説明

バニリン及びエチルバニリンを含有する化合物を含む組成物の製造方法、それにより得られた組成物及びその使用

本発明は、バニリン及びエチルバニリンを含有する化合物を主成分として含む組成物の製造方法に関する。2のバニリン/エチルバニリンモル比のバニリン及びエチルバニリンを含有する化合物を主成分として含む組成物の製造方法は、粉末の状態で、かつ、バニリン/エチルバニリンモル比が少なくとも2に等しくなる量で使用されるバニリン及びエチルバニリンの、50℃〜57℃の温度で実施される同時造粒工程と、その後、得られた組成物の温度を周囲温度に戻すことを可能にする工程とを含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バニリン及びエチルバニリンを主体とする化合物を主成分として含む組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
バニリン又は4−ヒドロキシ−3−メトキシベンズアルデヒドは、香料及び/又はフレグランスとして多くの適用分野において幅広く使用されている物質である。
【0003】
つまり、バニリンは、食品産業及び動物飼料産業において非常に多く消費されているが、これは、例えば、薬学又は香料製造業など他の分野においても当てはまる。したがって、この物質は、高レベルの消費物質である。
【0004】
バニリンは、エチルバニリン又は3−エトキシ−4−ヒドロキシベンズアルデヒドと組み合わされる場合が非常に多い。というのは、小量のエチルバニリンを存在させることで、バニリンの芳香特性及び/又は感覚刺激特性を増強させることが可能になることが知られているからである。
【0005】
したがって、潜在的ユーザーは、バニリンとエチルバニリンとの既成混合物を提供されたいと考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】仏国特許出願第0805913号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
生じる問題は、バニリン粉末とエチルバニリン粉末とを乾式混合する従来技術の手段により該混合物を製造すると、非常に固まりやすい混合物ができてしまうことである。結果として、このような混合物は、粉末状ではないその対象のため、使用するのが不可能であり、また、得られた塊を溶解させるのに非常に大きな困難が伴う。
【0008】
さらに、保存期間が長くなると、固化現象が悪化し、粉末が凝結してしまう。
【0009】
したがって、流動性が改善し、かつ、保存中の固化がないバニリン及びエチルバニリンを主体とする新規な対象物を利用可能にすることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願は、仏国特許出願第08 05913号に従って、2のバニリン/エチルバニリンモル比で使用されるバニリン及びエチルバニリンの同時結晶化により得られた新規化合物が、特にその流動性及びその固化の欠如に関して、ユニークな特性を示すことを見出した。
【0011】
該化合物は、それぞれ81℃±1℃及び76℃±1℃のバニリン及びエチルバニリンの融点とは異なる、60℃±2℃の示差走査熱量測定法で測定される融点を有する白色粉末の状態である。
【0012】
該化合物は、バニリン及びエチルバニリンとは異なる、その固有の特定のX線回折スペクトルを有する。
【0013】
図1は、バニリンとエチルバニリンとの新規化合物、バニリン及びエチルバニリンの各種X線回折スペクトルに相当する3つの曲線を示している。
【0014】
バニリンとエチルバニリンとの新規化合物のスペクトルについて、角度2θ(°)=20.7−25.6−27.5−28.0でのラインの存在が特に注記される。該ラインは、バニリン及びエチルバニリンのX線回折スペクトルでは存在しない。
【0015】
該化合物の別の特性は、そのX線回折スペクトルが長期間の保存中であっても有意な変化を受けないことである。
【0016】
そのスペクトルの変化を周囲温度で保存時間に応じて監視した。図2で実証されるとおり、長い保存期間(5ヶ月)にわたって、上記新規化合物のスペクトル変化は、全く観察されない。
【0017】
図2は、新規化合物のX線回折スペクトルの、保存時間に応じた変化を示している。該図は、時間t=0、その後2ヶ月及び5ヶ月間の保存後に得られた本発明の化合物の各種X線回折スペクトルに相当する3つの曲線を示す。
【0018】
得られた3つの曲線は、常に重ね合わされる。これらをうまく区別できるように、これら図2の3つの曲線のうち2つは、時間t=0でのX線回折スペクトルである基準ベースラインに対して、意図的にシフトされたベースラインを有する。2ヶ月間の保存後に得られたX線回折スペクトルに相当する曲線は、5000カウント/秒でシフトし、5ヶ月間の保存後に得られたものは10000カウント/秒でシフトする。
【0019】
図2は、長期間の保存後であっても本発明の化合物にはいかなる変化もないことを実証するものである。
【0020】
2のバニリン/エチルバニリンモル比を有するバニリンとエチルバニリンとの新規化合物の上記特定のラインには変化が存在しないことが注目される。
【0021】
該化合物の別の特徴は、該化合物がバニリン及びエチルバニリンのような吸湿性ではないこと又は吸湿性が極めて低い化合物であることである。
【0022】
該化合物の吸湿性は、80%相対湿度の空気下で1時間にわたり40℃で保持した後に、その重量変化を測定することによって決定される。
【0023】
該化合物は0.5重量%未満の水を吸収し、そしてその含有量は、好ましくは0.1〜0.3重量%の水である。該化合物は、完全に固体のままである。
【0024】
さらに、この化合物は、良好な官能的性質を有し、しかもバニリンよりも遙かに大きい芳香力を有する。
【0025】
つまり、本明細書の以下の部分の「新規化合物」で示す上記化合物は、単なる乾式混合で得られたバニリン及びエチルバニリンの組成物と比較して減少した固化能力により反映される特定の性質を有する。
【0026】
上記バニリン及びエチルバニリンを主体とする化合物の特定の性質は、2つのパラメーター、すなわちバニリンとエチルバニリンとのモル比、及びその融点並びにそのX線回折スペクトルにより特徴付けられる特定の結晶形でのバニリンとエチルバニリンとの同時結晶化が存在するという事実に関連がある。
【0027】
