説明

バリアブルキャパシタ

【課題】機械的消耗を減らして、従来品より寿命を延ばすことができるバリアブルキャパシタを提供する。
【解決手段】2つの電極11,12を相対するように設け、これら電極の内側に誘電体板13,14を付け合せ、これら誘電体板の間を液体金属21を含む流体21,22が流れるように構成してある容器1と、流体を収容するタンク2と、前記容器とタンクとの間に前記流体を往来させるポンプ3とを有し、液体金属の量に応じて静電容量が変化するように構成してあることを特徴とするバリアブルキャパシタ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大電力送信機の発振回路、半導体製造装置用の高周波電源、あるいは誘導加熱装置のタンク回路などに用いられるバリアブルキャパシタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のバリアブルキャパシタを図5に示す。図5に示すバリアブルキャパシタは、真空容器50の一面に固定集電導体51を備え、これと相対するように真空容器50内に可動集電導体52を設けてある。それぞれの集電導体51,52には電極53,54を取り付けてある。これら電極53,54は集電導体51,52と直交する向きに取り付けてある。可動集電導体52は固定集電導体51に向かって移動するが、その際に互いの電極53,54が接触しないようにしてある。可動集電導体52には可動リード55が固着してあり、この可動リード55には調整ねじ56を取り付けてある。調整ねじ56を回動させることにより、可動集電導体52が移動して、可動電極54と固定電極53とが重なる面積に応じて容量が変化するように構成してある。(例えば、特許文献1、2参照)。
【特許文献1】特開平5−41335号公報
【特許文献2】特開2000−58385号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記バリアブルキャパシタは、調整ねじを回動させて、容量を変化させていたため、例えば、調整ねじの磨耗などにより可動部分が消耗し、機械的に寿命を短くする課題がある。特に電流が大きくなると可動部分に負担が大きくなり、機械的寿命の短縮がより顕著となる。また、可動部分が消耗することにより、可動集電導体が正常に移動できなくなると、バリアブルキャパシタの特徴である容量の可変ができなくなる。バリアブルキャパシタは比較的高額であるため、容易に交換できるものではない。
【0004】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、機械的消耗を減らして、従来品より寿命を延ばすことができるバリアブルキャパシタを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明に係るバリアブルキャパシタは、2つの電極を相対するように設け、これら電極の内側に誘電体板を付け合せ、これら誘電体板の間を、液体金属を含む2種類以上の流体が流れるように構成してある容器と、流体を収容するタンクと、前記容器とタンクとの間に前記流体を往来させるポンプとを有し、液体金属の量に応じて静電容量が変化するように構成してあることを特徴とする。
【0006】
本発明に係るバリアブルキャパシタは、前記液体金属は水銀であることを特徴とする。
また、本発明に係るバリアブルキャパシタは、前記容器内に前記液体金属と絶縁油とを収容してあることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、上記構成により、2つの電極を相対するように設け、これら電極の内側に誘電体板を付け合せ、これら誘電体板の間を液体金属を含む流体が流れる構成にしてあるため、機械的に消耗することを大幅に減らすことができる。これにより、本来の目的である静電容量の可変動作を長期間行うことができる。また、上記構成より、電流の大きさに影響を受けずに、長期間静電容量の可変動作を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
発明を実施するための最良の形態に係るバリアブルキャパシタの構成図を図1乃至図3に示す。この実施形態に係るバリアブルキャパシタは、容器1を設け、容器1内に2つの電極11,12を相対するように設けてある。一方の電極11を正極、他方の電極12を負極とすることにより、回路に接続することができる。電極11,12の内側に誘電体板13,14を付け合せてある。これら誘電体板13,14の間を、液体金属を含む流体が流れるように構成してある。
【0009】
なお、本実施例において、流体として液体金属である水銀21と絶縁油22とを用いている。液体金属としてガリウムや水銀を用いることが一般的である。本実施例において水銀を用いているが、その理由として、金属であるため絶縁油22に比べて誘電率が非常に高い。さらに、ガリウムは約30℃で、また、ガリウム合金の場合は30℃以下が融点になるが、これらはいずれも常温で凝固するおそれがある。そのため、水銀を用い、常温であっても凝固せず液体を維持するようにしてある。また、本発明においては、液体金属と液体、液体金属と気体、液体金属のみの組み合わせのいずれにおいても実施することができる。
【0010】
本実施例に係るバリアブルキャパシタは、流体を収容するタンク3と、容器1とタンク3とを流体21,22が循環するためのポンプ2とを設けてある。容器1、ポンプ2及びタンク3に流体21,22が循環するよう、容器1とタンク3との間、及び容器1とポンプ2との間に流路4を設けてある。ポンプ2とタンク3とは直接接続してあるため、流路4は設けていない。
【0011】
本実施例に係るバリアブルキャパシタは以上のように構成してあり、以下のように作用する。先ず、絶縁油22が全て容器1内にある場合について説明する。これについては図1に示すとおりである。絶縁油22は水銀21と比較して非常に誘電率が低く、容器1内を全て絶縁油22で占める場合が、最も静電容量が小さいこととなる。なお、水銀21は絶縁油22に比べて密度が大きいため、水銀21はポンプ2を経由して容器1とタンク3との間を移動する。逆に絶縁油22は容器1及びタンク3の上部に設けた流路4を経由して容器1とタンク3との間を移動する。
【0012】
続いて、静電容量が最大でも最小でもない場合について説明する。これについては図2に示すとおりである。前述した通り、水銀21は絶縁油22に比べて密度が大きい。そのため、容器1内及びタンク3内に水銀21と絶縁油22とが混在すると、水銀21は沈み、絶縁油22は浮く状態となる。
【0013】
続いて、水銀21が全て容器1内にある場合について説明する。これについては図3に示すとおりである。前述したように水銀21は絶縁油22と比較して非常に誘電率が高く、容器1内を全て水銀21で占める場合が、最も静電容量が大きいこととなる。
【0014】
以上のことを踏まえた上、どのように静電容量が変化するかについて説明する。これについて説明する図を図4に示す。先ず、図3に示すような水銀21が全て容器1内にあると仮定した場合の静電容量をC2 (F)とし、誘電体板13,14の誘電率をε2 、真空の誘電率をε0 (=8.9×10-12(F/m))、誘電体の面積をS2(m2)、並びに誘電体板13,14の厚さをt(m)とすると、静電容量C2 (F)は、下記数1となる。
【数1】

