説明

バチルス属細菌の栄養細胞を有効成分とする植物病害の防除方法および防除剤

【課題】本発明は、病原性微生物に対して拮抗性を有する細菌を含有する植物病害の防除剤であって、拮抗性細菌を胞子画分、生菌体を含む培養液または胞子と生菌との混合物として含有する既存の防除剤と比較して、速効的に作用する防除剤を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、植物病原性の糸状菌、細菌またはウイルスの感染または増殖を抑制する能力を有するバチルス属に属する細菌の栄養細胞を有効成分として含む、植物病害の防除剤または防除資材、並びにこの防除剤または防除資材を用いた植物病害の防除方法に関する。本発明はまた、植物病原性の糸状菌、細菌またはウイルスの感染または増殖を抑制する能力を有するバチルス属に属する細菌を、肉エキス培地を用いて培養することにより該細菌の栄養細胞を得ることを含む、前記防除剤または防除資材の製造方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は細菌性、糸状菌性またはウイルス性の植物病害の防除方法およびそのための防除剤または防除資材に関する。
【背景技術】
【0002】
農業経営ベースにのった野菜類などの農業生産物の栽培においては、種子、土壌、空気(水媒)などによる伝染性の植物病害の被害により、農産物の良質・安定・多収量が困難に見舞われることが多い。特に不順な天候の気象条件下では生産農家は致命的な打撃を受ける。
【0003】
これらの伝染性病害発生原因として認知されている病原体及びそれによる病害としては、主に糸状菌(カビ)、細菌(バクテリア)及びウイルスの病害があり(非特許文献1)、正常な農業生産を行うためには、これらの病害による植物病害を防除することが極めて重要である。
【0004】
従来、このような病原性糸状菌、細菌、及びウイルスにより引き起こされる植物の病害を防除する手段としては、化学的方法、非宿主作物との輪作等の生態学的方法、病害抵抗性品種・台木等を活用する育種学的方法等が広く一般的に行われている。しかし、特に最近は食品の安全性が強く求められるうえに、消費者側の立場から求められる栄養価の高い農産物を生産する必要があるために、過度の化学的防除を行うことは困難である。また、現在の集約的な農業生産体制のもとでは経済的に見合う輪作作物を選定することが困難であるため、有効な輪作体制はとれないのが現状であるから、上記生態学的方法もまた、宿主範囲の広い病害に対しては有効な防除方法とは言えない。一方、抵抗性品種・抵抗性台木の育成にも長い年月と労力が必要である(非特許文献2)。また、これらの技術が成功したとしても抵抗性品種・抵抗性台木を侵す新しいレース(分化型)の出現により有効的品種・台木が打破されることも現実である。1例をあげればトマト萎凋病菌(Fusarium oxysporum f. sp. lycopersici)のレース1、レース2及びレース3(非特許文献3)である。
【0005】
以上の理由により、これらの手段に代わる植物病害の有効な防除方法が求められており、安全性が高く、環境を汚染しない防除法として、自然に存在する特定の拮抗微生物を利用した生物的防除法が近年実用化している(非特許文献4、非特許文献5)。すなわち、病原性微生物に対する拮抗作用を有する微生物を植物体や土壌に適用することで、病原性微生物の生育や植物体への感染を抑制する生物的防除の方法が開発されて実用化に至っている。例えば、バイオキーパー水和剤、ボトキラー水和剤、マルカライト、エコホープ等である。このような技術が開示された、本願発明に関連する先行文献情報としては特許文献1〜20及び非特許文献6〜8が挙げられる。
【0006】
既存の拮抗性細菌を用いた植物病害の防除方法において、拮抗性細菌は芽胞の形態で施用される。
【0007】
病原性微生物に対して拮抗性を有する細菌がその拮抗性を奏するのは、細菌が栄養細胞の状態のときである。拮抗性細菌が芽胞の形態で施用される既存の植物病害の防除方法では、拮抗性細菌が添加されてから栄養細胞となり拮抗性を奏するようになるまでに時間を要するという問題がある。
【0008】
【特許文献1】特開昭63-273470号公報
【特許文献2】特開平2-22299号公報
【特許文献3】特開平8-175919号公報
【特許文献4】特開2003-277210号公報
【特許文献5】特開2002-145712号公報
【特許文献6】特開平9-124427号公報
【特許文献7】特開平11-302120号公報
【特許文献8】特開平9-308372号公報
【特許文献9】特開平7-267811号公報
【特許文献10】特開2003-89612号公報
【特許文献11】特開平5-91869号公報
【特許文献12】特開平6-133763号公報
【特許文献13】特開2001-346407号公報
【特許文献14】特開2003-219863号公報
【特許文献15】特開平2-209803号公報
【特許文献16】特開2003-289854号公報
【特許文献17】特開平10-146187号公報
【特許文献18】特開平5-51305号公報
【特許文献19】特開2003-277210号公報
【特許文献20】特開2005-145号公報
【非特許文献1】岸国平/編、植物病害大辞典、pp.1276、1998、全国農村教育協会発行
【非特許文献2】山川邦夫/著、野菜/抵抗性品種とその利用、pp.136、1978、全国農村教育協会発行
【非特許文献3】農林水産技術会議事務局/編、農林水産研究文献解題No.26 野菜の病害、pp.394、平成13年、農林統計協会
【非特許文献4】西尾道徳・大畑貫一/編、農業環境を守る微生物利用技術、pp.327、1998、農林水産技術情報協会発行
【非特許文献5】岸国平・大畑貫一/編、微生物と農業 農業の未来をひらく微生物、pp.436、1994、全国農村教育協会発行
【非特許文献6】Phae,C.G., Shoda,M., Kita,N.,Nakano,M.および Ushiyama,K.: Ann. Phytopath. Soc. Japan, 58, 329-339, 1992
【非特許文献7】山田昌雄編著:微生物農薬-環境保全型農業をめざして- 全国農村教育協会,pp328,2000
【非特許文献8】岩田俊一他編:植物防疫講座-病害編- 日本植物防疫協会,pp281,1983
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、病原性微生物に対して拮抗性を有する細菌を含有する植物病害の防除剤であって、拮抗性細菌を芽胞として含有する既存の防除剤と比較して、速効的に作用する防除剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は以下の発明を包含する。
(1)植物病原性の糸状菌、細菌またはウイルスの感染または増殖を抑制する能力を有するバチルス属に属する細菌の栄養細胞を有効成分として含む、植物病害の防除剤または防除資材。
(2)植物病原性の糸状菌、細菌またはウイルスの感染または増殖を抑制する能力を有するバチルス属に属する細菌がDAIJU-SIID2550(受託番号FERM BP-10114)またはその変異株である(1)に記載の防除剤または防除資材。
(3)(1)または(2)に記載の防除剤または防除資材を植物病原性の糸状菌、細菌またはウイルスの宿主となる植物に施用することを含む植物病害の防除方法。
(4)植物病原性の糸状菌、細菌またはウイルスの感染または増殖を抑制する能力を有するバチルス属に属する細菌を、肉エキス培地を用いて培養することにより該細菌の栄養細胞を得ることを含む、(1)または(2)に記載の防除剤または防除資材の製造方法。
(5)DAIJU-SIID2550(受託番号FERM BP-10114)の栄養細胞。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、病原性微生物に対して拮抗性を有する細菌を含有する植物病害の防除剤であって、拮抗性細菌を芽胞として含有する既存の防除剤と比較して、速効的に作用する防除剤が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明に係る植物病害の防除剤または防除資材あるいはこれらを用いた植物病害の防除方法は、植物病原性の糸状菌、細菌またはウイルスの感染または増殖を抑制する能力を有するバチルス属に属する細菌の栄養細胞を用いることを第一の特徴とする。植物病原性微生物の拮抗性細菌を栄養細胞の状態で植物に施用することにより、芽胞等から栄養細胞に変換される時間を要せず、拮抗性が迅速に発揮されるため、拮抗性細菌の施用後から植物病害の防除効果が奏されるまでの間の時間が大幅に短くなる。また、植物病原性微生物の拮抗性細菌を栄養細胞の状態で植物に施用することにより、芽胞等の状態で施用する場合と比較して、高い防除効果を得ることができる。
【0013】
本発明において「栄養細胞」とは、バチルス菌の生活環の中で、細胞分裂を繰り返して増殖している段階にある、芽胞を形成する前の細胞を示す(蜂須賀養悦著:芽胞学、東海大学出版会、pp360、1988)。
【0014】
本発明に使用され得るバチルス属に属する細菌としては、植物病原性の細菌、糸状菌またはウイルスの感染または増殖を抑制する能力を有するものであれば特に限定されない。例えば、バチルス・アミロリクェファシエンスまたはバチルス・ズブチルスが挙げられる。特に、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに2003年11月20日付けで寄託されたDAIJU-SIID2550(受託番号FERM BP-10114)が好ましい。この株はバチルス・アミロリクェファシエンス近縁種であると推定されることから、以下「BAL菌」と略記される。BAL菌は、植物および土壌への定着性が高く、病害防除活性の持続性が高く、40〜100℃の高温に曝されても病害防除活性が維持されるため好ましい。本発明にはまた、BAL菌が変異誘発処理された変異株が用いられ得る。変異誘発処理は任意の適当な変異原を用いて行われ得る。ここで、「変異原」なる語は、その広義において、例えば変異原効果を有する薬剤のみならずUV照射のごとき変異原効果を有する処理をも含むものと理解すべきである。適当な変異原の例としてエチルメタンスルホネート、UV照射、N−メチル−N′−ニトロ−N−ニトロソグアニジン、ブロモウラシルのようなヌクレオチド塩基類似体及びアクリジン類が挙げられるが、他の任意の効果的な変異原もまた使用され得る。
【0015】
本発明に使用されるバチルス属細菌の栄養細胞は、BAL菌等のバチルス属細菌を肉エキス培地、AG培地(配合例:グルコース(和光純薬工業株式会社)1%、ポリペプトン(日本製薬株式会社)1%、KH2PO4(和光純薬工業株式会社)0.1%、MgSO4・7H2O(和光純薬工業株式会社)0.05%、pH 7.00、高圧滅菌15分間)、PG培地(配合例:ジャガイモ200gを賽の目に切り、約1Lの蒸留水を加えて30分〜40分弱火で煮沸し、二重のガーゼでろ過する。ろ液に2%グルコースを加えたのち蒸留水で1Lとする。)等の培地、特に好ましくは肉エキス培地中で増殖させることにより調製することができる。本発明において「肉エキス培地」とは肉エキスを含有する培地であれば特に限定されないが、例えば、ブドウ糖 20g、ポリペプトン 10g、塩化ナトリウム 5g、酵母エキス 2g、肉エキス 3g、リン酸カリウム 1g、硫酸マグネシウム 0.5g、塩化カルシウム二水和物 0.15g、塩化第二鉄六水和物0.0081g、塩化マンガン四水和物0.0024g、硫酸第一鉄七水和物 0.0003g、蒸留水 1000mLを用いて調製したもの(pH7.0)が挙げられる。ここに示した肉エキス培地の組成は一例に過ぎず、適宜改変を加えた培地を使用してもよい。
【0016】
上記の各種培地を用いたバチルス属細菌の培養は、好気的条件下での培養、例えば振盪培養または通気撹拌培養、特に振盪培養によって行うことが好ましい。振盪培養では、芽胞が形成され難く、栄養細胞が得られやすいためである。肉エキス培地を用いて振盪培養を行うことは、他の培地(AG培地、PG培地等)を用いて振盪培養を行うのと比較して、栄養細胞の増殖量が多いことから、特に好ましい。
【0017】
培養条件は特に限定は無いが、一例を挙げれば、培養温度は25〜35℃が好ましく、30℃が最も好ましく、pHは5.0〜8.0が好ましく、7.0が最も好ましく、培養時間は20〜48時間が好ましく、20〜30時間がより好ましく、24時間が最も好ましい。30℃の温度で肉エキス培地(pH 7.0)を用いて振盪培養を行う場合、BAL菌の栄養細胞の密度は培養開始24時間後には約1x109cfu/mLに達し、その後の増殖は横ばいとなることから、効率的にBAL菌の栄養細胞を取得するためには培養時間は24時間であることが特に好ましい。
【0018】
以上のように培養したバチルス属細菌の栄養細胞は培養物から分離して使用される。分離法としては通常の方法、例えば膜分離あるいは遠心分離等の処理によって培養物から栄養細胞を分離する方法が挙げられる。更にまた、分離されたバチルス属細菌の栄養細胞は、凍結乾燥保存法、冷凍庫保存法、L乾燥法(大畑貫一ら編、作物病原菌研究技法の基礎−分離・培養・接種−、p.10〜11、社団法人日本植物防疫協会、1995)等により調製された乾燥菌体の形態で使用することもできる。乾燥菌体の形態であれば貯蔵中に栄養細胞から芽胞が形成されることがないため長期保存にも適する。
【0019】
バチルス属細菌の栄養細胞は培養液、その濃縮物または乾燥物としてそれ自体単独で本発明に使用され得るが、更なる他の任意成分と組み合わせて通常の微生物製剤と同様の形態(例えば粒剤、粉剤、水和剤、乳剤、液剤、フロアブル剤、塗布剤等の形態)に製剤化されてもよい(一般的な微生物製剤の形態については、米村・園田/著、農薬製剤、施用技術開発の最近の動向 第57巻10号、p.447、日本植物防疫協会発行、2003を参照)。組み合わせて使用される任意成分としては例えば固体担体、補助剤が挙げられる。固体担体としては例えばベントナイト、珪藻土、タルク類、パーライト、バーミキュライト、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)、ビール粕、サトウキビ絞り粕(バカス)、オカラ、フスマ、キチン、米糠、小麦粉等の有機物粉末が挙げられ、補助剤としては例えばゼラチン、アラビアガム、糖類、ジェランガム等の固着剤や増粘剤が挙げられる。ビール粕、サトウキビ絞り粕(バカス)、オカラ、フスマおよび米糠はいずれも産業廃棄物であるから、これらが本発明に用いられれば産業廃棄物の有効利用という点でも好ましい。
【0020】
上記バチルス属細菌の栄養細胞の、植物への施用方法は、防除しようとする植物病害の種類、植物病害の発生状況、施用対象である植物の種類、バチルス属細菌の栄養細胞が製剤化されている場合にはその剤形などの諸条件に応じて適宜選択され、例えば、地上部散布、施設内施用、土壌混和施用、土壌灌注施用、表面処理(種子粉衣処理、種子塗布処理)等の各処理により行われ得る。このように本発明の防除剤または防除資材は種子伝染防除法、土壌伝染防除法、空気(水媒)伝染(風・水による伝染)防除法(細菌性植物病害の防除法は一般的にこれらの3分類に大別できる)のいずれの方法にも使用され得る。より具体的な施用方法としては、各種形態の上記バチルス属細菌の栄養細胞を植物の種子に塗布する処理、植物の栽培土壌に灌注する処理、植物の栽培土壌に混和する処理、植物の茎葉に散布する処理、および、植物の付傷部に接触させる処理からなる群から選択される少なくとも1つの処理が行われることが好ましい。バチルス属細菌の栄養細胞を植物の種子に塗布する処理は、例えばジェランガム、寒天、カルボキシメチルセルロースナトリウムなどの被膜形成剤を含む溶液にバチルス属細菌を懸濁させた液を植物種子に塗布した後に乾燥させるか、または、同様の懸濁液に植物の種子を浸漬させた後に乾燥させることにより行われ得る。
【0021】
更にまた、上記バチルス属細菌の栄養細胞の植物への施用に際しては、必要に応じて通常使用される他の有効成分、例えば殺虫剤、殺線虫剤、殺ダニ剤、除草剤、殺真菌剤、殺細菌剤、抗ウイルス剤、肥料、土壌改良剤(泥炭等)、を混合施用するか、または、混合せずに交互施用もしくは同時施用することも可能である。本発明に使用されるバチルス属細菌の栄養細胞の作用は、通常、並行して施用される他の有効成分により妨げられない。
【0022】
本発明におけるバチルス属細菌の栄養細胞の植物への施用量は、防除される植物病害の種類、植物病害の発生状況、施用対象である植物の種類、バチルス属細菌の栄養細胞が製剤化されている場合にはその剤形などの諸条件に応じて適宜決定される。例えば栄養細胞を水和剤あるいは液剤の形態で散布する場合には、水和剤あるいは液剤中の栄養細胞の濃度は1×10個/mL以上であることが好ましく、1×109〜10個/mLであることがより好ましい。散布時期は発病極初めか発病前であることが好ましい。また、土壌に混和する場合には混和量は土壌1g当りの菌数が1×109〜10個程度が適当である。混和時期は播種または苗定植の前であることが好ましい。バチルス属細菌の栄養細胞を土壌へ混和してから該土壌に播種または苗定植を行うまでの間、剤型や土壌の種類等によって異なるため一概には規定できないが、7日以上放置することが好ましく、その間土壌を撹拌することがより好ましい。
【0023】
本発明により防除される糸状菌病としては、病原が糸状菌である任意の植物病害が挙げられ、例えば、空気伝染性糸状菌及び土壌伝染性糸状菌による病害が挙げられる。本明細書において空気伝染性糸状菌には水媒伝染性のものも含まれる。空気伝染性糸状菌としては例えば、うどんこ病菌(Erysiphe属菌、Sphaerotheca属菌、Leveillula属菌)、ボトリチス(Botrytis)属菌、フルビア (Fulvia fulva)属菌、コリネスポラ(Corynespora)属菌、アルブゴ(Albugo)属菌、べと病菌(プシウドペロノスポラ(Pseudoperonospora)属菌、Peronospora属菌、Plasmopara属菌、Bremia属菌)、ピリキュラリア(Pyricularia)属菌、いもち病菌(Pyricularia grisea)、ごま葉枯病菌(Cochliobolus miyabeanus)、サーコスポラ類縁菌(Cercospora属菌 Cercosporella属菌 Pseudocercospora属菌 Paracercospora属菌 Mycovellosiella属菌)、炭疽病菌(コレトトリカム(Colletotrichum)属菌、Glomerella属菌)、さび病菌(Puccinia属菌)、アルタナリア(Alternaria)属菌およびスクレロチニア(Sclerotinia)属菌が挙げられるがこれらに限定されない。土壌伝染性糸状菌としては例えば、根こぶ病菌(Plasmodiophora brassicae)、フィトフィトラ(Phytophthora)属菌、フザリウム(Fusarium)属菌、バーティシリウム(Verticillium)属菌、ピシウム(Pythium)属菌およびリゾクトニア(Rhizoctonia)属菌が挙げられるがこれらに限定されない。上記糸状菌による植物病害のうち、特に、アルタナリア(Alternaria)属菌、フィトフィトラ(Phytophthora)属菌、プシウドペロノスポラ(Pseudoperonospora)属菌、ボトリチス(Botrytis)属菌、リゾクトニア(Rhizoctonia)属菌、ピリキュラリア(Pyricularia)属菌、フザリウム(Fusarium)属菌、スクレロチニア(Sclerotinia)属菌、コリネスポラ(Corynespora)属菌、コレトトリカム(Colletotrichum)属菌またはアルブゴ(Albugo)属菌による植物病害、なかでもアルタナリア(Alternaria)属菌、フィトフィトラ(Phytophthora)属菌、プシウドペロノスポラ(Pseudoperonospora)属菌、ボトリチス(Botrytis)属菌、リゾクトニア(Rhizoctonia)属菌、ピリキュラリア(Pyricularia)属菌、フザリウム(Fusarium)属菌またはスクレロチニア(Sclerotinia)属菌による植物病害が本発明により好適に防除される。
