説明

バリアコーティングのための濃縮水性ナノコンポジット分散液

水性媒体中に分散されたケイ酸塩充填材、および、マトリックスポリマーを含む、濃縮ナノコンポジット分散液である。本分散液は、高固形分量のコーティング調合物を提供するために、それから液体を選択的に除去することによって濃縮される。このような濃縮した調合物は、酸素およびその他のガスに対して優れたバリアであるコーティングを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の主張
本出願は、2006年9月21日付けで出願された同じ名称の米国仮特許出願第60/846,226号に基づく。これにより、米国仮特許出願第60/846,226号の優先権を主張し、参照することによりそれらの開示は本願に包含される。
【0002】
発明の分野
本発明は、一般的に、強化されたバリア特性を有するコーティングを提供するために用いられるナノコンポジット分散液に関する。具体的には、本発明は、剥離型ケイ酸塩充填材(exfoliated silicate filler)、フィルム形成ポリマー、および、水を含むナノコンポジット分散液に関する。本分散液は、水性媒体の一部を選択的に除去することによって濃縮される。
【背景技術】
【0003】
選択された基板におけるガス、蒸気、化学物質および/または臭いの透過を予防、減少または抑制するためのバリアコーティングは広く説明されており、このようなコーティングは、例えば包装産業、自動車産業、塗料産業およびタイヤ産業などの様々な産業で用いられている。例えば、自動車用タイヤ中のブチルゴムは、タイヤの空気透過性を減少させるために、ポリマーとプレートレット型充填材(platelet filler)とを含む調合物でコーティングされている。例えば、米国特許第4,911,218号および5,049,609号を参照。米国特許第5,178,702号では、一体型のインナーライナーを有するタイヤが開示されており、ここで上記タイヤは、ゴムの積層物を含んでおり、この積層物において、少なくとも2つの層が、100重量部のゴム、100重量部のアクリロニトリル/ジエンポリマー、および、約25〜150重量部のプレートレット型充填材を有するバリア層である(幅および厚さは特に示されていない)。これらの組成物は、柔軟性およびバリア性能を維持しながらインナーライナーのコストを低減させると言われている。
【0004】
ナノコンポジットのバリアコーティングを製造するための剥離型ケイ酸塩の使用は、数種の方法によって達成されている。最も広く用いられている方法は、溶解したポリマーと剥離型充填材とを組み合わせることである。ポリビニルアルコール(PVOH)のような水溶性ポリマーは、バーミキュライトのような剥離型充填材と水とを組み合わせている。特開平11−246729号(1999年9月14日)の”Gas-Barrier Poly(vinyl alcohol)/poly(acrylic acid)Compositions and their Laminates and Shaped Articles”住友化学工業株式会社(Sumitomo Chemical Co.,Ltd.)を参照。ポリカーボネートポリマーをトルエンに溶解させ、有機官能化した充填材と組み合わせることにより、優れたバリアコーティングを形成することができる。W. J. Ward et al., “Gas Barrier Improvement Using Vermiculite and Mica in Polymer Films”, Journal of Membrane Science, 55: 173-180 (1991)。他のポリマーも、それらを溶媒に溶解させ、有機官能化した充填材を用いてバリア特性を改善することによって改善されたバリアコーティングに形成されている。例えば、Yano, K. et al., “Synthesis and Properties of Polyimide-Fi ller Hybrid Composites”, Journal of Polymer Science A: Polymer Chemistry, 35, 2289 (1997)を参照。
【0005】
ナノコンポジットを形成するために、ポリマーの水性分散液と共に剥離型充填材の水性分散液を使用する例がいくつかある。その多くは、懸濁液における弾性ポリマーを用いていた。例えば、Wu, Y-P et al., “Structure of Carboxylated Acrylonitrile-Butadiene Rubber (CNBR)-Filler Nanocomposites by Co-coagulating Rubber Latex and Filler Aqueous Suspension”, Journal of Applied Polymer Science, 82, 2842-2848 (2001 ); Wu, Y-P et al., “Structure and Properties of Nitrile Rubber (NBR)-Filler Nanocomposites by Co-coagulating NBR Latex and Filler Aqueous Suspension”, Journal of Applied Polymer Science, 89, 3855-3858 (2003); Varghese and Karger-Kocsis, “Natural Rubber-Based Nanocomposites by Latex Compounding with Layered Silicates”, Polymer (in press) (2003); Feeney et al, United States Patent No. 6,087,016, “Barrier Coating of an Elastomer and a Dispersed Layered Filler in a Liquid Carrier”, July 11, 2000; Feeney et al., United States Patent No. 6,232,389, “Barrier Coating of an Elastomer and a Dispersed Layered Filler in a Liquid Carrier and Coated Articles”, May 15, 2001 ; Goldberg et al., “Nanocomposite Barrier Coatings for Elastomeric Applications”, Materials Research Society, Symposium T: Polymer nanocomposites, paper T4.7, (April 2002); and Goldberg et al, “Elastomeric Barrier Coatings for Sporting Goods”, ACS Rubber Section, April 29, 2002, paper 17, published in Rubber World, vol. 226, No. 5, p.15 (August 2002)を参照。
【0006】
