説明

バタフライ弁

【課題】弁体の弁座との接触部位のエロージョンを効果的に抑制できること。
【解決手段】流体Aが流れる円筒形状の弁箱11内に、弁棒15を介して弁体12が回動自在に配置されると共に、全閉位置にある弁体12が接触する弁座13が設けられたバタフライ弁10において、弁箱11内には、全開位置にある弁体12の上流側に、流体Aを整流する整流部材14が配置されたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バタフライ弁に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、管路においては、流体を遮断するためにバタフライ弁が設けられている。例えば、火力発電所におけるボイラー給水ポンプ駆動用蒸気タービンから復水器へ蒸気を移送する配管、または原子力発電所における原子炉給水ポンプ駆動用蒸気タービンから復水器へ蒸気を移送する配管等にバタフライ弁が設けられている。
【0003】
従来のバタフライ弁としては、弁体における弁座との接触部位にエロージョンの発生を抑制することを目的としたものはなく、弁絞り時(微小または中間開度時)におけるキャビテーションの発生を抑制することを目的とした構造のバタフライ弁が、従来から知られていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−82758号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、バタフライ弁において、全開時に弁体における弁座との接触部位が水滴を含む高速蒸気に晒されている。このため、この全開時に弁体における弁座との接触部位にエロージョンが発生して、全閉時に弁体と弁座との間に隙間が生じ、これにより、弁としての機能が低下する場合があった。弁としての機能が低下することは、バタフライ弁にとって甚大な課題であった。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、弁体の弁座との接触部位のエロージョンを効果的に抑制できるバタフライ弁を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態のバタフライ弁は、流体が流れる筒形状の弁箱内に、弁棒を介して弁体が回動可能に配設されると共に、全閉位置にある前記弁体が接触する弁座が設けられたバタフライ弁において、前記弁箱内には、全開位置にある前記弁体の上流側に、流体を整流する整流部材が配置されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、弁体の弁座との接触部位のエロージョンを効果的に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1実施形態のバタフライ弁の全閉状態を示し、(A)は側断面図、(B)は図1(A)のI−I線に沿う断面図。
【図2】図1のバタフライ弁の全開状態を示し、(A)は側断面図、(B)は図2(A)のII−II線に沿う断面図。
【図3】第2実施形態のバタフライ弁の全閉状態を示し、(A)は側断面図、(B)は図3(A)のIII−III線に沿う断面図。
【図4】図3のバタフライ弁の全開状態を示し、(A)は側断面図、(B)は図4(A)のIV−IV線に沿う断面図。
【図5】第3実施形態のバタフライ弁の全閉状態を示し、(A)は側断面図、(B)は図5(A)のV−V線に沿う断面図。
【図6】図5のバタフライ弁の全開状態を示し、(A)は側断面図、(B)は図6(A)のVI−VI線に沿う断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための実施形態を図面に基づき説明する。
【0011】
[A]第1実施形態(図1、図2)
図1は、第1実施形態のバタフライ弁の全閉状態を示し、(A)が側断面図、(B)が図1(A)のI−I線に沿う断面図である。図2は、図1のバタフライ弁の全開状態を示し、(A)が側断面図、(B)が図2(A)のII−II線に沿う断面図である。
【0012】
これらの図1及び図2に示すバタフライ弁10は、管路において、流体Aの流れを主に遮断するために設置されたものであり、弁箱11、弁体12、弁座13、及び整流部材としての整流板14を有して構成される。
【0013】
弁箱11は、円筒形状に構成されて内側に流路18が形成され、両端に図示しない管路が接続される。弁箱11の流路18内に、流体A(例えば水滴を含む高速蒸気など)が流動する。
【0014】
弁体12は、弁箱11の流路18内に配置され、この弁箱11の内周面の形状に対応して円板形状に形成されている。そして、この弁体12は、弁棒15を介して回動可能に設けられる。この弁体12が弁棒15と共に回動することで、バタフライ弁10が全閉状態(図1)または全開状態(図2)となる。
【0015】
