説明

バッグ、エアベルト及びエアベルト装置

【課題】十分にコンパクトに折り畳むことが可能なバッグと、このバッグを備えたエアベルトと、このエアベルトを備えたエアベルト装置とを提供する。
【解決手段】バッグ21は、偏平袋状に織られた織物30よりなる。この織物30は、平たく展延された状態においてバッグ21の一方の面を構成する第1の層31a、及び、該バッグ21の他方の面を構成する第2の層31bを有し、これらの層31a,31b同士の間にガスが導入される複層部31と、該複層部31の各層31a,31bの織り端同士が連なる単層部32とを有しており、且つ該複層部31から単層部32にかけて一連一体に織られたものである。複層部31aにおいては、織物30は、袋織りにより筒状に織られている。単層部32は、複層部31の筒軸心線方向の両端側にそれぞれ配置されている。単層部32において、織物30は、袋とじ織りにより、筒状の複層部31の筒軸心線方向の両端部をそれぞれ閉じるように織られている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏平袋状に織られた織物よりなり、内部にガスが導入されることにより膨張するバッグに係り、特にエアベルト用として好適なバッグに関する。また、本発明は、このバッグを備えたエアベルトと、このエアベルトを備えたエアベルト装置とに関する。
【背景技術】
【0002】
車両等の乗り物の座席に座った乗員を衝突時等に膨張可能なエアベルトにより該座席に拘束するエアベルト装置は周知である。
【0003】
このエアベルトとして、内部にガスが導入されることにより膨張するバッグを帯状に折り畳んでなる折畳体と、該バッグの折畳体を覆ったメッシュウェビングとを有したものが特許文献1に記載されている。特許文献1では、このバッグは、2枚の基布の周縁部同士を縫合して袋状としたものである。メッシュウェビングは、バッグの周方向には柔軟に伸長しうるが、バッグの長手方向には殆ど伸長しないように構成された編み物よりなる。バッグの膨張時には、このメッシュウェビングの編目がバッグの周方向に広がり、その結果として、メッシュウェビングがバッグの長手方向に縮み、エアベルトの長さが短くなる。このようにエアベルトの長さが短くなると、エアベルトが乗員に密着し、乗員をしっかりと拘束することが可能となる。
【0004】
特許文献2には、偏平袋状に織られた織物によりエアベルト用バッグを構成することが記載されている。特許文献2では、この織物は、平たく展延された状態においてバッグの一方の面を構成する第1の層、及び、該バッグの他方の面を構成する第2の層を有し、これらの層同士の間にガスが導入される複層部と、該複層部の各層の織り端同士が連なる単層部とを有しており、該複層部から単層部にかけて一連一体に織られたものである。特許文献2では、この単層部において、複層部の各層の織り端同士は、ジャカード織により結合されている。特許文献2では、この単層部は、織物の全周にわたって形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−348725号公報
【特許文献2】特表2003−524710号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
エアベルトの収納性や装着感を向上させるために、このエアベルト内に収納されるバッグの折畳体は、できるだけコンパクトであることが望まれる。
【0007】
特許文献2の織物よりなるバッグは、織布同士の縫合部を有していないため、縫合部を有した特許文献1のバッグに比べてコンパクトに折り畳むことができる。
【0008】
しかしながら、特許文献2のバッグにあっては、構造上、その全周にわたって耳状の単層部が形成されている。そのため、特許文献2のバッグを帯状に折り畳んで折畳体とした場合には、このバッグのうち該折畳体の長手方向と直交方向の両端側に位置する単層部の分だけ、折畳体が嵩張る。
【0009】
