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バラスト水の検査方法
説明

バラスト水の検査方法

【課題】バラスト水に含まれるLサイズ生物及びSサイズ生物の各個体数を短時間で精度良く検査できるバラスト水の検査方法を提供する。
【解決手段】バラスト水に含まれる微生物の検査方法であって、最小サイズが50μm以上の微生物については、スキャナにより取得した画像データに基づいて個体数を検査し、最小サイズが10μm以上50μm未満の微生物については、スキャナにより取得した画像データに基づく以外の方法により個体数を検査することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バラスト水の検査方法に関し、特にバラスト水に含まれるプランクトン等の微生物の検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
荷物を積載していない船舶は、当該船舶を安定させるためにバラスト水を搭載して航行し、荷物を積載する海域において前記バラスト水を排出する。
バラスト水は、通常、搭載する海域と異なる海域に排出されるため、該バラスト水に含まれるプランクトンや細菌等の微生物を本来の生息地以外の海域に運び、生態系を破壊する等の問題を引き起こす虞がある。
【0003】
このような問題に対処するため、バラスト水の規制に関する国際的なルールが策定され、「船舶のバラスト水および沈殿物の規制および管理のための国際条約(バラスト水管理条約)」が採択されている。
【0004】
上記バラスト水管理条約に関連する「バラスト水サンプリングに関するガイドライン(G2)」は、「バラスト水排出基準(D−2)」において、船舶から排出されるバラスト水に含まれる微生物の許容個体数を、例えば、最小サイズが50μm以上の微生物(以下、「Lサイズ生物」という。)については10個/m以下、最小サイズが10μm以上50μm未満の微生物(以下、「Sサイズ生物」という。)については10個/mL以下と、前記微生物の最小サイズにより区分して規定している。
【0005】
また、上記ガイドライン(G2)は、上記排出基準(D−2)における微生物の「最小サイズ」について、「刺、鞭毛あるいは触覚を除く生体の最小寸法を意味するものである」旨定義している。
そのため、近年、上記排出基準(D−2)を満たすよう、バラスト水の処理装置の開発が盛んに行われている。
【0006】
ところで、従来、バラスト水に含まれる微生物を、画像データを利用して検査する方法が提案されている(特許文献1参照。)。
【0007】
特許文献1に記載された検査方法は、蛍光顕微鏡を用いて微生物のデジタル画像を取得し、該デジタル画像を二値化して得られた二値画像において画素の連結領域を1微生物と認識し、該微生物の面積を算出し、該算出された面積と等しい面積を有し短径と長径が1:1.1〜1:8の任意の比を有する楕円形の短径を算出し、該算出した短径を前記微生物の最小サイズであるとして、前記認識した微生物を、上記バラスト水排出基準(D−2)における微生物の最小サイズ毎に区分して計数するものである。
【0008】
ところが、上記特許文献1に記載された検査方法は、微生物の形状を、当該微生物と同面積の楕円形であると仮定し、その短径を該微生物の最小サイズとするものであり、当該楕円形の短径は、上記ガイドライン(G2)における「最小サイズ」の定義とは明らかに異なるものである。
また、微生物には様々な形状を有するものがあるが、上記特許文献1に記載された方法は、微生物の形状を単に楕円形と仮定するものであり、実測とのバラツキが大きく、信頼性に乏しいものである。
【0009】
さらに、上記特許文献1に記載された検査方法において使用される蛍光顕微鏡は高価であり、操作も煩雑なので、日常的な簡易検査には不向きである。
【0010】
そこで、本発明者らは、蛍光スキャナにより取得した画像データを利用して、バラスト水に含まれる微生物を精度良く検査できる方法を開発した(特許文献2参照。)。
【0011】
特許文献2に記載された検査方法は、微生物の二次元形状が二次元空間である所定長さのスリットを通過するか否かにより、当該微生物の最小サイズが所定サイズ以上か否かを検査するものである。
【0012】
当該特許文献2に記載された検査方法によれば、バラスト水に含まれる微生物を、上記バラスト水排出基準(D−2)における微生物の最小サイズ毎に精度良く区分して計数することができる。
また、当該特許文献2に記載された検査方法は、蛍光スキャナにより取得した画像データを利用するので、日常的な簡易検査に適する。
【0013】
