説明

バスバー組立体

【課題】バスバー組立体において所定の静電容量を確保しつつバスバー組立体の小型化を図る。
【解決手段】板状の第1及び第2導体板(2,3)を備えたバスバー組立体において、第1導体板(2)を、2つの第2導体板(3)によって、絶縁体(4)を介して挟み込む。それぞれの第2導体板(3)の厚さ(t2,t3)は、第1導体板(2)の厚さ(t1)よりも小さくする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2枚の板状の導体板を平行に配置したバスバー組立体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電源装置や電力変換装置には、2枚の板状の導体板を平行に配置した平行導体板(バスバー組立体)が配線部材として用いられる(例えば特許文献1を参照)。このようなバスバー組立体は、電源装置や電力変換装置の大容量化にともなって、大型化される傾向にある。また、前記大容量化にともなって、電力変換装置等ではサージノイズ対策も重要になり、サージノイズの低減のためには、平行導体板の間に形成される静電容量を大きくする(例えばバスバー組立体を大型化)のが有効である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-301643号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、バスバー組立体の大型化は、電力変換装置の重量増加やコスト増加につながり、好ましくない。
【0005】
本発明は前記の問題に着目してなされたものであり、バスバー組立体において所定の静電容量を確保しつつバスバー組立体の小型化を図ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の課題を解決するため、第1の発明は、
板状の第1及び第2導体板(2,3)を備えたバスバー組立体であって、
前記第1導体板(2)は、2つの前記第2導体板(3)に、絶縁体(4)を介して挟み込まれ、
それぞれの第2導体板(3)の厚さ(t2,t3)は、前記第1導体板(2)の厚さ(t1)よりも小さいことを特徴とする。
【0007】
この構成では、第1導体板(2)を2枚の第2導体板(3)で挟み込むようにしてあるので、2箇所に静電容量が構成される。この構成により、第1導体板(2)と第2導体板(3)のオーバーラップ代(L)を小さくしても、第1導体板(2)と第2導体板(3)の間で所定の静電容量を確保でき、第2導体板(3)の幅方向の小型化が可能になる。そして、第2導体板(3)の厚さ(t2,t3)を、第1導体板(2)の厚さ(t1)よりも小さくしたので、3枚の同じ厚みの導体板で構成するよりも重量の増加を抑制できる。
【0008】
また、第2の発明は、
第1の発明のバスバー組立体において、
前記2つの第2導体板(3)の電流容量の合計は、前記第1導体板(2)の電流容量と同じであることを特徴とする。
【0009】
この構成では、第1及び第2導体板(2,3)の両者の電流容量が等しいので、両者ともがオーバースペックにならないようにサイズ等を設定できる。換言すれば、導体板(2,3)の両者を、最小限の電流容量に設定することが可能になる。
【0010】
また、第3の発明は、
第2の発明のバスバー組立体において、
前記2つの第2導体板(3)の断面積の合計は、前記第1導体板(2)の断面積に等しいことを特徴とする。
【0011】
この構成では、各導体板(2,3)の断面積によって電流容量が調整される。
【0012】
また、第4の発明は、
第2又は第3の発明のバスバー組立体において、
2つの第2導体板(3)の厚さ(t2,t3)は、等しいことを特徴とする。
【0013】
この構成では、2つの第2導体板(3)の曲げ強度が同等になる。
【発明の効果】
【0014】
第1の発明によれば、バスバー組立体において所定の静電容量を確保しつつ、バスバー組立体の小型化を図ることが可能になる。
【0015】
また、第2の発明によれば、第1及び第2導体板(2,3)の両者を、最小限の電流容量に設定できるので、バスバー組立体の小型化を図ることが可能になる。
【0016】
また、第3の発明によれば、各導体板(2,3)の断面積の調整によってバスバー組立体の小型化を図ることが可能になる。
【0017】
また、第4の発明によれば、2つの第2導体板(3)の強度が同等なので、外部からの振動に対し、これらの第2導体板(3)によって第1導体板(2)をバランスよく支持することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本発明の実施形態に係るバスバー組立体を適用する電力変換装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図2は、本実施形態に係るバスバー組立体の構成を模式的に示す断面図である。
【図3】図3は、一般的に用いられるバスバー組立体(100)の一例を比較例として模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0020】
《発明の実施形態》
〈概要〉
