説明

バタフライ弁

【課題】軸封部における摩擦の原因となる摩擦面を低減し、弁体の回転に要するトルクを軽減することができるバタフライ弁を提供する。
【解決手段】弁棒4a、4bを弁箱2の弁箱ボス部201、202および弁箱内に配置するシート部材10のハブシート部11、12の貫通孔に挿入し、弁棒4a、4bと弁箱内に配置する弁体3の弁体ボス部301、302を連結固定するバタフライ弁において、ハブシート部11、12は弁棒4a、4bの周囲にあるハブ端面110、120の外周縁部を含む一部が弁体ボス部端面3a、3bと水密に摺接する環状のハブシール面19,20をなす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弁箱内に弁体を弁棒の軸心回りに回転可能に配置したバタフライ弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のバタフライ弁としては、特許文献1に記載されたものがある。これは、弁箱の内部に配置した弁箱シートの貫通孔に弁棒を挿入し、弁棒の軸心回りに回転する弁体の外周に弁箱シートに摺接する弁体シートを設けたものであり、弁棒の周囲に形成した弁体の凹部に弁体側軸封シール材を配置し、弁体側軸封シール材に摺接する弁箱側軸封シール材を弁箱シートの貫通孔に配置している。
【0003】
弁箱側軸封シール材は弁体側軸封シール材より大径であり、弁箱側軸封シール材のシール面に弁体側軸封シール材のシール面より広い拡張シール部を設けており、弁体シートには拡張シール部に摺接する平坦面を形成し、弁体シートの平坦面と弁体側軸封シール材のシール面とを同一平面レベルに形成したものである。
【0004】
そして、弁箱側軸封シール材のシール面には、拡張シール部より内側の部位に弁体側軸封シール材のシール面との摩擦を軽減するために四フッ化エチレン樹脂のコーティング部を設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−56721号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した従来の構成は、四フッ化エチレン樹脂のコーティング部により弁箱側軸封シール材のシール面と弁体側軸封シール材のシール面との摩擦を軽減するものではあるが、弁箱側軸封シール材のシール面と弁体側軸封シール材のシール面とは全面的に摺接するので、弁体の回転に要するトルクの軽減が十分とはいえない。
【0007】
本発明は、軸封部における摩擦の原因となる摩擦面を低減し、弁体の回転に要するトルクを軽減することができるバタフライ弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明のバタフライ弁は、弁棒を弁箱の弁箱ボス部および弁箱内に配置するシート部材のハブシート部の貫通孔に挿入し、弁棒と弁箱内に配置する弁体の弁体ボス部を連結固定するバタフライ弁において、ハブシート部は弁棒の周囲にあるハブ端面の外周縁部を含む一部が弁体ボス部端面と水密に摺接する環状のハブシール面をなすことを特徴とする。
【0009】
また、本発明のバタフライ弁において、ハブシール面は内径がハブシート部の貫通孔の内径より大きい形状をなすことを特徴とする。
また、本発明のバタフライ弁において、ハブシート部は弁棒の周囲にあるハブ端面の内周縁部を含む一部が弁体ボス部端面と摺接する環状の突条部をなすことを特徴とする。
【0010】
また、本発明のバタフライ弁において、突条部は内径がハブシート部の貫通孔の内径に等しく、突条部が内周面で弁棒の外周面と摺接することを特徴とする。
また、本発明のバタフライ弁において、突条部は弁棒の軸心に沿った断面において弁体ボス部端面に向けて先細る形状をなすことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
以上のように本発明によれば、シート部材のハブシート部は弁体ボス部端面に対向するハブ端面の一部がハブシール面をなすことで、ハブシール面によって弁棒の周囲をシールしつつ、軸封部における摩擦の原因となるハブシール面と弁体ボス部端面との摩擦面を低減し、弁体の回転に要するトルクを軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態におけるバタフライ弁に設けられたシート部材のハブシート部の拡大断面図
