説明

バリアフリー用機械式駐車装置とその運転方法

【課題】入庫時には運転者が正確な停車位置に、容易かつ迅速に車両を誘導することができ、利用者の乗車時と降車時には、入出庫部のフロアとパレットとタイヤガイドの上面とが面一であり、パレットとタイヤガイド、及びタイヤガイドとフロアとの間の隙間を小さくするバリアフリー用機械式駐車装置とその運転方法を提供する。
【解決手段】矩形の穴48が開き上面が平坦なフロア40と、穴48に嵌り上面がフロア40と面一かつ平坦であり車両46を載せるパレット42と、パレット42の幅方向端面hとフロア40との間に所望の隙間49をもって設けられパレット42の長手方向に延びるタイヤガイド34と、タイヤガイド34を駆動する駆動装置36とを備え、タイヤガイド34は、車両46の入庫時にフロア40から上方に突出し、利用者の乗車時と降車時に上面がフロア40と面一となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械式駐車装置に係り、さらに詳しくは、バリアフリー用機械式駐車装置とその運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
機械式駐車装置は、地上に建設した建屋内部や、地下に形成した空間に機械装置を配設し、多数の車両を立体的に格納する設備であり、エレベータ方式、くし型エレベータ方式、垂直循環方式、多層循環方式、水平循環方式、平面往復方式等、様々な方式が用いられている。これらいずれの方式の機械式駐車装置においても、車両が機械式駐車装置に乗り込むための入出庫部を備え、車両は入出庫部で自走してパレット等に乗り込み、移送される。
【0003】
図1は、バリアフリーではない標準型の機械式駐車装置のパレットを示す斜視図である。
図2は、特許文献1のバリアフリーの機械式駐車装置を示す実施形態図である。図2(A)は上方から見た特許文献1のバリアフリーの機械式駐車装置であり、図2(B)は図2(A)のA−A矢視図である。
図3は、特許文献2と特許文献3のバリアフリーの機械式駐車装置を示す実施形態図である。図3(A)は特許文献2のバリアフリーの機械式駐車装置を示し、図3(B)は特許文献3のバリアフリーの機械式駐車装置を示す。
図1に示すように、一般に、バリアフリーでない標準型のパレット22には、タイヤで車両16のはみ出しを防止するためのタイヤガイド24が設けられている。すなわち、一方のタイヤガイド24の内側から、他方のタイヤガイド24の内側までが、幅方向における停車位置aとなっている。
【0004】
一方、機械式駐車装置は、マンションやデパート等の不特定多数の利用者が利用する場所に設置されることが多い。そのため、最近のバリアフリーに対する意識の高まりとともに、機械式駐車装置においてもバリアフリーの対応が求められていた。
こうした取り組みの一環として、凹凸のない平坦なパレット2を採用し、入出庫部4の出入り口6からパレット2までのフロア7に段差をなくすことにより、バリアフリーに対応してきた(特許文献1)。
【0005】
また、入出庫部4の車両16の進行方向正面に鏡8を設けることや、入出庫部4の床面に車両16の停車位置aに沿って発光体10を埋め込むことが、特許文献2で提案されている。
さらに、入出庫部4にスピーカー12と車幅感知センサ14を設け、車両16が正規の停止位置からずれた場合に、車両16の位置を修正するようにアナウンスすることが提案されている(特許文献2)。もしくは、入庫完了後にセンサ14ではみ出しを検知すると、機械式駐車装置の入庫作動が停止する装置を設置するものもあった。
【0006】
また、パレット2と通路18の間の隙間を無くすため、車両16を誘導する時と利用者が乗り降りする時に、可動式の通路18をパレット2側にスライドさせるためのスライド装置20を設置する提案もされている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−180005号公報
【特許文献2】特開2008−75289号公報
【特許文献3】特開2002−21362号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した特許文献1の従来の装置では、入出庫部4のフロア7がフラットであるため、車両16の運転者が停止位置を認識しづらいという問題がある。
すなわち、タイヤガイド24が設けられた標準型のパレット22であれば、停車位置aから車両16が外れようとしてもタイヤがタイヤガイド24と接触し、この感覚がハンドルに伝わるので、運転者は容易に方向修正ができる。これに対し、特許文献1のように、平坦なパレット2を用い、入出庫部4のフロア7の高さとパレット2の相互の高さが同じであると、タイヤガイド24が無いので、運転者が正確な位置に車両16を誘導することが困難であった。
また、運転者が入庫作業中に車両16のはみ出しを認識することが困難であるため、運転者は車両16から降りて、車両16が停車位置aからはみ出ていないかを確認し、再度乗車して車両16の位置を修正しなければならなかった。
さらに、車両16のバックミラー等、駐車スペースの上方空間での車両16のはみ出しがあるか否かを、運転者が目視で認識することは困難であった。
【0009】
また、上述した特許文献2においては、車両16が停車位置aからはみ出しているか否かは、運転者の正面の鏡8で、発光体10と車両16を視認して確かめなければならない。したがって、車両16の後方が停車位置aからはみ出しているか否かを確認することが困難であった。
そして、車両16が停車位置aからはみ出していた場合、アナウンス後、もしくは入庫作動の停止後、再度乗車して位置を修正する手間と時間を要してしまっていた。
【0010】
また、バリアフリー対応の駐車装置では、入出庫部4のフロア7とパレット2が面一であることが好ましく、フロア7とパレット2との間の隙間ができる限り小さいことが好ましい。すなわち、パレット2や通路18にある段差や隙間の幅は、0.02m以下であることが好ましいとされている。