しかしながら、当該検査方法は、Lサイズ生物とSサイズ生物のそれぞれの検体について、ろ過したフィルターを蛍光スキャナにより走査し、画像データを取得する必要があり、検査に時間を要する。
また、Sサイズ生物の撮像には、蛍光スキャナに高い解像度が要求され、画像データの取得にも時間を要する。
さらに、植物プランクトンには個体が連なって群体を形成するものがあるが、該植物プランクトンは、大多数がSサイズ生物に区分されるものであり、個体間の隙間が10μm以下である場合が多く、蛍光スキャナにより取得される画像データから前記群体を形成する植物プランクトンの各個体を認識するのは困難である。
【0014】
一方、国際海事機関(IMO)の会議において、バラスト水に含まれるSサイズ生物を、パルス変調を用いたクロロフィル蛍光測定を利用して検査する方法が提案されている(非特許文献1参照。)。
当該検査方法は、Sサイズ生物に区分される微生物の大多数を占める植物プランクトンがクロロフィルを持つ点に着目したものであり、パルス変調蛍光測定器を用いて、バラスト水のサンプルに含まれるクロロフィルの最大量子収率を測定し、該測定値等と予め設定された植物プランクトンの個体数との関係に基づいて、前記サンプルに含まれる植物プランクトンの個体数を間接的に検査するものである。
【0015】
当該検査方法によれば、市販のパルス変調クロロフィル蛍光測定器(例えば、ドイツWalz社製のパルス変調クロロフィル蛍光測定器(Water−PAM))を利用して、バラスト水のサンプル中に生息するSサイズ生物の個体数を精度良く簡単に検査することができる。
しかしながら、当該検査方法は、Lサイズ生物に区分される微生物の大多数を占める動物プランクトンには対応できない問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2010−63403号公報
【特許文献2】特願2010−277543号
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】BLG/15/5/4 ‘DEVELOPMENT OF GUIDELINES AND OTHER DOCUMENTS FORUNIFORM IMPLEMENTATION OF THE 2004 BWM CONVENTION’, Annex, Paragraph 9.14〜9.16,9.25 , [online];INTERNATIONAL MARITIME ORGANIZATION, [retrieved on 21 December 2010].Retrieved from the Internet: <URL:http://docs.imo.org/Category.aspx?cid=53>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
そこで、本発明は、バラスト水に含まれるLサイズ生物(最小サイズが50μm以上の微生物)及びSサイズ生物(最小サイズが10μm以上50μm未満の微生物)の各個体数を、短時間で精度良く検査できるバラスト水の検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記目的を達成するため、本発明のバラスト水の検査方法は、バラスト水に含まれる微生物の検査方法であって、最小サイズが50μm以上の微生物については、スキャナにより取得した画像データに基づいて個体数を検査し、最小サイズが10μm以上50μm未満の微生物については、スキャナにより取得した画像データに基づく以外の方法により個体数を検査することを特徴とする。
【0020】
ここで、本発明において、微生物の「最小サイズ」は、「刺、鞭毛あるいは触覚を除く生体の最小寸法を意味するものである」旨の上記「バラスト水サンプリングに関するガイドライン(G2)」における定義に従うものである。
【0021】
本発明のバラスト水の検査方法は、前記最小サイズが50μm以上の微生物については、微生物の画像データをスキャナにより取得し、該画像データを二値化処理し、該二値化処理した二値画像に基づいて前記微生物に対応する画素の連結領域を特定し、該画素の連結領域において輪郭を構成する画素を順次特定し、該輪郭を構成する画素の一つを起点として、該輪郭を構成する画素に沿って二点を時計回り又は反時計回りに移動させるに際し、第一の点は第一の方向に移動させ、第二の点は前記第一の方向と反対の第二の方向に移動させるとともに前記第一の点との直線距離が50μm以上となる場合にのみ前記第一の方向に移動させ、前記第一の点が前記輪郭を構成する画素を一巡し前記起点となる画素に戻るまでの間に、前記輪郭を構成するすべての画素を前記第一の点と第二の点の少なくともいずれかが通過した段階で該第一の点と第二の点とが一致していなければ、前記微生物の最小サイズが50μm以上と判断し、最小サイズが50μm以上と判断される前記微生物に対応する画素の連結領域を計数することで、前記個体数を検査することが好ましい。
