説明

バッテリーセルの検査装置

【課題】セルの数が増加しても各セルの電極に対する検査用プローブの位置決めを確実にし高い精度で検査を行なうことのできる検査装置の提供。
【解決手段】所定数のバッテリーセルを保持可能なセル固定板と、複数に区画されたエリアのそれぞれに前記セル固定板を取り付けることができるようにしたベース板と、セル固定板に対応しセル固定板に保持された所定数の各バッテリーセルの電極110又は120に当接させるための複数の検査用プローブ31を備えたプローブ取付板30と、プローブ取付板をその板面方向に可動な状態でベース板に対して接近、離反させる駆動機構60を有する。特にセル固定板とこれに対応するプローブ取付板との位置決めを、プローブ取付板に複数のピン33を、セル固定板には該複数のピンの嵌入可能な複数の位置決め穴50−1をそれぞれ設けて正確に行なうことができるようにし、複数のバッテリーセルを一括して検査できるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は複数のバッテリーセルを一括して検査するのに適したバッテリーセルの検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
バッテリーには様々なタイプのものがあるが、例えば充電可能な二次電池をとってみても携帯電子機器用の小型のものから車載用の大型のものまで様々なものが提供されている。
【0003】
いずれにしても、二次電池における使用中の発火や異常発熱等の事故が増える中、その製造工程における充放電検査は非常に重要な検査であり、正確な結果を出すためには動作精度の高い検査設備が求められる。片や、大型の二次電池の検査設備の課題のひとつはコストであり、簡素で安価な検査設備で所定の機能を満たすことも要求される。
【0004】
比較的小型の二次電池のための検査装置の場合、複数の二次電池を、上面に電極が位置するようにトレイに配列し、各二次電池の電極に上方から検査用プローブを圧接させるようにして、複数個一括して、例えば充放電検査を行なうものが一般的である。勿論、このような動作は自動化されている。なお、複数の検査用プローブは、複数の二次電池分が二次電池の間隔やサイズ、電極の位置に応じてプローブ保持部で保持され、電極に対して一体的に接近、離反する(例えば特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2000−28692
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように、一括して複数の二次電池の検査を行なう場合、複数の二次電池は行列式に配列されるのが普通であり、個数が増えるに連れて各二次電池の電極と検査用プローブの位置決めが難しくなってくる。
【0007】
二次電池の電極に対する検査用プローブの位置決めがうまくいかないと検査作業時間が長くなって検査作業効率が悪化する。また、検査用プローブが二次電池の電極以外の部分に接触して検査不良となるだけでなく、二次電池自体を損傷させることにもつながる。
【0008】
本発明の課題は、二次電池のような複数のバッテリーセルを一括して検査するのに適し、検査するバッテリーセルの数が増加しても各バッテリーセルの電極に対する検査用プローブの位置決めを確実にして高い精度で検査を行なうことのできるバッテリーセルの検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の態様によれば、複数のバッテリーセルを一括して検査する装置であって、所定数のバッテリーセルを保持可能なセル固定板と、複数に区画されたエリアのそれぞれに前記セル固定板を取り付けることができるようにしたベース板と、前記セル固定板に対応し、前記ベース板上で前記セル固定板に保持された所定数の各バッテリーセルの電極に当接させるための複数の第1の検査用プローブを備えた第1のプローブ取付板と、前記第1のプローブ取付板をその板面方向に可動な状態で前記ベース板に対して接近、離反させる第1の駆動機構を有し、前記セル固定板とこれに対応する前記第1のプローブ取付板との位置決めを、一方に複数のピンを、他方には該複数のピンの嵌入可能な複数の位置決め穴をそれぞれ設けることで行なうようにしたことを特徴とするバッテリーセルの検査装置が提供される。
