バラストタンク不要船の船型
【課題】タンカーやバルクキャリアーなど積荷を満載したときと空荷のときの喫水差の大きい船舶において、専用バラストタンクを必要としない船型を提供する。
【解決手段】ボッシングの上下位置を略基線BL上に配置し、且つ船尾部および船首部の船底11aを基線からプロペラ直径の略半分下げて構成した船型を特徴としている。その為、空荷状態で航海の際も特に喫水調整無しで積荷満載状態と同様に運行可能となって従来の通常船型並みの推進性能を有している。
【解決手段】ボッシングの上下位置を略基線BL上に配置し、且つ船尾部および船首部の船底11aを基線からプロペラ直径の略半分下げて構成した船型を特徴としている。その為、空荷状態で航海の際も特に喫水調整無しで積荷満載状態と同様に運行可能となって従来の通常船型並みの推進性能を有している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はバラストタンク不要船の船型に関するものである。
【背景技術】
【0002】
船舶における従来のものの船体の側面図を図1、図2、に示し、更に船尾部の側面図を図3に示し、船首部の側面図を図4に示している。また図1におけるV−V、VI−VI、VII−VII、VIII−VIIIおよびIX−IX断面矢視図を図5、図6、図7、図8および図9に夫々示している。更に図2におけるX−X、XI−XI、XII−XIIおよびXIII−XIII断面矢視図を夫々図10、図11、図12および図13に示している。その際、図5、図6、図7、図8、図9、図10、図11、図12および図13は船体中心線CLに対して左右対称に構成されていることから右舷側のみ表示し、左舷側は省略している。更に図5は船尾垂線AP位置の横断面図、図6は船尾垂線APから垂線間長の5%前方位置を表すSS1/2の横断面図、図7は船尾垂線APから垂線間長の10%前方位置を表すSS1の横断面図、図8は船尾垂線APから垂線間長の20%前方位置を表すSS2の横断面図、図9は船尾垂線APから垂線間長の40%前方位置を表すSS4の横断面図、図10は船首垂線FP位置の横断面図、図11は船首垂線FPから垂線間長の5%後方位置を表すSS9 1/2の横断面図、図12は船首垂線FPから垂線間長の10%後方位置を表すSS9位置の横断面図、図12は船首垂線FPから垂線間長の30%後方位置を表すSS7の横断面図を夫々示している。尚、垂線間長は船尾垂線APと船首垂線FPの間の水平長さである。船体1の底部には基線BLに沿って船底2が前端から後端まで連通して構成されている。満載喫水線LWLより下方の船尾端域においては図3に示している通り船体1にスターンフレーム3が連結されており、該スターンフレーム3と船底2の略中間位置にはボッシング5が設けられ、該ボッシング5を回転可能に貫通してプロペラ軸6aが設けられ、その後端にはプロペラ6が設けられ、該プロペラ軸6aの前端は図示省略の主機に回転可能にして連結されている。また船尾垂線AP位置には舵7が設けられている。尚、船体1およびスターンフレーム3の後端には船尾端4が設けられている。また満載喫水線LWLより下方の船首端域においては図4に示している通り、船首垂線FPから前方に突出して船首バルブ8が構成されて船体1に設置されている。尚、満載喫水線LWLより上方においてはステム9が船体1の前端に連結して設けられている。船尾垂線APと船首垂線FPの間の形状については図5、図6、図7、図8、図9に船体1の後半部の横断面形状を示し、図10、図11、図12および図13に船体1の前半部の横断面形状を示す通り形成されている。その際、船底2の上下方向位置は船体1の後端から前端の全域に亘って基線BL上となるように形成されている。
【0003】
一般にタンカーやバルクキャリアーなど積荷を満載したときと空荷のときの喫水差の大きい船舶の場合、積荷が空荷で航海する場合は出航に先立って図示省略の専用バラストタンク内に海水を注入させて適正な喫水に調整され、積荷を満載するときは荷役に先立って専用バラストタンク内に注入された海水を排水する必要がある。
