バリア用途用のポリエステル粘土ナノ複合材
本発明は、容器またはフィルムが形成されるポリマーに、有効量の剥離したセピオライト型の粘土を組み込むことにより、ポリエステル容器およびフィルムを通るガスの透過性を減少する方法である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器またはフィルムが形成されるポリマーに、有効量の剥離したセピオライト型の粘土を組み込むことにより、ポリエステル容器およびフィルムを通るガスの透過性を減少する方法である。
【背景技術】
【0002】
ナノ複合材は、ナノメートルサイズの粒子、すなわち、約1〜数百ナノメートルの寸法の粒子で強化されたポリマーである。
【0003】
ポリマー層状シリケートナノ複合材は、層状粘土無機質充填材をポリマーマトリックス中に組み込む。層状シリケートは、タクトイドとして知られている規則的な包状体へ積み重ねられた数百の薄い小板でできている。これらの各小板には、大きなアスペクト比(直径/厚さ約100〜1000)という特徴がある。従って、粘土が均一に分散され、ポリマーマトリックス全体に個々の小板として剥離されると、強度、曲げおよびヤング率が大幅に増加し、ポリマーと充填材との間の広い表面積接触のために、加熱撓み温度が非常に低い充填材充填(<10重量%)で観察される。さらに、バリア特性が大幅に改善される。その理由は、小板の広い表面積が、拡散種がポリマー材料を透過する際に従わなければならない経路のねじれを大幅に増大するためである。
【0004】
粘土鉱物およびその工業用途は、(非特許文献1)においてH.M.マレー(Murray)により検討されている。カオリンとスメクタイトの2種類の粘土鉱物がナノ複合材に一般的に用いられている。カオリンの分子は、1つはシリカ、1つはアルミナの2つのシートまたは板に配置される。最も広く用いられているスメクタイトは、ナトリウムモンモリロナイトとカルシウムモンモリロナイトである。スメクタイトは、2つのシリカシートと1つのアルミナシートに配置される。モンモリロナイト粘土鉱物の分子は、カオリン基よりも結合が弱く、さらに離れている。
【0005】
1993年のウスキ(Usuki)らによるナイロンベース材料の初期の開発以来、ナノ複合材には関心が高まっている(非特許文献2)。しかしながら、熱可塑性ポリエステルマトリックス中にナノ複合材を生成しようという試みは僅かしか成功していない。例えば、パッケージング用途においてバリア特性を向上するために、ポリエステル中に粘土を分散し剥離することが望ましい。ポリエステルへの取り組みの大半は、優れたバリア特性を備えたポリエステルの開発に集中していた。これらの取り組みは、有機尾部を含む第四級アンモニウムカチオンと共にスメクタイトを用いることに集中していた。このアプローチには、コンパウンディング方法論は修正可能であるものの、剥離剤がコンパウンディング温度で安定でないという弱点がある。さらに、このルートの結果、一般的に、ポリマーマトリクッス中にタクトイドまたはタクトイド凝集体が形成されるだけである。
【0006】
ナノコンポジッドを作製する他のルートは、重合による剥離である。このアプローチには、一般的に、1種もしくはそれ以上のモノマーにナノ繊維、通常は、モンモリロナイトのようなスメクタイトを分散し、続いて、分散液周囲にポリマーを形成することが含まれる。このプロセスにより粘土を上手く剥離するポイントの1つに、適切な挿入剤を選択することが含まれる。挿入剤とモノマーとの間の相互作用は、モノマーを粘土の通路へと進めることができるほど十分に強くなければならない。従って、このプロセスは、挿入剤を用いることを必要とし、よって、上述した同じ熱安定性の問題が生じる。
【0007】
現在の文献には、粘土ナノ複合材の調製にインサイチュでの重合アプローチを用いることに反する教示がなされている。例えば、マタヤバス(Matayabas)らは、有機変性粘土で調製したポリマーは、重合後、粘土の底面間隔の増加を示さず、新たな底面間隔が重合中に生じないということを見出した。エステル交換後、個々の小板は識別されなかった。個々の小板の形成は、重合プロセスの縮重合工程中に生じた(非特許文献3)。
【0008】
ポリエステルベースナノ複合材の調製に用いる第3のルートは、粘土のポリマーマトリックス中への剥離を促すために、ポリ(ビニルピロリドン)などの他のポリマーを用いることである。ナノコー(Nanocor)(登録商標)社(ナノコー(Nanocor)(登録商標)社は、イリノイ州、アーリントンハイツ(Arlington,Illinois)のアムコールインターナショナルコーポレーション(AMCOL International Corporation)の完全子会社である)およびイーストマンケミカルカンパニー(Eastman Chemical Company(テネシー州、キングスポート(Kingsport,Tennessee))は両者とも、優れたバリア特性と機械的特性を備えた材料を必要とする用途に用いるポリエステルベースナノ複合材の調製にこのアプローチを利用している(例えば、(特許文献1)、ナノコー(Nanocor)(登録商標)および(特許文献2)、イーストマンケミカル(Eastman Chemical)を参照のこと)。しかしながら、このアプローチは、粘土とポリマーが相互作用して、粘土の底面間隔を増加できる溶剤ベースのプロセスを通常用いる。溶剤は、真空下で後に除去すると、挿入したスメクティック粘土系が得られる。材料は、所望のポリマーマトリックス(一般的にPET)と溶融コンパウンディングされ、押し出され、ペレット化される。このアプローチには、大量の溶剤を用いることを必要とする弱点がある。例えば、ポリマーおよび粘土は、僅かの重量パーセントの挿入溶液に相当する。例えば、トレクスラー(Trexler)Jr.、J.W.パイナー(Piner)、R.L.ターナー(Turner)S.R.およびバービー(Barbee)R.B.(特許文献3)を参照のこと。さらに、ポリマー(例えば、ポリ(ビニルピロリドン))のポリエステルと粘土充填材との間の界面での導入は、ポリエステルマトリックスとナノ粘土充填材粒子との相互作用を変える。
【0009】
上述した理由のために、特に、水、炭酸清涼飲料水およびビールをパッケージングするための射出延伸ブロー成形ボトルを製造するのに用いるポリ(エチレンテレフタレート)(PET)熱可塑性ポリエステルポリマーなど、食品および飲料を含有するのに用いるような、成形ポリエステル物品のガスバリア性能を改善するために、ポリマーマトリックス中に充填材材料を分散し、剥離する改善されたプロセスが必要とされている。
【0010】
【特許文献1】米国特許第5,698,624号明細書
【特許文献2】国際公開第99/03914号パンフレット
【特許文献3】国際公開第99/03914号パンフレット
【非特許文献1】アプライドクレイサイエンス(Applied Clay Science)17(2000年)207−221
【非特許文献2】ウスキ(Usuki)A.ら、ジャーナルオブマテリアルズリサーチ(Journal of Materials Research)、1993年、8(5):p.1179−1184
【非特許文献3】J.C.マタヤバス(Matayabas)Jr.ら「ガスバリアを向上するためのナノ複合材技術(“Nanocomposite Technology For Enhancing The Gas Barrier,”)、ポリマークレイナノ複合材(Polymer Clay Nanocomposites)、T.J.ピナヴィア(Pinnavia)、G.W.ビーオール(Beall)編、ウィリー(Wiley):ニューヨーク(New York)(2000年)218−222
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0011】
容器、シートおよびフィルムから選択される成形ポリエステル物品のガス透過性を減じる方法を提供することが本発明の目的である。本方法は、
a.セピオライト型の粘土を、
(i)少なくとも1種の二酸またはジエステルおよび少なくとも1種のジオール、
(ii)少なくとも1種の重合可能なポリエステルモノマー、
(iii)少なくとも1種の直鎖状ポリエステルオリゴマー、および
(iv)少なくとも1種の大環状ポリエステルオリゴマー
の群から選択される少なくとも1種のポリエステル前駆体と混合することによりポリエステルナノ複合材を調製した後、溶剤を存在させて、または存在させずに、少なくとも1種のポリエステル前駆体を重合し、
b.このようにして生成されたポリエステルナノ複合材を含んでなる成形ポリマー物品を形成すること
を含んでなる。
【0012】
ナノ複合材は、有効量の剥離したセピオライト型の粘土を含有する。本明細書で用いる「有効量」とは、剥離したセピオライト型の粘土が、当該の透過する物質(例えば、酸素)に対する物品の透過性を検出可能に減じるのに十分に存在することを意味する。これは、ポリエステルナノ複合材の0.1重量%〜20重量%である。
【0013】
剥離したセピオライト型の粘土を含有するポリエステル物品、特に、押出しされたフィルムまたは射出延伸ブロー成形ポリエステル(例えば、PET)ボトルは、剥離していないセピオライト型の粘土を含有していた対応するポリエステル物品に比べて、ASTM D3985に準拠して測定される場合、酸素および二酸化炭素透過性の値、およびASTM D6701に準拠して測定される場合、水蒸気透過性の値が減じる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本開示内容において、数多くの用語が用いられている。
【0015】
本明細書で用いる「ナノ複合材」または「ポリマーナノ複合材」という用語は、0.1〜100nm範囲の少なくとも1つの寸法を有するポリマー材料全体に分散された粒子(「ナノ粒子」)を含有するポリマー材料のことを意味する。ナノ粒子が分散されたポリマー材料は「ポリマーマトリックス」と呼ばれることが多い。「ポリエステル複合材」という用語は、ポリマー材料が少なくとも1種のポリエステルを含むナノ複合材のことを指す。
【0016】
本明細書で用いる「セピオライト型の粘土」とはセピオライトとアタパルジャイト(パリゴルスカイト)粘土の両方を指す。
【0017】
「剥離」という用語は、文字通り、薄片、薄層または破片を落としたりすること、あるいは葉を開くことにより、または開くかのように広げたり伸張することを指す。スメクティック粘土の場合には、「剥離」は、スメクティック粘土からの小板の分離およびポリマーマトリックス全体におけるこれら小板の分散を指す。本明細書で用いられる際、性質が繊維状のセピオライト型の粘土について、「剥離」または「剥離された」とは、繊維束または凝集体がナノメートル直径の繊維へ分離し、その後ポリマーマトリックス全体に分散されることを意味する。
【0018】
本明細書で用いる「有効量」とは、バリア向上添加剤が、当該の透過する物質(例えば、酸素)に対する物品の透過性を検出可能に減じるのに十分に存在することを意味する。これは、ポリエステルナノ複合材の0.1重量%〜20重量%である。
【0019】
本明細書で用いる「アルキレン基」は、−CnH2n−(式中、n≧1)を意味する。
【0020】
本明細書で用いる「シクロアルキレン基」は、環状アルキレン基、−CnH2n−x−(式中、xは環化により置換されたHの数を表す)を意味する。
【0021】
本明細書で用いる「モノ−またはポリオキシアルキレン基」は、[−−(CH2)y−−O−−]n−−(CH2)y−−(式中、yは1より大きい整数、nは0より大きい整数である)を意味する。
【0022】
本明細書で用いる「脂環式基」は、その中に環状構造を含有する非芳香族炭化水素基を意味する。