【0010】
なお、前記第1の駆動機構は、支持台に置かれた前記ベース板に対し第1の往復駆動機構により接近、離反するように往復移動し該往復移動がガイド部材により案内される第1の往復移動板を含み、該第1の往復移動板に揺動機構を介して前記第1のプローブ取付板が取付けられている構成が望ましい。
【0011】
また、前記ベース板は架枠に設けられた前記支持台に置かれ、前記架枠に上下方向に延びるように設けられた複数本のガイド棒を前記ガイド部材として前記第1の往復移動板が前記ベース板の上方側で上下方向に往復移動可能にされていることが望ましい。
【0012】
本発明によるバッテリーセルの検査装置においてはまた、前記セル固定板は前記各バッテリーセルの下面側に対応する部分に開口を有して前記各バッテリーセルをその下面側の少なくとも一部を下側に露出させた状態で支持し、前記ベース板は、少なくとも前記セル固定板の前記開口に対応する領域に開口を有すると共に、枠状の前記支持台により前記セル固定板に対応する領域を除く外縁部において支持されても良い。この場合、更に、前記セル固定板に対応し、前記ベース板上で前記セル固定板に保持された所定数の各バッテリーセルの下面に当接させるための複数の第2の検査用プローブを上向きに備えた第2のプローブ取付板と、前記第2のプローブ取付板をその板面方向に可動な状態で前記ベース板に対してその下側から接近、離反させる第2の駆動機構を有しても良い。そして、前記セル固定板とこれに対応する前記第2のプローブ取付板との位置決めを、前記第2のプローブ取付板に複数のピンを、前記セル固定板には前記第2のプローブ取付板の前記ピンの嵌入可能な第2の位置決め穴をそれぞれ設け、該第2の位置決め穴に対応する前記ベース板には貫通穴を設けることで行なうようにしても良い。前記第2の駆動機構は、前記支持台にて支持された前記ベース板に対しその下側から第2の往復駆動機構により接近、離反するように往復移動し該往復移動が前記ガイド部材により案内される第2の往復移動板を含む。そして、該第2の往復移動板に揺動機構を介して前記第2のプローブ取付板が取付けられる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によるバッテリーセルの検査装置は、簡素な検査設備でありながら、複数のバッテリーセルに対して高い精度で検査用プローブを位置決めすることができ、高い検査作業効率及び検査精度で検査を行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の実施形態を説明する前に、本発明の概念を説明する。
【0015】
図3は、本発明によるバッテリーセル検査装置の検査対象となるバッテリーセルの一例を示す。ここに示すバッテリーセル100は、細長い箱状で、上面に2つの電極110、120を持つが、検査対象となるバッテリーセルはこのような形状に限定されるものでないことは言うまでも無い。
【0016】
図7は、上記のようなバッテリーセルを複数個、一括して検査する場合に必要になると想定される最小限の構成を示し、本発明はこのような構成に種々の改良を加えている。
【0017】
図7(a)において、ベース板200上に複数のバッテリーセル100がその電極110、120を上に向けて行列状に保持される。図示は省略されているが、ベース板200におけるバッテリーセル100の保持部は凹部にされてバッテリーセル100を嵌め込み式に装着するようにされる。加えて、バッテリーセル100の下面側の少なくとも一部が下側に向けて露出するように凹部の少なくとも一部が開口とされる。
【0018】
ベース板200の上側には複数の第1の検査用プローブ310を下側に向けて設けた第1のプローブ取付板300が配置され、図示しない第1の駆動機構により上下方向に往復駆動される。ベース板200の下側には複数の第2の検査用プローブ410を上側に向けて設けた第2のプローブ取付板400が配置され、図示しない第2の駆動機構により上下方向に往復駆動される。
【0019】