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般にタンカーやバルクキャリアーなど積荷を満載するときと空荷のときの喫水差が大きい船型の場合、積荷が空荷のときは航海に先立って専用のバラストタンクに海水の注水を行って船尾部および船首部の喫水を適正な状態に調整する必要があり、逆に積荷が満載で航海する場合はバラストタンク内の海水を排水する必要があり、これら注排水作業を繰り返し実施する問題がある。また空荷運行状態においてはバラストタンク内に海水を注入した分、船体の排水量が増大して主機の負荷が増大する問題もある。更に近年においては海洋汚染防止の観点から、バラストタンクに注排水する海水を浄化する義務により海水浄化装置を装備することで建造コスト増大となるなど多くの問題点を有している。そこで一対策案として船体横断面形状を逆三角形状にした逆三角形フレームライン船型案などが検討されているが通常の従来船型に比べて大幅に推進性能が劣化する問題点がある。
【問題を解決するための手段】
【0005】
本願は上記に鑑みて提案されたものでボッシングの上下位置を略基線上に配置し、且つ船尾部および船首部の船底を基線からプロペラ直径の略半分下方に構成した船底形状の船型を特徴としている。
【発明の効果】
【0006】
以上詳述した通り本願の船型によれば空荷状態で航海の際も特に喫水調整無しで積荷を満載した状態と同様に運行可能となり、且つ従来の通常船型並みの推進性能を有し、更に上記課題の諸問題点が解消される効果を有しており産業上有効な装置である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図面により本願の第1実施例としての船型について説明する。図14から図25にかけて本願実施例の船型の図面を示している。但し、図14および図15は船体の側面図を示し、図16は船尾部の側面図を示し図17は船首部の側面図を示している。また図14におけるXVIII−XVIII、XIX−XIX、XX−XXよびXXI−XXIの断面矢視図を図18、図19、図20、および図21に夫々示している。更に図15におけるXXII−XXII、XXIII−XXIII、XXIV−XXIVおよびXXV−XXV断面矢視図を夫々図22、図23、図24および図25に示している。その際、図18、図19、図20、図21、図22、図23、図24および図25は船体中心線CLに対して左右対称に構成されていることから右舷側のみ表示し、左舷側は省略している。更に図18は船尾垂線APから垂線間長の5%前方位置を表すSS1/2の横断面図、図19は船尾垂線APから垂線間長の10%前方位置を表すSS1の横断面図、図20は船尾垂線APから垂線間長の20%前方位置を表すSS2の横断面図、図21は船尾垂線APから垂線間長の40%前方位置を表すSS4の横断面図、図22は船首垂線FP位置の横断面図、図23は船首垂線FPから垂線間長の5%後方位置を表すSS9 1/2の横断面図、図24は船首垂線FPから垂線間長の10%後方位置を表すSS9の横断面図、図25は船首垂線FPから垂線間長の30%後方位置を表すSS7の横断面図を夫々示している。図中、従来のものと同一番号、符号は従来のものと同一構成部材を表すことから説明は省略している。船体10の底部には船底11が設けられているが、船尾垂線APから垂線間長の約20%前方位置から後方の船底11aはプロペラ15の直径の略半分基線BLより下方に下げて構成されている。また船首垂線FPから垂線間長の約20%後方位置から前方の船底11fも基線BLよりプロペラ15の直径の略半分下方に下げて構成されている。尚、船尾垂線APから垂線間長の約20%前方位置と船首垂線FPから垂線間長の約20%後方位置の間の船底11は基線BLに沿って構成されている。更にその間の船底11の船体中心線CL上にはスケグ19が設けられている。尚、該スケグ19の下端は船首部の船底11fと船尾部の船底11aより下方に突出しないようにして構成されている。次に満載喫水線LWLより下方の船尾端域においては図16に示している通り船体10にスターンフレーム12が連結されており、該スターンフレーム12と船底11aの略中間位置にはボッシング14が設けられ、該ボッシング14を回転可能に貫通してプロペラ軸15aが設けられ、その後端にはプロペラ15が設けられ、該プロペラ軸15aの前端は図示省略の主機に回転可能にして連結されている。その際プロペラ軸15aが略基線BLの位置に設置するようにしてボシング14は構成され、船底11aは基線BLよりプロペラ15の直径の略半分下方に下げて構成されている。また船尾垂線AP位置には舵16が設けられているが、図16に示している通りプロペラ15の翼の深さ方向位置の下端と略舵16の下端が略一致するようにして構成されている。尚、船体10およびスターンフレーム12の後端には船尾端13が設けられている。また満載喫水線LWLより下方の船首端域においては図17に示している通り、船首垂線FPから前方に突出して船首バルブ17が構成されて船体10に設置されている。