説明

バラスト水浄化装置、船舶及びバラスト水浄化方法

【課題】船舶に貯留されたバラスト水を排出するときには、バラスト水に含まれる微生物や細菌が基準値を満たすことができるようなバラスト水の浄化を実現できるバラスト水浄化装置を提供することにある。
【解決手段】バラスト水浄化装置は、船舶3内でバラスト水を貯留する貯留タンク30と、貯留タンク30に積み込むバラスト水を濾過する濾過装置21と、航海中または航海後のバラスト水の排出時に、貯留タンク30に貯留されたバラスト水を殺菌処理する殺菌処理装置31を備えた構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、一般的には船舶に貯留されるバラスト水の浄化を行うためのバラスト水浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、石油タンカーや貨物運搬船などの船舶においては、石油等の貨物を輸入国まで運搬し、当該貨物を港で荷卸した後は、同重量程度の海水を船内のタンク内に貯留させることが行なわれる。この海水を船内に貯留させるのは、貨物を荷卸した後に船内が軽くなることにより、航海上でバランスがくずれるのを未然に回避するためである。即ち、船舶は、ある程度の重量が無ければ航海ができないためである。
【0003】
このような船舶のバランスを取るための海水(または真水でもよい)は、バラスト水と呼ばれている。前記のような貨物の輸入国は、いわばバラスト水の輸出国ということになる。
【0004】
一方、バラスト水を貯留した船舶は、輸入国から貨物の輸出国などに向けて航海し、当該輸出国の近海中にバラスト水を排出する。従って、貨物の輸出国等は、いわばバラスト水の輸入国ということになる。
【0005】
ところで、バラスト水は、バラスト水の輸出国の近海中に生存している特異的な悪性の微生物や細菌などを含む場合がある。例えば、日本の近海中には、赤潮プランクトンと呼ばれる微生物が生存していることが知られている。このため、輸出国としての日本から他国にバラスト水が運搬された場合に、その他国の近海中で赤潮プランクトンが大量に発生するような事態が予想される。また、コレラ菌等の悪性細菌が他国で異常発生するなど、バラスト水を介した水生生物の国際的な移動の問題が発生している。
【0006】
そこで、船舶のバラスト水及び沈殿物の規制及び管理のための国際条約(以下、バラスト条約と略す)が、2004年2月13日に英国(ロンドン)において、参加国74カ国により採択された。この条約では、バラスト水の輸入国内の近海に、バラスト水を排出するときの排出基準として、いわゆるバラスト水排水の生物基準が設定されている。この基準を満たさなければ、バラスト水の輸入国はバラスト水の排水、すなわちバラストの受け入れを拒否できるということになる。
【0007】
バラスト水排水の生物基準としては、具体的には、動植物プランクトンなどの微生物では「10個/m」以下である。また、細菌では、コレラ菌の場合には「1個/100ml」以下であり、大腸菌の場合には「250個/100ml」以下であり、腸球菌の場合には「100個/100ml」以下である。
【0008】
以上のようなバラスト水の取り扱いに関して、船内にバラスト水を貯留する前に浄化し、この浄化したバラスト水を船内に積み込むバラスト水浄化技術が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。このようなバラスト水浄化技術を利用することにより、例えば貨物輸送船がバラスト水の輸入国まで航海し、この輸入国に着港した後に、貯留していたバラスト水を港内に排出する場合に、既に浄化されたバラスト水を排出できる。
【0009】
また、従来のバラスト水の浄化方法として、船内に熱処理を主体としたバラスト水浄化装置を配置して、船内バラスト水を循環浄化するバラスト水浄化技術が提案されている(例えば、特許文献2を参照)。さらに、船内のバラスト水浄化装置として、バラスト水に殺菌剤を混入可能な殺菌剤混入装置と、排水中のバラスト水に空気を吹き込み可能な装置とを含むバラスト水浄化装置が提案されている(例えば、特許文献3を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2004−25040号公報
【特許文献2】特開2004−284481号公報
【特許文献3】特開平4−322788号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
前述のバラスト水浄化技術を利用した方式には、以下のような課題がある。
【0012】
第1に、船内に浄化した後のバラスト水を積み込んだ場合でも、殺菌しきれなかった残存微生物が航海中に増殖することがある。この場合には、バラスト水を輸入国の港内などに排出することはできない。
【0013】
一般的に、濾過装置や殺菌装置などの浄化装置によりバラスト水を浄化しても、バラスト水中に含まれる微生物や細菌が多量に存在したり、あるいはそれらの中に浄化装置に対して抵抗性を有するものが存在する等の原因により、船内に積み込まれたバラスト水の中には微生物や細菌が残存する可能性が高い。
【0014】
第2に、航海中に、船内の貯留タンクに貯留されたバラスト水に、空気中から微生物や細菌が混入する可能性がある。特に、バラスト水の輸出国の近海では、海中の微生物などが飛沫となって気相中に浮遊しているため、船内の貯留タンクに混入する可能性がある。
【0015】
従って、船内に浄化した後のバラスト水を積み込んだ後に、空気中から混入した微生物や細菌が航海中に増殖し、結果としてバラスト水を輸入国の港内などに排出することはできない事態となる。
【0016】
そこで、本発明の目的は、船舶に貯留されたバラスト水を排出するときには、バラスト水に含まれる微生物や細菌が基準値を満たすことができるようなバラスト水の浄化を実現できるバラスト水浄化装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本実施形態によれば、バラスト水浄化装置は、バラスト水を貯留する貯留タンクを有する船舶に適用するバラスト水浄化装置において、前記貯留タンクに貯留するバラスト水を濾過する濾過手段と、前記船舶の航海中または前記バラスト水の排出時に、前記貯留タンクに貯留されたバラスト水を殺菌処理する殺菌手段と、前記貯留タンクに貯留されたバラスト水を前記殺菌手段に供給する給水手段とを備えた構成である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1の実施形態に関するバラスト水浄化装置の構成を説明するための図。
【図2】第2の実施形態に関するバラスト水浄化装置の構成を説明するための図。
【図3】第3の実施形態に関するバラスト水浄化装置の構成を説明するための図。
【図4】第4の実施形態に関するバラスト水浄化装置の構成を説明するための図。
【図5】第5の実施形態に関するバラスト水浄化装置の構成を説明するための図。
【図6】第6の実施形態に関するバラスト水浄化装置の構成を説明するための図。
【図7】第7の実施形態に関するバラスト水浄化装置の構成を説明するための図。
【図8】第8の実施形態に関するバラスト水浄化装置の構成を説明するための図。
【図9】第8の実施形態に関する殺菌処理装置の構造を説明するための図。
【図10】第9の実施形態に関するバラスト水浄化装置の構成を説明するための図。
【図11】第10の実施形態に関するバラスト水浄化装置の構成を説明するための図。
【図12】第11の実施形態に関するバラスト水浄化装置の構成を説明するための図。
【図13】第12の実施形態に関するバラスト水浄化装置の構成を説明するための図。
【図14】第13の実施形態に関するバラスト水浄化装置の構成を説明するための図。
【図15】第14の実施形態に関するバラスト水浄化装置の構成を説明するための平面図。
【図16】第15の実施形態に関するバラスト水浄化装置の構成を説明するための図。
【図17】第16の実施形態に関するバラスト水浄化装置の構成を説明するための図。
【図18】第17の実施形態に関するバラスト水浄化装置の構成を説明するための図。
【図19】第18の実施形態に関するバラスト水浄化装置の構成を説明するための図。
【図20】第19の実施形態に関するバラスト水浄化装置の構成を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下図面を参照して、実施形態を説明する。
【0020】
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態に関するバラスト水浄化装置の構成を説明するための図である。
