説明

バット及びフィッシングロッド

【課題】安価で耐腐食性が高く且つ連結されたロープ等が絡みにくい尻手リングを備えたバットの提供。
【解決手段】このフィッシングロッド30は、釣竿本体とバットとを備える。バットは、バット本体60と、尻手リング機構40とを有する。尻手リング機構40は、バット本体60の後端部の外側に嵌め込まれたケース75と、ケース75の内部に嵌め込まれた係止具76と、係止具76に係合された尻手リング77とを有する。ケース75及び係止具76は、円環状に形成され、バット本体60に対して周方向に回動する。係止具76は、バット本体60を囲繞する一対の脚部を備えており、各脚部間に隙間が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、フィッシングロッド(釣竿)の構造、詳細にはフィッシングロッドに採用されるバットの構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
釣人は、フィッシングロッドを使用して釣りを行うのが一般的である。釣人は、フィッシングロッドを把持し操作することにより、道糸や仕掛けを操ると共にヒットした魚を引き寄せて取り込む。
【0003】
ところで、船や磯からの釣りでは、風、波、潮その他の要因の影響により道糸が引っ張られた結果、フィッシングロッドが落水するおそれがある。そのため、従来のフィッシングロッドは、バットに尻手リングが搭載されているものがある(特許文献1参照)。この尻手リングにロープ等が連結されることにより、フィッシングロッドが万一落水した場合であっても、釣人は、落水したフィッシングロッドを容易に回収することができる。
【0004】
従来の尻手リングは、フィッシングロッドの尻栓等に設けられている。具体的には、尻栓に筒状のパイプが溶接(典型的にはろう付け)され、このパイプにアンカーリングが突設される。そして、このアンカーリングに尻手リングが係合される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−240283号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来の尻手リングは、上記パイプがろう付けされることから次のような問題があった。すなわち、上記パイプが海水等によって腐食されやすく、尻手リングがフィッシングロッドから脱落するおそれがあった。また、尻手リングをフィッシングロッドに装着する作業が容易ではなく、作業コストが上昇するという問題があった。さらに、上記アンカーリングは環状部材であるからことから、尻手リングをアンカーに係合させるために煩わしい作業が必要であった。加えて、従来の尻手リングは尻栓に固定されているから、尻手リングに連結されたロープがフィッシングロッドに絡みつきやすいという問題もあった。
【0007】
本発明はかかる背景のもとになされたものであって、その目的は、安価で耐腐食性が高く、且つ連結されたロープ等が絡みつきにくい尻手リングを備えたバット及びこれを備えたフィッシングロッドを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1) 本発明に係るバットは、ブランクを有する釣竿本体が支持されるバット本体と、当該バット本体の後端部に設けられた尻手リング機構とを備える。当該尻手リング機構は、切欠部が設けられた周壁を有し、上記バット本体の後端部に回動可能に外嵌された環状ケースと、当該環状ケースに内嵌された状態で当該環状ケースと共に上記バット本体の後端部に対して回動可能に外嵌された環状係止具とを有する。この環状係止具は、上記バット本体の後端部の周囲に沿って配置される一対の脚部及び当該各脚部の一端に連続して上記環状ケースの軸方向と交差する方向に延設され、上記切欠部から突出するアンカーリング部を有する。
【0009】
この発明では、バット本体に釣竿本体が連結されることによりフィッシングロッドが構成される。バット本体に尻手リング機構が搭載されているから、尻手リング機構にロープ等が連結されることにより、実釣においてフィッシングロッドが保持され、万一フィッシングロッドが落水したとしても、釣人はロープを手繰り寄せることによりフィッシングロッドを回収することができる。
【0010】
