説明

バリヤーフィルム

射出成形可能であり、透明フィルムにすることができるか、または(共押出成形および/または積層化によって)多層フィルム製品に組み込むことができるバリヤー組成物であって、ドライベースで、a)45〜90重量%の、デンプンおよび/またはヒドロキシルアルキル基、アセテートもしくはジカルボン酸無水物またはグラフト性ポリマーとの反応によって改変されたデンプンから選択される加工デンプン;b)ポリビニルアルコール、酢酸ポリビニル、およびエチレンとビニルアルコールのコポリマーから選択され、溶融状態のデンプン成分と適合する融点を有する、4〜12重量%の水溶性ポリマー;c)ソルビトールと、グリセロール、マルチトール、キシリトール、マンニトール、トリオレイン酸グリセロール、エポキシ化アマニ油もしくは大豆油、クエン酸トリブチル、クエン酸アセチルトリエチル、トリ酢酸グリセリル、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチラート、ポリエチレンオキシドまたはポリエチレングリコールから選択される少なくとも1種の他の可塑剤との5〜45重量%の非結晶性混合物;d)0.3〜2.5重量%のC12〜22脂肪酸または塩;e)0.25重量%〜3重量%の2〜10の親水性親油性バランス値を有する乳化剤系;である組成物。そのバリヤーフィルムは、飲料用ビンにブロー成形するためにはポリエチレンテレフタレート(PET)またはポリ乳酸(PLA)と共射出成形することができ、高度ガスバリヤー性容器またはクロージャーのためにはポリエチレン(PE)もしくはポリプロピレン(PP)または生分解性ポリマーと共射出成形することができ、あるいは、薄膜包装用途またはブロー成形容器のためにはポリエチレン、ポリプロピレンまたはポリ乳酸と共押出成形することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装された製品、特に固体食料品および液体食料品の中へ、またそこから外への二酸化炭素、酸素および窒素のガス相移動を阻止するために、包装として用いるバリヤーフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
食品や飲料品を新鮮に保つことは、包装産業における重要な課題である。最も一般的な包装材料は、包装した食品の内外へのガス移動を阻止するのに非常に劣っている。過去30年間にわたって、バリヤーフィルム層を提供する産業が発展してきた。これらのフィルムは、水蒸気、O、COおよびNなどのガスが食品や飲物の内外へ移動するのを阻止するために用いられる。これまで60年間、プラスチックは包装材料として用いられており、市場での需要の増大と技術的進展によって発展し続けている。多くのプラスチック包装の重要な1つの要件は、食品や飲料品を新鮮に保つことである。食品や飲料品における品質劣化の最も大きな原因は酸化を招く酸素の浸透である。
【0003】
ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)およびポリエチレン(PE)などの汎用性プラスチックはすべてOおよびHOへのバリヤー性をある程度有している。このバリヤー性はバリヤー層の厚さに比例する。3つの要素が、より高いバリヤー性能のプラスチックの必要性を増進させている。第1に、その重量、コストおよび破損性のためにガラスやスズ/アルミニウムから脱却すること、第2に、それをより経済的なものにするためにプラスチック材料を少なくすること(down gauging)、および第3に、より多くの食品がより小さい供給サイズで包装されるように貯蔵寿命を長くする必要性、である。これは、一般消費者向けプラスチック包装のバリヤー特性を大幅に向上させる材料の開発を促している。
【0004】
最初に成功した高性能バリヤー材料はポリ塩化ビニリデン(PVDC)であった。これはPVCの誘導体であり、したがって、同じような負の環境プロファイルを有していると見られている。
【0005】
現在市場に出ているその他の一般的バリヤー材料はエチレンビニルアルコールコポリマー(EVOH)、ナイロン(例えばMXD6)およびニトリルである。これらはすべて、汎用プラスチックにより提供された構造層のバリヤー層として用いられる。
【0006】
バリヤー材料として使用できる唯一の市販の天然高分子は、プラスチック産業のずっと前に開発されたセロファンである。酸素に対するそのバリヤー特性は、今日のバリヤー樹脂と比べて高性能とは見なされておらずコストも高い。
【0007】
PET(ポリエチレンテレフタレート)飲料ボトルの壁の一般的なバリヤー構造は、より高価なバリヤー材料を含む1層または複数のコア層の周りのPET構造層からなる多層構造である。
【0008】
米国特許第5498662号、同第5621026号、同第5897960号および同第6143384号は、バリヤー層におけるポリメタクリル酸ポリマーおよび多糖類の使用を開示している。
【0009】
WO 00/49072は、PETブロー成形したボトルに噴霧コーティングされたモンモリロナイトなどの粘土をベースとしたバリヤーコーティングを開示している。
米国特許出願2004/0087696はPET容器のための水をベースとしたコーティングを開示している。そこでは、粘土材料は、メラミン、ホルムアルデヒドおよびホウ酸結合剤ならびに多糖類およびセルロース材料などの有機水溶性結合剤と混合されている。
【0010】
バリヤー材料は、様々な多くのプラスチック構造物およびプロセスで用いられており、そのそれぞれに、それ自体の機能要件が課されている。バリヤー構造の最も一般的な用途は、菓子類、ベーカリー製品などの食品のラッピング用の薄膜、および過去5年間にわたって市場に出現している大量の小袋(パウチ;pouch)である。これらのフィルムのあるものは、12の層を有していても50μm未満の厚さとすることが可能である。これらのフィルムは一般に共押出によって製造される。
【0011】
WO90/14938は酸素バリヤー積層体での使用に適した高アミロース加工デンプンを開示している。
米国特許第6569539号および同第6692801号は、分散液から施用したデンプンまたは加工デンプンの内部バリヤーコーティングを有する紙および/またはプラスチック積層体を開示している。
【0012】
WO04/052646はデンプン層と生分解性ポリエステル層を用いた多層バリヤーフィルムを開示している。
米国特許出願2002/0187340は、主要な材料がデンプンであり、その材料は分散液から施用される、ポリビニルアルコールおよびデンプンのガスバリヤーコーティングを開示している。
【0013】