他の興味深い参考文献としては、Kamigaito等の米国特許第4,472,538号;Usuki等の米国特許第4,889,885号;Feeney等の米国特許第6,087,016号;および、Feeney等の米国特許第6,232,289号が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第4,911,218号
【特許文献2】米国特許第5,049,609号
【特許文献3】特開平11−246729号
【特許文献4】米国特許第5,178,702号
【特許文献5】米国特許第6,087,016号
【特許文献6】米国特許第6,232,389号
【特許文献7】米国特許第4,472,538号
【特許文献8】米国特許第4,889,885号
【特許文献9】米国特許第6,232,289号
【特許文献10】米国特許出願第11/113,349号
【特許文献11】米国特許出願第11/272,351号
【特許文献12】米国特許出願第10/741,741号
【特許文献13】米国特許出願第10/741,251号
【特許文献14】米国特許出願第10/742,542号
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】W. J. Ward et al., “Gas Barrier Improvement Using Vermiculite and Mica in Polymer Films”, Journal of Membrane Science, 55: 173-180 (1991)
【非特許文献2】Yano, K. et al., “Synthesis and Properties of Polyimide-Fi ller Hybrid Composites”, Journal of Polymer Science A: Polymer Chemistry, 35, 2289 (1997)
【非特許文献3】Wu, Y-P et al., “Structure of Carboxylated Acrylonitrile-Butadiene Rubber (CNBR)-Filler Nanocomposites by Co-coagulating Rubber Latex and Filler Aqueous Suspension”, Journal of Applied Polymer Science, 82, 2842-2848 (2001)
【非特許文献4】Wu, Y-P et al., “Structure and Properties of Nitrile Rubber (NBR)-Filler Nanocomposites by Co-coagulating NBR Latex and Filler Aqueous Suspension”, Journal of Applied Polymer Science, 89, 3855-3858 (2003)
【非特許文献5】Varghese and Karger-Kocsis, “Natural Rubber-Based Nanocomposites by Latex Compounding with Layered Silicates”, Polymer (in press) (2003)
【非特許文献6】Goldberg et al., “Nanocomposite Barrier Coatings for Elastomeric Applications”, Materials Research Society, Symposium T: Polymer nanocomposites, paper T4.7, (April 2002)
【非特許文献7】Goldberg et al, “Elastomeric Barrier Coatings for Sporting Goods”, ACS Rubber Section, April 29, 2002, paper 17, published in Rubber World, vol. 226, No. 5, p.15 (August 2002)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
当業界における努力にもかかわらず、他のポリマーフィルムに塗布することができる強化されたバリア特性を示す水性コーティング組成物が未だ必要である。このようなコーティングは、包装の内容物が空気と接触すると腐ったり、または、質が悪くなったりするような包装用途において特に有用であると予想される。さらに、加工可能でありかつ経済的な形態で提供が可能であり、高い固形分量でもゲル化することなくコーティングを製造できるコーティング材料の必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一形態によれば、本発明は、基板上へナノコンポジットのバリアコーティングを形成するための濃縮分散液を提供するものであり、ここで、このバリアコーティングは、(a)液体キャリアー媒体(この媒体は、主成分、すなわち、少なくとも50重量%、が水である);(b)該液体キャリアー媒体中に分散された剥離型シリカ充填材物質;および、(c)該キャリアー媒体中に分散されたマトリックスポリマーを含む。本分散液は、充填材物質と高分子マトリックスとを液体媒体中に分散し、基板に本分散液を塗布する前に、液体キャリアー媒体の一部を選択的に除去して初期の分散液の固形分量を増加させることによって濃縮される。本濃縮分散液の製造方法は、独特な特徴を提供するものであって、単なる濃縮分散液の製造工程ではなく、本分散液およびコーティングの1つの特徴として意図される。
【0011】
以下の説明から、さらにその他の本発明の特徴および利点は明白である。
以下、図面を参照しながら本発明を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、異なる方法に従って製造された3種の組成物の酸素透過性値を示す図表であり、本発明の濃縮分散液が最も低い透過性を有することがわかる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を単に説明の目的のために詳細に記載する。添付の請求項に記載される本発明の本質および範囲内での改変は、当業者であれば容易に理解できるるだろう。特に断わりがない限り、本明細書で用いる用語および略語は、それらの通常の意味を有する。
【0014】
成句「濃縮分散液」、「濃縮ナノコンポジット分散液」または類似の用語は、液体キャリアー媒体中の剥離型ケイ酸塩充填材物質とマトリックスポリマーとの、懸濁液、分散液、エマルジョンまたはスラリーを意味し、ここで本分散液は、液体キャリアー媒体の一部を除去することによって濃縮されている。
【0015】
用語「ナノコンポジット」または「充填ポリマーのナノコンポジット(filled polymer nanocomposite)」は、実質的に剥離型充填材とポリマーとの混合物を意味する。
本発明で用いられるコーティングの「酸素透過率」または「OTR」は、ASTM D−3985−02、または、その他のあらゆる適切なプロトコールに従って、モコン(MOCON(登録商標))OXTRAN2/20モジュール、および、以下の条件:1気圧の圧力、23℃の温度、および、0%の相対湿度を用いて測定される。
【0016】