しかし、特許文献1〜2の従来の装置では、入出庫部4のフロア7とパレット2の隙間を無くすことはできなかった。
また、特許文献3の従来の装置では、入出庫部4のフロア7とパレット2の間の隙間を無くすことはできるが、段差を無くすことはできなかった。また、可動式の通路18の厚みを0.02m以下にすることは難しく、入出庫部4のフロア7とパレット2との段差を0.02m以下にすることは困難であった。

【0011】
本発明は、上述した問題点を解決するために創案されたものである。すなわち、本発明の目的は、入庫時には運転者が正確な停車位置に、容易かつ迅速に車両を誘導することができ、利用者の乗車時と降車時には入出庫部のフロアとパレットとタイヤガイドの上面とが面一であり、パレットとタイヤガイド、及びタイヤガイドとフロアとの間の隙間を小さくするバリアフリー用機械式駐車装置とその運転方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、矩形の穴が開き上面が平坦なフロアと、
前記穴に嵌り上面が前記フロアと面一かつ平坦であり車両を載せるパレットと、
前記パレットの幅方向端面と前記フロアとの間に所望の隙間をもって設けられ前記パレットの長手方向に延びるタイヤガイドと、
前記タイヤガイドを駆動する駆動装置とを備え、
前記タイヤガイドは、前記車両の入庫時に前記フロアから上方に突出し、利用者の乗車時と降車時に上面が前記フロアと面一となる、ことを特徴とするバリアフリー用機械式駐車装置が提供される。
【0013】
また、前記タイヤガイドは、前記幅方向の断面が扇形であり、
前記長手方向に延び前記駆動装置により回転される回転軸を備え、
前記入庫時には前記回転軸を中心に回転することにより前記扇形を形成する曲面をパレット側に向けて前記フロアから上方に突出され、
前記乗車時と前記降車時には前記回転軸を中心に回転することにより前記扇形を形成する一方の平面が上方に向き前記フロアと面一になる。
【0014】
また、前記タイヤガイドは、前記パレットの移動時に前記平面が前記パレット側を向くように前記回転軸を中心に回転して前記パレットとの前記隙間を大きくする。
【0015】
また、本発明の別の実施形態では、前記タイヤガイドの前記幅方向の断面は、弦で切断された円形であり、
前記円形の中心に前記長手方向に延び前記駆動装置により回転される回転軸を備え、
前記入庫時には前記回転軸を中心に回転して前記タイヤガイドの円弧面をパレット側に向けることにより前記フロアから上方に突出され、
前記乗車時と前記降車時には前記回転軸を中心に回転することにより前記弦を含む平面を上方に向けて前記フロアと面一となる。
【0016】
また、前記タイヤガイドは、前記パレットの移動時に前記平面が前記パレット側に向くように前記回転軸を中心に回転する。
【0017】
さらに、本発明の別の実施形態では、前記タイヤガイドは、前記幅方向の断面が多角形で水平な上面を有し、
前記駆動装置は、前記入庫時に前記フロアの上面に対して垂直方向もしくは前記パレットの幅方向の中央の上方に向かって斜め方向に前記タイヤガイドを突出させ、
前記乗車時と前記降車時には前記タイヤガイドを牽引して前記タイヤガイドの前記上面を前記フロアと面一にする。
【0018】
また本発明によれば、矩形の穴が開き上面が平坦なフロアと、
前記穴に嵌り上面が前記フロアと面一かつ平坦であり車両を載せるパレットと、
前記パレットの幅方向端面と前記フロアとの間に所望の隙間をもって設けられ前記パレットの長手方向に延びるタイヤガイドと、
前記タイヤガイドを駆動する駆動装置とを備えるバリアフリー用機械式駐車装置において、
車両の入庫時には前記フロアから前記タイヤガイドを上方に突出させ、
利用者の乗車時と降車時には前記パレットと前記タイヤガイドの上面とが前記フロアと面一となる、ことを特徴とするバリアフリー用機械式駐車装置の運転方法が提供される。
【0019】
また、前記パレットの移動時に、前記タイヤガイドの前記上面に近接して備えられ前記長手方向に延びる回転軸を前記上面が前記パレット側を向くように回転し、
前記タイヤガイドと前記パレットとの間の前記隙間を前記入庫時、前記乗車時、または前記降車時よりも大きくする。
【発明の効果】
【0020】
上記本発明の装置と方法によれば、タイヤガイドが、車両の入庫時にフロアから上方に突出し、利用者の乗車時と降車時にタイヤガイドの上面がフロアと面一となるので、車両の入庫時には車両を停車位置に収まるようにガイドし、利用者の乗車時と降車時には、パレット、フロア、タイヤガイドのバリアフリーを実現することができる。すなわち、本発明の装置と方法により、入庫時には、停車位置から車両が外れようとしても、タイヤがタイヤガイドと接触し、この感覚がハンドルに伝わるので、運転者は容易に方向修正ができる。そして、利用者の乗車時と降車時には、タイヤガイドの上面がフロアと面一となり、バリアフリーを実現できる。したがって、運転者は短時間で、手間をかけずに、正確な停車位置に車両を誘導することができ、なおかつバリアフリーのフロアとパレットにより安全に乗車及び降車することができる。
【0021】
また、タイヤガイドの幅方向の断面の形状を弦で切断された円形や、扇形等にし、タイヤガイドを曲面と平面を併せ持つ形状にすることにより、単純な回転駆動だけでタイヤガイドを自在に出し入れでき、なおかつパレットとタイヤガイドとの隙間を小さくすることができる。ここで、幅方向とは、パレットの幅方向を指す。以下、「パレットの幅方向」を単に「幅方向」とする。また、以下、「幅方向の断面」を単に「幅方向断面」とする。
【0022】