バリヤーは、果汁用、場合によっては炭酸清涼飲料用のボトル、および果物や野菜の貯蔵食料などの様々な熱間充填食品にも用いられる。ボトルは通常、共射出延伸ブロー成形によって形成される。このことは、材料を、射出成形して予備成形体にすることと、次いで再溶融しブローしてボトルの形状にすることの両方を必要とする。他の容器は、パリソンを金型壁に対してブローして共押出工程の間にオンラインで所望の形状を実現する共押出ブロー成形を行うことができる。
【0014】
さらに、いくつかの容器は、射出成形で形成した高いガスバリヤー性クロージャーを必要とする。
バリヤー材料の他の重要な使用分野は、食肉トレイなどの硬質(剛性)の包装である。大部分の用途で、硬質(剛性)プラスチック材料は十分なバリヤー性を提供するが、一番上部の薄膜だけは性能の改善を必要とする。
【0015】
ここで、バリヤー技術の展開を抑えると思われる1つの問題点は、プラスチックの再利用性に対するその影響であり、これはボトル市場において特に重要である。最近では多くのPETボトルは、外側のバージン材料と、中間に再生PETおよびバリヤー層を備えた複雑な構造を有している。バリヤー樹脂が再利用システムに適合しない場合、それは、そうした技術に移行する大きな妨げとなる。
【0016】
最近は、持続可能で再生可能な資源をベースとし、かつ/または生分解性である新規な材料が市場に入ってきている。射出延伸ブロー成形してボトルにすることができるか、または包装用に薄膜を形成できるそうした材料の例は、とうもろこしから合成したポリ乳酸である。PLA(ポリ乳酸)はガスバリヤー性が劣っており、また水蒸気バリヤー性も比較的劣っている。生分解性または持続可能性を保持するためには、再生可能な資源をベースとした生分解性バリヤーは現状に利益をもたらすことになる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の1つの目的は、従来技術の材料より安価であり、上記の問題点に対処できる包装材料で容易に積層化されるバリヤーフィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的のために本発明は、ドライベースで、
a)45〜90重量%の、デンプン、および/またはヒドロキシルアルキル基、アセテートもしくはジカルボン酸無水物またはグラフトポリマーとの反応によって改変されたデンプンから選択される加工デンプン;
b)ポリビニルアルコール、酢酸ポリビニル、およびエチレンとビニルアルコールのコポリマーから選択され、溶融状態のデンプン成分と適合する融点を有する、4〜12重量%の水溶性ポリマー;
c)ソルビトールと、グリセロール、マルチトール、キシリトール、マンニトール、トリオレイン酸グリセロール、エポキシ化アマニ油、エポキシ化大豆油、クエン酸トリブチル、クエン酸アセチルトリエチル、トリ酢酸グリセリル、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチラート、ポリエチレンオキシドまたはポリエチレングリコールから選択される少なくとも1種の他の可塑剤との5〜45重量%の非結晶性混合物;
d)0.3〜2.5重量%のC12〜22脂肪酸または塩;
e)0.25〜3重量%の2〜10の親水性親油性バランス値を有する乳化剤系;
の組成を有するフィルム形成バリヤーポリマーを提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
配合物は少量の結合水を含むことができる。ただしその量は、選択したプロセスの加工条件下で水が蒸発しない程度である。
定義した組成物には、潜在的に積層構造で、薄膜を(共)押出するかまたはキャスティングするのに適した配合物が含まれる。場合によって、ブロー成形を伴う(共)射出成形(射出−ブロー成形)、潜在的にブロー成形のためのチューブを含む形状物の(共)押出成形(押出−ブロー成形)、および後続する熱成形のための(共)押出および/または積層シートを含む他の加工方法を用いることができる。
【0020】
本発明の材料の酸素および二酸化炭素バリヤー特性は、デンプンをベースとした従来技術や最近の一般的な市販のバリヤー材料より優れている。バリヤー性能は、高い湿度において、現在の一般的な市販のバリヤー材料と少なくとも同等であるかまたはそれより良好である。
【0021】
本発明のポリマーは、最大60%RHの相対湿度で0.1cm mm/m day atm未満、最大90%RHの相対湿度で0.7cm mm/m day atm未満の酸素透過係数を有する優れた酸素バリヤーである。本発明のポリマーは最大60%RHの相対湿度で0.5cmmm/m day atm未満、最大90%RHの相対湿度で0.9cm mm/m day atm未満の二酸化炭素透過係数を有する。
【0022】
この材料は、PET、PE、(BO)PP、LDPEおよびポリ乳酸などの他の包装用ポリマーを用いて、共押出成形、共射出成形、フィルムブロー成形または熱積層化技術で積層化することができる。PETおよびポリ乳酸を用いた積層体は、清涼飲料、ビールまたは調味料のための飲料用ビンの成形における予備成形体としての使用に適している。他の射出延伸ブロー成形積層製品には、スープ、ジュースおよび加工果物用の高温充填PETまたはPP容器が含まれる。この材料は、酸素およびCOバリヤーの用途に射出成形したPPキャップまたはクロージャーに用いることができる。食品や薬剤用途のための押出ブロー成形PEボトルも本発明の共押出フィルムを含むことができる。PE、PP、BO−PPおよびポリ乳酸(PLA)を用いた積層体は、スナック用ラップまたは食肉などの製品の調整気相包装のための薄膜製リッド(ふた、小袋)などの薄膜包装の用途での使用に適している。PETなどの極性材料との接着性が優れているが、PPなどの非極性材料との接着には一般的なタイ層(tie layer)樹脂が必要とされる。適切なタイ層材料には、PP、EVA、LDPEまたはLLDPEをベースとしたグラフト化ポリマーが含まれる。
【0023】
本発明のバリヤーフィルムは生分解性でありかつ水溶性であるので、再利用可能なプラスチックと用いるのに適している。例えば、PETの再利用で用いられる苛性洗浄プロセスで溶解するので、PETと使用するのが適切である。コンポスト化可能であり、少なくともPLAと同程度に速く生分解するので、PLAと使用するのが適切である。
【0024】
(加工した高アミロースデンプン)
