説明

バリアフィルム積層体

【課題】水蒸気に対して高いバリア性を有し、高温高湿環境下でも層間剥離が生じ難く、その高いバリア性の維持が可能なバリアフィルム積層体を提供すること。
【解決手段】本発明のバリアフィルム積層体は、バリアフィルム同士が粘着剤層を介して貼り合わされたバリアフィルム積層体であって、上記バリアフィルムは、少なくとも一方の最外層に、無機酸化物層、又は、親水性基を有する樹脂とアルコキシドの加水分解物及び/又はその縮合物との反応により形成された複合膜からなるコート層を備え、上記粘着剤層の少なくとも一方の面が、上記無機酸化物層の面又は上記コート層の面と接し、上記粘着剤層が、シランカップリング剤を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水蒸気に対して高いバリア性を有し、高温高湿環境下でも層間剥離が生じ難いバリアフィルム積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
食品、医薬品等の包装分野では、酸素や水蒸気の浸入による内容物の変質を防止するため、バリアフィルムが用いられている。近年では、電子部材や光学部材の包装材料として、より高品質のバリアフィルムが求められ、その開発が行われている。
【0003】
バリアフィルムの形成方法としては、基材フィルムの表面に無機化合物を蒸着したり、基材フィルム上にバリア性を有する樹脂をコーティングしたりする方法がある。例えば、特許文献1には、基材フィルムの表面に酸化アルミニウムを蒸着することで、バリア性を高めた包装用フィルムが開示されている。また、特許文献2には、高いバリア性を有するが、基材フィルムとの接着性が悪いポリビニルアルコール樹脂層を、易接着層を介して、基材フィルム上に積層したガスバリアフィルムが開示されている。
【0004】
しかしながら、これらのバリアフィルムは、酸素に対する高いバリア性を有するものの、水蒸気に対するバリア性は十分とは言い難く、水分の影響を受けやすい電子部材や光学部材の包装材料として用いるには、更なる開発の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭62−179935号公報
【特許文献2】特開平10−296929号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、バリアフィルムのバリア性をより向上させるためには、高いバリア性を有するバリアフィルム同士を貼り合わせて、多層バリア構造とすることが好ましいとも考えられる。しかしながら、バリアフィルム同士の貼り合わせに接着剤を用いたバリアフィルム積層体では、接着剤層と被着材層との間に気泡が残留するため、ヘイズが高くなり、透明性が低下する。これに対して、バリアフィルム同士の貼り合わせに粘着剤を用いたバリアフィルム積層体では、粘着剤層と被着材層との間に気泡が残留し難いため、透明性の低下は生じないが、高温高湿環境下にて使用すると、粘着剤層の端面から浸入した水分により、経時的にラミネート強度が低下するため、耐久性が良くない。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、水蒸気に対して高いバリア性を有し、且つ、高温高湿環境下でも層間剥離が生じ難く、その高いバリア性の維持が可能なバリアフィルム積層体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねたところ、高い水蒸気バリア性を有するバリアフィルム同士を、シランカップリング剤を含む粘着剤層を介して貼り合わせることで、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、以下のようなものを提供する。
【0009】
(1)バリアフィルム同士が粘着剤層を介して貼り合わされたバリアフィルム積層体であって、上記バリアフィルムは、少なくとも一方の最外層に、無機酸化物層、又は、親水性基を有する樹脂とアルコキシドの加水分解物及び/又はその縮合物との反応により形成された複合膜からなるコート層を備え、上記粘着剤層の少なくとも一方の面が、上記無機酸化物層の面又は上記コート層の面と接し、上記粘着剤層が、シランカップリング剤を含むことを特徴とするバリアフィルム積層体。
【0010】
(2)上記粘着剤層の少なくとも一方の面が、上記コート層の面と接する(1)に記載のバリアフィルム積層体。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、水蒸気に対して高いバリア性を有するバリアフィルム同士を、シランカップリング剤を含む粘着剤層を介して貼り合わせることにより、非常に優れた水蒸気バリア性を有し、且つ、高温高湿環境下でも層間剥離が生じ難いバリアフィルム積層体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るバリアフィルム積層体を模式的に示した断面図である。
【図2】本発明の第2の実施形態に係るバリアフィルム積層体を模式的に示した断面図である。
【図3】本発明の第3の実施形態に係るバリアフィルム積層体を模式的に示した断面図である。
【図4】本発明の第4の実施形態に係るバリアフィルム積層体を模式的に示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の具体的な実施形態について、詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
【0014】
[バリアフィルム積層体]
本発明のバリアフィルム積層体は、バリアフィルム同士が粘着剤層を介して貼り合わされたバリアフィルム積層体である。上記バリアフィルムは、少なくとも一方の最外層に、無機酸化物層、又は、親水性基を有する樹脂とアルコキシドの加水分解物及び/又はその縮合物との反応により形成された複合膜からなるコート層を備え、上記粘着剤層の少なくとも一方の面が、上記無機酸化物層の面又は上記コート層の面と接し、上記粘着剤層が、シランカップリング剤を含むことを特徴とする。