本発明は、十分にコンパクトに折り畳むことが可能なバッグと、このバッグを備えたエアベルトと、このエアベルトを備えたエアベルト装置とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明(請求項1)のバッグは、偏平袋状に織られた織物よりなり、内部にガスが導入されることにより膨張するバッグであって、該織物は、平たく展延された状態において該バッグの一方の面を構成する第1の層、及び、該バッグの他方の面を構成する第2の層を有し、これらの層同士の間にガスが導入される複層部と、該複層部の各層の織り端同士が連なる単層部とを有しており、該複層部から単層部にかけて一連一体に織られたものであるバッグにおいて、該複層部において、該織物は、袋織りにより筒状に織られており、該単層部は、該複層部の筒軸心線方向の両端側にそれぞれ配置されており、該単層部において、該織物は、袋とじ織りにより、筒状の該複層部の筒軸心線方向の両端部をそれぞれ閉じるように織られていることを特徴とするものである。
【0011】
請求項2のバッグは、請求項1において、前記複層部において、前記織物は、該複層部の周方向の両端側の織り端同士がセルベッジシステムIII又はV方式にて結合されていることを特徴とするものである。
【0012】
本発明(請求項3)のエアベルトは、請求項1又は2に記載のバッグを帯状に折り畳んでなる折畳体と、該バッグの折畳体を覆ったカバー体とを有しており、該バッグは、前記複層部の筒軸心線方向を該折畳体の長手方向として配置されていることを特徴とするものである。
【0013】
本発明(請求項4)のエアベルト装置は、請求項3に記載のエアベルトと、該エアベルトの前記バッグを膨張させるためのインフレータとを備えたものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明(請求項1)のバッグにおいては、このバッグを構成する織物の複層部は、袋織りにより筒状に織られている。そして、単層部は、この複層部の筒軸心線方向の両端側に配置され、袋とじ織りにより、この筒状の複層部の両端部をそれぞれ閉じるように織られている。即ち、このバッグにあっては、複層部の筒軸心線方向の両端側にのみ単層部が形成されており、それ以外の複層部の内周面及び外周面には、実質的に、単層部が存在しない。そのため、全周に単層部が形成された特許文献2のバッグに比べて、バッグを折り畳んだときに、複層部と単層部とが重なる部分を少なくすることができる。これにより、バッグの折畳体をコンパクトなものとすることができる。
【0015】
特に、例えばバッグを、複層部の筒軸心線方向がその折畳体の長手方向となるように折り畳むことにより、複層部に単層部が重なることが殆ど又は全くなくなるので、バッグを十分にコンパクトに折り畳むことができる。
【0016】
請求項2の通り、複層部において、織物の周方向の両端側の織り端同士は、セルベッジシステムIII又はV方式にて結合されていることが好ましい。このように構成することにより、実質的に、複層部の内周面及び外周面には単層部を形成することなく、該織物の周方向の両端側の織り端同士を強固に結合することができる。
【0017】
本発明(請求項3)のエアベルトは、かかる本発明のバッグを帯状に折り畳んでなる折畳体を有したものであり、該バッグは、複層部の筒軸心線方向をこの折畳体の長手方向として配置されている。そして、本発明(請求項4)のエアベルト装置は、かかる本発明のエアベルトを備えたものである。上記の通り、このバッグの折畳体は、全周に単層部が形成された特許文献2のバッグの折畳体に比べて、十分にコンパクトである。これにより、エアベルトの全体の厚さや太さも比較的小さくすることが可能となり、エアベルトの収納性や装着感をより良好なものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施の形態に係るエアベルト装置のエアベルト膨張時の斜視図である。
【図2】実施の形態に係るエアベルトの非膨張時の平面図である。
【図3】図2のエアベルトの長手方向の途中部の断面斜視図である。
【図4】図2のエアベルトのバッグを構成する織物の構成図である。
【図5】図4の織物により構成されたバッグ及びその折畳体の構成図である。
【図6】図4の織物からのバッグの製造方法の説明図である。
【図7】バッグの別の折り畳み方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0020】
