説明

バリアフィルム、バリアフィルムの製造方法及び有機光電変換素子

【課題】きわめて高いバリア性能を達成できる。尚且つ、透明性を有しロール・トゥー・ロールに適応可能なため安価で折曲耐性、耐傷性などの必要な生産適性を有するバリアフィルムとその製造方法を提供することにあり、更に、該バリアフィルムを基板として、用いた有機光電変換素子を提供すること。
【解決手段】基材上に、少なくとも1層のケイ素原子および酸素原子を含有するバリア層と、該バリア層上にオーバーコート層とを有するバリアフィルムであって、該バリア層がポリシラザンからなる層を処理することにより形成された層であり、かつ、該オーバーコート層が数平均粒径1〜200nmの無機ナノ粒子を有することを特徴とするバリアフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子デバイス等のパッケージ、または有機EL素子や太陽電池、液晶等のプラスチック基板といった材料に用いられるバリアフィルム、その製造方法及び有機光電変換素子に関し、更に、高いバリア性を有し、生産性に優れたバリアフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、プラスチック基板やフィルムの表面に酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ケイ素等の金属酸化物の薄膜を形成したバリアフィルムは、水蒸気や酸素等の各種ガスの遮断を必要とする物品の包装、食品や工業用品及び医薬品等の変質を防止するための包装用途に広く用いられている。また、包装用途以外にも液晶表示素子、太陽電池、有機エレクトロルミネッセンス(EL)基板等で使用されている。
【0003】
この様な分野での包装材料としてアルミ箔等が広く用いられているが、使用後の廃棄処理が問題となっているほか、基本的には不透明であり、外から内容物を確認することができないという課題を抱えており、更に、ディスプレイ材料ではなどの透明性が求められておりる分野においては、全く適用することができない。
【0004】
特に、有機エレクトロルミネッセンスや液晶などの表示素子、太陽電池などへの応用が進んでいる透明基材には、近年、軽量化、大型化という要求に加え、低価格化を狙い高い生産性が得られるロール・トゥー・ロールでの生産が可能であること、長期信頼性や形状の自由度が高いこと、曲面表示が可能であること等の高度な要求が加わり、重く割れやすく大面積化が困難なガラス基板に代わって透明プラスチック等のフィルム基材が採用され始めている。例えば、基板として、高分子フィルムを用いた例が開示されている(特許文献1参照)。
【0005】
上記の透明樹脂フィルムとして例えば汎用なため安価なポリエチレンテレフタレート(以下、「PET」と略記する。)等の比較的水や酸素透過率の高いものを用いると、透明プラスチック等のフィルム基材はガラスに対しガスバリア性が劣るという問題がある。例えば、有機光電変換素子の基板として用いた場合、ガスバリア性が劣る基材を用いると水蒸気、空気又は酸素が浸透して、性能が経時的に低下し易くなるという問題がある。この時の、水蒸気透過率としては、1×10−2g/m・day程度であることが分かってきている。
【0006】
ここで、ロール・トゥー・ロールでの高生産性について補足しておく。ガスバリア性の高いバリア層の製膜方法としては気相積層法を用いることが通例である。但し、気相積層法で一般的な真空製膜の系は、バッチ処理となりロール・トゥー・ロール対応が困難である。また、真空・大気圧下を問わず気相積層法は、製膜に関して非常に生産性が低い。
【0007】
これに対して塗布方式はロール・トゥー・ロールが容易で生産性が高いが、ガスバリア性の高いバリア層の形成方法(製膜)と構成する材料が課題であった。
【0008】
そこで、気相成長法成膜である蒸着法などの代わりに、ポリシラザンを主成分とする塗布液を塗布後、加熱処理する方法でガスバリア性層を形成する方法がある提案されている。ポリシラザンは400〜500℃にてシリカ転化することが知られているが、ガラス基板やシリコンウェハと異なり上記ロール・トゥー・ロール生産可能な透明プラスチック等のフィルム基材においては耐熱性の観点より適用ができなかった。また、この点を改良すべく、転化温度を引下げる各種の触媒が検討されているが、塗布膜中に残存する触媒がガスバリア性や透明性を低下させるという弊害があった。他方、低温処理が可能となっても、それに応じて処理(転化)時間が長くなるという生産適性における課題が新たに生じていた。
【0009】
加熱処理に代わる表面処理として、放電による1周波プラズマ処理技術が知られている(特許文献2参照)。これらはシリカ転化のための処理温度の引下げを図る利点はあるものの、しかしながらいずれの技術も、バリア層としての機能は不十分なものであった。この原因としては、シリカへの転化未了や不純物のバリア層内の残存、揮発性物質の揮発に伴う空隙発生、可撓性が不十分となる素材構成や不適切な生産方法(熱負荷が大きいなど)により発生するバリア層のクラック(亀裂)などが挙げられる。
【0010】
従って、水蒸気透過率として、1×10−2g/m・dayを大きく下回るような、更なるガスバリア性の改善が求められていた。
【0011】
また、高い生産性を実現するロール・トゥー・ロールによる生産を行うためには、可撓性を有していることに併せて、高度な折曲耐性や巻取り耐性(耐傷性)の付与が必須である。例えば、有機光電変換素子の基板として用いる場合は、微小な傷であっても製品の寿命を著しく低下させてしまう。しかしながら、ポリシラザンの塗布層に、このような高い折曲耐性や耐傷性を付与する技術は知られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平2−251429号公報
【特許文献2】特開2007−237588号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、きわめて高いバリア性能を達成でき、且つ、透明性を有し、ロール・トゥー・ロールに適応可能なため安価であり、折曲耐性、耐傷性などの必要な生産適性を有するバリアフィルムとその製造方法を提供することにあり、更に、該バリアフィルムを基板として用いた有機光電変換素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成することができる。
【0015】
1.基材上に、少なくとも1層のケイ素原子および酸素原子を含有するバリア層と、該バリア層上にオーバーコート層とを有するバリアフィルムであって、該バリア層がポリシラザンからなる層を処理することにより形成された層であり、かつ、該オーバーコート層が数平均粒径1〜200nmの無機ナノ粒子を有することを特徴とするバリアフィルム。
【0016】
2.前記バリア層の表面の十点平均粗さRzjisが10nm〜90nmであることを特徴とする前記1に記載のバリアフィルム。
【0017】
3.前記バリア層の表面の十点平均粗さRzjisが10nm〜30nmであることを特徴とする前記1に記載のバリアフィルム。
【0018】
4.前記1〜3のいずれか1項に記載のバリアフィルムを用いて作製されたことを特徴とする有機光電変換素子。
【0019】
5.前記1〜3のいずれか1項記載のバリアフィルムの製造方法において、基材上にポリシラザンを含有する塗布液を塗布後、放電ガス雰囲気下で少なくとも2周波以上のプラズマ処理にて、ポリシラザンをケイ素酸化物に変換することにより、バリア層を形成することを特徴とするバリアフィルムの製造方法。
【発明の効果】
【0020】
本発明により、製造安定性、取り扱い性に優れ、透明性とロール・トゥー・ロール適性を有し、高いバリア性能を達成できるバリアフィルムを得ることができる。更に、バリア性に優れた有機光電変換素子用樹脂基板用として有用なバリアフィルム、その製造方法、及び該基板を用いた有機光電変換素子を提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】バルクヘテロジャンクション型の有機光電変換素子からなる太陽電池を示す断面図である。
【図2】p−i−n型のバルクヘテロジャンクション層を備える有機光電変換素子からなる太陽電池を示す断面図である。
【図3】タンデム型のバルクヘテロジャンクション層を備える有機光電変換素子からなる太陽電池を示す断面図である。
【図4】光センサアレイの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0023】
本発明のバリアフィルムについて説明する。本発明のバリアフィルムは、樹脂フィルム基材、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレート(PEN)上にポリシラザンからなるバリア層と、更にOC層(オーバーコート層)を有している。また、本発明のバリアフィルムは、バリア層を二つ以上積層されていてもよい。
【0024】
(バリア層)
前記バリア層は、ポリシラザンを塗布した後、酸化処理を行うことにより、ケイ素原子と酸素原子を含有する層に変換することにより形成される。特に該酸化処理として、少なくとも2周波以上のプラズマ処理を行うことが、バリア層の表層の平均密度が緻密な膜へと低温転化することができ、加えて、可視光透過率(透明性)を高くすることが出来る点で好ましい。
【0025】
バリア層を構成する化合物として具体的には、ケイ素を有する無機酸化物が好ましく、酸化ケイ素、酸化窒化ケイ素等のセラミック層を挙げることができる。この様な、バリア層により、JISK7129B法に従って測定した水蒸気透過率が、10−4g/m/day以下、好ましくは10−5g/m/day以下であり、酸素透過率が0.01ml/m/day以下、好ましくは0.001ml/m/day以下であるバリア性に優れた樹脂フィルムを基材とするフィルムが得られる。
【0026】
上記の水蒸気透過率であるバリアフィルムを基板として用いた有機光電変換素子は、水蒸気の進入による経時的な性能低下が無い。
【0027】
また、有機ELディスプレイや高精彩カラー液晶ディスプレイ等の高度の水蒸気バリア性を必要とする用途に用いる場合、特に有機ELディスプレイ用途の場合、ダークスポットの発生が無くディスプレイの表示寿命を長くすることが出来る。
【0028】
ケイ素原子に対する、酸素原子の組成比が2.0に近い値の場合、SiOの組成に近づく。SiOであれば平均密度(g/cm)は2.2となる。SiOに近い組成が形成されれば、緻密な構造ができ、十分なバリア性が期待される。
【0029】
バリア層を塗布により設けることで、表面平滑性が高く(バリア層表面の十点平均粗さRzjis(JIS B 0601:2001年)が小さい)、かつ、膜厚が一様なバリア層への転化を図ることが出来、折り曲げ時の応力集中を低減可能となり折曲耐性を高められ、ロール・トゥー・ロール生産を可能とすることができる。
【0030】
このような特性を発現するには、バリア層表層の十点平均粗さRzjisが10nm〜90nmであることが好ましい。好ましく、更に、Rzjisが10nm〜30nmであることがより好適である。
【0031】
バリア層の平滑性を高めるには、バリア層を化学蒸着するより、液体を塗布する方法が好ましく、更に、異物の少ない清浄度が高い環境での作製が必要とされる。具体的にはクラス1000相当より清浄度が高いことが必要となる。
【0032】
(バリア層の形成方法)
本発明のバリア層の形成方法としては、基材上に少なくとも1層のポリシラザンを含有する塗布液を塗布後、プラズマ処理することにより、ケイ素酸化物を含有するバリア層を形成する方法が好ましい。
【0033】
塗布方法としては、任意の適切な方法が採用され得る。具体例としては、スピンコート法、ロールコート法、フローコート法、インクジェット法、スプレーコート法、プリント法、ディップコート法、流延成膜法、バーコート法、グラビア印刷法等が挙げられる。塗布厚みは、目的に応じて適切に設定され得る。例えば、塗布厚みは、乾燥後の厚みが好ましくは20nm〜100μm程度、さらに好ましくは20nm〜10μm程度、最も好ましくは20nm〜1μm程度となるように設定され得る。
【0034】
次に、塗布された膜をアニールする態様がこのましい。アニール温度は、好ましくは60℃〜200℃、さらに好ましくは70℃〜160℃である。アニール時間は、好ましくは30秒〜24時間程度、さらに好ましくは1分〜2時間程度である。このような範囲でアニールを行うことにより、ポリシラザンの一部が反応して分子が固定化され、良好な特性を有するバリアフィルムが得られる。具体的には、下記のようなメカニズムで分子が固定化されると推察される。なお、アニールは、一定温度で行ってもよく、段階的に温度を変化させてもよく、連続的に温度を変化(昇温および/または降温)させてもよい。アニールの際には、反応を安定化するために湿度を調節することが好ましく、通常30%RHから90%RH、より好ましくは40%RHから80%RHである。
【0035】
ケイ素酸化物のバリア層を形成するためのケイ素化合物の供給は、CVD(気相成長法)のようにガスとして供給されるよりも、バリアフィルム基材表面に塗布したほうが、製膜性が高いため生産性が高く、より均一で、平滑なバリア層を形成することができる。CVD法などの場合は気相で反応性が増した原料物質が基材表面に堆積する工程と同時に、気相中で不必要なパーティクルよばれる異物が生成することは、よく知られているが、原料をプラズマ反応空間に存在させないことで、これらパーティクルの発生を抑制することが可能になる。このことは、先に述べた折曲耐性の向上の点で優れている。
【0036】
塗布液に含有される前記ケイ素化合物はポリシラザンである。代表例はパーヒドロポリシラザンであるが、その一部の水素がメチル基などの有機基に置換してもよい。或いは、母骨格中に有機基が導入されていてもよい。