【0015】
本発明のバリアフィルム積層体では、バリア性を向上させるために、無機酸化物層や親水性基を有する樹脂とアルコキシドの加水分解物及び/又はその縮合物との反応により形成された複合膜からなるコート層を備えるバリア性の高いバリアフィルム同士を、粘着剤層を介して貼り合わせた。粘着剤層を介してバリアフィルム同士を貼り合わせたバリアフィルムの積層体は、高温高湿環境下にて使用すると、粘着剤層の端面から浸入した水分により、ラミネート強度が低下し、層間剥離しやすくなる。この現象は、高いバリア性を有する無機酸化物層や上記コート層を備えるバリアフィルムにおいて顕著である。そこで、本発明では、非常に優れた水蒸気バリア性を有し、高温高湿環境下でも層間剥離が生じ難いバリアフィルム積層体を得るために、無機酸化物層や上記コート層を備えるバリアフィルム同士の貼り合わせに、シランカップリング剤を含む粘着剤層を用いた。これにより、粘着剤層と接する層の表面に存在する基と、粘着剤層に含まれるシランカップリング剤が有する基とが反応し、化学結合することで、接着性が向上するだけでなく、仮に、粘着剤層の端面から水分が浸入しやすい環境であったとしても、水分子と反応する基(親水性基)は、シランカップリング剤が有する基と化学結合しているため、水分子を引き寄せ難く、層間剥離が生じ難いと考えられる。
【0016】
本発明のバリアフィルム積層体は、少なくとも一方の最外層に、無機酸化物層、又は、親水性基を有する樹脂とアルコキシドの加水分解物及び/又はその縮合物との反応により形成された複合膜からなるコート層を備えるバリアフィルムが、粘着剤層を介して貼り合わされたものであり、該粘着剤層の少なくとも一方の面が、上記無機酸化物層の面又は上記コート層の面と接している構成を有する。なお、このような構成を有していれば、バリアフィルムの貼合数は、特に限定されるものではなく、所望のバリア性、透明性、柔軟性等を勘案し、適宜選択することができる。また、このような構成を有していれば、バリアフィルムは、基材、無機酸化物層、コート層以外の層を備えていてもよく、より多層の積層構造であってもよい。
【0017】
まず、本発明のバリアフィルム積層体の構成について、図面を用いて説明する。図1は、本発明の第1の実施形態に係るバリアフィルム積層体1を模式的に示した断面図である。図1において、バリアフィルム積層体1は、一方の最外層に無機酸化物層3を備え、且つ、他方の最外層に基材2を備えるバリアフィルム11同士が、上記無機酸化物層3の面と粘着剤層4の一方の面とが接するように貼り合わされている。
【0018】
また、図2は、本発明の第2の実施形態に係るバリアフィルム積層体1を模式的に示した断面図である。図2において、バリアフィルム積層体1は、一方の最外層に親水性基を有する樹脂とアルコキシドの加水分解物及び/又はその縮合物との反応により形成された複合膜からなるコート層5を備え、且つ、他方の最外層に基材2を備えるバリアフィルム11同士が、上記コート層5の面と粘着剤層4の一方の面とが接するように貼り合わされている。
【0019】
更に、図3は、本発明の第3の実施形態に係るバリアフィルム積層体1を模式的に示した断面図である。図3において、バリアフィルム積層体1は、一方の最外層に無機酸化物層3を備え、且つ、他方の最外層に基材2を備えるバリアフィルム11同士が、上記無機酸化物層3の面と粘着剤層4の両方の面とが接するように貼り合わされている。
【0020】
そして更に、図4は、本発明の第4の実施形態に係るバリアフィルム積層体1を模式的に示した断面図である。図4において、バリアフィルム積層体1は、一方の最外層に親水性基を有する樹脂とアルコキシドの加水分解物及び/又はその縮合物との反応により形成された複合膜からなるコート層5を備え、且つ、他方の最外層に基材2を備えるバリアフィルム11同士が、上記コート層5の面と粘着剤層4の両方の面とが接するように貼り合わされている。
【0021】
なお、図には示していないが、少なくとも一方の最外層に無機酸化物層3を備えるバリアフィルム11と、少なくとも一方の最外層に親水性基を有する樹脂とアルコキシドの加水分解物及び/又はその縮合物との反応により形成された複合膜からなるコート層5を備えるバリアフィルム11とが、粘着剤層4を介して貼り合わされたバリアフィルム積層体1も本発明の範囲に含まれる。
【0022】
なお、本発明のバリアフィルム積層体1は、一方の最外層が、無機酸化物層3又はコート層5以外の層であることが好ましく、両方の最外層が、無機酸化物層3又はコート層5以外の層であることがより好ましい。最外層が、無機酸化物層3やコート層5であると、人の手や物が接触するため、傷付きやすく、バリア性の低下が生じやすいからである。
【0023】
以下に、本発明のバリアフィルム積層体1の各構成について、詳細に説明する。
【0024】
[基材]
基材2は、必要な強度や柔軟性を有していれば、特に限定されず、用途に応じて、適宜選択することができる。一般的には、合成樹脂フィルムが用いられる。合成樹脂フィルムの材料としては、ポリエステル系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、フッ素系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、セルロース系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリイミド系樹脂、フェノール系樹脂、ポリウレタン系樹脂等の公知の樹脂が挙げられる。これらは、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、単層であってもよいし、2層以上の積層体であってもよい。1軸延伸や2軸延伸した延伸フィルムが機械的強度の点において好ましい。なお、本発明では、上記合成樹脂の中でも、透明性、耐熱性、寸法安定性、剛性、柔軟性、積層適性、価格等の観点から、ポリエステル系樹脂を用いることが特に好ましい。
