説明

バリアフィルムの製造方法

【課題】基材フィルム上に無機バリア層とポリマー層とを有するバリアフィルムで、安定した高ガスバリア性を有するバリアフィルムの製造方法の提供。
【解決手段】塗布工程を有する製造工程を使用し、少なくとも1層の無機バリア層を有するフィルム基材上に、ポリマー層形成用塗布液を塗布し、少なくとも1層のポリマー層を有するバリアフィルムを製造するバリアフィルムの製造方法において、前記塗布工程は、−0.1kPaから−1.0kPaの減圧環境の塗布室と、上流側に減圧室を有する塗布機とを使用し、前記減圧室の減圧度が−0.2kPaから−3.0kPaであり、前記減圧室と前記塗布室との減圧度の関係が、減圧室の減圧度>塗布室の減圧度、且つ、減圧室と塗布室との減圧度差が−0.1kPaから2.0kPaであることを特徴とするバリアフィルムの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れたガスバリア性能を有するバリアフィルムの製造方法に関する。より詳しくは、本発明は、食品、医薬品及び各種デバイスの基板として、又は基板を被覆するのに適した極めて優れたガスバリア性能を有するバリアフィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、食品、医薬品及び工業用品等の包装分野では、包装した内容物の変質を防止するために酸素や水蒸気の透過に対するガスバリア性フィルムが包装材料として使用されている。従来より、ガスバリア性フィルムとしては、例えばポリビニルアルコール(PVA)、エチレン・ビニルアルコール共重合体(EVOH)、或いはポリ塩化ビニリデン(PVDC)などのガスバリア性樹脂をコーティングしたフィルムやこれらの樹脂からなるフィルムを積層した積層体、プラスチック基板やフィルムの表面に酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化珪素等の金属酸化物の薄膜を形成した積層体フィルムが使用されてきた。これらの積層体フィルムは何れも1g/m・day程度の水蒸気バリア性を有することが知られている。
【0003】
これら、ガスバリア性フィルムは最近では食品、医薬品の包装材料としての用途以外に液晶表示素子、太陽電池、有機EL素子等の基材及び包装材料においても利用されている。
【0004】
特に近年の液晶表示素子や有機EL素子等の画像表示素子は、軽量化、大型化に加え生産性が高いロールトゥロール方式の検討が進み、ガラス基板から透明プラスチック基材及び封止材料として使用される様になっている。
【0005】
しかしながら、透明プラスチック基材の欠点としてガラス基板に比べガスバリア性が挙げられる。又、封止材料としてのガスバリア性も十分とは言えない。
【0006】
液晶表示素子や有機EL素子等の画像表示素子の場合、ガスバリア性が劣る基材及び封止材料を用いると、水蒸気や空気が浸透し、例えば液晶セル内の液晶を劣化させ、表示欠陥となって表示品位を劣化させてしまう。
【0007】
更に、近年開発されている大型液晶ディスプレイ、高精細ディスプレイ等では、水蒸気透過率が0.1g/m・dayから0.01g/m・dayが要求されている。
【0008】
この様な問題の対応として、透明プラスチック基材上に酸化珪素、酸化アルミニウム等の金属酸化物薄膜を形成したバリアフィルムがこれまでに開発されている。例えば、特開2003−045653号公報には、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、シクロオレフィンポリマー、ポリアミド、ポリエーテルサルホン、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネートなどを用い透明電極を製膜しない側にセラミックスを蒸着したフィルムが知られている。
【0009】
この様な金属酸化物薄膜を形成したバリアフィルムの問題点として、金属酸化物薄膜のヒビワレに伴うガスバリア性不良が挙げられる。この金属酸化物薄膜のヒビワレに対してこれまでに検討がなされてきた。例えば、高分子材料からなる透明基材フィルムの少なくとも一方の面に、酸化アルミニウムの蒸着薄膜層、水溶性高分子を含むガスバリア性被膜層、酸化アルミニウムの蒸着薄膜層を順次積層した積層体が知られている(特許文献1参照。)。
【0010】
支持体上に、無機物を含むバリア層と有機層とを少なくとも一層ずつ交互に有したバリアフィルムが知られている(特許文献2参照。)。
【0011】
基材フィルム上に、少なくとも1層の無機バリア層と少なくとも1層のアクリルモノマーの重合物を主成分とする有機層とを有するバリアフィルムが知られている(特許文献3参照。)。
【0012】
しかしながら、特許文献1から3に記載のバリアフィルムは、確かに基材フィルム上に金属酸化物薄膜を形成したバリアフィルムに比べ酸素や水蒸気の透過に対するガスバリア性は向上するが、未だ高ガスバリア性が要求される液晶表示素子や有機EL素子等の画像表示素子に使用するには不十分であることが判った。
【0013】
この様な状況から、基材フィルム上に金属酸化物を有する無機バリア層とポリマー層とを有する積層フィルムで、安定した高ガスバリア性を有するバリアフィルムの開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2003−181973号公報
【特許文献2】特開2006−088538号公報
【特許文献3】特開2008−87162号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明はこの様な状況に鑑みなされたものであり、その目的は基材フィルム上に無機バリア層とポリマー層とを有するバリアフィルムで、安定した高ガスバリア性を有するバリアフィルムの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成された。
【0017】
1.基材供給工程、塗布工程、乾燥工程、巻き取り工程を有する製造工程を使用し、少なくとも1層の無機バリア層を有するフィルム基材上に、ポリマー層形成用塗布液を塗布し、少なくとも1層のポリマー層を有するバリアフィルムを製造するバリアフィルムの製造方法において、
少なくとも前記塗布工程は、−0.1kPaから−1.0kPaの減圧環境の塗布室と、上流側に減圧室を有する塗布機とを使用し、
前記減圧室の減圧度が−0.2kPaから−3.0kPaであり、
前記減圧室と前記塗布室との減圧度の関係が、減圧室の減圧度>塗布室の減圧度、且つ、減圧室と塗布室との減圧度差が0.1kPaから2kPaであることを特徴とするバリアフィルムの製造方法。
【0018】
2.前記ポリマー層形成用塗布液の脱気度は溶存酸素濃度で4ppm以下であることを特徴とする前記1に記載のバリアフィルムの製造方法。
【0019】
3.前記ポリマー層がアクリレート系樹脂又はメタクリレート系樹脂で形成されていることを特徴とする前記1又は2に記載のバリアフィルムの製造方法。
【0020】
4.前記ポリマー層がポリシラザンで形成されていることを特徴とする前記1又は2に記載のバリアフィルムの製造方法。
【0021】
5.前記ポリマー層は平均粒径が7nmから100nmの粒子を含むことを特徴とする前記1から4の何れか1項に記載のバリアフィルムの製造方法。
【0022】
6.前記無機バリア層が大気圧プラズマ方式で形成された酸化珪素系バリア膜であることを特徴とする前記1から5の何れか1項に記載のバリアフィルムの製造方法。
【0023】
本発明者は、基材の上に無機バリア層とポリマー層とを交互に積層フィルムで、何故、酸素透過率、水蒸気透過率が安定しないかを検討した結果、以下のことが判明した。
【0024】
フィルム基材の上に無機バリア層とポリマー層とを交互に積層フィルムにおいて、ガスバリア性の性能維持には無機バリア層の安定化が支配的であることから、無機バリア層が安定することで、ガスバリア性も安定化が出来ると推定した。
【0025】
基材の上に形成された無機バリア層のガスバリア性が不安定化の原因は、無機バリア層が薄膜で硬いことから製造過程で微細なクラック、微小異物付着の脱落による欠陥等が発生し、この状態で無機バリア層の上にポリマー層を塗布してもクラック内部及び欠陥内部にポリマー層形成用塗布液が入り込み、クラック及び欠陥箇所を封止しないため、クラック及び欠陥箇所を通して水蒸気、酸素が内部に入り込むことによるものと推定した。
【0026】
何故、クラック内部及び欠陥箇所にポリマー層形成用塗布液が入り込まないか更に検討した結果、クラック及び欠陥箇所が微細なため、ポリマー層形成用塗布液を塗布する時にクラック内部及び欠陥内部にある空気がポリマー層形成用塗布液により封じ込められる状態になる。この結果、ポリマー層形成用塗布液により形成されたポリマー層を通過した水蒸気、酸素がクラック及び欠陥箇所を介して入り込むことでガスバリア性が不安定化になることが判った。
【0027】
更に、フィルム基材の上に形成した無機バリア層にクラックの発生を防止する手段として、無機バリア層の形成方法を検討した結果、真空蒸着による気相体積法よりも大気圧プラズマ法の方が優れているが、基材が可撓性のフィルムであることから基材の屈曲性に無機バリア層が追従出来なくてクラックが発生することが判った。
【0028】
これらのことから、可撓性のフィルムを基材に使用する場合クラックの発生を防止することはかなり困難であることから、クラック内部及び欠陥内部の空気を、ポリマー層形成用塗布液を塗布する前に除去することで本願発明の目的効果を達成出来ることを見出し、更にはポリマー層中に粒子を含有させることによりクラック内部及び欠陥内部の遮蔽効果を挙げることが出来ることを見出し本発明に至った次第である。
【発明の効果】
【0029】
基材フィルム上に少なくとも1層の金属酸化物を有する無機バリア層とポリマー層とを有する積層フィルムで、安定した高ガスバリア性を有するバリアフィルムを提供することが出来た。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】バリアフィルムの概略拡大断面図である。
【図2】バリアフィルムの製造工程の模式図である。
【図3】図2のTで示される部分の拡大概略模式図である。
【図4】ジェット方式の大気圧プラズマ製膜装置の一例を示した概略図である。
【図5】対向電極間で基材を処理する方式の大気圧プラズマ製膜装置の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明を実施擦るための形態を図1から図5を参照しながら説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0032】
図1はバリアフィルムの概略拡大断面図である。
【0033】
図中、1はバリアフィルムである。101は基材を示す。102は基材101の上に形成されたガスバリア性を有する無機バリア層を示す。103は無機バリア層102の上に形成されたポリマー層を示す。
