説明

バッテリ式トーイングトラクタのフレーム構造

【課題】フロアと前輪との間にバッテリが配設されたバッテリ式トーイングトラクタにおいて、メンバプレートを補強することができるバッテリ式トーイングトラクタのフレーム構造を提供する。
【解決手段】トーイングトラクタ10の車体11の後部におけるフレームは、フロアの後側を区画するとともに車体11の車幅方向へ延びるメンバプレート31を備える。メンバプレート31は前側補強プレート37及び後側補強プレート43によって前後から挟まれている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体の前輪と後輪の間にフロアが区画されるとともに該フロアと前輪との間にバッテリが配設されたバッテリ式トーイングトラクタのフレーム構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、走行駆動手段としてエンジンを用いたトーイングトラクタ(エンジン式トーイングトラクタ)が使用されている。このエンジン式トーイングトラクタにおいて、エンジンは車体における運転席より前方で、かつ前輪より上方に配置されている。また、近年では、走行駆動手段としてモータを用いるとともに、そのモータをバッテリにより駆動させるトーイングトラクタ(バッテリ式トーイングトラクタ)も使用されるようになっている。このバッテリ式トーイングトラクタにおいて、バッテリは高さ、幅、奥行きともに大型であるため、エンジン式トーイングトラクタのようにバッテリを運転席より前方で、かつ前輪より上方に配置することは困難である。このため、バッテリ式トーイングトラクタにおいては、バッテリは車体における運転席より前方において前輪とフロアとの間に配設されている。
【0003】
このようなバッテリ式トーイングトラクタのフレーム構造において、後輪とフロアの間の部位は、車体の車幅方向へ延びるメンバプレートによって形成されている。このようなフレーム構造としては、例えば特許文献1に開示の車体構造がある。
【0004】
特許文献1において、図5に示すように、車体のフレームを構成するリヤサイドメンバ90(特許文献1ではリヤサイドレール)の前側端面90aは、サスペンションブラケット91(特許文献1ではサスペンションサポート)の上部91aに固着されている。また、サスペンションブラケット91の前側部91bはメンバプレート92(特許文献1ではアウトリガー)に固着されている。そして、サスペンションブラケット91にはリヤサスペンション93が支持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−331958号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、バッテリ式トーイングトラクタにおいて、バッテリは、車体における運転席より前方において前輪とフロアとの間に配設されている。このため、バッテリ式トーイングトラクタは、エンジン式トーイングトラクタと比べると、車体の前後方向に沿った前輪からフロアまでの長さが長くなってしまう。よって、バッテリ式トーイングトラクタにおいては、ホイールベースの長さを抑えるため、エンジン式トーイングトラクタに比べると、車体における後輪とフロアに挟まれた部位が幅狭になっている。
【0007】
また、バッテリ式トーイングトラクタにおいて、前輪及び後輪には路面から上方への力が作用するとともに、車体にはバッテリの荷重が作用する。そして、路面からの力と荷重とから、後輪とフロアに挟まれた部位を形成するメンバプレート92には応力が集中するが、メンバプレート92は幅狭の部位に配設され厚みを十分確保できないため、メンバプレート92の補強が重要であり、特許文献1に開示の車体構造よりもさらなる補強が望まれている。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、フロアと前輪との間にバッテリが配設されたバッテリ式トーイングトラクタにおいて、メンバプレートを補強することができるバッテリ式トーイングトラクタのフレーム構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、車体の前輪と後輪の間にフロアが区画されるとともに該フロアと前記前輪との間にバッテリが配設されたバッテリ式トーイングトラクタのフレーム構造である。このフレーム構造において、前記車体の後部におけるフレームが、前記フロアの後側を区画するとともに前記車体の車幅方向へ延びるメンバプレートを備える。そして、メンバプレートが前側補強プレート及び後側補強プレートによって前後から挟まれている。
【0010】