該化合物を得るための方法の一つに、2のモル比で使用されるバニリン及びエチルバニリンの混合物を溶融し、続いて該溶融混合物を、その温度を50℃±1℃に低下させることによって冷却し、その後該混合物が完全に凝固するまでこの温度を保持することからなる方法がある。
【0028】
この冷却は、有利には撹拌することなく実施される。
【0029】
この目的のために、2のモル比で使用するバニリン及びエチルバニリンを別々に又は混合物として装入し、その混合物を60℃〜90℃、好ましくは70℃〜80℃の間で選択される温度にする。
【0030】
この混合物の製造を不活性ガス、好ましくは窒素の雰囲気下で実施することが望ましい。
【0031】
混合物を、溶融混合物が得られるまで、この選択された温度で保持する。
【0032】
溶融生成物を任意の容器、例えば凝固後に生成物の回収を容易にするステンレススチール皿に移す。この容器を70〜80℃に予め加熱してから、溶融混合物を収容する。
【0033】
その後の工程において、溶融混合物を、任意の既知の手段により冷却温度を制御することによって50℃±1の温度に冷却する。
【0034】
上記のように、冷却は、好ましくは撹拌することなく実施される。
【0035】
その後、得られた凝固混合物を様々な技術、特にミリングに従って成形できる。
【0036】
こうして、この方法は、バニリンとエチルバニリンとの新規化合物を得ることを可能にするが、ただし、この化合物の結晶化は非常に緩やかなので、産業規模に容易には移行できないという不利益がある。これは、該化合物が過冷却現象を示すため、すなわち、この生成物を溶融させ、そしてその融点よりも低く冷却した場合に、該化合物は結晶化に困難が伴い、長期間にわたって液体の状態を保持するためである。結晶化に要する時間は、多かれ少なかれランダムであるため、結晶化を正確に制御することが重要である。
【0037】
すなわち、50℃±1未満の温度、例えば20℃にまで冷却すると、溶融混合物の凝固プロセスを促進することが可能にはなるが、様々な結晶相(そのうちのいくつかは周囲温度で不安定であり又は非常に吸湿性である)が共存した状態では結晶化は不均一である。これは、このような条件下で結晶化されたバニリン−エチルバニリン混合物の保存中にかなりの固化をもたらす。
【0038】
バニリン−エチルバニリンモル比及び溶融混合物の結晶化の条件の重要性を例示するための比較例として、図3は、70℃で溶融され、その後20℃に急冷することによって結晶化された等モルのバニリン−エチルバニリン混合物のX線回折スペクトルを示している。
【0039】
このスペクトルは、 角度2θ(°)=7.9−13.4−15.8−19.9−22.2−30.7での特定のラインでは、バニリンのスペクトルとも、エチルバニリンのスペクトルとも、2のバニリン/エチルバニリンモル比を有するバニリンとエチルバニリンとの新規化合物のスペクトルとも異なる。
【0040】
図4は、22℃で3週間の保存期間にわたるこのスペクトルの変化を示すものであり、このようにして結晶化された相が不安定であり、しかも急速に変化すると共に生成物の固化をもたらすことを示している。
【0041】
この生成物は、48℃±1の融点を有し、かつ、非常に吸湿性であることが分かった:40℃及び80%相対湿度の空気下で1時間にわたり、4%を超える水を吸収し、潮解状態となる。
【0042】
したがって、その特性は、前記新規化合物の特性とは非常に異なり、しかもバニリン−エチルバニリン混合物によって引き起こされる固化の問題を解決することを可能にしない。
【0043】
本発明の目的は、2のバニリン/エチルバニリンモル比を有するバニリンとエチルバニリンとの本質的に新規な化合物を得ることを可能にする、産業規模に移行可能な方法を提供することである。
【0044】
本発明の別の目的は、上記のような改善された特性を有する、上記化合物を含む組成物をもたらすことである。
【0045】
鋭意検討の結果、2のバニリン/エチルバニリンモル比のバニリン及びエチルバニリンを主体とする化合物を主成分として含む組成物の製造方法であって、粉末の状態で、かつ、バニリン/エチルバニリンモル比が少なくとも2に等しくなる量で使用されるバニリン及びエチルバニリンの、50℃〜57℃の温度で実施される同時造粒工程、その後、得られた組成物の温度を周囲温度に戻すことを可能にする工程を含むことを特徴とする方法を見出した。これは、本発明の主題を構成するものである。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】図1は、バニリンとエチルバニリンとの新規化合物、バニリン及びエチルバニリンの各種X線回折スペクトルに相当する3つの曲線を示す。
【図2】図2は、新規化合物のX線回折スペクトルの、保存時間に応じた変化を示す図である。
【図3】図3は、70℃で溶融され、その後200℃に急冷することによって結晶化された等モルのバニリン−エチルバニリン混合物のX線回折スペクトルを示す図である。
【図4】図4は、22℃で3週間の保存期間にわたるこのスペクトルの変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
本明細書において、表現「バニリン及びエチルバニリンを主体とする化合物を主成分として含む組成物」とは、2のバニリン/エチルバニリンモル比を有する新規バニリン/エチルバニリン化合物とバニリンとの混合物を少なくとも80重量%含む組成物を意味するものとする:このバニリンは該混合物25重量%未満を占める。
【0048】
表現「新規バニリン/エチルバニリン化合物」とは、無水の状態の化合物及びその水和物を意味するものとする。
【0049】
用語「同時顆粒化」とは、バニリン粉末及びエチルバニリン粉末から出発して、顆粒の形態の本発明の新規化合物を得ることからなる操作を意味するものとする。
【0050】
用語「顆粒化」とは、粉末を顆粒の状態に成形することを意味するものとする。
【0051】
本発明によれば、バニリンとエチルバニリンとの新規化合物は、この同時顆粒化方法に従って容易に得られることが分かった。
【0052】
本出願人は、過剰のバニリンの存在が結晶化の種として作用し、それによって新規化合物の結晶化を容易にすることができることを見出した。
【0053】
2のモル比に対して過剰のバニリンを確保するために、バニリン及びエチルバニリンを次の割合で使用する:
