説明

バチルス・リケニフォルミス(BacillusLicheniformis)アルファ−アミラーゼの改善された変異種

B・リケニフォルミスα-アミラーゼの変異種は向上した酵素機能を示す利点をもつ。適した変異種はこの酵素表面の電荷分布が変わっているもの、または活性部位残基が変わっているものを含む。構造的モデリングは、例えば、修飾を受けるアミノ酸が、より活性なアルファアミラーゼに見出された残基に対応するようなアミノ酸修飾の選択につて情報を提供することができる。この変異種を含む組成物は表面の洗浄、織物の洗濯、糊の除去、デンプンの加工(例えば液化と糖化)及び種々の基体からバイオフィルムを加水分解して除去する方法に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
配列表
SEQ ID NO: 1-30を含む配列表も添付されているが、これらは引用により全てが組み入れられる。
【0002】
発明の分野
アミラーゼ活性をもつポリペプチドをコードする核酸が開示され、このポリペプチドはバチルスα-アミラーゼ、特にバチルス・リケニフォルミスα-アミラーゼの修飾を受けた形である。
【技術背景】
【0003】
デンプンはアミロース(15-30% w/w)とアミロペクチン(70-85%w/w)の混合物からなる。アミロースは、約60,000から約800,000の分子量(MW)をもつα-1,4-結合したグルコース単位の直鎖からなる。アミロペクチンは同じ1,4-結合したグルコース単位と24-30個のグルコース単位ごとにα-1,6結合の分岐を含む分岐したポリマーである。そのMWは1億もの大きさになり得る。
【0004】
デンプンからの糖は、濃縮されたデキストロースシロップの形で現在、以下を含む酵素触媒的工程により生産されている。(1)α-アミラーゼにより固体デンプンを液化(低粘ちょう化)し約7-10の平均重合度をもつデキストリンにする工程(2)アミログルコシダーゼ(またはグルコアミラーゼと呼ばれる)による得られた液化されたデンプン(つまりデンプンの加水分解物)の糖化。この得られたシロップは高いグルコース含量をもつ。商業的に生産されているグルコースシロップの多くは続いて酵素的に異性化されイソシロップとして知られるデキストロース/フルクトースの混合物となる。
【0005】
α-アミラーゼ(EC3.2.1.1)はデンプン、グリコーゲン、及び関連する多糖類を無作為に内部α-1,4-グルコシド結合を開裂することにより加水分解する。これらの酵素は、製紙及びパルプ工業、穀物加工、ベーキング及び醸造においてデンプンの液化、織物の糊除去、デンプンの修飾等の多くの重要な商業的用途をもつ。α-アミラーゼはまた、洗浄中にデンプン性の汚れを除くため、自動皿洗用洗剤と漂白剤を含むもの等の洗濯用洗剤調合剤でも使用できる。
【0006】
α-アミラーゼは種々の細菌、菌類、植物及び動物源から単離される。多くの産業的に重要なα-アミラーゼはバチルス属の種、例えば、バチルス・リケニフォルミスから単離される。これは一部、バチルス属のアミラーゼを培地へ分泌する高い能力による。
【0007】
B・リケニフォルミス α-アミラーゼは経済的に生産できるが、この酵素は、たとえB・リケニフォルミス α-アミラーゼが他のα-アミラーゼと大きな構造的相同性を共有している場合でも、ある用途では他のα-アミラーゼのように十分に機能しない。従って、特に洗剤調合剤又は他の洗浄剤調合剤に調合される場合、より高い性能をもつB・リケニフォルミスα-アミラーゼ変異種が必要とされている。
【発明の概要】
【0008】
洗浄剤調合剤において比較的高い性能をもつB・リケニフォルミスα-アミラーゼの変異種が提供されている。これらのB・リケニフォルミスα-アミラーゼの変異種は、α-アミラーゼを使用する種々の組成物と製造工程で使用できる。
【0009】
SEQIDNO:1の変異種をコードする単離された核酸を提供することが目的であり、ここでこの変異種はSEQIDNO:1と比較して少なくとも1個のアミノ酸置換、挿入又は欠失を含み、かつコードされた変異種がα-アミラーゼ活性を有するものである。(Van den Elzen, P. , Pen,J., Hoekema,A., Sijmons,P.C., Van, Ooyen,A.J.J., Rietveld,K. and Quax, W., Transgenic plants having a modified carbohydrate content Patent: EP 0479359-A 1992年4月8日;GIST-BROCADES N.V.;MOGEN INTERNATIONAL N.V)
【0010】
この少なくとも1個のアミノ酸置換、挿入または欠失が、SEQ ID NO:2で表されるバチルス属の種第707のα-アミラーゼのアミノ酸残基に対応するアミノ酸残基を含むコードされた変異種となっても良い。(Tsukamoto,A., Kimura,K., Ishii,Y.,Takano,T. and Yamane,K., Nucleotide sequence of the maltohexaose-producing amylase gene from an alkalophilic Bacillus sp. #707 and structural similarity to liquefying type alpha-amylases Biochem. Biophys. Res.Commun.151(1),25-31(1988))
【0011】
この少なくとも1個のアミノ酸の置換、挿入又は欠失はこのコードされた変異種の表面の荷電した残基、又は活性部位のアミノ酸残基に行われても良い。一実施態様では、この少なくとも1個のアミノ酸の置換、挿入、又は欠失は、位置1の残基以外のアミノ酸残基に行われても良い。この変異種は残基2-105の、及び208-396のドメインA、残基106-207のドメインB、及び残基397からC末端までのドメインCを含んでも良い。
【0012】
この変異種は少なくとも1個のアミノ酸置換、挿入又は欠失をドメインA,B又はCに含んでも良い。この変異種は少なくとも2個、少なくとも5個、少なくとも10個、11-30に又は11-70にアミノ酸置換、挿入又は欠失を有しても良い。アミノ酸置換、挿入又は欠失の総数は1から30、又は1から50、又は1から70、またはその間の整数個でも良い。いくつかの実施態様では、この変異種はSEQ IDNO:3-15(SEQ ID NO.3 は変異種の親配列)のアミノ酸配列の一つをもつ。この変異種は以下のアミノ酸置換、挿入または欠失の1以上を含んでも良い。:K23N; Q26R; A33K; T49A; A52N; H68N; E82Q; K88N; H91K;R93N;D94G;D114L;T116R;D121N;A123N;D124N;R127Q;V128E;I129V;H133Y;L134T;K136E;H140Y;H142D;S148N;Y150H;D152N;H156R;T163V;E167Q;K170R;172位でのNの挿入、Q178R; A181G; S187D; N188T;N190F;K213R;R214N;E222T;F238Y;E250S;K251A;E255N;Y262F;Q264K;H293Y;T297K;R305Q;K306N;K319H;G332E;Q333E;S334A;Q340E;T341E;369-377の残基のTKGDSQREIからIPTHGV---への置換と欠失、(ここでハイフンは欠失を示す);K389E;K392Q;Q393K;A398R;H400N;D416N;V419H;R437W;N444K;E447Q;H450S;E458G;E469N;又はH471S。
【0013】
別の目的は上記の核酸を含む宿主細胞を与えることである。上記の核酸を含むベクターもまた、このベクターを含む宿主細胞とともに提供される。この宿主細胞は細菌又は菌類を非限定的に含む微生物でも良い。この細菌宿主細胞は、バチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)、B・リケニフォルミス(B.licheniformis)、B・レンツス(B.lentus)、B・ブレビス(B.brevis)、B・ステアロサーモフィラス(B.stearothermophilus)、B.アルカロフィルス(B.alkalophilus)、B・アミロリケファシエンス(B.amyloliquefaciens)、B・コアグランス(B.coagulans)、B・サーキュランス(B.circulans)、B・ラウツス(B.lautus)、B・スリンギエンシス(B.thuringiensis)、ストレプトマイセス・リビダンス(Streptomyces lividans)又はS・ムリヌス(S.murinus);又はグラム陰性菌(グラム陰性菌は大腸菌(Escherichia coli)又はシュードモナス属の種である)
【0014】
別の目的は、以下を含むB・リケニフォルミスα-アミラーゼ変異種を作成する方法を提供することである。:(1) 野生型B.リケニフォルミスα-アミラーゼの構造を、その野生型B.リケニフォルミスα-アミラーゼと比較して少なくとも一の好ましい性質をもつモデルα-アミラーゼと比較し
;(2) モデルα-アミラーゼとの間で構造が保存されるべき野生型B.リケニフォルミスα-アミラーゼの少なくとも一のアミノ酸または構造領域を特定し
(3) 上記(2)で同定されたアミノ酸残基又は構造領域で修飾されている、野生型B・リケニフォルミスα-アミラーゼの変異種を構築する。及び(4) 当該変異種に少なくとも一の好ましい性質が与えられているか否かを決定するために、当該変異種を試験し、この変異種は野生型のB・リケニフォルミスα-アミラーゼと比較して少なくとも1個の性質が変わっていることを確かめる。一実施態様では、このモデルα-アミラーゼはバチルス属の種第707α-アミラーゼである。
【0015】
別の目的は、上記の変異種を含む手洗い用又は自動用皿洗い組成物を提供することである。この手洗い用又は自動用皿洗い組成物はさらに、界面活性剤、洗剤助剤、錯体形成剤、ポリマー、漂白剤系、安定剤、発泡促進剤、発泡抑制剤、腐食防止剤、汚れ懸濁剤、汚れ再沈着防止剤、染料、殺菌剤、ヒドロトロープ、変色防止剤及び香料のうち一以上を含んでも良い。皿の洗浄方法は皿を洗浄するために十分な時間、手洗い用又は自動用皿洗い組成物を使用することを含む。
【0016】
別の目的は上記の変異種を含む洗剤添加剤を提供することである。この洗剤添加剤を含む洗濯洗剤はさらに界面活性剤、洗剤助剤、錯体形成剤、ポリマー、漂白系、安定剤、発泡促進剤、発泡抑制剤、腐食防止剤、汚れ懸濁剤、汚れ再付着防止剤、染料、殺菌剤、ヒドロトロープ、光学的増白剤、布地柔軟剤及び香料のうち一以上を含んでも良い。この洗剤添加剤は洗濯又は皿洗いに用いられても良い。この洗剤添加剤は、任意に粉塵を発生しない顆粒、微小顆粒、安定化された液体、または保護された酵素の形態でも良い。この洗剤添加剤はさらにセルラーゼ、プロテアーゼ、アミノペプチダーゼ、アミラーゼ、カーボヒドラーゼ、カルボキシペプチダーゼ、カタラーゼ、キチナーゼ、クチナーゼ、シクロデキストリングルカノトランスフェラーゼ、デオキシリボヌクレアーゼ、エステラーゼ、α-ガラクトシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、α-グルコシダーゼ、β-グルコシダーゼ、ハロペルオキシダーゼ、インベルターゼ、ラッカーゼ、リパーゼ、マンノシダーゼ、酸化酵素、ペクチン分解酵素、ペプチドグルタミナーゼ、ペルオキシダーゼ、フィターゼ、ポリフェノール酸化酵素、タンパク質分解酵素、リボヌクレアーゼ、トランスグルタミナーゼ、キシラナーゼ、プルラナーゼ、イソアミラーゼ、カラギナーゼ、またはそれらの組合せからなる群から選択される酵素を含んでも良い。このアミラーゼは別のα−アミラーゼ、β−アミラーゼ、イソアミラーゼ又はグルコアミラーゼでも良い。
【0017】
上記の洗剤添加剤又は上記の変異種を含む洗剤組成物を提供することが更なる目的である。この洗剤組成物はさらに以下からなる群から選択される酵素を含んでも良い。セルラーゼ、プロテアーゼ、アミノペプチダーゼ、アミラーゼ、カーボヒドラーゼ、カルボキシペプチダーゼ、カタラーゼ、キチナーゼ、クチナーゼ、シクロデキストリングルカノトランスフェラーゼ、デオキシリボヌクレアーゼ、エステラーゼ、α-ガラクトシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、α-グルコシダーゼ、β-グルコシダーゼ、ハロペルオキシダーゼ、インベルターゼ、ラッカーゼ、リパーゼ、マンノシダーゼ、酸化酵素、ペクチン分解酵素、ペプチドグルタミナーゼ、ペルオキシダーゼ、フィターゼ、ポリフェノール酸化酵素、タンパク質分解酵素、リボヌクレアーゼ、トランスグルタミナーゼ、キシラナーゼ、プルラナーゼ、イソアミラーゼ、カラギナーゼ、またはそれらの組合せ。
【0018】
水溶液に上記の変異種、及び任意に別の酵素を含む織物の糊除去組成物を提供することがさらに別の目的である。織物の糊除去の方法は前記織物の糊の除去に十分な時間糊除去用組成物を使用することを含む。
【0019】
別の目的は水溶液に上記の変異種を含むデンプン加工用組成物を提供することである。このデンプン加工組成物はさらにグルコアミラーゼ、イソアミラーゼ、プルラナーゼ、フィターゼ又はそれらの組合せを含む。デンプンを加工する方法はデンプンを加工するに十分な時間この組成物を使用することを含む。
【0020】
別の目的は溶液又はゲルに上記の変異種を含み、任意にセルラーゼ、ヘミセルラーゼ、キシラナーゼ、リパーゼ、プロテアーゼ、ペクチナーゼ、抗菌剤、またはそれらのいずれかの組合せを含むバイフィルムを加水分解する組成物を提供することである。バイオフィルムを加水分解する方法はバイオフィルムを処理するに十分な期間この組成物を使用することを含む。
【0021】
別の目的は溶液にこの変異種を含むデンプン糖化用組成物を提供することである。デンプンを糖化する方法はデンプンを糖化するに十分な期間この組成物を使用することを含む。
【0022】
別の目的は溶液にこの変異種を含むデンプン液化用の組成物を提供することである。デンプンを液化する方法はデンプンを液化するに十分な期間この組成物を使用することを含む。
【0023】
別の目的は溶液又はゲルに上記の変異種を含むベーキング用組成物を提供することである。ベーキングの方法は焼き上げる物へベーキング用組成物を加えることを含む。
【図面の簡単な説明】
【0024】
添付の図面は本明細書に組み入れられてその一部となり、実施態様を説明するものである。図面では:
【図1】図1はPURASTAR(登録商標)OxAm(Danisco US Inc., Genencor Division;以前はGenencor International、Inc.として知られていた。)で使用されているB.リケニフォルミスα-アミラーゼとバチルス・サブチリス種 第707 α-アミラーゼ(Swissprot Accession No. P19571)の間の3D構造の位置合わせを描いている。この構造の位置合わせは、活性部位に結合している基質類縁体アカルボース(Acarbose)(阻害剤)を含んでいる。α-アミラーゼのA-ドメインは、基質の右側、位置合わせされた構造の中ほどにあり、B-ドメインは基質の左側の左手にあり、C-ドメインは図の右側を占める。
【図2】図2は、野生型B.リケニフォルミスα-アミラーゼ(受け入れ番号 第CAA01355;上の行)とバチルス属の種第707α-アミラーゼ(Swissprot Accession No. P19571; 下の行)の間の配列の位置あわせを示す。同一の残基はアステリクスの印で下にマークされている。
【図3】図3は12個のB.リケニフォルミスα-アミラーゼ変異種のアミノ酸の置換、挿入または欠失の数、一般的タイプ及び/又は属するドメインを示す。
【図4】図4はOxAm 親及び変異種の発現に使用されるプラスミドpHPLT-OxAmの図である。
【図5】図5は培地M1またはM2で増殖するOxAmとOxAm変異種(V2、V3及びV5)の洗浄活性を示す。
【図6】図6は培地M1で培養されたOxAmとOxAm変異種(V1、V2、V3、V5、V6及びV9)の洗浄活性を示す。詳細な説明
【0025】
B. リケニフォルミスα-アミラーゼの変異種は洗浄用調合剤、例えば、自動皿洗い用洗剤及び漂白剤を含むもの等の洗濯洗剤調合物の性能を高くする。特に、本変異種は野生型B型のB.リケニフォルミスα-アミラーゼよりも高い特異的な活性をもつ。以下は如何にしてこれができうるか、及びそのようにして生成されたα-アミラーゼ変異種の組成物と用途について詳細に述べる。