【0037】
ポリシラザンの市販品としては無触媒のものも含め具体的には、AZエレクトロニックマテリアルズ(株)製 アクアミカ NAX120、NN110、NN120、NN310、NN320、NL110A、NL120A、NL150A、NP110、NP140、SP140、MHPSなどが挙げられる。これらを塗布する場合、塗布液と水分が反応するのを抑制するため、溶媒としてキシレン、ジブチルエーテル、ソルベッソ、ターペン等、水分を含有しにくいものや脱水溶媒を用いることが好ましい。
【0038】
ポリシラザンを酸化ケイ素化合物に転化する、上述のプラズマ処理以外のその他の方法としては、たとえば加熱処理(400〜500℃)が知られているが、ガラス基板やシリコンウェハと異なり本発明のロール・トゥー・ロール生産可能な透明プラスチック等のフィルム基材においては耐熱性の観点より、プラズマ処理が好ましい。一部特殊なエンジニアリングプラスチックフィルムにおいては適用の可能性があるかもしれないが、これらは汎用プラスチックフィルムに対して、高価であったり、また、無色/透明性が得られない等の課題点があった。このような耐熱性プラスチックの無色/透明性を得るのが困難な理由は一般的に芳香族結合に代表される2重結合の共役系が可視光吸収を有することに起因するといわれる。このようなフィルムの代表例はポリイミド(PI)等である。
【0039】
また、この点を改良すべく、転化温度を引下げる各種の触媒が検討されているが、塗布膜中に残存する触媒がバリア性や透明性を低下させるという弊害があった。
【0040】
また、バリア層としての機能はプラズマ処理には及ばず、水蒸気透過率として、1×10−3g/m・dayを大きく下回るようなバリア性を得るに至らなかった。
【0041】
本発明のバリア層は、単層でも、複数の同様な層を積層してもよく、複数の層で、さらにバリア性を向上させることも出来る。
【0042】
(プラズマ処理)
本発明に適用可能なプラズマ処理は、後述のプラズマCVD法における場合の原材料の供給を行わず、プラズマ状態になりやすい放電ガスを供給しながら、プラズマ放電処理を行う。
【0043】
反応ガスとして、酸化性を有する酸素を供給することで、酸化反応を進めることができる。放電ガスとしては、窒素ガスおよび/または周期表の第18属原子、具体的には、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドン等が用いられる。これらの中でも窒素、ヘリウム、アルゴンが好ましく用いられ、特に窒素がコストも安く好ましい。具体的には、国際公開第2007/026545号パンフレット等に記載されている。
【0044】
プラズマを発生させるために掛ける電界は、放電空間に異なる周波数の電界を2つ以上印加したもので、特に第1の高周波電界と第2の高周波電界とを重畳した電界を印加することがバリア性向上の点で好ましい。
【0045】
前記第1の高周波電界の周波数ω1と前記第2の高周波電界の周波数ω2が、
ω1<ω2
であり且つ、前記第1の高周波電界の強さV1と、前記第2の高周波電界の強さV2と、放電開始電界の強さIVとの関係が、
V1≧IV>V2、または、V1>IV≧V2
を満たし、前記第2の高周波電界の出力密度が、1W/cm以上である。
【0046】
この様な放電条件をとることにより、例えば窒素ガスのように放電開始電界強度が高い放電ガスでも、放電を開始し、高密度で安定なプラズマ状態を維持出来、高性能な薄膜形成を行うことが出来る。
【0047】
上記の測定により放電ガスを窒素ガスとした場合、その放電開始電界強度IVは3.7kV/mm程度であり、従って、上記の関係において、第1の印加電界強度を、V1≧3.7kV/mmとして印加することによって窒素ガスを励起し、プラズマ状態にすることが出来る。
【0048】
ここで、第1電源の周波数としては、200kHz以下が好ましく用いることが出来る。またこの電界波形としては、連続波でもパルス波でもよい。下限は1kHz程度が望ましい。
【0049】
一方、第2電源の周波数としては、800kHz以上が好ましく用いられる。この第2電源の周波数が高い程、プラズマ密度が高くなり、緻密で良質な薄膜が得られる。上限は200MHz程度が望ましい。
【0050】
このような2つの電源から高周波電界を印加することは、第1の高周波電界によって高い放電開始電界強度を有する放電ガスの放電を開始するのに必要であり、また第2の高周波電界の高い周波数および高い出力密度によりプラズマ密度を高くして緻密で良質な薄膜を形成することが出来る。
【0051】
有機光電変化素子等の最終形態に組み込まれるためには透明であることが要望されている。すなわち400〜800nmの可視光透過率が70%以上90%以下であることを特徴としたバリア性の高いバリアフィルムを得るには、透明プラスチックフィルム上に低温にて緻密なバリア層転化可能な層を設けることが好適であり、その処理(転化)方法としては、上記の第1、第2の高周波電界を用いる2周波AGP処理が優れている。
【0052】
AGPとは大気圧プラズマであり、AGP処理とは、大気圧プラズマを照射することによる表面処理であり、大気圧プラズマのエネルギー印加による表面改質、すなわち本願においてはバリア層への転化処理を意味する。
【0053】
(オーバーコート層)
オーバーコート層(以下、OC層という)はバリア層上に設けられる。OC層は数平均粒径が1〜200nmの無機ナノ粒子を含有し、他にポリマーを主要成分として含有することが好ましい。
【0054】
該ポリマーとしては、下記の感光性樹脂及び光重合開始剤を用いて硬化した樹脂が好ましい。
【0055】
該感光性樹脂としては、例えば、ラジカル反応性不飽和化合物を有するアクリレート化合物を含有する樹脂組成物、アクリレート化合物とチオール基を有するメルカプト化合物を含有する樹脂組成物、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート、グリセロールメタクリレート等の多官能アクリレートモノマーを溶解させた樹脂組成物等が挙げられる。また、上記のような樹脂組成物の任意の混合物を使用することも可能であり、光重合性不飽和結合を分子内に1個以上有する反応性のモノマーを含有している感光性樹脂であれば特に制限はない。
【0056】
該光重合性不飽和結合を分子内に1個以上有する反応性モノマーとしては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、n−ペンチルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、n−デシルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、アリルアクリレート、ベンジルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、ブトキシエチレングリコールアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、グリセロールアクリレート、グリシジルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、イソボニルアクリレート、イソデキシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、2−メトリキエチルアクリレート、メトキシエチレングリコールアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ステアリルアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサジオールジアクリレート、1,3−プロパンジオールアクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリレート、2,2−ジメチロールプロパンジアクリレート、グリセロールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、グリセロールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ポリオキシエチルトリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールトリアクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート、プロピオンオキサイド変性ペンタエリスリトールトリアクリレート、プロピオンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ポリオキシプロピルトリメチロールプロパントリアクリレート、ブチレングリコールジアクリレート、1,2,4−ブタンジオールトリアクリレート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタジオールジアクリレート、ジアリルフマレート、1,10−デカンジオールジメチルアクリレート、ペンタエリスリトールヘキサアクリレート、および、上記のアクリレートをメタクリレートに換えたもの、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、1−ビニル−2−ピロリドン等が挙げられる。上記の反応性モノマーは、1種または2種以上の混合物として、あるいは、その他の化合物との混合物として使用することができる。
【0057】
前記感光性樹脂の組成物は光重合開始剤を含有する。光重合開始剤としては、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4,4−ビス(ジメチルアミン)ベンゾフェノン、4,4−ビス(ジエチルアミン)ベンゾフェノン、α−アミノ・アセトフェノン、4,4−ジクロロベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4−メチルジフェニルケトン、ジベンジルケトン、フルオレノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、p−tert−ブチルジクロロアセトフェノン、チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、ベンジルメトキシエチルアセタール、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、アントラキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、2−アミルアントラキノン、β−クロルアントラキノン、アントロン、ベンズアントロン、ジベンズスベロン、メチレンアントロン、4−アジドベンジルアセトフェノン、2,6−ビス(p−アジドベンジリデン)シクロヘキサン、2,6−ビス(p−アジドベンジリデン)−4−メチルシクロヘキサノン、2−フェニル−1,2−ブタジオン−2−(o−メトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、1,3−ジフェニル−プロパントリオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−3−エトキシ−プロパントリオン−2−(o−ベンゾイル)オキシム、ミヒラーケトン、2−メチル[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モノフォリノ−1−プロパン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モノフォリノフェニル)−ブタノン−1、ナフタレンスルホニルクロライド、キノリンスルホニルクロライド、n−フェニルチオアクリドン、4,4−アゾビスイソブチロニトリル、ジフェニルジスルフィド、ベンズチアゾールジスルフィド、トリフェニルホスフィン、カンファーキノン、四臭素化炭素、トリブロモフェニルスルホン、過酸化ベンゾイン、エオシン、メチレンブルー等の光還元性の色素とアスコルビン酸、トリエタノールアミン等の還元剤の組み合わせ等が挙げられ、これらの光重合開始剤を1種または2種以上の組み合わせで使用することができる。
【0058】
OC層は、前記無機ナノ粒子及び必要に応じて、前記ポリマー等の他の成分を配合して、適宜必要に応じて用いる希釈溶剤によって塗布液として調製し、当該塗布液を基材表面に従来公知の塗布方法によって塗布した後、電離放射線を照射して硬化させることにより形成することができる。尚、電離放射線を照射する方法としては、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、メタルハライドランプなどから発せられる100〜400nm、好ましくは200〜400nmの波長領域の紫外線を照射する。又は走査型やカーテン型の電子線加速器から発せられる100nm以下の波長領域の電子線を照射することにより行うことができる。
【0059】
本発明におけるOC層(オーバーコート層)の厚みとしては、0.5〜10μm、好ましくは2〜7μmであることが望ましい。0.5μm以上にすることにより、巻取り耐性(耐傷性)を十分なものにし易くなり、10μm以下にすることにより、光学特性のバランスを調整し易くなると共に、OC層を透明高分子フィルムの一方の面に設けた場合におけるバリアフィルムのカールを抑え易くすることができるようになる。
【0060】
(無機ナノ粒子)
前記無機ナノ粒子は数平均粒径が1〜200nmの無機粒子であり、金属、金属酸化物、非金属など多岐にわたる素材が候補となるが、特に透明性の観点より金属酸化物が好適である。
【0061】