弁座13は、リング形状に形成されて弁箱11の内周面に配設(例えば嵌装)される。この弁座13に、全閉位置にある弁体12が接触して、バタフライ弁10の全閉状態が保持される。この弁体12は、全閉位置にあるときに、その外周縁12Aが弁座13に接触する。従って、弁体12の外周縁12Aが、弁座13に接触する接触部位として機能する。
【0016】
整流部材14は、弁箱11の流路18内で弁体12の上流側に、弁箱11の直径方向に延在して配置されて、流体Aの流れを整流する。更に、この整流板14は、図2に示すように、全開位置にある弁体12の外周縁12A(特に外周縁12Aのうち流体Aの流れの上流側に位置する部分)に対向する位置に位置付けられて配置される。このようにして、流体Aが整流板14に遮られて、弁体12の外周縁12Aにおける上流側部分に直接衝突することが防止される。
【0017】
また、整流板14は、その上流側部分16が流線形状に形成されて、整流板14の設置による流体Aの流れの抵抗が低減される。更に、この整流板14は、下流側部分としての下流面17が、図2に示すように、全開位置にある弁体12の外周縁12Aにおける上流側部分に対向し、この上流側部分を覆うように形成されている。これにより、バタフライ弁10の全開時に、弁体12の外周縁12Aにおける上流側部分と整流板14との隙間が低減される。
【0018】
以上のように構成されたことから、本実施形態によれば、次の効果(1)〜(3)を奏する。
【0019】
(1)弁箱11の流路18内には、弁体12の上流側で、全開位置にある弁体12の弁座13との接触部位(つまり弁体12の外周縁12A)に対向する位置に整流板14が配置されている。このため、図2に示すように、弁箱11の流路18内を高速で流れる流体A(例えば水滴を含む高速蒸気)が整流板14に遮られて、全開位置にある弁体12の外周縁12Aにおける上流側部分に直接衝突することを防止できる。この結果、弁体12の弁座13における上流側部分のエロージョンを効果的に抑制でき、バタフライ弁10の全閉時における機能の低下を抑制することができるので、バタフライ弁10の信頼性を向上できる。
【0020】
(2)整流板14は、その上流側部分16が流線形状に形成されたので、整流板14の設置によっても流体Aの流れの抵抗を低減でき、従って、整流板14の設置による流体Aの圧力損失を低減できる。
【0021】
(3)整流板14における下流面17が、全開位置にある弁体12の外周縁12Aにおける上流側部分を覆うように形成されている。このため、図2に示すバタフライ弁10の全開時に、弁体12の外周縁12Aにおける上流側部分と整流板14との隙間を減少できるので、この隙間により発生する渦を低減でき、乱流の発生を抑制することができる。
[B]第2実施形態(図3、図4)
【0022】
図3は、第2実施形態のバタフライ弁の全閉状態を示し、(A)が側断面図、(B)が図3(A)のIII−III線に沿う断面図である。この第2実施形態において、前記第1実施形態と同様な部分については、同一の符号を付すことにより説明を簡略化し、または省略する。
【0023】
本実施形態のバタフライ弁20が前記第1実施形態のバタフライ弁10と異なる点は、整流板14に第1保護部材21が回動自在に設けられると共に、第2保護部材22が固定して取り付けられた点である。
【0024】
第1保護部材21は、図3(B)及び図4(B)に示すように、弁箱11の内周面の形状に対応して半円板形状に形成され、その弦の部分が整流板14の上面に、ヒンジ等の枢支手段23を用いて枢支されて、回動自在に設けられる。そして、この第1保護部材21は、弁体12の開閉動作に連動して回動する。
【0025】
つまり、弁体12が矢印P(図3)方向に回動する開弁動作時には、弁体21は、流体Aの流れによる圧力と自身に作用する重力によって閉じ方向に回動する。また、弁体12が矢印Q(図4)方向に回動する閉弁動作時には、第1保護部材21は、この回動する弁体12からの力によって開き方向に回動する。
【0026】
第1保護部材21は、閉じ方向または開き方向に回動する過程で(即ち、弁体12の開弁または閉弁動作時に)、弁体12の外周縁12Aにおける上流側部分を覆って流体Aの流れから保護する。また、第1保護部材21は、弁体12が全開して(図4)閉じた状態にあるときには、この全開位置にある弁体12と整流板14との隙間を覆うように構成される。
【0027】
第2保護部材22は、弁箱11の直径方向に整流板14に沿って延び、例えば長方形状に形成される。この第2保護部材22は、弁体12が全開した状態にあるときに(図4)、この全開位置にある弁体12と整流板14との隙間を、第1保護部材21とは反対側から覆うよう構成されている。
【0028】
以上のように構成されたことから、本実施形態によれば、前記第1実施形態の効果(1)〜(3)と同様な効果を奏するほか、次の効果(4)及び(5)を奏する。
【0029】
(4)第1保護部材21は、弁体12の開閉動作時に、この弁体12の外周縁12Aにおける上流側部分を覆って、この上流側部分を流体Aの流れから保護する。従って、弁体12の開閉動作時においても、この弁体12の外周縁12Aにおける上流側部分のエロージョンを抑制でき、バタフライ弁10の全閉時における機能を保つことができる為、その信頼性を更に向上させることができる。