【0024】
より具体的には、空気伝染性糸状菌病害としては、うどんこ病菌のトマト、ナス、ダイコン、キャベツ、カブ、カラシナ、ハクサイ、コマツナ、ニンジン、キュウリ、イチゴ、トウガラシ、メロン、スイカ、カボチャ、キクへの感染により引き起こされるうどんこ病(Powdery mildew)、ボトリチス・シネリア(Botrytis cinerea)のウリ科、ナス科、レタス、豆類、イチゴへの感染により引き起こされる灰色かび病(Gray mold)、コリネスポラ・カッシコラ(Corynespora cassiicola)のキュウリへの感染により引き起こされる褐斑病(Corynespora leaf spot)、アルブゴ・マクロスポラ(Albugo macrospora)のハクサイ、カリフラワー、カブ、ダイコン、コマツナなど多くのアブラナ科野菜類への感染により引き起こされる白さび病(White rust)、プシウドペロノスポラ・キュベンシス(Pseudoperonospora cubensis)等のべと病菌のウリ類、アブラナ科野菜類、ネギ・タマネギ、ワサビ、シュンギク、ミツバ、ホウレンソウおよびレタスへの感染により引き起こされるべと病(Dawny mildew)、ピリキュラリア・グリセア(Pyricularia grisea)等のいもち病菌のイネへの感染により引き起こされるイネいもち病(Rice blast)、シュードサーコスポラ・フリゲナ(Pseudocercospora fuligena)のトマトへの感染により引き起こされるトマトすすかび病(Cercospora leaf mold)、パラサーコスポラ・エゲヌラ(Paracercospora egenula)のナスへの感染により引き起こされるナス褐色円星病(Leaf spot)、サーコスポラ・カプシシ(Cercospora capsici)のピーマン・トウガラシへの感染により引き起こされる斑点病(Frogeye leaf spot)、サーコスポラ・シトルリナ(Cercospora citrullina)のキュウリ、メロン、スイカ及びヘチマへの感染により引き起こされる斑点病(Leaf spot)、サーコスポレラ・ブラシカエ(Cercosporella brassicae)のハクサイ及びカブへの感染により引き起こされるハクサイ及びカブ白斑病(White spot)、マイコベロシラ・ナトラスシイ(Mycovellosiella nattrassii)のナスへの感染により引き起こされるナスすすかび病(Leaf mold)、コレトトリカム・オルビキュレア(Colletotrichum orbiculare)等の炭疽病菌のハクサイ、カブ、ダイコン、コマツナ、サトウダイコン、チンゲンサイ、ツケナ類、インゲン、トウガラシ、ピーマン、ウリ類、エダマメ、ネギ、タマネギ、ニラ、ホウレンソウ、イチゴへの感染により引き起こされる炭疽病(anthracnose)、さび病菌のネギ、タマネギ、ラッキョウ、ニンニク、ニラへの感染により引き起こされるさび病(Rust)、キクへの感染により引き起こされるキク白さび病(Rust)、黒斑病菌のアブラナ科野菜類、ニンジンへの感染により引き起こされる黒斑病(Alternaria leaf spot, Alternaria black rot)、アルタナリア・ブラシキコラ(Alternaria brassicicola)のキャベツへの感染により引き起こされる黒すす病(Alternaria sooty spot)、アルタナリア・ダウシ(Alternaria dauci)のニンジンへの感染により引き起こされる黒葉枯病(Leaf Blight)、アルタナリア・ソラニ(Alternaria solani)のジャガイモへの感染により引き起こされる夏疫病(Eary Blight)、アルタナリア・ソラニ(Alternaria solani)のトマトへの感染により引き起こされるトマト輪紋病(Eary Blight)、ボトリチス属菌のタマネギ、ニラへの感染により引き起こされる白斑葉枯病(Leaf Blight)、ボトリチス・アリー(Botrytis allii)のタマネギへの感染により引き起こされる灰色腐敗病(gray-mold neck rot)が挙げられるがこれらには限られない。空気伝染性糸状菌による病害の中でも、アブラナ科植物の葉根菜類の生産に致命的障害を与える病気として知られている白さび病、黒斑病、炭疽病、べと病などは日本だけでなく世界的な重要病害として既発生国及び未発生国共においてその対応に多大の関心が寄せられている。従来、白さび病、黒斑病、炭疽病、べと病に対しては実用的に認知された抵抗性品種はない。防除効果の高い農薬はあるが(メタラキシル水和剤、イプロジオン水和剤、TPN水和剤、チオファネートメチル水和剤)、葉や根を直接食用にする葉根菜類を対象とするが故に、適正使用基準が厳しく防除の上で不都合が多い。本発明によればこれらの病害をカブ、チンゲンサイ、コマツナ、タイサイ、ダイコン、カイラン、ターサイ、カリフラワー、ブロッコリー、ハクサイ、キャベツ、アブラナ、カラシナなどにおいて生物的に防除することができる。
【0025】
土壌伝染性糸状菌病害としては、具体的には、根こぶ病菌のアブラナ科作物への感染により引き起こされる根こぶ病、フィトフィトラ属菌のイネ、リンゴ、ユリ、イチゴ、カンキツ、ナシ、ピーマン、トウガラシ、カボチャ、サトイモ、ジャガイモ、トマト、ナス、キュウリ、スイカ、メロン、ウリ類、ネギ、カーネーション、カンキツ、ホウレンソウへの感染により引き起こされる疫病、トマト、キュウリへの感染により引き起こされる灰色疫病、ナス、トマト、スイカ、カンキツへの感染により引き起こされる褐色腐敗病、イチゴへの感染により引き起こされる根腐病、イネ、オオムギ、コムギ、エンバク、トウモロコシ、ベントグラス類への感染により引き起こされる黄化萎縮病、バラへの感染により引き起こされる茎腐病、イネ、ダイズ、ナスへの感染により引き起こされる綿疫病、カンキツへの感染により引き起こされるすそ腐病、タマネギ、ネギ、ワケギ、ラッキョウ、ニンニク、ニラ、ノビルへの感染により引き起こされる白色疫病、アズキ、ダイズへの感染により引き起こされる茎疫病、ナスへの感染により引き起こされる苗葉枯疫病、トマト、ナスへの感染により引き起こされる根腐疫病、ピシウム属菌のインゲンマメ、カボチャ、キュウリへの感染により引き起こされる綿腐病、イネ、ナス、トマト、ホウレンソウ、カボチャ、キュウリ、インゲン、エンドウ、オクラ、メロンへの感染により引き起こされる苗立枯病、ニンジンへの感染により引き起こされるしみ腐病、ベントグラス類への感染により引き起こされる赤焼病、ダイズ、キュウリ、メロン、ホウレンソウへの感染により引き起こされる立枯病、コムギ、オオムギ、エンバク、ライムギ、ライグラス類、フェスク類への感染により引き起こされる褐色雪腐病、イチゴ、キュウリ、サトイモ、トマトへの感染により引き起こされる根腐病、サツマイモへの感染により引き起こされる白腐病、イネヘの感染により引き起こされる苗腐病、リゾクトニア属菌のイネへの感染により引き起こされる赤色菌核病、イネ、オオムギ、アワ、モロコシ、キビへの感染により引き起こされる紋枯病、ダイズ、アズキ、インゲンマメ、エンドウ、ジャガイモ、オーチャードグラス、ブルーグラス類、フェスク類、ライグラス類、ベントグラス類、ソルガム類への感染により引き起こされる葉腐病、イチゴへの感染により引き起こされる芽枯病、ソラマメ、カーネーションへの感染により引き起こされる茎腐病、イネ、トマト、ナス、ピーマン、トウガラシ、ピーマン、キュウリ、メロン、マクワウリ、ユウガオ、キャベツ、カリフラワー、ブロッコリー、コマツナ、タマネギ、ネギ、オクラ、シクラメンへの感染により引き起こされる苗立枯病、ホウレンソウ、オオムギ、コムギ、キャベツ、への感染により引き起こされる株腐病、レタスへの感染により引き起こされるすそ枯病、ジャガイモ、ゴボウへの感染により引き起こされる黒あざ病、ダイコン、ニンジンへの感染により引き起こされる根腐病、ハクサイへの感染により引き起こされる尻腐病、ニンジンへの感染により引き起こされる紫紋羽病、キクへの感染により引き起こされる立枯病、バーティシリウム属菌のイチゴ、ウド、ダイズへの感染により引き起こされる萎凋病、ナス、トウガラシ(ピーマン)、トマト、オクラ、キュウリ、フキ、メロン、キク、バラへの感染により引き起こされる半身萎凋病、キャベツ、レタスへの感染により引き起こされるバーティシリウム萎凋病、ダイコンへの感染により引き起こされるバーティシリウム黒点病、ハクサイへの感染により引き起こされる黄化病、フザリウム属菌のナスへの感染により引き起こされる半枯病、キュウリ、ユウガオ、ヘチマ、メロン、スイカ、サツマイモへの感染により引き起こされるつる割病、キャベツ、イチゴ、ダイコン、カブ、キャベツ、コマツナ、ウドへの感染により引き起こされる萎黄病、レタス、インゲンへの感染により引き起こされる根腐病、ラッキョウ、タマネギ、ニンニク、ニラ、サトイモ、ニンジンへの感染により引き起こされる乾腐病、ミツバへの感染により引き起こされる株枯病、ゴボウ、ネギ、トマト、ホウレンソウ、カーネーション、シクラメン、アズキへの感染により引き起こされる萎凋病、アスパラガス、カーネーションへの感染により引き起こされる立枯病、ハスへの感染により引き起こされる腐敗病、メロン、ヤマイモへの感染により引き起こされる褐色腐敗病、トマト、ネギへの感染により引き起こされる根腐萎凋病、イネへの感染により引き起こされる苗腐病、コムギへの感染により引き起こされる紅色雪腐病が挙げられるがこれらには限られない。土壌伝染性糸状菌による病害の中でも、フザリウム属菌、バーティシリウム属菌またフィトフィトラ属菌などによる病害は、難防除病害として野菜栽培の上で致命的障害を与える。そのため、これらの諸病害に対応するため、抵抗性品種の育成、化学的農薬による土壌消毒、発生予察などの手段が講じられてきた。例えば、ナス科(トマト、ナス、ピーマン、シシトウ)、ウリ科(キュウリ、スイカ、メロン)などでは抵抗性品種や抵抗性台木、また化学農薬による土壌消毒(クロールピクリン、ダゾメット、メチルブロマイド)、病原菌の土壌検診などの手段を講じて防除が行われてきた。アブラナ科野菜類、例えばカブ、チンゲンサイ、コマツナ、ハクサイ、キャベツ、ダイコンなどでは、ナス科、ウリ科野菜類に比べて収穫期間が短く、そのため1年間の連作回数が極めて多い。例えばコマツナ、チンゲンサイ、カブでは5〜6回である。そのため土壌伝染性病害による被害は致命的である。本発明の防除剤または防除資材を作期ごとに使用することにより、難防除病原菌の土壌中での増殖または伝染を阻止して発病を軽減することができる。
【0026】
本発明により防除される細菌性の植物病害としては、細菌が病原である任意の植物病害が挙げられ、例えば、アグロバクテリウム属、クラビバクター属、エルウィニア属、シュードモナス属、ラルストニア属、コリネバクテリウム属、クルトバクテリウム属、バークホルデリア属、キサントモナス属、リゾバクター属またはクロストリジウム属に属する細菌による植物病害、なかでもエルウィニア属またはキサントモナス属による植物病害が挙げられる。本発明の防除剤または防除資材は、特に、アグロバクテリウム属、クラビバクター属、エルウィニア属、シュードモナス属、ラルストニア属、コリネバクテリウム属、クルトバクテリウム属、バークホルデリア属またはキサントモナス属に属する細菌による植物病害に対して有効である。より具体的には、例えば、キサントモナス・カンペストリス・パソバー・カンペストリス(Xanthomonas campestris pv. campestris、本明細書において「黒腐病菌」という)のアブラナ科植物への感染により引き起こされる黒腐病(Black rot)、アグロバクテリウム・リゾゲネス(Agrobacterium rhizogenes)のメロンへの感染により引き起こされる毛根病(Hairy root)、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)のニンジンへの感染により引き起こされる根頭がんしゅ病(Crown gall)、バークホルデリア・グラジオリ(Burkholderia gladioli)のタマネギへの感染により引き起こされるりん片腐敗病、クラビバクター・ミシガネンシス・サブスピーシーズ・ミシガネンシス(Clavibacter michiganensis subsp. michiganensis)のトマトへの感染により引き起こされるかいよう病(Bacterial canker)、コリネバクテリウム属細菌(Corynebacterium sp.)のトウガラシ、ピーマンへの感染により引き起こされるかいよう病(Bacterial canker)、コリネバクテリウム属細菌(Corynebacterium sp.)のトマトへの感染により引き起こされる葉こぶ病(Bacterial leaf gall)、クルトバクテリウム・フラクムファシエンス(Curtobacterium flaccumfaciens)のタマネギへの感染により引き起こされるかいよう病、エルウィニア・カロトボーラ・サブスピーシーズ・カロトボーラ(Erwinia carotovora subsp. carotovora)のツケナ、サントウサイ、タイサイ、カブ、カリフラワー、キャベツ、キュウリ、ダイコン、パクチョイ、タマネギ、トウガラシ、ピーマン、トマト、ナス、ニラ、ニンジン、ニンニク、ネギ、ハクサイ、ブロッコリー、メロン、レタス (チシャ)への感染により引き起こされる軟腐病(Bacterial soft rot, Slimy soft rot)、エルウィニア・クリサンテミ(Erwinia chrysanthemi)のイチゴへの感染により引き起こされる萎凋細菌病(Bacterial stem rot)、エルウィニア・クリサンテミのカボチャへの感染により引き起こされる腐敗病(Bacterial rot)、エルウィニア・クリサンテミのナスへの感染により引き起こされる茎腐細菌病(Bacterial stem rot)、エルウィニア・クリサンテミのネギへの感染により引き起こされる軟腐病(Bacterial soft rot)、エルウィニア・ラポンチシ(Erwinia rhapontici)のタマネギへの感染により引き起こされる腐敗病(Soft rot)、エルウィニア属細菌(Erwinia sp.)のニンニクへの感染により引き起こされる春腐病、シュードモナス・チコリ(Pseudomonas cichorii)のオクラへの感染により引き起こされる葉枯細菌病、シュードモナス・チコリのナスへの感染により引き起こされる褐斑細菌病(Necrotic leaf spot)、シュードモナス・チコリのニンニクへの感染により引き起こされる春腐病、シュードモナス・チコリのメロン、レタス (チシャ)への感染により引き起こされる腐敗病(Bacterial rot)、シュードモナス・コルガタ(Pseudomonas corrugata)のトマト、ナスへの感染により引き起こされる茎えそ細菌病(Pith necrosis)、シュードモナス・フルオレセンス(Pseudomonas fluorescens)のトマトへの感染により引き起こされる茎えそ細菌病(Pith necrosis)、シュードモナス・マージナリス(Pseudomonas marginalis)のナバナへの感染により引き起こされる花腐細菌病(Bacterial bud rot)、シュードモナス・マージナリス・パソバー・マージナリス(Pseudomonas marginalis pv. marginalis)のイチゴへの感染により引き起こされる芽枯細菌病、シュードモナス・マージナリス・パソバー・マージナリスのキャベツ、シュンギク、タマネギ、ネギ、ハクサイ、ブロッコリー、レタス (チシャ)への感染により引き起こされる腐敗病(Soft rot、Head rot)、シュードモナス・マージナリス・パソバー・マージナリスのキュウリへの感染により引き起こされる縁枯細菌病(Marginal blight)、シュードモナス・マージナリス・パソバー・マージナリスのダイコンへの感染により引き起こされる黒点輪腐病、シュードモナス・マージナリス・パソバー・マージナリスのトマトへの感染により引き起こされる腐敗細菌病(Bacterial rot)、シュードモナス・マージナリス・パソバー・マージナリスのニンニクへの感染により引き起こされる春腐病、シュードモナス属細菌(Pseudomonas sp.)