【0025】
ポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリアリレート、ポリテトラメチレンテレフタレート等が挙げられるが、この中でも、取り扱い易さ、低価格等の観点から、ポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
【0026】
基材2の厚みは、特に限定されず、用途に応じて、適宜選択することができる。通常、9〜150μm程度であるが、好ましくは12〜125μmであり、より好ましくは12〜100μmである。上記範囲であれば、機械的強度が十分であり、反り、弛み、破断等を生じ難く、作業性が良好であり、また、連続帯状で供給して加工することも可能である。なお、上記の厚さを超えると、過剰性能でコスト高になる場合がある。
【0027】
基材2は、高い透明性を有することが好ましい。例えば、可視域(380〜780nm)における光透過率が85%以上であることが好ましい。なお、必ずしも無色透明である必要はなく、着色された透明であってもよい。なお、光透過率は、市販の分光光度計、例えば、島津製作所社製のUV−3100PCを用いて測定(JIS−Z8701準拠)することができる。
【0028】
基材2の形成方法は、特に限定されず、例えば、溶液流延法、溶融押出法、カレンダー法等の従来公知の製膜方法を用いることができる。また、上記方法により、予めフィルム状に製膜された市販の基材を使用してもよい。
【0029】
なお、基材2には、コロナ処理、プラズマ処理、オゾン処理等の公知の易接着処理を行ってもよい。
【0030】
[無機酸化物層]
本発明の第1,3の実施形態に係るバリアフィルム積層体1を構成するバリアフィルム11は、図1,3に示すように、一方の最外層に、無機酸化物層3を備えている。無機酸化物層3を備えるバリアフィルム11を貼り合わせることで、無機酸化物層3を備えるバリアフィルム11単独の場合に比して、高い水蒸気バリア性が得られる。
【0031】
無機酸化物層3を形成する無機化合物は、水蒸気に対してバリア性を示すものであれば、特に限定されず、例えば、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化スズ、酸化インジウム、酸化カルシウム、酸化カリウム、酸化ナトリウム、酸化鉛、酸化ホウ素、酸化ジルコニウム等が挙げられる。これらの中でも、酸化アルミニウム及び酸化ケイ素が、透明性を有し、耐水性に優れ、安価である点において好ましい。
【0032】
本発明の実施形態に係るバリアフィルム積層体1を構成するバリアフィルム(図1,3)では、無機酸化物層3は、上記基材2上に形成されている。なお、本発明では、基材2との間に、別の層を介して無機酸化物層3が形成されていてもよいが、ここでは、上記基材2上に、無機酸化物層3を形成する場合について説明する。上記基材2上に、無機酸化物層3を形成する方法としては、例えば、蒸着、コーティング等が挙げられる。これらの中でも、蒸着が、量産適性を有し、バリア安定性に優れ、且つ高いバリア性能を付与できるという点において好ましい。なお、蒸着方法としては、化学気相成長法(CVD法)及び物理気相成長法(PVD法)が挙げられ、いずれも好適に用いることができる。化学気相成長法としては、例えば、プラズマ化学気相成長法、熱化学気相成長法、光化学気相成長法等が挙げられる。また、物理気相成長法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等が挙げられる。これらの中でも、真空蒸着法が、膜厚調整がしやすく、薄膜成型が容易である点において好ましい。
【0033】
なお、蒸着により形成された無機酸化物層3の膜厚は、50〜4000Åであることが好ましく、100〜1000Åであることがより好ましい。上記範囲であれば、水蒸気に対して十分なバリア性が発揮され、クラックも発生し難い。
【0034】
[コート層]
本発明の第2,4の実施形態に係るバリアフィルム積層体1を構成するバリアフィルム11は、図2,4に示すように、一方の最外層に、親水性基を有する樹脂と、アルコキシドの加水分解物及び/又はその縮合物との反応により形成された複合膜からなるコート層5を備えている。コート層5を備えるバリアフィルム11を貼り合わせることで、コート層5を備えるバリアフィルム11単独の場合に比して、高い水蒸気バリア性が得られる。
【0035】
本発明における複合膜は、親水性基を有する樹脂が、アルコキシドの加水分解物及び/又はその縮合物と縮合重合し、結晶化することにより形成される。このように形成された複合膜は、無機酸化物層3と、水素結合等の化学結合により強固に密着するため、水蒸気バリア性は更に向上すると考えられる。
【0036】
一般に、アルコキシドは加水分解後に縮合し、膜を形成するが、その膜は硬く、クラックが発生しやすい。そこで、本発明におけるコート層5では、膜に柔軟性を付与し、成型処理等におけるクラック等の損傷の発生を防止するために、親水性基を有する樹脂を添加した。これにより、成型処理後も高い水蒸気バリア性を維持するバリアフィルム積層体1を得ることができる。親水性基を有する樹脂は、特に限定されず、例えば、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、エチレン・ビニルアルコールコポリマー等が挙げられる。これらは、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。親水性基としては、例えば、水酸基、スルホン基、カルボキシル基、アミド基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。上記樹脂の中でも、水酸基を多く有し、アルコキシドの加水分解物又はその縮合物の水酸基と非常に強い水素結合を形成するポリビニルアルコールが、高いガスバリア性を有するので好ましい。なお、ポリビニルアルコールのケン化度及び分子量は、特に限定されないが、ケン化度が高く、重合度が高い高分子量のものが、耐水性に優れるので好ましい。また、ポリビニルアルコールとエチレン・ビニルアルコールコポリマーとを組み合わせたものが、ガスバリア性、耐水性、耐候性に優れる点においてより好ましい。
