説明

バス運賃収受システム

【課題】 バスの乗車停留所データを記憶した媒体(トークン)を回収して再使用できるようにするとともに、バス運賃の正確な収受を図る。
【解決手段】 所定の停留所からバスに乗車した利用者にその停留所を特定する所定のデータを記録した非接触型ICチップを内蔵した媒体を発行する媒体発行手段と、前記バスが進行して所定の停留所に停車し、その停留所で降車する利用者の所持する前記媒体を回収箱に受入れて回収する回収手段と、前記回収箱に前記媒体が回収されたときに、その回収された媒体に記録されているデータに基づいて前記利用者のバス運賃を算出する算出手段と、その算出手段で算出されたバス運賃を表示する表示手段と、前記回収箱に回収された媒体を再使用のために前記媒体発行手段にセットするセット手段とからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はバス運賃収受システムに係り、特に、運賃体系が乗車区間、乗車距離、あるいは乗車時間等に依存して変わる場合に好適なものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、利用者がバスに乗車したときのバス運賃(バスの利用料金)は、運賃体系が乗車区間等に依存して変わる場合、利用者がバスに乗車する際に、整理券発行機から発行された乗車停留所を特定する数字の印字された整理券を受取るようにしている。そして、バスが目的の停留所に停車したときにその整理券に印字されている数字によって特定されたバス運賃を満たす金銭と整理券とを運転士の脇の透明な運賃箱に投入するようにしている。
【0003】
また、近年のカード社会の到来によりバス運賃の支払いも利用者の所持するカードを利用することが提案されている(特許文献1〜5参照)。このカードを用いたバス運賃の支払いは、バスに乗車する際に、カードに乗車停留所を特定する乗車情報を記録し、降車の際に、その乗車停留所情報と降車停留所情報とからバス運賃を算出してバス運賃の収受処理が行われるように構成されている。
【特許文献1】特開平10−162183号公報
【特許文献2】特開2002−83327号公報
【特許文献3】特開2002−361989号公報
【特許文献4】特開平9−134460号公報
【特許文献5】特開平10−162182号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来のバス運賃収受システムのうち、乗車停留所を特定した数字の印字された整理券を用いるバス運賃収受システムは、利用者及び運転手の両方が整理券に印字されている数字に基づいてバス運賃を確認する必要があり、しかも、この確認作業には、利用者が大人か子供(小児)であるか、さらには老人であるか等の利用者種別も考慮する必要があるので、バス運賃の収受に時間がかかるだけでなく、バス運賃の金額に過不足が生じやすいという問題点があった。さらに、この整理券を用いたバス運賃収受システムでは、回収された整理券は再使用されることなく廃棄処分されるため、資源の浪費につながるという環境及び資源上の問題点を有していた。
【0005】
また、カードを用いたバス運賃収受システムは、バスの乗車区間を正確に把握して正確な運賃を確実に収受できるという特長を有しているが、カードはバス会社に対応した固有のものであるから、利用者は事前にバス会社に対応したカードを所持しなければならないという面倒があった。しかも、カードが採用された場合であっても、カードを所持していない利用者に対しては、整理券の発行を行わなければならないので、一度限りの整理券の整理券発行機を省略することはできなかった。
【0006】
また、バスの運行管理に当っては、バスの利用状況を正確に把握し、運行時間や本数等を決める必要があるが、利用者がカードの場合は乗車及び降車の情報がメモリに記憶されるので、正確なデータを収集することが可能である。しかし、整理券の場合は、回収した整理券から人手によって乗車停留所を特定することができるが降車停留所を特定できないため、正確なデータを収集することができないという問題点があった。
【0007】
