説明

バッテリ搭載機構

【課題】車両の走行時及び停止時の双方の場合にバッテリを効率的に冷却する。
【解決手段】バッテリ搭載機構200aは、バッテリ20aと、バッテリ20aの周囲を覆うカバー208aと、カバー208aの前方側の面に設けられ、走行風をカバーの空間270内に導入する走行風取入口264と、カバー208aの後方側の面に設けられ、空間270内に導入された走行風が排出される走行風取出口254及び走行風排出口256と、バッテリ20aよりも下方の位置に設けられた対流風取入口266と、バッテリ20aよりも上方の位置に設けられた対流風取出口258及び対流風排出口260とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両におけるバッテリ搭載機構に関し、特に、効率的に冷却をすることのできるバッテリ搭載機構に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、燃費向上のため車両に対してハイブリッドシステムや燃料電池システムが搭載され、実用化されるに至っている。ハイブリッドシステムや燃料電池システムでは、走行用モータに対して安定的に電力を供給するとともに回生電力を充電するためにバッテリが搭載されている。このバッテリは車両の走行に応じて大電流の充放電を繰り返すため発熱量が大きく、所望の性能を発揮させるためには適切に冷却することが必要となる。
【0003】
自動車ではバッテリがボディによって覆われた閉空間に搭載されていることから走行風による冷却が困難であり、一般的にファンの回転による強制風冷が行われている。
【0004】
これに対して、自動二輪車でもフェアリングを備えている車種も存在するが、一般的に自動車ほどには覆われてなく、レイアウトを工夫することによってバッテリに対して走行風を当てて冷却することができる。
【0005】
特許文献1及び特許文献2には、バッテリを効率的に冷却する手段として、自動二輪車のバッテリをダウンチューブに沿って配置するとともに、その外周をバッテリカバーにより覆い、該バッテリカバーに走行風の取入れ口と取出口とを設けた構成が提案されている。このようなバッテリカバーによれば、バッテリを保護することができるとともに、バッテリから発せられる熱を外部に効率的に放熱することができて好適である。
【0006】
【特許文献1】特開平2006−151189号公報
【特許文献2】特開平2006−1523号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、前記の特許文献1及び特許文献2記載のバッテリ搭載機構では、風による冷却が有効となるのは走行時であって、停止時には効率的な冷却が困難である。停止時にも効率的に冷却をするためには、一般的にはファンを設けるが、自動二輪車の場合には搭載スペースが少ない場合が多く、しかも重量、コスト及びデザインの観点から自動車よりも制約があり、バッテリの冷却のためにファンを設けることが困難な場合がある。
【0008】
本発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、車両の走行時及び停止時の双方の場合にバッテリを効率的に冷却することのできるバッテリ搭載機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、車両におけるバッテリ搭載機構であって、以下の特徴を有する。
【0010】
第1の特徴:
バッテリと、前記バッテリの周囲を覆うバッテリカバーと、走行風を前記バッテリカバー内に導入する走行風取入口と、前記バッテリカバー内に導入された走行風が排出される走行風取出口と、前記バッテリの中心よりも下方の位置に設けられた対流風取入口と、前記バッテリの中心よりも上方の位置に設けられた対流風取出口とを有することを特徴とする。
【0011】
これにより、車両の走行時に走行風を走行風取入口からバッテリカバー内に導入してバッテリに当てて冷却し、走行風取出口から排出して効率的な冷却ができる。また、車両の停止時又は低速走行時には、バッテリの熱によって、バッテリカバー内で下方の対流風取入口から上方の対流風取出口に流れる空気の対流が発生し、該熱がバッテリカバー内に籠もることがなく効率的に放熱されて冷却できる。
【0012】
第2の特徴:
前記バッテリ及び前記バッテリカバーは、ハンドルを回転自在に軸支するヘッドパイプから後斜め下方向かって延在するダウンフレームに沿って配置され、走行動力源が前記バッテリカバーの下端部の近傍に配置されていることを特徴とする。
【0013】
バッテリは重量が大きいが、ダウンフレームに沿って配置することにより、他の走行動力源との重量バランスが向上する。
【0014】
第3の特徴:
前記走行風取入口、前記走行風取出口、前記対流風取入口及び前記対流風取出口は、走行動力源に対向する面以外の面に設けることにより、走行駆動源の発する熱がバッテリカバー内に入ることがなく、バッテリをより効率的に冷却することができる。
【0015】
第4の特徴:
前記バッテリの温度を検出するバッテリ温度センサと、前記走行風取入れ口と前記バッテリとの間に設けられた開閉部と、前記バッテリ温度センサによる検出温度が所定温度以下の場合に、前記開閉部を駆動して前記走行風取り入れ口と前記バッテリとの間を遮断させ、走行風が前記バッテリに当たることを防止する制御部とを有することを特徴とする。
【0016】
温度が低い状態においてはバッテリは活性化しないことがあるため、バッテリ温度センサにより検出された温度に基づいて開閉部を制御することにより、低温時にバッテリを不必要に冷却せず、活性化を図ることができる。
【0017】
第5の特徴:
前記対流風取出口は、前記車両の内側を指向する面に設けられていると、バッテリカバー内に雨や粉塵が進入することが抑制されるとともに、デザイン性が向上する。
【0018】
第6の特徴:
前記走行風取出口及び前記対流風取出口には、それぞれ前記バッテリを支持するステーが挿通されていると、ステーを通すための別の孔を設ける必要がない。
【0019】
第7の特徴:
車両におけるバッテリ搭載機構であって、走行動力源に供給される空気を浄化するフィルタと、該フィルタを経由して走行駆動源に空気を導入するフィルタ経由通路とを有し、前記バッテリは、前記フィルタ経由通路に設けられていることを特徴とする。
