説明

バックスパンが拡大可能なステープル

【課題】組織厚みのより大きな範囲に適応し得る外科用ステープルを提供し、それによって外科手術を実施する場合に外科医により大きな自由度を提供すること。
【解決手段】拡大可能な非直線型バックスパン12と;第一レッグ14と;第二レッグ16と;を備えるステープル10。この第一レッグは、この拡大可能なバックスパンの一端から延びる第一端と、第二端とを有し、この第二レッグは、この拡大可能なバックスパンのもう一方の端から延びる第一端と、第二端とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の援用)
本出願は、2005年6月2日に出願された米国仮特許出願番号60/686,780の恩恵を主張し、この米国仮特許出願に対する優先権を主張する。この米国仮特許出願の内容全体が、本明細書において参考として援用される。
【0002】
(1.技術分野)
本開示は、外科用留め具に関する。より具体的には、種々の厚みの組織を結合するための外科用ステープル留め器具を用いて使用するための外科用ステープルに関する。
【背景技術】
【0003】
(2.関連技術の背景)
外科用ステープルおよび留め器具は、外科分野において周知であり、そして多くの救命外科手順にとって重要になっている。迅速かつ効率的な様式で組織または組織部分を結合するためにステープルを適用するために留め器具を使用することによって、種々の外科手順(例えば、吻合手順)において組織または組織部分を手で縫合するという時間のかかる工程が排除されている。外科用留め器具を使用してこれらの外科手順を実施するために必要な時間を短縮することによって、患者にとって損傷および危険が減少している。
【0004】
代表的には、外科用ステープルは、バックスパンと、間隔を空けた一対のレッグとを備える。これらのレッグは、組織を通ってアンビル中へと推進されて、このステープルを望ましい構成(例えば、B字型ステープル)へと変形させ、組織または組織部分の止血をもたらす。現在の外科用ステープルに関連する問題の一つは、所定のサイズの変形したステープルが、所定の厚み範囲の組織を止血するために特に適しているということである。従って、外科医は、組織の有効な止血を確実にするために、所定の組織厚みの範囲のために、適切なステープルサイズを選択しなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、組織厚みのより大きな範囲に適応し得る外科用ステープルを提供し、それによって外科手術を実施する場合に外科医により大きな自由度を提供することが、望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(要旨)
・(項目1) ステープルであって、
拡大可能な非直線型バックスパンと;
上記拡大可能なバックスパンの一端から延びる第一端と、第二端とを有する、第一レッグと;
上記拡大可能なバックスパンのもう一方の端から延びる第一端と、第二端とを有する、第二レッグと;
を備え、
上記拡大可能な非直線型バックスパンは、中心部分を備え、上記中心部分は、上記第一レッグの第二端および上記第二レッグの第二端に向って延び、かつ上記中心部分は、上記第一レッグの第二端および上記第二レッグの第二端から離れる方向において変形可能であり、
上記バックスパンは、種々の厚みの組織に適用した場合に変形するような構成であり、上記バックスパンの変形量は、留められる組織の厚みに比例する、
ステープル。
・(項目2) 項目1に記載のステープルであって、上記ステープルの第一レッグの第二端および第二レッグの第二端は、組織に貫入するような構成である、ステープル。
・(項目3) 項目1に記載のステープルであって、上記バックスパンは、凹型構成を有する、ステープル。
・(項目4) 項目1に記載のステープルであって、上記バックスパンは、U字型構成を有する、ステープル。
・(項目5) 項目1に記載のステープルであって、上記バックスパンは、凹部を規定する、ステープル。
・(項目6) 項目5に記載のステープルであって、上記凹部の構成は、U字型、台形、および矩形からなる群より選択される、ステープル。
・(項目7) 項目1に記載のステープルであって、上記バックスパンは、円形断面を有する、ステープル。
・(項目8) 項目7に記載のステープルであって、上記第一レッグおよび上記第二レッグの各々は、円形断面を有する、ステープル。
・(項目9) 項目1に記載のステープルであって、上記非直線型バックスパンは、実質的に台形の形状を規定する、ステープル。
・(項目10) 項目1に記載のステープルであって、上記非直線型バックスパンは、実質的に矩形の形状を規定する、ステープル。
【0007】