【0021】
本実施形態のバラスト水浄化装置は、船舶外の例えば港の地上設備2と、船舶3に搭載される設備とに大別される。
【0022】
地上設備2は、例えば港内(バラスト水の輸出国)の海水であるバラスト水1(以下、バラスト原水と表記する場合がある)を汲み上げるポンプ20と、濾過装置21と、水配管22〜24とを有する。濾過装置21は、例えばバラスト原水1の浮遊物質を除去する膜濾過装置である。
【0023】
一方、例えば貨物運搬船などの船舶3には、バラスト水を貯留するための貯留タンク30、殺菌処理装置31、貯留タンク30から殺菌装置31にバラスト水を供給するためのポンプ32と水配管33、及び殺菌処理装置31により殺菌されたバラスト水を港内(バラスト水の輸入国)に排出するための水配管34が設けられている。なお、船舶3には、貨物を貯留するための貨物貯留部35が設けられている。殺菌処理装置31は、バラスト水に含まれる微生物や細菌を殺菌するための例えば紫外線式殺菌装置である。
【0024】
以下、本実施形態のバラスト水浄化装置の作用効果を説明する。
【0025】
まず、船舶3は、航海前に、バラスト水の輸出国の港内に停泊しているときに、地上設備2の水配管23を介して濾過装置21の出口と、貯留タンク30とが接続される。ここで、濾過装置21の排水用出口からの廃水は、水配管24を介してバラスト原水1が存在する港内に戻される。
【0026】
地上設備2では、ポンプ20の駆動により、港内からバラスト原水1が水配管22を介して汲み上げられて、濾過装置21の入口に送られる。濾過装置21では、バラスト原水1中に存在する一定以上の大きさの浮遊物質が膜(例えば10μmのポアサイズ)表面に捕獲されて、それ以下の大きさの浮遊物質や溶解性液体を含むバラスト水のみが膜を通過し、水配管23を介して貯留タンク30内に供給される。一方、濾過装置21では、膜表面に捕獲された浮遊物質を含む液体(廃水)は、水配管24を介して元のバラスト原水1が存在する港内に戻される。
【0027】
次に、船舶3は、バラスト水の輸出国の港内から輸入国に向けて航海を始める。この航海後に、当該輸入国の例えば港内または近海において、船舶3では、ポンプ21を駆動することにより、貯留タンク30に貯留されたバラスト水は、水配管33を介して殺菌処理装置31に供給される。
【0028】
殺菌処理装置31は、例えば紫外線殺菌能力により、バラスト水中に残存する微生物や細菌を、例えば所定の基準値(前述のバラスト水排水の生物基準)を満たすまで殺菌処理して、水配管34に送り出す。水配管34を介して、貯留タンク30に貯留されたバラスト水は殺菌処理後に、輸入国の港内または近海の海水4の中に排出される。
【0029】
ここで、船舶3がバラスト水の輸入国の港または近海に到着した航海後に、殺菌処理装置31を起動して、貯留タンク30に貯留されたバラスト水の殺菌処理を実行する場合について説明したが、航海中に殺菌処理を実行してもよい。即ち、輸入国の港または近海に到着の前の航海中に、殺菌処理装置31を起動してもよい。この場合には、殺菌処理されたバラスト水の一部は、港または近海以外の公海に排出されることになる。
【0030】
通常では、航海後の殺菌処理では、約1日間の停泊時間内に殺菌処理を完了させる必要があるが、航海中であれば例えば1〜2週間の航海期間をかけて殺菌処理を行うことができる。このため、船舶3に搭載する殺菌処理装置31は相対的に殺菌能力が小さいものでよく、船舶3上での殺菌処理装置31の設置面積や動力等を低減できる効果がある。
【0031】
以上のように本実施形態のバラスト水浄化装置を使用することにより、船舶の航海前に濾過装置21により濾過されたバラスト水を船舶内に積み込み、さらに、航海中または航海後に当該バラスト水を殺菌処理した後に排出する。従って、船舶内に積み込まれたバラスト水中に濾過されずに残存している微生物や細菌、及び航海中に空気中から混入した微生物や細菌を、所定の基準値(バラスト水排水の生物基準)を満たすまで殺菌処理した後のバラスト水を排出することができる。即ち、バラスト水排水の生物基準を満たすように、バラスト水の排出時の浄化を実現することができる。
【0032】
なお、本実施形態の濾過装置21は、浮遊物質を除去するための膜濾過装置を想定しているが、これに限ることなく他の装置でもよい。具体的には、砂濾過装置、凝集沈殿処理装置、スクリーン処理装置などである。
【0033】
砂濾過装置は、膜濾過装置よりも大流量処理が可能である。凝集沈殿処理装置は、PACや硫酸鉄等の凝集剤を注入して、浮遊物質を大きな塊状物質として、その後に砂濾過によりその塊状物質を除去する。凝集沈殿処理装置の特徴は、膜濾過装置や砂濾過装置よりも、粒径が小さいコロイド状物質も除去可能となり、後段の殺菌処理の効率を向上できる効果がある。また、スクリーン処理装置は、1〜20mm程度のメッシュのあるスクリーンにより浮遊物質を除去するものであり、砂濾過装置よりもさらに大流量処理が可能となる。
【0034】
また、本実施形態の殺菌処理装置31は、紫外線式殺菌装置を想定しているが、これに限ることなく他の装置でもよい。具体的には、薬品注入処理装置、電気処理装置、オゾン処理装置、OHラジカル処理装置などである。
【0035】
薬品注入処理装置は、微生物や細菌の殺菌能力を有する薬品である次亜塩素酸ナトリウム溶液、塩素溶液、固形塩素、二酸化塩素等の塩素剤、あるいは過酸化水素を注入して殺菌処理を行うものである。電気処理装置は、水中に2極の電圧をかけて電気的に殺菌処理を行うものであり、プラズマ放電や高電圧処理も含む。
【0036】
オゾン処理装置は、オゾンガスを水中に注入してオゾンの酸化力によって殺菌処理するものである。オゾン処理装置は殺菌処理のみならず、バラスト水から臭気物質や着色物質も除去することが可能である。OHラジカル処理装置は、二酸化チタン等の光触媒と紫外線、オゾンと紫外線、オゾンと過酸化水素、あるいはオゾン、紫外線及び過酸化水素の組合せによる併用処理によって、強力な酸化剤であるOHラジカルを発生して殺菌処理を行うものである。OHラジカル処理装置は殺菌処理のみならず、有機性の汚濁物質も除去することが可能となる。
【0037】
(第2の実施形態)
図2は、第2の実施形態に関するバラスト水浄化装置の構成を示す図である。
【0038】
本実施形態の装置は、地上設備2において、濾過装置21の出口に接続された水配管23中に配置された殺菌処理装置25(前処理用殺菌処理装置)を備えた構成である。なお、第1の実施形態に関する図1に示すバラスト水浄化装置と同様の構成要素については、同一符号を付して説明を省略する。
【0039】
以下、本実施形態のバラスト水浄化装置の作用効果を説明する。
【0040】
まず、船舶3は、航海前に、バラスト水の輸出国の港内に停泊しているときに、地上設備2の水配管23を介して濾過装置21の出口と、貯留タンク30とが接続される。地上設備2では、ポンプ20の駆動により、港内からバラスト原水1が水配管22を介して汲み上げられて、濾過装置21の入口に送られる。
【0041】
ここで、濾過装置21により浮遊物質が除去されたバラスト水は、水配管23を介して貯留タンク30内に供給されるとき、殺菌処理装置25を通過することで殺菌処理される。従って、航海前に、微生物や細菌が殺菌処理されたバラスト水が、貯留タンク30内に供給される。なお、貯留タンク30に貯留されたバラスト水中に残存又は混入した微生物や細菌は、前述の第1の実施形態と同様に、航海中または航海後に船舶3上の殺菌処理装置31により殺菌処理される。
【0042】
以上のようにして、船舶内に積み込まれたバラスト水は、所定の基準値(バラスト水排水の生物基準)を満たすまで殺菌処理した後に排出されることになる。即ち、バラスト水排水の生物基準を満たすように、バラスト水の排出時の浄化を実現することができる。
【0043】
また、本実施形態によれば、予め航海前にバラスト水中の微生物や細菌を殺菌処理することにより、航海中または航海後の殺菌処理を行う殺菌処理装置31の運転負荷を相対的に低減できる。
【0044】
(第3の実施形態)
図3は、第3の実施形態に関するバラスト水浄化装置の構成を示す図である。
【0045】
本実施形態の装置は、地上設備2において、濾過装置21の出口に接続された水配管23中に殺菌物質としての薬品を注入する前処理用殺菌処理装置を備えた構成である。なお、第1の実施形態に関する図1に示すバラスト水浄化装置と同様の構成要素については、同一符号を付して説明を省略する。
【0046】
前処理用殺菌処理装置は、殺菌物質としての薬品である次亜塩素酸ナトリウム溶液を貯留するタンク26、配管27、及びポンプ28を有する。