さらに、幅方向断面の形状が扇形のタイヤガイドで、長手方向に延びる回転軸の位置を、一方の平面(好ましくは2つの平面が形成する角)に近づけることにより、パレットの移動時にタイヤガイドを回転させるだけで、タイヤガイドとパレットとの距離を大きくとることができる。また、同様に、弦で切断された円形の幅方向断面をもつタイヤガイドにおいても、弦を含む平面に近接して(好ましくは円形の中心に)回転軸を設けることにより、パレットの移動時にタイヤガイドを回転させるだけで、タイヤガイドとパレットとの距離を大きくとることができる。
そのため、パレットを上方向だけでなく、下方向にも移動させることができる。すなわち、パレットの移動時には、パレットとタイヤガイドとの距離が入庫時より大きくなる。そのため、たとえ入庫時に車両がタイヤガイドぎりぎりに駐車し、駐車スペースの上方空間での車両(バックミラー等)がパレットからはみ出していても、パレットの移動時には、タイヤガイドやフロアに車両を接触させることなく、パレットを下方に移動させることができる。
【0023】
さらに、タイヤガイドの幅方向断面の形状が多角形(すなわち、矩形、台形、三角形、四角形、五角形、及びそれ以上に角を持つ多角形)で、タイヤガイドが水平な上面を有するので、フロアに対して垂直方向にそのタイヤガイドを上下させる単純な上下運動だけで、入庫時にはタイヤガイドを上方に突出させ、乗車時と降車時にはバリアフリーを実現することができる。
【0024】
また、水平な上面と多角形の幅方向断面とを有するタイヤガイドを、入庫時にパレットの幅方向の中央の上方に向かってフロアの上面に対して斜め方向に突出させ、乗車時と降車時にはタイヤガイドを牽引して、タイヤガイドの水平な上面をフロアと面一にすることにより、入庫時に、タイヤガイドのパレット側の端面が、パレットの幅方向端面より中央側に突出することとなる。そのため、タイヤガイドがパレットの幅方向端面よりパレット上に突出した距離の分だけ、車両はパレットの中央側に駐車する。これにより、上述した水平な上面をフロアと面一にするよう、タイヤガイドを駆動装置で牽引するだけで、駐車スペースの上方空間での車両(バックミラー等)がパレットからはみ出すことを防ぎ、パレットを下方にも移動することができる。すなわち、1回のタイヤガイドの駆動で、パレットとタイヤガイドとの間の隙間を小さくしつつ、同時にタイヤガイドから車両までの距離を広く確保することができる。

【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】バリアフリーではない標準型の機械式駐車装置のパレットを示す斜視図である。
【図2】特許文献1のバリアフリーの機械式駐車装置を示す実施形態図である。
【図3】特許文献2と特許文献3のバリアフリーの機械式駐車装置を示す実施形態図である。
【図4】本発明による第1実施形態のバリアフリー用機械式駐車装置の全体構成図である。
【図5】図4(A)のC−C矢視図である。
【図6】本発明の第1実施形態のタイヤガイドと駆動装置の拡大図である。
【図7】上方から見た本発明による第2実施形態のバリアフリー用機械式駐車装置の実施形態図である。
【図8】図7のD−D矢視図である。
【図9】本発明の第2実施形態のタイヤガイドと駆動装置の拡大図である。
【図10】本発明の第3実施形態のタイヤガイドと駆動装置の拡大図である。
【図11】本発明の第4実施形態のバリアフリー用機械式駐車装置の作動説明図である。
【図12】本発明の第5実施形態のバリアフリー用機械式駐車装置の作動説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0027】
図4は、本発明による第1実施形態のバリアフリー用機械式駐車装置32の全体構成図である。図4(A)は上方から見た本発明による第1実施形態のバリアフリー用機械式駐車装置32の全体構成図であり、図4(B)は図4(A)のB−B矢視図である。
図5は、図4(A)のC−C矢視図である。図5(A)は入庫時を示し、図5(B)は利用者の乗車時と降車時を示す。
図6は、本発明の第1実施形態のタイヤガイド34と駆動装置36の拡大図である。図6(A)は入庫時を示し、図6(B)は利用者の乗車時と降車時を示す。
これらの図において、本発明のバリアフリー用機械式駐車装置32は、入出庫部38に、平坦なフロア40、平坦なパレット42、停車位置確認センサ44、タイヤガイド34、及びタイヤガイド34を駆動する駆動装置36を備える。以下、バリアフリー用機械式駐車装置32を単に「駐車装置32」と呼ぶ。また、以下、入庫と出庫を総称して、入出庫と呼ぶ。
【0028】
駐車場の利用者は、自ら車両46を運転し、入出庫部38の停車位置a内に車両46を駐車する。それにより、車両46を機械式駐車装置32内に格納することができる。
入出庫部38のフロア40は、上面に段差が無く、平坦であり、矩形の穴48が開いている。矩形の穴48の周囲は、車椅子が行動できるほどの広いスペースが設けられていることが好ましい。
【0029】
穴48には、平坦な板状のパレット42が嵌められている。停車位置aはパレット42の辺縁の内側にあり、利用者はパレット42内の停車位置aに車両46を駐車する。パレット42の上面は、平坦かつフロア40の上面と面一に設置されている。また、パレット42の長手方向端面とフロア40との間にある隙間49の幅は、小さく設置されている。隙間49の幅は、0.02m以下であることが好ましい。以下、「パレット42の長手方向」を単に「長手方向」とする。
なお、フロア40の一部にゆるい傾斜のスロープがある場合は、穴48の周囲のフロア40の高さとパレット42の上面の高さが等しくなっている。
また、パレット42は図示しないワイヤ等により吊下げられ、水平を維持しながら上方に鉛直に昇降するようになっている。
【0030】
停車位置の車両46の進行方向における前後(以下、前後、または前方もしくは後方とする。)には、車両46の前後の位置を検知するための停車位置確認センサ44が取り付けられている。
