説明

バラスト水処理装置

【課題】紫外線照射装置を備えたバラスト水処理装置において、紫外線照射装置の清掃をより効果的に行うために、清掃用のブラシを清浄に保つ。
【解決手段】バラスト水中の生物・微生物を除去・殺滅するバラスト水処理装置は、紫外線照射装置7を備える。紫外線照射装置7は、紫外線ランプ17と、この紫外線ランプ17を液密に収容する保護管18と、この保護管18に収容された紫外線ランプ17が配置されるケース16と、保護管18の外面に接触しつつ保護管18に沿って移動する保護管清掃材27とを備える。保護管清掃材27には、光触媒が塗布されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バラスト水中の生物・微生物を除去・殺滅するバラスト水処理装置に関し、特に紫外線照射装置を備えたバラスト水処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
船舶は、積荷がないか積荷が少ない場合、プロペラを所望の水深まで沈めたり、船の重心を適正まで下げたりするために、バラスト水と呼ばれる水(海水、淡水または汽水)が船内に取り込まれる。典型的には、船舶は、荷揚港で積荷を降ろすと重心が上がるので、周囲の水を取り込んで重心を下げ、そのバラスト水は荷積港で周囲に排出される。
【0003】
ところが、荷揚港で取り込んだバラスト水が荷積港で排出されるので、バラスト水中に含まれる生物・微生物に起因して、周囲の生態系を破壊するという問題がある。そこで、バラスト水中の生物・微生物を除去・殺滅するバラスト水処理装置が知られており、このバラスト水処理装置には、たとえば紫外線照射装置が用いられる。
【0004】
紫外線照射装置は、保護管に液密に収容された紫外線ランプが、中空ケース内に設けられており、ケース内を通される液体に紫外線を照射して、液中の生物・微生物を殺滅する装置である。
【0005】
この紫外線照射装置では、使用に伴い紫外線ランプの保護管に汚れが付着すると、液体への紫外線の照射量を低下させ、所期の殺滅効果を得られないおそれがある。また、紫外線の反射による殺滅効果を得るためにケースの内面はバフがけされているが、このケースの内面にも汚れが付着すると、液体への紫外線の照射量を低下させ、所期の殺滅効果を得られないおそれがある。
【0006】
そこで、従来、下記各特許文献に開示されるように、紫外線ランプの保護管や、ケースの内面をブラシで清掃することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開昭49−129341号公報
【特許文献2】特開平9−168780号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来技術では、清掃用のブラシ自身に汚れが付着した場合に、それを解消することができず、効率よく確実な清掃ができない。そこで、本発明が解決しようとする課題は、より効果的に清掃するために、清掃用のブラシを清浄に保つことができ、また好ましくは汚れの付着をも防止できる紫外線照射装置を備えたバラスト水処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、前記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、バラスト水中の生物・微生物を除去・殺滅するバラスト水処理装置であって、紫外線照射装置を備え、この紫外線照射装置は、紫外線ランプと、この紫外線ランプを液密に収容する保護管と、この保護管に収容された前記紫外線ランプが配置されるケースと、前記保護管の外面に接触しつつ前記保護管に沿って移動する保護管清掃材とを備え、前記保護管清掃材には光触媒が塗布されていることを特徴とするバラスト水処理装置である。
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、紫外線ランプを収容する保護管を、保護管清掃材で清掃することができる。しかも、保護管清掃材には光触媒が塗布されているので、保護管清掃材に汚れが付着しても、清掃中あるいは停止時(非清掃時)に紫外線の照射を受けることで、光触媒のセルフクリーニング機能で保護管清掃材は清浄に保たれ、保護管の汚れを確実に除去できる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、前記ケースの内面に接触しつつ、前記保護管清掃材と共に前記保護管に沿って移動するケース清掃材をさらに備え、前記ケース清掃材にも光触媒が塗布されていることを特徴とする請求項1に記載のバラスト水処理装置である。