バッテリパックガス排出システム
【課題】熱暴走によるセルからの高温ガス発生時の危険性を低減する。
【解決手段】熱管理システムはバッテリパック内の熱暴走の影響を最小にする。システムは複数のバッテリを保持するように構成された、複数の側面を有し実質的に気密なバッテリパック包装を備える。バッテリパック包装の少なくとも1つの側部材は少なくとも1つの空洞を有する。バッテリパック包装の内壁は、バッテリパック包装内から少なくとも1つの側部材内の空洞へガスを通過させるように構成された複数の穴を有する。システムはバッテリパック包装の外壁に組み入れられ、バッテリ内に収容される1以上のバッテリが熱暴走に陥ったときに、バッテリパック包装の側部材の空洞内から外気へガスを通過させるように構成された少なくとも1つのガス排出ポートをさらに備える。
【解決手段】熱管理システムはバッテリパック内の熱暴走の影響を最小にする。システムは複数のバッテリを保持するように構成された、複数の側面を有し実質的に気密なバッテリパック包装を備える。バッテリパック包装の少なくとも1つの側部材は少なくとも1つの空洞を有する。バッテリパック包装の内壁は、バッテリパック包装内から少なくとも1つの側部材内の空洞へガスを通過させるように構成された複数の穴を有する。システムはバッテリパック包装の外壁に組み入れられ、バッテリ内に収容される1以上のバッテリが熱暴走に陥ったときに、バッテリパック包装の側部材の空洞内から外気へガスを通過させるように構成された少なくとも1つのガス排出ポートをさらに備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概略的にバッテリに関し、特にバッテリパックの熱的事象に関連した影響と危険を緩和する手段に関する。
【背景技術】
【0002】
バッテリには広い範囲のタイプ、化学的性質および構造があり、これらはそれぞれ固有の利点と弱点がある。二次バッテリとも呼ばれる充電可能なバッテリにおいて、主な欠点の1つは比較的不安定であることであり、このため、これらのセルが製造、保管および使用において特殊な取扱いを必要とすることになる。さらに、いくつかのセルの化学物質、例えばリチウムイオン二次セルは、他の一次および二次セルの化学物質よりも熱暴走しやすい傾向にある。
【0003】
発散する熱よりも多くの熱が発生して、反応速度と発熱の両方においてさらに増加する点までバッテリの内部反応速度が増加したときに、熱暴走は起きる。結局、発生した熱の量は、バッテリに近接した材料とバッテリを燃焼させるのに十分なだけ大きい。熱暴走はセル内の短絡、不適切なセルの使用、物理的な誤用、製造の欠陥、あるいはセルの極度な外部温度への露出によって始まるかもしれない。
【0004】
熱暴走の初期の段階において、熱暴走が発生しているセルは、増加した反応速度と、システムが熱を十分に高速で発散させることができないこととにより、ますます高温になる。セル内の温度が高くなると、圧力も高くなる。多くのセルに組み入れられた安全圧力開放装置は反応によって発生したガスのいくらかを解放させることを助けるかもしれないが、結局は、増加したセル圧力と増加した温度とにより、セルのケーシング内に穴があくこととなる。セルのケーシングに穴があくと、上昇したセル内の圧力によってさらに高温のガスがその場所に向けられ、この場所と隣接した場所におけるセルを危険にさらす。
【0005】
熱暴走の事故におけるセルの温度上昇がその事故に近接した材料に損傷を与え、かつその事故の隣接したセルへの伝播を導くのに十分である一方、高温ガスがセルの閉空間、つまりバッテリパックの閉空間から漏れ出て初めて、人への危険と財産の損傷が重大になる。これは、事故が閉じ込められている間に事故によって発生したガスが主に二酸化炭素と炭化水素の蒸気から成るからである。この結果、事故に近接した可燃材料の自然発火温度(AIT)は比較的高い。しかし、このガスがセル/バッテリパックの閉空間から出て、外気に含まれる酸素に接触すると、これらの同じ材料のAITが著しく低下し、自然発火に導くこととなる。広範囲にわたる二次的な財産の損傷が起きやすく、より重要なことに、車両を離れた車両の乗客、あるいは事故を制御しようと試みる第1応答者に対する危険が極めて重大となることは、事故のサイクルにおけるこの点である。
【0006】
したがって、セルあるいは熱暴走が起きているセルからの高温ガスの流出をできるだけ遅らせ、そして高温ガスの外気への排出を制御することが望ましい。同様に、高温ガスが外気に達する前に高温ガスの温度を下げて、事故に近接した材料の自然発火の可能性を下げるとともに、旅客、傍観者、第1応答者に対する危険を減少させることが望ましい。本発明はこれらの目的を達成するシステムと方法を提供し、二次損害と第1応答者等に対する危険とを制限する。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、バッテリパック内に収容された1以上のバッテリ内に発生する熱暴走の影響を最小にするための熱管理システムを提供する。本発明によると、システムは、複数のバッテリを保持するように構成された、複数の側面を有し実質的に気密なバッテリパック包装を備え、バッテリパック包装の少なくとも1つの側部材は少なくとも1つの空洞を有し、バッテリパック包装の内壁は、ガスをバッテリパック包装内から前記少なくとも1つの側部材の少なくとも1つの空洞へ通過させるように構成された複数の穴を有する。穴は、予め定められた圧力で破損するように設計されたシール層あるいはワンウェイバルブを有してもよい。本発明のシステムは、バッテリパック包装の外壁に組み込まれ、かつ少なくとも1つの空洞に連通した少なくとも1つのガス排出ポートを備え、少なくとも1つのガス排出ポートは、1以上のバッテリが熱暴走に陥ったときに、少なくとも1つの空洞内からバッテリパック包装の外部にある外気へガスを通過させるように構成される。排出ガスポートは、通常の動作条件では排出ポートをシールし、熱暴走の間は開放して、少なくとも1つの側部材内の少なくとも1つの空洞からのガスを外気へ排出されるキャップ組立体を備えてもよい。キャップ組立体は、単独で、あるいは熱暴走の事故のときは溶けるように構成されたバルブ取付け部材と協働するワンウェイバルブを備えてもよい。キャップ組立体は熱暴走の事故のときに溶けるように構成されたカバーを備えてもよい。排出ポートは排出ポートを介して排出される高温ガスの流動を偏向させるノズルを備えてもよい。
【0008】
少なくとも1つの実施形態において、バッテリパック包装の少なくとも1つの側部材内の少なくとも1つの空洞は相互に分離した少なくとも第1および第2の空洞を備える。この実施形態において、複数の穴はバッテリパック包装内から第1の空洞へガスを通過させるように構成され、バッテリパック包装の内壁に含まれる第2の複数の穴はバッテリパック包装内から第2の空洞へガスを通過させるように構成される。好ましくは同じガス排出ポートが第1および第2の空洞に連結される。第1および第2の複数の穴はそれぞれ、予め定められた圧力で破損するように構成されたシール層あるいはワンウェイバルブを有してもよい。
【0009】
少なくとも1つの実施形態において、4つのバッテリパック包装の側部材は少なくとも1つの空洞を有し、各側部材内の少なくとも1つの空洞は他の側部材内の少なくとも1つの空洞に連通する。好ましくは、複数の穴の一部は4つのバッテリパック包装の側部材のそれぞれの内壁に設けられる。
【0010】
少なくとも1つの実施形態において、バッテリパック包装は、バッテリパック包装の外部にありバッテリパック包装から分離した熱質量に、機械的かつ熱的に連結されるように構成される。側部材内の空洞を通過するガスの熱エネルギーは熱伝導および熱放射を介して側部材から熱質量へ伝達される。熱質量は、バッテリパックが組み入れられる電気自動車の1以上の構造部材(例えばロッカパネル)であってもよい。
【0011】
少なくとも1つの実施形態において、バッテリパック包装は、複数のバッテリをバッテリのグループに分離する複数の交差部材をさらに備える。好ましくは交差部材は、各交差部材の両側に位置するバッテリのグループ間における熱の伝達に対して熱バリアとなる。交差部材は1以上の空洞を有してもよい。交差部材内の空洞は何も有さないか、高融点かつ低熱伝導の材料で満たされるか、流れない流体(例えばパウチ内に収容される)で満たされるか、または管(例えば冷却管)内に収容された液体で満たされてもよい。
【0012】
本発明の本質および利点のさらなる理解は明細書の残りの部分と図面を参照することにより明白となるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】高温ガスと物質のバッテリパック内に発生する熱的事象からの解放を制御するように設計されたバッテリパックシステムの基本要素を示す。
【0014】
【図2】本発明によるバッテリパックの斜視図を示す。
【0015】
【図3】図2に示されるバッテリパックを天井部材を除いて示す斜視図を示す。
【0016】
【図4】図2、3に示されるバッテリパックの斜視図を示し、この図はバッテリパック内に配置されたバッテリモジュールのうちの3つを示す。
【0017】
【図5】車両に搭載された図2〜4に示されるバッテリパックの一部の斜視断面図を示す。
【0018】
【図6】図5に示されるバッテリパックと車両構造の一部の断面図を示す。
【0019】
