これにより、捕塵用ナノ繊維層20には静電気が蓄積されにくくなる。
【0097】
また、実施形態1に係るバグフィルター用濾材1Aによれば、通気性を有する基材層10と、捕塵用ナノ繊維22からなる捕塵用ナノ繊維層20と、接合用ナノ繊維32からなる接合用ナノ繊維層30とを備え、基材層10と捕塵用ナノ繊維層20とを接合用ナノ繊維層30で接合した構造を有するため、耐久性に優れるとともに高い機械的強度と高い捕塵能力と高い通気度とを有するものとなる。
【0098】
4.実施形態1に係るバグフィルター用濾材1Aを用いたバグフィルター500Aの説明
図5は、実施形態1に係るバグフィルター用濾材1Aを用いて製造されたバグフィルター500Aを説明するために示す図である。図5(a)はバグフィルター500Aの外観斜視図であり、図5(b)は、バグフィルター500Aに用いられる骨組520を取り出して示す図である。図6は、実施形態1に係るバグフィルター500Aのパルスジェット洗浄について説明するために示す図である。
【0099】
バグフィルター500Aは、図5に示すように、実施形態1に係るバグフィルター用濾材1Aからなる円筒形状のバグフィルター本体510と、バグフィルター本体510が円筒形状を保持可能とするための骨組520とからなる。
【0100】
バグフィルター本体510は、図5(a)に示すように、円筒形の袋状をなし、一方の端面(上端面)511が開口面となっていて他方の端面(下端面)512が有底となっている。なお、バグフィルター用濾材1Aにおける捕塵用ナノ繊維層20が表面側(濾過対象となる気体の取り入れ側)となっている。
【0101】
骨組520は、図5(b)に示すように、例えば、複数の円形リング521を各円形リングの中心軸が一致するように離間して配置して、当該複数の円形リング521を複数の支持棒522によって支持するような構造としている。
【0102】
このように構成されたバグフィルター500Aは、例えば、プラントなどの集塵装置(図示せず。)のフィルターとして好適なものとなる。この場合、濾過対象となる気体(空気とする。)は、図5において、実線で示す矢印に沿ってバグフィルター500Aにける捕塵用ナノ繊維層20側から取り込まれて、空気内に含まれる粉塵が捕塵用ナノ繊維層20で捕捉されることにより濾過されて、バグフィルター500Aの内側空間部を通って、上端面511から濾過済みの空気として排出される。
【0103】
そして、当該バグフィルター500Aを所定時間使用することによって多量の粉塵が捕捉された場合には、捕捉された粉塵を除去する作業(粉塵除去作業という。)を行う。粉塵除去作業を行う際は、図6に示すように、圧縮空気を圧縮空気噴射ノズル530から噴射させることによる「パルスジェット洗浄」を行う。
【0104】
このとき、圧縮空気噴射ノズル530から噴射した圧縮空気は、バグフィルター500Aにおける濾過済みの空気の排出口(バグフィルター本体510の上端面511)からバグフィルター500Aの内側空間部を通って、バグフィルター本体510を通過するような経路(図5における破線で示す矢印に沿う経路)で流通する。なお、圧縮空気の流通方向は、濾過対象となる空気の流通方向(図5の実線で示す矢印の方向)とは逆の方向であるので、バグフィルター500Aで捕捉された粉塵を効率よく除去することができる。
【0105】
図6に示すようなパルスジェット洗浄は、バグフィルター500Aが集塵装置(図示せず。)に取り付けられている場合、当該集塵装置からバグフィルター500Aを取り外して、図6に示すようなパルスジェット洗浄を行うようにしてもよく、また、集塵装置にパルスジェット洗浄を行うための機構(パルスジェット洗浄機構という。)を常設しておき、バグフィルター500Aが集塵装置に取り付けられている状態で、バグフィルター500Aをパルスジェット洗浄するようにしてもよい。
【0106】