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、紫外線照射装置のケース内面を、ケース清掃材で清掃することができる。しかも、ケース清掃材には光触媒が塗布されているので、ケース清掃材に汚れが付着しても、清掃中あるいは停止時(非清掃時)に紫外線の照射を受けることで、光触媒のセルフクリーニング機能でケース清掃材は清浄に保たれ、ケース内面の汚れを確実に除去できる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、前記紫外線ランプに通電した状態で、前記清掃材を移動させて清掃することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のバラスト水処理装置である。
【0014】
請求項3に記載の発明によれば、紫外線ランプからの紫外線を、前記清掃材の光触媒に当てつつ清掃することができる。これにより、光触媒のセルフクリーニング機能で清掃材を清浄に保ちつつ、効率よく清掃することができる。
【0015】
請求項4に記載の発明は、前記ケース内には、前記保護管が貫通されたスライドプレートが、前記保護管に沿って往復動可能に設けられ、前記スライドプレートには、前記保護管の貫通部に前記保護管清掃材が設けられる一方、外周部に前記ケースの内面に接触するケース清掃材が設けられ、前記保護管清掃材と前記ケース清掃材とは、それぞれブラシから形成され、前記保護管清掃材と前記ケース清掃材との内、少なくとも前記保護管清掃材を構成するブラシに、光触媒が塗布されていることを特徴とする請求項3に記載のバラスト水処理装置である。
【0016】
請求項4に記載の発明によれば、スライドプレートの保護管貫通部や外周部にブラシ状の清掃材を設け、少なくとも保護管清掃材に光触媒を塗布したので、保護管清掃材に汚れが付着しても、紫外線が照射されることで、光触媒のセルフクリーニング機能で保護管清掃材は清浄に保たれ、保護管の汚れを確実に除去できる。
【0017】
請求項5に記載の発明は、前記ケース清掃材は、前記紫外線ランプからの紫外線の照射を受けるよう設けられ、このケース清掃材を構成するブラシにも、光触媒が塗布されていることを特徴とする請求項4に記載のバラスト水処理装置である。
【0018】
請求項5に記載の発明によれば、スライドプレートの保護管貫通部や外周部にブラシ状の清掃材を設け、保護管清掃材とケース清掃材の双方に光触媒を塗布したので、各清掃材に汚れが付着しても、清掃中あるいは停止時(非清掃時)に紫外線の照射を受けることで、光触媒のセルフクリーニング機能で各清掃材は清浄に保たれ、保護管やケース内面の汚れを確実に除去できる。
【0019】
請求項6に記載の発明は、前記ケースの内面に、防汚塗料が塗布されるか、光触媒を含んだ塗料が塗布されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のバラスト水処理装置である。
【0020】
請求項6に記載の発明によれば、ケースの内面に防汚塗料などを塗布しておくことで、ケース内面への汚れの付着を未然に防止することができる。また、光触媒を含んだ塗料を塗布しておくことで、壁面付近での殺滅効果を向上することができる。
【0021】
さらに、請求項7に記載の発明は、前記紫外線照射装置による生物・微生物の殺滅処理の直前に、前記清掃材で清掃することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のバラスト水処理装置である。
【0022】
請求項7に記載の発明によれば、紫外線照射装置による生物・微生物の殺滅処理の直前に清掃しておくことで、バラスト水への紫外線の照射を確実に図ることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、紫外線照射装置を備えたバラスト水処理装置において、紫外線照射装置の清掃用のブラシを清浄に保つことができるので、紫外線照射装置をより効果的に清掃することができる。また、紫外線照射装置のケースの内面に防汚塗料や光触媒含有塗料を塗布すれば、紫外線照射装置への汚れの付着を防止することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明のバラスト水処理装置の一実施例を示す概略図である。
【図2】図1のバラスト水処理装置に用いられる紫外線照射装置の一例を示す概略斜視図である。
【図3】図2におけるIII−III断面図である。
【図4】図2におけるIV−IV断面図である。
【図5】図4の一部拡大図である。