【0020】
フィルタ経由通路内では走行駆動源によって吸気される空気の流れが発生するため、該フィルタ経由通路にバッテリを設けることによって該バッテリの回りに空気の流れが生じる。これにより、車両の停止時においてもバッテリを冷却することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係るバッテリ搭載機構によれば、車両の走行時に走行風を走行風取入口からバッテリカバー内に導入してバッテリに当てて冷却し、走行風取出口から排出して効率的な冷却ができる。また、車両の停止時又は低速走行時には、バッテリの熱によって、バッテリカバー内で下方の対流風取入口から上方の対流風取出口に流れる空気の対流が発生し、該熱が効率的に放熱されて冷却できる。
【0022】
また、本発明に係るバッテリ搭載機構によれば、エアクリーナ通路にバッテリを設けることによって該バッテリの回りに空気の流れが生じ、車両の停止時においてもバッテリを冷却することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明に係るバッテリ搭載機構について実施の形態を挙げ、添付の図1〜図18を参照しながら説明する。図1に示すように、第1の実施の形態に係るバッテリ搭載機構200a、200bは、ハイブリッド式の自動二輪車10に搭載されている。先ず、自動二輪車10について説明する。なお、理解を容易にするために図3〜図6においては、バッテリ搭載機構200aのうちカバー208a、208b等を省略してバッテリ20a及び20bが視認可能なように図示し、図8〜図10においてはカバー208aのみを図示する。
【0024】
図1に示すように、自動二輪車10は、ヘッドパイプ11に回転自在に軸支されてフロントマスク12の端部から突出したハンドル13と、該ハンドル13により操舵される前輪14と、シート15と、後輪16に図示しないチェーンを介して駆動力を供給するパワーユニット(走行動力源)18と、該パワーユニット18の制御を行う制御ユニット19と、始動、駆動及び回生等に供されるバッテリ20a及び20bとを有する。これらのバッテリ20a及び20b及びその搭載用のバッテリ搭載機構200a、200bについては後述する。
【0025】
自動二輪車10の車体はフレーム21をベースに構成されており、該フレーム21はカバー208a、208b等で覆われる。
【0026】
フレーム21は、先端部のダウンフレーム21aがヘッドパイプ11に接続されている。なお、ここでいうダウンフレーム21aは、ヘッドパイプ11から後斜め下方向かって延在している部分であり、車種によって1本である場合、左右一対の2本である場合、左右二対の4本である場合等がある。
【0027】
また、制御ユニット19及びバッテリ20a、20bはシート15の下方より若干前方に配設され、カバーの内部に配置されている。自動二輪車10の右側方でパワーユニット18の近傍には、運転者が足を置くためのステップ22が設けられている。
【0028】
パワーユニット18は、走行駆動力を発生する内燃機関(走行駆動源)26とモータ・ジェネレータ36とを具備する。すなわち、この自動二輪車10はハイブリッド式である。内燃機関26には、燃焼室26a(図3参照)内で燃焼が起こった後の排ガスを排出するためのエキゾーストパイプ27(図1参照)が連結され、さらに、このエキゾーストパイプ27には、マフラー28が連結されている。エキゾーストパイプ27はパワーユニット18の側方近傍を通って自動二輪車10の後尾に向かって延在し、マフラー28は、パワーユニット18の後端部側方近傍でエキゾーストパイプ27に連結されている。
【0029】
図2に示すように、バッテリ20aは、左のハンドル先端13aと、ヘッドパイプ11と、前輪14とによって形成される三角領域30aの範囲内に配置されており、バッテリ20bは、右のハンドル先端13bと、ヘッドパイプ11と、前輪14とによって形成される三角領域30bの範囲内に配置されている。このような配置によれば、不測の事態において自動二輪車10を横倒しとする場合、又は側方の壁に立てかける場合に、地面や壁は最初にハンドル先端13a又は13bに当接して自動二輪車10が支えられ、バッテリ20a及び20bに過大な荷重がかかることがない。
【0030】
パワーユニット18の構成につき、図3を参照して説明する。なお、この図3はパワーユニット18の断面平面図であり、左右方向が車幅方向、上方向が車両前方、下方向が車両後方に相当する。
【0031】
図3に示すように、パワーユニット18は、走行駆動力を発生する内燃機関26及びモータ・ジェネレータ36と、内燃機関26のクランク軸38に設けられた発進クラッチ40と、該発進クラッチ40を介してクランク軸38の回転を有段変速する変速機42と、発進クラッチ40と変速機42との間に設けられた変速用クラッチ44とを有する。モータ・ジェネレータ36は内燃機関の始動時においてはクランク軸38を回転駆動させるスタータモータとして機能する。パワーユニット18は、シリンダヘッド46a、シリンダ46b及びクランクケース46cが一体的に結合されて外延部を構成している。クランク軸38は複数のベアリング48a、48b、48cによって回転自在に軸支されている。
【0032】
内燃機関26は、クランク軸38に連結されたコンロッド50と、該コンロッド50の先端に設けられ、シリンダ46b内を往復運動するピストン52と、シリンダ46b内端部の燃焼室26aに火花を供給する点火プラグ54と、図示しないバルブを開閉動作させて燃焼室26aに対する吸排気を行うカム機構56とを有する。カム機構56はクランク軸38からタイミングチェーン56aを介して駆動される。
【0033】
モータ・ジェネレータ36はクランク軸38の左端部に配置されており、クランクケース46cに設けられてクランク軸38と同軸状に構成されたステータ58と、クランク軸38の端部に固定されてステータ58を覆うように設けられたアウタロータ60とを有する。ステータ58には環状配置された複数のコイル61が設けられている。アウタロータ60にはコイル61に対して狭い隙間を形成するように配置された複数のマグネット62が固定されている。モータ・ジェネレータ36は、制御ユニット19の作用下に回転制御がなされる。
【0034】
