説明

バタフライ弁の継手

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は管路に介装するバタフライ弁のうち、両端面に取り付け用のフランジのないウエハー型バタフライ弁の継手に係る。
【0002】
【従来の技術】管路を開閉するバタフライ弁、特に両端面にフランジを具えずに両端の管体に取り付けたフランジによってガスケットを介して圧接し、水密を保って介装しているウエハー型のバタフライ弁は、弁自体が軽量であり取り付けも簡単であるから、工場用の配管、ビルなど建築物内の配管に適用して重宝されている。この場合、管路を形成する管体と管体の間へ介在させるためには、図7に示すような方式を採ることがもっとも一般的であり経済的でもあるとされている。すなわち、ウエハー型バタフライ弁Vには両端にフランジがないから、管体Pの端面にフランジ101の取り付けを必要とするが、作業性を考えると管体に直接フランジを溶接するよりは、短管102の端面にフランジ101をあらかじめ溶接して取り付け、当該短管102を本管Pに溶接継合する方が有利であり、広く採用され実施されている。ウエハー型バタフライ弁を挟む両側に図示しないガスケットを挟んでフランジの付いた短管がそれぞれ接続されると、当フランジ同士をボルト103,ナット04で締結し、管路内へバタフライ弁を介装した継合が完了される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】前記の従来技術において課題となることは、まず継合作業の非能率と継合後の不安定な機能である。最初にフランジ101を短管102に溶接するときに、工場または現地でフランジの中心と短管の軸芯とを一致した接合が必要となるが、溶接時の高熱や歪みなどのために高い精度で両センターを一致させることはかなりの技量を必要とする。また、短管を現地で本管に溶接するときも同様に高い技量が必要であり、両者の芯を合わせることと、取り付けたフランジ管同士の間隔がこの間で挟持するバタフライ弁の両端距離と一致させるために、溶接時の寸法精度は厳しいレベルが要求される。短管,本管の継合溶接を現地で施工するときは、大きな作業工数を必要とするから作業の非能率性が問題となる上、作業自体も不安定な高所における高熱作業となることが多いから、不安全非能率な作業条件を覚悟せざるを得ない。
【0004】一方、継合後の管路の機能を考えると、フランジ同士を締結するのは多数箇所におけるボルト,ナットであるから、熟練した組立工が慎重に作業しないと全周に亘って均等に締め付けることが難しい。片締めとなってフランジ間の締結に強弱の差が生じると、予定した水封能力が維持できないで漏水の原因となることがある。また、この形式は必然的にフランジを貫通する数箇所の取り付け孔とボルトとの間に若干のクリアランスを設けておかなければ挿通することができないため、継合後、このクリアランスががたつきの原因となって接続部から漏水する懸念もある。どのような管路においても建物の振動や、揺動,衝撃の加わる機会の可能性は完全には否定できないから、ボルト締めの方式には一抹の不安が残る。
【0005】本発明は以上に述べた課題を解決するために取り付けがきわめて簡単であり、ほとんどワンタッチに等しい手軽さで管路内へバタフライ弁が取り付けられ、しかも取り付け後はきわめて接続が安定していて信頼性の高い継手機能が長く持続されるウエハー型バタフライ弁の継手の提供を目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明に係るバタフライ弁の継手は、流路を開閉するバタフライ弁Vを管体P間へ介装する継手において、ウエハー型バタフライ弁Vの端面とガスケットGを介して圧接する一方の継手本体1は管体Pを内嵌する円筒形よりなり、その内端面外周上へ外側面が螺旋面12よりなる突起11を複数個突出するとともに、庇状に外方へ延出した螺合部15の内周上に雌ねじ13を螺刻し、バタフライ弁端面と圧接する他方の継手本体2も同じく円筒形よりなり、内端面外周へ突条21を周設するとともに、庇状に外方へ延出した螺合部25の内周上に雌ねじ22を螺刻し、両継手本体1,2と共通に係合する係合環3は、環外周上へ内側面が前記螺旋面12と係合する螺旋面31よりなる凹溝33を切り込んだ爪34を複数個突設し、さらに環全周で前記突条21の外側面24と圧着する内側面32を具え、前記雌ねじ13と螺合する雄ねじ41を外周上に螺刻したテーパーリング4の内周は外端へ向け縮径する傾斜面42を形成して一つ割の口金5の外周の球面51と当接し、前記雌ねじ22と螺合する雄ねじ61を外周上に螺刻したテーパーリング6の内周は外端へ向け傾斜面62を形成して一つ割の口金7の外周の球面71と当接し、口金5および7は内面に環状の鋭利な咬合歯を具えていることによって前記の課題を解決した。
