説明

バスバー接続具

【課題】重ね合わせ状態のバスバーに接圧を与えて接続する作業を容易にすることが可能なバスバー接続具を提供する。
【解決手段】それぞれ接続用バスバー12,14を有する一方及び他方の機器13における複数の接続用バスバー12,14を重ね合わせ状態として構成された重ね合わせバスバー16を、合成樹脂製のハウジング21に収容された弾性部材41の一対の撓み片42,42間に挟み込んで接続するバスバー接続具20において、一対の撓み片42,42を弾性拡開させる拡開位置と一対の撓み片42,42を弾性拡開させない非拡開位置とに移動可能な撓み片拡開手段46を備え、撓み片拡開手段46が拡開位置にあるときに重ね合わせバスバー16を一対の撓み片42,42間に挿通し、拡開位置から撓み片拡開手段46を移動させて一対の撓み片42,42を復元変形させることで重ね合わせバスバー16が一対の撓み片42,42間に挟み込まれて接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バスバー接続具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、互いに異なる機器に連なる2枚のバスバーを重ね合わせ状態とし、この重ね合わせ状態のバスバーを弾性部材で挟みつけることでバスバー間に接圧を与えて接続するようにした技術が知られている。
【0003】
下記特許文献1は、雄コネクタの雄バスバーと雌コネクタの雌バスバーとをコネクタ嵌合時に重ね合わせ状態とし、ボルトを回して移動ブロックを重ね合わせ状態のバスバー側に移動させる。これにより、移動ブロック内に固定されたバネのU字状の弾性接触片が弾性拡開して重ね合わせ状態のバスバーがU字状の弾性接触片の内側に挿通されるとともに、弾性接触片の弾性反発力で重ね合わせ状態のバスバー挟み込んで接圧を与えるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−18579号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1の構成のように、重ね合わせ状態のバスバーをU字状の弾性接触片に当接させて弾性接触片を弾性拡開させる場合には、重ね合わせ状態のバスバーの接続の際に強い力が必要となる。このように、特許文献1では強い力を与えるためにボルトを回転させて移動ブロックを少しずつ移動させているが、このようにボルトを回転させて移動ブロックを移動させる場合には、重ね合わせ状態のバスバーの接続作業が煩雑になりやすいという問題がある。
【0006】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、重ね合わせ状態のバスバーに接圧を与えて接続する作業を容易にすることが可能なバスバー接続具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るバスバー接続具は、それぞれ接続用バスバーを有する一方及び他方の機器における複数の前記接続用バスバーを重ね合わせ状態として構成された重ね合わせバスバーを、合成樹脂製のハウジングに収容された弾性部材の一対の撓み片間に挟み込んで接続するバスバー接続具において、前記一対の撓み片を弾性拡開させる拡開位置と前記一対の撓み片を弾性拡開させない非拡開位置とに移動可能な撓み片拡開手段を備え、前記撓み片拡開手段が前記拡開位置にあるときに前記重ね合わせバスバーを前記一対の撓み片間に挿通し、前記拡開位置から前記撓み片拡開手段を移動させて前記一対の撓み片を復元変形させることで前記重ね合わせバスバーが前記一対の撓み片間に挟み込まれて接続されるところに特徴を有する。
【0008】
本構成によれば、撓み片拡開手段が拡開位置にあって一対の撓み片間が弾性拡開されているときに重ね合わせバスバーを一対の撓み片間に挿通することで、重ね合わせバスバーを一対の撓み片間に挿通する際に、一対の撓み片を強い力で弾性拡開させる必要がないため、容易に重ね合わせバスバーを一対の撓み片間に挿通することが可能になる。よって、重ね合わせ状態のバスバーに接圧を与えて接続する作業を容易にすることが可能になる。
【0009】
上記構成の実施態様として以下の構成を有すれば好ましい。
・前記撓み片拡開手段を前記非拡開位置から前記拡開位置に移動させるための倍力機構を備える。
このようにすれば、倍力機構により非拡開位置から拡開位置への移動を容易にすることができる。
【0010】
・前記倍力機構は、前記撓み片拡開手段に当接し、所定角度回転可能なカム部と、前記カム部に連なる把持部と、を備える。
