説明

バニリン及びエチルバニリンをベースとする化学物質を含む組成物の調製方法、得られる組成物並びにそれらの使用

本発明は、バニリン及びエチルバニリンをベースとする化学物質を本質的に含む組成物を製造する方法に関する。本発明はまた、得られる組成物、並びに多くの利用分野に、特に人間及び動物の食料中におけるそれらの使用にも関する。バニリン/エチルバニリンのモル比が2であるバニリン及びエチルバニリンをベースとする化学物質を本質的に含む組成物を調製するための本発明の方法は、2以外のモル比で用いられるバニリンとエチルバニリンとの混合物(過剰分のバニリンが該混合物の重量の2%〜20%を構成するもの)を溶融させることから成る工程;この溶融混合物を50℃±1℃又はそれより低い温度に冷却することによって固化させることから成る工程;及び得られた新規の化学物質を含む組成物を回収することから成る工程:を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バニリン及びエチルバニリンをベースとする化学物質(配合物)を本質的に含む組成物を調製するための方法に関する。
【0002】
本発明はまた、得られる組成物並びに多くの利用分野におけるそれらの利用、特に人間の食料及び動物の飼料におけるそれらの利用にも関する。
【背景技術】
【0003】
バニリン、即ち4−ヒドロキシ−3−メトキシベンズアルデヒドは、非常に多くの利用分野において、フレーバー(風味付け剤)及び/又はフレグランス(賦香剤)として広く用いられている製品である。
【0004】
従って、バニリンは食料品及び動物飼料産業において多量に消費されるが、その他の分野、例えば製薬調剤や香料調合等にも用いられる。結果として、これは高消費量の製品である。
【0005】
エチルバニリン、即ち3−エトキシ−4−ヒドロキシベンズアルデヒドを少量存在させることによってバニリンの賦香(parfumantes)性及び/又は感覚器官刺激性を高めることができることが知られているため、バニリンは、エチルバニリンと組合わされることが非常に多い。
【0006】
従って、潜在的利用者はバニリンとエチルバニリンとの既製の混合物を入手することを望んでいる。
【0007】
起こる問題は、バニリン粉末とエチルバニリン粉末とを乾式混合する慣用の技術によってこの混合物を調製すると、非常にケーキング(motter、粘結)しやすい混合物ができることである。その結果、このような混合物は、微粉末形態ではないという外観及び生じた塊を溶かすのが非常に困難なことのせいで、使用することが不可能である。
【0008】
さらに、長期間貯蔵するとケーキング現象がさらに悪化して、粉末が大きな塊になる。
【0009】
従って、バニリン及びエチルバニリンをベースとし、流動性が改善され、貯蔵時にケーキングが起こらない新たな固体形状の製品を得ることが望まれる。
【0010】
本出願人は、バニリン/エチルバニリンのモル比2で用いられるバニリン及びエチルバニリンの共結晶化によって得られる新規の化学物質は特に流動性及び非ケーキング性に関してユニークな特性を示すことを見出した(仏国特許出願第08/05913号)。
【0011】
この化学物質は示差走査熱量分析によって測定して60℃±2℃の融点を有する白色粉末の形にあり、この融点はバニリンの融点の81℃±1℃やエチルバニリンの融点の76℃±1℃とは異なるものである。
【0012】
この化学物質は、バニリン及びエチルバニリンのものとは異なる特有のX線回折スペクトルを有する。
【0013】
その図1には、バニリンとエチルバニリンとの新規化学物質のX線回折スペクトル、バニリンのX線回折スペクトル及びエチルバニリンのX線回折スペクトルに相当する3つのカーブが示されている。
【0014】
バニリンとエチルバニリンとの新規化学物質のスペクトル上には、角度2θ(°)=20.7−25.6−27.5−28.0におけるスペクトル線の存在が特に認められる;このスペクトル線はバニリンやエチルバニリンのX線回折スペクトルには存在しない。
【0015】
この化学物質の別の特徴は、そのX線回折スペクトルが長期間の貯蔵の間に有意の変化を起こさないことである。
【0016】
そのスペクトルの変化を、周囲温度における貯蔵時間の関数として監視した。その図2に示されたように、長期間(5か月間)にわたって貯蔵しても、新規化学物質のスペクトルの変化は何ら観察されなかった。
【0017】
図2は、貯蔵時間の関数としての新規化学物質のX線回折スペクトルの変化を示す。時間t=0、次いで2か月の貯蔵後及び5か月の貯蔵後において得られたその発明の化学物質のX線回折スペクトルに相当する3つのカーブを示している。
【0018】
得られた3つのカーブは通常は重なり合う。それらをうまく区別できるようにするために、図2のこれら3つのカーブの内の2つのもののベースラインを、時間t=0におけるX線回折スペクトルである参照ベースラインを基準としてわざとシフトさせた。2か月間の貯蔵の後に得られたX線回折スペクトルに相当するカーブは、5000カウント/秒だけシフトされ、5か月間の貯蔵の後に得られたX線回折スペクトルに相当するカーブは、10000カウント/秒だけシフトされたものである。
【0019】
図2は、長期貯蔵後にもその発明の化学物質に変化がないことを示している。
【0020】
バニリン/エチルバニリンのモル比が2であるバニリンとエチルバニリンとの新規化学物質の特定スペクトル線の変化がないことが記録された。
【0021】
この化学物質の別の特徴は、バニリン及びエチルバニリンと同様に全く又はほとんど吸湿性がないことである。
【0022】
この化学物質の吸湿性は、相対湿度80%の空気中で40℃に1時間保った後の重量変化を測定することによって決定される。
【0023】
この化学物質は、水吸着量が0.5重量%未満であり、その水含有率は0.1〜0.3重量%の範囲であるのが好ましい。この化学物質は、完全に固体のままである。
【0024】
さらに、この化学物質は良好な感覚器官刺激性を有し、バニリンよりはるかに強い芳香を有する。
【0025】
従って、定義された化学物質(以下においては「新規化学物質」と言う)は、単純な乾式混合によって得られるバニリンとエチルバニリンとの組成物と比較して低減したケーキング可能性によって反映される特殊な性質を有する。
【0026】
上記のバニリン及びエチルバニリンをベースとする化学物質の特有の性質は、2つのパラメーター、即ちバニリンとエチルバニリンとの間のモル比、並びに、その融点及びそのX線回折スペクトルによって特徴付けられる特殊な結晶形態でバニリンとエチルバニリンとの間で共結晶化が起こるという事実に、結び付けられる。
【0027】
この化学物質を得るための1つのルートは、モル比2で用いられるバニリンとエチルバニリンとの混合物を溶融させ、次いでこの溶融混合物を温度を50℃±1℃に下げることによって冷まし、次いで混合物が完全に固まるまでこの温度を維持することから成る方法にある。
【0028】
冷却は、撹拌せずに行うのが有利である。
【0029】
このためには、モル比2で用いられるバニリン及びエチルバニリンを別々に又は混合物として装填し、この混合物を60℃〜90℃の範囲、好ましくは70℃〜80℃の範囲で選択される温度にする。