【0047】
以下、本実施形態のバラスト水浄化装置の作用効果を説明する。
【0048】
まず、船舶3は、航海前に、バラスト水の輸出国の港内に停泊しているときに、地上設備2の水配管23を介して濾過装置21の出口と、貯留タンク30とが接続される。地上設備2では、ポンプ20の駆動により、港内からバラスト原水1が水配管22を介して汲み上げられて、濾過装置21の入口に送られる。
【0049】
ここで、ポンプ28を駆動することにより、タンク26中の次亜塩素酸ナトリウム溶液が、配管27を介して水配管23に供給される。従って、濾過装置21により浮遊物質が除去されたバラスト水は、水配管23を介して次亜塩素酸ナトリウム溶液と混合接触しながら、貯留タンク30内に送られる。
【0050】
以上のようにして、航海前に、船舶3内に積み込まれるバラスト水は、濾過処理後さらに薬品により殺菌処理される。この場合、次亜塩素酸ナトリウム溶液などの薬品は、水中での残留性が高いので、貯留タンク30中に供給された後、航海中にもその残留性による殺菌能力が継続されることになる。従って、貯留タンク30中に残存又は混入する微生物や細菌に対しても殺菌効果があり、航海中でのバラスト水の浄化状態を維持することができる。
【0051】
なお、航海後には、船舶内に積み込まれたバラスト水は、船舶3に搭載された殺菌処理装置31により殺菌処理された後に排出されることになる。従って、バラスト水排水の生物基準を満たすだけでなく、排出時に高水準の浄化を実現することが可能となる。
【0052】
(第4の実施形態)
図4は、第4の実施形態に関するバラスト水浄化装置の構成を示す図である。
【0053】
本実施形態のバラスト水浄化装置は、船舶3上に搭載された設備から構成されている。即ち、船舶3の設備として、例えば港内の海水であるバラスト原水1を汲み上げるポンプ42と、濾過装置41と、水配管43〜45とを有する。濾過装置41は、例えばバラスト原水1の浮遊物質を除去する膜濾過装置である。
【0054】
なお、これ以外の殺菌処理装置31に関係する設備については、第1の実施形態に関する図1に示すバラスト水浄化装置と同様であり、同一符号を付して説明を省略する。
【0055】
以下、本実施形態のバラスト水浄化装置の作用効果を説明する。
【0056】
まず、船舶3は、航海前に、バラスト水の輸出国の港内に停泊しているときに、ポンプ42の駆動によりバラスト原水1を汲み上げて、水配管43を介して濾過装置41に送り込む。
【0057】
濾過装置41は、バラスト原水1中に存在する一定以上の大きさの浮遊物質を濾過して、水配管45を介して貯留タンク30内に供給する。一方、濾過装置41では、膜表面に捕獲された浮遊物質を含む液体(排水)は、水配管44を介して元のバラスト原水1が存在する港内に戻される。
【0058】
本実施形態によれば、濾過装置41に関係する設備が船舶3に搭載されているため、船舶3を港内の地上設備2に連結させる必要がない。このため、船舶3は、港内の任意の位置で停泊し、バラスト原水1を積み込むことができる。また、前述の地上設備2が設置されていない港の場合でも、船舶3は、濾過装置41による浄化処理を行った後に、当該港内からバラスト原水1を積み込むことができる。
【0059】
(第5の実施形態)
図5は、第5の実施形態に関するバラスト水浄化装置の構成を示す図である。
【0060】
本実施形態のバラスト水浄化装置は、地上設備2に相当する設備を搭載した浄化装置積載船5(以下濾過処理専用船と表記する)を含む構成である。
【0061】
濾過処理専用船5は、例えば港内の海水であるバラスト原水1を汲み上げるポンプ52と、濾過装置51と、水配管53,54とを有する。濾過装置51は、例えばバラスト原水1の浮遊物質を除去する膜濾過装置である。
【0062】
なお、これ以外の殺菌処理装置31に関係する設備については、第1の実施形態に関する図1に示すバラスト水浄化装置と同様であり、同一符号を付して説明を省略する。
【0063】
以下、本実施形態のバラスト水浄化装置の作用効果を説明する。
【0064】
まず、船舶3は、航海前に、バラスト水の輸出国の港内に停泊しているときに、濾過処理専用船5に接近し、当該専用船5の水配管54を介して濾過装置51の出口と、貯留タンク30とが接続される。
【0065】
濾過処理専用船5では、ポンプ52の駆動により、港内からバラスト原水1が水配管53を介して汲み上げられて、濾過装置51の入口に送られる。濾過装置51は、バラスト原水1中に存在する一定以上の大きさの浮遊物質を除去した後のバラスト水を、水配管54を介して貯留タンク30内に送り込む。
【0066】
本実施形態によれば、濾過装置51に関係する設備を備えた濾過処理専用船5を使用することにより、港から前述の地上設備2は不要となる。また、船舶3にも濾過装置51に関係する設備を搭載する必要がないため、その分だけ設置スペースを節約することができる。さらに、前述の地上設備2とは異なり、濾過処理専用船5は移動が可能であるため、船舶3は、港内の任意に位置でバラスト原水1を積み込むことが可能である。
【0067】
(第6の実施形態)
図6は、第6の実施形態に関するバラスト水浄化装置の構成を示す図である。
【0068】
本実施形態のバラスト水浄化装置は、船舶3に搭載されている殺菌処理装置61に関係する設備を搭載した浄化装置積載船6(以下殺菌処理専用船と表記する)を含む構成である。
【0069】
殺菌処理専用船6は、殺菌処理装置61、貯留タンク30から殺菌装置61にバラスト水を供給するためのポンプ62と水配管63、及び殺菌処理装置61により殺菌されたバラスト水を排出するための水配管64を搭載している。殺菌処理装置61は、バラスト水に含まれる微生物や細菌を殺菌するための例えば紫外線式殺菌装置である。
【0070】
なお、これ以外の濾過装置21に関係する地上設備2については、図1に示す第1の実施形態のバラスト水浄化装置と同様であり、同一符号を付して説明を省略する。
【0071】
以下、本実施形態のバラスト水浄化装置の作用効果を説明する。
【0072】
まず、船舶3は、航海前に、バラスト水の輸出国の港に設置された地上設備2により、浮遊物などを濾過されたバラスト水を貯留タンク30に貯留している。船舶3は航海後に、当該輸入国の例えば港内において、殺菌処理専用船6に接近する。そして、船舶3は、貯留タンク30と、当該専用船6の水配管63を介して殺菌処理装置61とが接続される。
【0073】
殺菌処理専用船6は、ポンプ62を駆動することにより、貯留タンク30に貯留されたバラスト水を汲み上げて、水配管63を介して殺菌処理装置61に供給する。殺菌処理装置61は、例えば紫外線殺菌能力により、バラスト水中に残存する微生物や細菌を殺菌処理して、水配管64を介して海水4の中に排出する。
【0074】
本実施形態によれば、殺菌処理装置61に関係する設備を備えた殺菌処理専用船6を使用することにより、船舶3には当該置61に関係する設備を搭載する必要がなくなる。従って、船舶3は、バラスト水浄化装置に関する設備を搭載する必要がないため、その分だけ設置スペースを節約することができる。
【0075】
(第7の実施形態)
図7は、第7の実施形態に関するバラスト水浄化装置の構成を示す図である。
【0076】
本実施形態のバラスト水浄化装置は、船舶3に搭載されている殺菌処理装置61に関係する設備において、殺菌処理装置31、貯留タンク30から殺菌装置31にバラスト水を供給するためのポンプ32と水配管33、及び殺菌処理装置31により殺菌されたバラスト水を貯留タンク30に戻すための水配管36を有する。さらに、船舶3は、当該設備として、貯留タンク30からバラスト水を汲み上げて排出するためのポンプ37及び水配管34を搭載している。
【0077】
なお、これ以外の濾過装置21に関係する地上設備2については、図1に示す第1の実施形態のバラスト水浄化装置と同様であり、同一符号を付して説明を省略する。
【0078】
以下、本実施形態のバラスト水浄化装置の作用効果を説明する。
【0079】
まず、船舶3は、航海前に、バラスト水の輸出国の港に設置された地上設備2により、浮遊物などを濾過されたバラスト水を貯留タンク30に貯留する。
【0080】
船舶3は、航海を開始後に、ポンプ32を起動して、貯留タンク30から水配管33を介してバラスト水を汲み上げて、殺菌処理装置31により供給する。殺菌処理装置31は、汲み上げられたバラスト水を殺菌処理した後に、水配管36を介して貯留タンク30に戻す。
【0081】
要するに、船舶3は、航海中に、貯留タンク30と殺菌処理装置31との間で、バラスト水を循環させる。この循環により、貯留タンク30に貯留されたバラスト水は、航海前に残存している微生物や細菌、及び航海中に混入した微生物や細菌が殺菌処理されることになる。
