説明

バッテリシステムおよび自動車

【課題】ハイブリッド車または電気車両の乗り心地、性能、走行距離を改善する。
【解決手段】ハイブリッド車または電気車両の電気モータを駆動するための少なくとも1つのバッテリを有するバッテリシステムで、電気モータを有する自動車、特に、ハイブリッド車または電気車両の乗り心地、性能、および/または走行距離を改善するために、バッテリシステムは、交換可能な構成要素バッテリシステム(10)を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド車または電気車両の電気モータを駆動するための少なくとも1つのバッテリを有するバッテリシステムに関する。本発明はまた、バッテリシステムにより駆動できる電気モータを有する自動車に関する。本発明はまた、移動可能なトランク室床部により、底面において範囲を定められるトランク室を有し、トランク室床部の下に配置された電源を有する自動車に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、少なくとも1つの輸送用コンテナを有する車両収納室用に、本体がスーツケース状に中空の態様で設計されたカバーが開示されており、輸送用コンテナは、中空本体の一体部品であり、少なくともスーツケースの蓋とスーツケースのベース部との間に積み荷を収容するように設計されている。スーツケースの蓋はスーツケースのベース部に対して回動することができる。スーツケースの蓋またはスーツケースのベース部は、少なくとも1つのバッテリ、または少なくとも1つの充電式バッテリを収容するように設計された少なくとも1つのポケットを有する。スーツケースの蓋は、スーツケースのベース部に対して様々な回動位置でロックすることができる。特許文献2には、ハウジングを有する車両用収納室が開示されており、そのハウジングは、上縁領域で、少なくとも、ハウジングから、後部部分に結合された収納室縁部まで延びる荷積み床カバー用の支持面を形成する。このように、例えば、バッテリが取り付けられた収納室をより効率的に利用して、さらなる積み荷を収容することができる。特許文献3は、トランク室と、下にエネルギ貯蔵システムが配置されたトランク室床部とを有する自動車が開示されており、前記エネルギ貯蔵システムは、外側バッテリハウジングの下に見えないように配置された1つまたは複数のバッテリを含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】欧州特許第1 012 002B1号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第2 033 846A2号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第10 2009 009 150A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、電気モータを有する自動車、特に、ハイブリッド車または電気車両の乗り心地、性能、および/または走行距離を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
ハイブリッド車または電気車両の電気モータを駆動するための少なくとも1つのバッテリを有するバッテリシステムにおいて、上記目的は、バッテリシステムが、交換可能な構成要素バッテリシステムを含むことで達成される。本発明の重要な態様によれば、バッテリシステム全体は交換できないが、構成要素バッテリシステムのみ交換できる。交換可能な構成要素バッテリシステムを使用して、例えば、ハイブリッド車または電気車両の走行距離を増減させることができる。ハイブリッド車または電気車両の運転者は、旅行の前、または旅行中に、必要なのは比較的大きいバッテリ容量か、または比較的小さいバッテリ容量かに関して検討し、決定することができる。構成要素バッテリシステムを交換することで、単純な態様で、繰り返して、素速く、かつ、時間のかかる充電なしに、ハイブリッド車または電気車両に新たなエネルギを供給することができる。所要エネルギが比較的少ない場合、構成要素バッテリシステムを完全に取り外して、重量と、したがって、ハイブリッド車または電気車両のパワー−ウエイトレシオ(power-weight ratio)とをそれぞれ低減することができ、ハイブリッド車または電気車両の収納室のサイズを増やすことができる。さらに、様々な出力−エネルギ特性をもつエネルギ貯蔵手段を構成要素バッテリシステムに使用することができる。したがって、E−システム(E−system)は、時には出力を対象とし、時にはエネルギ容量を対象として装備することができる。
【0006】
