説明

バックフィルムにラミネートフィルムを貼り合わせたプラスチック気泡シートの製造方法および製造装置

【課題】
キャップフィルム、バックフィルムおよびキャップフィルムに積層したラミネートフィルムからなるプラスチック気泡シートにおいて、バックフィルムとラミネートフィルムとの間に空気の巻き込みがなく、2枚のフィルムが完全に密着している製品を製造可能にすること。
【解決手段】
金属製の円筒の表面に設けた多数のキャビティを真空源に接続するための、円筒の端部に開口部をもつ真空吸引路を有する真空成形ロールを使用してプラスチック気泡シートを製造する。真空吸引路の開口部に接続する真空ダクトに続いて送気ダクトを設け、キャップの真空成形が終わったキャビティに連なる真空吸引路に、加圧空気を供給してキャビティによるキャップの拘束を解くとともに、キャップとバックフィルムとで形成する空気室を外側に向けて押し出すことにより、バックフィルムがわずかに膨出した状態で、ラミネートフィルムとの貼り合わせを行なう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック気泡シートにおいて、バックフィルムにラミネートフィルムを貼り合わせた製品を製造する方法に関し、その方法の実施に使用する装置にも関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックフィルムを真空成形して多数のキャップ状の突起を有するキャップフィルムを形成し、キャップの底面に平坦なバックフィルムを貼り合わせて、多数の密閉された空気室を有するプラスチック気泡シート(以下「気泡シート」と略称する)が、緩衝包装そのほかの用途に、広く使用されている。
【0003】
これらの気泡シートには、バックフィルムの上に、もう1枚の平坦なラミネートフィルムを貼り合わせて、さまざまな機能をもたせた製品がある。ラミネートフィルムの役割には、彩色ないし絵柄を与えること、ガスバリヤ性を与えること、熱線反射性能を与えることなど、さまざまある。どのようなフィルムを選択するにせよ、ラミネートフィルムをバックフィルムに貼り合わせる場合に共通の問題点は、バックフィルムとラミネートフィルムとを、完全に密着させるのが困難であるということである。
【0004】
具体的には、キャップの底に当たる部分において、バックフィルムとラミネートフィルムとの間に空気が巻き込まれて、ほぼ円形のレンズ状の空間が形成されるという現象である。これは、製品の美観を著しく損ねるだけでなく、ラミネートにより得られるはずの性能に関しても、不利益をもたらす。図2Cは、この現象を若干誇張して示した、キャップ部分の拡大断面図である。
【0005】
この原因として第一に考えられるのは、キャップフィルムにバックフィルムを貼り合わせることにより形成された空気室の体積が、形成後の温度の低下により収縮することである。すなわち、キャップフィルムが溶融状態から真空成形されたキャップの内部は、それに貼り合わせるバックフィルムも溶融状態であるから、高温であるが、貼り合わせの後には、真空成形ロールが金属製であって、通常は内部から冷却されているものであるから、急速に温度が低下する。たとえば、キャップ形成時に100℃であった空気室内の温度が20℃に低下したとすると、その空気の体積は約80%に収縮する。図2のA、すなわちバックフィルム貼り付け時から図2のB、すなわちラミネートフィルム貼り付け時への変化は、この間の事情を示している。
【0006】
いまひとつの原因は、これも原理的なものであって、図3に示すように、真空成形ロールは断面円形であるから、キャビティの中央を通る線に沿って考えると、バックフィルム(BF)のパスラインはキャビティ(41)の前後の縁をつなぐ直線であるのに対し、キャップフィルム(CF)とバックフィルムとが貼り合わされる面は円弧であるから、平面に展開したとき、キャップの底では、上記の直線と円弧の差に相当する分、バックフィルムはキャップフィルムに向かって凹んでいることになる、という現象である。その上に貼り合わされるラミネートフィルム(LF)もまた、真空成形ロール(4)の円弧状の断面に沿って加圧ロール(5)で加圧される結果、図2のCにみるような、レンズ状の空間(S)ができてしまう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、バックフィルムにラミネートを行なった気泡シートにおいて、上述のような、バックフィルムとラミネートフィルムとの間に空気の巻き込みがなく、2枚のフィルムが完全に密着している製品を得ることができる気泡シートの製造方法を提供することにある。