加工デンプンの含量の上限はそのコストによって決定される。この成分は、良好なフィルム形成特性、良好な光学的特性および劣化(後退)作用に対する抵抗性を含んだ、得られる材料の構造的利益に寄与する。ベークド品(baked goods)における老化プロセス(staling process)と類似して、デンプンをベースとしたプラスチックは経時的に脆くなる傾向を有するため、デンプンの劣化(後退)および結晶化は、デンプンをベースとしたプラスチックの最も重要な実際的な問題の1つと関連している可能性がある。
【0025】
典型的な加工デンプンには、ヒドロキシアルキルC2〜6基を有するものまたはジカルボン酸無水物との反応によって改変されたデンプンが含まれる。好ましい成分はヒドロキシプロピル化したアミロースである。他の置換基は、ヒドロキシエーテル置換を形成するためのヒドロキシエチルまたはヒドロキシブチルであってよく、エステル誘導体を生成させるためには、酢酸、マレイン酸、フタル酸またはオクテニルコハク酸無水物などのアセテートまたは無水物を用いることができる。
【0026】
置換の程度[置換されている単位中のヒドロキシル基の平均個数]は好ましくは0.05〜2である。
好ましいデンプンは高アミローストウモロコシデンプンである。好ましい成分は、Penford Australiaから販売されているヒドロキシプロピル化高アミロースデンプンA939である。用いられるヒドロキシプロピル化の最小レベルは6.0%である。典型的な値は6.1〜6.9%である。コスト削減と特性の最適化の理由から、このデンプンの一部を以下のもので置換することもできる。すなわち、
1)より高いかまたはより低いレベルにヒドロキシプロピル化したもの
2)より高いレベルの非加工デンプン。これは加工デンプンのヒドロキシプロピル化のレベルが増大している場合に可能である。
【0027】
3)オクテニルコハク酸無水物(OSA)で改変されたデンプン。これはより高い疎水性度を有する。この加工デンプンを加えると、置換の程度が進むに従って耐水性が増大する。これは、相対湿度が最大で90%となるような場合に、デンプンポリマーを、流体を含む包装用途にバリヤー層として組み込む場合に適している。OSAデンプンのアセチル結合は、水や生物学的に活性な環境に接する際にその材料が生分解性を保つことを保証する。
【0028】
4)デンプンコポリマー、好ましくはデンプンとグラフト化スチレンブタジエンからなるデンプンコポリマー。この材料は製品の耐衝撃性を向上させる。
(デンプン)
組成物中の非加工デンプンの量は、残りを占める他のすべての構成成分の所要添加レベルによって限定され、組成物のバランスをとる(帳尻をあわせる)。これは、コムギ、トウモロコシ、ジャガイモ、イネ、オートムギ、クズウコンおよびエンドウマメ等の供給源から誘導することができる。非加工デンプンは、最終製品のバリヤー特性に寄与する再生可能な資源からの安価な生分解性原料であり、したがってこの用途に非常に魅力的である。しかし、その使用は、劣化(後退)作用(結晶化は脆性をもたらす)の発生によって制限され、また、生成する産物の限定された光学的透明性、限定されたフィルム形成特性、延伸のための限定された弾力性、によって制限される。この現象は、調理されたデンプンのアミロペクチンの結晶化と主に関連していることが分かっているので、高アミロースデンプンは劣化(後退)作用に対してより鈍感である。非加工デンプンの好ましい濃度範囲は、デンプンの合計量に対する割合で0〜50%である。
【0029】
(水溶性ポリマー)
組成物のポリマー成分b)は、デンプンと相溶性であり、水溶性であり、かつ、デンプンの加工温度に適合した融点を有することが好ましい。ポリビニルアルコールは好ましいポリマーであるが、エチレン−ビニルアルコール、エチレン酢酸ビニルのポリマーまたはポリビニルアルコールとのブレンドも用いることができる。室温条件下では選択したポリマーに溶解しないことが好ましい。PVOHは、優れたフィルム形成および優れた結合剤の特徴、良好な弾力性の組合せをもたらし、デンプンをベースとした配合物の加工の助けとなる。PVOHは、酢酸ビニルモノマーの重合によって得られるポリ酢酸ビニルの加水分解によって製造される。完全に加水分解したグレードはあるとしてもほとんど残留アセテート基を含まないが、部分的に加水分解したグレードは残留アセテート基をある程度保持する。完全に加水分解したグレードは温水(93℃(200°F))に溶解し、室温に冷却しても溶液のままである。好ましいグレードのPVOHには、DuPont Elvanol71−30およびElvanol70−62が含まれる。その特性を表Aにまとめる。
【0030】
表A:本発明で使用されたPVOHグレードの特性
グレード 71〜30 70〜62
重量平均分子量 93,700 107,000〜112,000
固有粘度(mPa・s) 27〜33 58.0〜68.0
加水分解率(%) 99.0〜99.8 99.4〜99.8
分子量のより高いグレードでは、耐衝撃性が改善され、水感受性が低下するようである。その最大レベルは主としてコストによって決定される。PVOHのレベルを増大させると、破断点伸びが著しく増大しヤング係数が減少する。6%未満ではフィルムの形成が困難となる。したがって、薄膜バリヤー材料のための好ましい濃度範囲は7〜12%であり、射出−ブロー成形ボトルで適用されるバリヤー材料のための好ましい濃度範囲は4%〜12%である。
【0031】
(ポリオール可塑剤)
加工を助け、バリヤー材料の機械的特性を制御し安定化させるために、特に含水率およびRHに対する依存性を減らすために、この配合物では、ある範囲の可塑剤および保湿剤が有用である。望ましい可塑剤含量は、(共)押出または(共)射出成形工程および続くブローまたは延伸工程の際の所要の加工挙動、ならびに最終製品の所要の機械的特性に主に依存する。
【0032】
コストおよび食品との接触は、適切な可塑剤の選択の際の重要な問題である。好ましい可塑剤は、ポリオール、特にソルビトールと、1種または複数の他のポリオール、具体的にはグリセロール、マルチトール、マンニトールおよびキシリトールとの混合物であるが、エリトリトール、エチレングリコールおよびジエチレングリコールも適している。可塑剤は次の3つの役割を果たす:
1.押出コンパウンディング工程および積層化工程のための適切なレオロジーを提供する。
【0033】
2.製品の機械的特性に良い影響を及ぼし、
3.抗劣化(後退)剤または抗結晶化剤としても作用することができる。
好ましい可塑剤含量は、具体的な用途および共押出工程または積層化工程にもよるが10〜40%である。
【0034】
