説明

バリヤー被覆をもつ物品及びそのような物品を製造する方法

真空被覆装置を使用せずに、また、基体材料や基体の形状の選択に関してそのような装置の場合に起こる制限をもたない、バリヤー層を製造する代替的方法として、本発明は、基体と火炎−熱分解金属酸化物含有層からなるバリヤー層を提供した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広義には被覆の製造に関する;特に、本発明は、バリヤー層をもつ物品及びそのような物品の製造に関する。
【背景技術】
【0002】
物品のバリヤー被覆は、一般に表面の封止のため、特に、表面の周囲から及び表面の周囲への原子や分子の通過を阻止するため又は低下させるために用いられている。そのような被覆の応用は対象に応じて変化する。例えば、バリヤー被覆は食品包装において、できるだけ密封することによって、包装された食品の陳列寿命の延長を達成することができるように用いられる。
【0003】
薄いバリヤー層を製造するために、プラズマ堆積、蒸気堆積又はスパッタコーティングのような真空又は低圧堆積法がしばしば用いられる。しかしながら、脱気が必要なためにこれらの方法はコストがかかる。さらに、これらの方法はまたすべての基体に適しているものではない。基体の中でも、大きな形のもののときにはそれに応じて大きな真空室を準備しなければならないので困難が伴う。真空中でかなりの量の気体を発生させる基体やトラップした気体の脱気中の機械的負荷に耐えることができない基体は、一般的にこれらの方法によって被覆することができない。
【0004】
一方、これらの方法によって製造することができる被覆は、ナノメートル又はマイクロメートルの範囲のように非常に小さな厚みの層でさえも非常に良好なバリヤー効果を有している。
【0005】
米国特許第5,165,972号は、それによってガラス表面からのアルカリ金属の移動が阻止される、ガラス上のバリヤー被覆を開示している。その被覆は、ガラス表面におけるシランガスの熱分解、すなわち、ガス状の電子供給化合物とともに、600℃以上に加熱することによって製造される。そして、ガラス表面からの酸素はその層を形成することに貢献している。しかしながら、この方法は、基体表面が非常に高温であることを必要とするので、熱的安定性が十分ではない多くの基体に適していない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そのため、真空コーティング装置を使用せず、基体材料及び基体寸法の選択に関して、そのような装置の場合又は高温表面における熱分解の場合に問題となる制限を受けないで、少なくとも比肩できる性質をもつバリヤー被覆を使用、製造できる代替となる手段の必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この物品は非常に驚くほど簡単な、独立請求項による被覆された基体とその基体を製造する方法によって達成された。有利な改良・発展はそれぞれの従属請求項の主題である。
【0008】
本発明は、基体とその上の火炎−熱分解性適用金属酸化物含有層からなるバリヤー被覆をもつ物品を提供する。そのような製品は、本発明により、少なくとも基体表面の1つの領域が火炎を通され、火炎が基体のその領域を通過する間に、火炎内で金属含有化合物の加水分解によって、金属酸化物含有層が堆積される。
【発明の効果】
【0009】
米国特許第5,165,972号によって知られている方法とは異なり、金属含有化合物の加水分解は既に火炎の中で起きている。本願の場合、火炎は、基体がほんのわずかしか加熱を受けないように非常に速く基体の上を通過する。火炎中の加水分解であるため、酸素を排除している米国特許第5,165,972号により知られている方法で引き起こされるような基体表面の化学量論的な酸素との結合によるすべての変化はほとんど回避されている。
【0010】
本発明によってスパッタリング又はプラズマによる堆積により作られるバリヤー層と少なくとも比肩できる性質をもつバリヤー層を製造することができる。しかしながら、公知のバリヤー層を製造する方法との相違点として、被覆される基体の周囲の脱気をしないことが必要である。スパッタリング、蒸気堆積又はプラズマ誘導気相堆積のような真空被覆法では脱気が必要であり、大きなコスト要因となるものであるが、本発明による被覆の場合はそれを避けることができる。また、本発明によれば、そうでなければ相応の大きな体積が必要で、その結果として高価になる真空装置を必要とするような、非常に大きな表面の基体を問題なく提供することができる。
【0011】
本発明による火炎−熱分解性を適用した層又は堆積層は、一般に、火炎−熱分解層がOH基を有している真空堆積法により堆積した層と異なっている。特に、そのようなOH基は層の表面上に位置している。その結果、不浸透性の構造とは別に、バリヤー性を用意するために、高表面エネルギーと官能基をもつ表面が作られた。その表面は、さらに分子とよく結合することができる。よって、本発明の層はまた、例えば、本発明の層に良好に付着するような被覆への応用のような別の処理にとりわけ適している。
【0012】
高表面エネルギーはまた効果的な曇り止め作用を生み出す。このことは、本出願人が本願と同日に出願した、「曇り止め被覆を製造する方法及びその方法により得られる生産物」という表題のドイツ特許出願に記載されている。その詳細はここに記載している本発明に全体として組み込まれる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の好ましい態様によると、シリケート含有火炎−熱分解適用層が製造された。その層は、火炎中でケイ素化合物の加水分解によって堆積した層を含有するシリケート含有層によって製造することができる。このために適したケイ素化合物はヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)、ヘキサメチルジシラザン(HMDSN)、テトラメトキシシラン及びテトラエトキシシランである。
【0014】
