説明

バルサルタンのための持続放出性胃滞留型経口薬物送達システム

バルサルタンの持続放出性胃滞留型薬物送達システム。薬物送達システムは、バルサルタンを含有する放出部分、薬物送達システムを胃の中で保持するための胃滞留型部分および所望によりバルサルタンの第二のパルスを送達するための第二の部分を含有する。もう一つの態様では、患者の上部胃腸管にバルサルタンの持続性投与のためにバルサルタンを含む膨潤可能な折畳めない膜が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、持続放出性胃滞留型(gastro-retentive)経口薬物送達システムに関する。一つの態様では、活性薬剤であるバルサルタンまたはその塩が胃または胃腸管の中に放出される、放出部分および胃滞留型部分を有する、医薬組成物が提供される。もう一つの態様では、患者の上部胃腸管にバルサルタンを持続性投与するための、バルサルタンを含む膨潤可能な広がった膜が提供される。
【背景技術】
【0002】
多くの薬物は、胃で放出されるときに、特に放出が連続的な、制御された様式で延長されるとき、その最大の治療作用を有する。この様式で送達される薬物は、更に副作用のレベルが低く、反復投与の必要なしに、または低投与頻度で、その治療効果を提供する。持続放出は、胃、または、吸収が起こり、接触時間が限られる場所である小腸上部で薬剤の接触時間を延長するので、胃の持続性放出は、胃が容易に吸収しない治療薬剤のためにまた有用である。正常なまたは平均的な条件下では、例えば、物質は、1〜3時間のような短時間で小腸を通過する。
【0003】
投与剤型が摂取されるのに十分に小さくて、その後活性薬剤が溶解されて、最終的に吸収されるのに十分長い時間の間胃腸区域の中に保持される、持続放出性胃滞留型薬物送達システムを考案するために多くの試みがされている。例えば、多くの膨潤および拡大するシステムが試みられている。膨潤して、それらのサイズを変えて、それにより表面に浮遊する投与剤型がある。これらは大抵はモノリシック構造のデバイスであって、薬物および膨潤化剤から成っている。膨潤は、投与剤型のサイズを著しく増加して、それは輸送性質に影響すると見出されている。胃は、崩壊されていない固体投与剤型を含むその内容物を、腸の中に幽門を通って放出する。これらの型のシステムの欠点は、高度に膨潤可能な単体のマトリックスがやや溶けにくい薬物の放出を制限して、種々の力が容易に誘導されることである。最近、単体の膨潤可能な投与剤型の胃の中での保持が、米国特許第5,007,790号(“Sustained-Release Oral Drug Dosage Form”)、米国特許第5,582,837号(“Alkyl-Substituted Cellulose-Based Sustained-Release Oral Drug Dosage Forms”)、米国特許第5,972,389号(“Gastric-Retentive Oral Drug Dosage Forms for the Controlled Release of Sparingly Soluble Drugs and Insoluble Matter”)、米国公開20050013863 A1(“Dual Drug Dosage Forms with Improved Separation of Drugs”)、米国公開20030147952 A1(“Manufacture of Oral Dosage Forms Delivering Both Immediate-release and Sustained-release Drugs IR + SR”)、米国公開2003010462 A1(“Shell-and-Core Dosage Form Approaching Zero-order Drug Release”)、米国公開20030104053 A1(“Optimal Polymer Mixtures for Gastric Retentive Tablets”)、米国公開20030044466 A1(“Pharmacological Inducement of the Fed Mode for Enhanced Drug Administration to the Stomach”)、米国特許第6,488,962号(“Tablet Shapes to Enhance Gastric Retentive of Swellable Controlled-release Oral Dosage Forms”)、米国特許第6,451,808号(“Inhibition of Emetic Effect of Metformin with 5-HT3 Receptor Antagonists”)および米国特許第6,3404,75 B2号(“Extending the Duration of Drug Release Within the Stomach During the Fed Mode”)の中に示されるように満腹状態で立証されている。脂質の内容物、投与剤型のサイズ、拡張容積、空腹および満腹状態、変動性ならびに外形について相当量検討されている。Warrington et al., Br J Clin Pharmacol, Vol. 19, p. 219S (1985); Ichikawa, Watnabe and Miyake, J Pharm Sci, Vol. 80, No.11, pp. 1062-1066 (1991); Ichikawa et al., J Pharm Sci, Vol. 80, p. 1153 (1991); Oth, Franz, Timmermans and Moes, Pharm Res, Vol. 9, p. 298 (1992); Meyer, Dressman, Fink and Amidon, Gastroenterology, Vol. 89, p. 805 (1985); Khosla, Feely and Davis, Int J Pharm, Vol. 53, p. 107 (1989); Deshpande, Rhodes Shah and Malick, Drug Dev Ind Pharm, Vol. 22, No. 6, pp. 531-539 (1996); and Hwang, Park and Park, Therap Drug Carrier Syst, Vol. 15, No. 3, p. 243 (1998)を参照されたい。
【0004】