金属酸化物として特に制約はないが、SiO、Al、TiO、ZrO、ZnO、SnO、In、BaO、SrO、CaO、MgO、VO、V、CrO、MoO、MoO、MnO、Mn、WO、LiMn、CdSnO、CdIn、ZnSnO、ZnSnO、ZnIn2O、CdSnO、CdIn、ZnSnO、ZnSnO、ZnInなどが挙げられる。これらは、単体の使用でも2種類以上の併用でも良い。
【0062】
無機ナノ粒子の分散物を得るには、近年の学術論文に倣って調整しても良いが、市販のナノ分散物を用いると粒径の揃った無機ナノ粒子であり、更に分散状態も良好であり優れている。
【0063】
具体的には、ビックケミー・ジャパン株式会社製のNANOBYKシリーズやNanophase Technologies社製のNanoDurなどの各種金属酸化物の分散物(ディスパージョン)があり、溶剤中の分散物やUV硬化性の分散物などがある。
【0064】
(数平均粒径)
無機ナノ粒子を電子顕微鏡により撮影し、画像上の各粒子の外接円の直径を測定して、各粒子の粒径とした。任意の100個の粒子の粒径より、数平均粒径を求める。その数平均粒径が200nm以下であればOC層の可撓性に優れ、そのため耐傷性や折り曲げたバリアフィルムのバリア性が優れる。50nm以下であれば透明性やヘイズの観点より、より好適である。粒径は小さい程優れているが、製造負荷・コスト負荷の観点から、1nm以上の粒径のものが用いられる。
【0065】
また、OC層の可撓性とバリア層への接着性を両立するためにも上記の粒径が好適であり、この範囲で無機ナノ粒子素材の本来の透明性も考慮して適宜用いる。
【0066】
OC層の無機ナノ粒子の添加量に関しては、ポリマー成分に対して1〜70質量%が好適である。1質量%以上であればバリア層への密着性が良好であり、70質量%以下であればヘイズも含めた透明性と可撓性が優れているため、この範囲で無機ナノ粒子素材の本来の透明性や粒径を考慮して適宜用いる。
【0067】
また、バリア性を更に向上するために、OC層の上に更にケイ素化合物を有する層を設けても良い。以下にバリア層、OC層以外の層に付いて説明する。
【0068】
(基材)
次に本発明のバリアフィルムで用いられる基材について説明する。本発明の基材は、平滑層を有するフィルムの基材が好ましいが、後述のバリア性を有するバリア層を保持することができる有機材料で形成されたものであれば特に限定されるものではない。
【0069】
具体的には、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、ポリアリレート、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ナイロン(Ny)、芳香族ポリアミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリエーテルイミド等の各樹脂フィルム、有機無機ハイブリッド構造を有するシルセスキオキサンを基本骨格とした耐熱透明フィルム(製品名Sila−DEC、チッソ株式会社製)、更には前記樹脂を2層以上積層して成る樹脂フィルム等を挙げることができる。コストや入手の容易性の点では、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)などが好ましく用いられ、また、光学的透明性、耐熱性、無機層、バリア層との密着性の点においては、有機無機ハイブリッド構造を有するシルセスキオキサンを基本骨格とした耐熱透明フィルムが好ましく用いることができる。基材の厚みは5〜500μm程度が好ましく、更に好ましくは25〜250μmである。
【0070】
また、本発明に係る基材は透明であることが好ましい。基材が透明であり、基材上に形成する層も透明であることにより、透明なバリアフィルムとすることが可能となるため、光電変換素子等の透明基板とすることも可能となるからである。
【0071】
また、上記に挙げた樹脂等を用いた基材は、未延伸フィルムでもよく、延伸フィルムでもよい。
【0072】
本発明に用いられる基材は、従来公知の一般的な方法により製造することが可能である。例えば、材料となる樹脂を押し出し機により溶融し、環状ダイやTダイにより押し出して急冷することにより、実質的に無定形で配向していない未延伸の基材を製造することができる。また、未延伸の基材を一軸延伸、テンター式逐次二軸延伸、テンター式同時二軸延伸、チューブラー式同時二軸延伸などの公知の方法により、基材の流れ(縦軸)方向、または基材の流れ方向と直角(横軸)方向に延伸することにより延伸基材を製造することができる。この場合の延伸倍率は、基材の原料となる樹脂に合わせて適宜選択することできるが、縦軸方向および横軸方向にそれぞれ2〜10倍が好ましい。
【0073】
また、本発明に係る樹脂フィルム基材においては、バリア層を形成する前にコロナ処理してもよい。
【0074】
(アンカーコート剤層)
さらに、本発明に係る基材表面には、バリア層との密着性の向上を目的としてアンカーコート剤層を形成してもよい。このアンカーコート剤層に用いられるアンカーコート剤としては、ポリエステル樹脂、イソシアネート樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、エチレンビニルアルコール樹脂、ビニル変性樹脂、エポキシ樹脂、変性スチレン樹脂、変性シリコン樹脂、およびアルキルチタネート等を、1または2種以上併せて使用することができる。これらのアンカーコート剤には、従来公知の添加剤を加えることもできる。そして、上記のアンカーコート剤は、ロールコート、グラビアコート、ナイフコート、ディップコート、スプレーコート等の公知の方法により基材上にコーティングし、溶剤、希釈剤等を乾燥除去することによりアンカーコーティングすることができる。上記のアンカーコート剤の塗布量としては、0.1〜5g/m(乾燥状態)程度が好ましい。
【0075】
(平滑層)
本発明の基材は平滑層を設けることが好ましい。本発明に係る平滑層は、突起等が存在する透明樹脂フィルム基材の粗面を平坦化し、あるいは、透明樹脂フィルム基材に存在する突起により透明無機化合物層に生じた凹凸やピンホールを埋めて平坦化するために設けられる。このような平滑層は、基本的には感光性樹脂及び光重合開始剤を含有する感光性組成物を硬化させて形成される。
【0076】
また、本願で改善を図る折曲耐性に関して、バリア層が一様な膜厚であることが望ましい。これは折曲時の応力集中を緩和させるためである。その観点からも平滑層を設けることが好適である。
【0077】
平滑層の感光性樹脂及び重合開始剤としては、前記OC層に用いられる観光性樹脂及び重合開始剤を好ましく使用することが出来る。
【0078】
平滑層の形成方法は特に制限はないが、スピンコーティング法、スプレー法、ブレードコーティング法、ディップ法等のウエットコーティング法、あるいは、蒸着法等のドライコーティング法により形成することが好ましい。
【0079】
平滑層の形成では、上述の感光性樹脂に、必要に応じて、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤等の添加剤を加えることができる。また、平滑層の積層位置に関係なく、いずれの平滑層においても、成膜性向上および膜のピンホール発生防止等のために適切な樹脂や添加剤を使用してもよい。
【0080】
感光性樹脂を溶媒に溶解または分散させた塗布液を用いて平滑層を形成する際に使用する溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類、α−もしくはβ−テルピネオール等のテルペン類等、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、N−メチル−2−ピロリドン、ジエチルケトン、2−ヘプタノン、4−ヘプタノン等のケトン類、トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類、セロソルブ、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、2−メトキシエチルアセテート、シクロヘキシルアセテート、2−エトキシエチルアセテート、3−メトキシブチルアセテート等の酢酸エステル類、ジエチレングリコールジアルキルエーテル、ジプロピレングリコールジアルキルエーテル、3−エトキシプロピオン酸エチル、安息香酸メチル、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等を挙げることができる。
【0081】
平滑層の平滑性は、JIS B 0601で規定される表面粗さで表現される値で、十点平均粗さRzjisが、10nm以上、30nm以下であることが好ましい。Rzjisが、10nm以上であれば、後述のケイ素化合物を塗布する段階で、ワイヤーバー、ワイヤレスバーなどの塗布方式で、平滑層表面に塗工手段が接触する場合に、塗布性が良好である。また、30nm以下であれば、ケイ素化合物を塗布した後の、凹凸を平滑化することが容易である。
【0082】
表面粗さは、AFM(原子間力顕微鏡)で、極小の先端半径の触針を持つ検出器で連続測定した凹凸の断面曲線から算出され、極小の先端半径の触針により測定方向が数十μmの区間内を多数回測定し、微細な凹凸の振幅に関する粗さである。
【0083】
(平滑層への反応性シリカ粒子の添加)
好ましい態様のひとつは、前述の感光性樹脂中に表面に光重合反応性を有する感光性基が導入された反応性シリカ粒子(以下、単に「反応性シリカ粒子」ともいう)を含むものである。ここで光重合性を有する感光性基としては、(メタ)アクリロイルオキシ基に代表される重合性不飽和基などを挙げることができる。また感光性樹脂は、この反応性シリカ粒子の表面に導入された光重合反応性を有する感光性基と光重合反応可能な化合物、例えば、重合性不飽和基を有する不飽和有機化合物を含むものであってもよい。また感光性樹脂としては、このような反応性シリカ粒子や重合性不飽和基を有する不飽和有機化合物に適宜汎用の希釈溶剤を混合することによって固形分を調整したものを用いることができる。
【0084】
ここで反応性シリカ粒子の平均粒径としては、0.001〜0.1μmの平均粒径であることが好ましい。平均粒径をこのような範囲にすることにより、後述する平均粒径1〜10μmの無機粒子からなるマット剤と組合せて用いることによって、本発明の効果である防眩性と解像性とをバランス良く満たす光学特性と、ハードコート性とを兼ね備えた平滑層を形成し易くなる。尚、このような効果をより得易くする観点からは、更に平均粒径として0.001〜0.01μmのものを用いることがより好ましい。本発明に用いられる平滑層中には、上述の様な無機粒子を質量比として20%以上60%以下含有することが好ましい。20%以上添加することで、バリア層との密着性が向上する。また60%を超えると、フィルムを湾曲させたり、加熱処理を行った場合にクラックが生じたり、バリアフィルムの透明性や屈折率などの光学的物性に影響を及ぼすことがある。
【0085】
本発明では、重合性不飽和基修飾加水分解性シランが、加水分解性シリル基の加水分解反応によって、シリカ粒子との間に、シリルオキシ基を生成して化学的に結合しているようなものを、反応性シリカ粒子として用いることができる。
【0086】
加水分解性シリル基としては、例えば、アルコキシリル基、アセトキシリル基等のカルボキシリレートシリル基、クロシリル基等のハロゲン化シリル基、アミノシリル基、オキシムシリル基、ヒドリドシリル基等が挙げられる。
【0087】
重合性不飽和基としては、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、ビニル基、プロペニル基、ブタジエニル基、スチリル基、エチニイル基、シンナモイル基、マレート基、アクリルアミド基等が挙げられる。
【0088】
本発明における平滑層の厚みとしては、1〜10μm、好ましくは2〜7μmであることが望ましい。1μm以上にすることにより、平滑層を有するフィルムとしての平滑性を十分なものにし易くなり、10μm以下にすることにより、平滑フィルムの光学特性のバランスを調整し易くなると共に、平滑層を透明高分子フィルムの一方の面にのみ設けた場合における平滑フィルムのカールを抑え易くすることができるようになる。
【0089】
(ブリードアウト防止層)
本発明のバリアフィルムは、平滑層を有するフィルムを加熱した際に、フィルム基材中から未反応のオリゴマーなどが表面へ移行して、接触する面を汚染してしまう現象を抑制する目的で、平滑層を有する基材の反対面にブリードアウト防止層を設けることが好ましい。
【0090】
ブリードアウト防止層は、この機能を有していれば、基本的に平滑層と同じ構成をとっても構わない。
【0091】
ブリードアウト防止層にはハードコート剤として、重合性不飽和基を有する不飽和化合物を含ませることが可能であり、該重合性不飽和基を有する不飽和有機化合物としては、分子中に2個以上の重合性不飽和基を有する多価不飽和有機化合物、あるいは分子中に1個の重合性不飽和基を有する単価不飽和有機化合物等を挙げることができる。
【0092】
ここで多価不飽和有機化合物としては、例えばエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0093】
また単価不飽和有機化合物としては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−(2−エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−メトキシプロピル(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0094】
その他の添加剤として、マット剤を含有しても良い。マット剤としては、平均粒径が0.1〜5μm程度の無機粒子が好ましい。
【0095】
