説明

バラスト水処理システム及びバラスト水処理方法

【課題】バラスト水処理システムの提供
【解決手段】取水口104とバラストタンク103とを接続するバラスト水供給ライン107と、ライン107に配置され、取水口104から取水された液体中の水生生物を電気的又は機械的に殺傷処理するための殺傷処理装置102と、ライン107に接続し、取水口104から取水された液体中の水生生物の殺滅処理を行うための次亜塩素酸ナトリウムをライン107に供給する薬液供給装置101とを備え、薬液供給装置101は、バラスト水供給ライン107が接続する取水口104とは異なる第2の取水口114と接続し、第2の取水口114から取水された液体を電気分解して次亜塩素酸ナトリウムを発生させるバラスト水処理システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バラスト水処理システム及びバラスト水処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タンカーや大型貨物船等といった船舶においては、オイルや貨物を搭載しない又はそれらの搭載量が少ない状態で航行する場合、船舶の安定性やバランスの確保のために、通常、バラストタンク内にバラスト水を収容して航行している。このバラスト水は、通常、荷揚げした港において海水などを汲み上げて注入し、荷積みした港において排出される。このように、バラスト水は荷揚げした港の海水などを使用することから、バラスト水には荷揚げした港周辺に生息する水生生物等が含まれ、この水生生物が荷積みした港においてバラスト水とともに排出される。
【0003】
近年、この水生生物を含むバラスト水の排出による生態系の乱れが国際的な問題となっている。このため、国際海事機関(IMO)は、2004年にバラスト水管理条約を採択し、その中で、排出するバラスト水に生息する生物の排出基準が厳しく定められている。
【0004】
バラスト水の処理方法としては様々な方法が提案されている。具体的には、ろ過及び遠心分離等により水生生物を除去する方法、物理的・機械的に水生生物を殺滅する方法、熱により水生生物を殺滅する方法、化学薬品をバラストタンク中に注入したり塩素系物質等を生成させたりすることにより水生生物を殺滅する方法(例えば、特許文献1及び非特許文献1)並びにこれらの方法を組み合わせた方法等がある。
【0005】
一方で、バラスト水中の水生生物を排除できたとしても、排水中に残留する次亜塩素酸ナトリウム濃度によっては、港周辺の環境を破壊する恐れもある。そのため、排出時にはバラスト水の次亜塩素酸ナトリウム濃度等に応じて還元剤が添加され中和する方法や、バラスト水を放置してバラスト水の残留塩素濃度を実質的にゼロとする方法(特許文献2)等が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2007−515289号公報
【特許文献2】特許第4262720号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Yukihiko OKAMOTO et al., JFE技法No.25(2010年2月)p.1-6
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の通り、バラスト水管理条約が採択されてバラスト水処理装置の設置が義務付けられたことにより、バラスト水を処理可能となる新たな技術がいっそう求められることとなった。特許文献1には、バラスト水を電気分解して次亜塩素酸ナトリウムを発生させてバラスト水の水生生物を死滅させる方法が提案されている。しかしながら、次亜塩素酸ナトリウムのみでバラスト水中の水生生物を殺滅処理するには、多量の次亜塩素酸ナトリウムが必要となり、次亜塩素酸ナトリウムを貯留するための大きなタンクが必要となるという問題や、多量の次亜塩素酸ナトリウムを発生させるために大きな電気分解処理装置及び多くの電力量が必要となるという問題がある。また、次亜塩素酸ナトリウムの発生及びそれを用いたバラスト水の処理は通常寄港停泊中に行われるが、寄港停泊中には荷積み揚げやバラスト水の取排水等のために多くの電力が必要であり、これらの最中に電力が不足すると、荷積み揚げや取排水の作業に支障が出たり、さらには船舶の運航に支障が出たりするという問題がある。そこで、本発明は、寄港停泊中における電力消費量を低減でき、かつコンパクトで船舶への搭載が容易である新たなバラスト水処理システム及びバラスト水処理方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、一態様において、取水口とバラストタンクとを接続するバラスト水供給ラインと、前記ラインに配置され、前記取水口から取水された液体中の水生生物を電気的又は機械的に殺傷処理するための殺傷処理装置と、前記ラインに接続し、前記取水口から取水された液体中の水生生物の殺滅処理を行うための次亜塩素酸ナトリウム水溶液を前記ラインに供給する薬液供給装置とを備え、前記薬液供給装置は、前記バラスト水供給ラインが接続する取水口とは異なる第2の取水口と接続し、前記第2の取水口から取水された液体を電気分解して次亜塩素酸ナトリウムを発生させるバラスト水処理システムに関する。
【0010】
本発明は、その他の態様において、取水口から取水された液体中の水生生物を電気的又は機械的に殺傷処理すること、取水口から取水された液体に次亜塩素酸ナトリウム水溶液を供給すること、及び、前記殺傷処理及び前記次亜塩素酸ナトリウム水溶液の供給を行った液体をバラストタンクに貯留することを含み、さらに、前記取水口とは異なる第2の取水口から取水された液体を少なくとも含む次亜塩素酸ナトリウム製造のための液体を電気分解して前記次亜塩素酸ナトリウム水溶液を製造することを含むバラスト水処理方法に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、寄港停泊中における電力消費量を低減でき、かつコンパクトで船舶への搭載が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、実施の形態1におけるバラスト水処理システムの一例を示す概略構成図である。
【図2】図2A〜Cは、薬液供給装置の構成の一例を示す概略構成図である。
【図3】図3A〜Dは、電気的処理装置の構成の一例を示す概略構成図である。
【図4A】図4Aは、寄港停泊中におけるバラスト水の処理方法の一例を示すフローチャートである。
【図4B】図4Bは、デバラスト方法及び航行中における次亜塩素酸ナトリウムの製造の一例を示すフローチャートである。
【図5】図5は、バラスト水制御システムの構成例を示す機能ブロック図である。
【図6】図6は、バラスト水制御システムに含まれる測定部及び制御部の構成例、並びに記録部に記録されるデータ例を示す機能ブロック図である。
【図7】図7は、実施の形態1におけるバラスト水処理システムのその他の例を示す概略構成図である。
【図8】図8は、実施の形態1におけるバラスト水処理システムのさらにその他の例を示す概略構成図である。
【図9】図9は、実施の形態2におけるバラスト水処理システムの一例を示す概略構成図である。
【図10】図10は、実施の形態3におけるバラスト水処理システムの一例を示す概略構成図である。
【図11A】図11Aは、実施の形態4におけるバラスト水処理システムの一例を示す概略構成図である。
【図11B】図11Bは、実施の形態4におけるバラスト水処理システムのその他の例を示す概略構成図である。
【図12】図12A及びBは、実施の形態4におけるバラスト水処理システムの部分図である。
【図13】図13は、実施の形態5におけるバラスト水処理システムの一例を示す概略構成図である。