ソルビトール、グリセロールおよびマルチトールのブレンドは、配合物の機械的特性を改変するために特に適している。キシリトール、ならびにキシリトールとソルビトールおよびグリセロールとのブレンドも適している。OH基の数が増加すればするほど、可塑剤は結晶化を低減させるのにより効果的となる。ソルビトール、マルチトールおよびキシリトールは特に良好な保湿剤である。グリセロールは加工の際にPVOHが溶解する助けとなる。ソルビトールはそれ自体で用いる場合、結晶化が見られる。ある種のポリオール(特にソルビトールおよびグリセロール)は表面へ移動する可能性がある。そこでは、ソルビトールの場合、不透明な結晶性フィルムが形成されるか、あるいは、グリセロールの場合、油性のフィルムが形成される可能性がある。様々なポリオールをブレンドすると、様々な程度でこの効果が発揮される。乳化剤としてグリセロールモノステアレートおよびステアロイル乳酸ナトリウムを加えると、安定化を向上させることができる。さらに、塩との相乗効果によって、機械的特性に対するより強い効果がもたらされる。
【0035】
(他の可塑剤)
PEG化合物は、乳化剤、可塑剤または保湿剤として用いることができる。ポリエチレンオキシドとポリエチレングリコールは、交互にかまたは一緒に、耐水性を増大させ、多層構造(MLS)における層間剥離をもたらす可能性がある膨張を阻止することもできる。
【0036】
代替の可塑剤はエポキシ化アマニ油またはエポキシ化大豆油である。疎水性であるこれらの添加剤は材料の感湿性を改善することができる。これらの可塑剤(乳化系で安定化されていることが好ましい(以下の節を参照されたい))は、加工の助けとなるが、ヤング係数のさらなる低下はさほどもたらさない。クエン酸トリブチル、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチラート(2,2,4-trimethyl-1,3-pentanediol diisobutyrate)およびクエン酸アセチルトリエチルを含むPVC工業においてより一般に用いられている他の可塑剤が適している。
【0037】
カラギーナン、キサンタンガム、アラビアゴム、グァーガムまたはゼラチンなどの(共)可塑剤として作用することができる0〜20重量%の保湿剤、水結合剤またはゲル化剤を用いることができる。糖またはグルコースなどの他の保湿剤も用いることができる。一般に食料製品において増粘剤として用いられ、冷水に部分的に溶解し、熱水に完全に溶解するカラギーナンなどのバイオポリマーは、機械的特性を調整するのに適している。水と結合すると、これらの成分は大幅に可塑化機能を有することができる。ゼラチンを加えて、機械的特性を改善し感湿性を低下させることができる。キサンタンガムは高い水保持能力を有しており、乳化剤としても作用し、デンプン組成物においては抗劣化(後退)効果を有する。アラビアゴムは、テクスチャライザー(texturiser)およびフィルム形成剤としても用いることができ、親水性炭水化物および疎水性タンパク質は、その親水コロイド乳化を可能にし、安定化特性を高めることができる。グァーガムはデンプン組成物において同様の抗結晶化効果を有している。他の適切な保湿剤はトリ酢酸グリセリルである。
【0038】
(塩)
塩化ナトリウムや水酸化ナトリウムなどの塩を用いると、可塑化および保湿効果を得るかまたはそれを向上させることができる。カリウム塩、酢酸カリウム、酸化カルシウムおよびヨウ化ナトリウムも適している。カルシウム塩は押し出したデンプン材料の剛性(硬質性)およびサイズ安定性を改善し、さらにカラギーナンと一緒に用いてゲル化を助けることができる。
【0039】
(脂肪酸類および脂肪酸類の塩類)
ステアリン酸は、例えばワックス類よりもデンプンと相溶性があるので、滑剤として用いられる。ステアリン酸は疎水性であり、したがって、デンプンをベースとした材料の感湿性を改善することができる。ステアリン酸と同様に、ステアリン酸カルシウムなどの塩も用いることができる。ステアリン酸はデンプンをベースとしたポリマーの表面に移動する。デンプンは、脂肪酸と複合体を形成することができると考えられている。デンプングルコピラノシド(グルコース)は「チェア」構造の6員環である。環の周りは親水性であるが、その面は疎水性である。デンプン鎖は、一周当たり約6個の残基の螺旋体を形成している。結果として親水性の外面と疎水性の内面を備えた中空シリンダーが得られる。内部空間は直径が約4.5オングストロームであり、ステアリン酸のような直鎖アルキル分子はその中にはまり込むことができる。同様に、GMSなどの乳化剤の脂肪酸部分はゼラチン化デンプンと複合体を形成し、デンプン結晶化を遅延させ、それによって老化の過程を遅延させることができる。アミロース(デンプン中の直鎖成分)およびアミロペクチン(デンプン中の分岐成分)と複合体を形成するモノグリセリドの量は、乳化剤の脂肪酸部分の飽和の度合いに依存する。不飽和脂肪酸は、脂肪酸鎖中の二重結合によってもたらされる屈曲を有しており、これは複合体を形成する能力を制限する。
【0040】
ステアリン酸は加工助剤として特に有用であるが、PEOまたはPEGの存在下では必ずしもそうではない。ステアリン酸の好ましいレベルは0.5%〜1.5%である。ステアリン酸のナトリウムおよびカリウム塩も用いることができる。コストがやはりこの成分の選択おける要素となるが、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、リノール酸およびベヘン酸はいずれも適している。適切な加工助剤の選択は、MLSにおける層間剥離に対する必要な抵抗性によって主に限定される。
【0041】
(熱安定化剤)
亜硫酸塩剤(二酸化硫黄、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸カリウム)は多くの食品に加えられて、酵素的および非酵素的褐変を防止し、酸化防止剤または還元剤として作用する。亜硫酸塩は、カルボニル中間体と反応することによって非酵素的褐変を防止し、それによってさらに反応して褐色色素を生成するのを阻止する。クエン酸は、しばしばアスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウムと一緒に、酵素的褐変の化学的防止剤として長い間用いられてきた。褐変を望まない用途のための好ましい亜硫酸水素カリウムの濃度は、最大で2%であり、最大2%のアスコルビン酸と一緒にすることも可能である。クエン酸は1%を超えるレベルでは有益でないことが分かっている。
【0042】
(乳化剤)