このような無機粒子としては、シリカ、アルミナ、タルク、クレイ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化ジルコニウム等の1種又は2種以上を併せて使用することができる。
【0096】
ここで無機粒子からなるマット剤は、ハードコート剤の固形分100質量部に対して2質量部以上、好ましくは4質量部以上、より好ましくは6質量部以上、20質量部以下、好ましくは18質量部以下、より好ましくは16質量部以下の割合で混合されていることが望ましい。
【0097】
前記ブリードアウト防止層には、ハードコート剤及びマット剤の他の成分として熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂、光重合開始剤等を含有させてもよい。
【0098】
このような熱可塑性樹脂としては、アセチルセルロース、ニトロセルロース、アセチルブチルセルロース、エチルセルロース、メチルセルロース等のセルロース誘導体、酢酸ビニル及びその共重合体、塩化ビニル及びその共重合体、塩化ビニリデン及びその共重合体等のビニル系樹脂、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール等のアセタール系樹脂、アクリル樹脂及びその共重合体、メタクリル樹脂及びその共重合体等のアクリル系樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、線状ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。
【0099】
また熱硬化性樹脂としては、アクリルポリオールとイソシアネートプレポリマーとからなる熱硬化性ウレタン樹脂、フェノール樹脂、尿素メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。
【0100】
また電離放射線硬化性樹脂としては、光重合性プレポリマー若しくは光重合性モノマーなどの1種又は2種以上を混合した電離放射線硬化塗料に電離放射線(紫外線又は電子線)を照射することで硬化するものを使用することができる。ここで光重合性プレポリマーとしては、1分子中に2個以上のアクリロイル基を有し、架橋硬化することにより3次元網目構造となるアクリル系プレポリマーが特に好ましく使用される。このアクリル系プレポリマーとしては、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、メラミンアクリレート等が使用できる。また光重合性モノマーとしては、上記に記載した多価不飽和有機化合物等が使用できる。
【0101】
また光重合開始剤としては、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾイン、ベンジルメチルケタール、ベンゾインベンゾエート、ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−(4−モルフォリニル)−1−プロパン、α−アシロキシムエステル、チオキサンソン類等が挙げられる。
【0102】
以上のようなブリードアウト防止層は、ハードコート剤、マット剤、及び必要に応じて他の成分を配合して、適宜必要に応じて用いる希釈溶剤によって塗布液として調製し、当該塗布液を基材表面に従来公知の塗布方法によって塗布した後、電離放射線を照射して硬化させることにより形成することができる。尚、電離放射線を照射する方法としては、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、メタルハライドランプなどから発せられる100〜400nm、好ましくは200〜400nmの波長領域の紫外線を照射する、又は走査型やカーテン型の電子線加速器から発せられる100nm以下の波長領域の電子線を照射することにより行うことができる。
【0103】
本発明におけるブリードアウト防止層の厚みとしては、1〜10μm、好ましくは2〜7μmであることが望ましい。1μm以上にすることにより、フィルムとしての耐熱性を十分なものにし易くなり、10μm以下にすることにより、平滑フィルムの光学特性のバランスを調整し易くなると共に、平滑層を透明高分子フィルムの一方の面に設けた場合におけるバリアフィルムのカールを抑え易くすることができるようになる。
【0104】
(ケイ素化合物を有する層)
本発明のバリアフィルムは、スパッタリング法、イオンアシスト法、後述するプラズマCVD法、後述する大気圧または大気圧近傍の圧力下でのプラズマCVD法等を適用して、前記OC層上にケイ素化合物を有する層が積層されて形成されたものであってもよい。
【0105】
前記バリア層及び前記OC層に欠陥が生じても、該ケイ素化合物を有する層の存在により、欠陥部からのガス透過を抑制することができ、より高いバリア性を実現できるものである。
【0106】
本発明におけるこれらのケイ素化合物を有する層の厚さは、用いられる材料の種類、構成により最適条件が異なり、適宜選択されるが、1〜2000nmの範囲内であることが好ましい。ケイ素化合物を有する層の厚さが、上記の範囲より薄い場合には、均一な膜が得られず、ガスに対するバリア性の向上を得られにくいからである。また、ケイ素化合物を有する層の厚さが上記の範囲より厚い場合には、バリアフィルムにフレキシビリティを保持させることが困難であり、成膜後に折り曲げ、引っ張り等の外的要因により、バリアフィルムに亀裂が生じる等のおそれがあるからである。
【0107】
厚みがこれ以下であると膜欠陥が多く、更なる防湿性の改善は得られない。また、厚みが大きい方が理論的には防湿性は高いが、余り大きいと内部応力が不必要に大きくなり、割れやすくなり、防湿性の改善はが得られない。
【0108】
また、本発明においては、上記ケイ素化合物を有する層が、透明であることが好ましい。透明であることにより、バリアフィルムを透明なものとすることが可能となり、EL素子の透明基板等の用途にも使用することが可能となるからである。バリアフィルムの光透過率としては、例えば試験光の波長を550nmとしたとき透過率が80%以上のものが好ましく、90%以上が更に好ましい。
【0109】
ケイ素化合物を有する層の製膜方法としては、前記方法の中で、大気圧プラズマCVDが減圧チャンバー等が不要で、高速製膜ができ生産性の高い特徴を持っている。
【0110】
プラズマCVD法、大気圧または大気圧近傍の圧力下でのプラズマCVD法により得られるケイ素化合物を有する層は、原材料(原料ともいう)である有機金属化合物、分解ガス、分解温度、投入電力などの条件を選ぶことで、金属炭化物、金属窒化物、金属酸化物、金属硫化物等のセラミック層を、またこれらの混合物(金属酸窒化物、金属窒化炭化物など)も作り分けることができるため好ましい。
【0111】
例えば、ケイ素化合物を原料化合物として用い、分解ガスに酸素を用いれば、ケイ素酸化物が生成する。また、亜鉛化合物を原料化合物として用い、分解ガスに二硫化炭素を用いれば、硫化亜鉛が生成する。これはプラズマ空間内では非常に活性な荷電粒子・活性ラジカルが高密度で存在するため、プラズマ空間内では多段階の化学反応が非常に高速に促進され、プラズマ空間内に存在する元素は熱力学的に安定な化合物へと非常な短時間で変換されるためである。
【0112】
このような無機物の原料としては、典型または遷移金属元素を有していれば、常温常圧下で気体、液体、固体いずれの状態であっても構わない。気体の場合にはそのまま放電空間に導入できるが、液体、固体の場合は、加熱、バブリング、減圧、超音波照射等の手段により気化させて使用する。又、溶媒によって希釈して使用してもよく、溶媒は、メタノール、エタノール、n−ヘキサンなどの有機溶媒及びこれらの混合溶媒が使用出来る。尚、これらの希釈溶媒は、プラズマ放電処理中において、分子状、原子状に分解されるため、影響は殆ど無視することができる。
【0113】
また、これらの金属を含む原料ガスを分解して無機化合物を得るための分解ガスとしては、水素ガス、メタンガス、アセチレンガス、一酸化炭素ガス、二酸化炭素ガス、窒素ガス、アンモニアガス、亜酸化窒素ガス、酸化窒素ガス、二酸化窒素ガス、酸素ガス、水蒸気、フッ素ガス、フッ化水素、トリフルオロアルコール、トリフルオロトルエン、硫化水素、二酸化硫黄、二硫化炭素、塩素ガスなどが挙げられる。
【0114】
金属元素を含む原料ガスと、分解ガスを適宜選択することで、各種の金属炭化物、金属窒化物、金属酸化物、金属ハロゲン化物、金属硫化物を得ることができる。
【0115】
これらの反応性ガスに対して、主にプラズマ状態になりやすい放電ガスを混合し、プラズマ放電発生装置にガスを送りこむ。
【0116】
このような放電ガスとしては、窒素ガスおよび/または周期表の第18属原子、具体的には、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドン等が用いられる。これらの中でも窒素、ヘリウム、アルゴンが好ましく用いられ、特に窒素がコストも安く好ましい。
【0117】
上記放電ガスと反応性ガスを混合し、混合ガスとしてプラズマ放電発生装置(プラズマ発生装置)に供給することで膜形成を行う。放電ガスと反応性ガスの割合は、得ようとする膜の性質によって異なるが、混合ガス全体に対し、放電ガスの割合を50%以上として反応性ガスを供給する。
【0118】
本発明に係るケイ素化合物を有する層においては、含有する無機化合物が、SiOxCy(x=1.5〜2.0、y=0〜0.5)または、SiOx、SiNyまたはSiOxNy(x=1〜2、y=0.1〜1)であることが好ましく、光線透過性及び後述する大気圧プラズマCVD適性の観点から、SiOxであることが好ましい。
【0119】
本発明に係るケイ素化合物を有する層が含有する無機化合物は、例えば、上記有機ケイ素化合物に、更に酸素ガスや窒素ガスを所定割合で組み合わせて、O原子とN原子の少なくともいずれかと、Si原子とを含む膜を得ることができる。
【0120】
以上のように、上記のような原料ガスを放電ガスと共に使用することにより様々な無機薄膜を形成することができる。
【0121】
(有機光電変換素子)
前記バリアフィルムは、種々の封止用材料、フィルムとして用いることができる。
【0122】
該バリアフィルムは、例えば有機光電変換素子に用いることができる。有機光電変換素子に用いる際に、該バリアフィルムは透明であるため、該バリアフィルムを基板の主要部として用いてこの側から太陽光の受光を行うように構成できる。即ち、該バリアフィルム上に、例えば、ITO等の透明導電性薄膜を透明電極として設け、有機光電変換素子用樹脂基板を構成することができる。そして、基板上に設けられたITO透明導電膜を陽極としてこの上に多孔質半導体層を設け、更に金属膜からなる陰極を形成して有機光電変換素子を形成し、この上に別の封止材料(前記バリアフィルムと同じでもよい)を重ねて前記バリアフィルムによる基板と周囲を接着し、素子を封じ込めることで有機光電変換素子を封止することができ、これにより外気の湿気や酸素等のガスによる素子への影響を封じることが出来る。
【0123】
有機光電変換素子用樹脂基板は前記バリアフィルムのOC層上に、透明導電性膜を形成することによって得られる。透明導電膜の形成は、真空蒸着法やスパッタリング法等を用いることにより、また、インジウム、スズ等の金属アルコキシド等を用いたゾルゲル法等塗布法によっても製造できる。
【0124】
透明導電膜の膜厚としては、0.1nm〜1000nmの範囲の透明導電膜が好ましい。
【0125】
次いでこれらバリアフィルム上に透明導電膜が形成された有機光電変換素子用樹脂基板を用いた有機光電変換素子について説明する。
【0126】
(封止フィルム)
本発明は、前記バリア層を有するバリアフィルムを基板として用いることが特徴の一つである。
【0127】
前記バリア層を有するバリアフィルムにおいてバリア層上に、更に透明導電膜を形成し、これを陽極としてこの上に、有機光電変換素子を構成する層、陰極となる層とを積層し、この上に更にもう一つのバリアフィルムを封止フィルムとして、重ね接着することで封止する。
【0128】
前記のもう一つの封止フィルムの例として、樹脂フィルムがラミネートされた金属箔が用いられる。これは、光取りだし側のバリアフィルムとして用いることはできないが、低コストで更に透湿性の低い封止材料であり光取り出しを意図しない(透明性を要求されない)場合封止フィルムとして好ましい。
【0129】
好ましい金属箔としてはAl箔が挙げられる。
【0130】
後述するが、2つのフィルムの封止方法としては、例えば、一般に使用されるインパルスシーラー熱融着性の樹脂層をラミネートして、インパルスシーラーで融着させ、封止する方法が好ましく、この場合、バリアフィルム同士の封止は、フィルム膜厚が300μm以下であると、封止作業時のフィルムの取り扱い性が良く、インパルスシーラー等による熱融着が容易となるため膜厚としては300μm以下が望ましい。
【0131】
〔有機光電変換素子の封止〕
本発明では、本発明に係る前記バリア層を有する樹脂フィルム(バリアフィルム)上に透明導電膜を形成し、作製した有機光電変換素子用樹脂基板上に、有機光電変換素子各層を形成した後、上記封止フィルムを用いて、不活性ガスによりパージされた環境下で、上記封止フィルムで陰極面を覆うようにして、有機光電変換素子を封止することができる。
【0132】
不活性ガスとしては、Nの他、He、Ar等の希ガスが好ましく用いられるが、HeとArを混合した希ガスも好ましく、気体中に占める不活性ガスの割合は、90〜99.9体積%であることが好ましい。不活性ガスによりパージされた環境下で封止することにより、保存性が改良される。
【0133】