【0007】また、この構成において、継手本体1における突起11は円周を均等に三分割した3ケよりなり、係合環3における爪34も円周を均等に三分割した3ケよりなることがきわめて好ましい実施例である。また、口金5および7は管体Pよりも硬度の高い金属材料で製作し、かつ、その内径は管体の外径よりも僅かに小さく製作していることが実施上、望ましいことである。
【0008】
【作用】本発明の継手はウエハー型バタフライ弁を対象とし、そのバタフライ弁の両端面とガスケットを介して圧接する両側の継手本体1,2と、両者と共通して係合する係合環3、継手本体の内周と螺合するテーパーリング4,6、該テーパーリングの内周の傾斜面で当接する一つ割の口金5,7という構成から成立している。継手本体1,2は何れも円筒形で管体Pを内嵌する内径よりなり、それぞれ左右の管体を被覆してバタフライ弁と接続する。継手本体1は内端面上に螺旋面12を具えた突起11を有し、一方の継手本体2は内端面に突条21を周設しているから、ウエハー型バタフライ弁を挾む管体へ両側から継手本体1,2を外嵌し、両者に跨がって共通する係合環3を嵌めつつ回動すると、継手本体1の突起側面の螺旋面12と係合環の爪32に切り込んだ凹溝33の内側面である螺旋面31とがテーパー同士で摺動し合って緊密に係合し、環の内側面32は継手本体2の先端に突出する突条21の外側面24と圧着するので、継手本体1とバタフライ弁はあたかも螺合したように相互に係合し、継手本体2の内端面の突条21は係合環内側面と全面で圧接するから、この突条21はストッパーの作用を果す。すなわち係合環3を回動することによって継手本体1の突起と係合環の爪とがねじを締め付けたのと同一の作用を発揮し、継手本体2は係合環の内側面と全周で圧着して三者はほとんどワンタッチでバタフライ弁を挟んで継合する。
【0009】継手本体1および継手本体2の外周から外側へ向けて庇状に延出した螺合部15,25の内面には雌じ13および22が螺刻され、この雌ねじと螺合するテーパーリング4,6が継手本体と螺合し、このテーパーリング内面は外端へ向けて縮径する傾斜面42,62で形成され、一つ割の口金5,7の球面51,71と当接する。口金5,7は切欠き部53,73で分断される一つ割の環体であるから、管体の外周上へ嵌合するときは、若干内径を広げて被せるので被冠後は初期締め付け力が発揮する上、口金内径に環状に鋭く突出する咬合歯52,72が管体の外周面に噛み込み、きわめて強固な係合関係を形成する。この係合のため、使用中に何かの原因で外力が掛っても容易に抜け出すことがない。
【0010】口金を管体に噛合した後、テーパーリングを回動し締め込んでいけば、口金はテーパーリングの傾斜面に圧迫されて径が縮小するので、咬合歯の噛み込みはさらに助長され継手部の抜け止めの作用はますます昂進する。使用中に管路内の圧力が上昇して配管を抜く方向に働く外力が増大すると、管体は抜け方向へ移動しようとするが、同時に咬合歯、口金へも同じ作用が掛かるから、口金球面とテーパーリングの傾斜面間に楔作用が発生して口金の径をさらに縮めようとするので、咬合歯は管体と一層強く係止する作用が現れるのである。このように継手本体1とウエハー型バタフライ弁と継手本体2とが相互に係合し、かつ本管に対して回り止めとなる係止作用を受け、両作用によって信頼できる継合関係が構築される。
【0011】