【0030】
この溶融混合物の調製は、不活性ガス(好ましくは窒素)雰囲気下で実施するのが望ましい。
【0031】
この混合物を、溶融混合物が得られるまで、所定の温度に保つ。
【0032】
溶融物質を任意の容器中、例えば固化した後に物質を容易に回収できるステンレス鋼トレー中に、移す。この容器は、溶融混合物を入れる前に70〜80℃の範囲に予め加熱しておく。
【0033】
次の工程において、任意の既知の手段によって冷却温度を制御して、溶融混合物を50℃±1℃に冷ます。
【0034】
前記のように、冷却は撹拌せずに実施するのが好ましい。
【0035】
得られた固化混合物を次いで様々な技術、特に粉砕に従って、成形することができる。
【0036】
この方法は、バニリンとエチルバニリンとの新規化学物質を得ることを可能にするが、しかしこの化学物質の結晶化は非常に遅いため、工業的規模に容易に移行できないという欠点を持つ。実際、この化学物質は過冷却現象を示し、即ち物質を溶融させてからその融点以下に冷ました時に、結晶化するのが難しく、長時間液状のままにある。結晶化に要する時間はばらばらであり、結晶化を正確に制御することが大切である。
【0037】
従って、50℃±1℃より低い温度、例えば20℃まで冷却すると、溶融混合物の固化工程を促進することはできるが、結晶化が不均質になって様々な結晶層が共存することになり、その内の一部は周囲温度において不安定だったり、非常に吸湿性であったりする。その結果として、かかる条件下で結晶化させたバニリン−エチルバニリン混合物は貯蔵時にかなりのケーキングを引き起こす。
【0038】
比較例として、バニリン−エチルバニリンのモル比及び溶融混合物の結晶化のための条件の重要性を例示するために、図3に、等モル量のバニリン−エチルバニリン混合物を70℃において溶融させ、20℃に素早く冷却することによって結晶化させたもののX線回折スペクトルが示されている。
【0039】
このスペクトルはバニリンのものともエチルバニリンのものともバニリン/エチルバニリンのモル比が2であるバニリンとエチルバニリンとの新規化学物質のものとも異なり、特に角度2θ(°)=7.9−13.4−15.8−19.9−22.2−30.7に特定スペクトル線を持つ。
【0040】
図4は、22℃において3週間の貯蔵期間にわたるこのスペクトルの変化を示しており、こうして結晶化させた相は不安定であり、素早く変化する一方で物質のケーキングを引き起こすということを証明している。
【0041】
この物質は48℃±1℃の融点を有し、非常に吸湿性であることがわかった:相対湿度80%の空気中で40℃において1時間の間に、4重量%以上の水を吸着し、潮解した。
【0042】
従って、その特性は前記の新規化学物質のものとは非常に異なるものであり、バニリン−エチルバニリン混合物が呈するケーキングの問題を解消することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0043】
【特許文献1】仏国特許出願第08/05913号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0044】
本発明の1つの目的は、バニリン/エチルバニリンのモル比が2であるバニリンとエチルバニリンとの新規化学物質を本質的に得ることを可能にする方法であって、工業的規模に移行可能な方法を提供することにある。
【0045】
本発明の別の目的は、同じものを含み、上記の改善された特性を有する組成物をもたらすことである。
【課題を解決するための手段】
【0046】
バニリン/エチルバニリンのモル比が2であるバニリン及びエチルバニリンをベースとする化学物質を本質的に含む組成物を調製するための方法であって、下記の工程:
・2以外のモル比で用いられるバニリンとエチルバニリンとの混合物(バニリン過剰分が該混合物の重量の2〜20%を構成するもの)を溶融させる工程;その際、溶融温度は、得られる新規の化学物質が完全に溶融し、しかし過剰分のバニリンが結晶化の種としての働きをするために溶融混合物中に微細に分散した固体状態のままにあるように選択される;
・50℃±1℃又はそれより低い温度に冷却することによって固化させる工程;
・得られた新規の化学物質を含む組成物を回収する工程;
・随意としての、51℃±1℃の温度への熱処理工程:
を含むことを特徴とする前記方法が見出され、これは本発明の主題を構成する。
【0047】
本明細書において「バニリン及びエチルバニリンをベースとする化学物質を本質的に含む組成物」という表現は、バニリン/エチルバニリンのモル比が2である新規のバニリン/エチルバニリン化学物質とバニリンとの混合物を少なくとも80重量%含む組成物を意味するものとし;バニリンは該混合物の25重量%未満を占める。
【0048】
「新規のバニリン/エチルバニリン化学物質」という表現は、無水形態にある及び化学物質及びその水和物を意味するものとする。
【発明の効果】
【0049】
本発明に従えば、過剰量のバニリンの存在下でその結晶化を実施すれば、バニリンとエチルバニリンとの新規化学物質が容易に得られることが見出された。これらの条件下では、この新規の化学物質が直ちに固化する。
本出願人は、過剰量のバニリンの存在は結晶化の種としての働きをすることができ、従って新規の化学物質の結晶化を促進するということを見出した。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】図1は、バニリンとエチルバニリンとの新規化学物質、バニリン及びエチルバニリンの3種のX線回折スペクトルを示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0051】
モル比2に対してバニリンの過剰量を保証するためには、バニリン及びエチルバニリンを次の割合で用いる:
・バニリン67〜72重量%、
・エチルバニリン28〜33重量%。
【0052】
本発明の好ましい形態に従えば、小過剰のバニリンが好ましく、その割合は次の通りであるのが有利である:
・バニリン67〜70重量%、
・エチルバニリン30〜33重量%。
【0053】
本発明の方法に従えば、過剰量のバニリンを固体状態に保ちながら、新規の化学物質を溶融させることから成る操作が実施される。
【0054】
このためには、バニリン及びエチルバニリンを別々に又は混合物として装填し、この混合物を、バニリンとエチルバニリンとの新規化学物質が溶融状態となるが過剰分のバニリンが溶融しないように選択した温度にする。
【0055】
前述のように、新規の化学物質についての溶融温度は、新規の化学物質の溶融温度、即ち60℃±2℃より高く、しかし過剰分のバニリンの溶融温度よりは低いように選択される。
【0056】
好ましくは、前記溶融温度は、62℃〜70℃の範囲、好ましくは62℃〜65℃の範囲で選択される。この温度範囲は、乾燥粉末(水分0.2%未満)について与えたものである。
【0057】
この操作は、任意の装置中で、特に慣用の加熱装置(例えば電気抵抗による加熱システム又は二重ジャケット中の熱移動流体の循環による加熱システム)を備えたタンク中、又は炉や乾燥室のような加熱チャンバー中で、撹拌しながら実施するのが一般的である。
