説明

バラエティブレッド生地、及びその製造方法

【課題】 内相にソフトな食感の呈味部分が点在し、その食感が経日的に変化しないバラエティブレッドを得るためのバラエティブレッド生地を提供すること、及び、該特徴を有するバラエティブレッドの製造方法を提供すること。
【解決手段】 呈味物質で風味付けされた小片状のキャラメルを含有することを特徴とするバラエティブレッド生地。また、呈味物質で風味付けされた小片状のキャラメルを、ベースとなるパン生地に分散させる工程、及び/又は、ベースとなるパン生地に巻き込む工程を含むことを特徴とするバラエティブレッド生地の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内相にソフトな食感の呈味部分が点在するバラエティブレッドを得るためのバラエティブレッド生地及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食パン、菓子パン、デニッシュ等のパン類の内相に、呈味部分が点在するパン類はバラエティブレッドといわれ、その製造方法としては、焼成後にもそのままの形状で残るドライフルーツやチョコチップ等の呈味素材を、ベースとなるパン生地に混合する方法が一般に行なわれてきた。特にレーズン等の乾燥果実やチョコレートチップ等の油脂性菓子をベースとなるパン生地に分散させ、焼成して得られるバラエティブレッドは、その呈味素材の視認性が高く、風味を認識しやすいことから、古くから親しまれてきた。
【0003】
しかし、これらの乾燥果実や油脂性菓子は、それ自体硬い食感であったり、焼成により硬化したりするため、その呈味部分の食感と、ベースとなるパンのクラムの食感との間に違和感を生じ、一体感に欠ける食感のバラエティブレッドになってしまう。
【0004】
そこで、食した際にその呈味部分の食感がソフトとなるような食品素材を使用したバラエティブレッドの製造方法が各種提案されている。
【0005】
例えば、呈味物質を含有する小片状のマーガリンやショートニング等の油脂組成物を使用する方法(例えば特許文献1参照)、シュー生地やケーキ生地等の焼成前の生地を配合する方法(例えば特許文献2参照)、小片状のフラワーペーストを使用する方法(例えば特許文献3、4参照)、パイ生地等の生地で呈味素材をロールインした層状生地素材を使用する方法(例えば特許文献5、6参照)、冷凍した菓子生地を使用する方法(例えば特許文献7参照)、シャリの出たハードキャンディーを使用する方法(例えば特許文献8参照)等が提案されている。
【0006】
しかし、特許文献1に記載の方法では、クラムに油脂に起因する孔があいてしまう問題があった。また、特許文献2に記載の方法では、添加するシュー生地やケーキ生地は極めて軟らかいため、ミキシングによってベースとなるパン生地に均質に練り込まれてしまい、呈味素材の視認性が悪いという問題があった。また、特許文献3〜6に記載の方法では、ミキシングによって呈味素材が生地に練り込まれやすいことに加え、呈味素材自体由来の澱粉質やガム質の粘つく食感が残ってしまうため、クラムの食感との間に違和感を生じてしまうという問題があった。さらに特許文献7に記載の方法では、風味が乏しくなってしまうことに加え、混合時にベースとなるパン生地の温度が低下してしまい製造時間が長くなってしまう問題があり、特許文献8に記載の方法では、水分含量が少ないクッキー等の焼菓子に使用する場合は良好な結果を示すが、水分含量が比較的高いパンに使用した場合は焼成当初ざらついた食感が残ることに加え経日的に食感が変化してしまう問題があった。
【0007】
【特許文献1】特開平06−233649号公報
【特許文献2】特開昭61−128846号公報
【特許文献3】特開2001−145454号公報
【特許文献4】実開平07−028383号公報
【特許文献5】特開平09−149755号公報
【特許文献6】特開2001−269111号公報
【特許文献7】特開2006−129816号公報