このようにすれば、把持部を操作してカム部を所定角度回転させれば、撓み片拡開手段を非拡開位置から拡開位置に移動させることが可能になるため、より一層、重ね合わせ状態のバスバーに接圧を与えて接続する作業を容易にすることが可能になる。
【0011】
・前記撓み片拡開手段を前記非拡開位置とした状態で前記倍力機構をロックするロック部が設けられている。
重ね合わせバスバーを接続した状態では、前記撓み片拡開手段は、前記非拡開位置となるが、本構成によれば、重ね合わせバスバーが接続した状態で保持することができる。
【0012】
・前記一対の撓み片の側縁には、一対の突片が形成されており、前記撓み片拡開手段には、前記一対の突片に当接しつつ前記一対の突片間に挿通されて前記一対の撓み片を弾性拡開させる挿通部が形成されている。
このようにすれば、簡素な構成で、一対の撓み片を弾性拡開させることが可能になる。
【0013】
・前記ハウジングには、前記挿通部が嵌まり込む貫通孔が設けられている。
このようにすれば、撓み片拡開手段の挿通部がハウジングの貫通孔に嵌まり込むため、ハウジングに対する撓み片拡開手段の位置決めをすることが可能になる。
【0014】
・前記ハウジングに並んで設けられた複数の収容室に複数の前記弾性部材がそれぞれ収容されており、前記挿通部は、前記撓み片拡開手段に複数設けられている。
このようにすれば、複数の弾性部材の一対の撓み片について、一括して弾性拡開させることが可能になる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、重ね合わせ状態のバスバーに接圧を与えて接続する作業を容易にすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係るバスバー接続具における一対の撓み片を非拡開位置においてロックした状態を示す正面図
【図2】バスバー接続具における撓み片拡開手段を非拡開位置においてロックした状態を示す側面図
【図3】バスバー接続具における撓み片拡開手段を非拡開位置においてロックした状態を示す断面図
【図4】バスバー接続具における撓み片拡開手段を拡開位置とした状態を示す正面図
【図5】バスバー接続具における撓み片拡開手段を非拡開位置とした状態を示す側面図
【図6】バスバー接続具の分解斜視図
【図7】倍力部材を示す側面図
【図8】バスバー接続具を被取付部材に取り付ける前の状態を示す図
【図9】撓み片拡開手段が拡開位置とされて重ね合わせバスバーが挿通された状態を示す図
【図10】撓み片拡開手段が非拡開位置とされてボルト締めされた状態を示す図
【図11】撓み片拡開手段が非拡開位置とされ一対の撓み片が自然状態である場合の収容室内に収容された弾性部材等を拡大して示す図
【図12】撓み片拡開手段が拡開位置とされ一対の撓み片が弾性拡開された状態の収容室内に収容された弾性部材等を拡大して示す図
【図13】一対の撓み片間に重ね合わせバスバーが挿通された後に撓み片拡開手段が非拡開位置とされ一対の撓み片が復元変形した状態の収容室内に収容された弾性部材等を拡大して示す図
【発明を実施するための形態】
【0017】
<実施形態>
本発明の実施形態を図1ないし図13を参照しつつ説明する。
本実施形態のバスバー接続具20は、例えば、自動車等の車両に配された一方の機器11及び他方の機器13のそれぞれから延出された接続用バスバー12,14間に接圧を生じさせて接続用バスバー12,14を接続するものである。以下では、上下方向については図2を基準とし、図2の右方を前方、左方を後方として説明する。
【0018】
(機器)
一方の機器11は、図10に示すように、機器本体(図示しない)を箱形の機器ケース11Aに収容している。この機器ケース11Aは金属製で、例えば自動車のボディに固定されている。
【0019】
この機器11には、内部の機器本体から機器ケース11Aの上面に設けられた挿通孔(図示しない)を通って上方に突出する複数本(図10では7本)の板状の接続用バスバー12が、左右方向(接続用バスバーの厚み方向)に等間隔で並んで設けられている。
【0020】
他方の機器13は、車両内において一方の機器11とは異なる箇所に配されており、この他方の機器13から複数のバスバー15が左右方向に延びている。
複数のバスバー15は、その末端側がL字型に屈曲されており、屈曲部分よりも先は、上下方向に延びる板状の接続用バスバー14とされている。
なお、他方の機器13からバスバー15ではなく、電線を介して接続用バスバー14に接続するようにすることも可能であり、この場合、電線の端末に圧着等の公知の接続手段により取付けられる端子金具に接続用バスバー14を形成すればよい。