また、前記の樹脂フィルムがラミネートされた金属箔を用いて、有機光電変換素子を封止するにあたっては、ラミネートされた樹脂フィルム面ではなく、金属箔上にバリア層を形成し、このバリア層面を有機光電変換素子の陰極に貼り合わせることが好ましい。封止フィルムの樹脂フィルム面を有機光電変換素子の陰極に貼り合わせると、部分的に導通が発生することがある。
【0134】
封止フィルムを有機光電変換素子の陰極に貼り合わせる封止方法としては、一般に使用されるインパルスシーラーで融着可能な樹脂フィルム、例えばエチレン酢酸ビニルコポリマー(EVA)やポリプロピレン(PP)フィルム、ポリエチレン(PE)フィルム等の熱融着性フィルムを積層して、インパルスシーラーで融着させ封止する方法がある。
【0135】
接着方法としてはドライラミネート方式が作業性の面で優れている。この方法は一般には1.0〜2.5μm程度の硬化性の接着剤層を使用する。ただし接着剤の塗設量が多すぎる場合には、トンネル、浸み出し、縮緬皺等が発生することがあるため、好ましくは接着剤量を乾燥膜厚で3〜5μmになるように調節することが好ましい。
【0136】
ホットメルトラミネーションとはホットメルト接着剤を溶融し基材に接着層を塗設する方法であるが、接着剤層の厚さは一般に1〜50μmと広い範囲で設定可能な方法である。一般に使用されるホットメルト接着剤のベースレジンとしては、EVA、EEA、ポリエチレン、ブチルラバー等が使用され、ロジン、キシレン樹脂、テルペン系樹脂、スチレン系樹脂等が粘着付与剤として、ワックス等が可塑剤として添加される。
【0137】
エクストルージョンラミネート法とは高温で溶融した樹脂をダイスにより基材上に塗設する方法であり、樹脂層の厚さは一般に10〜50μmと広い範囲で設定可能である。
【0138】
エクストルージョンラミネートに使用される樹脂としては一般に、LDPE、EVA、PP等が使用される。
【0139】
次いで、有機光電変換素子を構成する有機光電変換素子材料各層(構成層)について説明する。
【0140】
(有機光電変換素子および太陽電池の構成)
本発明に係る有機光電変換素子の好ましい態様を説明するが、これに限定されるものではない。有機光電変換素子としては特に制限がなく、陽極と陰極と、両者に挟まれた発電層(p型半導体とn型半導体が混合された層、バルクヘテロジャンクション層、i層とも言う)が少なくとも1層以上あり、光を照射すると電流を発生する素子であればよい。
【0141】
有機光電変換素子の層構成の好ましい具体例を以下に示す。
【0142】
(A)陽極/発電層/陰極
(B)陽極/正孔輸送層/発電層/陰極
(C)陽極/正孔輸送層/発電層/電子輸送層/陰極
(D)陽極/正孔輸送層/p型半導体層/発電層/n型半導体層/電子輸送層/陰極
(E)陽極/正孔輸送層/第1発電層/電子輸送層/中間電極/正孔輸送層/第2発電層/電子輸送層/陰極。
【0143】
尚、上記(A)〜(E)は好ましい材料層構成の例であり、例えば、(E)の正孔輸送層や電子輸送層は好適な材料選択により省略が可能な場合がある。例えば(E)の電子輸送層/中間電極/正孔輸送層の代わりに、中間電極と、正孔輸送層又は電子輸送層とを兼ねた電荷再結合層を用いても良い。このような層の省略は材料技術としては難易度が高いものの、製造工程的には好適である。
【0144】
上記(A)〜(E)において、発電層は、正孔を輸送できるp型半導体材料と電子を輸送できるn型半導体材料を含有していることが必要であり、これらは実質2層でヘテロジャンクションを形成していても良いし、1層の内部で混合された状態となっているバルクヘテロジャンクションを形成しても良いが、バルクヘテロジャンクション構成のほうが光電変換効率が高いため、好ましい。発電層に用いられるp型半導体材料、n型半導体材料については後述する。
【0145】
有機EL素子同様、発電層を正孔輸送層、電子輸送層で挟み込むことで、正孔及び電子の陽極・陰極への取り出し効率を高めることができるため、それらを有する構成((B)、(C))の方が好ましい。
【0146】
また、発電層自体も正孔と電子の整流性(キャリア取り出しの選択性)を高めるため、(D)のようにp型半導体材料とn型半導体材料単体からなる層で発電層を挟み込むような構成(p−i−n構成ともいう)であっても良い。また、太陽光の利用効率を高めるため、異なる波長の太陽光をそれぞれの発電層で吸収するような、タンデム構成((E)の構成)であっても良い。
【0147】
太陽光利用率(光電変換効率)の向上を目的として、図1に示す有機光電変換素子10におけるサンドイッチ構造に替わって、一対の櫛歯状電極上にそれぞれ正孔輸送層14、電子輸送層16を形成し、その上に光電変換部15を配置するといった、バックコンタクト型の有機光電変換素子が構成とすることもできる。
【0148】
さらに、詳細な本発明に係る有機光電変換素子の好ましい態様を下記に説明する。
【0149】
図1は、バルクヘテロジャンクション型の有機光電変換素子からなる太陽電池の一例を示す断面図である。図1において、バルクヘテロジャンクション型の有機光電変換素子10は、基板11の一方面上に、陽極12、正孔輸送層17、バルクヘテロジャンクション層の発電層14、電子輸送層18及び陰極13が順次積層されている。
【0150】
基板11はバリアフィルムであり、バリア層側に順次積層された陽極12、発電層14及び陰極13を保持する部材である。本実施形態では、基板11側から光電変換される光が入射するので、基板11は、この光電変換される光を透過させることが可能な、すなわち、この光電変換すべき光の波長に対して透明な部材である。
【0151】
発電層14は、光エネルギーを電気エネルギーに変換する層であって、p型半導体材料とn型半導体材料とを一様に混合したバルクヘテロジャンクション層を有して構成される。p型半導体材料は、相対的に電子供与体(ドナー)として機能し、n型半導体材料は、相対的に電子受容体(アクセプタ)として機能する。
【0152】
図1において、基板11を介して陽極12から入射された光は、発電層14のバルクヘテロジャンクション層における電子受容体あるいは電子供与体で吸収され、電子供与体から電子受容体に電子が移動し、正孔と電子のペア(電荷分離状態)が形成される。発生した電荷は、内部電界、例えば、陽極12と陰極13の仕事関数が異なる場合では陽極12と陰極13との電位差によって、電子は、電子受容体間を通り、また正孔は、電子供与体間を通り、それぞれ異なる電極へ運ばれ、光電流が検出される。例えば、陽極12の仕事関数が陰極13の仕事関数よりも大きい場合では、電子は、陽極12へ、正孔は、陰極13へ輸送される。なお、仕事関数の大小が逆転すれば電子と正孔は、これとは逆方向に輸送される。また、陽極12と陰極13との間に電位をかけることにより、電子と正孔の輸送方向を制御することもできる。
【0153】
なお図1には記載していないが、正孔ブロック層、電子ブロック層、電子注入層、正孔注入層、あるいは平滑化層等の他の層を有していてもよい。
【0154】
さらに好ましい構成としては、前記発電層14が、いわゆるp−i−nの三層構成となっている構成(図2)である。通常のバルクヘテロジャンクション層は、p型半導体材料とn型半導体層が混合した、i層単体であるが、p型半導体材料単体からなるp層、およびn型半導体材料単体からなるn層で挟むことにより、正孔及び電子の整流性がより高くなり、電荷分離した正孔・電子の再結合等によるロスが低減され、一層高い光電変換効率を得ることができる。
【0155】
さらに、太陽光利用率(光電変換効率)の向上を目的として、このような光電変換素子を積層した、タンデム型の構成としてもよい。図3は、タンデム型のバルクヘテロジャンクション層を備える有機光電変換素子からなる太陽電池を示す断面図である。タンデム型構成の場合、基板11上に、順次透明電極12、第1の発電層14′を積層した後、電荷再結合層15を積層した後、第2の発電層16、次いで対電極13を積層することで、タンデム型の構成とすることができる。電荷再結合層15は、中間電極と、正孔輸送層又は電子輸送層との機能を併せ持つ。
【0156】
第2の発電層16は、第1の発電層14′の吸収スペクトルと同じスペクトルを吸収する層でもよいし、異なるスペクトルを吸収する層でもよいが、好ましくは異なるスペクトルを吸収する層である。また第1の発電層14′、第2の発電層16がともに前述のp−i−nの三層構成であってもよい。
【0157】
以下に、これらの層を構成する材料について述べる。
【0158】
(p型半導体材料)
本発明に係る有機光電変換素子の発電層(バルクヘテロジャンクション層)に用いられるp型半導体材料としては、種々の縮合多環芳香族低分子化合物や共役系ポリマー・オリゴマーが挙げられる。
【0159】
縮合多環芳香族低分子化合物としては、例えば、アントラセン、テトラセン、ペンタセン、ヘキサセン、ヘプタセン、クリセン、ピセン、フルミネン、ピレン、ペロピレン、ペリレン、テリレン、クオテリレン、コロネン、オバレン、サーカムアントラセン、ビスアンテン、ゼスレン、ヘプタゼスレン、ピランスレン、ビオランテン、イソビオランテン、サーコビフェニル、アントラジチオフェン等の化合物、ポルフィリンや銅フタロシアニン、テトラチアフルバレン(TTF)−テトラシアノキノジメタン(TCNQ)錯体、ビスエチレンテトラチアフルバレン(BEDTTTF)−過塩素酸錯体、及びこれらの誘導体や前駆体が挙げられる。
【0160】
また上記の縮合多環を有する誘導体の例としては、国際公開第03/16599号パンフレット、国際公開第03/28125号パンフレット、米国特許第6,690,029号明細書、特開2004−107216号公報等に記載の置換基をもったペンタセン誘導体、米国特許出願公開第2003/136964号明細書等に記載のペンタセンプレカーサ、J.Amer.Chem.Soc.,vol127.No14.4986、J.Amer.Chem.Soc.,vol.123、p9482、J.Amer.Chem.Soc.,vol.130(2008)、No.9、2706等に記載のトリアルキルシリルエチニル基で置換されたアセン系化合物等が挙げられる。
【0161】
共役系ポリマーとしては、例えば、ポリ3−ヘキシルチオフェン(P3HT)等のポリチオフェン及びそのオリゴマー、またはTechnical Digest of the International PVSEC−17,Fukuoka,Japan,2007,P1225に記載の重合性基を有するようなポリチオフェン、Nature Material,(2006)vol.5,p328に記載のポリチオフェン−チエノチオフェン共重合体、WO2008/000664号に記載のポリチオフェン−ジケトピロロピロール共重合体、Adv Mater,2007p4160に記載のポリチオフェン−チアゾロチアゾール共重合体,Nature Mat.vol.6(2007),p497に記載のPCPDTBT等のようなポリチオフェン共重合体、ポリピロール及びそのオリゴマー、ポリアニリン、ポリフェニレン及びそのオリゴマー、ポリフェニレンビニレン及びそのオリゴマー、ポリチエニレンビニレン及びそのオリゴマー、ポリアセチレン、ポリジアセチレン、ポリシラン、ポリゲルマン等のσ共役系ポリマー、等のポリマー材料が挙げられる。
【0162】
また、ポリマー材料ではなくオリゴマー材料としては、チオフェン6量体であるα−セクシチオフェンα,ω−ジヘキシル−α−セクシチオフェン、α,ω−ジヘキシル−α−キンケチオフェン、α,ω−ビス(3−ブトキシプロピル)−α−セクシチオフェン、等のオリゴマーが好適に用いることができる。
【0163】
これらの化合物の中でも、溶液プロセスが可能な程度に有機溶剤への溶解性が高く、かつ乾燥後は結晶性薄膜を形成し、高い移動度を達成することが可能な化合物が好ましい。
【0164】
また、発電層上に電子輸送層を塗布で製膜する場合、電子輸送層溶液が発電層を溶かしてしまうという課題があるため、溶液プロセスで塗布した後に不溶化できるような材料を用いても良い。
【0165】
このような材料としては、Technical Digest of the International PVSEC−17,Fukuoka,Japan,2007,P1225に記載の重合性基を有するようなポリチオフェンのような、塗布後に塗布膜を重合架橋して不溶化できる材料、または米国特許出願公開第2003/136964号、および特開2008−16834号等に記載されているような、熱等のエネルギーを加えることによって可溶性置換基が反応して不溶化する(顔料化する)材料などを挙げることができる。
【0166】
(n型半導体材料)
本発明に係る有機光電変換素子のバルクヘテロジャンクション層に用いられるn型半導体材料としては、特に限定されないが、例えば、フラーレン、オクタアザポルフィリン等、p型半導体の水素原子をフッ素原子に置換したパーフルオロ体(パーフルオロペンタセンやパーフルオロフタロシアニン等)、ナフタレンテトラカルボン酸無水物、ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド、ペリレンテトラカルボン酸無水物、ペリレンテトラカルボン酸ジイミド等の芳香族カルボン酸無水物やそのイミド化物を骨格として含む高分子化合物等を挙げることができる。
【0167】
しかし、各種のp型半導体材料と高速かつ効率的に電荷分離を行うことができる、フラーレン誘導体が好ましい。フラーレン誘導体としては、フラーレンC60、フラーレンC70、フラーレンC76、フラーレンC78、フラーレンC84、フラーレンC240、フラーレンC540、ミックスドフラーレン、フラーレンナノチューブ、多層ナノチューブ、単層ナノチューブ、ナノホーン(円錐型)等、およびこれらの一部が水素原子、ハロゲン原子、置換または無置換のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、シクロアルキル基、シリル基、エーテル基、チオエーテル基、アミノ基、シリル基等によって置換されたフラーレン誘導体を挙げることができる。