【特許文献8】特開2006−280323号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の目的は、内相にソフトな食感の呈味部分が点在し、その食感が経日的に変化しないバラエティブレッドを得るためのバラエティブレッド生地を提供すること、及び、該特徴を有するバラエティブレッドの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、上記目的を達成すべく種々検討した結果、呈味物質で風味付けされた小片状のキャラメルを使用することにより、上記目的を達成し得ることを知見した。
【0010】
本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、呈味物質で風味付けされた小片状のキャラメルを含有することを特徴とするバラエティブレッド生地を提供するものである。
【0011】
また、本発明は、呈味物質で風味付けされた小片状のキャラメルを、ベースとなるパン生地に分散させる工程、及び/又は、ベースとなるパン生地に巻き込む工程を含むことを特徴とするバラエティブレッド生地の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明のバラエティブレッド生地は、内相にソフトな食感の呈味部分が点在し、その食感が経日的に変化しないバラエティブレッドを得るためのバラエティブレッド生地を提供することができる。
【0013】
また、本発明のバラエティブレッド生地の製造方法によれば、上記特徴を有するバラエティブレッドを得るためのバラエティブレッド生地を簡単に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明のバラエティブレッド生地について詳述する。
【0015】
本発明のバラエティブレッド生地は、呈味物質で風味付けされた小片状のキャラメルを含有する。
【0016】
上記呈味物質としては、甘味、辛味、苦味、酸味、旨み等の呈味を有する食品素材や、香料、香辛料等を使用することができるが、ベースとなるパン生地との風味のマッチングが良好であることから、カカオ製品、茶類、豆類、堅果類、及び、果物類のうちの1種又は2種以上を使用することが好ましい。
【0017】
具体的には、上記カカオ製品としては、ココアパウダー、カカオマス、チョコレート等が挙げられ、上記茶類としては、緑茶、紅茶、ウーロン茶、プアール茶等が挙げられ、上記豆類としては、コーヒー、ピーナツ、大豆、小豆等が挙げられ、堅果類としては、アーモンド、へーゼルナッツ、栗、松の実等が挙げられ、上記果物類としては、キウイフルーツ、パパイヤ、マンゴー、パイナップル、イチジク、オレンジ、レモン、アップル、アプリコット、チェリー、ブドウ(レーズン)ラズベリー、ストロベリー、ブルーベリー、クランベリー、プラム等が挙げられる。
【0018】
これらの呈味物質の形態としては、液状、ペースト状、粉末状のいずれかでもよく、また、その添加量は特に制限されず、求める風味によって適宜決定される。
【0019】
本発明で使用する呈味物質で風味付けされた小片状のキャラメルについて説明する。
小片状のキャラメルとは、糖類、乳製品、水等などを混合溶解し、これを煮詰めて、水分含量を10質量%以下、好ましくは8質量%以下にまで冷却して固化させる通常のキャラメルの製造の際に、上記呈味成分を添加して製造し、風味付けされたキャラメルを得た後、これを小片状に成形したものである。
【0020】
上記小片状とは、立方体状、直方体状、角柱状、円柱状、半円柱状、球状等の形状で、その大きさが、立方体状又は直方体状のものは一辺の長さが3〜35mm、好ましくは5〜15mm、角柱状のものは断面となる多角形の一辺が3〜35mmで長さが10〜100mm、好ましくは5〜15mmで長さが10〜35mm、円柱状又は半円柱状のものは直径が3〜35mm以下で長さが10〜100mm、好ましくは5〜15mmで長さが10〜35mm、球状のものは直径が3〜35mm、好ましくは5〜15mm程度のものである。
【0021】
その成形方法としては、冷却して固化させる際にこれを一定の厚さに伸ばし立方体や直方体の形状に細断する方法や、冷却固化させる際に型に入れて成形する方法などが挙げられる。