本開示に従って、ステープルが提供される。このステープルは、拡大可能な非直線型バックスパンと;第一レッグと;第二レッグと;を備え、この第一レッグは、この拡大可能なバックスパンの一端から延びる第一端と、第二端とを有し、この第二レッグは、この拡大可能なバックスパンのもう一方の端から延びる第一端と、第二端とを有する。この拡大可能な非直線型バックスパンは、中心部分を備え、この中心部分は、上記の第一レッグの第二端および上記第二レッグの第二端に向って延び、かつこの中心部分は、上記の第一レッグの第二端および上記の第二レッグの第二端から離れる方向において変形可能である。このバックスパンは、種々の厚みの組織に適用した場合に変形するような構成であり、このバックスパンの変形量は、留められる組織の厚みに比例する。
【0008】
一実施形態において、上記の第一レッグの第二端および上記の第二レッグの第二端は、組織に貫入するような構成である。一実施形態において、上記のバックスパンは、凹型構成または凹部構成を有する。この凹型構成または凹部構成は、U字型、台形、矩形、または上記の目的を達成するために適切な他の任意の構成であり得る。
【0009】
一実施形態において、上記のバックスパンならびに上記の第一レッグおよび上記の第二レッグの各々または両方は、円形断面を有する。あるいは、他の断面構成が、企図される。
【0010】
なお別の実施形態において、上記のバックスパンは、圧縮可能なパッドまたは圧縮可能なスペーサーを備え得る。このパッドは、上記のステープルを組織に適用する場合に組織と係合して、種々の厚みの組織または組織部分の近置を維持するように配置され得る。一実施形態において、この圧縮可能なパッドは、ポリマー、流体を充填したバッグ、またはスポンジを備える。あるいは、他の圧縮可能な材料が、使用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本明細書により開示されたバックスパンが拡大可能なステープルの種々の実施形態が、図面を参照して本明細書中に開示される。
【図1】図1は、本明細書により開示されたバックスパンが拡大可能なステープルの一実施形態の斜視図である。
【図1A】図1Aは、本明細書により開示されたバックスパンが拡大可能なステープルの別の実施形態の側面図である。
【図1B】図1Bは、本明細書により開示されたバックスパンが拡大可能なステープルのなお別の実施形態の側面図である。
【図1C】図1Cは、本明細書により開示されたバックスパンが拡大可能なステープルのなお別の実施形態の上面図である。
【図2】図2は、図1の線2−2に沿って得られる断面図である。
【図3】図3は、図1の線3−3に沿って得られる断面図である。
【図4】図4は、最小の厚みの組織を通って配置された、図1に示されるバックスパンが拡大可能なステープルの側面図である。
【図5】図5は、中程度の厚みの組織を通って配置された、図1に示されるバックスパンが拡大可能なステープルの側面図である。
【図6】図6は、より大きな厚みの組織を通って配置された、図1に示されるバックスパンが拡大可能なステープルの側面図である。
【図7】図7は、本明細書により開示されるバックスパンが拡大可能なステープルの別の実施形態の側方斜視図である。
【図8】図8は、中程度の厚みの組織を通って配置された、図7において示されるバックスパンが拡大可能なステープルの側面図である。
【図9】図9は、より大きな厚みの組織を通って配置された、図7において示されるバックスパンが拡大可能なステープルの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
組織厚みのより大きな範囲に適応し得る外科用ステープルを提供する。
(実施形態の詳細な説明)
本明細書により開示されるバックスパンが拡大可能なステープルの実施形態が、図面を参照してここに詳細に記載される。同種の数字は、いくつかの図の各々における同じ要素または対応する要素を示す。
【0013】
図1を参照すると、一般的に10として示される本明細書により開示されるバックスパンが拡大可能なステープルは、バックスパン12と、バックスパン12の一端から外側に向って延びる第一レッグ14と、バックスパン12のもう一方の端から外側に向って延びる第二レッグ16とを、備える。第一レッグおよび第二レッグの各々は、組織貫入先端14aおよび組織貫入先端16aを備える。バックスパン12は、このステープルバックスパンに凹型の輪郭を提供するような、曲線または凹部を規定する。バックスパン12の中心部分12aは、中心部分12aがステープルレッグ14およびステープルレッグ16の貫入先端に向って延びるように、曲がっているかまたは凹んでいる。あるいは、このステープルのバックスパンは、第一レッグ14から第二レッグ16へと延びる際に、このバックスパンの上から見た場合に必ずしも直線状に延びる必要はない。例えば、このバックスパンの上面の輪郭は、曲がりくねったパターンで第一レッグ14から第二レッグ16へと延び得る。図1Cを参照のこと。このバックスパンの構成は、(下記に考察されるように)特定の必要性、外科手順、または組織厚みの範囲に適合するように任意の望ましい曲率半径を有するように形成され得ることが、企図される。このステープルのバックスパンの輪郭は、必ずしも円形である必要はなく、むしろ、他の凹んだ構成または凹型構成(例えば、U字型、台形(図1B)、矩形(図1A)など)を有し得ることもまた、企図される。