【実施例】図1は本発明実施例の全体図であり、縦断正面図(A)と側面図(B)よりなる。両図においてウエハー型バタフライ弁Vは自らは両端面に取り付け用のフランジを具えていない。ガスケットGを介して継手本体1,継手本体2に水密的に挟持され、継手本体1と継手本体2とは係合環3と、また、両継手本体と管体とはテーパーリング4,6および該テーパーリングと係合する口金5,7を介して、それぞれ係合している。継手本体1の内周には断面「コ」形の凹溝14が全周に亘って刻設され、この凹溝の中へゴムパッキング8が嵌入されている。同様に継手本体2の内周にも凹溝23が刻設されてゴムパッキング8が嵌入され、それぞれ継手本体外周と管体Pの内周との水封作用を行なう。
【0012】継手本体1だけの斜視図を図2に示す。継手本体1は円筒形の形状からなり、その内側端面に3ケの突起11を均等に円周を分割して突出している。突起の外側面は螺旋面12を形成しているので、突起11の幅は一定ではなく規則的に増減する。継手本体1の突起と反対側の端面へ庇状に螺合部15が延出し、その内面に雌ねじ13が螺刻されている。
【0013】図3は継手本体2の斜視図であり、全体の形状は円筒形、内側の端面近くに一定の厚さからなる突条21を周設し、他方の端面へ向けて延出する螺合部25の内周に継手本体1と同様な雌ねじ22が螺刻されている。また、内周側の適当な位置にゴムパッキング8を嵌入する凹溝23を刻設して継手本体1と同様に管体Pとの水封作用を務める。
【0014】図4は係合環3の斜視図であり、爪34は断面が「コ」字形となる凹溝33が切り込まれ、その凹溝の内側面が螺旋面31を形成している。また、爪34の各外面上には打撃用突起35が突設しているので、この突起へハンマーなどで打撃を加えると、係合環3は円周方向へ回動し継手本体1の螺旋面12と当接する螺旋面31がテーパー面上で摺動し、双方が噛み込んで強固な係合状態となる。係合環の内側面32は継手本体2の突条21と圧接するストッパー面の役割を果す。打撃用突起のない場合にはパイプレンチを嵌合して回動すればよい。
【0015】図5はテーパーリング4および6の斜視図である。内周は前記の継手本体1,2の螺合部内周の雌ねじと螺合する雄ねじ41および61が螺刻され、内周は外端へ向けて縮径する傾斜面42および62となって口金の球面51および71と当接する。口金の外面が球面で形成されているから、継合時に多少の芯ずれがあっても特に問題を生じる懸念がなく、作業上の細かい調整が簡略化できる。内端外周上に打撃用突起43および63を3ケ突設しているので、この突起へハンマーなどで打撃を与えるとテーパーリングが螺進して口金を圧迫し、継手本体を押圧するとともに管体との係止力が増大して抜け止め作用が強化される。打撃用突起のない場合にはパイプレンチを嵌合して回動することとなる。
【0016】図6は口金5および7の斜視図であり、切欠き部53および73を持つ一つ割の環体である。外周は球面51,71よりなり、内面には鋭利な咬合歯52,72が環状に突設され管体の外周に噛み込んで抜け止めの役割を果す。この場合、口金の内径を嵌合する管体の外径より僅かに小さく設定しておけば、被冠するときには若干広げて被せるから、被冠後は締め付け力が生ずる。さらに口金の材質を管体よりも硬度の高い金属材料、たとえば低合金熱処理鋼で製作すればこの噛み込みは一層確実な状態となることが期待できる。また、このような形状で使用の態様から見ても口金は繰り返し何度でも使用することができるという利点もある。
【0017】実際の管接合作業においては、現地に既に配設された両側の管体Pの先端へそれぞれ継手本体1,継手本体2をまず差し込んでテーパリングと口金で係止しておいた後、両者の間へバタフライ弁を嵌め込んで位置を定め、外周から係合環を回動しつつ嵌合する手順が第一の方法である。または継手本体1と継手本体2とウエハー形バタフライ弁の三者をあらかじめ係合環3を使用して一体的に組合わせておき、この継手本体1の開口部を既設の管体へテーパリングと口金を介して差し込んで係止し、次に継手本体2の開口部へテーパリング、口金とともに継合すべき次の管体を差し込んで係止するという手順もある。この場合は管体の配管と継合とが交互に連続して管路を延ばしていくという工法となる。
【0018】
