説明

バタフライ弁

【課題】環状をなすシート部材の全周にわたって充填材を確実に充填することができるバタフライ弁を提供する。
【解決手段】弁箱2の内側面に対向するシート部材10の外側面の全周にわたって形成した充填用溝部101と、充填用溝部101をシート部材10の幅方向に仕切る仕切壁と、充填用溝部101に連通する注入口と、充填用溝部101に連通し、仕切壁を隔てた両側位置のそれぞれに設ける排出口を備え、仕切壁と注入口と排出口を弁箱2あるいはシート部材10の何れかに設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はバタフライ弁に関し、弁体に摺接するシート部材の技術に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のバタフライ弁としては、特許文献1に記載されたものがある。これは、弁箱内に配置した弁体に弁棒を連結したもので、弁体が弁棒の軸心廻りに回転可能である。弁箱の内面には、弁体の外周縁に接する周縁シール部と、弁棒に外嵌するハブシート部とを設けている。周縁シール部は、シート本体と、シート本体の両端に一体形成した端縁部とを有しており、弁箱にはシート本体の両端に対応する位置に充填剤注入口及び空気排出口が形成してある。周縁シール部の凹溝内には充填剤が充填してあり、充填剤注入口及び空気排出口にそれぞれプラグをねじ込んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−317901号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の構成では、周縁シール部の下端側に連通する充填剤注入口から注入した充填材が周縁シール部の凹溝内を上昇しながら空気を空気排出口へ向けて押出すので、周縁シール部の凹溝内に空気を残すことなく充填材が凹溝内に充満する。
【0005】
しかしながら、バタフライ弁が偏芯型である場合には、周縁シール部が弁体の全周に対応するように環状に形成する必要がある。この場合に、充填剤注入口と空気排出口を周縁シール部において相反する位置に設ける構成では、充填剤注入口から注入した充填材が凹溝内を満たす前に、凹溝内に空気を残す状態で空気排出口から充填材が噴出する場合があり、充填材の注入が不完全となる問題があった。
【0006】
本発明は、上記した課題を解決するものであり、環状をなすシート部材の全周にわたって充填材を確実に充填することができるバタフライ弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明のバタフライ弁は、弁体が弁箱内で弁棒の軸心廻りに回動し、弁体の外周縁に摺接する環状のシート部材を弁箱の内側面に配設したバタフライ弁において、弁箱の内側面に対向するシート部材の外側面の全周にわたって形成した充填用溝部と、充填用溝部をシート部材の幅方向に仕切る仕切壁と、充填用溝部に連通する注入口と、充填用溝部に連通し、仕切壁を隔てた両側位置のそれぞれに設ける排出口を備え、仕切壁と注入口と排出口を弁箱あるいはシート部材の何れかに設けることを特徴とする。
【0008】
本発明のバタフライ弁のシート部材の取り付け方法は、弁体が弁箱内で弁棒の軸心廻りに回動するバタフライ弁において、弁体の外周縁に摺接する環状のシート部材を弁箱の内側面に配設し、弁箱の内側面に対向するシート部材の外側面の全周にわたって形成した充填用溝部に注入口から充填材を注入しつつ、充填用溝部をシート部材の幅方向に仕切る仕切壁を隔てた両側位置の排気口からそれぞれ排気して、充填用溝部に充填材を充満させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
以上のように本発明によれば、充填用溝部を仕切壁で仕切り、仕切壁を隔てた両側位置のそれぞれに排出口を設けることで、注入口から注入する充填材が充填用溝部を満たす前に、充填用溝部内に空気を残す状態で排出口から充填材が噴出することがなくなり、環状をなすシート部材の全周にわたって充填材を確実に充填することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態におけるバタフライ弁の一部破断平面図
【図2】同バタフライ弁の部分断面図
【図3】同バタフライ弁に設けられたシート部材の断面図
【図4】同バタフライ弁に設けられるシート部材の拡大断面図
【図5】同バタフライ弁に設けられるシート部材の要部拡大図
【図6】同バタフライ弁に設けられるシート部材の一部切欠き正面図
【図7】本発明の他の実施の形態におけるバタフライ弁の要部横断面図
【図8】同バタフライ弁の要部縦断面図
【図9】本発明の他の実施の形態におけるバタフライ弁の要部断面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明における実施の形態を図面に基づいて説明する。図1〜図6に示すように、バタフライ弁1は弁箱2の内部に弁体3を配置し、弁体3を弁棒4に連結固定している。弁箱2は円筒状の部材からなり、内部に流路200を有しており、弁箱2の弁箱ボス部201に挿入した弁棒4を弁体ボス部301に挿入している。弁体3は弁棒4とともに弁棒4の軸心廻りに回転自在である。
【0012】
弁体3は円盤状をなし、弁体3の外周縁を含む平面と弁棒4の軸心を含む平面が異なる偏芯型の形状をなす。