他のシステムは、基本原理が、浮遊し得る密閉されたカプセル化コア内にガスをトラップすることである、浮遊性および浮揚性システムである。Groning and Heun, Drug Dev Ind Pharm, Vol. 10, p. 527 (1984); Atyabi, Sharma, Mohammad and Fell, J Cont Drug Rel, Vol. 42, p. 25 (1996); Atyabi, Sharma, Mohammad and Fell, J Cont Drug Rel, Vol. 42, p. 105 (1996); Ichikawa, Watnabe and Miyake, J Pharm Sci, Vol. 80, p. 1062 (1991)を参照されたい。このシステムの開発は、薬物を含有して保護膜で被膜された空洞のコアに基づいている。コアの中にトラップされた空気はシステムが浮遊するのを助ける。第二のシステムは、薬物に加えて、活性化されるときにガスを発生する化学物質を含有するコアから製造される。多水盤(multi-lavers)でのいくつか試みがまた為され、使用されるポリマーの密度に依存する。
【0005】
もう一つのシステムは生体接着システムである。このアプローチが最初にPark and Robinson, Int J Pharm, Vol. 19, p. 107 (1984)により発表されてから、広い範囲の天然のおよび合成のポリマーについてそれらの生体接着性質について徹底的な研究が行われている。相当な量の文献が見られるけれども、成功的な候補はまだ見出されていない。
【0006】
もう一つのシステムは、胃腸管の中の活性薬剤の制御性放出のための医薬的な胃滞留型薬物送達システムであって、それは、(a)(1)胃液の中では直ぐには溶けない親水性ポリマーであり得る分解可能なポリマー、5.5以下のpHで実質的に不溶性の溶腸性のポリマーならびに/または疎水性のポリマーおよびそれらの混合物;(2)分解されないポリマー;ならびに(1)と(2)の任意の混合物から選択される従来の投与剤型を超えては胃の中に保持されないポリマーを含む単層のまたは多層のマトリックス;(b)相当な機械的強度を有する少なくとも一つのポリマーを含む連続的なまたは非連続的な膜;および(c)薬物:を含み;ここで、膜に貼付または付着されるときに、約3〜約24時間の期間の間マトリックスが胃から送達システムの排出を防ぐ。そのようなシステムは、米国特許6,685,962の中に開示されている。
磁力およびイオン性の樹脂のような数個の他の技法が、文献の中で胃滞留型概念として使用されている。成功的な候補は報告されていない。
【0007】
かくして、バルサルタンを含む調剤が容易な放出部分および胃滞留型部分の膨潤でバルサルタンの放出が制限されないように胃滞留型部分を有する、バルサルタンのような、溶けにくい薬物のための持続放出性胃滞留型薬物送達システムの必要性が残存する。
【発明の概要】
【0008】
持続放出性胃滞留型経口薬物送達システム、または医薬組成物が、本明細書中で開示されている。薬物送達システムはバルサルタンを含んで、放出部分および胃滞留型部分の両方を有する。一つの態様では、放出部分は、バルサルタンの侵食的なまたは拡散的な放出を許容するための膨潤可能なまたは膨潤可能で侵食可能なまたは不活性な物質を含む。胃滞留型部分は、マトリックスのサイズが水和により1cmよりも大きいように膨潤可能な物質を含む。あるいは、この部分は、ロウのような不活性な物質で作製してよく、その場合には、デバイスのサイズは水和に先立ちおよび溶解/胃で保持される時間を通して1cmを超えるだろう。バルサルタンは放出部分にのみ存在する。胃滞留型部分の膨潤は、薬物送達システムの容積の50%未満の総容積の増加をもたらす。
【0009】
本発明のもう一つの態様は、本発明の持続放出性経口薬物送達システムを製造する方法に関係して、バルサルタンおよび制御性放出の成分を混合すること;得られた混合物を滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム)と混合して、放出部分を形成すること;添加物および滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム)を混合機の中で混合して、胃滞留型層を形成するための混合物を得ること;ならびに層を二層錠剤に打錠することを含む。本発明のこの態様のもう一つの態様では、製剤は乾燥混合により顆粒化される。
【0010】
本発明のもう一つの態様は、バルサルタンの第二のまたは遅延したパルスを送達するための第二の部分をさらに含む、本発明の薬物送達システムに関係する。
【0011】
持続放出性胃滞留型経口薬物送達システムのもう一つの態様では、バルサルタンを含む折畳み可能な膜が提供される。好ましくは、バルサルタンを含む折畳み可能な膜は、カプセルの中に埋め込まれて、それは摂取および水性の環境への暴露で折畳み可能な膜が完全に開いて薬物を放出するが、システムを上部胃腸管の中に維持する。
【0012】
本発明のなおもう一つの態様では、高血圧、うっ血性心不全、狭心症、心筋梗塞、動脈硬化症、糖尿病性腎症、糖尿病性心筋疾患、腎機能不全、末梢血管疾患、発作、左心室肥大、認知機能障害、頭痛、または慢性心不全を処置する方法を提供して、本発明の薬物送達システムをそのような処置を必要とする対象に投与することを含む。
【0013】
本発明のもう一つの態様では、高血圧、うっ血性心不全、狭心症、心筋梗塞、動脈硬化症、糖尿病性腎症、糖尿病性心筋疾患、腎機能不全、末梢血管疾患、発作、左心室肥大、認知機能障害、頭痛、または慢性心不全の処置および/または予防用の医薬品の製造のために本発明の薬物送達システムの使用を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1:溶解および胃で保持の分離された機能性について種々の立体配置。(2−a)および(2−b)は本発明の態様を表す。(2−c)および(2−d)は立体配置を表して、それは、胃滞留型および第二の放出の同時凡例:1.放出部分 2.胃滞留型部分および3.第二のパルスのための第二の部分を提供し得る。
【0015】
(本発明の詳細な説明)
本発明を詳細に説明する前に、この発明は、特定の活性薬剤、投与剤型、投与計画、等には、それらが変化し得るので、限定されないことが理解されるべきである。本明細書中で使用される述語は特定の態様のみを説明する目的のためであって、限定することを意図していないことがまた理解されるべきである。
【0016】
本発明の記載および請求において、以下の述語が、下に詳述される定義にしたがって使用される。
【0017】
用語“投与剤型”は、単一の投与で治療的作用を達成するために十分な量のバルサルタンを含有する医薬組成物の任意の形を意味する。
製剤が錠剤またはカプセルであるときには、投与剤型は普通一個のそのような錠剤またはカプセルである。
【0018】
過剰投与無しに効果的な様式で最も効果的な結果を提供するであろう投与の頻度は、(1)膨潤可能なマトリックスの、その浸透性のような特色;および(2)バルサルタンおよびポリマーの相対的な量:で変化する。大抵の場合には、投与剤型は、効果的な結果が、8時間以上毎に一回、好ましくは12時間以上毎に一回、そしてなおさらに好ましくは24時間以上毎に一回以下の頻度での投与で達成されるものである。