【0022】
なお、上記糖類としては、通常のキャラメル製造に使用される糖類を制限なく使用することができ、例えば、上白糖、グラニュー糖、粉糖、蔗糖、液糖、はちみつ、ブドウ糖、果糖、黒糖、麦芽糖、乳糖、シクロデキストリン、酵素糖化水飴、酸糖化水飴、還元澱粉糖化物、還元糖ポリデキストロース、還元乳糖、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、エリスリトール、マンニトール、異性化液糖、ショ糖結合水飴、キャラメル、かえで糖、オリゴ糖、キシロース、トレハロース、フラクトオリゴ糖、大豆オリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、キシロオリゴ糖、アラビノース、パラチノースオリゴ糖、アガロオリゴ糖、キチンオリゴ糖、乳果オリゴ糖、ヘミセルロース、モラセス、イソマルトオリゴ糖、マルトオリゴ糖、カップリングシュガー、ラフィノース、ラクチュロース、テアンデオリゴ糖、ゲンチオリゴ糖等を挙げることができ、これらの糖類は単独で用いることもでき、又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0023】
上記小片状のキャラメルにおける上記糖類の好ましい含有量は、固形分として20〜35質量%、より好ましくは20〜30質量%とする。
【0024】
また、上記乳製品としても、通常のキャラメル製造に使用される乳製品を制限なく使用することができ、例えば、上記乳製品としては生乳、牛乳、特別牛乳、生山羊乳、殺菌山羊乳、生めん羊乳、部分脱脂乳、脱脂乳、加工乳、クリーム、チーズ、濃縮ホエイ、濃縮乳、脱脂濃縮乳、無糖練乳、無糖脱脂練乳、加糖練乳、加糖脱脂練乳、バター、全粉乳、脱脂粉乳、クリームパウダー、ホエイパウダー、蛋白質濃縮ホエイパウダー、バターミルクパウダー、加糖粉乳、調製粉乳、発酵乳、乳酸菌飲料、乳飲料、カゼインカルシウム、カゼインナトリウム、カゼインカリウム、カゼインマグネシウム、ホエープロテインコンセートレート、トータルミルクプロテイン等を挙げることができ、これらの乳製品は、単独で用いることもでき、又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0025】
上記小片状のキャラメルにおける上記乳製品の好ましい含有量は、無脂乳固形分として2〜35質量%、より好ましくは3〜30質量%とする。
【0026】
また、上記呈味物質、糖類、乳製品以外にも、通常のキャラメル製造に使用される原料を制限なく使用することができ、例えば、澱粉類、油脂類、卵類、膨張剤、食塩、乳化剤、増粘安定剤、酵素、香辛料、酸味料、着香料、着色料、保存料、日持ち向上剤などの材料を適宜用いることができる。
上記澱粉類としては、特に制限はなく、例えば、強力粉、準強力粉、中力粉、薄力粉、デュラム粉、全粒粉などの小麦粉類、ライ麦粉、米粉などのその他の穀粉類、コーンスターチ、タピオカ澱粉、小麦澱粉、甘藷澱粉、サゴ澱粉、米澱粉などの澱粉や、これらの澱粉をアミラーゼなどの酵素で処理したものや、α化処理、分解処理、エーテル化処理、エステル化処理、架橋処理、グラフト化処理などの中から選ばれた1種又は2種以上の処理を施した化工澱粉等が挙げられる。
【0027】
上記油脂類としては、特に制限はなく、例えば、ショートニング、マーガリンなどの可塑性油脂組成物や、液状油、溶解油、サラダ油、流動ショートニングなどの流動状〜液体の形態であっても、粉末油脂の形態であっても使用することができ、該油脂類が乳化物である場合、その乳化形態は、油中水型、水中油型、及び二重乳化型のいずれでも構わない。
【0028】
なお、油脂類を構成する油脂としても特に制限はなく、パーム油、パーム核油、ヤシ油、コーン油、綿実油、大豆油、菜種油、米油、ヒマワリ油、サフラワー油、牛脂、乳脂、豚脂、カカオ脂、魚油、鯨油などの各種植物油脂、動物油脂並びにこれらを水素添加、分別及びエステル交換から選択される一又は二以上の処理を施した加工油脂が挙げられる。本発明においては、これらの油脂を単独で用いることもでき、又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0029】