【0023】
本明細書で用いる「二価の芳香族基」は、大環状分子の他の部分への結合を有する芳香族基を意味する。例えば、二価の芳香族基は、メタ−またはパラ−結合単環芳香族基を含んでいてもよい。
【0024】
本明細書で用いる「ポリエステル」は、繰り返し単位を結合する基の50パーセント以上がエステル基である縮合ポリマーのことを意味する。このように、ポリエステルは、連結基の半分以上がエステル基である限りは、ポリエステル、ポリ(エステル−アミド)およびポリ(エステル−イミド)を含んでいてもよい。好ましくは連結基の少なくとも70%がエステル、より好ましくは連結基の少なくとも90%がエステル、特に好ましくは連結基の実質的に全てがエステルである。エステル連結基の比率は、ポリエステルを作製するのに用いるモノマーのモル比による1次近似で推定することができる。
【0025】
本明細書で用いる「PET」は、ジオール繰り返し単位の少なくとも80、より好ましくは少なくとも90モルパーセントがエチレングリコールからであり、ジカルボン酸繰り返し単位の好ましくは少なくとも80、より好ましくは少なくとも90モルパーセントがテレフタル酸からであるポリエステルを意味する。
【0026】
本明細書において用いる「ポリエステル前駆体」は、二酸(またはジエステル)/ジオール混合物などのポリエステル、重合可能なポリエステルモノマーおよびポリエステルオリゴマーへと重合できる材料を意味する。
【0027】
本明細書において用いる「重合可能なポリエステルモノマー」は、それ自身または他のモノマー(同様に存在する)と重合するモノマー化合物を意味する。かかる化合物としては、ヒドロキシ安息香酸およびヒドロキシナフトエ酸およびビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレートなどのヒドロキシ酸が例示される。
【0028】
本明細書で用いる「オリゴマー」は、2つもしくはそれ以上の同じまたは異なる式の識別可能な構造繰り返し単位を含有する分子を意味する。
【0029】
本明細書で用いる「線状ポリエステルオリゴマー」は、それ自身により、またはモノマーの存在下で高分子量ポリエステルへ重合できる大環状ポリエステルオリゴマー(以下参照)は除いたオリゴマー材料を意味する。線状ポリエステルオリゴマーとしては、例えば、線状ポリエステルのオリゴマーおよび重合可能なポリエステルモノマーのオリゴマーが挙げられる。例えば、メチルエステルまたはカルボキシル基を除去するために実施されるとき、ジメチルテレフタレートまたはテレフタル酸とエチレングリコールの反応によって、通常、ビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレートのオリゴマー、モノ(2−ヒドロキシエチル)テレフタレートのオリゴマー(カルボキシル基を含有する)およびさらに伸張可能なポリエステルオリゴマーなど様々なオリゴマーと、ビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレートとの混合物が得られる。本発明の実施において、好ましくは、かかるオリゴマーの平均重合度(モノマー単位の平均数)は約20もしくはそれ以下、より好ましくは約10もしくはそれ以下である。
【0030】
本明細書で用いる「大環状」分子は、環を形成するために共有結合した8個もしくはそれ以上の原子を含有するその分子構造内に少なくとも1つの環を有する環状分子を意味する。
【0031】
本明細書で用いる「大環状ポリエステルオリゴマー」は、同じまたは異なる式の2つもしくはそれ以上の識別可能な構造繰り返し単位を含有する大環状オリゴマーを意味する。大環状ポリエステルオリゴマーは、一般的に、異なる環サイズを有する1つの特定の式の複数の分子を指す。しかしながら、大環状ポリエステルオリゴマーはまた、異なる数の同一または異なる構造繰り返し単位を有する異なる式の複数の分子を含んでいてもよい。大環状ポリエステルオリゴマーは、コ−オリゴエステルまたはマルチ−オリゴエステル、すなわち、1つの環状分子内に1つのエステル官能基を有する2つもしくはそれ以上の異なる構造繰り返し単位を有するポリエステルオリゴマーであってもよい。
【0032】
数値範囲がここに挙げられている場合には、特に断りのない限り、範囲は端点および範囲内の整数および端数も含まれるものとする。本発明の範囲は、範囲を画定するときに挙げた特定の値に限定されるものとは考えられない。
【0033】
容器、シートおよびフィルムから一般には選択される成形ポリエステル物品のガス透過性を減じる方法を提供することが本発明の目的である。本方法は、
a.セピオライト型の粘土を、
(i)少なくとも1種の二酸またはジエステルおよび少なくとも1種のジオール、
(ii)少なくとも1種の重合可能なポリエステルモノマー、
(iii)少なくとも1種の直鎖状ポリエステルオリゴマー、および
(iv)少なくとも1種の大環状ポリエステルオリゴマー
の群から選択される少なくとも1種のポリエステル前駆体と混合することによりポリエステルナノ複合材を調製した後、溶剤を存在させて、または存在させずに、少なくとも1種のポリエステル前駆体を重合し、
b.このようにして生成されたポリエステルナノ複合材を含んでなる成形ポリマー物品を形成すること
を含んでなる。
【0034】
ポリエステルナノ複合材の調製
ナノ複合材は、有効量の剥離したセピオライト、剥離したアタパルジャイトまたは剥離したセピオライトと剥離したアタパルジャイトの混合物を含有する。本明細書で用いる「有効量」とは、バリア向上添加剤が、当該の透過する物質(例えば、酸素)に対する物品の透過性を検出可能に減じるのに十分に存在することを意味する。これは、ポリエステルナノ複合材の0.1重量%〜20重量%である。
【0035】
セピオライトおよびアタパルジャイト
粘土鉱物およびその工業用途は、アプライドクレイサイエンス(Applied Clay Science)17(2000年)207−221にH.H.マレー(Murray)により検討されている。カオリンとスメクタイトの2種類の粘土鉱物がナノ複合材に一般的に用いられている。カオリンの分子は、1つはシリカ、1つはアルミナの2つのシートまたは板に配置される。最も広く用いられているスメクタイトは、ナトリウムモンモリロナイトとカルシウムモンモリロナイトである。スメクタイトは、2つのシリカシートと1つのアルミナシートに配置される。モンモリロナイト粘土鉱物の分子は、カオリン基よりも結合が弱く、さらに離れている。
【0036】
セピオライト[Mg4Si6O15(OH)2・6(H2O)]は、その繊維状構造のために高アスペクト比を示す水和ケイ酸マグネシウム充填材である。ケイ酸塩の中でも唯一、セピオライトは、シリカ鎖が繊維の軸に平行に伸びる長いラス状結晶子から構成されている。材料はαとβ形態の2つの形態からなることが分かっている。α形態は繊維の長い束であることが分かっており、β形態はアモルファス凝集体として存在している。
【0037】
アタパルジャイト(パリゴルスカイトとしても知られている)は、アタパルジャイトがやや小さい単位細胞を有する以外は、セピオライトと構造的および化学的にほとんど同一である。本明細書で用いる「セピオライト型の粘土」という用語には、セピオライト自身はもとよりアタパルジャイトも含まれる。
【0038】
各層がマグネシウムイオンを含有する八面体単位の中央シートにボンドされた四面体シリカ単位の2つのシートでできているセピオライト型の粘土は層状繊維状材料である(例えば、L.ボコブザ(Bokobza)ら、ポリマーインターナショナル(Polymer International)53、1060−1065(2004年)の図1および2を参照のこと)。繊維は粘着しあって、繊維束を形成し、これがひいては凝集体を形成することができる。これらの凝集体は、微粉化または化学変性などの工業的プロセスにより粉々にすることができる(例えば、欧州特許第170,299号明細書、トルサ(Tolsa)S.Aを参照のこと)。
【0039】
本発明に用いるセピオライト型の粘土の量は、最終複合材組成物を基準として約0.1〜約20重量%である。選択した特定の量は、業界において周知のとおり、ナノ複合材の目的の用途に応じて異なる。
【0040】
セピオライト型の粘土は、高純度(「レオロジー等級」)の未コート形態(例えば、スペイン、マドリッドのトルサグループ(Tolsa Group, Madrid, Spain)製パンジェル(PANGEL)(登録商標)S9セピオライト粘土)、より一般的には、有機材料で処理して、より「有機親和性」、すなわち、低〜中極性の系と親和性があるようにしたもの(例えば、トルサグループ(Tolsa Group)製パンジェル(PANGEL)(登録商標)B20セピオライト粘土)で入手可能である。セピオライト型の粘土のかかるコーティングの一例は、欧州特許出願第221,225号明細書に開示されているような、ジメチルベンキシルアルキル塩化アンモニウムなどの第四級アンモニウム塩である。
【0041】
スメクティック粘土(例えば、モンモリロナイト)がポリマーマトリックス全体に均一に分散され、個々の小板として剥離するとバリア特性が大幅に改善されるが、その理由は、小板の広い表面積が、拡散種がポリマー材料を通って透過する際に従わなければならない経路のねじれを大幅に増大するためである。しかしながら、セピオライト型の粘土は、長いラス状結晶子へと剥離する。このように、剥離したセピオライト型の粘土が、それが組み込まれるポリマーマトリックスのバリア特性を増大するのに効果的であることは非常に意外である。
【0042】
ポリエステル
用いるポリエステルは、必要な融点を備えた任意のポリエステルであってよい。ポリエステルの融点は約150℃以上であるのが好ましく、約200℃以上であるのがより好ましい。ポリエステル(大半または全てがエステル結合基を有する)は、通常、1種もしくはそれ以上のジカルボン酸と1種もしくはそれ以上のジオールから誘導される。それらは、重合可能なポリエステルモノマーまたは大環状ポリエステルオリゴマーから生成することもできる。
【0043】
本発明の実施に用いるのに最適なポリエステルは、等方性の熱可塑性ポリエステルホモポリマーおよびコポリマー(ブロックとランダムの両方)を含んでなる。
【0044】
ジオールおよびヒドロカルビル二酸またはかかる二酸のエステルからのポリエステルの生成は、A.J.イースト(East)、M.ゴールデン(Golden)およびS.マーヒジャー(Makhija)、カーク−オスマー化学技術百科事典(Kirk−Othmer Encyclopedia of Chemical Technology)、ジョンウィリー&ソンズ(John Wiley&Sons)、J.I.クロシュヴィッツ(Kroschwitz)編集主幹、M.ハウ−グラント(Howe−Grant)編、第4版(1996)、第19巻、609−653に記載されているとおり、業界に周知である。第1の段階で、二酸またはそのジアルキル(一般的にはジメチル)エステルとジオールとの間のエステル化またはエステル交換が生じて、水またはアルコール(一般的にはメタノール)の発生と除去に加えて、ビス(ヒドロキシアルキル)エステルおよびいくつかのオリゴマーが得られる。エステル化またはエステル交換は元来遅い反応であるため、一般的に触媒を用いる。有用なエステル化またはエステル交換触媒の例は、酢酸カルシウム、亜鉛およびマンガン、錫化合物ならびにチタンアルコキシドである。第2の段階において、重縮合、ビス(ヒドロキシアルキル)エステルおよびオリゴマーは、エステル交換反応をし続け、高真空下で除去されるジオールを排除し、分子量を増やす。有用な重縮合触媒としては、錫およびチタン化合物、アンチモンおよびゲルマニウム化合物、特に、PETの場合には、酸化アンチモン(Sb2O3)が例示される。