停車位置確認センサ44は、停車位置の前後において、パレット42の幅方向端面h(以下、「パレット42の幅方向」を単に「幅方向」とする。)に垂直に光を射出する発光部50と、その光を受光し、車両46が停車位置をはみ出して、光を遮ることにより、車両46の前後方向における停車位置のはみ出しを感知する受光部52とを有する。
なお、停車位置確認センサ44が、車両46の前後方向における停車位置のはみ出しを感知したときは、運転者に「前進してください。」もしくは、「後退してください。」と、アナウンスや標示で指示をすることが好ましい。
【0031】
タイヤガイド34は、パレット42の幅方向端面hと平行に長手方向に延び、パレット42の幅方向端面hとフロア40との間に、所望の隙間49をもって設けられている。なお、所望の隙間49は、幅が小さいことが好ましく、さらには、隙間49の幅が0.02m以下であることが好ましい。車両46はタイヤがタイヤガイド34にぶつかることで、車両46が停車位置aからはみ出すことを防止する。すなわち、停車位置aから車両46が外れようとしても、タイヤがタイヤガイド34と接触し、この感覚がハンドルに伝わるので、運転者は容易に方向修正ができる。
また、本発明の第1実施形態のタイヤガイド34は、幅方向の断面が扇形であり、長手方向に延びる回転軸54を備え、駆動装置36により回転軸54が回転される。タイヤガイド34は、長手方向において、いくつかに分割されていても良い。以下、幅方向の断面を幅方向断面と呼ぶ。また、以下、扇形の曲線を含むタイヤガイド34の曲面を曲面tとする。そして、曲面tを上方に向けた時に、フロア40側にある平面を平面bとし、パレット側にある平面を平面cとする。
【0032】
回転軸54は、平面bに近接して備えられている。願わくは、扇形を形成する2つのの平面b,cが形成する角d(すなわち、扇形を形成する曲面tの対称に存在する角d)に近接して設置されていることが好ましい。
すなわち、平面bが上方に向き水平となった時に、フロア40の上面と平面bとが面一であり、パレット42とタイヤガイド34との距離と、タイヤガイド34とフロア40との距離が0.02m以下であり、かつタイヤガイド34が回転する際には、角dがフロア40に接触しない位置に、回転軸54が備えられている。
【0033】
駆動装置36は、フロア40の上面より下方に設置されており、回転軸54を回転させる。図6に示すように、第1実施形態に使用する駆動装置36は、リンク機構56を備えたアクチュエータ58を使用している。すなわち、扇形の曲面tと平面cとにより形成される角を角eとすると、リンク機構56が、アクチュエータ58とタイヤガイド34の角eとを接続し、アクチュエータ58が伸縮することによりタイヤガイド34が回転軸54を中心に回転するようになっている。なお、アクチュエータ58とリンク機構56との接続部(以下、接続部f)を、アクチュエータ58の動きと平行にスライドさせるため、アクチュエータ58と平行に延びるリニアガイド60を設けることが好ましい。
駆動装置36は、図9に示したような、ラック・アンド・ピニオン62であっても良い。また、回転軸54を回転できるものであれば、どのようなものでも良い。
なお、タイヤガイド34と駆動装置36が接触しないために、駆動装置36が存在する部位で、タイヤガイド34が長手方向に分割されていることが好ましい。
【0034】
次に、入庫時と出庫時について、本発明の第1実施形態の駐車装置32の運転方法を説明する。
(入庫時)
(a)利用者が入庫の手続をすると、図6(A)に示すように、駆動装置36が作動して、回転軸54を中心にタイヤガイド34を回転させる。すなわち、アクチュエータ58を伸長し、接続部fを中心にリンク機構56を回転させる。それにより、タイヤガイド34がリンク機構56に押され、扇形を形成する曲面tをパレット側に向け、フロア40から上方に突出する。タイヤガイド34が上方に突出し終わると、入出庫部38の扉が開放する。
(b)この状態で、運転者は、入出庫部38に車両46を乗り入れ、タイヤガイド34を利用して、パレット42内の停車位置aに車両46を誘導する。また、車両46が停車位置の前後にはみ出したときには、停車位置内に誘導するためのアナウンス、もしくは標示がされ、運転者を正しい停車位置に誘導する。
(c)後方の停車位置確認センサ44が車両46を検出した後に再び車両46を検出しなくなり、かつ、前方の停車位置確認センサ44が車両46を検出しないときに、駐車装置32は停車位置内に車両46が駐車されたと判断する。そして、「停止してください。」とアナウンス、もしくは標示をする。
(d)次に、図6(B)に示すように、駆動装置36が回転軸54を中心に、タイヤガイド34を回転させる。これにより、平面bが上方を向き、フロア40及びパレット42と面一になる。そして、利用者に「サイドブレーキを引いてください。」とアナウンス、もしくは標示をする。
(e)利用者が、入出庫部38から退出した後、入出庫部38の扉が閉鎖し、パレット42が図示しないワイヤ等により吊下げられて鉛直に上昇し、パレット42が所定の位置に格納される。
【0035】
(出庫時)
(f)利用者が出庫の手続きをすると、駐車装置32が利用者の車両46を探し出し、そのパレット42をフロア40の穴48に降下させる。そして、図6(B)に示すように、駆動装置36がタイヤガイド34を回転させる。これにより、平面bが上方を向き、フロア40及びパレット42と面一になる。
(g)フロア40、パレット42、タイヤガイド34が面一になった後、駐車装置32は入出庫部38の扉を開放し、利用者が車両46に乗車するように誘導する。
(h)車両46が出庫する時には、上記(a)のように、タイヤガイド34を突出させても良い。もしくは、上記(f)のまま、タイヤガイド34がフロア40と面一であっても良い。
(i)車両46が入出庫部38から退出した後に、入出庫部38の扉を閉鎖し、出庫手続を完了する。
【0036】
図7は、上方から見た本発明による第2実施形態の駐車装置32の実施形態図である。図7(A)は入庫時を示し、図7(B)は利用者の乗車時と降車時を示す。そして、図7(C)はパレット42の移動時を示す。