1. 定義と略号
【0026】
この詳細な説明にあわせ、以下の略号と定義が適用される。本明細書で使用される場合、単数表記は、文脈から明らかにそうでない場合を除き、複数をもさす。従って、例えば、「酵素」とは複数のそのような酵素を、「調合物」とは1以上の調合物と本技術分野の技術者に知られているその均等物などを含む。
【0027】
そうでないように定義された場合を除き、本明細書で使用される全ての技術的及び科学的用語は本技術分野の普通の技術者により共通に理解されているものと同一の意味をもつ。以下の用語を下記に示す。
1. 定義
【0028】
「アミラーゼ」は、とりわけ、デンプンの分解を触媒することができる酵素をいう。「アミラーゼ」はいずれのアミラーゼも含み、例えば、グルコアミラーゼ、α-アミラーゼ、β-アミラーゼ、及びバチラス属の種、例えばB・リケニフォルミス及びB・スブチリス(B. subtilis)のような野生型α-アミラーゼを含む。アミラーゼはデンプンのα-D-(1→4)O-グリコシド結合を開裂する加水分解酵素である。一般的に、α-アミラーゼ(EC3.2.1.1;α-D-(1→4)-グルカングルカノヒドロラーゼ)はα-D-(1→4)O-グルコシド結合をデンプン分子内で無作為に切断するエンド-活性酵素として定義される。これに対し、エキソ-活性デンプン分解酵素、例えばβ-アミラーゼ(EC 3.2.1.2;α-D-(1→4)グルカンマルトヒドロラーゼ)といくつかのマルトース生成α-アミラーゼ(EC3.2.1.113)のような生成物特異的アミラーゼは基質の非還元末端からデンプン分子を開裂する。β-アミラーゼ、α-グルコシダーゼ(EC3.2.1.20;α-グルコシドグルコヒドロラーゼ)、グルコアミラーゼ(EC3.2.1.3;α-D-(1→4)-グルカングルコヒドロラーゼ)、及び生成物特異的アミラーゼはデンプンから特定の長さのマルト-オリゴ糖を生成できる。
【0029】
「α-アミラーゼ変異種」「α-アミラーゼ変異種ポリペプチド」及び「変異酵素」は野生型α-アミラーゼのアミノ酸配列から修飾されたアミノ酸配列をもつα-アミラーゼタンパク質をいう。本明細書で使用する場合、「親酵素」「親配列」「親ポリペプチド」「野生型α-アミラーゼタンパク質」及び「親ポリペプチド」はα-アミラーゼ変異ポリペプチドの基礎になった酵素とポリペプチドをいう。野生型のα-アミラーゼは天然に産生される。本開示のためPURASTAR(登録商標)OxAmで使用されるB・リケニフォルミスα-アミラーゼは「野生型」α-アミラーゼであると考えられている。つまり、「B・リケニフォルミスα-アミラーゼ変異種」は、PURASTAR(登録商標)OxAmで使用されているB・リケニフォルミスα-アミラーゼを特に含まない。「PURASTAR(登録商標)OxAm」、「PURASTAR(登録商標)」と「PURATAR(登録商標)」及び「OxAm」は本明細書で相互に入れ替えて使用される。「α-アミラーゼ変異種」は、またシグナル配列のアミノ酸残基または成熟タンパク質の最初の残基でのみ野生型のα-アミラーゼと異なるα-アミラーゼを特に含まない。即ち、本開示の目的では、成熟α-アミラーゼ変異種の配列は最初の残基以外の位置で成熟野生型α-アミラーゼの配列と異なっている。
【0030】
「変異種」とは、ポリペプチドと核酸の両者をさす。用語「変異」は、用語「突然変異」と相互に入れ替えて使用してよい。変異種は挿入、置換、トランスバージョン(transversion)、トランケーション(truncations)、及び/又は逆位(inversion)をアミノ酸または核酸配列のそれぞれに1以上の位置で含む。種々の核酸は本明細書に含まれる核酸配列にハイブリッド形成できる配列と相補的である配列を含みうる。例えば、変異配列は厳格な条件下(例.50℃及び0.2X SSC{1 X SSC = 0.15M NaCl, 0.015M クエン酸ナトリウム、pH7.0})で本明細書に記載の核酸配列とハイブリッド形成できる配列に相補的である。特に、この用語は高度に厳格な条件下(例.65℃かつ0.1X SSC)で本明細書に記載の核酸配列にハイブリッド形成できる配列に相補的である配列を含む。
【0031】
「単離された」は配列が自然界でその配列と天然に組み合わされて、自然界に見出される少なくとも1つの他の成分を少なくとも実質的に含まないことをいう。
【0032】
「精製された」は物質が比較的純粋な状態にある、例えば、少なくとも約90%純粋、少なくとも約95%純粋、又は少なくとも約98%純粋であることをいう。
【0033】
「熱的に安定」とは酵素が、対照酵素よりも熱的に安定であることをいう。本出願では、本変異種が同一の試験条件下、例えば同一の温度、基質条件等で特定の時間後比較して高い酵素活性を持つ場合、α-アミラーゼ変異種は野生型B.リケニフォルミスα-アミラーゼよりも熱的に安定である。または、より熱的に安定な酵素は対照酵素と比較して、示差走査熱量測定により決定されたより高い熱容量をもつ。
【0034】
「pH範囲」は酵素が活性を示すpHの範囲をいう。
【0035】
本明細書で使用する場合、「pH安定」は酵素が特定のpHで対照酵素よりも安定であることをいう。本出願では、α-アミラーゼ変異種は、この変異種が同一の試験条件下、例えば同一のpH等で特定の時間後に比較して高い活性をもつ場合、α-アミラーゼ変異種は野生型B. リケニフォルミスα-アミラーゼよりもpHに安定である。
【0036】
本明細書で使用する場合、「食品」は調製された食品及び穀粉のような食品の原料の両者を含む。
【0037】
本明細書で使用するとき、「食品原料」は機能性食品または食品原料であるもの又はこれらに加えうる調合物であり、例えば酸性化またはエマルジョン化を必要とする広い範囲の製品で低含量で使用されている調合物を含む。この食品原料は、用途及び/又は使用の方法及び/又は摂取の方法により溶液の形または固体であっても良い。
【0038】
本明細書で使用するとき、「機能性食品」は、消費者に、栄養効果及び/又は味覚の満足だけでなくさらに別の有益な効果を与えることができる食品をいう。
【0039】
本明細書で使用するとき、用語「アミノ酸配列」は、用語「ポリペプチド」及び/又は「タンパク質」と同義語である。;ある例では、用語「アミノ酸配列」は用語「ペプチド」の同義語である。;いくつかの例では、用語「アミノ酸配列」は用語「酵素」と同義語である。
【0040】
本明細書で使用するとき、「ヌクレオチド配列」または「核酸配列」はオリゴヌクレオチド配列又はポリヌクレオチド配列とそれらの変異種、相同体、断片及び誘導体をいう。このヌクレオチド配列は、センス鎖(sense strand)又はアンチセンス(anti-sense strand)鎖を表していようといまいとゲノム、合成または組み換え体由来でも良く、二重鎖でも単一鎖でもよい。本明細書で使用するとき、用語「ヌクレオチド配列」はゲノムのDNA、cDNA、合成DNA、及びRNAを含む。
【0041】
「相同体」は、対象アミノ酸配列と対象ヌクレオチド配列とある程度の同一性又は「相同性」をもつものをいう。「相同性配列」は、対象配列と少なくとも75%、80%、85%または90%同一、特に少なくとも95%、96%、97%、98%または99%同一のアミノ酸配列を含む。通常は、相同体は対象アミノ酸配列と同一の活性部位残基を含むであろう。
【0042】
本明細書で使用する場合、「ハイブリッド形成」は核酸の分子鎖が塩基対の形成により相補的な分子鎖と結合する過程、およびポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術で行われる増幅法を含む。このα-アミラーゼ変異核酸は単一又は二重鎖のDNA又はRNA、RNA/DNAへテロ二重鎖(heteroduplex)として存在してもよい。本明細書で使用するとき、「共重合体」はリボヌクレオチドとデオキシリボヌクレオチドの両者を含む単一の核酸分子鎖をいう。このα-アミラーゼ核酸はさらに発現を増強するためにコドンが最適化されても良い。
【0043】
本明細書で使用する場合、「合成」化合物は生体外の化学的または酵素的合成により作られる。これは、ホスト生物にとり最適なコドン用法により作られたα-アミラーゼ変異核酸を非限定的に含み、例えば、メチロトローフ(methylotroph)な酵母ピキア(Pichia)、ハンセヌラ(Hansenula)、ストレプトマイセス(Streptomyces)、及びトリコデルマ・レセイ(Trichoderma reesei)または他の発現ホストが選択される。
【0044】
本明細書で使用する場合、「形質転換された細胞」は組換えDNA技術の使用により形質転換された細胞を含む。形質転換は、通常1以上のヌクレオチド配列を細胞へ挿入することにより起こる。この挿入されたヌクレオチド配列は異種のヌクレオチド配列でも良く、つまり、形質転換を受ける細胞にとり天然に存在しない配列、例えば融合タンパク質の配列、である。
【0045】
本明細書で使用する場合、「機能的に連結する」は記載の構成要素がそれらの意図された方法でそれらが機能できるような関係にあることをいう。例えば、コーディング配列に機能的に連結している調節配列は、そのコーディング配列の発現がこの調節配列に適合する条件で行われるように連結(ligate)されている。
【0046】
本明細書で使用する場合、「生物学的に活性」とは、必ずしも同一の程度ではないが、天然に存在する配列と同様の構造的、調整的または生化学的機能をもつ配列をいう。
【0047】
1.2.略号
別に記載があるのではない限り以下の略号が使用される。
AE アルコールエトキシレート
AEO アルコールエトキシレート
AEOS アルコールエトキシサルフェート
AES アルコールエトキシサルフェート
AFAU 酸菌類α-アミラーゼ単位
AGU グルコアミラーゼ活性単位
AOS α-オレフィンスルホネート
AS アルコールスルフェート
BAA 細菌α-アミラーゼ
cDNA 相補的DNA
CMC カルボキシメチルセルロース
DE デキストロース等価物
DNA デオキシリボ核酸
DP 3 3個のサブユニットを含む重合の程度
DPn n個のサブユニットを含む重合の程度
DS 乾燥固体
DTMPA ジエチルトリアミン5酢酸
EC 酵素分類用酵素番号
EDTA エチレンジアミン4酢酸
EDTMPA エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸
EO エチレンオキシド
F&HC 布地及び家庭用品の手入れ
HFCS フルクトース高含有コーンシロップ
HFSS フルクトース高含有デンプンベースシロップ
IPTG イソプロピル β-D-チオガラクトシド
LAS 直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩
LU リパーゼ単位
MW 分子量
nm ナノメートル
NOBS ノナノイロキシベンゼンスルホネート
NTA ニトリロ3酢酸
PCR ポリメラーゼ連鎖反応
PEG ポリエチレングリコール
pI等電点
ppm 百万分あたりの割合
PVA ポリ(ビニルアルコール)
PVP ポリ(ビニルピロリドン)
RAU 標準アミラーゼ単位
RMS 2乗平均平方根
RNA リボ核酸
SAS 2級アルカンスルホネート
1XSSC 0.15M NaCl、0.015M クエン酸ナトリウム、pH7.0
SSF 同時糖化発酵
TAED テトラアセチルエチレンジアミン
w/v 重量/容量
w/w 重量/重量
wt 野生型
μL マイクロリットル
【0048】
2.α-アミラーゼ変異種
本明細書のα-アミラーゼは野生型B. リケニフォルミスα-アミラーゼから作られる。本変異種は向上した特異的活性、pHプロファイル、熱的安定性、温度範囲のプロファイル、カルシウムイオン要求性、又は他の向上した特性を持つだろう。変異種は、一般に野生型B.リケニフォルミスα-アミラーゼのアミノ酸配列の1以上の修飾を含む。野生型B.リケニフォルミスα-アミラーゼは、B.リケニフォルミスのいずれか天然に存在する株から単離されても良い。
【0049】
本開示の目的では、アミノ酸置換は、例えば、M15Tと表される。「M15T」は15位のメチオニン(M)残基がスレオニン(T)残基と置換されることを表し、ここでアミノ酸は本技術分野で一般に知られている単一文字による略号により指定される。
【0050】
野生型のリケニフォルミスα-アミラーゼのタンパク質工学的操作は改善した性質をもちうる変異α-アミラーゼを生成する。ある面では、この変異酵素の1以上のアミノ酸残基が無作為に修飾され、この修飾の効果は、この変異種のホスト細胞での発現後、この変異種の性能特性のその後の分析により決定される。別の面では、この変異種のアミノ酸配列の修飾は、野生型B.リケニフォルミスα-アミラーゼに非常に似た構造をもつ「モデル」α-アミラーゼを基準として用いて修飾の効果が予測できるようにして、系統的に行う。一実施態様では、このモデルα-アミラーゼは、野生型B.リケニフォルミスα-アミラーゼに関し改善された又は好ましい1以上の特性をもつ。例えば、モデルα-アミラーゼはより高い特異的活性、pH依存性、安定性、半減期またはカルシウム結合定数を持っても良く、又は特に有用な基質特異性などを持っても良い。
【0051】
モデルα-アミラーゼが変異α-アミラーゼのアミノ酸変化の設計を導くため使用される場合、モデルα-アミラーゼのどの残基が酵素の性能に寄与しているかを正確に知る必要はない。その代わり、1以上のアミノ酸(たとえ全アミノ酸であっても良い)が変異α-アミラーゼにおいて、このモデルα-アミラーゼの対応するアミノ酸と対照して修飾されている。この場合「対応する」アミノ酸は、一次アミノ酸配列の従来の位置合わせにより決定されるのではなく、この2個の酵素のポリペプチド骨格の3D構造の位置合わせにより決定される。変異種の中の修飾されるアミノ酸は、そのようにして、例えば、酵素表面の荷電した残基、活性部位残基、又はこのモデル酵素特有の特定の2次構造要素に寄与する残基として選ぶことができる。修飾を受ける残基はまた、この修飾が2個の酵素の間で保存されている3D構造、特に保存された2次構造要素、例えば、α-へリックス、β-シート、ターンを乱さないことを基本に選択できる。
【0052】
例えば、酵素表面上の荷電したアミノ酸の分布の変化はその酵素の性質を変え得ることが知られている。例えば、Russellら、”Rational modification of enzyme catalysis by engineering surface change,” Nature 328:496-500(1987)を参照せよ。同様にB.リケニフォルミスα-アミラーゼの表面上の1以上の残基は、変異α-アミラーゼの酵素の性質を変えるために修飾できる。修飾の選択はモデルα-アミラーゼの表面の電荷の分布を基準にすることができる。この目的のため、「表面の電荷」とは少なくとも部分的に溶媒に露出しているアミノ酸の電荷を帯びた側鎖により寄与を受けているものである。
【0053】
図1は、B.リケニフォルミスα-アミラーゼ(RCSB Protein Data Bank, 登録番号 PDB ID 第1BLI参照;GenBank 登録番号代CAA 01355も参照のこと)と代表的モデルα-アミラーゼ、B.スブチリス種no. 707α-アミラーゼとの3D構造の位置合わせを示す。Berman ら”The Protein Data Bank,” Nucl. Acids Res.28:235-242(2000)参照。分析のため、3個のアミノ酸が、登録番号第PDB ID No.1BLIに示される3D構造を構築するため使用されている配列から変えられた。すなわち、M15T、W138Y及びM197Tである。その結果、構造はPURASTAR (登録商標)OxAmで使用されるB.リケニフォルミスα-アミラーゼと同一になろう。B.スブチリス種第707α-アミラーゼの3D構造は登録番号第PDB ID 第1WPCとしてRCSB Protein Data Bankから入手できた(また、Swissport 登録番号P19571も参照せよ)。
【0054】
位置合わせのアルゴリズム、例えば、BRAGI(Gesellschaft fuer Biotechnologische Forchunhg mbH)またはPyMOL(DeLano Scientific LLC)が2個の酵素の3D構造の間の最良の適合を得るために使用できる。これらのプログラムは、原子の位置の空間的距離の2乗平均平方根(RMS)による違いを最小にするように2個の分子の骨格原子の位置あわせを繰り返すものである。タンパク質配列の位置合わせの代表的な結果が図2に示され、B.リケニフォリミスα-アミラーゼ配列(GenBank 登録番号第CAA 01355)を下の行にB.スブチリス種第.707α-アミラーゼ(Swissprot 登録番号第P19571)を上の行に示す。2つの配列の間にあるアステリスクの並びは、実質的に同一の3D構造を採る骨格となる原子を含む残基に印をつけたものである。この2個の酵素は酵素の二次構造、例えばα-ヘリックス、β-シート、ターン等に強い構造上の保存性をもつ。全分子構造にわたる酵素間の2乗平均平方根(RMS)は0.55Åであり、これは2個の酵素の結晶構造を決定における誤差の限界の半分未満である。図2に示すとおり、残基の93%は2個の酵素の間で同一の3D構造をとり、これはこの2個の酵素の間の一次配列における同一性(同一の残基は強調されている)のパーセンテージを超えている。この開示においては、2つの構造において同一の3D構造を採る残基は「構造的に保存され」、及び「構造的保存された」残基は「対応する」残基である。
【0055】
この変異種α-アミラーゼの残基は3個の構造的ドメイン(ここではドメインA,B及びCと呼ばれる)の1つに属すものとして分類できる。この開示については、ドメインAは残基2-105と残基208-396に広がり;ドメインBは残基106-207;及びドメインCは残基397からこのタンパク質のC末端まで広がる。アミノ酸はまた活性部位残基として分類できる。活性部位残基は少なくとも49、52、163、167、170、172、187、188、190、238、262、264、293、297及び332-334の位置にある。残基の「位置」は図2のB.リケニフォルミスα-アミラーゼ配列で記したように数字がつけられている。
【0056】
変異α-アミラーゼにおいては、1以上のアミノ酸が修飾されてモデルα-アミラーゼの対応するアミノ酸となっている。この修飾はドメインごとに集中されても良く、及び/又はこれらは酵素の表面で荷電され、存在するアミノ酸に集中しても良い。または、あるいはそれに加えて、修飾は1以上の活性部位で行われても良い。このようにして、複数のアミノ酸修飾を行うことが可能であり、この修飾は変異α-アミラーゼの性能特性に予測可能な効果を及ぼす。例えば、この変異種は1以上のドメインの全ての表面の荷電した残基をモデルα-アミラーゼの対応する残基へ変えられても良い。別の実施態様では、この変異種は、残基の挿入又は欠失を受け、例えば、ループが挿入又は欠失され、このようにして変異種のポリペプチド骨格をモデルα-アミラーゼの構造とより密接に類似させられても良い。従って、この変異種は、変異種がα-アミラーゼ活性を保持するならば、1,2,3,4,5,10,15,20,30,40,50,60または70個のアミノ酸置換、欠失又は挿入、又はその間のいずれかの整数個のアミノ酸置換、欠失又は挿入を含んでも良い。この変異種の表面の電荷もまたいずれかの数で変えられても良い。例えば、酵素表面上の陽電荷を帯びたアミノ酸残基の数は1,2,3,4,5,6,7または8だけ減少しても良い。このようなアミノ酸置換は、とりわけ、この変異種の等電点(pI)を変えることが期待される。この変異種の他の特性は下記のように、野生型酵素と異なっても良い。
【0057】
従って、B. リケニフォルミスα-アミラーゼ変異種を作成する方法が提供され、この変異種は野生型B.リケニフォルミスα-アミラーゼと比較して少なくとも一つの変化した性質を持っている。本法は(1)野生型α-アミラーゼと比較して少なくとも1つの好ましい性質をもつモデルα-アミラーゼと野生型α-アミラーゼの構造を比較し;(2)モデルα-アミラーゼとの間で構造が保存されるべき野生型B.リケニフォルミスの少なくとも1個のアミノ酸又は構造領域を特定し;(3)B.リケニフォルミスα-アミラーゼの変異種を構築し、これは上記(2)の段階で特定されたアミノ酸残基又は構造部分で修飾を受けており、及び(4)この変異種に少なくとも1つの好ましい性質が与えられるか否かを決定するため得られた変異α-アミラーゼを試験することを含む。
【0058】
上記の方法の(2)の段階で特定された構造は1アミノ酸残基からなっても良い。;しかし、この構造はまた1アミノ酸残基以上を含んでも良く、これらが酵素の1以上のA、B、Cドメイン及び/又は活性部位にあっても良い。この1以上のアミノ酸は連続しても良く、例えばいくつかのアミノ酸のループが変異α-アミラーゼに加えられても又は、それから除去されても良い。アミノ酸残基又は構造領域の修飾は通常、親酵素をコードするDNA配列の適切な修飾により達成される。この修飾は、アミノ酸残基又は構造部分の置換、除去または挿入でも良い。
【0059】
一実施態様では、このアミノ酸置換、欠失または挿入は次のうちの1以上、またはそれらのいずれかの組み合わせである。:K23N;Q26R;A33K;T49A;A52N;H68N;E82Q;K88N;H91K;R93N;D94G;D114L;T116R;D121N;A123N;D124N;R127Q;V128E;I129V;H133Y;L134T;K136E;H140Y;H142D;S148N;Y150H;D152N;H156R;T163V;E167Q;K170R;172位のNの挿入(つまり172+N);Q178;A181G;S187D;N188T;N190F;K213R;R214N;E222T;F238Y;E250S;K251A;E255N;Y262F;Q264K;H293Y;T297K;R305Q;K306N;K319H;G332E;Q333E;S334A;Q340E;T341E;369-377位でのTKGDSQREIからIPTHGV---への残基の置換または欠失(ハイフンは欠失を表す);K389E;K392Q;Q393K;A398R;H400N;D416N;V419H;R437W;N444K;E447Q;H450S;E458G;E469N;またはH471S。「K23N」は例えば、図2の下の行に示される配列をもつB.リケニフォルミスα-アミラーゼ23位のリジン(K)残基が変異種でアスパラギン(N)残基で置換されていることをいう。
【0060】
このα-アミラーゼ変異種は、Bリケニフォルミスに内因性ではないポリペプチド配列を含む融合タンパク質、「ハイブリッド」または「キメラタンパク質」でも良い。一実施態様では、このポリペプチド配列は発現タンパク質の精製を容易にする。別の実施態様では、異種の配列はB.リケニフォルミスと異なる属または種から得られるα-アミラーゼポリペプチドである。例えば、α-アミラーゼ変異種は別のバチルスα-アミラーゼ、例えばB.ステアロサーモフィルス等のα-アミラーゼのシグナルペプチドに結合したB.リケニフォルミスα-アミラーゼの変異種を含み得る。
【0061】
2.1 α-アミラーゼ変異種の特徴づけ
酵素変異種は核酸及びポリペプチド配列、上記のような3D構造、及び/又は特異的活性ににより特徴づけることができる。α-アミラーゼ変異種の他の特徴は安定性、カルシウムイオン(Ca2+)依存性、pH範囲、酸化安定性及び熱安定性を含む。一局面では、洗浄調合剤中のα-アミラーゼ変異種は比較的高い特異的活性をもち、これは本技術分野の技術者に知られている標準的定量法を用いて評価できる。別の局面では、変異種は他の改良された性能特性、例えば、高温(つまり、70-120℃)での改良された安定性、及び/又はpH限度(つまり、pH4.0から6.0まで、又はpH8.0から11.0)、及び/または60ppm未満のカルシウム濃度、を実証する。
【0062】
変化したCa2+安定性は、Ca2+のない条件で酵素の安定性が変えられた、つまり、増大または減少したことをいう。重要な変異はCa2+安定性を変えるもの、特に高いpH、つまりpH8.0から10.5でのCa2+安定性を向上させるものを含む。
【0063】
別の局面では、重要な変異は、特異的活性を変える、特に、洗浄剤組成物で使用する10から60℃の温度、特に20-50℃、及びより特別には30-40℃の温度において特異的活性を変える。ベーキング製品については、重要な変異は高温の範囲での特異的活性を変えても良い。
【0064】
α-アミラーゼ変異種は酸化安定性も変えても良く、特に親α-アミラーゼと比較して高い酸化安定性を有しても良い。例えば、酸化安定性の増大は洗剤組成物で有利であり、酸化安定性の減少はデンプンの液化用の組成物において有利であろう。
【0065】
変異α-アミラーゼは野生型のα-アミラーゼよりも熱的に安定でも良い。そのようなα-アミラーゼ変異種は高い温度を必要とするベーキングまたは他のプロセスでの使用に有利である。例えば、熱的に安定なα-アミラーゼ変異種は約55℃から約80℃以上の温度でデンプンを分解できる。熱的に安定なα-アミラーゼ変異種は約95℃までもの高い温度に晒した後もその活性を維持しても良い。
【0066】
本明細書に記載されたα-アミラーゼ変異ポリペプチドは親酵素に比べ10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、200%またはそれ以上、特に約55℃から約95℃またはそれ以上の温度で、特に約80℃で、半減期を長くする変異をもち得る。一実施態様では、このα-アミラーゼ変異種は80℃以上で約1-10分加熱できる。
【0067】
α-アミラーゼ変異種はエキソ特異性、例えば本明細書で述べられるエキソ-特異性指数により測定されるものを有しても良い。α-アミラーゼ変異種は、任意に、同一の条件で測定したとき、それの元になった親酵素又はポリペプチドと比較して高い又は増大したエキソ-特異性をもつものを含む。従って、例えば、α-アミラーゼ変異ポリペプチドは親ポリペプチドと比較して10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、150%、200%、500%、1000%、5000%、10,000%またはそれ以上であるエキソ特異性指数を有しても良い。
【0068】
一局面では、核酸によりコードされたα-アミラーゼ変異ポリペプチドは、親配列と同一のpH安定性をもつ。別の局面では、変異種はより大きなpH安定性の範囲を与える又はpH範囲を酵素の最終製品用の好ましい範囲に移す変異を含む。例えば、一実施態様では、変異種は約pH 5.0から約pH 10.5でデンプンを分解できる。このα-アミラーゼ変異ポリペプチドは同一の条件で親ポリペプチドと比較して長い半減期又は高い活性(定量法によりかわる)を有しても良く、またはα-アミラーゼ変異種は親ポリペプチドと同一の活性を持っても良い。このα-アミラーゼ変異ポリペプチドはまた、同一のpH条件下、その親ポリペプチドと比較して約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、200%またはより長い半減期を有しても良い。また、或いは追加して、この酵素は同一のpH条件で親ポリペプチドと比較して高い特異的な活性を有しても良い。
【0069】
別の面では、本明細書に述べられるα-アミラーゼ変異種のいずれかをコードする核酸に相補的な核酸が提供される。加えて、この相補的な核酸とハイブリッド形成できる核酸が提供される。別の実施態様では、本明細書で述べられる方法と組成物において使用される配列は合成された配列である。それは、ホストになる生物、例えば、メチロトローフな酵母ピキア(Pichia)とハンセヌラ(Hansenula)での発現に最適なコドンの用法により作成された配列を非限定的に含む。
【0070】
3.α-アミラーゼ変異種の産生
本明細書に記載されている方法により、又は本技術分野で知られたいずれか別の方法により、調製された、酵素変異種をコードするDNA配列は、適切なプロモーター、オペレーター、リボソーム結合部位、翻訳開始シグナル、及び任意に、リプレッサー遺伝子または種々の活性化物質遺伝子をコードする調節配列を通常含む発現ベクターを用いて、酵素の形態で、発現させることができる。
【0071】
3.1 ベクター
α-アミラーゼ変異種をコードするDNA配列をもつ組換え発現ベクターは組換えDNA手順に都合良く従ういずれのベクターでも良い。ベクターの選択は導入される宿主細胞により変わることが多い。すなわち、ベクターは自律的に複製するベクターであり、つまり、染色体外に存在するベクターであり、その複製は染色体の複製と独立し、例えばプラスミド、バクテリオファージ又は染色体外要素、ミニクロモソームまたは人工染色体である。また、ベクターは、宿主細胞へ導入されると、ホスト細胞のゲノムヘ組み入れられ、そして組み入れられた染色体とともに複製されるものでも良い。組み入れられた遺伝子は、抗生物質による選択又は他の選択的因子、例えば必須の調節遺伝子により、又は必須の代謝経路の遺伝子を補うことにより増幅可能な構造体を使用して、染色体中のこの遺伝子の複製を作成するために増幅されても良い。
【0072】
発現ベクターは通常クローニングベクターの構成要素、例えば、選択した宿主生物中のベクターの自律的複製をさせるもの、細胞選択のための一以上の表現型の検出可能なマーカーの発現をさせるものを含む。この発現ベクターは通常、プロモーター、オペレーター、リボソーム、結合部位、翻訳開始シグナル及び任意に、リプレッサー遺伝子又は1以上の活性化物質遺伝子を含む。一局面では、使用する全てのシグナル配列は、酵素の容易な収集と任意の精製のため、この物質を細胞培養培地へ向かわせるものである。α-アミラーゼ変異種、プロモーター、ターミネーター及び他の要素を、それぞれコードするDNA構造体を結合し、複製に必要な情報を含む適切なベクターにそれらを挿入するために、使用される手順は本技術分野の技術者に良く知られている(Sambrookら、MOLECULAR CLONING; A LABORATORY MANUAL, 第2版、Cold Spring Harbor, 1989 及び第3版、2001)。
【0073】
ベクターでは、DNA配列は適したプロモーター配列に機能的に連結すべきである。このプロモーターは選択した宿主細胞において転写活性を示すいずれのDNA配列でも良く、宿主細胞にとり同種な、又は異種のタンパク質をコードする遺伝子由来でも良い。α-アミラーゼ変異種をコードするDNA配列の転写を指令する適したプロモーターの例は、特に細菌の宿主において、大腸菌のlac オペロンのプロモーター、ストレプトマイセス ケリカラー (Streptmyces coelicolor ) アガラーゼ遺伝子dagA又はcelA プロモーター、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)α-アミラーゼ遺伝子(amyL)のプロモーター、バチルス・ステアテルモフィラス(Bacillus stearothermophilus)マルトース産生アミラーゼ遺伝子(amyM)のプロモーター、バチルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)α-アミラーゼ(amyQ)のプロモーター、バチルス・スブチリス xylA 及びxylB遺伝子のプロモータ等である。菌類の宿主での転写に関し、有用なプロモーターの例はアスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae) TAKAアミラーゼ、リゾムコル・ミヘイ(Rhizomucor miehei)アスパラギン酸プロテナーゼ、アスペルギルス・ニゲル(Aspergillus niger)天然α-アミラーゼ、A・ニゲル(A.niger)酸安定α-アミラーゼ、A・ニゲル(A.niger)グルコアミラーゼ、リゾムコル・ミヘイ(Rhizomucor miehei)リパーゼ、A.オリゼ(A.oryzae)アルカリプロテアーゼ、A.オリゼ(A.oryzae)トリオースホスフェート異性化酵素、またはA.ニードランス(A.nidulans)アセトアミダーゼをコードする遺伝子に由来するものである。α-アミラーゼ変異ポリペプチドをコードする遺伝子が大腸菌のような細菌の種で発現されるとき、適当なプロモーターが選択され得、例えば、T7プロモーターとファージラムダプロモーター等のバクテリオファージプロモーターから選ぶことができる。酵母の種で発現するための適したプロモーターの例は、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)のGal1及びGal 10プロモーターとピキア・パストリス(Pichia pastoris)AOX1又はAOX2プロモーターを非限定的に含む。トリコデルマ・レセイ(Trichoderma reesei)での発現のため、CBHIIプロモーターが使用されても良い。
【0074】