その方法の実施に使用するための装置を提供することもまた、本発明の目的に含まれる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のバックフィルムにラミネートフィルムを貼り合わせたプラスチック気泡シートの製造方法は、金属製の円筒の表面に多数のキャビティを設け、それらキャビティの底部を円筒の軸方向にあけた真空吸引路に接続した真空成形ロールを使用してプラスチックフィルムを真空成形し、多数のキャップ状の突起を有するキャップフィルムを形成してその底面に平坦なバックフィルムを貼り合わせて多数の密閉された空気室を形成するとともに、バックフィルムにもう1枚の平坦なラミネートフィルムを貼り合わせることからなるプラスチック気泡シートを製造する方法において、キャップフィルムの真空成形が完了したキャビティに、直ちに真空吸引路を通じて加圧空気を送り、キャビティによるキャップの拘束を解除した上に、バックフィルムがラミネートフィルム側にわずか膨出した状態として、上記の貼り合わせを行なうことにより、バックフィルムとラミネートフフィルムとの間に空気の巻き込みがない製品を得ることを特徴とする製造方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の方法に従ってバックフィルムにラミネートフィルムを貼り合わせたプラスチック気泡シートを製造すれば、キャップフィルムがキャビティに吸引されてキャップ形状を与えられ、かつ、バックフィルムが貼り合わされて空気室が形成されたところで、直ちにキャビティの背後から加圧空気が送られる結果、キャップのキャビティへの拘束が解かれた上、キャップに対しては外に押し出す方向の力が作用する。その力は、空気室の中の空気を通じてバックフィルムに伝えられるから、バックフィルムは図2にみたようにキャップ側に凹むことなく、幾分膨出した状態でラミネートフィルムに接触する。
【0010】
ラミネートフィルムの背後には、ゴムのような柔軟な材料で製作した加圧ロールが控えているから、バックフィルムとラミネートフィルムとは、キャップのない部分においては真空成形ロールの表面と加圧ロールの表面とに挟まれ、キャップのある部分では、空気室内の空気の圧力に押された状態で加圧ロールの力により密着させられるから、結局、バックフィルムとラミネートフィルムとの間にあった空気は、すべて両者の間から押し出されたまま、貼り合わせが完成する。この状況をキャップ部分についてみれば、図4に示すとおりである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
上記の気泡シートの製造方法を実施するための本発明の装置は、プラスチックフィルムを真空成形して多数のキャップ状の突起を有するキャップフィルムを形成し、キャップの底面に平坦なバックフィルムを貼り合わせて多数の密閉された空気室を形成するとともに、バックフィルムにもう1枚の平坦なラミネートフィルムを貼り合わせてプラスチック気泡シートを製造する装置であって、図1に全体の構成を概念的に示すように、キャップフィルムを溶融押出しする第一のフラットダイ(1)、バックフィルムを溶融押出しする第二のフラットダイ(2)およびラミネートフィルムを供給する手段(3)に加えて、金属製の円筒の表面に多数のキャビティ(41)をうがち、それらキャビティを真空源に接続するための、円筒の軸方向に貫通し、円筒の端部に開口部(42)をもつ真空吸引路(43)を有する真空成形ロール(4)、この真空成形ロールを支承して回転駆動する手段、真空成形ロールの一定の回転角度範囲内にある真空吸引路の開口部を真空源と接続させるための真空ダクト(7)、真空成型されたキャップフィルムの底面にバックフィルムとラミネートフィルムとを貼り合わせるための、柔軟な材料で製造した加圧ロール(5)、製造されたプラスチック気泡シートを真空成形ロールから剥離する剥離ロール(6)、ならびに剥離されたプラスチック気泡シートを引き取って巻き取る手段から基本的になり、これらに真空源を加えて構成される装置において、真空成形ロールの回転角度に関して真空ダクトの領域に続く位置に、真空吸引路に加圧空気を供給する送気ダクト(8)を付加して、バックフィルムがラミネートフィルム側にわずか膨出した状態で貼り合わせが行なわれるように構成したことを特徴とする装置である。
【0012】
図1において、真空源および圧力空気源とは図示してないが、前者は真空ダクト(7)を通じて、後者は送気ダクト(8)を通じて、真空成形ロールの真空吸引路(43)に、開口部(42)を経て接続される。真空成形ロールの回転駆動手段も図示してないが、軸(44)を回転駆動する手段を設ければよい。送気ダクト(8)を通じて供給する圧力空気の圧力は、真空吸引路の入り口で、水柱にして10mm程度あれば十分である。
【実施例】
【0013】
外径200mmの金属製円筒に、直径10mm×深さ4mmの円形のキャビティを、ピッチ11.5mmの千鳥配置で設けて、有効幅600mmの真空成形ロールを製作した。キャビティは、円周上に48個が並んでいる。この真空成形ロールに、直径150mmの加圧ロールおよび直径150mmの剥離ロールを組み合わせて、図5に示す構成の気泡シート製造装置を組み立てた。図に見るように、真空成形ロールの真空吸引路に対して送気ダクト(8)が接続する回転角が、加圧ロールとの接点の前後にわたる15度の範囲にあり、一方、真空ダクト(7)が接続する回転角は、送気ダクトが接続する回転角の前方45度の範囲にある。キャビティに関していえば、真空成形ロールの円周上、6列のキャビティに対して真空吸引を行なってキャップを形成した後、最後の1列に対しては加圧空気を吹き出した状態でバックフィルムおよびラミネートフィルムを貼り合わせ、貼り合わせた後も1列に対して、なお加圧空気を供給する、という構成である。
【0014】