そのとき船底11fはプロペラ15の直径の略半分基線BLから下げて構成されている。尚、満載喫水線LWLより上方においてはステム18が船体10の前端に連結して設けられている。次に船尾垂線APと船首垂線FPの間の形状については図18、図19、図20、図21に船体10の後半部の横断面形状を示し、図22、図23、図24、図25に船体10の前半部の横断面形状を示す通り形成されている。その際、船尾垂線APから垂線間長の約20%前方位置から後方間の船底11aは基線BLより略プロペラ15の直径の略半分下方に下げて形成されている。また船首垂線FPから垂線間長の約20%後方位置から前方間においても基線BLよりプロペラ15の直径の略半分下方に下げて船底11fは形成されている。尚、船尾域の船底11aと船首域の船底11fの間の船底11の深さ方向位置は基線BL上に形成して構成されている。
【0008】
本願実施例の船型においては喫水調整用のバラストタンクを設ける必要が無く、積荷が空荷で航海する場合において出航に先立って喫水調整の為に海水をバラストタンクに注水する必要も無く、積荷が満載で航海するときにも荷役に先立ちバラストタンク内の海水を排水する必要も無くなり所謂注排水に要する問題点が解消される。また海水のバラストタンクへの注排水による海洋生物の移動拡散も防止できる。更に本願の船型と在来船型において同一搭載容量を有する14000トンクラスのタンカー船型で推進性能を模型船による水槽試験で調査を行った結果によれば図26に示す通り、積荷を満載した状態で同一速力での主機出力は本願の船型が僅かに高めとなる程度で大差の無い性能が示されている。このようにバラストタンクに注排水する労力、時間、費用などの経費節減効果に加えて燃料費などの運航経費などの低減効果がある。また船舶へのバラストタンク設備や海水注排水設備および海水浄化処理装置の不要によるコストも節減されて経済的な面の多くの効果がある。更にバラスト水を介する海洋生物の移動拡散による海洋生態系の崩壊を防止することで海洋汚染防止面での効果もある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】 船体後半部の側面図である。
【図2】 船体前半部の側面図である。
【図3】 船尾部の側面図である。
【図4】 船首部の側面図である。
【図5】 図1におけるV−V断面矢視図である。
【図6】 図1におけるVI−VI矢視図である。
【図7】 図1におけるVII−VII断面矢視図である。
【図8】 図1におけるVIII−VIII断面矢視図である。
【図9】 図1におけるIX−IX断面矢視図である。
【図10】 図2におけるX−X矢視図である。
【図11】 図2におけるXI−XI断面矢視図である。
【図12】 図2におけるXII−XII断面矢視図である。
【図13】 図2におけるXIII−XIII断面矢視図である。
【図14】 船体後半部の側面図である。
【図15】 船体前半部の側面図である。
【図16】 船尾部の側面図である。
【図17】 船首部の側面図である。
【図18】 図14におけるXVIII−XVIII断面矢視図である。
【図19】 図14におけるXIX−XIX断面矢視図である。
【図20】 図14におけるXX−XX断面矢視図である。
【図21】 図14におけるXXI−XXI断面矢視図である。
【図22】 図15におけるXXII−XXII断面矢視図である。
【図23】 図15におけるXXIII−XXIII断面矢視図である。
【図24】 図15におけるXXIV−XXIV断面矢視図である。
【図25】 図15におけるXXV−XXV断面矢視図である。
【図26】 推進性能の比較図である。
【符号の説明】
【0010】
1 船体
2 船底
3 スターンフレーム
4 船尾端
5 ボッシング
6 プロペラ
6a プロペラ軸
7 舵
8 船首バルブ
9 船首材
AP 船尾垂線
FP 船首垂線
BL 基線
CL 船体中心線
LWL 満載喫水線
10 船体
11 船底
11a 船底
11f 船底
12 スターンフレーム
13 船尾端
14 ボッシング
15 プロペラ
15a プロペラ軸
16 舵
17 船首バルブ
18 船首材
19 スケグ
【技術分野】
【0001】
本発明はバラストタンク不要船の船型に関するものである。
【背景技術】
【0002】