【0021】
一方の機器11の接続用バスバー12と他方の機器13の接続用バスバー14は、互いに接触若しくはわずかな隙間を生じて対向配置されることで互いに重なり合っており、これにより2枚の接続用バスバー12,14が重ね合わされた状態の重ね合わせバスバー16が構成されている。
【0022】
(バスバー接続具)
バスバー接続具20は、合成樹脂製のハウジング21と、ハウジング21に収容され、一対の撓み片42,42を備える複数の弾性部材41と、一対の撓み片42,42を弾性拡開させる撓み片拡開手段46と、撓み片拡開手段46を移動させる倍力部材51(本発明の構成である「倍力機構」の一例)と、を備えている。
【0023】
(ハウジング)
ハウジング21は、ハウジング本体22と、ハウジング本体22の前面に被せられるカバー部37(図1)とからなる。
ハウジング本体22は、図6に示すように、横長の直方体状をなす収容部23と、収容部23の上面に沿って鍔状に左右に突出するフランジ部35とからなる。
【0024】
収容部23は、弾性部材41が収容される収容室24が左右に複数(本実施形態では7室)並んで設けられており、各収容室24間は、仕切り壁25によって仕切られている。
各収容室24の各天井壁26には、貫通孔27が前後に一対形成されており、これにより、左右に並んだ複数の貫通孔27が前後2列形成されている。
各貫通孔27は、左右方向に長い長方形状であって、後述する撓み片拡開手段46の挿通片48が挿通されて(わずかな隙間を有して)嵌まり込む大きさで形成されている。
【0025】
各収容室24の底壁には、前後方向に延びる溝状のバスバー挿通孔28が貫通形成されている。
バスバー挿通孔28は、前後方向に延びる溝状をなしており、その溝壁は、下方から上方に向けてテーパ状にバスバー挿通孔28の幅を狭くするガイド面28Aとされている。このガイド面28Aに当接した重ね合わせバスバー16はガイド面28Aに摺接して収容室24内に案内される。
【0026】
収容部23の両側面には、それぞれ側方に突出する係止突部29が形成されている。係止突部29は、段差状に突出し、カバー部37側に向けて傾斜状に突出寸法が小さくなる形状をなす。
収容部23の上面のうち、前方側の角部には、倍力部材51の軸部31を支持する支持部30が突出している。
【0027】
支持部30には、先端部が丸みを帯びた板状であって、軸部31が回転可能に通される円形の通し孔30Aが貫通形成されている。
収容部23の前方側には、収容部23の上面に沿うように前方に延出されて倍力部材51をロック状態に保持するロック部32が形成されている。
【0028】
ロック部32は、収容部23の上面から前方に平板状に延出された長方形状の延出部33と、延出部33の前縁から上方に突出するロック片34とからなる。
ロック片34の上端部には、前方に突出するロック爪34Aが形成されている。ロック爪34Aは、段差状に前方に突出し、先端側に向けて突出寸法が小さくなる形状をなす。
【0029】
フランジ部35は、円形状の取付孔35Aが貫通形成されている。取付孔35Aには、ボルトBTの軸部31が挿通される円筒形状のカラー(図示しない)が嵌め込まれるようになっており、図10に示すように、取付孔35Aに通したボルトBTを被取付部材17に設けられたネジ溝を有するボルト孔17Aにボルト締めすることでハウジング21を被取付部材17に取り付ける。これにより、バスバー接続具20の被取付部材17に対する位置が固定される。なお、ハウジング21をシールド機能を生じさせる金属製のシールドシェルで覆うようにし、シールドシェルを被取付部材17に取り付けるようにしてもよい。
【0030】
カバー部37は、図1に示すように、板状のカバー本体38と、カバー本体38の左右の縁部に設けられる係止枠片40と、からなる。
カバー本体38は、左右方向に長い長方形状であって、下端部に各収容室24に対応した切欠部39が左右に複数並んで形成されている。
【0031】
切欠部39は、上下方向に延びる溝状をなす。
係止枠片40は、係止孔40Aを有する矩形の枠形であって、カバー本体38に対して直交する方向に突出している。カバー部37がハウジング本体22に装着される際には、係止枠片40が撓み変形して係止孔40Aの孔縁がハウジング本体22の係止突部29に係止されカバー部37の離脱が規制される。
【0032】
(弾性部材)
弾性部材41は、例えば、ステンレス又は鉄からなる金属製であって、図11に示すように、帯状の金属板材を略U字状に曲げ加工を施して形成されており、一対の撓み片42,42と、一対の撓み片42,42の基端部を一体に連ねる連結部45とからなる。