【0022】
本発明のバラスト水の検査方法は、前記第二の点が、前記第一の点を第一の方向に一画素移動させる毎に、前記第一の点との直線距離が50μm未満の範囲で第二の方向に連続して移動させ、又は前記第一の点との直線距離が50μm未満となるまで第一の方向に連続して移動させることが好ましい。
【0023】
本発明のバラスト水の検査方法は、植物プランクトンをもって、前記最小サイズが10μm以上50μm未満の微生物とすることが好ましい。
【0024】
本発明のバラスト水の検査方法は、パルス変調を用いたクロロフィル蛍光測定により、前記植物プランクトンの個体数を検査することが好ましい。
【0025】
本発明のバラスト水の検査方法は、前記バラスト水のサンプルにパルス変調された測定光を照射し、該測定光が照射されている前記バラスト水のサンプルにパルス光を照射し、前記測定光を照射した際に前記サンプルに含まれるクロロフィルが放出する最低限の蛍光強度Foを測定し、前記パルス光を照射した際に前記サンプルに含まれるクロロフィルが放出する最大限の蛍光強度Fmを測定し、前記最低限の蛍光強度Fo及び最大限の蛍光強度Fmの測定値から前記サンプルに含まれるクロロフィルの最大量子収率Fv/Fm=(Fm−Fo)/Fmを算出し、前記最低限の蛍光強度Fo及び前記最大量子収率Fv/Fmと、予め設定された植物プランクトンの個体数との関係に基づいて、前記バラスト水のサンプルに含まれる植物プランクトンの個体数を間接的に検査することが好ましい。
【0026】
本発明のバラスト水の検査方法は、前記スキャナが、蛍光スキャナであることが好ましい。
【発明の効果】
【0027】
本発明におけるバラスト水の検査方法は、最小サイズが50μm以上の微生物(Lサイズ生物)については、スキャナにより取得した画像データに基づいて個体数を検査し、最小サイズが10μm以上50μm未満の微生物(Sサイズ生物)については、スキャナにより取得した画像データに基づく以外の方法により個体数を検査するので、Lサイズ生物については、スキャナを用いた簡易な方法で検査を行い、Sサイズ生物については、他の適当な方法により前記Lサイズ生物の検査と並行して検査を行うことができるため、バラスト水に含まれるLサイズ生物及びSサイズ生物の個体数を短時間で精度良く検査することができる。
【0028】
本発明におけるバラスト水の検査方法は、前記最小サイズが50μm以上の微生物については、微生物の画像データをスキャナにより取得し、該画像データを二値化処理し、該二値化処理した二値画像に基づいて前記微生物に対応する画素の連結領域を特定し、該画素の連結領域において輪郭を構成する画素を順次特定し、該輪郭を構成する画素の一つを起点として、該輪郭を構成する画素に沿って二点を時計回り又は反時計回りに移動させるに際し、第一の点は第一の方向に移動させ、第二の点は前記第一の方向と反対の第二の方向に移動させるとともに前記第一の点との直線距離が50μm以上となる場合にのみ前記第一の方向に移動させ、前記第一の点が前記輪郭を構成する画素を一巡し前記起点となる画素に戻るまでの間に、前記輪郭を構成するすべての画素を前記第一の点と第二の点の少なくともいずれかが通過した段階で該第一の点と第二の点とが一致していなければ、前記微生物の最小サイズが50μm以上と判断し、最小サイズが50μm以上と判断される前記微生物に対応する画素の連結領域を計数することで、前記個体数を検査することとすれば、Lサイズ生物の個体数を画像処理技術により精度良く簡単に検査することができる。
【0029】
本発明におけるバラスト水の検査方法は、植物プランクトンをもって、前記最小サイズが10μm以上50μm未満の微生物とすれば、Sサイズ生物の個体数を簡単に検査することができる。
【0030】
本発明におけるバラスト水の検査方法は、パルス変調を用いたクロロフィル蛍光測定により、前記植物プランクトンの個体数を検査することとすれば、市販のパルス変調クロロフィル蛍光測定器を利用して、サンプル中に生息するSサイズ生物の個体数を精度良く簡単に検査することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】蛍光顕微鏡によるプランクトンの画像例。
【図2】Lサイズ生物の検査方法のフロー図。
【図3】二値画像のイメージ図。
【図4】ラスタスキャンの説明図。
【図5】輪郭追跡手法の説明図。