【図2】同バタフライ弁の正面から見た断面図
【図3】同バタフライ弁に設けられたシート部材の周縁シート部の拡大断面図
【図4】同バタフライ弁に設けられるシート部材の一部切欠き正面図
【図5】図4におけるX−X矢視図
【図6】同バタフライ弁に設けられるシート部材のハブシート部の拡大断面図
【図7】本発明の他の実施の形態におけるバタフライ弁に設けられるシート部材のハブシート部の拡大断面図
【図8】本発明の他の実施の形態におけるバタフライ弁に設けられるシート部材のハブシート部の拡大断面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明における実施の形態を図面に基づいて説明する。図1〜図3に示すように、バタフライ弁1は弁箱2の内部に弁体3を配置し、弁体3を一対の弁棒4a、4bに連結固定している。
【0014】
弁箱2は円筒状の部材からなり、内部に流路6を有しており、弁箱2の一側の弁箱ボス部201および他側の弁箱ボス部202は流路軸心6aに直交する方向に貫通する弁棒挿入孔7a、7bを有している。
【0015】
一側の弁棒4aは一側の弁箱ボス部201の弁棒挿入孔7aに挿入し、他側の弁棒4bは他側の弁箱ボス部202の弁棒挿入孔7bに挿入しており、弁体3は一側の弁棒4aおよび他側の弁棒4bとともに回転軸心8廻りに回転自在である。
【0016】
図2に示すように、弁体3は円盤状をなし、一側の弁棒4aを挿入する一側の弁体ボス部301および他側の弁棒4bを挿入する他側の弁体ボス部302を有している。一側の弁体ボス部301および他側の弁体ボス部302は、弁体3の回転軸心8方向の端部に、それぞれ平坦な円形状の弁体ボス部端面3a、3bを有している。他側の弁棒4bには、自動又は手動により弁棒4bに回転力を付与する回転駆動装置(図示省略)を接続する。
【0017】
弁箱2の内面にはゴム等の弾性材からなるシート部材10を設けている。図4、図5に示すように、シート部材10は、一側の弁棒4aを挿入する一側のハブシート部11と、他側の弁棒4bを挿入する他側のハブシート部12と、一側のハブシート部11および他側のハブシート部12と一体的に形成し、弁体3の外周縁に圧接する円弧状の一対の周縁シート部13、14とを有している。
【0018】
一側のハブシート部11および他側のハブシート部12はそれぞれ円筒形状をなし、図1、図6に示すように、一側のハブシート部11は一側の弁棒挿入孔7aに形成したハブシート挿入部9aに挿入し、他側のハブシート部12は他側の弁棒挿入孔7bに形成したハブシート挿入部9bに挿入してある。
【0019】
一側のハブシート部11は一側の弁体ボス部301の弁体ボス部端面3aに対向する一側のハブ端面110を有し、一側のハブ端面110は一側の弁棒4aの周囲にあってハブ端面110の外周縁部を含む一部が弁体ボス部端面3aと水密に摺接する環状のハブシール面19をなしている。同様に、他側のハブシート部12の他側のハブ端面120は、ハブ端面120の外周縁部を含む一部が他側の弁体ボス部302の弁体ボス部端面3bと水密に摺接する環状のハブシール面20をなしている。ハブシール面19、20は一側のハブ端面110および他側のハブ端面120の何れの位置にも設けることが可能であるが、ここでは一側のハブ端面110および他側のハブ端面120の外周縁部が全周にわたりハブシール面19、20をなす。
【0020】
ハブシート部11、12は弁棒4a、4bを挿入する貫通孔をなす内周空間部27を有し、ハブシール面19、20はその内径がハブシート部11、12の内周空間部27の内径より大きい形状をなす。
【0021】
また、一側のハブシート部11は、弁体ボス部端面3aと摺接する凸部111または弁体ボス部端面3aと非接触の凹部112を一側のハブ端面110に有しており、同様に他側のハブシート部12は、弁体ボス部端面3bと摺接する凸部121または弁体ボス部端面3aと非接触の凹部122を他側のハブ端面120に有している。凸部111、121および凹部112、122は格子状等のように不連続に形成することも可能であるが、ここでは弁棒4a、4bの周囲に環状に形成してある。