上記卵類としては、全卵、卵黄、凍結全卵、凍結卵黄などがあげられる。本発明ではこれらの中から選ばれた1種又は2種以上の卵類を用いることができる。
【0030】
上記乳化剤としては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、グリセリン酢酸脂肪酸エステル、グリセリン乳酸脂肪酸エステル、グリセリンコハク酸脂肪酸エステル、グリセリン酒石酸脂肪酸エステル、グリセリンクエン酸脂肪酸エステル、グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ショ糖酢酸イソ酪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ステアロイル乳酸カルシウム、ステアロイル乳酸ナトリウム、ポリオキシエチレンソルビタンモノグリセリド等の合成乳化剤や、例えば、大豆レシチン、卵黄レシチン、大豆リゾレシチン、卵黄リゾレシチン、酵素処理卵黄、乳脂肪球皮膜蛋白質等の合成乳化剤でない乳化剤を用いることができる。
【0031】
上記増粘安定剤としては、グアーガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、アラビアガム、アルギン酸類、ペクチン、キサンタンガム、プルラン、タマリンドシードガム、サイリウムシードガム、結晶セルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、寒天、グルコマンナン、ゼラチン等が挙げられ、これらの中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。
【0032】
上記小片状のキャラメルにおける上記その他の成分の含有量は、特に制限はないが、好ましくは、50質量%以下、より好ましくは30質量%以下とする。
【0033】
なお、本発明では、生地製造時に練りこまれにくく、焼き残り性が良好で、呈味部分の視認性が高いバラエティブレッドが得られる点で、上記小片状のキャラメルの蛋白質含量を、好ましくは2〜15質量%、より好ましくは5〜15質量%とする。2質量%未満であると、焼き残り性が低くなってしまうことに加え、メイラード反応に起因する良好な色調や呈味が得られないおそれがあり、15質量%を超えると、ソフト性に乏しい食感となってしまうおそれがある。
【0034】
本発明では、呈味部分の食感がよりソフトであり、且つ、と、ベースとなるパンのクラムの食感との間に違和感のないパン類が得られる点で、上記小片状のキャラメルの油分含量を、好ましくは3〜20質量%、より好ましくは7〜20質量%とする。3質量%未満であると、ソフト性に乏しい食感となってしまうおそれがあることに加え、焼成後の経日的な食感の変化を防止できないおそれがある。20質量%を超えると、生地製造時に練りこまれやすくなってしまうことに加え、粘ついた食感になってしまうおそれがある。
【0035】
なお、上記油脂含量は、呈味物質、糖類、乳製品として油脂を含有する原料を使用した場合は、それらに含まれる純油分も含めて算出するものとする。
【0036】
本発明のバラエティブレッド生地は、上記小片状のキャラメルを、ベースとなるパン生地100質量部に対して、好ましくは5〜80質量部、更に好ましくは10〜50質量部、最も好ましくは20〜30質量部含有するものである。
【0037】
該ベースとなるパン生地としては、食パン、菓子パン、パイ、デニッシュ、クロワッサン、フランスパン、セミハードロール、ワッフル、スコーン等の製造に用いられる生地として従来から使用されているものを用いることができるが、本発明では、その呈味部分の食感と、ベースとなるパンのクラムの食感との間に違和感のないパン類が得られる点で、糖類の配合量が穀粉類100質量部に対して好ましくは15質量部未満、より好ましくは8質量部未満、且つ、油脂類の配合量が穀粉類100質量部に対して好ましくは15質量部未満、より好ましくは8質量部未満であるパン生地を用いることが好ましい。
