説明

バッキング剤

【課題】 優れた遅燃性と十分な耐久性を付与できる車輌シート用のバッキング剤を提供する。
【解決手段】 炭酸アルカリ金属塩(a1)、ビニルスルホン酸アルカリ金属塩(a2)及び窒素原子含有塩基性化合物塩(a3)からなる群から選ばれる少なくとも一種の塩(a)を含む水中で、窒素原子含有ビニル系単量体(b)、カルボキシル基及び/又はカルボキシレート基含有ビニル系単量体(c)及びその他のビニル系単量体(d)を、前記ビニルスルホン酸アルカリ金属塩(a2)以外の反応性乳化剤(Em)を用いて乳化分散した混合液を、乳化重合し、次いで、得られるビニル系重合体がカルボキシル基を有する場合は中和して得られるカルボキシレート基含有ビニル系重合体(X)の水分散体を含有してなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッキング剤に関する。更に詳しくは、例えば、パイルモケット、織物、編物及び不織布などからなる車輌シートに用いるバッキング剤であり、米国自動車安全基準で定める「MVSS−302」あるいは日本工業規格で定める「JIS−D1201」に適合する、優れた遅燃性を付与できるバッキング剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から(メタ)アクリル樹脂を主成分とする水性の合成樹脂組成物は、(1)原料とする単量体の組成比率に応じて得られる重合体の硬度を広範囲に調整できること、(2)官能基含有単量体を共重合させることにより多様な機能の付与が可能であること、などの理由から、アクリルエマルジョン型バインダーとして、接着剤や粘着剤などに用いられ、例えば、パイルモケット、織物、編物、不織布、繊維、紙及び糸などの加工分野に広範囲に使用されてきた。尚、本発明でいう「主成分」とは、水性の合成樹脂組成物中に(メタ)アクリル樹脂を50重量%以上含むことをいう。
【0003】
しかしながら、従来のアクリルエマルジョン型バインダーを車輌シートのバッキング剤として用いた場合は、加工された車輌シートは、バインダーの付着量が多い程、車輌シートのパイル引き抜き強度や縫い目疲労強度などの耐久性は向上するが、MVSS−302あるいはJIS−D1201で規定された遅燃性評価試験で得られる燃焼速度が、規定値を越えて速くなり過ぎるため、万一、車輌火災が発生した場合に乗客や乗務員が避難するだけの十分な時間の確保が極めて困難になる、という防災上重大な問題があった。
【0004】
かかる問題を改善するために、架橋構造を有するか又は架橋構造を形成しうる合成樹脂であって、且つ架橋構造形成後の溶融開始温度が70〜140℃である合成樹脂を含有してなる遅燃性を有する合成樹脂組成物が提案されており、前記遅燃性合成樹脂組成物をコーティングした繊維は、従来の合成樹脂をコーティングした繊維に比べて燃焼速度が遅延されるという(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
しかしながら、特許文献1で得られる合成樹脂組成物は、原料として架橋性の官能基を有するα,β−エチレン性不飽和単量体を多く用いているため、形成される被膜が過度に分岐構造になり被膜の形成状態に劣るという欠点があったので、反応初期に乳化剤を併用して粒子径を小さく抑えることで改良しようとしているが、表面張力が低くなり過ぎ、且つ粒子径が過度に小さくなるため、シートや布などの基布に塗布後に、バッキング剤が基布に浸透し過ぎてしまい、パイルの被覆が不十分となり、その結果、屈曲時の被膜耐久性やパイル引き抜き強度などの物性に劣るという問題があった。
【0006】
さらに、特許文献1で得られる合成樹脂組成物は、架橋構造形成後の被膜が十分な耐久性を発現するだけの量を基布に塗布した場合であっても、上記の遅燃性評価試験において燃焼点のドロップを抑えてしまうため、期待されるほどには遅燃性の効果を得ることができない、という問題があった。
【0007】
一方、特許文献1で得られる合成樹脂組成物が架橋構造を有さない被膜を形成する場合は、流動開始温度が低下するので燃焼点のドロップによる自己消火が促進され、遅燃性は向上するものの、このような合成樹脂組成物をシートや布などの基布に用いた場合には、パイル引き抜き強度や縫い目疲労強度などの重要な要求特性が低下してしまい、実用上問題があった。
【0008】
以上のような理由から、車輌に用いられるシートや布などの基布に優れた遅燃性、十分な耐久性及び強度を付与できるバッキング剤の開発が切望されていた。
【0009】
【特許文献1】特開平3−197567号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、シートや布などの基布に優れた遅燃性、十分な耐久性及び強度の付与が可能な合成樹脂組成物であり、特に車輌シートに対して有用なバッキング剤に関する。
【0011】
更に詳しくは、例えば、パイルモケット、編物、織物、不織布、繊維、紙及び糸などからなる車輌シートの加工分野に用いるバッキング剤であり、MVSS−302(米国自動車安全基準)あるいはJIS−D1201(日本工業規格)に準拠する遅燃性評価試験で規定された優れた遅燃性、十分な耐久性及び強度を車輌シートに付与できるバッキング剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、原料として特定のビニル系単量体を組み合わせて用い、反応性乳化剤で乳化分散した混合液を、特定の塩を含む水中で乳化重合し、次いで、得られるビニル系重合体がカルボキシル基を有する場合は中和して得られるカルボキシレート基含有ビニル系重合体の水分散体を含有してなるバッキング剤が、米国自動車安全基準で定める「MVSS−302」あるいは日本工業規格で定める「JIS−D1201」に準拠する遅燃性評価試験において、優れた遅燃性と、十分な耐久性及び強度を有することを見出し、本発明を完成するに到った。
【0013】
即ち、本発明は、炭酸アルカリ金属塩(a1)、ビニルスルホン酸アルカリ金属塩(a2)及び窒素原子含有塩基性化合物塩(a3)からなる群から選ばれる少なくとも一種の塩(a)を含む水中で、窒素原子含有ビニル系単量体(b)、カルボキシル基及び/又はカルボキシレート基含有ビニル系単量体(c)及びその他のビニル系単量体(d)を、前記ビニルスルホン酸アルカリ金属塩(a2)以外の反応性乳化剤(Em)を用いて乳化分散した混合液を、乳化重合し、次いで、得られるビニル系重合体がカルボキシル基を有する場合は中和して得られるカルボキシレート基含有ビニル系重合体(X)の水分散体を含有してなることを特徴とするバッキング剤を提供するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明のバッキング剤は、例えば、パイルモケット、編物、織物、不織布、繊維、紙、及び糸などに塗布、塗工、含浸、吹付けなどの公知の加工方法により付着させることにより、米国自動車安全基準で定める「MVSS−302」あるいは日本工業規格で定める「JIS−D1201」に準拠する遅燃性評価試験において50mm/分以下の燃焼速度という優れた遅燃性と、十分な耐久性及び強度を付与することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明を実施するにあたり、必要な事項を以下に述べる。