のイチゴへの感染により引き起こされる褐色腐敗病、シュードモナス属細菌のトマトへの感染により引き起こされる幼果黒変症状、シュードモナス属細菌のナスへの感染により引き起こされる斑点細菌病(Bacterial spot)、シュードモナス属細菌のニラへの感染により引き起こされる株腐細菌病(Bacterial basal bulb rot)、シュードモナス・シリンゲ(Pseudomonas syringae)のタマネギ、ネギへの感染により引き起こされる斑点細菌病(Bacterial leaf spot)、シュードモナス・シリンゲ・パソバー・ラクリマンス(Pseudomonas syringae pv. lachrymans)のカボチャ、キュウリ、ニガウリ (ツルレイシ)、メロンへの感染により引き起こされる斑点細菌病(Angular leaf spot、Bacterial spot)、シュードモナス・シリンゲ・パソバー・マクリコラ(Pseudomonas syringae pv. maculicola)のツケナ、サントウサイ、タイサイ、カブ、カラシナ・タカナ、カリフラワー、キャベツ、キョウナ (ミズナ)、ダイコン、ハクサイへの感染により引き起こされる黒斑細菌病(Bacterial leaf spot、Bacterial black spot)、シュードモナス・シリンゲ・パソバー・スピナチエ(Pseudomonas syringae pv. spinaciae)のホウレンソウへの感染により引き起こされる斑点細菌病(Bacterial leaf spot)、シュードモナス・シリンゲ・パソバー・トマト(Pseudomonas syringae pv. tomato)のトマトへの感染により引き起こされる斑葉細菌病(Bacterial speck)、シュードモナス・ビリジフラバ(Pseudomonas viridiflava)のオクラへの感染により引き起こされる葉枯細菌病、シュードモナス・ビリジフラバのキャベツへの感染により引き起こされる腐敗病(Soft rot)、シュードモナス・ビリジフラバのキュウリへの感染により引き起こされる縁枯細菌病(Marginal blight)、シュードモナス・ビリジフラバのトマトへの感染により引き起こされる黒斑細菌病(Bacterial black spot)、シュードモナス・ビリジフラバのナバナへの感染により引き起こされる花腐細菌病(Bacterial bud rot)、シュードモナス・ビリジフラバのハクサイへの感染により引き起こされる褐条細菌病(Bacterial brown streak)、シュードモナス・ビリジフラバのレタス (チシャ)への感染により引き起こされる腐敗病(Bacterial rot)、ラルストニア・ソラナセラム(Ralstonia solanacearum)のイチゴ、カブ、カボチャ、キュウリ、シュンギク、ダイコン、トウガラシ、ピーマン、トマト、ナス、ニガウリ (ツルレイシ)への感染により引き起こされる青枯病(Bacterial wilt)、リゾバクター・ダウチ(Rhizobacter dauci)のニンジンへの感染により引き起こされるこぶ病(Bacterial gall)、キサントモナス・カンペストリス(Xanthomonas campestris)のイチゴへの感染により引き起こされる角斑細菌病、キサントモナス・カンペストリスのシュンギクへの感染により引き起こされる黒腐病、キサントモナス・カンペストリスのブロッコリーへの感染により引き起こされる黒腐病(Black rot)、キサントモナス・カンペストリス・パソバー・アリイ(Xanthomonas campestris pv. allii)のネギへの感染により引き起こされる葉枯細菌病(Bacterial blight)、キサントモナス・カンペストリス・パソバー・カロテ(Xanthomonas campestris pv. carotae)のニンジンへの感染により引き起こされる斑点細菌病(Bacterial blight)、キサントモナス・カンペストリス・パソバー・ククルビタエ(Xanthomonas campestris pv. cucurbitae)のカボチャ、キュウリ、メロンへの感染により引き起こされる褐斑細菌病(Bacterial spot、Bacterial brown spot、Bacterial leaf spot)、キサントモナス・カンペストリス・パソバー・ラファニ(Xanthomonas campestris pv. raphani)のカブ、キャベツ、ダイコン、チンゲンサイ、ハクサイへの感染により引き起こされる斑点細菌病(Bacterial spot)、キサントモナス・カンペストリス・パソバー・ベシカトリア(Xanthomonas campestris pv. vesicatoria)のトウガラシ、ピーマン、トマトへの感染により引き起こされる斑点細菌病(Bacterial spot)、キサントモナス・カンペストリス・パソバー・ビチナス(Xanthomonas campestris pv. vitians)のレタス (チシャ)への感染により引き起こされる斑点細菌病(Bacterial spot)、キサントモナス・フラガリエ(Xanthomonas fragariae)のイチゴへの感染により引き起こされる角斑細菌病、シュードモナス・シリンゲ・パソバー・オリゼ(Pseudomonas syringae pv. oryzae)のイネへの感染により引き起こされるかさ枯病(Halo blight)、イネ褐条病菌(Acidovorax avenae subsp. avenae)のイネへの感染により引き起こされる褐条病(Bacterial brown stripe)、エルウィニア・クリサンテミ・パソバー・ゼア(Erwinia chrysanthemi pv. zeae)のイネへの感染により引き起こされる株腐病(Bacterial foot rot)、キサントモナス・オリゼ・パソバー・オリゼ(Xanthomonas oryzae pv. oryzae)のイネへの感染により引き起こされる白葉枯病(Bacterial leaf blight)、エルウィニア・アナナス(Erwinia ananas)、のイネへの感染により引き起こされる内穎褐変病(Bacterial palea browning)、バークホルデリア・プランタリ(Burkholderia plantarii)のイネへの感染により引き起こされる苗立枯細菌病(Bacterial seedling blight)、バークホルデリア・グルメ(Burkholderia glumae)のイネへの感染により引き起こされるもみ枯細菌病(Bacterial grain rot)、シュードモナス・フスコバジネ(Pseudomonas fuscovaginae)のイネへの感染により引き起こされる葉しょう褐変病(Sheath brown rot)、シュードモナス・シリンゲ・パソバー・ジャポニカ(Pseudomonas syringae pv. japonica)のコムギへの感染により引き起こされる黒節病(Bacterial black node)、ラルストニア・ソラナセルム(Ralstonia solanacearum)のジャガイモへの感染により引き起こされる青枯病(Bacterial wilt)、エルウィニア・クリサンテミ・パソバー・クリサンテミ(Erwinia chrysanthemi pv. chrysanthemi)のジャガイモへの感染により引き起こされる萎凋細菌病(Bacterial stem rot)、エルウィニア・カロトボーラ・サブスピーシーズ・アトロセプチカ(Erwinia carotovora subsp. atroseptica)、エルウィニア・カロトボーラ・サブスピーシーズ・カロトボーラ(Erwinia carotovora subsp. carotovora)、エルウィニア・クリサンテミ(Erwinia chrysanthemi)のジャガイモへの感染により引き起こされる黒あし病(Black leg)、エルウィニア・カロトボーラ・サブスピーシーズ・カロトボーラ(Erwinia carotovora subsp. carotovora)のジャガイモへの感染により引き起こされる軟腐病(Bacterial soft rot)、クロストリジウム属細菌(Clostridium sp.)のジャガイモへの感染により引き起こされる粘性腐敗病(Slimy rot)、クラビバクター・ミシガネンシス・サブスピーシーズ・ゼペドニクス(Clavibacter michiganensis subsp. sepedonicus)のジャガイモへの感染により引き起こされる輪腐病(Ring rot)、キサントモナス・カンペストリス・パソバー・グリシンス(Xanthomonas campestris pv. glycines)のダイズへの感染により引き起こされる
葉焼病(Bacterial pustule)、シュードモナス・シリンゲ・パソバー・グリシネ(Pseudomonas syringae pv. glycinea)のダイズへの感染により引き起こされる斑点細菌病(Bacterial blight)、イネ褐条病菌のトウモロコシへの感染により引き起こされる褐条病(Bacterial brown stripe)、バークホルデリア・アンドロポゴニス(Burkholderia andropogonis)のトウモロコシへの感染により引き起こされる条斑細菌病(Bacterial stripe)、エルウィニア・クリサンテミ・パソバー・ゼア、シュードモナス・マージナリスのトウモロコシへの感染により引き起こされる倒伏細菌病(Bacterial stalk rot)が挙げられるがこれらには限られない。
【0027】
黒腐病菌による黒腐病はアブラナ科植物の生産に致命的障害を与える病気として知られており、日本だけでなく世界的な重要病害として、既発生国及び未発生国共にその防除には多大の関心が寄せられている。従来、黒腐病に対しては実用的に認知された抵抗性品種はなく、有効な農薬も開発されていない。本発明によればアブラナ科植物、例えばキャベツ、ハクサイ、ダイコン、ブロッコリー、カリフラワー、カブ、チンゲンサイ、コマツナ、タイサイ、洋種ナタネ、シラクキナ、サントウサイ、アブラナ、コモチカンラン、カブラタマナ(コールラビ)、カイラン、ターサイ、カラシナ、ツケナ、ハボタンにおいて黒腐病が効果的に防除され得る。
【0028】
イネ籾枯細菌病及びイネ苗立枯細菌病はイネ籾からの種子伝染性病害として水稲栽培上の防除、特に種子消毒が不可欠な重要な細菌性病害である。現在はこれに対応するため一般的には化学的防除法が実用化されている。しかし、農薬による籾消毒は農薬液の残液処理などが問題を提起している。また籾消毒用の生物農薬としては「モミゲンキ」(日産化学工業株式会社)が市販されているに過ぎない。本発明によれば、水稲の種子伝染性細菌病を効果的に防除することができる。
【0029】
本発明により防除されるウイルス性の植物病害としては、病原がウイルスである任意の植物病害が挙げられ、例えばタバコモザイクウイルス(TMV)、トウガラシマイルドモットルウイルス (PMMoV)、トマトモザイクウイルス (ToMV)、メロンえそ斑点ウイルス(Melon necrotic spot virus:MNSV)、スイカ緑斑モザイクウイルス(Cucumber green mottle mosaic virus:CGMMV)、キュウリ緑斑モザイクウイルス(Kyuri green mottle mosaic virus:KGMMV)による植物病害が挙げられるが、これらには限定されない。
【0030】
より具体的には、タバコモザイクウイルスによるタバコモザイク病、トウガラシマイルドモットルウイルス、トマトモザイクウイルスもしくはタバコモザイクウイルスによるピーマンモザイク病、メロンえそ斑点ウイルスによるメロンえそ斑点病、スイカ緑斑モザイクウイルスによるスイカ緑斑モザイク病、スイカ緑斑モザイクウイルスによるメロンモザイク病、またはキュウリ緑斑モザイクウイルスによるキュウリ緑斑モザイク病が挙げられるがこれらには限定されない。
【0031】
タバコモザイクウイルス、キュウリ緑斑モザイクウイルス、スイカ緑斑モザイクウイルス、メロンえそ斑点ウイルスによるウイルス病は、いずれも接触感染力、汁液感染力、種子感染力、また土壌感染力が他のウイルスに比べて極めて激しく、世界的な重要ウイルス病としてその防除には多大の関心が寄せられている。そのため、抵抗性品種や抵抗性台木の育成が行われて実用化されている。しかし、市場や消費者の強い要望が先行し、有力な抵抗性品種や台木が使用されない場合もある。そこで特に汁液伝染、種子伝染、土壌伝染の防止には化学的防除法が適用される。例えはレンテミン水溶剤による汁液伝染防止、第3リン酸ソーダによる種子伝染及び汁液伝染防止、またメチルブロマイドによる土壌伝染防止などである。これらの防除法は化学的処理によることもあって、使用法を誤ると効果不十分や薬害の発生または人的被害をこうむる事がある。更に、ウイルス病の土壌伝染防除のために日本ではメチルブロマイド(臭化メチル剤)が広く使用されている。本剤は2005年度にオゾン層の破壊に結びつく理由でモントリオール議定書により使用が禁止される。現在その代替剤の探索が広く行われている。本発明によれば生物的手段により、種子伝染性ウイルス病及び土壌伝染性ウイルス病が効果的に防除されうる。
【0032】
参考例:DAIJU-SIID2550の単離及び帰属分類群の検討
食用マッシュルーム培養残渣を80℃にて30分間蒸気滅菌し、この残渣:生理食塩水=1:9(重量比)に希釈し、この希釈液を振幅10cmの往復振とう機を用いて15分間振とうした後、500rpm で5分間低速遠沈して上清を得た。続いて上清を0.05%寒天を含む蒸留水で段階希釈した。段階希釈は、1×101〜8倍液まで調整し、各希釈液を、径9cmシャーレ中のYPA培地(ペプトン・イースト・食塩培地。植物病原性 微生物研究法 −遺伝子操作を含む基礎と応用− 脇本哲 監修を参照されたい)に100μLずつ分注し、25℃の定温器で48〜72時間静置培養し、生育した細菌を個別に採取することにより行った。採種細菌をYPA斜面培地で継代培養した。継代培養した各細菌を、他菌が混合してないかを確認するために再び段階希釈を行い単一コロニーを得る。こうして純粋分離された単一コロニー細菌から、各単一コロニー細菌とカブ萎黄病菌(Fusarium oxysporum f.sp. conglutinans;抗菌性を確認するための簡易マーカー)とのYPA培地上での対峙培養法で形成される阻止帯の強弱度に基づき、最も阻止力の強い細菌を選別した。
【0033】
こうして選別された細菌をDAIJU-SIID2550と命名した。DAIJU-SIID2550は以下の特性を有する。グラム染色性:陽性、内生胞子:有、形態:桿菌、G+C (DNA)割合(mol%):43.5〜44.9(この値はバチルス・ズブチリス(B. subtilis)より高い。バチルス・ズブチリスは42〜43である)、最適発育温度:25〜30℃、バイオセーフティーレベル:レベル1(ヒトに疾病を起こし、動植物に重要な疾患を起こす可能性のないもの)。
【0034】
DAIJU-SIID2550をCM3Agar(Oxoid,英国)に植菌し、30℃で2日間培養した。その後、この菌体をDNA抽出の供試菌体とした。ゲノムDNAの抽出にはPrepMan法(Applied Biosystems、米国)を使用した。抽出したゲノムDNAを鋳型とし、PCRにより16S Ribosomal RNA遺伝子(16S rDNA)の全塩基配列1500〜1600bpの領域を増幅した。その後、増幅された16S rDNAをシークエンシングし、検体の16S rDNA塩基配列を得た。PCR産物の精製、サイクルシークエンシングには、MicroSeqFull 16S rDNA Bacterial Sequencing Kit(Applied Biosystems、米国)を使用した。サーマルサイクラーにはGeneAmp PCR System 9600(Applied Biosystems、米国)、DNAシークエンサーにはABI PRISM 3100 DNA Sequencer(Applied Biosystems、米国)を使用し、得られた塩基配列断片の結合にはAutoAssembler2.1(Applied Biosystems、米国)を使用した。なお、ゲノムDNA抽出からサイクルシークエンスまでの基本的操作はApplied Biosystems社のプロトコール(P/N4308132Rev.A)に従った。
【0035】
得られた16S rDNAの塩基配列(配列番号1)を用いて相同性検索を行い、相同率の上位10株を決定した。更に、検索された上位10株と検体の16S rDNAを用いて近隣結合法により分子系統樹を作製し、検体の近縁種および帰属分類群の検討を行った。相同性検索および系統樹の作製にはMicroSeq Mirobial Identification System Software V.1.4.1を用い、相同性検索を行う際のデータベースはMicroSeq Bacterial Full Gene Library v.0001(Applied Biosystems、米国)を使用した。
【0036】
また、MicroSeq Bacterial Full Gene Libraryに対する相同性検索において相同率100%で一致する菌株が検索されない場合には、BLASTを用いてDNA塩基配列データベース(GenBank/DDBJ/EMBL)に対して相同性検索を行った。
【0037】
MicroSeq Bacterial Full Gene Libraryを用いた解析の結果、Bacillus amyloliquefaciens, B. subtilis subsp. subtilis, B. mojavensisとの相異性はそれぞれ0.45%、0.65%、0.71%であり、完全に一致する菌株は検索されなかった。分子系統樹上では本菌株の16S rDNAはBacillus amyloliquefaciensとクラスターを形成し近縁であることが示された。BLASTを用いたGenBank/DDBJ/EMBLに対する相同性検索の結果、Bacillus sp. Bch1株(AF411118)に対して最も高い相同性(99.7%)を示したが完全に一致するものは検索されなかった。
【0038】
以上の結果から、DAIJU-SIID2550(受託番号FERM BP-10114)株は新規のバチルス属細菌であることが示された。
【実施例1】
【0039】
BAL菌株(DAIJU-SIID2550株)の栄養細胞を次の手順で調製した。
100mLの肉エキス培地(ブドウ糖 20g、ポリペプトン 10g、塩化ナトリウム 5g、酵母エキス 2g、肉エキス 3g、リン酸カリウム 1g、硫酸マグネシウム 0.5g、塩化カルシウム二水和物 0.15g、塩化第二鉄六水和物0.0081g、塩化マンガン四水和物0.0024g、硫酸第一鉄七水和物 0.0003g、蒸留水 1000mLを混合して調製したもの。pH7.0)を300mL三角フラスコに分注したものを基礎培地とした。
【0040】
一方、BAL菌を、YP培地(酵母エキス 5g、ポリペプトン 10g、塩化ナトリウム 5g、粉末寒天 15g、蒸留水1000mL、pH6.8〜7.0で煮沸溶解後、径10mmの試験管に8mL分注し、高圧滅菌、斜面培地調整)で25℃、48〜72時間静置培養し(前培養)、BAL菌を1白金耳掻き取り、滅菌水9mlに懸濁した。懸濁液をボルテックスミキサーで十分に撹拌して100μL採取し、300mL容三角フラスコ中の上記基礎培地に接種した。
【0041】
接種後、30℃下で24時間、振幅10cm、120回/分で振盪して培養を行い、培養液を得た。得られたBAL菌培養液を50mL容ファルコンチューブに分注し、3000rpm、30分間遠心分離し、上清液を棄却除去し沈殿した栄養細胞を得た。栄養細胞は滅菌水で洗浄・遠心分離を数回繰り返し培地組成を完全に除去した。沈澱した栄養細胞に蒸留水50mLを加えて懸濁させ栄養細胞懸濁液(菌濃度1x109cfu/mL)とした。得られたBAL菌培養物がBAL菌の栄養細胞からなり芽胞が含まれていないことの確認は、芽胞染色法(伝染病研究所学友会/編、細菌学実習提要、p.146、丸善、昭和31年)により、行った。図1Aに示す通り、上記の手順により、栄養細胞のみからなるBAL菌培養物が得られた。
【0042】
なお比較実験として、上記の手順において肉エキス培地に代えてYP培地を用いて同様にBAL菌培養物を得て、同様の染色法を行った。図1Bに示す通り、YP培地を用いて得たこのBAL菌培養物中には栄養細胞と芽胞とが混在していた。
【実施例2】
【0043】
BAL菌栄養細胞散布濃度の検討
カブ黒斑病菌(Alternaria brassicae)を使用して、BAL菌栄養細胞散布区の適正濃度試験を行った。本葉が4.5枚展開したカブ(夏蒔13号)に供試薬剤(濃度1x109cfu/mLのBAL菌栄養細胞懸濁液、濃度1x108cfu/mLのBAL菌栄養細胞懸濁液、水道水(無処理区))を霧吹きで十分量噴霧し、1晩20℃の湿室においた。接種菌は、PSA培地を分注したシャーレ2枚で培養した黒斑病菌の胞子を0.02%tween20を添加した蒸留水60mLに懸濁して調製した。接種菌を霧吹きで噴霧接種し、湿室に入れ25℃下で1日間管理した。湿室から搬出し引き続き23℃で管理し、接種後6日目にカブ葉上に現れた病斑を調査した。調査結果から次式、
発病度=((1n1+2n2+3n3+4n4+5n5+6n6+7n7)/(7×総調査葉数))×100
により発病度を算出した。なお、式中の文字n1、n2、n3、n4、n5、n6、n7はそれぞれ発病指数1、2、3、4、5、6、7を示した葉数を表す。
【0044】
算出された発病度から次式、
防除価=100-(処理区の発病度/無処理区の発病度)×100
により防除価を算出した。1x109cfu/mLの方が1x108cfu/mLよりも優れた防除効果を示した。BAL菌栄養細胞散布適正濃度は1x109cfu/mL以上であるといえる。結果を表1に示す。また図2には実験開始後6日目の様子を示す。
【0045】
【表1】