一対の撓み片42,42間は、連結部45側の幅寸法がほぼ一定となっており、上下方向の中間部に近くなると、一対の撓み片42,42間の幅寸法を小さくするように傾斜状に湾曲している。中間部から先端部側にかけては、一対の撓み片42,42間の幅寸法が大きくなるように円弧状に湾曲し、先端部については一対の撓み片42,42間の幅寸法をわずかに小さくするように円弧状に湾曲している。
ここで、上下方向の中間部について一対の撓み片42,42間の寸法が最も小さくなる(幅狭になる)部分は、重ね合わせバスバー16を挟み込む接点部43,43とされている。
【0033】
この接点部43,43間の寸法(重ね合わせバスバー16の挿入前における接点部43,43の内面間の寸法)は、重ね合わせバスバー16について2枚の接続用バスバー12,14を隙間なく密着させた状態の厚み寸法よりもわずかに小さい。これにより、一対の撓み片42,42の間に重ね合わせバスバー16が挿入されると、一対の撓み片42,42の弾性的な復元力により重ね合わせバスバー16に対して接圧を生じさせた状態で挟持する。
【0034】
一対の撓み片42,42の先端部には、幅寸法が段差状に大きくされることで当該先端部の側縁を当該撓み片42に沿って長方形状に突出させた突片44,44が形成されている。
左右一対の突片44,44は、一対の撓み片42,42が自然状態(弾性変形前)のときに、後述する撓み片拡開手段46の挿通部50が上方から一対の突片44,44間に挿通されることにより、突片44,44と挿通部50とが当接して一対の撓み片42,42を弾性拡開させる寸法で構成されている。
【0035】
(撓み片拡開手段)
撓み片拡開手段46は、合成樹脂製であって、図6に示すように、左右方向に長方形状の板状連結部47と、板状連結部47の前後の縁部に弾性部材41に対応して複数並んで設けられハウジング21の各貫通孔27に挿通される板状の挿通片48とを備える。
挿通片48は、図11に示すように、上端(基端)から上下方向の中間部にかけてほぼ一定の太さで形成されており、上下方向の中間部から先端にかけて幅寸法がわずかにテーパ状に先細に形成されている。
【0036】
挿通片48の先端部には、溝状に切欠いた切欠き49が設けられている。
この挿通片48のわずかに先細状に形成された先端部が一対の撓み片42,42の突片44,44間に挿通される挿通部50とされる。挿通部50は、一対の突片44,44の内面の上部に対して摺接可能な曲率の曲面及び幅寸法で形成されている。
【0037】
この撓み片拡開手段46は、複数の挿通部50の突片44,44間への挿入の程度によって、挿通部50が一対の撓み片42,42を弾性拡開させない非拡開位置(図11,13の位置)と、挿通部50が左右一対の突片44,44に当接して一対の撓み片42,42を弾性拡開させる拡開位置(図12の位置)とに移動可能になっている。
撓み片拡開手段46に使用される合成樹脂は、少なくとも一対の突片44,44に当接して一対の撓み片42,42を弾性拡開させてもほとんど塑性変形しない程度の強度(剛性)を有するものが使用される。
【0038】
(倍力部材)
倍力部材51は、所定角度回転させることにより、撓み片拡開手段46を非拡開位置とする非拡開角度(図2の状態)と、撓み片拡開手段46を拡開位置とする拡開角度(図5の状態)との間の所定角度(90度)を回転可能に構成されたものであり、図7に示すように、長方形状の厚肉の板状であって、撓み片拡開手段46に当接した状態で所定角度回転可能なカム部52と、把持部54とを有している。
【0039】
カム部52は、円弧状の面を有し、この面を撓み片拡開手段46に当接させるものであり、このカム部52の内部に軸部31が固定されている。
軸部31は、金属製の棒状であって、真円形状の外周面を有し、その軸方向の両端部がカム部52の左右から突出するように倍力部材51に固定されており、倍力部材51から突出した軸部31の両端部は、支持部30の通し孔30Aに回転可能に挿通されている。
この軸部31の位置は、その中心と倍力部材51の長手方向の端部(平坦な部分)との間の寸法A2と、その中心と短手方向の端部(平坦な部分)との間の寸法A1との差(A2−A1)が、倍力部材51を水平位置(非拡開角度)から90度回転させて垂直位置(拡開角度)とした際に撓み片拡開手段46が下方に押し込まれる寸法(押し込み量)とされる。
【0040】
把持部54には、図6に示すように、長方形状の開口部55が形成されているとともに、その先端部には、ロック部32のロック片34に係止する被ロック部56が設けられている。被ロック部56は、係止孔56Aを内部に有する枠形であって、把持部54の先端部に形成された凹部57内に撓み変形可能な肉厚で設けられている。