【0016】
先ず、本発明の遅燃性に優れるバッキング剤は、炭酸アルカリ金属塩(a1)、ビニルスルホン酸アルカリ金属塩(a2)及び窒素原子含有塩基性化合物塩(a3)からなる群から選ばれる少なくとも一種の塩(a)を含む水中で、窒素原子含有ビニル系単量体(b)、カルボキシル基及び/又はカルボキシレート基含有ビニル系単量体(c)、及びその他のビニル系単量体(d)を、前記ビニルスルホン酸アルカリ金属塩(a2)以外の反応性乳化剤(Em)を用いて乳化分散した混合液を、乳化重合し、次いで、得られるビニル系重合体がカルボキシル基を有する場合は中和して得られるカルボキシレート基含有ビニル系重合体(X)の水分散体を含有してなるものである。
【0017】
前記塩(a1)〜(a3)は、単独で用いてもよく2種以上を混合して用いてもよい。
【0018】
本発明で用いる炭酸アルカリ金属塩(a1)、ビニルスルホン酸アルカリ金属塩(a2)及び窒素原子含有塩基性化合物塩(a3)などの塩(a)は、水溶液あるいは懸濁液を形成し得る塩であり、それらの中でも良好な水溶性あるいは親水性を有することから、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩が好ましく、ナトリウム塩、アンモニウム塩がより好ましい。
【0019】
前記炭酸アルカリ金属塩(a1)としては、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素リチウムなどが挙げられ、これらの中でも、バッキング剤の粘度調整が容易にでき、優れた機械的安定性と皮膜耐水性を付与できることから、好ましくは炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、より好ましくは炭酸ナトリウムである。これら炭酸アルカリ金属塩(a1)は単独使用でもよく2種以上を併用してもよい。
【0020】
前記ビニルスルホン酸アルカリ金属塩(a2)としては、例えば、ビニルスルホン酸ナトリウム、ビニルスルホン酸カリウム、ビニルスルホン酸リチウムなどが挙げられ、これらの中でも、バッキング剤の粘度調整が容易にでき、優れた機械的安定性と皮膜耐水性を付与できることから、好ましくはビニルスルホン酸ナトリウム塩、ビニルスルホン酸カリウム塩であり、より好ましくはビニルスルホン酸ナトリウム塩である。これらアルカリ金属塩は単独使用でもよく2種以上を併用してもよい。
【0021】
前記窒素原子含有塩基性化合物塩(a3)としては、例えば、(1)炭酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウムなどに代表される無機系アンモニウム塩、(2)メチルアミン、メタノールアミン、エチルアミン、モノエタノールアミン、n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、n−ブチルアミン、イソブチルアミン、t−ブチルアミン、ジメチルアミン、ジメタノールアミン、ジエチルアミン、ジエタノールアミン、メチルエチルアミン、ジ(n−プロピル)アミン、ジ(イソプロピル)アミン、ジ(n−ブチル)アミン、ジ(イソブチル)アミン、ジ(t−ブチル)アミン、トリメチルアミン、トリメタノールアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、2―(ジエチルアミノ)エタノール、トリ(n−プロピル)アミン、トリ(イソプロピル)アミン、トリ(n−ブチル)アミン、トリ(イソブチル)アミン、トリ(t−ブチル)アミン、ヒドラジン、1,2―ジエチルヒドラジン、ピペリジン、メチルピペリジン、ジメチルピペリジン、2−プロピルピペリジン、モルホリン、ピペラジンなどに代表される有機系の窒素原子含有塩基性化合物の塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩、有機酸塩などが挙げられ、これらの中でも、バッキング剤の粘度調整が容易にでき、優れた機械的安定性と皮膜耐水性を付与できることから、好ましくは、炭酸アンモニウム、メタノールアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンであり、より好ましくは、炭酸アンモニウムである。これら窒素原子含有化合物塩(a3)は、単独使用でもよく2種以上を併用してもよい。
【0022】
更に、これら塩(a)の中では、バッキング剤の粘度調整が容易にでき、優れた機械的安定性と皮膜耐水性を付与できることから、ビニルスルホン酸ナトリウム塩及び/又は無機系アンモニウム塩がより好ましく、ビニルスルホン酸ナトリウム塩及び/又は炭酸アンモニウムが最も好ましい。
【0023】
前記塩(a)と後述するビニルスルホン酸アルカリ金属塩(a2)以外の反応性乳化剤(Em)の合計(a+Em)100重量部中における、塩(a)の使用割合は、固形分重量で、好ましくは1〜20重量部、より好ましくは1〜10重量部である。
【0024】
前記塩(a)の水溶液中に、後記する単量体(b)、単量体(c)、単量体(d)を、反応性乳化剤(Em)で予め乳化分散した混合液とラジカル重合開始剤を滴下し、ラジカル重合開始剤の分解温度以上の温度で乳化重合することで、水分散体の粒子径分布を拡げ、且つ平均粒子径を大きくすることにより、バッキング剤の基布への過度な浸透が抑制され、パイルを十分に被覆でき、パイル引き抜き強度などの物性の確保が可能になる。
【0025】
前記した塩(a)は、水溶液あるいは懸濁液として用いることが好ましく、その調製方法は特に限定しない。
【0026】
また、塩(a)の水溶液あるいは懸濁液の仕込方法は、特に限定せず、例えば、一括、分割、滴下などの各種方法が挙げられ、何れを採用しても構わない。
【0027】
また、塩(a)の水溶液あるいは懸濁液の仕込ライン先端は、例えば、反応容器内の液面上部に位置していても液面下部に位置していてもよく、また、仕込ラインの仕様や形状にも特に制限はない。
【0028】
次に、本発明で用いるビニルスルホン酸アルカリ金属塩(a2)以外の反応性乳化剤(Em)とは、前記した塩(a)の一つであるビニルスルホン酸アルカリ金属塩(a2)とは異なる構造の化合物であり、分子内に反応活性なエチレン性不飽和基を有しており反応性を有する乳化剤であって、機械的安定性及び皮膜耐水性に優れることから、アニオン性親水基を有する反応性乳化剤が好ましい。
【0029】