【0034】
本図に示すバリアフィルム1は、無機バリア層102、ポリマー層103が各1層の場合を示しているが、これらに限定されない。又、基材と無機バリア層間にポリマー層や密着層を設けてもよい。又無機バリア層部分は、組成或いは物性の異なる2層以上の積層構造であってもよい。この他の構成としては次の構成が挙げられる。例えば、
1)基材/無機バリア層/ポリマー層/無機バリア層/ポリマー層/無機バリア層、
2)基材/無機バリア層/ポリマー層/無機バリア層、
3)基材/無機バリア層/無機バリア層/ポリマー層/無機バリア層、
4)基材/無機バリア層/ポリマー層/ポリマー層/無機バリア層
これらの層構成のバリアフィルムは必要に応じて選択することが可能である。
【0035】
無機バリア層102は、水蒸気、酸素等のガスを遮断する効果を具備した層であり、金属酸化物、金属窒化酸化物、金属窒化物等のセラミックス成分を主成分とする薄膜で形成されており、平均炭素含有量が1%未満であることが好ましい。
【0036】
基材101の厚さは、屈曲性、搬送性等を考慮し、12μmから500μmであることが好ましい。
【0037】
基材101は、可視光領域における平均透過率が85%以上の透明性を有している樹脂フィルムが好ましい。本発明で言う可視光領域における平均透過率とは、400nmから700nmまでの可視光領域の透過率を、少なくとも5nm毎に測定して求めた可視光域の各透過率を積算し、その平均値として求めたものと定義する。各測定波長における透過率は、従来公知の測定機器を用いることが出来、例えば、島津製作所社製の分光光度計UVIDFC−610、日立製作所社製の330型自記分光光度計、U−3210型自記分光光度計、U−3410型自記分光光度計、U−4000型自記分光光度計等を用いて測定することにより求めることが出来る。
【0038】
無機バリア層102の厚さは、ガスバリア性、クラック耐性、保存性等を考慮し、10nmから1000nmが好ましい。更に好ましくは10nmから200nmである。無機バリア層が複数の無機バリア層で構成される場合は、それらの無機バリア層の厚みの合計が上記範囲内に入っていることが好ましい。無機バリア層は2層以上の無機バリア層を有していてもよく、その場合は各層が同じ組成を有していても違う組成を有していてもよい。
【0039】
無機バリア層102の形成は特に限定はなく、例えば、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、プラズマCVD法などが挙げられる。これらの中でも大気圧又は大気圧近傍の圧力下でのプラズマCVD法等を適用して形成されたものであることが好ましく、特に大気圧プラズマCVDによる方法は、減圧チャンバー等が不要で、高速製膜が出来生産性の高い製膜方法である。具体的な無機バリア層の形成方法に関しては図4、図5で説明する。
【0040】
ポリマー層103の厚さは、ポリマー層の厚さの均一性、ポリマー層のクラック耐性、無機バリア層のクラックの封止等を考慮し10nmから5000nmが好ましく、更に好ましくは、10nmから2000nmであり、最も好ましくは10nmから5000nmである。ポリマー層が複数のポリマー層を有する場合は、それらのポリマー層の厚みの合計が上記範囲内に入っていることが好ましい。
【0041】
又、ポリマー層には、平均粒径7nmから100nmの粒子が含まれることが好ましい。ポリマー層中に粒子を有することにより本発明の脱気した塗布液がバリア層のクラック、及び/又は欠陥に浸透する際、この内部に粒子が充填されることで、酸素・水蒸気の遮断効果が更に高くなる。
【0042】
粒子の材料としては特に限定はないが、Al、Si、Ti、Zrなどから選ばれる無機金属化合物の微粒子が好ましい。又BaO、CaOなどアルカリ土類金属化合物も好ましい。塗布液分散性及びクラック、欠陥への浸入等を考慮し、平均粒径が7nmから100nm以下の粒子が含まれていることが好ましい。更に好ましくは7nmから50nm、最も好ましくは7nmから20nmである。
【0043】
ポリマー層103を形成するためのポリマー層形成用塗布液の塗布方法は特に限定はなく、例えばスピンコート塗布、ディップ塗布、エクストルージョン塗布、ロールコート塗布、スプレー塗布、グラビア塗布、ワイヤーバー塗布、エアーナイフ塗布等が挙げられる。必要に応じて、これらの塗布方法の中から選択することが可能である。
【0044】
図2はバリアフィルムの製造工程の模式図である。
【0045】
図中、2はバリアフィルムの製造工程を示す。製造工程2は、基材供給工程3と塗布工程4と、乾燥工程5と巻き取り工程6とを有している。
【0046】
基材供給工程3からは、既に無機バリア層が形成されロール状に巻かれた長尺状の基材301が駆動手段(不図示)により巻き出しロールから繰り出され搬送(図中の矢印方向)される。
【0047】
塗布工程4はポリマー層形成用塗布液供給部401と塗布部402とを有している。
【0048】
ポリマー層形成用塗布液供給部401は、ポリマー層形成用塗布液貯蔵タンク401aと脱気装置401bと加熱装置401cとを有している。ポリマー層形成用塗布液貯蔵タンク401aは脱気装置401bで脱気する時のポリマー層形成用塗布液の温度を制御する温度制御系を配設することが好ましい。
【0049】
ポリマー層形成用塗布液貯蔵タンク401aでのポリマー層形成用塗布液の温度は、塗布液安定性、クラック・欠陥への充填性等を考慮し、ポリマー層形成用塗布液を構成している溶媒の沸点に対して20℃から60℃低いことが好ましい。尚、本発明で使用するポリマー層形成用塗布液は有機溶媒が好ましい。
【0050】
脱気装置401bはポリマー層形成用塗布液貯蔵タンク401aから送液管401dを介して送られてくるポリマー層形成用塗布液を脱気する装置である。脱気装置401bとしては特に限定はなく、例えば超音波脱気装置、加熱脱気装置、減圧脱気装置、特開平11−209670号公報に記載のごとく、脱気用中空糸膜による脱気方法、特開2004−181403号公報に記載の気−液分離膜モジュール等が挙げられ、必要に応じて選択することが可能となっている。
【0051】
脱気装置401bにより脱気されるポリマー層形成用塗布液の脱気度は、塗布時の発泡、無機バリア層の欠陥箇所への浸透等を考慮し、溶存酸素濃度で4ppm以下が好ましく、2ppm以下が更に好ましい。
【0052】
溶存酸素濃度を測定する方法としては、例えば、オストワルド法(実験化学講座1基本操作[I]、241頁、1975年、丸善 参照)や、マススペクトル法で測定する方法、ガルバニ電池型やポーラログラフ型などの簡便な酸素濃度計や比色分析法を用いて測定することが出来る。又、溶存酸素濃度は市販の溶存酸素濃度計(東亜電波工業(株)製DO−30A型)を用いても、簡便に測定することが出来る。
【0053】
加熱装置401cでは、脱気装置401bにより脱気されたポリマー層形成用塗布液を塗布する時の温度に加熱する装置であり、加熱する方法としては特に限定はなく、例えば加熱空気、蒸気を加熱媒体としてジャケットを介して加熱する、ヒーターで加熱する方法等が挙げられる。
【0054】
塗布部402は、塗布室402aと、コーター402bと基材301を巻き回し保持するバックアップロール402cとを使用している。塗布室402aは、基体301の搬入側にエアーツーバキュームコネクター402a1と、基体301の出口側にエアーツーバキュームコネクター402a2と、真空ポンプに繋がっている排気管402a3と、外気導入管402aとを有しており、これらにより塗布室402aの内部を減圧にすることが可能となっている。
【0055】
コーター402bは上流側に減圧室402b1を使用している。減圧室402b1はコーター402bから吐出するポリマー層形成用塗布液と基体301の上に形成された無機バリア層の表面との間に形成されるビード部7a(図3参照)の安定化と、基体301の上に形成された無機バリア層の欠陥箇所から空気を除去するために配設されている。減圧室402b1は独立して減圧度を制御することが可能となっている。
【0056】
尚、コーター402bは加熱装置401cで加熱されたポリマー層形成用塗布液の温度を維持するために温度制御手段(付図示)を配設することが好ましい。本図は、コーターとしてエクストルージョン塗布方式のエクストルージョンコーターの場合を示している。
【0057】
塗布する時のポリマー層形成用塗布液の温度は、ポリマー層形成用塗布液を構成している溶媒の沸点に対して、ポリマー層形成用塗布液の濃度上昇、粘度上昇、膜厚安定性等を考慮し、20℃から60℃低くなっていることが好ましい。
【0058】
ポリマー層形成用塗布液には、クラックや欠陥の遮蔽効果を考慮し、平均粒径が7nmから100nmの粒子を含むことが好ましい。平均粒径は、走査型電子顕微鏡(SEM)観察写真(高倍率)により測定した値を示す。
【0059】
乾燥工程5は、塗布工程4で無機バリア層の上に塗布されたポリマー層形成用塗布液のウェット膜から有機溶媒を除去し、ポリマー層を形成する工程であり、乾燥装置501を使用している。
【0060】
乾燥工程5では、塗膜の残留溶媒量が、バリア性、生産性等を考慮し、100g/mから10g/mとなる様に乾燥することが好ましい。塗膜の残留溶媒量の測定は次の方法で行った。
【0061】
残留溶媒量は、ポリマー層を形成した基材を10cm角に切り出し質量を測定し、その後オーブンにて110℃30分加熱し再度質量を測定した。この質量差より算出した1m当たりの溶媒量を残留溶媒量とした。
【0062】
ポリマー層に使用する樹脂が活性光線硬化型樹脂又は、熱硬化型樹脂の場合、塗布乾燥後に硬化処理を必要とし、例えば活性光線硬化型樹脂の場合、紫外線を照射するのがよく、必要な活性光線の照射量を得るための照射時間としては、0.1秒から1分程度がよく、紫外線硬化性樹脂の硬化効率、又は作業効率の観点から0.1秒から10秒がより好ましい。又、これら活性光線照射部の照度は0.05W/mから0.2W/mであることが好ましい。
【0063】
巻き取り工程6では、乾燥が終了した図1に示す基材/無機バリア層/ポリマー層の構成のガスバリア性積層体フィルムが形成されロール状に巻き取られ保管される。この後、更にポリマー層の上に無機バリア層を形成する場合は、無機バリア層形成装置にて無機バリア層の形成が行われる。
【0064】
図3は図2のTで示される部分の拡大模式図である。
【0065】
図中、402b2は真空ポンプに繋がっている排気管を示し、塗布時に減圧室402b1を減圧にすることが可能となっている。7は、基体301の上に形成された無機バリア層の上に塗布されるポリマー層形成用塗布液を示し、7aはコーター402bから吐出するポリマー層形成用塗布液と基体301の上に形成された無機バリア層の表面との間に形成されるビード部を示す。402b3は塗布時に発生する不要の塗布液の回収管を示す。
【0066】