発進クラッチ40は、発進時、停止時にクランク軸38とプライマリギア67との間を接続、遮断するものであり、クランク軸38の右端部に配置されている。この発進クラッチ40は、スリーブ64の一端に固定されたカップ状のアウタケース66と、他端に設けられたプライマリギア67と、クランク軸38の右端部に固定されたアウタプレート68と、アウタプレート68の外線部にウェイト70を介して半径方向外側を向くように取り付けられたシュー72と、シュー72半径方向内側に付勢するためのスプリング74とを有する。発進クラッチ40では、内燃機関回転数Nが所定値以下の場合にアウタケース66とシュー72が離間しており、クランク軸38と変速用クラッチ44との間が遮断状態(動力が伝達されない切り離し状態)となっている。内燃機関回転数Nが上昇して所定値を超えると、ウェイト70に働く遠心力がスプリング74により半径方向内側に働く弾性力に抗し、ウェイト70が半径方向外側に移動することによって、シュー72がアウタケース66の内周面を所定値以上の力で押圧する。これにより、クランク軸38の回転がアウタケース66を介してプライマリギア67に伝達され、動力が伝達される接続状態となる。
【0035】
変速用クラッチ44はプライマリギア67とメイン軸76とを断接するものであり、メイン軸76の右端部に配置されている。この変速用クラッチ44は、プライマリギア67に噛合するカップ形状のアウタハウジング78と、該アウタハウジング78の内側に設けられたボス80と、アウタハウジング78とボス80との間に交互に積層状に設けられた複数のフリクションディスク82及びクラッチディスク84と、プレッシャープレート86と、該プレッシャープレート86をボス80に密着させるように弾性付勢するクラッチスプリング88と、深溝玉型のベアリング90を介してボス80を軸方向に押圧操作するクラッチ操作機構92とを有する。クラッチ操作機構92はシフトペダルの操作に連動して動作する。
【0036】
積層状に設けられた複数のフリクションディスク82及びクラッチディスク84は、軸方向の一方がプレッシャープレート86に対面しており、他方がボス80の一部であるサポート面80aと対面している。クラッチ操作機構92がシフトペダルによって操作されていないときには、フリクションディスク82及びクラッチディスク84はプレッシャープレート86とサポート面80aにより強く挟持されており、プライマリギア67から入力されたトルクはボス80に伝達され、さらにボス80のスプライン構成よってメイン軸76に伝達され、接続状態となる。
【0037】
ボス80がクラッチ操作機構92によって押圧されるときには、該ボス80はクラッチスプリング88を圧縮しながら軸方向に移動し、フリクションディスク82及びクラッチディスク84から離間することになる。したがって、プライマリギア67のトルクはメイン軸76に伝達されず、遮断状態となる。
【0038】
変速用クラッチ44には、アウタハウジング78の歯数に基づいて入力回転速度Niを検出するための入力回転センサ94、及びメイン軸76の所定箇所の外周歯に基づいて出力回転速度Noを検出する出力回転センサ96が設けられている。入力回転センサ94及び出力回転センサ96は非接触型であって、検出した速度信号を制御ユニット19に供給している。
【0039】
変速機42は、変速用クラッチ44から供給される回転を、シフトペダルの操作に基づいて有段変速して後輪16に伝達する。この変速機42は、入力軸としての前記のメイン軸76と、該メイン軸76に対して平行配置されたカウンター軸100と、カウンター軸100に設けられた駆動ギア102a、102b、102c及び102dと、メイン軸76に設けられた従動ギア104a、104b、104c及び104dと、駆動ギア102aに係合するシフトフォーク106aと、従動ギア104cに係合するシフトフォーク106bと、シフトフォーク106a、106bを軸方向にライド自在に保持する支持軸108と、シフトフォーク106a、106bの端部を溝110a、110bに沿わせながらスライドさせるシフトドラム112とを有する。駆動ギア102a、102b、102c及び102dは、この順に従動ギア104a、104b、104c及び104dと噛合している。駆動ギア102bは左右にスライドしたとき、隣接する駆動ギア102a又は102cに側面のダボが係合し、従動ギア104cは左右にスライドしたとき、隣接する従動ギア104b又は104dに側面のダボが係合する。
【0040】
駆動ギア102a及び102cはメイン軸76に対して回転自在に保持され、従動ギア104b、104dはカウンター軸100に対して回転自在に保持されている。駆動ギア102b及び従動ギア104cはメイン軸76及びカウンター軸100に対してスプライン結合され軸方向にスライド可能である。駆動ギア102d及び従動ギア104aはメイン軸76及びカウンター軸100に固定されている。
【0041】
シフトドラム112の端部には回転機構122が設けられており、該回転機構122によってシフトペダルの操作がシフトスピンドルを介してシフトドラム112を回転駆動する。これにより、シフトフォーク106a、106bは溝110a、110bに沿って軸方向に移動し、駆動ギア102b及び従動ギア104cを変速段に応じてスライドさせる。
【0042】
駆動ギア102bが左方向にスライドしたときには、メイン軸76のトルクは駆動ギア102b、102a及び従動ギア104aを介してカウンター軸100に伝達される。駆動ギア102bが中立位置で従動ギア104cが左方向にスライドしたときには、メイン軸76のトルクは駆動ギア102b、従動ギア104b及び従動ギア104cを介してカウンター軸100に伝達される。従動ギア104cが中立位置で駆動ギア102bが右方向にスライドしたときには、メイン軸76のトルクは駆動ギア102b、102c及び従動ギア104cを介してカウンター軸100に伝達される。駆動ギア102bが中立位置で従動ギア104cが右方向に移動したときには、メイン軸76のトルクは駆動ギア102d、従動ギア104d及び従動ギア104cを介してカウンター軸100に伝達される。このようにして、メイン軸76の回転は4段階に変速されてカウンター軸100に伝達され、又はニュートラル状態となる。
【0043】