【0019】
用語“処置する”および“処置”とは、本明細書中で使用される際には、症状の重篤度および/または頻度の低減、症状および/または基となる原因の除去、症状および/またはそれらの基となる原因の発生の防止、ならびに損傷の改善または治療を指す。かくして、例えば、患者を“処置すること”は、かかりやすい個人における特定の障害または生理的有害事象の防止ならびに障害または疾患を阻害するかまたは退化を引き起こすことによる臨床的に症状を示す個人の処置を伴う。
【0020】
薬物または薬理学的に活性な薬剤の“有効な”量または“治療的に有効な量”は、望ましい作用を提供するために薬物または薬剤の非毒性だが十分な量を意味する。
【0021】
“薬学的に許容される担体”、または“薬学的に許容される酸付加塩”の列挙におけるような“薬学的に許容される”は、生物学的にまたはそれ以外に望ましくないことは無い物質を意味する、即ち、如何なる望ましくない生物学的な作用を引き起こすかまたはその中にそれが含有される組成物の任意の他の成分と有害な様式で相互作用をすること無しに患者に投与される医薬組成物の中に物質が組み込まれ得る。“薬理学的に活性な”誘導体におけるように“薬理学的に活性”(または単に“活性”)とは、親化合物と同一の型の薬理学的に活性でおよそ同等な程度を有する誘導体を指す。用語“薬学的に許容される”がバルサルタンの誘導体(例えば、塩)を指すのに使用されるときには、化合物が薬理学的に同様に活性であることが理解されるべきである。用語“薬学的に許容される”が添加物を指すのに使用されるときには、それは、添加物が毒性的なおよび製造的な試験の要求される標準を満たしていること、またはそれがFDAにより製造される不活性添加物ガイドにあることを意味する。
用語“生体適合性”は、用語“薬学的に許容される”と相互交換的に使用される。
【0022】
用語“やや溶けやすい”とは、本明細書中で使用される際には、2%〜50%以上の重量%、さらに好ましくは10%〜40%以上の重量%、の範囲の溶解度(水で20℃で測定される)を有する薬物を指す。用語“やや溶けにくい”および“溶けにくい”とは、0.001%〜約5%の重量%、さらに好ましくは0.001%〜3%以上の重量%、の範囲の溶解度(水で20℃で測定される)を有する薬物を指す。そのような薬物は、“低い”または“悪い”水溶解度を有するとしてまた呼ばれる。
【0023】
用語“制御性放出”は、薬物の放出が即時では無い、任意の薬物を含有する製剤を指すことを意図し、即ち、“制御性放出”の製剤では、経口投与は吸収プールへの薬物の即時放出をもたらさない。本用語は、Remington, The Science and Practice of Pharmacy, 19th Ed., Easton, PA, Mack Publishing Company (1995)。で定義される通り“非即時の放出”と相互交換的に使用される。そこで議論される通り、即時および非即時放出を、以下の式を参照することにより速度的に定義することができる。
【数1】

“吸収プール”は、特定の吸収部位で投与される薬物の溶液を表して、k、kおよびkは、それぞれ、(1)製剤からの薬物の放出、(2)吸収および(3)排出についての一次速度定数である。即時放出の投与剤型については、薬物放出の速度定数kは、吸収速度定数kよりはるかに大きい。制御性放出の製剤については、逆が真である、即ち、投与剤型からの薬物の放出の速度が標的区域への薬物の送達において律速段階であるようにk<<kである。この簡易化モデルは放出および吸収について単一の一次速度定数を使用していること、ならびに任意の特定の投与剤型での制御性放出の速度論は非常に複雑であり得ることが指示されるべきである。しかしながら、一般的には、用語“制御性放出”は、本明細書中で使用される際には、持続性の放出、遅延された放出および二次的放出の製剤を、限定されないで、含む任意の非即時放出の製剤を含む。
【0024】
用語“持続性放出”は、延長された期間に亘り薬物の段階的な放出を与える、および好ましくは、必須ではないけれども、延長された期間に亘り薬物の実質的に一定の血中レベルをもたらす薬物製剤を指すためにその従来の意味において使用される。
【0025】
用語“二次的または遅延パルス”は、上記の延長性放出部分の大部分が放出された後に、薬物のフラクションの放出として、その従来の意味において使用される。効果としては、この二次パルスはその完全な放出のために胃領域に限定されるべきではなく、胃放出に続く。
【0026】
用語“親水性”および“疎水性”は、有機相における化合物の平行濃度の水相におけるそれに対する比率である、分配係数Pに関して一般的に定義される。親水性の化合物は、1.0以下の、典型的には約0.5以下のP値(そこでは、Pはオクタノールおよび水の間での化合物の分配係数である)を有し、一方疎水性の化合物は、約1.0以上の、典型的には約5.0以上のPを一般的に有する。本明細書中でポリマーの担体は、親水性であって、かくして人体に存在するもののような水性流体と適合性である。
【0027】
用語“ポリマー”は、本明細書中で使用される際には、複数の共有結合的に結合するモノマー単位を含有する分子を指し、分枝状、樹状および星状ポリマー、ならびに線状ポリマーを含む。用語はまた、ホモポリマーおよびコポリマーの両方、例えば、ランダムコポリマー、ブロックコポリマーおよびグラフトコポリマー、ならびに非架橋ポリマーおよび僅かにから中程度にから実質的に架橋したポリマーを含む。
【0028】
用語“膨潤可能な”および“生侵食性の”(または単に“侵食性の”)は、本明細書中で好ましいポリマーを指すのに使用され、“膨潤可能な”ポリマーは、水を吸収する能力があり、結果として物理的に膨潤するものであり、それにポリマーが膨潤することができる程度は架橋の程度により決定され、そして“生侵食性”または“侵食性”ポリマーは、水性の流体の中でゆっくりと溶けるおよび/または徐々に加水分解する、ならびに/または胃または胃腸管内で運動の結果として物理的に侵食するポリマーを指している。
【0029】
用語“満腹モード”とは、本明細書中で使用される際には、胃の中の食物の存在により患者に典型的に誘導される状態を指して、食物は二つの信号、一つは胃の拡張から起きると言われるもので、他は胃の中の食物に基づく化学信号を誘発する。満腹モードが誘導されると、大きい粒子は、小さい粒子より長期間胃の中に保持される。かくして、満腹モードは、胃内の食物の存在により患者に典型的に誘導される。
【0030】
正常の消化過程では、胃を通る物質の通過は、消化モード、食後モード、または“満腹モード”のように様々に呼ばれる生理的条件により遅延される。満腹モードの狭間は、胃は、空腹時または“空腹”モードにある。
二つのモードの間の相違は、胃十二指腸の運動活性のパターンにある。
【0031】
空腹モードでは、胃は、空腹時移動性運動複合体(“IMMC”)と呼ばれるサイクル活動を呈示する。この活動は四つの相で起こる:
・45〜60分間続き、最も静止性であって、胃が収縮を全く経験しないかほとんど経験しない、I相;
・不規則な間欠的パターンで起こり、徐々に大きさが増加する広範な収縮を特徴とするII相;
・ 胃および小腸の両方の中で、5〜15分間続く、蠕動波の強力な爆発から成るIII相;および
・ IV相は、次のサイクルが始まるまで続く活動減少の過渡期である。
【0032】
全四相についての総サイクル時間はおよそ90分である。最大の活動はIII相で起こり、そのときには強力な蠕動波が飲み込まれた唾、胃の分泌液、食物粒子、および異物破片を胃から小腸および結腸の中に押し流す。かくして、III相は腸の家政婦として役立ち、次の食事に上部管を準備して細菌の過増殖を防止する。
【0033】
満腹モードは、食物の摂取で栄養物質が胃の中に入ることにより開始される。開始は、30秒乃至一分の期間に亘る、上部胃腸管の運動パターンの迅速なかつ大幅な変化を伴う。変化は、胃腸管に沿ってすべての部位で殆ど同時に観測され、胃の内容物が末端の小腸に到達してしまう前に起こる。一旦満腹モードが確立されると、胃は、空腹モードの収縮に似ているがほぼ半分の振幅で、1分間当り3〜4回の連続しかつ規則正しい収縮を発生する。幽門は一部開かれ、篩作用を引き起こし、そこで、液体および小粒子は胃から小腸へ連続して流れ、他方幽門の開口よりサイズのさらに大きい不消化の粒子は逆行されて胃に保持される。かくして、この篩作用は、サイズで約1cmを超える粒子を胃がおよそ4〜6時間の間保持することを引き起こす。
【0034】
本発明の態様では、持続放出性胃滞留型経口薬物送達システム、またはバルサルタンおよび胃滞留型部分を含む放出部分を含む医薬組成物が提供される。一つの態様では、放出部分は、バルサルタンの侵食的なまたは拡散的な放出を許容するための膨潤可能なまたは膨潤可能で侵食可能なまたは不活性な物質を含む。胃滞留型部分は、マトリックスのサイズが水和で1cmよリ大きいように膨潤可能な物質を含む。あるいは、この部分は、ロウのような不活性な物質で作製してよく、その場合には、デバイスのサイズは水和に先立ちおよび放出/胃で保持する期間を通して1cmを超えるだろう。胃滞留型部分の膨潤は、薬物送達システムの容積の50%以下の総容積の増加をもたらして、好ましくは、増加は40%以下、更に好ましくは30%以下、なお更に好ましくは20%以下、更に好ましくは10%以下、および最も好ましくは5%以下である。
【0035】
本発明での使用に適するバルサルタンまたは((S)−N−バレリル−N−{[2'−(1H−テトラゾール−5−イル)−ビフェニル−4−イル]−メチル}−バリン)を市販の供給源から購入することができるかまたは既知の方法にしたがって作製することができる。例えば、バルサルタンの作製は、米国特許第5,399,578号(全体的な出典明示により本明細書の一部とする)の中に記述されている。バルサルタンは、その遊離形でならびに任意の適当な塩の形で本発明の目的のために使用され得る。
【0036】
本発明の範囲の中にまた含まれるのは、バルサルタンの塩、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝物、類似体、等、特にバルサルタンのカルシウム塩である。カルシウム塩の詳細な説明および製造の方法は、公開されている米国特許出願第2003/0207930号(全体的な出典明示により本明細書の一部とする)の中に開示されている。
【0037】
本発明の薬物送達システムは、バルサルタンを投与するために使用される。胃腸管を通る通過時間は、その最も効率的な吸収部位における吸収に、または胃腸管の一つの区分における局部活動に、利用可能な薬物の量をしばしば制限する。吸収部位、または局部作用の部位が胃腸管の中で高いとき、例えば、潰瘍での症例でしばしばあるように、要求される処置が胃の中で局部的であるときに、後者は特に当てはまる。薬物の溶解度が減少するにつれて、薬物の溶解および腸の膜を通る吸収は更に適切でなくなり、かくして、通過時間が効果的な薬物送達を妨害する顕著な要因となる。これに対処するために、やや溶けにくい薬物の経口投与が頻繁に、しばしば1日当り数回為される。さらに、それらの不溶解性に因り、やや溶けにくいかまたは殆ど溶けない薬物を、溶液拡散または膜制御の送達システムのいずれかによっても容易に送達することができない。本投与剤型は、バルサルタンの効果的な送達を提供する。
【0038】
本発明の態様のさらなる態様では、投与剤型は、薬物送達期間より長い期間に亘り侵食される膨潤可能なポリマー、およびバルサルタンを含有する放出部分から成る胃滞留型部分を有する二層錠剤であって、下記の通り、溶解試験を用いて予測される薬物放出期間に亘り侵食可能である。胃滞留型部分の機能は、満腹および空腹モードで胃での保持を可能にするために薬物送達の全期間を通じて十分な粒子サイズを提供することである。
【0039】
本投与剤型では、バルサルタンが胃腸管に放出される速度は、放出部分が侵食する速度に大きく依存する。本発明の放出部分で使用されるポリマーは、薬物の過剰投与または胃腸管内へのおよびそれを通る迅速な通過をもたらすような速すぎる速度で薬物を放出すべきでなく(即ち、約4時間以内で)、またポリマーの放出が望ましい生物学的作用を達成するのに遅すぎるべきでもない。かくして、溶解試験を用いて測定して、望ましい持続時間に要求される薬動力学を達成する薬物の放出の速度を許容するポリマーが、本発明の投与剤型での使用に選択される。
【0040】
放出部分は活性成分のバルサルタンを含み、膨潤可能なまたは膨潤可能で侵食され得るまたは不活性な物質から成り得る。これらの物質としては、ハイドロゲルおよび下記の不活性なマトリックスが含まれるが、それらに限定されない。
【0041】
他方では、胃滞留型部分は、薬物送達システムのサイズが膨潤後に1cm以上の大きさであるように膨潤可能な物質から主として成っている。胃滞留型部分は、ロウのような不活性な物質からまた作製してよく、そのような場合には、薬物送達システムは、水和に先立って1cmを超えるであろう。好ましい態様では、胃滞留型部分は、胃液のような流体との接触で膨潤して、それはシステム、即ち、錠剤、の容積の50%以下の総容積の増加をもたらして、好ましくは増加は、40%以下、更に好ましくは30%以下、なお更に好ましくは20%以下、更に好ましくは10%以下、および最も好ましくは5%以下、である。1cmの最小サイズは、薬物送達システムが胃の幽門を通って通過するのを許容しないことにより胃での保持性を産生するのに必要なサイズである。
【0042】
本発明の薬物送達システムの放出部分および胃滞留型部分の中で包含に適する物質としては、ハイドロゲル、親水性ポリマー、スーパー崩壊剤、ガムおよび不活性なマトリックス、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、プロピレングリコール、ポリビニルピロリドンのような水溶性ポリマーが含まれるが、それらに限定されない。ヒドロキシプロピルメチルセルロースは、本発明で好ましいポリマーである。65SHのようなある置換型が最も好まれる。