【0037】
アルコキシドは、特に限定されず、例えば、一般式:R1M(OR2)(式中、Mは金属元素、R1及びR2は炭素数1〜8の有機基、nは0以上、mは1以上の整数、n+mはMの原子価を表す)で表されるものを好適に用いることができる。なお、アルコキシドの加水分解物は、アルコキシ基の全てが加水分解されているものである必要はなく、1個以上が加水分解されているものであればよい。
【0038】
上記一般式において、Mで表される金属元素としては、例えば、ケイ素、ジルコニウム、チタン、アルミニウム等が挙げられ、これらの中でも、ケイ素及びアルミニウムが好ましい。また、R1で表される有機基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基等のアルキル基等が挙げられ、R2で表される有機基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基等のアルキル基等が挙げられる。なお、R1で表される有機基とR2で表される有機基とは、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0039】
Mで表される金属元素がケイ素であるアルコキシシランとしては、例えば、テトラメトキシシラン:Si(OCH、テトラエトキシシラン:Si(OC、テトラプロポキシシラン:Si(OC、テトラブトキシシラン:Si(OC等を好適に用いることができる。また、メチルトリメトキシシラン:CHSi(OCH、メチルトリエトキシシラン:CHSi(OC、ジメチルジメトキシシラン:(CHSi(OCH、ジメチルジエトキシシラン:(CHSi(OC等のアルキルアルコキシシランも好適に用いることができる。なお、これらのアルコキシシラン及びアルキルアルコキシシランは、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。更に、ポリテトラメトキシシラン、ポリテトラエメトキシシラン等のアルコキシシランの縮重合物も好適に用いることができる。上記アルコキシシランの中でも、テトラエトキシシランが加水分解後、水系溶媒中で比較的安定であるので好ましい。
【0040】
Mで表される金属元素がジルコニウムであるジルコニウムアルコキシドとしては、例えば、テトラメトキシジルコニウム:Zr(O−CH、テトラエトキシジルコニウム:Zr(O−C、テトライソプロポキシジルコニウム:Zr(O−Iso−C、テトラ−n−ブトキシジルコニウムZr(O−C等を好適に用いることができる。
【0041】
Mで表される金属元素がチタンであるチタニウムアルコキシドとしては、例えば、テトラメトキシチタニウム:Ti(O−CH、テトラエトキシチタニウム:Ti(O−C、テトライソプロポキシチタニウム:Ti(O−Iso−C、テトラ−n−ブトキシチタニウム:Ti(O−C等を好適に用いることができる。
【0042】
Mで表される金属元素がアルミニウムであるアルミニウムアルコキシドとしては、例えば、テトラメトキシアルミニウム:Al(O−CH、テトラエトキシアルミニウム:Al(O−C、テトライソプロポキシアルミニウム:Al(O−Iso−C、テトラ−n−ブトキシアルミニウム:Al(O−C等を好適に用いることができる。
【0043】
なお、本発明では、親水性基を有する樹脂がポリビニルアルコールであって、アルコキシドがテトラエトキシシランであるコート層5が、高い水蒸気バリア性を有するので好ましい。
【0044】
本発明のコート層5では、上記アルコキシド由来の金属元素(M)と、上記親水性基を有する樹脂由来の炭素元素(C)との元素割合(M/C)が、2.8<M/C<4.12であることが好ましく、2.8<M/C<3.4であることがより好ましい。親水性基を有する樹脂由来の炭素元素の割合が多すぎると、該親水性基を有する樹脂の膨潤を抑制できず、コート層5の表面が粗くなり、水蒸気バリア性が低下する。アルコキシド由来の金属元素の割合が多すぎると、アルコキシドの加水分解物等同士、又はアルコキシドの加水分解物等と親水性基を有する樹脂との縮合重合が過度に進行し、大きな凝集体が形成されるため、緻密な膜を形成することができない。そうすると、コート層5の表面が粗くなり、水蒸気バリア性が低下することになる。
【0045】
本発明の実施形態に係るバリアフィルム積層体1を構成するバリアフィルム(図2,4)では、コート層5は、上記無機酸化物層3上に形成されている。本発明では、コート層5は、基材2上に形成されていてもよいし、上記無機酸化物層3との間に別の層を介して形成されていてもよい。本発明のバリアフィルム積層体1が、上記無機酸化物層3と上記コート層5とを備えている場合には、より高い水蒸気バリア性を得ることができるので、好ましい。なお、コート層5は、保護膜としても機能する。例えば、無機酸化物層3上に形成することで、無機酸化物層3に欠損部位があったとしても、それを埋めることによりバリア性を確保することができる。
【0046】
上記コート層5を形成する方法は、特に限定されず、例えば、ロールコート法、スピンコート法、グラビアコート法、リバースコート法、ディッピング法、スプレーコート法、バーコート法等の従来公知の方法を用いることができる。例えば、上記無機酸化物層3上に、コート層5を形成する場合には、上記親水性基を有する樹脂とアルコキシドとを、水又は水と有機溶媒との混合溶媒にて溶解又は分散させた後、上記無機酸化物層3にコーティングし、加熱乾燥させて形成する。なお、コート層5の厚みは、特に限定されないが、通常、0.01〜30μm、好ましくは0.1〜10μmである。上記範囲であれば、クラックが生じ難い。