【0058】
この溶融は不活性ガス(好ましくは窒素)雰囲気下で実施するのが望ましい。
【0059】
本方法の1つの別態様に従えば、過剰量のバニリンは溶融工程の終わりに導入することができる。
【0060】
この場合、バニリン及びエチルバニリンは、別々に又は混合物として、モル比2(バニリン65重量%、エチルバニリン35重量%)で装填され、次いでこの混合物をこの混合物が完全に溶融するまで選択した温度に保つ。
【0061】
次いで、混合物の重量の2〜20%を構成する過剰分のバニリンを溶融混合物に加え、撹拌することによって微細分散させる。
【0062】
次の工程において、任意の既知の手段によって冷却温度を制御することによって溶融混合物を50℃±1℃の温度に冷却する。
【0063】
本発明の方法の1つの好ましい別形態に従えば、冷却は撹拌せずに実施するのが好ましい。
【0064】
この段階において、全く独創的な組成物が得られる。
【0065】
これは、バニリン/エチルバニリンのモル比が2であるバニリンとエチルバニリンとの新規化学物質中のバニリンの分散体の形にある。
【0066】
本発明の方法に従って得られる化合物は、新規のバニリン/エチルバニリン化学物質とバニリンとの混合物を少なくとも80重量%、好ましくは少なくとも90重量%含む。
【0067】
得られる組成物は、バニリン/エチルバニリン及び随意としてのエチルバニリンの相図の20重量%未満、好ましくは10重量%未満の、他の結晶相を含む。この混合物を以下においては「他の結晶相」と言う。
【0068】
より詳細には、得られる組成物は、
・新規のバニリン/エチルバニリン化学物質とバニリンとの混合物80〜99重量%、
・他の結晶相1〜20重量%
を含むことができる。
【0069】
本発明の好ましい組成物は、
・新規のバニリン/エチルバニリン化学物質とバニリンとの混合物90〜99重量%、
・他の結晶相1〜10重量%
を含む。
【0070】
得られる新規のバニリン/エチルバニリン化学物質及びバニリンを含む混合物中、バニリンは、この混合物の20重量%未満、好ましくは14%未満を占める。
【0071】
より詳細には、得られる混合物は、
・新規のバニリン/エチルバニリン化学物質80〜94重量%、
・バニリン6〜20重量%
を含むことができる。
【0072】
好ましい混合物は、次の組成を有する:
・新規のバニリン/エチルバニリン化学物質86〜94重量%、
・バニリン6〜14重量%。
【0073】
従って、本発明の方法は、固化した組成物をもたらし、この組成物は成形することができ、様々な技術を構想することができる。
【0074】
それらの内の1つは、粒子寸法が構想される用途に適合したものになるように得られる混合物を粉砕することから成る。
【0075】
これは大抵は100μm〜2mmの範囲に及ぶ。
【0076】
一般的に、粒子寸法は、中位径(d50)で表され、100μm〜800μmの範囲、好ましくは200μm〜300μmの範囲である。中位径とは、粒子の50重量%が該中位径より大きい直径を有し、粒子の残りの50重量%が該中位径より小さい直径を有するようなものと定義される。
【0077】
粉砕操作は、慣用の装置、例えばブレードミル、歯付きロール粉砕機又は造粒機を用いて実施することができる。
【0078】
ドラムやベルト上でのフレーク成形技術を用いて、別の成形を実施することができる。
【0079】
バニリンとエチルバニリンとの溶融混合物を、上記の割合で且つ上記の操作条件下で調製する。この溶融混合物を次いで、50℃の温度に冷却した金属ドラム又はベルトと接触させ、次いでドラム上に得られたフィルムをブレードで削り取り、バニリンとエチルバニリンとの固体状混合物をフレークの形で回収する。
【0080】
また、プリル技術に従って、装置中で、バニリンとエチルバニリンとの溶融混合物を、例えば塔の頂部から冷たい空気のカラム中に落下させることによって、空気流中、好ましくは酸素枯渇空気流中に液滴の形で分散させることによって、成形を実施することもでき、これは直径数百μmの玉の形で得られる固体状生成物をもたらす。
【0081】
成形はまた、スプレー冷却によって実施することもできる。バニリンとエチルバニリンとの溶融混合物を液滴の形で冷たい空気流中、好ましくは酸素枯渇空気流中にスプレーする。それにより、直径数十μmのビーズの形の固体状生成物を得る。
【0082】
用いる成形技術に応じて、50℃±1℃に厳密に等しい結晶化温度を適用するのが多少なりとも容易なことがある。これは例えばプリル又はスプレー冷却の場合である。
【0083】
そこで、本方法の別形態は、溶融混合物50℃以下の任意の温度、好ましくは20℃〜50℃の範囲(境界を除く)において結晶化させ、得られた固体を回収し、次いでこれを「アニーリング操作」と称される加熱処理に付すことから成る。
【0084】
このアニーリングは、得られた固体を徐々に51℃±1℃の温度にし、この温度に数分間保つことによって実施される。好ましくは、このアニーリングは、撹拌しながら、例えばミキサー中又は流動床中で、実施される。
【0085】
同様に、62℃〜65℃の範囲から選択される溶融温度とは、完全に乾燥したバニリン及びエチルバニリン粉末についてのものとする。
【0086】
これらの製品は、貯蔵条件に応じて、本発明の方法において用いる時点で僅かに湿っていてもよい。しかしながら、水が存在すると新規の化学物質及び過剰分のバニリンの溶融温度が低下する。
【0087】
本方法の堅固性を保証し、バニリン及びエチルバニリン粉末の初期含水率が僅かに変化しただけで不利益が生じたりすることがないようにするために、本方法の別形態は、溶融工程の際に混合物に1〜5%の水を意図的に加えることから成る。
【0088】
その場合、過剰分のバニリンを溶融混合物中に分散された固体の形に保つために溶融温度は50〜55℃の範囲で選択され、最終生成物を乾燥させるために前記のアニーリング操作が必須となる。
【0089】
本発明の方法は、バニリンとエチルバニリンとの新規化学物質を本質的に含む組成物であって、実施例に示したようにケーキング現象が大いに低減されるので改善された貯蔵特性を有する前記組成物を容易に得ることを可能にする。
【0090】
示差走査熱量分析によって測定される融点は、粉末の初期含水率に応じて僅かに変化する。
【0091】
この融点は、乾燥粉末(水0.1重量%未満)については58〜60℃の範囲であり、もっと含水率が高い(水2重量%未満)粉末については59〜62℃の範囲である。
【0092】
得られる組成物のX線回折スペクトルは、図1に示されるように角度2θ(°)=20.7−25.6−27.5−28.0における特性線を持ち、これらがバニリン及びエチルバニリンのスペクトルとの違いである。
【0093】
その流動特性に関しては、本発明の組成物は、相対湿度80%の空気中で2400Paの垂直応力下で40℃において24時間貯蔵した後に、0.05〜0.6の範囲の流動性指数を有する。
【0094】
本発明の方法は、出発基剤に拘わらず、任意の化学合成によって製造されたバニリン及びエチルバニリンに適用される。
【0095】
本方法はまた、生化学的方法、特にフェルラ酸の微生物学的発酵方法に従って得られたバニリンについても、好適である。