【0168】
中でも[6,6]−フェニルC61−ブチリックアシッドメチルエステル(略称PCBM)、[6,6]−フェニルC61−ブチリックアシッド−nブチルエステル(PCBnB)、[6,6]−フェニルC61−ブチリックアシッド−イソブチルエステル(PCBiB)、[6,6]−フェニルC61−ブチリックアシッド−nヘキシルエステル(PCBH)、Adv.Mater.,vol.20(2008),p2116等に記載のbis−PCBM、特開2006−199674号公報等のアミノ化フラーレン、特開2008−130889号公報等のメタロセン化フラーレン、米国特許第7329709号明細書等の環状エーテル基を有するフラーレン等のような、置換基を有してより溶解性が向上したフラーレン誘導体を用いることが好ましい。
【0169】
(正孔輸送層)
本発明の有機光電変換素子10は、バルクヘテロジャンクション層と陽極との中間には、バルクヘテロジャンクション層で発生した電荷をより効率的に取り出すことが可能とするため、正孔輸送層17を有していることが好ましい。
【0170】
これらの層を構成する材料としては、例えば、正孔輸送層17としては、スタルクヴイテック社製、商品名BaytronP等のPEDOT、ポリアニリン及びそのドープ材料、WO2006/019270号等に記載のシアン化合物、などを用いることができる。なお、バルクヘテロジャンクション層に用いられるn型半導体材料のLUMO準位よりも浅いLUMO準位を有する正孔輸送層には、バルクヘテロジャンクション層で生成した電子を陽極側には流さないような整流効果を有する、電子ブロック機能が付与される。このような正孔輸送層は、電子ブロック層とも呼ばれ、このような機能を有する正孔輸送層を使用するほうが好ましい。このような材料としては、特開平5−271166号公報等に記載のトリアリールアミン系化合物、また酸化モリブデン、酸化ニッケル、酸化タングステン等の金属酸化物等を用いることができる。また、バルクヘテロジャンクション層に用いたp型半導体材料単体からなる層を用いることもできる。これらの層を形成する手段としては、真空蒸着法、溶液塗布法のいずれであってもよいが、好ましくは溶液塗布法である。バルクヘテロジャンクション層を形成する前に、下層に塗布膜を形成すると塗布面をレベリングする効果があり、リーク等の影響が低減するため好ましい。
【0171】
(電子輸送層)
本発明の有機光電変換素子10は、バルクヘテロジャンクション層と陰極との中間には電子輸送層18を形成することで、バルクヘテロジャンクション層で発生した電荷をより効率的に取り出すことが可能となるため、これらの層を有していることが好ましい。
【0172】
また電子輸送層18としては、オクタアザポルフィリン、p型半導体のパーフルオロ体(パーフルオロペンタセンやパーフルオロフタロシアニン等)を用いることができるが、同様に、バルクヘテロジャンクション層に用いられるp型半導体材料のHOMO準位よりも深いHOMO準位を有する電子輸送層には、バルクヘテロジャンクション層で生成した正孔を陰極側には流さないような整流効果を有する、正孔ブロック機能が付与される。このような電子輸送層は、正孔ブロック層とも呼ばれ、このような機能を有する電子輸送層を使用するほうが好ましい。このような材料としては、バソキュプロイン等のフェナントレン系化合物、ナフタレンテトラカルボン酸無水物、ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド、ペリレンテトラカルボン酸無水物、ペリレンテトラカルボン酸ジイミド等のn型半導体材料、及び酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ガリウム等のn型無機酸化物及びフッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化セシウム等のアルカリ金属化合物等を用いることができる。また、バルクヘテロジャンクション層に用いたn型半導体材料単体からなる層を用いることもできる。これらの層を形成する手段としては、真空蒸着法、溶液塗布法のいずれであってもよいが、好ましくは溶液塗布法である。
【0173】
(その他の層)
エネルギー変換効率の向上や、素子寿命の向上を目的に、各種中間層を素子内に有する構成としてもよい。中間層の例としては、正孔ブロック層、電子ブロック層、正孔注入層、電子注入層、励起子ブロック層、UV吸収層、光反射層、波長変換層などを挙げることができる。
【0174】
(透明電極(第1電極))
本発明に係る有機光電変換素子の透明電極は、陰極、陽極は特に限定せず、素子構成により選択することができるが、好ましくは透明電極を陽極として用いることである。例えば、陽極として用いる場合、好ましくは380〜800nmの光を透過する電極である。材料としては、例えば、インジウムチンオキシド(ITO)、SnO、ZnO等の透明導電性金属酸化物、金、銀、白金等の金属薄膜、金属ナノワイヤー、カーボンナノチューブ用いることができる。
【0175】
またポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリチエニレンビニレン、ポリアズレン、ポリイソチアナフテン、ポリカルバゾール、ポリアセチレン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリアセン、ポリフェニルアセチレン、ポリジアセチレン及びポリナフタレンの各誘導体からなる群より選ばれる導電性高分子等も用いることができる。また、これらの導電性化合物を複数組み合わせて透明電極とすることもできる。
【0176】
(対電極(第2電極))
本発明に係る有機光電変換素子の対電極は導電材単独層であっても良いが、導電性を有する材料に加えて、これらを保持する樹脂を併用しても良い。対電極の導電材としては、仕事関数の小さい(4eV以下)金属、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが用いられる。このような電極物質の具体例としては、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属等が挙げられる。これらの中で、電子の取り出し性能及び酸化等に対する耐久性の点から、これら金属とこれより仕事関数の値が大きく安定な金属である第二金属との混合物、例えば、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、リチウム/アルミニウム混合物、アルミニウム等が好適である。対電極はこれらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させることにより、作製することができる。また、膜厚は通常10nm〜5μm、好ましくは50〜200nmの範囲で選ばれる。
【0177】
対電極の導電材として金属材料を用いれば対電極側に来た光は反射されて第1電極側に反射され、この光が再利用可能となり、光電変換層で再度吸収され、より光電変換効率が向上し好ましい。
【0178】
また、対電極13は、金属(例えば金、銀、銅、白金、ロジウム、ルテニウム、アルミニウム、マグネシウム、インジウム等)、炭素からなる無機ナノ粒子、ナノワイヤー、ナノ構造体であってもよく、ナノワイヤーの分散物であれば、透明で導電性の高い対電極を塗布法により形成でき好ましい。
【0179】
また、対電極側を光透過性とする場合は、例えば、アルミニウム及びアルミニウム合金、銀及び銀化合物等の対電極に適した導電性材料を薄く1〜20nm程度の膜厚で作製した後、上記透明電極の説明で挙げた導電性光透過性材料の膜を設けることで、光透過性対電極とすることができる。
【0180】
(中間電極)
また、前記(E)(または図3)のようなタンデム構成の場合に必要となる中間電極の材料としては、透明性と導電性を併せ持つ化合物を用いた層であることが好ましく、前記透明電極で用いたような材料(ITO、AZO、FTO、酸化チタン等の透明金属酸化物、Ag、Al、Au等の非常に薄い金属層または無機ナノ粒子・ナノワイヤーを含有する層、PEDOT:PSS、ポリアニリン等の導電性高分子材料等)を用いることができる。
【0181】
なお前述した正孔輸送層と電子輸送層の中には、適切に組み合わせて積層することで中間電極(電荷再結合層)として働く組み合わせもあり、このような構成とすると1層形成する工程を省くことができ好ましい。
【0182】
(金属ナノワイヤ)
一般に、金属ナノワイヤとは、金属元素を主要な構成要素とする線状構造体のことをいう。特に、本発明における金属ナノワイヤとはnmサイズの直径を有する線状構造体を意味する。
【0183】
本発明に係る金属ナノワイヤとしては、1つの金属ナノワイヤで長い導電パスを形成するために、また、適度な光散乱性を発現するために、平均長さが3μm以上であることが好ましく、さらには3〜500μmが好ましく、特に3〜300μmであることが好ましい。併せて、長さの相対標準偏差は40%以下であることが好ましい。また、平均直径は、透明性の観点からは小さいことが好ましく、一方で、導電性の観点からは大きい方が好ましい。本発明においては、金属ナノワイヤの平均直径として10〜300nmが好ましく、30〜200nmであることがより好ましい。併せて、直径の相対標準偏差は20%以下であることが好ましい。
【0184】
前記金属ナノワイヤの金属組成としては特に制限はなく、貴金属元素や卑金属元素の1種または複数の金属から構成することができるが、貴金属(例えば、金、白金、銀、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、オスミウム等)及び鉄、コバルト、銅、錫からなる群に属する少なくとも1種の金属を含むことが好ましく、導電性の観点から少なくとも銀を含むことがより好ましい。また、導電性と安定性(金属ナノワイヤの硫化や酸化耐性、及びマイグレーション耐性)を両立するために、銀と、銀を除く貴金属に属する少なくとも1種の金属を含むことも好ましい。本発明に係る金属ナノワイヤが2種類以上の金属元素を含む場合には、例えば、金属ナノワイヤの表面と内部で金属組成が異なっていてもよいし、金属ナノワイヤ全体が同一の金属組成を有していてもよい。
【0185】
前記金属ナノワイヤの製造手段には特に制限はなく、例えば、液相法や気相法等の公知の手段を用いることができる。また、具体的な製造方法にも特に制限はなく、公知の製造方法を用いることができる。例えば、Agナノワイヤの製造方法としては、Adv.Mater.,2002,14,833〜837;Chem.Mater.,2002,14,4736〜4745等、Auナノワイヤの製造方法としては特開2006−233252号公報等、Cuナノワイヤの製造方法としては特開2002−266007号公報等、Coナノワイヤの製造方法としては特開2004−149871号公報等を参考にすることができる。特に、上述した、Adv.Mater.及びChem.Mater.で報告されたAgナノワイヤの製造方法は、水系で簡便にAgナノワイヤを製造することができ、また銀の導電率は金属中で最大であることから、本発明に係る金属ナノワイヤの製造方法として好ましく適用することができる。
【0186】
本発明においては、金属ナノワイヤが互いに接触し合うことにより3次元的な導電ネットワークを形成し、高い導電性を発現するとともに、金属ナノワイヤが存在しない導電ネットワークの窓部を光が透過することが可能となり、さらに、金属ナノワイヤの散乱効果によって、有機発電層部からの発電を効率的に行うことが可能となる。第1電極において金属ナノワイヤを有機発電層部に近い側に設置すれば、この散乱効果がより有効に利用できるのでより好ましい実施形態である。
【0187】
(光学機能層)
本発明の有機光電変換素子は、太陽光のより効率的な受光を目的として、各種の光学機能層を有していて良い。光学機能層としては、たとえば、反射防止膜、マイクロレンズアレイ等の集光層、陰極で反射した光を散乱させて再度発電層に入射させることができるような光拡散層などを前記バリアフィルムの基材側に設けても良い。
【0188】
反射防止層としては、各種公知の反射防止層を設けることができるが、例えば、透明樹脂フィルムが二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムである場合は、フィルムに隣接する易接着層の屈折率を1.57〜1.63とすることで、フィルム基板と易接着層との界面反射を低減して透過率を向上させることができるのでより好ましい。屈折率を調整する方法としては、酸化スズゾルや酸化セリウムゾル等の比較的屈折率の高い酸化物ゾルとバインダー樹脂との比率を適宜調整して塗設することで実施できる。易接着層は単層でもよいが、接着性を向上させるためには2層以上の構成にしてもよい。
【0189】
集光層としては、例えば、支持基板の太陽光受光側にマイクロレンズアレイ上の構造を設けるように加工したり、あるいは所謂集光シートと組み合わせたりすることにより特定方向からの受光量を高めたり、逆に太陽光の入射角度依存性を低減することができる。
【0190】
マイクロレンズアレイの例としては、基板の光取り出し側に一辺が30μmでその頂角が90度となるような四角錐を2次元に配列する。一辺は10〜100μmが好ましい。これより小さくなると回折の効果が発生して色付き、大きすぎると厚みが厚くなり好ましくない。
【0191】
また光散乱層としては、各種のアンチグレア層、金属または各種無機酸化物などの無機ナノ粒子・ナノワイヤ等を無色透明なポリマーに分散した層などを挙げることができる。
【0192】
(製膜方法・表面処理方法)
各種の層の形成方法