【0030】
(5)弁体12が全開位置にあるときには、第1保護部材21及び第2保護部材22が弁体12と整流板14との隙間を両側から覆うことから、この隙間に渦が発生することを低減でき、この結果、乱流の発生を抑制することができる。
【0031】
[C]第3実施形態(図5、図6)
図5は、第3実施形態のバタフライ弁の全閉状態を示し、(A)が側断面図、(B)が図5(A)のV−V線に沿う断面図である。この第3実施形態において、前記第1実施形態と同様な部分については、同一の符号を付すことにより説明を簡略化し、または省略する。
【0032】
本実施形態のバタフライ弁30が前記第1実施形態のバタフライ弁10と異なる点は、弁箱11の流路18内における弁体12の上流側に、整流板14の他に、流体Aを整流させる複数枚の副整流板31が配置された点である。
【0033】
これらの副整流板31は、整流板14と平行に弁箱11の直径方向に延在し、互いに平行に配列される。これらの副整流板31の配置によって、弁箱11の流路18内における弁体12の上流側の流体Aの流れが、整流板14のみの場合に比べてより整流されることになる。また、各副整流板31の上流側部分32は流線形状に形成されて、副整流板31の設置による流体Aの流れの抵抗が低減される。
【0034】
以上のように構成されたことから、本実施形態によれば、前記第1実施形態の効果(1)〜(3)と同様な効果を奏するほか、次の効果(6)及び(7)を奏する。
【0035】
(6)弁箱11の流路18内における弁体12の上流側に、整流板14と複数枚の副整流板31が平行に配列して設置されたことから、弁体12が全開位置にあるバタフライ弁10の全開時に(図6)、弁体12の上流側における流体Aの流れを、整流板14のみの場合に比べてより一層整流化できる。このため、弁体12の外周縁12Aにおける、整流板14の下流面17に対向する上流側部分に流体Aが回り込んで衝突することを低減することができるので、この上流側部分のエロージョンを抑制することができる。この結果、バタフライ弁10の全閉時における機能の低下を抑制することができるので、その信頼性を向上できる。
【0036】
(7)複数枚の副整流板31の上流側部分32が流線形状に形成されたので、これら副整流板31の設置によっても流体Aの流れの抵抗を低減できる。このため、副整流板31の設置による流体Aの圧力損失を低減できる。
【0037】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。例えば、第2実施形態と第3実施形態を組み合わせ、第2実施形態のバタフライ弁20における整流板14と平行に複数枚の副整流板31を、弁箱11における弁体12の上流側に配置してもよい。
【符号の説明】
【0038】
10 バタフライ弁
11 弁箱
12 弁体
12A 外周縁(接触部位)
13 弁座
14 整流板(整流部材)
15 弁棒
16 上流側部分
17 下流面(下流側部分)
20 バタフライ弁
21 第1保護部材
22 第2保護部材
30 バタフライ弁
31 副整流板(副整流部材)
32 上流側部分
A 流体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が流れる筒形状の弁箱内に、弁棒を介して弁体が回動可能に配設されると共に、全閉位置にある前記弁体が接触する弁座が設けられたバタフライ弁において、
前記弁箱内には、全開位置にある前記弁体の上流側に、流体を整流する整流部材が配置されたことを特徴とするバタフライ弁。
【請求項2】
前記整流部材は、全開位置にある弁体の弁座との接触部位に対向する下流側部分が、前記接触部位を覆うように形成されたことを特徴とする請求項1に記載のバタフライ弁。
【請求項3】
前記整流部材には、弁体の開閉動作に連動して回動する第1保護部材が設けられ、この第1保護部材が、前記弁体の開閉動作時にこの弁体の弁座との接触部位を覆い、且つ前記弁体の全開位置でこの弁体と整流部材との隙間を覆うよう構成されたことを特徴とする請求項1に記載のバタフライ弁。
【請求項4】
前記整流部材には、全開位置にある弁体と整流部材との隙間を覆う第2保護部材が固定して取り付けられたことを特徴とする請求項1に記載のバタフライ弁。
【請求項5】
前記弁箱内の弁体の上流側には、整流部材と平行に、流体を整流する複数の副整流部材が互いに平行に配列されたことを特徴とする請求項1に記載のバタフライ弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−225469(P2012−225469A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−95465(P2011−95465)
【出願日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】