【0038】
なお、このベースとなるパン生地に使用することにできる穀粉類、糖類、油脂類は、上述の、焼菓子の製造に使用することのできる穀粉類、油脂類、糖類と同様のものを問題なく使用することができる。
【0039】
次に、本発明のバラエティブレッド生地の好ましい製造方法について述べる。
【0040】
本発明のバラエティブレッド生地は、呈味物質で風味付けされた小片状のキャラメルを、ベースとなるパン生地に分散させる工程、及び/又は、ベースとなるパン生地に巻き込む工程を含むものである。
【0041】
上記小片状のキャラメルをベースとなるパン生地に分散させる工程は、例えば、ベースとなるパン生地製造のミキシング途中で小片状のキャラメルを添加し、軽く混合することにより行なうことができる。
【0042】
また、上記小片状のキャラメルを上記ベースとなるパン生地に巻き込む工程は、例えば、ベースとなるパン生地を成形するときに、小片状のキャラメルをベースとなるパン生地上に散布し、これを巻き込むことにより行なうことができる。
【0043】
なお、上記製造方法で用いる小片状のキャラメルは、1種でもよいが、2種以上を同時に、又は、別々に添加してもよい。その具体的な方法としては、小片状のキャラメルを分散させたバラエティブレッド生地を成形するときに別の小片状のキャラメルを巻き込む方法や、ベースとなるパン生地を成形するときに、2種の小片状のキャラメルをベースとなるパン生地上に数条の帯状に散布し、これを巻き込む方法等が挙げられる。
【0044】
次に本発明のバラエティブレッドについて述べる。
【0045】
本発明のバラエティブレッドは、上記のバラエティブレッド生地を使用したものであり、その具体的な製法としては、上記のバラエティブレッド生地を通常のバラエティブレッド生地と同様に、必要に応じ、丸めたり、延展したり、さらに打抜く等の成形、型入れ、ホイロ等を行なった後、焼成、フライ、蒸す等の加熱工程に供することにより、得ることができる。
【0046】
また、本発明のバラエティブレッド生地は、ホイロをとらずに冷凍又は冷蔵しても良いし、ホイロをとった後に冷凍又は冷蔵しても良い。ホイロをとらずに冷凍又は冷蔵したものも、ホイロをとった後に冷凍又は冷蔵したものも、常法に従い、焼成してパン類とすることができる。
【0047】
また、本発明のバラエティブレッド生地を焼成等の加熱工程に供して得られたパン類は、冷凍保存することが可能であり、冷凍保存した該パン類は、電子レンジで解凍調理することが可能である。
【実施例】
【0048】
以下、本発明で用いられる小片状のキャラメルの製造例、及び製造例で得られた小片状のキャラメルを用いた本発明のバラエティブレッド生地の実施例等を挙げ、本発明のバラエティブレッド生地を更に詳しく説明する。しかしながら、本発明は、これらの製造例及び実施例等により何等制限されるものではない。
〔製造例1〕小片状のキャラメルAの製造
グラニュー糖24質量部、加糖練乳31質量部、水あめ31質量部、溶かしバター9質量部を均一に溶解し、攪拌しながら20分かけて120℃まで煮詰め、ここに、呈味物質としてブラックカカオパウダーを5質量部添加してよく混合し、バットに流し込み、室温で放冷し、約3時間後、包丁で10mm角の立方体に切り出し、小片状のキャラメルAを得た。
【0049】
得られた小片状のキャラメルAの蛋白質含量は3.0質量%、油脂含有量は11質量%、水分含量は6質量%であった。
【0050】
〔製造例2〕小片状のキャラメルBの製造
製造例1における溶かしバター100質量部を20質量部に変更した以外は、製造例1と同様の配合・製法で、小片状のキャラメルBを得た。
【0051】
得られた小片状のキャラメルBの蛋白質含量は3.1質量%、油脂含有量は4質量%、水分含量は6質量%であった。
【0052】
〔製造例3〕小片状のキャラメルCの製造
蛋白質濃縮ホエイパウダー5質量部を添加した以外は製造例1と同様の配合・製法で、小片状のキャラメルCを得た。
【0053】