【0047】
[粘着剤層]
本発明のバリアフィルム積層体1は、図1〜4に示すように、バリアフィルム11同士を、粘着剤層4を介して貼り合わせたものであり、粘着剤層4の少なくとも一方の面が、上記無機酸化物層3の面、又は、親水性基を有する樹脂とアルコキシドの加水分解物及び/又はその縮合物との反応により形成された複合膜からなるコート層5の面と接している。上記無機酸化物層3や親水性基を有する樹脂とアルコキシドの加水分解物及び/又はその縮合物との反応により形成された複合膜からなるコート層5を備えるバリアフィルム11は、高いバリア性を有するが、これらを、粘着剤層を介して貼り合わせたバリアフィルム積層体1は、高温高湿環境下にて使用すると、粘着剤層4の端面から浸入した水分により、ラミネート強度が顕著に低下し、層間剥離しやすくなる。特に、上記コート層では、水分子と反応する親水性基を有するため、水分子を引き寄せやすく、その傾向が強い。本発明では、高温高湿環境下におけるラミネート強度の低下を抑制するために、粘着剤層4にシランカップリング剤を配合した。これにより、粘着剤層と接する層の表面に存在する基と、粘着剤層に含まれるシランカップリング剤が有する基とが反応し、化学結合することで、接着性が向上するだけでなく、仮に、粘着剤層の端面から水分が浸入しやすい環境であったとしても、水分子と反応する基(親水性基)は、シランカップリング剤が有する基と化学結合しているため、水分子を引き寄せ難く、ラミネート強度の低下が抑制できると考えられる。また、シランカップリング剤の使用により、粘着剤層4自体の耐久性、耐熱性が向上すると考えられる。
【0048】
本発明の粘着剤層4に用いる粘着剤は、必要な接着性、透明性、塗工適性等を有していれば、特に限定されず、公知の粘着剤の中から、適宜選択することができる。例えば、アクリル系、ウレタン系、シリコーン系、合成ゴム系、天然ゴム系等の粘着剤が挙げられる。これらは、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、本発明では、アクリル系粘着剤又は合成ゴム系粘着剤を用いることが好ましい。アクリル系粘着剤は、耐熱性、透明性、塗工適性に優れるという、バリアフィルムとして好ましい特性を有するだけでなく、低コストである点において好ましい。合成ゴム系粘着剤は、安価であり、性能の長期安定性に優れる点において好ましい。
【0049】
アクリル系粘着剤としては、特に限定されないが、例えば、アクリル酸エステルと他の単量体とを共重合させたアクリル酸エステル共重合体が挙げられる。アクリル酸エステルとしては、例えば、アクリル酸エチル、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸イソノニル、アクリル酸ヒドロキシルエチル、アクリル酸プロピレングリコール、アクリルアミド、アクリル酸グリシジル等が挙げられる。これらは、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、本発明では、上記アクリル酸エステルの中でも、アクリル酸エチル、アクリル酸−n−ブチル、及びアクリル酸−2−エチルヘキシルが、被着体に対して良好な粘着性を有する点において好ましい。他の単量体としては、例えば、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、スチレン、アクリロニトリル、酢酸ビニル、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、アクリル酸ヒドロキシルエチル、メタクリル酸ヒドロキシルエチル、アクリル酸プロピレングリコール、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸−tert−ブチルアミノエチル、メタクリル酸nエチルヘキシル等が挙げられる。これらは、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、本発明では、上記他の単量体の中でも、メタクリル酸nエチルヘキシルが好ましい。
【0050】
アクリル系粘着剤として用いられるアクリル酸エステル共重合体の重量平均分子量(Mw)は、上記アクリル系粘着剤が所望の粘着力を発揮するものであれば、特に限定されないが、200,000〜2,500,000の範囲内であることが好ましく、600,000〜2,200,000の範囲内であることがより好ましい。なお、重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定した際の、ポリスチレン換算の値である。
【0051】
なお、上記アクリル系粘着剤の市販品としては、例えば、SKダイン2094(綜研化学株式会社製)、SKダイン2096(綜研化学株式会社製)等を好適に用いることができる。
【0052】
合成ゴム系粘着剤としては、特に限定されないが、例えば、スチレン−イソプレン共重合体ゴム(SIS)、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、ポリイソプレンゴム(IR)、ポリイソブチレン(PIB)、ブチルゴム(IIR)等が挙げられる。これらは、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、本発明では、イソプレン系ゴムが好ましく、特に、SISがより好ましい。
【0053】
なお、上記ゴム系粘着剤の市販品としては、例えば、JSR SIS 5200(JSR株式会社製)、HYBRAR 7311(クラレ社製)等を好適に用いることができる。
【0054】
