説明

バックル装置およびバックル装置を取付けた身体装着体

【課題】 ベルト等の邪魔になる余剰部分を生じさせないバックル装置の提供。
【解決手段】 面ファスナとバックルを備え、面ファスナは係合面どうしを対向させた一方の面ファスナ材および他方の面ファスナ材から構成されるとともに、一方の面ファスナ材および他方の面ファスナ材の長手方向各端部位置が略一致しており、バックルは係脱自在な係止バックル部および被係止バックル部から構成され、係止バックル部および被係止バックル部のうちの少なくとも一方が、枠部と、枠部の一方側と他方側との間にあって枠部に一体的に形成された掛部とを備え、一方の面ファスナ材は枠部の一方側の下面側から掛部の上面側を乗越えて枠部の他方側の下面側に導出されることで掛部に掛けられて、係止バックル部が一方の面ファスナ材の長手方向の範囲内で移動自在とされているバックル装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バックル装置および、バックル装置を取付けた衣服やリュックサック等の身体装着体に関する。
【背景技術】
【0002】
リュックサックや鞄、釣用衣服等の身体装着体に取付けられるバックル装置として、下記特許文献1に示す技術が提案されている。特許文献1に開示されたバックル装置は、鞄本体に取付けられたベルト体どうしを一体化するとともに、背負い用のベルト体どうしを幅方向で位置調節するために用いられている。
【0003】
このようなバックル装置は、挿込部(プラグ部材)と挿込部が挿し込まれる被挿込部(ソケット部材)と、挿込部を一方のベルト体に取付けるための第一ベルト部と、被挿込部を他方のベルト体に取付けるための第二ベルト部とを備えている。
【0004】
そして、ベルト体に腕を通すようにして鞄本体を使用者が背に装着し、例えば被挿込部から垂れる状態にある第二ベルト部を引いて締めたり、第二ベルト部を緩めたりして、使用者は自身の体格等に応じてベルト体をアジャストさせるようにして用いる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−141883号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来のバックル装置において、ベルト部(例えば第二ベルト部)には、ベルト体の間の距離を調節するために使用者が操作する把持部を設けておいて、導出させておく必要がある。そうすると、場合によっては、把持部は大きく垂れ下がった状態になり、邪魔になる。このような問題を解決するために、把持部を収納することが考えられるが、そうなると収納部を別に設けなければならないといった煩わしさが生じる。
【0007】
そこで本発明は上記課題に鑑み、ベルト等の邪魔になる余剰部分を生じさせず、したがって特別な収納部を設ける必要のないバックル装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のバックル装置は、面ファスナとバックルを備え、前記面ファスナは係合面どうしを対向させた一方の面ファスナ材および他方の面ファスナ材から構成されるとともに、一方の面ファスナ材および他方の面ファスナ材の長手方向各端部位置が略一致しており、前記バックルは係脱自在な係止バックル部および被係止バックル部から構成され、前記係止バックル部および被係止バックル部のうちの少なくとも一方が、枠部と、該枠部の一方側と他方側との間にあって該枠部に一体的に形成された掛部とを備え、前記一方の面ファスナ材は枠部の一方側の下面側から掛部の上面側を乗越えて枠部の他方側の下面側に導出されることで掛部に掛けられて、係止バックル部が一方の面ファスナ材の長手方向の範囲内で移動自在とされていることを特徴としている。
【0009】
上記構成において、一方の面ファスナ材と他方の面ファスナ材の係合面を離脱させた状態で係止バックル部を一方の面ファスナ材の長手方向に必要な量だけ移動させ、一方の面ファスナ材と他方の面ファスナ材の係合面を係合させるように合わせると、一方の面ファスナ材の一部は係止バックル部の掛部の上面側にあるから他方の面ファスナ材の係止面に係止されないが、一方の面ファスナ材の一部は係止バックル部の枠部の一方側および他方側の下面側にあるから他方の面ファスナ材の係止面に係止されて、係止バックル部が位置決め保持され、係止バックル部は一方の面ファスナ材の長手方向に対して任意の位置にあることで、係止バックル部の位置に応じて係止バックル部と被係止バックル部を係止させられる。
【0010】