乳化剤は好ましくは食品グレード乳化剤であり、脂質や親水性成分の組成物中への均一な分散を維持する助けとなる。その選択は一般にHLB(親水性親油性バランス)値によって決まる。好ましい乳化剤は、2〜10のHLB数を有する食品グレード乳化剤から選択され、それにはプロピレングリコールモノステアレート、グリセロールモノオレエート、トリオレイン酸グリセロール、グリセロールモノステアレート、アセチル化モノグリセリド(ステアレート)、ソルビタンモノオレエート、プロピレングリコールモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、カルシウムステアロキシル−2−ラクチレート、グリセロールモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、大豆レシチン、モノグリセリドのジアセチル化酒石酸エステル、ステアロイル乳酸ナトリウム(sodium stearoyl lactylate;SSL)、ソルビタンモノラウレートが含まれる。デンプン系では通常、ステアロイル乳酸ナトリウムおよびグリセロールモノステアレートが用いられる。
【0043】
表B−いくつかの乳化剤の疎水性/親水性バランス(HLB)値
乳化剤 HLB値
ステアロイル乳酸ナトリウム(SSL) 21.0
ポリソルベート80(ソルビタンモノオレエート) 15.4
ポリソルベート60(ソルビタンモノステアレート) 14.4
スクロースモノステアレート 12.0
ポリソルベート65(ソルビタントリステアレート) 10.5
モノグリセリドのジアセチル化酒石酸エステル(DATEM) 9.2
スクロースジステアレート 8.9
トリグリセロールモノステアレート 7.2
ソルビタンモノステアレート 5.9
スクシニル化モノグリセリド(SMG) 5.3
グリセロールモノステアレート(GMS) 3.7
プロピレングリコールモノエステル(PGME) 1.8
グリセロールモノステアレートは親油性の非イオン性界面活性剤であり、デンプン組成物において消泡効果と抗劣化(後退)効果を有しているので、この用途に特に適している。1〜1.5%の範囲のレベルで加えられたグリセロールモノステアレートは、乳化剤として作用して機械的特性を安定化させ、ブレンドの均一性を向上させる。0.25%〜1.5%のステアロイル乳酸ナトリウムを可塑剤系に加えて機械的特性を安定化させ、ブレンドの均一性を向上させることができる。ステアロイル乳酸塩(ナトリウムまたはカルシウム塩として)は、生地強化剤(dough strengthener)としても一般に使用され、したがって抗劣化(後退)剤として作用することができる。グリセロールモノステアレートとステアロイル乳酸ナトリウムの組合せは特性のより速い安定化をもたらす。HLB値は添加剤の規定に従うものであり、SSLとGMSの適切な混合物のためには4〜10のオーダーである。
【0044】
(水)
デンプンを「ゼラチン化(gelatinising)」(ゲル化または溶融(destructurising)とも称される)してポリマー状のゲル構造にするために水を加える。水は、最終製品において可塑剤のような働きもする。そこで水は材料を軟化させるかまたはモジュラスを小さくする。バリヤー材料の含水率は30%未満かまたは75%を超える水分活性度または相対湿度(RH)で変えることができる。多くのバリヤーフィルムおよびバリヤーボトル用途において、バリヤー材料が曝される局部的なRHは最大で90%の値に達してよい。安定した機械的積層化およびバリヤー特性のため、またすべての温度での加工を容易にするためには、非揮発性可塑剤が好ましい。したがって、コンパウンディング段階の間かその後で、および/または続く射出成形またはフィルム形成の供給段階において、水の一部またはすべてを乾燥除去することができる。これは、押出機バレルをベントするか、および/またはペレットをオンライン乾燥させて実施することができる。その工程の間の発泡または使用の際の機械的特性の著しい変化を回避するために、保湿剤の助けを得て残留する水をすべて適切に結合させなければならない。可塑化していない配合物の押出加工は10%の低さの自由水分濃度で可能であり、ポリオール可塑剤との配合物は、射出成形前に0%の自由水分まで乾燥することができる。好ましい自由水分率は、水分脱離実験により測定して、最終製品の使用時のRH範囲での配合物の平衡含水率である。配合物の具体的組成によって変わるが、これは0〜3%の範囲である。
【実施例】
【0045】
本発明のバリヤー材料(薄膜用か共射出成形用のいずれか)は表1に示した処方のデンプンポリマー組成で調製することが好ましい。
【0046】
【表1】

【0047】
(実施例1)
48.3%ヒドロキシプロピル化高アミローストウモロコシデンプン、27.4%ソルビトール、9.6%ポリビニルアルコール、7.7%マルチトール、5.1%グリセロール、1%GMS、0.6%ステアリン酸、0.3%ステアロイル乳酸ナトリウムからなる配合物。
【0048】
(実施例2)
64.1%ヒドロキシプロピル化高アミローストウモロコシデンプン、12.8%ポリビニルアルコール、11.7%ソルビトール、5%グリセロール、3.3%マルチトール、1%GMS、0.8%ステアリン酸、0.3%ステアロイル乳酸ナトリウムからなる配合物。
【0049】
(実施例3)
52.0%ヒドロキシプロピル化高アミローストウモロコシデンプン、35.1%グリセロール、11.0%ポリビニルアルコール、1%GMS、0.7%ステアリン酸、0.3%ステアロイル乳酸ナトリウムからなる配合物。
【0050】
(実施例4)
53.0%ヒドロキシプロピル化高アミローストウモロコシデンプン、34%キシリトール、11.2%ポリビニルアルコール、1%GMS、0.7%ステアリン酸、0.3%ステアロイル乳酸ナトリウムからなる配合物。
【0051】
(実施例5)
52.0%ヒドロキシプロピル化高アミローストウモロコシデンプン、35.0%ソルビトール、11.0%ポリビニルアルコール、1%GMS、0.7%ステアリン酸、0.3%ステアロイル乳酸ナトリウムからなる配合物。
【0052】
(実施例6)
52.0%ヒドロキシプロピル化高アミローストウモロコシデンプン、35.0%エリトリトール、11.0%ポリビニルアルコール、1%GMS、0.7%ステアリン酸、0.3%ステアロイル乳酸ナトリウムからなる配合物。
【0053】
(実施例7)
51.9%ヒドロキシプロピル化高アミローストウモロコシデンプン、20.2%グリセロール、10.8%ポリビニルアルコール、10.1%マルチトール、5.0%ソルビトール、1%GMS、0.7%ステアリン酸、0.3%ステアロイル乳酸ナトリウムからなる配合物。
【0054】
(実施例8)
53.3%ヒドロキシプロピル化高アミローストウモロコシデンプン、18.4%グリセロール、12.5%ポリビニルアルコール、8.1%マルチトール、5.4%ソルビトール、1.1%GMS、0.8%ステアリン酸、0.3%ステアロイル乳酸ナトリウムからなる配合物。
【0055】