【0045】
好適な二酸(およびそれらの対応のエステル)は、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、1,12−ドデカン二酸フマル酸、マレイン酸および、例えば、ジメチル、ジエチルまたはジプロピルエステルなどのそれらの誘導体よりなる群から選択される。
【0046】
ジオール成分として用いることのできるグリコールの代表例としては、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−プロピレングリコール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−イソブチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール、イソソルビド、ナフタレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、レゾルシノール、ヒドロキノン、ならびにアルキレンオキシドとジオールまたはポリオールの反応生成物であるポリテトラメチレンエーテルグリコールなどの長鎖ジオールおよびポリオールが挙げられる。
【0047】
ポリエステルの1つの好ましい型において、ジカルボン酸は、1種もしくはそれ以上のテレフタル酸、イソフタル酸および2,6−ナフタレンジカルボン酸を含んでなり、ジオール成分は1つもしくはそれ以上のHO(CH2)nOH(I)、1,4−シクロヘキサンジメタノール、HO(CH2CH2O)mCH2CH2OH(II)およびHO(CH2CH2CH2CH2O)zCH2CH2CH2CH2OH(III)(式中、nは2〜10の整数、mは平均で1〜4、zは平均で約7〜約40である)を含んでなる。(II)および(III)は、mおよびzがそれぞれ異なり、従ってmおよびzは平均であるため、整数とはならない化合物の混合物であることに注意する。好ましいポリエステルにおいて、nは2、3または4であり、かつ/またはmは1である。
【0048】
ポリエステルはまた、重合可能なポリエステルモノマーから直接生成することもできる。本発明に用いるのに好適な重合可能なポリエステルモノマーの代表例としては、ヒドロキシ安息香酸、ヒドロキシナフトエ酸および乳酸などのヒドロキシ酸、ビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレート、ビス(4−ヒドロキシブチル)テレフタレート、ビス(2−ヒドロキシエチル)ナフタレンジオアート、ビス(2−ヒドロキシエチル)イソフタレート、ビス[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]テレフタレート、ビス[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]イソフタレート、ビス[(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチル]テレフタレートおよびビス[(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチル]イソフタレート、モノ(2−ヒドロキシエチル)テレフタレート、ビス(2−ヒドロキシエチル)スルホイソフタレートおよびラクチドが挙げられる。
【0049】
ポリエステルはまた、大環状ポリエステルオリゴマーから直接生成することもできる。本発明に用いてよい大環状ポリエステルオリゴマーとしては、これらに限られるものではないが、下式の構造繰り返し単位を有する大環状ポリ(アルキレンジカルボキシレート)オリゴマーが挙げられる。
【0050】
【化1】
【0051】
式中、Aは少なくとも2つの炭素原子を含有するアルキレン基、シクロアルキレンまたはモノ−またはポリオキシアルキレン基であり、Bは二価の芳香族または脂環式基である。それらは、米国特許第5,039,783号明細書、同第5,231,161号明細書、同第5,407,984号明細書、同第5,668,186号明細書、米国仮特許出願第60/626187号明細書、PCT特許出願国際公開第2003093491号パンフレットおよび国際公開第2002068496号パンフレットおよびA.ラヴァレット(Lavalette)ら、生体高分子(Biomacromolecules)、第3巻、p.225−228(2002年)に記載されているような様々なやり方で調製してよい。大環状ポリエステルオリゴマーはまた、低分子量線状ポリエステルから押出しにより得ることもできる。
【0052】
好ましい大環状ポリエステルオリゴマーは、1,4−ブチレンテレフタレート(CBT)、1,3−プロピレンテレフタレート(CPT)、1,4−シクロへキシレンジメチレンテレフタレート(CCT)、エチレンテレフタレート(CET)、1,2−エチレン2,6−ナフタレンジカルボキシレート(CEN)、テレフタル酸とジエチレングリコールの環状エステルダイマー(CPEOT)の大環状ポリエステルオリゴマー、および上記の構造化繰り返し単位のうち2つもしくはそれ以上を含んでなる大環状コ−オリゴエステルである。
【0053】
ポリエステルは、分岐していてもしていなくてもよく、ホモポリマーまたはコポリマー、あるいは少なくとも1種のかかるホモポリマーまたはコポリマーを含んでなるポリマーブレンドであってもよい。
【0054】
特定の好ましいポリエステルとしては、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)、ポリ(1,3−プロピレンテレフタレート)(PPT)、ポリ(1,4−ブチレンテレフタレート)(PBT)、ポリ(1,4−ブチレンテレフタレート)とポリ(テトラメチレンエーテル)グリコールブロックを有する熱可塑性エラストマーポリエステル(イー・アイ・デュポン・ドゥ・ヌムール・アンド・カンパニー・インコーポレーテッド(E.I. du Pont de Nemours and Co. Inc.)、米国、19898、デラウェア州、ウィルミントン(Wilmington,DE)よりハイトレル(HYTREL)(登録商標)として入手可能)、ポリ(1,4−シクロヘキシルジメチレンテレフタレート)(PCT)およびポリ乳酸(PLA)が挙げられる。PETが特に好ましい。
【0055】
特に注目すべきは、10重量%までのコモノマーにより変性されたものと定義される「変性ポリエステル」である。特に断りのない限り、ポリエステルポリマー(またはオリゴマー)という用語は、変性および未変性ポリエステルポリマー(またはオリゴマー)を意味する。同様に、特定のポリエステルについて言及するとき、例えば、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)は、未変性または変性PETを意味する。コモノマーとしては、ジエチレングリコール(DEG)、トリエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、イソソルビド、イソフタル酸(IPA)、2,6−ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸およびこれらの混合物を挙げることができる。一般的に、PETの好ましいコモノマーは0〜5重量%のIPAと0〜3重量%のDEGとを含む。
【0056】
本発明の特に好ましい実施形態において、ポリエステルベースポリマーは、約2モル%〜約5モル%のイソフタレート単位で変性しておいたPETポリマーを含むポリエチレンテレフタレート(PET)である。かかる変性PETは、「ボトルグレード」樹脂として知られており、トルコのハシオマーサバンジ(Haci Omer Sabanci)ASの完全所有会社であるアドバンサ(ADVANSA)製メリナー(MELINAR)(登録商標)レーザー(LASER)+(登録商標)ポリエチレンテレフタレートブランド樹脂として市販されている。
【0057】
プロセス条件
ナノ複合材材料を製造するプロセス条件は、溶融または溶液プロセスでポリエステルを製造するのに業界に公知のものと同じである。セピオライト粘土鉱物は、ポリエステル重合度が約20の前に、任意の都合のよい製造段階で任意の手段により添加することができる。例えば、モノマーと共に始めに、モノマーエステル化またはエステル交換中、モノマーエステル化またはエステル交換の最後、または重縮合工程の早い段階で添加することができる。
【0058】
DEG生成を反応中に制御する必要がある場合には、様々な触媒を用いることができる。米国特許第3,749,697号明細書に記載されている酢酸リチウムバッファ、およびJP第83−62626号明細書、RO第88−135207号明細書およびJP第2001−105902号明細書に記載されている様々な酢酸ナトリウムおよびカリウムバッファの使用が挙げられる。一般的に、100〜600ppmの酢酸ナトリウムまたはカリウムを、重合中に用いて、DEG形成およびポリマーへの組み込みの程度を最小にした。
【0059】
物品の形成
フィルム試料は、本発明より得られる改善されたバリア特性の指標である。ナノ複合材は、上述したとおり、セピオライト型の粘土の存在下でベースポリマーのインサイチュでの重合により調製される。ナノ複合材は、当業者に任意の公知の方法によりフィルム、シートまたは容器を作製するのに用いることができる。ナノ複合材を含んでなるフィルム、シートおよび容器は、増大した引裂強度、増大した引張弾性率、水蒸気、酸素および二酸化炭素の減少した透過性を示し、高レベルの靭性および透明度を保持している。
【0060】
ポリエステルナノ複合材は、単体またはポリマーブレンドの成分として用いることができる。これらに限られるものではないが、酸化防止剤、帯電防止剤、熱安定剤、UV安定剤、滑剤およびブロック防止剤など業界で一般的に用いる添加剤を組み込むことができる。
【0061】
本発明の物品は、これらに限られるものではないが、フィルム、シート、容器、膜、ラミネート、ペレット、コーティングまたは発泡体の形態またはこれらを含んでなる。物品は、これらに限られるものではないが、射出成形、(共)押出し、ブロー成形、熱形成、溶液流延、ラミネーションおよびフィルムブローイングなど業界に公知の任意の手段により作製してよい。特に好ましい実施形態において、物品は、射出延伸ブロー成形ボトルである。
【0062】
本発明の好ましい物品としては、食品、パーソナルケア(健康および衛生)品目および化粧品用のパッケージが挙げられる。「パッケージング」とは、パッケージ全体またはパッケージの構成要素のいずれかを意味する。パッケージング構成要素としては、これらに限られるものではないが、パッケージングフィルム、ライナ、収縮バッグ、収縮ラップ、トレイ、トレイ/容器組み立て品、交換可能および交換不可能なキャップ、蓋および飲料ボトルネックが例示される。
【0063】
パッケージは、缶、ボックス、ボトル、ジャー、バッグ、化粧品パッケージまたは末端閉鎖管など特定の用途について適切な任意の形態にあってよい。パッケージングは、これらに限られるものではないが、押出し、共押出し、熱形成、射出成形、ラミネーションまたはブロー成形など業界に公知の任意の手段により構築してよい。
【0064】
パーソナルケア品目および化粧品のパッケージングのいくつかの特定の例としては、これらに限られるものではないが、食品用、ならびに処方および処方されていないカプセルやピル、溶液、クリーム、ローション、パウダー、シャンプー、コンディショナー、デオドラント、制汗剤、目、耳、鼻、喉、窒、尿道、直腸、皮膚、毛髪と接触する懸濁液および唇製品用のボトル、ジャーおよびキャップが挙げられる。
【実施例】
【0065】
