説明

バケット式昇降機

【課題】残粒除去を確実に行うバケット式昇降機を提供する。
【解決手段】装置の下部に設けた穀粒供給口と、装置の上部に設けた穀粒排出口と、装置内の上部と下部にそれぞれ設けたプーリを巻装するベルト11に一定間隔で取付けた複数のバケットと、装置内にエアノズルとを備え、穀粒の滞留を防止するために装置外部にベルトのテンション機構7を備え、プーリ6の内輪6aがプーリ6の内周に沿って中央部を頂点とする山型の形状であり、底部移動樋20の底面が側面中央部を頂点とする逆山型の形状であり、プーリ6の穀粒噛み込み防止装置を構成する前板、後板および連結させた右板と左板(部材)の上面が、その中央部を頂点とする山型の形状である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バケットで穀粒を揚穀する昇降機において、揚穀作業終了後に昇降機内に残った穀粒を取り出し得る装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のバケット式昇降機は、機体下部に設けた穀粒供給口から供給する穀粒を機体内部に設けたプーリを巻装する地面に対して垂直方向に長いベルトにより上昇するバケットを用いて、機体上部に設けた穀粒排出口まで揚穀する。この揚穀作業終了後に機内底板に残った穀粒を回収するために送風ノズルを備える(例えば特許文献1)。
【0003】
【特許文献1】特開2004−359444号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、このような従来のバケット式昇降機では、機内底板に残った穀粒のみを送風ノズルからの送風により底板に沿って吹き上げ、送風方向下手側に設けた案内部により送風方向を変更し、バケットの上昇移動路と交差させて吹き上げられた穀粒を上昇するバケットに掬って回収するため、機内各装置に有する滞留箇所に吹き上げられた穀粒が滞留し、機内に残留する穀粒の除去ができないという問題があった。
そこでこの発明の目的は、残粒除去を確実に行うバケット式昇降機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このため請求項1に記載の発明は、装置の下部に設けた穀粒供給口と、前記装置の上部に設けた穀粒排出口と、前記装置内の上部と下部にそれぞれ設けたプーリを巻装するベルトに一定間隔で取付けた複数のバケットと、前記装置内に送風機とを備え、前記穀粒供給口に供給した穀粒を前記バケットにより連続的に揚穀し、前記穀粒排出口で前記バケット内の前記穀粒を連続的に放擲するとともに、前記装置内下部の底部移動樋の底面に残留した前記穀粒を前記送風機で除去するバケット式昇降機において、
前記穀粒の滞留を防止するために前記装置外部に前記ベルトの張設装置を備えることを特徴とする。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のバケット式昇降機において、前記プーリの内輪が前記プーリの内周に沿って中央部を頂点とする山型の形状であることを特徴とする。
【0007】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載のバケット式昇降機において、前記底部移動樋の底面が側面中央部を頂点とする逆山型の形状であることを特徴とする。
【0008】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載のバケット式昇降機において、前記プーリの穀粒噛み込み防止装置を構成する部材の上面が、該穀粒噛み込み防止装置を構成する部材の上面の中央部を頂点とする山型の形状であることを特徴とする