図8は、図7のD−D矢視図である。図8(A)は入庫時を示し、図8(B)は利用者の乗車時と降車時を示す。そして、図8(C)はパレット42の移動時を示す。
図9は、本発明の第2実施形態のタイヤガイド34と駆動装置36の拡大図である。図9(A)は入庫時を示し、図9(B)は利用者の乗車時と降車時を示す。そして、図9(C)はパレット42の移動時を示す。
第2実施形態のタイヤガイド34の幅方向断面も、第1実施形態と同様に、扇形となっている。また、回転軸54は、平面bに近接して設置されている。さらには、回転軸54の位置は、扇形の角dに近接していることが好ましい。すなわち、平面bが水平の時にはフロア40の上面と平面bとが面一となり、パレット42とタイヤガイド34との距離と、タイヤガイド34とフロア40との距離とが小さく(好ましくは0.02m以下)、平面bが垂直に回転する際には角dがフロア40に接触せず、さらに平面bがパレット側を向く時には、入庫時や乗車時、降車時よりもパレット42とタイヤガイド34との距離が大きくなる位置に、回転軸54が備えられている。もしくは、幅が0.02m以内となるスリットを平面bが形成する面に形成し、タイヤガイド34が上方に突出したときに、フロア40のパレット側端面がスリットに差し込まれても良い。
【0037】
また、回転軸54を回転させる駆動装置36は、ラック・アンド・ピニオン62を備えたアクチュエータ58であることが好ましい。すなわち、第2実施形態の駆動装置36は、ピニオン62bを取り付けられた回転軸54と、アクチュエータ58によって幅方向に伸縮するラック62aから構成される。
【0038】
また、第2実施形態のパレット42は、上方にも下方にも移動させることができる。すなわち、パレット42の移動時(すなわち、平面bがパレット側を向く時)のタイヤガイド34とパレット42との距離は、タイヤガイド34が上方に突出している時に比べて大きくなる。そのため、たとえ車両46がタイヤガイド34ぎりぎりに駐車し、駐車スペースの上方空間での車両46(バックミラー等)がパレット42からはみ出していても、タイヤガイド34やフロア40に車両46を接触させることなく、パレット42を下方に移動させることができる。
なお、パレット42は、図示しないワイヤ等により吊下げられて、水平を維持しながら上方もしくは下方に鉛直に昇降することが好ましい。もしくは、パレット42の下面を上下駆動する図示しない昇降搬器に支えられ、水平を維持しながら上方もしくは下方に鉛直に昇降しても良い。
【0039】
なお、パレット42の移動時に、タイヤガイド34の角eがフロア40の下面に接触しないように、フロア40の下面に窪み64が設けられていることが好ましい。または、タイヤガイド34の平面cの一部に窪み64がもうけられていても良い。もしくは、フロア40に接触するまで、タイヤガイド34が回転し、平面bが垂直にならなくても良い。
【0040】
その他の構成は、第1実施形態と同様である。
【0041】
次に、入庫時と出庫時について、本発明の第2実施形態の駐車装置32の運転方法を説明する。
(入庫時)
(a)図9(A)に示すように、利用者が入庫の手続をすると、駆動装置36が作動し、回転軸54を中心にタイヤガイド34を回転させる。すなわち、ラック62aがアクチュエータ58によって伸長し、回転軸54と接続したピニオン62bが回転する。そして、扇形を形成する曲面tをパレット側に向け、タイヤガイド34がフロア40から上方に突出する。タイヤガイド34が上方に突出し終わると、入出庫部38の扉が開放する。
(b)と(c)は第1実施形態と同様である。
(d)次に、図9(B)に示すように、ラック62aがフロア40側にスライドすることにより、駆動装置36がタイヤガイド34を回転する。これにより、平面bが上方を向き、フロア40及びパレット42と面一になる。そして、利用者に「サイドブレーキを引いてください。」とアナウンス、もしくは標示する。
(e)利用者が、入出庫部38から退出した後、入出庫部38の扉が閉鎖する。そして、図9(C)に示すように、ラック62aがさらにフロア40側にスライドすることにより、駆動装置36が回転軸54を回転させる。これにより、タイヤガイド34がさらに回転し、平面bがパレット側を向き、タイヤガイド34とパレット42との距離(すなわち、隙間49)が入庫時、乗車時、または降車時よりも大きくなる。その後、パレット42が図示しないワイヤ等により吊下げられ、もしくは昇降搬器によって支持されて、鉛直に上昇もしくは下降し、パレット42が所定の位置に格納される。
【0042】
(出庫時)
(f)利用者が出庫の手続きをすると、駐車装置32が利用者の車両46を探し出すと共に、図9(C)に示すように、タイヤガイド34は平面bがパレット側を向くように回転する。そして、そのパレット42をフロア40の穴48に降下または上昇させ、パレット42を穴48に嵌める。
(f´)その後、図9(B)に示すように、さらにタイヤガイド34を回転させ、平面bを上方に向ける。これにより、タイヤガイド34がフロア40及びパレット42と面一になる。
(g)〜(i)は第1実施形態と同様である。
【0043】
図10は、本発明の第3実施形態のタイヤガイド34と駆動装置36の拡大図である。図10(A)は入庫時を示し、図10(B)は利用者の乗車時と降車時を示す。そして、図10(C)はパレット42の移動時を示す。
第3実施形態の駐車装置32のタイヤガイド34の幅方向断面は、弦gで切断された円形である。すなわち、円形の円弧sのうち、長い円弧を優弧とし、短い円弧を劣弧とすると、タイヤガイド34の幅方向断面の形状は、弦gと優弧とからなる弓形が好ましい。しかし、タイヤガイド34の幅方向断面は、劣弧と、2本の弦を有していても良い。また、劣弧は1本でも2本でも良い。また、幅方向断面は、円形の円周上に両端を有する曲線vと弦gと劣弧とからなる形状でもよい。