そこで、本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、従来の整理券に相当する媒体を繰返し使用することができ、しかも、バス運賃を過不足なく収受することができ、さらに、バスの利用状況のデータ収集を容易に行えるバス運賃収受システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るバス運賃収受システムは、上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、所定の停留所からバスに乗車した利用者にその停留所を特定する所定のデータを記録した非接触型ICチップを内蔵した媒体を発行する媒体発行手段と、前記バスが進行して所定の停留所に停車し、その停留所で降車する利用者の所持する前記媒体を回収箱に受入れて回収する回収手段と、前記回収箱に前記媒体が回収されたときに、その回収された媒体に記録されているデータに基づいて前記利用者のバス運賃を算出する算出手段と、その算出手段で算出されたバス運賃を表示する表示手段と、前記回収箱に回収された媒体を再使用のために前記媒体発行手段にセットするセット手段と、からなることを特徴としている。
本発明の請求項2に記載のバス運賃収受システムは、所定の停留所からバスに乗車した利用者にその停留所を特定する所定のデータを記録した非接触型ICチップを内蔵した媒体を発行する媒体発行手段と、その媒体発行手段から発行された媒体と交信を行うためのアンテナと、そのアンテナに前記媒体がタッチ又はかざされたときに、その媒体に記録されているデータに基づいて次の停留所までのバス運賃を算出する算出手段と、その算出手段で算出されたバス運賃を報知する報知手段と、からなることを特徴としている。
本発明の請求項3に記載のバス運賃収受システムは、媒体発行手段の停留所の特定は、媒体に乗車した停留所を特定する所定のデータを記録して行うのに代えて、バスが所定の停留所に乗車したときに発行される媒体の識別情報を記憶手段に記憶して行うものであることを特徴としている。
本発明の請求項4に記載のバス運賃収受システムは、アンテナ及び表示手段は、バスから降車する旨をバスの運転士に報知する報知機に組込まれていることを特徴としている。 本発明の請求項5に記載のバス運賃収受システムは、媒体発行手段から発行される媒体は、大人用又は子供用等のように利用者の種別毎に発行されるものであることを特徴としている。
本発明の請求項6に記載のバス運賃収受システムは、利用者の種別毎の媒体は、その利用者の種別を色分け又は文字表示等の視覚で認識できる形態で区別されていることを特徴としている。
本発明の請求項7に記載のバス運賃収受システムは、回収箱は、バス運賃の金銭を受入れる運賃箱の機能も有していることを特徴としている。
本発明の請求項8に記載のバス運賃収受システムは、媒体は、硬貨状のトークンであることを特徴としている。
本発明の請求項9に記載のバス運賃収受システムは、回収箱は、釣銭排出機能を有していることを特徴としている。
本発明の請求項10に記載のバス運賃収受システムは、回収箱は、受入れた媒体及び金銭を分離して収納するものであることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の請求項1に記載のバス運賃収受システムは、所定の停留所からバスに乗車した利用者にその停留所を特定する所定のデータを記録した非接触型ICチップを内蔵した媒体を発行する媒体発行手段と、前記バスが進行して所定の停留所に停車し、その停留所で降車する利用者の所持する前記媒体を回収箱に受入れて回収する回収手段と、前記回収箱に前記媒体が回収されたときに、その回収された媒体に記録されているデータに基づいて前記利用者のバス運賃を算出する算出手段と、その算出手段で算出されたバス運賃を表示する表示手段と、前記回収箱に回収された媒体を再使用のために前記媒体発行手段にセットするセット手段とからなるので、媒体を基にバス運賃を速やかに、かつ、正確に算出することができるから、利用者から正確なバス運賃を確実に収受することができる。また、媒体が繰返し使用されるので、従来の整理券のような廃棄物発生を未然に防止することができる。さらに、回収された媒体に記録されているデータを用いてバスの利用状況調査を簡単に行うこともできる。
本発明の請求項2に記載のバス運賃収受システムは、所定の停留所からバスに乗車した利用者にその停留所を特定する所定のデータを記録した非接触型ICチップを内蔵した媒体を発行する媒体発行手段と、その媒体発行手段から発行された媒体と交信を行うためのアンテナと、そのアンテナに前記媒体がタッチ又はかざされたときに、その媒体に記録されているデータに基づいて次の停留所までのバス運賃を算出する算出手段と、その算出手段で算出されたバス運賃を報知する報知手段とからなるので、利用者は、正確なバス運賃を事前に知ることができ、バス運賃の金銭を予め用意することができる。
