説明

バナジウム含有アガリクス菌糸体の生産方法及びアガリクス機能性食品。

【課題】 抗腫瘍作用等を有するキノコとして知られているアガリクスに、糖尿病の予防等に効果的な元素であるとされているバナジウムを含有させた機能性食品と、該機能性食品を効率よく生産する生産方法を提供する。
【解決手段】 炭素源、窒素源、ミネラル源、水等の培養成分とともに水溶性バナジウム化合物を含む培地にアガリクス菌糸体の種培養液を接種して育成し、バナジウムを含有するアガリクス菌糸体を得る。このアガリクス菌糸体を遠心分離機等の分離装置を用いて液体と分離し、乾燥機で乾燥したのち、粉砕装置で粉砕して、バナジウム含有菌糸体粉末からなる機能性食品を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バナジウムを含有するアガリクス菌糸体からなる機能性食品と、その生産方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アガリクスは、ハラタケ目ハラタケ科ハラタケ属に属するキノコで、ヒメマツタケと呼ばれている。一般的に、キノコ類に含まれるβ−1.6グルカンには、免疫力を強化することによる腫瘍抑制作用等があり、人体に有効であることが知られているが、特に、アガリクスは、他のキノコと比較して腫瘍抑制効果が高いことが知られており、抗腫癌効果や制癌作用、癌の予防効果があることも報告されている。このため、最近は機能性食品として広く市販されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
一方、バナジウムは原子番号23、原子量50.94の元素であり、人は毎日食物から10〜60μgのバナジウムを摂り、人体内には0.01〜200μgのバナジウムが存在するといわれている。最近、バナジウムが血糖効果作用を持つことが見出され、バナジウムを含む種々のミネラルウオータが市販されるようになった。バナジウムには、小胞体であるグルコース運搬体を細胞膜にまで運び、血糖の取り込みを促進する作用と、ホルモンによる脂肪細胞の脂肪分解を阻止する作用があり、糖尿病治療に効果的であると言われている。また、バナジウムの欠乏は、成長・生殖不全やインシュリン非依存性糖尿病の原因となると言われている。このため、バナジウムを含む機能性食品も販売されるようになった。例えば、特許文献1には、バナジウムを含むキノコ類とその製造方法が記載されている。
【0004】
【特許文献1】特開2003−158920号公報
【0005】
上記特許文献1に記載のキノコ類は、バナジウムを含有するヒラタケ、ヤマブシタケ、タモギタケ等であり、ふすま、コーンスターチ、オガクズ、米糠、綿実粕、豆皮等のうち少なくとも1種類を必須成分とする栽培用培地に、無機バナジウム化合物やコーラルサンド等のバナジウム含有成分を加えた倍地で栽培するもので、これらバナジウムを含有するキノコ類を乾燥粉砕してバナジウム含有機能性食品とするものである。
【0006】
本発明は、キノコ類のうち、特に腫瘍抑制効果等すぐれた特性を有するアガリクスに着目し、これにバナジウムを組み合わせることにより、より機能性に富んだ食品を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は次のような構成を採用した。すなわち、請求項1に記載の発明は、炭素源、窒素源、ミネラル源、水等の培養成分とともに水溶性バナジウム化合物を含む培地にアガリクス菌糸体の種培養液を接種して育成し、アガリクス菌糸体を得ることを特徴とするアガリクス菌糸体の生産方法である。
【0008】
また、請求項2に記載の発明は、上記請求項1の生産方法によって得られたアガリクス菌糸体を遠心分離機等の分離装置を用いて液体と分離し、乾燥機で乾燥したのち、粉砕装置で粉砕して、バナジウム含有菌糸体粉末を得ることを特徴とするバナジウム含有アガリクス粉末の生産方法である。さらに、請求項3に記載の発明は、上記請求項2に記載のバナジウム含有アガリクス粉末において、10ppm以上のバナジウムを含有するアガリクス菌糸体粉末からなることを特徴とするアガリクス又はアガリクス機能性食品である。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、バナジウムを含むアガリクス菌糸体を、能率よく、比較的簡単に生産することができる。バナジウム含有量のコントロールも簡単である。また、請求項2に記載の発明によれば、上記請求項1に記載の方法で生産された菌糸体を用いて、摂取しやすい機能性食品を比較的容易に生産することができる。
【0010】
これらの方法によって得られるアガリクス菌糸体や機能性食品は、アガリクスの特性に加えて、生体に対する種々の効果が知られているバナジウムを含むので、健康を維持するうえできわめて効果的であると考えられる。なお、アガリクス菌糸体のバナジウム含有量は、10ppm以上とするのが好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の好ましい実施形態について具体的に説明する。図は本発明に係るバナジウム含有アガリクス菌糸体の生産方法を例示するもので、1は菌糸培養槽、2は分離機、3は含水菌糸体、4は乾燥機、5は粉砕機、6はアガリクス粉末、7はろ過液タンクである。菌糸培養槽1内には攪拌機9が設けられている。
