説明

バリスタ層を有する表示装置

本発明は、第1電極(2)及び第2電極(6)と、これらの電極(2、6)の間に配されており、これらの電極(2、6)の間に印加された電界の影響を受けて発光する光学層(3)とを有する表示装置であって、少なくとも、該表示装置のピクセルの領域内に位置されたバリスタ層(5)を有する表示装置に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1電極及び第2電極と、これらの電極間に配された光学層とを有する表示装置であって、前記光学層は、前記電極間に印加された電界の影響を受けて発光する、表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置のような、パッシブ・マトリックス型表示装置において、画素(ピクセル)の駆動の間のいわゆる「クロストーク」によって生じるコントラストの損失を防止するように、各ピクセルは、電子スイッチを備えている。この電子スイッチは、例えば、MIMダイオード(金属‐絶縁体‐金属‐ダイオード)、薄膜トランジスタ又はバリスタのような、非線形素子である。
【0003】
欧州特許第EP 0 337 711 B1号明細書には、例えば、各ピクセル電極が、関連する信号ラインに、バリスタを介して接続されている透過型液晶表示装置が、記載されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記表示装置の欠点は、多数のピクセルを有する大型表示スクリーン対角寸法の場合、多数のバリスタが利用されなければならないことにある。これは、非常に時間がかかり、高価である。
【0005】
従って、本発明の目的は、前記電子スイッチが、容易に、かつ、廉価に、マトリックス配列内に組み込まれることを可能にする、マルチプレックス駆動によって作動される表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、第1電極及び第2電極と、これらの電極間に配されており、前記電極間に印加された電界の影響を受けて発光する光学層とを有する表示装置であって、電極と前記光学層との間に配されたバリスタ層を有する表示装置によって、達成される。
【0007】
バリスタとは、低電圧においては非常に高い抵抗、高電圧においては低い抵抗を有する電気抵抗器である。従って、小さい電圧が、前記第1電極と前記第2電極との間に印加された場合、前記バリスタ層は、絶縁層として働く。全体で、光学層に作用する前記電界は小さく、(可視)光の発光は、起こらない。しかしながら、ある閾値を越えている高電圧が、前記電極間に印加された場合、前記バリスタ層は、導電性を有するようになり、ほとんど、電極として働く。結果として、2つの前記電極間の距離が、突然変化し、強力な電界が、前記光学層に作用する。前記強力な電界が、突然、発生した結果、前記光学層は、(可視)光を発する。前記バリスタ層は、発光が生じる前記閾値が上昇されることと、輝度対電圧曲線の勾配が急峻になることとをもたらす。従って、アドレス指定されたピクセルと、アドレス指定されていないピクセルとの間の輝度の差が、最大化され、従って、本発明による表示装置のコントラストが改善される。
【0008】
添付の請求項2に記載された有利な実施例は、前記ピクセルの領域内のコントラストが改善されることをもたらす。
【0009】
添付の請求項3に記載された有利な実施例は、前記バリスタ層が構造化されなくてよいので、簡潔、かつ、廉価な態様で、作られることができる。
【0010】
添付の請求項4に記載されている、有利には前記バリスタ層と前記光学層との間に存在する誘電層は、前記電界の絶縁破壊と短絡回路とを防止する。
【0011】
添付の請求項5に記載されている有利な実施例は、付加的に、前記光学層の前記領域内の前記電界を高くする。
【0012】
添付の請求項6ないし9に記載されている有利に選択された物質によって、800℃を超過する高い焼結温度が、表示装置の製造条件と適合しない場合に、焼結ステップを必要としないバリスタ層が、作製されることができる。
【0013】
本発明は、更に、第1電極及び第2電極と、これらの電極間に配されており、前記電極間に印加された電界の影響を受けて発光する光学層とを有する表示装置であって、電極と前記光学層との間に配されたバリスタ層を有し、前記バリスタ層は、ブレードコーティング又はスクリーン印刷によって設けられる表示装置を製造する方法に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明のこれら及び他の見地は、添付された2つの図と、2つの例示的な実施例とを参照することによって、明らかになり、解明されるであろう。
【0015】
図1に示されているように、本発明による表示装置の好適実施例は、例えば、ガラス又は合成樹脂を含む透明基板1を有する。透明基板1上に、平行配置された導電性ストライプの第1電極2が設けられている。前記導電性ストライプは、好ましくは、ITO(スズドープ酸化インジウム)のような、透明な、導電性物質を含む。第1電極2上には、光学層3が位置されている。光学層3は、電界の影響を受けて発光する1つ以上の物質を含んでいる。光学層3上には、誘電物質の誘電層4が備えられており、該誘電物質の誘電層4は、誘電率ε>20を有するのが好ましい。前記誘電層4は、例えば、BaTiOを含む。バリスタ層5は、誘電層4と隣接し、前記バリスタ層5は、平行配置された導電性ストライプの第2電極6を備えており、該第2電極6の該導電性ストライプは、第1電極2の前記導電性ストライプに対して直交して配されている。好ましくは、第2電極6は、導電性物質として、銀のような、金属を含む。2つの電極2、6の前記導電性ストライプは、それぞれ、電気的接続を備えており、電源に接続されている。