本発明の請求項3に記載のバス運賃収受システムは、媒体発行手段の停留所の特定は、媒体に乗車した停留所を特定する所定のデータを記録して行うのに代えて、バスが所定の停留所に乗車したときに発行される媒体の識別情報を記憶手段に記憶して行うものであるので、媒体の識別情報を用いてバス運賃の算出等を容易に行うことができる。
本発明の請求項4に記載のバス運賃収受システムは、アンテナ及び表示手段は、バスから降車する旨をバスの運転士に報知する報知機に組込まれているので、バス内に多数設けられている報知機を利用して正確なバス運賃を容易に確認することができる。
本発明の請求項5に記載のバス運賃収受システムは、媒体発行手段から発行される媒体は、大人用又は子供用等のように利用者の種別毎に発行されるものであるので、利用者の種別毎のバス運賃を効果的に収受することができる。
本発明の請求項6に記載のバス運賃収受システムは、利用者の種別毎の媒体は、その利用者の種別を色分け又は文字表示等の視覚で認識できる形態で区別されているので、利用者は、自分に対応した媒体を正確に入手することができるとともに、バスの運転手も利用者と媒体との対応状態を容易に確認することができる。
本発明の請求項7に記載のバス運賃収受システムは、回収箱は、バス運賃の金銭を受入れる運賃箱の機能も有しているので、媒体の回収とバス運賃の収受を同時に行うことができる。
本発明の請求項8に記載のバス運賃収受システムは、媒体は、硬貨状のトークンであるので、硬貨処理機を利用して媒体の振分け等の後処理を容易に行うことができる。
本発明の請求項9に記載のバス運賃収受システムは、回収箱は、釣銭排出機能を有しているので、釣銭の返却を容易に行うことができる。
本発明の請求項10に記載のバス運賃収受システムは、回収箱は、受入れた媒体及び金銭を分離して収納するので、回収した媒体を容易に再使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。図1は、一実施の形態に係るバス運賃収受システムの概略構成図である。図1中、Bはバスであり、このバスBの中程の乗車口B1 には、本発明の媒体発行手段に相当するトークン発行機1が搭載されているとともに、バスBの運転手イの脇でバスBの降車口B2 の近くには、本発明の回収手段を担う運賃箱を兼用した回収箱2が搭載されている。
【0011】
図1中、3は、本発明の報知手段を担うとともに、利用者(乗客)が運転手イに降車を希望する旨を報知する報知機を兼用したバス運賃を確認するための確認機であり、この確認機3は、バスBに乗車した利用者(乗客)が移動することなく操作できるように所定の間隔を保ってバスB内に多数設置されている。これら確認機3,3…(各確認機3,3…は、同一構成なので、以下、一つの確認機3で説明する。)、トークン発行機1及び回収箱2は、バスB内に搭載されたバスサーバ4と通信回線Lを介して接続されていて、一つの通信ネットワーク(LAN)が形成されている。
【0012】
図2は、上記トークン発行機1の正面図である。このトークン発行機1の接客パネル10の下部には、所定の間隔を保って2つのトークン取出口11a,11bが設けられていて、これらトークン取出口11a,11bから乗車する利用者が本発明の非接触型ICチップを内蔵した媒体に相当するトークンT1 ,T2 を取り出せるように構成されている。
【0013】
図3は、トークン発行機1内のトークンT1 ,T2 を利用者が取り出しやすいようにするためのトークンT1 ,T2 の排出機構を示している。先ず、トークンT1 ,T2 から説明すると、トークンT1 ,T2 は、図4(a),(b)にそれぞれ示されるように、その外形形状は、ほぼ500円硬貨と同じ直径及び厚さを有し、電波の通過を許容する合成樹脂製で、その内部には、外部の機器と非接触で通信してデータ授受を行う非接触型ICチップ(図示せず)が内蔵されている。すなわち、このトークンT1 ,T2 は、RF(Radio Frequency )タグに形成されている。
【0014】
トークンT1 ,T2 のうち、トークンT1 は、「おとな」の文字が表裏にそれぞれ成形により一体的に表示されているとともに、所定の色彩(図示の例では青色)に着色されていて、トークンT1 が大人用のトークンであることが一目瞭然となるように構成されている(図4(a)参照)。また、トークンT2 は、「こども」の文字が表裏にそれぞれ成形により一体的に表示されているとともに、所定の色彩(図示の例では黄色)に着色されていて、トークンT2 が子供(小児)用のトークンであることが一目瞭然となるように構成されている(図4(b)参照)。なお、バス運賃において、大人及び子供の他に高齢者や身体障害者等の利用者のためにさらに特別な運賃体系が採用されているときは、その利用者用のトークンも他のトークンと区別して用意される。また、子供及び高齢者等が同じ運賃体系の場合は、トークンT2 への印字を「こども・シルバー」のように表示してトークンT2 が子供及び高齢者等用とすることもできる。