実施例
本発明を以下の実施例によりさらに定義する。これらの実施例は、本発明の好ましい実施形態を示すものであるが、例証のためのみのものと考えられる。上記の説明およびこれらの実施例から、当業者であれば、その精神および範囲から逸脱することなく、本発明の必須の特徴を把握でき、様々な用途および条件に適合させるべく本発明の様々な変更および修正を行える。
【0066】
略語の意味は次の通りである。「min」は分、「m」はメートル、「cm」はセンチメートル、「mm」はミリメートル、「μm」はマイクロメートル、「kg」はキログラム、「g」はグラム、「lb」はポンド、「M」はモル、「MPa」はメガパスカル、「重量%」は重量パーセント(パーセンテージ)、「DMT」はジメチルテレフタレート、「NMR」は核磁気共鳴、「SEC」はサイズ排除クロマトグラフィー、「Mn」は数平均分子量、「RPM」は毎分回転数、「psi」は毎平方インチ当たりポンド、「ksi」は毎平方インチ当たりキロポンド、「MD」は機械方向、「TD」は交差方向、および「ND」は求めず、である。
【0067】
材料
ジメチルテレフタレート(CAS#120−61−6、99%)はインビスタ(INVISTA)(カンザス州、ウィチタ(Wichita,Kansas))より購入した。エチレングリコール(CAS#107−21−1)はユニバー(Univar)USA(ワシントン州、カークランド(Kirkland,Washington))より購入した。酸化アンチモン(CAS 1309−64−4、99%)および酢酸マンガン(CAS#6156−78−1、99%)はアルドリッチケミカルカンパニー(Aldrich Chemical Company)(ウィスコンシン州、ミルウォーキー(Milwaukee,Wisconsin))より購入した。パンジェル(PANGEL)(登録商標)B20セピオライトは、EMサリバンアソシエーツ(Sullivan Associates)より購入した。用いた対照PET試料はクリスター(CRYSTAR)(登録商標)3934(デラウェア州、ウィルミントンのイー・アイ・デュポン・ドゥ・ヌムール・アンド・カンパニー・インコーポレーテッド(E.I.du Pont de Nemours & Co. Inc.,Wilmington,Delaware)であった。2つのイースター(EASTAR)(登録商標)PETG等級をイーストマンケミカルカンパニー(Eastman Chemical Company)(テネシー州、キングスポート(Kingsport,Tennessee))より購入した。
【0068】
分析方法
サイズ排除クロマトグラフィーシステムは、ウォーターズ(Waters)410(登録商標)屈折率検出器(DRI)を備えたウォーターズコーポレーション(Waters Corporation)(マサチューセッツ州、ミルフォード(Milford,MA))製モデルアライアンス(Model Alliance)2690(登録商標)および静的直角光拡散を組み込んだビスコテック(Viscotek)コーポレーション(テキサス州、ヒューストン(Houston,TX))の型番T−60A(登録商標)二重検出器モジュールから構成されており、差動毛細管粘度計検出器を分子量特定のために用いた。移動相は、0.01Mトリフルオロ酢酸ナトリウム中1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール(HFIP)であった。ポリマーについてのdn/dcを測定し、全試料が測定中完全に溶出されたと仮定した。ジエチレングリコール(DEG)のパーセンテージを1H NMR分光法を用いて求めた。
【0069】
ナノ複合材フィルムの引張特性を、ASTM手順D882に準拠して求めた。モコン(MOCON)(登録商標)パーマトラン(PERMATRAN)−W(登録商標)(モコン(MOCON)(登録商標)社、ミネソタ州、ミネアポリス(Minneapolis,Minnesota))を25℃、100%相対湿度で用い、ASTM手順D6701に準拠して、水蒸気透過率を調べた。目視で、または上記したとおり、50%の相対湿度でASTM D1003に準拠して、黄色の度合いを評価した。
【0070】
実施例1
ポリエステル/セピオライトナノ複合材調製
ステンレス鋼オートクレーブに、DMT(10.1lb、4.59kg)、エチレングリコール(6.7lb、3.0kg)、三酸化アンチモン(2.80g)、酢酸マンガン(3.60g)、酢酸ナトリウム(1.30g)およびパンジェル(PANGEL)(登録商標)B20セピオライト(140.0g)を入れた。反応容器を60psiの窒素で三回パージした。容器の低フロー窒素スイープで、容器を240℃まで加熱した。容器を240℃まで加熱しながら、反応物を25RPMで攪拌した。容器が240℃に達した後、反応温度を10分間維持した。反応物を275℃まで加熱し、90分真空還元サイクルを開始した。真空還元サイクルの完了の際、完全真空(0.1トル)を反応物に適用し、反応物を275℃に120分間維持した。反応物を窒素で加圧し、ポリマーをストランドとして押し出し、水桶中で冷却し、ペレット形態へと刻んだ。ポリマー分子量をSECを用いて求めた。Mn=24600、%DEG=2.89%。この材料は以下「PET−実施例1」と呼ぶ。
【0071】
実施例2
3重量%のセピオライトを含有するフィルムの作製および特性
対照例としてクリスター(CRYSTAR)(登録商標)ポリエステルポリマー(未充填)および実施例1で調製したポリエステル/セピオライトナノ複合材(3重量%セピオライト)を120℃で真空下で一晩乾燥した。30mmの二軸押出し機は、10インチ(25.4cm)フィルムダイおよび窒素ブランケットの付いたフィーダを備えていた。バレルを255℃の温度まで加熱し、ダイを265℃まで加熱した。フィルムを押し出し、冷却流延ドラム上で冷却した。押出し中、フィルタスクリーンは用いなかった。透明度および色を目視により評価した。引張弾性率およびWVTRを上述したとおりにして測定した。結果を表1に示す。
【0072】
【表1】
【0073】
実施例3
セピオライトを含有するPETおよびコポリエステルシートの作製
対照例のクリスター(CRYSTAR)(登録商標)ポリエステルポリマー(未充填)および実施例1で調製したポリエステル/セピオライトナノ複合材(3重量%セピオライト)、およびコポリエステルイースター(EASTAR)(登録商標)21446およびイースター(EASTAR)(登録商標)6763を120℃で真空下で一晩乾燥した。30mmの二軸押出し機は、10インチ(25.4cm)フィルムダイおよび窒素ブランケットの付いたフィーダを備えていた。バレルを255℃の温度まで加熱し、ダイを265℃まで加熱した。試料3A、3B、3Cおよび3Dの供給物は、実施例1のPETナノ複合材組成物(「PET−実施例1」)、PET−実施例1とイースター(EASTAR)(登録商標)21446の重量基準で1:1のペレットブレンド、PET−実施例1とイースター(EASTAR)(登録商標)6763の重量基準で1:1のペレットブレンドおよびクリスター(CRYSTAR)(登録商標)3934対照例であった。厚さ35ミル(889μm)のシートを押し出し、冷却流延ドラム上で冷却した。押出し中、フィルタスクリーンは用いなかった。ASTM D1003に準拠して黄色の度合いを測定した。表2に示す。引張特性は表3に示す。
【0074】
【表2】
【0075】
【表3】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器またはフィルムが形成されるポリマーに、有効量の剥離したセピオライト型の粘土を組み込むことにより、ポリエステル容器およびフィルムを通るガスの透過性を減少する方法である。
【背景技術】
【0002】
ナノ複合材は、ナノメートルサイズの粒子、すなわち、約1〜数百ナノメートルの寸法の粒子で強化されたポリマーである。
【0003】
ポリマー層状シリケートナノ複合材は、層状粘土無機質充填材をポリマーマトリックス中に組み込む。層状シリケートは、タクトイドとして知られている規則的な包状体へ積み重ねられた数百の薄い小板でできている。これらの各小板には、大きなアスペクト比(直径/厚さ約100〜1000)という特徴がある。従って、粘土が均一に分散され、ポリマーマトリックス全体に個々の小板として剥離されると、強度、曲げおよびヤング率が大幅に増加し、ポリマーと充填材との間の広い表面積接触のために、加熱撓み温度が非常に低い充填材充填(<10重量%)で観察される。さらに、バリア特性が大幅に改善される。その理由は、小板の広い表面積が、拡散種がポリマー材料を透過する際に従わなければならない経路のねじれを大幅に増大するためである。
【0004】
粘土鉱物およびその工業用途は、(非特許文献1)においてH.M.マレー(Murray)により検討されている。カオリンとスメクタイトの2種類の粘土鉱物がナノ複合材に一般的に用いられている。カオリンの分子は、1つはシリカ、1つはアルミナの2つのシートまたは板に配置される。最も広く用いられているスメクタイトは、ナトリウムモンモリロナイトとカルシウムモンモリロナイトである。スメクタイトは、2つのシリカシートと1つのアルミナシートに配置される。モンモリロナイト粘土鉱物の分子は、カオリン基よりも結合が弱く、さらに離れている。
【0005】
1993年のウスキ(Usuki)らによるナイロンベース材料の初期の開発以来、ナノ複合材には関心が高まっている(非特許文献2)。しかしながら、熱可塑性ポリエステルマトリックス中にナノ複合材を生成しようという試みは僅かしか成功していない。例えば、パッケージング用途においてバリア特性を向上するために、ポリエステル中に粘土を分散し剥離することが望ましい。ポリエステルへの取り組みの大半は、優れたバリア特性を備えたポリエステルの開発に集中していた。これらの取り組みは、有機尾部を含む第四級アンモニウムカチオンと共にスメクタイトを用いることに集中していた。このアプローチには、コンパウンディング方法論は修正可能であるものの、剥離剤がコンパウンディング温度で安定でないという弱点がある。さらに、このルートの結果、一般的に、ポリマーマトリクッス中にタクトイドまたはタクトイド凝集体が形成されるだけである。
【0006】
ナノコンポジッドを作製する他のルートは、重合による剥離である。このアプローチには、一般的に、1種もしくはそれ以上のモノマーにナノ繊維、通常は、モンモリロナイトのようなスメクタイトを分散し、続いて、分散液周囲にポリマーを形成することが含まれる。このプロセスにより粘土を上手く剥離するポイントの1つに、適切な挿入剤を選択することが含まれる。挿入剤とモノマーとの間の相互作用は、モノマーを粘土の通路へと進めることができるほど十分に強くなければならない。従って、このプロセスは、挿入剤を用いることを必要とし、よって、上述した同じ熱安定性の問題が生じる。
【0007】
現在の文献には、粘土ナノ複合材の調製にインサイチュでの重合アプローチを用いることに反する教示がなされている。例えば、マタヤバス(Matayabas)らは、有機変性粘土で調製したポリマーは、重合後、粘土の底面間隔の増加を示さず、新たな底面間隔が重合中に生じないということを見出した。エステル交換後、個々の小板は識別されなかった。個々の小板の形成は、重合プロセスの縮重合工程中に生じた(非特許文献3)。
【0008】