【実施例3】
【0046】
ハクサイ軟腐病(Erwinia carotovora subsp. carotovora)に対するBAL菌栄養細胞の効果試験
結球したハクサイ葉の1枚を剥ぎ取り水道水、蒸留水、70%エタノールの順で洗浄し、余分な水気はペーパータオルで拭き取った。輪ゴムで留めた木綿針7本でハクサイ葉柄に傷を付けて、供試薬剤(濃度1x109cfu/mLのBAL菌栄養細胞懸濁液、1000倍希釈した既登録微生物農薬、水道水(無処理区))を霧吹きで十分量噴霧し、クリーンベンチ内で風乾させた。接種菌はPSA斜面培地で培養した軟腐病菌を蒸留水9mLに懸濁して調製した。PAPER DISK(抗生物質検定用ペーパーディスク、厚手8mm 東洋ろ紙)を傷口にのせ軟腐病菌懸濁液を100μL滴下し、湿室に入れ30℃下で管理した。接種後3日目にハクサイ葉柄の軟化腐敗の有無を調査した。調査結果から次式、
発病度=n1/(総調査葉数)×100により発病度を算出した。なお、式中の文字n1は発病指数1を示した葉数を表す。
【0047】
算出された発病度から次式、
防除価=100-(処理区の発病度/無処理区の発病度)×100
により防除価を算出した。また、比既登録微生物農薬判定の評価(◎、○、△、×)は既登録微生物農薬よりも優れると◎、同等かやや劣ると○、劣ると△、実用性無しは×とした。結果を表2に示す。また図3には実験開始後3日目の様子を示す。BAL菌栄養細胞は、既登録微生物農薬に比べ防除効果が優れていた。
【0048】
【表2】