【図6】図5の一部を切り欠いて示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の具体的実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明のバラスト水処理装置1の一実施例を示す概略図である。
【0026】
本実施例のバラスト水処理装置1は、船外からバラストタンク2への給水路3に、ポンプ4、給水弁5、フィルタ6、紫外線照射装置7、流量センサ8およびタンク入口弁9を順に備える。さらに、バラストタンク2には、ポンプ4の上流側への戻し路10も接続されており、この戻し路10にはタンク出口弁11が設けられている。
【0027】
また、給水路3には、ポンプ4の下流側と、紫外線照射装置7の上流側とを接続するように、バイパス路12が設けられており、このバイパス路12にはバイパス弁13が設けられている。さらに、給水路3には、タンク入口弁9の上流側に船外への排水路14が分岐するよう設けられており、この排水路14には排水弁15が設けられている。
【0028】
船外の水(海水、淡水または汽水)は、バラスト水として給水路3を介してバラストタンク2へ供給され貯留される。給水路3に設けたフィルタ6は、バラスト水が通されることで、バラスト水中に含まれる夾雑物を捕捉する。これにより、フィルタ6において、バラスト水中の生物・微生物の除去を図ることができる。そして、紫外線照射装置7では、バラスト水中の生物・微生物を紫外線により殺滅する。
【0029】
なお、流量センサ8は、紫外線照射装置7の作動中、紫外線照射装置7を通されるバラスト水の流量を監視する。この流量が所定よりも多ければ、紫外線照射装置7で所期の殺滅処理ができていないおそれがあるし、逆に流量が所定よりも少なければ、紫外線照射装置7が過熱するおそれがあるからである。
【0030】
図2から図6は、本実施例のバラスト水処理装置1に用いられる紫外線照射装置7の一例を示す概略図であり、図2は斜視図、図3は図2におけるIII−III断面図、図4は図2におけるIV−IV断面図、図5は図4の一部拡大図、図6は図5の一部を切り欠いて示す斜視図である。
【0031】
紫外線照射装置7は、バラスト水が通され、バラスト水に紫外線を照射して、バラスト水中の生物・微生物を殺滅する装置である。紫外線照射装置7は、バラスト水が通されるケース16内に一または複数の紫外線ランプ17が設けられており、各紫外線ランプ17は保護管(石英ガラス管)18内に液密に収容されている。
【0032】
ケース16は、本実施例では、バラスト水が通される本体ケース19と、この本体ケース19の中途部にフランジ19a(19b),20a(20b)を介して設けられる左右のカバーケース20,20とから構成される。本体ケース19は、本実施例では断面略矩形の筒体から構成され、その軸線方向両端部にはフランジ19c(19d),3a(3b)を介して給水路3の配管が接続される。
【0033】
紫外線ランプ17を液密に収容した保護管18は、図4に示すように、左右の側板23,24間に架け渡されて保持される。この側板23,24は、本体ケース19の左右のフランジ19a,19bに液密に保持される。そして、前述したように、本体ケース19の左右のフランジ19a,19bには、側板23,24を介してカバーケース20,20が設けられる。
【0034】
本体ケース19の内、左右の側板23,24間に挟まれた箇所を本体部25ということにする。この本体部25は、軸線を左右方向へ沿って配置された筒状とされ、その断面は特に問わないが、本実施例では略矩形状とされている。
【0035】
なお、保護管18(紫外線ランプ17)の本数や配置は、バラスト水の処理能力に応じて適宜に設定されるが、図示例の場合、図3に示すように、8本の保護管18が千鳥状に配置されている。
【0036】
左右の側板23,24間には、保護管18が貫通されたスライドプレート26が左右に移動可能に設けられる。本体ケース19の本体部25を、左右方向の軸線と直交する断面で見た場合(つまり図3の状態で)、スライドプレート26は、本体部25の断面形状に応じた形状に形成されており、本実施例では、本体部25より一回り小さい略矩形状の板材から形成されている。
【0037】
スライドプレート26には、保護管18が貫通する部分に保護管清掃材27が設けられる一方、外周部にはケース清掃材28が設けられている。つまり、スライドプレート26には、保護管18が通るように紫外線ランプの配列と同じ配列で貫通穴が形成されており、その貫通穴には円環状の保護管清掃材27が貫通穴の中心方向に向けて設けられ、その円環状の保護管清掃材27の穴に保護管18が通されている。また、スライドプレート26の外周部には、ケース清掃材28が設けられている。さらに、ケース16内に水がある状態でスライドプレート26を左右に移動可能とするために、スライドプレート26には適宜の開口(図示省略)が形成されている。