メイン軸76及びカウンター軸100は、ベアリング114a、114b、116a、116bによって回転自在に保持されている。カウンター軸100の端部にはスプロケット118が設けられ、該スプロケット118は図示しない前記チェーンを介して後輪16に回転を伝達する。また、カウンター軸100の近傍には、非接触でカウンター軸100の回転速度を検出する車速センサ120が設けられており、検出した回転速度を制御ユニット19に供給している。
【0044】
次に、自動二輪車10に搭載される第1の実施形態に係るバッテリ搭載機構200a及び200bのうち、代表的にバッテリ搭載機構200aについて図4〜図6を参照しながら説明する。バッテリ搭載機構200bはバッテリ搭載機構200aと左右対称に構成されていることから対応する箇所には同符号を付して、詳細な説明を省略する。また、バッテリ搭載機構200aにおける、バッテリ20a、下部ステー204a、プロテクトバー206a及びカバー208aは、バッテリ搭載機構200bにおける、バッテリ20b、下部ステー204b、プロテクトバー206b及びカバー208bに相当する。上部ステー202は左右共通である。
【0045】
図4〜図6に示すように、バッテリ20aは長尺で、略平行な左右対称配置であり、ダウンフレーム21aに略沿って縦方向に配置されており、バッテリ搭載機構200aの各ステーにより支持されている。
【0046】
バッテリ20a及び20bは、ハイブリッドシステムにおいてモータ・ジェネレータ36に対して電力を安定して供給するとともに、回生電力を十分に蓄えておくことができるように大型で重量の大きいものが用いられている。バッテリ20a、20bとしては、種々の二次電池を採用可能であり鉛蓄電池、ニッケル水素、リチウムイオン二次電池及び電気二重層キャパシタ等を用いることができる。バッテリ20a(及び20b)は、図7に示すように断面略90°の円弧形状であり、内部にそれぞれ3本の円柱形のセル201が三角形状に蜜に配列されている。
【0047】
バッテリ20a、20bの重量は大きいが、ダウンフレーム21aに沿って配置することにより、他のパワーユニット18等との重量バランスが向上する。また、バッテリ20a、20bをダウンフレーム21aに沿って配置することにより、いわゆるレッグシールドの効果を奏し、搭乗者に対して走行風が直接的に当たることを防止する。また、適当な形状に設定することにより、ステップ22とは別の前方足置き部としても利用可能である。
【0048】
バッテリ20aとバッテリ20bは、パワーユニット18に対する走行風を遮ることのないように、正面視でパワーユニット18を略挟む位置に配置されている。
【0049】
バッテリ搭載機構200aは、バッテリ20aと、該バッテリ20aを支持する上部ステー202と、下部ステー204aと、上部ステー202の左側部分と下部ステー204aとを接続するプロテクトバー206aと、バッテリ20aの周囲を覆うカバー208aとを有する。
【0050】
上部ステー202は、中央部がヘッドパイプ11の下端近傍のブラケット210にボルト止めされており、左右に向かって延在し、左右の端部がバッテリ20a及び20bの上部に設けられたブラケット212にボルト止めされている。上部ステー202とブラケット212は防振ゴム214を介して接続されている。
【0051】
下部ステー204aは、二股の分岐216a及び216bを有するY字形状であり、一端がバッテリ20aの下面から延在するボルト217aに対してナットにより固定されている。下部ステー204aとボルト217aとは防振ゴム218を介して接続されている。
【0052】
下部ステー204aの一方の分岐216aは後斜め上方に向かって延在しており、端部がダウンフレーム21aに設けられたポスト218aにボルト止めされている。下部ステー204aの他方の分岐216bは後斜め上方に向かって延在しており、端部がダウンフレーム21aに設けられたポスト218bにボルト止めされている。ポスト218bはポスト218aよりもやや後方に設けられている。このようにバッテリ20aは、上部ステー202及び下部ステー204aの2つの分岐216a及び216bによって異なる3点で支持されているので剛性があり、捩れや振動が発生しにくい。
【0053】
プロテクトバー206aは、バッテリ20aと平行で、該バッテリ20aよりも車幅方向外側に配置され、上部及び下部が内側に向かって屈曲し、上部ステー202及び分岐216bにボルト止めされている。プロテクトバー206aは、図5から明らかなように正面視でバッテリ20aの上下及び側方を覆うように設けられるとともに、図4から明らかなように側面視でバッテリ20aの中心に沿って設けられている。すなわち、プロテクトバー206aは、上端が上部ステー202に固定され、バッテリ20aの上方を経由して下方に向けて屈曲し、バッテリ20aの側方を該バッテリ20aに沿って延在している。また、プロテクトバー206aの下端部は、内側に向けて屈曲し、分岐216bに固定されている。このようなプロテクトバー206aの配置によれば、バッテリ20aを外方から保護することができる。また、プロテクトバー206aにより上部ステー202と下部ステー204aとが直接に接続されて支持強度が増し、バッテリ20aに加わる力を低減することができる。
【0054】
なお、図6に示すように、分岐216bは車幅内方に向かって緩やかに湾曲しており、該湾曲部の内方には衝撃吸収構造としての孔220が設けられている。孔220によれば、バッテリ搭載機構200aに対して不測の過大な負荷が加わったときに、該孔220の部分が他の部分と比較して強度が弱くなっていることから、湾曲形状と相俟ってこの部分が屈曲することになる。すなわち、過大な荷重を受けた際には、この部分の屈曲によって衝撃荷重が吸収され、バッテリ20aやダウンフレーム21aに対する影響を低減できる。この孔220の部分が屈曲した場合であっても、下部ステー204aは交換可能であることから修理は容易である。なお、孔220の周辺の強度が低いのは、他の部分に対する相対的な強度が低いのであって、実用上問題のない程度にバッテリ20aを安定して支持することのできる強度を有することはもちろんである。
【0055】
次に、図8〜図11に示すように、左側のカバー208aは樹脂製であって、メインカバー250と、該メインカバー250の前方部分を覆うように設けられる縦長のサブカバー252とを有する。サブカバー252をメインカバー250に対して覆うように設けることにより、内部にバッテリ20aを収納する空間270を容易に設けることができる。また、サブカバー252を取り外すことにより、バッテリ20aが容易に露呈され、メンテナンスを行いやすい。