このように構成されたバグフィルター500Aは、実施形態1に係るバグフィルター用濾材1Aを用いているため、実施形態1に係るバグフィルター用濾材1Aが有する効果を有するものとなる。特に、バグフィルター用濾材1Aを構成する捕塵用ナノ繊維層20の捕塵用ナノ繊維22には、蒸着によって導電体24が全体に付着した状態となっているため(図1(c)参照。)、当該バグフィルター用濾材1Aの表面(捕塵用ナノ繊維層20)の所定箇所を電気的に接地することによって、バグフィルター用濾材1Aの表面(捕塵用ナノ繊維層20)のほぼ全体が電気的に接地された状態となる。これにより、バグフィルター用濾材1Aには静電気が蓄積されにくくなり、捕捉した粉塵を容易に除去できる。
【0107】
また、捕塵用ナノ繊維層20においては、捕捉した粉塵は捕塵用ナノ繊維層20の奥深くまでは入り込むことは殆どないため、バグフィルター500Aをパルスジェット洗浄する場合、効率よく捕塵した粉塵を除去することができる。
【0108】
[実施形態2]
1.実施形態2に係るバグフィルター用濾材1Bの構成
図7は、実施形態2に係るバグフィルター用濾材1Bを説明するために示す図である。図7(a)は芯材(符号を図示せず。)に巻いた状態のバグフィルター用濾材1Bの斜視図であり、図7(b)はバグフィルター用濾材1Bの拡大断面図であり、図7(c)は図7(b)における破線円Pで示す範囲をさらに拡大して示す図である。なお、構成などを示す図は全て模式図であり、実際の大きさ、厚さなどの関係と必ずしも一致するものではない。
【0109】
実施形態2に係るバグフィルター用濾材1Bが実施形態1に係るバグフィルター用濾材1Aと異なるのは、捕塵用ナノ繊維層20の表面(接合用ナノ繊維層30との接合面とは反対側の面)に、当該捕塵用ナノ繊維層20を保護するためのカバー層60が形成されている点であり、その他の構成要素は、実施形態1に係るバグフィルター用濾材1Aと同様であるので、同一構成要素には同一符号を付している。
【0110】
カバー層60は、捕塵用ナノ繊維層20を保護するものであるため、捕塵用ナノ繊維層20よりも空孔率が大きい部材(カバー層形成用部材61という)を用いることができる。実施形態2においては、カバー層形成部材61はガラス繊維で形成されているものとする。カバー層60の目付は20g/m〜100g/mの範囲内にある。また、カバー層60の厚さは1〜10μmの範囲内にある。また、カバー層60の空孔率は捕塵用ナノ繊維層20の空孔率よりも大きい。また、カバー層60の材料の融点をT4とし、接合用ナノ繊維層30を構成する熱接合性を有する樹脂の融点をT2としたとき、「T4>T2」の関係を満たし、さらに言えば、「T4−T2≧10℃」の関係を満たす。
【0111】
カバー層60がこのような部材(カバー層形成用部材61)で構成されているため、捕塵用ナノ繊維層20の捕塵能力を落とすことなく、捕塵用ナノ繊維層20を保護することができる。特に、大きな粉塵などはカバー層60で捕捉される確率が高いため、大きな粉塵が直接的に捕塵用ナノ繊維層20に触れることが少なくなり、捕塵用ナノ繊維層20を保護することができ、捕塵用ナノ繊維層20の劣化を抑制することができる。それによって、捕塵用ナノ繊維層20を長寿命とすることができる。
【0112】
2.実施形態2に係るバグフィルター用濾材製造装置100Bの構成
実施形態2に係るバグフィルター用濾材製造装置100B(以下、バグフィルター用濾材製造装置100Bという。)は、ナノ繊維複合体製造装置101と、導電体蒸着装置102と、カバー層形成装置103とによって構成されている。なお、ナノ繊維複合体製造装置101及び導電体蒸着装置102は、実施形態1に係るバグフィルター用濾材製造装置100Aと同様であるので、実施形態2においては図示及び説明は省略する。このため、実施形態2に係るバグフィルター用濾材製造装置100B全体の構成は図示を省略し、ここでは、カバー層形成装置103のみについて図示と説明を行う。
【0113】
図8は、実施形態2に係るバグフィルター用濾材製造装置100Bにおけるカバー層形成装置103を説明するために示す図である。
【0114】