【0015】
上述の形態からなるトークンT1 ,T2 (トークンT1 ,T2 の排出機構は同じなので、以下、トークンT1 で説明する。)の排出機構は、図3に示されるように、トークン発行機1内に着脱自在にセットされるスタッカ12の下部からトークンT1 を1枚ずつ、トークン取出口12aに向けて押出せるように構成されている。すなわち、トークン発行機1内に着脱自在にセットされるスタッカ12は、多数のトークンT1 を積層して収納できるように構成されていて、そのスタッカ12の底部の側壁には、トークンT1 を1枚のみ排出できる大きさの開口12aが設けられている。そして、この開口12aと反対側のスタッカ12の側壁には、ソレノイド13のロッド13aが出入できる孔12bが設けられている。したがって、その孔12bからソレノイド13のロッド13aがスタッカ12内に突出すると、スタッカ12内の最下部に位置するトークンT1 を開口12aから押出すことができる。この押出量は、トークンT1 の一部がトークン取出口11aから突出するように決められている。
【0016】
図3中、14はアンテナであって、スタッカ12のセットされる位置に対応してトークン発行機1内に設けられている。すなわち、このアンテナ12は、スタッカ12内のトークンT1 ,T1 …のうち、少なくとも最下部に位置するトークンT1 と通信(交信)できる位置に設けられている。
【0017】
図5は、図2では省略されてくる制御器15及びトークンT1 の電気的構成を示すブロック図である。先ず、制御器15から説明すると、この制御器15は、トークン発行機1を統括的に制御するもので、メモリ16に格納されているワーキングデータ及びプログラムデータを用いて所定の演算処理を行う中央処理部(CPU)17を有している。
【0018】
CPU17は、I/Oユニット18を介して、バスサーバ4等の外部と通信を行うための通信制御部19aと、ソレノイド13を駆動制御するソレノイドドライバ19bと、アンテナ14を接続したトークンT1 と非接触で通信を行うリーダライタ19cとが接続されている。なお、このI/Oユニット18には、トークン取出口11aからトークンT1 が利用者によって取り出されたことを検出する図示しないホトセンサからなるセンサのセンサアンプも接続されているが、ここでは省略されている。なお、トークン取出口11aからトークンT1 が取り出されたか否かの検出は、トークンT1 の後述するメモリに記録されているトークンT1 の識別情報(ID)を読取ることによっても行うことができる。このように、トークンT1 のIDで取出しを検出するときは、センサ及びセンサアンプは省略することができる。
【0019】
トークンT1 は、無線通信機能を有する非接触型ICカードと同様に構成されている。すなわち、このトークンT1 には、アンテナAとトークン発行機1(制御器15)側と交信するための通信制御部20と、その通信制御部20とI/Oユニット21を介して接続されているCPU22と、システムプログラムデータの他に後述する所定のデータの記憶されているメモリ23と、制御器15からの電力波をアンテナAを介して受信し、トークンT1 の駆動電力を生成する電力生成回路24とを有している。上記メモリ23には、トークンT1 の識別情報(ID番号)を記憶するIDデータ記憶部と、トークンT1 が大人用のトークンであることを示す所定の種別データを記憶する種別データ記憶と、乗車した停留所データを記憶する乗車停留所データ記憶部と、降車した停留所データを記憶する降車停留所データ記憶部と、乗車日時を示すデータを記憶する乗車日時データ記憶部等の各種データ記憶部が設けられている。
【0020】
なお、トークン発行機1には、プリペイドカード等のカード類で乗車する利用者のためのカード処理ユニット(このカード処理ユニっトは、磁気カード又は非接触型ICカードからなるカードに記録されているデータを読取るとともに、乗車停留所を特定した乗車データを書込む機能が含まれている。)が設けられているが、ここでは省略されている。また、後に詳述する回収箱2にも、トークン発行機1と同様にカード処理ユニット(このカード処理ユニットは、磁気カード又は非接触型ICカードからなるカードに記録されているデータを読取るとともに、降車停留所を示すデータからバス運賃を算出して減額処理する機能が含まれている。)が含まれているが、ここでは省略されている。