本発明は、少なくとも、液体キャリアー媒体中に分散された剥離型ケイ酸塩充填材物質と、マトリックスポリマーとを含むナノコンポジットのコーティング調合物に関する。本発明のコーティング調合物は濃縮分散液であり、ここで該濃縮分散液は、特有の製造方法を有している。ケイ酸塩と高分子マトリックスが液体キャリアー媒体中に分散され、次いで、分散液の固形分量が増加するように、この液体媒体の一部が分散液から選択的に除去される。
【0017】
本発明で用いられる液体キャリアー媒体は水性であり、すなわち、少なくとも50パーセントが水であり、典型的には、実質的に水からなる。必要に応じて少量の有機溶媒がキャリアー媒体中に含まれていてもよい。適切な溶媒としては、エタノール、メタノール、イソプロパノール、トルエン、ヘキサン、その他の炭化水素、および、それらの組み合わせが挙げられる。
【0018】
液体キャリアー媒体中に分散された剥離型ケイ酸塩充填材物質は、高いアスペクト比を有するプレートレットで形成されている層状粘土化合物を含む。「剥離型」は、層状充填材に関して、プレートレット型粒子の個々の層が分離している状態と定義される;本発明で用いられる充填材物質は、少なくとも部分的に剥離しており、好ましくは、実質的に剥離している。ここでのアスペクト比は、プレートレット型充填材の粒子の横方向の寸法を、プレートレットの厚さで割った値である。本発明で用いられる充填材のアスペクト比は、典型的には、少なくとも50、少なくとも1,000、好ましくは少なくとも5,000〜約30,000である。少なくとも一部の充填材粒子の厚さは、1ミクロン未満であり、大抵は100nmよりも十分に薄く、好ましくは10nm未満である。剥離型ケイ酸塩充填材物質は、例えば、ベントナイト、バーミキュライト、モンモリロナイト、ノントロナイト、バイデル石、ボルコンスコイト(volkonskoite)、ヘクトライト、サポナイト、ラポナイト(laponite)、ソーコナイト、マガディアイト(magadiite)、ケニアイト(kenyaite)、レディカイト(ledikite)、および、それらの混合物を含んでいてもよい。最も好ましい充填材は、モンモリロナイト、または、バーミキュライトである。適切なモンモリロナイトは、SCPX−2973剥離型モンモリロナイトスラリー、SCPX−2953剥離型モンモリロナイト固体、ならびに、SCPX−2041剥離型モンモリロナイト固体およびスラリーとして市販されているものであり、これらはいずれも、サザン・クレイ・プロダクツ(Southern Clay Products;テキサス州ゴンザレス)製である。
【0019】
ケイ酸塩充填材物質は、当業界で公知のように酸または塩基で前処理してもよい。充填材の前処理に好ましい酸は、酢酸、グリシン、および、クエン酸から選択され、好ましい塩基は、水酸化アンモニウム、水酸化ナトリウム、および、水酸化カリウムから選択される。用いられる酸または塩基の量は、乾燥させたバリアコーティングの約10重量%〜約20重量%の量であると予想される。
【0020】
剥離型充填材物質は、コーティング調合物の総固形分の約5〜約80重量%で存在し、好ましくは、総固形分の20〜50重量パーセントで存在する。本発明の組成物は、乾燥させても充填材の十分な分散形態を維持しており、そのため透過性の大幅な改善に至る。
【0021】
本発明のコーティング調合物において有用なマトリックスポリマーは、特に限定されない。マトリックス樹脂は、ホモポリマー、および/または、コポリマーを含んでいてもよく、さらに、エマルジョンまたはラテックスとして液体キャリアー媒体中に分散されている。マトリックスポリマーは本発明のコーティング中でフィルムを形成し、そのフィルム中にプレートレット型粒子が分散されてナノコンポジットバリアコーティングが形成される。このようなマトリックスポリマーは、分散液中の総固形分の5〜80重量パーセントの量で存在していてもよく、好ましくは30〜60重量パーセントの量で存在する。
【0022】
好ましい樹脂としては、様々な種類のなかから一般的に選択されたポリマーが挙げられる。選択されたポリマーは、硬化性ポリマー、部分的に硬化されたポリマー、または、未硬化のポリマーであってもよく、水分散性を有するものである。このようなポリマーとしては、これらに限定されないが、オレフィン系熱可塑性エラストマー;ポリアミド系熱可塑性エラストマー;ポリブタジエン系熱可塑性エラストマー、例えば、シンジオタクチック1,2−ポリブタジエン系熱可塑性エラストマー;ポリエステル系熱可塑性エラストマー;ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、例えば、熱可塑性ポリエステル−ポリウレタンエラストマー、および、熱可塑性ポリエーテル−ポリウレタンエラストマー;スチレン系熱可塑性エラストマー;ビニル系熱可塑性エラストマー、例えば、塩化ビニルポリオール(PPVC)が挙げられる。
【0023】
また、本発明の方法のポリマー成分として様々なゴム状ポリマーが使用可能であり、このようなポリマーとしては、例えば、アクリルゴム、例えばエチレン−アクリラートコポリマー;および、ブタジエンゴム、例えばポリブタジエンが挙げられる。さらにその他のポリマーとしては、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、例えば、クロロスルホン化ポリエチレン;エピクロロヒドリンゴム、例えばポリエピクロロヒドリン(CO)、ポリエピクロロヒドリンコポリマー;エチレン−プロピレンゴム、例えばエチレン−プロピレンコポリマー、エチレン−プロピレン−ジエンコポリマーが挙げられる。その他の適切なポリマーとしては、フルオロエラストマー、例えば、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレンコポリマー;天然ゴム;ネオプレンゴム、例えばポリクロロプレン;ニトリルゴム、例えば、アクリロニトリル−ブタジエンコポリマー;ポリスルフィドゴム;ポリウレタン、例えば、ポリエステルウレタン、および、ポリエーテルウレタン;プロピレンオキシドゴム;シリコーンゴム、例えば、メチルビニル−フルオロシリコーン、および、スチレンブタジエンゴム、例えば、スチレンブタジエンコポリマーも挙げられる。
【0024】
また非弾性ポリマーも使用でき、このような非弾性ポリマーとしては、例えば、ポリエステル、ポリアミド、塩素化したポリマー、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリエーテル、ポリケトン、ポリカーボネート、アクリル系樹脂、ビニル系樹脂、および、フルオロポリマーが挙げられる。非弾性ポリマーは、一般的に、23℃より大きいガラス転移温度を有するもの、および/または、10%より多くの結晶構造を有するものとみなされる。
【0025】
適切なポリマーとしては、ポリエステル樹脂が挙げられ、例えば、イーステック(Eastek,イーストマン・ケミカル社(Eastman Chemical Company),テネシー州キングスポート)として市販されているものが挙げられる。このイーステックポリマーは、約30〜35℃のTgを有するスルホン化されたポリエステル(sulfopolyester)である。
【0026】