【0082】
次に、船舶3は、航海終了後に、当該輸入国の例えば港内において、ポンプ37を駆動することにより、貯留タンク30に貯留されたバラスト水を汲み上げて、水配管34を介し海水4の中に排出する。
【0083】
本実施形態によれば、船舶3の航海中に例えば1〜2週間の期間をかけて、貯留タンク30に貯留されたバラスト水の殺菌処理を行うことができる。従って、航海が終了するまでの期間に、バラスト水に含まれる微生物や細菌を十分に殺菌処理することができる。また、十分な期間を掛けて殺菌処理を完了させることができるため、船舶3に搭載する殺菌処理装置31は相対的に殺菌能力が小さいものでよく、船舶3上での殺菌処理装置31の設置面積や動力等を低減できる効果もある。
【0084】
(第8の実施形態)
図8及び図9は、第8の実施形態に関するバラスト水浄化装置の構成を示す図である。
【0085】
本実施形態のバラスト水浄化装置は、船舶3に搭載されている殺菌処理装置38に関係する設備において、殺菌処理装置38が貯留タンク30のバラスト水内に浮遊している構造である。さらに、船舶3は、当該設備として、貯留タンク30からバラスト水を汲み上げて排出するためのポンプ37及び水配管34を搭載している。
【0086】
なお、これ以外の濾過装置21に関係する地上設備2については、第1の実施形態に関する図1に示すバラスト水浄化装置と同様であり、同一符号を付して説明を省略する。
【0087】
本実施形態の殺菌処理装置38は、図9に示すように、複数の紫外線ランプ381a〜381cがランプ支持体380に設けられた構造である。ランプ支持体380は、比重が小さい素材から構成されており、バラスト水中に浮遊できる構造である。
【0088】
まず、船舶3は、航海前に、バラスト水の輸出国の港に設置された地上設備2により、浮遊物などを濾過されたバラスト水を貯留タンク30に貯留する。
【0089】
船舶3は、航海を開始後に、貯留タンク30に殺菌処理装置38を浮遊させる。殺菌処理装置38は、紫外線ランプ381a〜381cを発光させることにより、バラスト水の殺菌処理を行うことになる。
【0090】
要するに、船舶3は、航海中に、殺菌処理装置38により貯留タンク30に貯留されたバラスト水中に残存している微生物や細菌、及び航海中に混入した微生物や細菌が殺菌処理されることになる。
【0091】
次に、船舶3は、航海終了後に、当該輸入国の例えば港内において、ポンプ37を駆動することにより、貯留タンク30に貯留されたバラスト水を汲み上げて、水配管34を介し海水4の中に排出する。
【0092】
本実施形態によれば、船舶3の航海中に例えば1〜2週間の期間をかけて、貯留タンク30に貯留されたバラスト水の殺菌処理を行うことができる。従って、航海が終了するまでの期間に、バラスト水に含まれる微生物や細菌を十分に殺菌処理することができる。
【0093】
さらに、本実施形態であれば、殺菌処理のためにバラスト水を循環させるポンプなどの設備は不要である。また、殺菌処理装置38は、貯留タンク30の中に配置されるため、相対的に船舶3上に設置される殺菌処理装置31と比較して占有スペースを節約することができる。
【0094】
なお、殺菌処理装置38は、紫外線ランプ381a〜381cを使用する装置ではなく、電気処理装置、オゾン処理装置、あるいは光触媒等のOHラジカル発生装置でもよい。電気処理装置の場合には、電極を固定化した支持体を貯留タンク30の中に配置させる。また、オゾン処理装置の場合には、オゾン注入配管を固定化した支持体を貯留タンク30の中に配置させる。OHラジカル発生装置の場合には、装置本体を固定化した支持体を貯留タンク30の中に配置させる。
【0095】
(第9の実施形態)
図10は、第9の実施形態に関するバラスト水浄化装置の構成を示す図である。
【0096】
本実施形態の装置は、地上設備2において、濾過装置21の排水側出口に接続された水配管24に接続された廃水処理装置29を備えた構成である。廃水処理装置29は、水配管24を介して排出される浮遊物を含む廃水に対して浮遊物質を濃縮し減量化する例えば汚泥乾燥装置である。
【0097】
なお、図1に示す第1の実施形態のバラスト水浄化装置と同様の構成要素については、同一符号を付して説明を省略する。
【0098】
以下、本実施形態のバラスト水浄化装置の作用効果を説明する。
【0099】
まず、船舶3は、航海前に、バラスト水の輸出国の港内に停泊しているときに、地上設備2の水配管23を介して濾過装置21の出口と、貯留タンク30とが接続される。地上設備2では、ポンプ20の駆動により、港内からバラスト原水1が水配管22を介して汲み上げられて、濾過装置21の入口に送られる。
【0100】
濾過装置21により浮遊物質が除去されたバラスト水は、水配管23を介して船舶3の貯留タンク30内に供給される。ここで、濾過装置21では、膜表面に捕獲された浮遊物質を含む廃水は、廃水用出口から水配管24を介して廃水処理装置29に送られる。
【0101】
廃水処理装置29は、汚泥乾燥処理などの廃水処理を実行し、廃水中の浮遊物質を濃縮および乾燥処分して、元のバラスト原水1が存在する港内に戻す。なお、貯留タンク30に貯留されたバラスト水中に残存又は混入した微生物や細菌は、前述の第1の実施形態と同様に、航海中または航海後に船舶3上の殺菌処理装置31により殺菌処理される。
【0102】
本実施形態によれば、航海前に濾過装置21によりバラスト水を浄化したときに排出される廃水を、廃水処理装置29により廃水処理した後に港内の海水中に戻す。従って、廃水の浮遊物質の濃度が高い場合でも、港内の海水環境の汚染を抑制することができる。
【0103】
(第10の実施形態)
図11は、第10の実施形態に関するバラスト水浄化装置の構成を示す図である。
【0104】
本実施形態の装置は、船舶3上に浄化装置の設備を搭載し、かつ当該浄化装置を制御する制御装置110(以下コントローラ)を搭載している構成である。コントローラ110は、コンピュータのハードウェアとソフトウェアから構成されている。
【0105】
船舶3の設備として、貨物貯留部35に配置される重量計39が設けられている。重量計39の出力部は、コントローラ110のバラスト水の積上げ時−バラスト水排水時判断部(以下、排水時判断部と表記)111の入力部に接続されている。排水時判断部111の出力部は、バラスト水積上げ時濾過装置運転制御部(以下、濾過装置運転制御部と表記)112及びバラスト水排水時UV殺菌運転制御部(以下、殺菌運転制御部と表記)113のそれぞれの入力部に接続されている。ここで、UVは紫外線を意味する。
【0106】
濾過装置運転制御部112は、濾過装置41及びポンプ42を制御する。殺菌運転制御部113は、殺菌処理装置31及びポンプ32を制御する。
【0107】
なお、図4に示す第4の実施形態のバラスト水浄化装置と同様の構成要素については、同一符号を付して説明を省略する。
【0108】
以下、本実施形態のバラスト水浄化装置の作用効果を説明する。
【0109】
コントローラ110の排水時判断部111は、重量計39からの計測値を監視し、当該計測値が設定値(L)以下の場合には、貨物貯留部35内が空となり、バラスト水の積上げ時(積み込み時)と判断する。一方、排水時判断部111は、当該計測値が設定値(H)以上の場合には、貨物貯留部35内には貨物が満タンとなり、バラスト水排水時と判断する。ここで、当該計測値が設定値(L)と設定値(H)との間の場合には、排水時判断部111は航海中と判断する。
【0110】
排水時判断部111からバラスト水積上げ時との判断結果を受けた場合に、濾過装置運転制御部112は、濾過装置41及びポンプ42を制御してバラスト水を積み上げる。即ち、船舶3は、航海前に、ポンプ42の駆動によりバラスト原水1を汲み上げて、水配管43を介して濾過装置41に送り込む。濾過装置41は、バラスト原水1中に存在する一定以上の大きさの浮遊物質を濾過して、水配管45を介して貯留タンク30内に供給する。
【0111】
一方、排水時判断部111からバラスト水排水時との判断結果を受けた場合に、殺菌運転制御部113は、殺菌処理装置31及びポンプ32を制御して、貯留タンク30から殺菌処理後のバラスト水を排水する。なお、排水時判断部111が航海中と判断した場合には、濾過装置運転制御部112及び殺菌運転制御部113は、いずれも制御動作を実行しない。
【0112】
本実施形態によれば、船舶3の貨物貯留部35内の貨物積載状態に基づいて、貯留タンク30へのバラスト水の積み込み運転、及び貯留タンク30からのバラスト水の排水運転を自動的に行うことができる。