ポリエステルベースナノ複合材の調製に用いる第3のルートは、粘土のポリマーマトリックス中への剥離を促すために、ポリ(ビニルピロリドン)などの他のポリマーを用いることである。ナノコー(Nanocor)(登録商標)社(ナノコー(Nanocor)(登録商標)社は、イリノイ州、アーリントンハイツ(Arlington,Illinois)のアムコールインターナショナルコーポレーション(AMCOL International Corporation)の完全子会社である)およびイーストマンケミカルカンパニー(Eastman Chemical Company(テネシー州、キングスポート(Kingsport,Tennessee))は両者とも、優れたバリア特性と機械的特性を備えた材料を必要とする用途に用いるポリエステルベースナノ複合材の調製にこのアプローチを利用している(例えば、(特許文献1)、ナノコー(Nanocor)(登録商標)および(特許文献2)、イーストマンケミカル(Eastman Chemical)を参照のこと)。しかしながら、このアプローチは、粘土とポリマーが相互作用して、粘土の底面間隔を増加できる溶剤ベースのプロセスを通常用いる。溶剤は、真空下で後に除去すると、挿入したスメクティック粘土系が得られる。材料は、所望のポリマーマトリックス(一般的にPET)と溶融コンパウンディングされ、押し出され、ペレット化される。このアプローチには、大量の溶剤を用いることを必要とする弱点がある。例えば、ポリマーおよび粘土は、僅かの重量パーセントの挿入溶液に相当する。例えば、トレクスラー(Trexler)Jr.、J.W.パイナー(Piner)、R.L.ターナー(Turner)S.R.およびバービー(Barbee)R.B.(特許文献3)を参照のこと。さらに、ポリマー(例えば、ポリ(ビニルピロリドン))のポリエステルと粘土充填材との間の界面での導入は、ポリエステルマトリックスとナノ粘土充填材粒子との相互作用を変える。
【0009】
上述した理由のために、特に、水、炭酸清涼飲料水およびビールをパッケージングするための射出延伸ブロー成形ボトルを製造するのに用いるポリ(エチレンテレフタレート)(PET)熱可塑性ポリエステルポリマーなど、食品および飲料を含有するのに用いるような、成形ポリエステル物品のガスバリア性能を改善するために、ポリマーマトリックス中に充填材材料を分散し、剥離する改善されたプロセスが必要とされている。
【0010】
【特許文献1】米国特許第5,698,624号明細書
【特許文献2】国際公開第99/03914号パンフレット
【特許文献3】国際公開第99/03914号パンフレット
【非特許文献1】アプライドクレイサイエンス(Applied Clay Science)17(2000年)207−221
【非特許文献2】ウスキ(Usuki)A.ら、ジャーナルオブマテリアルズリサーチ(Journal of Materials Research)、1993年、8(5):p.1179−1184
【非特許文献3】J.C.マタヤバス(Matayabas)Jr.ら「ガスバリアを向上するためのナノ複合材技術(“Nanocomposite Technology For Enhancing The Gas Barrier,”)、ポリマークレイナノ複合材(Polymer Clay Nanocomposites)、T.J.ピナヴィア(Pinnavia)、G.W.ビーオール(Beall)編、ウィリー(Wiley):ニューヨーク(New York)(2000年)218−222
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0011】
容器、シートおよびフィルムから選択される成形ポリエステル物品のガス透過性を減じる方法を提供することが本発明の目的である。本方法は、
a.セピオライト型の粘土を、
(i)少なくとも1種の二酸またはジエステルおよび少なくとも1種のジオール、
(ii)少なくとも1種の重合可能なポリエステルモノマー、
(iii)少なくとも1種の直鎖状ポリエステルオリゴマー、および
(iv)少なくとも1種の大環状ポリエステルオリゴマー
の群から選択される少なくとも1種のポリエステル前駆体と混合することによりポリエステルナノ複合材を調製した後、溶剤を存在させて、または存在させずに、少なくとも1種のポリエステル前駆体を重合し、
b.このようにして生成されたポリエステルナノ複合材を含んでなる成形ポリマー物品を形成すること
を含んでなる。
【0012】
ナノ複合材は、有効量の剥離したセピオライト型の粘土を含有する。本明細書で用いる「有効量」とは、剥離したセピオライト型の粘土が、当該の透過する物質(例えば、酸素)に対する物品の透過性を検出可能に減じるのに十分に存在することを意味する。これは、ポリエステルナノ複合材の0.1重量%〜20重量%である。
【0013】
剥離したセピオライト型の粘土を含有するポリエステル物品、特に、押出しされたフィルムまたは射出延伸ブロー成形ポリエステル(例えば、PET)ボトルは、剥離していないセピオライト型の粘土を含有していた対応するポリエステル物品に比べて、ASTM D3985に準拠して測定される場合、酸素および二酸化炭素透過性の値、およびASTM D6701に準拠して測定される場合、水蒸気透過性の値が減じる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本開示内容において、数多くの用語が用いられている。
【0015】
本明細書で用いる「ナノ複合材」または「ポリマーナノ複合材」という用語は、0.1〜100nm範囲の少なくとも1つの寸法を有するポリマー材料全体に分散された粒子(「ナノ粒子」)を含有するポリマー材料のことを意味する。ナノ粒子が分散されたポリマー材料は「ポリマーマトリックス」と呼ばれることが多い。「ポリエステル複合材」という用語は、ポリマー材料が少なくとも1種のポリエステルを含むナノ複合材のことを指す。
【0016】
本明細書で用いる「セピオライト型の粘土」とはセピオライトとアタパルジャイト(パリゴルスカイト)粘土の両方を指す。
【0017】
「剥離」という用語は、文字通り、薄片、薄層または破片を落としたりすること、あるいは葉を開くことにより、または開くかのように広げたり伸張することを指す。スメクティック粘土の場合には、「剥離」は、スメクティック粘土からの小板の分離およびポリマーマトリックス全体におけるこれら小板の分散を指す。本明細書で用いられる際、性質が繊維状のセピオライト型の粘土について、「剥離」または「剥離された」とは、繊維束または凝集体がナノメートル直径の繊維へ分離し、その後ポリマーマトリックス全体に分散されることを意味する。
【0018】
本明細書で用いる「有効量」とは、バリア向上添加剤が、当該の透過する物質(例えば、酸素)に対する物品の透過性を検出可能に減じるのに十分に存在することを意味する。これは、ポリエステルナノ複合材の0.1重量%〜20重量%である。
【0019】
本明細書で用いる「アルキレン基」は、−CnH2n−(式中、n≧1)を意味する。
【0020】
本明細書で用いる「シクロアルキレン基」は、環状アルキレン基、−CnH2n−x−(式中、xは環化により置換されたHの数を表す)を意味する。
【0021】
本明細書で用いる「モノ−またはポリオキシアルキレン基」は、[−−(CH2)y−−O−−]n−−(CH2)y−−(式中、yは1より大きい整数、nは0より大きい整数である)を意味する。
【0022】
本明細書で用いる「脂環式基」は、その中に環状構造を含有する非芳香族炭化水素基を意味する。
【0023】
本明細書で用いる「二価の芳香族基」は、大環状分子の他の部分への結合を有する芳香族基を意味する。例えば、二価の芳香族基は、メタ−またはパラ−結合単環芳香族基を含んでいてもよい。
【0024】
本明細書で用いる「ポリエステル」は、繰り返し単位を結合する基の50パーセント以上がエステル基である縮合ポリマーのことを意味する。このように、ポリエステルは、連結基の半分以上がエステル基である限りは、ポリエステル、ポリ(エステル−アミド)およびポリ(エステル−イミド)を含んでいてもよい。好ましくは連結基の少なくとも70%がエステル、より好ましくは連結基の少なくとも90%がエステル、特に好ましくは連結基の実質的に全てがエステルである。エステル連結基の比率は、ポリエステルを作製するのに用いるモノマーのモル比による1次近似で推定することができる。
【0025】
本明細書で用いる「PET」は、ジオール繰り返し単位の少なくとも80、より好ましくは少なくとも90モルパーセントがエチレングリコールからであり、ジカルボン酸繰り返し単位の好ましくは少なくとも80、より好ましくは少なくとも90モルパーセントがテレフタル酸からであるポリエステルを意味する。
【0026】
本明細書において用いる「ポリエステル前駆体」は、二酸(またはジエステル)/ジオール混合物などのポリエステル、重合可能なポリエステルモノマーおよびポリエステルオリゴマーへと重合できる材料を意味する。
【0027】
本明細書において用いる「重合可能なポリエステルモノマー」は、それ自身または他のモノマー(同様に存在する)と重合するモノマー化合物を意味する。かかる化合物としては、ヒドロキシ安息香酸およびヒドロキシナフトエ酸およびビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレートなどのヒドロキシ酸が例示される。
【0028】
本明細書で用いる「オリゴマー」は、2つもしくはそれ以上の同じまたは異なる式の識別可能な構造繰り返し単位を含有する分子を意味する。
【0029】
本明細書で用いる「線状ポリエステルオリゴマー」は、それ自身により、またはモノマーの存在下で高分子量ポリエステルへ重合できる大環状ポリエステルオリゴマー(以下参照)は除いたオリゴマー材料を意味する。線状ポリエステルオリゴマーとしては、例えば、線状ポリエステルのオリゴマーおよび重合可能なポリエステルモノマーのオリゴマーが挙げられる。例えば、メチルエステルまたはカルボキシル基を除去するために実施されるとき、ジメチルテレフタレートまたはテレフタル酸とエチレングリコールの反応によって、通常、ビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレートのオリゴマー、モノ(2−ヒドロキシエチル)テレフタレートのオリゴマー(カルボキシル基を含有する)およびさらに伸張可能なポリエステルオリゴマーなど様々なオリゴマーと、ビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレートとの混合物が得られる。本発明の実施において、好ましくは、かかるオリゴマーの平均重合度(モノマー単位の平均数)は約20もしくはそれ以下、より好ましくは約10もしくはそれ以下である。
【0030】
本明細書で用いる「大環状」分子は、環を形成するために共有結合した8個もしくはそれ以上の原子を含有するその分子構造内に少なくとも1つの環を有する環状分子を意味する。
【0031】
本明細書で用いる「大環状ポリエステルオリゴマー」は、同じまたは異なる式の2つもしくはそれ以上の識別可能な構造繰り返し単位を含有する大環状オリゴマーを意味する。大環状ポリエステルオリゴマーは、一般的に、異なる環サイズを有する1つの特定の式の複数の分子を指す。しかしながら、大環状ポリエステルオリゴマーはまた、異なる数の同一または異なる構造繰り返し単位を有する異なる式の複数の分子を含んでいてもよい。大環状ポリエステルオリゴマーは、コ−オリゴエステルまたはマルチ−オリゴエステル、すなわち、1つの環状分子内に1つのエステル官能基を有する2つもしくはそれ以上の異なる構造繰り返し単位を有するポリエステルオリゴマーであってもよい。
【0032】
数値範囲がここに挙げられている場合には、特に断りのない限り、範囲は端点および範囲内の整数および端数も含まれるものとする。本発明の範囲は、範囲を画定するときに挙げた特定の値に限定されるものとは考えられない。
【0033】