【0096】
本発明は、本発明の組成物と共に1種以上の賦形剤を用いることを排除しない。
【0097】
賦形剤を選択する際には、最終製品に予定される用途を考慮に入れなければならず、食料品分野において用いるならば食用に適したものでなければならないということに留意すべきである。
【0098】
賦形剤の量は非常に様々であることができ、最終混合物の重量の0.1〜90%を占めることができる。
【0099】
この量は、20〜60重量%の範囲で選択するのが有利である。
【0100】
選択する賦形剤のタイプ、使用量及び最終製品に予定される用途に応じて、賦形剤は、本発明の組成物との乾式混合によって加えることもでき、本発明の組成物を得るための方法に例えばバニリンとエチルバニリンとの混合物を溶融させる工程の際に組み込むこともできる。
【0101】
用いることができる賦形剤の例を以下に与えるが、これらは限定的性質を持つものではない。
【0102】
第1のタイプの賦形剤は、脂肪性物質である。
【0103】
例として、随意に酸又はエステルの形にある脂肪酸を挙げることができる。
【0104】
用いられる脂肪酸は、一般的に長鎖飽和脂肪酸、即ち炭素原子約9〜21個の範囲の鎖長を有する脂肪酸、例えばカプリン酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸又はベヘン酸である。
【0105】
この酸は、塩形成された形にあることも可能であり、特にステアリン酸カルシウム又はステアリン酸マグネシウムを挙げることができる。
【0106】
脂肪酸エステルとしては、特にステアリン酸グリセリル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸セチル及びミリスチン酸イソプロピルを挙げることができる。
【0107】
また、より特定的には、グリセロールと長鎖脂肪酸とのエステル、例えばモノステアリン酸グリセリル、モノパルミトステアリン酸グリセリル、パルミトステアリン酸グリセリル、エチレングリコールパルミトステアレート、ポリグリセリルパルミトステアレート、ポリグリコール1500及び6000パルミトステアレート、モノリノール酸グリセリル;随意としての長鎖脂肪酸のモノ−又はジアセチル化グリセロールエステル、例えばモノアセチル化又はジアセチル化モノグリセリド及びそれらの混合物;半合成グリセリドを挙げることもできる。
【0108】
また、炭素原子の鎖が16〜22個程度の炭素原子を有する脂肪アルコール、例えばミリスチルアルコール、パルミチルアルコール又はステアリルアルコールを加えることもできる。
【0109】
また、10〜20個の炭素原子を有する直鎖状又は分岐鎖状脂肪アルコール(例えば椰子油アルコール、トリデカノール又はミリスチルアルコール)1モル当たり6〜20モルの割合のエチレンオキシドと縮合させることによって得られたポリオキシエチレン化脂肪アルコールを用いることもできる。
【0110】
また、微晶蝋、白蝋、カルナウバ蝋又はパラフィン等の蝋を挙げることもできる。
【0111】
糖類、例えばグルコース、ショ糖、フルクトース、ガラクトース、リボース、マルトース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、ラクチトール、マルチトール;転化糖:グルコースシロップ並びに椰子油、パーム油、水素化パーム油及び水素化大豆油等の脂肪油から誘導された糖グリセリド;脂肪酸のショ糖エステル、例えばショ糖モノパルミテート、ショ糖モノジステアレート及びショ糖ジステアレートを挙げることもできる。
【0112】
他の賦形剤の例としては、多糖類を挙げることができ、特に以下の物質及びそれらの混合物を挙げることができる:
・澱粉、特に小麦やトウモロコシ、大麦、米、キャッサバ、ジャガイモ等から誘導された天然の澱粉、アルファー化澱粉又は加工澱粉、より詳細にはアミロースが豊富な天然トウモロコシ澱粉、アルファー化トウモロコシ澱粉又は加工トウモロコシ澱粉、加工モチ性(cireux)トウモロコシ澱粉、アルファー化モチ性トウモロコシ澱粉、加工モチ性トウモロコシ澱粉、特にOSSA/オクテニルコハク酸ナトリウム澱粉、
・澱粉加水分解生成物、
・澱粉(小麦、トウモロコシ)やジャガイモ澱粉の加水分解から得られたデキストリン及びマルトデキストリン、並びにβ−シクロデキストリン、
・セルロース、それらのエーテル、特にメチルセルロース、エチルセルロース、メチルエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース;又はそれらのエステル、特にカルボキシメチルセルロース若しくはカルボキシエチルセルロース(随意にナトリウム含有形態のもの)、
・ガム類、例えばカラギーナンガム、κ−カラギーナン又はι−カラギーナンガム、ペクチン、グアーガム、ローカストビーンガム、キサンタンガム、アルギネート、アラビアゴム、アカシアゴム、寒天。
【0113】
デキストロース当量(DE)で表して20未満、好ましくは5〜19、より一層好ましくは6〜15の加水分解度を有するマルトデキストリンを選択するのが好ましい。
【0114】
その他の賦形剤としては、穀粉、特に小麦の穀粉(天然又はアルファー化);澱粉、より特定的にはジャガイモ澱粉、葛粉澱粉、トウモロコシ澱粉、トウモロコシ粉、サゴ椰子澱粉又はタピオカを挙げることができる。
【0115】
賦形剤としてはまた、ゼラチン(好ましくはゲルメーターを用いて測定して100、175及び250ブルーム(Bloom)のゲル化強度を有するもの)を用いることもできる。これは、豚の皮及びオセインの酸処理から得ることもでき、牛皮及びオセインのアルカリ処理から得ることもできる。
【0116】
また、その他の賦形剤(例えばシリカ他)や、酸化防止剤(特にビタミンE)、乳化剤(特にレシチン)等を加えることもできる。
【0117】
前記混合物の賦香力を調節するため又はその風味を強化するために、エチルマルトール及び/又はプロペニルグアエトールを使用することも考えられる。
【0118】
本発明は、補充量のバニリンまたエチルバニリンの添加を排除しない。
【0119】
賦形剤の選択は、前述のように構想される用途に従って行われる。
【0120】
本発明の組成物はまた、多くの利用分野において用いることができ、その中でも特に食品及び製薬分野、並びに香料調合産業において用いることができる。
【0121】
本発明の組成物の好ましい利用分野は、ビスケット(クッキー)製造及び菓子ケーキ類製造、より詳細には以下のものである:
・ドライビスケット製造:従来のタイプの甘いビスケット、バタービスケット、ガレット、キャス−クルート(casse-croute)、サブレー、
・工房/工場焼き菓子:ブドゥワール・シャンパーニュ、ラング・ドゥ・シャ、ビスキ・ア・ラ・キュイエール、パン・ドゥ・ジェーヌ、ジェノワーズ、マドレーヌ、カトル・カール(quatre-quarts)、フルーツケーキ、パティスリー・オ・アマンド、プチ・フール。
【0122】
上記の産業用に意図される混合物中に存在させる基本成分は、蛋白質(グルテン)及び澱粉であり、これらは大抵の場合小麦粉によって提供される。様々なタイプのビスケット及びケーキを製造するためには、小麦粉に、ショ糖、塩、卵、ミルク、脂肪、随意としての化学酵母(重炭酸ナトリウムやその他の人工酵母)又は生物学的酵母及び様々な穀物からの穀粉が加えられる。