第1図は、実施の形態に係るエアベルト装置のエアベルト膨張時の斜視図である。第2図は、実施の形態に係るエアベルトの非膨張時の平面図である。第3図は、このエアベルトの長手方向の途中部の断面斜視図である。第4図(a)は、このエアベルトのバッグを構成する織物の平面図であり、第4図(b),(c)は、それぞれ、第4図(a)のB−B線及びC−C線に沿う断面図である。第5図(a)は、この織物により構成されたバッグの平面図であり、第5図(b)は、このバッグを帯状に折り畳んでなる折畳体の平面図であり、第5図(b)は、第5図(b)のC−C線に沿う断面図である。第6図(a)は、このバッグを構成する織物をバッグ形状に裁断する前の平面図であり、第6図(b)はこの織物の裁断後の平面図であり、第6図(c)はバッグ完成後の平面図である。以下の説明において、上下方向、左右方向及び前後方向とは、このエアベルトが装着される車両等の乗り物の乗員にとっての上下方向、左右方向及び前後方向をいう。
【0021】
エアベルト装置は、第1図の通り、車両等の乗り物の座席(図示略)に座った乗員の一方(この実施の形態では右側)の肩部の上方を通って該乗員の上半身の前面側を斜めに(この実施の形態では右上から左下へ)引き回されるショルダーベルト部を構成するエアベルト10と、該エアベルト10の上端に接続されたウェビング14と、この乗員の腰部付近の上側を左右方向に引き回されるラップベルト部11と、該座席の側方(この実施の形態では左側)に隣接して設置されたバックル装置12と、ベルト装着時に該バックル装置12に挿入係止されるタング13と、該座席のバックル装置12と反対側(この実施の形態では右側)に位置する車体のピラー部等に取り付けられており、ウェビング14が掛けられたショルダーアンカ18と、該ウェビング14を巻き取るリトラクタ15と、ラップベルト部11を巻き取るリトラクタ16等を備えている。各リトラクタ15,16は、座席のバックル装置12と反対側に配置されている。
【0022】
バックル装置12にはインフレータ17が設けられており、このインフレータ17の噴出ガスがエアベルト10内に導入される。
【0023】
タング13には、第2図に示すように、バックル装置12に差し込まれるタングプレート13aのほか、このインフレータ17からのガスを受け入れてエアベルト10内に導くためのノズル13bが設けられている。
【0024】
ラップベルト11は、先端(この実施の形態では左端)がタング13に接続され、後端(この実施の形態では右端)側がリトラクタ16に巻取可能に接続されている。
【0025】
エアベルト10は、内部にインフレータ17からのガスが導入されることにより膨張するバッグ21と、該バッグ21を覆ったメッシュウェビング22と、該メッシュウェビング22の外側に装着されたカバー23等を備えている。この実施の形態では、バッグ21の下端側にガス導入口21aが設けられており、このガス導入口21aに前記ノズル13bの上端側が接続されている。
【0026】
バッグ21は、偏平袋状に織られた織物30よりなる。この織物30の構成については、後で詳しく説明する。第2,3図の通り、バッグ21は、非膨張時には、細長い帯状に折り畳まれている。メッシュウェビング22は、バッグ21の非膨張時には、細長い筒状となっており、このバッグ21の折畳体を被包している。メッシュウェビング22は、周方向には柔軟に伸長しうるが、長手方向には殆ど伸長しないように構成された編み物よりなる。この実施の形態では、メッシュウェビング22の略全体がこの編み物により構成されている。即ち、この実施の形態では、メッシュウェビング22の略全体が、バッグ21の膨張に伴って周方向に伸長可能となっている。なお、メッシュウェビング22の構成はこれに限定されない。例えば、メッシュウェビング22は、部分的に、編み物以外の材料により構成されてもよい。
【0027】
このメッシュウェビング22の上端に前記ウェビング14の先端が接続され、該ウェビング14の後端側がリトラクタ15に巻取可能に接続されている。第2図の符号24は、このメッシュウェビング22の上端とウェビング14の先端とを縫合したシームを示している。なお、メッシュウェビング22とウェビング14との接続方法は、縫合に限定されない。メッシュウェビング22及びバッグ21の下端はタング13に接続されている。前記ノズル13bを介してインフレータ17からのガスがバッグ21に導入される。