【0056】
カバー208aは、走行時の自動二輪車10の空気抵抗を軽減するための、いわゆるフェアリングの機能も有する。デザイン性を考慮し、メインカバー250とサブカバー252は異なる色にしてもよい。
【0057】
メインカバー250は、自動二輪車10の左側面のうち、ヘッドパイプ11、パワーユニット18の前方約半分及びダウンフレーム21a等を一体的に覆う面積の広いカバーである。
【0058】
メインカバー250は、図11に示す側面視で、ヘッドパイプ11の部分を覆うヘッド部分250aと、ヘッド部分250aからヘッドパイプ11の延在する向きに略沿って斜め上方にやや突出した三角突部250bと、ヘッド部分250aからダウンフレーム21a及びバッテリ20aに沿って斜め下方に向けてやや広がるように延在するサイド部250cとを有する。サイド部250cには、パワーユニット18の一部を露呈させる第1切欠部250dと、ポスト218a及びポスト218bの部分を露呈させる(図11参照)第2切欠部250eとが設けられている。メインカバー250は曲面及び曲線からなる滑らかな形状に形成されている。
【0059】
また、メインカバー250は走行風取出口254と、走行風排出口256と、対流風取出口258と、対流風排出口260とを有する。
【0060】
走行風取出口254は、サイド部250cの前方のやや下方部に設けられた適度な通風が可能な大きさ孔であり、下部ステー204aが挿通している。
【0061】
対流風取出口258は、サイド部250cの前方の上方部に設けられた適度な通風が可能な大きさ孔であり、上部ステー202が挿通している。このように、上部ステー202及び下部ステー204aの各先端部はメインカバー250よりも外方に突出しており、バッテリ20aはメインカバー250よりも外側で、サイド部250cの前方の辺に略沿って、配置されている。
【0062】
走行風取出口254は、側面視でバッテリ20aの下端部よりも上方の部分を含む形状であり、走行風がバッテリ20aの少なくとも一部に当たるように設定されている。対流風取出口258は、側面断面視でバッテリ20aの上端部よりも上方の部分を含む形状であり、バッテリ20aで熱せられた空気が上方へ抜けるように設定されている。
【0063】
対流風取出口258は、バッテリ20aの中心位置よりも上方に配置されていることが好ましい。また、対流風取出口258は、少なくとも一部がバッテリ20aの上端部よりも上方となるように配置されていると、バッテリ20aの発生する熱が上方で滞留することが防止できてより好ましい。
【0064】
対流風取出口258は、バッテリ20aからみて直上ではなく、車体内側に指向する面に開口していることから空間270内に雨や粉塵が進入することが抑制される。つまり、図1及び図11から明らかなように、鉛直に落下し又は外側方向から当たる雨滴はサブカバー252で遮断され、内側方向から当たる雨滴もヘッドパイプ11、三角突部250b及び右側のカバー208b等によってほとんど遮られる。また、対流風取出口258は外側からは視認されず、デザイン性が向上する。
【0065】
走行風排出口256は、走行風取出口254と第2切欠部250eとの間に設けられた孔で、前方に向かって幅狭となる略三角形状であり、走行風取出口254を通った走行風がスムーズに排出される形状及び大きさを有する。走行風排出口256には、走行風を整流するための略水平な複数枚のブレード262が設けられている。
【0066】
対流風排出口260は、三角突部250bに設けられた孔で、上方に向かって幅狭となる略三角形状であり、対流風取出口258を通った対流風がスムーズに排出される形状及び大きさを有する。ここで、対流風とは、熱の伝搬の一形式で、熱が気体の運動によって運搬される現象であり、温度差によって自然に生じる風である。
【0067】
図11から明らかなように、対流風排出口260は対流風取出口258の上端部よりも上方になるように設定されている。
【0068】
サブカバー252は、サイド部250c前方に装着されて、バッテリ20aを覆う縦長のカバーであって、メインカバー250の前方下端部からヘッド部分250aまで延在している。サブカバー252とメインカバー250は、前端稜線部が一致するように(又は、サブカバー252がメインカバー250の前端稜線部をやや覆うように)設定されている。
【0069】
サブカバー252の下部は、側面視で下に突の鋭角形状であり、上方に向かって幅広となり、サブカバー252の中間部分及び上方部分はバッテリ20aよりもやや広く略等しい幅となっている。サブカバー252は略円弧状の前側面252aと、後面252bとを有する。また、サブカバー252は走行風取入口264と、対流風取入口266とを有する。
【0070】
走行風取入口264は、前側面252aにおいて下方の鋭角部から全体の略1/3の高さの部分までに設けられた複数の孔で、全体として下方に向かって鋭角となる形状に設定されている。各走行風取入口264は、強度とデザインの観点から設定された略水平のブリッジ268によって区分されている。
【0071】
走行風取入口264のうち少なくとも上方の複数個は、走行風取出口254と同じ高さで、少なくともバッテリ20aの下端部が露呈されるように設定されている。これにより、自動二輪車10の走行時に、走行風がバッテリ20aの少なくとも下端部に当たることになる。
【0072】
対流風取入口266は、後面252bにおいて下方の鋭角部の面に設けられた縦方向に長尺な孔であり、バッテリ20aよりも下方に設けられている。また、対流風取入口266は、バッテリ20a及びサブカバー252の延在する方向から見て、バッテリ20aの下端部が露呈するように設定されている。したがって、バッテリ20aで熱せられた空気が上方へ抜ける際、下方からの空気が障害なく吸い込まれる。
【0073】
サブカバー252はメインカバー250に対して略隙間なく装着され、バッテリ20aは筒状の空間270に配置されることになる。空間270は走行風取入口264、走行風取出口254、対流風取入口266及び対流風取出口258以外には外部に連通する孔のない略閉空間であり、バッテリ20aはパワーユニット18等から発生する熱、粉塵及び雨等から遮断される。特に、走行風取入口264、走行風取出口254、対流風取入口266及び対流風取出口258は、パワーユニット18に対向する面以外の面に設けられており、該パワーユニット18が発する熱が空間270内に入ることがなく、バッテリ20aをより効率的に冷却することができる。また、空間270は適度に狭く構成されており走行風がバッテリ20aに当たりやすい。