発現ベクターは適した転写ターミネーターも含んでも良く、真核細胞ではポリα-アミラーゼ変異種をコードするDNA配列に機能的に連結しているポリアデニル化配列を含んでよい。ターミネーション配列とポリアデニル化配列はプロモーターと同一の源から、適当に由来しても良い。このベクターは、さらにこの宿主細胞でベクターを複製させることのできるDNA配列を含んでも良い。そのような配列の例は、プラスミドpUC19、pACYC177、pUB110、pE194、pAMB1、pICatH及びpIJ702の複製の開始点になる配列である。
【0075】
ベクターはまた選択マーカーを含んでも良い。例えば、その遺伝子の産生物が宿主細胞の欠陥を補う遺伝子、例えばB・スブチリス(B. subtilis)またはB・リケニフォルミス(B.licheniformis)由来のdal遺伝子、または抗生物質への耐性を与える遺伝子、例えば、アンピシリン、カナマイシン、クロラムフェニコール又はテトラサイクリン耐性を与える遺伝子を含んでもよい。さらに、ベクターはamdS,argB,niaD及びxxsC(ハイグロマイシン耐性を生じるマーカー)のようなアスペルギルス選択マーカーを含んでも良く、またはこの選択性は本技術分野で知られているコトランスフォーメーション(co-transformation)により達成されても良い。WO91/17243参照。
【0076】
3.2 変異種の発現と宿主生物
細胞内での発現または固体状態発酵はいくつかの点で有利であるかもしれないが、例えば宿主細胞としてある細菌又は菌類を使用する場合、この変異種の発現が菌体外であり、培地中に行われる場合に一般的に有利である。一般的に、本明細書に述べられたバチルス属のα-アミラーゼは、発現されたプロテアーゼを培地へ分泌させるシグナル配列を含む。望む場合には、このシグナル配列は異なるシグナル配列により置き換えられても良く、これは各シグナル配列をコードするDNA配列の置換により、好都合に達成される。このシグナル配列は通常3個のドメイン、N-末端ドメイン、H-ドメイン、C-末端ドメインをもち、長さが18から35残基の範囲にあることで特徴付けられている。
【0077】
成熟タンパク質は、当初は、親配列として別のバチルス属の種又は同一の種に由来するプレ-タンパク質に結合した融合タンパク質の形でありえる。B.リケニフォルミス(B.licheniformis)にタンパク質を分泌するため、B.リケニフォルミスα-アミラーゼのシグナルペプチドが使用されることが多い。しかし、他のバチラス属α-アミラーゼ由来のシグナルタンパク質もまた置換されえる。
【0078】
DNA構造体又は発現ベクターのいずれかを含む単離された細胞は、α-アミラーゼ変異種の組換え物の産生において宿主細胞として使用することが有利である。この細胞は変異種をコードするDNA構造体により形質転換されても良く、宿主細胞の染色体にDNA構造体(1以上の複製)を組み込むことが便利である。この組み込みは一般的に有利であると考えられている。なぜならDNA配列は細胞中で安定に維持される可能性がより高いからである。DNA構造体の宿主染色体への組み込みは便利な方法に従い行われても良く、例えば、相同的又は異種的組換えによっても良い。または、細胞は異なる種類の宿主細胞に関して先に述べたように、発現ベクターにより形質転換されても良い。
【0079】
適した細菌の宿主の例は、B.スブチリス、B.リケニフォルミス、B.レンツス、B.ブレビス、B.ステアロサーモフィラス、B.アルカロフィルス、B.アミロリケファシエンス、B.コアグランス、B.ラウツス、B.メガテリウム及びB.スリンギエンシス等のバチルス科、S.ムリヌス(S.murinus)のようなストレプトマイセス属の種、L.ラクチス(L.lactis)のようなラクトコッカス属の種(Lactococcus sp.)等の乳酸細菌の種、L.ロイテリ(L.reuteri)等のラクトバチルス属の種(Lactobacillus sp);ロイコノストック属の種(Leuconostaock sp);ペディオコッカス属(Pediococcus)属の種;及びストレプトコッカス属の種(Streptcoccus sp.)のようなグラム陽性菌の種である。または、大腸菌等のエンテロバクテリア科に属するグラム陰性菌の株、又はシュードモナス科に属するものが宿主生物として選ばれる。
【0080】
適した酵母宿主は、生物工学的に関連する酵母の種、例えば、以下に限定されないが、ピキア属の種(Pichia sp)、ハンセヌラ属の種(Hansenula sp.)、クルイベロマイセス属の(Kluyveromyces sp)、ヤロビニア属の種(Yarrowinia sp)、S. セレビシエ(S.cerevisiae)等のサッカロマイセス属の種(Saccharomyces. sp.)または、S.ポンベ(S.pombe)のようなシゾサッカリマイセス属(Schizosaccharomyces)に属する種から選択できる。メチルトローフな酵母種ピキア・パストリス(Pichia pastoris)の株が宿主細胞として使用できる。または、この宿主生物はハンセヌラ属の種でも良い。糸状菌のうち適した宿主生物はアスペルギルス属の種を含み、例えば、A・ニゲル、A・オリゼ、A・ツビゲンシス、A・アワモリ又はA・ニドランスを含む。または、フサリウム属の種の株、例えばフサリウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum)またはリゾムコル属の種(Rhizomucor sp.)、例えばR・ミヘイ(R.miehei)は宿主生物として使用できる。他の適した酵母はサーモマイセス属の種(Thermomyces sp.)とムコル属の種(Mucor sp.)を含む。菌類の細胞は、本技術分野で知られている方法により、プロトプラスト形成とプロトプラストの形質転換その後の細胞壁の再生を含む方法により形質転換されても良い。アスペルギルス(Aspergillus)宿主細胞の形質転換の適した手順は、例えば、EP238023に述べられている。
【0081】
さらに別の面では、α-アミラーゼ変異種を産生する方法が与えられ、この方法はこの変異種の産生に導く条件下で先に述べた宿主細胞を培養し、この細胞及び/又は培地から変異種を回収することを含む。この細胞の培養に使用する培地は宿主細胞を増殖させ、α-アミラーゼ変異種を発現させるために適したいずれの従来の培地でも良い。適した培地と培地成分は市販業者から入手できまたは公表された処方(例えば、アメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC)のカタログで述べられているように)に従い調製しても良い。培地の例は3,000Lの撹拌タンク発酵装置で行われるバッチ式発酵用の培地を非限定的に含む。これは下記の実施例で使用された。使用されたこの培地は使用される予定の宿主細胞に最も適したものであり、例えば、バチルス・リケニフォルミスを培養するため下記に述べられる培地である。この場合の培養培地は、微量元素のほか、ナトリウム、カリウム、リン酸塩、マグネシウムの供給源としての無機塩と硫酸塩とともに、有機化合物源としてトウモロコシ浸漬固形物及び大豆粉からなってもよい。通常、グルコースのような炭水化物源も初期培地の一部である。一度培地が調製され、増殖が始まると、本技術分野で知られているように、炭水化物はタンクへ秤量され培養が維持される。例えば、色度計定量法を用いて酵素の力価を測定するために、サンプルが規則的な間隔で発酵槽から取り出される。測定により、酵素産生速度が上昇をやめたとき発酵工程は停止する。
【0082】
宿主細胞から分泌されるα-アミラーゼ変異種は、遠心分離またはろ過による培地からの細胞の分離、次に、硫酸アンモニウムのような塩による培地のタンパク質性の成分の沈殿、その後のイオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー等のクロマトグラフ法の使用等、よく知られた手順で培養培地から都合の良い方法で回収してよい。
【0083】
宿主細胞はα-アミラーゼ変異タンパク質の発現を行わせるに適した条件下で培養されてもよい。タンパク質の発現は恒常的でも良く、その場合それらは連続的に産生され、あるいは誘導されても良く、その場合発現を開始するため刺激を必要とする。誘導的発現においては、誘導物質、例えば、デキサメタゾン、IPTGまたはセファロース(Sepharose)を培地へ加えて要求があったときタンパク質産生が開始されうる。ポリペプチドはまた、例えばTnTTM(Promega)ウサギ網状赤血球系のような、生体外、細胞のない系で組み換え体として産生できる。
【0084】
α-アミラーゼ変異種を発現する宿主は、宿主に対して適当な培地中で好気的条件下でも培養しうる。振とうまたは撹拌と空気供給が組み合わせて行われ、宿主にとり適温、例えば、宿主と目的とするα-アミラーゼ変異種の産生からの要請により変わるが、約30℃から約75℃で産生が行われる。培養は約12時間から約100時間またはそれ以上長く(及びその間の幾時間)行われ得、さらに、特に24時間から72時間おこなれ得る。通常は、液体培地は約pH5.5から約8.0であるが、やはりα-アミラーゼ変異種の産生に関して宿主細胞に求められる培養条件により変わる。
【0085】
4.α-アミラーゼ変異種の精製
発酵、分離及び濃縮技術は本技術分野で知られており濃縮α-アミラーゼ変異種含有溶液を調製するために便利な方法を使用できる。発酵の後、発酵液体培地が得られ、微生物細胞と種々の懸濁された固体が、残存の未使用発酵原料を含めて、アミラーゼ溶液を得るために従来の分離技術により除かれる。ろ過、遠心分離、微小ろ過(microfiltration)、ロータリー真空ドラムろ過その後の超ろ過、抽出又はクロマトグラフィー等が一般的に使用される。
【0086】
濃縮されていない溶液は精製されたα-アミラーゼ変異種を含む沈殿物を集めるために保温時間を長く必要とするので、回収を最適化するためにα-アミラーゼ変異種を含む溶液を濃縮することが望ましい。この溶液は目的の酵素水準が得られるまで、従来の技術を使用して溶液が濃縮される。この酵素変異種を含む溶液の濃度は上記で述べられた技術のいずれかにより達成されても良い。一実施態様ではロータリー真空蒸発及び/又は超ろ過が使用される。または、超ろ過が使用できる。
【0087】
精製用の「沈殿剤」とは、その性質がどうであろうと、つまり、結晶質、非晶質、またはそれらの混合物であろうと、固体状態で濃縮酵素変異種溶液からα-アミラーゼ変異種を沈殿させるために効果のある化合物をいう。沈殿は、例えば、ハロゲン化金属物沈殿剤を用いて行うことができる。ハロゲン化金属沈殿剤は、塩化アルカリ金属、臭化アルカリ金属及びこれらのハロゲン化金属の2以上の混合物を含む。ハロゲン化金属は塩化ナトリウム、塩化カリウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム及びこれらのハロゲン化金属の2以上の混合物からなる群から選択されても良い。適したハロゲン化金属は塩化ナトリウム、塩化カリウム特に塩化ナトリウムを含み、これはさらに保存剤として使用できる。
【0088】
このハロゲン化金属沈殿剤はα-アミラーゼ変異種を沈殿させるために有効な量で使用される。少なくとも酵素変異種を沈殿させるためのハロゲン化金属の有効量と最適量及び、保温時間、pH、温度及びα-アミラーゼ変異種の濃度等の回収を最大にするための沈殿条件の選択は、一般的試験の後、本技術分野の通常の技術者に容易に理解される。
【0089】
一般的に、少なくとも約5% w/v(重量/容量)から約25%w/vのハロゲン化金属が濃縮酵素変異種溶液へ加えられ、普通は8%w/vである。一般的に、約25% w/v以下のハロゲン化金属が濃縮酵素変異種溶液へ加えられ、普通は約20% w/v以下である。ハロゲン化金属沈殿剤の最適濃度は、とりわけ、特定のα-アミラーゼ変異種の性質と濃縮α-アミラーゼ変異種溶液の濃度により変わる。
【0090】
酵素を沈殿させる別の方法は有機化合物の使用であり、これを濃縮酵素変異種溶液へ加えるものである。有機化合物沈殿剤は、4-ヒドロキシ安息香酸、4-ヒドロキシ安息香酸のアルカリ金属塩、4-ヒドロキシ安息香酸のアルキルエステル、これらの有機化合物の2以上の混合物を含み得る。有機化合物沈殿剤の添加はハロゲン化金属沈殿剤の添加の前、同時又はその後に行うことができる。また、両沈殿剤、有機化合物とハロゲン化金属の添加は連続的に又は同時に行われても良い。さらなる説明については、例えばGenencorの米国特許第5,281,526号を参照せよ。
【0091】
一般的に、有機化合物沈殿剤は4-ヒドロキシ安息香酸の金属塩、例えばナトリウム塩またはカリウム塩、4−ヒドロキシ安息香酸の直鎖または分岐アルキルエステル、(このアルキル基は1から12個の炭素原子を含む)、及び2以上のこれらの有機化合物の混合物からなる群から選択される。この有機化合物沈殿剤は、例えば、4−ヒドロキシ安息香酸の直鎖または分岐アルキルエステル(このアルキル基は1から10個の炭素原子を含む)及びこれらの有機化合物2以上の混合物であり得る。適した有機化合物は4−ヒドロキシ安息香酸の直鎖アルキルエステル(このアルキル基は1から6個の炭素原子を含む)及びこれらの有機化合物の2以上の混合物を含む。4-ヒドロキシ安息香酸のメチルエステル、4-ヒドロキシ安息香酸のプロピルエステル、4-ヒドロキシ安息香酸のブチルエステル、4-ヒドロキシ安息香酸のエチルエステル及びこれらの有機化合物2以上の混合物もまた使用できる。別の有機化合物はまた、4-ヒドロキシ安息香酸メチルエステル(メチルパラベン)及び4-ヒドロキシ安息香酸プロピルエステル(プロピルパラベン)を非限定的に含み、これらはまた、アミラーゼ保存剤でもある。
【0092】
有機化合物沈殿剤の添加はpH、温度、α-アミラーゼ変異種濃度、沈殿剤濃度及び保温時間に関する沈殿条件について高い柔軟性という利点を与える。
【0093】
有機化合物沈殿剤はハロゲン化金属沈殿剤による酵素変異種の沈殿を改善する有効量で使用される。少なくとも有機化合物沈殿剤の有効量と最適量、及び保温時間、pH、温度と変異酵素の濃度等の回収を最大量にするための沈殿条件の選択は、本開示に照らし、通常の試験の後には、本技術分野の普通の技術者に容易に分かる。
【0094】
一般的に、少なくとも0.01% w/vの有機化合物沈殿剤が濃縮酵素変異種溶液へ加えられ、普通少なくとも0.02% w/vである。一般的に、0.3% w/v以下の有機化合物沈殿剤が濃縮酵素変異種溶液に加えられ、普通には0.2% w/v以下である。
【0095】
ハロゲン化金属沈殿剤、一面では有機化合物沈殿剤を含む濃縮酵素変異溶液は、精製される酵素変異種により必然的に変わるpHへ調整される。一般的に、このpHはアミラーゼの等電点(pI)近傍の水準に調整される。例えば、このpHはpIの約2.5pH単位下からpIの約2.5pH単位上の範囲内に調整できる。説明のため、α-アミラーゼ変異種がB・リケニフォルミスに由来するとき、濃縮酵素変異種溶液は普通、約5.5と9.7の間のpH、特に約6.5と9.0の間のpHに調整される。このpHは変異種のpIが野生型のpIと異なるときは、それに従い調整されても良い。
【0096】
精製酵素変異種の沈殿を得るために必要な保温時間は、その特定の酵素変異種の性質、酵素の濃度及び特定の沈殿剤及びその濃度により変わる。一般的に、酵素変異種を沈殿させるための有効な時間は約1から約30時間の間;普通約25時間を超えない。有機化合物沈殿剤の存在下では、それでも保温時間は約10時間未満まで減少し、殆どの場合、さらに約6時間未満まで減少できる。
【0097】
一般的に、保温中の温度は約4℃と50℃の間にある。普通、この方法は約10℃と約45℃の間の温度で行われ、特に約20℃と約40℃の間で行われる。沈殿を誘発する最適温度は溶液条件、酵素変異種または使用した沈殿剤に従い変わる。
【0098】
精製された酵素変異種沈殿物の総回収量と、この方法が行われる効率は酵素変異種を含む溶液の撹拌(agitating)、ハロゲン化金属の添加と有機化合物の添加により改善される。撹拌段階はハロゲン化金属と有機化合物の両者の添加中及びその後の保温期間に行われる。適した撹拌法は、機械的撹拌(stirring)、振とう、激しい空気導入又はいずれかの類似の技術を含む。
【0099】
保温期間後、精製された酵素変異種は、その後解離した色素と他の不純物から分離され、ろ過、遠心分離、ミクロフィルトレーション、ロータリー真空ろ過、超ろ過、加圧ろ過、クロスメンブランミクロフィルトレーション、クロスフローメンブランミクロフィルトレーション等の従来の分離技術により収集される。クロスメンブランミクロフィルトレーションは使用される一方法である。精製された酵素変異種沈殿物のさらなる精製はこの沈殿物を水で洗浄することにより行うことができる。例えば、精製された酵素変異種の沈殿はハロゲン化金属沈殿剤を含む水、例えばハロゲン化金属と有機化合物沈殿剤を含む水で洗浄される。
【0100】
培養の間、熱的に安定なアミラーゼが培養液中に菌体外で蓄積される。目的とするα-アミラーゼ変異種の単離と精製のため、培養液が遠心分離されまたはろ過され細胞が除かれ、得られた細胞を含まない液体は酵素の精製に使用される。一実施態様では、この細胞を含まない液体培地は約70%飽和度の硫酸アンモニウムを使用して塩析を受ける。;70%飽和-沈澱部分は次に緩衝液に溶解されSephadex G-100カラムのようなカラムに移され、酵素変異種活性フラクションを回収するために溶出される。さらに精製するため、イオン交換クロマトグラフィーのような従来の方法も使用してよい。
【0101】
精製された酵素変異種は、酵素変異種が一般的に利用される全ての用途で有用である。例えば、それらは洗濯洗剤、シミ取り剤で、食品産業で、デンプン加工及びベーキングにおいて、消化剤としての医薬品組成物において使用できる。それらは液体(溶液、スラリー)又は固体(顆粒、粉末)のどちらかの最終製品に作ることができる。
【0102】
または、この酵素製品は回収され、ろ過又は遠心分離により細胞と細胞の破片を除去するために培地へ凝集剤が加えられ、酵素がさらに精製されることはない。
【0103】
先に述べられた方法により産生されそして精製されたα-アミラーゼ変異種は種々の有用な産業的用途で使用できる。この変異種は布地と家庭用品の手入れ(F&HC)に関する用途に適する貴重な性質を有している。例えば、変異種は洗浄、皿洗い及び堅い表面の洗浄剤組成物の成分として使用できる。変異種はまた、デンプンからの甘味料とエタノールの生産及び/又は織物の糊の除去にも有用である。種々のα-アミラーゼは特に、デンプンの液化及び/又は糖化方法等のデンプン転換製法で有用である。これは例えばWO2005/111203と米国の公開された出願第2006/0014265(Genencor International, Inc.)に記載されている通りである。α-アミラーゼ変異種のこれらの種々の用途は以下に更に詳しく述べられる。
5.洗浄及び皿洗い組成物と用途
【0104】
本明細書に述べられたα-アミラーゼ変異種は例えば、皿の洗浄に用いる洗浄剤組成物又は他の洗浄剤組成物に調合されえる。これらは、ゲル、粉末又は液体である。この組成物はα-アミラーゼ組成物変異種のみ、他のデンプン分解酵素、他の洗浄酵素、及び洗浄剤組成物に共通な他の成分を含むことができる。
【0105】
従って、皿洗い洗浄剤組成物は界面活性剤を含むことができる。この界面活性剤はアニオン性、非イオン性、カチオン、両性またはこれらの種類の混合物でも良い。この洗剤は重量で0%から約90%の非イオン性界面活性剤を含み得、例えば、低い発泡性から非発泡性エトキシレーテドプロポキシレーテド直鎖アルコールを含み得る。
【0106】
洗浄剤用途では、α-アミラーゼ変異種は普通プロピレングリコールを含有する液体組成物で使用される。このα-アミラーゼ変異種は例えばプロピレングリコール中で10%塩化カルシウムを含有する25%容量/容量のプロピレングリコール溶液中で撹拌することにより溶解される。
【0107】
皿洗い洗剤組成物は無機及び/又は有機タイプの洗剤助剤の塩を含んでも良い。この洗剤助剤はリン含有タイプ及び非リン含有タイプに分けられても良い。この洗剤組成物は普通、約1%から約90%の洗剤助剤を含む。リン含有無機アルカリ洗剤助剤の例は、含有されている場合、水溶性の塩、特にピロリン酸、オルトリン酸及びポリリン酸のアルカリ金属塩を含む。リン含有有機アルカリ洗剤助剤は、含有されている場合、水溶性のリン酸塩を含む。リンを含有していない無機助剤の例は、含有されている場合、水溶性アルカリ金属炭酸塩、ホウ酸塩、ケイ酸塩及び種々の水不溶性結晶又は非晶質のアルミノシリケートを含み、これらのうち、ゼオライトが最も知られた代表的な物質である。
【0108】
適した有機洗剤助剤の例はアルカリ金属;アンモニウム及び置換アンモニウム;クエン酸塩;コハク酸塩;マロン酸塩;脂肪酸スルホン酸塩;カルボキシメトキシコハク酸塩;アンモニウムポリアセテート;カルボン酸塩;ポリカルボン酸塩;アミノポリカルボン酸塩;ポリアセチルカルボン酸塩;及びポリヒドロキシスルホン酸塩を含む。
【0109】
他の適した有機洗剤助剤は、助剤の性質をもつことが知られている比較的高い分子量のポリマーとコポリマーを含み、例えば、適当なポリアクリル酸、ポリマレイン酸及びポリアクリル酸/ポリマレイン酸コポリマー及びそれらの塩を含む。
【0110】
洗浄剤組成物は塩素/臭素型の、または酸素型の漂白剤を含んでも良い。無機塩素/臭素型漂白剤の例はリチウム、ナトリウムまたはカルシウム次亜塩素酸塩、及び次亜臭素酸塩、及び塩素化されたリン酸3ナトリウムである。有機塩素/臭素型漂白剤の例は、トリクロロイソシアヌル酸、トリブロモイソシアヌル酸、ジブロモイソシアヌル酸とジクロロイソシアヌル酸のような複素環のN-ブロモ-及びN-クロロイミド、及びカリウムとナトリウムのような水溶性のカチオンとのそれらの塩である。ヒダントイン化合物もまた適している。
【0111】
洗浄剤組成物は酸素漂白剤、例えば、無機過酸の形で含んでも良く、任意に漂白剤前駆体とともに、又はペルオキシ酸化合物として含んでも良い。適したペルオキシ漂白化合物の通常の例はアルカリ金属の過ホウ酸塩、4水和物と1水和物の両者であり、アルカリ金属の過炭酸塩、過ケイ酸塩及び過リン酸塩である。適した活性化剤物質はテトラアセチルエチレンジアミン(TAED)とグリセロールトリアセテートを含む。WO2005/056783に開示されているように、過ホウ酸塩又は過炭酸塩、トリ酢酸グリセロール及びペルヒドロラーゼのような、酵素的漂白活性系もまた含まれても良い。
【0112】
洗浄剤組成物は酵素用の従来の安定化剤、例えばプロピレングリコール、糖または糖アルコール、乳酸、ホウ酸又はホウ酸誘導体(例.芳香族ホウ酸エステル)を用いて安定化されても良い。洗浄剤組成物は、また他の従来の洗剤成分、例えば、解膠剤物質、充填剤、発泡抑制剤、腐食防止剤、汚れ懸濁剤、金属イオン遮蔽剤、汚れ再沈着防止剤、脱水剤、染料、殺菌剤、蛍光剤、増粘剤及び香料も含んでよい。
【0113】
最後に、α-アミラーゼ変異種は従来の皿洗い洗剤で使用されても良く、例えば、本明細書に開示されているα-アミラーゼ変異種が、一覧にした特許と公開された出願に開示されているいずれのα-アミラーゼにも替えて、又は加えて使用されていることを考慮して、以下の特許公開に述べられている洗剤のいずれにおいて使用されても良い。:CA2006687、GB2200132、GB2234980、GB2228945、DE3741617、DE3727911、DE4212166、DE4137470、DE3833047、DE4205071、WO93/25651、WO93/18129、WO93/04153、WO92/06157、WO92/08777、WO93/21299、WO93/17089、WO93/03129、EP481547、EP530870、EP533239、EP554943、EP429124、EP346137、EP561452、EP318204、EP318279、EP271155、EP271156、EP346136、EP518719、EP518720、EP518721、EP516553、EP561446、EP516554、EP516555、EP530635、EP414197及び米国特許第5,112,518;5,141,664及び5,240,632号
【0114】
6.洗濯洗剤組成物と用途
実施態様によれば、1以上のα-アミラーゼ変異種が通常、洗剤組成物の成分でもよい。そのため、α-アミラーゼは非粉塵性顆粒、安定化液体又は保護された酵素の形体で洗剤組成物に含まれても良い。例えば米国特許第4,106,991号と4,661,452号で開示されているように、非粉塵性顆粒が生産されても良く、任意に本技術分野で知られている方法により皮膜されても良い。ロウ状の皮膜原料の例はポリ(エチレンオキシド)製品である。例えば、1,000から20,000の平均分子量をもつ(ポリエチレングリコール、PEG);16から50個のエチレンオキシド構成単位をもつエトキシル化ノニルフェノール;アルコールが12個から20個の炭素原子を含み、15個から80個のエチレンオキシド構成単位があるエトキシル化脂肪族アルコール;脂肪族アルコール;脂肪酸;脂肪酸のモノ-及びジ-及びトリグリセリドである。流動床技術の使用に適した薄膜形成皮膜物質の例は、例えば、英国特許第1484591号に与えられている。液体酵素調製物は、確立した方法により例えば、プロピレングリコール、糖又は糖アルコール、のようなポリオール、乳酸またはホウ酸を加えることにより安定化されても良い。他の酵素安定化剤は本技術分野で良く知られている。保護された酵素は、例えば米国特許第5,879,920(Genencor Int’l, Inc.)又はEP238216で開示された方法に従い調製されても良い。ポリオールはタンパク質の溶解性を改善すること、またタンパク質の安定化剤として長く認識されてきた。例えばKaushikら”Why is trehalose an exceptional protein stabilizer? An analysis of the thermal stability of proteins in the presence of the compatible osmolyte trehalose” J. Biol. Chem. 278:26458-65(2003) 及びその中の引用文献;M.Contiら”Capillary isoelectric focusing: the problem of protein solubility,” J. Chromatography 757:237-245(1997) を参照せよ。
【0115】
洗剤組成物はいずれかの都合の良い形態でも良い。例えば、ゲル、粉末、顆粒、ペースト又は液体。液体洗剤は水溶液、通常は約70%までの水、及び0%から約30%までの有機溶媒を含み、また僅か約30%の水を含む小型ゲルタイプでも良い。
【0116】
洗剤組成物は1以上の界面活性剤を含み、それらのそれぞれはアニオン性、非イオン性、カチオン性又は双性イオン性である。この洗剤は普通、0%から約50%のアニオン性界面活性剤を含有し、例えば直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩(LAS);α-オレフィンスルホン酸(AOS);アルキル硫酸塩(脂肪酸アルコール硫酸塩)(AS);アルコールエトキシスルサルフェート(AEOS又はAES);2級アルカンスルホン酸塩(SAS);α-スルホ脂肪酸メチルエステル;アルキル-又はアルケニル-又はアルケニルコハク酸;又は石鹸を有する。この組成物はまた、例えばWO92/06154に述べられているように、アルコールエトキシレート(AEO又はAE)、カルボキル化されたアルコールエトキシレート、ノニルフェノールエトキシレート、アルキルポリグリコシド、アルキルジメチルアミンオキシド、エトキシル化脂肪酸モノエタノールアミド、脂肪酸モノエタノールアミド、またはポリヒドロキシアルキル脂肪酸アミドのような非イオン性界面活性剤を0%から約40%含んでも良い。
【0117】
この洗剤組成物はさらに1以上の他の酵素を含んでも良く、例えば、リパーゼ、クチナーゼ、プロテアーゼ、セルラーゼ、ペルオキシダーゼ、及び/又はラッカーゼをいずれの組み合わせで含んでも良い。
【0118】
洗剤は、ゼオライト、二リン酸塩、三リン酸塩、、ホスホン酸塩、クエン酸、ニトリロ3酢酸(NTA)、エチレンジアミン4酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミン5酢酸(DTMPA)、アルキル-又はアルケニルコハク酸、可溶ケイ酸塩または層状ケイ酸塩(例.ヘキストのSKS-6)のような、約1%から約65%の洗剤助剤又は錯体形成剤を含んでも良い。この洗剤は助剤をアンビルト(unbuilt)としても良い。つまり本質的に洗剤助剤を含まなくても良い。酵素は酵素の安定性と適合するいずれの組成においても使用できる。酵素は、例えば、顆粒化又はヒドロゲル中の金属イオン遮蔽化と同様、カプセル充填という既知の形体により一般的に有害な成分に対して保護されえる。デンプン結合ドメインを有する又は有さない酵素及び特にα-アミラーゼは洗濯及び皿洗い用途に限定されず、表面洗浄剤において及びデンプンまたはバイオマスからの及びエタノール生産に使用されても良い。
【0119】
洗剤は1以上のポリマーを含んでも良い。例にはカルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリ(ビニルピロリドン)(PVP)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)、ポリアクリル酸、マレイン酸/アクリル酸コポリマーとメタクリ酸ラウリル/アクリル酸コポリマーのようなポリアクリレートを含む。
【0120】
洗剤は漂白系を含んでも良く、任意に過酸形成漂白活性化剤、例えば、TAEDまたはノナノイロキシベンゼンスルホン酸塩(NOBS)と組み合わされて、過ホウ酸塩又は過炭酸塩のようなH2O2源を含んでも良い。または、漂白系は、例えばアミド、イミド又はスルホン型のペルオキシ酸を含んでも良い。漂白系は、また、WO2005/056783に述べられているようにペルヒドロラーゼが過酸化物を活性化する酵素の漂白系でもあり得る。
【0121】
洗剤組成物の酵素は従来の安定化剤、例えば、プロピレングリコール又はグリセロールのようなポリオール;糖または糖アルコール;乳酸;ホウ酸または芳香族ホウ酸エステルのようなホウ酸誘導体を用いて安定化されても良い。この組成物は、例えばWO92/19709とWO92/19708に述べられているように調合されても良い。
【0122】
洗剤は、例えば、粘土、発泡剤、発泡抑制剤、腐食防止剤、汚れ懸濁剤、汚れ再沈着防止剤、染料、殺菌剤、光学的増白剤又は香料等、布地柔軟剤のような他の従来の洗剤成分も含む。pH(使用時の濃度の水溶液で測定)は普通、中性またはアルカリ性であり、例えば、pHは約7.0から約11.0である。
【0123】
α-アミラーゼ変異種は従来より、洗剤で使用される濃度で洗剤に組み入れられても良い。洗剤組成物では、洗剤組成物中に、α-アミラーゼ変異種は洗浄液1リットル当たり0.00001-1.0mg(純粋の酵素タンパク質)のα-アミラーゼ変異種に対応する量で加えられても良いと現在考えられている。α-アミラーゼ変異種を含有する洗剤組成物の特定の形態を以下を含むように調製することができる。
【0124】
(1)約7%から約12%で直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩(酸として計算される);約1%から約4%でアルコールエトキシサルフェート(例.C12-18アルコール、1,2エチレンオキサイド(EO))またはアルキルサルフェート(例C16-18);約5%から約9%でアルコールエトキシレート(例.C14-C15アルコール、7EO)、約14%から約20%で炭酸ナトリウム(Na2CO3として);約2%から約6%で可溶性ケイ酸塩(例,NaAlSiO4);約15%から約22%でゼオライト(例.NaAlSiO4);0%から約6%で硫酸ナトリウム(例.Na2SO4);約0%から約15%でクエン酸ナトリウム/クエン酸(例.C6H5Na3O7/C6H8O7);約11%から約18%で過ホウ酸ナトリウム(例.NaBO3H2O);約2%から約6%でTAED;0%から約2%でカルボキシメチルセルロース(CMC);0-3%でポリマー(例.マレイン酸/アクリル酸コポリマー,PVP,PEG);0.0001-0.1%タンパク質で酵素(純酵素として計算)及び0-5%で少量の成分(例.発泡抑制剤、香料、光学的増白剤、光脱色剤)を含有する少なくとも600g/Lのバルク密度を有する顆粒として調合される洗剤組成物。
【0125】
(2) 約6%から約11%で直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩(酸として計算される)を;約1%から約3%でアルコールエトキシ硫酸(例.C12-18アルコール、1,2エチレンオキサイド(EO))または硫酸アルキル(例C16-18);約5%から約9%でアルコールエトキシレート(例.C14-C15アルコール、7EO)、約15%から約21%で炭酸ナトリウム(Na2CO3として);約1%から約4%で可溶性ケイ酸塩;約24%から約34%でゼオライト(例.NaAlSiO4);約4%から約10%で硫酸ナトリウム(例.Na2SO4);0%から約15%のクエン酸ナトリウム/クエン酸(例.C6H5Na3O7/C6H8O7);約11%から約18%で過ホウ酸ナトリウム(例.NaBO3H2O);約2%から約6%でTAED;0%から約2%でカルボキシメチルセルロース(CMC);1-6%でポリマー(例.マレイン酸/アクリル酸コポリマー,PVP,PEG);0.0001-0.1%で酵素(純酵素として計算)及び0-5%で少量の成分(例.発泡抑制剤、香料)を含有する少なくとも600g/Lのバルク密度を有する顆粒として調合される洗剤組成物。