塗布室402aの減圧度をA、減圧室402b1の減圧度をBとすると、塗布時の減圧度Aは、−0.1kPaから−1.0kPaで、減圧度Bは、−0.2kPaから−3.0kPaであり、減圧度B>減圧度Aの関係を有し、且つ減圧度Bと減圧度Aとの減圧度差は0.1kPaから2.0kPaである。尚、減圧度とは、大気圧を規準とした圧力を言う。
【0067】
減圧度Aが、−0.1kPa未満の場合、ビード部が不安定になり塗布液の膜厚制御が困難となるため好ましくない。
【0068】
減圧度Aが、−1.0kPaを超える場合、減圧負荷の増加により、生産性が低下するため好ましくない。
【0069】
減圧度Bが、−0.2kPa未満の場合、減圧不足により、安定なビードが形成できなくなり塗布液の膜厚制御が困難となるため好ましくない。
【0070】
減圧度Bが、−3.0kPaを超える場合、減圧による塗布液の蒸発による塗布液濃度の変動、ビードが不安定になることにより、塗布液の膜厚制御が困難となるため好ましくない。
【0071】
減圧度Bと減圧度Aとの関係が、減圧度B=減圧度Aの場合、ビードの安定形成ができないため、塗布液の膜厚制御が困難となるため好ましくない。
【0072】
減圧度Bと減圧度Aとの関係が、減圧度B<減圧度Aの場合、ビードの安定形成ができないため、塗布液の膜厚制御が困難となるため好ましくない。
【0073】
減圧度Bと減圧度Aとの差が、0.1kPa未満の場合、ビードの安定な形成が出来なくなることにより、塗布が不安定になるため好ましくない。
【0074】
減圧度Bと減圧度Aとの差が、2.0kPaを超える場合、ビードの安定な形成が出来なくなることにより、塗布が不安定になるため好ましくない。
【0075】
次に本発明のバリアフィルムの製造方法において、無機バリア層の形成に使用される大気圧プラズマ製膜装置の一例について、図4、図5に基づいて説明する。
【0076】
大気圧プラズマCVD法は、例えば、特開2000−246091号公報や特開2003−238713号公報等に記載されている様に、大気圧もしくはその近傍の圧力下、放電空間に薄膜形成ガス及び放電ガスを含有するガスを供給し、該放電空間に高周波電界を印加することにより該ガスを励起し、励起したガスに晒すことにより、薄膜を形成する方法である。
【0077】
本発明のバリアフィルムの製造方法に係る無機バリア層の形成に用いられる大気圧プラズマCVD法は、大気圧もしくはその近傍の圧力下で行われるプラズマCVD法である。大気圧もしくはその近傍の圧力とは20kPaから110kPa程度であり、本発明では93kPaから104kPaが好ましい。
【0078】
以下、大気圧近傍での大気圧プラズマCVD法を用いた無機バリア層を形成する装置について説明する。
【0079】
図4は、ジェット方式の大気圧プラズマ製膜装置の一例を示した概略図である。
【0080】
ジェット方式の大気圧プラズマ製膜装置は、プラズマ放電処理装置、二つの電源を有する電界印加手段の他に、ガス供給手段(不図示)、電極温度調節手段(不図示)を有している装置である。
【0081】
大気圧プラズマ製膜装置8は、第1電極801と第2電極802から構成されている対向電極を有しており、該対向電極間に、第1電極801からは第1電源803からの周波数ω1、電界強度V1、電流I1の第1の高周波電界が印加され、又、第2電極802からは第2電源804からの周波数ω2、電界強度V2、電流I2の第2の高周波電界が印加される様になっている。第1電源803は第2電源804より高い高周波電界強度(V1>V2)を印加出来、又第1電源803の第1の周波数ω1は第2電源804の第2の周波数ω2より低い周波数を印加出来る。
【0082】
第1電極801と第1電源803との間には、第1フィルター805が設置されており、第1電源803から第1電極801への電流を通過し易くし、第2電源804からの電流をアースして、第2電源804から第1電源803への電流が通過し難くなる様に設計されている。
【0083】
又、第2電極802と第2電源804との間には、第2フィルター806が設置されており、第2電源804から第2電極への電流を通過し易くし、第1電源803からの電流をアースして、第1電源803から第2電源への電流を通過し難くする様に設計されている。
【0084】
第1電極801と第2電極802との対向電極間(放電空間)807に、図4に図示してある様なガス供給手段からガスGを導入し、第1電極801と第2電極802から高周波電界を印加して放電を発生させ、ガスGをプラズマ状態にしながら対向電極の下側(紙面下側)にジェット状に吹き出させて、対向電極下面と基材Eとで作る処理空間をプラズマ状態のガスG°で満たし、基材Eの上に、処理位置808付近で薄膜を形成させる。
【0085】
基材Eとしては、可撓性帯状基材、又は枚葉基材を使用することが可能である。
【0086】
809、810は高周波電圧プローブを示し、811、812はオシロスコープを示す。高周波電圧プローブ809、810及びオシロスコープ811、812で高周波電界強度(印加電界強度)と放電開始電界強度の測定が可能となっている。
【0087】
薄膜形成中、図4に図示してある様な電極温度調節手段から媒体が配管を通って電極を加熱又は冷却する。プラズマ放電処理の際の基材の温度によっては、得られる薄膜の物性や組成等は変化することがあり、これに対して適宜制御することが望ましい。温度調節の媒体としては、蒸留水、油等の絶縁性材料が好ましく用いられる。プラズマ放電処理の際、幅手方向、或いは長手方向での基材の温度ムラが出きるだけ生じない様に電極の内部の温度を均等に調節することが望まれる。
【0088】
ジェット方式の大気圧プラズマ放電処理装置は、複数基接して直列に並べて同時に同じプラズマ状態のガスを放電させることが出来るので、何回も処理され高速で処理することも出来る。又、各装置が異なったプラズマ状態のガスをジェット噴射すれば、異なった層を形成することも出来る。
【0089】
図4は対向電極間で基材を処理する方式の大気圧プラズマ製膜装置の一例を示す概略図である。
【0090】
図中、9は大気圧プラズマ製膜装置を示す。大気圧プラズマ製膜装置9は、少なくとも、プラズマ放電処理装置9a、二つの電源を有する電界印加手段9b、ガス供給手段9c、電極温度調節手段9dを有している装置である。
【0091】
大気圧プラズマ製膜装置9はプラズマ放電処理装置9a、ロール回転電極(第1電極)9a1と角筒型固定電極(第2電極)9a2群との対向電極間(放電空間)9a3で、基材Fをプラズマ放電処理して薄膜を形成するものである。
【0092】
プラズマ放電処理装置9aは、1対の角筒型固定電極(第2電極)9a2群とロール回転電極(第1電極)9a1とで、1つの電界を形成し、この1ユニットで、例えば、低炭素原子数濃度層の形成を行う。
【0093】
ロール回転電極(第1電極)9a1には第1電源9b1から周波数ω1、電界強度V1、電流I1の第1の高周波電界を、又角筒型固定電極(第2電極)9a2群には第2電源9b2から周波数ω2、電界強度V2、電流I2の第2の高周波電界を掛ける様になっている。
【0094】
ロール回転電極(第1電極)9a1と第1電源9b1との間には、第1フィルター9b3が設置されており、第1フィルター9b3は第1電源9b1からロール回転電極(第1電極)9a1への電流を通過し易くし、第2電源9b2からの電流をアースして、第2電源9b2から第1電源9b1への電流を通過し難くする様に設計されている。又、角筒型固定電極(第2電極)9a2群と第2電源9b2との間には、それぞれ第2フィルター9b4が設置されており、第2フィルター9b4は、第2電源9b2から角筒型固定電極(第2電極)9a2群への電流を通過し易くし、第1電源9b1からの電流をアースして、第1電源9b1から第2電源9b2への電流を通過し難くする様に設計されている。
【0095】
尚、ロール回転電極9a1を第2電極、又角筒型固定電極9a2群を第1電極としてもよい。何れにしろ第1電極には第1電源が、又、第2電極には第2電源が接続される。第1電源は第2電源より高い高周波電界強度(V1>V2)を印加することが好ましい。又、周波数はω1<ω2となる能力を有している。
【0096】
又、電流はI1<I2となることが好ましい。第1の高周波電界の電流I1は、好ましくは0.3mA/cmから20mA/cm、更に好ましくは1.0A/cmから20mA/cmである。又、第2の高周波電界の電流I2は、好ましくは10A/cmから100mA/cm、更に好ましくは20A/cmから100mA/cmである。
【0097】
ガス供給手段9cのガス発生装置9c1で発生させたガスGは、流量を制御して給気口よりプラズマ放電処理容器9a4内に導入する。
【0098】
基材Fを、元巻き(不図示)から巻きほぐして搬送されてくるか、又は前工程から搬送されて来て、ガイドロール9eを経てニップロール9fで基材Fに同伴されて来る空気等を遮断し、ロール回転電極9a1に接触したまま巻き回しながら角筒型固定電極9a2群との間に移送し、ロール回転電極(第1電極)9a1と角筒型固定電極(第2電極)9a2群との両方から電界を掛け、対向電極間(放電空間)9a3で放電プラズマを発生させる。
【0099】
基材Fはロール回転電極9a1に接触したまま巻き回されながらプラズマ状態のガスにより薄膜を形成する。基材Fは、ニップロール9g、ガイドロール9hを経て、巻き取り機(不図示)で巻き取るか、次工程に移送する。尚、放電処理済みの処理排ガスG′は排気口9a5より排出する。
【0100】
薄膜形成中、ロール回転電極(第1電極)9a1及び角筒型固定電極(第2電極)9a2群を加熱、又は冷却するために、電極温度調節手段9dで温度を調節した媒体を、送液ポンプPで配管9d1を経て両電極に送り、電極内側から温度を調節する。尚、9a6及び9a7はプラズマ放電処理容器9a4と外界とを仕切る仕切板である。
【0101】
対向する第1電極及び第2の電極の電極間距離は、電極の一方に誘電体を設けた場合、該誘電体表面ともう一方の電極の導電性の金属質母材表面との最短距離のことを言う。
【0102】
双方の電極に誘電体を設けた場合、誘電体表面同士の距離の最短距離のことを言う。電極間距離は、導電性の金属質母材に設けた誘電体の厚さ、印加電界強度の大きさ、プラズマを利用する目的等を考慮して決定されるが、何れの場合も均一な放電を行う観点から0.1mmから20mmが好ましく、特に好ましくは0.5mmから2mmである。
【0103】
本発明に有用な導電性の金属質母材及び誘電体についての詳細については後述する。
【0104】
プラズマ放電処理容器9a4は、パイレックス(登録商標)ガラス製の処理容器等が好ましく用いられるが、電極との絶縁が取れれば金属製を用いることも可能である。例えば、アルミニウム又は、ステンレススティールのフレームの内面にポリイミド樹脂等を貼り付けてもよく、該金属フレームにセラミックス溶射を行い、絶縁性を付与してもよい。図4において、平行した両電極の両側面(基材面近くまで)を上記の様な材質のもので覆うことが好ましい。