第1の検査用プローブ310は、1つの電極に2本のプローブが当接(接続)するようにされ、一方は電圧検出用、他方は電流検出用である。第2の検査用プローブ410はバッテリーセル1個につき1本であり、ベース板200の凹部に設けた開口を通してバッテリーセル100の下面に当接(接続)し、ここではバッテリーセル100の温度を検出する。
【0020】
図7(b)は、第1の検査用プローブ310、第2の検査用プローブ410をそれぞれ、バッテリーセル100の各電極、バッテリーセルの下面に当接させるべく第1のプローブ取付板300、第2のプローブ取付板400をベース板200に接近させた状態を示す。
【0021】
ここで、第1、第2の検査用プローブ310、410のうち、特に、2本の第1の検査用プローブ310とバッテリーセル100の電極110あるいは120との位置決めが検査装置の検査作業効率、検査精度に大きく影響することは前述した通りである。そして、図示のように、10行4列の合計40個のバッテリーセル100を一括して検査するような場合には、バッテリーセル1個当たりのサイズにもよるが、ベース板200のサイズは1m×1mにも及ぶ。この場合、すべての第1の検査用プローブ310についてバッテリーセル100の電極110あるいは120に位置決めするためには、ベース板200の加工に高い精度が要求されるだけでなく、第1、第2のプローブ取付板300、400における第1、第2の検査用プローブ310、410の配置に高い精度が要求される。また、第1、第2の駆動機構により第1、第2のプローブ取付板300、400をベース板200に接近させる際、わずかでも横(水平)ずれが生じるようなことは許されない。
【0022】
以上のような観点から、図7に示すような構成のままでは、第1の検査用プローブ310をバッテリーセル100の電極110あるいは120に正確に位置決めするのは実質上不可能に近い。
【0023】
そこで、本発明では、図2に示すように、四角形のベース板20を複数(ここでは4つ)の等面積エリアに区画してそれぞれのエリアに四角形のセル固定板50を取り付けることができるようにしている。区画形態は、図示のように上下左右で区画する形態に限らず、上下方向あるいは左右方向に等面積に分割しても良い。
【0024】
各セル固定板50には図7で説明したのと同様の構造で所定数(ここでは10個)のバッテリーセル100を保持可能にしている。すなわち、セル固定板50におけるバッテリーセル100の保持部は凹部にされてバッテリーセル100を嵌め込み式に装着するようにされている。加えて、図示は省略されているが、バッテリーセル100の下面側の少なくとも一部が下側に向けて露出するようにセル固定板50の凹部の少なくとも一部が開口とされ、更にベース板20において前記セル固定板50における少なくとも凹部に対応する領域も開口とされている。
【0025】
ベース板20の上側には図7で説明したように第1のプローブ取付板が配置されるが、本実施形態では、4枚のセル固定板50(一部図示省略)に対応するように分割した4枚の四角形の第1のプローブ取付板30を用いる。4枚の第1のプローブ取付板30にはそれぞれ、複数の第1の検査用プローブ31が下側に向けて設けられている。第1の検査用プローブ31の配置は、セル固定板50に保持される所定数のバッテリーセル100の形状やサイズ、配置関係等に基づいて決定される。4枚の第1のプローブ取付板30はそれぞれ、後述される第1の駆動機構により一体的に上下方向に往復駆動可能にされる。
【0026】
ベース板20の下側には第2のプローブ取付板が配置されるが、第1のプローブ取付板30と同様、4枚のセル固定板50に対応するように分割した4枚の四角形の第2のプローブ取付板40(一部図示省略)を用いる。4枚の第2のプローブ取付板40にはそれぞれ、複数の第2の検査用プローブ41が上側に向けて設けられている。第2の検査用プローブ41の配置も、セル固定板50に保持される所定数のバッテリーセル100の形状やサイズ、配置関係等に基づいて決定される。4枚の第2のプローブ取付板40はそれぞれ、後述される第2の駆動機構により一体的に上下方向に往復駆動可能にされる。
【0027】