カバー層形成装置103は、図8に示すように、ロール状に巻き取られた状態となっているバグフィルター用濾材1A(図1参照。)を繰り出す繰り出しローラー410と、ロール状となっているカバー層形成用部材61を繰り出す繰り出しローラー420と、繰り出しローラー410から繰り出されてくるバグフィルター用濾材1Aに、繰り出しローラー420から繰り出されてくるカバー層形成用部材61を接合する接合装置430と、カバー層形成用部材61が接合された状態のバグフィルター用濾材1Bを巻き取る巻き取りローラー440と、テンションローラー450と、補助ローラー460とを有する。なお、繰り出しローラー410から繰り出されてくるバグフィルター用濾材1Aは、実施形態1において製造されたバグフィルター用濾材1Aであり、導電体24が蒸着された状態のバグフィルター用濾材1Aである。
なお、接合装置430は、図2において示した接合装置130と同様の構成のものを用いることができる。
【0115】
バグフィルター用濾材製造装置100Bがこのようなカバー層形成装置103を有することにより、図7に示すようなバグフィルター用濾材1Bを製造することができる。
【0116】
3.実施形態2に係るバグフィルター用濾材製造方法の説明
図9は、実施形態2に係るバグフィルター用濾材製造方法を説明するためのフローチャートである。
【0117】
実施形態2に係るバグフィルター用濾材製造方法は、図9に示すように、基材層準備工程S11と、第1ナノ繊維複合体40を生成する第1電界紡糸工程S12と、第2ナノ繊維複合体50を製造する第2電界紡糸工程S13と、第2ナノ繊維複合体50を熱圧着することによって、基材層10と捕塵用ナノ繊維層20とを接合用ナノ繊維層30で接合する接合工程S14と、捕塵用ナノ繊維層20の捕塵用ナノ繊維22に、蒸着によって導電体を付着させる導電体付着工程S15と、導電体が付着された捕塵用ナノ繊維層20の表面にカバー層60を形成するカバー層形成工程S16とを有する。
【0118】
実施形態2に係るバグフィルター用濾材製造方法は、実施形態1に係るバグフィルター用濾材製造方法の各工程(図3参照。)にカバー層形成工程S16を加えただけであるので、カバー層形成工程S16のみについて説明する。
【0119】
カバー層形成工程S16は、図8に示すようなカバー層形成装置103によって、バグフィルター用濾材1Aにおける捕塵用ナノ繊維層20の表面にカバー層60を形成する工程である。すなわち、繰り出しローラー410から繰り出されてくるバグフィルター用濾材1Aに、繰り出しローラー420から繰り出されてくるカバー層形成用部材61を接合装置430により接合することによって、バグフィルター用濾材1Aにおける捕塵用ナノ繊維層20の表面にカバー層60を形成する。
【0120】
実施形態2に係るバグフィルター用濾材1Bを用いることによっても実施形態1において説明したバグフィルター500A(図5参照。)と同様のバグフィルター500B(図示せず。)を製造することができる。なお、バグフィルター500Bの構成がバグフィルター500Aと異なるのは、バグフィルター500Bの表面、すなわち、捕塵用ナノ繊維層20の表面にカバー層60が形成されているだけであり、他の構成要素は同様である。当該バグフィルター500Bは、バグフィルター500Aと同様の効果を有し、さらに、バグフィルター500Bは、その表面にカバー層60が形成されているため、捕塵用ナノ繊維層20を保護することができる。
【0121】
また、カバー層60は、捕塵用ナノ繊維層20よりも空孔率が大きいものとなっているため、捕塵用ナノ繊維層20の捕塵能力に影響を与えることがない。また、図6に示すようなパルスジェット洗浄によって粉塵除去作業を行う際にも、カバー層の空孔率が大きいものとなっているため、粉塵除去作業に殆ど影響を与えることなく、効率よく粉塵を除去することができる。
【0122】
なお、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施可能となるものである。たとえば、下記に示すような変形実施も可能である。