【0043】
不活性なマトリックスは、溶解環境に曝されるときにそれらのサイズおよび形状を変えないそれらの成分から製造されている。不活性なマトリックスの例は、ロウ(セチルアルコールのような脂肪酸アルコール、みつロウおよびカルナウバロウ)ならびに、例えば、水に不溶のセルロースの誘導体、塩化ポリビニル、メタクリル酸アミノアルキル等のような、不溶性の薬学的に許容されるポリマーである。適当な水に不溶のセルロースの誘導体としては、例えば、7cps級の粘度を有するエチルセルロース、10cps級の粘度を有するエチルセルロース、20cps級の粘度を有するエチルセルロース、100cps級の粘度を有するエチルセルロース、のようなポリマーが含まれる。
【0044】
ガム;ヒドロキシアルキルセルロースおよびカルボキシアルキルセルロースを含むアルキルセルロース;セルロースエーテル、上で議論されるアクリルポリマーおよびコポリマーの全てを含むアクリル樹脂、ならびにタンパク質由来の物質。このリストは、限定的であると意味されないで、薬物の望ましい持続的放出プロフィールを付与する能力のある任意の薬学的に許容される疎水性の物質または親水性の物質が本明細書中で含まれると意味される。投与剤型は、例えば、重量で約1%〜約80%のそのような物質を含み得る。
【0045】
延長された期間に亘り薬物の制御性の放出を達成するために使用されているポリマーマトリックスの中に物質が使用される。そのような持続性のまたは制御性の放出は、それにより取り囲んでいる胃液がマーマトリックスを通して拡散し、薬物に到達し、薬物を溶解して、溶解された薬物と共に再び拡散されてしまう速度を制限することにより、またはゆっくりと侵食するマーマトリックスを使用することによるかのいずれかで達成されて、連続的に新鮮な薬物を取り囲んでいる流体に暴露する。これらの二つの方法のいずれかにより機能するポリマーマトリックスの開示は、米国特許第6,210,710号(“Sustained Release Polymer Blend for Pharmaceutical Applications”、Skinner, inventor, Apr. 3, 2001);米国特許第6,217,903号(“Sustained Release Polymer Blend for Pharmaceutical Applications”、Skinner, inventor, Apr. 17, 2001);国際(PCT)特許出願WO97/18814(“Pharmaceutical Formulations”、MacRae et al., inventors, May 29, 1997);米国特許第5,451,409号(“Sustained Release Matrix System Using Hydroxyethyl Cellulose and Hydroxypropyl Cellulose Polymer Blends”、 Rencher et al., inventors, Sep. 19, 1995);米国特許第5,945,125号(“Controlled Release Tablet”、Kim, inventor, Aug. 31, 1999);国際(PCT)特許出願WO96/26718(“Controlled Release Tablet”、Kim, inventor, Sep. 6, 1996);米国特許第4,915,952号(“Composition Comprising Drug, HPC, HPMC, and PEO”、Ayer et al., inventors, Apr. 10, 1990);米国特許第5,328,942号(“Seed Film Compositions”、Akhtar et al., inventors, Jul. 12, 1994);米国特許第5,783,212号(“Controlled Release Drug Delivery System”、Fassihi et al., inventors, Jul. 21, 1998);米国特許第6,120,803号(“Prolonged Release Active Agent Dosage Form for Gastric Retention”、Wong et al., inventors, Sep. 19, 2000);および米国特許第6,090,411号(“Monolithic Tablet for Controlled Drug Release”、Pillay et al., inventors, Jul. 18, 2000)の中に見出される。
【0046】
本発明にしたがってマトリックスを形成する水で膨潤可能なポリマーは、無毒性である、水の吸水で次元的に制限されない様式で膨潤する、そして組み込まれた薬物の持続性の放出を提供する任意のポリマーである。本発明での使用に適するポリマーの例は、セルロースポリマーおよびそれらの誘導体(例えば、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、および微結晶性セルロースのような)、多糖類およびそれらの誘導体、酸化ポリアルキレン、ポリエチレングリコール、キトサン、ポリ(ビニルアルコール)、キサンタンガム、無水マレイン酸コポリマー、ポリ(ビニルピロリドン)、でん粉およびでん粉をベースにするポリマー、ポリ(2−エチル−2−オキサゾリン)、ポリ(エチレンイミン)、ポリウレタンヒドロゲル、ならびに架橋ポリアクリル酸およびそれらの誘導体である。さらなる例は、ブロックコポリマーおよびグラフト化ポリマーを含む、先行する文章の中で列挙されるポリマーのコポリマーである。コポリマーの具体的な例は、PLURONIC[登録商標]およびTECTONIC[登録商標]であって、それらはBASF Corporation, Chemicals Div., Wyandotte, Mich., USAから入手可能な酸化ポリエチレン−酸化ポリプロピレンのブロックコポリマーである。
【0047】
用語“セルロース”および“セルロース性”は、無水グルコースの直線状ポリマーを意味するために本明細書中で使用される。好ましいセルロースのポリマーは、予想的に遅延される様式で最後に溶解するアルキル置換のセルロースのポリマーである。好ましいアルキル置換のセルロース誘導体は、それぞれ1〜3個の炭素原子のアルキル基で置換されるものである。例は、メチルセルロース、ヒドロキシメチル−セルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、およびカルボキシメチルセルロースである。それらの粘度に関して、一つのクラスの好ましいアルキル置換のセルロースは、それらの粘度が、20℃で2%水溶液として約3〜約110,000センチポアズの範囲内にあるものを含む。もう一つのクラスは、それらの粘度が、20℃で1%水溶液として約1,000〜約4,000センチポアズの範囲内にあるものを含む。特に好ましいアルキル置換のセルロースは、ヒドロキシエチルセルロースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースである。現在で好ましいヒドロキシエチルセルロースは、Aqualon Company, Wilmington, Del., USAから入手可能なNATRASOL[登録商標]250HX NF(National Formulary)である。