以下では、空気調和機などに用いられる電力変換装置に、本発明の実施形態に係るバスバー組立体を適用した例を説明する。図1は、本発明の実施形態に係るバスバー組立体(1)を適用する電力変換装置(10)の構成を示すブロック図である。この電力変換装置(10)は、直流電源(11)、直流リンク部(12)、電力変換モジュール(13)、及びバスバー組立体(1)(図1では図示を省略)を備えている。バスバー組立体(1)は、直流電源(11)と電力変換モジュール(13)との間の接続配線であり、バスバー組立体(1)上には直流リンク部(12)が形成されている。
【0021】
〈直流電源(11)、直流リンク部(12)〉
直流電源(11)は、ブリッジ接続されたダイオード(図示は省略)を備え、入力された交流を全波整流する。直流電源(11)は、バスバー組立体(1)に接続されている。
【0022】
直流リンク部(12)は、複数の平滑コンデンサ(12a)を備えている。各平滑コンデンサ(12a)は、例えば電解コンデンサで構成する。勿論、平滑コンデンサ(12a)は他の種類のコンデンサで構成してもよい。
【0023】
そして、これらの平滑コンデンサ(12a)は、後に詳述するように、バスバー組立体(1)上に設けられて、該バスバー組立体(1)を介して直流電源(11)に接続されている。
【0024】
〈電力変換モジュール(13)〉
電力変換モジュール(13)は、複数のスイッチング素子(13a)、及び還流ダイオード(13b)を備え、これらのスイッチング素子(13a)と還流ダイオード(13b)で、インバータ回路のスイッチングレグを形成している。このスイッチングレグは、パッケージに収容されている。電力変換装置(10)では、図1に示すように、3つのスイッチングレグを用いてインバータ回路を構成している。電力変換モジュール(13)は、バスバー組立体(1)に接続(例えばねじ止め)されている。
【0025】
〈バスバー組立体(1)〉
図2は、本実施形態に係るバスバー組立体(1)の構成を説明する断面図である。図2では、1つの平滑コンデンサ(12a)がバスバー組立体(1)に接続された状態を示している。図2に示すように、バスバー組立体(1)は、絶縁体(4)、第1導体板(2)、及び2つの第2導体板(3)を備えている。第1導体板(2)は、2つの第2導体板(3)に、絶縁体(4)を介して挟み込まれている。絶縁体(4)は、例えば樹脂などの誘電体で形成したフィルム状の部材である。そして、図2に示すように、平滑コンデンサ(12a)の一方の端子(P)は、第1導体板(2)に固定(例えばネジ止め)されている。また、平滑コンデンサ(12a)のもう一方の端子(N)は、2枚の第2導体板(3)を貫くように、それぞれの第2導体板(3)に接続されている。なお、図2は、平滑コンデンサ(12a)の取り付け状態を模式的に示したものであり、実際の固定構造を示すものではない。
【0026】
−第1及び第2導体板(2,3)−
第1及び第2導体板(2,3)は、何れも銅板で形成され、平面形状が長方形である。第1及び第2導体板(2,3)の厚さ(t1,t2,t3)や幅(w1,w2,w3)は、直流リンク部(12)で流れる電流値や、平滑コンデンサ(12a)のサイズ等を考慮して設定してある。
【0027】
図3は、一般的に用いられるバスバー組立体(100)の一例を比較例として模式的に示す断面図である。図3は、平滑コンデンサ(12a)が取り付けられている状態を示している。図3の例では、同サイズの2枚の導体板(20)を絶縁体(40)を介して対向させてバスバー組立体(100)を形成している。2枚の導体板(20)が対向した箇所には静電容量(C0)が形成されている。なお、絶縁体(40)の誘電率は、本実施形態の絶縁体(4)の誘電率と同じであるものとする。また、第1導体板(2)と第2導体板(3)との距離と、バスバー組立体(100)における導体板(20)間の距離とは同じであるものとする。
【0028】
本実施形態のバスバー組立体(1)では、第1導体板(2)の厚さ(t1)及び幅(w1)は、比較例のバスバー組立体(100)の導体板(20)と同じに大きさに設定してある。すなわち、t1=t0、w1=w0である。
【0029】
それぞれの第2導体板(3)は、図2に示すように、一方の第2導体板(3)の厚さはt2であり、もう一方の第2導体板(3)の厚さはt3である。何れの第2導体板(3)の厚さ(t2,t3)も、第1導体板(2)の厚さ(t1)よりも小さくしてある。詳しくは、t1>t2≧t3である。また、厚さがt2である方の第2導体板(3)の幅はw2であり、厚さがt3である方の第2導体板(3)の幅はw3である。詳しくは、w1>w2≧w3である。
【0030】
また、バスバー組立体(1)では、それぞれの第2導体板(3)が、第1導体板(2)と対向する部分(オーバーラップ部分)の幅(オーバーラップ代)は同じである。第1導体板(2)と各第2導体板(3)のオーバーラップ代(L)は、比較例のバスバー組立体(100)における導体板(20)同士のオーバーラップ代(L0)よりも小さい(L0>L)。すなわち、各第2導体板(3)の幅(w2,w3)は、比較例のバスバー組立体(100)の導体板(20)の幅(w0)よりも小さい(図2を参照)。
【0031】