【0021】
図6は、回収箱2の概略構成図であって、その筐体25の上面には、トークンT1 ,T2 及びバス運賃の支払用の硬貨を投入する投入口26が設けられているとともに、スラント式の表示画面27が設けられている。また、この筐体25の側面には、バス運賃の支払を紙幣で行うときの紙幣投入口28が設けられている。
【0022】
図6中、29は、投入口26に対応して筐体25内に設けられた無端ベルトからなる搬送路で、投入口26から投入されたトークンT1 ,T2 及び硬貨を検銭器31のホッパ31aに導くことができるように構成されている。そして、この搬送路29の近くには、搬送路26で搬送されるトークンT1 ,T2 と通信(交信)を行うためのアンテナ30が設けられている。
【0023】
検銭器31は、周知の硬貨検銭器と同様に、硬貨の正貨及び偽貨を判別するとともに、正貨とされた硬貨の種別(10円、50円、100円、500円の種別)を判別できるように構成されている。そして、この検銭器31は、硬貨の他にトークンT1 ,T2 を判別できるように構成されている。
【0024】
図6中、32は、分別搬送路であって、検銭器31から重力により落下する媒体(トークンT1 ,T2 、硬貨)をシャッタを開閉させて振り分けて、トークンT1 ,T2 及び各硬貨の種別毎に分別できるるように構成されている。そして、この分別搬送路32で分別されたトークンT1 ,T2 は、トークン収納箱33にセットされている図示しないスタッカにトークンT1 とトークンT2 とを分別して収納できるように構成されている。また、分別搬送路32で分別された硬貨は、硬貨収納箱34内に硬貨の種別毎に収納できるように構成されている。なお、硬貨の収納は、一つの収納箱内に全部収納できる簡易なものとし、硬貨の分別処理は、バス会社の事務室内で行うようにすることもできる。さらに、トークンT1 ,T2 及び硬貨は、一つの収納箱に一緒に収納し、トークンT1 ,T2 及び硬貨の分別処理をバス会社の事務室内で行うようにし、回収箱2内の回収機構を簡素化することもできる。いずれにしても、回収箱2内に回収されたトークンT1 ,T2 は、再度、トークン発行機1にセットされて再使用される。
【0025】
図6中、35は釣銭処理ユニットであって、筐体25の側面に設けられている返却口36に釣銭を放出できるように構成されている。また、この返却口36には、検銭器31で偽貨と判定された媒体(受取り金種として対象としていない1円及び5円の各硬貨も含む。)も放出されるように構成されている。
【0026】
図6中、37は紙幣処理ユニットであって、紙幣投入口28から投入された紙幣を検銭し、真正と判定された紙幣を収納できるように構成されている。なお、この紙幣処理ユニット37を省略し、紙幣を硬貨に替える両替器を筐体25内に設けるようにしてもよい。
【0027】
図6中、38は回収箱(運賃箱)2を統括的に制御する制御器であって、その電気的構成を示すブロック図が図7に示されている。この制御器38は、メモリ39に格納されているワーキングデータ及びシステムプログラムデータを用いて所定の演算処理を行う中央処理部(CPU)40を有している。
【0028】
CPU40は、I/Oユニット41を介してバスサーバ4等の外部と通信を行うための通信制御部42aと、搬送路29及びその搬送路29を駆動するための図示しないモータ等からなる搬送ユニット42bと、検銭器31及び分別搬送路32等からなる硬貨・トークン処理ユニット42cと、上記釣銭処理ユニット35と、上記紙幣処理ユニット37と、表示画面27を駆動制御する表示ドライバ42dと、図6では省略されている係員(運転手)によって操作される係員処理ユニット42eと、アンテナ30を接続したトークンT1 ,T2 と通信(交信)し、そのトークンT1 ,T2 とデータ授受を行うためのリーダライタ42fとを接続している。
【0029】
図8は、確認機(報知機)3の正面図であり、その筐体43の正面上部には表示部44が設けられているとともに、その表示部44の下方に押釦45が設けられている。この押釦45は、周知のバス内に設けられている報知機と同様に、次の停留所で降車する利用者が押下するもので、この押釦45が利用者によって押下されると、次の停留所で降車する利用者がいることが運転手に報知されるとともに、表示部44には、「次とまります」の文字が表示されるように構成されている。
【0030】
確認機3の筐体43の正面中央部には、アンテナマーク46aが表示されている。そして、このアンテナマーク46aに対応した筐体43の内部にはアンテナ46が設けられている。また、この筐体43には、図8では省略されているが、図9に示される制御器47が設けられている。