【0074】
このように構成されるバッテリ搭載機構200aでは、自動二輪車10の走行時に走行風を走行風取入口264から空間270内に導入してバッテリ20aの少なくとも一部に当てて冷却し、走行風取出口254を介して走行風排出口256から排出する。バッテリ20aの少なくとも一部は走行風取入口264によって外部に露呈されていることから、走行風はバッテリ20aに直接に当たり、冷却効果が高い。また、走行風取入口264、走行風取出口254及び走行風排出口256は、同じ高さに配設されており、図1(及び図8)の矢印Aで示すように、走行風が障害なく短い経路で通過可能であることから流れやすく、冷却効果が高い。
【0075】
また、バッテリ20aの発生する熱や日射によって暖められた空気は、図1(及び図8)の矢印Bで示すように、空間270内で下方の対流風取入口266から対流風取出口258を介して上方の対流風排出口260から排出される。これにより、空気の対流が発生し、該熱が空間270内に籠もることがなく効率的に放熱されて冷却できる。この対流による冷却は、バッテリ20aの発生する熱や日射によって自然に発生することから走行風は必要なく、自動二輪車10が停止又は低速走行中であってもバッテリ20aを効率的に冷却することができる。
【0076】
この対流による冷却効果は、対流風取入口266がバッテリ20aの中心よりも下方の位置に設けられ、対流風取出口258がバッテリ20aの中心よりも上方の位置に設けられていると、少なくともバッテリ20aの中心部分が確実に冷却される。
【0077】
また、対流風取入口266の少なくとも一部がバッテリ20aの下端部よりも下方の位置に設けられ、対流風取出口258の少なくとも一部がバッテリ20aの上端部よりも上方の位置に設けられていると、バッテリ20aは全長にわたって対流による冷却効果が得られて一層好適である。
【0078】
さらに、バッテリ搭載機構200aによれば、バッテリ20aを冷却するために空気の自然な流れのみを利用することから、ファン等の強制空冷手段が不要であり、低コスト化、軽量化、省スペース化及びデザイン性の向上を図ることができ、特に自動車と比較して設計上の制約が多い二輪車に好適である。
【0079】
また、バッテリ20aは、ダウンフレーム21aに略沿って配置することにより比較的前方に配置され、他のパワーユニット18等との重量バランスがよい。バッテリ20aとバッテリ20bは、左右対称に配置されていることから、自動二輪車10の左右バランスがよい。
【0080】
右側のバッテリ20b、バッテリ搭載機構200b及びカバー208bについても、左側のバッテリ20a、バッテリ搭載機構200a及びカバー208aと同様の効果があることはもちろんである。
【0081】
なお、走行風取入口264、走行風取出口254、対流風取入口266及び対流風排出口260は必ずしも明確に区分されている必要はなく、例えば、走行風取入口264と対流風取入口266が連続的な形状となっていてもよいし、走行風取出口254と対流風取入口266が連続的な形状となっていてもよい。
【0082】
また、走行風と対流風とは厳密に区別されるものではなく、例えば対流風の一部は走行風取入口264からも導入され得るし、走行風の一部は対流風排出口260からも導出され得ることはもちろんである。
【0083】
次に、低温時遮蔽手段300を備えるバッテリ搭載機構302について図12〜図15を参照しながら説明する。バッテリ搭載機構302に設けられるバッテリ304は、前記のバッテリ20aよりもやや短く、走行風取出口254はバッテリ搭載機構200aにおける場合よりもやや上方に配置されている。バッテリ搭載機構302についてバッテリ搭載機構200aと同様の箇所には同符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0084】
図12に示すように、バッテリ搭載機構302は、前記のバッテリ搭載機構200aの構成要素の他に、空間270内に設けられた弁(開閉部)306と、該弁306を駆動するモータ308と、バッテリ304の温度を検出する温度センサ310と、制御部312とを有する。
【0085】
また、このバッテリ搭載機構302における走行風取出口254は、下部ステー204aが挿通可能な程度に最小限の面積の開口となっており、実質的には風が流れないようになっている。したがって、走行風取入口264から取り入れられた走行風は、カバー208a内を上下に分かれて流れ、対流風取入口266及び対流風取出口258から流れ出る。つまり、バッテリ20aは、走行時には走行風によって冷却され、停止時には対流風によって冷却される。
【0086】
また、走行風取出口254は実質的に風の流通がないことから、内燃機関26を含むパワーユニット18の輻射熱が遮られて、カバー208a内が加熱されることがない。
【0087】
この場合、図13に示すように、パワーユニット18に対しては前方から走行風を直接的に受け、走行風排出口256に流れ出るように構成すると、パワーユニット18も適切に冷却され、好適である。
【0088】
弁306は、空間270内で、走行風取入口264及び対流風取入口266の部分(以下、下部空間という。)よりも上方で、バッテリ304及び走行風取出口254の部分(以下、上部空間という。)よりも下方の位置に設けられている。図14に示すように、弁306は、空間270の断面形状に合わせた略三角形状に構成されており、弁閉鎖状態では、該空間270を略密封して下部空間と上部空間とを遮蔽することができる。弁306による空間270の遮蔽は、完全な密封状態にする必要はなく、バッテリ20aを冷却することのない程度の空気の漏れがあってもよい。
【0089】
また、弁306は、モータ308の作用下に略90°回転可能であって、空間270の長手方向に指向する(図12の仮想線参照)ことによって、開放状態となり上部空間と下部空間とを連通させることができる。
【0090】