【0038】
保護管清掃材27およびケース清掃材28は、スクレーパなどでもよいが、本実施例ではブラシ(たとえばステンレス製ワイヤによるブラシ)から形成されている。具体的には、保護管清掃材27は、図6に示すように、スライドプレート26の前記貫通穴(保護管18の貫通部)に設けられる円環状の取付材29に、内方へのブラシ毛30を設けてなる。また、ケース清掃材28は、図3および図5に示すように、スライドプレート26の外周部を取り囲むよう設けられる環状の取付材31に、外方へのブラシ毛32を設けてなる。
【0039】
スライドプレート26の移動に伴い、保護管清掃材27は保護管18の外面に接触しつつ移動し、またケース清掃材28はケース16の本体部25の内面に接触しつつ移動する。
【0040】
保護管清掃材27とケース清掃材28との内、少なくとも保護管清掃材27には光触媒(具体的にはたとえば酸化チタン)が塗布されている。好ましくは、保護管清掃材27とケース清掃材28との双方のブラシ毛30,32に、光触媒が塗布されている。この光触媒は、紫外線ランプ17からの紫外線により、ブラシ毛30,32にセルフクリーニング機能を与える。
【0041】
ところで、保護管清掃材27は、紫外線ランプ17の保護管18の長手方向の一部において、その保護管18を周方向に取り囲むよう設けられる。従って、紫外線ランプ17に通電した際、保護管清掃材27には、紫外線ランプ17からの紫外線が必ず当たることになる。一方、ケース清掃材28は、スライドプレート26の外周部に設けられるため、必ずしも紫外線ランプ17からの紫外線が当たるとは限らない。そこで、ケース清掃材28にも光触媒を塗布する場合には、ケース清掃材28は、紫外線ランプ17からの紫外線の照射を受けるよう設けるのが好ましい。たとえば、図5に示すように、ケース清掃材28のブラシ毛32は、スライドプレート26の板面よりも左右方向外側へ延出して設けるのがよい。
【0042】
スライドプレート26の左右方向の可動は、本実施例ではネジ棒33によって行われる。具体的には、側板23,24間にはネジ棒33が回転可能に架け渡されており、このネジ棒33にスライドプレート26の中央に設けた雌ネジを螺合させることで、スライドプレート26が進退可能となっている。また、ネジ棒33の一端部は、カップリング34を介してモータ35に接続されており、このモータ35により、ネジ棒33を正転または逆転させることができる。従って、モータ35によりネジ棒33を回転させることで、保護管18に沿ってスライドプレート26をスライドさせることができる。
【0043】
スライドプレート26を安定して左右へ移動させるために、側板23,24間に複数本のガイドシャフト36が設けられている。このガイドシャフト36は、本体部25の断面が矩形状の場合、対角位置、上下対称位置、左右対称位置、または四つのコーナ部に設けられ、本体部25の断面が円形の場合、半径距離を等しくして円周を均等に分割するように設けられる。但し、ガイドシャフト36の本数があまりに増えると紫外線の影を作ってしまうので、紫外線ランプの配列によって紫外線の照射効果の低下をできる限り抑制するように適宜設定する必要がある。
【0044】
複数本のガイドシャフト36の内、一本のガイドシャフト36は、スライドプレート26と共に左右に移動するスライドシャフト37とされる。このスライドシャフト37は、図4に示すように、左右の側板23,24を液密に貫通しており、長手方向中央部がスライドプレート26に固定されている。また、スライドシャフト37の左右両端部には、それぞれ突部38,39が設けられている。
【0045】
スライドプレート26が左右の側板23,24間の左端部まで移動すると、スライドシャフト37の右側の突部39が右側の側板24のリミットスイッチ40を操作して、スライドプレート26が左端部にあることを検出できる。逆に、スライドプレート26が左右の側板23,24間の右端部まで移動すると、スライドシャフト37の左側の突部38が左側の側板23のリミットスイッチ41を操作して、スライドプレート26が右端部にあることを検出できる。バラスト水中の生物・微生物の殺滅処理中、スライドプレート26を、左右の側板23,24間の一端部(左端部または右端部)に配置して収納しておくのが好ましい。これにより、紫外線ランプ17からの紫外線がスライドプレート26によって遮られないので(つまりスライドプレート26により紫外線の光に影ができないので)、殺滅効果が低下してしまうおそれがない。また、スライドプレート26の位置を決めておけば、電源が不意にオフされても、左右の側板23,24間の一端側に移動して停止するようにしておくことで、電源が再投入された際、スライドプレート26の位置検出が容易となる。