【0031】
この制御器47は、確認機3を統括的に制御するもので、メモリ48に格納されているワーキングデータ及びシステムプログラムデータを基に所定の演算処理を行う中央処理部(CPU)49を有している。そして、このCPU49は、I/Oユニット50を介してバスサーバ4等の外部と交信(通信)を行うための通信制御部51と、押釦45のスイッチ信号を入力するためのスイッチ入力ドライバ52と、表示部44の表示内容を駆動制御する表示ドライバ53と、アンテナ46を接続したリーダ54とが接続されている。このリーダ54は、アンテナ46を介してアンテナマーク46aにタッチ又はそのアンテナマーク46aにかざされた(以下、タッチで説明する。)トークンT1 ,T2 に記録されているデータを読取ることができるように構成されている。
【0032】
図10は、バスサーバ4の電気的構成を示すブロック図である。このバスサーバ4は、上述したトークン発行機1、回収箱(運賃箱)2及び確認機(報知機)3のホストコンピュータ的機能を有していて、メモリ55に格納されているワーキングデータ及びシステムプログラムデータに基づいて所定の演算処理を行う中央処理部(CPU)56を有している。そして、このCPU56には、バスBのバス運賃を決定するデータの運賃テーブル57が接続されているとともに、I/Oユニット58を介して回収箱2等の外部と通信(交信)を行うための通信制御部59が接続されている。なお、図1では、このバスサーバ4は、理解を容易にするために回収箱2から離れた位置に設けられているが、実際は、回収箱(運賃箱)2内に実装される。
【0033】
次に、図11のフローチャートを用いて利用者がバスに乗車するときの制御動作について説明する。今、ある大人の利用者がバスの停留所でバスBを待っているものとする。そして、その停留所にバスBが到着して乗車口B1 のドア(図示せず)が開いて利用者の乗車が許可されたとする(ステップ100肯定、ステップ102。以下、ステップを「S」とする。)。ドアが開かれると、図示しないスピーカを介してトークンT1 (T2 )の取出し案内が行われる。
【0034】
バスBに乗車した利用者は、そのバスBの乗車口B1 の近くに設けられているトークン発行機1から利用者(この例では大人の利用者)に対応したトークンT1 を抜き出して(取り出して)所持することになる。その利用者の所持するトークンT1 には、利用者の乗車した停留所を示す乗車停留所データ、乗車日時データ、利用者の種別(この場合は大人の利用者)を示すデータ等のバス運賃を算出するに必要なデータ及びバスの利用状況を調査するのに必要なデータが記録される(S104、S106肯定)。なお、バス運賃等を算出するのに必要なデータは、トークンT1 に記憶させることなく、バスサーバ4において主体的に行うようにしてもよい。すなわち、バスBが所定の停留所に停車し、利用者にトークンT1 がトークン発行機1から抜き出されたときは、そのトークンT1 の識別情報(以下、「トークンID」という。)を停車した停留所を示す所定のデータ(停留所コード)とともにバスサーバ4のメモリ55(本発明の記憶手段に相当している。)に記憶させるようにしてもよい。この場合は、トークンT1 に対する処理を簡素化することができる。
【0035】
トークン発行機1から発行されるトークンT1 の乗車停留所を示す乗車停留所データは、運転手がバスが次に停車する停留所を車内に音声や表示で案内するボタン(図示せず)を操作した信号に同期させて特定される。また、バスBと停留所との間に無線で送受信する設備が備えられているときは、バスBが停留所の通信範囲(交信範囲)に入ったときにその停留所から得られた停留所を示すデータに基づいてトークンT1 に乗車停留所データを記録することもできる。もちろん、このような送受信設備を備えているときは、後述の降車停留所のデータも停留所側から得ることができる。
【0036】
トークン取出口11aから利用者によってトークンT1 が取り出されると、次の利用者のためにソレノイド13により次のトークンT1 がトークン取出口11aに一部が突出される(S108)。そして、バスBの停車した停留所からの全ての利用者の乗車が終了すると、乗車口B1 のドアが閉じられてバスBの発車が行われる(S110肯定、S112)。なお、上述の例では、利用者が大人の場合であるが、子供の利用者の場合は、トークンT2 がトークン発行機1から取り出される。
【0037】