【図7】図2〜6に示されるバッテリパックに用いられる角部材の斜視図を示す。
【0020】
【図8】図7に示される角部材とガス排出ポートの一部の断面図を示す。
【0021】
【図9】図7、8に示されるガス排出ポートの側面図を示す。
【0022】
【図10】図9に示されるガス排出ポートに取付けられたノズルの側面図を示す。
【0023】
【図11】バッテリパックの後方部分の両側に配置されたガス排出ポートの平面図を示す。
【0024】
【図12】図11に示されるガス排出ポートに取付けられたノズルの平面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下の記述において、用語「バッテリ」、「セル」および「バッテリセル」は置換可能に使用され、あらゆる種類の異なる電池類、化学物質および構成を指し、リチウムイオン(例えば、リン酸鉄リチウム、コバルト酸リチウム、他のリチウム金属酸化物等)、リチウムイオンポリマー、ニッケル金属水素化物、ニッケルカドミウム、ニッケル水素、ニッケル亜鉛、銀亜鉛、または他のバッテリタイプ/構成を含み、これらに限定されない。ここで使用される用語「バッテリパック」は、単独のピースまたは複数のピースからなるハウジング内に収容された多数の個々のバッテリを指し、個々のバッテリは特定のアプリケーションにおける所望の電圧および容量を得るために電気的に互いに接続される。ここで使用される用語「電気自動車」は、EVとも呼ばれる全電動自動車、PHEVとも呼ばれるプラグインハイブリッド自動車、あるいはHEVとも呼ばれるノンプラグインハイブリッド自動車を指し、ハイブリッド自動車は、その1つが電気駆動システムである複合駆動源を使用する。複数の図面に用いられる同一の参照符号は同じ要素あるいは等しい機能の要素を示す。さらに添付図面は特許請求の範囲を説明することを意図するだけで限定されるものではなく、また寸法を考慮すべきではない。
【0026】
バッテリパック内の単一のバッテリが熱暴走にあったとき、その事象によって発生した熱エネルギーは遠くまで及ぶ影響の可能性がある。第1に、温度上昇とこれに関連した高温ガスと物質の放出とにより、最初に影響を受けたセルの近くにある他のセルの温度が、これらのセルを熱暴走の状態に陥らせるのに十分に上昇するかもしれず、このことは他のセルを熱暴走に導く。したがって最初の熱的事象はバッテリパックを介して伝播し、これはパック内においてもっと大きな熱的事象を導く。第2に、パック内のセルが熱暴走に陥ったとき、これに伴う圧力上昇がバッテリパックの包装の大きな破損をもたらすかもしれない。バッテリパックの包装が所定の圧力で破損するように設計された1以上の破損ポイントを含んでいないと、この損傷ポイントは未知であり、このために任意の破損ポイントが発生することに従って、旅客、傍観者、第1応答者にとって危険が増すこととなる。第3に、バッテリパックから漏れ出たガスと物質の温度がその解放よりも前に低下しないと、その解放場所に近いところにおける可燃物質のATIが著しく減少し、自然発火に達するかもしれない。このように、退出口が旅客、傍観者、あるいは第1応答者の近くに位置していると、その結果は悲惨である。
【0027】
これらの問題を解決するために、また図1に概略的に図示されるように、本発明は熱的事象を伴う高温ガスと物質の放出を、解放された物質の解放場所と温度の両方の点において制御する。このシステムはある電気自動車すなわち電気自動車100に実施されるが、図示された概念および構造はより大きなバッテリパック(例えば船、住宅あるいは商業的バッテリシステム等)を用いた他のシステムに使用可能である。図示の目的のため、図1に示される駆動システムはトランスミッション/ディファレンシャル・アセンブリすなわちドライブトレイン101を介して駆動軸に連結された単一の電気モータを用いる。本発明は一方あるいは両方の軸に連結された多数のモータを使用する車両に同様に応用可能である。同様に、本発明は特別なタイプ/構造のトランスミッション(例えば単速、変速)あるいは特別なタイプ/構造のディファレンシャル(例えばオープン型、ロック型あるいはノンスリップ型)に限定されない。
【0028】
ドライブトレイン101は動力制御モジュール105を介してバッテリパック103に連結され、モジュール105は典型的にはDC/ACコンバータを含む。動力制御モジュール105は電気モータに伝達される動力が所望の電圧、電流、波形等を有することを保証する。このような動力制御モジュール105は受動パワーデバイス(例えばトランジェントフィルタリングキャパシタおよび/またはインダクタ)、能動パワーデバイス(例えば半導体および/または電気機械的スイッチングデバイス)、検出装置(例えば電圧、電流および/またはパワーフローセンサ等)、論理制御装置、通信装置等からなる。
【0029】
バッテリパック103は複数のバッテリからなる。少なくとも1つの実施形態において、バッテリパック103内に収容されるバッテリはモジュールに分離され、所望の電気的設計および性能の目標に合致させつつ製造および修理を簡単にする。図1には単一の典型的なバッテリ107のみが示される。
【0030】
本発明によれば、バッテリパック包装の一部は窪んだ構造要素を含む。例えば、好ましい実施形態では、以下に詳述するようにバッテリパック103の側部材109は窪んでおり、少なくとも1つの凹み111を含み、これはこの明細書ではルーメンとも称する。側部材109の内壁113は、バッテリパック103の内部とルーメン111の間におけるガスの流通を許容する複数の穴115を含む。
【0031】
熱的事象の間、例えばセル107において発生したもの、事象によって発生したガスと物質がバッテリパック103の窪んだ構造要素109内に形成された穴115を通って凹み111内に入る。そしてガスは、凹み111を通り、例えば通路121をたどることにより、1以上のバッテリパックガス排出ポート119へ流れ、ガスはバッテリパックから流出する。好ましくは、排出ポートは図示しないカバーあるいはバルブを含み、これらはバッテリパック内における熱的事象の出現まで閉塞状態を維持することを保証する。本発明の少なくとも1つの実施形態において、ポート119はノズルを含み、これは、漏れ出るガスにぶつかる可能性のある場所と同様に客室からガスの流れを遠ざけることによって、旅客、傍観者および第1応答者に対するリスクを最小限にする。さらに、好ましくは各ポート119のノズルは、高温ガスの流れを車両の損傷を最小にするように意図された方向に向ける。
【0032】
バッテリパック103の制御されたガス排出通路を設けることに加えて、本発明はまた、ガス排出ポート119を通って漏れ出る前にガスの温度を著しく低下させることにより、潜在的な損傷を最小にすることを補助する。より十分に以下に説明するように、パック103の窪んだ構造要素109は車両100内の主構造123に機械的かつ熱的に結合される。この結果、熱的事象の間に発生した高温ガスはルーメン111を通過し、熱は大きな熱質量123に引かれて伝達され、これによりガスがバッテリパックの空間から去る前にガスの温度を下げる。
【0033】
図2は本発明によるバッテリパック200の斜視図である。この図において、バッテリパックは天井部材201によって閉塞されて示される。窪んだ側部構造要素203も示されており、この部材203は、側部材203を車両構造(図示せず)に機械的かつ熱的に連結するために用いられる拡張領域すなわちリップ205を含む。図3は天井部材201を除去したバッテリパック200を示す。この図では、いくつかの交差部材301が示される。交差部材301はいくつかの利益をもたらす。例えば、部材301はバッテリパックに機械的、構造的な強度をもたらす。さらに、部材301は車両の性能(例えば車両の剛性、車両の衝撃抵抗等)を改善するようにして、車両の構造内に一体化されるように設計されてもよい。本発明に関して交差部材301は、セクション303間のガスの流動を最小にするとともにセルのグループ間に熱バリアを設けることによって、熱的事象を分離することを助け、セクション303は交差部材301、側部材203、天井部材201および底部材305によって区画される。熱的事象をセル内の小さいグループ内で分離することによって、バッテリパックの損傷の可能性と同様に、熱暴走の伝播が制限される。さらに、熱暴走がバッテリパックを通して広がる程度を制限することにより、バッテリパックの排出ポート119を通る高温ガスと物質の量も制限され、これは、延いては人的損傷と財産の損害の危険性を制限することとなる。
【0034】
交差部材301は、図3、5に示されるように好ましくは、単一のユニットすなわち上方部材301(a)および下方部材301(b)から成ってもよい。これらの一方あるいは両方の部材は窪んでいてもよく、最小の重量で所望の剛性と強度を達成する。図示された実施形態では、上方の交差部材301(a)はそれぞれ単一のルーメンを含み、下方の交差部材301(b)はそれぞれ3つのルーメンを含む。好ましくは、交差部材301(例えば上方の交差部材301(a)と下方の交差部材301(b))は押出し成形を用いてアルミニウムあるいはアルミニウム合金から成形される。交差部材のために定められた熱的および機械的設計の目標に応じて、この構成の変形が用いられてもよいことが理解されるであろう。例えば、金属を使用するよりもむしろ、交差部材301は高融点で、かつ低い熱伝導率の材料(例えばセラミック)から成形されてもよい。代替的に、交差部材301内のルーメンは高融点で、かつ低い熱伝導率の材料(例えばファイバグラスあるいは同様な材料)で満たされてもよい。代替的に、交差部材内のルーメンは液体(例えば水)を含んでもよく、液体は流れないか流れる。流れないならば、液体はルーメン自体の中に収容されてもよく、あるいは好ましくは、ルーメンの中に嵌合されたパウチの中に収容されてもよい。液体が流れるのであれば、好ましくは、交差部材のルーメンの中に挿入された管の中に収容され、バッテリ冷却システムに連結されるか、スタンドアロンの循環システムに用いられる。