【0105】
本発明の撥水性物品の製造方法に係る大気圧プラズマ放電処理装置に設置する第1電源(高周波電源)としては、
印加電源記号 メーカー 周波数 製品名
A1 神鋼電機 3kHz SPG3−4500
A2 神鋼電機 5kHz SPG5−4500
A3 春日電機 15kHz AGI−023
A4 神鋼電機 50kHz SPG50−4500
A5 ハイデン研究所 100kHz* PHF−6k
A6 パール工業 200kHz CF−2000−200k
A7 パール工業 400kHz CF−2000−400k
等の市販のものを挙げることが出来、何れも使用することが出来る。
【0106】
又、第2電源(高周波電源)としては、
印加電源記号 メーカー 周波数 製品名
B1 パール工業 800kHz CF−2000−800k
B2 パール工業 2MHz CF−2000−2M
B3 パール工業 13.56MHz CF−5000−13M
B4 パール工業 27MHz CF−2000−27M
B5 パール工業 150MHz CF−2000−150M
等の市販のものを挙げることが出来、何れも好ましく使用出来る。
【0107】
尚、上記電源の内、*印はハイデン研究所インパルス高周波電源(連続モードで100kHz)である。それ以外は連続サイン波のみ印加可能な高周波電源である。
【0108】
本発明においては、この様な電界を印加して、均一で安定な放電状態を保つことが出来る電極を大気圧プラズマ放電処理装置に採用することが好ましい。
【0109】
本発明において、対向する電極間に印加する電力は、第2電極(第2の高周波電界)に1W/cm以上の電力(出力密度)を供給し、放電ガスを励起してプラズマを発生させ、エネルギーを薄膜形成ガスに与え、薄膜を形成する。第2電極に供給する電力の上限値としては、好ましくは50W/cm、より好ましくは20W/cmである。下限値は、好ましくは1.2W/cmである。尚、放電面積(cm)は、電極において放電が起こる範囲の面積のことを指す。
【0110】
又、第1電極(第1の高周波電界)にも、1W/cm以上の電力(出力密度)を供給することにより、第2の高周波電界の均一性を維持したまま、出力密度を向上させることが出来る。これにより、更なる均一高密度プラズマを生成出来、更なる製膜速度の向上と膜質の向上が両立出来る。好ましくは5W/cm以上である。第1電極に供給する電力の上限値は、好ましくは50W/cmである。
【0111】
ここで、高周波電界の波形としては、特に限定されない。連続モードと呼ばれる連続サイン波状の連続発振モードと、パルスモードと呼ばれるON/OFFを断続的に行う断続発振モード等があり、そのどちらを採用してもよいが、少なくとも第2電極側(第2の高周波電界)は連続サイン波の方がより緻密で良質な膜が得られるので好ましい。
【0112】
又、本発明で無機バリア層の膜質をコントロールする際には、第2電源側の電力を制御することによっても達成出来る。
【0113】
この様な大気圧プラズマによる薄膜形成法に使用する電極は、構造的にも、性能的にも過酷な条件に耐えられるものでなければならない。この様な電極としては、金属質母材上に誘電体を被覆したものであることが好ましい。
【0114】
本発明に使用する誘電体被覆電極においては、様々な金属質母材と誘電体との間に特性が合うものが好ましく、その一つの特性として、金属質母材と誘電体との線熱膨張係数の差が10×10−6/℃以下となる組み合わせのものである。好ましくは8×10−6/℃以下、更に好ましくは5×10−6/℃以下、特に好ましくは2×10−6/℃以下である。尚、線熱膨張係数とは、周知の材料特有の物性値である。
【0115】
線熱膨張係数の差が、この範囲にある導電性の金属質母材と誘電体との組み合わせとしては、
1:金属質母材が純チタン又はチタン合金で、誘電体がセラミックス溶射被膜
2:金属質母材が純チタン又はチタン合金で、誘電体がガラスライニング
3:金属質母材がステンレススティールで、誘電体がセラミックス溶射被膜
4:金属質母材がステンレススティールで、誘電体がガラスライニング
5:金属質母材がセラミックス及び鉄の複合材料で、誘電体がセラミックス溶射被膜
6:金属質母材がセラミックス及び鉄の複合材料で、誘電体がガラスライニング
7:金属質母材がセラミックス及びアルミニウムの複合材料で、誘電体がセラミックス溶射皮膜
8:金属質母材がセラミックス及びアルミニウムの複合材料で、誘電体がガラスライニング
等がある。線熱膨張係数の差という観点では、上記1項又は2項及び5項から8項が好ましく、特に1項が好ましい。
【0116】
本発明において、金属質母材は、上記の特性からは、チタン又はチタン合金が特に有用である。金属質母材をチタン又はチタン合金とすることにより、誘電体を上記とすることにより、使用中の電極の劣化、特にひび割れ、剥がれ、脱落等がなく、過酷な条件での長時間の使用に耐えることが出来る。
【0117】
本発明に適用出来る大気圧プラズマ放電処理装置としては、上記説明した以外に、例えば、特開2004−68143号公報、同2003−49272号公報、国際公開第02/48428号パンフレット等に記載されている大気圧プラズマ放電処理装置を挙げることが出来る。
【0118】
基材供給工程、塗布工程、乾燥工程、巻き取り工程を有する製造工程を使用し、少なくとも1層の無機バリア層を有するフィルム基材上に、ポリマー層形成用塗布液を塗布する時、塗布室の減圧度を、−0.1kPaから−1.0kPa、コーターの上流側にある減圧室の減圧度を−0.2kPaから−3.0kPaとし、減圧室と塗布室との減圧度の関係が、減圧室の減圧度>塗布室の減圧度、且つ、減圧室と塗布室との減圧度差が0.1kPaから2kPaの条件で塗布した後、乾燥し製造するバリアフィルムの製造方法により次の効果が挙げられる。
1.安定したガスバリア性を有するバリアフィルムの製造が可能になり、高ガスバリア性を要求される分野への適用範囲を広げることが可能となった。
2.高ガスバリア性が要求される液晶表示素子、太陽電池、有機EL素子等の有機デバイスの基材、封止材料として使用することが可能となった。
3.有機デバイスの軽量化、大型化及び生産性が高いロールトゥロール方式での生産が可能となった。
【0119】
次に、本発明のバリアフィルムの製造方法に係る材料に付き説明する。
【0120】
(基材)
基材は、バリア性を有する無機バリア層を保持することが出来る有機材料で形成されたフィルムであれば特に限定されるものではない。具体的には、エチレン、プロピレン、ブテン等の単独重合体、又は共重合体、又は共重合体等のポリオレフィン樹脂、環状ポリオレフィン等の非晶質ポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレン−2,6−ナフタレート等のポリエステル系樹脂、ナイロン6、ナイロン12、共重合ナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体等のポリビニルアルコール系樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルブチラート樹脂、ポリアリレート樹脂、フッ素系樹脂等を用いることが出来る。中でも、ポリエチレン−2,6−ナフタレート樹脂等のポリエチレンナフタレート樹脂はガスバリア性が良好であり、特に酸素透過率及び水蒸気透過率が低いので、本発明において、基材としては、ポリエチレンナフタレートフィルムを用いるのが好ましい。
【0121】
(無機バリア層)
本発明では、無機バリア層は金属炭化物、金属窒化物、金属酸化物、金属硫化物、金属ハロゲン化物、又これらの混合物(金属酸窒化物、金属酸化ハロゲン化物、金属窒化炭化物など)等が挙げられ、これらの中で金属酸化物が好ましく、具体的には酸化珪素が挙げられる。図3、図4に示した大気圧プラズマ製膜装置で得られる無機バリア層は原材料(原料とも言う)である有機金属化合物、分解ガス、分解温度、投入電力などの条件を選ぶことで、金属炭化物、金属窒化物、金属酸化物、金属硫化物、金属ハロゲン化物、又これらの混合物(金属酸窒化物、金属酸化ハロゲン化物、金属窒化炭化物など)も作り分けることが出来るため好ましい。
【0122】
例えば、珪素化合物を原料化合物として用い、分解ガスに酸素を用いることにより、珪素酸化物を得ることが出来、又、分解ガスに二酸化炭素を用いることにより、珪素炭酸化物が生成する。又、亜鉛化合物を原料化合物として用い、分解ガスに二硫化炭素を用いれば、硫化亜鉛が生成する。これはプラズマ空間内では非常に活性な荷電粒子・活性ラジカルが高密度で存在するため、プラズマ空間内では多段階の化学反応が非常に高速に促進され、プラズマ空間内に存在する元素は熱力学的に安定な化合物へと非常な短時間で変換されるためである。
【0123】
この様な無機物の原料としては、典型又は遷移金属元素を有していれば、常温常圧下で気体、液体、固体何れの状態であっても構わない。気体の場合にはそのまま放電空間に導入出来るが、液体、固体の場合は、加熱、バブリング、減圧、超音波照射等の手段により気化させて使用する。又、溶媒によって希釈して使用してもよく、溶媒は、メタノール、エタノール、n−ヘキサン等の有機溶媒及びこれらの混合溶媒が使用出来る。尚、これらの希釈溶媒は、プラズマ放電処理中において、分子状、原子状に分解されるため、影響は殆ど無視することが出来る。
【0124】
この様な酸化珪素膜である無機バリア層を形成する珪素化合物としては、例えば、シラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラn−プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラn−ブトキシシラン、テトラt−ブトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメトキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン、ビス(ジメチルアミノ)ジメチルシラン、ビス(ジメチルアミノ)メチルビニルシラン、ビス(エチルアミノ)ジメチルシラン、N,O−ビス(トリメチルシリル)アセトアミド、ビス(トリメチルシリル)カルボジイミド、ジエチルアミノトリメチルシラン、ジメチルアミノジメチルシラン、ヘキサメチルジシラザン、ヘキサメチルシクロトリシラザン、ヘプタメチルジシラザン、ノナメチルトリシラザン、オクタメチルシクロテトラシラザン、テトラキスジメチルアミノシラン、テトライソシアナートシラン、テトラメチルジシラザン、トリス(ジメチルアミノ)シラン、トリエトキシフルオロシラン、アリルジメチルシラン、アリルトリメチルシラン、ベンジルトリメチルシラン、ビス(トリメチルシリル)アセチレン、1,4−ビストリメチルシリル−1,3−ブタジイン、ジ−t−ブチルシラン、1,3−ジシラブタン、ビス(トリメチルシリル)メタン、シクロペンタジエニルトリメチルシラン、フェニルジメチルシラン、フェニルトリメチルシラン、プロパルギルトリメチルシラン、テトラメチルシラン、トリメチルシリルアセチレン、1−(トリメチルシリル)−1−プロピン、トリス(トリメチルシリル)メタン、トリス(トリメチルシリル)シラン、ビニルトリメチルシラン、ヘキサメチルジシラン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、テトラメチルシクロテトラシロキサン、ヘキサメチルシクロテトラシロキサン、Mシリケート51等が挙げられる。