【0123】
(1)上記各実施形態における各構成要素の数、位置関係、大きさは例示であり、本発明はこれに限定されるものではない。
【0124】
(2)上記各実施形態においては、結合部材は、ナノ繊維(接合用ナノ繊維)からなるナノ繊維層(接合用ナノ繊維層)として形成されているものとして説明したが、必ずしもナノ繊維からなるナノ繊維層として形成されたものでなくてもよく、基材層10と捕塵用ナノ繊維層20とを接合可能であればよい。
【0125】
(3)上記各実施形態においては、基材層10としてPTFEの繊維からなる不織布を用いたが、本発明はこれに限定されるものではない。他の種類の繊維からなる不織布を用いてもよいし、各種材料からなる織物、編物、紙等、を用いることもできる。HEPAフィルターなどのフィルター用濾材を基材層としてもよい。
【0126】
(4)上記実施形態1においては、搬送装置110、第1電界紡糸装置121、第2電界紡糸装置122及び接合装置130をナノ繊維複合体製造装置101とし、当該ナノ繊維複合体製造装置101とは別の構成として導電体蒸着装置102を設け、これらを合わせてバグフィルター用濾材製造装置100Aとしたが、これに限られるものではなく、ナノ繊維複合体製造装置101(搬送装置110、第1電界紡糸装置121、第2電界紡糸装置122及び接合装置130)に導電体蒸着装置102を加えてたものを1つの装置とし、それをバグフィルター用濾材製造装置100Aとしてもよい。この場合、第1電界紡糸装置121による第1電界紡糸工程から導電体蒸着装置102による導電体蒸着工程までが一連の工程として行われる。また、導電体蒸着装置による蒸着を行った後に接合装置130による熱圧着を行うような配置としてもよい。
【0127】
(5)上記実施形態2においても同様に、搬送装置110、第1電界紡糸装置121、第2電界紡糸装置122及び接合装置130をナノ繊維複合体製造装置101とし、当該ナノ繊維複合体製造装置101とは別の構成として導電体蒸着装置102及びカバー層形成装置103を設けるようにして、これらを合わせてバグフィルター用濾材製造装置100Bとしたが、これに限られるものではなく、ナノ繊維複合体製造装置101(搬送装置110、第1電界紡糸装置121、第2電界紡糸装置122及び接合装置130)に導電体蒸着装置102と、カバー層形成装置103を加えて1つの装置としたものをバグフィルター用濾材製造装置100Bとしてもよい。この場合、第1電界紡糸装置121による第1電界紡糸工程からカバー層形成装置103によるカバー層形成工程までが一連の工程として行われる。また、この場合も導電体蒸着装置102による蒸着を行った後に接合装置130による熱圧着を行うような配置としてもよい。
【0128】
(6)上記各実施形態においては、接合用ナノ繊維層30は1台の電界紡糸装置(第1電界紡糸装置121)によって生成するようにしたが、複数台の電界紡糸装置によって接合用ナノ繊維層30を生成するようにしてもよい。このとき、使用するポリマー溶液を個々の電界紡糸装置ごとに異ならせるようにしてもよい。また、捕塵用ナノ繊維層20も1台の電界紡糸装置(第2電界紡糸装置122)によって生成するようにしたが、捕塵用ナノ繊維層20も同様に、複数台の電界紡糸装置によって生成するようにしてもよい。この場合も、使用するポリマー溶液を個々の電界紡糸装置ごとに異ならせるようにしてもよい。
【0129】
(7)上記各実施形態においては、基材層10に接合用ナノ繊維層30を形成することによって第1ナノ繊維複合体40を生成する工程、当該第1ナノ繊維複合体40に捕塵用ナノ繊維層20を形成して第2ナノ繊維複合体50を生成する工程を1つのナノ繊維複合体製造装置100A及び100B内で一連の工程として行うようにしたが、これに限らず、例えば、まずは、基材層10に接合用ナノ繊維層30を形成することによって第1ナノ繊維複合体40を生成する工程を所定の長さの基材層10において行うことで、所定の長さの第1ナノ繊維複合体40を生成したのちに、当該所定の長さの第1ナノ繊維複合体40に対して、捕塵用ナノ繊維層20を形成して第2ナノ繊維複合体50を生成する工程を行うというように、第1ナノ繊維複合体40を生成する工程と第2ナノ繊維複合体50を生成する工程とを別々の工程として行うようにしてもよい。