本発明のバックル装置では、一方の面ファスナ材の基材は、他方の面ファスナ材の基材に比べて柔軟に形成されている構成を採用することができる。この構成によれば、係止バックル部あるいは被係止バックル部の、一方の面ファスナ材の長手方向での移動が容易になる。
【0011】
本発明の身体装着体は、上記何れかのバックル装置を備えたことを特徴としている。例えば身体装着体として、リュックサックを挙げれば、該リュックサックにおける一対の背負いベルト体からなる背負いベルトにバックル装置を用いることで、各背負いベルト体の幅方向での位置調節が可能になる。
【発明の効果】
【0012】
本発明のバックル装置では、面ファスナは係合面どうしを対向させた一方の面ファスナ材および他方の面ファスナ材から構成されるとともに、一方の面ファスナ材および他方の面ファスナ材の長手方向各端部位置が略一致しており、バックルは係脱自在な係止バックル部および被係止バックル部から構成され、係止バックル部および被係止バックル部のうちの少なくとも一方が、枠部と、枠部の一方側と他方側との間にあって枠部に一体的に形成された掛部とを備え、一方の面ファスナ材は枠部の一方側の下面側から掛部の上面側を乗越えて枠部の他方側の下面側に導出されることで掛部に掛けられて、係止バックル部が一方の面ファスナ材の長手方向の範囲内で移動自在とされているから、係止バックル部の位置に応じて係止バックル部と被係止バックル部を係止した際に、邪魔になる部分が生じることがなく、このため特別な収納部を設ける必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態を表すリュックサックの背面側からの斜視図である。
【図2】同リュックサックの正面図である。
【図3】同リュックサックの第一上ベルト部および第二上ベルト部の導出量を調節する調節手段を表す図であり(a)は後方からの斜視図、(b)は断面図である。
【図4】同バックル装置を表す図であり、(a)は上方からの斜視図、(b)は断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図1ないし図4に基づいて、本発明の一実施形態に係るバックル装置を、リュックサックに適用させた場合を例に説明する。図1および図2に示すように、リュックサック1は、収容物を収容するための本体2と、本体2に取付けられた第一背負いベルト体3および第二背負いベルト体4からなって、軟質の生地で形成された背負いベルト5とを備えている。
【0015】
本体2は、前面部2Aと後面部2Bと両側の側面部2C,2Dとから袋状に形成されている。そして、左右両側に縫着したスライドファスナS1,S2によって、両側の側面部2C,2Dから本体2の内部に収容物を収容することができるよう構成されている。これらのスライドファスナS1,S2は、本体2を側面視した場合、上下方向途中部が後方へ向けて凸となるよう湾曲して、本体2の上下方向を長手方向として取付けられている。なお、図示しないが、本体2の前面部2Aには、装着感を良好にするための緩衝材が適所に配置されている。
【0016】
本体2の後面部2Bの下部に、別のスライドファスナS3が縫着されている。このスライドファスナS3は、本体2をその下部で開閉できるよう本体2の左右方向に亘って、本体2に縫着されている。本体2の後面部2Bの上部には、さらに別のスライドファスナS4が縫着されている。このスライドファスナS4は、本体2内部の上部に配置したポケット6の開閉口となるよう、左右方向を長手方向として本体2に縫着されている。
【0017】
第一背負いベルト体3は第一上ベルト部7と第一下ベルト部8とを備えている。第一上ベルト部7は使用者(着用者)による本体2の装着状態において使用者の一方の肩部側から胸骨側(使用者の胴体の幅方向中心側)へ向けて斜め下方に延長されよう本体2に取付けられている。第一下ベルト部8は使用者の一方の腹部側(使用者の胴体の一方の横腹側)から胸骨側へ向けて斜め上方に延長されるよう本体2に取付けられている。第一下ベルト部8はその基部の幅が上部の幅に比べて広幅に形成されている。
【0018】
第一上ベルト部7は、本体2の上部の一方隅部に形成された第一挿通路9を挿通して、本体2内部から本体2の前面部2A側に導出されている。第一下ベルト部8の端部は本体の下部の一方隅部に縫着されている。
【0019】
第二背負いベルト体4は第二上ベルト部10と第二下ベルト部11とを備えている。第二上ベルト部10は使用者(着用者)による本体2の装着状態において使用者の他方の肩部側から胸骨側へ向けて斜め下方に延長されよう本体2に取付けられている。第二下ベルト部11は使用者の他方の腹部側から胸骨側へ向けて斜め上方に延長されるよう本体2に取付けられている。第二下ベルト部11はその基部の幅が上部の幅に比べて広幅に形成されている。