【0048】
本発明で最大の有用性を持つ酸化ポリアルキレンは、アルキル置換のセルロースポリマーについて上記の性質を有するものである。特に好ましい酸化ポリアルキレンは、ポリ(酸化エチレン)であり、その用語は無置換の酸化エチレンの線状ポリマーを意味するために本明細書中で使用される。低粘度のポリ(酸化エチレン)ポリマーが好ましい。これらは、Union Carbide Chemicals and Plastics Company Inc. of Danbury, Conn., USAの製品である。
【0049】
天然のおよび修飾の(半合成の)両方の、多糖類のガムを用いることができる。例は、デキストラン、キサンタンガム、ゲランガム、ウエランガムおよびラムサンガムである。
最大の有用性を持つ架橋のポリアクリル酸は、それらの性質がアルキル置換のセルロースおよび酸化ポリアルキレンポリマーについて上記のものと同一であるものである。
【0050】
三つの現在好ましい例は、CARBOPOL[登録商標]米国公式級971P、974Pおよび934P(BFGoodrich Co., Specialty Polymers and Chemicals Div., Cleveland, Ohio, USA)である。さらなる例は、WATER LOCK[登録商標]として知られるポリマーであり、それはGrain Processing Corporation, Muscatine, Iowa, USAから入手可能なでん粉/アクリル酸エステル/アクリルアミドのコポリマーである。
【0051】
水で膨潤可能なポリマーを個別にまたは組み合わせて使用することができる。特定の組み合わせは、個別に使用されるときのそれらの成分よりも、さらに制御された薬物放出をしばしば提供する。例は、キサンタンガムと組合せたヒドロキシエチルセルロースまたはヒドロキシプロピルセルロースのような、ガムと組合せたセルロースベースのポリマーである。もう一つの例は、キサンタンガムと組合せたポリ(酸化エチレン)である。
【0052】
放出改質剤:酸性のまたはアルカリ性の物質のような、pH改質剤;塩化ナトリウムのような、水を吸収する薬剤;または水をはじく薬剤(ロウのような、疎水性物質)を放出改質剤として個別にまたは組み合わせて使用することができる。
【0053】
本発明の胃滞留型、制御性送達投与剤型から送達される薬物は、胃および小腸の上部、特に十二指腸を長時間連続的に覆う。これは、バルサルタンの“吸収の窓”と考えられる。この“吸収の窓”、特に小腸の上部領域は、最も効率的な吸収の部位である。バルサルタンをその最も効率的な吸収の部位に連続して供給することにより、本発明の投与剤型は、バルサルタンの更に効果的な経口使用を可能にする。
【0054】
本発明の投与剤型は、従来の投与剤型に関連するパルス・エントリー送達の代わりに連続的な送達によりバルサルタンを提供するので、二つの特に顕著な利点がそれらの使用から生じる:(1)副作用、例えば、胃腸の炎症の低減;および(2)バルサルタンの低頻度投与で処置を有効にする能力。さらに、本発明の投与剤型は、一日の投与回数を副作用の低発生率の回数に低減する。
【0055】
他の活性薬剤を、本発明の薬物送達システムを用いてまた組み合わせて投与し得る。特に重要な薬物組み合わせ製品の例としては、塩酸メトホルミン、塩酸バンコマイシン、カプトプリル、エナロプリルまたはその塩、乳バイオン酸エリスロマイシン、塩酸ランチジン、塩酸セルトラリン、塩酸チクロピジン、アモキシシリン、セフロキシムアクセチル、セファクロール、クリンダマイシン、ドキシフルリジン、ガバペンチン、トラマドール、塩酸フルオキセチン、塩酸シプロフロキサシン、アシクロビル、レポドーパ、ガンシクロビル、ブプロピオン、リシノプリルならびに利尿剤との併用が含まれるが、それに限定されない。利尿剤の具体的な例としては、トリアンプテリン、フロセミド、ブメタミドおよびヒドロクロロチアジドが含まれる。あるいは、それらの利尿剤のいずれかを、プロプラノロール、チモロールまたはメトプロロールのようなベータ−抗アドレナリン薬と組み合わせて有利に使用することができる。これらの特定の組み合わせは、心臓血管医薬で有用であって、異なる薬物の別々の投与よりも低減された費用の利点、プラス低減された副作用および増強された患者のコンプライアンスの特別な利点を提供する。
【0056】
本発明の利点は、広い範囲の薬物充填に亘り達成され、薬物のポリマーに対する重量比率は、一般的に、必ずしもではないが、1:1000〜約85:15、典型的に1:500〜約85:15、更に典型的に1:400〜約80:20の範囲にある。
【0057】
好ましい充填(薬物およびポリマーの総量に比して薬物の重量パーセントに関して表される)は、およそ10〜80%の範囲内の、更に好ましくはおよそ30〜80%の範囲内の、および最も好ましくは、特定の場合に、およそ30〜70%の範囲内の、それらである。しかしながら、ある適用については、上述の比率から推論され得るように、0.01%のような低さの薬物充填で利点が得られるであろう。
【0058】
本発明のもう一つの態様は、バルサルタンの第二のパルスを送達するための第二の部分をさらに含む本発明の薬物送達システムに関係する。
溶解は、適当な緩衝液を用いてUSPの器具II(50rpmの回転速度)の中で実施される。
【0059】
本発明のもう一つの態様は、本発明の持続放出性経口薬物送達システムを製造する方法に関係して、バルサルタンおよび制御性の放出成分を混合すること;得られた混合物を滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム)と混合して、放出部分を形成すること;添加物および滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム)を混合機の中で混合して、胃滞留型部分を形成するための混合物を得ること;ならびに層を二層錠剤に打錠することを含む。本発明のこの態様のもう一つの態様では、製剤は乾燥混合により顆粒化される。
【0060】
本発明の製剤は典型的に錠剤の形である。錠剤およびカプセルは、最も便利な経口投与剤型を表し、その場合には、固体の薬学的担体が使用される。
錠剤を、標準の錠剤加工手順およびデバイスを用いて製造し得る。
【0061】