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、装置の下部に設けた穀粒供給口と、装置の上部に設けた穀粒排出口と、装置内の上部と下部にそれぞれ設けたプーリを巻装するベルトに一定間隔で取付けた複数のバケットと、装置内に送風機とを備え、穀粒供給口に供給した穀粒をバケットにより連続的に揚穀し、穀粒排出口でバケット内の穀粒を連続的に放擲するとともに、装置内下部の底部移動樋の底面に残留した穀粒を送風機で除去するバケット式昇降機において、穀粒の滞留を防止するために装置外部にベルトの張設装置を備えるので、張設装置に送風機により吹き上げられた穀粒の滞留を防止することができる。従って、残粒除去を確実に行うバケット式昇降機を提供することができる。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、プーリの内輪がプーリの内周に沿って中央部を頂点とする山型の形状であるので、プーリの内輪に送風機により吹き上げられた穀粒の滞留を防止することができる。従って、残粒除去を確実に行うバケット式昇降機を提供することができる。
【0011】
請求項3に記載の発明によれば、底部移動樋の底面が側面中央部を頂点とする逆山型の形状であるので、底部移動樋上に落下した穀粒の滞留を防止することができる。従って、残粒除去を確実に行うバケット式昇降機を提供することができる。
【0012】
請求項4に記載の発明によれば、プーリの穀粒噛み込み防止装置を構成する部材の上面が、その穀粒噛み込み防止装置を構成する部材の上面の中央部を頂点とする山型の形状であるので、穀粒噛み込み防止装置上面に落下した穀粒の滞留を防止することができる。従って、残粒除去を確実に行うバケット式昇降機を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ本発明を実施するための最良の形態について説明する。
図1は、この発明の一例としてのバケット式昇降機の縦断側面図、図2は図1の底部を拡大した縦断側面図、図3は図2の底部移動樋付近の斜視図を示す。
【0014】
この例のバケット式昇降機1は前板2と後板3および左右側板4により形成され、バケット式昇降機1内部の上部と下部には軸心が左右方向のプーリ5,6がそれぞれ設けられ、このプーリ5と6に無端状のベルト11が巻装される。このベルト11には適宜間隔を開けて複数の上開き側面視略U字型などのバケット10が取り付けられている。
【0015】
バケット式昇降機1の上部に設けられた不図示のモータにより、プーリ5と同軸に設けられた不図示のプーリが回転され、バケット式昇降機1の下部に備えられた穀粒供給口13からバケット式昇降機1の上部に備えられた穀粒排出口14の上下間をベルト11に沿ってバケット10が周回される。
【0016】
穀粒供給口13は、穀粒(米、麦など)を張り込む穀粒供給ホッパー15、供給ホッパー15の投入口16、供給口13に向けて穀粒をガイドする傾斜板17などから構成されている。
【0017】
バケット式昇降機1の下部には、底板20aと左右側板20bとから構成される底部移動樋20が設けられる。この底部移動樋20の底板20aは、中央部を頂点とし、底板20aをそれぞれ前板2および後板3へ向けて水平方向より傾斜させ、逆山型に設けられる。
【0018】
プーリ6およびベルト11の下部が内設されている底部移動樋20の上部には、プーリ6の真上に位置する底部移動樋20の左右側板20bとの間に、プーリ6とベルト11の隙間に穀粒が挟まれる(噛み込まれる)ことによる、プーリ6とベルト11の損傷を防止するための穀粒噛み込み防止装置25がプーリ6の真上を隙間なく覆い、かつバケット10の周回を妨げないように設けられる。
【0019】
この穀粒噛み込み防止装置25は、中心部に有する右板28と左板29を挟んで、前板26および後板27ともに上面の中央部を頂点とし、前板26の上面26aおよび後板27の上面27aをそれぞれ左右側板4に向け水平方向より傾斜させて設けられる。また、中心部の右板28および左板29は中央部の継ぎ目を頂点として、それぞれ左右側板4に向け水平方向より傾斜させて設けられる。
【0020】
後板3の下部には、圧縮空気などで底部移動樋20の底板20a上に残粒する穀粒をバケット10の上昇側21に向けて吹き上げるためのエアノズル(送風機)22を備え、エアノズル22の一端である圧縮空気などの噴射口24が後板3に設けられた挿入部より挿入されている。また、噴射口24とは反対側の他端には不図示のコンプレッサーなどに接続した送風管9を接続する。
【0021】