・65〜72重量%のバニリン,
・35〜28重量%のエチルバニリン。
【0054】
僅かに過剰のバニリンが好ましい本発明の好ましい態様によれば、それらの割合は、有利には次のとおりである:
・67〜70重量%のバニリン、
・30〜33重量%のエチルバニリン。
【0055】
本発明の方法の第1工程によれば、まず、バニリン粉末及びエチルバニリン粉末の均質な混合が実施される。
【0056】
この目的のために、これらの粉末をミキサー・造粒機に別々に又は混合物として装入し、撹拌する。
【0057】
好ましくは、撹拌条件は、高いせん断力が存在しないように選択される。
【0058】
したがって、緩やかなせん断速度が好ましい。
【0059】
例示として、プラウ型のミキサーの場合には、撹拌条件は、有利には、ブレードの端部で0.2〜1m/秒の範囲にあると特定できる。
【0060】
続いて、粉末の混合物を、「同時顆粒化温度」として本明細書の後の部分で言及する温度にする。
【0061】
この温度は、示差走査熱量測定法で測定される、60℃±2℃であるバニリンとエチルバニリンとの新規化合物の融点未満であると定義される。
【0062】
つまり、同時顆粒化温度は、有利には、50〜57℃、好ましくは50〜55℃の間で選択される。
【0063】
本発明に従って、バニリン粉末とエチルバニリン粉末との混合物を、周囲温度から上記のとおりに選択される同時顆粒化温度にする。
【0064】
用語「周囲温度」とは、一般に15〜25℃の温度を意味するものとする。
【0065】
温度の上昇は、好ましくは徐々に、例えば3分毎に1℃で実施される。
【0066】
同時顆粒化温度に達したら、この混合物を、この温度で、該反応物質の所期の新規化合物への転化を得るのに十分な時間にわたって撹拌した状態にする。
【0067】
この等温保持時間は、選択される同時顆粒化温度に応じて決定される。
【0068】
選択された同時顆粒化温度が高ければ高いほど、等温保持時間は短い。
【0069】
例えば、有利には51℃で選択される同時顆粒化温度に対して、保持時間は、有利には5分〜1時間、好ましくは20分〜40分の範囲にある。この上限値は臨界的ではないが、ただし生産性の理由から、1時間以内の期間が優先的に選択されることに留意すべきである。
【0070】
54℃以上の温度については、等温保持を維持することはもはや必要ないことが分かっている。言い換えれば、上記温度に達したら、混合物を撹拌した状態に保持する理由はもはや存在しない。
【0071】
上記操作は、好ましくは、不活性ガス、最も一般的には窒素の雰囲気下で実施される。
【0072】
その後の工程において、得られた組成物を40℃未満の温度に冷却する。
【0073】
好ましい一実施形態によれば、組成物を、撹拌しながら不活性雰囲気下で40℃未満の温度、好ましくは35℃未満の温度にまで冷却する。この冷却温度の下限値は、有利には周囲温度である。
【0074】
新規バニリン/エチルバニリン化合物を含む組成物が回収される。
【0075】
本発明の方法の様々な操作は、有利にはプラウミキサー又はリボンミキサーであるミキサーで実施できる。
【0076】
このミキサーは、有利には、二重ジャケットを備え、該二重ジャケット内に熱伝導流体を循環させることによって様々な熱伝達を与える。この熱伝導流体は、選択される同時顆粒化温度よりも上の2〜5℃の温度に保持された水や、他の任意の熱伝導流体、例えばシリコーンオイルであることができる。
【0077】
冷却の場合には、熱伝導流体の温度(水の場合)は、例えば、選択された冷却温度の下2〜5℃の温度で選択されるのが一般的である。
【0078】
本発明の方法に従って得られた化合物は、新規バニリン/エチルバニリン化合物とバニリンとの混合物を少なくとも80重量%、好ましくは少なくとも90重量%含む。
【0079】
得られた組成物は、バニリン/エチルバニリン相図及び随意にバニリンの他の結晶相を20重量%未満、好ましくは10重量%未満含む:以下、この混合物を「他の結晶相」という。
【0080】
さらに特定すると、得られる組成物は、
・80〜99重量%の新規バニリン/エチルバニリン化合物とバニリンとの混合物と
・1〜20重量%の他の結晶相と
を含むことができる。
【0081】
本発明の好ましい組成物は、
・90〜99重量%の新規バニリン/エチルバニリン化合物とバニリンとの混合物と
・1〜10重量%の他の結晶相と
を含む。
【0082】
新規バニリン/エチルバニリン化合物とバニリンとを含む得られた混合物において、バニリンは、該混合物の20重量%未満、好ましくは14重量%未満を占める。
【0083】
さらに特定すると、得られた混合物は、
・80〜94重量%の新規バニリン/エチルバニリン化合物と
・6〜20重量%のバニリンと
を含むことができる。
【0084】
好ましい混合物は、次の組成:
・86〜94重量%の新規バニリン/エチルバニリン化合物、
・6〜14重量%のバニリン
を有する。
【0085】
得られた組成物は、例えば、200μm〜10000μm、好ましくは500μm〜1000μmの範囲のサイズを有する顆粒の形態にある。
【0086】
粒子のサイズを想定される用途と一致させるためには、粉砕操作が想起できる。
【0087】
この操作は、中央径(d50)によって表される粒度が200μm〜1000μmの範囲、好ましくは500μm〜800μmとなるような方法で実施される。この中央径は、粒子の50重量%が該中央径よりも大きい又は小さい粒子を有するものであると定義される。
【0088】
この粉砕操作は、ブレードミル、歯付きロール粉砕機又は造粒機などの従来の装置で実施できる。
【0089】
得られた組成物のX線回折スペクトルは、角度2θ(°)=20.7−25.6−27.5−28.0 のラインを有するが、これらは本発明の新規化合物の特徴である。
【0090】
その流動性に関して、本発明の組成物は、80%相対湿度の空気下において40℃での保存の24時間後に、2400Paの垂直圧力で、0.05〜0.6の流動性指数を有する。
【0091】
本発明の方法の好ましい一変形例によれば、粉末を湿潤窒素雰囲気下で混合する第1工程を実施し、それによってさらに白い生成物を得ることが特に有益であることがわかった。
【0092】
ここで、窒素には小量の水が存在していてもよい。水は、窒素の重量の1〜5%、好ましくは窒素の重量の2〜3%を占めることができる。
【0093】