制御部312は、モータ308、温度センサ310及びイグニションキー314に接続されており、バッテリ304から供給される電力により内部のCPUが動作し、図15に示すソフトウェア処理を行う。
【0091】
図15のステップS1において、制御部312はイグニションキー314の状態を検出する。
【0092】
ステップS2において、イグニションキー314の状態を判断し、内燃機関26の始動中であるときにはステップS4へ移り、始動中でないときにはステップS3へ移る。
【0093】
ステップS3では弁306を開放する。これにより、通常時には弁306が開放していることになり、走行風及び対流風が通風可能となり、バッテリ304を効率的に冷却することができる。
【0094】
ステップS4においては、温度センサ310によりバッテリ304の温度θを検出する。
【0095】
ステップS5において、検出された温度θが、弁306を開閉させるための閾値温度T(例えば、T=0℃)以上か否かを確認し、T以上であるときにはステップS6へ移り、T未満であるときにはステップS7へ移る。
【0096】
ステップS6において、ステップS3と同様に弁306を開放する。すなわち、イグニション時にはバッテリ304が大電流の放電をすることになるが、温度θがT以上であれば所望の放電能力があって、熱も発生することから適度な冷却の必要があり、弁306を開放することによって、走行風及び対流風を通風可能とする。
【0097】
一方、ステップS7においては、弁306を閉鎖する。すなわち、始動時にはバッテリ304が大電流の放電をする必要があるのだが、温度θがT未満のときにはバッテリ304(特に、化学電池)の放電能力は不十分であって、熱の発生も少ない。したがって、弁306を閉鎖することによって、走行風及び対流風を通風不可とし、不必要にバッテリ304が冷却されることを防止する。これにより、イグニション時にバッテリ304が過冷却されることがなく活性化が図られ、始動性が向上する。
【0098】
ステップS3、S6及びS7の後、図15に示す今回の処理を終了する。なお、これらの処理は、微小時間毎に繰り返し実行されている。
【0099】
次に、第2の実施形態に係るバッテリ搭載機構400について図16〜図18を参照しながら説明する。このバッテリ搭載機構400は、前記の自動二輪車10と同様のハイブリッド式の二輪車に搭載されており、該車両の基本構成については詳細な説明は省略する。
【0100】
図16〜図18に示すように、バッテリ搭載機構400はエアクリーナ402に設けられている。エアクリーナ402は、内燃機関26の燃焼室26a(図3参照)内に供給される空気を浄化するためのものであり、異物を除去するフィルタ403と、燃焼室26aに連通する入口チューブ404と、ケース(フィルタ経由通路)406と、該ケース406に外気を導入可能な孔であるエアインテーク408と、ドレン孔410とを有する。なお、図16及び図17では視認容易なようにケース406を仮想線で示している。
【0101】
図18に示すように、エアインテーク408はケース406の上部に設けられ、車両の内方に開口しており外方からの粉塵及び雨水が浸入しにくい。ドレン孔410はケース406の最下端部に設けられており、ケース406内に進入した粉塵及び雨水を下方に排出することができる。
【0102】
フィルタ403は乾式、湿式又はその他の形式のものを用いることができる。ケース406は、入口チューブ404を囲む広い空間を形成しており、左側面に着脱可能なサイドカバー412を有する。サイドカバー412を取り外すことによりケース406の内部が露呈され、フィルタ403の交換をすることができる。
【0103】
サイドカバー412には、略水平な複数の通気孔414及びエア導入板416が設けられている(図17参照)。エア導入板416は通気孔414と同じ方向に延在する長尺な板であり、通気孔414が設けられている箇所の略中間又は中間よりやや高い位置に設けれ、内側斜め上方を指向する向きに取り付けられている。つまり、正面断面視(図18参照)で、エア導入板416はエアインテーク408の方向に指向しており、該エアインテーク408から導入された外気が通気孔414に導かれるように構成されている。
【0104】
バッテリ搭載機構400は、サイドカバー412の外側面に設けられており、バッテリ418と、該バッテリ418を覆うバッテリカバー420とを有する。バッテリ搭載機構400は、サイドカバー412の外側面に設けられていることから、ケース406内の空間体積が減少することがなく、内燃機関26の出力特性を低下させることがない。バッテリ418は前記のバッテリ20a及び20bと同様の機能を有する。バッテリカバー420は略カップ形状であり、内部にバッテリ418を収納するとともに、全ての通気孔414を側面から覆うように取り付けられている。
【0105】
バッテリ418は、正面断面視で2列に配列された7つの円筒形状のセル422からなる。セル422は内側列に縦方向に4つ、外側列に縦方向に3つがそれぞれ略水平に並べられている。各セル422の間及びバッテリカバー420との間には多少の隙間が設けられている。
【0106】
このように構成されるエアクリーナ402では、外気がエアインテーク408からフィルタ403を経由して異物が除去・浄化された後にケース406内に導入され、入口チューブ404から内燃機関26の燃焼室26a内に供給され、いわゆる吸気系統を構成する。この吸気作用は、内燃機関26の吸気行程において、図示しない吸気弁が開放している状態でピストン52(図3参照)が下降することによって発生するものである。吸気作用は、車両の走行時に限らず、停止時においても内燃機関26がアイドリング回転をしていることによって生じている。
【0107】
ところで、図18の矢印Cで示すように、吸気作用に伴う空気の流れの一部は、エア導入板416により外向きに導かれ、上方の通気孔414を通りバッテリ搭載機構400の内部に入り込む。この空気はセル422の間及びバッテリカバー420との間に設けられた隙間を通りながらセル422の発生する熱を奪った後に、下方の通気孔414からケース406内に戻り、バッテリ搭載機構400をバイパスしなかった空気と合流し入口チューブ404に吸気される。
【0108】