【0125】
チタン化合物としては、例えば、チタンメトキシド、チタンエトキシド、チタンイソプロポキシド、チタンテトライソポロポキシド、チタンn−ブトキシド、チタンジイソプロポキシド(ビス−2,4−ペンタンジオネート)、チタンジイソプロポキシド(ビス−2,4−エチルアセトアセテート)、チタンジ−n−ブトキシド(ビス−2,4−ペンタンジオネート)、チタンアセチルアセトネート、ブチルチタネートダイマー等が挙げられる。
【0126】
ジルコニウム化合物としては、ジルコニウムn−プロポキシド、ジルコニウムn−ブトキシド、ジルコニウムt−ブトキシド、ジルコニウムトリ−n−ブトキシドアセチルアセトネート、ジルコニウムジ−n−ブトキシドビスアセチルアセトネート、ジルコニウムアセチルアセトネート、ジルコニウムアセテート、ジルコニウムヘキサフルオロペンタンジオネート等が挙げられる。
【0127】
アルミニウム化合物としては、アルミニウムエトキシド、アルミニウムトリイソプロポキシド、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムn−ブトキシド、アルミニウムs−ブトキシド、アルミニウムt−ブトキシド、アルミニウムアセチルアセトナート、トリエチルジアルミニウムトリ−s−ブトキシド等が挙げられる。
【0128】
硼素化合物としては、ジボラン、テトラボラン、フッ化硼素、塩化硼素、臭化硼素、ボラン−ジエチルエーテル錯体、ボラン−THF錯体、ボラン−ジメチルスルフィド錯体、三フッ化硼素ジエチルエーテル錯体、トリエチルボラン、トリメトキシボラン、トリエトキシボラン、トリ(イソプロポキシ)ボラン、ボラゾール、トリメチルボラゾール、トリエチルボラゾール、トリイソプロピルボラゾール、等が挙げられる。
【0129】
錫化合物としては、テトラエチル錫、テトラメチル錫、二酢酸ジ−n−ブチル錫、テトラブチル錫、テトラオクチル錫、テトラエトキシ錫、メチルトリエトキシ錫、ジエチルジエトキシ錫、トリイソプロピルエトキシ錫、ジエチル錫、ジメチル錫、ジイソプロピル錫、ジブチル錫、ジエトキシ錫、ジメトキシ錫、ジイソプロポキシ錫、ジブトキシ錫、錫ジブチラート、錫ジアセトアセトナート、エチル錫アセトアセトナート、エトキシ錫アセトアセトナート、ジメチル錫ジアセトアセトナート等、錫水素化合物等、ハロゲン化錫としては、二塩化錫、四塩化錫等が挙げられる。
【0130】
又、その他の有機金属化合物としては、例えば、アンチモンエトキシド、ヒ素トリエトキシド、バリウム2,2,6,6−テトラメチルヘプタンジオネート、ベリリウムアセチルアセトナート、ビスマスヘキサフルオロペンタンジオネート、ジメチルカドミウム、カルシウム2,2,6,6−テトラメチルヘプタンジオネート、クロムトリフルオロペンタンジオネート、コバルトアセチルアセトナート、銅ヘキサフルオロペンタンジオネート、マグネシウムヘキサフルオロペンタンジオネート−ジメチルエーテル錯体、ガリウムエトキシド、テトラエトキシゲルマン、テトラメトキシゲルマン、ハフニウムt−ブドキシド、ハフニウムエトキシド、インジウムアセチルアセトナート、インジウム2,6−ジメチルアミノヘプタンジオネート、フェロセン、ランタンイソプロポキシド、酢酸鉛、テトラエチル鉛、ネオジウムアセチルアセトナート、白金ヘキサフルオロペンタンジオネート、トリメチルシクロペンタジエニル白金、ロジウムジカルボニルアセチルアセトナート、ストロンチウム2,2,6,6−テトラメチルヘプタンジオネート、タンタルメトキシド、タンタルトリフルオロエトキシド、テルルエトキシド、タングステンエトキシド、バナジウムトリイソプロポキシドオキシド、マグネシウムヘキサフルオロアセチルアセトナート、亜鉛アセチルアセトナート、ジエチル亜鉛、等が挙げられる。
【0131】
又、これらの金属を含む原料ガスを分解して酸化珪素膜を得るための分解ガスとしては、例えば、水素ガス、メタンガス、アセチレンガス、一酸化炭素ガス、二酸化炭素ガス、窒素ガス、アンモニアガス、亜酸化窒素ガス、酸化窒素ガス、二酸化窒素ガス、酸素ガス、水蒸気、フッ素ガス、フッ化水素、トリフルオロアルコール、トリフルオロトルエン、硫化水素、二酸化硫黄、二硫化炭素、塩素ガス等が挙げられる。
【0132】
金属元素を含む原料ガスと、分解ガスを適宜選択することで、各種の珪素炭化物、珪素窒化物、珪素酸化物、珪素ハロゲン化物、珪素硫化物を得ることが出来る。
【0133】
これらの反応性ガスに対して、主にプラズマ状態になり易い放電ガスを混合し、プラズマ放電発生装置にガスを送りこむ。この様な放電ガスとしては、窒素ガス及び/又は周期表の第18属原子、具体的には、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドン等が用いられる。これらの中でも特に、窒素、ヘリウム、アルゴンが好ましく用いられる。
【0134】
上記放電ガスと反応性ガスを混合し、混合ガスとしてプラズマ放電発生装置(プラズマ発生装置)に供給することで膜形成を行う。放電ガスと反応性ガスの割合は、得ようとする膜の性質によって異なるが、混合ガス全体に対し、放電ガスの割合を50%以上として反応性ガスを供給する。
【0135】
(ポリマー層)
ポリマー層とは、無機ポリマー、有機ポリマー、有機無機ハイブリッドポリマー等を主成分とする層である。
【0136】
本発明で適用出来る無機ポリマーは、無機骨格を主構造とし、且つ有機成分を含有する膜であり、有機金属化合物を重合したものも含む。これら無機ポリマーとしては、特に限定はないが、例えば、シリコーンやポリシラザンなどの珪素化合物や、チタン化合物、アルミニウム化合物、硼素化合物、燐化合物、錫化合物を用いることが出来る。
【0137】
本発明で用いることの出来る珪素化合物としては、特に限定はないが、好ましいものとして、テトラメチルシラン、トリメチルメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラメトキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン、ヘキサメチルジシラザン、1,1−ジメチル−1−シラシクロブタン、トリメチルビニルシラン、メトキシジメチルビニルシラン、トリメトキシビニルシラン、エチルトリメトキシシラン、ジメチルジビニルシラン、ジメチルエトキシエチニルシラン、ジアセトキシジメチルシラン、ジメトキシメチル−3,3,3−トリフルオロプロピルシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、アリールトリメトキシシラン、エトキシジメチルビニルシラン、アリールアミノトリメトキシシラン、N−メチル−N−トリメチルシリルアセトアミド、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、メチルトリビニルシラン、ジアセトキシメチルビニルシラン、メチルトリアセトキシシラン、アリールオキシジメチルビニルシラン、ジエチルビニルシラン、ブチルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルジメチルエトキシシラン、テトラビニルシラン、トリアセトキシビニルシラン、テトラアセトキシシラン、3−トリフルオロアセトキシプロピルトリメトキシシラン、ジアリールジメトキシシラン、ブチルジメトキシビニルシラン、トリメチル−3−ビニルチオプロピルシラン、フェニルトリメチルシラン、ジメトキシメチルフェニルシラン、フェニルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルジメトキシメチルシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ジメチルイソペンチロキシビニルシラン、2−アリールオキシエチルチオメトキシトリメチルシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−アリールアミノプロピルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン、ジメチルエチキシフェニルシラン、ベンゾイロキシトリメチルシラン、3−メタクリロキシプロピルジメトキシメチルシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、ジメチルエトキシ−3−グリシドキシプロピルシラン、ジブトキシジメチルシラン、3−ブチルアミノプロピルトリメチルシラン、3−ジメチルアミノプロピルジエトキシメチルシラン、2−(2−アミノエチルチオエチル)トリエトキシシラン、ビス(ブチルアミノ)ジメチルシラン、ジビニルメチルフェニルシラン、ジアセトキシメチルフェニルシラン、ジメチル−p−トリルビニルシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、ジエチルメチルフェニルシラン、ベンジルジメチルエトキシシラン、ジエトキシメチルフェニルシラン、デシルメチルジメトキシシラン、ジエトキシ−3−グリシドキシプロピルメチルシラン、オクチロキシトリメチルシラン、フェニルトリビニルシラン、テトラアリールオキシシラン、ドデシルトリメチルシラン、ジアリールメチルフェニルシラン、ジフェニルメチルビニルシラン、ジフェニルエトキシメチルシラン、ジアセトキシジフェニルシラン、ジベンジルジメチルシラン、ジアリールジフェニルシラン、オクタデシルトリメチルシラン、メチルオクタデシルジメチルシラン、ドコシルメチルジメチルシラン、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシラザン、1,4−ビス(ジメチルビニルシリル)ベンゼン、1,3−ビス(3−アセトキシプロピル)テトラメチルジシロキサン、1,3,5−トリメチル−1,3,5−トリビニルシクロトリシロキサン、1,3,5−トリス(3,3,3−トリフルオロプロピル)−1,3,5−トリメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラエトキシ−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン等を挙げることが出来る。
【0138】