窒素流の加湿は、水への散布により実施できる。
【0094】
本発明の方法の好ましい一実施形態によれば、粉末の混合を湿潤窒素下で開始し、その後温度を徐々に上昇させ、そしてその温度が44℃以上及び49℃以下の場合には、乾燥窒素を導入する。
【0095】
「乾燥窒素」とは、窒素1kg当たり0.5g未満、好ましくは0.3g未満の水を含む窒素流を意味するものとする。
【0096】
その後の工程において、得られた組成物の温度を上記のとおり周囲温度に戻す。
【0097】
得られた組成物は、図1に例示されるような特徴的なラインを含むX線回折スペクトルを有する。
【0098】
湿潤窒素下でのこの実施変形例によれば、等温保持を短縮できるので色が一層白い組成物がより迅速に得られる。例えば、乾燥窒素下での温度上昇後に、52℃で2時間にわたり等温保持するのが望ましい。温度の上昇を湿潤窒素下で実施する場合には、52℃で30分間の等温保持で十分である。
【0099】
本発明の方法は、出発物質にかかわらず、任意の化学合成により生成されたバニリン及びエチルバニリンに適用される。
【0100】
また、この方法は、生化学的方法、特に微生物発酵方法に従って得られたバニリン、特にフェルラ酸にも適している。
【0101】
本発明は、本発明と共に1種以上の添加剤を使用することを除外しない。
【0102】
添加剤の選択は、最終生成物の使用目的を考慮しなければならず、そのため、食品分野で使用する場合には食用に適したものでなければならないことに留意すべきである。
【0103】
添加剤の量は、極めて広範囲であり、最終混合物の重量の0.1〜90%を占めることができる。
【0104】
この量は、有利には、20〜70重量%で選択される。
【0105】
選択される添加剤の種類、使用量及び最終生成物の使用目的に応じて、該添加剤は、本発明の組成物の製造終了時又は本発明の組成物の製造中に、全体的に又は部分的に導入できる。言い換えれば、添加剤の総量を本発明の組成物の製造中に導入することや、本発明の組成物の製造終了時に添加することができる。また、製造中又は製造後に使用される量を分けることも可能である。
【0106】
例示として、添加剤の5〜50重量%を本発明の組成物の製造中に添加し、その後、本発明の組成物の製造を終えるときに、再度該添加剤の5〜50重量%を添加することが可能であると特定できる。
【0107】
また、添加剤によっては導入のタイプを調節すること、すなわち添加剤の全量を例えば本発明の組成物の製造中に導入し、別の添加剤の添加量を分けること、又はその逆も可能である。
【0108】
第1の変形例によれば、添加剤は、得られた本発明の組成物との乾式混合により添加される。
【0109】
別の変形例によれば、添加剤は、本発明の組成物を得るための方法、例えばバニリンとエチルバニリンとの混合物の同時顆粒化工程の間に導入できる。
【0110】
同じ添加剤をこれら2つの製造工程で添加し、分割することや、 異なる添加剤を本発明の組成物の製造中又は終了時に導入することもできることは言うまでもない。
【0111】
以下において、使用できる添加剤の例を与えるが、ただし、それらには限定されない。
【0112】
脂肪物質が第1のタイプの添加剤に相当する。
【0113】
例としては、塩又はエステルの形態であってよい脂肪酸が挙げられる。
【0114】
使用される脂肪酸は、一般に、長鎖飽和脂肪酸、すなわち、例えば、カプリン酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸又はベヘン酸などの約9〜21個の炭素原子の鎖長を有する脂肪酸である。
【0115】
これらの酸を塩形成された状態にすることが可能であり、その例としては、特にステアリン酸カルシウム又はステアリン酸マグネシウムが挙げられる。
【0116】
脂肪酸エステルとしては、特に、ステアリン酸グリセリル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸セチル及びミリスチン酸イソプロピルが挙げられる。
【0117】
また、特に、グリセリンと長鎖脂肪酸とのエステル、例えば、モノステアリン酸グリセリル、モノパルミトステアリン酸グリセリル、パルミトステアリン酸グリセリル、エチレングリコールパルミトステアレート、ポリパルミトステアリン酸グリセリル、ポリグリコール1500及び6000パルミトステアレート、モノリノール酸グリセリル;随意に、長鎖脂肪酸のモノ−又はジアセチル化グリセリンエステル、例えばモノアセチル化又はジアセチル化モノグリセリド及びそれらの混合物;半合成グリセリドも挙げられる。
【0118】
また、例えば、ミリスチルアルコール、パルミチルアルコール又はステアリルアルコールなどの炭素原子の鎖が約16〜22個の炭素原子である脂肪アルコールを添加することも可能である。
【0119】
また、例えば、ココナツアルコール、トリデカノール又はミリスチルアルコールなどの、10〜20個の炭素原子を有する直鎖又は分岐脂肪アルコールとエチレンオキシドとを1モル当たり6〜20モルのエチレンオキシドの割合で縮合させることにより得られたポリオキシエチレン化脂肪アルコールを使用することも可能である。
【0120】
また、微結晶性ワックス、白ろう、カルナウバワックス又はパラフィンなどのワックスも挙げられる。
【0121】
糖類、例えばグルコース、スクロース、フルクトース、ガラクトース、リボース、マルトース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、ラクチトール、マルチトール;転化糖:グルコースシロップのみならず、ココナツ油、パーム油、水添パーム油及び水添大豆油などの脂肪オイルから誘導されるスクログリセリド;スクロースモノパルミテート、スクロースモノステアレート及びスクロースジステアレートなどの脂肪酸のスクロースエステルが挙げられる。
【0122】
他の添加剤の例としては、多糖類が挙げられ、特に次の物質及び及びそれらの混合物が挙げられる:
・特にコムギ、トウモロコシ、オオムギ、コメ、キャッサバ又はジャガイモから得られた天然デンプン、アルファー化デンプン又は化工デンプン、特にアミロースに富んだ天然トウモロコシデンプン、アルファー化トウモロコシデンプン、化工トウモロコシデンプン、化工ワキシートウモロコシデンプン、アルファー化ワキシートウモロコシデンプン、化工ワキシートウモロコシデンプン、特にOSSA/オクテニルコハク酸デンプンナトリウム、