【図6】図3において輪郭追跡順に輪郭番号を付した図。
【図7】Lサイズ生物判断のフローチャート。
【図8】Lサイズ生物の判断例1についての説明図1。
【図9】Lサイズ生物の判断例1についての説明図2。
【図10】Lサイズ生物の判断例1についての説明図3。
【図11】Lサイズ生物の判断例1についての説明図4。
【図12】Lサイズ生物の判断例1についての説明図5。
【図13】二値画像のイメージ図。
【図14】Lサイズ生物の判断例2についての説明図1。
【図15】Lサイズ生物の判断例2についての説明図2。
【図16】Lサイズ生物の判断例2についての説明図3。
【図17】Lサイズ生物の判断例2についての説明図4。
【図18】Lサイズ生物の判断例2についての説明図5。
【図19】パルス変調を用いたクロロフィル蛍光測定の原理を示す説明図。
【図20】クロロフィルに照射する光と蛍光強度の関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の実施の形態において検査対象となる微生物の蛍光顕微鏡画像の一例を示す。
図1(a)はフジツボの幼生(動物プランクトン)、(b)はカイアシ類(動物プランクトン)、(c)及び(d)はケイ藻類(植物プランクトン)の画像を示す。
各画像において、矢印で示す部分が、前記バラスト水管理条約のガイドライン(G2)で定義される微生物の「最小サイズ」に対応する。
【0033】
<Lサイズ生物(最小サイズが50μm以上の微生物)の検査>
本実施の形態におけるLサイズ生物の検査において、微生物の「最小サイズ」は、画像中の微生物の平面形状が通過することのできるスリット長さの最小サイズであると仮定する。
【0034】
そして、本実施の形態におけるLサイズ生物の検査方法は、画像中における微生物に対応する画素の連結領域が、長さ50μmのスリットを通過できないことにより、前記微生物の最小サイズが50μm以上であると判断し、最小サイズが50μm以上と判断された前記微生物に対応する画素の連結領域を計数することで、当該Lサイズ生物の個体数を検査するものである。
【0035】
図2は、Lサイズ生物の検査方法のフローを示す。
本実施の形態において、Lサイズ生物の検査は、撮像工程(S1)、二値化処理工程(S2)、ラベリング工程(S3)、輪郭追跡工程(S4)、サイズ判断工程(S5)、計数工程(S6)の各工程を経て行われる。
【0036】
(1)撮像工程:S1
本工程では、バラスト水の検体をフィルターでろ過し、該フィルター上の微生物の画像をスキャナで取得する。
ここで、バラスト水中の微生物を予め蛍光染色剤、好ましくはカルセインAMで染色し、前記フィルター上の微生物の画像を蛍光スキャナで取得すれば、生細胞をもつ微生物を容易に判別することができる。
【0037】
(2)二値化処理工程:S2
本工程では、前記撮像工程(S1)で取得した画像データの二値化処理を行い、二値画像を取得する。
ここで、図3は前記二値化処理により取得される二値画像のイメージを示す。図3における白又は黒の複数の四角は、それぞれ画素を示す。なお、図3において、微生物に対応する画素は白で示される。
【0038】
(3)ラベリング工程:S3
本工程では、前記二値化処理工程(S2)で取得した二値画像の中から、ラスタスキャンなどの手法により微生物に対応する画素の領域を特定し、各々の画素の領域が区別できるようにラベリングを行う。
ここで、前記画素の領域は、画素値1の一つの画素が独立した一画素領域、又は画素値1の複数の画素が連結した連結領域のことである。
図3に示す例は、微生物に対応する画素の連結領域を示すものである。
【0039】
(4)輪郭追跡工程:S4
本工程では、前記ラベリング工程(S3)で特定された画素の連結領域について、輪郭を構成する画素(輪郭画素)の一つを起点とし、該連結領域の輪郭を画素単位で追跡する。ここで、本実施の形態において輪郭とは、前記画素の連結領域の外輪郭を指す。
この時、前記起点となる第一輪郭画素は、例えばラスタスキャンにより特定することができる。また、前記輪郭の追跡は、連結画素の境界を求める4近傍追跡や8近傍追跡などの公知の手法により行うことができる。
【0040】
図4は、図3に示す二値画像においてラスタスキャンにより第一輪郭画素を探索する例を示す。ラスタスキャンは、画像の左上を起点とし、左端から右に画素を調べ、右端に到達した後、行を1つ下がって左端から右に画素を調べることを順次繰り返す走査手法である。
また、図5(a)は前記4近傍追跡により輪郭を追跡する手法を、図5(b)は前記8近傍追跡により輪郭を追跡する手法をそれぞれ示す。図5(a),(b)に示す各近傍追跡は、それぞれ探索した輪郭画素Oを中心として、追跡方向から時計回りに図示する番号順に次の輪郭画素を探索する手法である。