追加的にあるいはその代わりに、チタン、アルミニウム、ジルコニウム、スズ、インジウムのうち1つの金属の化合物が該層の堆積の間に火炎中で加水分解されることにより火炎−熱分解層がチタン、アルミニウム、ジルコニウム、スズ、インジウムのうち少なくとも1つの酸化物を含有するとき、有利な機能的性質が火炎−熱分解層又は火炎−熱分解性適用層に与えられる。これらの金属の酸化物はまた火炎−熱分解層中で混合物の形で、ケイ素酸化物又はシリケートと結合して存在していてもよい。例えば、そのような金属酸化物の混合物から、非常に硬い及び/又は湿気抵抗性の及び/又は誘電性の層を製造することができる。本発明の目的のために、混合物はドーピングされたものを含んでいると理解される。例えば、シリケート含有火炎−熱分解層は他の金属酸化物、例えば、1個又はそれ以上の前述の金属の酸化物が追加的な機能的性質を得るため及び/又は火炎−熱分解層のバリヤー性を改善するためにドープされたものも特に可能である。例えば、スズ酸化物は熱反射層として適している。
【0015】
本発明による火炎−熱分解層は他の材料と混合又は他の材料がドープされた金属酸化物もまた含有していてもよい。追加の機能的性質をもつ火炎−熱分解性堆積層の有利な例は、フッ素及びインジウムをドープしたスズ酸化物含有火炎−熱分解層である。そのような層は、熱反射性に加え、表面における静電気の蓄積を減少する例として好適であり、また、伝導性の透明な層として好適である。
【0016】
多種の火炎−熱分解性の堆積酸化物は単一層内においてだけでなく、互いに混合することができる。本発明を発展させると、1個又はそれ以上の層からなる火炎−熱分解性層を堆積させるという考え方もできる。多層構造により達成することができる効果の中には、例えば、反射性効果又は反射防止性効果及び/又は色度点(chromaticity point)シフトのような光学的効果がある。いうまでもなく、火炎−熱分解性の被覆による堆積法は多層の機能性の層を得るために他の被覆方法もまた併用することができる。
【0017】
表面に対して垂直な方向に連続的に変化する組成物による勾配層も本発明により火炎−熱分解性堆積をさせることができる。種々の酸化物の混合物をもつ火炎−熱分解層は、例えば、基体の上に火炎を通し、火炎中での多くの金属含有化合物を加水分解することにより金属酸化物含有層を堆積することにより作成できる。その表面はまた、多種の酸化物を含有する火炎−熱分解被覆を堆積させるために、それぞれ供給される一連の異なった金属含有化合物の上を通過させることができる。後者の方法はまた、多層火炎−熱分解性層を堆積させるために特に適している。一連の火炎を表面上に通過させるには、例えば、連続的に多くのバーナーを並べて、基体を動かすことにより及び/又は基体の上にそのバーナーを通すことで行うことができる。
【0018】
性質の組合せは、異なった適当な金属酸化物含有化合物の前駆体ガスの混合物を1個の火炎又は連続的に並べた多くの火炎を通すことにより達成することができる。非常に硬い及び/又は湿気抵抗性及び/又は伝導性の層は、例えば、Si、Ti、Al、Zr、Sn、In又はSbのような金属の酸化物の混合物から製造することができる。
【0019】
さらに、メタン、プロパン又はブタンを含有する可燃性のガスが火炎を作るのに好適に用いられる。これらのガスは、可燃性のガスとして比較的安価であり、適当な火炎温度を作ることができる。燃焼は空気中で行われるか、又は別に供給される酸素によって行われる。
【0020】
火炎中で金属含有化合物の加水分解をできるだけ完全に行うために、火炎が酸化性の部分と還元性の部分を有しているときは、基体は酸化性の部分のみを通過させることが有利であることもわかった。別の方法としては、火炎を作るために還元性成分、好ましくは水素又は一酸化炭素を含有する可燃性のガスを使用することである。
【0021】
驚くべきことに、非常に薄い火炎−熱分解層でさえ良好なバリヤー性を有していることがわかった。例えば、本発明により火炎−熱分解的に堆積された薄いバリヤー被覆は、1〜100ナノメートル、好ましくは4〜40ナノメートル、せいぜい20ナノメートルで既に非常に良好なバリヤー効果を有している。
【0022】
バリヤー効果とは異なり、本発明により製造される層はまた別の性質も示す。例えば、火炎−熱分解的に堆積された金属酸化物含有層はまた、基体の表面仕上げ、特にその粗さを改善することができ、表面に存在している空孔をふさぐことができる。表面は、この方法によって、火炎−熱分解層がシールされるだけでなく、一層滑らかにされるので、すべり層(sliding layer)を提供することができるようになる。
【0023】
さらに、せいぜい80ナノメートル、好ましくはせいぜい60ナノメートルまでの直径をもつ堆積層中の粒子によりざらざらした表面構造をこの火炎−熱分解堆積により製造することができる。この場合、粒子は、不浸透性の火炎−熱分解層の表面に配置される。そのような層の場合、層厚はその上に配置された粒子を除いた不浸透性の層を意味するものとして理解される。
【0024】
そのような層構造は、特にケイ素酸化物含有層において発見されている。表面に存在するさらに大きい直径をもつ個々の粒子の能力は、この場合、除外することができない。例えば、顕微鏡下、ある条件では単一の粒子のように見える数個の粒子の凝集があるかもしれない。とにかく、本発明のこの態様によると、電子顕微鏡で200,000倍の倍率で認識できるうち90%以上の粒子は、せいぜい80ナノメートル、好ましくはせいぜい60ナノメートルの直径を持っている。一般に、大部分の粒子は40ナノメートルまでの直径を持っている。大きな直径を持つより大きな粒子はまた、明らかに、そのような小さい凝集した粒子と一緒になることができる。これらの層は、とりわけ他の層と特に良好に接着する被覆を得ることを可能にする。それは、非常に大きい表面領域が上述の堆積層の粒状の構造によってできるからである。さらに、ひっかきに対する感受性も減少させることができる。
【0025】