・デンプン加水分解物、
・デンプン(コムギ、トウモロコシ)又はジャガイモ粉の加水分解により得られるデキストリン及びマルトデキストリン、また、β−シクロデキストリン、
・セルロース、そのエステル、特にメチルセルロース、エチルセルロース、メチルエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース;又はそのエステル、特にナトリウム含有形態であってよいカルボキシメチルセルロース又はカルボキシエチルセルロース、
・ガム類、例えばカラギナンガム、カッパカラギナン又はイオタカラギナンガム、ペクチン、グアーガム、ローカストビーンガム、キサンタンガム、アルギネート、アラビアガム、アカシアガム、寒天。
【0123】
好ましくは、「デキストロース当量」又はDEによって測定される加水分解度が20未満 、好ましくは5〜19、より好ましくは6〜15のマルトデキストリンが選択される。
【0124】
他の添加剤としては、粉、特に小麦粉(天然又はアルファー化);デンプン類、特にジャガイモ粉、クズウコンデンプン、トウモロコシデンプン、トウモロコシ粉、サゴ又はタピオカが挙げられる。
【0125】
また、添加剤として、ゼラチン(好ましくはゲルメーターを使用して100、175及び250ブルームのゲル強度を有する)を使用することもできる。このものは、区別なく、ブタの皮膚及び骨質の酸処理か、又は牛革及び骨質のアルカリ処理のいずれかに由来することができる。
【0126】
また、シリカ又は、例えば、特にビタミンEなどの酸化防止剤や乳化剤、特にレシチンといった他の添加剤を添加することも可能である。
【0127】
上記混合物の香味力を調節し又はその味覚を向上させるために、エチルマルトール及び/又はプロペニルグエトールを使用することが想定できる。
【0128】
本発明は、補足量のバニリン又はエチルバニリンを添加することを除外しない。
【0129】
添加剤の選択は、予想される用途に従って、前記のとおりに行う。
【0130】
また、本発明の組成物は、多くの適用分野、特に食品及び医薬品分野並びに香料製造産業においても使用できる。
【0131】
本発明の組成物の用途の好ましい分野は、クッキー業界及びケーキ製造業、特に、
・ドライクッキー業界:従来型のスイートクッキー、バタークッキー、大型ラウンドクッキー、スナック類、ショートブレッド、
・工場製造のケーキ:シャンパンレディーフィンガー、薄型フィンガー、スポンジフィンガー、ジェノバケーキ、スポンジケーキ、マドレーヌ、パウンドケーキ、フルーツケーキ、アーモンドケーキ、プチフール。
【0132】
上記産業向けの混合物中に存在する必須要素は蛋白質(グルテン)とデンプンであり、これらは小麦粉により与えられるのが最も一般的である。様々なタイプのクッキー及びケーキを製造するために、ショ糖、塩、玉子、ミルク、脂肪、随意に化学酵母(炭酸水素ナトリウム若しくは他の人工酵母)又は生物学的酵母及び様々な穀類からの粉などの添加物を粉に添加する。
【0133】
本発明の組成物を、所望の製品に応じて製造中に対象分野における従来技術に従って仕込む(特にJ.L.Kiger及びJ.C.Kiger−Techniques Modernes de la Biscuiterie,Patisserie−Boulangerie industrielles et artisanales 「クッキー、ケーキ及びベーカリー製品の産業的及び伝統的製造の近代技術],DUNOD,パリ,1968,第2巻、pp.231 ff参照))。
【0134】
好ましくは、本発明の組成物を、ドウの製造の際に使用される脂肪に仕込む。
【0135】
例示として、本発明の組成物をドウ1kg当たり0.005〜0.2gの量で仕込むことを明示しておく。
【0136】
本発明の組成物は、チョコレート製造分野での使用に完全に適しており、使用される形態は問わない:チョコレートバー、クーベルチュールチョコレート、チョコレート用フィリング。
【0137】
該組成物を、コンチング、すなわちココアペーストと各種添加物、特に香料とのブレンド中に、又はコンチング後に、加工によりココアバターに仕込むことができる。
【0138】
この適用分野では、本発明の組成物は、チョコレートのタイプに応じて、最終製品1kg当たり0.0005g〜0.1gの割合で使用される:最も高い含有量はクーベルチュールチョコレートで使用される。
【0139】
本発明の組成物の別の用途は、全ての種類のキャンディー:砂糖漬けアーモンド、キャラメル、ヌガー、ハードキャンディー、フォンダンキャンディーなどの製造である。
【0140】
本発明の組成物の仕込量は、多かれ少なかれ望まれる濃い味に依存する。例えば、使用量は、0.001%〜0.2%を範囲とすることができる。
【0141】
本発明の組成物は、乳業、特に香り付けミルク及びミルクゼリー、クリームデザート、ヨーグルト、氷菓及びアイスクリームでの使用に非常に好適である。
【0142】
香り付けは、本発明の組成物を、製品の製造の間に必要な混合工程において単に添加することによって実施される。
【0143】
使用される該組成物の含有量は概して低く、最終製品1kg当たり約0.02gである。
【0144】
食品分野における本発明の組成物の別の用途は、バニリンシュガーの製造、すなわち、最終製品1kgに対して表して約7gの含有量のバニリンを砂糖に含浸することである。
【0145】
また、本発明の組成物は、各種ドリンク類、特にグレナディン及びチョコレートドリンクに含まれることもできる。
【0146】
特に、該組成物は、自動ドリンクディスペンサーにより供給されるインスタントドリンク、風味付けドリンクパウダー、チョコレートパウダーの配合物や、水又はミルクでの希釈後に全ての種類のデザート類、カスタードタルト、ケーキミクスチャー、パンケーキを作るための粉末の状態のインスタント配合物に使用できる。
【0147】
バターを変性させるためにバニリンを使用することが一般的に行われている。この目的のために、本発明の組成物は、バター1メトリックトン当たり6gの割合で使用できる。
【0148】
本発明の別の適用分野は動物飼料、特にウシ用の食餌及びブタ飼料を製造するためのものである。推奨される含有量は、風味付けされる食餌1kg当たり約0.2gである。
【0149】
本発明の組成物は、製薬産業(医薬品の臭いをマスキングするため)又は他の工業製品(例えば、ガム類、プラスチック、ゴムなど)のためのマスキング剤など、他の用途に使用することもできる。