これによれば、前輪及び後輪を介して車体に上方への力が作用するとともにバッテリの荷重により車体に下方への力が作用すると、車体において、後輪とバッテリとの間に位置するフロア近くには応力が発生する。このとき、フロアの後側を区画するメンバプレートには応力が集中する。ここで、このメンバプレートは、前側補強プレートと後側補強プレートにより前後から挟まれている。このため、応力は前側補強プレート及び後側補強プレートに分散して受承される。よって、フロアと前輪との間にバッテリが配設されていても、メンバプレートを補強してその変形を防止することができる。
【0011】
また、前記後側補強プレートは、前記メンバプレートの後面に固定される第1固定部と、該第1固定部に対し直交する方向へ延びる第2固定部とからL字状に形成され、前記第2固定部にはサスペンションを支持するサスペンションブラケットが固定されてもよい。
【0012】
これによれば、第2接合部には、サスペンションから上方への力が作用したとき、その力は、後側補強プレートにおいて第1接合部と交わる直角部を回転中心として第1接合部から後方へ向かう力として作用する。よって、後側補強プレートをL字状に形成することにより、サスペンションからの上方への力が分散され、メンバプレートへの応力集中を緩和することができる。
【0013】
また、前記メンバプレートには、前記前側補強プレートを前記メンバプレートと共に囲繞するように前記前側補強プレートより前方に配設される第1補助プレートが接合されてもよい。
【0014】
これによれば、メンバプレートの前方において、メンバプレートに発生する応力を、第1補助プレートでも受承することができ、メンバプレートを効果的に補強することができる。
【0015】
また、前記前側補強プレートは、前記第1補助プレートに対し非接触とされていてもよい。これによれば、前側補強プレートは第1補助プレートに囲まれているため、例えば、前側補強プレートと第1補助プレートとを接合する場合と比べると、前側補強プレート及び第1補助プレートの組付けを簡単に行うことができるとともに、前側補強プレートと第1補助プレートの組付け時の寸法公差に留意する手間を省くことができる。
【0016】
また、前記メンバプレートの前方には前記フロアの前側を区画するフロントプロテクタが配設されるとともに、前記第1補助プレートと前記フロントプロテクタとには第2補助プレートが架設されていてもよい。
【0017】
これによれば、第1補助プレートに受承された応力は、第2補助プレートに受承され、さらにフロントプロテクタに受承される。よって、第2補助プレートを設けることにより、メンバプレートに発生した応力を分散させるとともにフロントプロテクタに向けて減衰させることができ、メンバプレートを補強することができる。
【0018】
また、前記車体の中央部における車幅方向の両側部には、前記車体の中央部を補強するサイドプレートが前後方向に架設され、前記メンバプレートには前記サイドプレートが接合されていてもよい。これによれば、メンバプレートに発生した応力をサイドプレートに分散させることができ、メンバプレートを補強することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、フロアと前輪との間にバッテリが配設されたバッテリ式トーイングトラクタにおいて、メンバプレートを補強することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施形態のトーイングトラクタを示す側面図。
【図2】実施形態のトーイングトラクタにおける後部を示す部分斜視図。
【図3】サスペンション周辺を示す部分側断面図。
【図4】(a)はフレーム構造を示す部分断面斜視図、(b)はサスペンションブラケットの取付構造を示す図4(a)の4b線断面図、(c)はフレーム下部を示す図4(a)の4c線断面図。
【図5】背景技術を示す部分断面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図1〜図4にしたがって説明する。なお、「前」「後」「左」「右」「上」「下」は、バッテリ式トーイングトラクタ(以下、単にトーイングトラクタと記載する)の運転者がトーイングトラクタの前方(前進方向)を向いた状態を基準とした場合の「前」「後」「左」「右」「上」「下」を示すものとする。
【0022】
図1に示すように、トーイングトラクタ10の車体11の後部寄りにはフロアFが区画されるとともに、このフロアFより上方に運転席12が設けられ、この運転席12には座席12aが設けられている。また、車体11の後部であり、運転席12より後方にはドローバ装置14が設けられている。車体11の前下部には前輪15が設けられているとともに、車体11の後下部には後輪16が設けられている。車体11の前部において、車体11における運転席12より前方において、前輪15とフロアFとの間に設けられたバッテリ収納室(図示せず)にはバッテリ13が収納されている。