錠剤を形成する一つの方法は、粒子状組成物の直接打錠であり、組成物の個別の粒子は、包含されたバルサルタンを有する放出部分および胃滞留型部分から成り、所望により一種以上の担体、添加剤等がまた含まれる。直接打錠の別法として、湿式顆粒化または乾式顆粒化プロセスを用いて、錠剤を製造することができる。湿ったまたはそれ以外の細工しやすい物質で出発して、打錠ユニットに取り付けられた適当な鋳型を用いる注入または打錠成形技法を用いて、錠剤を打錠するよりむしろ成形し得る。ペーストの形で、鋳型の中に、押し出しにより、または押出品を錠剤に“切断”されるように提供して、錠剤をまた製造し得る。しかしながら、打錠および顆粒化技法が好ましく、直接打錠が特に好ましい。
【0062】
本発明にしたがって経口投与のために調製され、直接打錠を用いて製造される錠剤は、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、賦形剤、安定化剤、表面活性剤、着色剤等のような他の不活性な添加剤を一般的に含有する。結合剤は、錠剤に粘着性の性質を付与するために用いられて、かくして打錠後に錠剤が無傷のままでいることを保証する。適当な結合物質としては、でん粉(トウモロコシでん粉およびアルファ化でん粉を含んで)、ゼラチン、糖類(ショ糖、グルコース、デキストロースおよび乳糖を含んで)、ポリエチレングリコール、ロウ、ならびに天然のおよび合成のガム、例えば、アルギン酸アカシアナトリウム、ポリビニルピロリドン、セルロースのポリマー(ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、微結晶性セルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等を含んで)ならびにビーガムが含まれるが、それらに限定されない。滑沢剤は、錠剤の製造を容易にするために使用され、粉末の流れを促進して、圧力が解除されるときに、粒子のキャッピング(即ち、粒子の破壊)を予防する。有用な滑沢剤は、ステアリン酸マグネシウム(0.25〜3重量%、好ましくは0.5〜1.0重量%からの濃度で)、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、硬化植物油(約1〜5重量%で、最も好ましくは約2重量%以下でステアリン酸およびパルミチン酸の水素化され、精製されたトリグリセリドから好ましく成っている)である。崩壊剤は、錠剤の崩壊を容易にするために使用されて、それにより溶解速度に比して侵食速度を増加して、一般的にでん粉、粘土、セルロース、アルギン、ガム、または架橋ポリマー(例えば、架橋ポリビニルピロリドン)である。賦形剤としては、例えば、二酸化ケイ素、二酸化チタン、アルミナ、タルク、カオリン、粉末セルロース、および微結晶性セルロースのような物質、ならびにマニトール、尿素、ショ糖、乳糖、乳糖一水和物、デキストロース、塩化ナトリウム、およびソルビトールのような可溶性物質が含まれる。それ自体で可溶化剤を含む、溶解増強剤、乳化剤、および錯化剤(例えば、シクロデキストリン)を、本製剤の中にまた有利に含み得る。安定化剤は、当分野で周知のように、例の目的で、酸化反応を含む薬物の分解反応を阻害するかまたは抑制するために使用される。
【0063】
上記の通り、本発明の活性薬剤/ポリマーマトリックスの粒子は充填されたカプセルの中でまた投与され得る。適当なカプセルは、硬質または軟質のいずれかであり得て、ゼラチン、でん粉、またはセルロースの物質から一般的に製造されて、ゼラチンカプセルが好ましい。二片の硬質ゼラチンカプセルは、ゼラチンバンド等でのように、好ましくは密封される。例えば、カプセル化された医薬品を調製するための材料および方法を記述しているRemington:The Science and Practice of Pharmacy、上述、を参照されたい。
【0064】
二層の錠剤は、主として膨潤可能である胃滞留型部分および主として侵食可能である放出部分から成っているが、そこでは膨潤可能な胃滞留型部分は、少なくとも一つの主として膨潤可能なポリマーから成っていて、侵食可能な部分は、主として侵食可能なポリマーから成っている。バルサルタンは、放出部分のみに存在する。
【0065】
本発明の二層の錠剤の中の好ましい膨潤可能な胃滞留型部分は、ヒドロゲル、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよび酸化ポリアルキレン、である。最適な高分子量のポリ(酸化エチレン)は、少なくとも4百万、好ましくは少なくとも5百万、および最も好ましくは7百万またはそれ以上の数平均分子量を有する。7百万台の数平均分子量を有する適当なポリ(酸化エチレン)の一例は、Polyox 303 (Union Carbide)である。膨潤可能なポリマーは、膨潤可能な層の少なくとも90重量%、好ましくは少なくとも95重量%、および最も好ましくは少なくとも99重量%を一般的占め、膨潤可能な層の残りは、V章で記述される通り、一種以上の不活性な添加剤から成る。例示的な態様では、膨潤可能な層は、ステアリン酸マグネシウム(0.25〜3重量%、好ましくは0.5〜1.0重量%からの濃度で)、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、または硬化植物油(約1〜5重量%で、最も好ましくは約2重量%以下でステアリン酸およびパルミチン酸の水素化され、精製されたトリグリセリドから好ましく成っている)のような滑沢剤を含む。
好ましい滑沢剤は、ステアリン酸マグネシウムおよびカルシウムである。
【0066】
二層の錠剤の中の侵食可能な放出部分は、一つまたはそれ以上の低分子量の酸化ポリアルキレンならびに架橋親水性ポリマーを含む、他の親水性ポリマーから好ましくは成っている。好ましい低分子量の酸化ポリアルキレンは、約200.000〜2,000,000の範囲の数平均分子量を有して、市販されている例示的なそのようなポリマーとしては、それぞれ2百万、900,000および200,000の数平均分子量を有する、Polyox WSRN-60K, Polyox WSR 1105およびPolyox WSR N-80が含まれる。二層の錠剤の侵食可能な層の他の好ましい成分は以下の通りである:ポリ(N−ビニルラクタム)、特にポリ(ビニルピロリドン)(PVP)(例えば、Povidone)のような更に別の親水性ポリマー、架橋ポリマー、例えば、架橋ポリ(ビニルピロリドン) 、例えば、Crospovidone、のような錠剤崩壊剤;微結晶性セルロース、乳糖、乳糖一水和物のような賦形剤、およびステアリン酸マグネシウムのような滑沢剤ならびにその他。
【0067】
侵食可能な放出部分は、例えば:約30重量%〜約55重量%、好ましくは約35重量%〜約45重量%の酸化ポリアルキレン;約0.25重量%〜約3重量%のステアリン酸マグネシウム;約2.5重量%〜約20重量%の錠剤崩壊剤;および約5重量%〜約35重量%の賦形剤を含み得る。本発明の例示的二層の錠剤では、バルサルタンは、放出部分のおよそ5〜15重量%を占める。