本発明の1態様によると、火炎−熱分解被覆をもつガラス基体又はガラス−セラミック基体を提供することが構想される。ガラス又はガラスセラミック自体は、一般に既に良好なバリヤー性を有しているが、それにもかかわらず、本発明による追加的なバリヤー被覆は製品の性質を驚くほど改善することができる。ガラス又はガラスセラミック上のバリヤー被覆によって、特に、イオン又は分子の基体から又は基体への拡散を防止することができる。例えば、基体成分の基体又は基体に適用された他の被覆成分からの望ましくない拡散は、基体のコンディショニング又は一般的な加熱の間に起こる可能性がある。
例えば、基体の装飾的な色材を燃焼させたとき、本発明によるバリヤー被覆は、基体への装飾的色材の拡散を防止することができ、また反対に、ガラス又はガラスセラミックから構成成分が拡散するのを防止することができる。驚くべきことに、本発明による火炎−熱分解被覆が基体に適用され、焼き付けられた装飾の末端に望ましくない光輪(halo)や境目が形成するのを防止することができることが発見された。この態様の方法及びそれによって製造される生産物はまた、本出願人の本出願と同日に出願した「拡散バリヤーを持つガラス−セラミック物品及び拡散バリヤーを持つガラス−セラミック物品の製造方法」という表題のドイツ特許出願に記載されている。その詳細はここに記載している本発明に全体として組み込まれる。装飾の焼き付けの際、装飾の周囲の光輪の形成を避けるためには、ほんの約10ナノメートルの火炎−熱分解層の層厚で可能となる。
【0026】
別の応用は、ガラス又はガラス−セラミック物品の攻撃的なガス及び/又は燃焼産物に関する腐食防止である。本発明はまた、特にイオウ含有可燃性ガスに直接接触しているガスで加熱されたガラス−セラミックのホブ(hob)に適している。
【0027】
また別の好ましい応用は、ソーダ石灰ガラスにおけるガラスからアルカリ類が拡散するのを防止するための火炎−熱分解バリヤー被覆である。アルカリ類と薬剤又は他の機能性の層の望ましくない相互作用はこの方法により効果的に減少させることができ、しかも驚くべきことに単純な方法で可能となる。この点から、本発明による被覆は、薬学的な包装、特に薬剤のコンテナ、又はパン焼きトレーに適している。特に有利な応用はまた、防炎ガラス窓、特にガラス−セラミック製のものである。そのようなのぞき窓は、例えば、暖炉やバーナー又はストーブの窓に用いられている。しかしながら、ガラス−セラミックは木材や天然ガスや燃料油のような化石燃料の燃焼に際して発生するイオウ酸化物によって腐食を受ける。本発明による火炎−熱分解被覆はイオウ酸化物によって引き起こされるガラスの腐食を防止するか、少なくとも減少させる。
【0028】
本発明による火炎−熱分解被覆はまた、ガラスセラミックの製造において、原料ガラスのセラミック化の際のセラミック基板への粘着性付着を回避するため又はセラミック化の前にガラス基板を処理する際にひっかき傷や損傷を受けることを回避するためにすべり層(sliding layer)として使用することができる。この目的のため、本発明により、金属酸化物含有層がセラミック化の前に原料ガラスの少なくとも一方の側に適用される。原料ガラス基体はセラミック化基板の上に置かれ、その後セラミック化される。原料ガラスはセラミック化の間の温度では非常に柔らかいので、セラミック基板への粘着性付着が起きることがある。原料ガラスはまた、セラミック化プロセスの間に収縮するので、収縮プロセスによって引き起こされる基板からの分離が起きるという損傷があることがある。これらの損傷により、ガラスセラミックの強度の減少が起きる。ひどくなる損傷と広い表面領域における粘着性付着を回避するため、一般に、凹凸のある面を持つ原料ガラスがセラミック化のために用いられる。しかしながら、すべり層(sliding layer)として機能する本発明による火炎−熱分解被覆により、両面が滑らかなガラスセラミック板を得ることができる両面が滑らかな原料ガラス基体を使用できる。一般に、そのような火炎−熱分解バリヤー層はまた、「調節雰囲気」からの揮発成分及び/又は粒子との相互作用に対して、基体表面や層表面を密封することができる。例えば、ホブ(hob)、反射板、オーブンの窓、暖炉、ストーブ及びバーナーののぞき窓のようなガラス又はガラス−セラミック物品が特にそのような条件に曝されている。
【0029】
本発明による被覆はまた、ソーラーガラス部品、特にそのようなガラス部品における反射防止層の分解を防止する。この目的のために、ソーラーガラスパネルの単層又は多層の反射防止層を本発明による火炎−熱分解性適用層により被覆することができる。本発明の目的のため、ソーラーガラス部品はソーラー装置−ソーラー熱的装置及びソーラー光発電装置の双方−に使用されるものを意味する。
【0030】
驚くべきことに、とりわけ前述のガラス又はガラス−セラミック基体のような比較的温度抵抗性基体を被覆することができるだけでなく、金属又はプラスチック基体もまた被覆することができる。プラスチックフィルムでさえ火炎−熱分解層の堆積のために火炎に曝すことにより、損傷を受けずにバリヤー被覆をすることができる。金属基体の場合、本発明は、例えば、高品質のスチール基体をさらに改良するため、特に高品質スチール製品に典型的に起こる指紋や同様の目に見える汚れを防ぐため及び/又は腐食防止のために用いることができる。
【0031】
ガラス−セラミックの製造の場合と同様に、耐熱性層として、本発明による火炎−熱分解被覆は、特に熱的成形において連続的プロセスを受けるようなプラスチック基体の場合においても、基礎となる表面又は金型への粘着性付着を防止することができる。
【0032】
本発明を発展させることにより、可燃性ガスに有機金属化合物を添加することで、伝導性酸化物又は半伝導性酸化物を作ることができる。すなわち、伝導性酸化物又は半伝導性酸化物を含有する火炎−熱分解層を製造することが可能となる。そのような層は、例えば、伝導性酸化物又は半伝導性酸化物を含有するシリケート又はケイ素酸化物の形の層は、バリヤー効果に加え、静電気の蓄積を回避するために作られる。例えば、スズ酸化物を含有する化合物火炎−熱分解層を堆積することができる。この目的のために、スズ含有化合物、例えば、塩化第2スズ又はスズを含有する有機物質が可燃性のガスに加えられる。
【0033】