【図14】図14は、実施の形態6におけるバラスト水処理システムの一例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
船舶では、バラスト水の取排水や荷積み揚げ等の作業を行うことから、寄港停泊中に多くの電力を使用する。本発明は、航行中に次亜塩素酸ナトリウムの発生を行えば、寄港停泊中に使用する電力量を低減できるという知見に基づく。
【0014】
本発明によれば、電気的又は機械的な殺傷処理装置と次亜塩素酸ナトリウムを供給するための薬液供給装置との2種類の装置を用いてバラスト水の処理を行うため、船舶内での分散設置が可能となり、また次亜塩素酸ナトリウム発生装置を小型化でき、船舶への搭載が容易となるという効果を奏する。本発明によれば、航行中に次亜塩素酸ナトリウムを発生させることにより、寄港停泊中における電力消費量を低減できるという効果を奏する。
【0015】
本明細書において「水生生物」とは、海、川、湖等に生息する微生物を含み、その他には、酵母、カビ、植物性又は動物性プランクトン、プランクトンの卵や胞子、細菌類、菌類、ウイルス、藻類、巻貝及び二枚貝等の貝類の幼生、カニ等の甲殻類の幼生などの比較的微小サイズの水生生物等を含む。また、海とつながっている河口、河川、運河等に生息し得る微生物及び上述の水生生物を含みうる。
【0016】
本明細書において「取水口から取水された液体(単に「取水された液体」という場合も含む)」とは、船外から取水されバラストタンクに貯留されてバラスト水として用いるものであって、海水、汽水及び淡水を含みうる。液体は、例えば、海水などのような塩化ナトリウムを含む液体であってもよいし、含まない液体であってもよい。また、液体が取水される領域は特に制限されず、海水域であってもよく、淡水域でも、汽水域であってもよい。本明細書において「バラスト水」は、バラストタンク内に貯留される液体をいい、バラストタンク内に貯留するために取水口から取水された液体を含みうる。また、本明細書においてバラスト水供給ラインに接続する取水口は、シーチェストを含む。
【0017】
本明細書において「水生生物の電気的又は機械的な殺傷処理(以下、「殺傷処理装置」ともいう)」とは、取水口から取水された液体に含まれる水生生物の少なくとも一部を電気的又は機械的手段によって分離、除去、破壊及び又は殺滅することを含む。水生生物の破壊は、水生生物の一部分又は全部の破壊を含む。電気的又は機械的な殺傷処理装置としては、例えば、電解処理装置、遠心式固液分離装置、及び水圧により衝撃波を発生させて処理する装置等が挙げられる。電解処理装置としては、公知の電解処理装置を使用できる。電解処理装置は、例えば、固定床型電極電解槽を備えることが好ましい。固定床型電極電解槽は、例えば、分極を生じる固定床と、分極を生じさせるための給電用電極とを含む。固定床型電極電解槽は、1つの固定床を備える単極式であってもよいし、2以上の固定床を備える複極式であってもよい。電極に印加する電圧としては、直流電圧及び交流電圧があるが、好ましくは交流電圧である。電極間電圧は、例えば、10V以下、5V以下、3V以下であり、消費電力を低減でき、また電気分解による不要なガスの発生を抑制できる点から、好ましくは0.5〜1.5Vである。電極に印加する電圧が交流電圧である場合、電極間電圧は略1.5Vであることがより好ましい。電極に印加する電圧が直流電圧である場合、電極間電圧は略0.75Vであることがより好ましい。電解処理装置は、クロスフロー方式であってもよいし、デッドエンド方式であってもよい。電解処理装置における目詰まりを防止して圧力損失を低減できる点から、クロスフロー方式であることが好ましい。同様の点から、電解処理装置は、逆洗機構を備えていてもよい。遠心式固液分離装置としては、公知の遠心式固液分離装置が使用でき、例えば、液体サイクロン等が挙げられる。
【0018】
本明細書において「水生生物の殺滅処理」とは、処理対象である取水された液体及び又はバラスト水に含まれる水生生物の少なくとも一部を殺傷、殺菌若しくは殺滅すること及び又は水生生物の増殖を抑制することを含む。水生生物の殺滅処理としては、好ましくはバラスト水の排出時において下記表1に示すバラスト水排出基準を満たすように、取水された液体、及び又は電気的若しくは機械的な殺傷処理がなされた液体に次亜塩素酸ナトリウム水溶液を供給することを含み、より好ましくはバラスト水の排出時において下記表1に示すバラスト水排出基準を満たすように水生生物の殺傷、殺滅及び又は増殖を抑制することを含む。
【0019】
【表1】

【0020】
本明細書において「薬液供給装置」とは、取水された液体、及び又は電気的若しくは機械的な殺傷処理がなされた液体に次亜塩素酸ナトリウム水溶液を供給する装置である。薬液供給装置は、バラスト水供給ラインが接続する取水口(例えば、シーチェスト等)とは異なる第2の取水口と接続する。このため、薬液供給装置は、第2の取水口から取水された液体を電気分解して次亜塩素酸ナトリウムを発生させることにより、次亜塩素酸ナトリウム水溶液を製造できる。薬液供給装置は、第2の取水口と接続しているため、バラストポンプ等を駆動させることなく取水することができ、航行中であっても液体の取水及び次亜塩素酸ナトリウムの発生を容易に行うことができる。液体の取水は、例えば、既存のポンプ等を用いて行うことができる。既存のポンプとしては、例えば、飲料水やサニタリー用の液体等を取水するためのポンプ等が挙げられる。通常、このようなポンプはバラストポンプと比較して少ない消費電力で駆動させることができることから、この既存のポンプを使用することにより少ない電力量で液体を取水できる。
【0021】
薬液供給装置は、電気分解により次亜塩素酸ナトリウムを発生させる装置であればよく、例えば、電解槽と貯留槽とを備える形態が挙げられる。貯留槽を備えることにより、高濃度の次亜塩素酸ナトリウムを貯留し、必要に応じてポンプやバルブを介してバラスト水供給ラインに供給される。薬液供給装置は、温度調節手段を備えていてもよい。温度調節手段によって薬液供給装置における次亜塩素酸ナトリウム水溶液の温度を制御することにより、薬液供給装置に貯留される次亜塩素酸ナトリウム水溶液における次亜塩素酸の分解を抑制し、さらには有効塩素濃度を増加させかつ塩素酸濃度を低減できる。水溶液の温度としては、次亜塩素酸の分解を抑制する点から、例えば、20℃以下であり、好ましくは15℃以下、より好ましくは略10℃である。温度調節手段としては、例えば、チラーユニット等の冷却装置、及び加温装置等が挙げられる。薬液供給装置は、バラスト水供給ラインに供給する次亜塩素酸ナトリウム濃度を把握できるように、次亜塩素酸ナトリウムの濃度を計測できる計測器(以下、「次亜塩素酸ナトリウム濃度計」又は単に「濃度計」という。)及び流量計を備えることが好ましく、これらを用いてバラスト水供給ラインに供給する次亜塩素酸ナトリウム濃度を制御することが好ましい。
【0022】
薬液供給装置は、塩化ナトリウム貯留タンクを備えていてもよい。これにより、例えば、淡水域を航行する船舶であっても、次亜塩素酸ナトリウムを発生させることができる。海水域を航行する船舶であっても、取水した海水に塩化ナトリウムを添加することにより、より高濃度の次亜塩素酸ナトリウム水溶液を製造できる。塩化ナトリウムは、水溶液であってもよいし、固形であってもよい。
【0023】
薬液供給装置は、バラスト水供給ラインに接続し、バラスト水供給ラインに接続する取水口から取水された液体に次亜塩素酸ナトリウム水溶液を供給可能である。接続位置(次亜塩素酸ナトリウム水溶液の供給箇所)は特に制限されず、例えば、バラスト水供給ラインに接続する取水口と殺傷処理装置との間、及び殺傷処理装置とバラストタンクとの間等が挙げられる。
【0024】