容器、シートおよびフィルムから一般には選択される成形ポリエステル物品のガス透過性を減じる方法を提供することが本発明の目的である。本方法は、
a.セピオライト型の粘土を、
(i)少なくとも1種の二酸またはジエステルおよび少なくとも1種のジオール、
(ii)少なくとも1種の重合可能なポリエステルモノマー、
(iii)少なくとも1種の直鎖状ポリエステルオリゴマー、および
(iv)少なくとも1種の大環状ポリエステルオリゴマー
の群から選択される少なくとも1種のポリエステル前駆体と混合することによりポリエステルナノ複合材を調製した後、溶剤を存在させて、または存在させずに、少なくとも1種のポリエステル前駆体を重合し、
b.このようにして生成されたポリエステルナノ複合材を含んでなる成形ポリマー物品を形成すること
を含んでなる。
【0034】
ポリエステルナノ複合材の調製
ナノ複合材は、有効量の剥離したセピオライト、剥離したアタパルジャイトまたは剥離したセピオライトと剥離したアタパルジャイトの混合物を含有する。本明細書で用いる「有効量」とは、バリア向上添加剤が、当該の透過する物質(例えば、酸素)に対する物品の透過性を検出可能に減じるのに十分に存在することを意味する。これは、ポリエステルナノ複合材の0.1重量%〜20重量%である。
【0035】
セピオライトおよびアタパルジャイト
粘土鉱物およびその工業用途は、アプライドクレイサイエンス(Applied Clay Science)17(2000年)207−221にH.H.マレー(Murray)により検討されている。カオリンとスメクタイトの2種類の粘土鉱物がナノ複合材に一般的に用いられている。カオリンの分子は、1つはシリカ、1つはアルミナの2つのシートまたは板に配置される。最も広く用いられているスメクタイトは、ナトリウムモンモリロナイトとカルシウムモンモリロナイトである。スメクタイトは、2つのシリカシートと1つのアルミナシートに配置される。モンモリロナイト粘土鉱物の分子は、カオリン基よりも結合が弱く、さらに離れている。
【0036】
セピオライト[Mg4Si6O15(OH)2・6(H2O)]は、その繊維状構造のために高アスペクト比を示す水和ケイ酸マグネシウム充填材である。ケイ酸塩の中でも唯一、セピオライトは、シリカ鎖が繊維の軸に平行に伸びる長いラス状結晶子から構成されている。材料はαとβ形態の2つの形態からなることが分かっている。α形態は繊維の長い束であることが分かっており、β形態はアモルファス凝集体として存在している。
【0037】
アタパルジャイト(パリゴルスカイトとしても知られている)は、アタパルジャイトがやや小さい単位細胞を有する以外は、セピオライトと構造的および化学的にほとんど同一である。本明細書で用いる「セピオライト型の粘土」という用語には、セピオライト自身はもとよりアタパルジャイトも含まれる。
【0038】
各層がマグネシウムイオンを含有する八面体単位の中央シートにボンドされた四面体シリカ単位の2つのシートでできているセピオライト型の粘土は層状繊維状材料である(例えば、L.ボコブザ(Bokobza)ら、ポリマーインターナショナル(Polymer International)53、1060−1065(2004年)の図1および2を参照のこと)。繊維は粘着しあって、繊維束を形成し、これがひいては凝集体を形成することができる。これらの凝集体は、微粉化または化学変性などの工業的プロセスにより粉々にすることができる(例えば、欧州特許第170,299号明細書、トルサ(Tolsa)S.Aを参照のこと)。
【0039】
本発明に用いるセピオライト型の粘土の量は、最終複合材組成物を基準として約0.1〜約20重量%である。選択した特定の量は、業界において周知のとおり、ナノ複合材の目的の用途に応じて異なる。
【0040】
セピオライト型の粘土は、高純度(「レオロジー等級」)の未コート形態(例えば、スペイン、マドリッドのトルサグループ(Tolsa Group, Madrid, Spain)製パンジェル(PANGEL)(登録商標)S9セピオライト粘土)、より一般的には、有機材料で処理して、より「有機親和性」、すなわち、低〜中極性の系と親和性があるようにしたもの(例えば、トルサグループ(Tolsa Group)製パンジェル(PANGEL)(登録商標)B20セピオライト粘土)で入手可能である。セピオライト型の粘土のかかるコーティングの一例は、欧州特許出願第221,225号明細書に開示されているような、ジメチルベンキシルアルキル塩化アンモニウムなどの第四級アンモニウム塩である。
【0041】
スメクティック粘土(例えば、モンモリロナイト)がポリマーマトリックス全体に均一に分散され、個々の小板として剥離するとバリア特性が大幅に改善されるが、その理由は、小板の広い表面積が、拡散種がポリマー材料を通って透過する際に従わなければならない経路のねじれを大幅に増大するためである。しかしながら、セピオライト型の粘土は、長いラス状結晶子へと剥離する。このように、剥離したセピオライト型の粘土が、それが組み込まれるポリマーマトリックスのバリア特性を増大するのに効果的であることは非常に意外である。
【0042】
ポリエステル
用いるポリエステルは、必要な融点を備えた任意のポリエステルであってよい。ポリエステルの融点は約150℃以上であるのが好ましく、約200℃以上であるのがより好ましい。ポリエステル(大半または全てがエステル結合基を有する)は、通常、1種もしくはそれ以上のジカルボン酸と1種もしくはそれ以上のジオールから誘導される。それらは、重合可能なポリエステルモノマーまたは大環状ポリエステルオリゴマーから生成することもできる。
【0043】
本発明の実施に用いるのに最適なポリエステルは、等方性の熱可塑性ポリエステルホモポリマーおよびコポリマー(ブロックとランダムの両方)を含んでなる。
【0044】
ジオールおよびヒドロカルビル二酸またはかかる二酸のエステルからのポリエステルの生成は、A.J.イースト(East)、M.ゴールデン(Golden)およびS.マーヒジャー(Makhija)、カーク−オスマー化学技術百科事典(Kirk−Othmer Encyclopedia of Chemical Technology)、ジョンウィリー&ソンズ(John Wiley&Sons)、J.I.クロシュヴィッツ(Kroschwitz)編集主幹、M.ハウ−グラント(Howe−Grant)編、第4版(1996)、第19巻、609−653に記載されているとおり、業界に周知である。第1の段階で、二酸またはそのジアルキル(一般的にはジメチル)エステルとジオールとの間のエステル化またはエステル交換が生じて、水またはアルコール(一般的にはメタノール)の発生と除去に加えて、ビス(ヒドロキシアルキル)エステルおよびいくつかのオリゴマーが得られる。エステル化またはエステル交換は元来遅い反応であるため、一般的に触媒を用いる。有用なエステル化またはエステル交換触媒の例は、酢酸カルシウム、亜鉛およびマンガン、錫化合物ならびにチタンアルコキシドである。第2の段階において、重縮合、ビス(ヒドロキシアルキル)エステルおよびオリゴマーは、エステル交換反応をし続け、高真空下で除去されるジオールを排除し、分子量を増やす。有用な重縮合触媒としては、錫およびチタン化合物、アンチモンおよびゲルマニウム化合物、特に、PETの場合には、酸化アンチモン(Sb2O3)が例示される。
【0045】
好適な二酸(およびそれらの対応のエステル)は、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、1,12−ドデカン二酸フマル酸、マレイン酸および、例えば、ジメチル、ジエチルまたはジプロピルエステルなどのそれらの誘導体よりなる群から選択される。
【0046】
ジオール成分として用いることのできるグリコールの代表例としては、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−プロピレングリコール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−イソブチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール、イソソルビド、ナフタレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、レゾルシノール、ヒドロキノン、ならびにアルキレンオキシドとジオールまたはポリオールの反応生成物であるポリテトラメチレンエーテルグリコールなどの長鎖ジオールおよびポリオールが挙げられる。
【0047】
ポリエステルの1つの好ましい型において、ジカルボン酸は、1種もしくはそれ以上のテレフタル酸、イソフタル酸および2,6−ナフタレンジカルボン酸を含んでなり、ジオール成分は1つもしくはそれ以上のHO(CH2)nOH(I)、1,4−シクロヘキサンジメタノール、HO(CH2CH2O)mCH2CH2OH(II)およびHO(CH2CH2CH2CH2O)zCH2CH2CH2CH2OH(III)(式中、nは2〜10の整数、mは平均で1〜4、zは平均で約7〜約40である)を含んでなる。(II)および(III)は、mおよびzがそれぞれ異なり、従ってmおよびzは平均であるため、整数とはならない化合物の混合物であることに注意する。好ましいポリエステルにおいて、nは2、3または4であり、かつ/またはmは1である。
【0048】
ポリエステルはまた、重合可能なポリエステルモノマーから直接生成することもできる。本発明に用いるのに好適な重合可能なポリエステルモノマーの代表例としては、ヒドロキシ安息香酸、ヒドロキシナフトエ酸および乳酸などのヒドロキシ酸、ビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレート、ビス(4−ヒドロキシブチル)テレフタレート、ビス(2−ヒドロキシエチル)ナフタレンジオアート、ビス(2−ヒドロキシエチル)イソフタレート、ビス[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]テレフタレート、ビス[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]イソフタレート、ビス[(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチル]テレフタレートおよびビス[(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチル]イソフタレート、モノ(2−ヒドロキシエチル)テレフタレート、ビス(2−ヒドロキシエチル)スルホイソフタレートおよびラクチドが挙げられる。
【0049】
ポリエステルはまた、大環状ポリエステルオリゴマーから直接生成することもできる。本発明に用いてよい大環状ポリエステルオリゴマーとしては、これらに限られるものではないが、下式の構造繰り返し単位を有する大環状ポリ(アルキレンジカルボキシレート)オリゴマーが挙げられる。
【0050】
【化1】
【0051】
式中、Aは少なくとも2つの炭素原子を含有するアルキレン基、シクロアルキレンまたはモノ−またはポリオキシアルキレン基であり、Bは二価の芳香族または脂環式基である。それらは、米国特許第5,039,783号明細書、同第5,231,161号明細書、同第5,407,984号明細書、同第5,668,186号明細書、米国仮特許出願第60/626187号明細書、PCT特許出願国際公開第2003093491号パンフレットおよび国際公開第2002068496号パンフレットおよびA.ラヴァレット(Lavalette)ら、生体高分子(Biomacromolecules)、第3巻、p.225−228(2002年)に記載されているような様々なやり方で調製してよい。大環状ポリエステルオリゴマーはまた、低分子量線状ポリエステルから押出しにより得ることもできる。