上記尻手リング機構は、次の要領で組み立てられる。すなわち、環状ケースの内側に環状係止具が嵌め込まれる。このとき、環状係止具は、環状ケースの軸方向一端側端面から当該軸方向に沿って当該環状ケースの内側に挿入される。この環状ケースの周壁に上記切欠部が設けられているから、環状係止具のアンカーリング部が上記切欠部に進入し、当該切欠部から突出する。なお、たとえば尻手ロープは、上記切欠部から突出したアンカーリング部に連結され得る。当該環状係止具は、上記環状ケースと共にバット本体の後端部に外嵌される。この状態で、環状ケース及び環状係止具の軸方向とバット本体の軸方向とが一致し、当該環状係止具は、上記環状ケースの内側に嵌め込まれて保持されている。すなわち、環状ケース及び環状係止具は、ろう付けその他の溶接手段によりバット本体に固定されておらず、バット本体に対して軸方向の周りに回動可能である。したがって、尻手リング機構の組立作業が非常に簡単であり、上記尻手ロープが上記アンカーリング部に連結されとしても、当該尻手ロープはバット本体に絡むことが回避される。
【0011】
(2) 上記切欠部は、上記周壁の一部が上記軸方向一端側端面から当該軸方向に沿って所定長さだけ切り欠かれることにより形成されているのが好ましい。
【0012】
この構成では、切欠部は、上記軸方向に切り欠かれた矩形の凹部として構成され得る。したがって、上記アンカーリング部が挿通される切欠部が簡単にコスト安価に形成されるという利点がある。
【0013】
(3) 上記一対の脚部は、上記バット本体の後端部を周方向に囲繞し、当該各脚部の他端同士は所定距離だけ離反されているのが好ましい。さらに、アンカーリング部に尻手リングが係合されているのが好ましい。
【0014】
この構成では、上記環状ケースへの上記環状係止具の嵌め込みに先立って、当該環状係止具に尻手リングが挿通される。この環状係止具の一対の脚部の他端同士は所定の距離だけ隔てられているから、当該他端間の隙間から尻手リングが簡単に挿通される。尻手リングが挿通された環状係止具は、前述のように上記環状ケースと共にバット本体の後端部に外嵌される。また、上記一対の脚部が上記バット本体の後端部を囲繞するから、上記環状係止具がより安定して上記バット本体に取り付けられるという利点もある。特に尻手リングが設けられているので、尻手ロープが尻手リング機構に簡単に連結される。
【0015】
(4) 上記バット本体に外装リングが外嵌されていてもよい。この場合、上記環状ケース及び上記環状係止具は、上記外装リングに対して相対的に回動自在に外嵌される。
【0016】
この構成では、外装リングに対して環状ケース及び環状係止具が装着されるから、環状ケース及び環状係止具をバット本体に組み付ける作業がきわめて簡単になる。
【0017】
(5) 上記環状ケースの外周面は、上記バット本体の外周面と滑らかに連続しているのが好ましい。
【0018】
この構成では、環状ケースの外周面とバット本体の外周面がいわゆる面一状態となるので、上記ロープが環状ケースの外周面とバット本体の外周面との境界に引っ掛かることがなく、バット本体へのロープの絡みつきが一層回避される。しかも、バット本体の外観が優れたものとなる。
【0019】
(6) 上記バット本体にブランクを有する釣竿本体が支持されることによってフィッシングロッドが構成され得る。
【発明の効果】
【0020】
この発明によれば、尻手リング機構は、従来のようなろう付けその他の溶接手段を採用せずに簡単にバット本体に組み付けられるので、バット及びこれを採用したフィッシングロッドが安価に製造される。しかも、尻手リング機構は、バット本体に対して回転するから、環状係止具に連結された尻手ロープがバットやフィッシングロッドに絡むことがなく、フィッシングロッドが落水した場合であっても、迅速に回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係るフィッシングロッドの正面図である。
【図2】図2は、本発明の一実施形態に係るバットの断面図である。
【図3】図3は、図2における要部拡大図である。
【図4】図4は、ケースの構造を示す図であって(a)は平面図、(b)は正面図である。
【図5】図5は、図4におけるV−V断面図である。
【図6】図6は、係止具の構造を示す図であって(a)は平面図、(b)は正面図である。
【図7】図7は、図6におけるVII−VII断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の好ましい実施形態が、適宜図面が参照されながら説明される。