有機ポリマーとしては、公知の重合性有機化合物を用いることが出来るが、その中でも、分子内にエチレン性不飽和結合を有する重合可能なエチレン性不飽和結合含有化合物が好ましく、又、一般的なラジカル重合性のモノマー類、光、熱、紫外線等により硬化する樹脂に一般的に用いられる分子内に付加重合可能なエチレン性二重結合を複数有する多官能モノマー類や多官能オリゴマー類を用いることが出来る。
【0139】
これらの重合可能なエチレン性二重結合含有化合物に特に限定はないが、好ましいものとして、アクリレート系ポリマー又はメタクリレート系ポリマーが好ましい。例えば、4−ヒドロキシブチルアクリレート(HBA)、2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート(HPA)、2−ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)、2−ヒドロキシエチルメチルメタアクリレート(2−HEMA)、グリセロールアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ノニルフェノキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルオキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルオキシヘキサノリドアクリレート、1,3−ジオキサンアルコールのε−カプロラクトン付加物のアクリレート、1,3−ジオキソランアクリレート等の単官能アクリル酸エステル類、或いはこれらのアクリレートをメタクリレート、イタコネート、クロトネート、マレエートに代えたメタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸エステル、例えば、エチレングリコールジアクリレート、トリエチレングルコールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ハイドロキノンジアクリレート、レゾルシンジアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールのジアクリレート、ネオペンチルグリコールアジペートのジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールのε−カプロラクトン付加物のジアクリレート、2−(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)−5−ヒドロキシメチル−5−エチル−1,3−ジオキサンジアクリレート、トリシクロデカンジメチロールアクリレート、トリシクロデカンジメチロールアクリレートのε−カプロラクトン付加物、1,6−ヘキサンジオールのジグリシジルエーテルのジアクリレート等の2官能アクリル酸エステル類、或いはこれらのアクリレートをメタクリレート、イタコネート、クロトネート、マレエートに代えたメタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸エステル、例えばトリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートのε−カプロラクトン付加物、ピロガロールトリアクリレート、プロピオン酸・ジペンタエリスリトールトリアクリレート、プロピオン酸・ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ヒドロキシピバリルアルデヒド変性ジメチロールプロパントリアクリレート等の多官能アクリル酸エステル酸、或いはこれらのアクリレートをメタクリレート、イタコネート、クロトネート、マレエートに代えたメタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸エステル等を挙げることが出来る。
【0140】
又、プレポリマーも上記同様に使用することが出来る。プレポリマーは、1種又は2種以上を併用してもよいし、上述の単量体及び/又はオリゴマーと混合して用いてもよい。
【0141】
プレポリマーとしては、例えばアジピン酸、トリメリット酸、マレイン酸、フタル酸、テレフタル酸、ハイミック酸、マロン酸、こはく酸、グルタール酸、イタコン酸、ピロメリット酸、フマル酸、グルタール酸、ピメリン酸、セバシン酸、ドデカン酸、テトラヒドロフタル酸等の多塩基酸と、エチレングリコール、プロピレングルコール、ジエチレングリコール、プロピレンオキサイド、1,4−ブタンジオール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、1,6−ヘキサンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール等の多価のアルコールの結合で得られるポリエステルに(メタ)アクリル酸を導入したポリエステルアクリレート類、例えば、ビスフェノールA・エピクロルヒドリン・(メタ)アクリル酸、フェノールノボラック・エピクロルヒドリン・(メタ)アクリル酸のようにエポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を導入したエポキシアクリレート類、例えば、エチレングリコール・アジピン酸・トリレンジイソシアネート・2−ヒドロキシエチルアクリレート、ポリエチレングリコール・トリレンジイソシアネート・2−ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルフタリルメタクリレート・キシレンジイソシアネート、1,2−ポリブタジエングリコール・トリレンジイソシアネート・2−ヒドロキシエチルアクリレート、トリメチロールプロパン・プロピレングリコール・トリレンジイソシアネート・2−ヒドロキシエチルアクリレートのように、ウレタン樹脂に(メタ)アクリル酸を導入したウレタンアクリレート、例えば、ポリシロキサンアクリレート、ポリシロキサン・ジイソシアネート・2−ヒドロキシエチルアクリレート等のシリコーン樹脂アクリレート類、その他、油変性アルキッド樹脂に(メタ)アクリロイル基を導入したアルキッド変性アクリレート類、スピラン樹脂アクリレート類等のプレポリマーが挙げられる。
【0142】
又、本発明に係るポリマー層に適用可能な有機ポリマーとしては、薄膜形成性ガスとしてプラズマ重合可能な有機物を用いることでも容易に形成出来る。プラズマ重合可能な有機物としては、炭化水素、ビニル化合物、含ハロゲン化合物、含窒素化合物を挙げることが出来る。
【0143】
炭化水素としては、例えば、エタン、エチレン、メタン、アセチレン、シクロヘキサン、ベンゼン、キシレン、フェニルアセチレン、ナフタレン、プロピレン、カンフォー、メントール、トルエン、イソブチレン等を挙げることが出来る。
【0144】
ビニル化合物としては、例えば、アクリル酸、メチルアクリレート、エチルアクリレート、メチルメタクリレート、アリルメタクリレート、アクリルアミド、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルピリジン、酢酸ビニル、ビニルメチルエーテル等を挙げることが出来る。
【0145】
含ハロゲン化合物としては、四フッ化メタン、四フッ化エチレン、六フッ化プロピレン、フロロアルキルメタクリレート等を挙げることが出来る。
【0146】
含窒素化合物としては、例えば、ピリジン、アリルアミン、ブチルアミン、アクリロニトリル、アセトニトリル、ベンゾニトリル、メタクリロニトリル、アミノベンゼン等を挙げることが出来る。
【0147】
本発明に係る有機無機ハイブリッドポリマーとしては、有機(無機)ポリマーに無機(有機)物を分散させた膜や、無機骨格と有機骨格をともに主構造とする膜を挙げることが出来る。本発明に適用出来る有機無機ハイブリッドポリマーは、特に限定はないが、好ましくは、前述した無機ポリマーと有機ポリマーを適宜組み合わせたものを用いることが出来る。
【0148】
ポリマー層の形成に使用するポリマー層形成用塗布液に使用される溶媒としては、次の有機溶媒が挙げられ、使用するポリマーの種類に合わせ適宜選択することが可能である。有機溶媒としては、例えば、炭化水素類(トルエン、キシレン)、アルコール類(メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、シクロヘキサノール)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン)、エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル、乳酸メチル)、グリコールエーテル類、その他の有機溶媒の中から適宜選択し、又はこれらを混合し利用出来る。プロピレングリコールモノアルキルエーテル(アルキル基の炭素原子数として1〜4)又はプロピレングリコールモノアルキルエーテル酢酸エステル(アルキル基の炭素原子数として1〜4)等を5質量%以上、より好ましくは5〜80質量%以上含有する上記有機溶媒を用いるのが好ましい。これらの成分は、塗布液中の固形分成分に対し、0.01質量%から3質量%の範囲で添加することが好ましい。
【0149】
水溶性ポリマーとしては、天然、合成、半合成何れの水溶性高分子でもよく、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、デンプン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体、又はアルギン酸ナトリウム等が用いられる。水溶性ポリマーとしては特にポリビニルアルコールが好ましい。
【0150】
ポリマー層の形成に使用するポリマー層形成用塗布液に添加する、平均粒径が7nmから100nmの粒子としては、無機酸化物、無機窒化物、及び無機酸化窒化物等の微粒子を挙げることが出来る。又ポリスチレンやPMMAなど有機微粒子、或いは無機化合物と有機化合物のハイブリッドな微粒子を用いてもよい。
【0151】
具体的に、無機酸化物としては、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化インジウム、酸化タンタル、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化スズ、酸化ジルコニウム、酸化カルシウム、酸化硼素、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、酸化鉛、酸化ナトリウム、酸化リチウム、酸化カリウム等が挙げられる。
【0152】
無機窒化物としては、窒化珪素、窒化アルミニウム、窒化チタン、炭化窒化珪素等が挙げられる。又、無機酸化窒化物としては、酸化窒化珪素等が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。又、無機酸化物及び無機窒化物の混合系であってもよい。
【0153】
これらの中でも、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化チタンからなる群から選択される少なくとも1種の微粒子が好ましく用いられる。