図12は、バスBに乗車した利用者がバス運賃を確認するためのフローチャートである。バス運賃を確認しようとする利用者は、車内に多数設けられている確認機(報知機)3,3…のうちのいずれか一つの確認機3のアンテナマーク46aにトークンT1 がタッチされると(S200肯定)、そのトークンT1 に記録されている乗車停留所データ等のトークンデータがアンテナ46を介して読取られる(S202)。そして、そのトークンデータが正常に読取られると(S204肯定)、CPU49では、トークンデータ中の乗車停留所データと次にバスBが停車する停留所データ(降車停留所データ)とからバスBの大人のバス運賃を算出し、その算出したバス運賃が表示部44に表示される(S206、S208)。この表示は、所定時間、例えば、10秒間行われる(S210肯定、S212)。したがって、利用者は、表示部44に表示されたバス運賃を参考にしてバス運賃の金銭を事前に用意することができ、結果的にバスBの停車時間を短縮することができる。上述のバス運賃の確認は、利用者が子供のときのトークンT2 の場合も同様に行われる。
【0038】
図13は、利用者がバスBから降車するときの制御動作を示すフローチャートである。すなわち、バスBが所定の停留所に停車すると、回収箱(運賃箱)2の投入口26に利用者の所持するトークンT1 とバス運賃の金額を満たす金銭が投入される(バス運賃を紙幣で支払うときは、紙幣投入口28に投入される。以下、金銭が硬貨の場合で説明する。)(S300肯定、S302)。
【0039】
トークンT1 が投入口52に投入されて搬送路29で移動(搬送)される途中、アンテナ30を介してそのトークンT1 に記録されている乗車停留所データ等のトークンデータが制御器38に取り込まれてCPU40によるバス運賃の算出が行われる。すなわち、CPU40は、トークンT1 に記録されている乗車停留所データと現在停車中の停留所データ(降車停留所データ)とからバス運賃の算出を行う。また、投入口26に投入された金銭(硬貨)は、検銭器31で正貨,偽貨の検銭と投入金額の算出とが行われるとともに、トークンT1 の回収が行われる(S304)。そして、表示画面27には、算出されたバス運賃の金額や投入金額等の表示が行われる(S306。図6の表示画面27参照)。なお、バスサーバ4のメモリ55に記憶されているトークンIDに基づいてバス運賃を算出する場合は、回収箱2に回収されたトークンT1 のトークンIDとメモリ55に記憶されているトークンIDの照合を行って乗車区間が求められ、その求められた乗車区間に対応したバス運賃が算出される。
【0040】
投入口26に投入された金銭の額が表示されたバス運賃よりも多いときは、その差額が釣銭処理ユニット35を介して返却口36に放出される(S308肯定、S310肯定、S312)。このような降車処理は、全ての降車客が終了するまで継続され、全ての降車客の処理が終了すると、バスBが発車される(S314肯定、S316)。なお、上述の降車処理は、大人の利用者の場合であるが、子供の利用者の場合も同様に行われる。また、降車処理は、利用者一人毎行われたが、図示しない係員処理ユニットからの一括処理指令が行われると、すなわち、運転手が一括払いの釦を押すと、投入口26に投入された複数のトークンT1 (T2 )の合計したバス運賃が表示画面27に表示される。したがって、家族等の複数の利用者は、一括してバス運賃の支払を行うことができる。
【0041】
また、フローチャートでは省略したが、回収したトークンT1 ,T2 の乗車区間等のデータは、最終的にバスサーバ4のメモリ55に集められて、後のバス利用状況調査等に使用される。さらに、回収箱2に回収されたトークンT1 ,T2 は、再び、トークン発行機1にセットされて再使用される。
【0042】
なお、上述の例では、非接触型ICチップを内蔵した媒体として硬貨状(コイン状)を呈したトークンT1 ,T2 としたが、これを非接触型ICカードとしてもよい。しかし、上述のように媒体を硬貨状のトークンとしたときは、媒体を硬貨を処理する硬貨処理機器を用いて振分け回収できる特長がある。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の一実施の形態に係るバス運賃収受システムの概略構成図である。
【図2】トークン発行機の正面図である。
【図3】スタッカの詳細図である。
【図4】(a)は大人用のトークンの正面図、(b)は子供用のトークンの正面図である。
【図5】トークン発行機の制御器及びトークンの電気的構成を示すブロック図である。
【図6】回収箱の概略構成図である。
【図7】回収箱の制御器の電気的構成を示すブロック図である。
【図8】確認機の正面図である。