電子受容体と電子供与体とが混合されたバルクヘテロジャンクション層、および輸送層・電極の形成方法としては、蒸着法、塗布法(キャスト法、スピンコート法を含む)等を例示することができる。このうち、バルクヘテロジャンクション層の形成方法としては、蒸着法、塗布法(キャスト法、スピンコート法を含む)等を例示することができる。このうち、前述の正孔と電子が電荷分離する界面の面積を増大させ、高い光電変換効率を有する素子を作製するためには、塗布法が好ましい。また塗布法は、製造速度にも優れている。
【0193】
この際に使用する塗布方法に制限は無いが、例えば、スピンコート法、溶液からのキャスト法、ディップコート法、ブレードコート法、ワイヤバーコート法、グラビアコート法、スプレーコート法等が挙げられる。さらには、インクジェット法、スクリーン印刷法、凸版印刷法、凹版印刷法、オフセット印刷法、フレキソ印刷法等の印刷法でパターニングすることもできる。
【0194】
塗布後は残留溶媒及び水分、ガスの除去、及び半導体材料の結晶化による移動度向上・吸収長波化を引き起こすために加熱を行うことが好ましい。製造工程中において所定の温度でアニール処理されると、微視的に一部が凝集または結晶化が促進され、バルクヘテロジャンクション層を適切な相分離構造とすることができる。その結果、バルクヘテロジャンクション層のキャリア移動度が向上し、高い効率を得ることができるようになる。
【0195】
発電層(バルクヘテロジャンクション層)14は、電子受容体と電子供与体とが均一に混在された単一層で構成してもよいが、電子受容体と電子供与体との混合比を変えた複数層で構成してもよい。この場合、前述したような塗布後に不溶化できるような材料を用いることで形成することが可能となる。
【0196】
(パターニング)
本発明に係る電極、発電層、正孔輸送層、電子輸送層等をパターニングする方法やプロセスには特に制限はなく、公知の手法を適宜適用することができる。
【0197】
バルクヘテロジャンクション層、輸送層等の可溶性の材料であれば、ダイコート、ディップコート等の全面塗布後に不要部だけ拭き取っても良いし、インクジェット法やスクリーン印刷等の方法を使用して塗布時に直接パターニングしても良い。
【0198】
電極材料などの不溶性の材料の場合は、電極を真空堆積時にマスク蒸着を行ったり、エッチング又はリフトオフ等の公知の方法によってパターニングすることができる。また、別の基板上に形成したパターンを転写することによってパターンを形成しても良い。
【実施例】
【0199】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0200】
実施例1
(試料1−1(比較例)の作製)
(基材)
熱可塑性樹脂の基材として、両面に易接着加工された125μm厚みの、ポリエステルフィルム(帝人デュポンフィルム株式会社製、テトロンO3)を、170℃で30分アニール加熱処理したものを用いた。
【0201】
(平滑層およびブリードアウト防止層を有するフィルムの作製)
以下の形成方法により、前記基材の片面にブリードアウト防止層、反対面に平滑層を形成した。
【0202】
(ブリードアウト防止層の形成)
上記基材の片面に、JSR株式会社製UV硬化型有機/無機ハイブリッドハードコート材(OPSTAR Z7535)を塗布、乾燥後の膜厚が4μmになるようにワイヤーバーで塗布した後、硬化条件;1.0J/cm空気下、高圧水銀ランプ使用、乾燥条件;80℃、3分で硬化を行い、ブリードアウト防止層を形成した。
【0203】
(平滑層の形成)
続けて上記基材の反対面に、JSR株式会社製 UV硬化型有機/無機ハイブリッドハードコート材(OPSTAR Z7501)を塗布、乾燥後の膜厚が4μmになるようにワイヤーバーで塗布した後、乾燥条件;80℃、3分で乾燥後、空気雰囲気下、高圧水銀ランプ使用、硬化条件;1.0J/cm硬化を行い、平滑層を形成した。
【0204】
このときの十点平均粗さRzjisは16nmであった。
【0205】
表面粗さは、AFM(原子間力顕微鏡)で、極小の先端半径の触針を持つ検出器で連続測定した凹凸の断面曲線から算出され、極小の先端半径の触針により測定方向が30μmの区間内を多数回測定し、微細な凹凸の振幅に関する平均の粗さである。
【0206】
(バリア層の形成)
次に、上記平滑層、ブリードアウト防止層を設けた基材の平滑層上にバリア層を以下に示す条件で、形成した。
【0207】
(バリア層塗布)
パーヒドロポリシラザン(PHPS)(AZエレクトロニックマテリアルズ(株)製、アクアミカ NN120−20)の20質量%ジブチルエーテル溶液をワイヤレスバーにて、乾燥後の膜厚が、0.3μmとなるように塗布、乾燥して試料を得た。塗布された膜を温度80℃、湿度40%RHの雰囲気下で30分処理しアニールした。
【0208】
(加熱処理)
更に、オーブンにて450℃1時間処理して、バリア層を形成し、試料No.1−1を得た。尚、試料No.1−1はバリア層に亀裂を生じた。
【0209】
(バリアフィルム試料No.1−2〜4−2の作製)
試料1−1の基材を表1〜表4のものに変え、更に、バリア層の素材の製膜方法(塗布、蒸着方法、AGPバリア、マグネトロンスパッタリング)、処理方法(加熱処理の温度・時間、AGP処理条件、AGPバリア製膜時の温度・時間、真空蒸着時の温度・時間、マグネトロンスパッタリング時の温度・時間)、前記製膜及び処理により形成されたバリア層を積層した2層の組み合わせ(バリア層2層構成のみ)、並びにOC層(厚さ、樹脂、無機ナノ粒子の素材、含有率、数平均粒径)、を表1〜表4の様にした以外は、試料1−1と同様にして、試料No.1−2〜4−2を得た。
【0210】
なお、表1〜表4の、(1)基材、(2)バリア層素材製膜方法、(3)バリア層処理・製膜条件、(4)OC層について、以下に記す。
【0211】
(1)基材
試料2−1の基材は、両面に易接着加工された125μm厚みのPEN(ポリエチレンナフタレート、帝人デュポンフィルム株式会社製、テオネックスQ83)を、170℃で30分アニール加熱処理したものを用いた。
【0212】
更に、PETの膜厚違いとして、75μm厚は、両面に易接着加工されたポリエステルフィルム(帝人デュポンフィルム株式会社製、テトロンO3)を170℃で30分アニール加熱処理した基材を用い、38μm厚は、両面に易接着加工されたポリエステルフィルム(帝人デュポンフィルム株式会社製、テトロンHS)を170℃で30分アニール加熱処理した基材を用いた。
【0213】
(2)バリア層素材製膜方法
(塗布)
表1、表3に記載の通り、バリア層塗布液(以下に示すポリシラザンまたはポリシラザンと触媒の混合物)を塗布した。
【0214】
(バリア層塗布液)
塗布液は、主にパーヒドロポリシラザン(PHPSともいう)からなり、表1〜表4の通り下記触媒が添加される。パーヒドロポリシラザンは表1〜表4に記載の通り、アクアミカ NL120A−20、アクアミカ NAX−120−20、アクアミカ NN320−20、アクアミカ NN−120−20CLから選択して用いた。何れもAZエレクトロニックマテリアルズ(株)製である。
【0215】
表1、表3に記載のアミン触媒はNease Performance Chemicals社製のNAXCAT−10DBを用いた。
【0216】
表1、表3に記載のPd触媒はプロピオン酸パラジウムを用いた。
【0217】
(2周波AGPバリア)
表1、表3に記載の温度、時間で、低周波と高周波の電界を同時に掛けて発生させたプラズマによるAGPバリア。(AGPバリアとは、大気圧プラズマ中に導入される反応ガスが反応して基材上に堆積することによりバリア層を形成する方法である。)なお、表1〜表4の温度は全て、基材の温度を示している。
【0218】
その他の条件を下記に示す。
【0219】
放電ガス:Nガス
反応ガス1:酸素ガスを全ガスに対し8%
反応ガス2:TEOS(テトラエトキシシラン)を全ガスに対し0.1%
低周波側電源電力:100kHzを2W/cm
高周波側電源電力:13.56MHzを10W/cm
【0220】
なお、放電ガス及び反応ガスは混合された状態で常圧であり、反応ガスの量(%)はモル分率を示す。
【0221】
(Al真空蒸着)
平滑層上に、表1〜表4に記載の温度、時間で、真空蒸着法により酸化アルミニウムを50nm厚で形成した。
【0222】
(ITOマグネトロンスパッタリング)
平滑層に、表1〜表4に記載の温度、時間で、マグネトロンスパッタリングによりITO(酸化インジウム・スズ)を100nm厚で形成した。
【0223】
(バリア層2層構成)
表1〜表4に示したとおり、試料3−1〜4−2は各種バリア層を組み合わせて、2層積層した例である。以下に、に前記製膜及び処理により形成されたバリア層を2層組み合わせて積層した構成を示す。なお、OC層を設ける場合はバリア層2層を積層してからOC層を塗布している。
【0224】
(塗布+2周波AGPバリア)
試料3−1はポリシラザンを塗布して熱処理(120℃6分)を行った層の上に、2周波AGPバリアを120℃12分施しバリア層を積層した。
【0225】
試料4−1はポリシラザンを塗布後、2周波酸素AGP処理(120℃環境下6分)をして形成したバリア層上に、120℃で12分間に渡り2周波酸素AGPバリアによりバリア層を積層した。
【0226】
(塗布の積層)
試料3−2はポリシラザン塗布と1周波酸素AGP処理2(120℃環境下6分)を交互に2回繰り返した。
【0227】
試料4−2はポリシラザン塗布と2周波酸素AGP処理(120℃環境下6分)を同様に2回繰り返し、バリア層を2層の積層にした。
【0228】
(ITOマグネトロンスパッタリングの積層)
試料3−3は前記のITOマグネトロンスパッタリング(80℃、30分)を2度繰り返しITOのバリア層を積層した。
【0229】
(バリア層処理)
ポリシラザンの塗布液は塗布後、表1、表3のように加熱処理又は下記AGP処理されることにより、バリア層が形成される。
【0230】
(AGP処理(大気圧プラズマ処理))
上述のようにポリシラザンを塗布した後、酸化ケイ素に変換してバリア層を形成するために、表1、表3に指定されたAGP処理(大気圧プラズマ処理)を表1、表3の温度、時間の条件でを行った。
【0231】
(AGP処理条件)
(プラズマ処理装置)
ロール電極型放電処理装置を用いて処理を実施。ロール電極に対向する棒状電極を複数個フィルムの搬送方向に対し平行に設置し、各電極部に原料及び電力を投入し以下のように、塗工面をプラズマ処理した。
【0232】
ここで、ロール電極及び棒状電極は、金属母材上にセラミック溶射加工によりアルミナ(誘電体)を片肉で1mm被覆したものを用いた。また、被覆後の電極間隙は、1mmに設定した。また誘電体が被覆された金属母材は、冷却水による冷却機能を有するステンレス製ジャケット仕様であり、放電中は冷却水による電極温度コントロールを行いながら実施した。ここで使用する電源は、応用電機製高周波電源(80、100kHz)、パール工業製高周波電源(13.56MHz)を使用した。
【0233】
更に、表1、表3に記載のバリア層処理のうちAGP処理の条件について以下に記載する。なお、放電ガス及び反応ガスは混合された状態で常圧であり、反応ガスの量(%)はモル分率を示す。
【0234】
(2周波酸素AGP処理)
放電ガス:Nガス
反応ガス:酸素ガスを全ガスに対し7%
低周波側電源電力:80kHzを3W/cm
高周波側電源電力:13.56MHzを9W/cm
【0235】
(1周波酸素AGP処理1)
放電ガス:Nガス
反応ガス:酸素ガスを全ガスに対し7%
低周波側電源電力:80kHzを3W/cm
【0236】
(1周波酸素AGP処理2)
放電ガス:Nガス
反応ガス:酸素ガスを全ガスに対し7%
高周波側電源電力:13.56MHzを9W/cm
【0237】
(バリア層の十点平均粗さRzjisの測定方法)
ポリシラザンを塗布した試料は処理を経てバリア層が形成されから十点平均粗さRzjisを測定した。Rzjisは、AFM(原子間力顕微鏡)で、極小の先端半径の触針を持つ検出器で連続測定した凹凸の断面曲線から算出され、極小の先端半径の触針により測定方向が30μmの区間内を多数回測定し、微細な凹凸の振幅に関する十点平均の粗さである。
【0238】
(バリア層形成後の試料の目視観察)
試料1−1〜4−2の処理後の段階(処理しない試料はバリア層形成の段階)で、目視により、試料の状態を観察した。結果を表5に示す。
【0239】
(OC層形成用組成物の調製とOC層形成)
表2、表4のUV硬化樹脂1として、DIC株式会社製UV硬化型コーティング剤ユニディック V−9510に、表2、表4に示す無機ナノ粒子の溶剤分散溶液を混合し調整したOC層形成用組成物をグラビアロール法により、OC層厚が表2、表4のように成るように、前記の各バリア層上に塗布した後、乾燥条件;80℃、3分で乾燥後、窒素雰囲気下、高圧水銀ランプにて、1.0J/cm照射することにより硬化し、OC層を形成した。
【0240】
なお、表2、表4の無機ナノ粒子(質量%)の項目の数値は塗布液に対する含有率(質量%)である。
【0241】
【表1】

【0242】
【表2】

【0243】
【表3】

【0244】
【表4】

【0245】
(バリアフィルムの光透過率(%)の測定と評価)
本実施例においては、JIS−R−3106に準じ光透過率(400〜800nm)を測定した。
【0246】
尚、測定装置は株式会社日立ハイテクノロジーズ製の日立分光光度計 U−4100を用い、光透過率(400〜800nm)を下記のように分類し表5に記載した。
【0247】
○:80%以上99%未満
△:80%以上80%未満
×:70%未満
得られた結果を表5に示す。
【0248】
(可撓性)
手に持って、曲げ方向に力を加えたときに、曲がるかどうかで判定した。
【0249】
○:曲がる
×:曲がらない
結果を表5に示す。
【0250】
(水蒸気透過率の評価)
以下の測定方法により評価した。
【0251】
装置
蒸着装置:日本電子(株)製真空蒸着装置JEE−400