【0015】
続いて、図1に示すような絶縁油22が全て容器1内にあると仮定した場合の静電容量をC1 (F)とし、絶縁油22の誘電率をε1、電極の距離をd(m)、並びに絶縁油の面積をS1(m2 )とすると、静電容量C1(F)は、下記数2となる。
【数2】

【0016】
続いて、図2に示すような水銀21と絶縁油22とが混在する場合の静電容量をC(F)とし、容器の高さをL、そのうち絶縁油21が占める部分をL1水銀が占める部分をL2 とする(L=L1 +L2)と、下記数3になる。
【数3】

【0017】
以上より、静電容量はC1〜C2の範囲で変化することができる。図1図示の状態ではC(F)=C1 、図3図示の状態ではC(F)=C2 になる。図2図示の状態ではL/2=L1
=L2 となるため、C(F)=(C1+C2 )/2になる。
【0018】
以上のようにバリアブルキャパシタを構成したことにより、従来のような調整ねじを回動させて、容量を変化させることはないため、機械的に消耗することはほとんどあり得ず、静電容量の可変動作を長期間行うことができる。また、上記構成より、電流の大きさに影響を受けずに、長期間静電容量の可変動作を行うことができる。
【0019】
なお、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている内容が本発明の技術的範囲に属する。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明によれば、2つの電極を相対するように設け、これら電極の内側に誘電体板を付け合せ、これら誘電体板の間を液体金属を含む流体が流れる構成にしてあるため、機械的に消耗することを大幅に減らすことができる。これにより、本来の目的である静電容量の可変動作を長期間行うことができる。また、上記構成より、電流の大きさに影響を受けずに、長期間静電容量の可変動作を行うことができ、産業上利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係るバリアブルキャパシタにおける発明を実施するための最良の形態の構成図である。
【図2】同じく図1図示バリアブルキャパシタの別の動作を示す構成図である。
【図3】同じく図1図示バリアブルキャパシタの別の動作を示す構成図である。
【図4】本発明に係るバリアブルキャパシタの静電容量を説明するための図である。
【図5】従来のバリアブルキャパシタに一例を示すの構成図である。
【符号の説明】
【0022】
1 容器
2 ポンプ
3 タンク
4 流路
11,12 電極
13,14 誘電体板
21 液体金属(水銀)
22 絶縁油

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの電極を相対するように設け、これら電極の内側に誘電体板を付け合せ、これら誘電体板の間を、液体金属を含む2種類以上の流体が流れるように構成してある容器と、流体を収容するタンクと、前記容器とタンクとの間に前記流体を往来させるポンプとを有し、液体金属の量に応じて静電容量が変化するように構成してあることを特徴とするバリアブルキャパシタ。
【請求項2】
前記液体金属は水銀であることを特徴とする請求項1記載のバリアブルキャパシタ。
【請求項3】
前記容器内に前記液体金属と絶縁油とを収容してあることを特徴とする請求項1又は2記載のバリアブルキャパシタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−135359(P2009−135359A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−311997(P2007−311997)
【出願日】平成19年12月3日(2007.12.3)
【出願人】(000002037)新電元工業株式会社 (776)