【0041】
本実施の形態では、画素の連結領域において、第一輪郭画素をラスタスキャンにより特定し、該第一輪郭画素から8近傍追跡により時計回りに順次輪郭画素を探索する。そして、当該輪郭の追跡は、探索した画素が前記第一輪郭画素であり、かつ次に探索する画素が探索済みの画素である場合に終了する。
図6は、図3に示す二値画像において、第一輪郭画素を輪郭No.(1)とし、輪郭画素の追跡順に輪郭番号(輪郭No.(2)〜No.(16))を付したものである。
【0042】
(5)サイズ判断工程:S5
本工程では、前記輪郭追跡工程(S4)で輪郭画素が特定された連結領域について、該連結領域に対応する微生物の最小サイズが50μm以上か否かを判断する。
本実施の形態では、図6に示す二値画像において、前記輪郭No.(1)を起点画素Aとし、当該起点画素Aから二点B,Cを前記輪郭番号順に輪郭画素に沿って移動させる。
【0043】
第一の点Bについては、輪郭No.(1)→No.(2)→No.(3)→・・・と時計回りに第一の方向に移動させる。また、第二の点Cについては、輪郭No.(1)→No.(16)→No.(15)→・・・と反時計回りに第二の方向に移動させる。
ここで、第二の点Cについては、前記第一の点Bを次の輪郭番号の画素に移動させる毎に、前記第一の点Bとの距離が前記50μm未満の範囲で、前記輪郭番号順に前記第二の方向に連続して移動させる。また、前記第一の点Bとの距離が前記50μm以上となる場合には、当該距離が前記50μm未満となるまで、前記輪郭番号順に前記第一の方向に連続して移動させる。
【0044】
そして、前記第一の点Bが前記輪郭番号順に輪郭画素を一巡し輪郭No.(1)の起点画素Aに戻るまでの間に、前記第一の点Bと第二の点Cとが同じ輪郭番号の画素で交差した場合、即ち、前記輪郭画素のすべてを前記第一の点Bと第二の点Cの少なくともいずれかが通過した段階で該第一の点Bと第二の点Cとが一致した場合、前記連結領域は50μmのスリットを通過することができるとして、当該連結領域に対応する微生物の最小サイズが50μm未満であると判断する。
【0045】
一方、前記第一の点Bが、前記第二の点Cと同じ輪郭番号の画素で一致することなく前記輪郭画素を一巡し、輪郭No.(1)の起点画素Aに戻れば、前記連結領域は長さ50μmのスリットを通過することができないとして、前記連結領域に対応する微生物の最小サイズが50μm以上であると判断する。
【0046】
(6)計数工程:S6
本工程では、前記サイズ判断工程(S5)で微生物の最小サイズが50μm以上であると判断された前記画素の連結領域を順次計数する。本工程で計数された前記画素の連結領域の数が、本実施の形態において検査するLサイズ生物の個体数となる。
【0047】
以下、本実施の形態における微生物の「最小サイズ」の判断について、例に基づいて説明する。
【0048】
(微生物の最小サイズを50μm未満と判断する例)
図7は、画像処理を用いて微生物の最小サイズを判断するためのフローチャートを示す。また、図8〜12は、図7に示すフローチャートを図3に示す二値画像へ適用する例を示す。図8〜図12の各図とも(a)は二値画像のイメージを、(b)は図6に示す輪郭番号に基づいて作成される輪郭リストを示す。
なお、本例において、B点とC点との間の距離(BC点間距離)は、各点が位置する画素中心間の距離とする。また、本例において、50μmは2.5画素とする。
【0049】
まず、図8(a)に示すように、輪郭No.(1)を起点画素Aと決定する。この時、B点及びC点は、ともに起点画素A上に位置するため、図8(b)の輪郭リストに示すように、BC点間距離は0.0画素である。
【0050】
次に、前記B点及びC点を前記輪郭番号順に移動させる。まず、図9に示すように、B点を輪郭No.(1)→No.(2)と時計回りに第一の方向に一画素移動させる。この場合、図9(b)の輪郭リストに示すように、BC点間距離は1.0画素であるから50μm未満と判断し、次にC点を輪郭No.(1)→No.(16)と反時計回りに第二の方向に一画素移動させる。そして、この場合、図10(b)の輪郭リストに示すように、BC点間距離は1.4画素であるから50μm未満と判断し、続けてC点を輪郭No,(16)→No,(15)と前記第二の方向に一画素移動させる。
【0051】