本発明により製造することができる物品を使用したときの性質及び能力はさらに機能的な層により有利に拡張することができる。例えば、以下の性質−誘電性、赤外線反射性、ひっかき傷抵抗性、反射防止性、反射性、光触媒性、彩色性、抗菌性−の少なくとも1つを有する機能的な層を有利に使うことができる。
【0034】
機能的な層は火炎−熱分解バリヤー層の上に作ることができ、火炎−熱分解バリヤー層を他の機能性層の上に作ることもできる。
【0035】
機能性層のさらに有利な例はインジウム−スズ酸化物層である。そのような層は、しばしば透明な伝導性層として用いられる。その透明な伝導性層により、本発明のさらに有利なことが得られる。インジウム−スズ酸化物(ITO)は貧粘着性で、基体上への粘着性が弱いこと、ITO層への粘着性が弱いことも公知である。本発明による火炎−熱分解バリヤー層の性質により、存在しているヒドロキシル基に基づく良好な付着性がもたらされた。すなわち、火炎−熱分解バリヤー層はITO層に対する粘着促進剤としてもまた働いている。もし火炎−熱分解バリヤー層が基体上でITO層より前に堆積されると、その上に適用されたITO層に対して改善された粘着性が得られる。同様に、火炎−熱分解バリヤー層が粘着促進剤として堆積される前に積層されると、基体上のITOに被覆された引き続く層に対する粘着性も良好になる。
【0036】
本発明の別の態様は、基体が疎水性の被覆をされたものである。好ましい態様によると、シリケート含有層が疎水性成分、特にフッ素化合物、好ましくはフルオロアルキルシランとともに用いられる。疎水性被覆が火炎−熱分解層の上に適用されたとき、特に有利であることが発見された。そのような層の配列により、特に抵抗性の疎水性層が導かれる。その被覆は例えば容易に洗浄できる表面を作り出すことができ、そのことは本出願人の本出願と同日に出願した「容易に洗浄可能な表面を持つ物品及びそれを製造する方法」という表題のPCT出願に記載されている。その詳細はここに記載している本発明に全体として組み込まれる。
【0037】
したがって、疎水性被覆の応用はまた、火炎−熱分解層上のシリケート含有ゾル−ゲルの応用の好ましい発展からなるものである。ゾル−ゲルは疎水性成分、特にフッ素化合物、好ましくはフルオロアルキルシランを含有する。
【0038】
本発明はまた、バリヤー層、すべり層(sliding layer)又は改良された製品という多種類の製品を製造するために使われる。例えば、本発明による物品は、
−火炎−熱分解性被覆ボトル、特に薬品のコンテナ、
−オーブンの窓、
−反射板、特にガラス−セラミックの反射板、
−ガラス−セラミックホブ(hob)、又は
−包装用フィルム
であることができる。
【0039】
本発明は、以下に、例示的態様と図面の引用により詳細に説明される。同一で同様の構成要素には同じ参照番号がつけられ、別の例示的態様の特徴が互いに関連づけられるようになっている。
【0040】
図1は、物品が本発明による火炎−熱分解バリヤー被覆により製造される装置の配置を示している。本発明による基体上のバリヤー被覆による物品の製造は、基体表面の少なくとも1つの領域が火炎の上を通過し、火炎が基体のその領域を通過する間に火炎中で金属含有化合物の加水分解により金属酸化物含有層が堆積されるという考え方に基づいている。
【0041】
その物品を製造するために、板状の平らなガラス基体が供給される。図1に示される例示的態様の場合にあるように、使用される基体1はフロートガラス製のガラス板状、ロール状又はドローンガラス(drawn glass)の形をとる。そのガラスは、連続的に製造されるフロート及び/又はロールリボン状のガラスから切り出されて製造される。
【0042】
火炎−熱分解性の金属酸化物含有層5を堆積するために、この例では平らで板状である基体1の11の面が火炎22上を通過し、そして、基体1は火炎22を作っているバーナー21をもつ一群のバーナー20を通過する。いうまでもなく、基体1を移動させる代わりにバーナー群20を移動させることも可能である。
【0043】
火炎−熱分解層5の金属酸化物は、特にケイ素酸化物又はシリケートであることができ、あるいは、ケイ素酸化物又はシリケートからなるものであることができる。この目的のためにケイ素化合物が火炎に供給される。好ましくは、その供給はガス状又は気化しうるケイ素化合物を可燃性のガスと混合することにより行われる。好ましくは、水素、メタン、プロパン又はブタンの1又はそれ以上の成分をもつガスが可燃性ガスとして使用される。燃焼は空気中で行われる。空気の代わりに酸素が使われてもよいし、空気に追加的に酸素を加えてもよい。
【0044】
火炎21中におけるケイ素化合物の加水分解は、基体1上に堆積する火炎−熱分解ケイ素含有層に影響を与える。ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)、ヘキサメチルジシラザン(HMDSN)及び/又はテトラエトキシシランをケイ素化合物として火炎に供給することができる。好ましくは、テトラエトキシシランのようなシラン類が使用される。
【0045】
追加的にあるいはその代わりに−層5をどのような機能的性質とするかにより−金属チタン、アルミニウム、ジルコニウム、スズ、又はインジウムの1個又はそれ以上の化合物を、これらの化合物の加水分解によりこれらの金属酸化物を作る代わりに追加することができる。混合酸化物もまたこのような方法で堆積させることができる。例えば、シリケート含有層に、金属チタン、アルミニウム、ジルコニウム、スズ、又はインジウムの1又はそれ以上の酸化物がドープされる。
【0046】
種々の酸化物による被覆は逐次的に行うことができる。この目的のために、基体1はバーナー群20の火炎22を数回通過させることができる。通過するとき、それぞれ異なる金属含有化合物を追加して加水分解を行う。この目的のために、多くのバーナー群を前後に配置し、それぞれのバーナー群において異なる金属酸化物の加水分解を行うこともできる。
【0047】
酸化性の部分と還元性の部分がある火炎を作り、基体は酸化性の部分だけを通すのが被覆製造において有利であることがわかった。このようにして、できるだけ完全な加水分解を達成することができ、可燃性ガスのうち炭化水素のような完全に燃えることのない成分の混入が回避される。水素又は一酸化炭素のような還元性の成分もまた加水分解を補助するために可燃性ガスに混合することができる。