(実施例9)
54.9%ヒドロキシプロピル化高アミローストウモロコシデンプン、18.7%グリセロール、10.0%ポリビニルアルコール、8.3%マルチトール、5.5%ソルビトール、0.9%GMS、0.5%ステアリン酸、0.23%ステアロイル乳酸ナトリウムからなる配合物。
【0056】
(実施例10)
66.5%ヒドロキシプロピル化高アミローストウモロコシデンプン、13.1%グリセロール、7.6%ポリビニルアルコール、5.8%マルチトール、3.9%ソルビトール、1.7%GMS、1.1%PEO、0.5%ステアリン酸からなる配合物。
【0057】
(実施例11)
66.5%ヒドロキシプロピル化高アミローストウモロコシデンプン、11.0%グリセロール、7.6%ポリビニルアルコール、9.2%ソルビトール、2.6%マルチトール、1.7%GMS、1.1%PEO、0.5%ステアリン酸からなる配合物。
【0058】
(実施例12)
50%ヒドロキシプロピル化高アミローストウモロコシデンプン、20%グリセロール、10.3%ポリビニルアルコール、10%マルチトール、5%ソルビトール、1%GMS、0.26%ステアロイル乳酸ナトリウム、1.1%亜硫酸水素カリウム、1.1%アスコルビン酸、0.7%ステアリン酸、0.5%クエン酸からなる配合物。
【0059】
(実施例13)
47.2%ヒドロキシプロピル化高アミローストウモロコシデンプン、20%グリセロール、10%ポリビニルアルコール、10%マルチトール、5%ソルビトール、5%クエン酸、0.9%GMS、0.23%ステアロイル乳酸ナトリウム、1%亜硫酸水素カリウム、0.1%アスコルビン酸、0.6%ステアリン酸からなる配合物。
【0060】
(実施例14)
50.9%ヒドロキシプロピル化高アミローストウモロコシデンプン、20.5%グリセロール、10.8%ポリビニルアルコール、10.3%マルチトール、5.1%ソルビトール、1%GMS、0.7%ステアリン酸、0.5%クエン酸、0.24%ステアロイル乳酸ナトリウム、0.1%アスコルビン酸、0.01%亜硫酸水素カリウムからなる配合物。
【0061】
(実施例15)
47.2%ヒドロキシプロピル化高アミローストウモロコシデンプン、20.2%グリセロール、9.7%ポリビニルアルコール、10.1%マルチトール、5%ソルビトール、4.96%クエン酸、1%アスコルビン酸、0.9%GMS、0.6%ステアリン酸、0.22%ステアロイル乳酸ナトリウム、0.01%亜硫酸水素カリウムからなる配合物。
【0062】
(バリヤー特性)
【0063】
【表2】

【0064】
本発明の選択された配合物の酸素透過度を、包装用の一般包装材料およびバリヤー材料と比較して表2に示す。
本発明の配合物の相対湿度に対する依存性を図2にグラフで示す。本発明の配合物はEVOHと同等であり、高い湿度ではEVOHやMXD6の両方より優れている。これは、ボトル壁の内側で局所湿度が80〜90%のオーダーである飲料品の用途に特に適している。
【0065】
本発明のバリヤー性能に寄与する主成分はデンプン、特に化学的に加工された高アミロースデンプンおよびPVOHである。ポリオール可塑剤もそのバリヤー特性に寄与する。
表2および図3は、本発明の配合物がWO90/14938に記載されている高アミロースデンプンフィルムで得られている酸素バリヤーより著しく優れていることを示している。この成分、ならびに押出工程においてこれらの成分によって形成され得る任意の複合体の相乗効果は、本発明のポリマー材料の酸素バリヤー性を大幅に向上させる助けとなることができる。
【0066】
【表3】

【0067】
表3は本発明の配合物の二酸化炭素バリヤーを示し、図4は性能の湿度依存性を示す。バリヤー性能は、市販の包装用途において通常用いられるEVOHグレードと同等である。
【0068】
(光学的特性)
本発明のバリヤー層は透明であり、理想的には製品の視認性を可能にする多層包装品目に適している。
【0069】
本発明のバリヤー材料の光学的特性は250マイクロメートルのシートで測定し、結果は8〜10%のヘイズ(ASTM D1003−00)、85〜95%の光透過率(ASTM D1746−92)、および84.7%の60°鏡面光沢度(ASTM D2457−97)であった。試験したフィルムは、施用したバリヤー層の10倍の厚さであったので、このバリヤー材料は、PET清涼飲料品ボトルにおける20〜40マイクロメートル厚さのバリヤー層のための所要の光学的特性、すなわち90%を超える光透過率、3%未満のヘイズおよびlab b*の読みによる評価で2未満の黄変を達成している。15マイクロメートル厚の層のEVOH−Fは1.5%のヘイズを有し、12〜14マイクロメートル厚のPETは2.5〜3.9%のヘイズを有する。20〜22マイクロメートル厚のPPは2.2〜3.5%のヘイズを有する。
【0070】
(製造方法)
材料は、同方向回転または逆方向回転2軸押出機または選択された設計の単軸押出機を用いて、押出コンパウンディングによって作製される。好ましい方法は、少なくとも10バールの押出圧力と少なくとも100RPMのスクリュー速度での2軸同方向回転コンパウンディングである。他の可塑剤のレベルや特性に応じてプロセスに水を加えることができる(可塑剤と一緒での液体注入によって)。水の除去は、押出物ストランドのための対流乾燥、接触加熱、IR加熱もしくはマイクロ波乾燥、顆粒のための遠心分離法および流動床法またはバレルガス抜き法(venting)あるいはこれらの組合せによって実施することができる。顆粒は、水中でのペレット化、ダイフェース切断、またはストランド冷却および切断によって得ることができる。
【0071】
(単層または多層の転換プロセス(conversion process)における加工性)
多層用途のためのレオロジー適合性
薄膜グレードポリプロピレンおよびボトルグレードPETと比較して、それぞれの加工温度での、本発明の複数の配合物の剪断速度に対する粘度依存性を図1に示す。粘度曲線は、可塑剤の種類やレベルを変えることによって、共押出法において他のポリマーとの相溶性を達成するように調整することができる。これは、実施例10と11との粘度曲線の差で示されている。処方の違いはソルビトールとマルチトールの割合だけであるが、これら2つの実施例の粘度曲線はまったく異なっている。さらに、実施例10について図1に130℃のバレル温度対200℃バレル温度で示すように、異なるバレル温度は、粘度を変える助けとなることができる。実施例11の粘度曲線はPPの曲線と特に適合しており、それは、供給ブロックを用いたフィルム共押出に適したものになっている。
【0072】
(PETでの共射出(co-injection)延伸ブロー成形)