【0126】
(3) 約5%から約9%で直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩(酸として計算される);約7%から約14%でアルコールエトキシレート(例.C12-C15アルコール、7EO)、約1から約3%の脂肪酸(例.C16-22脂肪酸)として石鹸;約10%から約17%で炭酸ナトリウム(Na2CO3として);約3%から約9%で可溶性ケイ酸塩;約23%から約33%でゼオライト(例.NaAlSiO4);0%から約4%で硫酸ナトリウム(例.Na2SO4);約8%から約16%で過ホウ酸ナトリウム(例.NaBO3H2O);約2%から約8%でTAED;0%から約1%でホスホン酸塩(例.EDTMPA);0%から約2%でカルボキシメチルセルロース(CMC);0-3%でポリマー(例.マレイン酸/アクリル酸コポリマー,PVP,PEG);0.0001-0.1%で酵素(純酵素タンパク質として計算)及び0-5%で少量の成分(例.発泡抑制剤、香料、光学的増白剤)を含有する少なくとも600g/Lのバルク密度を有する顆粒として調合される洗剤組成物。
【0127】
(4) 約8%から約12%で直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩(酸として計算される);約10%から約25%でアルコールエトキシレート(例.C12-C15アルコール、7EO);約14%から約22%で炭酸ナトリウム(Na2CO3として);約1%から約5%で可溶性ケイ酸塩;約25%から約35%でゼオライト(例.NaAlSiO4);0%から約10%で硫酸ナトリウム(例.Na2SO4);0%から約2%でカルボキシメチルセルロース(CMC);1-3%でポリマー(例.マレイン酸/アクリル酸コポリマー,PVP,PEG);0.0001-0.1%で酵素(純酵素タンパク質として計算)及び0-5%で少量の成分(例.発泡抑制剤、香料)を含有する少なくとも600g/Lのバルク密度を有する顆粒として調合される洗剤組成物。
【0128】
(5)約15%から約21%で直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩(酸として計算される);約12%から約18%でアルコールエトキシレート(例.C12-C15アルコール、7EOまたはC12-15アルコール、5EO)、約3から約13%の脂肪酸(例.オレイン酸)として石鹸;0%から約13%でアルケニルコハク酸(C12-14)、約8%から約18%でアミノエタノール;約2%から約8%でクエン酸;0%から約3%でホスホン酸塩;0%から約3%でポリマー(例.PVP、PEG);0%から約2%でホウ酸塩(例.B4O7);0%から約3%でエタノール;約8%から約14%でプロピレングリコール;0.0001-0.1%で酵素(純酵素タンパク質として計算)及び0-5%で少量の成分(例.分散剤、発泡抑制剤、香料、光学的増白剤)を含有する水性液体洗剤組成物。
【0129】
(6)約15%から約21%(酸として計算)で直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩;3-9%でアルコールエトキシレート(例.C12-15アルコール、7EOまたはC12-15アルコール、5EO);約3%から約10%で脂肪酸(例.オレイン酸)として石鹸;約14%から約22%でゼオライト(NaAlSiO4);約9%から約18%でクエン酸カリウム;0%から約2%でホウ酸塩(例.B4O7)、0%から約2%でカルボキシメチルセルロース(CMC);0から約3%でポリマー(例.PEG、PVP);0%から約3%でアンカーリングポリマー(anchoring polymer)(例.メタクリル酸ラウリル/アクリル酸コポリマー;モル比25:1、MW 3800);0%から約5%でグリセロール;0.0001-0.1%で酵素(純酵素タンパク質として計算);及び0-5%で少量の成分(例.分散剤、発泡抑制剤、香料、光学的増白剤)を含む水に構成された液体洗剤組成物
【0130】
(7)約5%から約10%の脂肪酸アルコール硫酸塩;約3%から約9%のエトキシル化脂肪酸モノエタノールアミド;0-3%の脂肪酸としの石鹸;約5%から約10%の炭酸ナトリウム(例.Na2CO3);約1%から約4%の可溶性ケイ酸塩;約20%から約40%のゼオライト(例.NaAlSiO4);約2%から約8%の硫酸ナトリウム(Na2SO4);約12%から約18%の過ホウ酸ナトリウム(例.NaBO3H2O);約2%から約7%のTAED;約1%から約5%のポリマー(例.マレイン酸/アクリル酸コポリマー、PEG);0.0001-0.1%の酵素(純酵素タンパク質として計算);0-5%の少量の成分(例.光学的増白剤、発泡抑制剤、香料)を含有する少なくとも600g/Lのバルク密度を有する顆粒として調合された洗剤組成物。
【0131】
(8)約8%から約14%の直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩(酸として計算);約5%から約11%のエトキシル化脂肪酸モノエタノールアミド;0%から約3%の脂肪酸として石鹸;約4%から約10%の炭酸ナトリウム(例.Na2CO3);約1%から約4%の可溶性ケイ酸塩;約30%から約50%のゼオライト(例.NaAlSiO4);約3%から約11%の硫酸ナトリウム(例.Na2SO4);約5%から約12%のクエン酸ナトリウム(例.C6H5Na3O7);約1%から約5%のポリマー(例.PVP、マレイン酸/アクリル酸コポリマー、PEG);0.0001-0.1%の酵素(純酵素タンパク質として計算);及び0-5%の少量の成分(例.発泡抑制剤、香料)を含有する顆粒として調合された洗剤組成物。
【0132】
(9) 約6%から約12%で直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩(酸として計算される);約1%から約4%の非イオン性界面活性剤;約2%から約6%の脂肪酸としての石鹸;約14%から約22%で炭酸ナトリウム(Na2CO3として);約18%から約32%でゼオライト(例.NaAlSiO4);5%から約20%で硫酸ナトリウム(例.Na2SO4);約3%から約8%のクエン酸ナトリウム(例.C6H5Na3O7);約4%から約9%で過ホウ酸ナトリウム(例.NaBO3H2O);約1%から約5%で漂白活性化剤(例.NOBS又はTAED);0%から約2%でカルボキシメチルセルロース(CMC);約1%から約5%でポリマー(ポリカルボキシレート又はPEG);0.0001-0.1%タンパク質で酵素(純酵素として計算)及び0-5%で少量の成分(例.光学的増白剤、香料)を含有する顆粒として調合される洗剤組成物。
【0133】
(10) 約15%から約23%で直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩(酸として計算される);約8%から約15%でアルコールエトキシ硫酸(例.C12-C15アルコール、2-3EO);約3%から約9%でアルコールエトキシレート(例.C12-15アルコール、7EO、またはC12-15アルコール,5EO);約0から約3%の脂肪酸(例.ラウリン酸)として石鹸;約1%から約5%でアミノエタノール;約5%から約10%でクエン酸ナトリウム;約2%から約6%でヒドロトロープ(例.トルエンスルホン酸ナトリウム);0%から約2%でホウ酸塩(例.B4O7);0%から約1%でカルボキシメチルセルロース;約1%から約3%でエタノール;約2%から約5%でプロピレングリコール;0.0001-0.1%で酵素(純酵素タンパク質として計算)及び0-5%で少量の成分(例.ポリマー、分散剤、香料、光学的増白剤)を含有する水性液体洗剤組成物。
【0134】
(11)約20%から約32%で直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩(酸として計算される);6%-12%でアルコールエトキシレート(例.C12-C15アルコール、7EOまたはC12-15アルコール、5EO);約2%から約6%でアミノエタノール;約8%から約14%でクエン酸;約1%から約3%でホウ酸塩(例.B4O7);0%から約3%でポリマー(例.マレイン酸/アクリル酸コポリマー、アンカーリングポリマー、例えばメタクリル酸ラウリル/アクリル酸コポリマー);約3%から約8%でグリセロール;0.0001-0.1%で酵素(純酵素タンパク質として計算)及び0-5%で少量の成分(例.ヒドロトロープ、分散剤、香料、光学的増白剤)を含有する水性液体洗剤組成物。
【0135】
(12) 約25%から約40%でアニオン性界面活性剤(直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、α-スルホ脂肪酸メチルエステル、アルカンスルホン酸塩、石鹸);約1%から約10%で非イオン性界面活性剤(例.アルコールエトキシレート);約8%から約25%で炭酸ナトリウム(例.Na2CO3);約5%から約15%の可溶性ケイ酸塩;0から約5%で硫酸ナトリウム(例.Na2SO4);約15%から約28%でゼオライト(NaAlSiO4);0から約20%で過ホウ酸ナトリウム(例.NaBO3 4H2O);約0%から約5%で漂白活性化剤(TAEDまたはNOBS);0.0001-0.1%で酵素(純酵素タンパク質として計算);0-3%で少量の成分(例.香料、光学的増白剤)を含有する少なくとも600g/Lのバルク密度を有する顆粒として調合される洗剤組成物。
【0136】
(13)上記1)-12)の組成物で述べられたような洗剤組成物であって、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩の全ての又は一部が(C12-C18)アルキル硫酸塩で置き換えられたもの。
【0137】
(14)約9%から約15%の(C12-C18)アルキル硫酸塩;約3%から約6%でアルコールエトキシレート;約1%から約5%でポリヒドロキシアルキル脂肪酸アミド;約10%から約20%でゼオライト(例.NaAlSiO4);約10%から約20%で層化ジシリケート(例.ヘキストのSK56)、約3%から12%で炭酸ナトリウム(例.Na2CO3);0%から約6%で可溶性ケイ酸塩;約4%から約8%でクエン酸ナトリウム;約13%から約22%で過炭酸ナトリウム;約3%から約8%でTAED;0%から約5%でポリマー(例.ポリカーボネートとPVP);0.0001-0.1%で酵素(純酵素タンパク質として計算);及び0-5%で少量の成分(例.光学的増白剤、光学的漂白剤、香料、泡抑制剤)を含有する少なくとも600g/Lのバルク密度を有する顆粒として調合された洗剤組成物。
【0138】
(15)約4%から約8%の(C12-C18)アルキル硫酸塩;約11%から約15%でアルコールエトキシレート;約1%から約4%で石鹸;約35%から約45%でゼオライトMAP又はゼオライトA;約2%から約8%で炭酸ナトリウム(例.Na2CO3);0%から約4%で可溶性ケイ酸塩;約13%から約22%で過炭酸ナトリウム;1-8%でTAED;0%から約3%でカルボキシメチルセルロース(CMC);0%から約3%でポリマー(例.ポリカーボキシレートとPVP);0.0001-0.1%で酵素(純酵素タンパク質として計算);及び0-3%で少量の成分(例.光学的増白剤、ホスホン酸塩、香料)を含有する少なくとも600g/Lのバルク密度をもつ顆粒として調合された洗剤組成物。
【0139】
(16)上記1)-15)で述べられた洗剤調合剤であり、追加成分として又は既に指定された漂白系を置換するものとして安定化された又はカプセル充填された過酸を含むもの。
【0140】
(17)上記、1)、3)、7)、9)及び12)で述べられたような洗剤組成物であって、過ホウ酸塩が過炭酸塩に置き換えられたもの。
【0141】
(18)上記1),3),7),9),12)及び15)で述べられた洗剤組成物であって、さらにマンガン触媒を含むもの。
【0142】
(19) 例えば直鎖アルコキシル化1級アルコールのような液体非イオン性界面活性剤、助剤系(例.リン酸塩)、酵素、及びアルカリを含有する非水性液体として調合された洗剤組成物。この洗剤はまたアニオン性界面活性剤及び/又は漂白系を含む。
【0143】
別の実施態様では、2,6-β-D-フルクタン加水分解酵素が洗剤組成物に組み入れられ得、家庭用及び/又は産業用織物/洗濯のバイオフィルムの除去/洗浄に使用され得る。
【0144】
この洗剤組成物は、例えば、汚染された布地の予備処理に適した洗濯用添加剤組成物および布地柔軟剤組成物に加えられるリンス液剤等の手洗い用又は機械洗い用洗濯洗剤、として調合されても良く、または一般的に家庭用製品の堅い表面の洗浄に使用する洗剤組成物として調合されても良く、または手洗いのまたは機械による皿洗い用に調合されても良い。
【0145】
特定の場面では、この洗剤組成物は2,6-β-D-フルクタン加水分解酵素、1以上のα-アミラーゼ変異種、及び1以上の他の洗浄剤酵素、例えば、プロテアーゼ、リパーゼ、クチナーゼ、カルボヒドラーゼ、セルラーゼ、ペクチナーゼ、マンナナーゼ、アラビナーゼ、ガラクタナーゼ、キシラナーゼ、酸化酵素、ラッカーゼ、及び/又はペルオキシダーゼ、及び/又はそれらの混合物を含むことができる。一般に選択された酵素の性質は選択された洗剤に適合すべきであり(例.最適pH、他の酵素成分又は非酵素成分との適合性)、酵素は有効量で含まれている。
【0146】
プロテアーゼ:適したプロテアーゼは動物、植物又は微生物起源のものを含む。化学的に修飾された又はタンパク質工学的に操作された変異種もまた適している。このプロテアーゼはセリンプロテアーゼ又は金属プロテアーゼでも良く、例えば、アルカリ微生物プロテアーゼ又はトリプシン様プロテアーゼである。アルカリプロテアーゼの例はスブチリシン、特にバチルス属の種、例えば、スブチリシンNovo、スブチリシンCarlsberg、スブチリシン309(例えば米国特許第6,287,841号参照)、スブチリシン147、及びスブチリシン168(例えばWO89/06279参照)由来のものである。トリプシン様のプロテアーゼの例はトリプシン(例.ブタ又はウシ起源)、とフザリウムタンパク質分解酵素(Fusarium proteases)(例えば、WO89/06270とWO94/25583参照)である。有用なプロテアーゼの例はまたWO92/19729とWO98/20115に述べられた変異種も非限定的に含む。適した市販プロテアーゼ酵素はAlcalase(登録商標)、Savinase(登録商標)、Esperase(登録商標)及びKannase(商標)(Novoenzymes、以前のNovoNordisk A/S);Maxatase(登録商標)、Maxacal(商標)、Maxapem(商標)、Properase(商標)、Purafect(登録商標),Purafect OxP(商標)、FN2(商標)及びFN3(商標)(Danisco US Inc.,Genencor Division; 以前はGenencor International, Inc.として知られていた)を含む。
【0147】
リパーゼ:適したリパーゼは細菌又は菌類由来のものを含む。化学的に修飾された、又はタンパク質工学的に操作された変異種が含まれる。有用なリパーゼの例はフミコラ属(Humicola)(サーモマイセス属(Thermomyces)の同義語)のリパーゼ、例えばH.ラヌギノザ(H. lanuginosa)(T.ラヌギノスス)(例えばEP258068とEP305216参照)とH. インソレンス(H.insolens)(例えばWO96/13580参照)由来;シュードモナス属(Pseudomonas)のリパーゼ(例えば、P.アルカリゲネス(P. alcaligenes )又はP.シュードアルカリゲネス(P.pseudoalcaligenes)由来、;例えばEP218272参照)、P.セパシア(P.cepacia)(例えばEP331376参照)、P.スツトゼリ(P.stutzeri)(例えばGB1,372,034参照)、P.フルオレセンス(P.fluorescens)、シュードモナスの種の株 SD 705(例えば、WO95/06720とWO96/27002を参照)、P.ウィスコンシネンシス(P.wisconsinensis)(例えばWO96/12012参照)由来;バチラス属(Bacillus )のリパーゼ(例えば、B.スブチリス(B.subtilis)由来:例えばDartoris らBiochemica Biophysica Acta, 1131: 253-360(1993)参照),B.ステアロサーモフィラス(B. stearothermophilus)(例えばJP 64/744992参照)、又はB. プミルス(B.pumilus)(例えばWO91/16422参照)由来のものを含む。調合物で使用するため考えられている他のリパーゼ変異種は例えば、以下の文献に述べられたものを含む。WO92/05249、WO94/01541、WO95/35381、WO96/00292、WO95/30744、WO94/25578、WO95/14783、WO95/22615、WO97/04079、WO97/07202、EP407225及びEP260105。いくつかの市販のリパーゼ酵素はLipolase(登録商標)とLipolase(登録商標)Ultra(Novozymes, 以前のNovo Nordisk A/S)を含む。
【0148】
ポリエステラーゼ:適したポリエステラーゼはWO01/34899(Genencor International,Inc.)とWO01/14629(Genencor International,Inc.)に述べられていものを非限定的に含み、本明細書で述べられた他の酵素と組み合わされて含むことができる。
【0149】
アミラーゼ:組成物は他のα-アミラーゼ、例えば非変異種α-アミラーゼと組み合わせることができる。これらは市販のアミラーゼを含み得、例えばDuramyl(登録商標)、Termamyl(商標)、Fungamyl(商標)及びBAN(商標)(Novozymes、以前Novo Nordisk A/S)、Rapidase(登録商標)、及びPurastar(登録商標)(DaniscoUS Inc., Genencor Division;以前のGenencor International, Inc.)を非限定的に含みえる。
【0150】
セルラーゼ:セルラーゼは組成物に加えることができる。適したセルラーゼは細菌又は菌類由来のものである。化学的に修飾された、又はタンパク質工学的に操作された変異種が含まれる。適したセルラーゼはバチラス属、シュードモナス属、フミコラ属、フザリウム属、シエラヴィア属(Thielavia)、アクレモニウム属(Acremonium)など由来のセルラーゼ、例えば、米国特許第4,435,307号;5,648,263号;5,691,178号;5,776,757号;及びWO89/09259に開示された、フミコラ・インソレンス、マイセリオフソラ・テルモフィラ(Myceliophthora thermophila)とフザリウム・オキシスポルム(Fusarium oxysporum)から産生される菌類セルラーゼを含む。使用が考えられているセルラーゼの例は織物の色の保護に有利なものである。このようなセルラーゼの例は、例えば、EP0495257;EP531372;WO99/25846(Genencor International, Inc.)、WO96/34108(Genencor International, Inc.)、WO96/11262;WO96/29397;及びWO98/08940に述べられているセルラーゼである。他の例はセルラーゼ変異種であり、例えば、WO94/07998;WO98/12307;WO95/24471;PCT/DK98/00299;EP531315(Novo Nordisk);米国特許第5,457,046号;5,686,593号;及び5,763,254号に述べられているものである。市販のセルラーゼはCelluzyme(登録商標)とCarezyme(登録商標)(Novozymes、以前はNovo Nordisk A/S);Clazinase(商標)及びPuradax(登録商標)HA(Danisco US inc., Genencor Division;以前はGenencor International, Inc.として知られていた);及びKAC-500(B) (商標)(Kao Corporation)を含む。
【0151】
ペルオキシダーゼ/酸化酵素:組成物での使用が考えられている適したペルオキシダーゼ/酸化酵素は、植物、細菌又は菌類に起源のあるものである。化学的に修飾された又はタンパク質工学的に操作された変異種が含まれる。有用なペルオキシダーゼの例は、WO93/24618、WO95/10602、及びWO98/15257に述べられているようなコプリナス属(Coprinus)由来のペルオキシダーゼを含み、例えば、C.シネレウス(C.cinereus)由来のもの及びそれらの変異種由来のペルオキシダーゼを含む。
【0152】
洗剤酵素は、1以上の酵素を含む別の添加物、またはこれらの酵素の全てを含有する混合添加物を加えることにより洗剤組成物に含まれても良い。洗剤添加物、つまり、別の添加物又は混合添加物は、顆粒、液体、スラリー等として調合されても良い。適した顆粒洗剤添加物調合物は非粉塵性顆粒を含む。
【0153】
非粉塵性の顆粒は、例えば米国特許第4,106,991号、及び4,661,452号で開示されているように製造されても良く、任意に本技術分野で知られている方法により皮膜されても良い。ロウ状の皮膜物質の例は、1,000から20,000の平均分子量をもつポリ(エチレンオキシド)製品(例.ポリエチレングリコール、PEG);16から50個のエチレンオキシド単位をもつエトキシル化ノニルフェノール;アルコールが12個から20個の炭素原子を含み、15個から80個のエチレンオキシド単位が含まれるエトキシル化された脂肪族アルコール;脂肪族アルコール;脂肪酸;及び脂肪酸のモノ-とジ-及びトリグリセリドである。流動床法の適用に適した薄膜生成皮膜物質の例は、例えばGB1483591に記載されている。液体酵素調製物は、例えば、プロピレングリコールのようなポリオール、糖または糖アルコール、乳酸またはホウ酸を確立した方法に従い加えることにより安定化されても良い。保護された酵素はEP238216で開示された方法に従い調製されても良い。
【0154】
洗剤組成物は便利な形体、例えば塊、錠剤、ゲル、粉末、顆粒、ペースト、又は液体でもよい。液体洗剤は水溶液でも良く、通常は、約70%までの水と0%から約30%までの有機溶媒を含む。30%未満の水を含む小型洗剤ゲルもまた考えられている。この洗剤組成物は1以上の界面活性剤を含み、これらは非イオン性でも良く、半極性、アニオン性、カチオン性、双性イオン性又はそれらのいずれかの組み合わせでも良い。この界面活性剤は通常、重量で0.1%から60%の水準で含有される。
【0155】
本発明に使用する場合では、洗剤は通常約1%から約40%のアニオン性界面活性剤、例えば直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩(脂肪族アルコール硫酸エステル)、アルコールエトキシサルフェート、2級アルカンスルホネート、α-スルホ脂肪酸メチルエステル、アルキル-またはアルケニルコハク酸、または石鹸を含む。
【0156】
本発明に使用する場合では、洗剤は、アルコールエトキシレート、ノニルフェノールエトキシレート、アルキルポリグリコシド、アルキルジメチルアミンオキシド、エトキシル化脂肪酸モノエタノールアミド、脂肪酸モノエタノールアミド、ポリヒドロキシアルキル脂肪酸アミド、またはグルコサミンのN-アシル-N-アルキル誘導体(「グルコサミド」)のような非イオン性界面活性剤を普通、約0.2%から約40%含む。
【0157】
洗剤は、0%から約65%の洗剤助剤又錯体形成剤を含んでも良い。例えば、ゼオライト、2リン酸塩、3リン酸塩、ホスホン酸塩、炭酸塩、クエン酸塩、ニトリロ3酢酸、エチレンジアミン4酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミン5酢酸、アルキル-又はアルケニルコハク酸、可溶性ケイ酸塩または層化ケイ酸塩(例.ヘキストのSKS-6)を含んでも良い。
【0158】
洗剤は1以上のポリマーを含んでも良い。例は、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリ(ビニルピロリドン)(PVP)、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)、ポリ(ビニルピリジン-N-オキシド)、ポリ(ビニルイミダゾール)、ポリカルボキシレート、例えばポリアクリレート、マレイン酸/アクリル酸コポリマー、及びメタクリル酸ラウリル/アクリル酸コポリマーである。
【0159】
洗剤はH2O2源、例えば過ホウ酸塩または過炭酸塩を含んでも良い漂白系を含んでも良く、過酸形成漂白活性化剤(例.テトラアセチルエチレンジアミン又はノナノイロキシベンゼンスルホン酸塩)と組み合わされても良い。または、漂白系はペルオキシ酸(例.アミド-、イミド-、又はスルホン型ペルオキシ酸)を含んでも良い。漂白系はまた、酵素漂白系でありえる。
【0160】
洗剤組成物の酵素は従来の安定化剤、例えば、ポリオール(例.プロピレングリコールまたはグリセロール)、糖または糖アルコール、乳酸、ホウ酸、ホウ酸誘導体(例.芳香族ホウ酸エステル)、又はフェニルホウ酸誘導体(例.4−ホルミルフェニルホウ酸)を用いて安定化されても良い。この組成物はWO92/19709とWO92/19708で述べられたように調合されても良い。
【0161】
洗剤はまた他の従来の成分を含んでも良い。例えば、粘土、発泡剤、発泡抑制剤、腐食防止剤、汚れ懸濁剤、汚れ再沈着防止剤、染料、殺菌剤、光学的増白剤、ヒドロトロープ、変色防止剤又は香料である。
【0162】
洗剤組成物では、酵素変異種は洗浄液の1リットル当たり約0.01から約100mgの酵素に対応する量で、特に、洗浄液1リットル当たり約0.05から約5.0mgの酵素に対応する量で、又は、さらに洗浄液1リットル当たり0.1から約1.0mgの酵素に対応する量で加えられても良い。
【0163】
6.1.洗剤組成物の評価方法
多くのα-アミラーゼ洗浄定量法が存在する。洗浄試験の例は以下の内容を含む。「試験見本(swatch)」とは汚れを付着した布地のような材料である。この材料は、例えば、綿、ポリエステル又は天然及び合成繊維の混合物でありえる。または、この材料は紙、例えば、ろ紙またはニトロセルロース、又は堅い材料、例えば陶器、金属又はガラスのような材料である。α-アミラーゼについては、汚れはデンプンが基礎であるが、血液、牛乳、インク、草、茶、ワイン、ホウレン草、肉汁、チョコレート、卵、チーズ、粘土、色素、オイル、又はこれらの化合物の混合物を含み得る。一実施態様ではα-アミラーゼ変異種はBMI(血液/牛乳/インク)定量で試験される。
【0164】
「小型試験見本」は、例えば一孔パンチにより切り抜かれた、または特別注文の96孔パンチ(この多孔パンチのパターンは標準的96孔のマイクロタイタープレート(microtiter plate)に適合している)で切り抜かれた試験見本であり、または試験見本から別のやり方で取った試験見本の一部である。この試験見本は織物、紙、金属又は他の適した材料でも良い。小型の試験見本は24-,48-、又は96-孔のマイクロタイタープレートの孔へ入れられる前又は後に汚れを付けることができる。この小型試験見本はまた、汚れを小片の材料に付けることにより作ることができる。例えば、小型の試験見本は、直径5/8’’または0.25”の汚れのついた布地片でありえる。この特別注文のパンチは96孔のプレートの全ての孔に同時に96個の試験見本を置くように設計されている。この装置は、複数回、同じ96孔のプレートを置くだけで1孔当たり1個以上の試験見本を入れることができる。多数孔のパンチ装置は、24孔、48孔、及び96孔いずれをも非限定的に含む、いずれの様式のプレートにも同時に試験見本を入れるように工夫することができる。別の工夫では、汚れの付いた試験プラットフォーム(test platform)は、汚れ物質で皮膜された、金属、プラスチック、ガラス、陶器又は他の適した材料でできたビーズでも良い。1以上の皮膜されたビーズは、次に、適した緩衝液と酵素を含む96-、48-、又は24-孔のプレート又はさらに孔の多い型のプレートに置かれる。この場合、上澄液は直接的な吸光度の測定又は二次的な発色反応後の吸光度測定により遊離した汚れについて試験されえる。遊離した汚れの分析はまた質量分析によっても行うことができる。
【0165】
一実施態様では、処理試験手順は汚れの固定の程度を調整する。結果として、試験を受けている酵素の存在しない条件で洗浄されたとき、種々の量の汚れを遊離する試験見本を作ることが可能である。汚れの定量において汚れを固定した試験見本の使用はシグナル-ノイズ比の劇的な改善をもたらす。さらに、汚れの固定の程度を変えることにより、種々の洗浄条件で最良の結果を与える汚れを作ることができる。
【0166】
種々の材料に既知の「強度」の汚れをもつ試験見本は購入可能である(EMPA、St. Gallen,スイス;Testgewebe GmbH, Krefeld ドイツ、またはCenter for Test Materials, Vlaardingen, オランダ)及び/又は技術者が作ることができる(MorrisとPrato、Textile Research Journal 52(4):280-286(1982))。試験見本は、例えば、血液/牛乳/インク(BMI)、ホウレン草、草又はチョコレート/牛乳/すすにより作られた汚れを含む、綿を含む布地を含むことができる。BMI汚れは、例えば0.0003%から0.3%の過酸化水素で綿に固定できる。他の組み合わせは0.001%から1%のグルタルアルデヒドで固定された草またはホウレン草
、0.001%から1%グルタルアルデヒドで固定されたゼラチンとクーマシー(Coomassie)汚れ、又は0.001%から1%グルタルアルデヒドで固定されたチョコレート、牛乳及びススを含む。
【0167】
試験見本はまた、酵素及び/又は洗剤調合物とともに保温されている間に撹拌されても良い。洗浄性能データは、特に96孔のプレートでは、孔中の試験見本の向き(水平対垂直)により変わる。これは保温中の混合が不十分であることを示す。保温中の十分な撹拌を確保する多くの方法はあるが、ミクロタイタープレートを2枚のアルミニウムの板の間に挟むプレートホルダーを作成できる。これは、例えば孔上に付着性のプレートシーラーを置き、そして、いずれかの種類の適切な、市販クランプで96-孔プレートを2枚のアルミニウムのプレートで挟むようにして簡単にできる。次にこれは、市販のインキュベータシェイカー上へ置かれる。シェイカーを約400rpmに設定すると、非常に効率的な混合となり、一方ホルダーにより漏れや交差汚染が効率的に防止できる。
【0168】
トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)は洗浄液のアミノ基の濃度を定量するために使用できる。これは試験見本から除去されたタンパク質の量の尺度として役に立つ。(例えば、CayotとTainturier, Anal.Biochem.249:184-200(1997)参照)しかし、洗剤又は酵素のサンプルが、異常な小さいペプチド断片の形成をするときは(例えば、サンプル中のペプチダーゼの存在により)、大きいTNBSシグナルを得るであろう、つまり「ノイズ」が大きくなる。
【0169】
血液/牛乳/インクの洗浄性能を測定する別の手段は、洗浄液の吸光度を測定することにより定量され得るインクの遊離に基づく。吸光度は350nmと800nmの間のいずれかの波長で測定できる。一実施態様では、波長は410nm又は620nmで測定される。洗浄液はまた、草、ホウレン草、ゼラチン、クーマシー汚れを含む汚れについて洗浄性能を決定するために試験される。これらの汚れについて適した波長はホウレン草または草ついて670nm、またはゼラチンまたはクーマシー汚れについて620nmである。例えば、洗浄液の一部(例えば、通常96孔マイクロプレートからの100-150μL)を採取して、セル又は多孔マイクロプレートに入れる。これを次に、分光光度計に置き、吸光度を適した波長で読む。このシステムはまた、例えば、布、プラスチック又は陶器のような適した基体上の血液/牛乳/インク汚れを使用して、皿洗いに適した酵素及び/又は洗剤剤組成物を決定するために使うこともできる。
【0170】