【0035】
図4は数個のセルモジュール401を配置した好ましいバッテリパック200を示している。図示されるように、単一のモジュール401がバッテリパック200の7つの大きいセクション303の1つに配置されて示されている。なおこれらのセクションのそれぞれは一対のバッテリパックモジュール401を収容するように設計されている。さらに、この図では、2つのモジュール401がパック200のフロントセクション307の中において重ねられる。なお、好ましい実施形態では、各モジュールは370のセルを含み、各セルは18650フォームファクターを用いる。しかし、この構成は好ましい実施形態の一例に過ぎず、また本発明は他の構成、例えば異なるフォームファクターのバッテリ、より多いあるいはより少ないセル、個々のセル対モジュール等を有するバッテリを用いる構成にも同様に適用可能であることを理解すべきである。
【0036】
図5は車両の構造部材501に取付けられたバッテリパック200の一部の斜視断面図である。少なくとも1つの好ましい実施形態において車両の構造部材501はロッカーパネルからなる。図6は図5に示されたのと同じ組立体の断面図を示す。これらの図において、底部バッテリパックパネル305が窪んだ側部構造部材505とともに示されている。好ましくは、天井バッテリパックパネル201と同様にバッテリパック要素305、505はそれぞれ、アルミニウムあるいはアルミニウム合金のような軽量金属から製造される。底部パネル305は側部材505に対して、溶接、ろう付け、はんだ付け、接着、あるいは他の手段によって取付けられてもよく、これらによるパネル305と部材505の間の結合は実質的に気密であり、また底部パネル305がパック内に収容されるバッテリを支持するのに十分に強い。天井パネル201は、ボルトあるいは同様な手段を用いて典型的には部材505に取付けられ、これにより、バッテリの交換を簡単にするとともに、バッテリの内部接続、バッテリパック要素、冷却システム要素、および他のバッテリパック要素を修理したり交換することが可能になる。好ましくは、シールまたはガスケットが側部材505の上面601と天井パネル201の底面の間に配置され、これにより実質的に気密シールが達成される。Oリング603がこのようなシールに使用されることが図6に示されている。
【0037】
バッテリパックの好ましい実施形態において、窪んだ側部構造部材505は押出し成形されたアルミニウムあるいはアルミニウム合金から成形される。例示された構成において、バッテリパック200の全ては合致し、かつ整列したルーメンを有し、これにより高温ガスは1つの側部材から隣接する側部材に妨げられることなく流動可能となる。この構成において、一対の排出ポート119は図2に示されるようにいずれかの角部207に設けられる。バッテリパックの周辺の周りの連続的なルーメン構造と一対の排出ポートとを用いることにより、もし1つのポートまたはポート自体への通路が例えば車両の衝突において損傷すると、熱的事象の間に発生した高温ガスは明確な脱出通路を有する。
【0038】
図示されたバッテリパックにおいて、各側部材505は4つのルーメン507−510を有する。上部ルーメン507は第1ガス通路を構成し、内部側壁穴511を介してバッテリパック200の内部に連結される。図示された実施形態において、穴511は15ミリの直径と約55ミリの穴と穴の間隔とを有する。中央のルーメン508は第2ガス通路を構成し、内部側壁穴513を介してバッテリパック200の内部に連結される。図示された実施形態において、穴513は25ミリの直径と約60ミリの穴と穴の間隔とを有する。好ましい設計において、下方の内部ルーメン509は穴をあけられておらず、構造要素としてのみ用いられ、すなわち最小重量で側部材505に対して剛性と強度をもたらす。なお、下方内部ルーメン509は他のガス通路として用いることができるが、熱的事象による破片が側部材505の領域をブロックしやすいので、好ましくない。
【0039】
熱的事象の間、上述したように、熱暴走によって発生した高温ガスは、影響を受けたバッテリを収容するバッテリパックのセクション303に対応した穴(例えば穴511、513)を通過する。交差部材301のシール性能に応じて、高温ガスは隣接するセクション303に対応する穴も通過するかもしれない。図示された実施形態において、バッテリパック部材内の穴、例えば側部材505内の穴511、513は常時開放している。他の実施形態において穴は、1つのセクション303から側部材505を介して異なるセクション303へ高温ガスが流動することが最小になるようにシールされる。穴511、513をシールする1つの方法は、側部材505から逆方向にセクション303に向かうのではなく、セクション303から側部材505に向かって高温ガスが流れることのみを許容するワンウェイバルブ/シールの利用である。代替的に、穴511、513は、隣接するセクション内のバッテリが熱暴走に陥るときには十分に低い融点を有するが、ガスが側部材のルーメン(例えばルーメン507、508)を通って流れるとき、高温ガスが穴を通り過ぎるときに溶融するのを防止するのに十分に高い融点を有する材料でシールされてもよい。この実施形態において好ましくは、各シールは隣接するセクション303からの高温ガスの通過を促進するための小さい開口(例えば1〜3ミリ)を有する。さらに他の実施形態において、穴511、513は、隣接するセクション303内の圧力がシールの破損点を越えたときに破壊するように設計されたシール層によって覆われる。この実施形態において好ましくは、排出ガスポートは非常に早く開放し、これは、ガスが側部材を通って流れるときに、側部材505内の圧力が隣接するセクションにおいてシールを開放するほど十分には上昇しないことを保証する。一時的に穴511、513をシールするための技術に関するさらなる詳細は、同時係属中であり譲受人が共通である、2010年3月30日に出願された米国特許出願第12/798,198号明細書に記載されており、その開示内容はあらゆる目的のために、この明細書中に組み込まれる。
【0040】
下方の外部ルーメン510は側部材505の拡張領域205の下側にある。ルーメン510は上面605および下面607において穴を開けられ、これらの2つの面における穴は、ボルト等の部材がルーメン510を完全に通ることができるように整列している。上面と下面を通ってルーメン510を貫通する図示しないボルトは、側部材505、つまりバッテリパック200を車両の構造部材501にしっかりと取付けるために用いられる。強固な機械的結合をもたらすことに加え、このアプローチにより、バッテリパック200を車両下面100から迅速かつ効率的に外すことができる。
【0041】
車両構造部材501と側部材505、特に拡張領域205との間の強い機械的連結は、高温ガスから側部材へ伝達される熱エネルギーが熱伝導により車両構造体に効率的に伝達される、効率的な熱通路をもたらす。さらに、熱エネルギーは側部材505の側面515と構造部材501の面517との間の熱放射を介して伝達されてもよい。同様に、熱エネルギーは天井パネル201の表面の端部と構造部材501の表面519との間の熱放射を介して伝達されてもよい。したがって、この構成の結果として、熱暴走の間に発生した熱はバッテリパックの側部材505と構造部材501に効率的に伝達され、これにより高温ガスの温度はガスがバッテリパックの閉塞した領域に逃げ込んで外気に放出される前に、顕著に低下する。
【0042】
上述したように、好ましいバッテリパック200の構成において、ガス排出ノズルは後方パックの角部207に取付けられる。図7は第1の側部材505(a)と第2の側部材505(b)に取付けられた角部材701の斜視図である。前述したように、好ましくは各側部材内のルーメンは相互に連結され、これによりガスは側部材の間を流動できる。角部材701の後方にはガス排出ポート703が連結される。この図において、好ましいが選択的なノズルは示されていない。
【0043】