前記反応性乳化剤(Em)としては、例えば、スルホン酸基及び/又はサルフェート基を含有する反応性乳化剤;カルボキシル基及び/又はカルボキシレート基を含有する反応性乳化剤;リン酸基及び/又はその塩を含有する反応性乳化剤;リン酸エステル基を含有する反応性乳化剤;アリルスルホン酸、2−メチルアリルスルホン酸等のアリル基含有スルホン酸類又はその塩;イソプレンスルホン酸類又はその塩;(メタ)アクリル酸2−スルホエチル、(メタ)アクリル酸2−スルホプロピル等の(メタ)アクリロイル基含有スルホン酸類又はその塩;(メタ)アクリルアミド−t−ブチルスルホン酸等の(メタ)アクリルアミド基含有スルホン酸類又はその塩などが挙げられ、市販品としては、例えば、スルホン酸基及びその塩を有するものとして「ラテムルS−180」(商標、花王株式会社製)、「ラテムルS−180A」(同社製)、「エレミノールJS−2」(商標、三洋化成工業株式会社製)、「エレミノールRS−30」(同社製)等;硫酸基及びその塩を有するものとして「アクアロンHS−10」(商標、第一工業製薬株式会社製)、「アクアロンHS−1025」(同社製)、「アクアロンKH−05」(同社製)、「アクアロンKH−10」(同社製)、「アデカリアソープSE−10」(商標、旭電化工業株式会社製)、「アデカリアソープSE−20」(同社製)等;リン酸基及びその塩を有するものとして「ニューフロンティアA−229E」(商標、第一工業製薬株式会社製)、「アデカリアソープPP−70」(商標、旭電化工業株式会社製)、「アデカリアソープPPE−710」(同社製)等;非イオン性親水基を有するものとして「アクアロンRN−10」(商標、第一工業製薬株式会社製)、「アクアロンRN−20」(同社製)、「アクアロンRN−30」(同社製)、「アクアロンRN−50」(同社製)等が挙げられ、これらは単独使用でもよく2種以上を併用してもよい。これら反応性乳化剤(Em)の中でも、バッキング剤の機械的安定性、皮膜耐水性及び遅燃性などに優れることから、スルホン酸基及び/又はサルフェート基を有する反応性乳化剤、硫酸基及び/又はその塩を有する反応性乳化剤が好ましく、スルホン酸基及び/又はサルフェート基を有する反応性乳化剤がより好ましい。
【0030】
次に、本発明で、乳化重合において、必須に用いる窒素原子含有ビニル系単量体(b)、カルボキシル基及び/又はカルボキシレート基含有ビニル系単量体(c)及びその他のビニル系単量体(d)について述べる。
【0031】
窒素原子含有ビニル系単量体(b)としては、例えば、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、アミノエチル(メタ)アクリレート、N−モノアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、N,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有ビニル系単量体などが挙げられ、これらは単独使用でもよく2種以上を併用してもよい。これら単量体(b)の中でも、優れた遅燃性を付与できることから、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリルが好ましい。
【0032】
前記単量体(b)の使用量は、単量体(b)〜(d)及び反応性乳化剤(Em)の合計100重量部に対して、好ましくは1.0〜10.0重量部の範囲、より好ましくは4.0〜10.0重量部の範囲である。単量体(b)の使用量がかかる範囲であるならば、重合時の安定性、バッキング剤を塗工したパイルモケットなどの塗工物の遅燃性が共に優れる。
【0033】
次に、本発明で用いるカルボキシル基及び/又はカルボキシレート基含有ビニル系単量体(c)としては、例えば、(メタ)アクリル酸、β−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルプロピオン酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸ハーフエステル、マレイン酸ハーフエステル、β−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロゲンサクシネート、β−(メタ)ヒドロキシエチルハイドロゲンフタレート及びこれらの塩、無水マレイン酸、無水イタコン酸などの酸無水物等が挙げられ、これらは単独使用でもよく2種以上を併用してもよい。これら単量体(c)の中でも、後記する中和剤の添加後の適度な自己増粘性と、バッキング剤の優れた機械的安定性が共に得られることから、(メタ)アクリル酸、イタコン酸が好ましい。
【0034】
前記単量体(c)の使用量は、単量体(b)〜(d)及び反応性乳化剤(Em)の合計100重量部に対して、好ましくは0.5〜3.0重量部、より好ましくは1.0〜2.0重量部の範囲である。単量体(c)の使用量がかかる範囲であるならば、重合時の安定性、バッキング剤の機械的安定性が共に優れる。
【0035】
更に、本発明のバッキング剤を乳化重合で得る際に、前記した単量体(b)及び単量体(c)と共に、その他のビニル系単量体(d)を用いる。
【0036】
前記その他のビニル系単量体(d)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリル酸エステル類;
【0037】
フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルアニソール、α−ハロスチレン、ビニルナフタリン等の芳香族環を有するビニル系単量体;
【0038】
2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート等の水酸基含有ビニル系単量体;
【0039】
ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート等のシクロペンテニル基含有ビニル系単量体;
【0040】
メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、アミルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル等のラジカル重合可能なビニルエーテル類、などのビニル系単量体などが挙げられ、これらは単独使用でもよく2種以上を併用してもよい。これら単量体(d)の中でも、バッキング剤を塗工したシートや布などの基布の風合いが柔らかく、パイル引き抜き強度などの特性にも優れることから、n−ブチルアクリレートが好ましい。
【0041】
前記単量体(d)の使用量は、単量体(b)〜(d)及び反応性乳化剤(Em)の合計100重量部に対して、好ましくは87.0〜98.5重量部の範囲、より好ましくは88.0〜95.0重量部の範囲である。単量体(d)の使用量がかかる範囲であるならば、重合時の安定性、バッキング剤を塗工したシートや布などの基布の風合いが柔らかく、パイル引き抜き強度などの特性に優れ、バッキング剤を塗工したパイルモケットなど塗工物の遅燃性に優れる。