一面では、BMI汚れは、30分間25℃でBMI/綿試験見本に0.3%過酸化水素を使用することにより、または30分間60℃でBMI/綿試験見本に0.03%過酸化水素を使用することにより綿へ固定される。約0.25インチの小さな試験見本はBMI/綿試験見本から切り出され、96孔のミクロタイタープレートの孔に置かれる。各孔へ、洗剤組成物と変異タンパク質のような酵素との既知の混合物が加えられる。ミクロタイタープレートの上へ付着性プレートシーラーを置いた後、このミクロタイタープレートはアルミニウムの板で挟まれ、約10分から60分間約250rpmでオービタルシェイカー(orbital shaker)上で撹拌される。この時間が終了した時、上澄み液が新しいマイクロタイタープレートの孔へ移され、620nmでのインクの吸光度が測定される。これは、0.01%グルタルアルデヒドをホウレン草/綿試験見本又は草/綿試験見本に25℃で30分間適用することにより綿に固定されたホウレン草汚れ又は草汚れについて同様に試験できる。同じことはチョコレート、牛乳、及び/またはススの汚れについて行うことができる。
【0171】
7.バイオフィルムの除去用組成物と使用
本組成物は主要な酵素成分として1個のα-アミラーゼ変異種を含んでも良く、例えば、バイオフィルム除去に使用する単一成分組成物でも良い。または、本組成物は多数の酵素活性を含んでも良く、例えば、多数のアミラーゼ、またはアミノペプチダーゼ、アミラーゼ(β-又はα-又はグルコ-アミラーゼ)、カーボヒドラーゼ、カルボキシペプチダーゼ、カタラーゼ、セルラーゼ、キチナーゼ(chitinase)、クチナーゼ(cutinase)、シクロデキストリン グルコシル転移酵素、デオキシリボヌクレアーゼ、エステラーゼ、α-ガラクトシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、α-グルコシダーゼ、β-グルコシダーゼ、ハロペルオキシダーゼ、インベルターゼ(invertase)、ラッカーセ、リパーゼ、マンノシダーゼ、酸化酵素、ペクチン分解酵素、ペプチドグルタミナーゼ、ペルオキダーゼ、フィターゼ、ポリフェノール酸化酵素、タンパク質分解酵素、リボヌクレアーゼ、トランスグルタミナーゼ、及び/またはキシラナーゼ、又はそれらの混合物を含む、バイオフィルム除去のための複数のアミラーゼ、又は酵素の組み合わせを含んでも良い。この追加の酵素は、アスペルギルス属に属する微生物、例えば、A.・アクレアツス(A.aculeatus)、A.・アワモリ(A. awamori)、A・ニゲル(A.niger)、又はA. オリゼ(A.oryzae);又はトリコデルマ属(Trichoderma) に属する微生物;フミコラ属(Humicola) に属する微生物、例えばH.インソレンス(H. insolens);又はフザリウム属(Fusarium) に属する微生物、例えば、F・バクトリジオイデス(F. bactridioides)、F・セレアリス(F. cerealis)、F・クルックウェレンセ(F. crookwellense)、F・クルモラム(F. culmorum)、F・グラミネアルム(F. graminearum)、F・グラミヌム(F. graminum)、F・ヘテロスポルム(F. heterosporum)、F・ネグンジ(F. negundi)、F・オキシスポルム(F. oxysporum)、F・レチキュラタム(F. reticulatum)、F・ロゼウム(F. reseum)、F・サンブシナム(F. sambucinum)、F・サルコクロウム(F.sarcochroum)、F・スルフレウム(F. sulphureum)、F・トルロセウム(F. toruloseum)、F・トリコテシオイデス(F. trichothecioides)又はF・ベネナタム(F. venenatum)により産生されても良い。
【0172】
α-アミラーゼ変異種を含む組成物は本技術分野で知られている方法に従い調製されても良く、液体または乾燥組成物の形であっても良い。例えば、α-アミラーゼ変異種を含む組成物は顆粒又は微小顆粒の形であっても良い。本組成物に含まれるポリペプチドは本技術分野で知られている方法に従い安定化されても良い。
【0173】
ポリペプチド組成物の使用については以下に例が与えられている。α-アミラーゼ変異種含有組成物の使用量とこの組成物が使用される他の条件は本技術分野で知られている方法に基づいて決定されても良い。α-アミラーゼ変異種はさらに2,6-β-D-フルクタン加水分解酵素又はその変異種とともに組成物の中で使用されるように意図されている。
【0174】
一面においては、バイオフィルムを分解(disintegration)及び/又は除去する。本明細書で使用する場合、用語「分解」はバイオフィルム中の個々の微生物細胞を結合するバイオフィルムマトリックス中の多糖の加水分解として理解されるべきであり、これにより微生物細胞はバイオフィルムから遊離し除去されえる。バイオフィルムが表面に付着し、バイオフィルムの分解は表面を水性溶媒と接触させる、例えば、浸し、覆い又は液をかけることにより行うことができる。ここでこの水性溶媒はα-アミラーゼ変異種と、バイオフィルムを破壊できる、任意に1以上の他の酵素、例えば2,6-β-D-フルクタン加水分解酵素を非限定的に含む。本組成物は、ぬめりの加水分解、例えば、パルプ及び製紙産業での白水を加水分解するために使用できる。
【0175】
α-アミラーゼ変異種は0.0001から10000mg/L、0.001-1000mg/L、0.01-100mg/Lまたはさらに0.1-10mg/Lの量で含まれる。追加の酵素と酵素変異種は同様の量またはそれ未満で含まれても良い。この方法は周囲温度から約70℃の温度で行われても良い。適した温度範囲は約30℃から約60℃、例えば、約40℃から約50℃である。
【0176】
バイオフィルムの加水分解に適したpHは約3.5から約8.5の範囲内にある。特に適したpH範囲は約5.5から約8であり、例えば、約6.5から約7.5である。バイオフィルムの性質と、表面が酵素変異種のみ又は他の酵素、例えば2,6-β-D-フルクタン加水分解酵素と組み合わせて処理される頻度により、酵素変異種が効果的にバイオフィルムを除去するための接触時間と反応時間は大きく変わる。しかし、適した反応時間は約0.25から約25時間の範囲内である。特に適した反応時間は、約1から約10時間、例えば、約2時間である。
【0177】
セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、キシラナーゼ、他のα-アミラーゼ等の他のアミラーゼ、リパーゼ、プロテアーゼ、及び/又はペクチナーゼ等の他のアミラーゼを非限定的に含む追加の酵素は、α-アミラーゼ変異種と2,6-β-D-フルクタン加水分解酵素と組み合わせることができる。この酵素はさらに酵素的又は非酵素的殺菌剤のような抗微生物剤と組み合わせることもできる。酵素的殺菌剤は、例えばWO97/42825及びDK 97/1273に記載されているような酸化還元酵素、例えばラッカーセ又はペルオキシダーゼ、特にハロペルオキシダーゼ、及び任意に強化剤、例えばアルキルシリンゲート(alkyl syringate)を含む組成物でも良い。
【0178】
バイオフィルムが取り除かれ及び/又は洗浄により取り去られる表面は堅い表面でも良い。堅い表面とは定義によれば本質的に微生物を浸透させないいずれかの表面に関する。例には金属、例えばステンレス鋼合金、プラスチック/合成ポリマー、ゴム、板、ガラス、木、紙、コンクリート、岩、大理石、石膏及び陶磁器からなる表面であり、任意にペンキ、エナメル、ポリマー等により皮膜されても良い。従って、この表面は水溶液を保持し、運搬、処理し又はこれと接触するシステムの一部でも良く、例えば、水供給システム、食品加工システム、冷却システム、化学処理システム、医薬品製造システム又は、例えばパルプ及び/又は製紙産業で見出されるような木材処理システムの一部でも良い。従って、酵素変異種と酵素変異種を含む組成物は従来のクリーニングーインープレース(cleaning-in-place,C-I-P)システムで有用である。この表面はパイプ、タンク、ポンプ、膜、フィルター、熱交換器、遠心分離機、濃縮器、混合機、スプレー塔、バルブ及び反応機のようなシステム装置の一部でも良い。この表面はまた、内視鏡、身体障害補助機器又は医療用移植体のような医療科学及び産業で使用される器具又はその一部でも良い。
【0179】
バイオフィルム除去用組成物はまた、金属表面、例えば、パイプラインが微生物バイオフィルムよる攻撃されたとき生じる、いわゆる生物学的腐食(bio-corrosion)を予防することも意図されている。この組成物はバイオフィルムを分解し、それによりバイオフィルムの微生物の細胞がバイオフィルムが付着している金属表面を腐食させるようなバイオフィルムの環境を作ることを予防する。
【0180】
7.1 口腔衛生組成物
抗バイオフィルム組成物の別の用途は口腔衛生を含む。例えば、表面は歯垢のついた歯を含む。したがって、この変異酵素は組成物、例えば練り歯磨き、及びヒト又は動物の歯に存在する歯垢の分解用の酵素変異種を含む医薬を調製する方法に使用できる。さらなる用途は粘膜のバイオフィルム、例えば、嚢胞性線維症を罹患する患者の肺のバイオフィルムの分解である。この表面はまた、生物学的起源の表面、例えば皮膚、歯、髪、爪のような表面でも良く、または汚染を受けたコンタクトレンズでも良い。
【0181】
口腔衛生用組成物で有用な他の酵素は、2,6-β-D-フルクタン加水分解酵素;デキストラナーゼ;ミュータナーゼ;酸化酵素、例えばグルコース酸化酵素、L-アミノ酸酸化酵素のような酸化酵素;ペルオキダーゼ、例えばWO95/10602で述べられているコプリナス(Coprinus)属の種のペルオキシダーゼまたはラクトペルオキダーゼ;ハロペルオキダーゼ、特にクルブラリア(Curvurlaria)属の種由来のハロペルオキシダーゼ、特にC.ベルキュロサ(C.verruculosa)及びC.イナエクアリス(C.inaequalis)由来のもの;ラッカーゼ(laccase);プロテアーゼ、例えばパパイン;酸性プロテアーゼ(例.WO95/02044に述べられている酸性プロテアーゼ);エンドグルコシダーゼ;リパーゼ;アミログルコシダーゼ、例えばAMG(商標)(Novozymes、以前はNovo Nordisk A/S)を含むアミラーゼ;抗微生物酵素;及びそれらの混合物を非限定的に含む。口腔衛生製品は、任意に米国特許第6,207,149号に開示されているようなデンプン結合ドメインを含んでも良い。
【0182】
口腔衛生組成物は、どのような適した物理的形状、つまり粉末、、ペースト、ゲル、液体、軟膏、錠剤等の適した物理的形状を取っても良い。「口腔衛生組成物」はむし歯の予防、歯垢と歯石の形成の予防、歯垢と歯石の除去、歯の疾患の予防及び/又は治療等により人と動物の口の口腔内衛生を維持又は改善するために使用できる組成物を含む。口腔衛生組成物はまた、入れ歯、人工の歯等の洗浄用の製品をも含む。口腔衛生組成物の例は練り歯磨き、歯のクリーム、ゲル、又は歯用粉末、歯と口の洗浄、歯磨き前または後のすすぎ用調合剤、チューインガム、薬用ドロップ、キャンディーを含む。練り歯磨きと歯磨き用ゲルは通常、研磨性の材料、発泡剤、香味料、湿潤剤、結合剤、増粘剤、甘味剤、増白/漂白/汚れ除去剤、水及び、任意に酵素を含む。歯垢除去液等の口腔洗浄剤は、通常水/アルコール溶液、香味料、湿潤剤、甘味剤、発泡剤、着色剤及び任意に酵素を含む。
【0183】
研磨性材料は、また口腔衛生組成物に組み入れられる。従って、研磨性材料はアルミナとその水和物、例えばα-アルミナ3水和物;マグネシウム3ケイ酸塩;炭酸マグネシウム;カソリン、焼成されたケイ酸アルミニウムとケイ酸アルミニウム;炭酸カルシウム;ケイ酸ジルコニウム;及び、粉末プラスチック、例えば、ポリ塩化ビニル;ポリアミド;ポリメチルメタクリレート;ポリスチレン;フェノール-ホルムアルデヒド樹脂;メラニン-ホルムアルデヒド樹脂;尿素-ホルムアルデヒド樹脂;エポキシ樹脂;粉末ポリエチレン;シリカキセロゲル;ヒドロゲルとエアロゲル等を含むことができる。また、ピロリン酸カルシウム;水不溶性アルカリメタホスフェート;リン酸2カルシウム及び/またはその2水和物、オルトリン酸2カルシウム、リン酸3カルシウム;微粒子のヒドロキシアパタイト等もまた研磨剤として適している。これらの物質の混合物を用いることもまた可能である。口腔衛生組成物により、研磨性製品は、重量で約0%から約70%、例えば、約1%から約70%で含まれても良い。練り歯磨きでは、研磨性材料の含量は通常、最終の練り歯磨きの重量に対し10%から70%の範囲にある。
【0184】
例えば湿潤剤が練り歯磨きから水分の損失を防ぐために使用される。適した口腔衛生用組成物での使用に適した湿潤剤はグリセロール;ポリオール;ソルビトール;ポリエチレングリコール(PEG);プロピレングリコール;1,3-プロパンジオール;1,4-ブタンジオール;水素添加された部分的に加水分解された多糖等及びそれらの混合物を含む。湿潤剤は、練り歯磨に重量で一般的に0%から約80%または約5%から約70%で含まれる。
【0185】
シリカ、デンプン、トラガカントガム、キサンタンガム、アイルランドコケの抽出物、アルギネート、ペクチン、セルロース誘導体、例えばヒドロキシエチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース及びヒドロキシプロピルセルロース、ポリアクリル酸とその塩、ポリビニルピロリドンが、練り歯磨き製品を安定化する適した増粘剤と結合剤の例である。増粘剤は練り歯磨きクリームとゲルに最終製品の重量で約0.1%から約20%で含まれても良く、結合剤は最終製品の重量で約0.01から約10%で含まれても良い。
【0186】
石鹸、アニオン性、カチオン性、非イオン性、両性及び/または双性イオン性界面活性剤等の発泡剤が使用できる。これらは、最終製品の0%から約15%の水準で、約0.1から約13%、またはさらに約0.25%から約10%で含まれても良い。界面活性剤は本酵素を不活性にしない限度で適している。界面活性剤は脂肪酸アルコールの硫酸塩、10から20炭素原子をもつスルホン化されたモノグリセリド又は脂肪酸の塩、脂肪酸-アルブミン縮合生成物、脂肪酸アミドとタウリンの塩、及び/又はイセチオン酸の脂肪酸エステルの塩を含む。
【0187】
適した甘味料は調合剤での使用に適したサッカリンを含む。香味料は、例えばスペアミントは、普通少量で含まれる、例えば、重量で約0.01%から約5%、特に約0.1%から約5%で含まれる。白色化剤/漂白剤はH2O2を含み、最終製品の重量で計算したとき、約5%未満の量、又は約0.25%から約4%で加えられてもよい。白色化剤/漂白剤は酵素でも良く、例えば、酸化還元酵素でも良い。適した歯の漂白酵素の例はWO97/06775(Novo Nordisk A/S)で述べられる。水が普通、組成物に、例えば練り歯磨きに、流動可能な形体を与える量で加えられる。水溶性抗菌剤は、例えば、クロルヘキシジンジグルコネート、ヘキセチジン、アレキシジン、トリクロサン(登録商標)、四級アンモニウム抗菌化合物と亜鉛、銅、銀と錫(例.塩化亜鉛、塩化銅及び塩化錫及び硝酸銀)のようなある金属イオンの水溶性の源もまた含まれる。使用できる追加の化合物はフッ素イオン源、染料/着色剤、保存剤、ビタミン、pH-調整剤、虫歯予防剤、脱感作剤等を含む。
【0188】
酵素は上記の口腔衛生組成物においても有用である。口腔の洗浄に使用されるとき酵素はいくつかの利点を提供する。プロテアーゼは、唾液タンパク質(これは歯の表面に吸着され、浮きカス、その結果生じる歯垢の第1層、を形成する。)を分解する。リパーゼとともにプロテアーゼは細菌の細胞壁と膜の構成成分を形成するタンパク質と脂質を分解させることにより細菌を破壊する。デキストラナーゼと他のカーボヒドロラーゼ、例えば、2,6-β-D-フルクタン加水分解酵素は、細菌が付着するマトリックスを形成する、細菌により産生される有機物の骨組み構造を分解する。プロテアーゼとアミラーゼは歯垢の形成を予防するだけでなく、カルシウムに結合する炭水化物-タンパク質複合体を分解することにより鉱化の進展も予防する。
【0189】
練り歯磨きは通常、以下の成分を含む(最終練り歯磨組成物の重量で):約70%までで研磨材料;0から約80%で湿潤剤;増粘剤:約0.1%から約20%;結合剤;約0.01%から約10%;甘味剤:約0.1%から約5%;発泡剤:0%から約15%;白色化剤:0%から約5%;及び酵素:約0.0001%から約20%。一実施態様では、練り歯磨きは約6.0から約8.0の範囲のpH;約10%から約70%の研磨剤;0%から約80%の湿潤剤;0.1%から約20%の増粘剤;0.01%から約10%の結合剤;約0.1%から約5%の甘味剤;0%から約15%の発泡剤;0%から5%の漂白剤;約0.0001%から約20%の酵素を有す。一実施態様では、練り歯磨きは約6.0から約8.0の範囲にpHを有し、約10%から約70%で研磨剤を、0%から約80%で湿潤剤を;0.1%から約20%で増粘剤を;0.01%から約10%で結合剤を;約0.1%から約5%で甘味料を;0%から約15%で発泡剤を;0%から約5%で白色化剤を;及び約0.0001%から約20%で酵素を含む。これらの酵素はα-アミラーゼ変異種のみを、又は他の酵素、例えば2,6-β-D-フルクタン加水分解酵素と組み合わせて含み、任意に上記の他の種類の酵素を含む。
【0190】
口腔洗浄剤は通常以下の成分を含む(最終口腔洗浄組成物の重量で):0%から約20%の湿潤剤;0%から約2%の界面活性剤;0%から約5%の酵素;0%から約20%のエタノール;0%から約2%の他の成分(例えば、香味料、フッ化物のような比較的甘い有効成分)本組成物は、また約0%から約70%の水も含むことが出来る。この口腔洗浄剤は適当な緩衝剤、例えばクエン酸ナトリウム又はリン酸ナトリウムにより約6.0から約7.5へ緩衝化されている。この口腔洗浄剤は、稀釈されていない状態(つまり、使用前に稀釈される)でも良い。この口腔衛生組成物は口腔衛生の技術分野で知られている従来のいずれの方法を使用して生産されても良い。
【0191】
8.デンプン加工組成物と使用
別の局面では、開示されたα-アミラーゼ変異種を有する組成物はデンプンの液化及び/又は糖化のため利用できる。デンプンの加工は甘味料の生産、燃料又は飲料用のアルコール(つまり、飲料用アルコール)の生産、飲料水の生産、サトウキビからの糖の加工、または欲する有機化合物、例えば、クエン酸、イタコン酸、乳酸、グルコン酸、ケトン、アミノ酸、抗生物質、酵素、ビタミンおよびホルモンの生産に有用である。デンプンのフルクトースシロップへの変換は普通、3個の連続した酵素工程からなる。:液化工程、糖化工程及び異性化工程である。液化工程では、B.リケニフォリミス・α-アミラーゼ変異種はpH約5.5と約pH6.2の間のpH、約95℃から約160℃の温度、約2時間でデンプンを分解してデキストリンとする。約1mMのカルシウム(40ppmの遊離カルシウムイオン)が通常加えられ、これらの条件下で酵素の安定性を最適化する。他のα-アミラーゼ変異種は異なる条件を必要とするかもしれない。
【0192】
液化工程の後、デキストリンはグルコアミラーゼ(例.AMG(商標))、任意にデブランチング(debranching)酵素、例えば、イソアミラーゼ又はプルラナーゼ(例.プロメタザイム(登録商標))の添加によりデキストロースへ変換できる。この工程の前にpHは約4.5未満に下げられ、高温(95℃より高温)を維持し、液化α-アミラーゼ変異種の活性は変性される。温度を60℃まで下げ、グルコアミラーゼとデブランチング酵素が加えられる。この糖化工程は通常約24時間から約72時間行われる。
【0193】
糖化工程の後、pHは約6.0から約8.0の範囲、例えばpH7.5にまで上げられ、カルシウムがイオン交換により除かれる。このデキストロースシロップは、例えば、次に、固定化グルコース異性化酵素(例えばSweetzyme(登録商標))を用いて高含量のフルクトースシロップへ変換される。
【0194】
α-アミラーゼ変異種は液化工程を行うための少なくとも1個の改善された酵素の性質を提供しても良い。例えば、変異α-アミラーゼは比較的高い活性を有しても良く、またはカルシウムの要求性が低くても良い。遊離カルシウムの添加がα-アミラーゼの高い安定性を適切に保つために必要とされる。しかし、遊離カルシウムは、グルコース異性化酵素の活性を強力に抑制する。従って、カルシウムは、多くの費用のかかる装置の操作により遊離カルシウムの水準を3-5ppm未満にまで異性化工程の前に除去されるべきである。そのような操作が避けられ、液化工程が遊離のカルシウムイオンを加えることなく行い得るならば、費用の節減が可能である。例えば、カルシウムイオンを要求しないまたはカルシウムの要求が低いα-アミラーゼ変異種は特に有利である。例えば、カルシウム依存性が小さいα-アミラーゼ変異種(低濃度の遊離カルシウム(<40ppm)において安定で高活性)は組成物、操作において利用できる。そのようなα-アミラーゼ変異種は約4.5から約6.5、例えば、約pH4.5から約pH5.5の範囲で最適のpHを持つべきである。このα-アミラーゼ変異種は特異的加水分解を行うため、それのみで使用でき、または他のアミラーゼと組み合わされて広い範囲の活性をもつ「カクテル」を提供できる。
【0195】
加工を受けるデンプンは高度に精製されたデンプン品質をもち、例えば、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%または少なくとも99.5%の純度である。または、デンプンは胚残留物と繊維のようなデンプンではない部分を含む、全穀粒を製粉したものを含むもっと純度の低いデンプンを含み得る。この原料、例えば、全穀粒は、製粉され中身が開かれ、さらに加工を受けることができる。2種の製粉方法が適している。:湿式と乾式製粉である。また、トウモロコシの粒、製粉されたトウモロコシの粒も使用できる。乾式に製粉された粒は、デンプンに加え相当量のデンプンではない炭水化物化合物を含む。このような不均一の原料がジェットクッキング(jet cooking)により加工されるとき、デンプンの部分的なゼラチン化のみが起こることが多い。従って、ゼラチン化されていないデンプンに対する高い活性をもつα-アミラーゼ変異種は、ジェットクッキングを受けた乾式に製粉されたデンプンの液化及び/又は糖化を含む工程に使用することが有利である。
【0196】
好ましいことに液化工程における優れた加水分解活性をもつ変異α-アミラーゼは、糖化工程の効率を高め、糖化工程においてグルコアミラーゼを必要性を増大させる(WO98/22613(Novo Nordisk A/S)参照)。このグルコアミラーゼは0.5グルコアミラーゼ活性単位(AUG)/g DS(つまり、乾燥固体1g当たりのグルコアミラーゼ活性)以下、またはさらに低い量で含まれる。このグルコアミラーゼはアスペルギルス属の種、タラロマイセス属の種、パチキトスポラ属の種(Pachykytospora sp.)、またはトラメテス属の種(Trametes sp.)の株から採られ、例えばアスペルギルス・ニゲル、タラロマイセス・エメルソニ(Talaromyces emersonii)、トラメテス・シングラタ(Trametes cingulata)またはパチキトスポラ・パピラセア(Pachykytospora papyracea)から採られる。一実施態様では本法はまた、WO98/22613で開示された炭水化物結合ドメインの使用も含む。
【0197】
さらに別の局面では、本法はゼラチン化された又は顆粒デンプンのスラリーの加水分解、特に顆粒デンプンを、顆粒デンプンの初期ゼラチン化温度より低い温度で顆粒デンプンを可溶デンプン加水分解物に加水分解することを含んでも良い。α-アミラーゼ変異種と接触することに加えて、デンプンは菌類α-アミラーゼ(EC3.2.1.1)、β-アミラーゼ(EC3.2.1.2)とグルコアミラーゼ(EC 3.2.1.3)からなる群から選択された1以上の酵素と接触しても良い。
【0198】
一実施態様では、本法は初期ゼラチン化温度より低い温度で行われる。そのような方法は低くとも30℃、低くとも31℃、低くとも32℃、低くとも33℃、低くとも34℃、低くとも35℃、低くとも36℃、低くとも37℃、低くとも38℃、低くとも39℃、低くとも40℃、低くとも41℃、低くとも42℃、低くとも43℃、低くとも44℃、低くとも45℃、低くとも46℃、低くとも47℃、低くとも48℃、低くとも49℃、低くとも50℃、低くとも51℃、低くとも52℃、低くとも53℃、低くとも54℃、低くとも55℃、低くとも56℃
、低くとも57℃、低くとも58℃、低くとも59℃、低くとも60℃で行われることが多い。本法が行われるpHは約3.0から約7.0、約3.5から約6.0、または約4.0から約5.0の範囲にあっても良い。一局面では、例えば、約32℃、例えば30℃から35℃でエタノールを生産するため酵母による発酵を含む方法を考えている。別の局面では、本法は、エタノールを生産するため酵母による、または目的とする有機化合物を生産するために別の適した発酵生物による、例えば、30℃から35℃の温度で、例えば、約32℃で糖化と発酵を同時に行うことを含む。上記の発酵法では、エタノール含量は少なくとも約7%、少なくとも約8%、少なくとも約9%、少なくとも約9%、少なくとも約10%、少なくとも約11%、少なくとも約12%、少なくとも約13%、少なくとも約14%、少なくとも約15%、少なくとも約16%に達する。
【0199】
上記の局面のいずれかで使用されるデンプンスラリーは約20%から約55%の乾燥固体顆粒デンプン、約25%から約40%の乾燥固体顆粒デンプン、または約30%から約35%の固体顆粒デンプンを含んでも良い。この酵素変異種は顆粒デンプンの可溶デンプンを可溶デンプン加水分解物に少なくとも85%の量で、少なくとも86%の量で、少なくとも87%の量で、少なくとも88%の量で、少なくとも89%の量で、少なくとも90%の量で、少なくとも91%の量で、少なくとも92%の量で、少なくとも93%の量で、少なくとも94%の量で、少なくとも95%の量で、少なくとも96%の量で、少なくとも97%の量で、少なくとも98%の量で、または少なくとも99%の量で変換する。
【0200】
別の実施態様では、α-アミラーゼ変異種は、ジェットクッキングによるゼラチン化を非限定的に含む、ゼラチン化されたデンプンの液化または糖化の工程で使用される。本法は発酵製品、例えばエタノールを生産するための発酵を含む。発酵によりデンプン含有原料からエタノールを生産するそのような方法は、(i)α-アミラーゼ変異種によるデンプン含有原料の液化、(ii)得られた液体化マッシュの糖化;及び(iii)発酵生物の存在下、工程(ii)で得られた原料の発酵を含む。任意に本法はエタノールの回収をさらに含む。糖化及び発酵工程は糖化と発酵を同時に行う(SSF)方法として行われても良い。発酵の間、エタノール含量は少なくとも約7%、少なくとも約8%、少なくとも約9%、少なくとも約10%に達し、例えば少なくとも約11%、少なくとも約12%、少なくとも約13%、少なくとも約14%、少なくとも約15%又は少なくとも約16%に達する。
【0201】
上記局面で処理されたデンプンは塊茎、根、茎、マメ、穀物または全穀粒から得られても良い。さらに具体的には、顆粒デンプンはトウモロコシ、トウモロコシの穂軸、小麦、オオムギ、ライムギ、マイロ、サゴ、キャッサバ、タピオカ、モロコシ類、米、エンドウ、豆、バナナ又は馬鈴薯から得られても良い。具体的に考えられているのはロウ状及び非ロウ状型のトウモロコシと大麦の両者である。
【0202】
本明細書で使用する場合、用語「液状化」又は「液化する」とはデンプンがより粘度の低い、分子鎖の短いデキストリンに変換される方法をいう。一般的には、本法はα-アミラーゼ変異種の添加と同時に又はその後にデンプンがゼラチン化されることを含む。追加の液化-誘導酵素が、任意に加えられても良い。本明細書で使用する場合、用語「第一液化」とはスラリーの温度がそのゼラチン化の温度又はその付近まで上昇するときの液化の工程をさす。温度の上昇の後、このスラリーは熱交換器又はジェットをとおり約90-150℃、例えば100-110℃の温度になる。熱交換器またはジェットで加熱された後、スラリーはこの温度で3-10分間保持される。スラリーを90-150℃で保持するこの工程は第一液化と呼ばれる。
【0203】
本明細書で使用する場合、用語「第二液化」はスラリーが室温にまで冷却されたときの第一液化(90-150℃までの加熱)の後の液化工程をいう。この冷却工程は30分から180分、例えば90分から120分であり得る。本明細書で使用するとき、用語「第二液化の経過分数」とは、第2液化の開始からデキストロース等化物(DE)が測定される時間まで経過した時間をいう。
【0204】
別の局面はα-アミラーゼ変異種を含有する組成物中にβ-アミラーゼを追加することを考慮している。β-アミラーゼ(EC3.2.1.2)はエキソ活性のマルトース産生性(maltogenic)アミラーゼであり、アミロース、アミロペクチン及び関連するグルコースポリマーの1,4-α-グルコシド結合の加水分解を触媒し、それによりマルトースが遊離される。β-アミラーゼは種々の植物と微生物から単離される(Forgartyら、PROGRESS IN INDUSTRIAL MICROBIOLOGY, Vol.15, pp.112-115,1979)。これらのβ-アミラーゼは40℃から65℃の範囲に最適温度をもつこと、約4.5から約7.0の範囲で最適pHをもつことにより特徴付けられる。考慮されているβ-アミラーゼは、大麦Spezyme(商標)BBA 1500、Spezyme(登録商標)DBA、Optimalt(商標)ME、Optimalt(商標)BBA(Danisco US Inc., Genencor Division;以前はGenencor直鎖International, Inc.として知られていた);及びNovozym (商標)WBA(Novozymes A/S)を非限定的に含む。
【0205】
本組成物に使用が考えられている別の酵素はグルコアミラーゼ(EC3.2.1.3)である。グルコアミラーゼは微生物又は植物に由来する。例えば、グルコアミラーゼは菌類又は細菌に由来する。細菌のグルコアミラーゼの例はアスペルギルス属のグルコアミラーゼであり、特にA・ニゲルG1またはG2グルコアミラーゼ(Boelら(1984),EMBO J. 3(5):1097-1102)またはその変異種であり、WO92/00381とWO00/04136に開示されているようなもの;A.アワモリ(A.awamori) グルコアミラーゼ(WO84/02921);A. オリゼ(A.oryzae)グルコアミラーゼ(Agric.Biol.Chem(1991),55(4):941-949)または変異種またはその断片である。
【0206】
他の考えられているアスペルギルスグルコアミラーゼ変異種は熱安定性を増強する変異種を含む。:G137AとG139A(Chenら(1996),Prot.Eng.9:499-505(1994));D257EとD293E/Q(Chenら(1995),Prot.Eng.8:575-582);N182(Chenら(1994), Biochem.J.301:275-281);ジスルフィド結合、A246C(Fierobeら(1996),Biochemistry,35,8698-8704);及びA435とS436の位置のPro残基の導入(Liら(1997) Protein Eng.10:1199-1204)を含む。他の考えられているグルコアミラーゼはタラロマイセス(Talaromyces)属のグルコアミラーゼを含み、特にT.エメルソニ(T.emersonii)(WO99/28448)、T.リーセッタヌス(T.leycettanus)(米国特許第RE 32,153)、T.デュポンティ(T.duponti)、またはT.サーモフィルス(T.thermophilus)(米国特許第4,587,215号)である。考えられている細菌グルコアミラーゼはクロストリジウム(Clostridium)属由来のグルコアミラーゼを含み、特にC.サーモアミロリチカム(C. thermoamylolyticum)(EP 135138)及びC.サーモヒドロスルフリカム(C. thermohydrosulfuricum)(WO 86/01831)を含む。適したグルコアミラーゼはアスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)由来のグルコアミラーゼ、例えば、WO00/04136 のSEQ ID NO:2に示されているアミノ酸配列と50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、さらに90%の相同性をもつグルコアミラーゼを含む。また、市販のグルコアミラーゼ、例えば、AMG200L;AMG300L;SAN(商標)SUPER及びAMG(商標)E(Novozymeによる);OPTIDEX(登録商標)300(Danisco US Inc., Genencor Divisionによる; 以前はGenencor International、Inc.として知られていた);AMIGASE(商標)とAMIGASE(商標)PLUS(DSMによる);G-ZYME(登録商標)G900(Enzyme Bio-Systemsによる);及びG-ZYME(登録商標)G990ZR(A・ニゲルグルコアミラーゼで低タンパク質含量)が適している。グルコアミラーゼは0.02-2.0AGU/gDS又は0.1-1.0 AGU/g DS、例えば0.2 AUG/g DSの量で加えられても良い。