図8はガス排出ポート703において破断した、角部材701の一部の断面図である。図示されるように、好ましい実施形態において、角部材701は単一の空洞801を有し、これにより側部材505の個々のルーメン(例えばルーメン507〜510)がこの単一の空洞部の中に合流できる。ガス排出ポート703は、背圧を最小にして高温ガスのバッテリパックからの流出を確実にするために大きな直径を有する。図示された実施形態において、排出ポートはバルブ803が開放/排出されるとき、50ミリの内部直径を有し、バルブ保持部材805が排出されるとき60ミリの内部直径を有する。なお、通常の使用において、ガス排出ポート703は好ましくは、破片あるいは他の物質が潜在的にポートを塞ぐことを防止するために閉塞される。排出ポートは、熱的事象のときに開放するように構成された、バルブ(例えばバルブ803)、キャップ(例えばキャップ807)、あるいは他の手段によってシールされてもよい。1つの実施形態において、バッテリパック内の熱的事象の圧力と、続いて起こる側部材505と角部701を介する圧力の上昇とによって、通常の作動条件ではポート703と圧力均一化バルブ803をシールするキャップ807を吹き飛ばす。そして、高温ガスが排出ポートを通過するとき、好ましくはプラスチックから成形されるバルブ803が溶け始めるのに十分高くなる。バルブ803は溶け始めたすぐ後、ガスの力によってポートから排出される。好ましい実施形態では、バルブ803は、比較的低い融点の材料例えばプラスチックから製造されたバルブ保持部材805によって排出ポート703内に保持される。このため、排出ポートを通過する高温ガスの温度と体積が十分に大きいと、バルブ保持部材805も溶け、流出する高温ガスによって排出され、これにより排出ポートの空間をさらに増加させる。代替的な実施形態において、排出ポート703は、熱的事象がバッテリパック内で起きていることを示すのに十分なだけ空洞801内の圧力が増加したときに開放するワンウェイバルブを含む。さらに他の代替的な実施形態では、図示されるようにバルブ803を覆うのとは反対に、カバー807のようなカバーが排出ポートに被せられ、カバーはバッテリパック内の熱的事象のときに溶融する低融点材料の比較的薄い層からなる。このカバーは、熱的事象の間に高温ガスが開口を通過することを確実にする、例えば3〜5ミリの非常に小さい開口を有していてもよい。開口を通過する高温ガスの結果、カバーは溶け、ポートを完全に開放する。さらに他の代替的な実施形態では、排出ポートを閉塞する組立体は図8に示される組立体のようである。しかしこの実施形態では、バルブ803は金属から製造され、したがって溶けるようには設計されず、圧力が予め設定された開放圧力を越えるときに単に開放する。高温ガスがバルブを通過するとき、最終的にバルブ保持部材805が溶けるまで高温になり、これによりバルブ803と保持部材805の両方が排出される。
【0044】
単純な排出ポートがパック内で熱的事象の間に発生した高温ガスと物質を逃がすために用いられてもよいが、好ましくはノズルがポートに取付けられる。図9はバッテリパック200の一部の側面図であり、この図は排出ポート703を示す。図10は図9と同様な図を示し、ガス排出ポート703にノズル901が取付けられている。図11はバッテリパック200の一部の平面図を示し、この図は各角部材701に配置された排出ポート703を示す。図12は図11と同様な図を示し、各排出ポートにノズル901が取付けられている。前述したように、好ましくはガス排出ポートはバッテリパックの後方の角部に配置されるが、他の場所、例えばバッテリパックの前方角部、バッテリパックの側部等に取付けられてもよいことが理解される。
【0045】
ノズル901は比較的短く、典型的には12から18センチの範囲であり、熱的事象の間にガス排出組立体703あるいは組立体(例えばキャップ部材807、バルブ803、バルブ保持部材805等)の一部がノズルの中に留まらないことを確実にして、効果的なガスの流れを妨げない。この実施形態において、図10に示されるように、各ノズル901は高温ガスの流れを少し下側すなわち地面に向け、高温ガスが客室、ドライブトレイン、領域(例えば要素903)に配置されたサスペンション要素に衝突して過熱させることを防止する。さらに、排出ポート703が車両の中心線(図11参照)に向かってわずかに傾斜するので、好ましくは各ノズル901は図12に示されるようにわずかに外側に角度をつけられ、高温ガスの流れが車両のタイヤ1201とともにドライブトレインやサスペンションに当たるのを最小にする。少なくとも1つの実施形態において、各ノズル901は高温ガスの流れを制御アーム903の下部に向け、これにより制御アームは高温ガスの流れを車両からさらに偏向させる。
【0046】
上に示された記述と図面は好ましい実施形態を示すが、発明者らは、他の構成がバッテリパック内で起きる熱的事象の間に発生する高温ガスの流動を制御する手段として、また逃げ出すガスの温度を制御する手段として、同じ概念を用いてもよいことを考える。本構成の詳細は、少なくとも部分的に、バッテリパックの寸法、車両内におけるバッテリパックの位置、客室、ドライブトレイン、および他の車両構造に対するバッテリパックの位置において、明らかに適当である。したがって、バッテリパックがバッテリパック自体の詳細とともに意図される、車両あるいは他の応用の設計に応じて、本発明は、その精神あるいは本質的な性質から逸脱することなく他の特定の形態に具現化されてもよい。したがって、この明細書における開示と記述は説明的であることを意図するが、後述する請求項に記載される本発明の範囲を限定するものではない。
【技術分野】
【0001】
本発明は概略的にバッテリに関し、特にバッテリパックの熱的事象に関連した影響と危険を緩和する手段に関する。
【背景技術】
【0002】
バッテリには広い範囲のタイプ、化学的性質および構造があり、これらはそれぞれ固有の利点と弱点がある。二次バッテリとも呼ばれる充電可能なバッテリにおいて、主な欠点の1つは比較的不安定であることであり、このため、これらのセルが製造、保管および使用において特殊な取扱いを必要とすることになる。さらに、いくつかのセルの化学物質、例えばリチウムイオン二次セルは、他の一次および二次セルの化学物質よりも熱暴走しやすい傾向にある。
【0003】
発散する熱よりも多くの熱が発生して、反応速度と発熱の両方においてさらに増加する点までバッテリの内部反応速度が増加したときに、熱暴走は起きる。結局、発生した熱の量は、バッテリに近接した材料とバッテリを燃焼させるのに十分なだけ大きい。熱暴走はセル内の短絡、不適切なセルの使用、物理的な誤用、製造の欠陥、あるいはセルの極度な外部温度への露出によって始まるかもしれない。
【0004】
熱暴走の初期の段階において、熱暴走が発生しているセルは、増加した反応速度と、システムが熱を十分に高速で発散させることができないこととにより、ますます高温になる。セル内の温度が高くなると、圧力も高くなる。多くのセルに組み入れられた安全圧力開放装置は反応によって発生したガスのいくらかを解放させることを助けるかもしれないが、結局は、増加したセル圧力と増加した温度とにより、セルのケーシング内に穴があくこととなる。セルのケーシングに穴があくと、上昇したセル内の圧力によってさらに高温のガスがその場所に向けられ、この場所と隣接した場所におけるセルを危険にさらす。
【0005】
熱暴走の事故におけるセルの温度上昇がその事故に近接した材料に損傷を与え、かつその事故の隣接したセルへの伝播を導くのに十分である一方、高温ガスがセルの閉空間、つまりバッテリパックの閉空間から漏れ出て初めて、人への危険と財産の損傷が重大になる。これは、事故が閉じ込められている間に事故によって発生したガスが主に二酸化炭素と炭化水素の蒸気から成るからである。この結果、事故に近接した可燃材料の自然発火温度(AIT)は比較的高い。しかし、このガスがセル/バッテリパックの閉空間から出て、外気に含まれる酸素に接触すると、これらの同じ材料のAITが著しく低下し、自然発火に導くこととなる。広範囲にわたる二次的な財産の損傷が起きやすく、より重要なことに、車両を離れた車両の乗客、あるいは事故を制御しようと試みる第1応答者に対する危険が極めて重大となることは、事故のサイクルにおけるこの点である。
【0006】
したがって、セルあるいは熱暴走が起きているセルからの高温ガスの流出をできるだけ遅らせ、そして高温ガスの外気への排出を制御することが望ましい。同様に、高温ガスが外気に達する前に高温ガスの温度を下げて、事故に近接した材料の自然発火の可能性を下げるとともに、旅客、傍観者、第1応答者に対する危険を減少させることが望ましい。本発明はこれらの目的を達成するシステムと方法を提供し、二次損害と第1応答者等に対する危険とを制限する。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、バッテリパック内に収容された1以上のバッテリ内に発生する熱暴走の影響を最小にするための熱管理システムを提供する。本発明によると、システムは、複数のバッテリを保持するように構成された、複数の側面を有し実質的に気密なバッテリパック包装を備え、バッテリパック包装の少なくとも1つの側部材は少なくとも1つの空洞を有し、バッテリパック包装の内壁は、ガスをバッテリパック包装内から前記少なくとも1つの側部材の少なくとも1つの空洞へ通過させるように構成された複数の穴を有する。穴は、予め定められた圧力で破損するように設計されたシール層あるいはワンウェイバルブを有してもよい。本発明のシステムは、バッテリパック包装の外壁に組み込まれ、かつ少なくとも1つの空洞に連通した少なくとも1つのガス排出ポートを備え、少なくとも1つのガス排出ポートは、1以上のバッテリが熱暴走に陥ったときに、少なくとも1つの空洞内からバッテリパック包装の外部にある外気へガスを通過させるように構成される。排出ガスポートは、通常の動作条件では排出ポートをシールし、熱暴走の間は開放して、少なくとも1つの側部材内の少なくとも1つの空洞からのガスを外気へ排出されるキャップ組立体を備えてもよい。キャップ組立体は、単独で、あるいは熱暴走の事故のときは溶けるように構成されたバルブ取付け部材と協働するワンウェイバルブを備えてもよい。キャップ組立体は熱暴走の事故のときに溶けるように構成されたカバーを備えてもよい。排出ポートは排出ポートを介して排出される高温ガスの流動を偏向させるノズルを備えてもよい。