薬液供給装置は、一実施形態において、上記第2の取水口に加えて或いは替えて、バラスト水供給ラインが接続する取水口(例えば、シーチェスト等のバラスト水のための取水口)に接続していてもよい。バラスト水のための取水口及び第2の取水口の両方と接続することにより、薬液供給装置に次亜塩素酸ナトリウム水溶液を製造するための液体を効率よく取水できる。バラスト水のための取水口と薬液供給装置とを接続するラインは、バラストポンプとは異なる取水ポンプを備えていてもよい。これにより、バラストポンプを駆動させることなく次亜塩素酸ナトリウム水溶液を製造するための液体を取り込むことができる。
【0025】
本明細書において「船舶」とは、バラストタンクを備える船一般をいい、例えば、コンテナ船、ローロー船、タンカー、バルクキャリア、ケミカル船、自動車運搬船を含む。
【0026】
本発明のバラスト水処理システムは、一実施形態において、さらに、バラスト水排出時にバラスト水中の次亜塩素酸ナトリウムを分解処理するための後処理装置を備えることができる。後処理装置を備えることにより、バラスト水排出時にバラスト水の次亜塩素酸ナトリウム濃度が排出基準を超えている場合であっても、速やかにバラスト水の排出を行うことができ、また還元剤の使用量を低減できる。後処理装置としては、例えば、次亜塩素酸を分解又は還元可能なものであれば特に制限されるものではないが、還元剤の使用量を低減してバラスト水処理にかかるランニングコストを低減する点から、次亜塩素酸を分解可能な触媒を用いた装置が好ましい。触媒としては、例えば、ニッケル、パラジウムが挙げられる。後処理装置は、前記触媒に加えて、アルミナ等の吸着剤を有していてもよい。後処理装置は、バラスト水排出時にバラスト水が通過するラインに配置されていればよい。例えば、バラスト水供給ラインに配置したり、バラスト水供給ラインに分岐ラインを接続してそのラインに配置したりすることができる。後処理装置は、次亜塩素酸ナトリウム水溶液を還元するための還元剤供給装置と併用して使用することが好ましい。
【0027】
本発明のバラスト水処理システムは、次亜塩素酸ナトリウム水溶液が供給される液体のpHを次亜塩素酸のpKa以下に制御するための酸性液貯留槽(酸性液供給装置)を備えることができる。次亜塩素酸ナトリウムのpKaは7.5程度である。このため、次亜塩素酸ナトリウム水溶液を供給する前に、液体のpHをpKa以下、好ましくはpH5〜6の範囲に制御することによって次亜塩素酸による殺滅能力を向上させ、水生生物の殺滅能力の処理効率を向上できる。また、低濃度の次亜塩素酸ナトリウムであっても十分に殺滅処理を行うことができ、配管やバラストタンクの腐敗を低減できる。酸性液貯留槽に貯留する酸性液としては、例えば、塩酸及び硫酸等が挙げられ、酸度が高い点からは塩酸が好ましい。酸性液貯留槽は、バラスト水供給ラインに接続し、例えば、次亜塩素酸ナトリウム水溶液を供給する前に、取水された液体に酸性液を供給可能なようにバラスト水供給ラインに接続していればよい。
【0028】
本発明は、その他の態様として、本発明のバラスト水処理システムを用いたバラスト水の注水方法、本発明のバラスト水処理システムを備える船舶に関する。
【0029】
本発明は、さらにその他の態様として、取水口から取水された液体中の水生生物を電気的又は機械的に殺傷処理すること、取水口から取水された液体に次亜塩素酸ナトリウム水溶液を供給すること、及び、前記殺傷処理及び前記次亜塩素酸ナトリウム水溶液の供給を行った前記液体をバラストタンクに貯留することを含み、さらに、前記取水口とは異なる第2の取水口から取水された液体を少なくとも含む次亜塩素酸ナトリウム製造のための液体を電気分解して前記次亜塩素酸ナトリウム水溶液を製造することを含むバラスト水処理方法に関する。
【0030】
本発明のバラスト水処理方法によれば、電気的又は機械的な殺傷処理と、次亜塩素酸ナトリウムによる処理とを行うため、例えば、次亜塩素酸ナトリウムによる処理だけでは十分な殺傷が困難であった貝類や甲殻類の幼生を容易に殺傷することができる。本発明のバラスト水処理方法によれば、航行中であっても船外から薬液供給装置への取水が容易となり、航行中における次亜塩素酸ナトリウム水溶液の製造を容易に行うことができるという効果を奏する。本発明のバラスト水処理方法は、本発明のバラスト水処理システムを用いて行うことができる。
【0031】
本発明のバラスト水の処理方法において、次亜塩素酸ナトリウム水溶液の供給は、電気的又は機械的な殺傷処理の前及び殺傷処理の後のいずれに行ってもよく、処理前及び処理後の双方に行ってもよい。
【0032】
本発明のバラスト水処理方法において、寄港停泊中の消費電力量を低減する点から、次亜塩素酸ナトリウム水溶液の製造、及び又はそのための液体の取水は航行中に行うことが好ましく、これらの双方を航行中に行うことがより好ましい。航行中に製造した次亜塩素酸ナトリウム水溶液は、薬液供給装置に貯留しておくことが好ましい。これにより、寄港停泊中における消費電力量を低減でき、またすみやかに次亜塩素酸ナトリウム水溶液の供給を開始することができる。次亜塩素酸ナトリウム水溶液の製造及び貯留は、温度を制御しながら行うことが好ましい。温度を制御することにより、薬液供給装置に貯留される次亜塩素酸ナトリウム水溶液における次亜塩素酸の分解を抑制し、さらには有効塩素濃度を増加させかつ塩素酸濃度を低減できる。
【0033】
本発明のバラスト水処理方法において、次亜塩素酸ナトリウム製造のための液体は、バラストタンクに貯留する液体を取水する前記取水口から取水された液体を含んでいてもよい。
【0034】
以下に、本発明を好適な実施の形態を示しながら詳細に説明する。但し、本発明は以下に示す実施の形態に限定されない。
【0035】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1におけるバラスト水処理システムの構成を示す概略構成図である。
【0036】
図1に示すように、本実施の形態1のバラスト水処理システムは、薬液供給装置101と、殺傷処理装置102と、バラスト水供給ライン107とを含む。本実施の形態1のバラスト水処理システムによれば、次亜塩素酸ナトリウム水溶液を供給する薬液供給装置101と殺傷処理装置102とを用いて水生生物の処理を行うことから、従来よりも低濃度の次亜塩素酸ナトリウムによって水生生物の殺滅処理することができ、配管やバラストタンクの腐食等を防止できる。
【0037】
バラスト水供給ライン107は、取水口104から取水された液体をバラストタンク103に供給するためのラインであって、一端はバラスト水を取水する取水口(シーチェスト)104、ストレーナ105、及びバラストポンプ106と接続し、他端はバラストタンク103に接続している。バラストタンク103は、通常、複数のバラストタンク103a〜103dに分割されている。
【0038】
殺傷処理装置102はバラスト水供給ライン107に配置されており、バラストポンプ106とバラストタンク103との間に配置されている。薬液供給装置101は、薬液供給ライン109を介してバラスト水供給ライン107と接続しており、殺傷処理装置102で処理された液体に次亜塩素酸ナトリウム水溶液を供給可能である。
【0039】
薬液供給装置101は、取水口(シーチェスト)104とは異なる第2の取水口114とライン110を介して接続している。これにより薬液供給装置101は、次亜塩素酸ナトリウムを発生させるための液体を、バラストポンプ106を駆動させることなく船外から取水することができる。取水ライン110には、液体を取り込むためのポンプ116とストレーナ115とを備えていてもよい。第2の取水口114及びポンプ116としては、船舶に既存する、飲料水やサニタリーに供給される液体等のための取水口及びポンプ等がそれぞれ使用できる。薬液供給ライン109は、バラスト水供給ライン107に次亜塩素酸ナトリウム水溶液を送液するためのポンプ及び次亜塩素酸ナトリウム水溶液の供給量を制御するためのバルブMを備えていてもよい。また、バラスト水供給ライン107への次亜塩素酸ナトリウム水溶液の送液は、薬液供給ライン109に配置されるポンプに替えて、薬液供給装置101に内蔵されたポンプ(図示せず)によって行ってもよい。薬液供給ライン109は、その他には、バラスト水供給ライン107への次亜塩素酸ナトリウムの供給量を測定するために、例えば、次亜塩素酸ナトリウム濃度計及び流量計を備えていてもよい。流量計としては、例えば、総流量や瞬時流量を計測可能な積算流量計FMが好ましい。