【0048】
とりわけケイ素化合物と可燃性ガスからなる組成物のような層5の層厚に関連する被覆のパラメーター及び/又は基体1が火炎22を通過する速度は、火炎−熱分解層が1〜100ナノメートル、好ましくは4〜40ナノメートル、特に好ましくは最大20ナノメートルの層厚をもつように定められる。層厚が20ナノメートル以下でも、多くの場合、層5の十分なバリヤー効果が達成される。
【0049】
本発明による火炎−熱分解層5はまた、衝撃抵抗性を改善することができる。層5が原料ガラスのセラミック化の前に作られると、セラミック化中のセラミック化される基板へのガラス板の粘着性付着を回避することができる。その結果、粘着性付着、収縮及び結果として起こる基板からの分離により作られるひっかき傷もまた回避することができる。セラミック化が行われたとき、これらのひっかき傷は衝撃抵抗性を減少させるものであるから、強度の改善が達成されることとなる。
【0050】
図2は、本発明の態様によるガラス−セラミック板の製造が示されている。本発明によると、金属酸化物含有層はセラミック化の前に原料ガラス基体の11、12の少なくとも一方の面に作られる。図2に表される例示的態様の場合、原料ガラス基体1は11、12の両面が被覆されている。その後、原料ガラス基体1はセラミック化する基板16の上に被覆した面12を置き、セラミック化炉17中でセラミック化される。基体1の基板16への粘着性付着が回避されるので、置かれる側の面−例示的態様では面12とされている−が凹凸のある基体1を使用する必要がない。むしろ、本発明は、原料ガラス基体として凹凸のない、すなわち、両面が滑らかなものを有利に使うことができる。そして、両面が滑らかなガラス−セラミック板を大きな強度の低下なしに製造することができる。
【0051】
図2に示されている基体1の場合のように、面11の反対側の面12もまた火炎−熱分解層5で被覆すると、本発明の別の利点が得られる。ガラス−セラミック板の下面に本発明の火炎−熱分解層を作ると、それにより、ガラスセラミックを攻撃的な燃焼残渣の内部への拡散、それは、ガスで加熱されるガラス−セラミック製のホブ(hob)の場合のように、長期間の損傷を伴うものであるが、そのような拡散を防御することができる。
【0052】
図3は、火炎−熱分解バリヤー被覆した基体の応用を示している。図3に表される物品2は装飾9を付けたホブ(hob)200のように、ガラス−セラミック板である。
【0053】
そのような製品を作るため、セラミックの装飾的な色彩が火炎−熱分解性被覆ガラス基体1に組織的に作られる。そして、火炎−熱分解層5は図1に基づいて説明したようにして作られる。この例の装飾的なパターンは、料理領域境界線91の円形と製造者のロゴ92からなる。層5上のパターン91、92の装飾的色彩9は、例えば、スクリーン印刷で作ることができる。
【0054】
その後、基体1がセラミック化され、そしてセラミック化と同時に装飾的な色彩が付与される。装飾が付けられる際、装飾用の色材及び/又はガラス基体の成分の拡散が装飾的構造91、92の端に好ましくない光輪(halo)又は境界線を形成する原因となる。非常に簡単な方法により、ローコストの火炎−熱分解バリヤー被覆がこの拡散を抑制し、それによって光輪の形成を回避する。層5の表面に存在するヒドロキシル基により、良好な粘着性と装飾9の耐久性が増加した。
【0055】
火炎−熱分解層5はまた、ガラス−セラミック板がより滑らかな表面になるようにして、ガラス−セラミック板に存在する小孔、特に孔径5ナノメートル以下の孔をふさぐ。このことにより、残渣、例えば、食品の燃えかすの侵入を、長期間の使用においても防止する。
【0056】
ガラス上の火炎−熱分解バリヤー層の他の応用は、例えば、オーブンの窓、特にソーダ石灰ガラスのもの又は医薬品用コンテナを含む被覆されたボトルである。また、火炎−熱分解被覆を医薬品用コンテナに使用すると、もしそれを使わなければ起きるアルカリ金属イオンのようなガラスの成分の移動が起き、それによって容器に入れられた医薬品に不純物の混入が起きるタイプのガラスの使用を可能にする。
【0057】
図4は、図1で表される配置の変形を示している。図4で表される例示的態様の場合、プラスチックフィルム26は第1のローラー27から引き出され、他のローラー28に巻き取られる。そのプロセスにおいて、プラスチックフィルム26は図1に表されているようにバーナー20を通過し、そして、フィルムの面11が通過することによって火炎−熱分解バリヤー被覆5、好ましくはケイ素含有層が堆積する。すなわち、火炎22が基体の面11を通過する間に火炎22中でケイ素化合物が加水分解により金属酸化物として堆積する。そのような被覆フィルムの応用には、例えば食品用のような包装用フィルムがある。さらに、フィルムの滑らかな表面が層5によってできるので、層5はすべり層(sliding layer)にもなる。
【0058】
有機金属化合物のような金属含有化合物はまた、伝導性又は半伝導性の酸化物を加水分解により供給するように可燃性ガスに加えることができる。そして、とりわけ、伝導性又は半伝導性の酸化物を含有する火炎−熱分解バリヤー被覆を製造することが可能となる。このようにして、層5に追加的に静電防止性を付与することができる。そのような層を製造するために、例えば、ケイ素化合物とさらに追加的にスズ化合物が火炎に供給され、それにより、火炎−熱分解層がケイ素酸化物だけでなく、スズ酸化物も含有する。
【0059】
本発明による物品2の2つの別の例示的態様を図5に基づいて説明する。両態様の場合、シリケート含有火炎−熱分解バリヤー層5は、はじめに面11を1個又はそれ以上の火炎に曝し、火炎中で、ケイ素化合物、好ましくはシランの加水分解により、基体1の面11にシリケート含有火炎−熱分解バリヤー層5を堆積させる。
【0060】