第1導体板(2)と第2導体板(3)のそれぞれのオーバーラップ部分には、静電容量(C1,C2)が形成される。本実施形態におけるオーバーラップ代(L)は比較例のバスバー組立体(100)におけるオーバーラップ代(L0)よりも小さいので、それぞれの静電容量(C1,C2)の大きさは、比較例のバスバー組立体(100)における静電容量(C0)よりも小さい。例えば、L=L0/2であれば、バスバー組立体(1)全体としては、比較例のバスバー組立体(100)と同じ大きさの静電容量が形成されることになる。
【0032】
〈本実施形態における効果〉
本実施形態では、第1導体板(2)を2枚の第2導体板(3)で挟み込むようにして2箇所に静電容量を形成している。この構成により、オーバーラップ代(L)の調整(各導体板(2,3)の幅(w1,w2,w3)の調整)によって、第1導体板(2)と第2導体板(3)の磁気的な結合による静電容量の調整を行える。例えば前記のようにL=L0/2とすれば、第1導体板(2)と第2導体板(3)のオーバーラップ代(L)を比較例のバスバー組立体(100)におけるオーバーラップ代(L0)よりも小さくして幅方向の小型化を図りつつ、比較例のバスバー組立体(100)と同等の静電容量を確保できる。前記の例では図2で破線で囲んだ部分が断面積だけ小型化できている。
【0033】
また、各第2導体板(3)の厚さ(t2,t3)を、第1導体板(2)の厚さ(t1)よりも小さくしたので、第2導体板(3)を2枚としても重量の増加を抑制できる。
【0034】
以上のように、本実施形態では、バスバー組立体において、所定の静電容量を確保しつつ、小型化を図ることができるのである。
【0035】
また、第1導体板(2)を2枚の第2導体板(3)で挟み込むようにしたので、外部からの振動(例えば、電力変換装置によって給電されるモータの振動や、電力変換装置を車載することにより受ける振動など)の吸収が可能になる。さらには、前記のようにバスバー組立体(1)が小型化(軽量化)されたことでも、バスバー組立体(1)自体の振動のエネルギーが小さくなる。すなわち、本実施形態は、振動に対する耐久性の向上を期待できる。
【0036】
特に、2つの第2導体板(3)の厚さ(t2,t3)を等しくすれば、2つの第2導体板(3)の曲げ強度が同じになる。それゆえ、外部からの振動に対し、これらの第2導体板(3)によって、第1導体板(2)をバランスよく支持することが可能になる。
【0037】
《その他の実施形態》
〈1〉なお、2つの第2導体板(3)の電流容量の合計は、前記第1導体板(2)の電流容量と同じであるのが望ましい。こうすることで、両者ともがオーバースペックにならないようにサイズ等を設定できる。換言すれば、第1及び第2導体板(2,3)の両者を、最小限の電流容量に設定することが可能になる。例えば、2つの第2導体板(3)の断面積の合計と、第1導体板(2)の断面積とを等しくすることで、第1導体板(2)の小型化が可能になる。具体的には、第1及び第2導体板(2,3)の一方或いは両方の厚さ(t1,t2,t3)を調整して断面積を調整することが考えられる。
【0038】
〈2〉また、バスバー組立体(1)において形成される静電容量(C1,C2)の大きさは、第1導体板(2)と第2導体板(3)との距離を調整したり、絶縁体(4)の誘電率を調整したりすることで調整してもよい。
【0039】
〈3〉また、バスバー組立体(1)に取り付けた平滑コンデンサ(12a)や電力変換モジュール(13)は例示である。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、2枚の板状の導体板を平行に配置したバスバー組立体として有用である。
【符号の説明】
【0041】
1 バスバー組立体
2 第1導体板
3 第2導体板
4 絶縁体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の第1及び第2導体板(2,3)を備えたバスバー組立体であって、
前記第1導体板(2)は、2つの前記第2導体板(3)に、絶縁体(4)を介して挟み込まれ、
それぞれの第2導体板(3)の厚さ(t2,t3)は、前記第1導体板(2)の厚さ(t1)よりも小さいことを特徴とするバスバー組立体。
【請求項2】
請求項1のバスバー組立体において、
前記2つの第2導体板(3)の電流容量の合計は、前記第1導体板(2)の電流容量と同じであることを特徴とするバスバー組立体。
【請求項3】
請求項2のバスバー組立体において、
前記2つの第2導体板(3)の断面積の合計は、前記第1導体板(2)の断面積に等しいことを特徴とするバスバー組立体。
【請求項4】
請求項2又は請求項3のバスバー組立体において、
2つの第2導体板(3)の厚さ(t2,t3)は、等しいことを特徴とするバスバー組立体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−105657(P2013−105657A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−249636(P2011−249636)
【出願日】平成23年11月15日(2011.11.15)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】