【0113】
なお、本実施形態は、貨物貯留部35内の重量計39からの計測値に基づいて、バラスト水の自動運転を制御する構成であるが、重量計39を使用しない構成も可能である。
【0114】
具体的には、貨物輸送船などの船舶3の入国信号に基づいて、排水時判断部111が判断を実行する構成である。この入国信号とは、船舶が各国の領海内に入ったことを検知する検知信号であり、例えば無線連絡等の入国連絡信号、船本体が着港した時の赤外線検知信号、船の番号等の検知信号等に相当する。
【0115】
また、貨物輸送船などの船舶3の航海方向検知信号に基づいて、排水時判断部111が判断を実行する構成でもよい。この航海方向検知信号とは、バラスト水積上げ時と排水時とでは貨物輸送船の航海方向が異なり、例えば船内の航海方向値、航海流速の正負等による計測信号のことである。
【0116】
さらに、貯留タンク30内に水位計を設けて、ポンプ42のフィードバック制御をする構成とすることもできる。ポンプ流量が小さい場合には、バラスト水積上げ時間が長くなり船の停留時間が長くなるので、それを適性に制御することで同時間を短く停留時間も短くすることができるからである。
【0117】
(第11の実施形態)
図12は、第11の実施形態に関するバラスト水浄化装置の構成を示す図である。
【0118】
本実施形態の装置は、船舶3上に浄化装置の設備を搭載し、かつ当該浄化装置を制御する制御装置110(以下コントローラ)を搭載している構成である。コントローラ110は、コンピュータのハードウェアとソフトウェアから構成されている。
【0119】
船舶3の設備として、貯留タンク30内に配置された生物計測計121が設けられている。生物計測計121は、計測値をコントローラ110のバラスト水排水時UV殺菌運転制御部(以下、殺菌運転制御部と表記、UVは紫外線を意味する)120の入力部に出力する。生物計測計121は、例えば遺伝子や免疫反応を用いた大腸菌センサである。
【0120】
殺菌運転制御部120は、生物計測計121からの計測値に基づいて殺菌処理装置31及びポンプ32を制御する。
【0121】
なお、図4に示す第4の実施形態のバラスト水浄化装置と同様の構成要素については、同一符号を付して説明を省略する。
【0122】
以下、本実施形態のバラスト水浄化装置の作用効果を説明する。
【0123】
本実施形態は、船舶3の航海後のバラスト水排水時に、生物計測計121から設定値よりも高い計測値を出力した場合に、殺菌運転制御部120は、殺菌処理装置31及びポンプ32の起動時に、殺菌処理装置31の殺菌能力を高める制御を実行する。また、殺菌運転制御部120は、ポンプ131の流量を減少させる制御を実行する。
【0124】
即ち、生物計測計121から設定値よりも高い計測値が出力されている場合には、殺菌運転制御部120は、貯留タンク30内の大腸菌が増大していると判断し、殺菌処理装置31の殺菌能力を高める制御を実行する。具体的には、殺菌処理装置31は、印加電圧を高くして殺菌処理装置31の紫外線ランプの発光強度を増加させる。又は、殺菌処理装置31に組み込まれている複数の紫外線ランプの中で、起動させる紫外線ランプ数を増加させる。
【0125】
一方、生物計測計121から設定値よりも低い計測値が出力されている場合には、殺菌運転制御部120は、貯留タンク30内の大腸菌が基準値より少ないと判断し、前記とは逆に殺菌処理装置31の殺菌能力を低下させる制御を実行する。また、ポンプ131の流量を定常または増大させる制御を実行する。
【0126】
殺菌運転制御部120は、以上のような制御運転を、ON−OFF制御、PI制御(比例積分制御)あるいはPID制御(比例積分微分制御)方式に基づいて実行する。
【0127】
本実施形態によれば、バラスト水の排水時に、生物計測計121により貯留タンク30内に貯留されているバラスト水中に含まれる大腸菌の状態を監視し、これに適応する殺菌能力を発揮するように殺菌処理装置31の運転制御を実行する。従って、殺菌処理装置31の適正な運転が可能となり、運転コストの低減化を実現できる。また、コントローラ110が生物計測計121の計測値をディスプレイに表示させることにより、貯留タンク30内のバラスト水中に含まれる大腸菌の状態を、常に監視できる効果もある。
【0128】
なお、本実施形態は、生物計測計121として大腸菌センサを使用する場合について述べたが、これに限ることなく、植物プランクトンを検知するための蛍光強度若しくは比色反応による藻類センサや、画像計測による生物センサ等でもよい。また、殺菌処理装置31は、紫外線ランプを使用する装置ではなく、電気処理装置、オゾン処理装置、あるいは光触媒等のOHラジカル発生装置でもよい。
【0129】
(第12の実施形態)
図13は、第12の実施形態に関するバラスト水浄化装置の構成を示す図である。
【0130】
本実施形態の装置は、地上設備2上の浄化装置の設備において、濾過装置21からのバラスト水を船舶3の貯留タンク30に送り込むための水配管23中に配置された残留塩素濃度計131、及び航海前殺菌制御装置(以下航海前コントローラと表記)130を有する構成である。なお、航海前コントローラ130は、コンピュータのハードウェアとソフトウェアから構成されている。
【0131】
航海前コントローラ130は、残留塩素濃度計131からの出力信号に基づいて、次亜塩素酸ナトリウム溶液を貯留するタンク26からの殺菌用薬品の注入を行うためのポンプ28を制御する。
【0132】
なお、図3に示す第3の実施形態のバラスト水浄化装置と同様の構成要素については、同一符号を付して説明を省略する。
【0133】
以下、本実施形態のバラスト水浄化装置の作用効果を説明する。
【0134】
航海前コントローラ130は、航海前に、バラスト水を濾過装置21により浄化して船舶3の貯留タンク30に積み込むときに、残留塩素濃度計131の計測値(CLPV)を連続的に計測することで、水配管23中を流れるバラスト水の残留塩素濃度を監視している。
【0135】
航海前コントローラ130は、下記式(1)及び(2)に示す制御モデル式に基づいて、PI制御方式によるポンプ28の流量制御を実行する。具体的には、航海前コントローラ130は、ポンプ28の流量制御目標値QCLを演算し、このQCL値をポンプ28に送信する。これにより、航海前コントローラ130は、ポンプ28が残留塩素濃度の目標値CLSVに、例えば0.1〜2.0mg/Lのいずれかの数値に設定した値に近づくように制御運転を実行する。
【数1】

【0136】
本実施形態によれば、残留塩素濃度計131を使用して、船舶3内に積み込むバラスト水の残留塩素濃度を監視し、当該濃度を一定値に調整するように、タンク26からの次亜塩素酸ナトリウム溶液を注入する。従って、次亜塩素酸ナトリウムの不足により、船舶3内に積み込むバラスト水中に残存する微生物などの殺菌不足を解消することができる。
【0137】
一方、次亜塩素酸ナトリウムの入れ過ぎにより、バラスト水中の有機物と次亜塩素酸ナトリウムとが反応して、トリハロメタン等の発ガン性副生成物が発生することを抑制できる。従って、航海前に、適正な環境状態のバラスト水を船舶3内に積み込むことが可能となる。
【0138】
なお、本実施形態は、航海前の殺菌処理として次亜塩素酸ナトリウムの注入を想定したが、これに限ることなく、他の殺菌剤でもよい、具体的には、固形塩素、液体塩素、二酸化塩素等である。また、薬品の注入方法ではなく、紫外線式殺菌装置、オゾン殺菌装置、あるいは光触媒殺菌装置等の装置を利用することも可能である。
【0139】
また、本実施形態は、残留塩素濃度計131をセンサとして使用したが、前記のように他の殺菌方法を適用する場合には、当然ながら、各々の殺菌装置に応じたセンサを利用することになる。具体的には、紫外線式殺菌装置や光触媒殺菌装置の場合には、紫外線透過率計、濁度計等の紫外線の透過性を計測するセンサが使用される。この場合、水の透過性が悪くなれば紫外線が透過しなくなるので、生物に紫外線が当たらなくなり、殺菌効率が悪くなるという因果関係があるからである。また、オゾン殺菌装置の場合には、水中の溶存オゾン濃度計、気中の排オゾン濃度計又は水中の濁度計等の水質センサが使用される。これらの計測値とオゾン殺菌力との間に因果関係があるからである。
【0140】
さらに、本実施形態は、航海前の殺菌対象位置として、濾過装置21の通過水を利用しているが、その位置に限定されない。すなわち、航海中又は航海後排出時の殺菌装置にも適用することが可能である。
【0141】
(第13の実施形態)
図14は、第13の実施形態に関するバラスト水浄化装置の構成を示す図である。
【0142】