そして、回転軸54は、長手方向に延び、駆動装置36が回転させる。また、回転軸54の位置は、弦gを含む平面に近接している。さらに、円形の中心に回転軸54があることが好ましい。なお、弦gを含む平面が上方を向く時は、パレット42とタイヤガイド34との距離(すなわち、隙間49)、及びフロア40とタイヤガイド34との距離が0.02m以下であり、かつ弦gを含む平面がパレット42及びフロア40と面一であることが好ましい。
【0044】
また、第3実施形態の駆動装置36はラック・アンド・ピニオン62が好ましい。
さらに、タイヤガイド34が敷設されている部位のタイヤガイド34の下の基礎は、タイヤガイド34が接触しないよう、窪み64が設けられていることが好ましい。
【0045】
その他の構成は、第1実施形態と同様である。
【0046】
次に、入庫時と出庫時について、本発明の第3実施形態の駐車装置32の運転方法を説明する。
(入庫時)
(a)図10(A)に示すように、利用者が入庫の手続をすると、駆動装置36が作動し、回転軸54を中心にタイヤガイド34を回転させる。そして、円弧sをパレット側に向け、フロア40の上面より上方にタイヤガイド34を突出させる。なお、円弧sがパレット側を向いて、フロア40から上方に突出していれば、弦で切断された円形の角度はどのようなものでも良い。すなわち、図10(A)において、回転軸54とパレット42の上面を形成する角とを結ぶ直線uと、回転軸54の鉛直方向上方に延びる垂線qとの間の範囲iを、円弧sが占めていれば、タイヤガイド34の傾きはどのような角度でも良い。タイヤガイド34が上方に突出し終わると、入出庫部38の扉が開放する。
(b)と(c)は第1実施形態と同様である。
(d)次に、図10(B)に示すように、駆動装置36が回転軸54を回転させ、弦gを含む平面が上方を向き、フロア40及びパレット42と面一になる。その他は第1実施形態と同様である。
(e)利用者が、入出庫部38から退出した後、入出庫部38の扉が閉鎖する。そして、図10(C)に示すように、駆動装置36が回転軸54を回転し、弦gを含む平面がパレット側に向けられる。これにより、タイヤガイド34とパレット42との距離(すなわち、隙間49)が入庫時、乗車時、または降車時よりも大きくなる。その後、パレット42が図示しないワイヤ等により吊下げられ、もしくは昇降搬器によって支持されて、鉛直に上昇もしくは下降し、パレット42が所定の位置に格納される。
【0047】
(出庫時)
(f)利用者が出庫の手続きをすると、駐車装置32が利用者の車両46を探し出すと共に、図10(C)に示すように、タイヤガイド34は弦gを含む平面がパレット側を向くように回転する。そして、そのパレット42をフロア40の穴48に下降または上昇させ、パレット42を穴48に嵌める。
(f´)その後、図10(B)に示すように、さらにタイヤガイド34を回転させ、弦gを含む平面を上方に向ける。これにより、タイヤガイド34がフロア40及びパレット42と面一になる。
(g)〜(i)は第1実施形態と同様である。
【0048】
図11は、本発明の第4実施形態の駐車装置32の作動説明図である。図11(A)は入庫時を示し、図11(B)は利用者の乗車時と降車時を示す。
第4実施形態の駐車装置32のタイヤガイド34は、水平な上面jを有する。そして、タイヤガイド34の幅方向断面は、上面jに含まれる直線を一辺とする多角形である。すなわち、タイヤガイド34の幅方向断面は、矩形、台形、三角形、四角形、五角形、及びそれ以上に角を持つ多角形である。なお、タイヤガイド34の下方の幅方向の幅が、上方の幅と同じであるか、小さいことが好ましい。しかし、上面jがフロア40と面一になった時に、パレット42とフロア40との距離(すなわち、隙間49)、及びフロア40とタイヤガイド34との距離が0.02m以下であれば、タイヤガイド34の下方の幅方向の幅が、上方の幅より大きくても構わない。
また、駆動装置36は、垂直方向にタイヤガイド34を昇降させるアクチュエータ58であることが好ましい。
【0049】
その他の構成は、第1実施形態と同様である。
【0050】
次に、入庫時と出庫時について、本発明の第4実施形態の駐車装置32の運転方法を説明する。
(入庫時)
(a)図11(A)に示すように、利用者が入庫の手続をすると、駆動装置36のアクチュエータ58が伸長し、フロア40からタイヤガイド34が突出する。タイヤガイド34が上方に突出し終わると、入出庫部38の扉が開放する。
(b)と(c)は第1実施形態と同様である。
(d)次に、図11(B)に示すように、駆動装置36のアクチュエータ58がタイヤガイド34を牽引し、上面jをフロア40及びパレット42と面一にする。その他は第1実施形態と同様である。
(e)は第1実施形態と同様である。
【0051】
(出庫時)
(f)利用者が出庫の手続きをすると、駐車装置32が利用者の車両46を探し出すと共に、図11(B)に示すように、上面jがフロア40と面一になる。
(g)〜(i)は第1実施形態と同様である。
【0052】
図12は、本発明の第5実施形態の駐車装置32の作動説明図である。図12(A)は入庫時を示し、図12(B)は利用者の乗車時と降車時、及びパレット42の移動時を示す。
第5実施形態の駐車装置32のタイヤガイド34は、水平な上面jを有する。そして、タイヤガイド34の幅方向断面は、上面jに含まれる直線を一辺とする多角形である。すなわち、タイヤガイド34の幅方向断面は、矩形、台形、三角形、四角形、五角形、及びそれ以上に角を持つ多角形である。
【0053】
また、駆動装置36は、パレット42の幅方向の中央の上方に向かい、フロア40の上面に対して斜め方向にタイヤガイド34を出し入れするよう、斜めに設置されている。なお、駆動装置36はアクチュエータ58が好ましいが、ラック・アンド・ピニオン62でも良い。
【0054】
その他の構成は、第1実施形態と同様である。