【0040】
薬液供給装置101としては、例えば、図2Aに示す形態の薬液供給装置201が使用できる。図2Aは、液体を電気分解することによって次亜塩素酸ナトリウムを発生可能な装置の構成の一例を示す概略構成図である。図2Aに示すように、薬液供給装置201は、次亜塩素酸ナトリウム水溶液を貯留するための貯留槽211と、電解処理によって次亜塩素酸ナトリウムを発生させるための電解槽212とを備える。貯留槽211は、ライン110,109と接続し、ライン110を通じて船外から次亜塩素酸ナトリウムを発生させるための液体を取り込み可能であり、ライン109を通じて貯留された次亜塩素酸ナトリウム水溶液をバラスト水供給ライン107に供給可能である。貯留槽211と電解槽212とはライン213,214によって接続されており、電解槽212において発生させた次亜塩素酸ナトリウムは、ライン214を通じて貯留槽211に貯留される。貯留槽211と電解槽212との間は、次亜塩素酸ナトリウムを発生及び貯留させる点から、ライン213及びライン214によって循環可能であることが好ましい。ライン213及び又はライン214は、送液のためのポンプを備えていてもよい。ライン213は、次亜塩素酸ナトリウム水溶液の温度を制御するための熱交換器215及びチラーユニット216を備えている。
【0041】
貯留槽211は、貯留する次亜塩素酸ナトリウム水溶液、及び又はそれを製造するための液体の温度を制御するために、断熱材を備えることが好ましい。
【0042】
貯留槽211は、次亜塩素酸ナトリウム濃度計を備えることが好ましい。これにより、貯留槽211内の次亜塩素酸ナトリウム濃度を管理できるとともに、貯留槽211内の次亜塩素酸ナトリウム濃度に応じて、例えば、次亜塩素酸ナトリウムの発生量、貯留槽211に供給する液体の量、電解槽212に搬送する液体の量等を制御できる。
【0043】
貯留槽211及び電解槽212は、発生したガス(特に、H2ガス)を排出するためのブロア217及び排出口218を備えていてもよい。
【0044】
薬液供給装置101は、第2の取水口116と接続するライン110に加えて、バラストポンプ106で取水された液体を取り込み可能なライン(図示せず)を備えていてもよい。バラストポンプ106と接続することにより、次亜塩素酸ナトリウム水溶液を製造するための液体を効率よく取水できる。
【0045】
薬液供給装置101のその他の例としては、例えば、図2B及びCに示す形態が挙げられる。図2B及びCは、電気分解により次亜塩素酸ナトリウムを発生可能な装置の構成のその他の例を示す概略構成図である。図2Bに示す形態の薬液供給装置201は、ライン110と接続する電解槽212と、ライン109と接続する貯留槽211とを備え、電解槽212と貯留槽211とはライン213によって接続されている。本形態の薬液供給装置201は、ライン110を通じて船外から次亜塩素酸ナトリウムを発生させるための液体を電解槽211に取り込み、そこで次亜塩素酸ナトリウムを発生させる。発生させた次亜塩素酸ナトリウム水溶液は、ライン213を通じて貯留槽211に供給・貯留され、必要に応じてライン109を通じてバラスト水供給ライン107に供給される。ライン110は、次亜塩素酸ナトリウム水溶液の温度を制御するための熱交換器(図示せず)及びチラーユニット(図示せず)を備えてもよい。
【0046】
図2Bでは、貯留槽211と電解槽212とがライン213によって接続されている例を示したが、本形態の薬液供給装置201はこれに限定されるものではなく、例えば、貯留槽211から電解槽212に液体を供給可能なラインを備え、このラインとライン213とによって貯留槽211と電解槽212との間を循環可能であってもよい。
【0047】
図2Cに示す形態の薬液供給装置201は、1つの処理槽219のみを備える装置であってもよい。処理槽219は電解処理による次亜塩素酸ナトリウムの発生と、次亜塩素酸ナトリウム水溶液の貯留とを行う。処理槽219が貯留槽と電解槽とを兼ねることにより、例えば、薬液供給装置201をさらに小型化することができる。
【0048】
殺傷処理装置102は、水生生物を電気的又は機械的に殺傷処理するための装置である。殺傷処理装置102としては、例えば、図3A〜Dに示す形態の電気的処理装置が使用できる。図3A〜Dは、固定床型電極電解槽の構成の一例を示す概略構成図であって、図3Aは、バラスト水供給ライン107にクロスフロー方式で配置された単極式固定床型電極電解槽の一例を示し、図3B及びCは、バラスト水供給ライン107にクロスフロー方式で配置された複極式固定床型電極電解槽の一例を示し、図3Dは、バラスト水供給ライン107にデッドエンド方式で配置された複極式固定床型電極電解槽の一例を示す。図3A〜Dにおいて、同じ構成要素には同じ符号を付している。
【0049】
図3Aに示すように、単極式固定床型電極電解槽は、電解槽本体302と、固定床型電極311と、給電用電極312と、電源313とを備え、液体の流れ(図3Aの黒矢印)が固定床型電極311の膜面に対して水平方向(接線方向)となるようにバラスト水供給ライン107に配置されている。クロスフロー方式で固定床型電極電解槽を配置することにより、固定床型電極311の膜面の汚れを容易に除去することができ、圧力損失を抑制できる。取水口104から取水された液体が固定床型電極電解槽に供給されると、供給された液体は、固定床型電極311の膜面に対して垂直方向に流れ(図3Aの白抜きの矢印)。液体中の水生生物が液流動によって固定床型電極311に接触すると固定床型電極311の表面と水生生物の細胞との間で電子の授受が起こり、水生生物の活動を弱めることができたり、水生生物を破壊又は死滅させたり、水生生物の一部分を損傷させたりすることができる。固定床型電極311の膜面に滞留物や汚れが蓄積した場合は、ライン303に配置されたバルブを開いて洗浄することにより、これらを容易に除去することができる。ライン303の一端は船外に接続し、除去された残渣は船外に排出される。
【0050】
固定床型電極311の材質としては、取水口104から取水された液体を透過可能なものであればよく、例えば、多孔質材料、炭素系材料、及び金属材料、これらを貴金属でコーティングしたもの等が挙げられる。炭素系材料としては、例えば、活性炭、グラファイト及び炭素繊維等が挙げられる。金属材料としては、例えば、ニッケル、銅、ステンレス、SUS(ステンレス鋼)、鉄及びチタン等が挙げられる。固定床型電極311の材質としては、これらの中でも、強度及び腐食防止の点から、SUS及びチタンが好ましい。固定床型電極311を構成する形状は特に制限されないが、例えば、球、粒、繊維、フェルト、織布、及び多孔質ブロック等が挙げられる固定床型電極311の開孔径は、例えば、100μm以上である。給電用電極312の材質としては、例えば、チタンが好ましい。給電用電極312の形状としては、例えば、平板、エキスパンドメタル、及び有孔板等が挙げられる。電源313は、直流電源であってもよいし、交流電源であってもよいが、交流電源が好ましい。
【0051】