【0042】
更に、本発明では、その他のビニル系単量体(d)の一部として架橋性官能基含有ビニル系単量体(d1)を併用することができる。
【0043】
前記架橋性官能基含有ビニル系単量体(d1)としては、例えば、アルコキシシリル基含有ビニル系単量体、オキサゾリン基含有ビニル系単量体、グリシジル基含有ビニル系単量体、メチロール基含有ビニル系単量体、アルコキシメチロール基含有ビニル系単量体などが挙げられ、好ましくはメチロール基含有ビニル系単量体、アルコキシメチロール基含有ビニル系単量体、より好ましくはアルコキシシリル基含有ビニル系単量体である。
【0044】
前記メチロール基含有ビニル系単量体としては、例えば、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−イソプロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド等のメチロールアミド基及びそのアルコキシ化基含有ビニル系単量体;
【0045】
前記アルコキシシリル基含有ビニル系単量体としては、例えば、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリイソプロポキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン及びその塩、2−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のシリル基を含有する重合性単量体が挙げられ、これらは単独使用でもよく2種以上を併用してもよい。これらの中でも、より適度な架橋速度と架橋密度が得られることから、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシランが特に好ましい。
【0046】
前記架橋性官能基含有ビニル系単量体(d1)の使用量は、単量体(b)〜(d)及び反応性乳化剤(Em)の合計100重量部に対して、好ましくは0.1〜0.5重量部の範囲、より好ましくは0.2〜0.4重量部の範囲である。架橋性官能基含有ビニル系単量体(d1)の使用量がかかる範囲であるならば、バッキング剤を塗工したパイルモケットなどの遅燃性とパイル引抜強度が共に優れる。
【0047】
本発明のバッキング剤としては、後述する方法にて形成される乾燥被膜のシリンダ圧力1.96×10Paにおける流動開始温度が、好ましくは100℃以下、より好ましくは70℃以下、且つ、ガラス転移温度(実測Tg)が、好ましくは−50〜−25℃の範囲、より好ましくは−50〜−30℃の範囲である。
【0048】
前記乾燥被膜の流動開始温度がかかる条件を満たすならば、例えば、パイルモケット、編物、織物、不織布、繊維、紙及び糸などの車輌シートに用いられる加工素材に本発明のバッキング剤を塗工すれば、MVSS−302(米国自動車安全基準)あるいはJIS−D1201(日本工業規格)に準拠する遅燃性評価試験において、燃焼点でのドロップによる自己消火が促進されて、規格値である50mm/分以下の燃焼速度を確保できるので、優れた遅燃性を発現することができる。
【0049】
尚、本発明では、乾燥被膜の流動開始温度は、高化式フローテスターを用いて、シリンダ圧力1.96×10Paの条件にて測定した値をいう。
【0050】
また、前記バッキング剤を用いて形成される乾燥被膜の実測Tgがかかる範囲であれば、例えば、バッキング剤を塗工したシートや布では柔軟性に優れる風合いを、パイルモケットでは優れたパイル引き抜き強度を、編物や織物では優れた縫い目疲労強度を、不織布では優れた引張り強度を得ることができる。
【0051】
本発明のバッキング剤の製造方法は、前記した塩(a)の水溶液中に、前記した単量体(b)、単量体(c)及び単量体(d)を、反応性乳化剤(Em)で予め乳化分散した混合液とラジカル重合開始剤を滴下してラジカル重合開始剤の分解温度以上の温度で乳化重合させ、次いで、得られるビニル系重合体がカルボキシル基を有する場合は中和することにより、カルボキシレート基含有ビニル系重合体(X)の水分散体を得る方法である。
【0052】
前記本発明のバッキング剤の製造方法では、前記した単量体(b)、単量体(c)、単量体(d)及び反応性乳化剤(Em)の乳化重合を、シード粒子の存在下で行うことが好ましい。前記シード粒子としては、ビニル系単量体、好ましくは前記した単量体(c)及び単量体(d)を含有するビニル系単量体を、乳化剤及び/又は反応性乳化剤(Em)で予め乳化分散した混合液とラジカル重合開始剤を水または乳化剤水溶液中に滴下してラジカル重合開始剤の分解温度以上の温度で乳化重合させ、次いで、中和することにより得られるシード粒子の水分散体を用いることが好ましい。このようなシード粒子の水分散体は、予め製造しておいたシード粒子の分散体を用いる方法や、本発明のバッキング剤の製造方法で用いる前記した単量体(b)、単量体(c)及び単量体(d)を、反応性乳化剤(Em)で予め乳化分散した混合液の一部をシード粒子製造用として用いる方法等が挙げられる。
【0053】
本発明において、乳化重合の温度は、ビニル系単量体やラジカル重合開始剤などの種類及び使用量等の諸条件により異なるため、適宜設定すればよく、特に限定しないが、例えば、水性媒体中で乳化重合する場合、通常30〜90℃の範囲が好ましい。かかる温度範囲で乳化重合を行えば、未反応の単量体が実質的に残存せずに反応を完結でき、且つ、副反応も殆ど起こらずに、均一で安定なカルボキシレート基含有ビニル系重合体(X)の水分散体となり、車輌シートに適した優れた遅燃性と、十分な耐久性及び強度を付与できるバッキング剤を得ることができる。
【0054】
また、本発明では、乳化重合で得られるカルボキシレート基含有ビニル系重合体(X)の水分散体の平均粒子径は、前記した塩(a)の使用量、シード粒子の形成の有無などの種々の合成条件を変えることで、目的に応じて、適正な範囲に制御することができるが、好ましくは100〜600nmの範囲、より好ましくは150〜250nmの範囲である。カルボキシレート基含有ビニル系重合体(X)の水分散体の平均粒子径がかかる範囲であれば、本発明のバッキング剤を用いて塗工したパイルモケットなどの加工後の製品に優れた耐水性を付与できる。
【0055】
前記ラジカル重合開始剤としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩類;過酸化ベンゾイル、ラウロイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類;t−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド類;t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシベンゾエート等のパーオキシエステル類;クメンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類等の有機過酸化物類;過酸化水素等が挙げられ、これらは単独使用でもよく2種以上を併用してもよい。