【0028】
カバー23も、バッグ21の非膨張時には、細長い筒状となっており、このメッシュウェビング22を被包している。第2図の符号25は、これらのカバー23、メッシュウェビング22及びバッグ21の折畳体を共縫いすることによりこれらを一体化したテアシームを示している。このカバー23は、周方向には伸びにくい材料よりなり、バッグ21の膨張時には、このカバー23が開裂してバッグ21の膨張を許容するように構成されている。その際、テアシーム25も破断してカバー23、メッシュウェビング22及びバッグ21の一体化が解除される。なお、カバー23の構成はこれに限定されない。
【0029】
第1図の通り、この実施の形態では、エアベルト10は、膨張時には、その上端側が下端側よりも太くなるように構成されている。即ち、この実施の形態では、エアベルト10が膨張した状態においては、該エアベルト10の上端側が大膨張部10aとなっており、それよりも下端側が小膨張部10bとなっている。なお、大膨張部10aの配置はこれに限定ない。例えば、エアベルト10の上下方向の途中部に大膨張部10aが配置され、それよりもエアベルト10の上端側及び下端側がそれぞれ小膨張部10bとなっていてもよい。エアベルト10の下端側に大膨張部10aが配置され、それよりも上端側が小膨張部10bとなっていてもよい。エアベルト10の長手方向に位置を異ならせて2個以上の大膨張部10aが設けられてもよい。エアベルト10は、膨張したときに、その上端側から下端側まで太さが略一定となるように構成されてもよい。
【0030】
この実施の形態では、メッシュウェビング22は、小膨張部10bに配置される部分の周方向への伸長量が、大膨張部10aに配置される部分の周方向への伸長量よりも小さくなるように構成されている。これに対し、この実施の形態では、バッグ21は、メッシュウェビング22に覆われていない状態において膨張したときに、小膨張部10bに配置される部分から大膨張部10aに配置される部分にかけて、膨張時の太さがほぼ一定となるように構成されている。即ち、この実施の形態では、小膨張部10bにおいては、メッシュウェビング22によりバッグ21の膨張が拘束され、これにより、エアベルト10が膨張したときの小膨張部10bの太さが大膨張部10aの太さよりも小さくなるように構成されている。なお、バッグ21自体の膨張時の太さが、小膨張部10bに配置される部分と大膨張部10aに配置される部分とで変わるように構成してもよい。
【0031】
次に、バッグ21を構成する織物30について説明する。
【0032】
前述の通り、この織物30は、偏平袋状に織られたものである。この織物30は、平たく展延された状態においてバッグ21の一方の面を構成する第1の層31a、及び、該バッグ21の他方の面を構成する第2の層31bを有し、これらの層31a,31b同士の間にガスが導入される複層部31と、該複層部31の各層31a,31bの織り端同士が連なる単層部32とを有しており、該複層部31から単層部32にかけて一連一体に織られたものである。
【0033】
複層部31においては、この織物30は、袋織りにより筒状に織られている。単層部32は、この複層部31の筒軸心線方向の両端側にそれぞれ設けられている。各単層部において、織物30は、袋とじ織りにより、筒状の複層部31の筒軸心線方向の両端部をそれぞれ閉じるように織られている。即ち、この織物30にあっては、複層部31の筒軸心線方向の両端側にのみ単層部32が設けられており、それ以外の複層部31の内周面及び外周面には、実質的に、単層部32が存在しない。
【0034】
複層部31において織物30を筒状に織る場合、該織物30の周方向の両端側の織り端同士をセルベッジシステムIII又はV方式にて結合することが好ましい。このように構成することにより、複層部31の内周面及び外周面には単層部32を形成することなく、該織物30の周方向の両端側の織り端同士を強固に結合することができる。なお、複層部31における織物30の周方向の織り端同士の結合方法はこれに限定されない。