図3Bに示すように、複極式固定床型電極電解槽は、電解槽本体302と、給電用電極ターミナル314,315と、固定床316と、スペーサ317と、電源313とを含む。固定床316は、給電用電極ターミナル314,315間に配置され、スペーサ317は、給電用電極ターミナル314と固定床316との間、固定床316間、及び固定床316と給電用電極ターミナル315との間にそれぞれ配置されている。電源313として交流電源を使用し、給電用電極ターミナル314,315に通電すると、各固定床316の給電用電極ターミナル314側及び給電用電極ターミナル315側の膜面が交互に入れ替わりながら正と負に分極し、各固定床316の膜面に多孔質陽極及び多孔質陰極が形成される。このように複極式固定型電極電解槽を使用することにより、電解槽に配置する固定床316の数が増えるため、水生生物が固定床316と接触する回数を増やすことができ、処理効率を向上させることができる。
【0052】
図3Cの複極式固定床型電極電解槽は、固定床316が1つ配置されていること以外は、図3Bの構成と同様である。
【0053】
図3Dの複極式固定床型電極電解槽は、クロスフロー方式に変えてデッドエンド方式で配置されていること、及び固定床316が3つ配置されていること以外は、図3Bの構成と同様である。
【0054】
バラスト水供給ライン107において、薬液供給ライン109との接続部と、殺傷処理装置102との間には、例えば、バルブ(図示せず)が配置されていることが好ましい。これにより、バラストポンプ106と殺傷処理装置102との間に配置された流量計FM(図示せず)での測定値に基づき、バラストタンク103へ注入する液体(バラスト水)の量を制御できる。バルブは、バラストタンク103への注入量の制御が容易になる点から、電動バルブが好ましい。
【0055】
本実施の形態1のバラスト水処理システムを用いたバラスト水の処理の一実施形態を図4A及びBに基づき説明する。
【0056】
まず、図4Aに示すように、航海が終了して(S401)寄港すると、荷下ろしを開始する(S402)。また、バラスト水の取り込み及び処理を開始し(S403)、バラストポンプ106、殺傷処理装置102、及び薬液供給装置101の薬液供給ライン109のポンプを起動させる(S404)。これにより、取水口104を通じて液体の取り込み、及びバラスト水の処理が開始される。取水口104を通じて取り込まれた液体は、ストレーナ105において大きなゴミ等が取り除かれた後、殺傷処理装置102に供給され、液体に含まれる水生生物の殺傷処理が行われる。殺傷処理装置102では、電気的又は機械的処理を行うことにより、取水された液体に含まれる水生生物のうち比較的大きな水生生物が分離、除去、破壊及び又は殺滅される。ついで、殺傷処理装置102で処理された液体に、薬液供給装置101から次亜塩素酸ナトリウム水溶液が供給され、次亜塩素酸ナトリウムによる水生生物の殺滅処理が行われる。次亜塩素酸ナトリウムを含む液体が、バラスト水供給ライン107を通じてバラストタンク103に供給される。供給される次亜塩素酸ナトリウム水溶液における次亜塩素酸ナトリウム濃度は、例えば、5000ppm以上であり、そのpHは、例えば、8〜9である。このバラスト水の処理は、バラスト水の注入量及び又は次亜塩素酸ナトリウムの供給量を制御しながら行われる(S405)。バラストタンク103内に所定量のバラスト水が注入され、かつ、バラストタンク103内の次亜塩素酸ナトリウムの濃度が所定の濃度に制御されれば(S406)、バラスト水の取り込み及び処理を終了し(S407)、バラストポンプ106、殺傷処理装置102、及び薬液供給装置101の薬液供給ライン109のポンプを停止する(S408)。殺傷処理装置102において殺傷処理を行った後、次亜塩素酸ナトリウム水溶液を供給して殺滅することにより、取水された液体及び又はバラストタンク内のバラスト水に含まれる水生生物の殺滅処理を効率よく行うことができる。
【0057】
つぎに、図4Bに示すように、航海が終了して寄港すると、デバラストを開始し(S411)、バラストポンプ106及び濃度計を起動させる(S412)。これにより、バラストタンク103から船外へのバラスト水の排出が開始される。バラスト水は、バラストタンク103からバラスト水供給ライン107に導入される。バラスト水供給ライン107に配置された濃度計によって、排出するバラスト水の次亜塩素酸ナトリウム濃度を測定する(S413)。測定した次亜塩素酸ナトリウム濃度が排出基準を満たしているかを判断し(S414)、次亜塩素酸ナトリウム濃度が0.2ppm未満である場合、排出基準を満たしているとして取水口104を介して海へ放出(デバラスト)する(S415)。次亜塩素酸ナトリウム濃度が0.2ppm以上である場合、中和剤を添加し(S416)、次亜塩素酸ナトリウムの濃度の測定(S413)及び上記判断(S414)を再度行う。バラストタンク103内のバラスト水をすべて排出すれば、デバラストを終了し、濃度計及びバラストポンプ106を停止する(S417)。
【0058】
デバラスト及び荷積みが終了すると、出港する(S421)。航行中、ポンプ116を起動させて第2の取水口114を通じて薬液供給装置101に液体を取り込む。また、ポンプ116の起動と合わせてバラストポンプ106を起動させてシーチェストを通じて薬液供給装置101に液体を取り込んでもよい。温度制御手段を起動させ(S422)、次亜塩素酸ナトリウムを発生させるための液体の温度を、次亜塩素酸の分解が抑制される最適な温度に制御する。貯留槽211に所定の量の液体の貯留が完了したら、ポンプ116を停止する(S423)。このとき、温度制御手段は停止することなく、インバータ運転することが好ましい。航海時間(寄港時間)に合わせて、薬液供給装置101における整流器、ポンプ及びブロア等を起動して液体の電気分解を開始し、次亜塩素酸ナトリウムを発生させて次亜塩素酸ナトリウム水溶液を製造する。貯留槽211に貯留する次亜塩素酸ナトリウムの濃度が規定濃度、例えば5000ppm以上となれば(S425)、次亜塩素酸ナトリウムの発生を終了する(S426)。製造した次亜塩素酸ナトリウム水溶液は、薬液供給装置101に貯留しておく。貯留する次亜塩素酸ナトリウム水溶液のpHは、例えば、8〜9である。次亜塩素酸ナトリウム水溶液の製造後も、温度制御手段は次亜塩素酸ナトリウム水溶液を供給するまで停止することなく運転することが好ましい。
【0059】
薬液供給装置101における次亜塩素酸ナトリウム水溶液の製造及び次亜塩素酸ナトリウム水溶液の供給は、例えば、図5に示すようなバラスト水制御システムによって制御できる。図5は、バラスト水制御システムの構成の一例を示す機能ブロック図である。図5のバラスト水制御システムは、バラスト水供給ライン107における濃度計等を含む測定部501、測定部501で測定された次亜塩素酸ナトリウム濃度を記録する記録部502、及び記録部502の濃度データに基づき、薬液供給装置101からの次亜塩素酸ナトリウムの供給量やバラストタンク103へのバラスト水の注入量の増減等を決定し、薬液供給ライン109からバラストタンク103に供給される次亜塩素酸ナトリウム量やバラスト水の注入量等を制御する制御部503を備える。
【0060】
測定部501は、図6の測定部601に示すような構成であってもよい。すなわち、測定部501は、バラスト水供給ライン107における次亜塩素酸ナトリウム濃度計に加え、薬液供給装置101の貯留槽211の次亜塩素酸ナトリウム濃度計、デバラストラインの次亜塩素酸ナトリウム濃度計、排出端部の次亜塩素酸ナトリウム濃度計を1つ又は1つ以上含みうる。測定部501での測定結果は記録部502に記録されうる。
【0061】