恒温恒湿度オーブン:Yamato Humidic ChamberIG47M
レーザー顕微鏡:KEYENCE VK−8500
原子間力顕微鏡(AFM):Digital Instrments社製DI3100。
【0252】
原材料
水分と反応して腐食する金属:カルシウム(粒状)
水蒸気不透過性の金属:アルミニウム(φ3〜5mm、粒状)
水蒸気バリア性評価用セルの作製
あらかじめ、折曲試験(半径10mmの曲率になるように、180度の角度で100回屈曲を繰り返す)したバリアフィルム試料No.1−1〜4−2のバリア層面に、真空蒸着装置(日本電子製真空蒸着装置 JEE−400)を用い、透明導電膜を付ける前のバリアフィルム試料の蒸着させたい部分(12mm×12mmを9箇所)以外をマスクし、金属カルシウムを蒸着させた。その後、真空状態のままマスクを取り去り、シートのバリア層を有する側全面にアルミニウムをもう一つの金属蒸着源から蒸着させた。アルミニウム封止後、真空状態を解除し、速やかに乾燥窒素ガス雰囲気下で、厚さ0.2mmの石英ガラスに封止用紫外線硬化樹脂(ナガセケムテックス製)を介してアルミニウム封止側と対面させ、紫外線を照射することで、評価用セルを作製した。なお、試料1−2は可撓性が低く、折曲試験により破損したのでその後の評価は行わなかった。
【0253】
また、屈曲前後のバリア性の変化を確認するために、上記屈曲の処理を行わなかったバリアフィルムについても同様に、水蒸気バリア性評価用セルを作製した。
【0254】
得られた両面を封止した試料を60℃、90%RHの高温高湿下で保存し、下記の水蒸気透過率の計算方法に基づき、金属カルシウムの腐蝕量から水蒸気透過率を計算し、以下の評価基準で評価した。
【0255】
なお、バリアフィルム面から以外の水蒸気の透過が無いことを確認するために、比較試料としてバリアフィルム試料の代わりに、厚さ0.2mmの石英ガラス板を用いて金属カルシウムを蒸着した試料を、同様な60℃、90%RHの高温高湿下保存を行い、1000時間経過後でも金属カルシウム腐蝕が発生しないことを確認した。
【0256】
(水蒸気透過率の計算方法)
水蒸気透過度算出手段5は、評価用セルを保存後に撮影し、腐食性金属(カルシウム)が腐食している領域を画像処理により抽出し、その腐食した領域が腐食するのに要した水蒸気の量を計算することにより、水蒸気バリアフィルムの水蒸気透過度を算出する。式1に示すように、カルシウム1molは2molの水分と反応し、1molの水酸化カルシウムを生成する。
【0257】
Ca+2HO→Ca(OH)+H(式1)
よって、評価用セルの腐食に要した水蒸気透過率は、高温高湿下で保存した時間、試験片のカルシウム面積と腐食面積、カルシウム層の厚み、カルシウムの腐食後の厚み補正係数、腐食後の水酸化カルシウムの密度から求めることができる。
【0258】
高温高湿下で保存後の水酸化カルシウムのモル量(X):
X=(δ×t×α×d)/M(式2)
水蒸気透過度(g/m/day)=X×18×2×(10/A)*(24/T)(式3)
高温高湿下の保存時間:T(hour)
腐食性金属の面積:A(cm
腐食性金属の厚み:t(cm)
腐食性金属の腐食後の厚み補正係数:α
腐食された金属面積:δ(cm
腐食性金属の分子量:M
腐食後の金属水酸化物分子量:M
腐食性金属の密度:d(g/cm
腐食後の金属水酸化物密度:d(g/cm)。
【0259】
(評価基準)
5:1×10−5g/m/day未満
4:1×10−5g/m/day以上、1×10−4g/m/day未満
3:1×10−4g/m/day以上、1×10−3g/m/day未満
2:1×10−3g/m/day以上、1×10−2g/m/day未満
1:1×10−2g/m/day以上
得られた結果は、表5の水蒸気透過率の欄に示す。
【0260】
(耐傷性(巻込み耐性)の評価)
(基材の準備)
前述した、両面に易接着加工された18cm幅125μm厚みの、ポリエステルフィルム(帝人デュポンフィルム株式会社製、テトロンO3)の表面:平滑層、および、裏面:ブリードアウト防止層を有する長尺フィルム約100mを作製するため、テストプラントにて、同様に塗布・乾燥・紫外線硬化を実施した。
【0261】
次いで、この長尺フィルムを途中で切断し、各バリアフィルム試料をスプライシングテープにて貼り連結して、直径15cmの円筒形のステンレス製ロールに張力60N/18cmにて巻き取り/巻き出しを10回繰り返し、バリアフィルム試料のバリア層側の表面の傷の有り無し、を光学顕微鏡100倍で観察した。
【0262】
○:傷が認められない
×:1つ以上の傷が観察された
結果を表5に示す。
【0263】
(OC層の接着性)
前記耐傷性の評価において、OC層がバリア層から剥離しているか観察した。結果を表5に示す。
【0264】
(有機光電変換素子の作製)
あらかじめ、折曲試験(半径10mmの曲率になるように、180度の角度で100回屈曲を繰り返す)したバリアフィルム試料No.1−1〜4−2と、屈曲を行わなかったバリアフィルム試料No.1−1〜4−2にそれぞれ、インジウム・スズ酸化物(ITO)透明導電膜を150nm堆積したもの(シート抵抗10Ω/□)を、通常のフォトリソグラフィ技術と湿式エッチングとを用いて2mm幅にパターニングし第1の電極を形成した。なお、試料1−2は可撓性が低く、折曲試験により破損したのでその後の評価は行わなかった。
【0265】
パターン形成した第1の電極を、界面活性剤と超純水による超音波洗浄、超純水による超音波洗浄の順で洗浄後、窒素ブローで乾燥させ、最後に紫外線オゾン洗浄を行った。
【0266】
この透明基板上に、導電性高分子であるBaytron P4083(スタルクヴィテック社製)を膜厚が30nmになるように塗布乾燥した後、150℃で30分間熱処理させ正孔輸送層を製膜した。
【0267】
これ以降は、基板を窒素チャンバー中に持ち込み、窒素雰囲気下で作製した。
【0268】
まず、窒素雰囲気下で上記基板を150℃で10分間加熱処理した。次に、クロロベンゼンにP3HT(プレクトロニクス社製:レジオレギュラーポリ−3−ヘキシルチオフェン)とPCBM(フロンティアカーボン社製:6,6−フェニル−C61−ブチリックアシッドメチルエステル)を3.0質量%になるように1:0.8で混合した液を調製し、フィルタでろ過しながら膜厚が100nmになるように塗布を行い、室温で放置して乾燥させた。続けて、150℃で15分間加熱処理を行い、光電変換層を製膜した。
【0269】
次に、上記一連の機能層を製膜した基板を真空蒸着装置チャンバー内に移動し、1×10−4Pa以下までに真空蒸着装置内を減圧した後、蒸着速度0.01nm/秒でフッ化リチウムを0.6nm積層し、更に続けて、2mm幅のシャドウマスクを通して(受光部が2×2mmに成るように直行させて蒸着)、蒸着速度0.2nm/秒でAlメタルを100nm積層することで第2の電極を形成した。得られた有機光電変換素子を窒素チャンバーに移動し、封止フィルムと光硬化性樹脂を用いて封止を行って、受光部が2×2mmサイズの有機光電変換素子を作製した。
【0270】
(有機光電変換素子の封止)
窒素ガス(不活性ガス)によりパージされた環境下で、2枚のバリアフィルムのバリア層を設けた面を内側にして重ね、屈曲を繰り返したバリアフィルム試料No.1−1〜4−2と、屈曲を行わなかったバリアフィルム試料No.1−1〜4−2を封止フィルムとして用意した。
【0271】
前記折曲試験したバリアフィルムを基板とした有機光電変換素子試料No.1−1〜4−2には対応する前記屈曲を繰り返したバリアフィルム試料No.1−1〜4−2を封止フィルムとして用い、前記折曲試験しなかったバリアフィルムを基板とした有機光電変換素子試料No.1−1〜4−2には対応する前記屈曲をしなかったバリアフィルム試料No.1−1〜4−2を封止フィルムとして用いて、それぞれ該当する二組の有機光電変換素子試料No.1−1〜4−2の両面を封止した二組の有機光電変換素子試料No.1−1〜4−2を作製した。この封止に際して、シール材としてエポキシ系光硬化性接着剤を封止フィルムのバリア層に塗布し、上記有機光電変換素子をバリアフィルム間に挟み込んで密着させた後、片側の基板側からUV光を照射して硬化させた。こうして両面封止済みの有機光電変換素子試料No.1−1〜4−2が得られた。
【0272】
(エネルギー変換効率の評価)
上記作製した屈曲を繰り返したバリアフィルム試料と屈曲を行わなかったバリアフィルム試料No.1−1〜4−2を用いて作製した、それぞれ対応する有機光電変換素子試料No.1−1〜4−2に、有効面積を4.0mmにしたマスクを受光部に重ね、それぞれ4箇所の受光部にソーラーシミュレーター(AM1.5Gフィルタ)の100mW/cmの強度の光を照射し、IV特性を測定することで、短絡電流密度Jsc(mA/cm)、開放電圧Voc(V)を求めた。短絡電流密度Jsc(mA/cm)、開放電圧Voc(V)及びフィルファクターFF(%)から、下記式1に従って求めたエネルギー変換効率PCE(%)の4点平均値を見積もった。
【0273】
(式1)PCE(%)=〔Jsc(mA/cm)×Voc(V)×FF(%)〕/100mW/cm
初期電池特性としての変換効率を測定し、性能の経時的低下の度合いを温度60℃、湿度90%RH環境で1000時間保存した加速試験後の変換効率残存率により評価した。
【0274】
加速試験後の変換効率/初期変換効率の比について以下の評価を行った。
【0275】
5:90%以上
4:70%以上、90%未満
3:40%以上、70%未満
2:20%以上、40%未満
1:20%未満
屈曲を繰り返したバリアフィルム試料No.1−1〜4−2にそれぞれ該当する有機素子試料No.1−1〜4−2それぞれの評価結果を表6の加速試験後の変換効率残存率の欄に示す。尚、屈曲を行わなかったバリアフィルム試料No.1−1〜4−2にそれぞれ該当する有機光電変換素子試料No.1−1〜4−2は、加速試験前後の変換効率残存率に差は認められなかった。
【0276】
【表5】

【0277】
【表6】

【0278】
表5の耐傷性の評価において、試料1−12はOC層がバリア層から剥離しているのが観察され、バリア層とOC層との接着力が低いことを示している。OC層が設けられた他の試料については、OC層の剥離が観察されなかった。
【0279】
表1〜表5より本発明のポリシラザンからなるバリア層とOC層が積層されたバリアフィルムは折り曲げ試験前後において、水蒸気透過率が低く、高いバリア性能を有することが分かる。また、本発明のバリアフィルムは耐傷性および対折り曲げ性を有することから、ロール・トゥー・ロール生産適性を有することがわかる。また、本発明のバリアフィルムは可視光透過率が高く、高い透明性を有することが分かる。また表6より、本発明のバリアフィルムを基板として用いた有機光電変換素子は、折り曲げ試験に供されたバリアフィルムを使用した場合でも、高温高湿で保存したときの変換効率の低下が少ないことが分かる。
【0280】
本発明において、塗布で予めバリア層へ転化すべき膜を設けることで、表面の平滑性と膜厚の一様性が高いバリア層となり、応力集中が低減されるため、巻取り耐性(耐傷性)や折り曲げ耐性に優れ、折り曲げ後もバリア性が良好なバリアフィルムを得ることができたと考えられる。従って、本発明によりロール・トゥー・ロール生産可能な極めて優れたバリアフィルムの提供が可能であり、本発明のバリアフィルムを用いて作製した有機光電変換素子は、極めて低コストで提供することが可能である。
【符号の説明】
【0281】
10 バルクヘテロジャンクション型の有機光電変換素子
11 基板
12 透明電極
13 対極
14 光電変換部(バルクヘテロジャンクション層)
14p p層
14i i層
14n n層
14′ 第1の光電変換部
15 電荷再結合層
16 第2の光電変換部
17 正孔輸送層
18 電子輸送層
20 光センサアレイ
21 基板
22 透明電極
23 対電極
24 光電変換部
24a バッファ層
24b 光電変換層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に、少なくとも1層のケイ素原子および酸素原子を含有するバリア層と、該バリア層上にオーバーコート層とを有するバリアフィルムであって、該バリア層がポリシラザンからなる層を処理することにより形成された層であり、かつ、該オーバーコート層が数平均粒径1〜200nmの無機ナノ粒子を有することを特徴とするバリアフィルム。
【請求項2】
前記バリア層の表面の十点平均粗さRzjisが10nm〜90nmであることを特徴とする請求項1に記載のバリアフィルム。
【請求項3】
前記バリア層の表面の十点平均粗さRzjisが10nm〜30nmであることを特徴とする請求項1に記載のバリアフィルム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のバリアフィルムを用いて作製されたことを特徴とする有機光電変換素子。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項記載のバリアフィルムの製造方法において、基材上にポリシラザンを含有する塗布液を塗布後、放電ガス雰囲気下で少なくとも2周波以上のプラズマ処理にて、ポリシラザンをケイ素酸化物に変換することにより、バリア層を形成することを特徴とするバリアフィルムの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−73417(P2011−73417A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−230263(P2009−230263)
【出願日】平成21年10月2日(2009.10.2)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】