第1の例示的態様によると、インジウム−スズ酸化物層13がこの層5の上に堆積される。この層13の堆積は、例えばスパッタリングで行われる。層5の不浸透性の構造のため、バリヤー効果とは別に、層5がその表面にITOに対して良好な結合のできるヒドロキシル基を有しているので、ITO層13の粘着性が改善される。層5の良好なバリヤー効果と粘着性の改善により、基体1はまた、例えば、プラスチック基体であることもできる。ITOはさもなくば特にプラスチックに対して粘着性が非常に小さいので、ここに本発明による火炎−熱分解被覆の特別の長所がある。その上、ほとんどのプラスチックは一般にバリヤー性が貧弱であるから、層5は、基体1を通じて拡散する水や酸素のような成分に対して効果的な防御になる。
【0061】
インジウム−スズ酸化物層13を火炎−熱分解的に堆積することも考えられた。この目的のため、基体1の面11は火炎の上を順に通過する。シランのようなケイ素化合物を火炎に追加することによりケイ素含有層5が追加されて、それから、インジウム−スズ酸化物層13がインジウムとスズ化合物が追加された1又はそれ以上の火炎の上を通過することにより堆積される。このようにして、多層火炎−熱分解被覆が得られる。その層13の代わりに、フッ素ドープしたスズ酸化物層がある。それは、スズとフッ素化合物の加水分解により、火炎−熱分解的に製造することができる。
【0062】
別の例示的態様によると、疎水性の被覆が火炎−熱分解層5の上に作られる。この目的のために、図5で表される例示的態様の場合、疎水性成分をもつシリケート含有ゾル−ゲルが作られ、それから疎水性層15が形成される。ゾル−ゲルと混合されたフルオロアルキルシランが疎水性成分として好ましく使われる。バリヤー効果とは別に、火炎−熱分解層5によって、疎水性ゾル−ゲル層の粘着性に特に改善がもたらされ、そのため、これらの層は特に耐久性がよくなる。そのような層構造は、例えば、本発明による物品に汚れ防止性を付与するのに適しており、このようにして洗浄することが容易になる。
【0063】
疎水性層15及び/又はITO層13の代わりに又はそれに加えて、他の機能性層を作ることができる。例えば、赤外線反射性スズ酸化物層、又は高い耐スクラッチ層、反射防止被覆のような干渉層、反射層、酸化チタン層のような光触媒効果層及び/又は彩色層を作ることができる。
【0064】
図6は、多層火炎−熱分解層5をもつ別の例示的態様を示している。この例示的態様の場合、層51−56をもつ火炎−熱分解層5は、種々の金属含有化合物が既に加えられている火炎の上を順に通過することにより堆積される。この方法で作られる交互層は、とりわけ、干渉層系として働き、反射性効果、反射防止性効果及び/又は彩色効果を持っている。例えば、シリケート含有層及びチタン酸化物含有層は、シラン及び塩化チタンを加えることによって火炎−熱分解的に連続して製造することができる。
【0065】
図7及び8は、本発明の応用例の2つの変形を示している。両図ともガラス−セラミック反射板65を表しており、それは特に200W以上の出力をもつハイパワーランプの光を反射するのに用いられる。ガラス−セラミック反射板65は、それぞれ反射板のカーブした内側面66をもち、それは、その正面に配置されるランプための反射表面、すなわち反射被覆67とされている。さらに、両変形において、この反射板の面66は、それぞれ、ケイ素酸化物又はシリケート含有の火炎−熱分解層5で被覆されている。層5の製造は、この場合、前記で説明した例と類似した方法で行われ、ドーム部の内側66の上に火炎を通し、火炎に加えられたケイ素化合物を加水分解することにより製造される。
【0066】
図7に表される変形の場合、反射被覆67は、その前に堆積された火炎−熱分解層5の上に作られ、図8に示される場合は、層5は反射被覆67の上に堆積される。
特に図7に示される例の場合、層5はまた、緑色のガラス反射板をセラミック化する前に作られる。双方の場合において、層5は、もしそれがないと拡散プロセスが反射板への大きな熱負荷下に起こり、そして、長期的にはガラス−セラミックの変質を起こし、最終的には反射板の破壊を起こすような拡散プロセスに対してバリヤーとなる。図7、8で表されるようなものではなくて、火炎−熱分解層5自体を反射層として製造することができる。例えば、図5において火炎−熱分解的に製造されるような多層干渉層が反射層となる。追加的な反射層67はこの場合必要ではない。
【0067】
図9は、本発明による基体被覆をもつ別の製品の例を示している。ストーブ70は暖炉ののぞき窓72としてガラス−セラミック基体1を有している。基体1の内側の面又は暖炉ののぞき窓72は、この場合、図1に基づく例で表されるように、ケイ素化合物が供給される火炎を通過させることにより作られる火炎−熱分解ケイ素酸化物層5で被覆されている。ここでは、ケイ素酸化物含有層5は、暖炉ののぞき窓を通して内部空間から燃焼産物が侵入することを防ぐか又は少なくとも抑制するための拡散バリヤー又はバリヤー層として働いている。特に、木材又は天然ガスあるいは粗製油のような化石燃料といった硫化物含有の燃焼産物が燃焼するときイオウ酸化物が生成する。そして、これらはのぞき窓72のガラス−セラミックを腐食する。
【0068】
図10は本発明の別の応用、すなわち、本発明による被覆をされたソーラーガラス部品82を基体1としてもつ太陽熱ソーラー装置80を示している。ソーラー装置80は、ソーラーガラス部品82で覆われているコレクターチューブ81を有している。ソーラーガラス部品82は、反射損失を減少させるために多層反射防止層83を有している。この層83は、層83を長期の分解から防止するために、基体1上において、本発明による火炎−熱分解的に堆積されたケイ素酸化物含有層5で被覆されている。
【0069】
ソーラーガラス部品83はまた、図10の単純化した表示とは異なって、両面に反射防止層や火炎−熱分解バリヤー層を有することができることはいうまでもない。
【0070】
さらなる改良として、図5に基づいて記載されているように疎水性被覆を適用することも可能である。好ましくは、シリケートを含有し、フルオロアルキルシランをドープした、層5の表面のヒドロキシル基に結合することにより特に良好な粘着性をもつゾル−ゲル層もまた、火炎−熱分解層5の上に好適に適用される。
【0071】