本発明のバリアコーティング調合物は、任意に、表面張力を減少させ、分散を促進するために、少なくとも1種の、または、1種より多くの適切な界面活性剤を用いてもよい。界面活性剤は、別の状況において湿潤剤、消泡剤、乳化剤、分散剤、レベリング剤等として知られている材料も含む。界面活性剤は、アニオン性、カチオン性、および、非イオン性のいずれでもよく、それぞれのタイプの多数の界面活性剤が市販品として入手可能である。これらの組成物中に包含させるのに適した界面活性剤は、乾燥させたバリアコーティングが残留界面活性剤によって汚染されないように、十分に低い臨界ミセル濃度を有するものである。ラテックス分散液中でアニオン性乳化剤の都合の悪い相互作用が生じる場合、追加のイオン性添加剤は、最小限に抑えるべきである。界面活性剤または乳化剤が非イオン性である場合、このような変動は起こらない。pH調整のために塩基(例えばKOH、NHOHおよびNaOH)を添加することなどにより、組成物のイオン濃度が増加すると、本充填材の凝集を引き起こす可能性があり、これは、透過性の低減には逆効果である。
【0027】
望ましい界面活性剤としては、スルフィノール(SURFYNOL)(登録商標)PSA336(エアープロダクツ社(Air Products,Inc.))、シルウェット(SILWET)(登録商標)L−77(OSIスペシャリティーズ社(OSI Specialties,Inc.))、ならびに、ゾニール(ZONYL)FSPおよび8952(デュポン・パフォーマンス・ケミカルズ・アンド・インターメディエイツ(DuPont Performance Chemicals and Intermediates))が挙げられる。本コーティング組成物に添加される界面活性剤の量および数は、選択された具体的な界面活性剤に依存すると予想されるが、界面活性剤は、乾燥させたバリアコーティングの性能を弱めることなく基板の湿潤化を達成するのに必要な最小限の量に制限されるべきである。例えば、典型的な界面活性剤の量は、乾燥させたバリアコーティングの約15重量%未満、または、約15重量%に等しい量であることができる。
【0028】
また本分散液は、追加の添加剤を含んでいてもよく、このような追加の添加剤としては、例えば殺生剤、コロイド状の分散剤、消泡剤、分散剤、湿潤剤、レベリング剤、および、増粘剤が挙げられる。本コーティング混合物のその他の任意の成分としては、pHを調節する一般的な物質が挙げられ、例えばNHOH、NaOHまたはKOHのような塩基;または、酢酸、クエン酸またはグリシンのような酸であるが、上記で考察したように凝集が起こらないよう配慮することが必要である。
【0029】
コーティングを形成するための組成物および方法に関するさらなる詳細は、同時係属中の米国特許出願第11/113,349号;11/272,351号;10/741,741号;10/741,251号;および、10/742,542号(これらの全体が参照により本明細書に組込まれる)で見出される。
【0030】
上述したように、本発明の分散液は、ケイ酸塩充填材とポリマー成分とを所定濃度で液体媒体中に分散させる方法に従って製造され、その後、この初期の分散液は、液体キャリアー媒体の一部を選択的に除去することによって濃縮される。濃縮工程において、液体キャリアー媒体の一部を選択的に除去することによって、分散液の固形分量を増加させる。適切な除去方法としては、蒸発、蒸留などが挙げられる。上記液体は、加熱して蒸発させることによって除去してもよく、好ましくは、液体キャリアーの約1%〜約30%が蒸発するまで、撹拌しながら約80℃〜約100℃の温度で約70〜約100分間加熱することによって留去してもよい。
【0031】
本分散液は、典型的には、分散液の固形分量が少なくとも5%増加するように濃縮される。すなわち、初期の濃縮していない分散液の固形分量の少なくとも1.05倍の固形分量を有するように濃縮される。より好ましくは、固形分量が少なくとも25%、または、少なくとも50%増加するのに十分な量の液体を除去する。濃縮分散液は、一般的には約5〜25重量パーセントの固体を含み、好ましくは約7〜15重量パーセントの固体を含む。本分散液が濃縮される前に、本分散液は、典型的には、約3〜7重量パーセントの固体を含む。意外なことに、本分散液は、蒸発によって調合物をゲル化させることなく濃縮が可能である。例えば、モンモリロナイトのような多くのケイ酸塩充填材物質は、比較的低い固形分量でゲルを形成し、ケイ酸塩成分の固形分量によって、バリアコーティングの最終的な固形分量が制限されることが多い。
【0032】
一般的には、本発明のコーティング調合物を基板に塗布し、乾燥させて、低透過性のバリアコーティングを形成する。製造されたコーティングフィルムは、優れたガスバリアを提供する。一般的に、本発明に従って製造されたコーティングは、ケイ酸塩充填材物質を含まない類似のバリアコーティングと比較して少なくとも100倍の酸素透過性の減少を示す。より好ましくは、本発明に従って製造されたバリアコーティングは、ケイ酸塩充填材物質を含まないバリアコーティングと比較して、少なくとも200倍、少なくとも400倍のガス透過性の減少を示し、さらには900倍を超えるガス透過性の減少を示す。本コーティングにとって適切な透過性値は、1気圧で1日あたり0.02cc−mm/m未満、または、1気圧で1日あたり0.01cc−mm/m未満であり得る。
【0033】
さらに驚くべきことに、本発明によって濃縮分散液から作製されたコーティング、すなわち濃縮されたコーティングは、液体キャリアー媒体の選択的な除去を経ていない類似の分散液、すなわち、分散液を実質的な蒸発またはその他の液体の除去で処理することなくポリマーラテックス中に充填材物質をより高い固形分量で添加することによって製造された分散液から製造された類似のコーティング(同じ組成および厚さを有する)と比較して、優れた酸素バリア特性を示すことが発見された。注目すべきことに、本発明のバリア特性は、固形分量および組成が同じであったとしても、濃縮していない調合物より優れている。蒸発工程を経ていない分散液から形成されたフィルムと比較して、本発明のコーティングは、それより少なくとも10パーセント、好ましくは少なくとも20パーセント低い透過性値を示す。
【0034】
本発明に従って製造された高固形分量のコーティング調合物は、ガス透過性の低減に加えて、乾燥時間の短縮、高い粘度、単一工程でのより厚いディップコーティング、より優れた懸濁安定性、減少した輸送費、液だれしないより厚いスプレーコーティング、基板の孔や欠陥へのコーティングの侵入の減少、および、フィルムおよび紙の連続コーティングにおけるより厚いコーティングを提供する。
【0035】
本発明のコーティングと共に用いられる基板は特に限定されないが、例えば、数ある基板のなかでも、高分子フィルム、弾性を有する基板、金属箔、および、紙、板紙などのセルロース系基板が挙げられる。このような基板としては、なかでも、フィルム、防食フィルム、真空包装、CA包装(controlled atmosphere package)、吹込成形された容器、熱成形された容器、および、電子表示フィルムが挙げられる。
【0036】
本発明の一形態によれば、バリアコーティングフィルムを有する製造品の製造方法が提供され、本方法は、(a)マトリックスポリマーと剥離型ケイ酸塩充填材物質とを含む水性分散液を製造すること;(b)該分散液の固形分量が5パーセント増加するように該分散液から水を蒸発させることによってそれらを濃縮すること;(c)基板に該濃縮分散液を塗布すること;および、(d)該濃縮分散液を乾燥させ、ケイ酸塩充填材物質を用いずに製造された類似のコーティングフィルムよりも少なくとも200倍低い透過性を有するバリアコーティングフィルムを製造すること、を含む。
【0037】