本実施形態の装置は、船舶(例えば、貨物輸送船)3上に設けられた構成であり、2つのバラスト水用の第1及び第2の貯留タンク80,81を有する構成である。船舶3には、紫外線殺菌装置31、バラスト水の原水供給用ポンプ60、第1の貯留タンク80内のバラスト水供給用ポンプ61、バラスト水排水用ポンプ62、及び水循環用ポンプ63が設けられている。さらに、船舶3には、水配管70〜78及び制御装置90が設けられている。
【0143】
以下、本実施形態の作用効果を説明する。
【0144】
まず、本実施形態の船舶3は、例えば貨物を降ろした国の停泊港において、原水供給用ポンプ60を駆動することによって、海水であるバラスト原水1をバラスト水の第1の貯留タンク80に供給する。船舶3が航海を開始すると、制御装置90は、バラスト水供給用ポンプ61を駆動し、かつ紫外線殺菌装置31を駆動する。これにより、第1の貯留タンク80内のバラスト水は、殺菌装置31により悪性生物などが殺菌処理されて、第2の貯留タンク81に供給される。
【0145】
一方、船舶3は、バラスト水の排出先の港では、排水用ポンプ62を駆動することにより、第1及び第2の貯留タンク80,81内の浄化されたバラスト水を排出先の海水4に排出する。
【0146】
このような基本的な動作において、以下船舶3の航海中における作用効果を説明する。
【0147】
まず、図14に示すように、水循環ポンプ63の入口側は、水配管78を介して第2の貯留タンク81内の低部に連結されている。同ポンプ63の出口側は、第1の貯留タンク80内の上部に連結されている。
【0148】
制御装置90は、内部にタイマ91を有し、紫外線殺菌装置31、バラスト水供給用ポンプ61、及び水循環用ポンプ63のそれぞれを駆動制御する。制御装置90は、船舶3の航海前に予めタイマ91に設定された時間情報に基づいて、航海安定性が維持できるような制御動作を実行する。即ち、タイマ91には、紫外線殺菌装置31、バラスト水供給用ポンプ61、及び水循環用ポンプ63の駆動開始時刻が同時刻(t)になるように設定されている。また、それらの駆動停止時刻も、同時刻(t+1)になるように設定されている。
【0149】
船舶3の航海中に、制御装置90は、タイマ91で設定された時間通りに、紫外線殺菌装置31、バラスト水供給用ポンプ61、及び水循環用ポンプ63のそれぞれを同時に駆動させる。ここで、バラスト水供給用ポンプ61及び水循環用ポンプ63は、同一の流量設定値が設定されているものとする。
【0150】
バラスト水供給用ポンプ61の駆動により、第1の貯留タンク80内からバラスト水が取り出されて、第2の貯留タンク81に供給される。このとき、紫外線殺菌装置31により殺菌されたバラスト水が、第2の貯留タンク81に供給される。
【0151】
第1の貯留タンク80内は、バラスト水供給用ポンプ61の駆動により、水量が減少していく。同時に、水循環用ポンプ63の駆動により、第2の貯留タンク81から第1の貯留タンク80にバラスト水が供給される。従って、第1の貯留タンク80内の減少分は、第2の貯留タンク81からの供給分により補充される。このような循環作用により、所定の時間経過後に、第1及び第2の貯留タンク80,81では、水量の変化がなくなり、水量が一定となる。
【0152】
一方、第1の貯留タンク80内の水中に存在する悪性生物は、紫外線殺菌装置31で紫外線照射されることにより、遺伝子DNAに損傷が発生するため増殖できなくなる。よって、DNAに損傷を受けて増殖不能となった悪性生物を含む浄化水が、第2の貯留タンク81内へ供給される。このような紫外線殺菌装置31、バラスト水供給用ポンプ61、及び水循環用ポンプ63の同時運転を継続することにより、第1及び第2の貯留タンク80,81内の水中に存在する悪性生物が徐々に減少し、船舶3の航海終了時には、バラスト水の生物排出基準以下となっている。そして、航海終了時に、制御装置90は、排水用ポンプ62を駆動することにより、第1及び第2の貯留タンク80,81内のバラスト水浄化水を排出先の海水4に排出する。
【0153】
以上のように本実施形態によれば、バラスト水供給用ポンプ61及び水循環用ポンプ63の2台のポンプを同時駆動制御することで、第1及び第2の貯留タンク80,81内の水量を一定化させることにより、船舶3の航海中の安定性を維持することができる。換言すれば、第1及び第2の貯留タンク80,81の一方の水量が増減するような回避することにより、航海中の船舶3の姿勢が不安定化することを防止できる。また、2台のポンプ61,63と同時に、紫外線殺菌装置31を駆動制御することで、航海中にバラスト水の生物排出基準を満たすことが可能となる。
【0154】
なお、本実施形態では、制御装置90は、内部タイマ91を使用して、紫外線殺菌装置31、バラスト水供給用ポンプ61、及び水循環用ポンプ63を同時刻に駆動するように制御する構成であるが、これに限ることなく、時間遅れを考慮した制御でもよい。即ち、各ポンプ61,63を時間的に少しずつずらして駆動させることにより、第1及び第2の貯留タンク80,81内の水量を一定化させる構成でもよい。また、制御装置90は、内部タイマ91を使用することなく、例えば船舶3の航海速度情報に基づいて、紫外線殺菌装置31、バラスト水供給用ポンプ61、及び水循環用ポンプ63のそれぞれを駆動制御する構成でもよい。
【0155】
(第14の実施形態)
図15は、第14の実施形態に関するバラスト水浄化装置の構成を示す平面図である。即ち、図14に示す船舶3を上から見た図である。なお、図14に示すものと同一の構成要素については同一符号を付して説明を省略する。また、本実施形態の装置は、図15で図示していなくても、図14に示す全ての構成要素を備えている。
【0156】
本実施形態の装置は、図15に示すように、船舶3の内部に、バラスト水の貯留槽である第1及び第2の貯留タンク80,81以外に、第3及び第4の貯留タンク82,83の4個の貯留タンクがバランスよく均一に配置された構成である。
【0157】
第1及び第2の貯留タンク80,81の間には、水配管73,74、紫外線殺菌装置31、及びバラスト水供給用ポンプ61のそれぞれが設けられている。また、本実施形態では、第2及び第3の貯留タンク81,82の間には、水配管78及び水循環用ポンプ63のそれぞれが設けられている。
【0158】
第3及び第4の貯留タンク82,83の間には、水配管79a及び水循環用ポンプ64のそれぞれが設けられている。なお、この間には、紫外線殺菌装置31に相当する殺菌装置310が設けられていてもよい。さらに、第4及び第1の貯留タンク83,80の間には、水配管79b及び水循環用ポンプ65のそれぞれが設けられている。
【0159】
このような構成において、前述の図14に示す第13の実施形態と同様に、船舶3の航海中において、制御装置90は、タイマ91に設定された時間情報に基づいて、バラスト水供給用ポンプ61、水循環用ポンプ63〜65、及び紫外線殺菌装置31を同時に駆動制御する。ここで、バラスト水供給用ポンプ61及び水循環用ポンプ63〜65は、同一の流量設定値が設定されているものとする。
【0160】
このような制御により、前述の第13の実施形態と同様に、第1から第4の貯留タンク80〜83は、循環作用により、所定の時間経過後には水量の変化がなくなり、水量が一定となる。また、紫外線殺菌装置31により殺菌されたバラスト水が、第2の貯留タンク81に供給される。ここで、紫外線殺菌装置310が設けられている場合には、さらに殺菌されたバラスト水が、第4の貯留タンク83にも供給される。
【0161】
このような紫外線殺菌装置31(又は殺菌装置310)、バラスト水供給用ポンプ61、及び水循環用ポンプ63〜65の同時運転を継続することにより、第1から第4の貯留タンク80〜83内の水中に存在する悪性生物が徐々に減少し、船舶3の航海終了時には、バラスト水の生物排出基準以下となっている。そして、航海終了時に、制御装置90は、排水用ポンプ62を駆動することにより、第1から第4の貯留タンク80〜83内のバラスト水浄化水を排出先の海水4に排出する。従って、本実施形態によれば、第1から第4の貯留タンク80〜83内の水量を一定化させることにより、船舶3の航海中の安定性を維持することができる。また、紫外線殺菌装置31(又は殺菌装置310)を駆動制御することで、航海中にバラスト水の生物排出基準を満たすことが可能となる。
【0162】
なお、本実施形態では、第1から第4の貯留タンク80〜83及びポンプ61、63〜65のそれぞれを4個ずつ配置した構成であるが、個数は単なる一例であり、これ以外の個数でもよい。また、貯留タンクの形状、容量も特に限定されていない。さらに、本実施形態では、水配管を隣接する貯留タンク80〜83に連結する方式であるが、これに限ることなく、対角線上に水配管を接続したり、1つ飛ばして水配管を接続したりするような構成でもよい。