船舶における従来のものの船体の側面図を図1、図2、に示し、更に船尾部の側面図を図3に示し、船首部の側面図を図4に示している。また図1におけるV−V、VI−VI、VII−VII、VIII−VIIIおよびIX−IX断面矢視図を図5、図6、図7、図8および図9に夫々示している。更に図2におけるX−X、XI−XI、XII−XIIおよびXIII−XIII断面矢視図を夫々図10、図11、図12および図13に示している。その際、図5、図6、図7、図8、図9、図10、図11、図12および図13は船体中心線CLに対して左右対称に構成されていることから右舷側のみ表示し、左舷側は省略している。更に図5は船尾垂線AP位置の横断面図、図6は船尾垂線APから垂線間長の5%前方位置を表すSS1/2の横断面図、図7は船尾垂線APから垂線間長の10%前方位置を表すSS1の横断面図、図8は船尾垂線APから垂線間長の20%前方位置を表すSS2の横断面図、図9は船尾垂線APから垂線間長の40%前方位置を表すSS4の横断面図、図10は船首垂線FP位置の横断面図、図11は船首垂線FPから垂線間長の5%後方位置を表すSS9 1/2の横断面図、図12は船首垂線FPから垂線間長の10%後方位置を表すSS9位置の横断面図、図12は船首垂線FPから垂線間長の30%後方位置を表すSS7の横断面図を夫々示している。尚、垂線間長は船尾垂線APと船首垂線FPの間の水平長さである。船体1の底部には基線BLに沿って船底2が前端から後端まで連通して構成されている。満載喫水線LWLより下方の船尾端域においては図3に示している通り船体1にスターンフレーム3が連結されており、該スターンフレーム3と船底2の略中間位置にはボッシング5が設けられ、該ボッシング5を回転可能に貫通してプロペラ軸6aが設けられ、その後端にはプロペラ6が設けられ、該プロペラ軸6aの前端は図示省略の主機に回転可能にして連結されている。また船尾垂線AP位置には舵7が設けられている。尚、船体1およびスターンフレーム3の後端には船尾端4が設けられている。また満載喫水線LWLより下方の船首端域においては図4に示している通り、船首垂線FPから前方に突出して船首バルブ8が構成されて船体1に設置されている。尚、満載喫水線LWLより上方においてはステム9が船体1の前端に連結して設けられている。船尾垂線APと船首垂線FPの間の形状については図5、図6、図7、図8、図9に船体1の後半部の横断面形状を示し、図10、図11、図12および図13に船体1の前半部の横断面形状を示す通り形成されている。その際、船底2の上下方向位置は船体1の後端から前端の全域に亘って基線BL上となるように形成されている。
【0003】
一般にタンカーやバルクキャリアーなど積荷を満載したときと空荷のときの喫水差の大きい船舶の場合、積荷が空荷で航海する場合は出航に先立って図示省略の専用バラストタンク内に海水を注入させて適正な喫水に調整され、積荷を満載するときは荷役に先立って専用バラストタンク内に注入された海水を排水する必要がある。
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般にタンカーやバルクキャリアーなど積荷を満載するときと空荷のときの喫水差が大きい船型の場合、積荷が空荷のときは航海に先立って専用のバラストタンクに海水の注水を行って船尾部および船首部の喫水を適正な状態に調整する必要があり、逆に積荷が満載で航海する場合はバラストタンク内の海水を排水する必要があり、これら注排水作業を繰り返し実施する問題がある。また空荷運行状態においてはバラストタンク内に海水を注入した分、船体の排水量が増大して主機の負荷が増大する問題もある。更に近年においては海洋汚染防止の観点から、バラストタンクに注排水する海水を浄化する義務により海水浄化装置を装備することで建造コスト増大となるなど多くの問題点を有している。そこで一対策案として船体横断面形状を逆三角形状にした逆三角形フレームライン船型案などが検討されているが通常の従来船型に比べて大幅に推進性能が劣化する問題点がある。
【問題を解決するための手段】
【0005】
本願は上記に鑑みて提案されたものでボッシングの上下位置を略基線上に配置し、且つ船尾部および船首部の船底を基線からプロペラ直径の略半分下方に構成した船底形状の船型を特徴としている。
【発明の効果】
【0006】