本発明のバリアコーティングにとって適切な物品としては、グローブ、テニスボール、バスケットボール、サッカーボール、フットボール、バレーボール、ラケッツ用ボール、ハンドボール、ビーチボール、および、玩具ボール、および、空気を入れて膨脹させる製品、例えば自動車およびトラック用タイヤ、自転車用タイヤ、ボート、エアーマットレス、および、エアーベッド(inflatable bed)が挙げられる。
【0038】
本発明のコーティングは、包装材料に使用するのに特に適しており、この場合、本バリアコーティングは高分子フィルム基板または板紙基板に塗布され、さらに、本発明のコーティングは、例えば、食品、飲料、電子部品、医薬などのガス(例えば酸素)に対して敏感な商品を包装するのに用いられる。
【実施例】
【0039】
以下の実施例において、ナノコンポジットバリアコーティングフィルムを製造し、ポリエステルフィルム基板に塗布し、続いて、酸素透過率を試験した。ナノコンポジットバリアコーティングフィルムは、高分子マトリックスとしてのポリエステル樹脂(イーステック1000,イーストマン,30%高分子固体)、および、剥離型ケイ酸塩充填材としてのモンモリロナイト(SCPX−2973、SCPX−2953、または、SCPX−2041)を含む水性媒体中で製造した。
【0040】
実験手順
酸素透過率(OTR)の試験
フィルムおよびコーティングされた基板を、モコン(Mocon)のOXTRAN2/20または2/60モジュールを用いて、23℃、0%RHおよび1気圧で酸素透過率に関して試験した。サンプルをモジュール上に搭載し、酸素に関して試験する前に2時間調整した。平衡に達したら、OTRを1気圧で1日あたりのcc/m単位で記録した。
【0041】
厚さの測定
全ての厚さの計算は、コーティングの重量、および、推定の密度に基づいて行われた。本発明の目的のために、ポリマー相の密度は、各ポリマーが異なる密度を有することが認識されていたとしても、全てのケースにおいて0.95gm/ccと推定されている。ナノコンポジットの密度は、混合物の基準と粘土の推定の密度(2gm/cc)を用いて見積もられた。
【0042】
基板上でのコーティングの厚さは、OTRを記録した後に測定した。モコンのモジュールから各サンプルを取り外し、規定サイズの円をサンプルから切り抜いた。この円の重さを量った。コーティングの重量は、コーティングされていない円の重量との差から計算し、厚さは、円のサイズとコーティングの重量から計算した。コーティング厚さが5ミクロン未満の場合、厚さは、光学式のプロフィルメーターを用いて測定した。フィルムの厚さはミリメートルで記録し、フィルムの透過性を計算するために用いた。
【0043】
コーティングの透過性は、以下のようにして計算した:
【0044】
【数1】

【0045】
式中Xは、バリアコーティングの厚さであり;Xは、基板の厚さであり、Px2は、基板の透過性であり、OTRは、バリアコーティングに関して測定された酸素透過率である。透過性の減少は、以下のように計算される:
【0046】
【数2】

【0047】
サンプルのOTRに対してコーティングの透過性を得ることの利点は、透過性から特定の厚さにおけるOTRを知ることができる点である。従って、異なる厚さを有するコーティングを直接比較することができる。OTRの単位は、1気圧、0%の相対湿度、23℃における1日あたりのcc/mである。
【0048】
実施例1A:SCPX−2973モンモリロナイトスラリーを用いた5%の固体を含むポリエステルナノコンポジット
8オンスのジャー中に、0.02グラムのアキュソール(Acusol)(登録商標)880(35.2%,ローム・アンド・ハース(Rohm&Haas))、0.05グラムのアキュソール(登録商標)882(17.1%,ローム・アンド・ハース)、および、41.54グラムの蒸留水を秤量した。撹拌子を加え、この溶液をアキュソール材が溶解するまで撹拌した。この溶液に、5.65グラムのポリエステルラテックス(イーステック1000,イーストマン)、および、1滴のスルフィノール(登録商標)PSA336(エアープロダクツ,100%)の混合物を添加した。得られた溶液を徹底的に混合した。
【0049】
上記の溶液に、14.25グラムのSCPX−2973モンモリロナイトスラリー(9.21%ケイ酸塩充填材)を、3.49グラムのグリシン(ラボ・セーフティ・サプライ(Lab Safety Supply),20重量%のグリシン)、および、10グラムの蒸留水と混合した。得られた溶液を撹拌子を用いて1時間撹拌し、1滴のメーガル(Mergal)680(トロイ・ケミカル社(Troy Chemical Corporation),26.3重量%の抗菌剤)を添加した。この調合物の固体のパーセントは、標準技術を用いて5.0%と測定された。
【0050】
このコーティング溶液をポリエステルフィルム基板に塗布し乾燥させた後、コーティングには、45.4重量%のポリエステル、35.1重量%の充填材、18.7%グリシン、0.3%スルフィノール(登録商標)PSA336浸潤剤、0.2重量%のアキュソール(登録商標)880、0.2重量%のアキュソール(登録商標)882、および、0.05重量%のメーガル680抗菌剤が含まれていた。
【0051】
酸素透過率(OTR)を、モコン(登録商標)OXTRAN2/20モジュールを用いて測定した。OTRは、1気圧、0%RH、23℃で1日あたり11.9cc/mであった。0.5ミクロンのポリエステルナノコンポジットの透過性は、1気圧、0%RH、23℃で1日あたり0.008cc−mm/mであった。このコーティングの透過性の減少は、充填材なしのポリエステルラテックスで作製されたコーティングの透過性における減少の337倍であった。
【0052】
実施例1B:SCPX−2973モンモリロナイトスラリーを用いた8%の固体を含むポリエステルナノコンポジット
8オンスのジャー中に、0.04グラムのアキュソール(登録商標)880(35.2%,ローム・アンド・ハース)、0.08グラムのアキュソール(登録商標)882(17.1%,ローム・アンド・ハース)、および、37.4グラムの蒸留水を秤量した。撹拌子を加え、この溶液をアキュソール(登録商標)材が溶解するまで撹拌した。この溶液に、9.0グラムのポリエステルラテックス(イーステック1000,イーストマン)、および、1滴のスルフィノール(登録商標)PSA336(エアープロダクツ,100%)の混合物を添加した。得られた溶液を徹底的に混合した。
【0053】
上記の溶液に、22.8グラムのSCPX−2973モンモリロナイトスラリー(9.21%)を、5.59グラムのグリシン(ラボ・セーフティ・サプライ,20%)と混合した。得られた溶液を撹拌子を用いて1時間撹拌し、1滴のメーガル680(トロイ・ケミカル社,26.3%)を添加した。この調合物の固体のパーセントは、標準技術を用いて8.1%と測定された。
【0054】
このコーティング溶液をポリエステルフィルム基板に塗布し乾燥させた後、コーティングには、45.4重量%のポリエステル、35.1重量%の充填材、18.7%グリシン、0.3%スルフィノール(登録商標)PSA336浸潤剤、0.2重量%のアキュソール(登録商標)880、0.2重量%のアキュソール(登録商標)882、および、0.05重量%のメーガル680抗菌剤が含まれていた。
【0055】