【0035】
この実施の形態では、織物30のうち、複層部31の筒軸心線方向の一端側(以下、後端側ということがある。)は、単層部32によって全閉状態とされている。この実施の形態では、複層部31の後端側は、該複層部31の筒軸心線方向の他端側(以下、先端側ということがある。)と反対方向に凸に湾曲した形状となっている。複層部31の先端側は、一部が開放状態となっており、残部が単層部32によって閉じられている。この開放状態となっている部分が前記ガス導入口21aである。ガス導入口21aは、複層部31の先端側の筒軸心線方向と直交方向(以下、幅方向ということがある。)の中央付近に配置されている。この実施の形態では、第1の層31a及び第2の層31bの先端部の幅方向の中央付近から後端側と反対方向へそれぞれ舌片状の張出部(符号略)が突設されており、これらの張出部の両側縁同士がシーム21bによって縫合されることにより、管状のガス導入口21aが形成されている。なお、複層部31の両端側の形状やガス導入口21aの形成方法はこれに限定されない。
【0036】
複層部31と単層部32との境界部から、該単層部32の複層部31からの張出方向の先端部までの幅W(第1図(a))は、10mm以上、特に20〜30mmであることが好ましい。
【0037】
エアベルト10は、その乗員との接触領域の全体にわたって、硬さ(剛性)が均一であり、且つ比較的柔軟に変形しうるものであることが望ましい。これを実現するために、バッグ21を折り畳んだときに単層部32,32同士が重なり合う領域ができるだけ少なくなるように、該単層部32の形状や配置等を設定することが好ましい。バッグ21の折畳体において、単層部32,32同士が重なり合っている領域が多くなると、エアベルト10が硬くなり、フィット感が低下するおそれがある。また、エアベルト10のうち、単層部32,32同士が重なり合っている領域と、それ以外の領域との間では、硬さが急激に変化するので、装着者が違和感を感じるおそれがある。
【0038】
バッグ21を折り畳んだときに単層部32,32同士が重なり合う領域を少なくする手法の一例として、この実施の形態では、バッグ21の後端側の単層部32は、前述の通り、該後端側に凸に湾曲した形状とされている。即ち、第4図(a)の通り、このバッグ21の後端側の単層部32と複層部31との境界部は、その複層部31の筒軸心線方向と直交方向の両端側が最もバッグ21の先端側に位置し、該筒軸心線方向と直交方向の中間付近が最もバッグ21の後端側に位置している。なお、この境界部の一端側と他端側とは、該筒軸心線方向に位置がずれていてもよい。以下、このように湾曲した形状の単層部32と複層部31との境界部のうち、最もバッグ21の先端側に位置した部分と、最もバッグ21の後端側に位置した部分との間の該筒軸心線方向における距離を湾曲高さY(第4図(a))という。この単層部32の湾曲高さYは、10mm以上特に50〜150mmであることが好ましい。
【0039】
単層部32がこのように湾曲した形状となっていると、バッグ21を後述のように複層部31の筒軸心線方向の折り線L〜Lに沿って折ったときに、第5図(b)の通り、各折り線L〜Lを挟んで両側に位置する単層部32,32同士の全体が相互に重なり合うことが防止される。これにより、バッグ21を折り畳んだときに単層部32,32同士が重なり合う領域を少なくすることができる。
【0040】
なお、エアベルト10の全体の硬さ(剛性)を均一化する方法は、これに限定されない。
【0041】
例えばニードル織機とジャカード装置又はドビー開口装置(いずれも図示略)とを組み合わせた製織装置により、複層部31と両単層部32,32が一連一体に織られた織物30を製造することができる。また、この製織装置により、複層部31と単層部32とを交互に織ることにより、バッグ複数個分の織物30を連続して織ることができる。なお、織物30を製造するための製織装置の構成はこれに限定されない。
【0042】