【0023】
[フィッシングロッドの概略構成と特徴点]
【0024】
図1は、本発明の一実施形態に係るフィッシングロッド30の外観斜視図である。
【0025】
このフィッシングロッド30は、たとえば船釣りの際に使用されるものであって、バット31と釣竿本体32とを備えている。バット31は、リールシート39を備えている。このリールシート39は、図示されていない釣用リールを保持すると共に、釣竿本体32を後述のように支持することができるようになっている。本実施形態に係るフィッシングロッド30の特徴とするところは、バット31の構造にあり、具体的には、バット31が後述の尻手リング機構40備えている点である。
【0026】
[釣竿本体]
【0027】
釣竿本体32は、細長円筒状に形成されたブランク34と、ブランク34の後端部35に装着されたフェルール36と、フェルール36をバット31に固定するためのナット37と、ブランク34に設けられたフロントグリップ38とを有する。本実施形態では、ブランクは単一の部材である。したがって、釣竿本体32はいわゆるワンピースタイプであって、長手方向の所定の位置にラインガイド(不図示)が固定されている。もっとも、ブランク34は、複数の部材が所要の継手構造を介して連結されることにより構成されていてもよい。なお、ブランク34は典型的には炭素繊維強化樹脂から構成され、いわゆるプリプレグがマンドレルに巻回され焼成される。
【0028】
[バット]
【0029】
図2は、バッド31の断面図である。
【0030】
図1及び図2が示すように、バット31は、バット本体60と、バット本体60に設けられたリールシート39及び尻手リング機構40とを有する。図1が示すように、バット31は釣竿本体32をいわゆる片持ち状に支持する。具体的には、釣竿本体32に設けられたフェルール36がバット本体60に対して軸方向41に沿って挿入される。この「軸方向」とは、釣竿本体32の軸方向であり、バット31の軸方向である。そして、ナット37がリールシート39に螺合し締め付けられることによって、釣竿本体32がバット31に固定される。なお、本実施形態にかかるフィッシングロッド30は、バット31と釣竿本体32とが別部品として構成され、釣竿本体32がバット31に着脱自在となっているが、釣竿本体32の後端部に連続してバット31が形成されていてもよい。
【0031】
[バット本体]
【0032】
図2が示すように、バット本体60は、メインパイプ62と、第1グリップ63及び第2グリップ64とを備えている。
【0033】
メインパイプ62は、樹脂又は金属からなり、円筒状に形成されている。典型的には、メインパイプ62は、上記ブランクと同様に炭素繊維強化樹脂から構成され、いわゆるプリプレグがマンドレルに巻回され焼成される。本実施形態では、メインパイプ62は、前パイプ65と後パイプ66とに分割されており、前パイプ65の後端部に係合ピン67が配設されている。この係合ピン67は、上記フェルール36(図1参照)に設けられた溝と係合し、バット本体60に対して釣竿本体32を位置決めする。
【0034】
第1グリップ63は、メイングリップ68とサブグリップ69とを有する。これらは円筒状に形成されており、金属、樹脂、ゴム等から構成され得る。本実施形態では、金属から構成されている。メイングリップ68及びサブグリップ69は、円筒状のスリーブ70を介して後パイプ66に外嵌されている。このスリーブ70も金属又は樹脂等から構成され得る。第1グリップ63の外径は、釣人が握りやすい寸法に設定されている。本実施形態では、第1グリップ63がメイングリップ68とサブグリップ69とに分割されているが、両者が一体的に形成されていてもよい。また、本実施形態では、メイングリップ68の後端部に化粧リング71が配設されている。この化粧リング71も円筒状に形成されており、金属又は樹脂から構成され得る。化粧リング71は、上記スリーブ70とメイングリップ68との隙間に挿通されており、メイングリップ68の後端部を装飾する。もっとも、化粧リング71及びスリーブ70が省略されてもよい。
【0035】