【0055】
次に、入庫時と出庫時について、本発明の第5実施形態の駐車装置32の運転方法を説明する。
(入庫時)
(a)入庫時では、図12(A)に示すように、利用者が入庫の手続をすると、駆動装置36のアクチュエータ58が伸長し、タイヤガイド34をフロア40から斜め上方向に突出させる。この時、タイヤガイド34のパレット側端面mは、パレット42の幅方向端面hより内側に入る。これにより、端面mから端面hまでの距離pの分だけ、停車位置aがパレット42の幅方向端面hより内側となる。タイヤガイド34が突出し終わると、入出庫部38の扉が開放する。
(b)と(c)は第1実施形態と同様である。
(d)次に、乗車時と降車時では、図12(B)に示すように、駆動装置36がタイヤガイド34を牽引し、上面jをフロア40及びパレット42と面一にする。この時、パレット42とタイヤガイド34との距離(すなわち、隙間49)、及びフロア40とタイヤガイド34との距離は0.02m以下であり、かつ上面jがパレット42及びフロア40と面一である。なおかつ、車両46は少なくとも、入庫時(a)のタイヤガイド34のパレット側端面mから乗車時及び降車時(d)のタイヤガイド34のパレット側端面mまでの距離rの分、乗車時及び降車時(d)のタイヤガイド34のパレット側端面mより内側に駐車されている。したがって、水平な上面jをフロア40と面一し、同時に駐車スペースの上方空間での車両46(バックミラー等)がパレット42からはみ出すことを防ぐことができる。その他は第1実施形態と同様である。
(e)は第2実施形態と同様である。
【0056】
(出庫時)
(f)利用者が出庫の手続きをすると、駐車装置32が利用者の車両46を探し出すと共に、図12(B)に示すように、上面jがフロア40と面一になる。
(g)〜(i)は第1実施形態と同様である。
【0057】
上述した本発明の装置と方法によれば、タイヤガイド34が、車両46の入庫時にフロア40から上方に突出し、利用者の乗車時と降車時にタイヤガイド34の上面b,g,jがフロア40と面一となるので、車両46の入庫時には車両46を停車位置aに収まるようにガイドし、利用者の乗車時と降車時には、パレット42とフロア40のバリアフリーを実現することができる。すなわち、本発明の装置と方法により、入庫時には、停車位置aから車両46が外れようとしてもタイヤがタイヤガイド34と接触し、この感覚がハンドルに伝わるので、運転者は容易に方向修正ができる。そして、利用者の乗車時と降車時には、タイヤガイド34の上面b,g,jがフロア40と面一となり、バリアフリーを実現できる。したがって、運転者は短時間で、手間をかけずに、正確な停車位置aに車両46を誘導することができ、なおかつバリアフリーのフロア40とパレット42により安全に乗車及び降車することができる。
【0058】
また、タイヤガイド34の幅方向断面を弦gで切断された円形や、扇形等とし、タイヤガイド34を曲面と平面を併せ持つ形状にすることにより、単純な回転駆動だけでタイヤガイド34を自在に出し入れでき、なおかつパレット42とタイヤガイド34との隙間49を小さく(好ましくは0.02m以下に)することができる。
【0059】
さらに、幅方向断面の形状が扇形のタイヤガイド34で、長手方向に延びる回転軸54の位置を、平面b(好ましくは2つの平面b,cが形成する角d)に近づけることにより、パレット42の移動時にタイヤガイド34を回転させるだけで、タイヤガイド34がフロア40と面一である時よりも、タイヤガイド34とパレット42との距離を大きくとることができる。また、同様に、幅方向断面の形状が弦gで切断された円形であるときにも、回転軸54を弦gを含む平面に近接して(好ましくは円形の中心に)設けることにより、パレット42の移動時にタイヤガイド34を回転させるだけで、タイヤガイド34がフロア40と面一である時よりも、タイヤガイド34とパレット42との距離を大きくとることができる。
そのため、パレット42を上方向だけでなく、下方向にも移動させることができる。すなわち、パレット42の移動時にパレット42とタイヤガイド34との距離が入庫時より大きくなるので、たとえ入庫時に車両46がタイヤガイド34ぎりぎりに駐車し、駐車スペースの上方空間での車両46(バックミラー等)がパレット42からはみ出していても、パレット42の移動時には、タイヤガイド34やフロア40に車両46を接触させることなく、パレット42を下方に移動させることができる。
【0060】
さらに、タイヤガイド34が、水平な上面jを有し、タイヤガイド34の幅方向断面が、上面jに含まれる直線を一辺とする多角形(すなわち、矩形、台形、三角形、四角形、五角形、及びそれ以上に角を持つ多角形)であるので、フロア40に対して垂直方向にそのタイヤガイド34を上下させる単純な上下運動だけで、入庫時にはタイヤガイド34を突出させ、乗車時と降車時にはバリアフリーを実現することができる。
【0061】
また、上記多角形を、入庫時にパレット42の幅方向の中央の上方に向かってフロア40の上面に対して斜め方向に突出させ、乗車時と降車時にはタイヤガイド34を牽引して、タイヤガイド34の水平な上面jをフロア40と面一にすることにより、入庫時に、タイヤガイド34のパレット側の端面mが、パレット42の幅方向断面端面hより中央側に突出することとなる。そのため、タイヤガイド34がパレット42上に突出した距離の分だけ、車両46はパレット42の中央側に駐車する。これにより、水平な上面jをフロア40と面一にするよう、タイヤガイド34を駆動装置36で牽引するだけで、駐車スペースの上方空間での車両46(バックミラー等)がパレット42からはみ出すことを防ぎ、パレット42を下方にも移動することができる。すなわち、1回のタイヤガイド34の駆動で、パレット42とタイヤガイド34との隙間49を0.02m以下に確保しつつ、同時にタイヤガイド34から車両46までの距離を広く確保することができる。