酸素透過率(OTR)を、モコン(登録商標)OXTRAN2/20モジュールを用いて測定した。OTRは、1気圧、0%RH、23℃で1日あたり6.1cc/mであった。0.6ミクロンのポリエステルナノコンポジットの透過性は、1気圧、0%RH、23℃で1日あたり0.004cc−mm/mであった。このコーティングの透過性の減少は、充填材なしのポリエステルラテックスで作製されたコーティングの透過性における減少の675倍であった。
【0056】
実施例1C:実施例1Aから濃縮したSCPX−2973モンモリロナイトスラリーを用いた8%の固体を含むポリエステルナノコンポジット
50グラムの実施例1Aのナノコンポジットを、8オンスのジャー中に入れた。続いて蓋を取り除いたジャーを、水浴中に撹拌しながら95℃で90分間入れた。調合物の内部温度を75℃に維持した。配分された時間が経過した後、水浴から調合物を取り出し、蓋を再度設置して一晩撹拌した。濃縮した調合物の固体のパーセントは、標準技術を用いて8.3%と測定された。
【0057】
このコーティング溶液をポリエステルフィルム基板に塗布し乾燥させた後、コーティングには、45.4重量%のポリエステル、35.1重量%の充填材、18.7%グリシン、0.3%スルフィノール(登録商標)PSA336浸潤剤、0.2重量%のアキュソール(登録商標)880、0.2重量%のアキュソール(登録商標)882、および、0.05重量%のメーガル680抗菌剤が含まれていた。
【0058】
酸素透過率(OTR)を、モコン(登録商標)OXTRAN2/20モジュールを用いて測定した。OTRは、1気圧、0%RH、23℃で1日あたり5.0cc/mであった。0.6ミクロンのポリエステルナノコンポジットの透過性は、1気圧、0%RH、23℃で1日あたり0.003cc−mm/mであった。このコーティングの透過性の減少は、充填材なしのポリエステルラテックスで作製されたコーティングの透過性における減少の900倍であった。また透過性も、目標の固形分量が8%で製造された分散液よりも25%低かった。
【0059】
実施例2A:SCPX−2953モンモリロナイト固体を用いた5%の固体を含むポリエステルナノコンポジット
16オンスのジャー中で、0.05グラムのアキュソール(登録商標)880(35.2%,ローム・アンド・ハース)、0.1グラムのアキュソール(登録商標)882(17.1%,ローム・アンド・ハース)、および、78.9グラムの蒸留水を秤量した。撹拌子を加え、この溶液をアキュソール材が溶解するまで撹拌した。この溶液に、11.3グラムのポリエステルラテックス(イーステック1000,イーストマン)、および、2滴のスルフィノール(登録商標)PSA336(エアープロダクツ,100%)の混合物を添加した。得られた溶液を徹底的に混合した。
【0060】
上記の溶液に、2.63グラムのSCPX−2953モンモリロナイト固体(100%)を、6.98グラムのグリシン(ラボ・セーフティ・サプライ,20%)、および、50グラムの蒸留水と混合した。得られた溶液を撹拌子を用いて1時間撹拌し、2滴のメーガル680(トロイ・ケミカル社,26.3%)を添加した。この調合物の固体のパーセントは、標準技術を用いて4.8%と測定された。
【0061】
このコーティング溶液をポリエステルフィルム基板に塗布し乾燥させた後、コーティングには、45.4重量%のポリエステル、35.1重量%の充填材、18.7%グリシン、0.3%スルフィノール(登録商標)PSA336浸潤剤、0.2重量%のアキュソール(登録商標)880、0.2重量%のアキュソール(登録商標)882、および、0.05重量%のメーガル680抗菌剤が含まれていた。
【0062】
酸素透過率(OTR)を、モコン(登録商標)OXTRAN2/20モジュールを用いて測定した。OTRは、1気圧、0%RH、23℃で1日あたり6.5cc/mであった。0.5ミクロンのポリエステルナノコンポジットの透過性は、1気圧、0%RH、23℃で1日あたり0.004cc−mm/mであった。このコーティングの透過性の減少は、充填材なしのポリエステルラテックスで作製されたコーティングの透過性における減少の675倍であった。
【0063】
実施例2B:SCPX−2953モンモリロナイト固体を用いた8%の固体を含むポリエステルナノコンポジット
8オンスのジャー中に、0.04グラムのアキュソール(登録商標)880(35.2%,ローム・アンド・ハース)、0.09グラムのアキュソール(登録商標)882(17.1%,ローム・アンド・ハース)、および、38.16グラムの蒸留水を秤量した。撹拌子を加え、この溶液をアキュソール材が溶解するまで撹拌した。この溶液に、9.0グラムのポリエステルラテックス(イーステック1000,イーストマン)、および、1滴のスルフィノール(登録商標)PSA336(エアープロダクツ,100%)の混合物を添加した。得られた溶液を徹底的に混合した。
【0064】
上記の溶液に、2.1グラムのSCPX−2953モンモリロナイト固体(100%)を、5.59グラムのグリシン(ラボ・セーフティ・サプライ,20%)、および、20グラムの蒸留水と混合した。得られた溶液を撹拌子を用いて1時間撹拌し、1滴のメーガル680(トロイ・ケミカル社,26.3%)を添加した。この調合物の固体のパーセントは、標準技術を用いて7.8%と測定された。
【0065】
このコーティング溶液をポリエステルフィルム基板に塗布し乾燥させた後、コーティングには、45.4重量%のポリエステル、35.1重量%の充填材、18.7%グリシン、0.3%スルフィノール(登録商標)PSA336浸潤剤、0.2重量%のアキュソール(登録商標)880、0.2重量%のアキュソール(登録商標)882、および、0.05重量%のメーガル680抗菌剤が含まれていた。
【0066】
酸素透過率(OTR)を、モコン(登録商標)OXTRAN2/20モジュールを用いて測定した。OTRは、1気圧、0%RH、23℃で1日あたり11.5cc/mであった。0.6ミクロンのポリエステルナノコンポジットの透過性は、1気圧、0%RH、23℃で1日あたり0.009cc−mm/mであった。このコーティングの透過性の減少は、充填材なしのポリエステルラテックスで作製されたコーティングの透過性における減少の300倍であった。
【0067】
実施例2C:実施例2Aから濃縮したSCPX−2953モンモリロナイト固体を用いた8%の固体を含むポリエステルナノコンポジット
50グラムの実施例2Aのナノコンポジット調合物を、8オンスのジャー中に入れた。続いて蓋を取り除いたジャーを、水浴中に撹拌しながら95℃で90分間入れた。調合物の内部温度を75℃に維持した。配分された時間が経過した後、水浴から調合物を取り出し、蓋を再度設置して一晩撹拌した。この調合物の固体のパーセントは、標準技術を用いて7.8%と測定された。
【0068】
このコーティング溶液をポリエステルフィルム基板に塗布し乾燥させた後、コーティングには、45.4重量%のポリエステル、35.1重量%の充填材、18.7%グリシン、0.3%スルフィノール(登録商標)PSA336浸潤剤、0.2重量%のアキュソール(登録商標)880、0.2重量%のアキュソール(登録商標)882、および、0.05重量%のメーガル680抗菌剤が含まれていた。
【0069】