【0154】
又、上記微粒子としては、表面が酸化された状態である金属の微粒子を用いることも出来る。具体的に、金属としては、In、Al、Ti、Ta、Zn、Sn、Y、Ge、Pb、Zr、アルカリ金属(Li、Na、K)、アルカリ土類金属(Mg、Ca、Sr、Ba)等が挙げられる。
【0155】
又、微粒子の平均粒径としては、無機層のクラック、欠陥を塞ぐことが可能であればよく、具体的には7nmから100nmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは10nmから50nm、更に好ましくは10nmから20nmの範囲内が好ましい。平均粒径が小さすぎると分散など製造が難しく、平均粒径が大きすぎると、無機バリア層の欠陥を塞ぐことが困難となる。
【0156】
平均粒径は、走査型電子顕微鏡(SEM)観察写真(高倍率)により確認することが出来る。
【0157】
塗布液への微粒子混合は、ゾル液状のものを混合してもよいし、微粒子粉体を塗布液或いは分散液に分散してもよい。分散方法は超音波分散法、湿式分散法、圧力分散法など公知の方法を適宜用いることが出来る。
【実施例】
【0158】
以下、実施例を挙げて本発明の具体的な効果を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0159】
実施例1
(基材の準備)
厚さ100μm、幅200mm、長さ100mのポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム(帝人・デュポン社製テオネックスフィルムQF65)を準備した。
【0160】
(無機バリア層の形成)
図4に示す大気圧プラズマ放電処理装置を用いて、以下に示す条件で準備したPENフィルム上に、厚さ50nmのSiO層を形成した。
【0161】
厚さは、MXP21(マックサイエンス社製)を用いて測定して得られた値を示す。
【0162】
製膜条件
〈電源条件〉
第1電極側 電源種類 応用電機社製高周波電源
周波数 80kHz
出力密度 10W/cm
第2電極側 電源種類 パール工業社製高周波電源
周波数 13.56MHz
出力密度 10W/cm
〈電極条件〉
板状電極2本を用い、電極の間隙を1mmとしてこの間隙で放電を形成させ、プラズマを電極から基材表面に向けて噴出し、基材表面をプラズマ処理する。板状電極の母材はステンレス(SUS304)であるが、表面に厚み1mmでセラミックスが溶射されている。電極内部には冷却用の冷媒(水)を温度25℃で通水して放電を行った。
【0163】
〈ガス条件〉
原料ガスとしてTEOS(テトラエトキシシラン)をバブリングにより気化させて放電空間に供給し、プラズマのエネルギーによる分解反応を利用して、基材表面にSiO層を形成させた。
【0164】
放電ガス:窒素ガス 2slm/cm
反応ガス:酸素ガス 0.01slm/cm
薄膜形成用ガス:500mlガラス製バブリング容器にTEOS原材料を200ml準備し、25℃に保温する。気化したTEOSを放電空間に供給するためのキャリアガスとして、アルゴンガス0.05slm/cmを供給する。
【0165】
(バリアフィルムの製造)
(ポリマー層形成用塗布液の調製)
3官能イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性トリアクリレート(アロニックスM−315:東亞合成社製)に、ラジカル開始剤(イルガキュアー651:チバガイギー社製)をアロニックスM−315の1質量%相当量を添加し、適量の溶剤に溶解して、ポリマー膜形成用塗布液を調製した。この塗布液は、室温(25℃)で液状であった。
【0166】
(ポリマー層形成用塗布液の脱気)
調製したポリマー層形成用塗布液を脱気装置として膜脱気モジュール(DIC(株)製SEPAREL PFF)を使用し、脱気度を溶存酸素濃度で4ppmとした。脱気度は脱気後の溶存酸素量をHORIBA(株)製CD−200SCで測定した。
【0167】
(ポリマー層の形成)
図2に示す製造工程を使用し、準備した無機バリア層を形成したポリエチレンナフタレートフィルムに、準備したポリマー層形成用塗布液を表1に示す様に塗布室の減圧度及び減圧室の減圧度を変えエクストルージョンコーターで塗布し、乾燥膜厚が2μmのポリマー層を形成しバリアフィルムを作製し試料No.101から113とした。尚、塗布速度は5m/分で行った。
【0168】
評価
作製したバリアフィルムNo.101から113に付き、酸素透過率、水蒸気透過率、保存性を以下に示す方法で測定し、以下に示す評価ランクに従って評価した結果を表1に示す。
【0169】
酸素透過率の測定方法
各試料について、JIS K7126Bで規定の方法に準拠して酸素透過率を測定した。
【0170】
酸素透過率の評価ランク
◎:0.005ml/m・24h・atm未満
○:0.01ml/m・24h・atm未満、0.005ml/m・24h・atm以上
△:0.1ml/m・24h・atm未満、0.01ml/m・24h・atm以上
×:0.1ml/m・24h・atm以上
水蒸気透過率の測定方法
各試料について、JIS K7129Bで規定の方法に準拠して水蒸気透過率を測定した。
【0171】
水蒸気透過率の評価ランク
◎:0.005g/m・24h未満
○:0.01g/m・24h未満、0.005g/m・24h以上
△:0.1g/m・24h未満、0.01g/m・24h以上
×:0.1g/m・24h以上
保存性の試験方法
試料を98℃の熱湯に48時間浸漬した後、JIS K5400に準拠した碁盤目試験により密着性の評価を行い保存性とした具体的には、ガスバリア膜形成面に縦横に11本の切れ目を入れ、1mm角の碁盤目を100個作製し、この上にセロハンテープを貼り付け、90度の角度で素早く剥がし、剥がれた部分の有無を目視で観察した。
【0172】
保存性の評価ランク
◎:まったく剥がれない
○:一部の碁盤目で極僅かな浮きが認められるが、良好な品質である
△:1、2個の碁盤目で剥離が認められるが、実用上は許容される品質である
×:3個以上の碁盤目で剥離が認められ、実用上問題となる品質である
【0173】
【表1】

【0174】
基材供給工程、塗布工程、乾燥工程、巻き取り工程を有する製造工程を使用し、少なくとも1層の無機バリア層を有するフィルム基材上に、ポリマー層形成用塗布液を塗布する時、塗布室の減圧度を、−0.1kPaから−1.0kPaコーターの上流側にある減圧室の減圧度を−0.2kPaから−3.0kPaとし、減圧室と塗布室との減圧度の関係が、減圧室の減圧度>塗布室の減圧度、且つ、減圧室と塗布室との減圧度差が0.1kPaから2.0kPaとして作製した試料No.102から104、106から108、110から112は、本発明の範囲外で作製した試料No.101、105、109、113に対して酸素透過率、水蒸気透過率、保存性は何れも優れた性能を示した。本発明の有効性が確認された。
【0175】
実施例2
(基材の準備)
実施例1と同じPENフィルムを準備した。
【0176】
(無機バリア層の形成)
実施例1と同じ方法で、準備したポリエチレンナフタレートフィルム上に、厚さ50nmのSiO層を形成した。
【0177】
(バリアフィルムの製造)
(ポリマー層形成用塗布液の調製)
実施例1で準備したとポリマー層形成用塗布液と同じポリマー層形成用塗布液を準備した。
【0178】
(ポリマー層形成用塗布液の脱気)
表2に示す様に実施例1と同じ脱気装置を使用し脱気度を変化した。脱気度の変化は、脱気時間を変えることで調整した。又、脱気度は実施例1と同じ方法で求めた。
【0179】
(ポリマー層の形成)
図2に示す製造工程を使用し、準備した無機バリア層を形成したポリエチレンナフタレートフィルムに、表2に示す様に脱気度を変えた各ポリマー層形成用塗布液を温度30℃で、以下に示す条件でエクストルージョンコーターで塗布し、乾燥膜厚が2μmのポリマー層を形成しバリアフィルムを作製し試料No.201から204とした。
【0180】
塗布条件
塗布室の減圧度を、−0.2kPa、減圧室の減圧度を−0.5kPa、塗布速度は5m/分で行った。
【0181】
評価
作製したバリアフィルムNo.201から204に付き、酸素透過率、水蒸気透過率、保存性を実施例1と同じ方法で測定し、実施例1と同じ評価ランクに従って評価した結果を表2に示す。
【0182】
【表2】

【0183】
基材供給工程、塗布工程、乾燥工程、巻き取り工程を有する製造工程を使用し、少なくとも1層の無機バリア層を有するフィルム基材上に、ポリマー層形成用塗布液を塗布する時、塗布室の減圧度を、−0.1kPaから−1.0kPa、コーターの上流側にある減圧室の減圧度を−0.2kPaから−3.0kPaとし、減圧室と塗布室との減圧度の関係が、減圧室の減圧度>塗布室の減圧度、且つ、減圧室と塗布室との減圧度差が0.1kPaから2.0kPaとして、フィルム基材上に、無機バリア層とポリマー層とをこの順番で積層したバリアフィルムを作製する時、ポリマー層を形成するポリマー層形成用塗布液の脱気度を溶存酸素濃度で4ppm以下として作製した試料No.202から204は酸素透過率、水蒸気透過率何れも優れた性能を示した。本発明の有効性が確認された。
【0184】
実施例3
(基材の準備)
実施例1と同じポリエチレンナフタレートフィルムを準備した。
【0185】
(無機バリア層の形成)
実施例1と同じ方法で、準備したポリエチレンナフタレートフィルム上に、厚さ50nmのSiO層を形成した。
【0186】
(バリアフィルムの製造)
(ポリマー層形成用塗布液の調製)
ポリマー層形成用塗布液を構成する材料を表3に示す様に変えポリマー層形成用塗布液を調製しNo.3−1から3−6とした。
【0187】
【表3】

【0188】
ポリマー層形成用塗布液No.3−1の調製
光重合性アクリレートとしてトリプロピレングリコールジアクリレート(TPGDA:ダイセル・サイテック製)9g、及び光重合開始剤(チバ・ジャパン製、イルガキュアー907)0.1gを、メチルエチルケトン250gに溶解させてポリマー層形成用塗布液No.3−1とした。
【0189】
ポリマー層形成用塗布液No.3−2の調製
光重合性アクリレートとしてビスフェノールA型エポキシアクリレート(新中村化学製、NKオリゴEA−1020)9g、及び光重合開始剤(チバ・ジャパン製、イルガキュアー907)0.1gを、メチルエチルケトン250gに溶解させてポリマー層形成用塗布液No.3−2とした。
【0190】
ポリマー層形成用塗布液No.3−3の調製
ヒドロキシメチルトリシクロデカンジメタクリレート94部、ヒドロキシメチルトリシクロデカンモノメタクリレート6部、β−チオプロピオネート6部、光開始剤(BASF社製「ルシリンTPO」)0.1部、ベンゾフェノン0.1部を均一に撹拌混合してポリマー層形成用塗布液No.3−3とした。
【0191】
ポリマー層形成用塗布液No.3−4の調製