記録部502は、図6の記録部602に示すような1又は1以上のデータを記録できる。すなわち、測定部601で測定された貯留槽211に貯留された次亜塩素酸ナトリウム濃度、バラスト時間(バラスト水処理時間)、バラストタンク103に収容されたバラスト水量、航行データ(少なくとも排水までの時間を含むことが好ましい)、次亜塩素酸ナトリウム水溶液の供給量、バラスト水供給ライン107における次亜塩素酸ナトリウム水溶液供給後の液体の次亜塩素酸ナトリウム濃度、デバラスト時間及びデバラスト量、後処理装置によって処理した後のバラスト水の次亜塩素酸ナトリウム濃度、還元剤の供給量、及び還元剤供給後の次亜塩素酸ナトリウム濃度が含まれうる。記録部602は、さらに、バラストタンク103内で維持すべき次亜塩素酸ナトリウム濃度範囲も記録しておくことができる。
【0062】
制御部503は、図6の制御部603に示すような構成とすることができる。すなわち、制御部603は、分析部611、次亜塩素酸ナトリウム発生制御部612、及び供給量制御部613が含まれうる。分析部611は、例えば、記録部602に記録されたデータから、バラスト水供給ライン107に供給する次亜塩素酸ナトリウム水溶液の供給量、還元剤の供給量、及び薬液供給装置101において発生させる次亜塩素酸ナトリウム量等を決定する。次亜塩素酸ナトリウム発生制御部612は、例えば、前記決定に基づき薬液供給装置101において発生させる次亜塩素酸ナトリウム量等を制御する。供給量制御部613は、例えば、前記決定に基づき薬液供給装置101からバラストタンク103へ供給する次亜塩素酸ナトリウム量等を制御する。
【0063】
本実施の形態1では、薬液供給装置101が、殺傷処理装置102とバラストタンク103との間、つまり、殺傷処理装置102で処理された液体に次亜塩素酸ナトリウム水溶液を供給する形態を例にとり説明したが、本発明はこれに制限されるものではない。例えば、図7に示すように、薬液供給ライン109がバラストポンプ106と殺傷処理装置102との間に接続し、殺傷処理前の液体に次亜塩素酸ナトリウム水溶液を供給する形態であってもよい。また、図8に示すように、薬液供給装置101が、殺傷処理装置102とバラストタンク103との間に接続する薬液供給ライン109と、バラストポンプ106と殺傷処理装置102との間に接続する第2の薬液供給ライン809とを有し、殺傷処理前及び殺傷処理後の液体にそれぞれ次亜塩素酸ナトリウム水溶液を供給する形態であってもよい。
【0064】
(実施の形態2)
図9は、本発明の実施の形態2におけるバラスト水処理システムの構成を示す概略構成図である。図9において、図1と同じ構成要素には同じ符号を付している。
【0065】
本実施の形態2のバラスト水処理システムは、後処理装置901、バラストタンク103内のバラスト水を後処理装置901に供給するためのライン902、バラスト水をデバラストするための排出ライン(デバラストライン)903、及び還元剤供給装置(還元剤貯留タンク)904を備える以外は、実施の形態1のバラスト水処理システムの構成と同じである。本実施の形態2のバラスト水処理システムによれば、後処理装置901を備えるため、還元剤の使用量を低減することができる。
【0066】
ライン902は、一端がバラスト水供給ライン107に接続し、他端が後処理装置901に接続しており、バラスト水供給ライン107を通じて後処理装置901にバラストタンク103内のバラスト水を供給することができる。
【0067】
後処理装置901は、バラスト水排出時にバラスト水の次亜塩素酸ナトリウム濃度を排出基準以下にする及び又は還元剤の使用量を低減するための処理を行うための装置である。
【0068】
還元剤供給装置904は、排出するバラスト水の次亜塩素酸ナトリウムを還元させての次亜塩素酸ナトリウム濃度を排出基準以下にするためのものである。還元剤供給装置904は、排出ライン903に接続し、後処理装置901で処理された排出バラスト水に還元剤を供給できる。還元剤としては、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム等が挙げられる。
【0069】
排出ライン903は、排出するバラスト水の次亜塩素酸ナトリウム濃度を測定するために次亜塩素酸ナトリウム濃度計、及び排出するバラスト水に含まれる水生生物(特に微生物)の生細胞数を測定するために微生物検査装置等の装置を備えていてもよい。次亜塩素酸ナトリウム濃度計は、図9に示すように、少なくとも後処理装置901とバラストポンプ106との間、及び排出ライン903の排出端部(バラスト水の排出口付近)に配置されていることが好ましい。
【0070】
本実施の形態2のバラスト水処理システムを用いたバラスト水排出時におけるバラスト水の処理の一実施形態を説明する。
【0071】
バラストポンプ106を駆動させて、バラストタンク103からバラスト水の排出を開始する。バラストタンク103内のバラスト水は、バラスト水供給ライン107及びライン902を介して後処理装置901に供給される。後処理装置901において、次亜塩素酸ナトリウムの分解処理がされたバラスト水は、排出ライン903を介して殺傷処理装置102に供給され、船外に排出される。このとき、殺傷処理装置102において、排出するバラスト水に含まれる水生生物の処理を行ってもよい。
【0072】
なお、本実施の形態2では、排出ライン903が殺傷処理装置102と接続する形態を例にとり説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、排出ライン903が殺傷処理装置102に接続していなくてもよい。すなわち、バラスト水が、殺傷処理装置102を経由することなく排出される形態であってもよい。
【0073】
(実施の形態3)
図10は、本発明の実施の形態3におけるバラスト水処理システムの構成を示す概略構成図である。図10において、図1と同じ構成要素には同じ符号を付している。
【0074】
本実施の形態3のバラスト水処理システムは、次亜塩素酸ナトリウム水溶液を供給する液体のpHを次亜塩素酸ナトリウムのpKa以下に制御するための酸性液貯留槽1001、及びバラスト水供給ライン107がpHメータを備える以外は、実施の形態1のバラスト水処理システムの構成と同じである。
【0075】
本実施の形態3のバラスト水処理システムは、酸性液貯留槽1001を備えることにより、次亜塩素酸ナトリウムを供給する液体のpHを次亜塩素酸の殺傷能力に最適な範囲に制御し、その状態で次亜塩素酸ナトリウムの供給及び殺傷処理を行うことができる。このため、次亜塩素酸ナトリウムによる水生生物の殺滅処理の処理効率を向上できる。最適なpHとしては、例えば、4〜6であり、好ましくは略5である。
【0076】
(実施の形態4)
図11Aは、本発明の実施の形態4におけるバラスト水処理システムの構成を示す概略構成図である。図11Aにおいて、図1と同じ構成要素には同じ符号を付している。
【0077】
本実施の形態4におけるバラスト水処理システムは、バラスト水供給ライン107と、バラスト水供給ライン107に配置されたチャンバー1101と、チャンバーの排出口に配置された電気的殺傷処理装置102と、次亜塩素酸ナトリウム水溶液をバラスト水供給ライン107に供給するための薬液供給装置101とを備える。本実施の形態4のバラスト水処理システムによれば、取水口104から取水されたバラスト水を一時的にチャンバー1101内に貯留させながら電気的殺傷処理装置102に供給することができる。このため、電気的殺傷処理装置102に供給されるバラスト水の流速を略一定にすることができ、バラスト水中の水生生物が電気的殺傷処理装置102(特に、固定床)に接触する回数を増加させ殺傷処理効率を向上させることができる。本実施の形態4のバラスト水処理システムは、チャンバー1101を備えること、及び電気的殺傷処理装置102がチャンバー1101の排出口に配置されていること以外は、実施の形態1のバラスト水処理システムの構成と同様である。
【0078】