【0008】
少なくとも1つの実施形態において、バッテリパック包装の少なくとも1つの側部材内の少なくとも1つの空洞は相互に分離した少なくとも第1および第2の空洞を備える。この実施形態において、複数の穴はバッテリパック包装内から第1の空洞へガスを通過させるように構成され、バッテリパック包装の内壁に含まれる第2の複数の穴はバッテリパック包装内から第2の空洞へガスを通過させるように構成される。好ましくは同じガス排出ポートが第1および第2の空洞に連結される。第1および第2の複数の穴はそれぞれ、予め定められた圧力で破損するように構成されたシール層あるいはワンウェイバルブを有してもよい。
【0009】
少なくとも1つの実施形態において、4つのバッテリパック包装の側部材は少なくとも1つの空洞を有し、各側部材内の少なくとも1つの空洞は他の側部材内の少なくとも1つの空洞に連通する。好ましくは、複数の穴の一部は4つのバッテリパック包装の側部材のそれぞれの内壁に設けられる。
【0010】
少なくとも1つの実施形態において、バッテリパック包装は、バッテリパック包装の外部にありバッテリパック包装から分離した熱質量に、機械的かつ熱的に連結されるように構成される。側部材内の空洞を通過するガスの熱エネルギーは熱伝導および熱放射を介して側部材から熱質量へ伝達される。熱質量は、バッテリパックが組み入れられる電気自動車の1以上の構造部材(例えばロッカパネル)であってもよい。
【0011】
少なくとも1つの実施形態において、バッテリパック包装は、複数のバッテリをバッテリのグループに分離する複数の交差部材をさらに備える。好ましくは交差部材は、各交差部材の両側に位置するバッテリのグループ間における熱の伝達に対して熱バリアとなる。交差部材は1以上の空洞を有してもよい。交差部材内の空洞は何も有さないか、高融点かつ低熱伝導の材料で満たされるか、流れない流体(例えばパウチ内に収容される)で満たされるか、または管(例えば冷却管)内に収容された液体で満たされてもよい。
【0012】
本発明の本質および利点のさらなる理解は明細書の残りの部分と図面を参照することにより明白となるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】高温ガスと物質のバッテリパック内に発生する熱的事象からの解放を制御するように設計されたバッテリパックシステムの基本要素を示す。
【0014】
【図2】本発明によるバッテリパックの斜視図を示す。
【0015】
【図3】図2に示されるバッテリパックを天井部材を除いて示す斜視図を示す。
【0016】
【図4】図2、3に示されるバッテリパックの斜視図を示し、この図はバッテリパック内に配置されたバッテリモジュールのうちの3つを示す。
【0017】
【図5】車両に搭載された図2〜4に示されるバッテリパックの一部の斜視断面図を示す。
【0018】
【図6】図5に示されるバッテリパックと車両構造の一部の断面図を示す。
【0019】
【図7】図2〜6に示されるバッテリパックに用いられる角部材の斜視図を示す。
【0020】
【図8】図7に示される角部材とガス排出ポートの一部の断面図を示す。
【0021】
【図9】図7、8に示されるガス排出ポートの側面図を示す。
【0022】
【図10】図9に示されるガス排出ポートに取付けられたノズルの側面図を示す。
【0023】
【図11】バッテリパックの後方部分の両側に配置されたガス排出ポートの平面図を示す。
【0024】
【図12】図11に示されるガス排出ポートに取付けられたノズルの平面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下の記述において、用語「バッテリ」、「セル」および「バッテリセル」は置換可能に使用され、あらゆる種類の異なる電池類、化学物質および構成を指し、リチウムイオン(例えば、リン酸鉄リチウム、コバルト酸リチウム、他のリチウム金属酸化物等)、リチウムイオンポリマー、ニッケル金属水素化物、ニッケルカドミウム、ニッケル水素、ニッケル亜鉛、銀亜鉛、または他のバッテリタイプ/構成を含み、これらに限定されない。ここで使用される用語「バッテリパック」は、単独のピースまたは複数のピースからなるハウジング内に収容された多数の個々のバッテリを指し、個々のバッテリは特定のアプリケーションにおける所望の電圧および容量を得るために電気的に互いに接続される。ここで使用される用語「電気自動車」は、EVとも呼ばれる全電動自動車、PHEVとも呼ばれるプラグインハイブリッド自動車、あるいはHEVとも呼ばれるノンプラグインハイブリッド自動車を指し、ハイブリッド自動車は、その1つが電気駆動システムである複合駆動源を使用する。複数の図面に用いられる同一の参照符号は同じ要素あるいは等しい機能の要素を示す。さらに添付図面は特許請求の範囲を説明することを意図するだけで限定されるものではなく、また寸法を考慮すべきではない。
【0026】
バッテリパック内の単一のバッテリが熱暴走にあったとき、その事象によって発生した熱エネルギーは遠くまで及ぶ影響の可能性がある。第1に、温度上昇とこれに関連した高温ガスと物質の放出とにより、最初に影響を受けたセルの近くにある他のセルの温度が、これらのセルを熱暴走の状態に陥らせるのに十分に上昇するかもしれず、このことは他のセルを熱暴走に導く。したがって最初の熱的事象はバッテリパックを介して伝播し、これはパック内においてもっと大きな熱的事象を導く。第2に、パック内のセルが熱暴走に陥ったとき、これに伴う圧力上昇がバッテリパックの包装の大きな破損をもたらすかもしれない。バッテリパックの包装が所定の圧力で破損するように設計された1以上の破損ポイントを含んでいないと、この損傷ポイントは未知であり、このために任意の破損ポイントが発生することに従って、旅客、傍観者、第1応答者にとって危険が増すこととなる。第3に、バッテリパックから漏れ出たガスと物質の温度がその解放よりも前に低下しないと、その解放場所に近いところにおける可燃物質のATIが著しく減少し、自然発火に達するかもしれない。このように、退出口が旅客、傍観者、あるいは第1応答者の近くに位置していると、その結果は悲惨である。
【0027】
これらの問題を解決するために、また図1に概略的に図示されるように、本発明は熱的事象を伴う高温ガスと物質の放出を、解放された物質の解放場所と温度の両方の点において制御する。このシステムはある電気自動車すなわち電気自動車100に実施されるが、図示された概念および構造はより大きなバッテリパック(例えば船、住宅あるいは商業的バッテリシステム等)を用いた他のシステムに使用可能である。図示の目的のため、図1に示される駆動システムはトランスミッション/ディファレンシャル・アセンブリすなわちドライブトレイン101を介して駆動軸に連結された単一の電気モータを用いる。本発明は一方あるいは両方の軸に連結された多数のモータを使用する車両に同様に応用可能である。同様に、本発明は特別なタイプ/構造のトランスミッション(例えば単速、変速)あるいは特別なタイプ/構造のディファレンシャル(例えばオープン型、ロック型あるいはノンスリップ型)に限定されない。
【0028】
ドライブトレイン101は動力制御モジュール105を介してバッテリパック103に連結され、モジュール105は典型的にはDC/ACコンバータを含む。動力制御モジュール105は電気モータに伝達される動力が所望の電圧、電流、波形等を有することを保証する。このような動力制御モジュール105は受動パワーデバイス(例えばトランジェントフィルタリングキャパシタおよび/またはインダクタ)、能動パワーデバイス(例えば半導体および/または電気機械的スイッチングデバイス)、検出装置(例えば電圧、電流および/またはパワーフローセンサ等)、論理制御装置、通信装置等からなる。
【0029】
バッテリパック103は複数のバッテリからなる。少なくとも1つの実施形態において、バッテリパック103内に収容されるバッテリはモジュールに分離され、所望の電気的設計および性能の目標に合致させつつ製造および修理を簡単にする。図1には単一の典型的なバッテリ107のみが示される。
【0030】
本発明によれば、バッテリパック包装の一部は窪んだ構造要素を含む。例えば、好ましい実施形態では、以下に詳述するようにバッテリパック103の側部材109は窪んでおり、少なくとも1つの凹み111を含み、これはこの明細書ではルーメンとも称する。側部材109の内壁113は、バッテリパック103の内部とルーメン111の間におけるガスの流通を許容する複数の穴115を含む。
【0031】
熱的事象の間、例えばセル107において発生したもの、事象によって発生したガスと物質がバッテリパック103の窪んだ構造要素109内に形成された穴115を通って凹み111内に入る。そしてガスは、凹み111を通り、例えば通路121をたどることにより、1以上のバッテリパックガス排出ポート119へ流れ、ガスはバッテリパックから流出する。好ましくは、排出ポートは図示しないカバーあるいはバルブを含み、これらはバッテリパック内における熱的事象の出現まで閉塞状態を維持することを保証する。本発明の少なくとも1つの実施形態において、ポート119はノズルを含み、これは、漏れ出るガスにぶつかる可能性のある場所と同様に客室からガスの流れを遠ざけることによって、旅客、傍観者および第1応答者に対するリスクを最小限にする。さらに、好ましくは各ポート119のノズルは、高温ガスの流れを車両の損傷を最小にするように意図された方向に向ける。