【0016】
好ましくは、当該表示装置は、該表示装置を、特に湿気から保護するように、ポリメタクリル酸メチルのような合成樹脂の保護膜を備えている。
【0017】
バリスタ層5は、好ましくは、光学層4が延在する表面全体に渡って光学層4に対して平行に延在する、閉じられた層である。代替的には、バリスタ層5は、構造化され、ピクセル形状の構造を呈することができる。この実施例において、バリスタ層5は、前記ピクセルの領域内、即ち2つの電極2、6の導電性ストライプが互いに重なっている領域内のみに、設けられる。
【0018】
バリスタ層5は、好ましくは、Bi、Co、MnO、Sb、Al及びBから成るグループから選択された少なくとも1つの物質をドープされたZnOを実質的に含む、La、Nb及びWOから成るグループから選択された少なくとも1つの物質をドープされたSrTiOを実質的に含む、La、Nb及びWOから成るグループから選択された少なくとも1つの物質をドープされたYTiOを実質的に含む、又はドープされたZnO粒子若しくはドープされたSrTiO粒子が分散されているポリママトリックスを含む。
【0019】
バリスタ層5を製造するには、まず、バリスタ層5の物質が、粉末状で用意される。次いで、バリスタ層5が、ブレードコーティング又はスクリーン印刷によって製作される。特に、バリスタ層5が構造化される場合、前記スクリーン印刷の方法が、非常に適している。
【0020】
ブレードコーティング処理において、バリスタ層5の、一定量の粉末状物質が、同量の結合材(例えば、Bayer社のBaysilone)と混合される。得られる混合物は、好ましくは30から300μmのブレード距離において、当該表示装置の構造に依存して、光学層3又は誘電層4上に設けられ、次いで乾燥される。乾燥後のバリスタ層5の厚さは、10から60μmの間にある。
【0021】
スクリーン印刷のペーストを準備するのに、バリスタ層5の粉末物質の重量の60から70%が、適切なゲルマトリックス(thixotropic matrix)内で攪拌される。得られたペーストは、光学層3又は誘電層4上に印刷され、次いで乾燥される。
【0022】
他の層、及び構造化された電極の製造は、通例の方法によって行われる。
【0023】
図2において、慣例的な表示装置7と、Bi、Co及びAlをドープされたZnOの閉じられたバリスタ層を有する本発明による表示装置8との、輝度対電圧曲線が示されている。
【0024】
慣例的な表示装置と比較して、本発明による表示装置は、明らかに高い発光閾値を有する。前記輝度対電圧曲線の勾配は、特に高電圧において、慣例的な表示装置のものよりも、急峻である。これら2つの要素によって、本発明による表示装置のコントラストが、改善される。
【0025】
光学層3は、エレクトロルミネセント物質、特に好ましくは、ZnS:Cuベースのエレクトロルミネセント物質を含む。青色発光は、Clとの同時活性化(co-activation)、即ちZnS:Cu,Clによって得られ、緑色発光は、Alとの同時活性化、即ちZnS:Cu,Alによって得られることができ、赤色発光は、Al及びMnによる同時活性化、即ちZnS:Cu,Al,Mnによって得られる。前記発光は、ZnS:CuにおけるZnの部分を、例えばCdに置換し、この結果、結晶のバンドギャップが減少されることによって、長波長側にシフトされることができる。代替的には、サブピクセルの発光色は、蛍光体を混合することによって影響を受けることができ、該蛍光体は、青色発光によって励起されることができる(リエミッタ:re-emitter)。更に、サブピクセルの前記発光色は、カラーフィルタによって、及びカラーフィルタと、基板1又は第1電極2上のブラックマトリックスとによって、変化されることができる。
【0026】
例1
粉末状のBi、Co及びAlドープZnOを準備するために、先ず、2.5wt. %のAl(OH)を含むZnOが、イソプロパノール内で、1kgの、2mm厚さのイットリウム安定化ジルコニウム酸化物の複数のボール体によって、16時間に渡って粉砕された。粉砕ボール(grinding ball)を取り除いた後、得られた物質は、IRランプによって乾燥された。乾燥された粉体は、続いて、大気中で1000℃において、6時間に渡り、か焼(calcine)された。か焼された粗粒子状の粉体は、続いて、イソプロパノール内で、20mm厚さのイットリウム安定化ジルコニウム酸化物の複数のボール体を使用して、6時間に渡って、再び粉砕された。粉砕ボールを取り除いた後、得られた物質は、IRランプによって乾燥された。続いて、得られたAlドープZnOと、5wt.%のBiと、1wt.%のCoとは、イソプロパノール内で、1kgの、2mm厚さのイットリウム安定化ジルコニウム酸化物の複数のボール体を使用して、3時間に渡って、粉砕された。粉砕ボールを取り除いた後、得られた物質は、IRランプによって乾燥された。乾燥された粉体は、続いて、大気中で900℃において、0.5時間に渡って、か焼された。か焼された粉体は、次いで、ボールミル(ball mill)を使用して、シクロヘキサン内で、再度、粉砕された。続いて、前記粉体は、乾燥され、0.125mmのふるいを通過された。
