説明

バナジウム含有カイワレ大根及びその栽培方法

【課題】 糖尿病の予防等に効果的な元素であるとされているバナジウムを含有し、日常的に手軽に食することのできる食品として、バナジウムを含有するカイワレ大根を提供する。
【解決手段】 発芽したカイワレ大根の種子を水耕栽培用水槽に入れ、該水槽内に水に可溶性のカリ、リン、窒素等を含む所定温度の液肥を供給しながら育成するカイワレ大根の栽培方法であって、前記液肥にバナジウムの可溶性化合物を添加して育成を行う。このカイワレ大根の栽培方法において、液肥中のバナジウム濃度を0.05〜10mg/lとするものが好ましく、この方法によって生産されるカイワレ大根のバナジウム含有量は、10〜100ppm程度とするのが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バナジウムを含有するカイワレ大根とその栽培方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カイワレ大根は、ビタミン等の含有量が多く、短期間で栽培することのできる野菜として食品分野で賞用されている。カイワレ大根の栽培方法としては、液肥を散布しながら栽培する方法が広く採用されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
一方、バナジウムは原子番号23、原子量50.94の元素であり、人は毎日食物から10〜60μgのバナジウムを摂り、人体内には0.01〜200μgのバナジウムが存在するといわれている。最近、バナジウムが血糖効果作用を持つことが見出され、バナジウムを含む種々のミネラルウオータが市販されるようになった。バナジウムには、小胞体であるグルコース運搬体を細胞膜にまで運び、血糖の取り込みを促進する作用と、ホルモンによる脂肪細胞の脂肪分解を阻止する作用があり、糖尿病治療に効果的であると言われている。また、バナジウムの欠乏は、成長・生殖不全やインシュリン非依存性糖尿病の原因となると言われている。このため、バナジウムを含む機能性食品も販売されるようになった。例えば、特許文献1には、バナジウムを含むキノコ類とその製造方法が記載されている。
【0004】
【特許文献1】特開2003−158920号公報
【0005】
上記特許文献1に記載のキノコ類は、バナジウムを含有するヒラタケ、ヤマブシタケ、タモギタケ等であり、ふすま、コーンスターチ、オガクズ、米糠、綿実粕、豆皮等のうち少なくとも1種類を必須成分とする栽培用培地に、無機バナジウム化合物やコーラルサンド等のバナジウム含有成分を加えた倍地で栽培するもので、これらバナジウムを含有するキノコ類を乾燥粉砕してバナジウム含有機能性食品とするものである。
【0006】
このようなキノコ類を原料とする機能性食品は、それなりに賞用されているが、もっと手軽にバナジウムを摂取することができるのが望ましい。そこで、本発明は、キノコ類ではなく、日常的に食するバナジウム含有食品としてのカイワレ大根を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は次のような構成を採用した。すなわち、請求項1に記載の発明は、発芽したカイワレ大根の種子を水耕栽培用水槽に入れ、該水槽内に水に可溶性のカリ、リン、窒素等を含む所定温度の液肥を供給しながら育成するカイワレ大根の栽培方法において、前記液肥にバナジウムの可溶性化合物を添加して育成を行うことを特徴としている。また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のカイワレ大根の栽培方法において、液肥中のバナジウム濃度を0.05〜10mg/lとするものである。
【0008】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の栽培方法によって栽培されたバナジウムを含有するカイワレ大根である。また、請求項4に記載の発明は、バナジウム含有量が10〜100ppmである請求項3に記載のカイワレ大根である。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、バナジウムを含むカイワレ大根を比較的短期間で大量に生産することができる。バナジウムを水溶性化合物として液肥に添加するので、バナジウム濃度のコントロールも容易である。なお、液肥中のバナジウム濃度を請求項2に記載の発明のように、0.05〜10mg/lとすると、得られるカイワレ大根のバナジウム含有量が好ましい価となる。
【0010】
また、請求項3に記載の発明にかかるカイワレ大根は、従来は殆ど含有されていなかったバナジウムを含有するので、これを食用することにより、種々の優れた効果があると言われるバナジウムを簡単に人体に摂取することができる。カイワレ大根中のバナジウムの含有量は、請求項4に記載のように、10〜100ppmとするのが効果的である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の好ましい実施形態について具体的に説明する。図は本発明に係るバナジウム含有カイワレ大根の生産方法を例示するもので、1は栽培用の水槽、2は液肥調整槽である。栽培用水槽1の栽培用床6には別の場所(発芽室)で発芽させたカイワレ大根の種子4を入れ、液肥5をポンプ12で栽培用水槽1に循環供給する。上記苗は、発芽床3に種子を蒔き、通常の水耕栽培の場合と同様に、適度の湿度と温度を保って発芽させたものである。
【0012】