【0032】
バッテリパック103の制御されたガス排出通路を設けることに加えて、本発明はまた、ガス排出ポート119を通って漏れ出る前にガスの温度を著しく低下させることにより、潜在的な損傷を最小にすることを補助する。より十分に以下に説明するように、パック103の窪んだ構造要素109は車両100内の主構造123に機械的かつ熱的に結合される。この結果、熱的事象の間に発生した高温ガスはルーメン111を通過し、熱は大きな熱質量123に引かれて伝達され、これによりガスがバッテリパックの空間から去る前にガスの温度を下げる。
【0033】
図2は本発明によるバッテリパック200の斜視図である。この図において、バッテリパックは天井部材201によって閉塞されて示される。窪んだ側部構造要素203も示されており、この部材203は、側部材203を車両構造(図示せず)に機械的かつ熱的に連結するために用いられる拡張領域すなわちリップ205を含む。図3は天井部材201を除去したバッテリパック200を示す。この図では、いくつかの交差部材301が示される。交差部材301はいくつかの利益をもたらす。例えば、部材301はバッテリパックに機械的、構造的な強度をもたらす。さらに、部材301は車両の性能(例えば車両の剛性、車両の衝撃抵抗等)を改善するようにして、車両の構造内に一体化されるように設計されてもよい。本発明に関して交差部材301は、セクション303間のガスの流動を最小にするとともにセルのグループ間に熱バリアを設けることによって、熱的事象を分離することを助け、セクション303は交差部材301、側部材203、天井部材201および底部材305によって区画される。熱的事象をセル内の小さいグループ内で分離することによって、バッテリパックの損傷の可能性と同様に、熱暴走の伝播が制限される。さらに、熱暴走がバッテリパックを通して広がる程度を制限することにより、バッテリパックの排出ポート119を通る高温ガスと物質の量も制限され、これは、延いては人的損傷と財産の損害の危険性を制限することとなる。
【0034】
交差部材301は、図3、5に示されるように好ましくは、単一のユニットすなわち上方部材301(a)および下方部材301(b)から成ってもよい。これらの一方あるいは両方の部材は窪んでいてもよく、最小の重量で所望の剛性と強度を達成する。図示された実施形態では、上方の交差部材301(a)はそれぞれ単一のルーメンを含み、下方の交差部材301(b)はそれぞれ3つのルーメンを含む。好ましくは、交差部材301(例えば上方の交差部材301(a)と下方の交差部材301(b))は押出し成形を用いてアルミニウムあるいはアルミニウム合金から成形される。交差部材のために定められた熱的および機械的設計の目標に応じて、この構成の変形が用いられてもよいことが理解されるであろう。例えば、金属を使用するよりもむしろ、交差部材301は高融点で、かつ低い熱伝導率の材料(例えばセラミック)から成形されてもよい。代替的に、交差部材301内のルーメンは高融点で、かつ低い熱伝導率の材料(例えばファイバグラスあるいは同様な材料)で満たされてもよい。代替的に、交差部材内のルーメンは液体(例えば水)を含んでもよく、液体は流れないか流れる。流れないならば、液体はルーメン自体の中に収容されてもよく、あるいは好ましくは、ルーメンの中に嵌合されたパウチの中に収容されてもよい。液体が流れるのであれば、好ましくは、交差部材のルーメンの中に挿入された管の中に収容され、バッテリ冷却システムに連結されるか、スタンドアロンの循環システムに用いられる。
【0035】
図4は数個のセルモジュール401を配置した好ましいバッテリパック200を示している。図示されるように、単一のモジュール401がバッテリパック200の7つの大きいセクション303の1つに配置されて示されている。なおこれらのセクションのそれぞれは一対のバッテリパックモジュール401を収容するように設計されている。さらに、この図では、2つのモジュール401がパック200のフロントセクション307の中において重ねられる。なお、好ましい実施形態では、各モジュールは370のセルを含み、各セルは18650フォームファクターを用いる。しかし、この構成は好ましい実施形態の一例に過ぎず、また本発明は他の構成、例えば異なるフォームファクターのバッテリ、より多いあるいはより少ないセル、個々のセル対モジュール等を有するバッテリを用いる構成にも同様に適用可能であることを理解すべきである。
【0036】
図5は車両の構造部材501に取付けられたバッテリパック200の一部の斜視断面図である。少なくとも1つの好ましい実施形態において車両の構造部材501はロッカーパネルからなる。図6は図5に示されたのと同じ組立体の断面図を示す。これらの図において、底部バッテリパックパネル305が窪んだ側部構造部材505とともに示されている。好ましくは、天井バッテリパックパネル201と同様にバッテリパック要素305、505はそれぞれ、アルミニウムあるいはアルミニウム合金のような軽量金属から製造される。底部パネル305は側部材505に対して、溶接、ろう付け、はんだ付け、接着、あるいは他の手段によって取付けられてもよく、これらによるパネル305と部材505の間の結合は実質的に気密であり、また底部パネル305がパック内に収容されるバッテリを支持するのに十分に強い。天井パネル201は、ボルトあるいは同様な手段を用いて典型的には部材505に取付けられ、これにより、バッテリの交換を簡単にするとともに、バッテリの内部接続、バッテリパック要素、冷却システム要素、および他のバッテリパック要素を修理したり交換することが可能になる。好ましくは、シールまたはガスケットが側部材505の上面601と天井パネル201の底面の間に配置され、これにより実質的に気密シールが達成される。Oリング603がこのようなシールに使用されることが図6に示されている。
【0037】
バッテリパックの好ましい実施形態において、窪んだ側部構造部材505は押出し成形されたアルミニウムあるいはアルミニウム合金から成形される。例示された構成において、バッテリパック200の全ては合致し、かつ整列したルーメンを有し、これにより高温ガスは1つの側部材から隣接する側部材に妨げられることなく流動可能となる。この構成において、一対の排出ポート119は図2に示されるようにいずれかの角部207に設けられる。バッテリパックの周辺の周りの連続的なルーメン構造と一対の排出ポートとを用いることにより、もし1つのポートまたはポート自体への通路が例えば車両の衝突において損傷すると、熱的事象の間に発生した高温ガスは明確な脱出通路を有する。
【0038】
図示されたバッテリパックにおいて、各側部材505は4つのルーメン507−510を有する。上部ルーメン507は第1ガス通路を構成し、内部側壁穴511を介してバッテリパック200の内部に連結される。図示された実施形態において、穴511は15ミリの直径と約55ミリの穴と穴の間隔とを有する。中央のルーメン508は第2ガス通路を構成し、内部側壁穴513を介してバッテリパック200の内部に連結される。図示された実施形態において、穴513は25ミリの直径と約60ミリの穴と穴の間隔とを有する。好ましい設計において、下方の内部ルーメン509は穴をあけられておらず、構造要素としてのみ用いられ、すなわち最小重量で側部材505に対して剛性と強度をもたらす。なお、下方内部ルーメン509は他のガス通路として用いることができるが、熱的事象による破片が側部材505の領域をブロックしやすいので、好ましくない。
【0039】
熱的事象の間、上述したように、熱暴走によって発生した高温ガスは、影響を受けたバッテリを収容するバッテリパックのセクション303に対応した穴(例えば穴511、513)を通過する。交差部材301のシール性能に応じて、高温ガスは隣接するセクション303に対応する穴も通過するかもしれない。図示された実施形態において、バッテリパック部材内の穴、例えば側部材505内の穴511、513は常時開放している。他の実施形態において穴は、1つのセクション303から側部材505を介して異なるセクション303へ高温ガスが流動することが最小になるようにシールされる。穴511、513をシールする1つの方法は、側部材505から逆方向にセクション303に向かうのではなく、セクション303から側部材505に向かって高温ガスが流れることのみを許容するワンウェイバルブ/シールの利用である。代替的に、穴511、513は、隣接するセクション内のバッテリが熱暴走に陥るときには十分に低い融点を有するが、ガスが側部材のルーメン(例えばルーメン507、508)を通って流れるとき、高温ガスが穴を通り過ぎるときに溶融するのを防止するのに十分に高い融点を有する材料でシールされてもよい。この実施形態において好ましくは、各シールは隣接するセクション303からの高温ガスの通過を促進するための小さい開口(例えば1〜3ミリ)を有する。さらに他の実施形態において、穴511、513は、隣接するセクション303内の圧力がシールの破損点を越えたときに破壊するように設計されたシール層によって覆われる。この実施形態において好ましくは、排出ガスポートは非常に早く開放し、これは、ガスが側部材を通って流れるときに、側部材505内の圧力が隣接するセクションにおいてシールを開放するほど十分には上昇しないことを保証する。一時的に穴511、513をシールするための技術に関するさらなる詳細は、同時係属中であり譲受人が共通である、2010年3月30日に出願された米国特許出願第12/798,198号明細書に記載されており、その開示内容はあらゆる目的のために、この明細書中に組み込まれる。