【0123】
本発明に従う組成物は、製造の際に、望まれる製品に応じて、検討分野の慣用の技術に従って、加えられる(特にJ.L. Kiger and J.C. Kiger−Techniques Modernes de la Biscuiterie, Patisserie-Boulangerie industrielles et artisanales, DUNOD, Paris, 1968, Volume 2, pp. 231以下を参照されたい)。
【0124】
好ましくは、本発明の組成物は、ドウ(練り粉)の製造に用いられる脂肪中に導入される。
【0125】
指標として、本発明の組成物は、ドウ1kg当たり0.005〜0.2gの量で導入される。
【0126】
本発明の組成物は、板/棒状チョコレート、チョコレートコーティング、チョコレート充填等の使用形態に拘わらず、チョコレート製造分野において用いるのに完全に好適である。
【0127】
この組成物は、コンチングの際、即ちカカオペーストを様々な成分、特にフレーバー成分と共にブレンドする際や、コンチングの後にカカオバター中で加工することにより、導入することができる。
【0128】
この利用分野において、本発明の組成物は、チョコレートのタイプに応じて、最終製品1kg当たり0.0005〜0.1gの割合で用いられる:最も高い含有率は、コーティング用チョコレートにおいて見出される。
【0129】
本発明の組成物の別の用途は、すべての種類のキャンデー(ドラジェ、キャラメル、ヌガー、シュクレ・キュイ、フォンダン等)の製造である。
【0130】
本発明の組成物の導入量は、望まれる風味の強さに依存する。例えば、本発明の化学物質の使用量は、0.001%〜0.2%の範囲であることができる。
【0131】
本発明の組成物は、乳製品産業において、特に風味付けミルク、ゲル化ミルク、アントルメ(クリームデザート)、ヨーグルト、グラッセ(アイス)及びアイスクリームに用いるのに非常に適している。
【0132】
風味付けは、製品製造の際に必要とされる混合段階の内の1つにおいて本発明の組成物を単純に加えることによって、行われる。
【0133】
用いられるべき組成物の含有量は一般的に低く、最終製品1kg当たり0.02g程度である。
【0134】
食品分野における本発明の組成物の別の用途は、バニリン糖の製造、即ち、最終製品1kgに対して表して7g程度の含有率でバニリンを混ぜた砂糖の製造である。
【0135】
本発明の組成物はまた、様々な飲料中に含ませることもでき、その中でも特にグレナディン及びチョコレート飲料を挙げることができる。
【0136】
この組成物は特に、自動飲料販売機によって供出されるインスタント飲料用の調製品、風味付け飲料粉末、チョコレート粉末に用いることができ、また、水やミルクで希釈した後にすべての種類のデザート(カスタードタルト、ケーキ生地、パンケーキ等)を製造するための粉末の形のインスタント調製品にも用いることができる。
【0137】
バニリンは、バターの変性用に通常用いられている。この目的では、本発明の組成物はバター1メートルトン当たり6gの割合で用いることができる。
【0138】
本発明の組成物の別の利用分野は、動物飼料、特に牛及び豚の飼料用の穀粉の製造用である。推奨される含有量は、風味付けすべき穀粉1kg当たり約0.2gである。
【0139】
本発明の組成物には、製薬産業用マスキング剤(医薬の臭気をマスキングするため)又はその他の工業製品(ガム、プラスチック、ゴム等)用マスキング剤のようなその他の用途も見出せる。
【0140】
該組成物は、化粧品産業、香料産業又は洗剤産業のような全く異なる分野において、完全に好適である。
【0141】
該組成物は、クリーム、乳液、メーキャップ及びその他の製品等の化粧品中に用いることができ、また、賦香(フレグランス)成分として、賦香用組成物中に並びに賦香された物質及び製品中に、用いることもできる。
【0142】
用語「賦香用組成物」とは、溶剤、固体状又は液状キャリヤー、定着剤、各種の臭気化合物等の各種成分の混合物であって、本発明の組成物がその中に加えられて様々なタイプの最終製品に所望のフレグランスを与えるために用いられるものを指す。
【0143】
賦香用ベースは、本発明の組成物が0.1〜2.5重量%の含有量で有利に用いることができる賦香用組成物の好ましい例を構成する。
【0144】
賦香用ベースは、多くの被賦香製品の製造、例えばオードトワレ、香水、アフターシェーブローション;トイレ及び衛生製品、例えばバスジェル、シャワージェル、デオドラント又は制汗用製品(スティックやローション、タルカムパウダー又は任意の性状のパウダーの形);毛髪用製品、例えばシャンプー及び任意のタイプのヘアー製品の製造用に、用いることができる。
【0145】
本発明の組成物の別の使用例は、石鹸製造分野である。該組成物は、賦香すべき全質量の0.3〜0.75%の含有量で用いることができる。一般的に、該組成物は、この用途において、ベンゾインレジノイド及び次亜硫酸ナトリウム(2%)と組み合わされて用いられる。
【0146】
本発明に従う組成物には、その他の多くの用途、特に空気清浄機や任意のメンテナンス製品における用途も見出せる。
【0147】
本発明の組成物の物理化学的特徴は、次の方法に従って測定される。
【0148】
1.融点
【0149】
本発明の組成物の融点は、示差走査熱量分析によって測定される。
【0150】
この測定は、Mettler DSC822e示差走査熱量計を用いて、次の条件下で実施される:
・周囲温度におけるサンプルの調製:計量し、サンプルキャリヤー中に導入、
・サンプルキャリヤー:はめ込み接合式アルミニウムカプセル、
・試験片:8.4mg、
・昇温速度:2℃/分、
・研究範囲:10〜90℃。
【0151】
組成物のサンプルを計量し、カプセル中に導入し、これをはめ込み接合し、次いで装置中に入れる。
【0152】
温度プログラムを稼働させ、融解分布をサーモグラフで得る。
【0153】
融解温度は、上記運転条件下で作られたサーモグラムに基づいて決定される。
【0154】
開始温度:融解ピークの最大勾配に対応する温度。
【0155】
2.X線回折スペクトル
【0156】
本発明の組成物のX線回折スペクトルは、X'Celerator検出器を備えたX'Pert Pro MPD PAN分析器を用いて、以下の条件下で測定される:
【0157】
・開始位置[°2θ]:1.5124
・終了位置[°2θ]:49.9794
・ステップサイズ[°2θ]:0.0170
・走査ステップ時間[秒]:41.0051
・アノード材料:Cu
・K−アルファ1[Å]:1.54060
・発生装置設定:30mA、40kV
【0158】
3.流動性及びケーキング指数
【0159】
本発明の組成物は、貯蔵時にケーキングしにくいという特徴を有し、これは粉末の流動度を測定することによって示される。
【0160】