本実施の形態4のバラスト水処理システムを用いたバラスト水の処理は、例えば、以下のように行われる。まず、取水口104から取水されたバラスト水は、バラスト水供給ライン107を通じてチャンバー1101内に導入され、その後チャンバー1101の排出口を通じて電気的殺傷処理装置102に供給される。そこで電気的な殺傷処理が行われる。殺傷処理されたバラスト水はバラスト水供給ライン107に導入された後、薬液供給装置101から次亜塩素酸ナトリウム水溶液が供給され、そして、バラスト水供給ライン107を通じてバラストタンク103に貯留される。
【0079】
チャンバー1101の径は、バラスト水供給ライン107の管径よりも大きいことが好ましく、バラスト水供給ライン107との接続部からチャンバー1101の内部に向かってテーパー状に大きくなっていることがより好ましい。この構成によれば、チャンバー1101内のバラスト水の流速をバラスト水供給ライン107での流速よりもさらに遅くすることができる。このため、バラスト水中の水生生物が電気的殺傷処理装置102に接触する回数をさらに増加させることができる。チャンバー1101の排出口は、チャンバー1101底部に形成されていることが好ましい。この構成によれば、チャンバー1101底部から排出されるバラスト水を電気的殺傷処理装置102によって処理することができる。チャンバー1101内での流速が遅くなると、バラスト水中の水生生物がバラスト水との比重差によってチャンバー1101の底部に滞るため、水生生物と電気的殺傷処理装置102とが接触する回数をさらに増加させることができる。
【0080】
バラスト水供給ライン107は、さらにフィルターを備えていてもよい。図11Bに、本実施の形態4におけるバラスト水処理システムの構成のその他の例を示す概略構成図を示す。図11Bにおいて、図11Aと同じ構成要素には同じ符号を付している。本態様のバラスト水処理システムによれば、フィルター1102を備えることにより、例えば、バラストタンクに供給するバラスト水中のプランクトン類や、電気的殺傷処理装置102で殺傷処理された水生生物の死骸等を捕捉することができる。
【0081】
図11Bでは、フィルター1102が薬液供給装置101との接続部とバラストタンク103との間に配置された形態を示しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、殺傷処理装置102とバラストタンク103との間に配置してもよい。フィルター1102の数は特に制限されるものではなく、1個であってもよいし、2個以上であってもよい。フィルターを2個以上配置する場合は、例えば、図11Bに示すように、バラスト水供給ライン107を分岐させそれぞれに1個ずつのフィルターを配置してもよい。フィルター1102としては特に制限されるものではないが、例えば、孔径が10〜200μmのフィルターが使用できる。
【0082】
図12に、本実施の形態4のバラスト水処理システムの一部を示す部分図を示す。図12A及びBは、バラスト水供給ライン107において、殺傷処理装置102と薬液供給装置101とをつなぐ部分(図11Aにおいて破線で囲んだ部分)を取り出して示す図であって、殺傷処理装置102と薬液供給装置101とをつなぐ部分の形態の一例を示す。殺傷処理装置102と薬液供給装置101とをつなぐ部分は、例えば、図12Aに示すように、クランク状に屈折した屈折部となっていてもよいし、図12Bに示すように殺傷処理装置102から薬液供給装置101に向かって緩やかな上り勾配が形成された傾斜部であってもよい。バラスト水供給ライン107が屈折部を有する場合、薬液供給装置101は、図12Aに示すように、屈折部の上端付近に配置することが好ましい。バラスト水供給ライン107が傾斜部を有する場合、薬液供給装置101は、図12Bに示すように、傾斜部の上端付近に配置することが好ましい。これらの形態によれば、例えば、薬液供給装置101から供給される次亜塩素酸ナトリウム水溶液を殺傷処理装置102に供給することができる。これにより、殺傷処理装置102に残留する液体の次亜塩素酸ナトリウムによる殺菌処理を行うことができる。傾斜部の勾配は緩やかな勾配であれば特に制限されるものではないが、例えば、1/200以上であり、好ましくは1/100以上1/50以下である。傾斜部には、バルブが配置されていてもよい。これにより、殺傷処理装置102に供給する次亜塩素酸ナトリウム水溶液量を制御できる。
【0083】
本実施の形態4において、次亜塩素酸ナトリウム水溶液の供給と電気的殺傷処理装置の順番は特に制限されるものではなく、電気的殺傷処理装置の処理を行う前に、次亜塩素酸ナトリウム水溶液を供給してもよい。
【0084】
(実施の形態5)
図13は、本発明の実施の形態5におけるバラスト水処理システムの構成を示す概略構成図である。図13において、図1と同じ構成要素には同じ符号を付している。
【0085】
本実施の形態5におけるバラスト水処理システムは、バラスト水供給ライン107と、次亜塩素酸ナトリウム水溶液をバラスト水供給ライン107に供給するための薬液供給装置101と、バラスト水供給ライン107に配置されたチャンバー1301と、電気的殺傷処理装置1302とを備え、電気的殺傷処理装置1302はチャンバー1301内に配置されている。本実施の形態5のバラスト水処理システムによれば、電気的殺傷処理装置1302がチャンバー1301内に配置されているため、バラスト水供給ライン107から導入されたバラスト水をチャンバー1301内に貯留しながら電気的殺傷処理装置1302による殺傷処理を行うことができる。これにより、バラスト水の流速をバラスト水供給ライン107での流速よりも遅くすることができ、バラスト水中の水生生物が電気的殺傷処理装置1302に接触する回数を増加させることができる。本実施の形態5のバラスト水処理システムは、殺傷処理装置1302がチャンバー1301内に配置されている以外は、実施の形態1のバラスト水処理システムの構成と同様である。
【0086】
本実施の形態5のバラスト水処理システムを用いたバラスト水の処理は、例えば、以下のように行うことができる。まず、取水口104から取水されたバラスト水は、バラスト水供給ライン107を通じてチャンバー1301内に導入され、そこでバラスト水中の水生生物の電気的な殺傷処理が行われる。電気的殺傷処理装置1302は、チャンバー1301内において流速が遅い部分、例えば、チャンバー1301底部付近に配置されていることが好ましい。流速が遅くなると、バラスト水中の水生生物がバラスト水との比重差によってその部分に滞ることから、水生生物と電気的殺傷処理装置1302とが接触する回数をさらに増加させることができる。ついで、処理された液体がチャンバー1301からバラスト水供給ライン107に導入され、薬液供給装置101から次亜塩素酸ナトリウム水溶液が供給された後、バラストタンク103に導入される。
【0087】
チャンバー1301の排出口は、チャンバー1301の上部に形成されていることが好ましい。これにより、バラスト水供給ライン107に導入される液体中の水生生物量を低減させることができる。チャンバー1301の排出口は、チャンバー1301の導入口よりも低い位置に形成されていることが好ましい。また、チャンバー1301の排出口の径は、導入口の径よりも大きいことが好ましい。これらの構成によれば、チャンバー1301内のバラスト水の流速をバラスト水供給ライン107での流速よりもさらに遅くし、バラスト水中の水生生物が電気的殺傷処理装置1302に接触する回数をさらに増加させることができる。チャンバー1301において排出口の径と導入口の径との比(排出口:導入口)は特に制限されるものではないが、例えば、1:1.2〜1.5とすることができる。また、排出口に接続するラインの径は、チャンバー1301から薬液供給装置101に向かって徐々に大きくなることが好ましい。これにより、圧力損失の上昇を抑制することができる。