【0020】
第二上ベルト部10は、本体2の上部の他方隅部に形成された第二挿通路12を挿通して、本体2内部から本体2の前面部2A側に導出されている。第二下ベルト部11の端部は本体の下部の他方隅部に縫着されている。
【0021】
図3(a),(b)に示すように、第一上ベルト部7および第二上ベルト部10は本体2の内部で一体化されている。すなわち第一上ベルト部7と第二上ベルト部10を一体化している部分は、本体2の前面部2Aの裏面側で、下方に向けて湾曲した湾曲部13によって形成されている。
【0022】
この湾曲部13は所定の剛性を有するよう湾曲した薄板状の保形部材14(例えば合成樹脂板)と、保形部材14を覆う薄手の連設生地15とから構成され、第一上ベルト部7および第二上ベルト部10の各端部は、連設生地15と一体化するよう縫着されている。
【0023】
湾曲部13の上下方向高さを調節することで、第一上ベルト部7および第二上ベルト部10の導出量を調節する調節手段が設けられている。該調節手段は、面ファスナの組合せによって構成されている。すなわち、連設生地15(湾曲部13)は、本体2の前面部2Aの裏面生地に対して、面ファスナ16によって着脱自在に構成されている。この面ファスナ16は挟持用面ファスナ17と被挟持用面ファスナ18とから構成されている。
【0024】
挟持用面ファスナ17は、係合面どうしを着脱自在に対向させており、ともに上下方向(丈方向)を長手方向とする一方の前側面ファスナ材19および他方の後側面ファスナ材20から構成される。被挟持用面ファスナ18は、連設生地15の前面および後面の双方の長手方向中心部に取付けられ(貼着され)ている。そして、被挟持用面ファスナ18が挟持用面ファスナ17に挟持されることで、湾曲部13が挟持用面ファスナ17(本体2)に固定される。
【0025】
なお、湾曲部13、挟持用面ファスナ17は図示しない被覆生地で覆われており、しかも該被覆生地と前面部2Aとを側部に縫着したスライドファスナで開閉して使用者が手指を挿入して湾曲部13の高さ調節が操作できるよう構成されている。
【0026】
第一上ベルト部7の前面部2Aへの導出部分における下端部と、第一下ベルト部8の上端部とは、第一連結ベルト21によって連結されている。第一連結ベルト21は、第一下ベルト部8に取付けられた第一調節具22によって、上下方向の長さを調節可能に構成されている。
【0027】
第二上ベルト部10の前面部2Aへの導出部分における下端部と、第二下ベルト部11の上端部とは、第二連結ベルト23によって連結されている。第二連結ベルト23は、第二下ベルト部11に取付けられた第二調節具24によって、上下方向の長さを調節可能に構成されている。
【0028】
第一下ベルト部8、第二下ベルト部11の前面側には、それぞれ第一連結ベルト21、第二連結ベルト23の余剰分21a,23aを収納するためのポケット25,26が形成されている。
【0029】
第一上ベルト部7の長手方向途中部分は側縁が略平行な帯状に形成され、第一上ベルト部7の下部7Aは、帯幅に比べて大径に形成され、その縁は円弧状に形成されている。第二上ベルト部10の長手方向途中部分は側縁が略平行な帯状に形成され、第二上ベルト部10の下部10Aは、帯幅に比べて大径に形成され、その縁は円弧状に形成されている。
【0030】
図2および図4(a),(b)に示すように、第一上ベルト部7の下部7Aと第二上ベルト部10の下部10Aに、下部7A,10Aどうしの少なくとも一部どうしを前後に重ねたうえで、下部7A,10Aの幅方向での位置決めを行うためのバックル装置27が、振り分けて配置されている。バックル装置27は着脱手段であり、面ファスナ28とバックル29を備えて構成されている。バックル装置27は、第一上ベルト部7の下部7Aおよび第二上ベルト部10の下部10A(第一背負いベルト体3および第二背負いベルト体4)を着脱するための着脱手段としての機能を兼用している。
【0031】
面ファスナ28は、係合面どうしを前後に対向させた一方の固定面ファスナ材30(オス材)および他方の案内面ファスナ材31(メス材)から構成されている。バックル29は係脱自在な係止バックル部32および被係止バックル部33から構成されている。
【0032】
面ファスナ28は、第一上ベルト部7の下部7Aの側縁間に、幅方向に沿うよう配置されており、一方の固定面ファスナ材30が第一上ベルト部7の下部7Aに縫着されている。幅方向に沿うとは、第一上ベルト部7が胸骨側へ向けて斜め下方に延長された状態において、略幅方向に沿う状態を意味する。このように構成することで、固定面ファスナ材30が所定の幅方向長さに設定されている。