【0023】
図3は、車体11の後部を示す側断面図であるが、車体11の後部には走行駆動手段としての走行モータ17が配設されている。また、車体11の後部において、走行モータ17の前方には、車体11後部の荷重を支持するとともに、アクスルシャフト(図示せず)を包むリヤアクスルハウジング18が、車体11の左右方向へ延びるように配設されている。
【0024】
リヤアクスルハウジング18と走行モータ17には、走行モータ17の駆動力をアクスルシャフトに伝達する動力伝達部(図示せず)が連結されるとともに、走行モータ17とリヤアクスルハウジング18は一体に連結されている。さらに、図1に示すように、車体11の後部において、走行モータ17及びリヤアクスルハウジング18の前方にはコントローラCが配設されている。そして、トーイングトラクタ10は、バッテリ13を駆動源として作動するとともにコントローラCによって制御される走行モータ17の駆動力がアクスルシャフトを介して後輪16に伝達されることで走行するバッテリ式とされている。
【0025】
図1に示すように、座席12aの前方にはステアリングホイール20が装備されるとともに、座席12aの前下方(フロアF)には、アクセルペダル21が設けられている。運転席12において、座席12aの側方にはパーキングブレーキレバー(図示せず)が配設されるとともに、座席12aより後方には、ドローバ装置14を操作するためのドローバレバー23が配設されている。
【0026】
次に、車体11のフレーム構造について説明する。
図4(a)は、車体11の運転席12から後方におけるフレーム構造を示す斜視図であるが、車体11のフレームは、車体11の底板を形成するアンダープレート30を備えるとともに、このアンダープレート30の後部上面には、メンバプレート31がアンダープレート30の左右方向(車幅方向)へ延びるように配設されている。メンバプレート31は、アンダープレート30に対し垂直に延びる基部31aと、この基部31aの上端から斜め後方へ延びる区画部31bとから形成されている。そして、車体11において、メンバプレート31の基部31aが、車体11の高さ方向において最も高さが低い部位となっており、後輪16を収容する車体11の後部とフロアFとを区画する車体11におけるくびれ部となっている。
【0027】
また、図2は、車体11の後部を示す斜視図であるが、図2及び図3に示すように、車体11のフレームは、メンバプレート31の後方にリヤクロスメンバ32を備える。そして、メンバプレート31とリヤクロスメンバ32の間には一対のリヤサイドメンバ33が前後方向へ架設されている。一対のリヤサイドメンバ33は、左右方向へ所定の間隔を空けて設けられている。そして、メンバプレート31と、リヤクロスメンバ32と、一対のリヤサイドメンバ33とによって区画される空間に走行モータ17、リヤアクスルハウジング18、及びコントローラCが収容されている。また、フレームにおいて、各リヤサイドメンバ33上には、リヤサイドカバー34がメンバプレート31とリヤクロスメンバ32に架け渡されるように設けられている。
【0028】
図3、図4(a)及び図4(c)に示すように、アンダープレート30上面の左右両側には、断面L字状をなすサイドプレート35が車体11の前後方向へ延びるように接合されている。各サイドプレート35は、アンダープレート30の左右両端縁と、各サイドプレート35の外端縁との間に、上下方向及び前後方向へ一定の間隔で延びる空隙が形成されるようにアンダープレート30及びメンバプレート31に接合されている。また、サイドプレート35の後端面は、メンバプレート31における基部31aの前面に接合されている。
【0029】
図3及び図4(a)に示すように、車体11のフレームは、メンバプレート31から離れた前方にフロントプロテクタ36を備える。このフロントプロテクタ36は車体11の左右方向へ延びるように配設されている。フロントプロテクタ36は、その下端面がアンダープレート30の上面に接合されるとともに、アンダープレート30に対し垂直に延びるように配設されている。このフロントプロテクタ36には上記ステアリングホイール20や図示しない各種操作部材が配設される。そして、フロアFは、その後側がメンバプレート31の区画部31bによって車体11に区画され、前側がフロントプロテクタ36によって車体11に区画されている。
【0030】