その後、BC点間距離を50μm以上と判断するまで、輪郭リストに従いC点を輪郭No.(15)→No.(14)→No.(13)→・・・と前記第二の方向に連続して移動させる。そして、図10に示すように、C点を輪郭No.(12)に移動させた際、図10(b)の輪郭リストに示すように、BC点間距離が3.2画素となり50μm以上と判断すると、次に図11に示すように、C点を輪郭No.(12)→No.(13)と、これまでとは逆に時計回りに第一の方向に一画素移動させる。そうすると、図11(b)の輪郭リストに示すように、BC点間距離が2.2画素となるから50μm未満と判断し、次にB点を輪郭No.(2)→No.(3)と前記第一の方向に一画素移動させる。
【0052】
上記のようにB点とC点の移動を繰り返し、図12に示すように、B点を輪郭No.(7)→No.(8)と前記第一の方向に一画素移動させる。この場合、図12(b)の輪郭リストに示すように、BC点間距離を50μm以上と判断するまで、C点を輪郭No.(12)→No.(11)→No.(10)→No.(9)→No.(8)と前記第二の方向に連続して移動させる。
【0053】
このように、本例ではB点及びC点が輪郭No.(8)の画素で一致する。したがって、本例において、図3に示す二値画像の連結領域に対応するプランクトンの最小サイズは50μm未満であると判断する。
【0054】
(微生物の最小サイズを50μm以上と判断する例)
図13は、本例において使用する二値画像のイメージを示す。図13に示す二値画像は、輪郭追跡工程(S4)で探索した輪郭画素に、第一輪郭画素を輪郭No.(1)として追跡順に輪郭番号(輪郭No.(2)〜No.(16))を付したものである。
また、図14〜18は、図7に示すフローを図13に示す二値画像へ適用する例を示す。図14〜図18の各図とも(a)は二値画像のイメージを、(b)は図13に示す輪郭番号に基づいて作成される輪郭リストを示す。
なお、本例においても、BC点間距離は、各点が位置する画素中心間の距離であるものとする。また、本例においても、50μmは2.5画素とする。
【0055】
まず、図14(a)に示すように、輪郭No.(1)を起点画素Aと決定する。この時、B点及びC点は、ともに起点画素A上に位置するため、図14(b)の輪郭リストに示すように、BC点間距離は0.0画素である。
【0056】
次に、前記B点及びC点を前記輪郭番号順に移動させる、まず、図15に示すように、B点を輪郭No.(1)→No.(2)と時計回りに第一の方向に一画素移動させる。この場合、図15(b)の輪郭リストに示すように、BC点間距離は1.0画素であるから50μm未満と判断し、次にC点を輪郭No.(1)→No.(16)と反時計回りに第二の方向に一画素移動させる。そして、この場合、図15(b)の輪郭リストに示すように、BC点間距離は1.4画素であるから50μm未満と判断し、続けてC点を輪郭No.(16)→No.(15)と前記第二の方向に一画素移動させる。
【0057】
その後、BC点間距離を50μm以上と判断するまで、輪郭リストに従いC点を輪郭No.(15)→No.(14)→No.(13)→・・・と前記第二の方向に連続して移動させる。そして、図15に示すように、C点を輪郭No.(12)に移動させた場合、図15(b)の輪郭リストに示すように、BC点間距離が3.2画素となり50μm未満でないと判断すると、次にC点を輪郭No.(12)→No.(13)と、これまでとは逆に時計回りに第一の方向に一画素移動させる。そうすると、BC点間距離が2.2画素となるから50μm未満と判断し、次にB点を輪郭No.(2)→No.(3)と前記第一の方向に一画素移動させる。
【0058】
上記のようにB点とC点の移動を繰り返し、図16に示すように、B点を輪郭No.(4)→No.(5)と前記第一の方向に一画素移動させる。この場合、図16(b)の輪郭リストに示すように、C点は輪郭No.(13)に位置しているから、BC点間距離が2.8画素となり50μm以上と判断し、前記BC点間距離を50μm未満と判断するまで、C点を輪郭No.(13)→No.(14)→No.(15)→No.(16)→No.(1)→No.(2)→No.(3)と第一の方向に連続して移動させる。
【0059】
さらに、上記のようにしてB点とC点の移動を繰り返し、図17に示すように、B点を輪郭No.(15)→No.(16)と前記第一の方向に一画素移動させる。この場合、図17(b)の輪郭リストに示すように、BC点間距離を50μm未満と判断するまで、C点を輪郭No.(7)→No.(8)→No.(9)→No.(10)→No.(11)→No.(12)→No.(13)と第一の方向に連続して移動させる。
【0060】
そして、図18に示すように、B点を輪郭No.(16)→No.(1)と前記第一の方向に一画素移動させる。
【0061】