【0033】
案内面ファスナ材31は、固定面ファスナ材30の前側に対向するよう配置され、案内面ファスナ材31は固定面ファスナ材30に比べて長く形成されており、しかも案内面ファスナ材31および固定面ファスナ材30の左右両側端部(長手方向各端部)位置は略一致して、該左右両側端部は第一上ベルト部7の下部に一体的に縫着されている。
【0034】
係止バックル部32は、枠部34と、枠部34の一方側と他方側との間にあって枠部34に一体的に形成された掛部35とを一体的に備えている。この係止バックル部32はソケット部材とも称され、枠部34にソケット部36が一体に形成されている。
【0035】
係止バックル部32の枠部34は、案内面ファスナ材31に、移動自在に挿通されている。具体的には、案内面ファスナ材31は固定面ファスナ材30に比べて柔軟な生地をベース材としており、枠部34の一方側の下面側から掛部35の上面側を乗越えて枠部34の他方側の下面側に導出されて掛部35に掛けられることで、係止バックル部32は案内面ファスナ材31の長手方向の範囲内で移動自在とされている。案内面ファスナ材31が固定面ファスナ材30に比べて長く形成されているのは、上記のようにして係止バックル部32が挿通されるためである。
【0036】
被係止バックル部33はプラグ部材であり、固定用輪ベルト37が掛けられた基部38と、基部38の先端部に形成されたプラグ部39とから一体的に形成されている。固定用輪ベルト37の端部は第二上ベルト部10の下部10Aの外側縁に縫着されている。
【0037】
係止バックル部32を、案内面ファスナ材31の最も幅方向中心側へ移動させた状態で係止バックル部32と被係止バックル部33を係止すると、第一上ベルト部7の下部7Aの一部と、第二上ベルト部10の下部10Aの一部とが前後方向で重なる状態となるよう、係止バックル部32と被係止バックル部33とが、それぞれ第一上ベルト部7と第二上ベルト部10に位置付けられるように取付けられている。換言すれば、案内面ファスナ材31の最も幅方向外側へ移動させた状態で係止バックル部32と被係止バックル部33を係止すると、第一上ベルト部7の下部7Aと、第二上ベルト部10の下部10Aとが前後方向で重なる面積が大きくなる。
【0038】
上記構成のリュックサック1において、バックル装置27の係止バックル部32と被係止バックル部33を外すと、第一背負いベルト体3と第二背負いベルト体4とはフリーになるので、使用者は第一背負いベルト体3と第二背負いベルト体4のそれぞれと本体2との間に腕を通して、第一背負いベルト体3と第二背負いベルト体4を肩に掛ける。そしてバックル装置27の係止バックル部32と被係止バックル部33とを係止する。このようにすることで、第一背負いベルト体3と第二背負いベルト体4とが一体化する。そして、この実施形態におけるリュックサック1では、バックル装置27により、使用者の体格に合わせて、あるいは好みに応じて第一背負いベルト体3と第二背負いベルト体4の幅方向での位置調節ができる。
【0039】
すなわち、リュックサック1を使用者が背負った状態で、第一背負いベルト体3と第二背負いベルト体4とにより締付け感があれば、バックル装置27の面ファスナ28、すなわち固定面ファスナ材30から案内面ファスナ材31を離脱させ、係止バックル部32を幅方向中心側へ移動させる。そうすると、第一背負いベルト体3の第一上ベルト部7と第二背負いベルト体4の第二上ベルト部10の重なり量が小さくなる。すなわち、第一背負いベルト体3と第二背負いベルト体4とが幅方向で離れる方向に移動する。このようにすることで、締付け感を解消することができる。
【0040】
逆に、リュックサック1を使用者が背負った状態で、第一背負いベルト体3と第二背負いベルト体4が弛緩状態にあれば、バックル装置27の面ファスナ28、すなわち固定面ファスナ材30から案内面ファスナ材31を離脱させ、係止バックル部32を幅方向外側へ移動させる。そうすると、第一背負いベルト体3の第一上ベルト部7と第二背負いベルト体4の第二上ベルト部10の重なり量が大きくなる。すなわち、第一背負いベルト体3と第二背負いベルト体4とが幅方向で近付く方向に移動する。このようにすることで、弛緩状態を解消することができる。なお、被係止バックル部33は固定用輪ベルト37で第二背負いベルト体4に固定されているから、被係止バックル部33での調節をすることはない。
【0041】