第1の検査用プローブ31は、便宜上、ここでは1つの電極に1本のプローブが当接(接続)するようにされるが、前述したように1つの電極に2本のプローブが当接するようにし、一方を電圧検出用、他方を電流検出用としても良い。また、図2では、第1のプローブ取付板30に更にバッテリーセル1個につき1本のプローブ32を追加しているが、これはバッテリーセル100の温度を上側から測定するためのものであり、省略されても良い。
【0028】
第2の検査用プローブ41はバッテリーセル1個につき2本であり、ベース板20及びセル固定板50の凹部に設けた開口を通してバッテリーセル100の下面に当接して、ここではバッテリーセル100の温度を検出する。勿論、第2の検査用プローブ41はバッテリーセル1個につき1本でも良い。なお、前述したように、バッテリーセル100の温度を第1のプローブ取付板30に設けた追加のプローブ32で行なう場合、4枚の第2のプローブ取付板40によるベース板20の下側からの温度測定系は省略されても良い。また、バッテリーセルに対する検査内容も充放電検査を含め多様であり、検査用プローブで検出されるのは電圧、電流、温度のみに限らない。
【0029】
上記のように、本実施形態では、バッテリーセル100を所定大のサイズのベース板20に保持させるためのセル固定手段を、分割された4枚のセル固定板50からなるようにし、上側の第1のプローブ取付板、下側の第2のプローブ取付板についてもそれぞれ、4枚のセル固定板50に対応する4枚のプローブ取付板30、40からなるように構成している。これにより、第1の検査用プローブ31とバッテリーセル100の電極110あるいは120の接続は、ベース板20のサイズより十分に小さい第1のプローブ取付板30を単位として行えばよいことになり、図7の場合に比べて位置決めのための条件が大幅に緩和される。加えて、4枚の各セル固定板50における4つのコーナーのうち、対角線上に位置する2つのコーナーにそれぞれ上面から下側に向けて第1の位置決め穴50−1を設けている。一方、4枚のセル固定板50に対応する4枚の第1のプローブ取付板30にはそれぞれ、第1の位置決め穴50−1に対応し得る位置、つまり第1のプローブ取付板30における4つのコーナーのうち、対角線上に位置する2つのコーナーにそれぞれ第1の位置決め穴50−1に嵌入可能なピン33を下側に向けて設けている。
【0030】
図示していないが、各セル固定板50における4つのコーナーのうち、上記第1の位置決め穴50−1が設けられたコーナーとは異なる2つのコーナーにそれぞれ下面から上側に向けて第2の位置決め穴を設けている。一方、4枚のセル固定板50に対応する4枚の第2のプローブ取付板40にはそれぞれ、第2の位置決め穴に対応し得る位置、つまり第2のプローブ取付板40における4つのコーナーのうち、対角線上に位置する2つのコーナーにそれぞれ第2の位置決め穴に嵌入可能なピン43を下側に向けて設けている。勿論、ピン43を第2のプローブ取付板40の第2の位置決め穴に嵌入可能にするために、ベース板20において少なくとも第2の位置決め穴に対応する箇所にも貫通穴が設けられる。
【0031】
次に、図1をも参照して、4枚の第1のプローブ取付板30を一体的に上下方向に駆動してベース板20に対してその上側から接近、離反させるための第1の駆動機構60、及び4枚の第2のプローブ取付板40を一体的に上下方向に駆動してベース板20に対してその下側から接近、離反させるための第2の駆動機構70について説明する。
【0032】
バッテリーセル100を保持したセル固定板50を取り付けたベース板20は、架枠80に設けた枠状の支持台81に搭載して固定保持される。固定保持構造については、周知のどのような方法を用いても良く、本発明の要旨ではないので、図示、説明は省略する。支持台81を枠状にするのは、第2の検査用プローブ41による下側からの検査を可能とするための空間を確保するためであることは言うまでも無い。
【0033】
第1の駆動機構60は、架枠80の天井に設けられた第1の昇降駆動機構(往復駆動機構)61と、この第1の昇降駆動機構61により昇降するように駆動される第1の昇降板(往復移動板)62を含む。そして、第1の昇降板62の下面側に、4枚の第1のプローブ取付板30がそれぞれ、複数の揺動自在機構63によりその板面方向、すなわち水平方向に揺動自在な状態にて取り付けられている。なお、本実施形態では第1の昇降板62は四角形状であり、その4つのコーナー部に対応する箇所に上下方向に延びるように架枠80に設けられたガイド棒83により昇降がガイドされる。