【0207】
追加の酵素変異種が組成物中に含まれえる。2以上のα-アミラーゼ変異種はそれのみで又は本明細書に述べられている他の酵素と組み合わせて使用できる。例えば、第3の酵素は別のα-アミラーゼでも良く、例えば、酵母α-アミラーゼ、または別のα-アミラーゼ変異種でも良い。これらはバチラスα-アミラーゼ又は非-バチラスα-アミラーゼでありえる。
【0208】
任意に加えても良い別の酵素は、デブランチング酵素(debranching enzyme)、例えばイソアミラーゼ(isoamylase)(EC 3.2.1.68)またはプルラナーゼ(EC 3.2.1.41)である。イソアミラーゼは、アミロペクチンとβ-制限デキストリンのα-1,6-D-グルコシド分岐結合を加水分解し、イソアミラーゼがプルランを攻撃できない点及びα-制限デキストリンに対するイソアミラーゼの攻撃が制限される点でプルラナーゼから識別できる。デブランチング酵素は本技術分野の技術者に良く知られている有効量で加えられても良い。
【0209】
本法の製品の正確な組成は加工を受ける顆粒デンプンの種類及び使用される酵素の組み合わせにより変わる。可溶性加水分解物は少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95.0%、少なくとも約95.5%、少なくとも約96.0%、少なくとも約96.5%、少なくとも約97.0%、少なくとも約97.5%、少なくとも約98.0%、少なくとも約98.5%、少なくとも約99.0%、または少なくとも99.5%の純度をもつマルトースでも良い。または、可溶性のデンプン加水分解物はグルコースであり、またはデンプン加水分解物は少なくとも94.5%、少なくとも95.0%、少なくとも95.5%、少なくとも96.0%、少なくとも96.5%、少なくとも97.0%、少なくとも97.5%、少なくとも98.0%、少なくとも98.5%、少なくとも99.0%又は少なくとも99.5%のDE(総可溶化乾燥固体のグルコースパーセント)をもつ。一実施態様では、アイスクリーム、ケーキ、キャンディー、缶詰の果物を製造する方法はグルコース、マルトース、DP3及びDPnの混合物を含有する特別のシロップを用いる。
【0210】
2種の製粉法が適している。;湿式製粉と乾式製粉である。乾式製粉では、全穀粒が製粉され使用される。湿式製粉は胚とあらびき粉(デンプン顆粒とタンパク質)の良好な分離をし、普通、デンプン加水分解物がシロップの生産で使用されるときに使用される。乾式と湿式製粉の両者はデンプン加工の分野で良く知られ、開示された組成物と方法に使用されることも考えられている。本法は、限外ろ過システムで行われても良く、酵素、未加工のデンプン及び水を含む濃縮液が循環し、透過物が可溶性デンプン加水分解物である。別の方法は限外ろ過膜を備える連続式膜反応器で行われる方法であり、酵素、未加工のデンプンと水を含む濃縮液が循環され、そして透過物が可溶性デンプン加水分解物である。別の方法は限外ろ過膜を備えた連続式膜反応器で行う方法であり、酵素、未加工デンプンと水を含む濃縮物が循環され、透過物は可溶性デンプン加水分解物である。また、精密ろ過膜を備えた連続式膜反応装置でも本法が行われ、酵素、未加工デンプンと水を含む濃縮液が循環され、そせいて透過物が可溶性デンプン加水分解物である。
【0211】
一面では、本法の可溶性デンプン加水分解物は、フルクトース高含有デンプン由来シロップ(HFSS)、例えば、フルクトーストウモロコシシロップ(HFCS)に転換される。この転換はグルコース異性化酵素、特に固体支持体に固定化されたグルコース異性化酵素を用いて達成できる。意図されている異性化酵素は、販売用製品Sweetzyme(登録商標)、IT(Novozymes A/S);G-zyme(登録商標)IMGI、及びG-zyme(登録商標)G993、Ketomax(登録票表)、G-zyme(登録商標)G993、G-zyme(登録商標)G993液、及びGenSweet (登録商標)IGIを含む。
【0212】
別の面では、生産された可溶性デンプン加水分解物は燃料又は飲用エタノールにされる。3番目の局面の方法では、発酵が顆粒デンプンスラリーの加水分解と同時又は別に/その後に実施されても良い。発酵が加水分解と同時に行われるときは、温度は30℃と35℃の間、特に31℃と34℃の間にある。本法は、酵素、未加工のデンプン、酵母、酵母の栄養素及び水を含む濃縮液が循環され、透過物がエタノール含有液である限外ろ過システムで行われても良い。または、限外ろ過膜を備えた連続式膜反応器でこの方法を行うことも考えられ、そこでは酵素、未加工のデンプン、酵母、酵母の栄養素と水を含む濃縮液が循環され、透過物がエタノール含有液である。
【0213】
本法の可溶性デンプン加水分解物は、この処理を受けたデンプンを発酵産生物へ発酵させることを含む発酵製品、例えば、クエン酸、グルタミン酸モノナトリウム、グルコン酸、グルコン酸ナトリウム、グルコン酸カルシウム、グルコン酸カリウム、グルコン酸デルタラクトン、又はエリソルビン酸ナトリウムの生産に使用されても良い。
【0214】
α-アミラーゼ変異種のアミロース分解活性は基質として馬鈴薯デンプンを使用して決定されても良い。この方法はこの酵素による修飾された馬鈴薯デンプンの分解に基づき、反応はデンプン/酵素溶液のサンプルをヨウ素溶液と混合することにより追跡される。最初は、黒っぽい青色が生成され、デンプンの分解の間に青色が薄くなり、徐々に赤褐色に変わり、これは着色ガラス標本と比較される。
【0215】
9.織物の糊除去組成物と用途
1以上のα-アミラーゼ変異種を使用して(例.織物の糊除去のため)布地を処理する組成物と方法もまた考えられている。このα-アミラーゼ変異種はいずれの布地処理法でも使用でき、これらは本技術分野で良く知られている(例えば、米国特許第6,077,316号参照)。例えば、一局面では、布地の感触と外観は溶液中の変異酵素と布地を接触させることを含む方法により改善される。一局面では、この布地は加圧下で溶液で処理される。
【0216】
一局面では、酵素は織物を織る間またはその後に使用され、又は糊の除去段階の間に使用され、または1以上の追加の布地処理段階の間に使用される。織物を織る間、糸は相当の機械的張力を受ける。機械織機で織る前にたて糸はその引っ張り強さを増し、破断を防ぐために糊用デンプン又は糊誘導体で皮膜されることが多い。このα-アミラーゼ変異種はこれらの糊用デンプン又は糊誘導体を除くために使用できる。この織物が織られた後、布地は糊除去工程へ進むことが出来る。この後に1以上の追加の布地処理工程が続くことができる。糊除去は織物から糊を除去する行為である。織り終わった後、糊による皮膜は、加工の結果が均一になりかつ洗いを受けられるように、更に布地が加工を受ける前に除去されるべきである。また、酵素変異種の作用による糊の酵素的加水分解を含む糊除去の方法も提供される。
【0217】
α-アミラーゼ変異種は、例えば水性組成物中で洗剤添加剤として、綿含有布地を含む布地の糊除去のため、それのみで、又は他の糊除去化学試薬及び/又は糊除去酵素とともに使用できる。このα-アミラーゼ変異種はインジゴで染めたデニム製布地と衣服のストーンウォッシュの外観を作るための組成物、方法でも使用できる。服の生産に関しては、布地は切り取られ衣服へ縫い上げられ、その後仕上げを受ける。特に、デニムのジーンズの製造のため、異なる酵素的仕上げ方法が開発されている。デニムの服の仕上げは、普通、酵素的糊除去工程で開始され、その間に衣服はアミロース分解酵素の作用を受け、衣服は柔軟性を与えられ、綿はその後の酵素的仕上げ工程をより受け易くなる。このα-アミラーゼ変異種はデニムの衣服を仕上げる方法(例.「生化学的ストーニング(stoning)工程」)、つまり、酵素的に糊を除去し布地に柔軟性を与え、かつ/又は仕上げる工程で使用できる。
【0218】
10.ベーキングと食品調製用の組成物と方法
ベーキングと食品生産用の穀粉の産業用及び家庭用用途については、穀粉中でα-アミラーゼ活性の適正な水準を維持することが重要である。活性水準が高すぎると粘りがあり、及び/又は生焼けであり、市販できない製品となる。しかし、不十分なα-アミラーゼ活性をもつ穀粉は適切な酵母の機能のために十分な糖を含み得ず、乾燥したもろいパンとなる。従って、B・リケニフォルミスα-アミラーゼ変異種が、それのみで、または別のα-アミラーゼと組み合わせて、穀粉中の内在的なα-アミラーゼ活性の水準を増大させるために穀粉に加えられても良い。このα-アミラーゼは普通、デンプン存在下で、例えば、30-90℃、50-80℃、55℃-75℃、または60-70℃の範囲で最適の温度をもつ。この最適温度はpH5.5で可溶性
デンプンの1%溶液で測定されても良い。
【0219】
ベーキングにおける穀物と他の植物の使用に加えて、オオムギ、オートムギ、コムギのような穀物と植物成分、例えばトウモロコシ、ホップ及びコメは、醸造用に、産業用と家庭用醸造両者で使用される。醸造に使用される原料は、麦芽が加えられなくても、加えられても良くつまり、部分的に発芽しその結果、α-アミラーゼを含む酵素の水準が高くなっても良い。醸造を成功させるために、α-アミラーゼ酵素活性の適切な水準が発酵用の糖の適切な水準を確保するために必要である。従ってB.リケニフォルミスα-アミラーゼ変異種は、それのみで、または別のα-アミラーゼと組み合わせて醸造に使用する原料へ加えられても良い。
【0220】
本明細書で使用する場合、用語「穀粉」は製粉又は粉砕された穀物粒をいう。用語「穀粉」は、また粉砕又は潰されたサゴ又は塊茎もいう。いくつかの実施態様では、穀粉は製粉された又は潰された穀粒又は植物原料のほかの成分も含んでも良い。追加成分の例は、限定する意図はないが、ふくらし粉である。穀物粒は、コムギ、オートムギ、ライムギ及び大麦を含む。塊茎製品はタピオカ粉、キャッサバ粉とカスタードパウダーを含む。この用語「穀粉」は、また磨り潰されたトウモロコシ粉、トウモロコシアラビキ粉、コメ粉、コムギ-アラビキ粉、ふくらし粉入りの小麦粉、タピオカ粉、キャッサバ粉、粉砕コメ、栄養強化穀粉、粉末カスタードも含む。
【0221】
本明細書で使用する場合、用語「ストック」とは潰したまたは割った穀物粒と植物原料をいう。例えば、ビール生産で使用されるオオムギは、発酵用のマッシュを生産するに適した均一性をもつように粗く粉砕された又は潰された穀物粒である。本明細書で使用する場合、用語「ストック」は潰された又は粗く製粉された形の先に述べた種類の植物と穀物粒のいずれかを含む。本明細書に述べられた方法は穀粉及びストックの両方でα-アミラーゼ活性を決定するために使用されても良い。
【0222】
B.リケニフォルミスα-アミラーゼ変異種は、さらに、劣化、つまりベーキング製品が固くなり粉々になること、を防ぎ又は遅らせるため、それのみ又は他のアミラーゼと組み合わせて加えることができる。劣化防止用アミラーゼの量は通常、穀粉1kg当たり0.01-10mg酵素タンパク質量の範囲、例えば1-10mg/kgである。B.リケニフォルミスα-アミラーゼ変異種と組み合わせて使用できる追加の劣化防止用アミラーゼはエンド-アミラーゼ、例えば、バチルス属由来の細菌エンド-アミラーゼである。追加のアミラーゼはマルトース産生性α-アミラーゼ(EC3.2.1.133)であり得、例えばバチルス属由来である。Novamyl(登録商標)は、適したB.ステアロテルモフィラス株、NCIB 11837由来のマルトース産生性α-アミラーゼであり、Christophersenら、Starch, 50(1):39-45(1997)に述べられている。劣化防止エンド-アミラーゼの他の例はバチルス属、例えばB.リケニフォルミス又はB.アミロリケファシエンス由来の細菌α-アミラーゼを含む。劣化防止アミラーゼはエキソ-アミラーゼ、例えばβ-アミラーゼであり、例えば、大豆のような植物源由来、またはバチルス属のような微生物源由来のものでも良い。
【0223】
B.リケニフォルミスα-アミラーゼ変異種を含むベーキング組成物はさらにホスホリパーゼを含み得る。このホスホリパーゼはリン脂質から脂肪酸を除くA1又はA2活性を持っても良く、リソ-リン脂質を形成する。これはリパーゼの活性、つまりトリグリセリドに対する活性を持っても持たなくても良い。ホスホリパーゼは通常30-90℃、例えば30-70℃に最適温度をもつ。加えられたホスホリパーゼは動物由来でも良く、例えば、膵臓由来、例えば、ウシ又はブタ膵臓由来、ヘビの毒液又はハチの毒液由来でも良い。または、ホスホリパーゼは微生物起源でも良く、例えば、糸状菌、酵母又は細菌由来でも良く、例えば、アスペルギルス属または種、A・ニゲル;ディクチオステリウム属(Dictyostelium)、D・ディスコイデウム(D.discoideum);ムコル属(Mucor)、M・ジャバニクス(M.javanicus)、M・ムセド(M.mucedo)、M・スブチリシムス(M.subtilissimus);ニューロスポラ属(Neurospora)、N・クラッサ(N.crassa);リゾムコル属(Rhizomucor)、R・プシラス(R.pusillus);リゾプス属(Rhizopus)、R・アルヒズス(R.arrhizus)、R・ジャポニクス(R.japonicus)、R・ストロニフェル(R.stolonifer);シレロティニア属(Sclerotinia)、S.リベルチアナ(S. libertiana);トリコフィトン属(Trichophyton)、T.ルブルム(T.rubrum);ヘツェリニア属(Whetzelinia)、W.シレオチオルム(W.sclerotiorum);バチルス属(Bacillus)、B.メガテリウム(B.megaterium)、B.スブチリス(B.subtilis);シトロバクター属(Citobacter)、C. フロインディ(C.freundii);エンテロバクター属(Enterobacter)、E. エロゲネス(E.aerogenes)、E.クロアセ(E.cloacae);エドバルドシエラ(Edwardsiella)、E.タルダ(E. tarda)、エトビニア属(Etwinia)、E.ヘルビコラ(E.herbicola);エシェリキア(Escherichia)
、大腸菌(E.coli);クレブシエラ属(Klebsiella)、肺炎桿菌(K.pneumoniae):プロテウス属(Proteus)、P.ブルガリス(P.vulgaris);プロビデンシア属(Providencia)、P.スツアルティ(P.stuartii);サルモネラ属(Salmonella)、S・ティフィムリウム(S.typhimurium);セラチア属(Serratia)、S・リケファシエンス(S.liquefasciens)、S.マルセッセンス(S.marcescens);シゲラ属(Shigella)、S.フレクスネリ(S.flexneri)、ストレプトマイセス属(Streptomyces)、S. ビオレセオルベル(S.violeceoruber)、エルシニア属(Yersinia)、Y.エンテロコリチカ(Y.enterocolitica)、フサリウム(Fusarium)、F.オキシスポラム(F.oxysporum)、例えばD2672株由来でも良い。
【0224】
ホスホリパーゼはベーキング後の最初の時間、特に最初の24時間の間にパンの柔らかさを向上させる量で加えられる。ホスホリパーゼの量は穀粉1kg当た0.01-10mg酵素タンパク質の範囲、例えば0.1-5mg/kgである。つまり、ホスホリパーゼの活性は一般的に穀粉1kg当たり20-1000リパーゼ単位(LU)の範囲にあり、ここでリパーゼ単位は、エマルジョン剤としてアラビアゴムと基質としてトリブチルスズにより30分、pH7.0で1分当たりに1μmolブタン酸を遊離するに要する酵素の量として定義される。
【0225】
パン生地の組成は一般的に小麦のあら引き粉又は小麦粉及び/又は、トウモロコシ粉、トウモロコシ澱粉、ライ麦あらびき粉、ライ麦粉、オート麦粉、オート麦あら引き粉、大豆粉、モロコシ粉、馬鈴薯あらびき粉、馬鈴薯粉又は馬鈴薯デンプンのような他の種類のあら引き粉、穀粉又はデンプンを含む。パン生地は新鮮、冷凍又は半製品化した生地でも良い。生地は発酵された生地又は発酵を受けた生地でも良い。生地は種々の方法で発酵されても良く、例えば、化学的発酵剤、例えば重炭酸ナトリウム、を加えることにより、又はパン種、つまり、発酵している生地を加えることにより発酵されても良い。生地は適した培養酵母、例えば培養サッカロマイセス・セレビシエ(Sacchromyces cerevisiae)(パン酵母)、例えば、S. セレビシエの市販されている株、を加えることにより発酵されても良い。
【0226】
生地は他の従来の生地成分、例えば、粉乳、グルテンと大豆のようなタンパク質;卵(例.全卵、卵の黄身または卵の白身);アスコルビン酸、臭素酸カリウム、ヨウ素酸カリウム、アゾジカーボンアミド(ADA)又は過硫酸アンモニウムのような酸化剤;L-システインのようなアミノ酸;糖;又は塩化ナトリウム、酢酸カルシウム、硫酸ナトリウム又は硫酸カルシウムのような塩を含んでも良い。生地はさらに脂肪、例えば、顆粒化された脂肪又はショートニングのようなトリグリセリドを含んでも良い。生地はさらにモノ-又はジグリセリド、モノ-又はジグリセリドであるジアセチル酒石酸エステル、脂肪酸の糖エステル、脂肪酸のポリグリセロールエステル、モノグリセリドである乳酸エステル、モノグリセリドである酢酸エステル、ステアリン酸ポリオキシエトリレン又はリゾレシチンのような乳化剤を含んでも良い。特に、生地は乳化剤を加えずに作ることができる。
【0227】
任意に、追加の酵素が固化防止アミラーゼとホスホリパーゼとともに使用されても良い。追加の酵素は第二のアミラーゼであり、例えば、アミログルコシダーゼ、β-
アミラーゼ、シクロデキストリングルカノトランスフェラーゼであり、又は追加の酵素はペプチダーゼ、特にエキソペプチダーゼであり、トランスグルタミナーゼ、リパーゼ、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、特に、キシラナーゼのようなペントサナーゼ、プロテアーゼ、タンパク質ジスルフィド異性化酵素、例えば、WO95/00636に開示されているようなタンパク質ジスルフィド異性化酵素、例えば、グルコシルトランスフェラーゼ、ブランチング酵素(1,4-α-グルカンブランチング酵素)、4-α-グルカノトランスフェラーゼ(デキストリングルコシルトランスフェラーゼ)又は酸化還元酵素、例えば、ペルオキシダーゼ、ラッカーゼ、グルコース酸化酵素、ピラノース酸化酵素、リポキシゲナーゼ、L-アミノ酸酸化酵素又は炭水化物酸化酵素である。追加の酵素はいずれの由来でも良く、哺乳類、植物、及び特に微生物(細菌、酵母、菌類)由来でも良く、本技術分野で、従来より使用されている技術により得られても良い。
【0228】
キシラナーゼは通常、微生物由来であり、例えば、細菌または菌類由来、例えばアスペルギルス属、特にA.アキュレアタス(A.aculeatus)、A.ニゲル(A.niger)(WO91/19782参照)、A.アワモリ(A.awamori)(例.WO91/18977)またはA.チュビゲンシス(A.tubigenesis)(例.WO92/01793)由来;トリコデルマ属(Trichoderma)の株由来、例えば、T・レセイ(T.reesei)、またはフミコラ属の株由来、例えば、H.インソレンス(H.insolens)(例.WO 92/17573)由来である。Pentopan(登録商標) とNovozym384(登録商標) はトリコデルマ・レセイ(Trichoderma reesei)から産生される市販のキシラナーゼ製品である。アミノグリコシダーゼはA.ニゲル・アミノグリコシダーゼ(AMG(登録商標))でも良い。他の有用なアミラーゼ製品はGrindamyl(登録商標)A 1000又はA 5000(Grindested Products, デンマーク)を含む。グルコース酸化酵素は菌類のグルコース酸化酵素でも良く、特にアスペルギルス・ニゲルグルコース酸化酵素(例えば、Gluzyme(登録商標))でも良い。プロテアーゼの例はNeutarase(登録商標)である。リパーゼの例はサーモマイセス属(Thermomyces)(フミコラ属(Humicola))、リゾムコル属(Rhizomucor)、カンジダ属(Candida)、アスペルギルス属(Aspergillus)、リゾプス属(Rhizopus)またはシュードモナス属(Pseudomonas)の株から産生され得、特にサーモミセス・ラヌギノサス(Thermomyces lanuginosus)(フミコラ・ラヌギノザ(Humicola lanuginosa)),リゾムコル・ミヘイ(Rhizomucor miehei)、カンジダ・アンタークチカ(Candida antarctica)、アスペルギルス・ニゲル、リゾプス・デレマル(Rhizopus delemar)又はリゾプス・アルヒズス(Rhizopus arrhizus)又はシュードモナス・セパシア(Pseudomonas cepacia)から由来し得る。具体的な実施態様では、このリパーゼは、例えば、WO88/02775に記載されているカンジダ・アンタークチカ由来のリパーゼA(Lipase A)またはリパーゼB(Lipase B)でも良く、またはこのリパーゼは例えば、EP238,023に記載されているリゾムコル・ミヘイ由来でも良く、例えば、またはEP305,216に記載されているフミコラ・ラヌギノザ、または例えばEP214,761とWO89/01032に記載されているシュードモナス・セパシア(Pseudomonas cepacia)由来でも良い。
【0229】
本法は生地、例えば、柔らかいものまたはパリッとしたものまたは白い、明るい色又は暗色ものから作られるいずれの種類のベークド製品にも使用されても良い。例えばパンであり、特に白い、完全小麦粉又はライ麦パン(通常塊あるいはロールの形状をしている)、フレンチバゲット型、ピタパン、トルティーヤ、ケーキ、パンケーキ、ビスケット、クッキー、パイの皮、薄いビスケット、蒸しパン、ピザ等である。
【0230】
別の実施態様では、B.リケニフォルミス(B.licheniformis)α-アミラーゼ変異種は、固化防止アミラーゼ、ホスホリパーゼとホスホリピッドとともに穀粉を含む予備混合物(pre-mix)として使用されても良い。この予備混合物は他の生地改善及び/又はパン改善添加剤を含んでも良く、例えば、先に述べた酵素等のいずれの添加剤も含んでも良い。一面では、B.リケニフォルミス(B.licheniformis)α-アミラーゼ変異種は、ベーキング用添加剤として使用される固化防止アミラーゼとホスホリパーゼを含有する酵素調製物の一成分である。
【0231】
酵素調製物は、任意に顆粒または塊状の粉末の形状である。この調製物は25から500μmの範囲に95%(重量で)より多くの粒子が分布する狭い粒子サイズ分布をもち得る。顆粒と塊状粉末は従来の方法により調製されても良く、例えば、流動床顆粒化装置の担体上へB.リケニフォルミスα-アミラーゼ変異種をスプレーすることにより調製されても良い。この担体は適した大きさをもつ粒子核から作られても良い。この担体は可溶性又は不溶性であり、例えば塩(例えばNaClまたは硫酸ナトリウム)、糖(例えばショ糖または乳糖)、糖アルコール(例えばソルビトール)、デンプン、コメ、トウモロコシの粒または大豆でも良い。
【0232】
別の面ではB.リケニフォルミスα-アミラーゼ変異種を含有する粒子、つまりα-アミラーゼ粒子、を包むものが考えられている。この包まれたα-アミラーゼ粒子を調製するため、この酵素は全てのα-アミラーゼ粒子を懸濁するに十分な量の食品グレードの脂質と接触される。食品グレードの脂質は、本明細書で使用される場合、水に不溶で炭化水素やジエチルエーテルのような非極性の有機溶媒に可溶のいずれかの天然の有機化合物でも良い。適した食品グレードの脂質は飽和又は不飽和である脂肪または油の形状のいずれかのトリグリセリドを非限定的に含む。飽和トリグリセリドを作る脂肪酸とそれらの組み合わせの例は、酪酸(乳脂肪に由来する)、パルミチン酸(動物と植物脂肪由来)、及び/又はステアリン酸(動物と植物脂肪由来)を非限定的に含む。不飽和トリグリセリドを作る脂肪酸とその組み合わせの例は、パルミトレイック酸(動物と植物脂肪由来)、オレイン酸(動物と植物脂肪由来)、リノール酸(植物油由来)、及び/又はリノレン酸(アマニ油由来)を非限定的に含む。他の適した食品グレードの脂質は先に述べたトリグリセリド由来のモノグリセリドとジグリセリド、リン脂質と糖脂質を非限定的に含む。
【0233】
食品グレードの脂質は、特に液状のものは、脂質原料が、少なくとも大部分の表面、例えばα-アミラーゼ粒子表面の100%を覆うようにα-アミラーゼの粉末と接触する。従って、各α-アミラーゼ粒子はそれぞれ脂質中で包まれる。例えば、全ての又は実質的に全てのα-アミラーゼ粒子は脂質の薄い、連続した皮膜が与えられる。これは最初に多量の脂質を容器へ入れ、次にα-アミラーゼ粒子をスラリー化し、脂質が各α-アミラーゼ粒子の表面を完全にぬらすことにより達成できる。短時間の撹拌後、包まれたα-アミラーゼ粒子は、表面に相当量の脂質をつけて回収される。α-アミラーゼの粒子へそのように行われた被膜の厚さは、望む場合には、使用される脂質のタイプの選択と比較的厚い膜を作るためのこの操作の繰り返しにより制御できる。
【0234】
充填された移動媒体の貯蔵、取り扱いと組み入れはパッケージドミックス(packaged mix)という手段により行うことができる。このパッケージドミックスは包まれたα-アミラーゼを含むことができる。しかし、このパッケージドミックスは、さらに製造業者またはパン製造業者により求められるときは追加の成分を含んでも良い。包まれたα-アミラーゼを生地へ入れた後、パン製造業者はその製品の正常な製造を最後まで続けられる。
【0235】
α-アミラーゼ粒子を包む利点は2つある。第一は、食品グレードの脂質は熱に弱い酵素についてベーキングの間、熱的変性からこの酵素を保護する。結果的に、発酵とベーキングの段階でα-アミラーゼは安定化され保護されるが、最終の焼きあがった製品中で保護膜から放出され、そこでポリグルカン中のグルコシド結合を加水分解する。充填された移動媒体はまた、焼き上げられた製品中への活性な酵素の放出を持続的に行う。つまり、焼き上げ工程の後、活性なα-アミラーゼは、固化作用を妨げる速度で保護膜から連続的に放出され、それにより固化作用の速度を減少させる。
【0236】
一般的に、α-アミラーゼ粒子に使用される脂質の量は、脂質の性質、α-アミラーゼ粒子に適用される方法、処理を受ける生地混合物の組成、及び関連する生地混合操作の激しさによりα-アミラーゼの総重量の数パーセントから何倍にまで変わりうる。
【0237】
充填された移動媒体、つまり、脂質で包まれた酵素が焼き上げた製品の寿命を延ばすために有効な量で、焼き製品の製造に使用される原料へ加えられる。パン製造業者は、好ましい固化防止効果を達成するために要する、上記のように調製された、包まれたα-アミラーゼの量を計算する。必要とされる包まれたα-アミラーゼの量は包まれた酵素の濃度と特定された穀粉に対するα-アミラーゼの比に基づいて計算される。広い範囲の濃度が効果的であることが見出された。しかし、述べてきたように、観測された固化防止作用の改善はα-アミラーゼの濃度と直線的に対応せず、ある最小の水準より高いと、α-アミラーゼ濃度を大きく増大させても殆ど改善は大きくならない。特定の製パン所の生産で実際に使用されるα-アミラーゼ濃度は、パン製造業者が不注意で少なく秤り取ることを償うに必要な最小量よりずっと高くても良い。酵素濃度の下限はパン製造業者が達成したいと望む最小の固化防止効果により決定される。
【0238】
焼き製品を作る方法は;a)脂質で被膜されたα-アミラーゼ粒子を作り、そこで実質的に100パーセントのα-アミラーゼ粒子が被膜される。;b)穀粉を含む生地を混合する;c)混合が終了する前に生地に脂質で被膜されたα-アミラーゼを加え、α-アミラーゼから脂質の被膜が除去される前に混合を終了する;d)生地を発酵させる;及びe)生地を焼いて焼き製品を作る、ここでα-アミラーゼは、混合、発酵及び焼き上げ段階で不活性であり、焼き製品中で活性である。
【0239】
包まれたα-アミラーゼは混合サイクル中、例えば混合サイクルの終了近くで生地へ加えることができる。包まれたα-アミラーゼは生地の全体に、包まれたα-アミラーゼが十分に分散するように混合段階のある点で加えられる。;しかし、混合段階は、保護膜がα-アミラーゼ粒子から取り除かれるより前に終了される。生地の種類と大きさ、混合作用と速度により、1分から6分のいずれかの時間またはそれ以上が生地に包まれたα-アミラーゼを混合するために必要とされよう。しかし、2から4分が平均である。従って、いくつかの変数が正確な手順を決めるだろう。まず、包まれたα-アミラーゼの量は包まれたα-アミラーゼが生地混合物全体に広がるに十分な総容量であるべきである。包まれたα-アミラーゼの調製品が非常に高濃度である場合、包まれたα-アミラーゼを生地へ加える前に油がこの予備混合物へ追加されることが必要となることがある。処方と製造法は特定の変更が必要かもしれない。しかし、パン生地の処方で指定された油の25%がこの生地に入れずに取っておかれ、混合サイクルの終了時に加えられるときに高濃度の包まれたα-アミラーゼ用の担体として使用される場合、一般的に良い結果が得られる。パンや他の焼き製品、極めて低い脂肪含量をとる処方(例えばフランス風のパン)では、乾燥穀粉重量の約1%の包まれたα-アミラーゼ混合物が生地と包まれたα-アミラーゼを適当に混合するために十分であることが見出されており、しかし効果のあるパーセンテージの範囲は非常に広く、各パン製造業者の処方、最終製品、生産方法の要件により変わる。第2に包まれたα-アミラーゼ懸濁物は混合サイクルの間に生地へ完全に混合されるに足る十分な時間をこの混合物に存在するように加えられるべきである。しかし、過剰な機械的作用により包まれたα-アミラーゼ粒子の大部分から脂質の保護膜を取り除くほど初期であってはならない。
【0240】
別の実施態様では、B.リケニフォルミスα-アミラーゼ変異種を含む細菌α-アミラーゼ(BAA)が脂質被膜粒子に加えられる。BAAはその過剰な熱安定性のためにパンをゴム状の塊にし、十分に焼き上げられたパンの塊の中で活性を保持する。しかし、BAAが脂質に被膜された粒子へ組み入れられたときは、相当の追加の固化防止効果が得られ、非常に低いBAA使用水準でもそうである。例えば、穀粉100ポンド当たり150RAU(標準アミラーゼ単位(Reference Amylase Unit))のBAA使用は効果のあることが見出された。一実施態様では、約50と2000RAUの間のBAAが脂質被膜酵素へ加えられる。この低いBAA使用水準と、デンプンと接触せずに(水蒸気がこの膜からこの酵素を無作為に遊離させるときを除き)十分に焼き上げた塊中で酵素を保持する保護膜の性能が合わさってBAAの不利な副次的効果なく高水準の固化防止活性を達成することを促す。
【0241】
意図した用途の本質又は範囲を離れることなく種々の修飾と変更がこの組成物とそれを使用する方法に行うことができることは本技術分野の技術者には明らかであろう。従って、それらが添付した特許請求の範囲及びその均等の範囲内にある場合には、修飾であり変更である。
【発明を実施するための形態】
【0242】
実施例
実施例1
高性能バチルス属の種(Bacillus sp) 第707α-アミラーゼに似せるためB. リケニフォルミス(B.lichenifromis)α-アミラーゼの活性部位残基又は酵素表面の電荷を帯びた残基を修飾修飾することにより、匹敵するほどに性能が向上したB. リケニフォルミスα-アミラーゼ変異種ができる。このため、B. リケニフォルミスα-アミラーゼ変異種はB. リケニフォルミスα-アミラーゼの3D構造をバチラス属の種第707α-アミラーゼの3D構造と比較することによりデザインされた。具体的には、BRAGIソフトウェアが使用され、図1に示した位置あわせがされた。BRAGIによるモデル作成により、アミノ酸の修飾は変異酵素の保存された二次的及び三次的構造要素を大きく変えないことを確認した。
【0243】
モデル構築は、RCSB タンパク質データバンクからPDB ID No. 1 BLIとして入手できる野生型B. リケニフォルミスα-アミラーゼの3D構造を使用して開始された。このα-アミラーゼは下記の実施例1.1で記載されたアミノ酸配列をもち、この配列は変異M15T、W138Y及びM197Tを導入されて変えられている。このようにして、元のB. リケニフォルミスα-アミラーゼはPURASTAR(登録商標)OxAm、または「Purastar α-アミラーゼ」のα-アミラーゼと同一の配列をもった。PURASTAR(登録商標)OxAmは漂白剤含有洗剤調合剤用の酸化に安定なα-アミラーゼである。