【実施例4】
【0049】
キュウリ褐斑病(Corynespora cassiicola)に対するBAL菌栄養細胞の効果試験
本葉が1.5枚展開したキュウリ(松風)に供試薬剤(濃度1x109cfu/mLのBAL菌栄養細胞懸濁液、1000倍希釈した既登録微生物農薬(BAL菌と同属だが褐斑病に適用はない)、1000倍希釈したTPNフロアブル、水道水(無処理区))を霧吹きで十分量噴霧し、風乾させた。接種菌はPSA培地を分注したシャーレ2枚で培養したキュウリ褐斑病菌の胞子を2倍希釈のPS培地200mLに懸濁して調製した。接種菌を霧吹きで噴霧接種し、湿室に入れ25℃下で3日間管理した。湿室から搬出し引き続き25℃で管理し、接種後8日目にキュウリ葉上に現れた病斑を調査した。調査結果から次式、
発病度=((1n1+2n2+3n3+4n4+5n5)/(5×総調査葉数))×100により発病度を算出した。なお、式中の文字n1、n2、n3、n4、n5はそれぞれ発病指数1、2、3、4、5を示した葉数を表す。
【0050】
算出された発病度から次式、
防除価=100-(処理区の発病度/無処理区の発病度)×100
により防除価を算出した。また、比既登録微生物農薬判定の評価(◎、○、△、×)は既登録微生物農薬よりも優れると◎、同等かやや劣ると○、劣ると△、実用性無しは×とした。結果を表3に示す。また図4には実験開始後8日目の様子を示す。BAL菌栄養細胞は既登録微生物農薬(BAL菌と同属だが褐斑病に適用はない)よりも防除効果は高かった。
【0051】
【表3】