【図9】確認機の制御器の電気的構成を示すブロック図である。
【図10】バスサーバの電気的構成を示すブロック図である。
【図11】乗車時の制御動作を示すフローチャートである。
【図12】バス運賃確認の制御動作を示すフローチャートである。
【図13】降車時の制御動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0044】
B バス
B1 乗車口
B2 降車口
T1 ,T2 トークン
1 トークン発行機
2 回収箱(運賃箱)
3 確認機(報知機)
4 バスサーバ
11a,11b トークン取出口
12 スタッカ
15 制御器
25 筐体
26 投入口
27 表示画面
29 搬送路
30 アンテナ
31 検銭器
32 分別搬送路
33 トークン収納箱
34 硬貨収納箱
35 釣銭処理ユニット
36 返却口
37 紙幣処理ユニット
38 制御器
43 筐体
44 表示部
45 押釦
46a アンテナマーク
46 アンテナ
47 制御器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の停留所からバスに乗車した利用者にその停留所を特定する所定のデータを記録した非接触型ICチップを内蔵した媒体を発行する媒体発行手段と、
前記バスが進行して所定の停留所に停車し、その停留所で降車する利用者の所持する前記媒体を回収箱に受入れて回収する回収手段と、
前記回収箱に前記媒体が回収されたときに、その回収された媒体に記録されているデータに基づいて前記利用者のバス運賃を算出する算出手段と、
前記算出手段で算出されたバス運賃を表示する表示手段と、
前記回収箱に回収された媒体を再使用のために前記媒体発行手段にセットするセット手段と、
からなることを特徴とするバス運賃収受システム。
【請求項2】
所定の停留所からバスに乗車した利用者にその停留所を特定する所定のデータを記録した非接触型ICチップを内蔵した媒体を発行する媒体発行手段と、
前記媒体発行手段から発行された媒体と交信を行うためのアンテナと、
前記アンテナに前記媒体がタッチ又はかざされたときに、その媒体に記録されているデータに基づいて次の停留所までのバス運賃を算出する算出手段と、
前記算出手段で算出されたバス運賃を報知する報知手段と、
からなることを特徴とするバス運賃収受システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のバス運賃収受システムにおいて、媒体発行手段の停留所の特定は、媒体に乗車した停留所を特定する所定のデータを記録して行うのに代えて、バスが所定の停留所に乗車したときに発行される媒体の識別情報を記憶手段に記憶して行うものであることを特徴とするバス運賃システム。
【請求項4】
請求項2又は3に記載のバス運賃収受システムにおいて、アンテナ及び表示手段は、バスから降車する旨をバスの運転士に報知する報知機に組込まれていることを特徴とするバス運賃収受システム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のバス運賃収受システムにおいて、媒体発行手段から発行される媒体は、大人用又は子供用等のように利用者の種別毎に発行されるものであることを特徴とするバス運賃収受システム。
【請求項6】
請求項5に記載のバス運賃収受システムにおいて、利用者の種別毎の媒体は、その利用者の種別を色分け又は文字表示等の視覚で認識できる形態で区別されていることを特徴とするバス運賃収受システム。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載のバス運賃収受システムにおいて、回収箱は、バス運賃の金銭を受入れる運賃箱の機能も有していることを特徴とするバス運賃収受システム。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載のバス運賃収受システムにおいて、媒体は、硬貨状のトークンであることを特徴とするバス運賃収受システム。
【請求項9】
請求項7又は8に記載のバス運賃収受システムにおいて、回収箱は、釣銭排出機能を有していることを特徴とするバス運賃収受システム。
【請求項10】
請求項7〜9のいずれかに記載のバス運賃収受システムにおいて、回収箱は、受入れた媒体及び金銭を分離して収納するものであることを特徴とするバス運賃収受システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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