弁箱2の内面にはゴム等の弾性材からなる環状のシート部材10を設けており、シート部材10は弁体3の外周縁に摺接する。図4に示すように、シート部材10は半径方向に沿った断面において山形状をなし、弁箱2の内側面に対向する外側面の全周にわたって形成した充填用溝部101を有している。図2に示すように、弁箱2の内周面には凹形状の嵌込溝202が形成してあり、シート部材10はそれぞれ嵌込溝202に嵌め込む一対の脚部102を有している。
【0013】
図5、図6に示すように、シート部材10は充填用溝部101をシート部材10の幅方向に仕切る仕切壁103を有しており、仕切壁103は弁箱2の内側面の上部位置に対応する位置に設けている。シート部材10は仕切壁103を隔てた両側位置のそれぞれに排出口104を備え、弁箱2の内側面の上部位置に対応する位置に注入口105を備えており、排出口104および注入口105は充填用溝部101に連通している。
【0014】
充填用溝部101には硬化性樹脂(例えばエポキシ樹脂)等からなる充填剤11が充填してあり、排出口104と注入口105にはそれぞれ閉止栓106が挿入してある。閉止栓106に替えて充填剤11のそれ自体で閉止することも可能である。
【0015】
以下、上記構成における作用を説明する。バタフライ弁1を組み立てる際、シート部材10の脚部102を嵌込溝202に嵌め込んで、シート部材10を弁箱2の内面に設ける。
【0016】
次に、充填剤11を注入口105から充填用溝部101に注入するとともに、充填用溝部101の内部の空気を両排出口104から外部へ排出する。すなわち、シート部材10の下部側に連通する注入口105から注入した充填材11がシート部材10の充填用溝部101の内部を上昇しながら空気を排出口104へ向けて押出し、充填材11が充填用溝部101の内部に充満する。
【0017】
充填用溝部101は内部を仕切壁103で仕切っており、仕切壁103を隔てた両側位置のそれぞれに排出口104を設けているので、充填材11が仕切壁103を越えて充填用溝部101の内部を流動することはなく、注入口105から注入する充填材11が充填用溝部101を満たす前に、充填用溝部101の内部に空気を残す状態で両排出口104からともに充填材11が噴出することがなくなり、環状をなすシート部材10の全周にわたって充填材11を確実に充填することができる。
【0018】
次に、注入口105と排出口104とに閉止栓106を挿入して閉止する。充填用溝部101の充填剤11が硬化することにより、シート部材10は弁箱2に確実に固定される。次に、弁体3を弁箱2内に配置し、弁棒4を弁箱2に挿入して弁体3に連結する。
【0019】
上記した実施の形態では、仕切壁103と排出口104と注入口105をシート部材10に設けた。しかしながら、図7、図8に示すように、シート部材10に設ける仕切壁103に替えて、充填用溝部101をシート部材10の幅方向に仕切る仕切壁210を弁箱2と一体に設けることも可能である。また、図9に示すように、シート部材10に設ける排出口104および注入口105に替えて、充填用溝部101に連通する排出口211および注入口212を弁箱2に設けることも可能である。さらに、仕切壁210、排出口211および注入口212をともに弁箱2に設けることも可能である。図7から図9において、先に説明した部材と同じ構成要素には同符号を付してその説明を省略する。
【符号の説明】
【0020】
1 バタフライ弁
2 弁箱
3 弁体
4 弁棒
10 シート部材
11 充填材
101 充填用溝部
102 脚部
103、210 仕切壁
104、211 排出口
105、212 注入口
106 閉止栓
200 流路
201 弁箱ボス部
202 嵌込溝
301 弁体ボス部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁体が弁箱内で弁棒の軸心廻りに回動し、弁体の外周縁に摺接する環状のシート部材を弁箱の内側面に配設したバタフライ弁において、弁箱の内側面に対向するシート部材の外側面の全周にわたって形成した充填用溝部と、充填用溝部をシート部材の幅方向に仕切る仕切壁と、充填用溝部に連通する注入口と、充填用溝部に連通し、仕切壁を隔てた両側位置のそれぞれに設ける排出口を備え、仕切壁と注入口と排出口を弁箱あるいはシート部材の何れかに設けることを特徴とするバタフライ弁。
【請求項2】
弁体が弁箱内で弁棒の軸心廻りに回動するバタフライ弁において、弁体の外周縁に摺接する環状のシート部材を弁箱の内側面に配設し、弁箱の内側面に対向するシート部材の外側面の全周にわたって形成した充填用溝部に注入口から充填材を注入しつつ、充填用溝部をシート部材の幅方向に仕切る仕切壁を隔てた両側位置の排気口からそれぞれ排気して、充填用溝部に充填材を充満させることを特徴とするバタフライ弁のシート部材の取り付け方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−163449(P2011−163449A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−27053(P2010−27053)
【出願日】平成22年2月10日(2010.2.10)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】