シランカップリング剤としては、特に限定されないが、分子内にアルコキシシリル基を少なくとも1つ以上有する有機ケイ素化合物であって、上記粘着剤との相溶性が良好であるものが好適である。例えば、テトラエトキシシラン、トリメトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、アミノシラン、クロロシラン、ジクロロシラン等が挙げられ、粘着剤層4と接するバリアフィルム面の性質、粘着剤の種類等を勘案し、適宜選択することができる。なお、これらは、単独又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0055】
シランカップリング剤の配合量は、粘着剤固形分100質量部に対して、0.1〜1.5質量部であることが好ましく、0.3〜1.2質量部であることがより好ましい。上記範囲であれば、粘着剤層に良好な接着性、密着性、耐熱性、耐久性、作業性を付与することができる。
【0056】
その他、本発明の目的を損なわない範囲で必要に応じて、架橋剤、粘着付与剤、金属キレート剤、界面活性剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、顔料、染料、着色剤、耐電防止剤、防腐剤、消泡剤、ぬれ性調整剤等の各種添加剤を配合することができる。
【0057】
なお、本発明の粘着剤層に配合することができる架橋剤は、粘着剤を架橋できるものであれば、特に限定されず、例えば、エポキシ系架橋剤、イソシアネート系架橋剤等が挙げられる。エポキシ系架橋剤としては、例えば、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリブタジエンジグリシジルエーテル等の多官能エポキシ系化合物が挙げられる。また、イソシアネート系架橋剤としては、例えば、ポリイソシアネート化合物、ポリイソシアネート化合物の3量体、ポリイソシアネート化合物とポリオール化合物とを反応させて得られるイソシアネート基を末端に有するウレタンプレポリマー、該ウレタンプレポリマーの3量体等が挙げられる。ポリイソシアネート化合物としては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,5−トリレンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート、3−メチルジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4′−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−2,4′−ジイソシアネート、リジンイソシアネート等が挙げられる。これらは、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができ、粘着剤の種類等に応じて、適宜選択するとよい。
【0058】
また、本発明の粘着剤層に配合することができる粘着付与剤は、特に限定されず、例えば、ロジンエステル、水添ロジンエステル、不均化ロジンエステル、重合ロジンエステル等のロジン系樹脂;クマロンインデン樹脂、水添クマロンインデン樹脂、フェノール変性クマロンインデン樹脂、エポキシ変性クマロンインデン樹脂等のクマロンインデン系樹脂;ポリテルペン樹脂、スチレン変性テルペン樹脂、フェノール変性テルペン樹脂、脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、芳香族変性脂肪族系石油樹脂、芳香族系純モノマー樹脂等の石油樹脂等が挙げられる。これらは、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができ、粘着剤の種類等に応じて、適宜選択するとよい。例えば、粘着剤としてイソプレン系ゴムを用いた場合には、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、脂環族系石油樹脂、及びこれらの石油樹脂の水添樹脂が、親和性の観点から好ましい。
【0059】
粘着剤層4の形成方法としては、特に限定されないが、例えば、印刷、コーティング等による方法が挙げられる。粘着剤層4の厚みは、粘着剤層4と接するバリアフィルム面の状態、形状等を勘案し、バリアフィルム面に対する接着性と密着性とを損なわない範囲で、適宜選択することができる。通常、5〜100μm、好ましくは10〜50μmである。上記範囲であれば、粘着物性が安定する。なお、厚みが5μm以下であると、十分な接着強度が得られない場合があり、100μm以上であると、光線透過率等の光学特性に悪影響を及ぼす場合がある。
【0060】
[バリアフィルム積層体]
バリアフィルム積層体1の形成方法としては、特に限定されるものではない。例えば、図1に示す本発明の第1の実施形態に係るバリアフィルム積層体1の場合、アクリル系粘着剤にシランカップリング剤を添加し、十分分散させて粘着剤層形成用塗工液を調製する。次いで、バリアフィルム11の無機酸化物層3面に、アプリケータを用いて、粘着剤層形成用塗工液を全面塗工し、粘着剤層4を形成する。その後、乾燥させ、乾燥後の粘着剤層4の塗工面に、バリアフィルム11の基材2面が接するように、バリアフィルム11を、ローラーを用いて貼合することにより形成することができる。
【0061】
本発明のバリアフィルム積層体1は、高い水蒸気バリア性を有するバリアフィルムを貼り合わせ、更に、高温高湿環境下での使用に耐え得る性能を付与したものである。したがって、本発明のバリアフィルム積層体1によれば、優れた水蒸気遮断性を有し、内容物の水蒸気による劣化、変質を防止することができるので、飲食品、医薬品、電子部材、化学品、日用品等の種々の物品の包装材料として好適に使用することができる。また、水分の影響を受けやすい電子ペーパーの電気泳動式インクの保護材としても好適に使用することができる。更に、本発明のバリアフィルム積層体1は、太陽電池用バックシートや、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等のディスプレイ用基板に適用することができる。ディスプレイ素子は、水蒸気に触れると性能が劣化し、発光しない等の支障が生じ得る。本発明のバリアフィルム積層体1によれば、例えば、ディスプレイの2枚のガラス基板の代わりに、又はガラス基板の外側に適用することで、ディスプレイ素子を水蒸気から保護することができる。