バッテリシステムの好ましい例示的な実施形態は、交換可能な構成要素バッテリシステムが、電源バッテリのほかに設けられた、少なくとも1つの交換可能な補助バッテリを含むことを特徴とする。電源バッテリは、電気車両またはハイブリッド車に電力を供給する働きをする。補助バッテリは、電気車両またはハイブリッド車に選択的に挿入するか、またはこれから取り外すことができる。補助バッテリが挿入されると、電気車両またはハイブリッド車は走行距離がより長くなる。補助バッテリが挿入されないと、電気車両またはハイブリッド車はより軽くなって、より活動的に動くことができ、かつ/または有効なトランク空間がより広くなる。
【0007】
本発明はまた、上記に説明したバッテリシステムで駆動できる電気モータを有する自動車に関する。自動車は、ハイブリッド車または電気車両であるのが好ましい。
【0008】
移動可能なトランク室床部によって、底面において範囲を定められるトランク室を有し、トランク室床部の下に配置された電源を有する自動車の場合、上記の目的は、上記のバッテリシステムの少なくとも1つの補助バッテリ用の収容空間が、トランク室床部の下に設けられることで達成される。「底面で」とは、自動車が地面上にある場合に地面に近い方を意味する。
【0009】
自動車の好ましい例示的な実施形態は、必要に応じて収容空間のサイズを変えるために、トランク室床部を垂直方向に調整できることを特徴とする。トランク室床部は、例えば、2つの極限位置の間を移動可能な態様で案内される。
【0010】
自動車のさらに好ましい例示的な実施形態は、荷積み位置で、トランク室を可能な最大容積にするために、トランク室床部が一番深い底に配置されることを特徴とする。トランク室床部が荷積み位置にある場合、収容空間はゼロまで縮小される、すなわち、増設バッテリは収容空間に配置されない。
【0011】
自動車のさらに好ましい例示的な実施形態は、バッテリ位置で、補助バッテリが収容空間に収容されるような範囲までトランク室床部を上方に移動させることを特徴とする。補助バッテリを収容する収容空間は、トランク室床部によってトランク室から分離される。
【0012】
自動車のさらに好ましい例示的な実施形態は、トランク室床部を手動で垂直方向に調整できることを特徴とする。トランク室床部は、その荷積み位置およびそのバッテリ位置に簡単な態様で固定できることが好ましい。必要ならば、例えば、様々な大きさの補助バッテリを収容できるように、トランク室床部を中間位置で固定することもできる。
【0013】
自動車のさらに好ましい例示的な実施形態は、モータによりトランク室床部を垂直方向に調整できることを特徴とする。例えば、電気モータ、特に作動モータにより、場合によっては適切なギヤ機構を使用して、トランク室床部を調整することができる。
【0014】
自動車のさらに好ましい例示的な実施形態は、補助バッテリを挿入するか、または取り外すか、または交換するために、収容空間に下から出し入れできることを特徴とする。このために、収容空間は、底面に開口を有することができ、補助バッテリは前記開口を通る。この開口は、例えば、取り外し可能な、または回動可能なカバーにより閉じることができる。
【0015】
図面を参照して例示的な実施形態を詳細に説明する以下の説明から、本発明のさらなる利点、特徴、および詳細を知ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】トランク室および荷積み位置にあるトランク室床部を有する自動車のきわめて簡略化した図を示している。
【図2】トランク室床部がバッテリ位置にある、図1と同じ図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1および図2は、車両本体2を有する自動車1を、きわめて簡略化した態様で示している。車両本体2は、トランク室の蓋5によって閉じられているトランク室4を含む。トランク室の蓋5は、回動軸6のまわりで回動して、トランク室4を開くことができる。
【0018】
トランク室4は、底部の方にある、すなわちトランク室の蓋5から離れた、高さが調整可能なトランク室床部8によって範囲を定められる。トランク室床部8を垂直方向に調整するので、トランク室の蓋5の前記トランク室床部からの距離、ひいてはトランク室4の容積を変えることができる。
【0019】
図1では、トランク室床部8は、トランク室の蓋5から最大限に離れて配置されるその荷積み位置にあって、一番深い底に配置されている。したがって、トランク室4はその最大容積になった状態にある。
【0020】