【0130】
(8)上記実施形態2においては、カバー層60を形成するためのカバー層形成用部材61はガラス繊維を用いて製造されたものをロール状として、当該ロール状のカバー層形成用部材61を繰り出しながら捕塵用ナノ繊維層20に接合させるようにしたが、カバー層形成用部材61の材質やカバー層60を捕塵用ナノ繊維層20に形成する方法は特に限定されるものではなく、例えば、捕塵用ナノ繊維層20の表面に電界紡糸法やメルトブロー法によってカバー層60を形成するようにしてよい。この場合、電界紡糸法やメルトブロー法によって形成されるカバー層60は、捕塵用ナノ繊維層20における捕塵用ナノ繊維22の平均径に比べて大きな平均径を有し、かつ、空孔率が捕塵用ナノ繊維層20に比べて大きく、厚さも捕塵用ナノ繊維層20に比べて薄くなるように設定することが好ましい。
【0131】
(9)上記各実施形態においては、接合用ナノ繊維32からなる接合用ナノ繊維層30は、第1電界紡糸装置121により電解紡糸法によって生成する場合を例示したが、本発明はこれに限定されるものではない。ナノ繊維を製造できるメルトブロー紡糸装置その他の種類の紡糸装置を用いて接合用ナノ繊維層を形成してもよい。
【0132】
(10)上記各実施形態においては、捕塵用ナノ繊維からなる捕塵用ナノ繊維層20は、第2電界紡糸装置122により電解紡糸法によって生成する場合を例示したが、本発明はこれに限定されるものではない。ナノ繊維を製造できるメルトブロー紡糸装置その他の種類の紡糸装置を用いて捕塵用ナノ繊維層を形成してもよい。
【0133】
(11)上記各実施形態においては、導電体24は捕塵用ナノ繊維に粒子状に付着させた場合を例示しているが、粒子状ではなく捕塵用ナノ繊維全体を被覆するように付着させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0134】
1A,1B・・・バグフィルター用濾材、10・・・基材層、12…ガラス繊維、20・・・捕塵用ナノ繊維層、30・・・接合用ナノ繊維層、40・・・第1ナノ繊維複合体、50・・・第2ナノ繊維複合体、22・・・捕塵用ナノ繊維、32・・・接合用ナノ繊維、24・・・導電体、60・・・カバー層、61・・・カバー層形成部材、100A,100B・・・バグフィルター用濾材製造装置、101・・・ナノ繊維複合体製造装置、102・・・導電体蒸着装置、103・・・カバー層形成装置、110・・・搬送装置、111,310,410・・・繰り出しローラー、112,330,440・・・巻き取りローラー、113,118,340,450・・・テンションローラー、114,350,460・・・補助ローラー、121・・・第1電界紡糸装置、122・・・第2電界紡糸装置、200…筐体、210…ノズルユニット、220…上向きノズル、230…ポリマー溶液供給部、232…原料タンク、233…撹拌装置、234…ポリマー溶液供給装置、236…パイプ、238…バルブ、250…コレクター、252…絶縁部材、260…電源装置、270…補助ベルト装置、272…補助ベルト、274…補助ベルト用ローラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層と、
捕塵用ナノ繊維からなる捕塵用ナノ繊維層と、
前記基材層と前記捕塵用ナノ繊維層とを接合するための接合部材とを備え、
前記捕塵用ナノ繊維には導電体が付着しており、かつ、前記基材層と前記捕塵用ナノ繊維層とを前記接合部材で接合した構造を有することを特徴とするバグフィルター用濾材。
【請求項2】
請求項1に記載のバグフィルター用濾材において、