【0034】
揺動自在機構63は、図4(a)に示すように、ここではボールジョイントと呼ばれる揺動機構を2つ組み合わせて実現している。すなわち、揺動自在機構63は、第1のボールジョイント63−1のベース部63−11に対して揺動自在なネジ軸63−12と、第2のボールジョイント63−2のベース部63−21に対して揺動自在なネジ軸63−22とをナット63−3で連結してなる。そして、図4(b)に示すように、ここでは、第1のボールジョイント63−1におけるベース部63−11を第1の昇降板62に埋設固定する一方、第2のボールジョイント63−2におけるベース部63−21を第1のプローブ取付板30に埋設固定している。揺動自在機構63の取付個数は、1枚の第1のプローブ取付板30につき、3個以上が好ましい。3個の場合、正三角形の頂点、4個の場合、四角形のコーナーにそれぞれ対応するような配置とすることは言うまでも無い。
【0035】
次に、第2の駆動機構70について説明する。第2の駆動機構70は、第2の昇降板72を含み、第1の駆動機構60では第1の昇降板62が第1の昇降駆動機構61に下向きに取り付けられているのに対し、第2の昇降板72が第2の昇降駆動機構71に上向きに取り付けられている点を除けば、第1の駆動機構60とまったく同じである。
【0036】
すなわち、第2の駆動機構70は、架枠80の底部に設けられた第2の昇降駆動機構(往復駆動機構)71と、この第2の昇降駆動機構71により昇降するように駆動される第2の昇降板(往復移動板)72を含む。そして、第2の昇降板72の上面側に、4枚の第2のプローブ取付板40がそれぞれ、複数の揺動自在機構73によりその板面方向、すなわち水平方向に揺動自在な状態にて取り付けられている。第2の昇降板72も四角形状であり、第1の昇降板62用のガイド棒83を兼用できるように、その4つのコーナー部に対応する箇所をガイド棒83が貫通するようにしている。揺動自在機構73は、図4で説明した揺動自在機構63とまったく同じであるので説明は省略する。
【0037】
以上のように、複数のバッテリーセル100の上面側、すなわち電極側については、4つに分割された形でセル固定板50と第1のプローブ取付板30とが個別に対応しあい、しかも各第1のプローブ取付板30は複数の揺動自在機構63により水平方向に変位可能である。これにより、固定配置されているベース板20上の各セル固定板50に対し、対応する各第1のプローブ固定板30が第1の駆動機構60により第1の昇降板62を介して下降するように駆動されると、ピン33が第1の位置決め穴50−1に嵌入することでセル固定板50に対し、対応する第1のプローブ取付板30の位置決めが行なわれる。これにより、第1のプローブ板30における複数の第1の検査用プローブ31はバッテリーセル100の電極110あるいは120上に正確に位置決めされる。これにより、本実施形態によるバッテリーセルの検査装置は、簡素な検査設備でありながら、複数のバッテリーセルに対して高い精度で検査用プローブを位置決めすることができ、高い検査作業効率及び検査精度で検査を行なうことができる。
【0038】
なお、第1のプローブ取付板30に設けられる第1の検査用プローブ31について説明すると、図5に示すように、プローブ本体は第1のプローブ取付板30に出没自在にされ、しかもプローブのヘッド部と第1のプローブ取付板30との間にコイルスプリング31−1が設けられる。これにより、図5(b)の状態で第1のプローブ取付板30が下動して第1の検査用プローブ31のヘッド部がバッテリーセルの電極に当たると、図5(a)に示すように第1の検査用プローブ31は少し上動し、コイルスプリング31−1の付勢力により、第1の検査用プローブ31のヘッド部は電極に対して所定の押圧力が作用した状態で電気的に接続される。他のプローブ32、第2の検査用プローブ41についてもほぼ同様である。
【0039】