粉末の流動度は、当業者によく知られた技術的概念である。さらなる詳細については、特に「Standard shear testing technique for particulate solids using the Jenike shear cell」, The Institution of Chemical Engineers発行, 1989(ISBN: 0 85295 232 5)を参照することができる。
【0161】
流動性指数は、次の方法で測定される。
【0162】
粉末の流動性は、環状セル(ドイツのD. Schulzeにより販売)中でサンプルに剪断力を加えることによって測定される。
【0163】
粉末の予備剪断は、5200Paの垂直応力下で実施される。
【0164】
予備剪断の応力より低い4つの垂直応力、典型的には480Pa、850Pa、2050Pa及び3020Paの垂直応力について、サンプルの流動の軌跡(破壊包絡線)をプロットするために必要な剪断点を得る。
【0165】
これらの破壊包絡線について、「垂直応力の関数としての剪断応力」図におけるモールの円から、2つの応力が決定される。これらの応力がサンプルを特徴付ける:
・主方向における垂直応力:これは、予備剪断点を通る大きいモール円の端部によって与えられる。
・粘結力:これは、破壊包絡線に接し且つ原点を通る小さいモール円の端によって与えられる。
【0166】
主方向における垂直応力対粘結力の比は無次元数であり、「i、流動性指数」と称される。
【0167】
これらの測定は、環状セルに充填した直後に実施され;こうして即時流動性指数が得られる。
【0168】
40℃、相対湿度80%において2400Paの垂直応力下に24時間貯蔵したセルを用いて、別の一連の測定を実施する。
【0169】
こうして、ケーキング指数が得られる。
【0170】
以下、本発明を例示する実施例を与えるが、これらは限定的な性質を持つものではない。
【実施例】
【0171】
実施例において、百分率は重量で表される。
【0172】
例1
【0173】
二重ジャケットによる加熱手段を備えた撹拌式反応器中に、粉末状バニリン(VA)350g及び粉末状エチルバニリン(EVA)150g(即ち、VA/EVA重量比=70/30)を導入する。これらの粉末の含水率は0.1重量%である。
【0174】
この混合物を撹拌しながら63℃にする。
【0175】
こうして、バニリン+エチルバニリンの溶融混合物中に非常に微細なバニリンの粒子が分散した懸濁液が得られる。
【0176】
この懸濁液を50℃に保ったステンレス鋼プレート上に注いで、厚さ約1mmの薄膜を形成させる。
【0177】
1分未満で結晶化が完了する。
【0178】
得られた固体状シートは、ステンレス鋼から容易に剥がせる;これを、冷却が完了するまで周囲温度において放置する。
【0179】
このシートを次いでおおざっぱに粉砕して、1.0mmのメッシュサイズの篩を備えた振動アーム式造粒機(Erweka FGSグラニュレーター)に供給できるようにする。
【0180】
その中で生成物を適度に粉砕して、0.1〜1.0mmの範囲の寸法の粒体を得る。
【0181】
この粒体の融点を、前記のように示差走査熱量分析によって測定する。得られたサーモグラムは、新規のバニリン/エチルバニリン化学物質に相当するメインピークを示した。ピークの最大勾配に相当する溶融温度(開始T)は60℃だった。
【0182】
前記粒体のX線回折スペクトルは、図1に示したように角度2θ(°)=20.7−25.6−27.5−28.0に特性線を示し、バニリン及びエチルバニリンのスペクトルとは異なるものだった。
【0183】
1リットルのガラスビン中に22℃において1か月間貯蔵した粒体は、依然として良好な流動性を示した。
【0184】
比較として、同じ条件下で貯蔵したバニリン及びエチルバニリンの2種の粉末の混合物は、2/98〜98/2の範囲のVA/EVA重量比でも1週間後に完全に固まった。
【0185】
例2
【0186】
二重ジャケットによる加熱手段を備えた撹拌式反応器中に、粉末状バニリン278g及び粉末状エチルバニリン150g(即ち、VA/EVA重量比=65/35)を導入する。これらの粉末の含水率は0.1重量%である。
【0187】
この混合物を撹拌しながら62℃にする。
【0188】
10分後に、溶融が完了し、均質な半透明の液体が得られた。
【0189】
粉末状バニリン72gを加え、撹拌することによって前記液体中に分散させる。
【0190】
得られた懸濁液を20℃に保ったステンレス鋼プレート上に注いで、厚さ約1mmの薄膜を形成させる。
【0191】
数秒で結晶化が完了する。
【0192】
得られた固体状シートは、ステンレス鋼から容易に剥がせる;これをおおざっぱに粉砕して、1.0mmのメッシュサイズの篩を備えた振動アーム式造粒機(Erweka FGSグラニュレーター)に供給できるようにする。
【0193】
その中で生成物を適度に粉砕して、0.1〜1.0mmの範囲の寸法の粒体を得る。
【0194】
この粒体を、二重ジャケットによる加熱手段を備えた粉末ミキサー中に導入する。温度を初期温度の20℃から徐々に上昇させて、粒体の塊中で52℃に到達させる。粒体をこの温度にするのに要した時間は約30分である。粒体を撹拌しながら52℃に2時間保つ。
【0195】
得られた粒体は、示差走査熱量分析によって測定して61℃の融点を有していた(開始T)。
【0196】
前記粒体のX線回折スペクトルは、図1に示したように角度2θ(°)=20.7−25.6−27.5−28.0に特性線を示し、バニリン及びエチルバニリンのスペクトルとは異なるものだった。
【0197】
1リットルのガラスビン中に22℃において1か月間貯蔵した粒体は、依然として良好な流動性を示した。
【0198】
比較として、同じ条件下で貯蔵したバニリン及びエチルバニリンの2種の粉末の混合物は、2/98〜98/2の範囲のVA/EVA重量比でも1週間後に完全に固まった。
【0199】
例3
【0200】
二重ジャケットによる加熱手段を備えた撹拌式反応器中に、粉末状バニリン350g及び粉末状エチルバニリン150g(即ち、VA/EVA重量比=70/30)を導入し、次いで水17g(即ち、固体の総重量の3.4%)を加える。
【0201】
この混合物を撹拌しながら55℃にする。
【0202】
こうして、バニリン+エチルバニリン+水の溶融混合物中に非常に微細なバニリンの粒子が分散した懸濁液が得られる。
【0203】
この懸濁液を50℃に保ったステンレス鋼プレート上に注いで、厚さ約1mmの薄膜を形成させる。約5分後に結晶化が完了する。
【0204】
得られた固体状シートは、ステンレス鋼から容易に剥がせる;これを、冷却が完了するまで周囲温度において放置する。
【0205】
このシートを次いでおおざっぱに粉砕して、1.0mmのメッシュサイズの篩を備えた振動アーム式造粒機(Erweka FGSグラニュレーター)に供給できるようにする。
【0206】
その中で生成物を適度に粉砕して、0.1〜1.0mmの範囲の寸法の粒体を得る。
【0207】
この粒体を、二重ジャケットによる加熱手段を備えた粉末ミキサー中に導入する。
【0208】
温度を初期温度の20℃から徐々に上昇させて、粒体の塊中で52℃に到達させる。
【0209】
粒体をこの温度にするのに要した時間は約30分である。
【0210】
粒体を撹拌しながら52℃に2時間保つ。