図4は、図2におけるバケット式昇降機1底部の縦断背面図を示す。プーリ6を巻装するベルト11の張りを調節するためのテンション機構(張設装置)7がバケット式昇降機1における下部の外部である左右側板4上に1つずつ設けられる。このテンション機構7を構成するハンドル7aを回し調節軸7bによりシャフト6aに接触しているバネ7cの弾力を変えることで、ベルト11の張りが調節される。
【0022】
プーリ6の内輪6bは、プーリ6の内周に沿って中央の腕部6cを頂点として、内輪6bの左右上辺6dを水平方向より傾斜させた山型の内輪6bが設けられる。この内輪6bの傾斜は、バケット式昇降機1内上部に有するプーリ5の内輪に設けてもよい。
【0023】
ここで、穀粒供給ホッパー15から穀粒を張り込むと、穀粒は穀粒供給口13よりバケット式昇降機1内に入り、ベルト11に沿って連続的に周回する複数のバケット10により掬われて上昇し、上部のプーリ5の外周に沿ってそれぞれのバケット10が上昇方向から下降方向に反転したところで穀粒が放擲されて穀粒排出口14より排出される。
【0024】
バケット10の開口部8は、穀粒を挟んで砕くのを防ぐなどのことから底部移動樋20の底板20aに対して所定の間隔をおいて周回移動するため、揚穀作業中にバケット10などから落下した穀粒は、底部移動樋20の底板20a上に残留してしまう。
【0025】
そこで、揚穀作業終了後、後板3に設置されたエアノズル22の噴射口24から圧縮空気を底部移動樋20の底板20a上に残留した穀粒に対して断続的に噴射させることにより、吹き上げられた穀粒がベルト11の上昇側21上方に位置するバケット10に掬われて、上記揚穀作業時同様に穀粒排出口14に回収される。
【0026】
このとき、テンション機構7は、バケット式昇降機1の外部である左右側板4上にそれぞれ設けられているため、エアノズル22の圧縮空気により吹き上げられ、バケット10に掬われきれなかった穀粒がテンション機構7の装置内に滞留することなく、再度底部移動樋20の底板20a上に落下して、再びエアノズル22の圧縮空気により吹き上げられバケット10に掬われて回収される。
【0027】
プーリ6は、内周に沿って中央の腕部6cを頂点として、左右上面6dを水平方向より傾斜させた山型の内輪6bを設けているので、上記同様にエアノズル22の圧縮空気により吹き上げられ、バケット10に掬われきれなかった穀粒が内輪6bに滞留することなく、再度底部移動樋20の底板20a上に落下して、再びエアノズル22の圧縮空気により吹き上げられバケット10に掬われて回収される。
【0028】
底部移動樋20の底板20aを、中央部を頂点として傾斜させ、逆山型に設けられていることから、落下した穀粒が底板20a上に滞留し辛くなり、また滞留したとしてもエアノズル22からの圧縮空気の噴風を受けることにより、底板20a上の中央部頂点(谷底)に穀粒が集まるようになり、エアノズル22からの圧縮空気により吹き上げられバケット10に掬われて回収し易くなる。
【0029】
底部移動樋20の上部に有する穀粒噛み込み防止装置25を構成する右板28と左板29、および前板26と後板27の上面にそれぞれ傾斜が設けられているので、エアノズル22の圧縮空気により吹き上げられ、バケット10に掬われきれなかった穀粒が噛み込み防止装置25上に滞留することなく、再度底部移動樋20の底板20a上に落下して、再びエアノズル22の圧縮空気により吹き上げられバケット10に掬われて回収される。
【0030】
そして、エアノズル22から断続的に圧縮空気を噴射させることにより、1回の噴射で吹き上げきれなかった穀粒を一旦底部移動樋20の底板20a上に拡散させることで、前回の噴射時よりも残粒量が減っているため、続けて行う噴射により短時間かつ効率よく残留する穀粒を吹き上げて、バケット10内に掬い取ることができる。この圧縮空気の噴射は、例えば5MPaなどの圧力で、噴射の間隔は、例えば5秒噴射後2秒休止など穀粒の種類などにより適宜圧力と間隔を設ける。
【0031】