図11及び12には、火炎−熱分解的堆積層により被覆されたガラス−セラミック基体の走査型電子顕微鏡写真が示されている。ここで、図11は被覆された表面の平面図を示し、図12は被覆された基体の断面の顕微鏡写真である。これらの顕微鏡写真の倍率は図の下部に示されるスケールから明らかである。図11に示されている火炎−熱分解層の表面の平面図は、加速電圧5kV、倍率200,000倍で記録された。図12の画像は、加速電圧5kV、倍率300,000倍で同様に記録された。
【0072】
両方の画像は、火炎−熱分解層5の表面50が全体として、ケイ素酸化物含有粒子57による粒状構造を有していることを示している。顕微鏡で認識できる粒子のうち90%以上が80ナノメートル以下、特に60ナノメートル以下、大部分は40nm以下の直径を有している。このような微粒子の層構造のために、視覚的に感知することができない広い表面領域を達成することができた。少なくとも新たに堆積された状態ではケイ素酸化物含有層5の表面の高密度に存在するOH基のため、大きな表面領域が、例えば他の層のような続いて適用される材料に対して特に良好な粘着性を提供する。
【0073】
本発明がこれまでに記載した実施態様に限定されないことは当業者に明らかであり、本発明は多くの異なった方法により変更することが可能である。特に、例として挙げた個々の態様の特徴は互いに組み合わせることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明による火炎−熱分解性の被覆物品を製造するための例示的態様に従う配列と方法を示した図である。
【図2】本発明による火炎−熱分解被覆をもつガラス−セラミック板の製造を示した図である。
【図3】本発明による火炎−熱分解被覆をもつ装飾ガラス−セラミック板を示した図である。
【図4】火炎−熱分解性被覆フィルムを製造するための例示的態様による配列及び方法を示した図である。
【図5】インジウム−スズ酸化物層と疎水性被覆により本発明による例示的態様を示した図である。
【図6】多層火炎−熱分解被覆による例示的態様を示した図である。
【図7】本発明による光反射板の例示的態様を示した図である。
【図8】本発明による光反射板の例示的態様を示した図である。
【図9】本発明による被覆されたストーブののぞき窓をもつストーブを示した図である。
【図10】本発明による被覆されたソーラーガラス部品をもつソーラー装置を示した図である。
【図11】火炎−熱分解性堆積バリヤー層の電子顕微鏡写真を示した図である。
【図12】火炎−熱分解性堆積バリヤー層の電子顕微鏡写真を示した図である。
【符号の説明】
【0075】
1 基体
5 金属酸化物含有層(火炎−熱分解バリヤー層)
11,12 基体の面
13 インジウム−スズ酸化物層
15 疎水性層
16 基板
20,21 バーナー
22 火炎
26 プラスチックフィルム
27,28 ローラー
50 表面
57 ケイ素酸化物含有粒子
65 反射板
66,67 反射被覆層
70 ストーブ
72 のぞき窓
80 太陽熱ソーラー装置
81 コレクターチューブ
82 ソーラーガラス部品
83 多層反射防止層
200 ホブ(hob)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体とその基体上に配置されたバリヤー被覆をもつ物品であって、そのバリヤー被覆が火炎−熱分解的に適用された金属酸化物層からなるものであることを特徴とする物品。
【請求項2】
火炎−熱分解的に適用された層がシリケート含有層であることを特徴とする請求項1に記載された物品。
【請求項3】
火炎−熱分解的に適用された層が金属チタン、アルミニウム、ジルコニウム、スズ又はインジウムの少なくとも1つの酸化物を含有する層であることを特徴とする請求項1又は2に記載された物品。
【請求項4】
火炎−熱分解的に適用された混合酸化物層により特徴づけられた前記請求項のうち1項に記載された物品。
【請求項5】
多層の火炎−熱分解的に適用された層により特徴づけられた前記請求項のうち1項に記載された物品。
【請求項6】
火炎−熱分解的に適用された連続的変化層により特徴づけられた前記請求項のうち1項に記載された物品。
【請求項7】
フッ素及び/又はインジウムをドープしたスズ酸化物含有火炎−熱分解層により特徴づけられた前記請求項のうち1項に記載された物品。
【請求項8】
火炎−熱分解的に適用された層がOH基を含有していることを特徴とする前記請求項のうち1項に記載された物品。
【請求項9】
火炎−熱分解的に適用された層がOH基をその表面に含有していることを特徴とする請求項8に記載された物品。
【請求項10】
火炎−熱分解的に適用された層が1〜100ナノメートル、好ましくは4〜40ナノメートル、特に好ましくは最大35ナノメートルの層厚を有することを特徴とする前記請求項のうち1項に記載された物品。
【請求項11】
火炎−熱分解的に適用された層により被覆されたガラス又はガラス−セラミック基体により特徴づけられた前記請求項のうち1項に記載された物品。
【請求項12】
ソーダ石灰ガラスにより特徴づけられた請求項11に記載された物品。
【請求項13】
その両面が滑らかであるガラス−セラミック板により特徴づけられた前記請求項のうち1項に記載された物品。
【請求項14】
セラミックの装飾的色材が火炎−熱分解適用層の上に焼き付けられていることを特徴とする前記請求項のうち1項に記載された物品。
【請求項15】
火炎−熱分解適用層により被覆された金属又はプラスチック基体により特徴づけられた前記請求項のうち1項に記載された物品。
【請求項16】
火炎−熱分解適用層により被覆されたプラスチックフィルムにより特徴づけられた請求項15に記載された物品。
【請求項17】
火炎−熱分解適用層が半伝導性酸化物を含有することを特徴とする前記請求項のうち1項に記載された物品。
【請求項18】
火炎−熱分解適用層がスズ酸化物を含有することを特徴とする請求項17に記載された物品。
【請求項19】
インジウム−スズ酸化物層により特徴づけられた前記請求項のうち1項に記載された物品。
【請求項20】