【実施例】
【0062】
以下、実施例により、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの記載に何ら制限を受けるものではない。
【0063】
<比較例1>
アクリル系粘着剤(商品名:SKダイン2094,固形分:25%,綜研化学社製)100質量部に対して、架橋剤(商品名:E−5XM,固形分:5%,綜研化学社製)0.27質量部を添加し、十分分散させて粘着剤層形成用塗工液を調製した。次いで、バリアフィルムA(商品名:IB−PET−PXB,構成:基材(ポリエチレンテレフタレート)/蒸着層(酸化アルミニウム)/コート層(ポリビニルアルコール+テトラエトキシシラン),厚さ:12μm,大日本印刷社製)のコート層面に、乾燥後の膜厚が10μmになるように、アプリケータを用いて、粘着剤層形成用塗工液を全面塗工し、粘着剤層を形成した。その後、乾燥させ、乾燥後の粘着剤層の塗工面に、バリアフィルムAのコート層面が接するように、バリアフィルムAを2kgのローラーを用いて貼合し、比較例1のバリアフィルム積層体を得た。
【0064】
<比較例2>
アクリル系粘着剤(商品名:SKダイン2094,固形分:25%,綜研化学社製)100質量部に対して、架橋剤(商品名:E−5XM,固形分:5%,綜研化学社製)0.27質量部を添加し、十分分散させて粘着剤層形成用塗工液を調製した。次いで、バリアフィルムAのコート層面に、乾燥後の膜厚が10μmになるように、アプリケータを用いて、粘着剤層形成用塗工液を全面塗工し、粘着剤層を形成した。その後、乾燥させ、乾燥後の粘着剤層の塗工面に、バリアフィルムB(商品名:テックバリアL,構成:基材(ポリエチレンテレフタレート)/蒸着層(酸化ケイ素),厚さ:12μm,三菱樹脂社製)の蒸着層面が接するように、バリアフィルムBを2kgのローラーを用いて貼合し、比較例2のバリアフィルム積層体を得た。
【0065】
[ラミネート強度の測定]
上記比較例1,2のバリアフィルム積層体を15mm×150mmに切断し、試験片を作成した。この試験片を温度60℃、湿度90%の高温高湿雰囲気下にて500時間放置し、放置後の試験片のラミネート強度を、引張り試験機(製品名:RTF−1150H,A&D社製)を用いて測定(JIS Z 0237準拠,速度:300mm/min,剥離距離:150mm,剥離角:180°)した。また、放置前の試験片、及び温度80℃の高温雰囲気下にて500時間放置した試験片についても、同様にラミネート強度を測定し、比較した。結果を表1に示す。
【0066】
【表1】

【0067】
シランカップリング剤を含まない粘着剤層を介して貼り合わせたバリアフィルム積層体では、高温高湿雰囲気下での放置により、接着性の低下が認められた(比較例1,2)。
【0068】
<実施例1>
アクリル系粘着剤(商品名:SKダイン2094,固形分:25%,綜研化学社製)100質量部に対して、架橋剤(商品名:E−5XM,固形分:5%,綜研化学社製)0.27質量部と、シランカップリング剤(商品名:SE−50,固形分:50%,綜研化学社製)0.16質量部とを添加し、十分分散させて粘着剤層形成用塗工液を調製した。次いで、バリアフィルムAのコート層面に、乾燥後の膜厚が10μmになるように、アプリケータを用いて、粘着剤層形成用塗工液を全面塗工し、粘着剤層を形成した。その後、乾燥させ、乾燥後の粘着剤層の塗工面に、バリアフィルムAのコート層面が接するように、バリアフィルムAを3kgのローラーを用いて貼合し、実施例1のバリアフィルム積層体を得た。
【0069】
<実施例2>
アクリル系粘着剤(商品名:SKダイン2094,固形分:25%,綜研化学社製)100質量部に対して、架橋剤(商品名:E−5XM,固形分:5%,綜研化学社製)0.27質量部と、シランカップリング剤(商品名:SE−50,固形分:50%,綜研化学社製)0.16質量部とを添加し、十分分散させて粘着剤層形成用塗工液を調製した。次いで、バリアフィルムAの基材面に、乾燥後の膜厚が10μmになるように、アプリケータを用いて、粘着剤層形成用塗工液を全面塗工し、粘着剤層を形成した。その後、乾燥させ、乾燥後の粘着剤層の塗工面に、バリアフィルムBの蒸着層面が接するように、バリアフィルムBを3kgのローラーを用いて貼合し、実施例2のバリアフィルム積層体を得た。
【0070】
[ラミネート強度の測定]
上記実施例1,2のバリアフィルム積層体を15mm×150mmに切断し、試験片を作成した。この試験片を温度60℃、湿度90%の高温高湿雰囲気下にて500時間放置し、放置後の試験片のラミネート強度を、引張り試験機(製品名:RTF−1150H,A&D社製)を用いて測定(JIS Z0237準拠,速度:300mm/min,剥離距離:150mm,剥離角:180°)した。また、放置前の試験片、及び温度80℃の高温雰囲気下にて500時間放置した試験片についても、同様にラミネート強度を測定し、比較した。結果を表2に示す。
【0071】
【表2】

【0072】
シランカップリング剤を含むアクリル系粘着剤層を介して貼り合わせたバリアフィルム積層体では、高温高湿雰囲気下に長時間放置しても、接着性の低下がほとんど認められなかった(実施例1,2)。
【0073】
<実施例3>
合成ゴム系粘着剤(商品名:JSR SIS 5200,固形分:100%,JSR社製)7質量部に対して、粘着付与剤(商品名:KE−100,固形分:100%,荒川化学工業社製)3質量部と、シランカップリング剤(商品名:KBM−802,固形分:100%,信越化学社製)0.02質量部とを添加し、十分分散させて粘着剤層形成用塗工液を調製した。次いで、バリアフィルムAの基材面に、乾燥後の膜厚が15μmになるように、アプリケータを用いて、粘着剤層形成用塗工液を全面塗工し、粘着剤層を形成した。その後、乾燥させ、乾燥後の粘着剤層の塗工面に、バリアフィルムAのコート層面が接するように、バリアフィルムAを2kgのローラーを用いて貼合し、実施例3のバリアフィルム積層体を得た。