【0014】
図1において示されるように、ステープル10のレッグ14およびレッグ16のそれぞれの貫入先端14aおよび貫入先端16aは、組織の貫入を容易にするためにテーパ状端部を備えて形成され得る。組織貫入先端14aおよび組織貫入先端16aは、示されるように、このステープルの内壁20が縁22を規定するように、テーパ状であり得る。あるいは、このステープルレッグ14およびステープルレッグ16の組織貫入先端14aおよび16aは、必ずしもテーパ状である必要はなく、または別の方向でテーパ状であり得、または円錐状表面もしくは平坦な表面を規定し得る。
【0015】
図2および図3において示されるように、ステープル10は、その長さ全体にわたって円形断面を有し得る。ステープル10は、種々の断面(矩形、楕円形、正方形、三角形、台形などが挙げられる)を有し得ることが、企図される。バックスパン12ならびにレッグ14およびレッグ16は、異なる断面形状を有し得ること、例えば、バックスパン12が矩形断面を有し得、そしてレッグ14およびレッグ16が楕円形断面を有し得ることもまた、企図される。レッグ14およびレッグ16は、示されるように、わずかに広がっているが、他の構成も企図される。すなわち、レッグ14およびレッグ16は、実質的に平行であり得るか、集束し得るなどである。このステープルはまた、方向が偏ったステープル(例えば、米国特許出願番号09/972,594(2001年11月5日に出願され、その全体が参考として本明細書中に援用される)に記載されるステープル)として構成され得る。
【0016】
図4〜図6を参照すると、ステープル10の変形した構成は、留められる組織の厚みに依存する。留められるべき組織部分「T」および「T」が比較的薄い場合、図4において示されるように、レッグ14およびレッグ16は、公知の様式でアンビル(示されない)に対して変形されて、改変されたB字型ステープル構成になる。この構成において、ステープル10のバックスパン12は、その凹型構成を保持するかまたは実質的に保持する。このような構成において、バックスパン12は、組織Tと接触して組織部分Tと組織部分Tとを近置した状態で維持するようにして、止血をもたらす。組織部分「T」および「T」が中程度の厚みである場合、図5において示されるように、ステープル10のバックスパン12は、組織部分Tと係合し、組織部分Tによって部分的に変形される。前と同様に、ステープル10のバックスパン12は、改変されたB字型構成になるように変形され、バックスパン12は、組織セグメントTと接触して組織部分Tおよび組織部分Tの近置を維持し、そして止血をもたらす。しかし、バックスパン12は、概して凹型の構成を依然として維持し得る。最後に、組織部分Tおよび組織部分Tが比較的厚い場合、図6において示されるように、ステープル10のバックスパン12は、組織部分Tと係合し、組織部分Tによって実質的にB字型構成へと変形される。前と同様に、バックスパン12は、組織部分Tと係合して、組織部分Tおよび組織部分Tを近置した状態に維持して、止血をもたらす。図4〜図6において示されるように、バックスパン12は、結合されるべき組織部分Tおよび組織部分Tの厚みが増加するにつれて、次第により直線状になる。
【0017】
図7は、一般的に100として示される、本明細書により開示されるバックスパンが拡大可能なステープルの別の実施形態を示す。ステープル100は、バックスパン112と、第一レッグ114と、第一レッグから間隔が空いている第二レッグ116と、圧縮可能なパッドまたは圧縮可能なスペーサー118とを備える、従来のステープルを含む。レッグ114およびレッグ116は、パッド118の上面118aがバックスパン112の下面に対して支えられるように、パッド118を通って延びる。レッグ先端114aおよびレッグ先端116aは、ステープルレッグ先端14aおよびステープルレッグ先端16aに関して上記で考察されるように組織の貫入を容易にするようにテーパ状であり得るか、あるいは、形状が非テーパ状でも円錐形でもあり得る。パッド118の下面118bは、先端114aおよび先端116aに向う方向において、上面118aから間隔が空いている。
【0018】