セパラブル4口フラスコに温度制御レギュレーター、冷却管、撹拌装置を取り付けて精製水70部を仕込み、80℃に昇温し反応容器内を窒素置換した後、滴下管よりグリセリンメタクリレート(以下、GLM)(日本油脂(株)製、「ブレンマーGLM」)30部、精製水20部、アゾ化合物(和光純薬工業(株)製「V−50」)0.3部を1時間掛けて滴下した。滴下終了後、更に3時間反応を継続した。重合終了後、精製水81部を十分に撹拌しながら添加し、固形分15%のポリグリセリンメタクリレート水溶液を調製しポリマー層形成用塗布液No.3−4とした。
【0192】
ポリマー層形成用塗布液No.3−5の調製
水溶性ポリマーとしてポリビニルアルコール50質量部、テトラエトキシシラン50質量部に希釈溶媒(水/メタノール混合溶媒)、加水分解触媒(0.1mol/1HCl溶液)を加えて攪拌し、ポリマー層形成用塗布液No.3−5とした。
【0193】
ポリマー層形成用塗布液No.3−6の調製
ポリシラザンの20質量%キシレン溶液(「NL110A」AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製)をポリマー層形成用塗布液No.3−6とした。
【0194】
(ポリマー層形成用塗布液の脱気)
調製した各ポリマー層形成用塗布液No.3−1から3−6に付き、実施例1と同じ脱気方法、条件で脱気を行い、脱気度を溶存酸素濃度で4ppmとした。
【0195】
(ポリマー層の形成)
図2に示す製造工程を使用し、準備した無機バリア層を形成したPENフィルムに、表3に示す様に構成材料を変えた各ポリマー層形成用塗布液No.3−1から3−6をエクストルージョンコーターで塗布し、乾燥膜厚が2μmのポリマー層を形成しバリアフィルムを作製し試料No.301から306とした。
【0196】
塗布条件
塗布室の減圧度を、−0.2kPa、減圧室の減圧度を−0.5kPa、塗布速度は5m/分で行った。
【0197】
評価
作製したバリアフィルムNo.301から306に付き、酸素透過率、水蒸気透過率、保存性を実施例1と同じ方法で測定し、実施例1と同じ評価ランクに従って評価した結果を表4に示す。
【0198】
【表4】

【0199】
基材供給工程、塗布工程、乾燥工程、巻き取り工程を有する製造工程を使用し、少なくとも1層の無機バリア層を有するフィルム基材上に、ポリマー層形成用塗布液を塗布する時、塗布室の減圧度を、−0.1kPaから−1.0kPa、コーターの上流側にある減圧室の減圧度を−0.2kPaから−3.0kPaとし、減圧室と塗布室との減圧度の関係が、減圧室の減圧度>塗布室の減圧度、且つ、減圧室と塗布室との減圧度差が−0.1kPaから2kPaとして、フィルム基材上に、無機バリア層とポリマー層とをこの順番で積層したバリアフィルムを作製する時、ポリマー層を形成するポリマー層形成用塗布液の材料をアクリレート系樹脂、メタクリレート系樹脂、ポリシラザンを使用し作製した試料No.301から306は酸素透過率、水蒸気透過率、保存性は何れも優れた性能を示した。本発明の有効性が確認された。
【0200】
実施例4
(基材の準備)
実施例1と同じPENフィルムを準備した。
【0201】
(無機バリア層の形成)
実施例1と同じ方法で、準備したポリエチレンナフタレートフィルム上に、厚さ50nmのSiO層を形成した。
【0202】
(バリアフィルムの製造)
(ポリマー層形成用塗布液の調製)
粒子を有する下記に示すポリマー層形成用塗布液を調製しNo.4−1から4−8とした。粒径測定には大塚電子(株)製FPAR−1000を使用した。
【0203】
ポリマー層形成用塗布液No.4−1の調製
3官能イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性トリアクリレート(アロニックスM−315:東亞合成社製)に、ラジカル開始剤(イルガキュアー651:チバガイギー社製)をアロニックスM−315の1質量%相当量を添加し、適量の溶剤に溶解した。続いて日産化学(株)製MEK−ST(粒径10nmから15nm)液を粒子含有率が30vol%となるように前記塗布液に混合し、攪拌してポリマー層形成用塗布液No.4−1を得た。
【0204】
ポリマー層形成用塗布液No.4−2から4−3の調製
ポリマー層形成用塗布液に混合する粒子を日産化学(株)製MEK−ST(粒径40nmから45nm及び70nmから80nm)に変更する以外は4−1と同様にしてポリマー層形成用塗布液No.4−2(粒径40nmから45nmを使用)から4−3(粒径70nmから80nmを使用)を得た。
【0205】
ポリマー層形成用塗布液No.4−4の調製
ポリマー層形成用塗布液に混合する粒子をNanophase Tecnologies社製NanoDur X1130PMA(粒径45nm)に変更する以外は4−1と同様にしてポリマー層形成用塗布液No.4−4を得た。
【0206】
ポリマー層形成用塗布液No.4−5の調製
ポリマー層形成用塗布液に混合する粒子を日本アエロジル AEROSIL RX300(粒径7nm)に変更する以外は4−1と同様にしてポリマー層形成用塗布液No.4−5を得た。
【0207】
ポリマー層形成用塗布液No.4−6、4−7の調製
内容積1Lのポリエチレン製容器中で、コロイダルシリカ(扶桑化学工業(株)製PLシリーズ(粒径100nm及び120nm))700gを撹拌機、コンデンサー、温度計及び注入口2箇を備えた内容積1Lのガラス製反応器に仕込み、反応器内ゾルの沸騰を維持し、液面を若干上げながら、別のボイラーで発生させたメタノールの蒸気を反応器内のシリカゾル中に連続的に吹き込んだ。留出液の体積が10Lになったところで置換を終了し、メタノール分散シリカゾル(SiO濃度15.0質量%)を得た。続いてこの分散液を粒子含有率が30vol%となるように前記塗布液に混合し、攪拌してポリマー層形成用塗布液No.4−6(粒径100nmを使用)、4−7(粒径120nmを使用)を得た。
【0208】
ポリマー層形成用塗布液No.4−8の調製
粒子を添加しない以外はポリマー層形成用塗布液4−1と同様にして、ポリマー層形成用塗布液No.4−8を得た。
【0209】
(ポリマー層形成用塗布液の脱気)
調製した各ポリマー層形成用塗布液No.4−1から4−8に付き、実施例1と同じ脱気方法、条件で脱気を行い、脱気度を溶存酸素濃度で4ppmとした。
【0210】
(ポリマー層の形成)
図2に示す製造工程を使用し、準備した無機バリア層を形成したポリエチレンナフタレートフィルムに、準備した各ポリマー層形成用塗布液No.4−1から4−8をエクストルージョンコーターで塗布し、乾燥膜厚が2μmのポリマー層を形成しバリアフィルムを作製し試料No.401から408とした。
【0211】
塗布条件
塗布室の減圧度を、−0.2kPa、減圧室の減圧度を−0.2kPa、塗布速度は5m/分で行った。
【0212】
評価
作製したバリアフィルムNo.401から408付き、酸素透過率、水蒸気透過率、保存性を実施例1と同じ方法で測定し、実施例1と同じ評価ランクに従って評価した結果を表5示す。
【0213】
【表5】

【0214】
基材供給工程、塗布工程、乾燥工程、巻き取り工程を有する製造工程を使用し、少なくとも1層の無機バリア層を有するフィルム基材上に、ポリマー層形成用塗布液を塗布しバリアフィルムを作製する時、塗布室の減圧度を、−0.1kPaから−1.0kPa、コーターの上流側にある減圧室の減圧度を−0.2kPaから−3.0kPaとし、減圧室と塗布室との減圧度の関係が、減圧室の減圧度>塗布室の減圧度、且つ、減圧室と塗布室との減圧度差が−0.1kPaから2kPaとして、ポリマー層を形成するポリマー層形成用塗布液に平均粒径7nmから100nmの粒子を添加し作製した試料No.401から406は酸素透過率、水蒸気透過率、保存性で何れも優れた性能を示した。本発明の有効性が確認された。
【符号の説明】
【0215】
1 バリアフィルム
101、301、E、F 基材
102 無機バリア層
103 ポリマー層
2 製造工程
3 基材供給工程
301 基材
4 塗布工程
401 ポリマー層形成用塗布液供給部
401a ポリマー層形成用塗布液貯蔵タンク
401b 脱気装置
401c 加熱装置
402 塗布部
402a 塗布室
402a1、402a2 エアーツーバキュームコネクター
402b コーター
402b1 減圧室
5 乾燥工程
6 巻き取り工程
8、9 大気圧プラズマ製膜装置
801 第1電極
802 第2電極
9a1 ロール回転電極
9a2 角筒型固定電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材供給工程、塗布工程、乾燥工程、巻き取り工程を有する製造工程を使用し、少なくとも1層の無機バリア層を有するフィルム基材上に、ポリマー層形成用塗布液を塗布し、少なくとも1層のポリマー層を有するバリアフィルムを製造するバリアフィルムの製造方法において、
少なくとも前記塗布工程は、−0.1kPaから−1.0kPaの減圧環境の塗布室と、上流側に減圧室を有する塗布機とを使用し、
前記減圧室の減圧度が−0.2kPaから−3.0kPaであり、
前記減圧室と前記塗布室との減圧度の関係が、減圧室の減圧度>塗布室の減圧度、且つ、減圧室と塗布室との減圧度差が0.1kPaから2kPaであることを特徴とするバリアフィルムの製造方法。
【請求項2】
前記ポリマー層形成用塗布液の脱気度は溶存酸素濃度で4ppm以下であることを特徴とする請求項1に記載のバリアフィルムの製造方法。
【請求項3】
前記ポリマー層がアクリレート系樹脂又はメタクリレート系樹脂で形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のバリアフィルムの製造方法。
【請求項4】
前記ポリマー層がポリシラザンで形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のバリアフィルムの製造方法。
【請求項5】
前記ポリマー層は平均粒径が7nmから100nmの粒子を含むことを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載のバリアフィルムの製造方法。
【請求項6】
前記無機バリア層が大気圧プラズマ方式で形成された酸化珪素系バリア膜であることを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載のバリアフィルムの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2011−36803(P2011−36803A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−186404(P2009−186404)
【出願日】平成21年8月11日(2009.8.11)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】