【0150】
該組成物は、化粧品産業、香料産業又は洗剤産業などの完全に異なる分野にも完全に好適である。
【0151】
該組成物は、クリーム、乳液、メークアップ及び他の製品などの化粧品だけでなく、香料組成物並びに芳香物質及び芳香製品における香料成分としても使用できる。
【0152】
用語「着香組成物」とは、溶媒、固体又は液体キャリヤー、定着剤、様々な臭気化合物などの様々な成分の混合物であって、本発明の組成物を取り入れ、かつ、使用して様々なタイプの最終製品に所望の芳香を付与するものをいう。
【0153】
フレグランスベースが、本発明の組成物を有利には0.1重量%〜2.5重量%の含有量で使用できる着香組成物の好ましい例を構成する。
【0154】
フレグランスベースは、例えば、オードトワレ[化粧水]、フレグランス、アフターシェーブローション;バスジェル又はシャワージェル、デオドラント又は発汗抑制製品などの化粧用品及び衛生用品(任意の性質のスティック又はローション、タルク又は粉末の形態にあるかどうかを問わない);シャンプー及び任意のタイプのヘア製品などの毛髪用製品といった多数の芳香製品を製造するために使用できる。
【0155】
本発明の組成物の別の用途の例は石鹸製造分野である。該組成物は、着香される全素材の0.3%〜0.75%の含有量で使用される。一般に、該組成物は、この用途においては、ベンゾインレジノイド及びチオ硫酸ナトリウム(2%)と併用される。
【0156】
本発明の組成物は、特に芳香剤又は任意のメンテナンス製品など他の多くの用途に使用できる。
【0157】
本発明の組成物の物理化学的特性は、次の方法に従って決定される:
1.融点
本発明の組成物の融点は示差走査熱量測定法で測定される。
【0158】
測定を、Mettler DSC822e示差走査熱量測定装置を使用して次の条件下で実施する:
・周囲温度での試料の調製:秤量し、試料キャリヤーに導入する、
・試料キャリヤー:ひだ付きアルミニウムカプセル、
・試験片:8.4mg、
・温度上昇速度:2℃/分、
・試験範囲:10〜90℃。
【0159】
組成物の試料を秤量し、ひだ付きのカプセルに導入し、次いで上記装置内に設置する。
【0160】
温度プログラムを実行し、そして融解プロフィールをサーモグラムで得る。
【0161】
融解温度は、上記操作条件下で作成されたサーモグラムに基づいて定義される。
【0162】
開始温度を保持する:融解ピークの最大の傾きに相当する温度。
【0163】
2.X線回折スペクトル
本発明の組成物のX線回折スペクトルは、X’Celerator検出器を備えたX’Pert Pro MPD PANalytical装置を使用して次の条件下で決定する:
・開始位置[°2Th.]:1.5124
・終了位置[°2Th.]:49.9794
・ステップサイズ[°2Th.]:0.0170
・スキャンステップ時間[秒]:41.0051
・アノード材料:Cu
・K−Alpha1[Å]:1.54060
・発電機の設定:30mA、40kV
【0164】
3.流動特性及び粘結力指数
本発明の組成物は、保存中に固化(ケーキング)が少ないという特性を有するが、これは、粉末の流動性指数を決定することによって実証される。
【0165】
粉末の流動性は、当業者に周知の技術的観念である。詳細については、「The Institution of Chemical Engineers」,1989(ISBN:0 85295 232 5)により公開されたハンドブック「Standard shear testing technique for particulate solids using the Jenike shear cell」を参照することができる。
【0166】
流動性指数は、次の方法で測定される。
【0167】
粉末の流動性は、環状セル内で試料を剪断することにより測定される(ドイツ国のD.Schulzeが販売)。
【0168】
粉末の予備せん断を5200Paの垂直応力下で実施する。
【0169】
試料の降伏位置をプロットするのに必要なせん断点を、予備せん断の応力よりも4つの低い垂直応力、典型的には480Pa、850Pa、2050Pa及び3020Paについて得る。
【0170】
「垂直応力に応じたせん断応力」のグラフにおけるモール円から、試料を特徴付ける次の2つの応力を降伏位置上で決定する:
・主方向における垂直応力;予備せん断点を通過する大きなモール円の終端により与えられる。
・凝集力;降伏位置に接し、かつ、起点を通過する小さなモール円の終端により与えられる。
【0171】
主方向における垂直応力対凝集力の比は無次元数であり、「流動性指数i」という。
【0172】
これらの測定を、環状セルに充填した直後に実施する;このようにして即時の流動性指数を得る。
【0173】
別の系列の測定を、24時間にわたり40℃及び80%相対湿度で保存されたセルを用いて2400Paの垂直応力下で行う。
【0174】
このようにして粘結力指数を得る。
【0175】
以下において、本発明を例示する実施例を与えるが、これらは本発明を限定する性質のものではない。
【実施例】
【0176】
これらの例において、言及されるパーセンテージは重量を基準にして表される。
例1
2100gの粉末バニリン(VA)及び900gのエチルバニリン(EVA)(すなわちVA/EVA重量比=70/30)を、15リットルの容量を有するタンクを備え、二重ジャケットにより加熱されたプラウミキサーに導入する。これらの粉末の含水量は0.1重量%である。
【0177】
撹拌を20rpmの速度、すなわち0.25m/sのブレード末端速度で開始する。この撹拌速度をこの方法の全ての段階にわたって一定に保持する。
【0178】
湿潤窒素の循環をミキサー内において200L/時間の流量で達成する。窒素流の加湿を40℃で保持した水に散布することにより実施して窒素1kg当たり25gの水を得る。水浴とミキサーとの間の供給ラインを45℃に保持してパイプ中で凝縮が起こるのを回避する。
【0179】
二重ジャケット中における熱伝導流体循環の温度を、粉末の混合物の温度が+0.3℃/分の傾斜に従うように、徐々に上昇させる。
【0180】
この物質の温度が49.5℃に達したときに、窒素流を湿潤化する水浴を迂回して、ミキサーに乾燥窒素循環を供給する(0.5g未満の水/kg窒素)。同時に、15gのTixosil 365シリカをミキサーに導入する。