パッド118は、圧縮可能な材料から形成される。この圧縮可能な材料は、ポリマー、流体が充填されたバッグ、スポンジ、または外科的用途のために適切な任意の圧縮可能な材料であり得る。この圧縮可能な材料は、バックスパン上もしくはバックスパンの周囲において形成もしくはコーティングされ得るか、または公知の任意の様式でバックスパンに結合され得ることが、企図される。
【0019】
図8において示されるように、ステープル100が、比較的薄い組織部分であるTおよびTを留めるために使用される場合、ステープル100のレッグ114およびレッグ116が組織部分Tおよび組織部分Tに通されると、パッド118の下面が、組織部分Tの上面と係合して、組織部分Tおよび組織部分Tを近置させてこの状態を維持して、止血をもたらす。ステープル100が、比較的厚い組織部分であるTおよびTを留めるために使用される場合、パッド118の下面が、これも前と同様に、組織部分Tの上面と係合して、組織部分Tおよび組織部分Tを近置させてこの状態を維持する。しかし、パッド118はまた、ステープル100のバックスパン112と組織Tとの間で圧縮され、ステープル100のうちにこの厚めの組織を収容するように変形(すなわち、平坦化)される。
【0020】
本明細書により開示されるバックスパンが拡大可能なステープルは、公知の外科用ステープル留め器具のカートリッジ内に適合され得る。この公知の外科用ステープル留め器具としては、開放性器具および内視鏡器具ならびに連続発射器具、単回発射器具、および多回発射器具が挙げられる。このような器具の例が、米国特許第6,045,560号、同第5,964,394号、同第5,894,979号、同第5,878,937号、同第5,915,616号、同第5,836,503号、同第5,865,361号、同第5,862,972号、同第5,817,109号、同第5,797,538号、および同第5,782,396号において開示される。これらの米国特許は、その全体が本明細に参考として援用される。上記のバックスパンが拡大可能なステープルの本明細書により開示される実施形態はまた、ロボットにより操作される外科用ステープラー中に組み込まれ得ることもまた、企図される。
【0021】
本明細書により開示されるバックスパンが拡大可能なステープルの別の実施形態において、ステープル100のスペーサーまたはパッド118(図7)は、ステープル10(図1)上に支持される。この組み合わされたステープル(示さない)は、2つの拡大段階を有するバックスパンを提供する。すなわち、そのパッドは、まず、中程度の厚みの組織のステープル留めに応答して変形し、そのバックスパンが、より厚い組織により変形する。
【0022】
種々の改変が、本明細書中に開示される実施形態に対してなされ得ることが、理解される。例えば、上記のステープルは、種々の外科的に許容可能な材料(チタン、プラスチック、吸収性材料などが挙げられる)のうちのいずれかから形成され得る。従って、上記の説明は、限定するものとして解釈されるべきではなく、単に好ましい実施形態の例証に過ぎないものとして解釈されるべきである。当業者は、本明細書に添付される特許請求の範囲の範囲および精神に含まれる他の改変を想定する。
【0023】
(摘要)
拡大可能なバックスパンと、間隔を空けた一対のレッグとを備える、ステープルが記載される。この拡大可能なバックスパンは、種々の厚みの組織に適応するように拡大または変形するような構成である。一実施形態において、このバックスパンは、非直線型であり、そして凹部を規定する。別の実施形態において、このバックスパンは、変形可能なパッドまたは変形可能なスペーサーを備える。このバックスパンの変形量は、その組織の厚みに比例する。すなわち、組織の厚みが大きいほど、このバックスパンの変形も大きい。
【符号の説明】
【0024】
10 バックスパンが拡大可能なステープル
12 バックスパン
14 第一レッグ
16 第二レッグ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書に記載される発明。

【図1】
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【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−45399(P2012−45399A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−221749(P2011−221749)
【出願日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【分割の表示】特願2006−155373(P2006−155373)の分割
【原出願日】平成18年6月2日(2006.6.2)
【出願人】(501289751)タイコ ヘルスケア グループ リミテッド パートナーシップ (320)
【Fターム(参考)】