熱安定性
乾燥した配合物の耐熱性を、DSCならびに配合物の発泡および/または褐変を評価するための対流型オーブン実験によって試験した。表4に本発明のある範囲の配合物の熱安定性の結果を示す。より高いレベルのソルビトールまたはキシリトールを有する配合物は最も熱的に安定であり、高いレベルのグリセロールを有する配合物がそれに続くことが分かった。高いマルチトールレベルを有する配合物は熱的安定性がより劣る。亜硫酸水素カリウムとアスコルビン酸を一緒に加えると熱劣化(熱分解)を著しく遅延させ、他方、クエン酸にアスコルビン酸を加えると、室温でも時間とともに褐変を引き起こした。亜硫酸水素カリウムの存在下のクエン酸も、いずれかが存在しない配合物の場合より低温で褐変を引き起こした。しかし、それはアスコルビンの存在下ほど早くはなく、また激しくもなかった。保湿性可塑剤を用いると、これらの未乾燥処方物の水の蒸発の抑制の助けとなる。したがって、保湿性可塑剤で可塑化された部分乾燥配合物は、PET共射出成形で用いられる高いノズル温度でもまったく発泡が見られない。
【0073】
【表4】

【0074】
共射出(co-injection)
材料は、高温または冷却ランナーシステムを用いた従来のスクリュー駆動法または射出駆動法で射出成形することができる。本発明の配合物は、高温での共射出成形のためにPETと相溶性であるように設計されている。本発明のある範囲の配合物は、99トンのクランプ力と、28gの予備成形体を作製する4つのキャビティモールドを有するHusky IN−90予備成形インデックス装置で首尾よく共射出成形された。本発明のバリヤー材料に用いた「A」押出機は標準45mmのRS PETスクリューであり、「B」スクリューは18mmのRSスクリューであり、締切りノズルを備えていた。予備成形体の鋳型のコールドハーフは標準設計であった。ホットハーフは特別設計であった。2つの材料を別個のマニホールドに送り、ノズル中で一緒にして環状(annular)流れパターンを形成させた。それぞれのマニホールドは別個に温度制御されており、良好に熱分離されていた。マニホールド系の中で、ノズルだけは両方の材料流れが同一温度でなければならない部分である。この温度は一般に、PETの要件に適合するように、おおよそ250〜280℃である。材料は、標準的な工業用除湿乾燥機で所定の乾燥を行った。高レベルのソルビトール、低レベルのマルチトールまたは亜硫酸水素カリウムを有する配合物は、PETを用いて共射出するのに熱的に十分安定である。表5は、実施例1、7、8および9に用いた共射出法のための典型的な加工条件を示す。
【0075】
【表5】

【0076】
ボトルブロー成形
本発明の配合物は、従来の延伸ブロー成形ラインで容易にボトルにブロー成形することができる。実施例1および実施例9で作製したバリヤー層を有する予備成形体を、市販のPET延伸ブロー成形機で赤外線加熱ランプおよび機械的延伸ロッドを用いて、ボトルにブロー成形した。予備成形温度は100〜120℃の範囲であり、35〜45バールのブロー成形圧力を用いた。出力速度はキャビティ当たり1000ボトル/時であった。
接着性
>50ダイン/cmの表面張力を有するこのバリヤー材料の極性の特徴と結晶性関連収縮の欠如のため、PETとの接着性は非常に良好であり、したがって、MXD6およびEVOHより著しく優れていることがわかった。
機械的特性
バリヤー層は典型的には、多層構造の合計層厚さの約5〜20%を占める。したがって、その機械的特性は最終特性の機械的特性にある程度寄与することになる。バリヤー材料の機械的特性がより低い場合、容器の壁の厚みを若干増大させていくらかの補正が必要となることがあるが、それはバリヤー層厚さを超えることはない。したがって、せいぜい10%の増加であり、従来のバリヤー材料と比較して削減されたコストで、優れたバリヤー特性の利点によって埋め合わされる。ボトルブロー成形法の場合と同様に伸び挙動も重要であり、軸方向延伸は約1.5X〜3.5Xであり、フープ(hoop)延伸は約3.5X〜5Xである。この延伸は加熱した形態で行い、バリヤー層はマトリックスで支持する。
【0077】
このバリヤー材料の機械的特性を、表6に射出延伸ブロー成形について市販の材料と比較する。
【0078】
【表6】

【0079】
(キャストフィルム押出)
最後にこのバリヤー材料は、任意選択の印刷およびワニスを施した単層製品として用いることもできる。この材料が理想的には熱成形加工にも適しているので、得られるフィルムは、菓子類バーまたはパウチ用には薄くすることができ、熱成形用途には厚くすることができる。
【0080】
本発明の配合物は薄膜の押出注型に適している。当業者は、必要な用途のために、必要な溶融強度と機械的特性が得られるように、適切な可塑剤レベルを選択することができる。本発明の選択した配合物を、90mm単軸押出機を用いて、90〜200℃バレル温度の範囲で1050mm広幅シートダイを通して70〜200kg/hの処理速度で単層薄膜注型した。10〜50m/分の範囲のロール速度で10〜30のオーダーの引取り比(Haul off ratio)用いて、強い単軸配向性が得られた。
【0081】
この材料の単層薄膜の機械的特性を表7にまとめる。
【0082】
【表7】

【0083】
本発明で用いる好ましい組成物はコールドシール可能であり、またホットシール可能である。
(2軸延伸フィルム押出成形)
このバリヤー材料は、共押出して積層体にするか、または別個の積層化ステップで従来のフィルムポリマー(例えば2軸延伸PP)と一緒にすることができる。他の材料は、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)もしくは低密度ポリエチレン(LDPE)、あるいはポリ乳酸(PLA)などの生分解性ポリマーまたは他のポリエステルなどの任意の適切な包装用ポリマーであってよい。追加のタイ層および保護コーティングが必要と考えられる場合、本発明のバリヤー材料は、3層の積層体または5層〜7層製品の中間層として使用することが好ましい。
【0084】
さらに、一方の側だけに耐水性が必要であるか、または包装製品に水蒸気バリヤーが必要でない場合、それは2つの層の包装用ラップのうちの内層であっても外層であってもよい。
【0085】
当業者は、所望のポリマーの組合せに必要な粘度適合性が得られるように適切な可塑剤レベルを選択することができる。ほとんどの場合、供給ブロックは種々の材料層を制御するのに十分であり、他の場合複数のマニホールドダイがより望ましい。
多層適合性