また、図6に示すように、セル固定板50に設けられる位置決め穴50−1の入り口部分はテーパー状にされ、ピン33の先端も先細形状にされている。これにより、ピン33の下降に際し、その中心が位置決め穴50−1の中心から少しずれた状態であったとしても、ピン33はその先端がテーパー状部に接触するとピン33の中心が位置決め穴50−1の中心に一致するようにガイドされる。これは、第1のプローブ取付板30が複数の揺動自在機構63により水平方向に揺動可能にされていることにより可能である。但し、第1のプローブ取付板30の水平方向の変位は無制限であっては好ましくないので、図4に戻って、第1の昇降板62にはナット63−3の水平方向変位を規制するストッパー64を設けている。ストッパー64は、ナット63−3の外径より大きな内径を持つリング状部分を有し、このリング状部分がナット63−3の周囲に位置するように第1の昇降板62に取り付けられている。
【0040】
図2では、上側の位置決めのためのピン33が嵌入する位置決め穴50−1と、下側の位置決めのためのピン43が嵌入する位置決め穴とがセル固定板50の別位置に設けられることを説明したが、図6に示すように、位置決め穴50−1を貫通穴にしてピン33とピン43で兼用できるようにしても良い。
【0041】
図8は、本発明によるバッテリーセル検査装置の別の実施形態を示し、前述したように、第1のプローブ取付板30に温度検出用のプローブ32を設けたことから、第1の実施形態において4枚の第2のプローブ取付板40によりベース板20の下側から温度検出を行なうための温度測定系を省略した例である。ベース板20より上側の構成は、1つの電極について2本の第1の検査用プローブ31を設けている点を除いて第1の実施形態とまったく同じであるので、説明は省略する。
【0042】
上記実施形態による検査装置は、互いに対応しあうプローブ取付板とセル固定板の上下方向の押付け距離をある誤差内に保ちながらプローブ取付板を水平方向についてずれを許容する構造として、ボールジョイントの組合せによる揺動機構を用いることにより、課題を満足させることができた。
【0043】
上記実施形態による検査装置において、設備の簡素化(コストダウン)が図れた箇所は、以下の通りである。
【0044】
1.ベース板を幅寄せしたり、位置決めしたり、固定したりするエアシリンダー等の機構が不要。
【0045】
2.ベース板に、基準面の確保やそのための精密加工が不要。
【0046】
また、上記実施形態による検査装置において、機能が向上した点は以下の通りである。
【0047】
1.セル固定板におけるセル保持位置と位置決め穴の加工精度が、加工のしやすさからアップした。
【0048】
2.それに伴い、プローブ取付板の駆動機構側は、緻密な動作精度をもった機構が必要なくなった。
【0049】
検査用プローブは消耗品であり、定期的な交換が必要であるが、上記実施形態による検査装置によれば、全体を数個のブロックに分けたプローブ取付板毎に複数の検査用プローブを取り付けることにより、ブロック単位で交換することができるようになり、設備停止時間を短くすることができる。
【0050】
また、検査用プローブが位置ずれによってバッテリーセルの電極以外の部分に接触することがなく、バッテリーセル異常の大きな要因となっている金属の磨耗粉の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】図1は、本発明によるバッテリーセル検査装置の第1の実施形態を示す正面図である。
【図2】図2は、図1におけるベース板上の4枚のセル固定板と、上側の4枚の第1のプローブ取付板と、下側の4枚の第2のプローブ取付板について説明するための斜視図である。
【図3】図3は本発明によるバッテリーセル検査装置の検査対象であるバッテリーセルの一例を示した図である。
【図4】図4は、図1に示された第1のプローブ取付板を揺動自在とするための揺動自在機構の一例を示した図である。
【図5】図5は、検査用プローブの取付構造の一例を示した図である。
【図6】図6は、セル固定板に設けられる位置決め穴と、これに嵌入する第1のプローブ取付板に設けられるピンとについて説明するための断面図である。
【図7】図7は、本発明の概念を説明するために、ベース板上の複数のバッテリーセルと、複数の検査用プローブを持つ上側のプローブ取付板と、複数の検査用プローブを持つ下側のプローブ取付板について示した斜視図である。