ロック片34が被ロック部56の係止孔56Aの孔縁に係止されることにより、倍力部材51が水平位置(非拡開角度)でロックされる。
【0041】
次に、バスバー接続具20による重ね合わせバスバー16の接続について説明する。
まず、倍力部材51を拡開角度(垂直方向)とし(図5)、撓み片拡開手段46の挿通部50が突片44,44間に進入する拡開位置とする。これにより、各突片44,44に挿通部50が当接して突片44,44間を押し広げ、突片44,44と一体に連なる一対の撓み片42,42が弾性拡開した状態となる。
【0042】
そして、バスバー接続具20を重ね合わせバスバー16側に下降させる(図8)。すると、重ね合わせバスバー16がバスバー挿通孔28に挿通されるとともに、弾性部材41の一対の撓み片42,42間に重ね合わせバスバー16が進入し、接点部43,43間を通って、重ね合わせバスバー16の先端が連結部45に当接する(図9,図12)。
【0043】
そして、拡開角度(垂直方向)にある倍力部材51を非拡開角度(水平方向)に回転させるとともに、ボルト締めして被取付部材17に固定する(図10,図13)。これにより、倍力部材51が非拡開角度となり、突片44,44間に進入していた挿通部50が後退し、一対の撓み片42,42が弾性復元して、重ね合わせバスバー16が接点部43,43間に挟持され、接続用バスバー12,14間の接圧が確保される。
【0044】
本実施形態によれば、以下の作用・効果を奏する。
(1)それぞれ接続用バスバー12,14を有する一方及び他方の機器13における複数の接続用バスバー12,14を重ね合わせ状態として構成された重ね合わせバスバー16を、合成樹脂製のハウジング21に収容された弾性部材41の一対の撓み片42,42間に挟み込んで接続するバスバー接続具20において、
一対の撓み片42,42を弾性拡開させる拡開位置と一対の撓み片42,42を弾性拡開させない非拡開位置とに移動可能な撓み片拡開手段46を備え、撓み片拡開手段46が拡開位置にあるときに重ね合わせバスバー16を一対の撓み片42,42間に挿通し、拡開位置から撓み片拡開手段46を移動させて一対の撓み片42,42を復元変形させることで重ね合わせバスバー16が一対の撓み片42,42間に挟み込まれて接続される。
【0045】
本実施形態によれば、撓み片拡開手段46が拡開位置にあって一対の撓み片42,42間が弾性拡開されているときに重ね合わせバスバー16を一対の撓み片42,42間に挿通することで、重ね合わせバスバー16を一対の撓み片42,42間に挿通する際に、一対の撓み片42,42を強い力で弾性拡開させる必要がないため、容易に重ね合わせバスバー16を一対の撓み片42,42間に挿通することが可能になる。よって、重ね合わせ状態のバスバーに接圧を与えて接続する作業を容易にすることが可能になる。
【0046】
(2)撓み片拡開手段46を非拡開位置から拡開位置に移動させるための倍力部材51(倍力機構)を備える。
このようにすれば、倍力部材51により非拡開位置から拡開位置への移動を容易にすることができる。
【0047】
(3)倍力部材51(倍力機構)は、撓み片拡開手段46に当接し、所定角度回転可能なカム部52と、カム部52に連なる把持部54とを備える。
このようにすれば、把持部54を操作してカム部を所定角度回転させれば、撓み片拡開手段46を非拡開位置から拡開位置に移動させることが可能になるため、より一層、重ね合わせ状態のバスバーに接圧を与えて接続する作業を容易にすることが可能になる。
【0048】
(4)撓み片拡開手段46を非拡開位置とした状態で倍力部材51(倍力機構)をロックするロック部32が設けられている。
重ね合わせバスバー16を接続した状態では、撓み片拡開手段46は、非拡開位置となるが、本実施形態によれば、重ね合わせバスバー16を接続した状態で保持することができる。
【0049】
(5)一対の撓み片42,42の側縁には、一対の突片44,44が形成されており、撓み片拡開手段46には、一対の突片44,44に当接しつつ一対の突片44,44間に挿通されて一対の撓み片42,42を弾性拡開させる挿通部50が形成されている。
このようにすれば、簡素な構成で、一対の撓み片42,42を弾性拡開させることが可能になる。
【0050】
(6)ハウジング21には、挿通部50が嵌まり込む貫通孔27が設けられている。
このようにすれば、撓み片拡開手段46の挿通部50がハウジング21の貫通孔27に嵌まり込むため、ハウジング21に対する撓み片拡開手段46の位置決めをすることが可能になる。