【0012】
この培養槽1内に液体の培地が入れられる。液体の培地は、炭素源、窒素源、ミネラル源、蒸留水等を混合したものである。ここで使用される炭素源としては、例えばグルコース、コーンスターチ、ポテトデキストロース等があり、窒素源としては、例えば酵母エキス、ペプトン、コーンスティプリカー、モルトエキス等がある。さらに、ミネラル源としては、例えばリン酸塩、マグネシウム塩、カルシウム塩等がある。
【0013】
本発明では、上記培地にバナジウム化合物として、水溶性の例えばメタバナジン酸等のバナジウム塩を加える。このバナジウム化合物の添加量は、所定の濃度となるようにあらかじめ設定しておく。培地中におけるバナジウムの量は、200ppm程度まで可能であるが、実生産上は10〜100ppmの範囲とするのが好ましい。バナジウムの量が少なければ、得られるアガリクス菌糸体中のバナジウム量が少なくて所望の効果が期待できず、多過ぎると菌糸体の培養がうまく行われなくなる恐れがある。以上の混合物を加熱滅菌して液体培養用培地として用いる。
【0014】
上記培地に、あらかじめ調整したアガリクス菌糸体の種培養液を無菌的に接種し、無菌空気を通気しつつ、所定の培養条件にて菌糸体の培養を行う。所定の期間培養して所望の菌糸体が得られたら、フィルタープレス、連続遠心機等の分離装置を用いて液体培養菌糸体と培養液を分離する。これにより、含水菌糸体が得られる。得られた菌糸体は、蒸留水などで洗浄したのち、通気乾燥、スプレードライ、凍結乾燥等の適当な乾燥方法により乾燥し、さらに所定条件による殺菌、粉砕工程を経て、バナジウム含有アガリクス菌糸体粉末を得る。
【実施例】
【0015】
図1に示す装置を用いてバナジウム含有アガリクス菌糸体と該菌糸体の粉末からなる機能性食品を生産した。まず、炭素源、窒素源、ミネラル源、蒸留水に水溶性バナジウム化合物としてバナジン酸ナトリウム(NaVO3 )を添加混合した。バナジウム化合物の添加量は、培地中のバナジウム濃度が0〜100ppmの範囲となるような複数段階とした。この混合物をオートクレーブ等で加熱滅菌して培地とした。
【0016】
上記培地を培養槽1に入れ、無菌状態の種培養液を接種した。この培養槽1内に無菌空気を通気しつつ、温度25℃で30日間培養した。然る後、遠心分離機2で菌糸体と培養液とを分離した。分離した培養液は、ろ過液タンク7に溜めたのち、培養液として培養槽1に戻し、再使用した。
【0017】
分離機で分離された含水菌糸体は、スプレードライヤーで乾燥し、解砕機で粉砕してバナジウム含有菌糸体粉末を得た。培地へのバナジウム添加量と、得られた菌糸体中のバナジウム含有量(実測値)との関係を表1に示す。表1からわかるように、培地中のバナジウム添加量と菌糸体中のバナジウム含有量との間には相関性があると考えられる。したがって、あらかじめ試験を行って、培地中へのバナジウム添加量と菌糸体のバナジウム含有量との関係を調べておけば、製品中のバナジウム濃度をコントロールすることは可能である。
【0018】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明に係るアガリクス菌糸体及びアガリクス菌糸体粉末からなる機能性食品は、適量のバナジウムを含有するので、これを摂取することにより、人体に対するアガリクスの効果とバナジウムの効果を合わせて期待することができる。したがって、本発明は、健康食品の分野で大いに利用することができる。また、本発明の生産方法によれば、健康促進のための機能性食品としてのバナジウム含有アガリクス菌糸体を比較的容易に実生産規模で生産することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明のバナジウム含有アガリクスの生産設備の構成説明図である。
【符号の説明】
【0021】
1 培養槽
2 分離機
3 含水アガリクス菌糸体
4 乾燥機
5 粉砕機
7 ろ過液タンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素源、窒素源、ミネラル源、水等の培養成分とともに水溶性バナジウム化合物を含む培地にアガリクス菌糸体の種培養液を接種して育成し、バナジウムを含有するアガリクス菌糸体を得ることを特徴とするアガリクス菌糸体の製造方法。
【請求項2】
請求項1の製造方法によって得られたアガリクス菌糸体を遠心分離機等の分離装置を用いて液体と分離し、乾燥機で乾燥したのち、粉砕装置で粉砕して、バナジウム含有菌糸体粉末を得ることを特徴とするバナジウム含有アガリクス粉末の製造方法。
【請求項3】
10ppm以上のバナジウムを含有するアガリクス菌糸体粉末からなることを特徴とするアガリクス機能性食品。

【図1】
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【公開番号】特開2006−180716(P2006−180716A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−374547(P2004−374547)
【出願日】平成16年12月24日(2004.12.24)
【出願人】(391033517)太陽鉱工株式会社 (6)
【出願人】(591270866)株式会社岡田商会 (3)
【Fターム(参考)】