以上詳述したように、この例のバケット式昇降機1は、装置の下部に設けた穀粒供給口13と、装置の上部に設けた穀粒排出口14と、装置内の上部と下部にそれぞれ設けたプーリ5,6を巻装するベルト11に一定間隔で取付けた複数のバケット10と、装置内にエアノズル(送風機)22とを備え、穀粒の滞留を防止するために装置外部にベルト11のテンション機構(張設装置)7を備えるものである。加えて、プーリ6の内輪6aがプーリ6の内周に沿って中央部を頂点とする山型の形状であり、底部移動樋20の底面20aが側面中央部を頂点とする逆山型の形状であり、プーリ6の穀粒噛み込み防止装置25を構成する前板26、後板27および連結させた右板28と左板29(部材)の上面が、その中央部を頂点とする山型の形状である。
【0032】
なお、バケット10は、上開き側面視略U字型に限定されるものではなく、穀粒を掬える形状であればよい。穀粒噛み込み防止装置25を構成する右板28と左板29、前板26および後板27の各板上面は、中央部を頂点とする直線傾斜に限定されず、屈曲傾斜など穀粒が滞留できない形状であればよい。また、プーリ6の内輪6bにおける左右両翼6dは、直線傾斜に限るものではなく屈曲傾斜など穀粒が滞留できない形状であればよい。
【0033】
さらに、エアノズル22の設置は、装置下部の後部に限定されるものではなく、装置下部の前後にそれぞれ備えてもよい。エアノズル22の噴射口24からの送風は、圧縮空気に限られず窒素などの不活性ガスを用いてもよい。そして、穀粒供給口13の設置は、バケット式昇降機1の下部の前部に限定されず、バケット式昇降機1の下部の後部またはバケット式昇降機1の下部の前部と後部の両方に備えてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明のバケット式昇降機の一例を示す縦断側面図である。
【図2】図1の底部を拡大した縦断側面図である。
【図3】図2の底部移動樋付近の斜視図である。
【図4】図2のバケット式昇降機における縦断背面図である。
【符号の説明】
【0035】
1 バケット式昇降機
2 前板
3 後板
4 左右側板
5,6プーリ
6a シャフト
6b 内輪
6c 腕部
6d,26a,27a 上面
7 テンション機構(張設装置)
7a ハンドル
7b 調節軸
7c バネ
9 送風管
10 バケット
11 ベルト
13 穀粒供給口
14 穀粒排出口
15 穀粒供給ホッパー
16 投入口
17 傾斜板
20 底部移動樋
20a 底板
20b 左右側板
21 上昇側
22 エアノズル
24 噴射口
25 穀粒噛み込み防止装置
26 前板
27 後板
28 右板
29 左板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置の下部に設けた穀粒供給口と、
前記装置の上部に設けた穀粒排出口と、
前記装置内の上部と下部にそれぞれ設けたプーリを巻装するベルトに一定間隔で取付けた複数のバケットと、
前記装置内に送風機とを備え、
前記穀粒供給口に供給した穀粒を前記バケットにより連続的に揚穀し、前記穀粒排出口で前記バケット内の前記穀粒を連続的に放擲するとともに、前記装置内下部の底部移動樋の底面に残粒した前記穀粒を前記送風機で除去するバケット式昇降機において、
前記穀粒の滞留を防止するために前記装置外部に前記ベルトの張設装置を備えることを特徴とするバケット式昇降機。
【請求項2】
前記プーリの内輪が前記プーリの内周に沿って中央部を頂点とする山型の形状であることを特徴とする請求項1に記載のバケット式昇降機。
【請求項3】
前記底部移動樋の底面が側面中央部を頂点とする逆山型の形状であることを特徴とする請求項1に記載のバケット式昇降機。
【請求項4】
前記プーリの穀粒噛み込み防止装置を構成する部材の上面が、該穀粒噛み込み防止装置を構成する部材の上面の中央部を頂点とする山型の形状であることを特徴とする請求項1に記載のバケット式昇降機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−45627(P2007−45627A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−234931(P2005−234931)
【出願日】平成17年8月12日(2005.8.12)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】