説明

バケット取り付け用アダプタ

【課題】耐久性が高いバケット取り付け用アダプタを提供する。
【解決手段】アダプタ100では、フランジ部130から角軸部111へは、角穴131の内周面が第1取付部110の角軸部111の側面と当接して、ケリ−バ7の回転力を掘削バケット5に伝達する。このように、フランジ部130から角軸部111へは、面同士が当接して回転力を伝達するので、耐久性が高く、大きな回転力を伝達できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、掘削用のバケットに回転力を伝達するケリーバとバケットとの間に介装されるバケット取り付け用アダプタに関する。
【背景技術】
【0002】
掘削用のバケットに回転力を伝達するケリーバとバケットとの間に介装されるバケット取り付け用アダプタは、バケットの上部の角ボスに挿入する角軸部と、ケリーバの先端の角軸が挿入される角ボス部と有する。従来のバケット取り付け用アダプタでは、角ボス部の下部のフランジ状の部分に角軸部が溶接で接合されている。そのため、角軸部をフランジ状の部分に溶接している箇所の上下でバケット取り付け用アダプタの径が急変することとなっている。そのため、バケットに回転力を伝達する際に当該溶接部分に応力が集中するため、繰り返して応力を受けているうちに当該溶接部分で割れ等が生じるおそれがある。
【0003】
そこで、この溶接部分の割れ等を回避するために、上述したフランジ状の部分と角軸部とを一体で形成したバケット取り付け用アダプタが知られている。このバケット取り付け用アダプタでは、角軸部と一体として形成されたフランジ状の部材と角ボス部とを溶接で接合している(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−42470号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述した特許文献に記載のバケット取り付け用アダプタでは、依然として角軸部からフランジ状の部分にかけてバケット取り付け用アダプタの径が急変することとなっている。そのため、バケットに回転力を伝達する際に当該径の急変部分に応力が集中するため、当該径の急変部分の疲労強度が他の部分の疲労強度と比べて低くなる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1) 請求項1の発明によるバケット取り付け用アダプタは、下方に位置する掘削用のバケットとバケットの上方に位置してバケットに回転力を伝達するケリーバとの間に介装されるバケット取り付け用アダプタにおいて、バケットの上部の角ボスに挿入する角軸部を有する第1の取り付け部材と、ケリーバの先端の角軸が挿入される角ボス部と有する第2の取り付け部材と、第2の取り付け部材に溶接されて固定される部材であって、角軸部の軸線方向に垂直な矩形断面と略同一形状の断面を呈する矩形穴部を有し、矩形穴部に角軸部が軸線方向に沿って挿通され、互いに当接する矩形穴部の内周面と角軸部の側面との間で、第2の取り付け部材を介して伝達されるケリーバからの回転力を第1の取り付け部材に伝達する回転力伝達部材とを備えることを特徴とする。
(2)請求項2の発明は、請求項1に記載のバケット取り付け用アダプタにおいて、第1の取り付け部材は、角軸部が回転伝達部材の矩形穴部に上方から下方に向かって挿通され、矩形穴部から下方へ抜け落ちるのを防止するために上端部に矩形穴部の断面形状よりも大きな断面形状を呈する抜け止め部を有し、第2の取り付け部材は、抜け止め部の上方に配設されていて角軸部の上方への移動を規制する規制部を有することを特徴とする。
(3) 請求項3の発明は、請求項1または請求項2に記載のバケット取り付け用アダプタにおいて、角軸部は、角軸部の4つの側面のうち対向する2つの側面同士の間隔で規定される角軸部の径が、バケットの上部の角ボスに挿入される部分と、矩形穴部の内周面と当接する部分とで同一であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、バケット取り付け用アダプタの耐久性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明によるバケット取り付け用アダプタが用いられるアースドリル機の全体側面図である。