得られた小片状のキャラメルCの蛋白質含量は7.6質量%、油脂含有量は11質量%、水分含量は6質量%であった。
【0054】
〔製造例4〕小片状のキャラメルDの製造
製造例1におけるカカオパウダー5質量部を、インスタントコーヒー粉末5質量部に変更した以外は、製造例1と同様の配合・製法で、小片状のキャラメルDを得た。
【0055】
得られた小片状のキャラメルDの蛋白質含量は3.0質量%、油脂含有量は10質量%、水分含量は6質量%であった。
【0056】
〔製造例5〕小片状のキャラメルEの製造
製造例1における溶かしバター9質量部を、アーモンドペースト9質量部に変更した以外は、製造例1と同様の配合・製法で、小片状のキャラメルEを得た。
【0057】
得られた小片状のキャラメルEの蛋白質含量は3.2質量%、油脂含有量は9質量%、水分含量は6質量%であった。
【0058】
〔製造例6〕小片状のキャラメルFの製造
製造例1におけるカカオパウダー5質量部を、ストロベリーパウダー5質量部に変更した以外は、製造例1と同様の配合・製法で、小片状のキャラメルFを得た。
【0059】
得られた小片状のキャラメルFの蛋白質含量は3.0質量%、油脂含有量は11質量%、水分含量は6質量%であった。
【0060】
〔実施例1〕
製造例1で得られた小片状のキャラメルAを使用し、以下の配合及び製法により、まず、べースとなるパン生地としてセミハードロール生地を製造し、該セミハードロール生地と上記製造例1で得られた小片状のキャラメルAを使用して本発明のバラエティブレッド生地を製造し、さらに該バラエティブレッド生地を用いて本発明のバラエティブレッドを得た。
【0061】
(配合及び製法)
強力粉70質量部、生イースト2質量部、イーストフード0.1質量部及び水40質量部をミキサーボウルに投入し、フックを使用し、低速で2分、中速で2分混合し、中種生地を得た。捏ね上げ温度は24℃であった。この中種生地を生地ボックスに入れ、温度28℃、相対湿度85%の恒温室で、4時間中種醗酵を行なった。終点温度は29℃であった。この中種醗酵の終了した生地を再びミキサーボウルに投入し、さらに、強力粉20質量部、薄力粉10質量部、食塩1.8質量部、上白糖3質量部及び水22質量部を添加し、低速で3分、中速で3分ミキシングした。ここで、練込油脂(マーガリン)7質量部を投入し、フックを使用し、低速で3分、中速で2分、高速で1分ミキシングを行ない、セミハードロール生地を得た。
【0062】
次いで、得られたセミハードロール生地100質量部に、上記小片状のキャラメルA25質量部を添加し、さらに低速で1分混合し、本発明のバラエティブレッド生地を得た。
【0063】
ここで、フロアタイムを30分とった後、70gに分割・丸目を行ない、次いでベンチタイムを20分とった後、モルダーを使用し、セミハード型成形した。33℃、相対湿度70%で50分ホイロをとった後、クープを入れ、210℃に設定した固定窯に入れ、蒸気を入れ、15分焼成して、本発明のバラエティブレッドを得た。
【0064】
〔実施例2〕
小片状のキャラメルAに代えて、製造例2で得られた小片状のキャラメルBを用いた以外は、実施例1と同様にして、本発明のバラエティブレッド生地を製造し、該バラエティブレッド生地を用いて本発明のバラエティブレッドを得た。
【0065】
〔実施例3〕
小片状のキャラメルAに代えて、製造例3で得られた小片状のキャラメルCを用いた以外は、実施例1と同様にして、本発明のバラエティブレッド生地を製造し、該バラエティブレッド生地を用いて本発明のバラエティブレッドを得た。
【0066】
〔実施例4〕
小片状のキャラメルAに代えて、製造例4で得られた小片状のキャラメルDを用いた以外は、実施例1と同様にして、本発明のバラエティブレッド生地を製造し、該バラエティブレッド生地を用いて本発明のバラエティブレッドを得た。
【0067】
〔実施例5〕
小片状のキャラメルAに代えて、製造例5で得られた小片状のキャラメルEを用いた以外は、実施例1と同様にして、本発明のバラエティブレッド生地を製造し、該バラエティブレッド生地を用いて本発明のバラエティブレッドを得た。
【0068】
〔実施例6〕