液肥5は水にカリ、リン、窒素等を含む可溶性肥料を添加混合したもので、本発明では、これら従来の液肥にバナジウム化合物を添加する。このバナジウム化合物は、水に溶ける可溶性バナジウム化合物であり、この種のバナジウム化合物としては、例えばバナジン酸ナトリウムがある。これらを混合した液肥5は、液肥調整槽2内に設けた攪拌機7によって適宜攪拌され、ポンプ12によって前記栽培用水槽1に適量ずつ供給される。液肥5は、液肥調整槽2と栽培用水槽1との間を循環させるのが好ましい。
【0013】
なお、液肥5中のバナジウムの濃度は2〜5mg/lとするのが好ましい。この濃度が少な過ぎると、得られるカイワレ大根中のバナジウムの量が少な過ぎて十分な効果が期待できなくなる。また、多過ぎると、カイワレ大根の成育に問題が生じるおそれがあるので、上記範囲が好ましい。
【0014】
バナジウム以外の液肥の成分は、通常のカイワレ大根の水耕栽培用の肥料と同等なものでよい。この種の液肥には、上記カリ、リン、窒素等の他にマグネシュウム塩類等のミネラル源や炭素源が含まれているのが普通である。液肥の量が減少したら、適宜補充する。また、栽培中は、光合成のための光として、太陽光や補助灯(蛍光灯、ダイオード等)の光を照射する。
【0015】
栽培用水槽1で栽培を開始してから数日で食用に適したカイワレ大根が得られる。このカイワレ大根は、そのまま食することができることは勿論であるが、保存食として、乾燥しておくこともできる。この乾燥法としては、例えば真空乾燥法を採用することができる。十分に乾燥したカイワレ大根は、真空パック等で包装して保存すればよい。乾燥したカイワレ大根は、そのまま食することも可能であるが、水で戻すことにより、生のカイワレ大根とそれほど差がない味と食感を得ることができる。
【0016】
さらに、乾燥したカイワレ大根を粉砕機で粉砕して、粉末として保存することもできる。この粉末は、いわゆるフリカケとして例えば米飯に振りかけて食べるのに適している。いずれにしても、得られるカイワレ大根には適量のバナジウムが含有されているので、最近しばしば報告されている人体への好ましい影響を期待できるものであり、手軽に食用できるので、誰でも抵抗感なくバナジウムを摂取することが可能となる。
【0017】
カイワレ大根には、マルトース等の多糖体が多量に含まれているが、バナジウムを添加すると、この多等体とバナジウムがキレート化合物を形成すると考えられる。多等体と結合したバナジウムは生体に吸収されやすいので、カイワレ大根にバナジウムを含有させると、人体に対する特にすぐれた効果が期待できるのである。
【実施例】
【0018】
図1に示すような生産設備を用いてカイワレ大根を栽培した。上述のとおり、図中の1は栽培用水槽、2は液肥調整槽である。この液肥調整槽2内に可溶性肥料と可溶性バナジウム化合物とその他の必要成分(ミネラル源、炭素源等)と水を入れて攪拌機7で十分に攪拌混合した。液肥中のバナジウムの濃度は、0.05〜10mg/lの範囲内で、複数段に調整した。
【0019】
栽培用の苗4は、発芽室で別途発芽させた種子であり、これを栽培用水槽1内に設けた栽培用床15にセットし、温度20℃の液肥をポンプ12で栽培用水槽1に循環供給しつつ栽培をおこなった。栽培中は、太陽光または補助灯の光を照射した。
【0020】
この条件で栽培をおこなったところ、4〜5日で食用に適した所望のカイワレ大根が得られた。このカイワレ大根をそのまま食したところ、味と食感は通常のカイワレ大根と同じであった。液肥中のバナジウム濃度と得られたカイワレ大根中のバナジウム含有量(実測値)との関係を表1に示す。同表から、液肥中のバナジウム濃度と製品であるカイワレ大根中のバナジウム含有量には相関関係があり、製品中のバナジウム含有量を液肥中のバナジウム濃度でコントロールすることができると考えられる。
【0021】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明に係るカイワレ大根は、バナジウムを含有するので、一般食品や健康食品の分野で利用することができる。また、本発明にかかるカイワレ大根の栽培法によれば、適量のバナジウムを含有するカイワレ大根を短期間で能率よく生産することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明のカイワレ大根の栽培に使用する生産設備の構成説明図である。
【符号の説明】
【0024】
1 栽培用水槽
2 液肥調整槽
3 発芽床
4 苗
5 液肥
7 攪拌装置
12 ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発芽したカイワレ大根の種子を水耕栽培用水槽に入れ、該水槽内に水に可溶性のカリ、リン、窒素等を含む所定温度の液肥を供給しながら育成するカイワレ大根の栽培方法であって、前記液肥にバナジウムの可溶性化合物を添加して育成を行うことを特徴とするカイワレ大根の栽培方法。
【請求項2】
液肥中のバナジウム濃度が0.05〜10mg/lである請求項1に記載のカイワレ大根の栽培方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の栽培方法によって栽培されたバナジウムを含有するカイワレ大根。
【請求項4】
バナジウム含有量が10〜100ppmである請求項3に記載のカイワレ大根。

【図1】
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【公開番号】特開2006−166833(P2006−166833A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−365803(P2004−365803)
【出願日】平成16年12月17日(2004.12.17)
【出願人】(391033517)太陽鉱工株式会社 (6)
【出願人】(591270866)株式会社岡田商会 (3)
【出願人】(504464346)有限会社中野農園 (1)
【Fターム(参考)】