酸素透過率(OTR)を、モコン(登録商標)OXTRAN2/20モジュールを用いて測定した。OTRは、1気圧、0%RH、23℃で1日あたり3.0cc/mであった。0.6ミクロンのポリエステルナノコンポジットの透過性は、1気圧、0%RH、23℃で1日あたり0.002cc−mm/mであった。このコーティングの透過性の減少は、充填材なしのポリエステルラテックスで作製されたコーティングの透過性における減少の1350倍であった。また透過性も、目標の固形分量が8%で製造された分散液よりも78%低かった。
【0070】
実施例3A:SCPX−2041モンモリロナイト固体を用いた5%の固体を含むポリエステルナノコンポジット
16オンスのジャー中で、0.05グラムのアキュソール(登録商標)880(35.2%,ローム・アンド・ハース)、0.1グラムのアキュソール(登録商標)882(17.1%,ローム・アンド・ハース)、および、78.94グラムの蒸留水を秤量した。撹拌子を加え、この溶液をアキュソール材が溶解するまで撹拌した。この溶液に、11.3グラムのポリエステルラテックス(イーステック1000,イーストマン)、および、2滴のスルフィノール(登録商標)PSA336(エアープロダクツ,100%)の混合物を添加した。得られた溶液を徹底的に混合した。
【0071】
上記の溶液に、2.63グラムのSCPX−2041モンモリロナイト固体(100%)を、6.98グラムのグリシン(ラボ・セーフティ・サプライ,20%)、および、50グラムの蒸留水と混合した。得られた溶液を撹拌子を用いて1時間撹拌し、2滴のメーガル680(トロイ・ケミカル社,26.3%)を添加した。この調合物の固体のパーセントは、標準技術を用いて5.0%と測定された。
【0072】
このコーティング溶液をポリエステルフィルム基板に塗布し乾燥させた後、コーティングには、45.4重量%のポリエステル、35.1重量%の充填材、18.7%グリシン、0.3%スルフィノール(登録商標)PSA336浸潤剤、0.2重量%のアキュソール(登録商標)880、0.2重量%のアキュソール(登録商標)882、および、0.05重量%のメーガル680抗菌剤が含まれていた。
【0073】
酸素透過率(OTR)を、モコン(登録商標)OXTRAN2/20モジュールを用いて測定した。OTRは、1気圧、0%RH、23℃で1日あたり17.1cc/mであった。0.5ミクロンのポリエステルナノコンポジットの透過性は、1気圧、0%RH、23℃で1日あたり0.013cc−mm/mであった。このコーティングの透過性の減少は、充填材なしのポリエステルラテックスで作製されたコーティングの透過性における減少の207倍であった。
【0074】
実施例3B:SCPX−2041モンモリロナイト固体を用いた8%の固体を含むポリエステルナノコンポジット
8オンスのジャー中に、0.04グラムのアキュソール(登録商標)880(35.2%,ローム・アンド・ハース)、0.09グラムのアキュソール(登録商標)882(17.1%,ローム・アンド・ハース)、および、38.16グラムの蒸留水を秤量した。撹拌子を加え、この溶液をアキュソール材が溶解するまで撹拌した。この溶液に、9.02グラムのポリエステルラテックス(イーステック1000,イーストマン)、および、1滴のスルフィノール(登録商標)PSA336(エアープロダクツ,100%)の混合物を添加した。得られた溶液を徹底的に混合した。
【0075】
上記の溶液に、2.1グラムのSCPX−2041モンモリロナイト固体(100%)を、5.59グラムのグリシン(ラボ・セーフティ・サプライ,20%)、および、20グラムの蒸留水と混合した。得られた溶液を撹拌子を用いて1時間撹拌し、1滴のメーガル680(トロイ・ケミカル社,26.3%)を添加した。この調合物の固体のパーセントは、標準技術を用いて7.8%と測定された。
【0076】
このコーティング溶液をポリエステルフィルム基板に塗布し乾燥させた後、コーティングには、45.4重量%のポリエステル、35.1重量%の充填材、18.7%グリシン、0.3%スルフィノール(登録商標)PSA336浸潤剤、0.2重量%のアキュソール(登録商標)880、0.2重量%のアキュソール(登録商標)882、および、0.05重量%のメーガル680抗菌剤が含まれていた。
【0077】
酸素透過率(OTR)を、モコン(登録商標)OXTRAN2/20モジュールを用いて測定した。OTRは、1気圧、0%RH、23℃で1日あたり9.7cc/mであった。0.6ミクロンのポリエステルナノコンポジットの透過性は、1気圧、0%RH、23℃で1日あたり0.007cc−mm/mであった。このコーティングの透過性の減少は、充填材なしのポリエステルラテックスで作製されたコーティングの透過性における減少の386倍であった。
【0078】
実施例3C:実施例3Aから濃縮したSCPX−2041モンモリロナイト固体を用いた8%の固体を含むポリエステルナノコンポジット
50グラムの実施例3Aからのナノコンポジット調合物を8オンスのジャー中に入れた。続いて蓋を取り除いたジャーを、水浴中に撹拌しながら95℃で90分間入れた。調合物の内部温度を75℃に維持した。配分された時間が経過した後、水浴から調合物を取り出し、蓋を再度設置して一晩撹拌した。この調合物の固体のパーセントは、標準技術を用いて9.0%と測定された。
【0079】
このコーティング溶液をポリエステルフィルム基板に塗布し乾燥させた後、コーティングには、45.4重量%のポリエステル、35.1重量%の充填材、18.7%グリシン、0.3%スルフィノール(登録商標)PSA336浸潤剤、0.2重量%のアキュソール(登録商標)880、0.2重量%のアキュソール(登録商標)882、および、0.05重量%のメーガル680抗菌剤が含まれていた。
【0080】
酸素透過率(OTR)を、モコン(登録商標)OXTRAN2/20モジュールを用いて測定した。OTRは、1気圧、0%RH、23℃で1日あたり7.5cc/mであった。0.6ミクロンのポリエステルナノコンポジットの透過性は、1気圧、0%RH、23℃で1日あたり0.005cc−mm/mであった。このコーティングの透過性の減少は、充填材なしのポリエステルラテックスで作製されたコーティングの透過性における減少の540倍であった。また透過性も、目標の固形分量が8%で製造された分散液よりも28%低かった。
【0081】
以下の表1に、実施例1A〜3Cの透過性データをまとめた。
【0082】
【表1】

【0083】
図1で上記の結果をさらに説明したが、それにより、各組成で、8%の本発明の濃縮分散液が最良のバリア特性を達成したことが観察できる。製造方法を除けば、8%の固体レベルで製造したものと組成と構造が実質的に同一になるだろうと思われるため、これは驚くべきことである。さらにこの改善は劇的であり、本濃縮分散液は、そのままの8%組成物よりも、透過性値が20%低いコーティングを提供し、さらに場合によっては、70%を超える改善を示す。
【0084】
本発明を数々の実施態様に関して説明したが、これら実施態様の本発明の本質および範囲内での改変は、当業者であれば容易に理解できるるものと思われる。本発明は、添付の請求項で定義される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上にバリアコーティングを形成するための濃縮ナノコンポジット分散液であって、該分散液は:
a)主成分として水を含む液体キャリアー媒体;
b)該キャリアー媒体中に分散された剥離型ケイ酸塩充填材物質;および、
c)該キャリアー媒体中に分散されたマトリックスポリマー、
を含み、