【0163】
(第15の実施形態)
図16は、第15の実施形態に関するバラスト水浄化装置の構成を示す図である。なお、図14に示すものと同一の構成要素については、同一符号を付して説明を省略する。
【0164】
本実施形態の装置は、同一のバラスト水の貯留タンクに返送循環する構成である。即ち、図16に示すように、紫外線殺菌装置31の出口側は、水配管740を介して第1の貯留タンク80の上部に連結されている。
【0165】
本実施形態の制御装置90は、船舶3の航海中において、タイマ91に設定された時間情報に基づいて、バラスト水供給用ポンプ61及び紫外線殺菌装置31を同時に駆動制御することにより、紫外線殺菌装置31により浄化されたバラスト水を元の貯留タンク80に返送するものである。この返送循環作用により、第1の貯留タンク80の水量はほとんど変化しないので、船舶3の航海安定性は維持されたままとなる。また、当然ながら、第2の貯留タンク81の水量は全く変化しないため、船舶3の航海状態には影響がない。
【0166】
なお、返送循環作用以外の作用効果は、前述の第13の実施形態の装置と同様である。また、前述の第14の実施形態と同様に、貯留タンクの個数、種類、容量などについてもとくに限定はなく、いずれの場合でも適用可能である。
【0167】
(第16の実施形態)
図17は、第16の実施形態に関するバラスト水浄化装置の構成を示す図である。なお、図14に示すものと同一の構成要素については、同一符号を付して説明を省略する。
【0168】
本実施形態の装置は、第1の貯留タンク80内に配設された水位計170を有する。水位計170は、航海安定度の一指標となる計測値を示す出力信号を、制御装置90に送出するように構成されている。
【0169】
本実施形態の制御装置90は、船舶3の航海中において、紫外線殺菌装置31、バラスト水供給用ポンプ61及び水循環用ポンプ63のそれぞれを駆動制御し、航海中の船舶3の航海安定度を維持する。この場合、制御装置90は、内部メモリに、予め水位計170の下限設定値HLと、上限設定値HHとが設定されている。
【0170】
制御装置90は、水位計170の計測値が下限設定値HL以下になった時に、水循環用ポンプ63を駆動させて、第2の貯留タンク81から第1の貯留タンク80にバラスト水を供給する。一方、制御装置90は、水位計170の計測値が上限設定値HH以上になった時に、水循環用ポンプ63の駆動を停止させる。このような制御(シーケンス制御)により水循環用ポンプ63を駆動制御することで、第1の貯留タンク80内の水位が、下限設定値HLと上限設定値HHとの範囲内を変動することになる。
【0171】
以上本実施形態によれば、船舶3の航海安定性の指標として水位計170の計測値を使用し、この計測値に基づいて水循環用ポンプ63の駆動を制御することで、第1の貯留タンク80内の水量を一定範囲内に維持できる。従って、簡単な構成により、船舶3の航海安定性を維持することができる。なお、紫外線殺菌装置31により航海中にバラスト水の生物排出基準を満たす効果については、前述の第13の実施形態の場合と同様である。
【0172】
本実施形態では、1個の水位計170が第1の貯留タンク80内に設置された構成であるが、第2の貯留タンク9内にも設置する構成でもよい。この場合、制御装置90は、2個の水位計からの計測値を入力して、各計測値の差分が一定値以内になるように水循環用ポンプ63の駆動制御を実行することができる。従って、第1の貯留タンク80だけでなく、第1及び第2の貯留タンク80,81からなる貯留タンク全体の水量のバランスを取ることが可能となり、船舶3の航海上での安定性をさらに向上させることができる。
【0173】
また、本実施形態では、制御装置90は、水循環用ポンプ63を駆動制御する制御動作であるが、当然ながら、バラスト水供給用ポンプ61や紫外線殺菌装置31の駆動制御も同時に実行する。
【0174】
(第17の実施形態)
図18は、第17の実施形態に関するバラスト水浄化装置の構成を示す図である。なお、図14に示すものと同一の構成要素については、同一符号を付して説明を省略する。
【0175】
本実施形態の装置は、例えば船舶3のデッキ上中央部に配設された振動計180を有する。振動計180は、航海安定度の一指標となる計測値(揺れ状態値)を示す出力信号を、制御装置90に送出するように構成されている。
【0176】
本実施形態の制御装置90は、船舶3の航海中において、紫外線殺菌装置31、バラスト水供給用ポンプ61及び水循環用ポンプ63のそれぞれを駆動制御し、航海中の船舶3の航海安定度を維持する。この場合、制御装置90は、内部メモリに、予め振動計180の揺れ状態値の基準値が設定されている。
【0177】
制御装置90は、振動計24の計測値が基準値以下になった時に、水循環用ポンプ63を駆動させて、第2の貯留タンク81から第1の貯留タンク80にバラスト水を供給する。一方、制御装置90は、振動計24の計測値が基準値を超えた時に、水循環用ポンプ63の駆動を停止させる。このような制御(シーケンス制御)により水循環用ポンプ63を駆動制御することで、第1の貯留タンク80内の水位を一定範囲内に抑制することができる。
【0178】
以上本実施形態によれば、船舶3の航海安定性の指標として振動計180の計測値を使用し、この計測値に基づいて水循環用ポンプ63の駆動を制御することで、第1の貯留タンク80内の水量を一定範囲内に維持できる。従って、簡単な構成により、船舶3の航海安定性を維持することができる。なお、紫外線殺菌装置31により航海中にバラスト水の生物排出基準を満たす効果については、前述の第13の実施形態の場合と同様である。
【0179】
本実施形態では、1個の振動計180が例えば船舶3のデッキ上中央部に設置された構成であるが、他の場所に設置する構成でもよい。また、振動計180は1個だけでなく、複数個でもよい。また、振動計180以外の計測器による揺れ状態値を利用することも可能である。さらに、本実施形態では、制御装置90は、水循環用ポンプ63を駆動制御する制御動作であるが、当然ながら、バラスト水供給用ポンプ61や紫外線殺菌装置31の駆動制御も同時に実行する。
【0180】
(第18の実施形態)
図19は、第18の実施形態に関するバラスト水浄化装置の構成を示す図である。なお、図14に示すものと同一の構成要素については、同一符号を付して説明を省略する。
【0181】
本実施形態の装置は、例えば船舶3のデッキ上中央部に配設された風速計190を有する。風速計190は、航海安定度の一指標となる計測値(風速値)を示す出力信号を、制御装置90に送出するように構成されている。
【0182】
本実施形態の制御装置90は、船舶3の航海中において、紫外線殺菌装置31、バラスト水供給用ポンプ61及び水循環用ポンプ63のそれぞれを駆動制御し、航海中の船舶3の航海安定度を維持する。この場合、制御装置90は、内部メモリに、予め風速計190の風速の基準値が設定されている。
【0183】
制御装置90は、風速計190の計測値が基準値以下になった時に、水循環用ポンプ63を駆動させて、第2の貯留タンク81から第1の貯留タンク80にバラスト水を供給する。一方、制御装置90は、風速計190の計測値が基準値を超えた時に、水循環用ポンプ63の駆動を停止させる。このような制御(シーケンス制御)により水循環用ポンプ63を駆動制御することで、第1の貯留タンク80内の水位を一定範囲内に抑制することができる。
【0184】
以上本実施形態によれば、船舶3の航海安定性の指標として風速計190の計測値を使用し、この計測値に基づいて水循環用ポンプ63の駆動を制御することで、第1の貯留タンク80内の水量を一定範囲内に維持できる。従って、簡単な構成により、船舶3の航海安定性を維持することができる。なお、紫外線殺菌装置31により航海中にバラスト水の生物排出基準を満たす効果については、前述の第13の実施形態の場合と同様である。
【0185】
本実施形態では、1個の風速計190が例えば船舶3のデッキ上中央部に設置された構成であるが、他の場所に設置する構成でもよい。また、風速計190は1個だけでなく、複数個でもよい。また、本実施形態では、制御装置90は、水循環用ポンプ63を駆動制御する制御動作であるが、当然ながら、バラスト水供給用ポンプ61や紫外線殺菌装置31の駆動制御も同時に実行する。さらに、風速計190以外に、図示しない風向計の利用若しくは併用することも可能である。
【0186】