【0062】
なお本発明は上述した実施の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0063】
2 平坦なパレット、4,38 入出庫部、6 出入り口、7,40 フロア、
8 鏡、10 発光体、12 スピーカー、14 車幅感知センサ、
16,46 車両、18 通路、20 スライド装置、
22 バリアフリーでない標準型のパレット、24,34 タイヤガイド、
32 バリアフリー用機械式駐車装置、36 駆動装置、42 パレット、
44 停車位置確認センサ、48 穴、49 隙間、50 発光部、52 受光部、
54 回転軸、56 リンク機構、58 アクチュエータ、60 リニアガイド、
62 ラック・アンド・ピニオン、62a ラック、62b ピニオン、64 窪み
a 停車位置、
b 第1実施形態と第2実施形態の扇形の幅方向断面におけるタイヤガイドの曲面tを上方に向けたときのフロア側の平面、
c 第1実施形態と第2実施形態の扇形の幅方向断面におけるタイヤガイドの曲面tを上方に向けたときのパレット側の平面、
d 扇形を形成する二本の平面b,cが形成する角、
e 扇形の曲面tと平面cとにより形成される角、
t 第1実施形態と第2実施形態の幅方向断面における扇形の曲面、f 接続部、
g 第3実施形態の幅方向断面の弦、
s 第3実施形態の幅方向断面の円弧、
u 回転軸とパレットの上面の角とを結ぶ直線
q 回転軸から鉛直方向上方に延びる垂線
h パレットの幅方向端面、i uからqまでの範囲、
j 第4実施形態と第5実施形態のタイヤガイドの水平な上面、
m タイヤガイドのパレット側端面、
p タイヤガイドのパレット側端面mからパレットの幅方向端面hまでの距離、
r 入庫時のタイヤガイドのパレット側端面mから乗車時と降車時のタイヤガイドのパレット側端面mまでの距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形の穴が開き上面が平坦なフロアと、
前記穴に嵌り上面が前記フロアと面一かつ平坦であり車両を載せるパレットと、
前記パレットの幅方向端面と前記フロアとの間に所望の隙間をもって設けられ前記パレットの長手方向に延びるタイヤガイドと、
前記タイヤガイドを駆動する駆動装置とを備え、
前記タイヤガイドは、前記車両の入庫時に前記フロアから上方に突出し、利用者の乗車時と降車時に上面が前記フロアと面一となる、ことを特徴とするバリアフリー用機械式駐車装置。
【請求項2】
前記タイヤガイドは、前記幅方向の断面が扇形であり、
前記長手方向に延び前記駆動装置により回転される回転軸を備え、
前記入庫時には前記回転軸を中心に回転することにより前記扇形を形成する曲面をパレット側に向けて前記フロアから上方に突出され、
前記乗車時と前記降車時には前記回転軸を中心に回転することにより前記扇形を形成する一方の平面が上方に向き前記フロアと面一になる、ことを特徴とする請求項1に記載のバリアフリー用機械式駐車装置。
【請求項3】
前記タイヤガイドは、前記パレットの移動時に前記平面が前記パレット側を向くように前記回転軸を中心に回転して前記パレットとの前記隙間を大きくする、ことを特徴とする請求項2に記載のバリアフリー用機械式駐車装置。
【請求項4】
前記タイヤガイドの前記幅方向の断面は、弦で切断された円形であり、
前記円形の中心に前記長手方向に延び前記駆動装置により回転される回転軸を備え、
前記入庫時には前記回転軸を中心に回転して前記タイヤガイドの円弧面をパレット側に向けることにより前記フロアから上方に突出され、
前記乗車時と前記降車時には前記回転軸を中心に回転することにより前記弦を含む平面を上方に向けて前記フロアと面一となる、ことを特徴とする請求項1に記載のバリアフリー用機械式駐車装置。
【請求項5】
前記タイヤガイドは、前記パレットの移動時に前記平面が前記パレット側に向くように前記回転軸を中心に回転する、ことを特徴とする請求項4に記載のバリアフリー用機械式駐車装置。
【請求項6】
前記タイヤガイドは、前記幅方向の断面が多角形で水平な上面を有し、
前記駆動装置は、前記入庫時に前記フロアの上面に対して垂直方向もしくは前記パレットの幅方向の中央の上方に向かって斜め方向に前記タイヤガイドを突出させ、
前記乗車時と前記降車時には前記タイヤガイドを牽引して前記タイヤガイドの前記上面を前記フロアと面一にする、ことを特徴とする請求項1に記載のバリアフリー用機械式駐車装置。
【請求項7】
矩形の穴が開き上面が平坦なフロアと、
前記穴に嵌り上面が前記フロアと面一かつ平坦であり車両を載せるパレットと、
前記パレットの幅方向端面と前記フロアとの間に所望の隙間をもって設けられ前記パレットの長手方向に延びるタイヤガイドと、
前記タイヤガイドを駆動する駆動装置とを備えるバリアフリー用機械式駐車装置において、
車両の入庫時には前記フロアから前記タイヤガイドを上方に突出させ、
利用者の乗車時と降車時には前記パレットと前記タイヤガイドの上面とが前記フロアと面一となる、ことを特徴とするバリアフリー用機械式駐車装置の運転方法。
【請求項8】
前記パレットの移動時に、前記タイヤガイドの前記上面に近接して備えられ前記長手方向に延びる回転軸を前記上面が前記パレット側を向くように回転し、
前記タイヤガイドと前記パレットとの間の前記隙間を前記入庫時、前記乗車時、または前記降車時よりも大きくする、ことを特徴とする請求項7に記載のバリアフリー用機械式駐車装置の運転方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−19127(P2013−19127A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−151649(P2011−151649)
【出願日】平成23年7月8日(2011.7.8)
【出願人】(000198363)IHI運搬機械株式会社 (292)