このように、本例では、B点及びC点が同じ輪郭番号の画素で交差することがないままに、該B点が輪郭画素を一巡し、輪郭No.(1)の起点画素Aに戻る。したがって、本例において、図13に示す二値画像の連結領域に対応する微生物の最小サイズは50μm以上であると判断する。
【0062】
なお、上記各例では、画像の連結領域の輪郭を、輪郭画素の中心を結ぶラインと仮定し、BC点間距離を、各点が位置する画素中心間の距離であるとしたが、前記連結領域の輪郭を、輪郭画素の最外郭にある頂点を結ぶラインと仮定し、BC点間距離を、各点が位置する画素の四隅の頂点を使った距離であるとすれば、より精度良く微生物の最小サイズを判断することが可能となる。
【0063】
上記本発明の実施の形態は、微生物の平面形状が、二次元空間である長さ50μmのスリットを通過できないことにより、当該微生物の最小サイズが50μm以上であると判断するものであるが、微生物の立体形状を特定できれば、該立体形状が二次元空間である直径50μmの円内を通過できないことにより、当該微生物の最小サイズが50μm以上であると、より精度良く判断することができる。
【0064】
なお、Lサイズ生物の検査は、上記実施の形態に限るものでなく、スキャナにより取得した微生物の画像を用いるものであれば、他の画像処理手法により微生物のサイズを判断するものであってもよい。
【0065】
<Sサイズ生物(最小サイズが10μm以上50μm未満の微生物)の検査>
本実施の形態におけるSサイズ生物の検査では、植物プランクトンの大多数がSサイズ生物に区分され、動物プランクトンの大多数がLサイズ生物に区分される特徴を利用し、Sサイズ生物が植物プランクトンであると仮定する。
そして、本実施の形態におけるSサイズ生物の検査方法は、パルス変調を用いたクロロフィル蛍光測定により、バラスト水のサンプルに含まれる植物プランクトンの個体数を検査する。
【0066】
パルス変調を用いたクロロフィル蛍光測定は公知の技術であり、例えば、ドイツWalz社製のパルス変調クロロフィル蛍光測定器(Water−PAM)を用いることで、前記バラスト水のサンプルに含まれる植物プランクトンの個体数を簡単に検査することができる。
【0067】
ここで、クロロフィル蛍光とは、クロロフィル(光化学系II複合体に結合するクロロフィルa)に測定光を照射した際、該クロロフィルが放出する蛍光である。
また、パルス変調を用いたクロロフィル蛍光測定とは、クロロフィル(光化学系II複合体に結合するクロロフィルa)にパルス変調された測定光(Measuring beam)を照射した際に、該クロロフィルが放出する蛍光の中で、前記測定光に基づいて放出される蛍光を、他の光に基づいて放出される蛍光と区別して測定できる技術である。
【0068】
図19は、パルス変調を用いたクロロフィル蛍光測定の原理を示す。図20は、クロロフィルに照射する光と蛍光強度の関係を示す。
本実施の形態におけるSサイズ生物の検査では、まず、図19(a)に示すように、バラスト水のサンプルにパルス変調された測定光を照射し、該測定光の照射により前記サンプルに含まれるクロロフィルが放出する最低限の蛍光強度Foを測定する。
【0069】
次に、図19(b)に示すように、前記測定光が照射されている前記バラスト水のサンプルに強いパルス光(Flash)を照射し、該パルス光により前記クロロフィルが光合成に利用するエネルギーを飽和させることで、前記測定光の照射により前記クロロフィルが放出する最大限の蛍光強度Fmを測定する。
【0070】
そして、前記最低限の蛍光強度Fo及び最大限の蛍光強度Fmの測定値から前記サンプルに含まれるクロロフィルの最大量子収率Fv/Fm=(Fm−Fo)/Fmを算出し、前記最低限の蛍光強度Fo及び前記最大量子収率Fv/Fmと、予め設定された前記バラスト水のサンプルに含まれる植物プランクトンの個体数との関係に基づいて、前記バラスト水のサンプルに含まれる植物プランクトンの個体数を間接的に検査する。
【0071】
ここで、前記最低限の蛍光強度Fo及び前記最大量子収率Fv/Fmと、前記バラスト水のサンプルに含まれる植物プランクトンの個体数との関係は、予め精緻な実験により求めておくことができる。
【0072】
この点について、国際海事機関(IMO)の文書(非特許文献1参照。)では、前記蛍光強度Foが20以上、前記最大量子収率Fv/Fmが0.3以上の条件を満たす場合、バラスト水のサンプルに含まれるSサイズ生物の個体数は20以上との関係づけを行っている。
【0073】
なお、Sサイズ生物の検査は、上記実施の形態に限るものでなく、植物プランクトンの個体数を検査する他の方法や、スキャナにより取得した微生物の画像を用いる以外の他の適当な方法により個体数を検査するものであってもよい。
【0074】