【0056】
また、前記過酸化物と還元剤とを併用したレドックス重合開始剤を用いることもでき、還元剤としては、例えば、アスコルビン酸及びその塩、エリソルビン酸及びその塩、酒石酸及びその塩、クエン酸及びその塩、ホルムアルデヒドスルホキシラートの金属塩、チオ硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、塩化第二鉄等が挙げられ、更に4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩等のアゾ系開始剤を使用することも可能であり、これら重合開始剤は単独使用でもよく2種以上を併用してもよい。
【0057】
本発明では、カルボキシレート基含有ビニル系重合体(X)の分子量を調整する目的で、乳化重合において、分子量調整剤として連鎖移動能を有する化合物を用いてもよい。
【0058】
前記分子量調整剤としては、例えば、ラウリルメルカプタン、オクチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、2−メルカプトエタノール、チオグリコール酸オクチル、3−メルカプトプロピオン酸、チオグリセリン等のメルカプタン類やα−メチルスチレン・ダイマー等が挙げられ、これらは単独使用でもよく2種以上を併用してもよい。
【0059】
また、本発明では、乳化重合は水中で行ってもよく、水と水溶性溶剤の混合溶剤である水性媒体中で行ってもよい。
【0060】
尚、前記した「水と水溶性溶剤の混合溶剤」とは、水と水溶性溶剤の混合溶剤の全量に対して、水溶性溶剤の含有率が好ましくは10重量%以下であり、より好ましくは5重量%以下のものをいう。
【0061】
前記水溶性溶剤としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類、テトラヒドロフラン(THF)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)などの極性溶剤が挙げられ、これらは単独使用でもよく2種以上を併用してもよい。これらの中でも良好な浸透性、加工後の残存のし難さ、取り扱いの容易さなどの理由から、アルキル基の炭素数が1〜3の範囲のアルコール類が好ましい。
【0062】
本発明では、重合反応や処理などの製造工程において、製品の品質や反応に悪影響を与えない範囲で、必要に応じて、例えば、前記反応性乳化剤(Em)以外の乳化剤や分散安定剤などの各種薬剤を用いてもよい。
【0063】
前記反応性乳化剤(Em)以外の乳化剤としては、各種の陰イオン性乳化剤、非イオン性乳化剤、陽イオン性乳化剤、両イオン性乳化剤などを使用することができる。
【0064】
前記陰イオン性乳化剤としては、例えば、高級アルコールの硫酸エステル、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルスルホン酸塩、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸エステル塩(例えば、商標;ニューコール707SF、日本乳化剤株式会社製)、モノアルキルスルホコハク酸塩(例えば、商標;ニューコール293、日本乳化剤株式会社製)等が挙げられ、これらは単独使用でもよく2種以上を併用してもよい。
【0065】
前記非イオン性乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体等が挙げられ、これらは単独使用でもよく2種以上を併用してもよい。
【0066】
前記陽イオン性乳化剤としては、例えば、アルキルアンモニウムクロライド(例えば、商標;アーカード16−50、ライオン株式会社製)等が挙げられ、これらは単独使用でもよく2種以上を併用してもよい。
【0067】
前記両イオン性乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニル硫酸塩等が挙げられ、これらは単独使用でもよく2種以上を併用してもよい。
【0068】
前記反応性乳化剤(Em)以外の乳化剤の使用は、優れた遅燃性を確保するという本発明の目的から、反応性乳化剤(Em)以外の乳化剤の使用量は極力少ない方が好ましく、前記単量体(b)〜(d)及び反応性乳化剤(Em)の合計重量に対して、好ましくは1重量%未満であり、より好ましくは0.5重量%以下であり、更に好ましくは0.3重量%以下である。
【0069】
前記分散安定剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、繊維素エーテル、澱粉、マレイン化ポリブタジエン、マレイン化アルキッド樹脂、ポリアクリル酸(塩)、ポリアクリルアミド樹脂、水性アクリル樹脂、水性ポリエステル樹脂、水性ポリアミド樹脂、水性ポリウレタン樹脂等の水溶性高分子化合物が挙げられ、これらは合成品でもよく天然品でもよく、これらは単独使用でもよく2種以上を併用してもよい。
【0070】
また、例えばスルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基、硫酸基など、前記カルボキシレート基含有ビニル系重合体(X)が有する酸基の一部もしくは全部を中和するために、中和剤を使用することができる。
【0071】
前記中和剤としては、本発明の目的を阻害しないものならば特に限定せず、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属化合物;水酸化カルシウム、炭酸カルシウム等のアルカリ土類金属化合物;アンモニア;モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノプロピルアミン、ジメチルプロピルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン等の水溶性有機アミン類等が挙げられ、これらは単独使用でもよく2種以上を併用してもよい。これらの中でも、優れた被膜の耐水性が得られ、且つ常温あるいは比較的低温条件下での加熱により飛散し易く、加工後のシートや布などの製品に中和剤が残存しないことから、アンモニアを使用することが好ましい。
【0072】
本発明のバッキング剤には、水溶性あるいは水分散性を有する熱硬化性樹脂を本発明の目的を阻害しない範囲で、溶解、混和又は分散させて使用することもできる。
【0073】
前記水溶性あるいは水分散性を有する熱硬化性樹脂としては、例えば、水溶性あるいは水分散性を有する、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレン樹脂等が挙げられ、これらは単独使用でもよく2種以上を併用してもよい。
【0074】