火炎−熱分解適用、金属酸化物含有すべり層により特徴づけられた前記請求項のうち1項に記載された物品。
【請求項21】
基体が疎水性被覆により被覆されていることを特徴とする前記請求項のうち1項に記載された物品。
【請求項22】
疎水性被覆層が疎水性成分、特にフッ素化合物、好ましくはフルオロアルキルシランを含有するシリケート含有層からなることを特徴とする請求項21に記載された物品。
【請求項23】
疎水性被覆が火炎−熱分解適用層の上に配置されていることを特徴とする請求項21又は22に記載された物品。
【請求項24】
少なくとも1つの機能性の層、特に以下の1以上の性質により特徴づけられた前記請求項のうち1項に記載された物品。
−誘電性、
−赤外線反射性、
−ひっかき抵抗性、
−反射防止性、
−反射性、
−光触媒性、
−彩色性、
−抗菌性
【請求項25】
物品が以下のものであることを特徴とする前記請求項のうち1項に記載された物品。
−火炎−熱分解的に被覆されたボトル、
−オーブンの窓、
−特にガラス−セラミックの暖炉、バーナー又はストーブののぞき窓、
−反射板、特にガラス−セラミックの反射板、
−ガラス−セラミックのホブ、
−包装用フィルム、
−ソーラーガラスパネル、特に反射防止性被覆をしたソーラーガラスパネル
【請求項26】
好ましくはケイ素酸化物を含有する火炎−熱分解層が80ナノメートル以下、好ましくは60ナノメートル以下の粒子をもつ粒状表面を有していることを特徴とする前記請求項のうち1項に記載された物品。
【請求項27】
基体の表面領域の少なくとも1つに火炎を通し、火炎が基体のその領域を通過する間に火炎中で金属含有化合物を加水分解することにより、基体上にバリヤー被覆をもつ請求項1〜26のいずれかに記載された物品を製造する方法。
【請求項28】
シリケート含有層が火炎中でシリコーン化合物の加水分解により堆積されることを特徴とする請求項27に記載された方法。
【請求項29】
以下の少なくとも1つの物質がケイ素化合物として使用されることを特徴とする請求項28に記載された方法。
−ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)、
−ヘキサメチルジシラザン(HMDSN)、
−テトラメトキシシラン
−テトラエトキシシラン
【請求項30】
金属チタン、アルミニウム、ジルコニウム、スズ又はインジウムのうち1つの化合物が火炎中で加水分解されることを特徴とする前記請求項のうち1項に記載された方法。
【請求項31】
基体が火炎を通過し、火炎中で多くの金属含有化合物を加水分解することにより金属酸化物含有層が堆積されることを特徴とする請求項27〜30のいずれかに記載された方法。
【請求項32】
表面が1又はそれ以上の、それぞれ供給される異なった金属含有化合物の火炎を順に通過することを特徴とする前記請求項のうち1項に記載された方法。
【請求項33】
酸化性の部分と還元性の部分をもつ火炎が作られ、基体がその酸化性の部分だけを通過することを特徴とする前記請求項のうち1項に記載された方法。
【請求項34】
ガラス又はガラス−セラミックが被覆されることを特徴とする前記請求項のうち1項に記載された方法。
【請求項35】
金属酸化物含有層がセラミック化の前に原料ガラス基体の少なくとも片面に適用され、その原料ガラス基体はセラミック化基板の被覆面の上におかれて、その後セラミック化されるものであることを特徴とする請求項34に記載された方法。
【請求項36】
金属又はプラスチック基体が被覆されていることを特徴とする前記請求項のうち1項に記載された方法。
【請求項37】
プラスチックフィルムが被覆されていることを特徴とする請求項36に記載された方法。
【請求項38】
火炎−熱分解層が1〜100ナノメートル、好ましくは4〜40ナノメートル、特に好ましくは最大20ナノメートルの層厚に堆積されていることを特徴とする前記請求項のうち1項に記載された方法。
【請求項39】
メタン、プロパン又はブタンを含有する可燃性ガスが火炎を作るのに使用されることを特徴とする前記請求項のうち1項に記載された方法。
【請求項40】
還元性成分、好ましくは水素又は一酸化炭素を含有する可燃性ガスが火炎を作るために使用されることを特徴とする前記請求項のうち1項に記載された方法。
【請求項41】
セラミックの装飾的な色材が金属酸化物含有層に適用され、焼き付けられていることを特徴とする前記請求項のうち1項に記載された方法。
【請求項42】
有機金属化合物が可燃性ガスに添加され、それにより伝導性又は半伝導性酸化物が加水分解により製造されることを特徴とする前記請求項のうち1項に記載された方法。
【請求項43】
疎水性被覆が火炎−熱分解層の上に適用されることを特徴とする前記請求項のうち1項に記載された方法。
【請求項44】
疎水性成分、特にフッ素化合物、好ましくはフルオロアルキルシランと共にシリケート含有ゲル−ゾルが火炎−熱分解層の上に適用されることを特徴とする請求項43に記載された方法。
【請求項45】
好ましくはケイ素酸化物を含有し、層の表面上に並ぶ80ナノメートル以下、好ましくは60ナノメートル以下の粒子により、火炎−熱分解層が粒状である表面構造が火炎−熱分解堆積により製造されることを特徴とする前記請求項のうち1項に記載された方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2008−518800(P2008−518800A)
【公表日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−538362(P2007−538362)
【出願日】平成17年11月3日(2005.11.3)
【国際出願番号】PCT/EP2005/011752
【国際公開番号】WO2006/048276
【国際公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【出願人】(504299782)ショット アクチエンゲゼルシャフト (346)
【氏名又は名称原語表記】Schott AG
【住所又は居所原語表記】Hattenbergstr.10,D−55122 Mainz,Germany
【Fターム(参考)】