【0181】
この物質の温度を0.2℃/分で49.5℃から52℃にし、その後52℃で30分間保持する。続いて、熱伝導流体の加熱を停止し、そしてこの物質の温度を自然冷却により30℃に戻す。撹拌及び窒素循環を停止する。ミキサーの排出を行う。
【0182】
この物質を800μmでろ別する;通過した物質は、全重量の56重量%を占める。800μmでオーバーサイズのものを、800μmスクリーンを装着したQuadro Comillミルを使用して粉砕する。その後、2つの画分を一緒にして、そしてその混合物を均質化して最終生成物を得る。
【0183】
これらの顆粒の融点を上記の示差走査熱量測定法により決定する。得られたサーモグラムは、新規バニリン/エチルバニリン化合物に相当する主ピークを示す。このピークの最大の傾きに相当する融解温度(Tonset)は59.5℃である。
【0184】
顆粒のX線回折スペクトルは、図1に示すように、角度2θ=20.7−25.6−27.5−28.0で特徴的なラインを示すが、これは、バニリンのスペクトル及びエチルバニリンのスペクトルとは相違する。
【0185】
環状セルを使用して上記のとおり測定される流動性指数及び粘結力指数は、それぞれ5.70及び0.09である。
【0186】
例2
例1の手順を繰り返したが、ただし、次の手順のみを変更した:
・40rpmの撹拌速度、
・+0.5℃/分の湿潤窒素雰囲気下での温度上昇傾斜、
・55℃の乾燥窒素下最終温度、
・冷却前の等温保持なし。
【0187】
最終同時顆粒化温度の上昇により、等温保持なしが可能になり、バニリン/エチルバニリン混合物の新規化合物への完全な添加を確保することが可能になる。一方、顆粒サイズの増大がさらに大きい。というのは、ミキサーの出口において、800μmを通過する材料は、総重量の27%を占めるにすぎず、この物質の73%を粉砕することが必要になるからである。
【0188】
800μmでオーバーサイズのものを粉砕し、そして2つの画分を混合した後に、得られた物質は、6.30の流動性指数及び0.10の粘結力指数を有する。
【0189】
例3
例1の手順を繰り返したが、ただし15gのTixosil 365シリカの代わりに150gのRoquette IT12マルトデキストリンを用いた点のみが相違する。
【0190】
ミキサーの出口において、800μmを通過する物質は、総重量の55%を占める。
【0191】
800μmでオーバーサイズのものを粉砕し、そして2つの画分を混合した後に、得られた物質は、5.90の流動性指数及び0.12の粘結力指数を有する。
【0192】
例4
この例では、例1に従って製造された顆粒50重量%とRoquette IT6マルトデキストリン50重量%とを含む顆粒の状態の組成物を製造する。
【0193】
約5分間続く混合操作を60rpmの回転速度のプラウミキサー内で周囲空気雰囲気下において周囲温度で実施する。
【0194】
このようにして得られた混合物は、8.80の流動性指数及び0.62の粘結力指数を有する。
【0195】
その芳香力は純粋なバニリンと同等である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2のバニリン/エチルバニリンモル比のバニリン及びエチルバニリンを主体とする化合物を主成分として含む組成物の製造方法であって、粉末の状態で、かつ、バニリン/エチルバニリンモル比が少なくとも2に等しくなる量で使用されるバニリン及びエチルバニリンの、50℃〜57℃の温度で実施される同時造粒工程と、その後、得られた組成物の温度を周囲温度に戻すことを可能にする工程とを含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記バニリン及び前記エチルバニリンを次の割合で使用することを特徴とする、請求項1に記載の方法:
・65〜72重量%のバニリン、
・28〜35重量%のエチルバニリン。
【請求項3】
前記バニリン及び前記エチルバニリンを次の割合で使用することを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の方法:
・67〜70重量%のバニリン、
・30〜33重量%のエチルバニリン。
【請求項4】
前記バニリン粉末とエチルバニリン粉末との混合を撹拌しながら実施し、しかも、該混合物を周囲温度から同時顆粒化温度にすることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記同時顆粒化温度が50〜57℃、好ましくは50〜55℃の間で選択されることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記温度の上昇を徐々に実施することを特徴とする、請求項4又は5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記同時顆粒化温度に達したら、前記混合物について、その温度で、反応物を所期の新規化合物に転化させるのに十分な時間にわたって撹拌した状態を維持することを特徴とする、請求項4〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記各工程を不活性ガス、好ましくは窒素の雰囲気下で実施することを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記混合を湿潤窒素下で開始し、続いてその温度を徐々に上昇させ、そして、その温度が44℃以上かつ49℃未満のときに、乾燥窒素を導入することを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記窒素流が水の重量を1〜5%、好ましくは水の重量を2〜3%含有することを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
得られた組成物を、撹拌しながら、不活性雰囲気下で40℃未満の温度、好ましくは35℃未満の温度にまで冷却することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