更に、本発明のバッキング剤には、例えば、顔料、pH調整剤、被膜形成助剤、レベリング剤、増粘剤、撥水剤、消泡剤、感熱ゲル化剤等の公知の添加剤を本発明の目的を阻害しない範囲で適宜添加することができる。
【0075】
本発明のバッキング剤は、例えば、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリイミド繊維、アクリル繊維等の合成繊維、再生セルロース繊維等の再生繊維、アセテート繊維等の半合成繊維、絹、木綿、羊毛、パルプ等の天然繊維、などの公知の繊維素材で構成されている、例えば、パイルモケット、編物、織物、不織布、繊維、糸及び紙などに主として塗工して使用することができる。
【0076】
本発明のバッキング剤の塗工方法としては、公知の方法を採用でき、例えば、刷毛塗り、スプレー塗工、フローティングナイフコート、フラットベッドナイフコート、正回転ロールコート、キスロールコート、ナイフオーバーロール、ナイフオーバーベルトコート、リバースロールコート、2ロールプレッシャーコート、エアナイフコート、カーテンコート、グラビアコート、ロッドコート、スロットオリフィスコートキャストコートなどが挙げられ、特に限定しない。
【0077】
また、前記した塗工方法以外の方法であっても、本発明のバッキング剤を付着でき、バッキング剤が有する優れた遅燃性と十分な強度の付与が可能な方法であれば採用可能であり、例えば、含浸加工法、スプレー含浸法などでもよく、特に限定しない。
【0078】
本発明のバッキング剤は、例えば、400g/mの基布(ポリエステル製パイルモケット)に対して、好ましくは固形分70g/m以上、より好ましくは固形分90g/m以上塗布した場合に、優れた遅燃性と十分な強度を付与することができる。
【0079】
本発明のバッキング剤は、優れた遅燃性と、十分な耐久性及び強度の付与が可能であるので、車輌シート等の内装用基布のバッキング剤のほかにも、例えば、天井材、粉塵フィルター等のバインダーなど、広範囲の用途に利用可能である。
【実施例】
【0080】
以下、本発明を実施例により、一層具体的に説明するが、本発明の範囲はこれら実施例のみに限定されるものではない。以下において、特に断らない限り、「%」は重量%を、「部」は重量部を意味するものとする。尚、本発明で用いた測定方法及び評価方法は以下の通りである。
【0081】
〔乾燥被膜の流動開始温度の測定方法〕
水準器を用いて水平にセットした枠付きのガラス板にバッキング剤を、乾燥後の膜厚が0.7mmとなるように塗工し、乾燥機中40℃で8時間乾燥後、形成した被膜をガラス板から剥離し、更に、その被膜を乾燥機中140℃で5分間乾燥したものを高化式フローテスター(株式会社島津製作所製、型式;CFT−500D)を用い、ダイ長さ1.0mm、ダイ穴径1.0mm、シリンダ圧力1.96×10Pa、予熱時間600秒、昇温速度3.0℃/分の条件下で流出開始時点の温度(℃)を測定し、「乾燥被膜の流動開始温度」とした。
【0082】
〔乾燥被膜のガラス転移温度(実測Tg)の測定方法〕
水準器を用いて水平にセットした枠付きのガラス板にバッキング剤を、乾燥後の膜厚が0.7mmとなるように塗工し、室温で24時間乾燥後、形成した被膜をガラス板から剥離し、更に、その被膜を乾燥機中140℃で5分間乾燥したものを試料とした。直径5mm、深さ2mmのアルミニウム製円筒型セル中に、前記試料を約10mg秤取し、モジュレイテッド型示差走査型熱量計(TAインスツルメント社製、型式;DSC−2920)を用い、−50℃から150℃まで昇温速度20℃/分で昇温した時の吸熱曲線を測定した。得られた吸熱曲線を用いたガラス転移温度(実測Tg)の求め方の例を〔図1〕に示した。
【0083】
尚、本発明でいうガラス転移温度(実測Tg)とは、〔図1〕において、「T」として表される値であり、各ベースラインを延長した直線から縦軸方向に等距離にある直線と、ガラス転移の階段状の変化部分の曲線とが交わる点の温度(℃)をいう。
【0084】
〔評価用パイルモケット試料の作成方法〕
アルカリ増粘型アクリル系増粘剤を均一に攪拌後、アンモニア水を添加し、7000〜10000mPa・sの範囲に調整し増粘させたバッキング剤を目付け400g/mのポリエステル製パイルモケットにフローティングナイフコーティング法により固形分100g/mの条件で塗工を施し、乾燥機中150℃で6分間乾燥させて、評価用パイルモケット試料を作成した。
【0085】
〔遅燃性の測定方法〕
MVSS−302(米国自動車安全基準)に準拠し、評価用パイルモケット試料を10枚用い、遅燃性の評価試験を行なった。評価結果は、10枚の燃焼速度の平均値を以下の基準に従い判定した。
判定基準
○;燃焼速度の平均値が50mm/分以下。
×;燃焼速度の平均値が50mm/分を超える。
【0086】
〔パイル引き抜き強度の測定方法〕
評価用パイルモケット試料の表面に長さ25cmに切断したクラフトテープ(日東電工株式会社製)を貼付して、直径5cm、長さ25cm、重さ1.2kgのハンドロールで10回往復した後、手で勢いよく剥がし、クラフトテープの粘着面に付着したパイル数を数える。評価結果は、以下の基準に従い判定した。
判定基準
○;付着したパイル数が19個以下。
△;付着したパイル数が20個以上40個未満。
×;付着したパイル数が40個以上。
【0087】
〔樹脂塗工面の耐水白化性の測定方法〕
評価用パイルモケット試料を60℃の温水に浸漬し、樹脂塗工面が白化するまでの時間を観察し測定した。評価結果は、以下の基準に従い判定した。
判定基準
○;10秒以上経っても白化せず。
△;1秒以上10秒未満で白化した。
×;1秒未満で白化した。
【0088】
〔風合いの測定方法〕
評価用パイルモケット試料を手で触り、触感により風合いを判定した。評価結果は、以下の基準に従い判定した。
判定基準
○;風合いがソフト。
△;風合いがやや硬い。
×;風合いが硬い。
【0089】
〔合成例1〕(シード粒子の水分散体の製造)
撹拌装置を備えた重合容器に、イオン交換水300部と陰イオン性乳化剤であるニューコール707SF〔商標、日本乳化剤株式会社製、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸エステル塩〕1部を仕込み、窒素ガスを送入しつつ攪拌しながら反応容器内を80℃に昇温した。80℃に到達後、下記組成の単量体乳化液(A−i)の6部を反応容器に添加し、その後、ラジカル重合開始剤として下記の過酸化物水溶液(A−ii)のうち6部を添加し、重合を開始した。反応容器内温度を80℃で10分間保持後、単量体乳化液(A−i)の残り594部と、過酸化物水溶液(A−ii)の残り70部を夫々反応容器内に同時に滴下し重合を行った。滴下時間は単量体乳化液(A−i)が4時間、過酸化物水溶液(A−ii)が4.5時間であり、反応容器内温度を80℃に保持しながら重合を完結させた。重合終了後、アンモニア水でpHを調整し、固形分濃度50%、pH8.5の重合体粒子(シード粒子)の水分散体を得た。