【0052】
好ましい大環状ポリエステルオリゴマーは、1,4−ブチレンテレフタレート(CBT)、1,3−プロピレンテレフタレート(CPT)、1,4−シクロへキシレンジメチレンテレフタレート(CCT)、エチレンテレフタレート(CET)、1,2−エチレン2,6−ナフタレンジカルボキシレート(CEN)、テレフタル酸とジエチレングリコールの環状エステルダイマー(CPEOT)の大環状ポリエステルオリゴマー、および上記の構造化繰り返し単位のうち2つもしくはそれ以上を含んでなる大環状コ−オリゴエステルである。
【0053】
ポリエステルは、分岐していてもしていなくてもよく、ホモポリマーまたはコポリマー、あるいは少なくとも1種のかかるホモポリマーまたはコポリマーを含んでなるポリマーブレンドであってもよい。
【0054】
特定の好ましいポリエステルとしては、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)、ポリ(1,3−プロピレンテレフタレート)(PPT)、ポリ(1,4−ブチレンテレフタレート)(PBT)、ポリ(1,4−ブチレンテレフタレート)とポリ(テトラメチレンエーテル)グリコールブロックを有する熱可塑性エラストマーポリエステル(イー・アイ・デュポン・ドゥ・ヌムール・アンド・カンパニー・インコーポレーテッド(E.I. du Pont de Nemours and Co. Inc.)、米国、19898、デラウェア州、ウィルミントン(Wilmington,DE)よりハイトレル(HYTREL)(登録商標)として入手可能)、ポリ(1,4−シクロヘキシルジメチレンテレフタレート)(PCT)およびポリ乳酸(PLA)が挙げられる。PETが特に好ましい。
【0055】
特に注目すべきは、10重量%までのコモノマーにより変性されたものと定義される「変性ポリエステル」である。特に断りのない限り、ポリエステルポリマー(またはオリゴマー)という用語は、変性および未変性ポリエステルポリマー(またはオリゴマー)を意味する。同様に、特定のポリエステルについて言及するとき、例えば、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)は、未変性または変性PETを意味する。コモノマーとしては、ジエチレングリコール(DEG)、トリエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、イソソルビド、イソフタル酸(IPA)、2,6−ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸およびこれらの混合物を挙げることができる。一般的に、PETの好ましいコモノマーは0〜5重量%のIPAと0〜3重量%のDEGとを含む。
【0056】
本発明の特に好ましい実施形態において、ポリエステルベースポリマーは、約2モル%〜約5モル%のイソフタレート単位で変性しておいたPETポリマーを含むポリエチレンテレフタレート(PET)である。かかる変性PETは、「ボトルグレード」樹脂として知られており、トルコのハシオマーサバンジ(Haci Omer Sabanci)ASの完全所有会社であるアドバンサ(ADVANSA)製メリナー(MELINAR)(登録商標)レーザー(LASER)+(登録商標)ポリエチレンテレフタレートブランド樹脂として市販されている。
【0057】
プロセス条件
ナノ複合材材料を製造するプロセス条件は、溶融または溶液プロセスでポリエステルを製造するのに業界に公知のものと同じである。セピオライト粘土鉱物は、ポリエステル重合度が約20の前に、任意の都合のよい製造段階で任意の手段により添加することができる。例えば、モノマーと共に始めに、モノマーエステル化またはエステル交換中、モノマーエステル化またはエステル交換の最後、または重縮合工程の早い段階で添加することができる。
【0058】
DEG生成を反応中に制御する必要がある場合には、様々な触媒を用いることができる。米国特許第3,749,697号明細書に記載されている酢酸リチウムバッファ、およびJP第83−62626号明細書、RO第88−135207号明細書およびJP第2001−105902号明細書に記載されている様々な酢酸ナトリウムおよびカリウムバッファの使用が挙げられる。一般的に、100〜600ppmの酢酸ナトリウムまたはカリウムを、重合中に用いて、DEG形成およびポリマーへの組み込みの程度を最小にした。
【0059】
物品の形成
フィルム試料は、本発明より得られる改善されたバリア特性の指標である。ナノ複合材は、上述したとおり、セピオライト型の粘土の存在下でベースポリマーのインサイチュでの重合により調製される。ナノ複合材は、当業者に任意の公知の方法によりフィルム、シートまたは容器を作製するのに用いることができる。ナノ複合材を含んでなるフィルム、シートおよび容器は、増大した引裂強度、増大した引張弾性率、水蒸気、酸素および二酸化炭素の減少した透過性を示し、高レベルの靭性および透明度を保持している。
【0060】
ポリエステルナノ複合材は、単体またはポリマーブレンドの成分として用いることができる。これらに限られるものではないが、酸化防止剤、帯電防止剤、熱安定剤、UV安定剤、滑剤およびブロック防止剤など業界で一般的に用いる添加剤を組み込むことができる。
【0061】
本発明の物品は、これらに限られるものではないが、フィルム、シート、容器、膜、ラミネート、ペレット、コーティングまたは発泡体の形態またはこれらを含んでなる。物品は、これらに限られるものではないが、射出成形、(共)押出し、ブロー成形、熱形成、溶液流延、ラミネーションおよびフィルムブローイングなど業界に公知の任意の手段により作製してよい。特に好ましい実施形態において、物品は、射出延伸ブロー成形ボトルである。
【0062】
本発明の好ましい物品としては、食品、パーソナルケア(健康および衛生)品目および化粧品用のパッケージが挙げられる。「パッケージング」とは、パッケージ全体またはパッケージの構成要素のいずれかを意味する。パッケージング構成要素としては、これらに限られるものではないが、パッケージングフィルム、ライナ、収縮バッグ、収縮ラップ、トレイ、トレイ/容器組み立て品、交換可能および交換不可能なキャップ、蓋および飲料ボトルネックが例示される。
【0063】
パッケージは、缶、ボックス、ボトル、ジャー、バッグ、化粧品パッケージまたは末端閉鎖管など特定の用途について適切な任意の形態にあってよい。パッケージングは、これらに限られるものではないが、押出し、共押出し、熱形成、射出成形、ラミネーションまたはブロー成形など業界に公知の任意の手段により構築してよい。
【0064】
パーソナルケア品目および化粧品のパッケージングのいくつかの特定の例としては、これらに限られるものではないが、食品用、ならびに処方および処方されていないカプセルやピル、溶液、クリーム、ローション、パウダー、シャンプー、コンディショナー、デオドラント、制汗剤、目、耳、鼻、喉、窒、尿道、直腸、皮膚、毛髪と接触する懸濁液および唇製品用のボトル、ジャーおよびキャップが挙げられる。
【実施例】
【0065】
実施例
本発明を以下の実施例によりさらに定義する。これらの実施例は、本発明の好ましい実施形態を示すものであるが、例証のためのみのものと考えられる。上記の説明およびこれらの実施例から、当業者であれば、その精神および範囲から逸脱することなく、本発明の必須の特徴を把握でき、様々な用途および条件に適合させるべく本発明の様々な変更および修正を行える。
【0066】
略語の意味は次の通りである。「min」は分、「m」はメートル、「cm」はセンチメートル、「mm」はミリメートル、「μm」はマイクロメートル、「kg」はキログラム、「g」はグラム、「lb」はポンド、「M」はモル、「MPa」はメガパスカル、「重量%」は重量パーセント(パーセンテージ)、「DMT」はジメチルテレフタレート、「NMR」は核磁気共鳴、「SEC」はサイズ排除クロマトグラフィー、「Mn」は数平均分子量、「RPM」は毎分回転数、「psi」は毎平方インチ当たりポンド、「ksi」は毎平方インチ当たりキロポンド、「MD」は機械方向、「TD」は交差方向、および「ND」は求めず、である。
【0067】
材料
ジメチルテレフタレート(CAS#120−61−6、99%)はインビスタ(INVISTA)(カンザス州、ウィチタ(Wichita,Kansas))より購入した。エチレングリコール(CAS#107−21−1)はユニバー(Univar)USA(ワシントン州、カークランド(Kirkland,Washington))より購入した。酸化アンチモン(CAS 1309−64−4、99%)および酢酸マンガン(CAS#6156−78−1、99%)はアルドリッチケミカルカンパニー(Aldrich Chemical Company)(ウィスコンシン州、ミルウォーキー(Milwaukee,Wisconsin))より購入した。パンジェル(PANGEL)(登録商標)B20セピオライトは、EMサリバンアソシエーツ(Sullivan Associates)より購入した。用いた対照PET試料はクリスター(CRYSTAR)(登録商標)3934(デラウェア州、ウィルミントンのイー・アイ・デュポン・ドゥ・ヌムール・アンド・カンパニー・インコーポレーテッド(E.I.du Pont de Nemours & Co. Inc.,Wilmington,Delaware)であった。2つのイースター(EASTAR)(登録商標)PETG等級をイーストマンケミカルカンパニー(Eastman Chemical Company)(テネシー州、キングスポート(Kingsport,Tennessee))より購入した。
【0068】
分析方法
サイズ排除クロマトグラフィーシステムは、ウォーターズ(Waters)410(登録商標)屈折率検出器(DRI)を備えたウォーターズコーポレーション(Waters Corporation)(マサチューセッツ州、ミルフォード(Milford,MA))製モデルアライアンス(Model Alliance)2690(登録商標)および静的直角光拡散を組み込んだビスコテック(Viscotek)コーポレーション(テキサス州、ヒューストン(Houston,TX))の型番T−60A(登録商標)二重検出器モジュールから構成されており、差動毛細管粘度計検出器を分子量特定のために用いた。移動相は、0.01Mトリフルオロ酢酸ナトリウム中1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール(HFIP)であった。ポリマーについてのdn/dcを測定し、全試料が測定中完全に溶出されたと仮定した。ジエチレングリコール(DEG)のパーセンテージを1H NMR分光法を用いて求めた。
【0069】
ナノ複合材フィルムの引張特性を、ASTM手順D882に準拠して求めた。モコン(MOCON)(登録商標)パーマトラン(PERMATRAN)−W(登録商標)(モコン(MOCON)(登録商標)社、ミネソタ州、ミネアポリス(Minneapolis,Minnesota))を25℃、100%相対湿度で用い、ASTM手順D6701に準拠して、水蒸気透過率を調べた。目視で、または上記したとおり、50%の相対湿度でASTM D1003に準拠して、黄色の度合いを評価した。
【0070】
実施例1
ポリエステル/セピオライトナノ複合材調製