【0022】
図3に示すように、弁箱2の内周面には凹形状の嵌込溝15が形成してあり、両周縁シート部13、14はそれぞれ嵌込溝15に嵌め込む一対の脚部16を有している。また、両周縁シート部13、14の外周面にはそれぞれ、凹溝17が周縁シート部13、14の長手方向に沿って形成してある。凹溝17は一対の脚部16間に位置しており、凹溝17には、硬化性樹脂(例えばエポキシ樹脂)等からなる充填剤18を充填している。
【0023】
一側のハブシート部11には充填剤注入孔23が二個形成してある。各充填剤注入孔23の一端はそれぞれハブシート部11の内周面(ハブシート部の表面の一例)に開口し、各充填剤注入孔23の他端はそれぞれ各周縁シート部13、14の凹溝17に連通(開口)している。各充填剤注入孔23は凹溝17側からハブシート部11の内周面側に向かうほど径が増大する円錐形状に形成してある。各充填剤注入孔23は、回転軸心8の方向において、ハブシール面19よりも下側に位置している。
【0024】
本実施の形態では、充填剤注入孔23をハブシート部11に設けているが、充填剤注入孔23は弁箱2に設けることも可能である。
他側のハブシート部12には空気排出孔25が二個形成してある。各空気排出孔25の一端はそれぞれ他側のハブシート部12の内周面(ハブシート部の表面の一例)に開口し、各空気排出孔25の他端はそれぞれ各周縁シート部13、14の凹溝17に連通(開口)している。各空気排出孔25は凹溝17側からハブシート部12の内周面側に向かうほど径が増大する円錐形状に形成してある。各空気排出孔25は、回転軸心8の方向において、ハブシール面20よりも上側に位置している。
【0025】
尚、充填剤注入孔23と空気排出孔25とにはそれぞれ閉止栓26(閉止部材の一例)が挿入してある。
以下、上記構成における作用を説明する。バタフライ弁1を組み立てる際、シート部材10のハブシート部11、12をハブシート挿入部9a、9bに挿入するとともに、周縁シート部13、14の脚部16を嵌込溝15に嵌め込んで、シート部材10を弁箱2の内面に設ける。
【0026】
次に、充填剤18を両充填剤注入孔23から両周縁シート部13、14の凹溝17内に注入するとともに、凹溝17内の空気28を両空気排出孔25から他側のハブシート部12の内周空間部27へ排出する。これにより、充填剤18が、両充填剤注入孔23を通って周縁シート部13、14の凹溝17内に流れ込み、空気の巻き込みを抑えながら凹溝17内に充填される。
【0027】
次に、図6に示すように、充填剤注入孔23と空気排出孔25とに閉止栓26を挿入して、これら充填剤注入孔23と空気排出孔25とを閉止する。凹溝17内の充填剤18が硬化することにより、周縁シート部13、14は弁箱2に確実に固定される。
【0028】
次に、弁体3を弁箱2内に挿入して両ハブシート部11、12間に配置し、一側の弁棒4aを一側の弁棒挿入孔7aに挿入するとともに、ハブシート部11の貫通孔27を通して弁体3に連結し、他側の弁棒4bを他側の弁棒挿入孔7bに挿入するとともに、ハブシート部12の貫通孔27を通して弁体3に連結する。
【0029】
上記のようにしてバタフライ弁1を組み立てた後、弁棒4a、4bを回転させることにより、弁体3が回転軸心8周りに回動して、弁箱2内の流路6が開閉される。
図1に示すように、一側のハブシート部11のハブシール面19が弁体3の一側の弁体ボス部端面3aに圧接しているため、一側のハブシート部11と弁体3との間がハブシート部11の全周にわたりシールされる。同様に、他側のハブシート部12のハブシール面20が弁体3の他側の弁体ボス部端面3bに圧接しているため、他側のハブシート部12と弁体3との間がハブシート部12の全周にわたりシールされる。
【0030】
このように、シート部材10のハブシート部11、12は弁体ボス部端面3a、3bに対向するハブ端面110,120の一部がハブシール面19、20をなすことで、ハブシール面19、20によって弁棒4a、4bの周囲をシールしつつ、軸封部における摩擦の原因となるハブシール面19、20と弁体ボス部端面3a、3bとの摩擦面を低減することができ、弁体3の回転に要するトルクを軽減することができる。
【0031】