【実施例5】
【0052】
キュウリ炭疽病(Colletotrichum orbiculare)に対するBAL菌栄養細胞の効果試験
本葉が2.5枚展開したキュウリ(ときわ光3号P型)に供試薬剤(濃度1x109cfu/mLのBAL菌栄養細胞懸濁液、1000倍希釈した既登録微生物農薬(BAL菌と同属だが炭疽病に適用はない)、1000倍希釈したTPNフロアブル、水道水(無処理区))を霧吹きで十分量噴霧し、風乾させた。接種菌はオートミル培地を分注したシャーレ2枚で培養したキュウリ炭疽病菌の胞子を煮沸消毒した水道水100mLに懸濁して調製した。1処理区につき2株ずつ接種菌を霧吹きで噴霧接種し、湿室に入れ25℃下で2日間管理した。湿室から搬出し引き続き25℃で管理し、接種後7日目にキュウリ葉(各株の2枚の葉)上に現れた病斑数を調査した。
【0053】
調査結果から病斑数の合計を算出し、次式
防除価=100-(処理区の病斑数/無処理区の病斑数)×100
により防除価を算出した。また、比既登録微生物農薬判定の評価(◎、○、△、×)は既登録微生物農薬よりも優れると◎、同等かやや劣ると○、劣ると△、実用性無しは×とした。結果を表4に示す。また図7には実験開始後7日目の様子を示す。BAL菌栄養細胞はTPNフロアブルや既登録微生物農薬(BAL菌と同属だが炭疽病に適用はない)よりも高い防除効果を示した。
【0054】
【表4】