実施例1.1 PURASTAR(登録商標)OxAm α-アミラーゼの配列(SEQ ID NO3)

実施例2
【0244】
PURASTAR(登録商標)α-アミラーゼは特定のドメインでの配列中の、活性部位残基、及び/又は酵素表面の荷電した/荷電していない残基への配列修飾をデザインするためにさらにモデル構築を行う基礎として使用された。このアプローチを用いてデザインされた12個の代表的な変異α-アミラーゼが下記の表1にまとめられている。各場合、この変異種のアミノ酸修飾は残基をバチルス属の種第707α-アミラーゼの対応する残基へ変えている。アミノ酸の変更の総数とこの変化の酵素の総電荷への影響がこの表の最後の行に示されている。α-アミラーゼの3D構造から、電荷に影響する修飾の全てが酵素表面上アミノ酸に対するものであることが分かる。図3は修飾をまとめたものであり、示すとおり一連の修飾はドメインA、B及び/又はCの活性部位及び/又は荷電残基に対して行われている。
表1


実施例3
【0245】
3個の活性部位変異種がモデル構築され、それぞれは活性部位が種々に変化している。活性部位変異種1は10個の活性部位残基の修飾を含み(表1参照)、それら全てはドメインAにある。活性部位変異種2は7個の活性部位残基の修飾を含み、それら全てはドメインB(表1参照)にある。活性部位変異種3は変異種1と2のアミノ酸修飾を組み合わせている。変異種1,2、及び3の全体の配列は下記に示されている。