【0211】
この操作中、粒体から放出された水蒸気を追い払うためにミキサーのルーフを乾燥窒素流でパージする。
【0212】
得られた粒体は、示差走査熱量分析によって測定して61℃の融点を有していた(開始T)。
【0213】
前記粒体のX線回折スペクトルは、図1に示したように角度2θ(°)=20.7−25.6−27.5−28.0に特性線を示し、バニリン及びエチルバニリンのスペクトルとは異なるものだった。
【0214】
前記の方法に従って環状剪断セルを用いて、即時流動性指数、及び40℃、相対湿度80%の空気中で2400Paの垂直応力下に24時間貯蔵した後の流動性指数を、測定した。
【0215】
下記の例4に与えた表(I)に記録された結果から、本発明の方法に従って得られた粒体は応力下で貯蔵した後にも純粋なバニリンの粉末や純粋なエチルバニリンの粉末に匹敵し且つこれら2種の粉末の混合物よりはるかに高い流動性を有することがわかる。
【0216】
例4
【0217】
二重ジャケットによる加熱手段を備えた撹拌式反応器中に、粉末状バニリン278g及び粉末状エチルバニリン150g(即ち、VA/EVA重量比=65/35)を導入し、次いで水17g(即ち、固体の重量の4.0%)を加える。
【0218】
この混合物を撹拌しながら51℃にする。
【0219】
10分後に、溶融が完了し、均質な半透明の液体が得られた。
【0220】
次いで粉末状バニリン72gを加え、撹拌することによって前記液体中に分散させる。
【0221】
得られた懸濁液を20℃に保ったステンレス鋼プレート上に注いで、厚さ約1mmの薄膜を形成させる。
【0222】
数秒で結晶化が完了する。
【0223】
得られた固体状シートは、ステンレス鋼から容易に剥がせる;これをおおざっぱに粉砕して、1.0mmのメッシュサイズの篩を備えた振動アーム式造粒機(Erweka FGSグラニュレーター)に供給できるようにする。
【0224】
その中で生成物を適度に粉砕して、0.1〜1.0mmの範囲の寸法の粒体を得る。
【0225】
この粒体を、二重ジャケットによる加熱手段を備えた粉末ミキサー中に導入する。
【0226】
温度を初期温度の20℃から徐々に上昇させて、粒体の塊中で52℃に到達させる。
【0227】
粒体をこの温度にするのに要した時間は約30分である。
【0228】
粒体を撹拌しながら52℃に2時間保つ。
【0229】
この操作中、粒体から放出された水蒸気を追い払うためにミキサーのルーフを乾燥窒素流でパージする。
【0230】
得られた粒体は、示差走査熱量分析によって測定して59℃の融点を有していた(開始T)。
【0231】
前記粒体のX線回折スペクトルは、図1に示したように角度2θ(°)=20.7−25.6−27.5−28.0に特性線を示し、バニリン及びエチルバニリンのスペクトルとは異なるものだった。
【0232】
前記の方法に従って環状剪断セルを用いて、即時流動性指数、及び40℃、相対湿度80%の空気中で2400Paの垂直応力下に24時間貯蔵した後の流動性指数を、測定した。
【0233】
表(I)に記録された結果から、本発明の方法に従って得られた粒体は応力下で貯蔵した後にも前記の2種の粉末の乾燥混合物よりはるかに高い流動性を有することがわかる。
【0234】
【表1】

*=40℃、相対湿度80%の空気中で2400Paの垂直応力下に貯蔵
【0235】
例5
【0236】
この例においては、例3に従って調製された粒体50重量%及びショ糖50重量%を含む粒体形状の組成物を調製する。
【0237】
WAM鋤型ミキサー中で周囲温度において混合操作を約5分間行う。
【0238】
例6
【0239】
この例においては、例3に従って調製された粒体50重量%及びマルトデキストリン(Roquette Glucidex IT6)50重量%を含む粒体形状の組成物を調製する。
【0240】
WAM鋤型ミキサー中で周囲温度において混合操作を約5分間行う。
【0241】
前記の方法に従って環状剪断セルを用いて、即時流動性指数、及び40℃、相対湿度80%の空気中で2400Paの垂直応力下に24時間貯蔵した後の流動性指数を、測定した。
【0242】
結果を表(II)に記録する。
【0243】
【表2】

*=40℃、相対湿度80%の空気中で2400Paの垂直応力下に貯蔵
【0244】
本発明の方法に従って得られる組成物は、応力下で貯蔵した後にも、バニリン粉末とエチルバニリン粉末との単純な乾燥混合物よりはるかに優れたケーキング指数を有することがわかる。
【0245】
マルトデキストリンとの重量比50/50の混合物において、これらの組成物は、純粋なバニリンの粉末や純粋なエチルバニリンの粉末に匹敵するケーキング指数を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バニリン及びエチルバニリンをベースとし、バニリン/エチルバニリンのモル比が2である化学物質を本質的に含む組成物を調製するための方法であって、下記の工程:
・2以外のモル比で用いられるバニリンとエチルバニリンとの混合物(バニリン過剰分が該混合物の重量の2〜20%を構成するもの)を溶融させる工程;その際、溶融温度は、得られる新規の化学物質が完全に溶融し、しかし過剰分のバニリンが溶融混合物中に微細に分散した固体状態のままにあって結晶化の種としての働きをするように選択される;
・50℃±1℃又はそれより低い温度に冷却することによって固化させる工程;
・得られた新規の化学物質を含む組成物を回収する工程;
・随意としての、51℃±1℃の温度への熱処理工程:
を含むことを特徴とする、前記方法。
【請求項2】
前記バニリン及びエチルバニリンを次の割合:
・バニリン67〜72重量%、
・エチルバニリン28〜33重量%
で用いることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記バニリン及びエチルバニリンを次の割合:
・バニリン67〜70重量%、
・エチルバニリン30〜33重量%
で用いることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記バニリン及びエチルバニリンを別々に又は混合物として装填し、この混合物を62℃〜70℃の範囲、好ましくは62℃〜65℃の範囲で選択される温度にする(乾燥粉末について)ことを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
溶融混合物の調製を不活性ガス(好ましくは窒素)雰囲気下で実施することを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記溶融混合物の冷却を撹拌せずに実施して、バニリン及びエチルバニリンの新規化学物質を含む固化した組成物を得ることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記溶融混合物50℃より低い任意の温度、好ましくは20℃〜50℃の範囲(境界を除く)において結晶化させ、得られた固体を回収し、次いでこれをアニーリング操作に付すことから成ることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記アニーリングを、得られた固体を徐々に51℃±1℃の温度にし、この温度に数分間保つことによって実施することを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記アニーリングを、撹拌しながら、例えばミキサー中又は流動床中で実施することを特徴とする、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