第2グリップ64は、第1グリップ63の上記軸方向41の後端側(図中右側)に配置されている。本実施形態では、第2グリップ64は、第1グリップ63とは異なる別の部材として構成され、両者が互いに離反している。したがって、後パイプ66の一部は、第1グリップ63と第2グリップ64との間で露出している。もっとも、第2グリップ64が第1グリップ63と連続して一体的に形成されていてもよい。第2グリップ64は、外装リング72と尻栓73とを有する。外装リング72は円筒状に形成されている。外装リング72の外径は、上記軸方向41の後端側(図中右側)に向かって漸次大きくなっている。
【0036】
外装リング72は、スリーブ74を介して後パイプ66の後端部に外嵌されている。このスリーブ74は円筒状に形成されており、金属又は樹脂から構成され得る。本実施形態では、外装リング72の先端部にも化粧リング61が配設されている。この化粧リング61も上記化粧リング71と同様に円筒状に形成されており、金属又は樹脂から構成され得る。化粧リング61は、上記スリーブ74と外装リング72との隙間に挿通されており、外装リング72の先端部を装飾すると共に、後述のようにケース75及び係止具76の位置決めを行う。
【0037】
尻栓73は、典型的にはゴム又は樹脂からなり、後パイプ66の後端に被せられて外装リング72の後端に固定されている。
【0038】
[尻手リング機構]
【0039】
図3は第2グリップ64の要部拡大図であって、尻手リング機構40の構造を詳細に示している。
【0040】
尻手リング機構40は、バット本体60の後端部、具体的には第2グリップ64に設けられている。尻手リング機構40は、ケース75(特許請求の範囲に記載された「環状ケース」に相当)と、係止具76(特許請求の範囲に記載された「環状係止具」に相当)とを備えている。本実施形態では、係止具76に尻手リング77が設けられている。もっとも、この尻手リング77は省略されてもよい。
【0041】
図4は、ケース75の構造を示す図であって(a)は平面図、(b)は正面図である。図5は、図4におけるV−V断面図である。
【0042】
図3ないし図5が示すように、ケース75は円環状に形成されている。ケース75は、図3が示すように外装リング72の先端に嵌め込まれている。本実施形態では、外装リング72の先端部が縮径されており、段部84が形成されている。そして、この段部84がケース75の座部を構成しており、ケース75は、段部84に外嵌されている。
【0043】
ケース75の内壁面に段部81が形成されている。すなわち、ケース75の内壁は、大径部82及び小径部83を有し、これらが上記軸方向41に沿って並設されている。なお、上記軸方向41は、ケース75の軸方向と一致している。ケース75の小径部83の内径は、外装リング72の先端部の外径(すなわち縮径された段部84の外径)に対応しており、ケース75は、外装リング72に対して回動可能となっている。また、ケース75の大径部82は、後に詳述される係止具76が保持される座部を構成している。
【0044】
図4及び図5が示すように、ケース75の周壁78の一部に切欠凹部79(特許請求の範囲に記載された「切欠部」に相当)が形成されている。この切欠凹部79は、ケース75の軸方向41の前側の端面80(特許請求の範囲に記載された「一端側端面」に相当)から軸方向41に沿って所定長さLだけ切り込まれている。なお、この切欠凹部79は矩形状に形成されており、幅寸法Dはケース75の外径の20%〜30%程度に設定されている。
【0045】
図6は、係止具76の構造を示す図であって(a)は平面図、(b)は正面図である。図7は、図6におけるVII−VII断面図である。
【0046】
図3、図6及び図7が示すように、係止具76は、全体として略円環状に形成されている。係止具76は、金属又は樹脂から構成され得るが、本実施形態では、金属製の細長帯状部材が湾曲されることにより係止具76が成形されている。係止具76は、一対の脚部86、87と、これらの間に配設されたアンカーリング部88とを有し、脚部86、87及びアンカーリング部88は一体的に形成されている。
【0047】
アンカーリング部88は、図6(b)が示すようにU字状に形成されており、脚部86、87のそれぞれの一端89、90に連続している。脚部86、87は、軸方向41を基準として左右対称に配置されている。脚部86、87は、それぞれ円弧状に湾曲形成されており、脚部86、87の内壁面によって仮想円が区画される。この仮想円の内径dは、外装リング72の先端部の外径(すなわち縮径された段部84の外径:図3参照)に対応している。このため、脚部86、87は、外装リング72の周囲に沿って配置されており、係止具76は、ケース75と共に外装リング72に対して回動可能となっている。