小片状のキャラメルAに代えて、製造例6で得られた小片状のキャラメルFを用いた以外は、実施例1と同様にして、本発明のバラエティブレッド生地を製造し、該バラエティブレッド生地を用いて本発明のバラエティブレッドを得た。
上記実施例1〜6で得られたバラエティブレッドを、それぞれ、袋に詰めて25℃で3日静置した後、厚さ15mmにスライスし、試食したところ、何れも、小片状のキャラメルが生地中に練り込まれることなく、呈味部分がセミハードロールのクラム中に点在し、その呈味部分はソフトな食感であり、クラム部分の食感との違和感がなく良好であった。
とりわけ、蛋白質含有量が5〜15質量%の範囲内である小片状のキャラメルを使用して得られた実施例3のバラエティブレッドは、蛋白質含有量が5質量%未満である小片状のキャラメルを使用した実施例1のバラエティブレッドに比べ、呈味部分が練りこまれることなく分散したため、より視認性が高いものであった。
また、油脂含有量が7〜20質量%の範囲内である小片状のキャラメルを使用して得られた実施例1、3〜6のバラエティブレッドは、油脂含有量が7質量%未満である小片状のキャラメルを使用した実施例2のバラエティブレッドに比べ、よりソフトな食感であった。
【0069】
〔実施例7〕
製造例3で得られた小片状のキャラメルCを使用し、以下の配合及び製法により、バラエティブレッド生地を製造し、該バラエティブレッド生地を焼成して本発明のバラエティブレッドを得た。
【0070】
(配合及び製法)
強力粉70質量部、生イースト2質量部、イーストフード0.1質量部及び水40質量部をミキサーボウルに投入し、フックを使用し、低速で2分、中速で2分混合し、中種生地を得た。捏ね上げ温度は24℃であった。この中種生地を生地ボックスに入れ、温度28℃、相対湿度85%の恒温室で、4時間中種醗酵を行なった。終点温度は29℃であった。この中種醗酵の終了した生地を再びミキサーボウルに投入し、さらに、強力粉20質量部、薄力粉10質量部、食塩1.8質量部、上白糖3質量部及び水22質量部を添加し、低速で3分、中速で3分ミキシングした。ここで、練込油脂(マーガリン)7質量部を投入し、フックを使用し、低速で3分、中速で2分、高速で1分ミキシングを行ない、セミハードロール生地を得た。
【0071】
ここで、フロアタイムを30分とった後、60gに分割・丸目を行ない、次いで、ベンチタイムを20分とった後、麺棒を用いてセミハードロール生地を平らに伸ばした。このセミハードロール生地上の全面に、セミハードロール生地100質量部に対し、上記小片状のキャラメルB25質量部をばらまき、セミハードロール生地ごと端から巻き込み、本発明のバラエティブレッド生地を得た。次いで、33℃、相対湿度70%で50分ホイロをとった後、クープを入れ、210℃に設定した固定窯に入れ、蒸気を入れ、15分焼成して本発明のバラエティブレッドを得た。
【0072】
上記実施例7で得られたバラエティブレッドを、袋に詰めて25℃で3日静置した後、厚さ15mmにスライスし、試食したところ、呈味部分がセミハードロールのクラム中に渦巻き状に存在しており、その呈味部分はソフトな食感であり、クラム部分の食感との違和感がなく良好であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
呈味物質で風味付けされた小片状のキャラメルを含有することを特徴とするバラエティブレッド生地。
【請求項2】
上記小片状のキャラメルの蛋白質含量が2〜15質量%であることを特徴とする請求項1記載のバラエティブレッド生地。
【請求項3】
上記小片状のキャラメルの油脂含量が3〜20質量%であることを特徴とする請求項1又は2記載のバラエティブレッド生地。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のバラエティブレッド生地を使用した、バラエティブレッド。
【請求項5】
呈味物質で風味付けされた小片状のキャラメルを、ベースとなるパン生地に分散させる工程、及び/又は、ベースとなるパン生地に巻き込む工程を含むことを特徴とするバラエティブレッド生地の製造方法。