さらに、本実施形態の変形例として、風速計190の代わりに、波の強度計測装置を使用する構成でもよい。この場合でも、本実施形態と同様の作用効果が得られる。特に、波の強度は航海安定度に対して影響が大きい因子であるため、本変形例の構成であれば、波浪により船舶3の航海安定度の低下を招くような時に、当該航海安定度を維持させる効果が大きい。
【0187】
またさらに、本実施形態の変形例として、風速計190の代わりに、雨量強度計を使用する構成でもよい。この場合でも、本実施形態と同様の作用効果が得られる。特に、大雨の際には航海安定度に対する影響が大きいため、本変形例の構成であれば、大雨により船舶3の航海安定度の低下を招くような時に、当該航海安定度を維持させる効果が大きい。
【0188】
なお、前記水位計170、振動計180、風速計190、風向計、波の強度計測装置、及び雨量強度計の計測器の中で、2種以上の計測器からの計測結果に基づいて水循環用ポンプ63の駆動制御を実行して、船舶3の航海安定度を維持させる構成でもよい。この場合には、複数種の計測結果を使用するため、航海安定度を総合的に評価することが可能となるため、航海安定性の向上を図ることができる。
【0189】
(第19の実施形態)
図20は、第19の実施形態に関するバラスト水浄化装置の構成を示す図である。なお、図14に示すものと同一の構成要素については、同一符号を付して説明を省略する。
【0190】
本実施形態の装置は、制御装置90に接続している通信装置92、及び気象情報を管理しているサーバ93を有する。通信装置92とサーバ93とは、無線通信により接続されている。サーバ93は、通信装置92を介して、船舶3の航海中における風速値、風向値、波の強度値、雨量強度値等の気象情報を制御装置90に送信する。
【0191】
本実施形態の制御装置90は、前述したように、船舶3の航海中において、紫外線殺菌装置31、バラスト水供給用ポンプ61及び水循環用ポンプ63のそれぞれを駆動制御し、航海中の船舶3の航海安定度を維持する。この場合、制御装置90は、内部メモリに、サーバ93から受信した気象情報を格納する。
【0192】
本実施形態によれば、制御装置90は、船舶3の航海中において、サーバ93から風速値、風向値、波の強度値、雨量強度値等の気象情報を、必要に応じて受信できる。制御装置90は、これらの気象情報に基づいて、特に水循環用ポンプ63を駆動制御することにより、船舶3の航海安定度を維持させることができる。この場合、気象情報を取得するための各種の計測器を船舶上に設置する必要がないため、当該計測器の設置に必要なスペースや、メンテナンスが不要となる。
【0193】
また、船舶3の航海中だけでなく、航海先の航海ルート上の気象情報も利用できる。従って、航海先の航海安定性の維持に必要な制御動作や、将来のバラスト水浄化装置の運用に対して有効な利用が可能となる。
【0194】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0195】
1…バラスト原水、2…地上設備、3…船舶、20…ポンプ、21…濾過装置、
22〜24…水配管、30…貯留タンク、31…殺菌処理装置、32…ポンプ、
33,34…水配管、35…貨物貯留部、60…バラスト水の原水供給用ポンプ、
61…バラスト水供給用ポンプ、62…バラスト水排水用ポンプ、
63…水循環用ポンプ、70〜78…水配管、80〜83…貯留タンク、
90…制御装置、91…タイマ、92…通信装置、93…サーバ、170…水位計、
180…振動計、190…風速計。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バラスト水を貯留する貯留タンクを有する船舶に適用するバラスト水浄化装置において、
前記貯留タンクに貯留するバラスト水を濾過する濾過手段と、
前記船舶の航海中または前記バラスト水の排出時に、前記貯留タンクに貯留されたバラスト水を殺菌処理する殺菌手段と、
前記貯留タンクに貯留されたバラスト水を前記殺菌手段に供給する給水手段と
を具備したことを特徴とするバラスト水浄化装置。
【請求項2】
前記濾過手段は船舶外の地上設備として設けられて、前記貯留タンクに供給される前のバラスト水を濾過するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のバラスト水浄化装置。
【請求項3】
前記濾過手段により濾過されて、前記貯留タンクに貯留される前のバラスト水の殺菌処理を実行する前処理用殺菌手段をさらに備えていることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれか1項に記載のバラスト水浄化装置。
【請求項4】
前記前処理用段殺菌手段は、船舶外の地上設備として設けられていることを特徴とする請求項3に記載のバラスト水浄化装置。
【請求項5】
前記濾過手段は、
前記船舶に設けられて、前記貯留タンクに供給される前のバラスト水を濾過するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のバラスト水浄化装置。
【請求項6】
バラスト水を貯留する貯留タンクと、
前記貯留タンクに貯留するバラスト水を濾過する濾過手段と、
前記船舶の航海中または前記バラスト水の排出時に、前記貯留タンクに貯留されたバラスト水を殺菌処理する殺菌手段と
を搭載したことを特徴とする船舶。
【請求項7】
船舶に貯留されるバラスト水を濾過する濾過手段と、
前記濾過手段により濾過されたバラスト水を貯留すべき船舶に供給する給水手段と
を搭載していることを特徴とする船舶。
【請求項8】
船舶に貯留されたバラスト水の殺菌処理を行う殺菌手段と、
前記殺菌手段により殺菌処理されたバラスト水を排出する排出手段と
を搭載していることを特徴とする船舶。
【請求項9】
船舶に設けられて、バラスト水を貯留する貯留タンクと、
前記貯留タンクに貯留するバラスト水を濾過する濾過手段と、
前記船舶に設けられて、前記船舶の航海中に前記貯留タンクに貯留されたバラスト水に接触して当該バラスト水を殺菌処理する殺菌手段と
を具備したことを特徴とするバラスト水浄化装置。
【請求項10】
前記濾過手段によりバラスト水から除去された浮遊物を回収または分解処理する廃水処理手段を、更に備えていることを特徴とする請求項1または請求項9のいずれか1項に記載のバラスト水浄化装置。
【請求項11】
船舶へのバラスト水の供給時及び当該バラスト水を船舶から排出する排出時を判断する判断手段と、
前記判断手段の判断結果に基づいて、前記バラスト水の供給時に前記濾過手段を運転し、前記排出時に前記殺菌手段を運転する制御手段と
を更に備えていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のバラスト水浄化装置。
【請求項12】
前記貯留タンクに貯留されているバラスト水に含まれている微生物または細菌を検知する検知手段と、
前記検知手段の検知結果に基づいて、前記殺菌手段の殺菌処理を制御する制御手段と
を更に備えていることを特徴とする請求項1から請求項5及び請求項9のいずれか1項に記載のバラスト水浄化装置。
【請求項13】
前記貯留タンクに貯留されているバラスト水に含まれている微生物または細菌を処理するための薬品の残存量を計測する計測手段と、
前記計測手段の計測値に基づいて、前記船舶の航海前又は航海後の前記殺菌手段の殺菌処理を制御する制御手段と
を更に備えていることを特徴とする請求項1から請求項5及び請求項9のいずれか1項に記載のバラスト水浄化装置。
【請求項14】
船舶の貯留タンクに貯留されるバラスト水を、ポンプ装置、濾過装置及び殺菌装置を含む浄化設備を使用して浄化するバラスト水浄化方法であって、
前記貯留タンクにバラスト水を供給するときに、前記濾過装置により当該バラスト水を濾過し、
前記船舶の航海中または前記バラスト水の排出時に、前記殺菌装置により前記貯留タンクに貯留されたバラスト水を殺菌処理し、
前記殺菌装置により殺菌処理されたバラスト水を、前記ポンプ装置により前記貯留タンクから排出する手順を実行することを特徴とするバラスト水浄化方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2012−148770(P2012−148770A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−54905(P2012−54905)
【出願日】平成24年3月12日(2012.3.12)
【分割の表示】特願2006−6841(P2006−6841)の分割
【原出願日】平成18年1月16日(2006.1.16)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】