【実施例6】
【0055】
イネいもち病(Pyricularia grisea)に対するBAL菌栄養細胞の効果試験
径9cmのアイスクリームカップにくみあい粒状培土D(呉羽化学)を100mL詰め、18日間育苗したイネ葉(18株)に供試薬剤(濃度1x109cfu/mLのBAL菌栄養細胞懸濁液、1000倍希釈した市販微生物農薬(BAL菌と同属だがいもち病に適用はない)、水道水(無処理区))に0.05% tween20を添加して霧吹きで十分量噴霧し、風乾させた。接種菌はオートミル培地で培養したイネいもち病菌を蒸留水100mLに懸濁し、光学顕微鏡200倍視野で20個の胞子液を調製した。接種菌を霧吹きで噴霧接種し、湿室に入れ25℃下で2日間管理した。湿室から搬出し引き続き25℃で管理し、接種後10日目にイネ葉上に現れた病斑数を調査した。調査結果から葉1枚当りの病斑数(平均病病斑数)を求め、次式
防除価=100-(処理区の平均病斑数/無処理区の平均病斑数)×100
により防除価を算出した。また、比市販微生物農薬判定の評価(◎、○、△、×)は既市販微生物農薬よりも優れると◎、同等かやや劣ると○、劣ると△、実用性無しは×とした。結果を表5に示す。BAL菌栄養細胞は、いもち病に適用はないがBAL菌と同属の市販微生物農薬に比べ効果が優れていた。
【0056】
【表5】

【実施例7】
【0057】
キュウリべと病(Pseudoperonospora cubensis)に対するBAL菌栄養細胞の効果試験
播種後40日目のキュウリ(ときわ光3号P型)を雨除けハウスに株間45cmで定植した。定植後3日目から供試薬剤(濃度1x109cfu/mLのBAL菌栄養細胞懸濁液、1000倍希釈した既登録微生物農薬(BAL菌と同属だがべと病に適用はない)、水道水(無処理区))を電動噴霧器で1週間毎に7回、十分量噴霧した。定植後51日目にキュウリ葉に自然発病で現れたべと病の病徴を本葉10枚分調査した。調査結果から次式、
発病度=((1n1+2n2+3n3+4n4+5n5)/(5×総調査葉数))×100により発病度を算出した。なお、式中の文字n1、n2、n3、n4、n5はそれぞれ発病指数1、2、3、4、5を示した葉数を表す。
【0058】
算出された発病度から次式、
防除価=100-(処理区の発病度/無処理区の発病度)×100
により防除価を算出した。また、比既登録微生物農薬判定の評価(◎、○、△、×)は既登録微生物農薬よりも優れると◎、同等かやや劣ると○、劣ると△、実用性無しは×とした。結果を表6に示す。また図6には定植後51日目の様子を示す。BAL菌栄養細胞は既登録微生物農薬(BAL菌と同属だがべと病に適用はない)よりも優れた防除効果を示した。
【0059】
【表6】

【実施例8】
【0060】
メロンべと病(Pseudoperonospora cubensis)に対するBAL菌栄養細胞の効果試験
播種後26日目のメロン(アールス)を雨除けハウスに株間45cmで定植した。定植後3日目から供試薬剤(濃度1x109cfu/mLのBAL菌栄養細胞懸濁液、1000倍希釈した既登録微生物農薬(BAL菌と同属だがべと病に適用はない)、水道水(無処理区))を電動の噴霧器で1週間毎に7回、十分量噴霧した。定植後51日目にメロン葉に自然発病で現れたべと病の病徴を本葉10枚分調査した。調査結果から次式、
発病度=((1n1+2n2+3n3+4n4+5n5)/(5×総調査葉数))×100により発病度を算出した。なお、式中の文字n1、n2、n3、n4、n5はそれぞれ発病指数1、2、3、4、5を示した葉数を表す。
【0061】
算出された発病度から次式、
防除価=100-(処理区の発病度/無処理区の発病度)×100
により防除価を算出した。また、比既登録微生物農薬判定の評価(◎、○、△、×)は既登録微生物農薬よりも優れると◎、同等かやや劣ると○、劣ると△、実用性無しは×とした。結果を表7に示す。また図7には定植後51日目の様子を示す。BAL菌栄養細胞は既登録微生物農薬(BAL菌と同属だがべと病に適用はない)よりも優れた防除効果を示した。
【0062】
【表7】

【実施例9】
【0063】
カブ白さび病(Albugo macrospora)に対するBAL菌栄養細胞の効果試験
本葉が4.5枚展開したカブ(夏蒔13号)に供試薬剤(濃度1x109cfu/mLのBAL菌栄養細胞懸濁液、1000倍希釈した既登録微生物農薬(BAL菌と同属だが白さび病に適用はない)、水道水(無処理区))を霧吹きで十分量噴霧し、1昼夜風乾させた。接種菌は自然発病したチンゲンサイ白さび病の胞子を蒸留水200mLに懸濁して調製した。白さび病菌遊走子が発芽し始めた時点でカブに霧吹きで噴霧接種し、湿室に入れ12℃下で1日間管理した。その後、湿室から搬出し引き続き25℃で管理し、接種後14日目にカブ葉上に現れた病斑を調査した。
【0064】
調査結果から次式、
発病度=((1n1+2n2+3n3+4n4)/(4×総調査葉数))×100により発病度を算出した。なお、式中の文字n1、n2、n3、n4はそれぞれ発病指数1、2、3、4を示した葉数を表す。
【0065】
算出された発病度から次式、
防除価=100-(処理区の発病度/無処理区の発病度)×100
により防除価を算出した。また、比既登録微生物農薬判定の評価(◎、○、△、×)は既登録微生物農薬よりも優れると◎、同等かやや劣ると○、劣ると△、実用性無しは×とした。結果を表8に示す。また図8には実験開始後14日目の様子を示す。BAL菌栄養細胞は既登録微生物農薬(BAL菌と同属だが白さび病に適用はない)よりも優れた防除効果を示した。
【0066】
【表8】

【実施例10】
【0067】
キュウリ灰色かび病(Botrytis cinerea)に対するBAL菌栄養細胞の効果試験
完全展開したキュウリ子葉(ときわ光3号P型)を胚軸部分で切り取り、湿らせたペーパータオルに切り口を接触させた。接種菌はPSA培地で培養した灰色かび病の胞子をPS培地5mLに懸濁して調製した。子葉の中心部に灰色かび病菌胞子懸濁液を50μL滴下した。滴下により形成された水滴にPAPER DISK(抗生物質検定用ペーパーディスク、厚手8mm 東洋ろ紙)をのせ、供試薬剤(濃度1x109cfu/mLのBAL菌栄養細胞懸濁液、1000倍希釈したイプロジオン水和剤、水道水(無処理区))を50μL滴下し、湿室に入れ25℃下で管理した。接種後5日目にキュウリ葉上に現れた病斑面積を調査した。調査結果から次式、
発病度=((1n1+2n2)/(2×総調査葉数))×100により発病度を算出した。なお、式中の文字n1、n2はそれぞれ発病指数1、2を示した葉数を表す。
【0068】
算出された発病度から次式、
防除価=100-(処理区の発病度/無処理区の発病度)×100
により防除価を算出した。また、比既登録農薬判定の評価(◎、○、△、×)はイプロジオン水和剤よりも優れると◎、同等かやや劣ると○、劣ると△、実用性無しは×とした。結果を表9に示す。また図9には実験開始後5日目の様子を示す。BAL菌栄養細胞はイプロジオン水和剤よりも優れた防除効果を示した。
【0069】
【表9】