第6図(a)の通り、この製織装置により連続して織られた織物30をバッグ1個分ずつにカットし、次いで、第6図(b)の通り、この織物30の筒軸心線方向の両端側の両単層部32,32を所定のバッグ形状に裁断する。なお、この織物30のバッグ1個分の切り出しと、バッグ形状への裁断とを同時に行ってもよい。次に、必要に応じ、この織物30の外面にコーティングや補強布(図示略)の取り付け等を行う。次に、ガス導入口21aを介してこの織物30を表裏反転させることにより、第6図(c)のように単層部32が内側に配置されたバッグ21が完成する。
【0043】
なお、前述のガス導入口21aを形成するためのシーム21bによる縫合は、織物30の反転前に行ってもよく、反転後に行ってもよい。補強布の取り付けは、このシーム21bにより行ってもよい。バッグ21を製造するに当り、織物30は表裏反転されなくてもよい。
【0044】
このようにして製造されたバッグ21は、第5図の通り、細長い帯状の折畳体となるように折り畳まれる。この実施の形態では、バッグ21は、複層部31の筒軸心線方向の折り線L〜Lに沿って複数回ジグザグに折られることにより、細長い帯状の折畳体とされている。なお、バッグ21の折り畳み方法はこれに限定されない。例えば、バッグ21は、複層部31の筒軸心線方向と交差方向の折り線(図示略)に沿っても折られてもよい。
【0045】
このバッグ21の折畳体は、複層部31の筒軸心線方向がエアベルト10の長手方向と略平行方向となり、且つガス導入口21aがエアベルト10の下端側となるように配設され、該ガス導入口21aがタング13の前記ノズル13bに接続されて、メッシュウェビング22によって覆われている。
【0046】
このエアベルト10を備えたエアベルト装置の作動は次の通りである。
【0047】
車両の衝突時や横転時等にインフレータ17が作動すると、バッグ21内にガスが導入され、バッグ21が膨張する。このとき、カバー23が開裂すると共に、テアシーム25が破断して該バッグ21の膨張を許容する。
【0048】
このバッグ21の膨張に伴い、メッシュウェビング22がその周方向に伸長する。このメッシュウェビング22は、前述の通り、その周方向には柔軟に伸長するが、長手方向には殆ど伸長しない。そのため、バッグ21の膨張に伴ってメッシュウェビング23が拡径すると、メッシュウェビング23の長さが短くなる。これにより、エアベルト10及びウェビング14にプリテンションが加えられる。
【0049】
これにより、乗員が座席に拘束される。また、ショルダーベルト部から乗員に加えられる衝撃が、膨張したバッグ21によって緩和される。
【0050】
この実施の形態では、エアベルト10の上端側が大膨張部10aとなっており、比較的太く膨張するため、この膨張した大膨張部10aにより乗員の頭部を十分に拘束することができる。
【0051】
このバッグ21を有したエアベルト10、及びこのエアベルト10を備えたエアベルト装置により奏される作用効果は、次の通りである。
【0052】
このバッグ21においては、このバッグ21を構成する織物30の複層部31は、袋織りにより筒状に織られている。そして、単層部32は、この複層部31の筒軸心線方向の両端側に配置され、袋とじ織りにより、この筒状の複層部31の両端部をそれぞれ閉じるように織られている。即ち、このバッグ21にあっては、複層部31の筒軸心線方向の両端側にのみ単層部32が形成されており、それ以外の複層部31の内周面及び外周面には、実質的に、単層部32が存在しない。そのため、全周に単層部が形成された特許文献2のバッグに比べて、バッグ21を折り畳んだときに、複層部31と単層部32とが重なる部分を少なくすることができる。これにより、バッグ21の折畳体をコンパクトなものとすることができる。また、バッグ21の折り畳み作業自体も容易化される。
【0053】
特に、この実施の形態のように、バッグ21を、複層部31の筒軸心線方向がその折畳体の長手方向となるように折り畳むことにより、複層部31に単層部32が重なることが殆ど又は全くなくなるので、バッグ21を十分にコンパクトに折り畳むことができる。
【0054】
エアベルト10は、このバッグ21の折畳体を有したものである。これにより、エアベルト10の全体の厚さや太さも比較的小さくすることが可能となり、エアベルト10の収納性や装着感をより良好なものとすることができる。
【0055】
[バッグ21の別の折り畳み方法の一例]