ここで、該濃縮分散液は、該充填材物質と該ポリマーマトリックスとを該液体キャリアー媒体中に分散すること、および、基板に塗布する前に、該液体キャリアー媒体の一部を選択的に除去することによって初期の分散液の固形分量を少なくとも5%増加させることによって製造される、上記分散液。
【請求項2】
前記初期の分散液の固形分量が、前記液体キャリアー媒体の一部を選択的に除去することによって少なくとも25%増加する、請求項1に記載の濃縮ナノコンポジット分散液。
【請求項3】
前記初期の分散液の固形分量が、前記液体キャリアー媒体の一部を選択的に除去することによって少なくとも50%増加する、請求項1に記載の濃縮ナノコンポジット分散液。
【請求項4】
前記初期の分散液の固形分量が、前記液体キャリアー媒体の一部を蒸発させて除去することによって増加する、請求項1に記載の濃縮ナノコンポジット分散液。
【請求項5】
前記濃縮分散液が、5〜25重量パーセントの範囲の固形分量を有する、請求項1に記載の濃縮ナノコンポジット分散液。
【請求項6】
前記濃縮分散液が、7〜15重量パーセントの範囲の固形分量を有する、請求項1に記載の濃縮ナノコンポジット分散液。
【請求項7】
前記剥離型ケイ酸塩充填材物質が、ベントナイト、バーミキュライト、モンモリロナイト、ノントロナイト、バイデル石、ボルコンスコイト(volkonskoite)、ヘクトライト、サポナイト、ラポナイト(laponite)、ソーコナイト、マガディアイト(magadiite)、ケニアイト(kenyaite)、レディカイト(ledikite)、および、それらの組み合わせからなる群より選択される化合物を含む、請求項1に記載の濃縮ナノコンポジット分散液。
【請求項8】
前記剥離型ケイ酸塩充填材物質が、モンモリロナイトを含む、請求項1に記載の濃縮ナノコンポジット分散液。
【請求項9】
前記剥離型ケイ酸塩充填材物質が、少なくとも50の平均アスペクト比を有するプレートレットを含む、請求項1に記載の濃縮ナノコンポジット分散液。
【請求項10】
前記剥離型ケイ酸塩充填材物質が、少なくとも1,000の平均アスペクト比を有するプレートレットを含む、請求項1に記載の濃縮ナノコンポジット分散液。
【請求項11】
前記剥離型ケイ酸塩充填材物質が、少なくとも5,000の平均アスペクト比を有するプレートレットを含む、請求項1に記載の濃縮ナノコンポジット分散液。
【請求項12】
前記マトリックスポリマーが、ポリエステル、ポリアミド、塩素化したポリマー、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリエーテル、ポリケトン、ポリカーボネート、アクリル系樹脂、ビニル系樹脂、フルオロポリマー、および、それらの組み合わせからなる群より選択されるポリマーを含む、請求項1に記載の濃縮ナノコンポジット分散液。
【請求項13】
前記マトリックスポリマーが、ポリエステル樹脂を含む、請求項1に記載の濃縮ナノコンポジット分散液。
【請求項14】
前記マトリックスポリマーが、スルホン化されたポリエステル樹脂を含む、請求項1に記載の濃縮ナノコンポジット分散液。
【請求項15】
前記濃縮分散液が、界面活性剤、消泡剤、分散剤、湿潤剤、レベリング剤、および、増粘剤からなる群より選択される少なくとも1種の補助剤をさらに含む、請求項1に記載の濃縮ナノコンポジット分散液。
【請求項16】
請求項1に記載の濃縮分散液からフィルムを形成することによって製造されるナノコンポジットバリアコーティング。
【請求項17】
前記コーティングが、液体キャリアー媒体の一部の選択的除去による濃縮をされていない類似の分散液を用いて製造された類似のコーティングに比べて、少なくとも10パーセント低い酸素透過性を示す、請求項16に記載のナノコンポジットバリアコーティング。
【請求項18】
前記コーティングが、液体キャリアー媒体の一部の選択的除去による濃縮をされていない類似の分散液を用いて製造された類似のコーティングに比べて、少なくとも20パーセント低い酸素透過性を示す、請求項16に記載のナノコンポジットバリアコーティング。
【請求項19】
前記コーティングが、1気圧で1日あたり0.02cc−mm/m未満の酸素透過性を示す、請求項16に記載のナノコンポジットバリアコーティング。
【請求項20】
前記コーティングが、1気圧で1日あたり0.01cc−mm/m未満の酸素透過性を示す、請求項16に記載のナノコンポジットのバリアコーティング。
【請求項21】
高分子基板に接着させた請求項16に記載のバリアコーティングを含む包装フィルム。
【請求項22】
セルロース系の基板に接着させた請求項16に記載のバリアコーティングを含む包装材料。
【請求項23】
酸素バリアコーティング層を有する物品であって、前記物品は:
a)基板;および、
b)該基板に接着させたバリアコーティング層(ここで該バリアコーティング層は、剥離型ケイ酸塩充填材物質、および、マトリックスポリマーを含む)、
を含み、
ここで該バリアコーティング層は、基板に塗布する前に分散液から水を蒸発させることによって少なくとも5パーセント濃縮した水性分散液から製造される、上記物品。
【請求項24】
前記基板が、セルロース系の基板である、請求項23に記載の物品。
【請求項25】
前記セルロース系の基板が、板紙である、請求項24に記載の物品。
【請求項26】
酸素バリアコーティング層を有する包装フィルムであって、該包装フィルムは:
a)高分子フィルム基板;および、
b)該高分子フィルムに接着させたバリアコーティング層(ここで該バリアコーティング層は、剥離型ケイ酸塩充填材物質、および、マトリックスポリマーを含む)、
を含み、
ここで該バリアコーティング層は、高分子フィルムへ塗布する前に、水を蒸発させることによって少なくとも5パーセント濃縮された水性分散液から製造される、上記フィルム。
【請求項27】
バリアコーティングフィルムを有する製造品の製造方法であって、前記方法は:
a)マトリックスポリマーと剥離型ケイ酸塩充填材物質とを含む水性分散液を製造する工程;
b)該分散液の固形分量が少なくとも5%増加するように、該分散液から水を蒸発させることによって該分散液を濃縮する工程;
c)濃縮された該分散液の層を基板に塗布する工程;および、
d)濃縮された該分散液を乾燥させ、ケイ酸塩充填材物質を含まない類似のコーティングフィルムの少なくとも200分の1未満の透過性を示すバリアコーティングフィルムを製造すること、
を含む、上記方法。
【請求項28】
前記基板が、滅菌包装フィルム、防食フィルム、真空包装、CA包装(controlled atmosphere package)、吹込成形された容器、熱成形された容器、および、電子表示フィルムからなる群より選択される、請求項27に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2010−504393(P2010−504393A)
【公表日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−529210(P2009−529210)
【出願日】平成19年9月14日(2007.9.14)
【国際出願番号】PCT/US2007/020199
【国際公開番号】WO2008/147380
【国際公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【出願人】(506069192)インマット・インコーポレーテッド (4)
【Fターム(参考)】