このように、バッテリ搭載機構400によれば、バッテリ418は内燃機関26の吸気作用によって空気の流れが生じる部分(つまり、フィルタ経由通路内)に配置されることになり、各セル422の回りに空気の流れが生じる。これにより、自動二輪車10の走行時はもちろん、停止時においてもバッテリ418を冷却することができる。
【0109】
なお、バッテリ搭載機構400は、外気がフィルタ403を経由して導入されるフィルタ経由通路のいずれかの場所に設けられていればよく、例えば、サイドカバー412の内側や、エアインテーク408に設けられていてもよい。バッテリ搭載機構400は、入口チューブ404に導入される外気の一部をバイパスさせる方式に限らず、全ての導入外気をバッテリ搭載機構400を通過させるようにしてもよい。
【0110】
バッテリ搭載機構400はハイブリッド式の車両に限らず、内燃機関26を有する車両や燃料電池車両にも適用可能である。バッテリ搭載機構400を燃料電池車両に適用する場合には、エアインテークからフィルタ及びコンプレッサを介して燃料電池セル(走行駆動源)に至る空気系統のうち、フィルタよりも上流側のいずれかの経路内に設ければよい。
【0111】
本発明に係るバッテリ搭載機構は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】自動二輪車の側面図である。
【図2】フレーム及びカバーを外した自動二輪車の斜視図である。
【図3】パワーユニットの断面側面図である。
【図4】フレーム及びカバーを外したバッテリ搭載機構の側面図である。
【図5】フレーム及びカバーを外したバッテリ搭載機構の正面図である。
【図6】フレーム及びカバーを外したバッテリ搭載機構を斜め下方から見た斜視図である。
【図7】バッテリ搭載機構のカバーの断面平面図である。
【図8】カバーの側面図である。
【図9】カバーの正面図である。
【図10】カバーを斜め下方から見た斜視図である。
【図11】サブカバーを取り外した状態のバッテリ搭載機構の側面図である。
【図12】低温時遮蔽手段を備えるバッテリ搭載機構の一部断面側面図である。
【図13】変形例に係るカバーとパワーユニットとの配置を示す断面平面図である。
【図14】弁及びカバーの断面平面図である。
【図15】低温時遮蔽手段の動作手順を示すフローチャートである。
【図16】外方から見たエアクリーナ及びバッテリ搭載機構の斜視図である。
【図17】内方から見たエアクリーナ及びバッテリ搭載機構の一部省略斜視図である。
【図18】エアクリーナ及びバッテリ搭載機構の断面正面図である。
【符号の説明】
【0113】
10…自動二輪車 18…パワーユニット
19…制御ユニット 20a、20b、304、418…バッテリ
21…フレーム 21a…ダウンフレーム
200a、200b、302、400…バッテリ搭載機構
208b、208b…カバー 202…上部ステー
204a、204b…下部ステー 220…孔
250…メインカバー 252…サブカバー
254…走行風取出口 256…走行風排出口
258…対流風取出口 260…対流風排出口
270…空間 262…ブレード
264…走行風取入口 266…対流風取入口
300…低温時遮蔽手段 306…弁
308…モータ 310…温度センサ
312…制御部 402…エアクリーナ
403…フィルタ 406…ケース
408…エアインテーク 412…サイドカバー
414…通気孔 416…エア導入板
420…バッテリカバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両におけるバッテリ搭載機構であって、
バッテリと、
前記バッテリの周囲を覆うバッテリカバーと、
走行風を前記バッテリカバー内に導入する走行風取入口と、
前記バッテリカバー内に導入された走行風が排出される走行風取出口と、
前記バッテリの中心よりも下方の位置に設けられた対流風取入口と、
前記バッテリの中心よりも上方の位置に設けられた対流風取出口と、
を有することを特徴とするバッテリ搭載機構。
【請求項2】
請求項1記載のバッテリ搭載機構であって、
前記バッテリ及び前記バッテリカバーは、ハンドルを回転自在に軸支するヘッドパイプから後斜め下方向かって延在するダウンフレームに沿って配置され、
走行動力源が前記バッテリカバーの下端部の近傍に配置されていることを特徴とするバッテリ搭載機構。
【請求項3】
請求項1又は2記載のバッテリ搭載機構であって、
前記走行風取入口、前記走行風取出口、前記対流風取入口及び前記対流風取出口は、走行動力源に対向する面以外の面に設けられていることを特徴とするバッテリ搭載機構。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のバッテリ搭載機構において、
前記バッテリの温度を検出するバッテリ温度センサと、
前記走行風取入れ口と前記バッテリとの間に設けられた開閉部と、
前記バッテリ温度センサによる検出温度が所定温度以下の場合に、前記開閉部を駆動して前記走行風取り入れ口と前記バッテリとの間を遮断させ、走行風が前記バッテリに当たることを防止する制御部と、
を有することを特徴とするバッテリ搭載機構。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のバッテリ搭載機構において、
前記対流風取出口は、前記車両の内側を指向する面に設けられていることを特徴とするバッテリ搭載機構。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のバッテリ搭載機構において、
前記走行風取出口及び前記対流風取出口には、それぞれ前記バッテリを支持するステーが挿通されていることを特徴とするバッテリ搭載機構。
【請求項7】
車両におけるバッテリ搭載機構であって、
走行動力源に供給される空気を浄化するフィルタと、
該フィルタを経由して走行駆動源に空気を導入するフィルタ経由通路と、
を有し、
前記バッテリは、前記フィルタ経由通路に設けられていることを特徴とするバッテリ搭載機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2008−80986(P2008−80986A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−264005(P2006−264005)
【出願日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】