以上詳述した通り本願の船型によれば空荷状態で航海の際も特に喫水調整無しで積荷を満載した状態と同様に運行可能となり、且つ従来の通常船型並みの推進性能を有し、更に上記課題の諸問題点が解消される効果を有しており産業上有効な装置である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図面により本願の第1実施例としての船型について説明する。図14から図25にかけて本願実施例の船型の図面を示している。但し、図14および図15は船体の側面図を示し、図16は船尾部の側面図を示し図17は船首部の側面図を示している。また図14におけるXVIII−XVIII、XIX−XIX、XX−XXよびXXI−XXIの断面矢視図を図18、図19、図20、および図21に夫々示している。更に図15におけるXXII−XXII、XXIII−XXIII、XXIV−XXIVおよびXXV−XXV断面矢視図を夫々図22、図23、図24および図25に示している。その際、図18、図19、図20、図21、図22、図23、図24および図25は船体中心線CLに対して左右対称に構成されていることから右舷側のみ表示し、左舷側は省略している。更に図18は船尾垂線APから垂線間長の5%前方位置を表すSS1/2の横断面図、図19は船尾垂線APから垂線間長の10%前方位置を表すSS1の横断面図、図20は船尾垂線APから垂線間長の20%前方位置を表すSS2の横断面図、図21は船尾垂線APから垂線間長の40%前方位置を表すSS4の横断面図、図22は船首垂線FP位置の横断面図、図23は船首垂線FPから垂線間長の5%後方位置を表すSS9 1/2の横断面図、図24は船首垂線FPから垂線間長の10%後方位置を表すSS9の横断面図、図25は船首垂線FPから垂線間長の30%後方位置を表すSS7の横断面図を夫々示している。図中、従来のものと同一番号、符号は従来のものと同一構成部材を表すことから説明は省略している。船体10の底部には船底11が設けられているが、船尾垂線APから垂線間長の約20%前方位置から後方の船底11aはプロペラ15の直径の略半分基線BLより下方に下げて構成されている。また船首垂線FPから垂線間長の約20%後方位置から前方の船底11fも基線BLよりプロペラ15の直径の略半分下方に下げて構成されている。尚、船尾垂線APから垂線間長の約20%前方位置と船首垂線FPから垂線間長の約20%後方位置の間の船底11は基線BLに沿って構成されている。更にその間の船底11の船体中心線CL上にはスケグ19が設けられている。尚、該スケグ19の下端は船首部の船底11fと船尾部の船底11aより下方に突出しないようにして構成されている。次に満載喫水線LWLより下方の船尾端域においては図16に示している通り船体10にスターンフレーム12が連結されており、該スターンフレーム12と船底11aの略中間位置にはボッシング14が設けられ、該ボッシング14を回転可能に貫通してプロペラ軸15aが設けられ、その後端にはプロペラ15が設けられ、該プロペラ軸15aの前端は図示省略の主機に回転可能にして連結されている。その際プロペラ軸15aが略基線BLの位置に設置するようにしてボシング14は構成され、船底11aは基線BLよりプロペラ15の直径の略半分下方に下げて構成されている。また船尾垂線AP位置には舵16が設けられているが、図16に示している通りプロペラ15の翼の深さ方向位置の下端と略舵16の下端が略一致するようにして構成されている。尚、船体10およびスターンフレーム12の後端には船尾端13が設けられている。また満載喫水線LWLより下方の船首端域においては図17に示している通り、船首垂線FPから前方に突出して船首バルブ17が構成されて船体10に設置されている。そのとき船底11fはプロペラ15の直径の略半分基線BLから下げて構成されている。尚、満載喫水線LWLより上方においてはステム18が船体10の前端に連結して設けられている。次に船尾垂線APと船首垂線FPの間の形状については図18、図19、図20、図21に船体10の後半部の横断面形状を示し、図22、図23、図24、図25に船体10の前半部の横断面形状を示す通り形成されている。その際、船尾垂線APから垂線間長の約20%前方位置から後方間の船底11aは基線BLより略プロペラ15の直径の略半分下方に下げて形成されている。また船首垂線FPから垂線間長の約20%後方位置から前方間においても基線BLよりプロペラ15の直径の略半分下方に下げて船底11fは形成されている。尚、船尾域の船底11aと船首域の船底11fの間の船底11の深さ方向位置は基線BL上に形成して構成されている。
【0008】