両サイドプレート35の後端部上面、及びメンバプレート31の基部31aにおける左右両側部の前面には、前側補強プレート37の下端面及び後端面が接合されている。前側補強プレート37は上下方向への長さが前後方向への長さより長くなる矩形板状に形成されている。また、前側補強プレート37は、その厚み方向が左右方向へ延びるようにサイドプレート35及びメンバプレート31に接合されている。
【0031】
車体11のフレームは、メンバプレート31より前方に第1補助プレート38を備える。この第1補助プレート38は、アンダープレート30に対し垂直に延びる基部38aと、この基部38aに対し直交するように後方へ延びる延在部38bとから断面L字状に形成されている。基部38aは、その左右方向の中央部下端面がアンダープレート30の上面に接合されるとともに、左右両側部の下端面それぞれが左右のサイドプレート35上面に接合されている。また、延在部38bの後端面は、メンバプレート31の区画部31bの前面に接合されている。
【0032】
よって、車体11の左右両側部には、メンバプレート31と、サイドプレート35と、第1補助プレート38の基部38aと、第1補助プレート38の延在部38bとにより、側面視で四角箱状をなす空間Sが区画されている。そして、この空間S内に前側補強プレート37が配設されるとともに、メンバプレート31と第1補助プレート38によって前側補強プレート37が囲繞されている。なお、前側補強プレート37の前端面及び上端面は、第1補助プレート38における基部38aの後面及び延在部38bの下面に対して接合されず(非接触とされ)、第1補助プレート38から僅かに離間している。
【0033】
図4(a)に示すように、車体11のフレームは、フロントプロテクタ36と第1補助プレート38との間に架設され前後方向へ延びる第2補助プレート39を備える。第2補助プレート39は、下端面がアンダープレート30の上面に接合されている。また、第2補助プレート39は、前端面がフロントプロテクタ36の後面に接合されるとともに、後端面が第1補助プレート38における基部38aの前面に接合されている。
【0034】
次に、リヤサスペンション40の配設構造について説明する。
まず、リヤサスペンション40について説明する。図3に示すように、リヤサスペンション40は、リーフスプリング41を備える。このリーフスプリング41は、バネ鋼製の板であるリーフ41aを複数枚重ねるとともに、それら複数のリーフ41aを長さ方向の複数箇所でクリップ41cによって一体に纏めてなる。
【0035】
リヤサスペンション40が配設される車体11のフレームにおいて、図3及び図4(a)に示すように、メンバプレート31における基部31aの後面において、基部31aの左右両側部それぞれには後側補強プレート43が固設されている。後側補強プレート43は、矩形板状の第1固定部43aと、この第1固定部43aに対し直交する矩形板状の第2固定部43bとからL字状に形成されている。そして、後側補強プレート43は、第1固定部43aが、メンバプレート31の基部31aの後面に接合されてメンバプレート31に固設されている。
【0036】
図4(b)に示すように、後側補強プレート43は、メンバプレート31の基部31aを挟んで、前側補強プレート37と対向する位置に第1固定部43aが位置するように基部31aに接合されている。また、前側補強プレート37は、メンバプレート31の基部31aを挟んで第1固定部43aの左右方向の中央部に対向する位置に配設されている。その結果、メンバプレート31の基部31aは、その左右両側部が後側補強プレート43の第1固定部43aと、前側補強プレート37によって前後から挟まれるとともに、後側補強プレート43と前側補強プレート37とに一体化されている。
【0037】
また、後側補強プレート43における第2固定部43bの上面は、リヤサイドメンバ33の下端面に接合されている。そして、図4(a)に示すように、後側補強プレート43における第2固定部43bの上面と、メンバプレート31における区画部31bの下面との間で、リヤサイドメンバ33の前側部が上下から挟まれている。
【0038】
後側補強プレート43における第2固定部43bの下面にサスペンションブラケット42の上面が接合されている。このサスペンションブラケット42は、接合板42aと、この接合板42aの両端から延設された軸支部42bとから形成されている。そして、図3に示すように、サスペンションブラケット42の軸支部42bには、ピン44によってリーフスプリング41の前端が軸支されている。また、リーフスプリング41の後端は、リヤサイドメンバ33の後下端にシャックル45を介して取り付けられている。そして、リーフスプリング41の前後両端が支持されることによりリヤサスペンション40が車体11に配設されるとともに、リヤサスペンション40によってリヤアクスルハウジング18の両端部が支持され、さらに、走行モータ17もリヤサスペンション40によって支持されている。