【0048】
脚部86、87の他端91、92は所定の距離だけ離反しており、両者間に隙間85が形成されている。この隙間85の寸法は特に限定されないが、後述の尻手リング77が容易に挿通されるものであればよい。また、アンカーリング部88は、同図が示すように軸方向41と交差する方向に突出している。アンカーリング部88の湾曲部93の内径は、尻手リング77が容易に進入し係合することができるように設定されている。
【0049】
図2及び図3が示すように、尻手リング77は円環状に形成されている。この尻手リング77は、金属又は樹脂から構成され得る。尻手リング77は、上記係止具76に挿通され、アンカーリング部88に保持される。尻手リング77の内径は、尻手ロープ等が挿通され得るように設定されている。尻手リング77の取り付けその他尻手リング機構40の組付作用については後述される。
【0050】
[リールシート]
【0051】
図1及び図2が示すように、リールシート39は、リールシート本体45と、可動フード49と、ナット50及びロックナット51とを備えている。このリールシート39は、リールシート本体45と可動フード49とによって釣用リールの脚をホールドすることができると共に、釣竿本体32のフェルール36を確実に保持して釣竿本体32をバット31に強固に固定する。
【0052】
リールシート本体45は、円筒状に形成されており、金属又は樹脂等から構成されているリールシート本体45の外周面の一部によってシート面52が形成されている。このシート面52に釣用リールの脚が安定的に載置される。リールシート本体45の外周面に雄ねじ54が形成されている。上記ナット37、ナット50及びロックナット51は、この雄ねじ54に螺合するようになっている。
【0053】
リールシート本体45の軸方向41の後端側に固定フード48が設けられている。この固定フード48も金属からなり、本実施形態では、リールシート本体45と一体的に形成されている。固定フード48はリング状に形成されており、内部に脚収容凹部が設けられている。この脚収容凹部に釣用リールの脚の一方側が収容され、保持される。また、リールシート本体45の他端側に可動フード49が設けられている。この可動フード49も金属からなる。
【0054】
可動フード49も固定フード48と同様にリング状に形成されており、内部に脚収容部が設けられている。可動フード49は、リールシート本体45と嵌合しており、軸方向41に沿ってスライドすることが可能である。リールシート本体45に釣用リールが載置された状態で可動フード49が固定フード48側へスライドされることにより、可動フード49及び固定フード48に設けられた脚収容凹部に釣用リールの脚が収容され、保持される。
【0055】
ナット50は、可動フード49と並んで設けられている。前述のように、ナット50は、リールシート本体45の雄ねじ54に螺合している。ナット50が締め付けられると当該ナット50が可動フード49の端面を押し、可動フード49は軸方向41に沿って固定フード48側にスライドする。その結果、釣用リールの脚は、固定フード48及び可動フード49によって挟持され、釣用リールは、リールシート本体45上に固定される。そして、ロックナット51は、上記雄ねじ54に螺合しナット50に並設されている。ロックナット51が締め付けられることにより、ナット50が固定される。
【0056】
[フィッシングロッドの使用態様]
【0057】
実釣に先だってバット31に釣竿本体32が装着される。具体的には、バット本体60に釣竿本体32のフェルール36が挿入され、ナット37がバット31のリールシート本体45の雄ねじ54に螺合され、ねじ込まれる。これにより、バット31に釣竿本体32が固定され、フィッシングロッド30が組み立てられる。このフィッシングロッド30では、バット本体60に尻手リング機構40が搭載されているから、尻手リング機構40に尻手ロープ等が連結されることにより、実釣において万一フィッシングロッド30が落水したとしても、釣人はロープを手繰り寄せることによりフィッシングロッド30を回収することができる。
【0058】