そして、バックル装置27は、第一上ベルト部7の下部7Aと第二上ベルト部10の下部10Aとを前後で重ねた状態を維持しつつ、第一上ベルト部7と第二背負いベルト体4の幅方向位置を調節するものである。このため、第一背負いベルト体3と第二背負いベルト体4とが左右方向に離間してしまうことがなく、アジャスト感が得られる。また、バックル装置27の係止バックル部32は、第二上ベルト部10の下部10Aの幅方向長さに設定されている固定面ファスナ材30に係止する案内面ファスナ材31の長さの範囲で移動させるから、第一上ベルト部7と第二背負いベルト体4の幅方向位置を調節しても、余剰なベルトの発生がなく、したがって、それが邪魔になることもない。
【0042】
また、第一背負いベルト体3の第一上ベルト部7と第一下ベルト部8は別体であり、第二背負いベルト体4の第二上ベルト部10と第二下ベルト部11とは別体であり、それぞれ第一連結ベルト21、第二連結ベルト23で連結され、第一調節具22、第二調節具24で長さ調節ができる。このため、第一上ベルト部7と第一下ベルト部8の離間距離を変更(調節)し、第二上ベルト部10と第二下ベルト部11の離間距離を変更することで、使用者の体格に合わせて、あるいは好みに応じて第一背負いベルト体3、第二背負いベルト体4の長さ調節ができ、リュックサック1をアジャストさせた状態で背負うことができる。
【0043】
さらに、湾曲部13の上下方向高さを調節することで、第一上ベルト部7および第二上ベルト部10の導出量を調節することができる。すなわち、前側面ファスナ材19を後側面ファスナ材20から外し、湾曲部13の上下位置を調節することで、第一上ベルト部7および第二上ベルト部10の導出量を調節する。これによって、使用者の体格に合わせて、あるいは好みに応じて第一上ベルト部7および第二上ベルト部10の長さを調節して、第一上ベルト部7の下部7A、第二上ベルト部10の下部10Aの、使用者に対する位置を調節して本体2をアジャストさせることができる。湾曲部13の上下方向高さは、挟持用面ファスナ17の長さに応じた分だけ調節可能である。
【0044】
そして、本発明の実施形態におけるリュックサック1では、第一背負いベルト体3の第一上ベルト部7は使用者による本体2の装着状態において使用者の一方の肩部側から胸骨側へ向けて斜め下方に延長されよう本体2に取付けられ、第一下ベルト部8は使用者の一方の腹部側から胸骨側へ向けて斜め上方に延長されるよう本体2に取付けられている。また、第二背負いベルト体4の第二上ベルト部10は使用者による本体2の装着状態において使用者の他方の肩部側から胸骨側へ向けて斜め下方に延長されよう本体2に取付けられ、第二下ベルト部11は使用者の他方の腹部側から胸骨側へ向けて斜め上方に延長されるよう本体2に取付けられている。
【0045】
このため、バックル装置27を用いて第一背負いベルト体3および第二背負いベルト体4を一体化させた際でも、第一背負いベルト体3および第二背負いベルト体4が捻られることがなく、第一背負いベルト体3および第二背負いベルト体4がそれぞれ使用者の体表面にフィットすることになり、第一背負いベルト体3および第二背負いベルト体4による違和感が生じたり、装着感の悪さが生じたりすることを効果的抑制することができる。
【0046】
第一背負いベルト体3および第二背負いベルト体4は上記のように、本体2の左右端部側から幅方向中心に向かって斜めに延びた構成とすることで、特に、リュックサック1を背負って自転車に搭乗する場合では、第一背負いベルト体3および第二背負いベルト体4は、使用者(搭乗者)の胸筋や腹筋を回避した状態となるから、前傾姿勢で自転車に搭乗しても第一背負いベルト体3および第二背負いベルト体4による圧迫感がなく、快適な使用感(装着感)が得られる。
【0047】
本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではない。例えば、上記実施形態では第一上ベルト部7と第二上ベルト部10の幅方向での位置調節を、被係止バックル部33側で行うことはない構成とした。しかしながらこの構成に限定されず、被係止バックル部33を、固定用輪ベルト37で固定することなく、係止バックル部32のように、固定面ファスナ材30と案内面ファスナ材31との組合せによって幅方向に移動自在に構成することも考えられる。
【0048】
また、係止バックル部32は掛部35が一個のものを用いたがこれに限定されず、掛部35を二個有するものを用いてもよい。何れにしても案内面ファスナ材31が掛部35の上側に巻き掛けられるようにするとともに、枠部34の左右部分の下側に潜るように構成する。さらに、被係止バックル部33を案内面ファスナ材31に移動自在に取付け、係止バックル部32を固定用輪ベルト37に取付けてもよい。