【0039】
そして、車体11のフレーム構造において、リーフスプリング41の前端は、メンバプレート31及びリヤサイドメンバ33に接合されたサスペンションブラケット42に支持されている。すなわち、リーフスプリング41は、車体11のくびれ部を形成するメンバプレート31に対し、サスペンションブラケット42を介して連結され、リーフスプリング41はフロアFの直後に位置するメンバプレート31に連結されている。
【0040】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)トーイングトラクタ10において、前輪15及び後輪16には路面から上方への力が作用するとともに、車体11にはバッテリ13の荷重が作用する。このため、車体11において、フロアFと後輪16の間の部位を形成するメンバプレート31には応力が集中する。このような車体11において、メンバプレート31(基部31a)の後面には後側補強プレート43(第1固定部43a)が接合されるとともに、メンバプレート31の前面には前側補強プレート37が接合され、後側補強プレート43と前側補強プレート37によってメンバプレート31が前後から挟まれている。そして、メンバプレート31に応力が集中したとき、その応力は前側補強プレート37及び後側補強プレート43によって受承される。よって、バッテリ13を運転席12の前方に配設したトーイングトラクタ10であっても、メンバプレート31を補強してその変形を防止することができる。
【0041】
(2)後側補強プレート43は、メンバプレート31に接合される矩形板状の第1固定部43aと、第1固定部43aに対し直交するように延びる矩形板状の第2固定部43bとからL字状に形成されている。第1固定部43aがメンバプレート31に接合されるとともに、第2固定部43bにサスペンションブラケット42が接合され、このサスペンションブラケット42にリーフスプリング41が支持されている。そして、第2固定部43bには、リーフスプリング41から上方への力が作用したとき、その力は後側補強プレート43の直角部を回転中心として第1固定部43aの後方への力として作用する。よって、後側補強プレート43をL字状に形成することにより、リーフスプリング41からの上方への力が分散され、メンバプレート31への応力集中を緩和することができる。
【0042】
(3)後側補強プレート43は、メンバプレート31に接合される矩形板状の第1固定部43aと、第1固定部43aに対し直交するように延びる矩形板状の第2固定部43bとからL字状に形成されている。そして、第2固定部43bにサスペンションブラケット42を介してリーフスプリング41が支持される。よって、例えば、サスペンションブラケット42をリヤサイドメンバ33の下端面に直接接合する場合と比べると、サスペンションブラケット42の接合面積を広く確保することができ、サスペンションブラケット42を安定した状態に接合することができる。
【0043】
(4)メンバプレート31と、サイドプレート35と、第1補助プレート38とにより、四角箱状の空間Sが区画されている。このため、メンバプレート31の前方において、メンバプレート31に発生する応力を、前述の前側補強プレート37で受承するのに加え、サイドプレート35、第1補助プレート38により形成される四角箱状の形状でもって安定して受承することができ、メンバプレート31を効果的に補強することができる。
【0044】
(5)第1補助プレート38の前面には、第2補助プレート39の後端面が接合され、この第2補助プレート39の前端面はフロントプロテクタ36の後面に接合されている。このため、第1補助プレート38に受承された応力は、さらに第2補助プレート39を介してフロントプロテクタ36に受承され、第1補助プレート38の応力を分散させるとともにフロントプロテクタ36に向けて減衰させることができる結果、メンバプレート31を補強することができる。
【0045】
(6)前側補強プレート37は、第1補助プレート38に対し接合されておらず、前側補強プレート37の前端面及び上端面は、第1補助プレート38の後面及び下面から離間し、非接触とされている。このため、前側補強プレート37と第1補助プレート38とを接合する(接触させる)場合と比べると、前側補強プレート37及び第1補助プレート38の組付けを簡単に行うことができるとともに、両プレート37,38の組付け時の寸法公差に留意する手間を省くことができる。