実施例3.1 活性部位変異種1(ドメインA)(SEQ ID NO:4)

実施例3.2 活性部位変異種2(ドメインB)(SEQ ID NO:5)

実施例3.3 活性部位変異種3(ドメインAとB)(SEQ ID NO:6)

実施例4
【0246】
酵素表面の電荷分布に影響する修飾を含み、しかし活性残基の組成に影響しない変異種がモデル構築された。電荷変異種4はドメインAでの荷電残基への修飾を含み、電荷変異種5はドメインBの荷電残基への修飾を含み、そして電荷変異種6はドメインCの荷電残基への修飾を含む。荷電変異種7は変異種4,5及び6で行われた全ての変更を含む。変異種4−7の全体の配列は下記に示す。
実施例4.1 電荷変異種4(ドメインA)(配列ID NO:7)

実施例4.2 電荷変異種5(ドメインB)(配列ID NO:8)

実施例4.3 電荷変異種6(ドメインC)(配列ID NO:9)

実施例4.4 電荷変異種7(全てのドメイン)(SEQ ID :10)

実施例5
【0247】
種々のドメインの表面の電荷と活性部位の修飾の種々の組み合わせを含む変異種もモデル構築された。変異種8はドメインBの全ての修飾を含む。変異種9はドメインBとドメインAの活性部位の変化のすべてを含む。変異種10は全てのドメインの荷電した残基の修飾とドメインAとBの活性部位の変化を含む。変異種11は、この酵素の表面電荷、活性部位、ドメインBの全ての修飾を含む。変異種12はドメインAとBの全ての電荷の変化、ドメインAとBの全ての活性部位の変化、及びR437W置換を含む。変異種8-12の全体の配列は下記に示す。
実施例5.1 変異種8(全てのドメインBの修飾)(SEQ ID NO:11)

実施例5.2 変異種9(全てのドメインBの修飾とドメインA活性部位の修飾)(SEQ ID NO:12)

実施例5.3 変異種10(ドメインAとBの全ての電荷の修飾と活性部位の修飾)(SEQ ID NO:13)

実施例5.4 変異種11(全ての電荷の変更、活性部位の変化、及びドメインBの変化)(SEQ ID NO:14)

実施例5.5 変異種12(全てのドメインAとBの電荷の変化、ドメインAとBの活性部位の変化、及びR437W)(SEQ ID NO:15)

実施例6
Ox Am 変異種を含む発現ベクターの構築
【0248】
この実施例はどのように発現ベクターが構築されたかを述べている。12 個のOxAm変異種の合成遺伝子はGeneArt, Inc(トロント、カナダ)により合成され、PCR-Scriptプラスミドにクローンされた。この遺伝子の構造体は0.2μg/μLのプラスミドDNAとして得られた。変異種1,5,6,7,8,10,11と12の遺伝子は以下のプライマーを使用してAmersham社のPure Taq ビーズを用いてGeneArt PCR-Script プラスミドから増幅された。

変異種2,3及び4の遺伝子は以下のプライマーを使用して増幅された。

【0249】
PCRの条件は以下の通り。95℃、2分、1X、続いて95℃、1分、52℃、1分、72℃、1分30秒を30サイクル、続いて72℃、7分。全てのPCR生成物はQiagen Qiaquick カラムを用いて精製され、50μLのmilliQ水に懸濁された。50μLの溶出されたDNAはHpal(Roche)で切断され、精製され、90μLのmilliQ水に再懸濁された。再懸濁されたDNAは、続いて100μLが最終容量となる反応でPstI(Roche)で切断され、精製され30μLのmilliQ水に再懸濁された。2μLの溶出されたDNAは1μLのBスブチリスベクターpHPLT(10-20ng/μL)と結合された。このベクターpHPLTは米国特許第6,566,112号に述べられている。
【0250】
この結合された混合物はバチルス・スブチリス株(遺伝子型:ΔaprE、ΔnprE、Δepr、ΔispA、Δbpr、degUhy32、oppA、ΔspoIIE3501、amyE::xylRPxylAcomK-ermC) のコンピテント細胞を形質転換した。WW120細胞はコンピテンシー遺伝子(comK)をもち、これはキシロース誘導プロモーターに制御されている。従ってキシロースはDNAの結合と取り込みの受容能を誘導するために使用できる。このコロニーを20μLの水に再懸濁し、25μLの反応で0.5μLのpHPLT-F1とR1プライマーと2μLの細胞を使用することにより得られた形質転換体形質に対しAmershamのPureTaq ビーズを使用するColony PCRが行われた。

各構造体はSequtechでpHPLT-seqF1とseqR1プライマーを使用して配列決定された。

各変異種の単一のコロニーは4mLのLuria液体培地(LB)+10ppmネオマイシンで培養されグリセロールストックとして貯蔵された。
【0251】
タンパク質の発現のために、OxAm変異種の遺伝子を含むバチルス・スブチリス株WW120細胞が10μg/mLのネオマイシンを含む25mLの培地1(M1)と2(M2)(以下に記載)へ接種され、37℃、250rpmで約64時間培養された。2mLの培地が25,000 x gで遠心分離され、上澄液が集められ、ろ過され0℃から4℃で貯蔵された。M1はMOP緩衝液に基づく栄養を強化した半-合成培地(semi-defined media)であり、主要窒素源として尿素、主要炭素源としてグルコースを含み、頑丈な細胞が増殖するように1%ソイトンが加えられた。M2はソイトンを欠くことを除き培地1に類似し、グルコースが少なく3.5%Maltrin-150(Grain Processing Corp.,アイオワ州)が加えられた。

実施例7
変異種の洗浄性能
【0252】
この実施例は本明細書に述べられた変異種の性能特性を試験する。
【0253】
タンパク質の定量のため、30μLのOxAm野生型と変異種の培地が10%アクリルアミドゲル(MES緩衝液)上て展開されクーマシーブルー(Coomassie Blue)R250染料で染色され、続いてScion Image software(Scion Corp., Frederick, MD, ベータ4.03版)を用いて、標準として精製OxAmタンパク質のサンプルを含めて定量された。
【0254】
OxAmとOxAm変異種の汚れ除去性能を決定するために、CS-26とうもろこしデンプン着色布見本(TestFabrics Inc., West Pittiston, ペンシルバニア州)を0.25インチに切り、96孔のプレートに加えた。ICE”A”洗剤(標準非リン酸系洗剤)が8g/Lの濃度で新しく調製されろ過された。150ppmの水硬度がこの洗剤に加えられた。200μLのこの洗剤混合物がこの布見本へ加えられその後にOxAm親又は変異タンパク質が加えられ0.5と0.2ppm濃度とした。このプレートを振とうしEppendorfThermomixerセット上で750rpmで60分間20℃で保温した。150μLが新しいプレートヘ移され、吸光度がマイクロプレートリーダーを使用して488nmで測定された。
【0255】
試験は上記の汚れ除去性能測定のための布見本洗浄試験(Cleaning Swatch Assay for Stain Removal Performance)によりpH10.4でOxAm親タンパク質とOxAm変異タンパク質の汚れ除去性能が測定された。図5は、培地1(M1)または培地2(M2)のいずれかで得られたOxAm変異種V2、V3及びV5の性能を示しOxAm親種とStainzyme(Sz)と比較されている。図6は培地1(M1)で得られたOxAm変異種V1,V2,V3,V5,V6及びV9の性能を示し同一条件でOxAm親種とStainzyme(Sz)と比較されている。洗浄活性はpH10.4、20℃で60分間保温した後にCS-26布見本からの色の遊離により測定された。
【0256】
先に引用した全ての文献はその全体をすべての目的のため引用により本明細書に組み入れられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
SEQID NO:1の変異種をコードする単離された核酸であり、当該変異種は、SEQID NO:1と比較して少なくとも1個のアミノ酸置換、挿入又は欠失を含み、かつ当該コードされた変異種はα-アミラーゼ活性を示すものである核酸。
【請求項2】
請求項1の核酸であって、当該少なくとも1個のアミノ酸置換、挿入、欠失によりSEQ ID NO:2で規定されるバチルス属の種第707α-アミラーゼのアミノ酸残基に対応するアミノ酸残基を含むコードされた変異種となっている核酸。
【請求項3】
請求項1の核酸であって、少なくとも1個のアミノ酸置換、挿入、欠失が当該コードされた変異種の表面にある荷電した残基に行われている核酸。
【請求項4】
請求項1の核酸であって、当該少なくとも1個のアミノ酸置換、挿入又は欠失が活性部位のアミノ酸残基に行われている核酸。
【請求項5】
請求項1の核酸であって、当該少なくとも1個のアミノ酸置換、挿入又は欠失が位置1の残基以外のアミノ酸残基に行われている核酸。
【請求項6】
請求項1の核酸であって、当該変異種は前記コードされた変異種の残基2-105と残基208-396に及ぶドメインA、残基106-207に及ぶドメインB及び残基397からC末端にまで及ぶドメインCを含む核酸。
【請求項7】
請求項6の核酸であって、当該コードされた変異種は、ドメインAに少なくとも1個のアミノ酸置換、挿入または欠失を有する核酸。
【請求項8】
請求項6の核酸であって、当該コードされた変異種はドメインBに少なくとも1個のアミノ酸置換、挿入または欠失を有する核酸。
【請求項9】
請求項6の核酸であって、当該コードされた変異種はドメインCに少なくとも1個のアミノ酸置換、挿入または欠失を有する核酸。
【請求項10】
請求項1の核酸であって、当該コードされた変異種は少なくとも2個の置換され、挿入され又は欠失されたアミノ酸を含む核酸。
【請求項11】
請求項10の核酸であって、当該コードされた変異種は置換され、挿入され又は欠失された少なくとも5個のアミノ酸を含む核酸。
【請求項12】
請求項11の核酸であって、当該コードされた変異種は置換され、挿入され又は欠失された少なくとも10個のアミノ酸を含む核酸。
【請求項13】
請求項12の核酸であって、当該コードされた変異種は11個から30個の間の個数のアミノ酸置換、挿入又は欠失を含む核酸。
【請求項14】
請求項12の核酸であって、当該コードされた変異種は11個から70個の間の個数のアミノ酸置換、挿入又は欠失を含む核酸。
【請求項15】
請求項1の核酸であって、当該コードされた変異種はSEQ ID NO 4から15のポリペプチドのいずれか1個に示されているアミノ酸配列を有する核酸。
【請求項16】
請求項1の核酸であって、当該コードされた変異種は以下のアミノ酸置換、挿入又は欠失の1以上を含む核酸。
K23N;Q26R;A33K;T49A;A52N;H68N;E82Q;K88N;H91K;R93N;D94G;D114L;T116R;D121N;A123N;D124N;R127Q;V128E;I129V;H133Y;L134T;K136E;H140Y;H142D;S148N;Y150H;D152N;H156R;T163V;E167Q;K170R;172位におけるNの挿入;Q178R;A181G;S187D;N188T;N190F;K213R;R214N;E222T;F238Y;E250S;K251A;E255N;Y262F;Q264K;H293Y;T297K;R305Q;K306N;K319H;G332E;Q333E;S334A;Q340E;T341E;369-377の残基のTKGDSQREIからIPTHGV---への残基の置換又は欠失(ハイフンは欠失を表す);K389E;K392Q;Q393K;A398R;H400N;D416N;V419H;R437W;N444K;E447Q;H450S;E458G;E469N;又はH471S。
【請求項17】
請求項1−16のいずれか1項の核酸を含む単離された宿主細胞。
【請求項18】
請求項1−16のいずれか1項の核酸を含むベクター。
【請求項19】
請求項9のベクターを含む宿主細胞
【請求項20】
請求項17又は19のいずれかの請求項の宿主細胞であり、当該細胞が微生物である宿主細胞。
【請求項21】
請求項20の宿主細胞であり、当該微生物は細菌又は菌類である宿主細胞。
【請求項22】
請求項21の単離された宿主細胞であり、当該細菌は、バチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)、B.リケニフォルミス(B.licheniformis)、B.レンツス(B.lentus)、B.ブレビス(B.brevis)、B.ステアロサーモフィルス(B.stearothermophilus)、B.アルカロフィルス(B.alkalophilus)、B.アミロリケファシエンス(B.amyloliquefaciens)、B.コアグランス(B.coagulans)、B.サーキュランス(B.circulans)、B.ラウツス(B.lautus)、B.スリンギエンシス(B.thuringiensis)、ストレプトマイセス・リビダンス(Stereptomyces lividans)、又はS.ムリヌス(S.murinus)からなる群から選択されるグラム陽性細菌又はグラム陰性細菌であり、前記グラム陰性細菌は大腸菌又はシュードモナス属の種である宿主細胞。
【請求項23】
請求項1−16のいずれか1項の核酸によりコードされている変異種。
【請求項24】
請求項23の変異種を含む手洗い用又は自動用の皿洗い用組成物。
【請求項25】
請求項24の手洗い用又は自動用の皿洗い用組成物であり、さらに界面活性剤、洗剤助剤、錯体形成剤、ポリマー、漂白系、安定剤、発泡促進剤、発泡抑制剤、腐食防止剤、汚れ懸濁剤、汚れ再沈着防止剤、染料、殺菌剤、ヒドロトロープ、変色防止剤及び香料のうち1以上を含む皿洗い用組成物。
【請求項26】
前記皿を洗浄するために十分な時間、請求項24の手洗い用又は自動用皿洗い組成物を使用することを含む皿を洗浄する方法。
【請求項27】
請求項23の変異種を含む洗剤添加剤。
【請求項28】
請求項27の洗剤添加剤を含む洗濯洗剤であり、さらに界面活性剤、洗剤助剤、錯体形成剤、ポリマー、漂白系、安定剤、発泡促進剤、発泡抑制剤、腐食防止剤、汚れ懸濁剤、汚れ再沈着防止剤、染料、殺菌剤、ヒドロトロープ、光学的増白剤、布地柔軟剤及び香料のうち1以上を含む洗濯洗剤。
【請求項29】
洗濯又は皿洗い用の請求項27の洗剤添加剤の使用。
【請求項30】
洗濯用又は皿洗い用の請求項23の変異種の使用。
【請求項31】
請求項23の変異種を含む洗剤添加剤であって、任意に粉塵を発生しない顆粒、微小顆粒、安定化液体又は保護酵素の形態をとる洗剤添加剤。
【請求項32】
請求項31の洗剤添加剤であり、さらにセルラーゼ、プロテアーゼ、アミノペプチダーゼ、アミラーゼ、カーボヒドラーゼ、カルボキシペプチダーゼ、カタラーゼ、キチナーゼ、クチナーゼ、シクロデキストリングルカノトランスフェラーゼ、デオキシリボヌクレアーゼ、エステラーゼ、α-ガラクトシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、α-グルコシダーゼ、β-グルコシダーゼ、ハロペルオキシダーゼ、インベルターゼ、ラッカーゼ、リパーゼ、マンノシダーゼ、酸化酵素、ペクチン分解酵素、ペプチドグルタミナーゼ、ペルオキシダーゼ、フィターゼ、ポリフェノール酸化酵素、タンパク質分解酵素、リボヌククレアーゼ、トランスグルタミナーゼ、キシラナーゼ、プルラナーゼ、イソアミラーゼ、カラギナーゼ又はそれらのいずれかの組み合わせからなる群から選択される酵素を含む洗剤添加剤。
【請求項33】
請求項32の洗剤添加剤であり、当該アミラーゼは別のα-アミラーゼ、β-アミラーゼ、イソアミラーゼ又はグルコアミラーゼである洗剤添加物。
【請求項34】
請求項31の洗剤添加物を含む洗剤組成物。
【請求項35】
請求項23の変異種を含む洗剤組成物。
【請求項36】
請求項35の洗剤組成物であって、さらにセルラーゼ、プロテアーゼ、アミノペプチダーゼ、アミラーゼ、カーボヒドラーゼ、カルボキシペプチダーゼ、カタラーゼ、キチナーゼ、クチナーゼ、シクロデキストリングルコトランスフェラーゼ、デオキシリボヌクレアーゼ、エステラーゼ、α-ガラクトシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、α-グルコシダーゼ、β-グルコシダーゼ、ハロペルオキシダーゼ、インベルターゼ、ラッカーゼ、リパーゼ、マンノシダーゼ、酸化酵素、ペクチン分解酵素、ペプチドグルタミナーゼ、ペルオキシダーゼ、フィターゼ、ポリフェノール酸化酵素、タンパク質分解酵素、リボヌクレアーゼ、トランスグルタミナーゼ、キシラナーゼ、プルラナーゼ、イソアミラーゼ、カラギナーゼ、又はそれらのいずれかの組み合わせからなる群うちの酵素を含む洗剤組成物。
【請求項37】
水溶液に請求項23の変異種を含む織物の糊を除去する組成物であって、任意に別の酵素を含む組成物。
【請求項38】
前記織物の糊を除去するために十分な時間、請求項37の糊を除去する組成物を使用することを含む織物の糊を除去する方法。
【請求項39】
織物の糊を除去するための請求項23の変異種の使用。
【請求項40】
水溶液に請求項23の変異種を含むデンプンを加工する組成物。
【請求項41】
請求項40のデンプンを加工する組成物であって、さらにグルコアミラーゼ、イソアミラーゼ、プルラナーゼ、フィターゼまたはそれらの組み合わせを含む組成物。
【請求項42】
前記デンプンを加工するための十分な時間、請求項40の組成物を使用することを含むデンプンを加工する方法。
【請求項43】
溶液またはゲルに請求項23の変異種を含む、バイオフィルムを加水分解する組成物であって、任意にセルラーゼ、ヘミセルラーゼ、キシラナーゼ、リパーゼ、プロテアーゼ、ペクチナーゼ、抗菌剤、またはそれらのいずれかの組み合わせを含む組成物。
【請求項44】
前記バイオフィルムを処理するために十分な期間、請求項43の組成物を使用することを含むバイオフィルムを加水分解する方法。
【請求項45】
溶液に請求項23の変異種を含む、デンプンを糖化するための組成物。
【請求項46】
前記デンプンを糖化するために十分な期間、請求項45の組成物を使用することを含むデンプンを糖化する方法。
【請求項47】
溶液に請求項23の変異種を含む、デンプンを液化するための組成物。
【請求項48】
前記デンプンを液化するために十分な期間、請求項47の組成物を使用することを含むデンプンを液化する方法。
【請求項49】
溶液またはゲルに請求項23の変異種を含むベーキング用組成物。
【請求項50】
請求項49のベーキング用組成物を使用することを含むベーキングの方法。
【請求項51】
B.リケニフォルミス(B.licheniformis)α-アミラーゼ変異種を作る方法であって、
(1) 野生型B.リケニフォルミスα-アミラーゼの構造を、前記野生型B.リケニフォルミスα-アミラーゼと比較して少なくとも一の好ましい性質をもつモデルα-アミラーゼと比較し
(2) モデルα-アミラーゼとの間で構造が保存されるべき野生型B.リケニフォルミスα-アミラーゼの少なくとも一のアミノ酸または構造領域を特定し
(3) 上記の段階(2)で特定したアミノ酸残基または構造領域が修飾された野生型B.リケニフォルミスα-アミラーゼの変異種を構築し、
(4) 当該変異種に少なくとも一の好ましい性質が与えられているか否を決定するために、当該変異種を試験する
ことを含む方法であり、当該変異種は野生型B.リケニフォルミスα-アミラーゼと比較して少なくとも一の変化した性質を有する方法。
【請求項52】
請求項51の方法であって、当該モデルα-アミラーゼはバチルス属の種第707α-アミラーゼ(Bacillus sp. No.707α-amylase)である方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2010−528606(P2010−528606A)
【公表日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−510326(P2010−510326)
【出願日】平成20年5月28日(2008.5.28)
【国際出願番号】PCT/US2008/006768
【国際公開番号】WO2008/153805
【国際公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【出願人】(508377015)ダニスコ・ユーエス・インク、ジェネンコー・ディビジョン (31)
【Fターム(参考)】