【図8】図8は、本発明によるバッテリーセル検査装置の他の実施形態を示す正面図である。
【符号の説明】
【0052】
20 ベース板
30 第1のプローブ取付板
31 第1の検査用プローブ
31−1 コイルスプリング
32 他のプローブ
33、43 ピン
40 第2のプローブ取付板
41 第2の検査用プローブ
50 セル固定板
50−1 位置決め穴
60 第1の駆動機構
61 第1の昇降駆動機構
62 第1の昇降板
63 揺動自在機構
70 第2の駆動機構
71 第2の昇降駆動機構
72 第2の昇降板
73 揺動自在機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のバッテリーセルを一括して検査する装置であって、
所定数のバッテリーセルを保持可能なセル固定板と、
複数に区画されたエリアのそれぞれに前記セル固定板を取り付けることができるようにしたベース板と、
前記セル固定板に対応し、前記ベース板上で前記セル固定板に保持された所定数の各バッテリーセルの電極に当接させるための複数の第1の検査用プローブを備えた第1のプローブ取付板と、
前記第1のプローブ取付板をその板面方向に可動な状態で前記ベース板に対して接近、離反させる第1の駆動機構を有し、
前記セル固定板とこれに対応する前記第1のプローブ取付板との位置決めを、一方に複数のピンを、他方には該複数のピンの嵌入可能な複数の位置決め穴をそれぞれ設けることで行なうようにしたことを特徴とするバッテリーセルの検査装置。
【請求項2】
前記第1の駆動機構は、支持台に置かれた前記ベース板に対し第1の往復駆動機構により接近、離反するように往復移動し該往復移動がガイド部材により案内される第1の往復移動板を含み、
該第1の往復移動板に揺動機構を介して前記第1のプローブ取付板が取付けられていることを特徴とする請求項1に記載のバッテリーセルの検査装置。
【請求項3】
前記ベース板は架枠に設けられた前記支持台に置かれ、前記架枠に上下方向に延びるように設けられた複数本のガイド棒を前記ガイド部材として前記第1の往復移動板が前記ベース板の上方側で上下方向に往復移動可能にされていることを特徴とする請求項2に記載のバッテリーセルの検査装置。
【請求項4】
前記セル固定板は前記各バッテリーセルの下面側に対応する部分に開口を有して前記各バッテリーセルをその下面側の少なくとも一部を下側に露出させた状態で支持しており、
前記ベース板は、少なくとも前記セル固定板の前記開口に対応する領域に開口を有すると共に、枠状の前記支持台により前記セル固定板に対応する領域を除く外縁部において支持されており、
更に、前記セル固定板に対応し、前記ベース板上で前記セル固定板に保持された所定数の各バッテリーセルの下面に当接させるための複数の第2の検査用プローブを上向きに備えた第2のプローブ取付板と、
前記第2のプローブ取付板をその板面方向に可動な状態で前記ベース板に対してその下側から接近、離反させる第2の駆動機構を有し、
前記セル固定板とこれに対応する前記第2のプローブ取付板との位置決めを、前記第2のプローブ取付板に複数のピンを、前記セル固定板には前記第2のプローブ取付板の前記ピンの嵌入可能な第2の位置決め穴をそれぞれ設け、該第2の位置決め穴に対応する前記ベース板には貫通穴を設けることで行なうようにしたことを特徴とする請求項3に記載のバッテリーセルの検査装置。
【請求項5】
前記第2の駆動機構は、前記支持台にて支持された前記ベース板に対しその下側から第2の往復駆動機構により接近、離反するように往復移動し該往復移動が前記ガイド部材により案内される第2の往復移動板を含み、
該第2の往復移動板に揺動機構を介して前記第2のプローブ取付板が取付けられていることを特徴とする請求項4に記載のバッテリーセルの検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−300231(P2009−300231A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−154438(P2008−154438)
【出願日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】