【0027】
例2
ガラスの透明基板1は、ITOの層を備えており、該ITOの層は、フォトリソグラフィと、臭素酸(bromium acid)を使用するエッチングとによって、平行な、導電性ストライプの第1電極2に対して構造化されたものである。続いて、光学層3が、スクリーン印刷によって、第1電極2上に設けられた。光学層3は、3つの異なるエレクトロルミネセント物質を含んでおり、赤色光、青色光又は緑色光を発するサブピクセルを備えるピクセル形状の構造を呈するものであった。光学層3の赤色発光サブピクセルには、ZnS:Cu,Al,Mnが使用された。光学層3の緑色発光サブピクセルには、ZnS:Cu,Alが使用された。光学層3の青色発光サブピクセルには、ZnS:Cu,Clが使用された。光学層3の厚さは、25μmであった。BaTiOを含む28μm厚さの誘電層4が、光学層3上に設けられた。Bi、Co及びAlがドープされたZnOの20μmの厚さのバリスタ層が、ブレードコーティングによって誘電層4上に設けられた。次いで、第2電極6が、バリスタ層5上に印刷された。第2電極6は、第1電極2の導電性ストライプに対して直交して配された、平行配置された銀のストライプを含むものであった。
【0028】
電極2、6の、個々の導電性ストライプは、電気的に接触しており、電源に接続されていた。当該表示装置は、一体的に、ポリメタクリルの保護膜を備えるものであった。
【0029】
当該表示装置は、バリスタ層を有さない慣習的な表示装置と比較して、300%高いコントラストを呈した。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明による表示装置の構造の断面図である。
【図2】慣習的な表示装置の輝度対電圧曲線を、バリスタ層を有する本発明による表示装置の輝度対電圧曲線と比較して示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極及び第2電極と、これらの電極の間に配されており、これらの電極の間に印加された電界の影響を受けて発光する光学層とを有し、電極と前記光学層との間に配されたバリスタ層を有する、表示装置。
【請求項2】
前記バリスタ層が、前記第1電極と前記第2電極とが、互いに重なる領域内に、構造化されて位置されていることを特徴とする、請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記バリスタ層が、前記光学層に対して平行に配され、前記バリスタ層が延在する表面が、前記光学層が延在する表面に対応していることを特徴とする、請求項1に記載の表示装置。
【請求項4】
誘電層が、前記光学層と前記バリスタ層との間に位置されていることを特徴とする、請求項1ないし3のいずれか一項に記載の表示装置。
【請求項5】
前記誘電層が、誘電率ε>20を有する誘電物質を含むことを特徴とする、請求項4に記載の表示装置。
【請求項6】
前記バリスタ層が、Bi、Co、MnO、Sb、Al及びBから成るグループから選択された少なくとも1つの物質をドープされたZnOを、実質的に含むことを特徴とする、請求項1ないし5のいずれか一項に記載の表示装置。
【請求項7】
前記バリスタ層が、La、Nb及びWOから成るグループから選択された少なくとも1つの物質をドープされたSrTiOを、実質的に含むことを特徴とする、請求項1ないし5のいずれか一項に記載の表示装置。
【請求項8】
前記バリスタ層が、La、Nb及びWOから成るグループから選択された少なくとも1つの物質をドープされたYTiOを、実質的に含むことを特徴とする、請求項1ないし5のいずれか一項に記載の表示装置。
【請求項9】
前記バリスタ層が、ドープされたZnO粒子、ドープされたSrTiO粒子、又はドープされたYTiO粒子が分散されているポリママトリックスを有することを特徴とする、請求項1ないし5のいずれか一項に記載の表示装置。
【請求項10】
表示装置であって、第1電極及び第2電極と、これらの電極の間に配されており、これらの電極間に印加された電界の影響を受けて発光する光学層とを有し、電極と前記光学層との間に配されたバリスタ層を有する表示装置を製造する方法であって、前記バリスタ層が、ブレードコーティング又はスクリーン印刷によって設けられることを特徴とする、方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2006−505904(P2006−505904A)
【公表日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−549449(P2004−549449)
【出願日】平成15年10月28日(2003.10.28)
【国際出願番号】PCT/IB2003/004755
【国際公開番号】WO2004/043116
【国際公開日】平成16年5月21日(2004.5.21)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips Electronics N.V.
【住所又は居所原語表記】Groenewoudseweg 1,5621 BA Eindhoven, The Netherlands
【Fターム(参考)】