前記導電体は、導電体蒸着法によって付着させることを特徴とするバグフィルター用濾材。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のバグフィルター用濾材において、
前記導電体として、複数種類の導電体を用いることを特徴とするバグフィルター用濾材。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のバグフィルター用濾材において、
前記基材層を構成する材料の融点をT1、前記接合部材を構成する材料の融点をT2、前記捕塵用ナノ繊維層を構成する材料の融点をT3としたとき、
「T1>T2」かつ「T3>T2」の関係を満たすことを特徴とするバグフィルター用濾材。
【請求項5】
請求項4に記載のバグフィルター用濾材において、
前記基材層を構成する材料の融点T1、前記接合用ナノ繊維層を構成する材料の融点T2、前記捕塵用ナノ繊維層を構成する材料の融点T3は、「T1−T2≧10℃」かつ「T3−T2≧10℃」の関係を満たすことを特徴とするバグフィルター用濾材。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のバグフィルター用濾材において、
前記捕塵用ナノ繊維層には、前記接合部材との接合面と反対側の面に、当該捕塵用ナノ繊維層を保護するためのカバー層が形成されていることを特徴とするバグフィルター用濾材。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載のバグフィルター用濾材において、
前記捕塵用ナノ繊維層は、電解紡糸法により形成され、
前記接合部材は、接合用ナノ繊維からなる接合用ナノ繊維層として形成され、かつ、当該接合用ナノ繊維層は、電解紡糸法によって形成されていることを特徴とするバグフィルター用濾材。
【請求項8】
請求項7に記載のバグフィルター用濾材において、
前記接合用ナノ繊維層の目付量は、0.01g/m〜20g/mの範囲内にあることを特徴とするバグフィルター用濾材
【請求項9】
請求項7又は8に記載のバグフィルター用濾材において、
前記捕塵用ナノ繊維の平均径をD1とし、前記接合用ナノ繊維の平均径をD2としたとき、「0.01≦D2/D1≦0.50」の関係を満たすことを特徴とするバグフィルター用濾材。
【請求項10】
請求項1に記載のバグフィルター用濾材を製造するためのバグフィルター用濾材製造装置であって、
基材層と、捕塵用ナノ繊維からなる捕塵用ナノ繊維層と、前記基材層と前記捕塵用ナノ繊維層とを接合するための接合部材とを備え、前記基材層と前記捕塵用ナノ繊維層とを前記接合部材で接合した構造を有するナノ繊維複合体を製造するナノ繊維複合体製造装置と、
前記捕塵用ナノ繊維に少なくとも一種類の導電体を付着させるための導電体付着装置と、
備えることを特徴とするバグフィルター用濾材製造装置。
【請求項11】
請求項10に記載のバグフィルター用濾材製造装置において、
前記ナノ繊維複合体製造装置は、前記基材層と前記捕塵用ナノ繊維層との間に前記接合部材を介在させた状態で熱圧着するにより、前記基材層と前記捕塵用ナノ繊維層とを接合する接合装置を有することを特徴とするバグフィルター用濾材製造装置。
【請求項12】
請求項10又は11に記載のバグフィルター用濾材造装置において、
前記導電体付着装置は、導電体蒸着装置であって、当該導電体蒸着装置によって前記補塵用ナノ繊維層に前記導電体を付着させることを特徴とするバグフィルター用濾材製造装置。
【請求項13】
請求項10〜12のいずれかに記載のバグフィルター用濾材製造装置において、
前記捕塵用ナノ繊維層の前記接合部材との接合面と反対側の面に、当該捕塵用ナノ繊維層を保護するためのカバー層を形成するためのカバー層形成装置をさらに備えることを特徴とするバグフィルター用濾材製造装置。
【請求項14】
請求項10〜13のいずれかに記載のバグフィルター用濾材製造装置において、
前記接合部材は、接合用ナノ繊維からなる接合用ナノ繊維層として形成されており、