【図2】ケリーバ7の下端近傍の縦断面を示す図である。
【図3】ケリーバ7、アダプタ100、および掘削バケット5を分離した状態でこれらの縦断面を示す図である。
【図4】アダプタ100の斜視図である。
【図5】アダプタ100の組み立てについて説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1〜5を参照して、本発明によるバケット取り付け用アダプタの一実施の形態を説明する。図1は、本発明によるバケット取り付け用アダプタが用いられるアースドリル機の全体側面図である。このアースドリル機は、クレーン本体1の前部に起伏自在に取付けられたブーム2の下部に、ブーム2またはクレーン本体1に枢着して起伏自在にフロントフレーム3(本例では2段式フロントフレームを示す。)を取り付け、その上部にケリーバ駆動装置4を取り付けている。
【0010】
ケリーバ駆動装置4の回転部4aには駆動孔が上下に貫通して設けられており、その駆動孔に伸縮式ケリーバ7が上下動自在に、かつ相対回転不能に貫挿されている。ケリーバ7はサイズの異なる複数のケリーバを伸縮自在に、かつ相対回転不能に嵌合してなり、たとえば3段式、4段式、5段式等に構成される。最も内側のケリーバ(インナケリーバ)7の下端には、バケット5が直接、または、後述するバケット取り付け用アダプタ100を介して取り付けられる。また、ケリーバ7にはスイベルベルジョイント(回転継手)13を介してワイヤロープ8が接続され、ワイヤロープ8は、ブーム2の頂部のシーブ9に掛け回され、クレーン本体1上のウインチ10により巻き取り繰り出しされる。以下の説明では、特に断りがない限り、各図の上下方向と、各図に記載した各部材の上下方向とが一致しているものとする。
【0011】
図2は、ケリーバ7の下端近傍の縦断面を示す図であり、図3は、ケリーバ7、バケット取り付け用アダプタ(以下、単にアダプタと呼ぶ)100、および掘削バケット5を分離した状態でこれらの縦断面を示す図であり、図4は、アダプタ100の斜視図である。図2に示すように、ケリーバ7の下端には、アダプタ100を介して掘削バケット5が取り付けられている。アダプタ100は、ケリーバ7の下端の角軸部7aのサイズと掘削バケット5の上部の角ボス部5aのサイズとが異なって、ケリーバ7と掘削バケット5とを直接連結できない場合に、ケリーバ7と掘削バケット5との間に介挿されるアダプタである。
【0012】
アダプタ100は、第1取付部110と、第2取付部120と、フランジ部130とを備えている。第1取付部110は、掘削バケット5の上部の角ボス5aに挿入する角軸部111と、角軸部111の上部で角軸部111の断面形状よりも大きな断面形状を呈する抜け止め部112とを有する。角軸部111には、掘削バケット5の角ボス5aと連結するためのピン孔111aが設けられている。
【0013】
主に、図3に示すように、第2取付部120は、ケリーバ7の下端の角軸部7aが挿入される角ボス部121と、角ボス部121の内部の角穴121aの下方に設けられた抜け止め部材122とを有する。角ボス部121には、ケリ−バ7の角軸部7aに連結するためのピン孔121bが設けられている。フランジ部130は、円盤状の部材であり、その上面が第2取付部120の下端の外周面と溶接されることで、第2取付部120の下端に固定されている。140は、第2取付部120の下端の外周面とフランジ部130の上面との溶接部分である。フランジ部130には、円盤の中央に角穴131が設けられている。角穴131には、第1取付部110の角軸部111が挿通されている。
【0014】
角軸部111の断面形状は、従来のアダプタと同様に、掘削バケット5の角ボス5aの角穴5bに着脱自在に内嵌できる寸法としている。角ボス部121の角穴121aの断面形状は、従来のアダプタと同様に、ケリ−バ7の下端の角軸部7aに着脱自在に内嵌できる寸法としている。角軸部111の断面形状は、角軸部111の上部から下部にかけて、角の部分の面取りの有無を除いて、不変である。換言すると、角軸部111は、角軸部111の4つの側面のうち対向する2つの側面同士の間隔で規定される角軸部111の径が、角ボス5aの角穴5bに挿入されて回転力を掘削バケット5に伝達する部分と、フランジ部130の角穴131の内周面と当接する部分とで同一である。