ステンレス鋼オートクレーブに、DMT(10.1lb、4.59kg)、エチレングリコール(6.7lb、3.0kg)、三酸化アンチモン(2.80g)、酢酸マンガン(3.60g)、酢酸ナトリウム(1.30g)およびパンジェル(PANGEL)(登録商標)B20セピオライト(140.0g)を入れた。反応容器を60psiの窒素で三回パージした。容器の低フロー窒素スイープで、容器を240℃まで加熱した。容器を240℃まで加熱しながら、反応物を25RPMで攪拌した。容器が240℃に達した後、反応温度を10分間維持した。反応物を275℃まで加熱し、90分真空還元サイクルを開始した。真空還元サイクルの完了の際、完全真空(0.1トル)を反応物に適用し、反応物を275℃に120分間維持した。反応物を窒素で加圧し、ポリマーをストランドとして押し出し、水桶中で冷却し、ペレット形態へと刻んだ。ポリマー分子量をSECを用いて求めた。Mn=24600、%DEG=2.89%。この材料は以下「PET−実施例1」と呼ぶ。
【0071】
実施例2
3重量%のセピオライトを含有するフィルムの作製および特性
対照例としてクリスター(CRYSTAR)(登録商標)ポリエステルポリマー(未充填)および実施例1で調製したポリエステル/セピオライトナノ複合材(3重量%セピオライト)を120℃で真空下で一晩乾燥した。30mmの二軸押出し機は、10インチ(25.4cm)フィルムダイおよび窒素ブランケットの付いたフィーダを備えていた。バレルを255℃の温度まで加熱し、ダイを265℃まで加熱した。フィルムを押し出し、冷却流延ドラム上で冷却した。押出し中、フィルタスクリーンは用いなかった。透明度および色を目視により評価した。引張弾性率およびWVTRを上述したとおりにして測定した。結果を表1に示す。
【0072】
【表1】
【0073】
実施例3
セピオライトを含有するPETおよびコポリエステルシートの作製
対照例のクリスター(CRYSTAR)(登録商標)ポリエステルポリマー(未充填)および実施例1で調製したポリエステル/セピオライトナノ複合材(3重量%セピオライト)、およびコポリエステルイースター(EASTAR)(登録商標)21446およびイースター(EASTAR)(登録商標)6763を120℃で真空下で一晩乾燥した。30mmの二軸押出し機は、10インチ(25.4cm)フィルムダイおよび窒素ブランケットの付いたフィーダを備えていた。バレルを255℃の温度まで加熱し、ダイを265℃まで加熱した。試料3A、3B、3Cおよび3Dの供給物は、実施例1のPETナノ複合材組成物(「PET−実施例1」)、PET−実施例1とイースター(EASTAR)(登録商標)21446の重量基準で1:1のペレットブレンド、PET−実施例1とイースター(EASTAR)(登録商標)6763の重量基準で1:1のペレットブレンドおよびクリスター(CRYSTAR)(登録商標)3934対照例であった。厚さ35ミル(889μm)のシートを押し出し、冷却流延ドラム上で冷却した。押出し中、フィルタスクリーンは用いなかった。ASTM D1003に準拠して黄色の度合いを測定した。表2に示す。引張特性は表3に示す。
【0074】
【表2】
【0075】
【表3】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステルホモポリマー、ポリエステルコポリマーおよび少なくとも1種のかかるホモポリマーまたはコポリマーを含んでなるポリマーブレンドから選択される少なくとも1種のポリマーまたはポリマーブレンドから形成された成形熱可塑性ポリマー物品のガス透過性を減じる方法であって、
(a)ガス透過性を減じるのに有効な量のセピオライト型の粘土を、
(i)少なくとも1種の二酸またはジエステルおよび少なくとも1種のジオール、
(ii)少なくとも1種の重合可能なポリエステルモノマー、
(iii)少なくとも1種の直鎖状ポリエステルオリゴマー、および
(iv)少なくとも1種の大環状ポリエステルオリゴマー
から選択される少なくとも1種のポリエステル前駆体と混合することによりナノ複合材を調製し、
(b)少なくとも1種のポリエステル前駆体を重合し、
(c)成形物品を形成すること
を含む方法。
【請求項2】
ポリエステル前駆体が溶媒の存在下で重合される請求項1に記載の方法。
【請求項3】
重合が100〜600ppmの酢酸リチウム、ナトリウムまたはカリウムの存在下で実施される請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ポリエステルホモポリマーまたはコポリマーがポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(1,3−プロピレンテレフタレート)、ポリ(1,4−ブチレンテレフタレート)、ポリ(1,4−ブチレンテレフタレート)およびポリ(テトラメチレンエーテル)グリコールブロックを有する熱可塑性エラストマーポリエステル、ポリ(1,4−シクロヘキシルジメチレンテレフタレート)、ポリ乳酸から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項5】
ポリマーが約2モル%から約5モル%までのイソフタレート単位で変性されたボトルグレードのポリ(エチレンテレフタレート)であり、剥離したセピオライト型の粘土が、変性したポリエチレンテレフタレートの重量を基準として約0.01重量%〜6.0重量%の濃度で存在している請求項1に記載の方法。
【請求項6】
形成することが(共)押出し、射出成形、ブロー成形、射出延伸ブロー成形、押出しブロー成形、ラミネーション、熱成形およびフィルムブローイングから選択される請求項1に記載の方法。
【請求項7】
成形物品がフィルム、シート、容器、膜、ラミネート、ペレット、コーティング、発泡体、パッケージまたはパッケージング部材、ボトル、ボックス、ジャー、缶、バッグ、末端閉鎖管、化粧パッケージ、ライナ、蓋、交換可能または使い捨て容器キャップ、フィルム、収縮包装材料、収縮バッグ、トレイ、トレイ/容器組み立て品および飲料ボトルネックから選択される請求項1に記載の方法。
【請求項8】
ポリエステルホモポリマー、ポリエステルコポリマーまたは少なくとも1種のかかるホモポリマーまたはコポリマーを含んでなるポリマーブレンド中に、剥離したセピオライト型の粘土のナノ複合材を含んでなるパッケージまたはパッケージング部材。
【請求項9】
該パッケージまたはパッケージング部材がボトル、ボックス、ジャー、缶、バッグ、末端閉鎖管、化粧パッケージ、ライナ、蓋、交換可能または使い捨て容器キャップ、フィルム、収縮包装材料、収縮バッグ、トレイ、トレイ/容器組み立て品または飲料ボトルネックである請求項8に記載のパッケージまたはパッケージング部材。
【請求項10】
該ボトルが射出延伸ブロー成形により形成され、かつポリエステルナノ複合材から形成され、ポリエステルが約2モル%から約5モル%までのイソフタレート単位で変性されたボトルグレードのポリエチレンテレフタレートであり、剥離したセピオライト型の粘土が、変性したポリエチレンテレフタレートの重量を基準として約0.01重量%〜6.0重量%の濃度で存在している請求項8に記載のボトル。
【請求項1】
ポリエステルホモポリマー、ポリエステルコポリマーおよび少なくとも1種のかかるホモポリマーまたはコポリマーを含んでなるポリマーブレンドから選択される少なくとも1種のポリマーまたはポリマーブレンドから形成された成形熱可塑性ポリマー物品のガス透過性を減じる方法であって、
(a)ガス透過性を減じるのに有効な量のセピオライト型の粘土を、
(i)少なくとも1種の二酸またはジエステルおよび少なくとも1種のジオール、
(ii)少なくとも1種の重合可能なポリエステルモノマー、
(iii)少なくとも1種の直鎖状ポリエステルオリゴマー、および
(iv)少なくとも1種の大環状ポリエステルオリゴマー
から選択される少なくとも1種のポリエステル前駆体と混合することによりナノ複合材を調製し、
(b)少なくとも1種のポリエステル前駆体を重合し、
(c)成形物品を形成すること
を含む方法。
【請求項2】
ポリエステル前駆体が溶媒の存在下で重合される請求項1に記載の方法。
【請求項3】
重合が100〜600ppmの酢酸リチウム、ナトリウムまたはカリウムの存在下で実施される請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ポリエステルホモポリマーまたはコポリマーがポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(1,3−プロピレンテレフタレート)、ポリ(1,4−ブチレンテレフタレート)、ポリ(1,4−ブチレンテレフタレート)およびポリ(テトラメチレンエーテル)グリコールブロックを有する熱可塑性エラストマーポリエステル、ポリ(1,4−シクロヘキシルジメチレンテレフタレート)、ポリ乳酸から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項5】
ポリマーが約2モル%から約5モル%までのイソフタレート単位で変性されたボトルグレードのポリ(エチレンテレフタレート)であり、剥離したセピオライト型の粘土が、変性したポリエチレンテレフタレートの重量を基準として約0.01重量%〜6.0重量%の濃度で存在している請求項1に記載の方法。
【請求項6】
形成することが(共)押出し、射出成形、ブロー成形、射出延伸ブロー成形、押出しブロー成形、ラミネーション、熱成形およびフィルムブローイングから選択される請求項1に記載の方法。
【請求項7】
成形物品がフィルム、シート、容器、膜、ラミネート、ペレット、コーティング、発泡体、パッケージまたはパッケージング部材、ボトル、ボックス、ジャー、缶、バッグ、末端閉鎖管、化粧パッケージ、ライナ、蓋、交換可能または使い捨て容器キャップ、フィルム、収縮包装材料、収縮バッグ、トレイ、トレイ/容器組み立て品および飲料ボトルネックから選択される請求項1に記載の方法。
【請求項8】
ポリエステルホモポリマー、ポリエステルコポリマーまたは少なくとも1種のかかるホモポリマーまたはコポリマーを含んでなるポリマーブレンド中に、剥離したセピオライト型の粘土のナノ複合材を含んでなるパッケージまたはパッケージング部材。
【請求項9】
該パッケージまたはパッケージング部材がボトル、ボックス、ジャー、缶、バッグ、末端閉鎖管、化粧パッケージ、ライナ、蓋、交換可能または使い捨て容器キャップ、フィルム、収縮包装材料、収縮バッグ、トレイ、トレイ/容器組み立て品または飲料ボトルネックである請求項8に記載のパッケージまたはパッケージング部材。
【請求項10】
該ボトルが射出延伸ブロー成形により形成され、かつポリエステルナノ複合材から形成され、ポリエステルが約2モル%から約5モル%までのイソフタレート単位で変性されたボトルグレードのポリエチレンテレフタレートであり、剥離したセピオライト型の粘土が、変性したポリエチレンテレフタレートの重量を基準として約0.01重量%〜6.0重量%の濃度で存在している請求項8に記載のボトル。
【公表番号】特表2008−525595(P2008−525595A)
【公表日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−548422(P2007−548422)
【出願日】平成17年12月21日(2005.12.21)
【国際出願番号】PCT/US2005/046305
【国際公開番号】WO2006/069131
【国際公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年12月21日(2005.12.21)
【国際出願番号】PCT/US2005/046305
【国際公開番号】WO2006/069131
【国際公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】
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