【0046】
ところで、ケース16の内面(特に左右の側板23,24間の本体部25の内面)には、紫外線透過性を持つ防汚塗料を塗布しておくか、光触媒を含んだ塗料(たとえば光触媒を混ぜ込んだ前記防汚塗料)を塗布しておくのが好ましい。前記防汚塗料は、特に問わないが、たとえば、株式会社KRI(アドバンスド材料研究部)製の超親水性シリカ系コーティング液を用いることができる。ケース16の内面にこのような塗料を塗布しておくことで、ケース16の内面への汚れの付着を未然に防止することができる。また、光触媒を添加した塗料を塗布しておくことで、壁面付近での洗浄効果を向上することができる。
【0047】
次に、本実施例のバラスト水処理装置1の運転について説明する。まず、バラスト水の給排水工程などについて説明し、その後、保護管18などの清掃工程について説明する。
【0048】
(1)バラストタンク2への給水
船外からバラスト水をくみ上げてバラストタンク2へ給水する際、バラスト水中の夾雑物をフィルタ6で除去すると共に、バラスト水中の生物・微生物を紫外線照射装置7による紫外線で殺滅する。但し、紫外線照射装置7は、紫外線ランプ17に通電しても、殺滅処理に用いるための所定照度になるまで、ある程度の時間を要するので、それまでは、くみ上げた水は、バラストタンク2へ供給せずに、排水路14を介して排水する。
【0049】
すなわち、バラストタンク2への給水開始に先立ち、まずは、タンク入口弁9、タンク出口弁11およびバイパス弁13を閉じる一方、給水弁5および排水弁15を開けた状態で、ポンプ4および紫外線照射装置7を作動させる。これにより、くみ上げられた水は、紫外線ランプ17が所定照度になるまで、排水路14から捨てられる。
【0050】
紫外線照射装置7に設けたUV照度センサ(図示省略)により、紫外線の照度が所定まで高まると、排水弁15を閉じる一方、タンク入口弁9を開ければよい。これにより、紫外線照射装置7により生物・微生物を殺滅後のバラスト水をバラストタンク2に供給し貯留することができる。
【0051】
(2)バラストタンク2からの排水
バラスト水中の生物・微生物の殺滅処理が、バラストタンク2への給水時に既に行われていても、バラストタンク2からの排水時にも、念のため、もう一度、バラスト水中の生物・微生物の殺滅処理を行うのが好ましい。
【0052】
すなわち、給水弁5およびタンク入口弁9を閉じる一方、タンク出口弁11、バイパス弁13および排水弁15を開けた状態で、ポンプ4および紫外線照射装置7を作動させればよい。これにより、バラストタンク2内のバラスト水は、戻し路10およびバイパス路12を介して紫外線照射装置7を通された後、排水路14を介して船外へ排出される。なお、紫外線ランプ17に通電後、紫外線ランプ17が所定照度になるまで、タンク入口弁9を開ける一方、排水弁15を閉じておくことで、バラストタンク2と紫外線照射装置7との間でバラスト水を循環させてもよい。
【0053】
(3)保護管18およびケース16の清掃
保護管清掃材27による保護管18外面の清掃や、ケース清掃材28によるケース16内面の清掃は、モータ35を制御して、スライドプレート26を適宜往復動させることで行われる。
【0054】
清掃は、バラストタンク2への給水前もしくは給水後、またはバラストタンク2からの排水前もしくは排水後に行うことができる。特に、紫外線照射装置7による生物・微生物の殺滅処理の直前に行うのが好ましい。たとえば、バラストタンク2への給水に先立ち、前述したように紫外線ランプ17に通電後、紫外線ランプ17が所定照度に達した時点から清掃を開始する。あるいは、紫外線ランプ17に通電後、紫外線ランプ17が所定照度に到達するまでの間、または所定照度に到達する時点を挟んだ前後に、清掃を行うことができる。いずれにしても、清掃材表面に塗布した光触媒が紫外線の照射によってセルフクリーニング機能を発揮できる照度になってから清掃を行うのが望ましい。殺滅処理の前に、保護管18などの汚れを除去しておくことで、紫外線の照度を適正に確保して、バラスト水中の生物・微生物の殺滅を確実に行うことができる。
【0055】