溶融工程の際に混合物に1〜5%の水を加え、その場合に溶融温度を50℃〜55℃の範囲で選択し、そしてアニーリング操作を実施することから成ることを特徴とする、請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
得られる組成物を粉砕技術に従って成形することを特徴とする、請求項1〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
得られる組成物をフレーク成形、プリル技術又はスプレー冷却技術に従って成形することを特徴とする、請求項1〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記の新規のバニリン/エチルバニリン化学物質とバニリンとの混合物80〜99重量%と他の結晶相1〜20重量%とを含む組成物。
【請求項14】
前記の新規のバニリン/エチルバニリン化学物質とバニリンとの混合物90〜99重量%と他の結晶相1〜10重量%とを含む、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記の得られる混合物が前記の新規のバニリン/エチルバニリン化学物質80〜94重量%とバニリン6〜20重量%とを含むことを特徴とする、請求項13又は14に記載の組成物。
【請求項16】
前記の得られる混合物が前記の新規のバニリン/エチルバニリン化学物質86〜94重量%とバニリン6〜14重量%とを含むことを特徴とする、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
請求項13〜16のいずれかに記載の少なくとも1種の組成物と、脂肪物質、脂肪アルコール、糖類、多糖類、シリカ、バニリン及びエチルバニリンから選択される少なくとも1種の賦形剤とを含む組成物。
【請求項18】
前記賦形剤が
・糖類、好ましくはグルコース、ショ糖、フルクトース、ガラクトース、リボース、マルトース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、ラクチトール、マルチトール;転化糖:グルコースシロップ並びに脂肪油(好ましくは椰子油、パーム油、水素化パーム油及び水素化大豆油)から誘導された糖グリセリド;脂肪酸のショ糖エステル、好ましくはショ糖モノパルミテート、ショ糖モノジステアレート及びショ糖ジステアレート、
・澱粉、特に小麦、トウモロコシ、大麦、米、キャッサバ又はジャガイモから誘導された天然の澱粉、アルファー化澱粉又は加工澱粉、より特定的にはアミロースが豊富な天然トウモロコシ澱粉、アルファー化トウモロコシ澱粉又は加工トウモロコシ澱粉、加工モチ性(cireux)トウモロコシ澱粉、アルファー化モチ性トウモロコシ澱粉、加工モチ性トウモロコシ澱粉、特にOSSA/オクテニルコハク酸ナトリウム澱粉、
・澱粉加水分解生成物、
・澱粉(小麦、トウモロコシ)又はジャガイモ澱粉の加水分解から得られたデキストリン及びマルトデキストリン、並びにβ−シクロデキストリン、好ましくは20未満、好ましくは5〜19、より一層好ましくは6〜15のDEを有するマルトデキストリン、
・セルロース、それらのエーテル、特にメチルセルロース、エチルセルロース、メチルエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース;又はそれらのエステル、特にカルボキシメチルセルロース若しくはカルボキシエチルセルロース(随意にナトリウム含有形態のもの)、
・ガム類、例えばカラギーナンガム、κ−カラギーナン若しくはι−カラギーナンガム、ペクチン、グアーガム、ローカストビーンガム、キサンタンガム、アルギネート、アラビアゴム、アカシアゴム、寒天、
・穀粉、好ましくは小麦穀粉(天然又はアルファー化);澱粉、好ましくはジャガイモ粉、
・ゼラチン、
・シリカ、
・酸化防止剤、好ましくはビタミンE、
・乳化剤、好ましくはレシチン、
・バニリン又はエチルバニリン
から選択されることを特徴とする、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
賦形剤を0.1〜90重量%、好ましくは20〜60重量%含むことを特徴とする、請求項17又は18に記載の組成物。
【請求項20】
人間の食料若しくは動物の飼料の分野若しくは製薬産業におけるフレーバーとして、又は化粧品、香料若しくは洗剤産業におけるフレグランスとしての、請求項13〜19のいずれかに記載の組成物の使用。
【請求項21】
前記組成物を、ドライビスケット産業又は工場焼き菓子の分野においてドウの製造の際に、好ましくは脂肪中に;チョコレート製造分野において特に板状チョコレート、チョコレートコーティング、チョコレート充填物の製造用に;すべての種類のキャンデー(ドラジェ、キャラメル、ヌガー、シュクレ・キュイ、フォンダン等)の製造の際に;乳製品産業に、より特定的には風味付けミルク、ゲル化ミルク、アントルメ、ヨーグルト、グラッセ又はアイスクリームに;砂糖にバニリンを混ぜることによるバニリン糖の製造に;各種飲料、好ましくはグレナディン又はチョコレート飲料の製造に;風味付け飲料粉末等のインスタント飲料、チョコレート粉末又はすべての種類のデザートを製造するための粉末の形のインスタント調製品の製造に;或はバターの変性に用いることを特徴とする、請求項20に記載の使用。
【請求項22】
前記組成物を動物の飼料に、特に穀粉の製造に用いることを特徴とする、請求項20に記載の使用。
【請求項23】
前記組成物を臭気マスキング剤として、特に製薬産業において;化粧品産業においてクリーム、乳液、メーキャップの製造用に;香水産業における賦香用ベースのようなその他の製品の製造用に;或は洗剤産業において、特に石鹸の製造に用いることを特徴とする、請求項20に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2013−507463(P2013−507463A)
【公表日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−532547(P2012−532547)
【出願日】平成22年10月1日(2010.10.1)
【国際出願番号】PCT/EP2010/064641
【国際公開番号】WO2011/042365
【国際公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(508076598)ロディア オペレーションズ (98)
【氏名又は名称原語表記】RHODIA OPERATIONS
【住所又は居所原語表記】40 rue de la Haie Coq F−93306 Aubervilliers FRANCE
【Fターム(参考)】