図2では、トランク室床部8は、上方に、すなわち、トランク室の蓋5の方に向かって移動されて、バッテリ位置にある。その結果として、トランク室4の容積はかなり縮小されている。同時に、収容空間9が、トランク室床部8の下に形成され、前記収容空間は、構成要素バッテリシステム10を収容する役目を担う。構成要素バッテリシステム10は、トランク室床部8の下の収容空間9に配置された補助バッテリ12を含む。
【0021】
構成要素バッテリシステム10は、電源バッテリを含むバッテリシステムの一部であり、電源バッテリは、ハイブリッド車または電気車両として設計されるのが好ましい自動車1の電気モータに電力を供給する働きをする。
【0022】
バッテリシステムの電源バッテリは、自動車1に長期的に設置されるのが好ましい。それに対して、構成要素バッテリシステム10の補助バッテリ12は、収容空間9から取り外したり、または別の補助バッテリと交換したりすることができる。補助バッテリ12を収容空間9から取り外した場合、トランク室床部8を、図1に示したその荷積み位置まで下げることができる。
【0023】
収容空間9は、補助バッテリ12を挿入したり、または取り外したりするために下から出し入れできるのが好ましい。このために、適切な開口が、トランク室床部8の下で車両本体2に設けられ、前記開口の大きさは、補助バッテリ12の大きさに合致する。開口はカバーで閉じることができる。したがって、トランク室4の大部分は、図1に示すように、収納空間としてか、または図2に示すように、補助バッテリ12用の収容空間9としてかのいずれかで使用することができる。
【符号の説明】
【0024】
10 構成要素バッテリシステム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハイブリッド車または電気車両の電気モータを駆動するための少なくとも1つのバッテリを有するバッテリシステムであって、
交換可能な構成要素バッテリシステム(10)を含むことを特徴とする、バッテリシステム。
【請求項2】
前記交換可能な構成要素バッテリシステム(10)は、電源バッテリのほかに設けられた、少なくとも1つの交換可能な補助バッテリ(12)を含むことを特徴とする、請求項1に記載のバッテリシステム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のバッテリシステムによって駆動できる電気モータを有する自動車。
【請求項4】
移動可能なトランク室床部(8)により、底面において範囲を定められるトランク室(4)を有し、前記トランク室床部(8)の下に配置された電源を有する自動車であって、
請求項2に記載のバッテリシステムの少なくとも1つの補助バッテリ(12)用の収容空間(9)が、前記トランク室床部(8)の下に設けられることを特徴とする自動車。
【請求項5】
前記トランク室床部(8)は、必要に応じて、前記収容空間(9)のサイズを変えるために垂直方向に調整できることを特徴とする、請求項4に記載の自動車。
【請求項6】
荷積み位置では、前記トランク室床部(8)が、前記トランク室(4)を可能な最大容積にするために、一番深い底に配置されることを特徴とする、請求項5に記載の自動車。
【請求項7】
バッテリ位置では、前記トランク室床部(8)が、前記補助バッテリ(12)が前記収容空間(9)に収容されるような範囲まで上方に移動されることを特徴とする、請求項5または請求項6に記載の自動車。
【請求項8】
前記トランク室床部(8)は、手動で垂直方向に調整できることを特徴とする、請求項5〜7のいずれか一項に記載の自動車。
【請求項9】
前記トランク室床部(8)は、モータで垂直方向に調整できることを特徴とする、請求項5〜7のいずれか一項に記載の自動車。
【請求項10】
前記収容空間(9)は、前記補助バッテリ(12)を挿入するか、または取り外すか、または交換するために、下から出し入れ可能であることを特徴とする、請求項4〜9のいずれか一項に記載の自動車。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−143919(P2011−143919A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−291831(P2010−291831)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(508174975)ドクトル イング ハー ツェー エフ ポルシェ アクチエンゲゼルシャフト (134)
【氏名又は名称原語表記】Dr. Ing. h.c. F. Porsche Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Porscheplatz 1, D−70435 Stuttgart, Germany
【Fターム(参考)】