【実施例11】
【0070】
イチゴ灰色かび病(Botrytis cinerea)に対するBAL菌栄養細胞の効果試験
市販のイチゴ果実を供試薬剤(濃度1x109cfu/mLのBAL菌栄養細胞懸濁液、1000倍希釈した既登録微生物農薬、1000倍希釈したイプロジオン水和剤、2倍希釈のPS培地(無処理区))に浸漬し、風乾させた。接種菌はPSA培地を分注したシャーレ2枚で培養した灰色かび病菌の胞子を、2倍希釈したPS培地60mLに懸濁して調製した。接種菌を霧吹きで噴霧接種し、湿室に入れ20℃下で管理した。接種後6日目にイチゴ果実に現れた病徴を調査した。調査結果から次式、
発病度=((1n1+2n2)/(2×総調査果実数))×100により発病度を算出した。なお、式中の文字n1、n2はそれぞれ発病指数1、2を示した果実数を表す。
【0071】
算出された発病度から次式、
防除価=100-(処理区の発病度/無処理区の発病度)×100
により防除価を算出した。また、比既登録微生物農薬判定の評価(◎、○、△、×)は既登録微生物農薬よりも優れると◎、同等かやや劣ると○、劣ると△、実用性無しは×とした。結果を表10に示す。また図10には実験開始後6日目の様子を示す。BAL菌栄養細胞は既登録微生物農薬よりも優れた防除効果を示した。
【0072】
【表10】

【実施例12】
【0073】
カブ黒斑病(Alternaria brassicae)に対するBAL菌栄養細胞の効果試験
本葉が4.5枚展開したカブ(夏蒔13号)に供試薬剤(濃度1x109cfu/mLのBAL菌栄養細胞懸濁液、1000倍希釈したイプロジオン水和剤、水道水(無処理区))を霧吹きで十分量噴霧し、1昼夜風乾させた。接種菌はPSA培地を分注したシャーレ2枚で培養した黒斑病菌の胞子を蒸留水60mLに懸濁して調製した。接種菌を霧吹きで噴霧接種し、湿室に入れ25℃下で1日間管理した。湿室から搬出し引き続き25℃で管理し、接種後6日目にカブ葉上に現れた病斑を調査した。調査結果から次式、
発病度=((1n1+2n2+3n3+4n4+5n5+6n6+7n7)/(7×総調査葉数))×100
により発病度を算出した。なお、式中の文字n1、n2、n3、n4、n5、n6、n7はそれぞれ発病指数1、2、3、4、5、6、7を示した葉数を表す。
【0074】
算出された発病度から次式、
防除価=100-(処理区の発病度/無処理区の発病度)×100
により防除価を算出した。また、比既登録農薬判定の評価(◎、○、△、×)はイプロジオン水和剤よりも優れると◎、同等かやや劣ると○、劣ると△、実用性無しは×とした。
結果を表11に示す。また図11には実験開始後6日目の様子を示す。BAL菌栄養細胞は化学農薬より効果は劣るが、効果は認められた。
【0075】
【表11】

【実施例13】
【0076】
芝草葉腐病(Rhizoctonia solani培養型IIIB)に対するBAL菌栄養細胞の効果試験
アイスクリームカップ(径9cm)の底の中心部にPSA培地で前培養したリゾクトニア属菌(培養型III-B)を径1cmのコルクボーラーで打ち抜いた菌叢片を置き、その上から殺菌済殖壌土(水分含量20%強)を被覆した。被覆土には土壌1g当り1x109になるようBAL菌栄養細胞を混合し、十分撹拌した。続いてベントグラスを1カップ当り120mg均一に播種し、軽く散水した後、25℃で管理した。対照区として無処理区(水道水)及び薬剤区(TPNフロアブル500倍)を設けた。播種後、無処理区では水道水を、薬剤区ではTPNフロアブル500倍液を、それぞれ土壌1m2当り1000mLの割合で散布した。播種後15日目に健全苗立数実数値を求め、次式、発病率=100−(処理区の苗立数/無病土の苗立数)×100により発病率を算出した。算出した発病率から次式、
防除価=100-(処理区の発病率/無処理区の発病率)×100
により防除価を算出した。
結果を表12に示す。また図12には実験開始後15日目の様子を示す。BAL菌栄養細胞は化学農薬より効果は劣るが、効果は認められた。
【0077】
【表12】

【実施例14】
【0078】
BAL菌栄養細胞懸濁液によるトマトモザイクウイルス(ToMV) 感染トマト病葉磨砕汁液中のToMVの不活性化
ToMV に感染したトマト病葉 5g (生重)を乳鉢に入れ、0.05Mリン酸緩衝液(pH7.0)20mL中で磨砕後、同リン酸緩衝液で希釈し、200倍及び400倍希釈液を調製した。これらの希釈液を50mL容ファルコンチューブにそれぞれ5mLずつ入れた。BAL菌栄養細胞画分処理区として、BAL菌を肉エキス培地で30℃、24時間振盪培養して得られたBAL菌栄養細胞画分20mLを3000回転/分で30分間遠心分離後、リン酸緩衝液100mLに懸濁して得たBAL菌栄養細胞懸濁液(菌濃度1x109cfu/mL)5mLずつを前述のウイルス希釈液を含むファルコンチューブに入れミキサーでよく撹拌し、ToMV病葉の最終希釈倍数を400倍及び800倍とした。無処理区として前記BAL菌栄養細胞懸濁液に代えてリン酸緩衝液5mLを入れ撹拌した。各ファルコンチューブを30℃設定のインキュベーター内に静置した。処理24時間後にそれぞれの処理区から1mLをプラスチックチューブに取り、10000回転/分で15秒間遠心した上清各40μLをToMV判別植物であるニコチアナ・グルチノーサ(Nicotiana glutinosa)を用いた半葉法により同一葉の半葉にそれぞれ処理区と無処理区をカーボランダム法で汁液接種した(植物病理学実験法 佐藤昭二、後藤正夫、土居養二編 講談社 1983年)。接種したニコチアナ・グルチノーサ葉は25℃の人工気象室で管理し、接種後6日目に現れた局部病斑数を数え、半葉当たりの病斑数を元にして次式により防除価を算出した。
【0079】
防除価=100−(処理区の半葉当たりの病斑数/無処理区の半葉当たりの病斑数)×100
結果を表13に示す。また図13には検定植物によるウイルス不活性化程度を示す。BAL菌栄養細胞処理をすることにより、無処理の場合に比べてトマトモザイクウイルスによる病害が防除された。
【0080】
【表13】

【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1A】BAL菌栄養細胞を示す図である。
【図1B】BAL菌栄養細胞と芽胞が混在した様子を示す図である。
【図2】実施例2における試験開始後6日目の様子を示す図である。
【図3】実施例3におけるハクサイ軟腐病に対するBAL菌栄養細胞の効果を示す図である。
【図4】実施例4におけるキュウリ褐斑病に対するBAL菌栄養細胞の効果を示す図である。
【図5】実施例5におけるキュウリ炭疽病に対するBAL菌栄養細胞の効果を示す図である。
【図6】実施例7におけるキュウリべと病に対するBAL菌栄養細胞の効果を示す図である。
【図7】実施例8におけるメロンべと病に対するBAL菌栄養細胞の効果を示す図である。
【図8】実施例9におけるカブ白さび病に対するBAL菌栄養細胞の効果を示す図である。
【図9】実施例10におけるキュウリ灰色かび病に対するBAL菌栄養細胞の効果を示す図である。
【図10】実施例11におけるイチゴ灰色かび病に対するBAL菌栄養細胞の効果を示す図である。
【図11】実施例12におけるカブ黒斑病に対するBAL菌栄養細胞の効果を示す図である。
【図12】実施例13における芝草葉腐病に対するBAL菌栄養細胞の効果を示す図である。
【図13】実施例14におけるBAL菌栄養細胞によるトマトモザイクウイルス感染トマト病葉磨砕汁液中のToMVの不活性化を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物病原性の糸状菌、細菌またはウイルスの感染または増殖を抑制する能力を有するバチルス属に属する細菌の栄養細胞を有効成分として含む、植物病害の防除剤または防除資材。
【請求項2】
植物病原性の糸状菌、細菌またはウイルスの感染または増殖を抑制する能力を有するバチルス属に属する細菌がDAIJU-SIID2550(受託番号FERM BP-10114)またはその変異株である請求項1に記載の防除剤または防除資材。
【請求項3】
請求項1または2に記載の防除剤または防除資材を植物病原性の糸状菌、細菌またはウイルスの宿主となる植物に施用することを含む植物病害の防除方法。
【請求項4】
植物病原性の糸状菌、細菌またはウイルスの感染または増殖を抑制する能力を有するバチルス属に属する細菌を、肉エキス培地を用いて培養することにより該細菌の栄養細胞を得ることを含む、請求項1または2に記載の防除剤または防除資材の製造方法。
【請求項5】
DAIJU-SIID2550(受託番号FERM BP-10114)の栄養細胞。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2007−55982(P2007−55982A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−246567(P2005−246567)
【出願日】平成17年8月26日(2005.8.26)
【出願人】(504078512)株式会社 イツキ (2)
【Fターム(参考)】