得られた組成物を粉砕技術に従って成形することを特徴とする、請求項1〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記組成物に1種以上の添加剤を添加することを特徴とする、請求項1〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記1種以上の添加剤を、予め得られた組成物と乾式混合することによって、又は該組成物の製造中に、好ましくはバニリンとエチルバニリンとの混合物の同時顆粒化工程の間に乾式混合することによって、全体的に又は部分的に添加することを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれかに記載の方法に従って得られた組成物であって、
・80〜99重量%、好ましくは80〜94重量%の新規バニリン/エチルバニリン化合物とバニリンとの混合物、
・1〜20重量%、好ましくは1〜10重量%の他の結晶相
を含む組成物。
【請求項16】
前記得られた混合物が
・80〜94重量%、好ましくは86〜94重量%の新規バニリン/エチルバニリン化合物と、
・6〜20重量%、好ましくは6〜14重量%のバニリンと
を含む、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
請求項15又は16のいずれかに記載の少なくとも1種の組成物と、脂肪物質;脂肪アルコール;糖類;多糖類;シリカ;バニリン及びエチルバニリンから選択される少なくとも1種の添加剤とを含む組成物。
【請求項18】
前記添加剤が、
・糖類、好ましくはグルコース、スクロース、フルクトース、ガラクトース、リボース、マルトース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、ラクチトール、マルチトール;転化糖:グルコースシロップ、また、脂肪オイル、好ましくはココナツ油、パーム油、水添パーム油及び水添大豆油から誘導されるスクログリセリド;脂肪酸のスクロースエステル、好ましくはスクロースモノパルミテート、スクロースモノステアレート及びスクロースジステアレート、
・特にコムギ、トウモロコシ、オオムギ、コメ、キャッサバ又はジャガイモから得られた天然デンプン、アルファー化デンプン又は化工デンプン、特にアミロースに富んだ天然トウモロコシデンプン、アルファー化トウモロコシデンプン、化工トウモロコシデンプン、化工ワキシートウモロコシデンプン、アルファー化ワキシートウモロコシデンプン、化工ワキシートウモロコシデンプン、特にOSSA/オクテニルコハク酸デンプンナトリウム、
・デンプン加水分解物、
・デンプン(コムギ、トウモロコシ)又はジャガイモ粉の加水分解により得られるデキストリン及びマルトデキストリン、また、β−シクロデキストリン、好ましくは20未満のDE、好ましくは5〜19のDE、より好ましくは6〜15のDEを有するマルトデキストリン、
・セルロース、そのエステル、特にメチルセルロース、エチルセルロース、メチルエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース;又はそのエステル、特にナトリウム含有形態であってよいカルボキシメチルセルロース又はカルボキシエチルセルロース、
・ガム類、例えばカラギナンガム、カッパカラギナン又はイオタカラギナンガム、ペクチン、グアーガム、ローカストビーンガム、キサンタンガム、アルギネート、アラビアガム、アカシアガム、寒天、
・粉、好ましくは小麦粉(天然又はアルファー化);デンプン類、好ましくはジャガイモ粉、
・ゼラチン、
・シリカ、
・酸化防止剤、好ましくはビタミンE、
・乳化剤、好ましくはレシチン、
・バニリン又はエチルバニリン
から選択されることを特徴とする、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
0.1〜90重量%の添加剤、好ましくは20〜70重量%の添加剤を含むことを特徴とする、請求項17又は18に記載の組成物。
【請求項20】
請求項15〜19のいずれかに記載の組成物の、食品及び動物飼料並びに製薬産業の分野における香料、並びに化粧品、香水及び洗剤産業におけるフレグランスとしての使用。
【請求項21】
本発明の組成物を、ドライクッキー業界及び工場製造のケーキの分野においては、ドウの製造の間に好ましくは脂肪に使用し;チョコレート製造分野においては、特にチョコレートバー、クーベルチュールチョコレート又はチョコレート用フィリングの製造のために使用し;全ての種類のキャンディー:砂糖漬けアーモンド、キャラメル、ヌガー、ハードキャンディー、フォンダンキャンディーなどの製造の間に使用し;乳業においては、特に香り付けミルク及びミルクゼリー、クリームデザート、ヨーグルト、氷菓及びアイスクリームに使用し;砂糖にバニリンを含浸させることによるバニリンシュガーの製造に使用し;各種ドリンク類、好ましくはグレナディン及びチョコレートドリンクの製造に使用し;風味付けドリンクパウダー、チョコレートパウダーなどのインスタントドリンクの製造又は全ての種類のデザート類を製造するための粉末状のインスタント配合物に使用し;バターを変性させるために使用することを特徴とする、請求項20に記載の使用。
【請求項22】
本発明の組成物を、動物飼料、特に食餌を製造するために使用することを特徴とする、請求項20に記載の使用。
【請求項23】
本発明の組成物を、特に製薬産業における臭気マスキング剤として使用し;化粧品産業においては、クリーム、乳液及びメークアップ、並びに香料産業及び洗剤産業、特に石鹸製造における香料ベースなどの他の製品を製造するために使用することを特徴とする、請求項20に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2013−520541(P2013−520541A)
【公表日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−554312(P2012−554312)
【出願日】平成23年2月21日(2011.2.21)
【国際出願番号】PCT/EP2011/052534
【国際公開番号】WO2011/104208
【国際公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(508076598)ロディア オペレーションズ (98)
【氏名又は名称原語表記】RHODIA OPERATIONS
【住所又は居所原語表記】40 rue de la Haie Coq F−93306 Aubervilliers FRANCE
【Fターム(参考)】