【0015】
角穴131の断面形状は、後述するように、角穴131の内周面が第1取付部110の角軸部111の側面と当接して、ケリ−バ7の回転力をフランジ部130から角軸部111に伝達するのに不都合がない寸法とされている。すなわち、角穴131の断面形状は、第1取付部110の角軸部111が挿通可能であり、かつ、ケリ−バ7の回転力を角軸部111に伝達する際に過度にがたつきが生じないように適宜その寸法が定められている。
【0016】
第1取付部110の抜け止め部112の断面形状は、フランジ部130の角穴131の断面形状よりも大きい。そのため、第1取付部110は、角軸部111がフランジ部130の角穴131に挿通されると、抜け止め部112の下端面がフランジ部130の上端面と当接する。これにより、第1取付部110は、フランジ部130の角穴131から下方に抜け落ちることがない。
【0017】
また、第2取付部120の抜け止め部材122は、第1取付部110の抜け止め部112の上端近傍に配設されている。これにより、第1取付部110は、抜け止め部112の上端に抜け止め部材122が当接することで上方への移動が規制される。
【0018】
図2に示すように、アダプタ100とケリーバ7との連結は、ケリーバ7の角軸部7aのピン孔7bと、角ボス部121のピン孔121b(図3参照)を合わせてピン152を挿着することにより行われる。同様にアダプタ100と掘削バケット5との連結は、掘削バケット5の角ボス5aのピン孔5c(図3参照)と、角軸部111のピン孔111aを合わせてピン151を挿着することにより行われる。
【0019】
アダプタ100は、次のようにして組み立てられる。図5(a),(b)に示すように、フランジ部130の角穴131に第1取付部110の角軸部111を挿通する。その後、図5(c)に示すように、フランジ部130の上面から第2取付部120を被せ、図5(d)に示すように、第2取付部120の下端の外周面とフランジ部130の上面とを溶接する。
【0020】
このように構成されるアダプタ100では、ケリーバ7の回転力が、ケリーバ7の角軸部7aから第2取付部120の角ボス部121へ、角ボス部121からフランジ部130へ、フランジ部130から角軸部111へ、角軸部111から掘削バケット5の角ボス5aへと伝達される。フランジ部130から角軸部111へは、角穴131の内周面が第1取付部110の角軸部111の側面と当接して、ケリ−バ7の回転力を掘削バケット5に伝達する。このように、フランジ部130から角軸部111へは、面同士が当接して回転力を伝達するので、耐久性が高く、大きな回転力を伝達できる。
【0021】
角軸部111の断面形状は、角軸部111の上部から下部にかけて、角の部分の面取りの有無を除いて不変であるので、すなわち、径の急変部分が存在しないので、アダプタ100の中では最も径が小さいために応力が高くなる角軸部111において、極端に応力が集中する場所がなくなるため、疲労強度が高くなる。なお、第2取付部120とフランジ部130とが溶接部分140で溶接されて固定されているが、この溶接部部分140は角軸部111と比べて径が大きいので、応力が低くなり、応力集中による疲労強度の低下の懸念がない。また、アダプタ100の構造を、第1取付部110と、第2取付部120と、フランジ部130とを有する簡単な構造としたことで、安価に製造でき、製造自体も容易である。
【0022】
角軸部111がフランジ部130の角穴131に挿通されると、角軸部111の上部の抜け止め部112の下端面がフランジ部130の上端面と当接するように構成した。そして、抜け止め部112の上端に抜け止め部材122が当接することで、第1取付部110の上方への移動が規制されるように構成した。これにより、溶接をしなくても、簡単な構成で第1取付部110をフランジ部130(第2取付部120)に対して固定できる。したがって、アダプタ100の中では最も径が小さいために応力が高くなる角軸部111に対して溶接をしなくてもよいので、溶接部分に対する応力の集中、割れ、溶接欠陥による接合強度の不足等の懸念がなくなるとともに、アダプタ100の製造が容易となる。
【0023】
−−−変形例−−−