バット31に尻手リング機構40が設けられているが、この尻手リング機構40は、次の要領で組み立てられる。まず、係止具76に尻手リング77が挿通される。具体的には、図3及び図6が示すように、円環状の尻手リング77が係止具76の隙間85から挿通され、脚部86(87)を通過してアンカーリング部88に達する。この状態で、尻手リング77はアンカーリング部88に係合するので、尻手リング77をアンカーリング部88に係合させる作業がきわめて簡単である。
【0059】
次に、前述のように尻手リング77が装着された係止具76がケース75の内側に嵌め込まれる。具体的には、係止具76は、ケース75の端面80(図4参照)から軸方向41に沿ってケース75の内側に挿入される。このとき、ケース75に切欠凹部79(図4参照)が設けられているから、係止具76のアンカーリング部88が切欠凹部79に進入する。これにより、図3が示すように、アンカーリング部88は、切欠凹部79から突出する。
【0060】
前述のように係止具76が内嵌されたケース75は、係止具76と共にバット本体60の後端部に嵌め込まれる。係止具76及びケース75のバット本体60への嵌合に先だって、バット本体60の後パイプ66にスリーブ74が嵌め込まれ、さらに外装リング72がスリーブ74に外嵌される。そして、このように後パイプ66に外装リング72が取り付けられた状態で、図3が示すように、ケース75及び係止具76が外装リング72の先端部に形成された段部84に外嵌される。このとき、ケース75及び係止具76は、ケース75の他端側の端面93、すなわち軸方向41の後側の端面93(図4及び図5参照)から外装リング72に嵌め込まれる。この状態で、係止具76の脚部86、87は、外装リング72、すなわちバット本体60の後端部を周方向に囲繞し、係止具76は、ケース75と共に外装リング72に対して回動可能となることは前述のとおりである。
【0061】
本実施形態では、前述のように後パイプ66に化粧リング61が装着される。図3が示すように、この化粧リング61は、後パイプ66と外装リング72との間に挿入される。これにより、外装リング72の先端部が装飾される。また、化粧リング61は鍔94を備えており、当該化粧リング61が後パイプ66に装着されることによって鍔94がケース75の端面80に当接する。これにより、ケース75及び係止具76が外装リング72に対して、すなわちバット本体60の後端部に位置決めされる。
【0062】
本実施形態に係る尻手リング機構40では、ケース75及び係止具76のバット本体60への装着作業において、従来のようなろう付けその他の溶接手段が採用されることはなく、係止具76は、化粧リング61とケース75との間に挟み込まれて、軸方向41の周りに回動可能となる。したがって、尻手リング機構40が簡単且つ安価にバット本体60に組み付けられ、その結果、バット31及びフィッシングロッド30の製造コストが削減される。しかも、海水等に対する耐腐食性が向上する。また、ケース75及び係止具76がバット本体60に固定されておらず、バット本体60に対して回動可能であるから、尻手リング77に尻手ロープ等が連結された場合であっても、実釣において当該尻手ロープがバット31やフィッシングロッド30に絡むことが防止される。さらに、係止具76の脚部86、87間に隙間85(図6参照)が設けられているから、尻手リング77の取付作業が簡単であり、その結果尻手リング機構40の装着作業が一層簡単になる。
【0063】
[変形例]
【0064】
本実施形態では、バット本体60に外装リング72及びスリーブ74が装着されているが(図3参照)、これらが省略されて尻手リング機構40が後パイプ66に直接に取り付けられていてもよい。
【0065】
また、図3が示すように、本実施形態では、尻手リング機構40のケース75が外装リング72に外嵌されているが、ケース75の外径が外装リング72の外径に対応していてもよい。すなわち、ケース75の外周面95が外装リング72の外周面96と滑らかに連続し、いわゆる面一状態となっていてもよい。そのような場合、上記ロープ等がケース75と外装リング72との境界に引っ掛かることが防止されるので、バット本体60へのロープ等の絡みつきが一層防止される。しかも、バット本体60の外観も優れたものとなる。
【0066】
さらに、本実施形態では、尻手リング77が設けられているが、尻手リング77が省略されてもよい。その場合、尻手ロープ等は、係止具76のアンカーリング部88に直接連携され得る。
【0067】