【発明の効果】本発明に係るウエハー型バタフライ弁の継手は、取り付けがほとんどワンタッチに等しいほどの簡単な動作で完結するから、工場、建物の内外配管に際して継合作業が負担とならず、また、熟練した作業員でなくても間違いなく信頼性の高い管路の形成ができる。継合に際しては各部材の取り合せに厳しい寸法精度の必要のないことも現場的には大きな利便を与えるものである。作業の性質上、高所における溶接などの高熱作業とならざるを得なかった従来技術に比べると、工数の大幅軽減、作業員の安全確保、使用する管路の安定性の向上など、有形無形の効果は枚挙に暇ないほど多岐に及ぶ。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明実施例の全体を示す縦断正面図(A)と側面図(B)である。
【図2】実施例のうち、継手本体1を示す斜視図である。
【図3】同じく継手本体2を示す斜視図である。
【図4】同じく係合環3を示す斜視図である。
【図5】同じくテーパーリング4および6の斜視図である。
【図6】同じく口金5および7の斜視図(A)と断面の一部斜視図(B)である。
【図7】従来技術を示す縦断正面図である。
【符号の説明】
1 継手本体
2 継手本体
3 係合環
4 テーパーリング
5 口金
6 テーパーリング
7 口金
8 ゴムパッキング
11 突起
12 螺旋面
13 雌ねじ
14 凹溝
15 螺合部
21 突条
22 雌ねじ
23 凹溝
24 外側面
25 螺合部
31 螺旋面
32 内側面
33 凹溝
34 爪
35 打撃用突起
41 雄ねじ
42 傾斜面
43 打撃用突起
51 球面
52 咬合歯
53 切欠き部
61 雄ねじ
62 傾斜面
63 打撃用突起
71 球面
72 咬合歯
73 切欠き部
V ウエハー型バタフライ弁
G ガスケット
P 管体

【特許請求の範囲】
【請求項1】 流路を開閉するバタフライ弁Vを管体P間へ介装する継手において、ウエハー型バタフライ弁Vの端面とガスケットGを介して圧接する一方の継手本体1は管体Pを内嵌する円筒形よりなり、その内端面外周上へ外側面が螺旋面12よりなる突起11を複数個突出するとともに、庇状に外方へ延出した螺合部15の内周上に雌ねじ13を螺刻し、バタフライ弁端面と圧接する他方の継手本体2も同じく円筒形よりなり、内端面外周へ突条21を周設するとともに、庇状に外方へ延出した螺合部25の内周上に雌ねじ22を螺刻し、両継手本体1,2と共通に係合する係合環3は、環外周上へ内側面が前記螺旋面12と係合する螺旋面31よりなる凹溝33を切り込んだ爪34を複数個突設し、さらに環全周で前記突条21の外側面24と圧着する内側面32を具え、前記雌ねじ13と螺合する雄ねじ41を外周上に螺刻したテーパーリング4の内周は外端へ向け縮径する傾斜面42を形成して一つ割の口金5の外周の球面51と当接し、前記雌ねじ22と螺合する雄ねじ61を外周上に螺刻したテーパーリング6の内周は外端へ向け傾斜面62を形成して一つ割の口金7の外周の球面71と当接し、口金5および7は内面に環状の鋭利な咬合歯52および72をそれぞれ具えていることを特徴とするバタフライ弁の継手。
【請求項2】 請求項1において、継手本体1における突起11は円周を均等に三分割した3ケよりなり、係合環3における爪34も円周を均等に三分割した3ケよりなることを特徴とするバタフライ弁の継手。
【請求項3】 請求項1または2において、口金5および7は管体Pよりも高硬度の金属材料で製作し、一つ割の内径寸法は管体の外径より僅かに小さいことを特徴とするバタフライ弁の継手。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【特許番号】第2676313号
【登録日】平成9年(1997)7月25日
【発行日】平成9年(1997)11月12日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平5−276225
【出願日】平成5年(1993)10月6日
【公開番号】特開平7−103353
【公開日】平成7年(1995)4月18日
【出願人】(000142595)株式会社栗本鐵工所 (566)
【出願人】(000155285)株式会社明和製作所 (7)
【参考文献】
【文献】特開 平6−50448(JP,A)
【文献】実開 昭59−191469(JP,U)
【文献】実開 平4−99474(JP,U)
【文献】実開 昭52−28732(JP,U)
【文献】実開 昭60−86688(JP,U)