【0046】
(7)車体11の左右両側にはサイドプレート35が設けられ、このサイドプレート35によって、車体11の中央部(前輪15と後輪16の間)の強度を向上させている。このサイドプレート35の後端面がメンバプレート31に接合されている。よって、メンバプレート31に発生した応力をサイドプレート35に分散させることができ、メンバプレート31を補強することができる。
【0047】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
○ 実施形態において、サイドプレート35の後端面がメンバプレート31の前面に接合されていなくてもよい。
【0048】
○ 実施形態において、第2補助プレート39の後端面が第1補助プレート38の前面に接合されていなくてもよく、第2補助プレート39の前端面がフロントプロテクタ36の後面に接合されていなくてもよい。
【0049】
○ 実施形態において、前側補強プレート37の前端面が第1補助プレート38の後面に接合されていてもよく、前側補強プレート37の上端面も第1補助プレート38の下面に接合されていてもよい。
【0050】
○ 実施形態において、前側補強プレート37は矩形板状でなくてもよく、メンバプレート31と、サイドプレート35と、第1補助プレート38によって区画される空間Sは四角箱状でなくてもよい。
【0051】
○ 実施形態において、後側補強プレート43はL字状でなくてもよく、例えば、メンバプレート31に接合される第1固定部43aのみの矩形板状であってもよい。この場合、サスペンションブラケット42はリヤサイドメンバ33の下端に直接接合される。
【符号の説明】
【0052】
F…フロア、10…バッテリ式トーイングトラクタ、11…車体、13…バッテリ、15…前輪、16…後輪、31…メンバプレート、35…サイドプレート、36…フロントプロテクタ、37…前側補強プレート、38…第1補助プレート、39…第2補助プレート、41…サスペンションとしてのリーフスプリング、42…サスペンションブラケット、43…後側補強プレート、43a…第1固定部、43b…第2固定部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の前輪と後輪の間にフロアが区画されるとともに該フロアと前記前輪との間にバッテリが配設されたバッテリ式トーイングトラクタのフレーム構造であって、
前記車体の後部におけるフレームが、前記フロアの後側を区画するとともに前記車体の車幅方向へ延びるメンバプレートを備え、該メンバプレートが前側補強プレート及び後側補強プレートによって前後から挟まれていることを特徴とするバッテリ式トーイングトラクタのフレーム構造。
【請求項2】
前記後側補強プレートは、前記メンバプレートの後面に固定される第1固定部と、該第1固定部に対し直交する方向へ延びる第2固定部とからL字状に形成され、前記第2固定部にはサスペンションを支持するサスペンションブラケットが固定される請求項1に記載のバッテリ式トーイングトラクタのフレーム構造。
【請求項3】
前記メンバプレートには、前記前側補強プレートを前記メンバプレートと共に囲繞するように前記前側補強プレートより前方に配設される第1補助プレートが接合される請求項1又は請求項2に記載のバッテリ式トーイングトラクタのフレーム構造。
【請求項4】
前記前側補強プレートは、前記第1補助プレートに対し非接触とされている請求項3に記載のバッテリ式トーイングトラクタのフレーム構造。
【請求項5】
前記メンバプレートの前方には前記フロアの前側を区画するフロントプロテクタが配設されるとともに、前記第1補助プレートと前記フロントプロテクタとには第2補助プレートが架設される請求項3又は請求項4に記載のバッテリ式トーイングトラクタのフレーム構造。
【請求項6】
前記車体の中央部における車幅方向の両側部には、前記車体の中央部を補強するサイドプレートが前後方向に架設され、前記メンバプレートには前記サイドプレートが接合される請求項1〜請求項5のうちいずれか一項に記載のバッテリ式トーイングトラクタのフレーム構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−98672(P2011−98672A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−255416(P2009−255416)
【出願日】平成21年11月6日(2009.11.6)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】