この装置を使用し、キャップフィルムの厚さ35μm、バックフィルムの厚さ20μmとなるようにLLDPEのフィルムを供給し、厚さ30μmのラミネートフイルムを供給して、ラインスピード20m/分で、バックフィルム側にラミネートを施した気泡シートを製造した。送気ダクトからの加圧空気の供給を行なわなかった場合、キャップ底部におけるバックフイルムとラミネートフィルムとの間の空気巻き込みが避けられなかったのに対し、本発明に従って送気ダクトから加圧空気を供給した場合には、空気の巻き込みが防止され、美麗なラミネートが実現した。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明のバックフィルムにラミネートフィルムを貼り合わせたプラスチック気泡シートの製造装置について、その主要構成部分を概念的に示し、真空成形ロールの一部を切り欠いてキャビティを表わした側面図。
【図2】従来のプラスチック気泡シートにおいて、バックフィルムにラミネートフィルムを貼り合わせた間に空気が巻き込まれる機構を説明する拡大断面図であって、Aはキャップフィルムにバックフィルムが貼り合わされる段階を、Bはバックフィルムにラミネートフィルムが貼り合わされる段階を、Cは製品気泡シートを、それぞれ示す。
【図3】従来のプラスチック気泡シートにおいて、バックフィルムにラミネートフィルムを貼り合わせた間に空気が巻き込まれるいまひとつの機構を説明する、真空成形ロールのキャビティ部分の拡大断面図。
【図4】本発明によるプラスチック気泡シートの製造において、バックフィルムとラミネートフィルムの間に空気が巻き込まれない理由を説明する、図2Bに対応する拡大断面図。
【図5】本発明の実施例の説明図であって、試作したプラスチック気泡シート製造装置における、真空成形ロールに対して真空ダクトおよび送気ダクトが接続する回転角を示した概念的な図。
【符号の説明】
【0016】
1,2 フラットダイ
3 ラミネートフィルム供給手段
4 真空成形ロール
41 キャビティ 42 開口部 43 真空吸引路 44 軸
5 加圧ロール
6 剥離ロール
7 真空ダクト
8 送気ダクト
BF バックフィルム
CF キャップフィルム
LF ラミネートフィルム
S レンズ状の空間


【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製の円筒の表面に多数のキャビティを設け、それらキャビティの底部を円筒の軸方向にあけた真空吸引路に接続した真空成形ロールを使用してプラスチックフィルムを真空成形し、多数のキャップ状の突起を有するキャップフィルムを形成してその底面に平坦なバックフィルムを貼り合わせて多数の密閉された空気室を形成するとともに、バックフィルムにもう1枚の平坦なラミネートフィルムを貼り合わせることからなるプラスチック気泡シートを製造する方法において、キャップフィルムの真空成形が完了したキャビティに、直ちに真空吸引路を通じて加圧空気を送り、キャビティによるキャップの拘束を解除した上に、バックフィルムがラミネートフィルム側にわずか膨出した状態として、上記の貼り合わせを行なうことにより、バックフィルムとラミネートフフィルムとの間に空気の巻き込みがない製品を得ることを特徴とする製造方法。
【請求項2】
プラスチックフィルムを真空成形して多数のキャップ状の突起を有するキャップフィルム(CF)を形成し、キャップの底面に平坦なバックフィルム(BF)を貼り合わせて多数の密閉された空気室を形成するとともに、バックフィルムにもう1枚の平坦なラミネートフィルム(LF)を貼り合わせてプラスチック気泡シート(BS)を製造する装置であって、キャップフィルムを溶融押出しする第一のフラットダイ(1)、バックフィルムを溶融押出しする第二のフラットダイ(2)、およびラミネートフィルムを供給する手段(3)に加えて、金属製の円筒の表面に多数のキャビティ(41)をうがち、それらキャビティを真空源に接続するための、円筒の軸方向に貫通し、円筒の端部に開口部(42)をもつ真空吸引路(43)を有する真空成形ロール(4)、この真空成形ロールを支承して回転駆動する手段、真空成形ロールの一定の回転角度範囲内にある真空吸引路の開口部を真空源と接続させるための真空ダクト(7)、真空成型されたキャップフィルムの底面にバックフィルムとラミネートフィルムとを貼り合わせるための、柔軟な材料で製造した加圧ロール(5)、製造されたプラスチック気泡シートを真空成形ロールから剥離する剥離ロール(6)、ならびに剥離されたプラスチック気泡シートを引き取って巻き取る手段から基本的になり、これらに真空源を加えて構成される装置において、真空成形ロールの回転角度に関して真空ダクトの領域に続く位置に、真空吸引路に加圧空気を供給する送気ダクト(8)を付加して、バックフィルムがラミネートフィルム側にわずか膨出した状態で貼り合わせが行なわれるように構成したことを特徴とする製造装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2007−44979(P2007−44979A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−231408(P2005−231408)
【出願日】平成17年8月9日(2005.8.9)
【出願人】(000199979)川上産業株式会社 (203)
【Fターム(参考)】