前記ナノ繊維複合体製造装置は、
前記接合用ナノ繊維の原料となるポリマー材料を含有する第1ポリマー溶液を用いて電界紡糸法により、前記基材層上に前記接合用ナノ繊維からなる前記接合用ナノ繊維層を形成することによって、前記基材層と前記接合用ナノ繊維層とが積層した構造を有する第1ナノ繊維複合体を生成する第1電界紡糸装置と、
前記捕塵用ナノ繊維の原料となるポリマー材料を含有する第2ポリマー溶液を用いて電界紡糸法により、前記第1ナノ繊維複合体上に前記捕塵用ナノ繊維からなる捕塵用ナノ繊維層を形成することによって、前記第1ナノ繊維複合体と前記捕塵用ナノ繊維層とが積層した構造を有する第2ナノ繊維複合体を生成する第2電界紡糸装置と、
を有することを特徴とするバグフィルター用濾材製造装置。
【請求項15】
請求項1に記載のバグフィルター用濾材を製造するためのバグフィルター用濾材製造方法であって、
基材層と、捕塵用ナノ繊維からなる捕塵用ナノ繊維層と、前記基材層と前記捕塵用ナノ繊維層とを接合するための接合部材とを備え、前記基材層と前記捕塵用ナノ繊維層とを前記接合部材で接合した構造を有するナノ繊維複合体を製造するナノ繊維複合体製造工程と、
前記捕塵用ナノ繊維に導電体を付着させるための導電体付着工程と、
を有することを特徴とするバグフィルター用濾材製造方法。
【請求項16】
請求項15に記載のバグフィルター用濾材製造方法において、
前記ナノ繊維複合体製造工程は、前記基材層と前記捕塵用ナノ繊維層との間に前記接合部材を介在させた状態で熱圧着することにより前記基材層と前記捕塵用ナノ繊維層とを接合する接合工程を含むことを特徴とするバグフィルター用濾材製造方法。
【請求項17】
請求項15又は16に記載のバグフィルター用濾材製造方法において、
前記導電体付着工程は、導電体蒸着装置によって前記補塵用ナノ繊維層に前記導電体を付着させること前記捕塵用製造方法。
【請求項18】
請求項15〜17のいずれかに記載のバグフィルター用濾材製造方法において、
前記捕塵用ナノ繊維層の前記接合部材との接合面と反対側の面に、当該捕塵用ナノ繊維層を保護するためのカバー層を形成するためのカバー層形成工程をさらに有することを特徴とするバグフィルター用濾材製造方法。
【請求項19】
請求項15〜18のいずれかに記載のバグフィルター用濾材製造方法において、
前記接合部材は、接合用ナノ繊維からなる接合用ナノ繊維層として形成され、
前記ナノ繊維複合体製造工程は、
前記接合用ナノ繊維の原料となるポリマー材料を含有する第1ポリマー溶液を用いて電界紡糸法により、前記基材層上に前記接合用ナノ繊維からなる前記接合用ナノ繊維層を形成することによって、前記基材層と前記接合用ナノ繊維層とが積層した構造を有する第1ナノ繊維複合体を生成する第1電界紡糸工程と、
前記捕塵用ナノ繊維の原料となるポリマー材料を含有する第2ポリマー溶液を用いて電界紡糸法により、前記第1ナノ繊維複合体上に前記捕塵用ナノ繊維からなる捕塵用ナノ繊維層を形成することによって、前記第1ナノ繊維複合体と前記捕塵用ナノ繊維層とが積層した構造を有する第2ナノ繊維複合体を生成する第2電界紡糸工程と、
を含むことを特徴とするバグフィルター用濾材製造方法。
【請求項20】
請求項1〜9のいずれかに記載のバグフィルター用濾材を用いて製造されていることを特徴とするバグフィルター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−22569(P2013−22569A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−162575(P2011−162575)
【出願日】平成23年7月25日(2011.7.25)
【出願人】(504180239)国立大学法人信州大学 (759)
【出願人】(508231821)トップテック・カンパニー・リミテッド (40)
【氏名又は名称原語表記】TOPTEC Co., Ltd.
【Fターム(参考)】