【0051】
(7)ハウジング21に並んで設けられた複数の収容室24に複数の弾性部材41がそれぞれ収容されており、挿通部50は、撓み片拡開手段46に複数設けられている。
このようにすれば、複数の弾性部材41の一対の撓み片42,42について、一括して弾性拡開させることが可能になる。
【0052】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)弾性部材41には、ステンレス又は鉄を用いることとしたが、これに限らず、アルミニウムやアルミニウム合金、銅や銅合金等の他の金属を用いることも可能である。また、金属に限らず、接続バスバー間の接圧を確保できる程度の弾性力を生じさせることが可能な樹脂等の部材を用いるようにしてもよい。
【0053】
(2)上記実施形態では、倍力部材51を用いて撓み片拡開手段46を移動させる構成としたが、倍力部材51に限らず、他の倍力機構を用いて撓み片拡開手段46を移動させてもよい。また、倍力部材51を用いずに、撓み片拡開手段46を移動させる構成としてもよい。
【0054】
(3)上記実施形態では、撓み片拡開手段46は、合成樹脂製としたが、一対の撓み片42,42を弾性拡開できる強度を有するものであれば、これに限られず、他の材質の部材を用いることも可能である。例えば、撓み片拡開手段を、金属製とすることも可能である。
【符号の説明】
【0055】
11…一方の機器
12…接続用バスバー
13…他方の機器
14…接続用バスバー
16…重ね合わせバスバー
17…被取付部材
20…バスバー接続具
21…ハウジング
24…収容室
27…貫通孔
28…バスバー挿通孔
29…係止突部
30…支持部
31…軸部
32…ロック部
34…ロック片
37…カバー部
40…係止枠片
40A…係止孔
41…弾性部材
42,42…一対の撓み片
43,43…一対の接点部
44,44…一対の突片
46…撓み片拡開手段
48…挿通片
50…挿通部
51…倍力部材(倍力機構)
52…カム部
53…軸部挿通孔
54…把持部
56…被ロック部
BT…ボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ接続用バスバーを有する一方及び他方の機器における複数の前記接続用バスバーを重ね合わせ状態として構成された重ね合わせバスバーを、合成樹脂製のハウジングに収容された弾性部材の一対の撓み片間に挟み込んで接続するバスバー接続具において、
前記一対の撓み片を弾性拡開させる拡開位置と前記一対の撓み片を弾性拡開させない非拡開位置とに移動可能な撓み片拡開手段を備え、
前記撓み片拡開手段が前記拡開位置にあるときに前記重ね合わせバスバーを前記一対の撓み片間に挿通し、前記拡開位置から前記撓み片拡開手段を移動させて前記一対の撓み片を復元変形させることで前記重ね合わせバスバーが前記一対の撓み片間に挟み込まれて接続されるバスバー接続具。
【請求項2】
前記撓み片拡開手段を前記非拡開位置から前記拡開位置に移動させるための倍力機構を備える請求項1に記載のバスバー接続具。
【請求項3】
前記倍力機構は、前記撓み片拡開手段に当接し、所定角度回転可能なカム部と、前記カム部に連なる把持部と、を備える請求項2に記載のバスバー接続具。
【請求項4】
前記撓み片拡開手段を前記非拡開位置とした状態で前記倍力機構をロックするロック部が設けられている請求項2又は請求項3に記載のバスバー接続具。
【請求項5】
前記一対の撓み片の側縁には、一対の突片が形成されており、
前記撓み片拡開手段には、前記一対の突片に当接しつつ前記一対の突片間に挿通されて前記一対の撓み片を弾性拡開させる挿通部が形成されている請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載のバスバー接続具。
【請求項6】
前記ハウジングには、前記挿通部が嵌まり込む貫通孔が設けられている請求項5に記載のバスバー接続具。
【請求項7】
前記ハウジングに並んで設けられた複数の収容室に複数の前記弾性部材がそれぞれ収容されており、
前記挿通部は、前記撓み片拡開手段に複数設けられている請求項5又は請求項6に記載のバスバー接続具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−69540(P2013−69540A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−207175(P2011−207175)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】