接着性は、PETなどの極性材料とは非常に優れており、BO−PPなどの非極性材料との接着性については通常のタイ層樹脂が必要とされる。適切なタイ層材料にはPP、EVA、LDPEまたはLLDPEをベースとしたグラフト化ポリマーが含まれる。PPへの接着のためには、透明な用途にはAtofinaからのOrevac PPCが適しており、不透明な用途にはAtofinaからのOrevac18729または18910が適している。他の適切なタイ層には、EVAコポリマー、アクリル酸コポリマーおよびターポリマー、アイオノマー、メタロセンPE、エチレンアクリル酸エステルターポリマーおよびエチレン酢酸ビニルターポリマーが含まれる。無水物改変ポリマーは本発明の乾燥配合物にも適している。バリヤー材料は本質的に帯電防止性であり、すべての標準的印刷技術で印刷するかまたはコーティングすることができる。溶媒をベースとしたインクについては、テープ剥離試験で測定して、インクやコーティング材との接着性が非常に優れている。引き裂き抵抗(ASTM D1938)は200〜400Nmであり、摩擦運動係数(ASTM D 1434)は0.1〜0.3である。
フィルムブロー成形
このバリヤー材料は、多くは多層2軸延伸フィルム押出について上記した原理によって、望むなら同様のタイ層の原理を用いて、共押出を行ってブロー成形フィルムにすることができる。
【0086】
本発明の処方は、層の厚さとコンパウンド価格の両方のコスト削減を可能にする、大幅に少ないコストで、ごく一般に用いられる材料(例えばMXD6)より良好なバリヤー特性を提供するという点で、バリヤー材料の中では非常に独特である。
【0087】
このバリヤー材料の構成成分の特性は、オイルをベースとしたポリマーと比較してその価格を確実に安定させ、また、それらがMXD6の価格の80%の利益性を備え得ることができるので、MXD6と比較して価格競争力を確実にする。
【0088】
さらにその水への溶解性が、このバリヤーをそれと混合するマトリックス材料への再利用性を優れたものにしている。単層構造バリヤー包装材として用いる場合、この材料はさらにコンポスト化可能でかつ生分解性であり、環境温度でゴミとして分解し生分解する。この独特の特性は処方における化合物の組合せによるものである。
【0089】
当業者は、本発明の本質的な教示から逸脱することなく、本発明を様々な仕方で実施できることを理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明の選択された配合物の粘度の剪断速度依存性を、ボトルグレードPETおよびフィルムグレードPPと比較して示す図である。
【図2】本発明のバリヤー材料の酸素透過度の相対湿度依存性を、EVOHおよびMXD6と比較して示す図である。
【図3】本発明のバリヤー材料の酸素透過度の相対湿度依存性を、特許WO90/14938のデンプンフィルムと比較して示す図である。
【図4】本発明のバリヤー材料の二酸化炭素透過度の相対湿度依存性を、EVOHおよびMXD6と比較して示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドライベースで、
a)45〜90重量%の、デンプン、および/またはヒドロキシルアルキル基、アセテートもしくはジカルボン酸無水物またはグラフトポリマーとの反応によって改変されたデンプンから選択される加工デンプン;
b)ポリビニルアルコール、酢酸ポリビニル、およびエチレンとビニルアルコールのコポリマーから選択され、溶融状態のデンプン成分と適合する融点を有する、4〜12重量%の水溶性ポリマー、
c)ソルビトールと、グリセロール、マルチトール、キシリトール、マンニトール、トリオレイン酸グリセロール、エポキシ化アマニ油、エポキシ化大豆油、クエン酸トリブチル、クエン酸アセチルトリエチル、トリ酢酸グリセリル、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチラート、ポリエチレンオキシドまたはポリエチレングリコールから選択される少なくとも1種の他の可塑剤との5〜45重量%の非結晶性混合物;
d)0.3〜2.5重量%のC12〜22脂肪酸または塩;
e)0.25〜3重量%の2〜10の親水性親油性バランス値を有する乳化剤系;
の組成を有するフィルム形成バリヤーポリマー。
【請求項2】
成分b)がポリビニルアルコールである請求項1に記載のフィルム形成バリヤーポリマー。
【請求項3】
酵素的褐変および非酵素的褐変を防止するための熱安定化剤をさらに含む請求項1に記載のフィルム形成バリヤーポリマー。
【請求項4】
水結合剤またはゲル化剤として、塩化ナトリウム、水酸化ナトリウム、カリウム塩、酢酸カリウム、酸化カルシウムまたはヨウ化ナトリウムをさらに含む請求項1に記載のフィルム形成バリヤーポリマー。
【請求項5】
カラギーナン、キサンタンガム、アラビアゴム、グァーガムまたはゼラチンなどの(共)可塑剤として作用することができる0〜20重量%の保湿剤または水結合剤もしくはゲル化剤をさらに含む請求項1に記載のフィルム形成バリヤーポリマー。
【請求項6】
最大60%RHの相対湿度で0.1cm mm/m day atm未満、最大90%RHの相対湿度で0.7cmmm/m day atm未満の酸素透過係数を有する請求項1に記載のフィルム形成バリヤーポリマー。
【請求項7】
最大60%RHの相対湿度で0.5cm mm/m day atm未満、最大90%RHの相対湿度で0.9cmmm/m day atm未満の二酸化炭素透過係数を有する請求項1に記載のフィルム形成バリヤーポリマー。
【請求項8】
ポリエチレンテレフタレートまたはポリ乳酸と請求項1に記載の組成物との共射出成形積層体。
【請求項9】
飲料用ビンにブロー成形するための請求項8に記載の共射出成形積層体の予備成形体。
【請求項10】
ポリエチレン、ポリプロピレンまたはポリ乳酸と請求項1に記載の組成物との共押出積層体。
【請求項11】
薄膜包装の用途のための請求項10に記載の共押出積層体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−517108(P2008−517108A)
【公表日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−537065(P2007−537065)
【出願日】平成17年10月18日(2005.10.18)
【国際出願番号】PCT/AU2005/001605
【国際公開番号】WO2006/042364
【国際公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【出願人】(502247341)プランティック・テクノロジーズ・リミテッド (7)
【Fターム(参考)】