また、ハブシート部11、12は、弁体ボス部端面3a、3bに摺接する凸部111、121がハブシート部11、12を支えることでその変形を防止でき、弁体ボス部端面3aと非接触の凹部112の存在により摩擦面の低減によるトルクの軽減を図れる。
【0032】
また、凸部111、121が弁棒4a、4bを囲んで環状をなすことで、シール効果を果すことができ、ハブシール面19、20とにより多重シール機能を実現できる。
上記各実施の形態では、図5に示すように、ハブシート部11、12と周縁シート部13、14とを一体構造に形成しているが、ハブシート部11、12と周縁シート部13、14とを分離して別体構造に形成してもよい。
【0033】
図7は本発明の他の実施の形態を示すものであり、先の実施の形態における構成要素と同様のものには同符号を付してその説明を省略する。図7において、ハブシート部11、12は弁棒4a、4bの周囲にあるハブ端面110、120の内周縁部を含む一部が弁体ボス部端面3a、3bと水密に摺接する環状の突条部118、128をなす。突条部118、128は内径がハブシート部11、12の内周空間部(貫通孔)27の内径に等しく、突条部118、128が内周面で弁棒4a、4bの外周面と水密に摺接する。突条部118、128は弁棒4a、4bの軸心に沿った断面において弁体ボス部端面3a、3bに向けて先細る形状をなす。図8に示すように、突条部118、128は凸部111、121と併設することも可能である。
【0034】
この構成により、ハブシール面19、20のシール性が何かの原因により損なわれた場合にあっても、突条部118、128が弁体ボス部端面3a、3bおよび弁棒4a、4bと水密に摺接することでシール性を確保することが可能であり、さらにハブシール面19、20と突条部118、128の間に侵入する流体の圧力より突条部118、128の内周面が弁棒4a、4bの外周面に押圧されてシール性(自己止水性)が高まる。この際に、突条部118、128は弁棒4a、4bの軸心に沿った断面において弁体ボス部端面3a、3bに向けて先細る形状をなすことで可撓性が高く、流体の圧力により突条部118、128が確実に弁棒4a、4bに押圧される。
【符号の説明】
【0035】
1 バタフライ弁
2 弁箱
3 弁体
3a、3b 弁体ボス部端面
4a、4b 弁棒
10 シート部材
11、12 ハブシート部
13、14 周縁シート部
17 凹溝
18 充填剤
19、20 ハブシール面
23 充填剤注入孔
25 空気排出孔
27 貫通孔
110、120 ハブ端面
111、121 凸部
112、122 凹部
118、128 突条部
201、202 弁箱ボス部
301、302 弁体ボス部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁棒を弁箱の弁箱ボス部および弁箱内に配置するシート部材のハブシート部の貫通孔に挿入し、弁棒と弁箱内に配置する弁体の弁体ボス部を連結固定するバタフライ弁において、ハブシート部は弁棒の周囲にあるハブ端面の外周縁部を含む一部が弁体ボス部端面と水密に摺接する環状のハブシール面をなすことを特徴とするバタフライ弁。
【請求項2】
ハブシール面は内径がハブシート部の貫通孔の内径より大きい形状をなすことを特徴とする請求項1に記載のバタフライ弁。
【請求項3】
ハブシート部は弁棒の周囲にあるハブ端面の内周縁部を含む一部が弁体ボス部端面と摺接する環状の突条部をなすことを特徴とする請求項1または2に記載のバタフライ弁。
【請求項4】
突条部は内径がハブシート部の貫通孔の内径に等しく、突条部が内周面で弁棒の外周面と摺接することを特徴とする請求項3に記載のバタフライ弁。
【請求項5】
突条部は弁棒の軸心に沿った断面において弁体ボス部端面に向けて先細る形状をなすことを特徴とする請求項4に記載のバタフライ弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−163450(P2011−163450A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−27054(P2010−27054)
【出願日】平成22年2月10日(2010.2.10)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】