第7図(a)は、バッグ21の別の折り畳み方法の一例を示す平面図であり、第7図(b)は第7図(a)のB−B線に沿う断面図である。
【0056】
この実施の形態では、バッグ21は、複層部31の筒軸心方向の長さ(以下、単に長さということがある。)が小さくなるように折られた後、前述の実施の形態と同様に、該筒軸心線方向の折り線L〜Lに沿って折られて細長い折畳体とされる。
【0057】
この実施の形態では、第7図(a),(b)の通り、バッグ21の後端側を該バッグ21の内方且つ該バッグ21の先端方向に折り込むことにより、該バッグ21の長さを小さくしている。
【0058】
バッグ21のその他の構成、及び、このバッグ21を備えたエアベルト10の構成、並びに、このエアバッグ10を備えたエアベルト装置の構成は、前述の実施の形態と同様であり、第7図(a),(b)において第1〜6図と同一符号は同一部分を示している。
【0059】
このバッグ21にあっては、前述の通り、複層部31の筒軸心線方向の両端側にのみ単層部32が形成されており、それ以外の複層部31の内周面及び外周面には、実質的に、単層部32が存在しない。そのため、上記の通りバッグ21の後端側を該バッグ21の内方且つ該バッグ21の先端方向に折り込んだときに、全周に単層部が形成された特許文献2のバッグに比べて、該バッグ21をコンパクトに折り畳むことができる。また、その折り込み作業自体も容易に行うことができる。
【0060】
上記の実施の形態は、本発明の一例を示すものであり、本発明は上記の構成に限定されない。
【0061】
例えば、上記の実施の形態では、エアベルト10は、乗員の上半身の前面側を斜めに引き回されるショルダーベルト部を構成するものであるが、乗員の腰部付近の上側を左右方向に引き回されるラップベルト部を構成するものであってもよい。
【符号の説明】
【0062】
10 エアベルト
11 ラップベルト
13 タング
14 ウェビング
15,16 リトラクタ
17 インフレータ
21 バッグ
22 メッシュウェビング
23 カバー
30 織物
31 複層部
31a 第1の層
31b 第2の層
32 単層部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏平袋状に織られた織物よりなり、内部にガスが導入されることにより膨張するバッグであって、
該織物は、
平たく展延された状態において該バッグの一方の面を構成する第1の層、及び、該バッグの他方の面を構成する第2の層を有し、これらの層同士の間にガスが導入される複層部と、
該複層部の各層の織り端同士が連なる単層部と
を有しており、
該複層部から単層部にかけて一連一体に織られたものであるバッグにおいて、
該複層部において、該織物は、袋織りにより筒状に織られており、
該単層部は、該複層部の筒軸心線方向の両端側にそれぞれ配置されており、
該単層部において、該織物は、袋とじ織りにより、筒状の該複層部の筒軸心線方向の両端部をそれぞれ閉じるように織られていることを特徴とするバッグ。
【請求項2】
請求項1において、
前記複層部において、前記織物の周方向の両端側の織り端同士がセルベッジシステムIII又はV方式にて結合されていることを特徴とするバッグ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のバッグを帯状に折り畳んでなる折畳体と、
該バッグの折畳体を覆ったカバー体と
を有しており、
該バッグは、前記複層部の筒軸心線方向を該折畳体の長手方向として配置されていることを特徴とするエアベルト。
【請求項4】
請求項3に記載のエアベルトと、
該エアベルトの前記バッグを膨張させるためのインフレータと
を備えたエアベルト装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−107495(P2013−107495A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−253935(P2011−253935)
【出願日】平成23年11月21日(2011.11.21)
【出願人】(306009581)タカタ株式会社 (812)
【Fターム(参考)】