本願実施例の船型においては喫水調整用のバラストタンクを設ける必要が無く、積荷が空荷で航海する場合において出航に先立って喫水調整の為に海水をバラストタンクに注水する必要も無く、積荷が満載で航海するときにも荷役に先立ちバラストタンク内の海水を排水する必要も無くなり所謂注排水に要する問題点が解消される。また海水のバラストタンクへの注排水による海洋生物の移動拡散も防止できる。更に本願の船型と在来船型において同一搭載容量を有する14000トンクラスのタンカー船型で推進性能を模型船による水槽試験で調査を行った結果によれば図26に示す通り、積荷を満載した状態で同一速力での主機出力は本願の船型が僅かに高めとなる程度で大差の無い性能が示されている。このようにバラストタンクに注排水する労力、時間、費用などの経費節減効果に加えて燃料費などの運航経費などの低減効果がある。また船舶へのバラストタンク設備や海水注排水設備および海水浄化処理装置の不要によるコストも節減されて経済的な面の多くの効果がある。更にバラスト水を介する海洋生物の移動拡散による海洋生態系の崩壊を防止することで海洋汚染防止面での効果もある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】 船体後半部の側面図である。
【図2】 船体前半部の側面図である。
【図3】 船尾部の側面図である。
【図4】 船首部の側面図である。
【図5】 図1におけるV−V断面矢視図である。
【図6】 図1におけるVI−VI矢視図である。
【図7】 図1におけるVII−VII断面矢視図である。
【図8】 図1におけるVIII−VIII断面矢視図である。
【図9】 図1におけるIX−IX断面矢視図である。
【図10】 図2におけるX−X矢視図である。
【図11】 図2におけるXI−XI断面矢視図である。
【図12】 図2におけるXII−XII断面矢視図である。
【図13】 図2におけるXIII−XIII断面矢視図である。
【図14】 船体後半部の側面図である。
【図15】 船体前半部の側面図である。
【図16】 船尾部の側面図である。
【図17】 船首部の側面図である。
【図18】 図14におけるXVIII−XVIII断面矢視図である。
【図19】 図14におけるXIX−XIX断面矢視図である。
【図20】 図14におけるXX−XX断面矢視図である。
【図21】 図14におけるXXI−XXI断面矢視図である。
【図22】 図15におけるXXII−XXII断面矢視図である。
【図23】 図15におけるXXIII−XXIII断面矢視図である。
【図24】 図15におけるXXIV−XXIV断面矢視図である。
【図25】 図15におけるXXV−XXV断面矢視図である。
【図26】 推進性能の比較図である。
【符号の説明】
【0010】
1 船体
2 船底
3 スターンフレーム
4 船尾端
5 ボッシング
6 プロペラ
6a プロペラ軸
7 舵
8 船首バルブ
9 船首材
AP 船尾垂線
FP 船首垂線
BL 基線
CL 船体中心線
LWL 満載喫水線
10 船体
11 船底
11a 船底
11f 船底
12 スターンフレーム
13 船尾端
14 ボッシング
15 プロペラ
15a プロペラ軸
16 舵
17 船首バルブ
18 船首材
19 スケグ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロペラ軸を回転可能に貫通させるボッシングの中心を略基線上に配置し且つ船尾垂線から垂線間長の略2割前方位置と船尾船底の後端までの間および船首垂線から垂線間長の略2割後方位置と船首船底の前端までの間における船底の上下方向位置を基線よりプロペラ直径の略半分下方に構成した船型を特徴とするバラストタンク不要船の船型。
【請求項1】
プロペラ軸を回転可能に貫通させるボッシングの中心を略基線上に配置し且つ船尾垂線から垂線間長の略2割前方位置と船尾船底の後端までの間および船首垂線から垂線間長の略2割後方位置と船首船底の前端までの間における船底の上下方向位置を基線よりプロペラ直径の略半分下方に構成した船型を特徴とするバラストタンク不要船の船型。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【公開番号】特開2012−62036(P2012−62036A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−227937(P2010−227937)
【出願日】平成22年9月17日(2010.9.17)
【出願人】(503279828)浅川造船株式会社 (3)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月17日(2010.9.17)
【出願人】(503279828)浅川造船株式会社 (3)
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