【0088】
チャンバー1301は、さらにバッフル等の整流部材を備えていてもよい。これにより、チャンバー1301内の流速を容易に一定にすることができる。また、整流部材は、電気的殺傷処理装置1302の上部に配置することが好ましい。この構成によれば、バラスト水中のより多くの水生生物を電気的殺傷処理装置1302側に集めることができ、電気的殺傷処理装置1302との接触回数をさらに増加させて殺傷処理効率を向上させることができる。
【0089】
チャンバー1301の底部には、一端が、船外又は排出ラインに接続するライン(図示せず)が接続していてもよい。このラインを通じて、チャンバー1301及び又は電気的殺傷処理装置1302に蓄積した滞留物やゴミ等を船外に排出することができる。
【0090】
バラスト水供給ライン107において、殺傷処理装置102と薬液供給装置101とをつなぐ部分は、実施の形態4と同様に、クランク状に屈折した屈折部となっていてもよいし、殺傷処理装置102から薬液供給装置101に向かって緩やかな上り勾配が形成された傾斜部であってもよい。これらの形態によれば、例えば、薬液供給装置101から供給される次亜塩素酸ナトリウム水溶液を、殺傷処理装置102が配置されたチャンバー1301に供給することができる。これにより、チャンバー1301内に残留する液体の次亜塩素酸ナトリウムによる殺菌処理を行うことができる。
【0091】
本実施の形態5において、次亜塩素酸ナトリウム水溶液の供給と電気的殺傷処理装置による処理の順番はこの順番に特に制限されるものではなく、電気的殺傷処理装置の処理を行う前に、次亜塩素酸ナトリウム水溶液を供給してもよい。
【0092】
(実施の形態6)
図14は、本発明の実施の形態6におけるバラスト水処理システムの構成を示す概略構成図である。図14において、図13と同じ構成要素には同じ符号を付している。
【0093】
本実施の形態6におけるバラスト水処理システムは、バラスト水供給ライン107と、次亜塩素酸ナトリウム水溶液をバラスト水供給ラインに供給するための薬液供給装置101と、バラスト水供給ライン107に配置されたチャンバー1301と、チャンバー1301内に配置された電気的殺傷処理装置1302とを備え、薬液供給装置101は、次亜塩素酸ナトリウム発生用の液体を取水するための取水ライン1410を有し、取水ライン1410はバラスト水供給ラインが接続する取水口104と接続し、かつ、バラスト水取水ポンプ106(例えば、バラストポンプ)とは異なる取水ポンプ116を備える。本実施の形態6のバラスト水処理システムは、薬液供給装置101が、取水口(シーチェスト)104と接続する取水ライン1410を有し、取水ライン1310がバラストポンプ106とは異なる取水ポンプ116を備える以外は、実施の形態5のバラスト水処理システムの構成と同様である。
【0094】
本実施の形態6のバラスト水処理システムによれば、バラストポンプ106とは異なる取水ポンプ116を備えるため、バラストポンプ106等を駆動させることなく取水することができる。このため、例えば、航行中であっても液体の取水及び次亜塩素酸ナトリウムの発生を容易に行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明は、船舶におけるバラスト水の処理において有用である。
【符号の説明】
【0096】
101 薬液供給装置
102 殺傷処理装置
103 バラストタンク
104 シーチェスト(取水口)
105,115 ストレーナ
106 バラストポンプ
107 バラスト水供給ライン
109 薬液供給ライン
110 取水ライン
114 第2の取水口
116 ポンプ
201 薬液供給装置
211 貯留槽
212 電解槽
213,214,217,218 ライン
219 処理槽
302 電解槽本体
303 ライン
311 固定床電極
312 給電用電極
313 電源
314,315 電極ターミナル
316 固定床
317 スペーサ
901 後処理装置
902,902,903 排出ライン
904 還元剤供給装置
1001 酸性液貯留槽
1101 チャンバー
1102 フィルター
1301 チャンバー
1302 電気的殺傷処理装置
1410 取水ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
取水口とバラストタンクとを接続するバラスト水供給ラインと、
前記ラインに配置され、前記取水口から取水された液体中の水生生物を電気的又は機械的に殺傷処理するための殺傷処理装置と、
前記ラインに接続し、前記取水口から取水された液体中の水生生物の殺滅処理を行うための次亜塩素酸ナトリウム水溶液を前記ラインに供給する薬液供給装置とを備え、
前記薬液供給装置は、前記バラスト水供給ラインが接続する取水口とは異なる第2の取水口と接続し、前記第2の取水口から取水された液体を電気分解して次亜塩素酸ナトリウムを発生させる、バラスト水処理システム。
【請求項2】
前記殺傷処理装置は、電解処理装置、又は遠心式固液分離装置である、請求項1記載のバラスト水処理システム。
【請求項3】
前記電解処理装置は、固定床型電極電解槽を備える、請求項2記載のバラスト水処理システム。
【請求項4】
前記電解処理装置は、クロスフロー方式又はデッドエンド方式である、請求項2又は3に記載のバラストシステム。
【請求項5】
前記薬液供給装置は、前記バラスト水供給ラインにおいて、前記ラインが接続する取水口と前記殺傷処理装置との間、及び又は前記殺傷処理装置と前記バラストタンクとの間に接続している、請求項1から4のいずれかに記載のバラスト水処理システム。
【請求項6】
さらに、バラスト水の排出時にバラスト水の次亜塩素酸ナトリウムを分解処理するための後処理装置を備える、請求項1から5のいずれかに記載のバラスト水処理システム。
【請求項7】
さらに、次亜塩素酸ナトリウム水溶液を供給する液体のpHを、次亜塩素酸のpKa以下に制御するための酸性液貯留槽を備える、請求項1から6のいずれかに記載のバラスト水処理システム。
【請求項8】
取水口から取水された液体中の水生生物を電気的又は機械的に殺傷処理すること、
取水口から取水された液体に次亜塩素酸ナトリウム水溶液を供給すること、及び
前記殺傷処理及び前記次亜塩素酸ナトリウム水溶液の供給を行った液体をバラストタンクに貯留することを含み、
さらに、前記取水口とは異なる第2の取水口から取水された液体を少なくとも含む次亜塩素酸ナトリウム製造のための液体を電気分解して、前記次亜塩素酸ナトリウム水溶液を製造することを含む、バラスト水処理方法。
【請求項9】
前記次亜塩素酸ナトリウム水溶液の供給は、前記電気的又は機械的な殺傷処理の前及び又は後に行う、請求項8記載のバラスト水処理方法。
【請求項10】
前記次亜塩素酸ナトリウム水溶液の製造は、航行中に行う、請求項8又は9に記載のバラスト水処理方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4A】
image rotate

【図4B】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11A】
image rotate

【図11B】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2013−39516(P2013−39516A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−177092(P2011−177092)
【出願日】平成23年8月12日(2011.8.12)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】