【0049】
上記実施形態では、バックル装置27をリュックサック1に適用させた例で説明した。しかしながら、バックル装置27は、他の身体装着体として、ライフベスト等の衣服の身ごろどうしの合わせ手段、クーラーボックスの本体に対する蓋の固定手段等、多様な部位に用いることができる。
【0050】
上記実施形態では、第一背負いベルト体3は別体の第一上ベルト部7と第一下ベルト部8とから構成し、第二背負いベルト体4は別体の第二上ベルト部10と第二下ベルト部11とから構成して、それぞれ第一連結ベルト21、第二連結ベルト23で連結する構成とした。しかしながら、第一背負いベルト体3および第二背負いベルト体4は、それぞれ一体の構成であってもよい。この場合では、バックル装置27の構成を第一背負いベルト体3側と第二背負いベルト体4側とに振り分けて取付け、リュックサック1の装着時には、第一背負いベルト体3と第二背負いベルト体4をバックル装置27により一体化し、第一背負いベルト体3と第二背負いベルト体4の幅方向での位置を調節するようにする。
【0051】
何れにしても第一背負いベルト体3の上部は、本体2の上端一側から中心へ向かって下傾斜するよう延長され、下部は本体2の下端一側から中心へ向かって上傾斜するよう延長される。また第二背負いベルト体4は、本体2の上端他側から中心へ向かって下傾斜するよう延長され、下部は本体2の下端他側から中心へ向かって上傾斜するよう延長される。
【0052】
さらに、上記実施形態のリュックサック1では、複数箇所に面ファスナを設ける構成を説明したが、何れの面ファスナにおいてもオスとメスの組合せ、すなわち係止面と被係止面の組合せは、係止面と被係止面を備えていれば、配置は特定されるものではない。また、面ファスナとしては、一面および一面に係止する他面に、オスとメスの双方を備えた構成のものであってもよい。
【符号の説明】
【0053】
1…リュックサック、2…本体、3…第一背負いベルト体、4…第二背負いベルト体、5…背負いベルト、7…第一上ベルト部、7A…第一上ベルト部の下部、8…第一下ベルト部、9…第一挿通路、10…第二上ベルト部、10A…第二上ベルト部の下部、11…第二下ベルト部、12…第二挿通路、13…湾曲部、17…挟持用面ファスナ、18…被挟持用面ファスナ、19…前側面ファスナ材、20…後側面ファスナ材、21…第一連結ベルト、23…第二連結ベルト、27…バックル装置、28…面ファスナ、29…バックル、30…固定面ファスナ材、31…案内面ファスナ材、32…係止バックル部、33…被係止バックル部、34…枠部、35…掛部、36…ソケット部、39…プラグ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
面ファスナとバックルを備え、
前記面ファスナは係合面どうしを対向させた一方の面ファスナ材および他方の面ファスナ材から構成されるとともに、一方の面ファスナ材および他方の面ファスナ材の長手方向各端部位置が略一致しており、
前記バックルは係脱自在な係止バックル部および被係止バックル部から構成され、
前記係止バックル部および被係止バックル部のうちの少なくとも一方が、枠部と、該枠部の一方側と他方側との間にあって該枠部に一体的に形成された掛部とを備え、
前記一方の面ファスナ材は枠部の一方側の下面側から掛部の上面側を乗越えて枠部の他方側の下面側に導出されることで掛部に掛けられて、係止バックル部が一方の面ファスナ材の長手方向の範囲内で移動自在とされていることを特徴とするバックル装置。
【請求項2】
一方の面ファスナ材の基材は、他方の面ファスナ材の基材に比べて柔軟に形成されていることを特徴とする請求項1記載のバックル装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2の何れかに記載のバックル装置を備えたことを特徴とする身体装着体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−59549(P2013−59549A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−200867(P2011−200867)
【出願日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【出願人】(000002439)株式会社シマノ (1,038)
【Fターム(参考)】