(1) 上述の説明では、角軸部111の断面形状が、角軸部111の上部から下部にかけて、角の部分(略方形断面の四隅の部分)の面取りの有無を除いて不変であるが、本発明はこれに限定されない。たとえば、アダプタ100の中では最も径が小さいために応力が高くなる角軸部111において、極端に応力が集中する場所がなくなれば疲労強度が高くなるので、径の急変部分が存在しなければよい。したがって、角軸部111の上部から下部にかけて、径が緩やかに変化していてもよい。
【0024】
(2) 上述したアダプタ100の構造は一例であり、本発明は上述したアダプタ100の構造に限定されるものではない。すなわち、アダプタ100の中では最も径が小さい角軸部111に対して、側面から当接して、ケリーバ7からの回転力を面同士の接触によって伝達するように構成されていればよい。
(3) 上述した各実施の形態および変形例は、それぞれ組み合わせてもよい。
【0025】
なお、本発明は、上述した実施の形態のものに何ら限定されず、下方に位置する掘削用のバケットとバケットの上方に位置してバケットに回転力を伝達するケリーバとの間に介装されるバケット取り付け用アダプタにおいて、バケットの上部の角ボスに挿入する角軸部を有する第1の取り付け部材と、ケリーバの先端の角軸が挿入される角ボス部と有する第2の取り付け部材と、第2の取り付け部材に溶接されて固定される部材であって、角軸部の軸線方向に垂直な矩形断面と略同一形状の断面を呈する矩形穴部を有し、矩形穴部に角軸部が軸線方向に沿って挿通され、互いに当接する矩形穴部の内周面と角軸部の側面との間で、第2の取り付け部材を介して伝達されるケリーバからの回転力を第1の取り付け部材に伝達する回転力伝達部材とを備えることを特徴とする各種構造のバケット取り付け用アダプタを含むものである。
【符号の説明】
【0026】
5 掘削バケット 7 ケリーバ
100 バケット取り付け用アダプタ(アダプタ)
110 第1取付部 111 角軸部
112 抜け止め部 120 第2取付部
121 角ボス部 122 抜け止め部材
130 フランジ部 131 角穴
140 溶接部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下方に位置する掘削用のバケットと前記バケットの上方に位置して前記バケットに回転力を伝達するケリーバとの間に介装されるバケット取り付け用アダプタにおいて、
前記バケットの上部の角ボスに挿入する角軸部を有する第1の取り付け部材と、
前記ケリーバの先端の角軸が挿入される角ボス部と有する第2の取り付け部材と、
前記第2の取り付け部材に溶接されて固定される部材であって、前記角軸部の軸線方向に垂直な矩形断面と略同一形状の断面を呈する矩形穴部を有し、前記矩形穴部に前記角軸部が前記軸線方向に沿って挿通され、互いに当接する前記矩形穴部の内周面と前記角軸部の側面との間で、前記第2の取り付け部材を介して伝達される前記ケリーバからの回転力を前記第1の取り付け部材に伝達する回転力伝達部材とを備えることを特徴とするバケット取り付け用アダプタ。
【請求項2】
請求項1に記載のバケット取り付け用アダプタにおいて、
前記第1の取り付け部材は、前記角軸部が前記回転伝達部材の前記矩形穴部に上方から下方に向かって挿通され、前記矩形穴部から下方へ抜け落ちるのを防止するために上端部に前記矩形穴部の断面形状よりも大きな断面形状を呈する抜け止め部を有し、
前記第2の取り付け部材は、前記抜け止め部の上方に配設されていて前記角軸部の上方への移動を規制する規制部を有することを特徴とするバケット取り付け用アダプタ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のバケット取り付け用アダプタにおいて、
前記角軸部は、前記角軸部の4つの側面のうち対向する2つの側面同士の間隔で規定される角軸部の径が、前記バケットの上部の角ボスに挿入される部分と、前記矩形穴部の内周面と当接する部分とで同一であることを特徴とするバケット取り付け用アダプタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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