清掃は、紫外線ランプ17に通電しない状態で行ってもよいし、紫外線ランプ17に通電した状態で行ってもよい。紫外線ランプ17に通電しない状態で清掃する場合には、被清掃面に付着した鉄分や砂、硬度分などが、清掃材27,28による物理的な接触によって除去される。紫外線ランプ17に通電しない状態で清掃した後、バラスト水処理のために紫外線ランプ17が点灯されると、清掃材27,28に塗布した光触媒が活性化されるので、清掃材27,28を清浄に保つことができる。一方、紫外線ランプ17に通電した状態で清掃する場合には、清掃材27,28に汚れが付着しても、清掃材27,28に塗布した光触媒に紫外線が照射されることで、光触媒のセルフクリーニング機能で清掃材27,28は清浄に保たれ、常に快適な清掃を行うことができる。このようにして、被清掃面に付着した油分やイオン物質なども除去することができる。保護管18を清掃することで、紫外線照度の低下を防止することができる。また、ケース16の内面を清掃することで、紫外線の反射効果を維持することができる。
【0056】
本発明のバラスト水処理装置1は、前記実施例の構成に限らず適宜変更可能である。たとえば、前記実施例では、ケース16の本体部25は、断面略矩形としたが、断面形状は特に問わず、たとえば断面円形としてもよい。
【0057】
また、前記実施例では、保護管清掃材27とケース清掃材28との双方に光触媒を塗布したが、場合により、ケース清掃材28への光触媒の塗布は省略してもよい。また、前記実施例では、スライドプレート26には、保護管清掃材27とケース清掃材28とを設けたが、場合により、ケース清掃材28の設置は省略してもよい。
【0058】
さらに、バラスト水処理装置1は、さらに電解装置を備えていてもよい。この電解装置は、バラストタンク2への給水時、くみ上げた海水中に含まれる塩分によって次亜塩素酸を発生させ、それによりバラスト水中の生物・微生物を殺滅する装置である。
【符号の説明】
【0059】
1 バラスト水処理装置
7 紫外線照射装置
16 ケース
17 紫外線ランプ
18 保護管
26 スライドプレート
27 保護管清掃材
28 ケース清掃材
30 (保護管清掃材の)ブラシ毛
32 (ケース清掃材の)ブラシ毛

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バラスト水中の生物・微生物を除去・殺滅するバラスト水処理装置であって、
紫外線照射装置を備え、この紫外線照射装置は、
紫外線ランプと、
この紫外線ランプを液密に収容する保護管と、
この保護管に収容された前記紫外線ランプが配置されるケースと、
前記保護管の外面に接触しつつ前記保護管に沿って移動する保護管清掃材とを備え、
前記保護管清掃材には光触媒が塗布されている
ことを特徴とするバラスト水処理装置。
【請求項2】
前記ケースの内面に接触しつつ、前記保護管清掃材と共に前記保護管に沿って移動するケース清掃材をさらに備え、
前記ケース清掃材にも光触媒が塗布されている
ことを特徴とする請求項1に記載のバラスト水処理装置。
【請求項3】
前記紫外線ランプに通電した状態で、前記清掃材を移動させて清掃する
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のバラスト水処理装置。
【請求項4】
前記ケース内には、前記保護管が貫通されたスライドプレートが、前記保護管に沿って往復動可能に設けられ、
前記スライドプレートには、前記保護管の貫通部に前記保護管清掃材が設けられる一方、外周部に前記ケースの内面に接触するケース清掃材が設けられ、
前記保護管清掃材と前記ケース清掃材とは、それぞれブラシから形成され、
前記保護管清掃材と前記ケース清掃材との内、少なくとも前記保護管清掃材を構成するブラシに、光触媒が塗布されている
ことを特徴とする請求項3に記載のバラスト水処理装置。
【請求項5】
前記ケース清掃材は、前記紫外線ランプからの紫外線の照射を受けるよう設けられ、
このケース清掃材を構成するブラシにも、光触媒が塗布されている
ことを特徴とする請求項4に記載のバラスト水処理装置。
【請求項6】
前記ケースの内面に、防汚塗料が塗布されるか、光触媒を含んだ塗料が塗布されている
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のバラスト水処理装置。
【請求項7】
前記紫外線照射装置による生物・微生物の殺滅処理の直前に、前記清掃材で清掃する
ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のバラスト水処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−43143(P2013−43143A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−183910(P2011−183910)
【出願日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【Fターム(参考)】