【0040】
下方の外部ルーメン510は側部材505の拡張領域205の下側にある。ルーメン510は上面605および下面607において穴を開けられ、これらの2つの面における穴は、ボルト等の部材がルーメン510を完全に通ることができるように整列している。上面と下面を通ってルーメン510を貫通する図示しないボルトは、側部材505、つまりバッテリパック200を車両の構造部材501にしっかりと取付けるために用いられる。強固な機械的結合をもたらすことに加え、このアプローチにより、バッテリパック200を車両下面100から迅速かつ効率的に外すことができる。
【0041】
車両構造部材501と側部材505、特に拡張領域205との間の強い機械的連結は、高温ガスから側部材へ伝達される熱エネルギーが熱伝導により車両構造体に効率的に伝達される、効率的な熱通路をもたらす。さらに、熱エネルギーは側部材505の側面515と構造部材501の面517との間の熱放射を介して伝達されてもよい。同様に、熱エネルギーは天井パネル201の表面の端部と構造部材501の表面519との間の熱放射を介して伝達されてもよい。したがって、この構成の結果として、熱暴走の間に発生した熱はバッテリパックの側部材505と構造部材501に効率的に伝達され、これにより高温ガスの温度はガスがバッテリパックの閉塞した領域に逃げ込んで外気に放出される前に、顕著に低下する。
【0042】
上述したように、好ましいバッテリパック200の構成において、ガス排出ノズルは後方パックの角部207に取付けられる。図7は第1の側部材505(a)と第2の側部材505(b)に取付けられた角部材701の斜視図である。前述したように、好ましくは各側部材内のルーメンは相互に連結され、これによりガスは側部材の間を流動できる。角部材701の後方にはガス排出ポート703が連結される。この図において、好ましいが選択的なノズルは示されていない。
【0043】
図8はガス排出ポート703において破断した、角部材701の一部の断面図である。図示されるように、好ましい実施形態において、角部材701は単一の空洞801を有し、これにより側部材505の個々のルーメン(例えばルーメン507〜510)がこの単一の空洞部の中に合流できる。ガス排出ポート703は、背圧を最小にして高温ガスのバッテリパックからの流出を確実にするために大きな直径を有する。図示された実施形態において、排出ポートはバルブ803が開放/排出されるとき、50ミリの内部直径を有し、バルブ保持部材805が排出されるとき60ミリの内部直径を有する。なお、通常の使用において、ガス排出ポート703は好ましくは、破片あるいは他の物質が潜在的にポートを塞ぐことを防止するために閉塞される。排出ポートは、熱的事象のときに開放するように構成された、バルブ(例えばバルブ803)、キャップ(例えばキャップ807)、あるいは他の手段によってシールされてもよい。1つの実施形態において、バッテリパック内の熱的事象の圧力と、続いて起こる側部材505と角部701を介する圧力の上昇とによって、通常の作動条件ではポート703と圧力均一化バルブ803をシールするキャップ807を吹き飛ばす。そして、高温ガスが排出ポートを通過するとき、好ましくはプラスチックから成形されるバルブ803が溶け始めるのに十分高くなる。バルブ803は溶け始めたすぐ後、ガスの力によってポートから排出される。好ましい実施形態では、バルブ803は、比較的低い融点の材料例えばプラスチックから製造されたバルブ保持部材805によって排出ポート703内に保持される。このため、排出ポートを通過する高温ガスの温度と体積が十分に大きいと、バルブ保持部材805も溶け、流出する高温ガスによって排出され、これにより排出ポートの空間をさらに増加させる。代替的な実施形態において、排出ポート703は、熱的事象がバッテリパック内で起きていることを示すのに十分なだけ空洞801内の圧力が増加したときに開放するワンウェイバルブを含む。さらに他の代替的な実施形態では、図示されるようにバルブ803を覆うのとは反対に、カバー807のようなカバーが排出ポートに被せられ、カバーはバッテリパック内の熱的事象のときに溶融する低融点材料の比較的薄い層からなる。このカバーは、熱的事象の間に高温ガスが開口を通過することを確実にする、例えば3〜5ミリの非常に小さい開口を有していてもよい。開口を通過する高温ガスの結果、カバーは溶け、ポートを完全に開放する。さらに他の代替的な実施形態では、排出ポートを閉塞する組立体は図8に示される組立体のようである。しかしこの実施形態では、バルブ803は金属から製造され、したがって溶けるようには設計されず、圧力が予め設定された開放圧力を越えるときに単に開放する。高温ガスがバルブを通過するとき、最終的にバルブ保持部材805が溶けるまで高温になり、これによりバルブ803と保持部材805の両方が排出される。
【0044】
単純な排出ポートがパック内で熱的事象の間に発生した高温ガスと物質を逃がすために用いられてもよいが、好ましくはノズルがポートに取付けられる。図9はバッテリパック200の一部の側面図であり、この図は排出ポート703を示す。図10は図9と同様な図を示し、ガス排出ポート703にノズル901が取付けられている。図11はバッテリパック200の一部の平面図を示し、この図は各角部材701に配置された排出ポート703を示す。図12は図11と同様な図を示し、各排出ポートにノズル901が取付けられている。前述したように、好ましくはガス排出ポートはバッテリパックの後方の角部に配置されるが、他の場所、例えばバッテリパックの前方角部、バッテリパックの側部等に取付けられてもよいことが理解される。
【0045】
ノズル901は比較的短く、典型的には12から18センチの範囲であり、熱的事象の間にガス排出組立体703あるいは組立体(例えばキャップ部材807、バルブ803、バルブ保持部材805等)の一部がノズルの中に留まらないことを確実にして、効果的なガスの流れを妨げない。この実施形態において、図10に示されるように、各ノズル901は高温ガスの流れを少し下側すなわち地面に向け、高温ガスが客室、ドライブトレイン、領域(例えば要素903)に配置されたサスペンション要素に衝突して過熱させることを防止する。さらに、排出ポート703が車両の中心線(図11参照)に向かってわずかに傾斜するので、好ましくは各ノズル901は図12に示されるようにわずかに外側に角度をつけられ、高温ガスの流れが車両のタイヤ1201とともにドライブトレインやサスペンションに当たるのを最小にする。少なくとも1つの実施形態において、各ノズル901は高温ガスの流れを制御アーム903の下部に向け、これにより制御アームは高温ガスの流れを車両からさらに偏向させる。
【0046】
上に示された記述と図面は好ましい実施形態を示すが、発明者らは、他の構成がバッテリパック内で起きる熱的事象の間に発生する高温ガスの流動を制御する手段として、また逃げ出すガスの温度を制御する手段として、同じ概念を用いてもよいことを考える。本構成の詳細は、少なくとも部分的に、バッテリパックの寸法、車両内におけるバッテリパックの位置、客室、ドライブトレイン、および他の車両構造に対するバッテリパックの位置において、明らかに適当である。したがって、バッテリパックがバッテリパック自体の詳細とともに意図される、車両あるいは他の応用の設計に応じて、本発明は、その精神あるいは本質的な性質から逸脱することなく他の特定の形態に具現化されてもよい。したがって、この明細書における開示と記述は説明的であることを意図するが、後述する請求項に記載される本発明の範囲を限定するものではない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のバッテリを保持するように構成された、複数の側面を有し実質的に気密なバッテリパック包装を備え、前記バッテリパック包装の少なくとも1つの側部材が少なくとも1つの空洞を有し、前記少なくとも1つの側部材の内壁が複数の穴を有し、前記穴がガスを前記バッテリパック包装内から前記少なくとも1つの側部材の前記少なくとも1つの空洞へ通過させるように構成され、
前記バッテリパック包装の外壁に組み込まれた少なくとも1つのガス排出ポートを備え、前記少なくとも1つのガス排出ポートが前記少なくとも1つの側部材の前記少なくとも1つの空洞に連通し、前記複数のバッテリの少なくとも1つが熱暴走に陥ったときに、前記少なくとも1つのガス排出ポートが前記少なくとも1つの空洞内から前記バッテリパック包装の外部にある外気へガスを通過させるように構成される
バッテリパック熱管理システム。
【請求項2】
前記少なくとも1つのガス排出ポートがキャップ組立体をさらに備え、前記キャップ組立体は、前記複数のバッテリの通常の動作では前記少なくとも1つのガス排出ポートをシールするように構成され、前記キャップ組立体は、前記複数のバッテリの前記少なくとも1つのバッテリが熱暴走にあるとき、開放し、前記第1の空洞内から前記外気へガスを通過させるように構成される、請求項1に記載のバッテリパック熱管理システム。