本実施の形態におけるバラスト水の検査方法は、Lサイズ生物については、スキャナを用いた簡便な方法により個体数を検査し、Sサイズ生物については、例えばパルス変調を用いたクロロフィル蛍光測定などの他の適当な方法により、Lサイズ生物とSサイズ生物を並行して検査することができるため、バラスト水に含まれるLサイズ生物及びSサイズ生物の個体数を短時間で精度良く検査することが出来る。
【0075】
本発明は、上記実施の形態に限るものでなく発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、その構成を適宜変更できることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明のバラスト水の検査方法は、バラスト水に含まれるLサイズ生物及びSサイズ生物の個体数を短時間で精度良く検査できるものであり、極めて実用性が高い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バラスト水に含まれる微生物の検査方法であって、
最小サイズが50μm以上の微生物については、スキャナにより取得した画像データに基づいて個体数を検査し、
最小サイズが10μm以上50μm未満の微生物については、スキャナにより取得した画像データに基づく以外の方法により個体数を検査することを特徴とするバラスト水の検査方法。
【請求項2】
前記最小サイズが50μm以上の微生物については、
微生物の画像データをスキャナにより取得し、
該画像データを二値化処理し、
該二値化処理した二値画像に基づいて前記微生物に対応する画素の連結領域を特定し、
該画素の連結領域において輪郭を構成する画素を順次特定し、
該輪郭を構成する画素の一つを起点として、該輪郭を構成する画素に沿って二点を時計回り又は反時計回りに移動させるに際し、第一の点は第一の方向に移動させ、第二の点は前記第一の方向と反対の第二の方向に移動させるとともに前記第一の点との直線距離が50μm以上となる場合にのみ前記第一の方向に移動させ、前記第一の点が前記輪郭を構成する画素を一巡し前記起点となる画素に戻るまでの間に、前記輪郭を構成するすべての画素を前記第一の点と第二の点の少なくともいずれかが通過した段階で該第一の点と第二の点とが一致していなければ、前記微生物の最小サイズが50μm以上と判断し、
最小サイズが50μm以上と判断される前記微生物に対応する画素の連結領域を計数することで、前記個体数を検査する請求項1記載のバラスト水の検査方法。
【請求項3】
前記第二の点は、前記第一の点を第一の方向に一画素移動させる毎に、前記第一の点との直線距離が50μm未満の範囲で第二の方向に連続して移動させ、又は前記第一の点との直線距離が50μm未満となるまで第一の方向に連続して移動させる請求項2記載のバラスト水の検査方法。
【請求項4】
植物プランクトンをもって、前記最小サイズが10μm以上50μm未満の微生物とする請求項1乃至3の何れか一項記載のバラスト水の検査方法。
【請求項5】
パルス変調を用いたクロロフィル蛍光測定により、前記植物プランクトンの個体数を検査する請求項4の記載のバラスト水の検査方法。
【請求項6】
前記バラスト水のサンプルにパルス変調された測定光を照射し、
該測定光が照射されている前記バラスト水のサンプルにパルス光を照射し、
前記測定光を照射した際に前記サンプルに含まれるクロロフィルが放出する最低限の蛍光強度Foを測定し、
前記パルス光を照射した際に前記サンプルに含まれるクロロフィルが放出する最大限の蛍光強度Fmを測定し、
前記最低限の蛍光強度Fo及び最大限の蛍光強度Fmの測定値から前記サンプルに含まれるクロロフィルの最大量子収率Fv/Fm=(Fm−Fo)/Fmを算出し、
前記最低限の蛍光強度Fo及び前記最大量子収率Fv/Fmと、予め設定された植物プランクトンの個体数との関係に基づいて、前記バラスト水のサンプルに含まれる植物プランクトンの個体数を間接的に検査する請求項4又は5記載のバラスト水の検査方法。
【請求項7】
前記スキャナは、蛍光スキャナである請求項1乃至6の何れか一項記載のバラスト水の検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2013−50375(P2013−50375A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−188294(P2011−188294)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000001812)株式会社サタケ (223)
【出願人】(504136568)国立大学法人広島大学 (924)
【Fターム(参考)】