【0090】
単量体乳化液(A−i)の組成
単量体(c) イタコン酸 ; 5部
単量体(d) メチルメタクリレート ;335部
単量体(d) 2−エチルヘキシルアクリレート ;160部
イオン交換水 ;100部
【0091】
過酸化物水溶液(A−ii)の組成
過硫酸ナトリウム ; 1部
イオン交換水 ; 75部
【0092】
〔実施例1〕
撹拌装置を備えた重合容器に、イオン交換水220部と、塩(a)の水溶液として25%ビニルスルホン酸ナトリウムの水溶液4部と、陰イオン性乳化剤であるニューコール293〔商標、日本乳化剤株式会社製、モノアルキルスルホコハク酸ナトリウム〕2部を仕込み、窒素ガスを送入しつつ攪拌しながら反応容器内を50℃に昇温した。50℃に到達後、下記組成の単量体乳化液(1−i)の20部を反応容器に添加し、その後ラジカル重合開始剤として下記の過酸化物水溶液(1−ii)と還元剤水溶液(1−iii)を夫々6部、及び0.5%塩化第二鉄水溶液1部を添加し重合を開始した。次いで、反応容器内温度を50℃で10分間保持して重合体粒子(シード粒子)の水分散体とした後、単量体乳化液(1−i)の残り619部と過酸化物水溶液(1−ii)の残り70部を夫々反応容器内に同時に滴下し重合を行った。滴下時間は単量体乳化液(1−i)が6時間、過酸化物水溶液(1−ii)が6.5時間であり、反応容器内温度を50℃に保持しながら重合を完結させた。重合終了後、アンモニア水でpHを調整し、固形分濃度50%、pH7.5のアクリル酸エステル共重合体エマルジョンである本発明のバッキング剤を得た。
【0093】
単量体乳化液(1−i)の組成
単量体(b) アクリロニトリル ; 20部
単量体(b) アクリルアミド ; 9部
単量体(c) メタクリル酸 ; 5部
単量体(c) イタコン酸 ; 5部
単量体(d) n−ブチルアクリレート ;440部
単量体(d1)γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン; 2部
反応性乳化剤(Em) ラテムルS−180〔商標、花王株式会社製〕; 22部
イオン交換水 ;136部
【0094】
過酸化物水溶液(1−ii)の組成
過硫酸ナトリウム ; 1部
イオン交換水 ; 75部
【0095】
還元剤水溶液(1−iii)の組成
重亜硫酸ナトリウム ; 1部
イオン交換水 ; 75部
【0096】
実施例1で得られた本発明のバッキング剤の評価結果を第1表に示したが、シリンダ圧力が1.96×10Paにおける乾燥被膜の流動開始温度は82℃、乾燥被膜のガラス転移温度(実測Tg)は−35℃であり、また、このバッキング剤を塗布したパイルモケット試料を用いたMVSS−302(米国自動車安全基準)に準拠する遅燃性評価試験の結果は燃焼速度が42mm/分であり遅燃性に優れ、また、パイル引き抜き強度の評価結果は10個で強度に優れており、車輌シート用の優れた遅燃性を付与可能なバッキング剤として極めて有用であることを確認した。
【0097】
〔実施例2〕
撹拌装置を備えた重合容器に、イオン交換水220部、塩(a)の水溶液として25%ビニルスルホン酸ナトリウムの水溶液4部、及び合成例1で得られた重合体粒子(シード粒子)の水分散体10部を仕込み、窒素ガスを送入しつつ攪拌しながら反応容器内を80℃に昇温した。80℃に到達後、下記組成の単量体乳化液(2−i)の20部を反応容器に添加し、その後、ラジカル重合開始剤として下記の過酸化物水溶液(2−ii)のうち6部を添加し、シード重合を開始した。反応容器内温度を80℃で10分間保持後、単量体乳化液(2−i)の残り619部と、過酸化物水溶液(2−ii)の残り70部を夫々反応容器内に同時に滴下し重合を行った。滴下時間は単量体乳化液(2−i)が4時間、過酸化物水溶液(2−ii)が4.5時間であり、反応容器内温度を80℃に保持しながら重合を完結させた。重合終了後、アンモニア水でpHを調整し、固形分濃度50%、pH6.5のアクリル酸エステル共重合体エマルジョンである本発明の優れた遅燃性を付与可能なバッキング剤を得た。
【0098】
単量体乳化液(2−i)の組成
単量体(b) アクリロニトリル ; 20部
単量体(b) アクリルアミド ; 9部
単量体(c) メタクリル酸 ; 4部
単量体(c) イタコン酸 ; 3部
単量体(d) n−ブチルアクリレート ;445部
単量体(d1)γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン; 2部
反応性乳化剤(Em) ラテムルS−180〔商標、花王株式会社製〕; 18部
イオン交換水 ;138部
【0099】
過酸化物水溶液(2−ii)の組成
過硫酸ナトリウム ; 1部
イオン交換水 ; 75部
【0100】
実施例2で得られた本発明のバッキング剤の評価結果を第1表に示したが、シリンダ圧力が1.96×10Paにおける乾燥被膜の流動開始温度は60℃、乾燥被膜の実測Tgは−36℃であり、また、このバッキング剤を塗布したパイルモケット試料を用いたMVSS−302に準拠する遅燃性評価試験の結果は燃焼速度が46mm/分であり遅燃性に優れ、また、パイル引き抜き強度の評価結果は17個で強度に優れており、車輌シート用の優れた遅燃性を付与可能なバッキング剤として極めて有用であることを確認した。
【0101】
〔実施例3〕
単量体乳化液として下記に示した単量体乳化液(3−i)を用いた以外は実施例1と同様の操作にて、本発明の車輌シート用のバッキング剤を得た。実施例3で得られた本発明のバッキング剤の評価結果を第1表に示したが、シリンダ圧力が1.96×10Paにおける乾燥被膜の流動開始温度は74℃、乾燥被膜の実測Tgは−36℃であり、また、このバッキング剤を塗布したパイルモケット試料を用いたMVSS−302に準拠する遅燃性評価試験の結果は燃焼速度が49mm/分であり遅燃性に優れ、また、パイル引き抜き強度の評価結果は18個で強度に優れており、車輌シート用の優れた遅燃性を付与可能なバッキング剤として極めて有用であることを確認した。
【0102】
単量体乳化液(3−i)の組成
単量体(b) アクリロニトリル ; 20部
単量体(b) アクリルアミド ; 9部
単量体(c) メタクリル酸 ; 5部
単量体(c) イタコン酸 ; 5部
単量体(d) n−ブチルアクリレート ;440部
単量体(d1)γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン; 2部
反応性乳化剤(Em) アクアロンRN−50〔商標、第一工業製薬工業株式会社製〕; 17部
イオン交換水 ;141部
【0103】
〔実施例4〕