加えて、本実施形態では、上記係止具76の脚部86と脚部87との間に隙間85が設けられているが、この隙間85が省略されてもよい。すなわち、脚部86、87の他端91、92同士が当接していてもよい。その場合、作業者は脚部86、87を弾性変形させて離反させ、尻手リング77を挿入することができる。
【0068】
また、上記脚部86、87の長さが極端に短く設定されてもよい。その場合、脚部86、87は、化粧リング61の周面に沿って配置され、上記アンカーリング部88が上記ケース75の切欠凹部79に嵌め込まれる。この場合であっても、アンカーリング部88が上記ケース75から突出した状態で、当該係止具76が化粧リング61とケース75との間に挟み込まれて保持される。
【0069】
本実施形態では、ケース75に上記切欠凹部79が設けられており、この切欠凹部79の形状は矩形状を呈しているが、切欠凹部79の形状はこれに限定されるものではない。前述のように、係止具76の脚86、87が上記化粧リング61とケース75との間に挟み込まれて保持されるので、上記切欠凹部79は、上記アンカーリング部88が挿通可能な形状であればよい。したがって、切欠凹部79に代えて単なる孔がケース75の周壁に設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0070】
30・・・フィッシングロッド
31・・・バット
32・・・釣竿本体
34・・・ブランク
35・・・後端部
40・・・尻手リング機構
41・・・軸方向
60・・・バット本体
61・・・化粧リング
62・・・メインパイプ
63・・・第1グリップ
64・・・第2グリップ
65・・・前パイプ
66・・・後パイプ
72・・・外装リング
73・・・尻栓
74・・・スリーブ
75・・・ケース
76・・・係止具
77・・・尻手リング
78・・・周壁
79・・・切欠凹部
80・・・端面
81・・・段部
82・・・大径部
83・・・小径部
84・・・段部
85・・・隙間
86・・・脚部
87・・・脚部
88・・・アンカーリング部
89・・・一端
90・・・一端
91・・・他端
92・・・他端
95・・・外周面
96・・・外周面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブランクを有する釣竿本体が支持されるバット本体と、
当該バット本体の後端部に設けられた尻手リング機構とを備え、
当該尻手リング機構は、
切欠部が設けられた周壁を有し、上記バット本体の後端部に回動可能に外嵌された環状ケースと、
当該環状ケースに内嵌された状態で当該環状ケースと共に上記バット本体の後端部に対して回動可能に外嵌された環状係止具とを有し、
当該環状係止具は、
上記バット本体の後端部の周囲に沿って配置される一対の脚部及び当該各脚部の一端に連続して上記環状ケースの軸方向と交差する方向に延設され、上記切欠部から突出するアンカーリング部を有するバット。
【請求項2】
上記切欠部は、上記周壁の一部が上記軸方向一端側端面から当該軸方向に沿って所定長さだけ切り欠かれることにより形成されている請求項1に記載のバット。
【請求項3】
上記一対の脚部は、上記バット本体の後端部を周方向に囲繞し、当該各脚部の他端同士は所定距離だけ離反されており、
上記アンカーリング部に尻手リングが係合されている請求項1又は2に記載のバット。
【請求項4】
上記バット本体に外装リングが外嵌されており、
上記環状ケース及び上記環状係止具は、上記外装リングに対して相対的に回動自在に外嵌されている請求項1から3のいずれかに記載のバット。
【請求項5】
上記環状ケースの外周面は、上記バット本体の外周面と滑らかに連続している請求項1から4のいずれかに記載のバット。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載のバットと、
上記バット本体に支持された釣竿本体とを有するフィッシングロッド。





【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−110306(P2012−110306A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−264443(P2010−264443)
【出願日】平成22年11月28日(2010.11.28)
【出願人】(000002439)株式会社シマノ (1,038)
【Fターム(参考)】