【請求項3】
前記キャップ組立体がワンウェイバルブをさらに備える請求項2に記載のバッテリパック熱管理システム。
【請求項4】
前記キャップ組立体がバルブ取付け部材をさらに備え、前記バルブ取付け部材が前記ガス排出ポート内に取付けられ、前記ワンウェイバルブが前記バルブ取付け部材内に取付けられ、前記バルブ取付け部材が前記熱暴走の間に溶けるように構成される請求項3に記載のバッテリパック熱管理システム。
【請求項5】
前記キャップ組立体がキャップ組立体カバーをさらに備え、前記キャップ組立体カバーが前記熱暴走の間に溶けるように構成される請求項2〜4に記載のバッテリパック熱管理システム。
【請求項6】
前記少なくとも1つのガス排出ポートがノズルをさらに備え、前記ノズルが前記第1の空洞内から排出された前記ガスを前記外気へ向けるように構成される請求項1〜5に記載のバッテリパック熱管理システム。
【請求項7】
前記複数の穴のそれぞれが、前記熱暴走の間に、前記バッテリパック包装内から前記少なくとも1つの空洞へガスを流動させるように構成されたワンウェイバルブをさらに備える請求項1、2、5、6に記載のバッテリパック熱管理システム。
【請求項8】
前記複数の穴のそれぞれが、予め定められた圧力において破損するように設計されたシール層によって一時的にシールされる請求項1〜7に記載のバッテリパック熱管理システム。
【請求項9】
前記少なくとも1つの空洞が少なくとも第1の空洞と、前記第1の空洞から分離した第2の空洞とを備え、前記複数の穴が前記バッテリパック包装内から前記第1の空洞へガスが流れるように構成され、前記少なくとも1つの側部材の前記内壁が第2の複数の穴を含み、前記第2の複数の穴が前記バッテリパック包装内から前記第2の空洞へガスが流れるように構成される請求項1〜8に記載のバッテリパック熱管理システム。
【請求項10】
電気自動車をさらに備え、前記バッテリパック熱管理システムが前記電気自動車内に組み込まれ、前記バッテリパック包装の前記少なくとも1つの側部材が、前記バッテリパック包装の外側にあって前記バッテリパック包装から分離された前記電気自動車の少なくとも1つの車両構造部材に機械的かつ熱的に連結されるように構成され、前記少なくとも1つの空洞を通過するガスからの熱エネルギーが前記バッテリパック包装の前記少なくとも1つの側部材と前記少なくとも1つの車両構造部材との間における熱伝導および熱伝播を介して伝達される請求項1〜9に記載のバッテリパック熱管理システム。
【請求項11】
前記バッテリパック包装が前記バッテリパック包装内に組み込まれた複数の交差部材をさらに備え、前記複数の交差部材が前記複数のバッテリをバッテリのグループに分離する請求項1〜10に記載のバッテリパック熱管理システム。
【請求項12】
前記複数の交差部材のそれぞれが、前記交差部材の両側に配置された前記バッテリのグループの間における熱エネルギーの伝達に対して熱バリアとなる請求項11に記載のバッテリパック熱管理システム。
【請求項13】
前記複数の交差部材のそれぞれが少なくとも1つの空洞を有する請求項11〜12に記載のバッテリパック熱管理システム。
【請求項14】
前記複数の交差部材のそれぞれの中の前記少なくとも1つの空洞が高溶融温度かつ低熱伝導の材料により少なくとも部分的に満たされる請求項13に記載のバッテリパック熱管理システム。
【請求項15】
前記複数の交差部材のそれぞれの中の前記少なくとも1つの空洞が水により少なくとも部分的に満たされる請求項13に記載のバッテリパック熱管理システム。
【請求項1】
複数のバッテリを保持するように構成された、複数の側面を有し実質的に気密なバッテリパック包装を備え、前記バッテリパック包装の少なくとも1つの側部材が少なくとも1つの空洞を有し、前記少なくとも1つの側部材の内壁が複数の穴を有し、前記穴がガスを前記バッテリパック包装内から前記少なくとも1つの側部材の前記少なくとも1つの空洞へ通過させるように構成され、
前記バッテリパック包装の外壁に組み込まれた少なくとも1つのガス排出ポートを備え、前記少なくとも1つのガス排出ポートが前記少なくとも1つの側部材の前記少なくとも1つの空洞に連通し、前記複数のバッテリの少なくとも1つが熱暴走に陥ったときに、前記少なくとも1つのガス排出ポートが前記少なくとも1つの空洞内から前記バッテリパック包装の外部にある外気へガスを通過させるように構成される
バッテリパック熱管理システム。
【請求項2】
前記少なくとも1つのガス排出ポートがキャップ組立体をさらに備え、前記キャップ組立体は、前記複数のバッテリの通常の動作では前記少なくとも1つのガス排出ポートをシールするように構成され、前記キャップ組立体は、前記複数のバッテリの前記少なくとも1つのバッテリが熱暴走にあるとき、開放し、前記第1の空洞内から前記外気へガスを通過させるように構成される、請求項1に記載のバッテリパック熱管理システム。
【請求項3】
前記キャップ組立体がワンウェイバルブをさらに備える請求項2に記載のバッテリパック熱管理システム。
【請求項4】
前記キャップ組立体がバルブ取付け部材をさらに備え、前記バルブ取付け部材が前記ガス排出ポート内に取付けられ、前記ワンウェイバルブが前記バルブ取付け部材内に取付けられ、前記バルブ取付け部材が前記熱暴走の間に溶けるように構成される請求項3に記載のバッテリパック熱管理システム。
【請求項5】
前記キャップ組立体がキャップ組立体カバーをさらに備え、前記キャップ組立体カバーが前記熱暴走の間に溶けるように構成される請求項2〜4に記載のバッテリパック熱管理システム。
【請求項6】
前記少なくとも1つのガス排出ポートがノズルをさらに備え、前記ノズルが前記第1の空洞内から排出された前記ガスを前記外気へ向けるように構成される請求項1〜5に記載のバッテリパック熱管理システム。
【請求項7】
前記複数の穴のそれぞれが、前記熱暴走の間に、前記バッテリパック包装内から前記少なくとも1つの空洞へガスを流動させるように構成されたワンウェイバルブをさらに備える請求項1、2、5、6に記載のバッテリパック熱管理システム。
【請求項8】
前記複数の穴のそれぞれが、予め定められた圧力において破損するように設計されたシール層によって一時的にシールされる請求項1〜7に記載のバッテリパック熱管理システム。
【請求項9】
前記少なくとも1つの空洞が少なくとも第1の空洞と、前記第1の空洞から分離した第2の空洞とを備え、前記複数の穴が前記バッテリパック包装内から前記第1の空洞へガスが流れるように構成され、前記少なくとも1つの側部材の前記内壁が第2の複数の穴を含み、前記第2の複数の穴が前記バッテリパック包装内から前記第2の空洞へガスが流れるように構成される請求項1〜8に記載のバッテリパック熱管理システム。
【請求項10】
電気自動車をさらに備え、前記バッテリパック熱管理システムが前記電気自動車内に組み込まれ、前記バッテリパック包装の前記少なくとも1つの側部材が、前記バッテリパック包装の外側にあって前記バッテリパック包装から分離された前記電気自動車の少なくとも1つの車両構造部材に機械的かつ熱的に連結されるように構成され、前記少なくとも1つの空洞を通過するガスからの熱エネルギーが前記バッテリパック包装の前記少なくとも1つの側部材と前記少なくとも1つの車両構造部材との間における熱伝導および熱伝播を介して伝達される請求項1〜9に記載のバッテリパック熱管理システム。
【請求項11】
前記バッテリパック包装が前記バッテリパック包装内に組み込まれた複数の交差部材をさらに備え、前記複数の交差部材が前記複数のバッテリをバッテリのグループに分離する請求項1〜10に記載のバッテリパック熱管理システム。
【請求項12】
前記複数の交差部材のそれぞれが、前記交差部材の両側に配置された前記バッテリのグループの間における熱エネルギーの伝達に対して熱バリアとなる請求項11に記載のバッテリパック熱管理システム。
【請求項13】
前記複数の交差部材のそれぞれが少なくとも1つの空洞を有する請求項11〜12に記載のバッテリパック熱管理システム。
【請求項14】
前記複数の交差部材のそれぞれの中の前記少なくとも1つの空洞が高溶融温度かつ低熱伝導の材料により少なくとも部分的に満たされる請求項13に記載のバッテリパック熱管理システム。
【請求項15】
前記複数の交差部材のそれぞれの中の前記少なくとも1つの空洞が水により少なくとも部分的に満たされる請求項13に記載のバッテリパック熱管理システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−212659(P2012−212659A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−49034(P2012−49034)
【出願日】平成24年3月6日(2012.3.6)
【出願人】(509316442)テスラ・モーターズ・インコーポレーテッド (23)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−49034(P2012−49034)
【出願日】平成24年3月6日(2012.3.6)
【出願人】(509316442)テスラ・モーターズ・インコーポレーテッド (23)
【Fターム(参考)】
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