実施例1における塩(a)の水溶液である25%ビニルスルホン酸ナトリウムの水溶液4部を炭酸アンモニウム(固形物)0.2部に代え、単量体乳化液として下記に示した単量体乳化液(4−i)を用いた以外は実施例1と同様の操作にて、本発明の車輌シート用のバッキング剤を得た。実施例4で得られた本発明のバッキング剤の評価結果を第1表に示したが、シリンダ圧力が1.96×10Paにおける乾燥被膜の流動開始温度は80℃、乾燥被膜の実測Tgは−35℃であり、また、このバッキング剤を塗布したパイルモケット試料を用いたMVSS−302に準拠する遅燃性評価試験の結果は燃焼速度が44mm/分であり遅燃性に優れ、また、パイル引き抜き強度の評価結果は14個で強度に優れており、車輌シート用の優れた遅燃性を付与可能なバッキング剤として極めて有用であることを確認した。
【0104】
単量体乳化液(4−i)の組成
単量体(b) アクリロニトリル ; 20部
単量体(b) アクリルアミド ; 9部
単量体(c) メタクリル酸 ; 5部
単量体(c) イタコン酸 ; 5部
単量体(d) n−ブチルアクリレート ;441部
単量体(d1)γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン; 2部
反応性乳化剤(Em) アクアロンRN−50〔商標、第一工業製薬工業株式会社製〕; 22部
イオン交換水 ;136部
【0105】
〔比較例1〜7〕
単量体混合物として第2表及び第3表に記載の配合組成を用いた以外は、実施例1と同様の操作にて行い、水性樹脂組成物であるバッキング剤を得た。得られたバッキング剤のシリンダ圧力が1.96×10Paにおける乾燥被膜の流動開始温度、乾燥被膜の実測Tg、バッキング剤を塗布したパイルモケット試料の燃焼速度、風合い、耐水白化性、及びパイル引き抜き強度は、第2表及び第3表に示す如くであり、本発明の実施例と較べ、明らかに劣るものであった。尚、比較例5は、反応途中で著しく増粘したため、水性樹脂組成物を得ることができず評価できなかった。
【0106】
【表1】

【0107】
【表2】

【0108】
注1)第2表中、ジアリルフタレート、及びN−メチロールアクリルアミドは内部架橋剤として使用した。
【0109】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明のバッキング剤は、米国自動車安全基準で定める「MVSS−302」あるいは日本工業規格で定める「JIS−D1201」に適合する優れた遅燃性と、実用上十分な強度と耐久性を付与できるので、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリイミド繊維、アクリル繊維等の合成繊維、再生セルロース繊維等の再生繊維、アセテート繊維等の半合成繊維、絹、木綿、羊毛、パルプ等の天然繊維などの公知の繊維素材で構成される、例えば、パイルモケット、不織布、織物、編物、繊維、糸及び紙などの加工に用いることができ、特に車輌シート等の内装用基布のバッキング剤や、天井材、粉塵フィルターなどのバインダーとして優れた遅燃性を付与でき、広範囲の用途に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】示差走査型熱量計による吸熱曲線測定時のガラス転移温度(実測Tg)の求め方の一例を示した説明図である。ガラス転移温度(実測Tg)は、図1において「T」として表される値であり、補外ガラス転移開始温度(T)と補外ガラス転移終了温度(T)の各ベースラインの延長した直線から縦軸方向に等距離(H/2)にある直線と、ガラス転移の階段状の変化部分の曲線とが交わる点の温度(T)である。
【符号の説明】
【0112】
;補外ガラス転移開始温度(℃)
;ガラス転移温度(中間点ガラス転移温度)(℃)
;補外ガラス転移終了温度(℃)
H ;熱流(mW)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭酸アルカリ金属塩(a1)、ビニルスルホン酸アルカリ金属塩(a2)及び窒素原子含有塩基性化合物塩(a3)からなる群から選ばれる少なくとも一種の塩(a)を含む水中で、窒素原子含有ビニル系単量体(b)、カルボキシル基及び/又はカルボキシレート基含有ビニル系単量体(c)及びその他のビニル系単量体(d)を、前記ビニルスルホン酸アルカリ金属塩(a2)以外の反応性乳化剤(Em)を用いて乳化分散した混合液を、乳化重合し、次いで、得られるビニル系重合体がカルボキシル基を有する場合は中和して得られるカルボキシレート基含有ビニル系重合体(X)の水分散体を含有してなることを特徴とするバッキング剤。
【請求項2】
前記その他のビニル系単量体(d)が架橋性官能基含有ビニル系単量体(d1)を含有するものであり、かつ、架橋性官能基含有ビニル系単量体(d1)の使用量が、反応性乳化剤(Em)、窒素原子含有ビニル系単量体(b)、カルボキシル基及び/又はカルボキシレート基含有ビニル系単量体(c)及びその他のビニル系単量体(d)の合計100重量部に対して、0.1〜0.5重量部である請求項1に記載のバッキング剤。
【請求項3】
前記塩(a)が、ビニルスルホン酸ナトリウム塩及び/又は無機系アンモニウム塩である請求項1又は2に記載のバッキング剤。
【請求項4】
前記塩(a)が、ビニルスルホン酸ナトリウム塩及び/又は炭酸アンモニウムである請求項1に記載のバッキング剤。
【請求項5】
前記塩(a)と、前記反応性乳化剤(Em)の合計(a+Em)100重量部中における、前記塩(a)の使用割合が固形分重量で、1〜20重量部である請求項1又は2に記載のバッキング剤。
【請求項6】
前記反応性乳化剤(Em)が、アニオン性親水基含有の反応性乳化剤である請求項1又は2に記載のバッキング剤。
【請求項7】
前記反応性乳化剤(Em)が、スルホン酸基及び/又はサルフェート基を有する反応性乳化剤である請求項1又は2に記載のバッキング剤。
【請求項8】
カルボキシレート基含有ビニル系重合体(X)の水分散体が、反応性乳化剤(Em)、窒素原子含有ビニル系単量体(b)、カルボキシル基及び/又はカルボキシレート基含有ビニル系単量体(c)及びその他のビニル系単量体(d)の合計100重量部に対して、反応性乳化剤(Em)0.5〜5.0重量部、単量体(b)1.0〜10.0重量部、単量体(c)0.5〜3.0重量部、及び単量体(b)87.0〜98.5重量部を用いて水中で乳化重合してなる水分散体である請求項1〜7のいずれか一項に記載のバッキング剤。
【請求項9】
乾燥被膜のシリンダ圧力1.96×10Paにおける流動開始温度が100℃以下で、且つガラス転移温度(実測Tg)が−50〜−25℃である請求項1〜7のいずれか一項に記載のバッキング剤。

【図1】
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【公開番号】特開2008−231622(P2008−231622A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−74516(P2007−74516)
【出願日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】