【0074】
<実施例4>
粘着剤層形成用塗工液を調製する際に、シランカップリング剤(商品名:KBM−802,固形分:100%,信越化学社製)を0.03質量部添加したこと以外は、実施例3と同様の方法にて、実施例4のバリアフィルム積層体を得た。
【0075】
<実施例5>
粘着剤層形成用塗工液を調製する際に、シランカップリング剤(商品名:KBM−802,固形分:100%,信越化学社製)を0.04質量部添加したこと以外は、実施例3と同様の方法にて、実施例5のバリアフィルム積層体を得た。
【0076】
<実施例6>
合成ゴム系粘着剤(商品名:JSR SIS 5200,固形分:100%,JSR社製)7質量部に対して、粘着付与剤(商品名:KE−100,固形分:100%,荒川化学工業社製)3質量部と、シランカップリング剤(商品名:KBM−802,固形分:100%,信越化学社製)0.02質量部とを添加し、十分分散させて粘着剤層形成用塗工液を調製した。次いで、バリアフィルムBの基材面に、乾燥後の膜厚が15μmになるように、アプリケータを用いて、粘着剤層形成用塗工液を全面塗工し、粘着剤層を形成した。その後、乾燥させ、乾燥後の粘着剤層の塗工面に、バリアフィルムBの蒸着層面が接するように、バリアフィルムBを2kgのローラーを用いて貼合し、実施例6のバリアフィルム積層体を得た。
【0077】
<実施例7>
粘着剤層形成用塗工液を調製する際に、シランカップリング剤(商品名:KBM−802,固形分:100%,信越化学社製)を0.03質量部添加したこと以外は、実施例6と同様の方法にて、実施例7のバリアフィルム積層体を得た。
【0078】
<実施例8>
粘着剤層形成用塗工液を調製する際に、シランカップリング剤(商品名:KBM−802,固形分:100%,信越化学社製)を0.04質量部添加したこと以外は、実施例6と同様の方法にて、実施例8のバリアフィルム積層体を得た。
【0079】
<比較例3>
粘着剤層形成用塗工液を調製する際に、シランカップリング剤(商品名:KBM−802,固形分:100%,信越化学社製)を添加しなかったこと以外は、実施例3と同様の方法にて、比較例3のバリアフィルム積層体を得た。
【0080】
<比較例4>
粘着剤層形成用塗工液を調製する際に、シランカップリング剤(商品名:KBM−802,固形分:100%,信越化学社製)を添加しなかったこと以外は、実施例6と同様の方法にて、比較例4のバリアフィルム積層体を得た。
【0081】
[ラミネート強度の測定]
上記実施例3〜8及び比較例3,4のバリアフィルム積層体を15mm×150mmに切断し、試験片を作成した。この試験片を温度60℃、湿度90%の高温高湿雰囲気下にて500時間及び1000時間放置し、各時間放置後の試験片のラミネート強度を、引張り試験機(製品名:RTF−1150H,A&D社製)を用いて測定(JIS Z0237準拠,速度:300mm/min,剥離距離:150mm,剥離角:180°)した。また、放置前の試験片、温度80℃の高温雰囲気下にて500時間放置した試験片、及び温度80℃の高温雰囲気下に1000時間放置した試験片についても、同様にラミネート強度を測定し、比較した。結果を表3に示す。
【0082】
【表3】

【0083】
シランカップリング剤を含まない合成ゴム系粘着剤層を介して貼り合わせたバリアフィルム積層体では、高温高湿雰囲気下での長時間放置により接着性の低下が認められた(比較例3,4)のに対し、シランカップリング剤を含む合成ゴム系粘着剤層を介して貼り合わせたバリアフィルム積層体では、高温高湿雰囲気下に長時間放置しても、接着性の低下がほとんど認められなかった(実施例3〜8)。
【0084】
[水蒸気透過度の測定]
上記実施例1,2,6のバリアフィルム積層体、バリアフィルムA(参考例1)、及びバリアフィルムB(参考例2)を100mm×100mmに切断し、試験片を作成した。これらの試験片の水蒸気透過度を、温度40℃、湿度90%の条件下で、米国のモコン(MOCON)社製の測定機(機種名:パーマトラン(PERMATRAN))を用いて測定(JIS K7129準拠)し、比較した。結果を表4に示す。
【0085】
【表4】

【0086】
バリアフィルムを貼り合わせて積層体とすることで、水蒸気透過度は顕著に低下した(実施例1,2,6,参考例1,2)。本発明のバリアフィルム積層体によれば、高温高湿環境下でも層間剥離が生じ難いので、このように高い水蒸気バリア性を維持することができる。
【符号の説明】
【0087】
1 バリアフィルム積層体
2 基材
3 無機蒸着層
4 粘着剤層
5 コート層
11 バリアフィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バリアフィルム同士が粘着剤層を介して貼り合わされたバリアフィルム積層体であって、
前記バリアフィルムは、少なくとも一方の最外層に、無機酸化物層、又は、親水性基を有する樹脂とアルコキシドの加水分解物及び/又はその縮合物との反応により形成された複合膜からなるコート層を備え、
前記粘着剤層の少なくとも一方の面が、前記無機酸化物層の面又は前記コート層の面と接し、
前記粘着剤層が、シランカップリング剤を含むことを特徴とするバリアフィルム積層体。
【請求項2】
前記粘着剤層の少なくとも一方の面が、前記コート層の面と接する請求項1に記載のバリアフィルム積層体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−93195(P2011−93195A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−248980(P2009−248980)
【出願日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】