【0068】
本明細書中で記述される他の型の投与剤型の通り、二層の錠剤は、少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、および最も好ましくは少なくとも90%の活性薬剤の放出を約2〜8時間の範囲の期間に亘り一般的に提供する。加えて、この態様では、放出部分のインビボの崩壊時間は、胃滞留型部分のインビボの崩壊時間より少なくとも二時間更に短くなければならない。
【0069】
本発明のもう一つの態様は、胃腸管の中で活性薬剤の制御性の放出のための医薬的な胃滞留型薬物送達システムに関して、そのシステムは、a)従来の投与剤型より長くは胃の中に保持されないポリマーを含む二または三次元の幾何学的立体配置を有する単層のまたは多層のマトリックスで、当該ポリマーは、(1)i)胃液に直ぐには溶けない親水性ポリマー;ii)5.5以下のpHで実質的に不溶性である溶腸性のポリマー;iii)疎水性ポリマー;およびiv)(i)、(ii)または(iii)で定義される通り少なくとも二つのポリマーの任意の混合物:から選択される崩壊性のポリマー;(2)非崩壊性物;および(3)(1)で定義される少なくとも一つのポリマーの(2)で定義される少なくとも一つのポリマーとの混合物から選択され;b)当該マトリックスに貼付または付着される、従来の投与剤型より長くは胃の中に保持されない、連続的なまたは非連続的な膜で、当該膜は実質的な機械的強度を有する少なくとも一つのポリマーを含み;およびc)当該マトリックスが、当該膜に貼付または付着されるときに、当該送達システムの胃からの排出を約3〜約24時間、好ましくは約8〜約12時間の間防止する、当該マトリックスの層の中に埋め込まれるか、または当該マトリックス少なくとも二つの層の間に閉じ込められるか、または当該送達システムに付着される、薬物を含有する手段内に含有されるバルサルタン:を含む。
【0070】
送達デバイスの中に含有されるバルサルタンの機械的強度、侵食のおよび放出の特性を制御するために、薬学的に許容される、無毒性の賦形剤を、マトリックス、膜または遮蔽層に所望により加えてよい。そのような賦形剤の例は、でん粉、グルコース、乳糖、塩化ナトリウムまたはカリウム、炭酸塩、重炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩、ケイ酸塩のような無機塩、ならびにアルカリ金属、リン酸塩および酸化物である。
【0071】
膜は、システムを予め決められた時間の間望ましい立体配置の中に維持することによりシステムの胃での保持性を制御しなければならない。胃からのシステムの排出は、遮蔽層(またはもしもそれが存在しないならば、マトリックス層)が生崩壊、生侵食、溶解または崩壊を受ける後で起こらねばならず、かくして膜のその更に小さいフラグメントへの分離または膜および必然的にシステムの任意の他の方式での倒壊を可能にしている。
【0072】
本発明のデバイスの中で使用される膜は、実質的な機械的強度を有する。そのような膜は、例えば、セルロースエ−テルならびに硝酸セルロース、酢酸セルロース、酢酸酪酸セルロースまたは酢酸プロピオン酸セルロースのような他のセルロース誘導体;テレフタール酸ポリエチレンのような、ポリエステル、同一物のコポリマーおよび配合物を含むポリスチレン、p−ジオキサノンとのそれらのコポリマーを含む、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリラクチドグリコリド;ポリエチレン、ポリプロピレンを含むポリオレフィン;フッ化ポリビニリデンおよびポリテトラフルオルエチレンのような、同一物のヘキサフルオロプロピレンまたはエチレンとのコポリマーを含む、フルオロプラスチック;塩化ポリビニル、塩化ポリビニリデンコポリマー、エチレンビニルアルコールコポリマー、ポリビニルアルコール、メタクリル酸アンモニウムコポリマーならびに他のポリアクリル酸エステルおよびポリメタクリル酸エステル;ポリアクリロニトリル;ポリウレタン;ポリフタルアミド;ポリアミド;ポリイミド;ポリアミド−イミド;ポリスルホン;ポリエーテルスルホン;硫化ポリエチレン;ポリブタジエン;ポリメチルペンテン;酸化ポリフェニレン(修飾され得る);ポリエーテルイミド;ポリヒドロキシアルカン酸エステル;チロシン誘導のポリアクリル酸エステルおよびポリエステルカーボネートを含むポリカーボネート、ポリ酸無水物、ポリフェニレンエーテル、ポリアルケナマー、アセタールポリマー、ポリアリル、フェノール性ポリマー、ポリメラニンホルムアルデヒド、エポキシポリマー、ポリケトン、酢酸ポリビニルおよびポリビニルカルバゾールを含み得る。
一つの好ましい例では、膜は、それぞれ9:1の比率で、1−ポリ(酪酸)(1−PLA)およびエチルセルロースの混合物を含む。
【0073】
膜は、本発明の送達システムの中に組み入れられる、適当な不活性金属、例えば、チタン、または不活性金属合金を含有するか、またはそれにより取り替えられ得る。そのような金属または金属合金は、投与で迅速に消えることからデバイスを防止するのに役立つ。
【0074】
好ましい態様では、本発明の胃滞留型送達デバイスは、当該マトリックスの少なくとも一つの面をカバーしているおよび所望により当該膜の全てまたは部分をカバーしている遮蔽層をさらに含み得る。遮蔽層は、(a)胃液に直ぐには溶けない親水性ポリマー;(b)5.5以下のpHで実質的に不溶である溶腸性のポリマー;(c)疎水性ポリマー;および(d)(a)(b)または(c)のいずれかに定義される少なくとも二つのポリマーの任意の混合物からなる群より選択される、従来の投与剤型より長くは胃の中に保持されないポリマーを含む。
【0075】
本発明の送達システムは、医学的に有効な量のバルサルタンを含み、それは薬物を含有する手段の中に所望により含有され得る。バルサルタンは、粗製の粉末の形で、または適当な液体、半固体、ミクロ−またはナノ粒子、マイクロまたはナノ球体、錠剤、カプセルまたは適当なマトリックスの中で溶解されて、分散されてまたは埋め込まれて、あり得る。バルサルタンは、本発明の送達システムのマトリックスの少なくとも一つの層の中に埋め込まれ得る。あるいは、多層のマトリックス、好ましくは二層のマトリックスを有する態様では、バルサルタンは、任意の二つの当該層の間に、遊離の形でまたは薬物を含有する手段の中に含有されてのどうかで、閉じ込められ得る。例えば、半固体状態の中のバルサルタンは、任意の二層のマトリックスの間に含有され得る。もう一つの例は、その中でバルサルタンが錠剤、カプセルまたは任意の薬学的に適合性のマトリックスの中に含有されて、薬物を含有する錠剤、カプセルまたは薬学的に適合性のマトリックスは、任意の二層のマトリックスの間に閉じ込められることである。そのような多層の態様は、好ましくは、遮蔽層を有する。あるいは、好ましくは、当該薬物を含有する手段と共に含有される、バルサルタンは、本発明の送達システムに、つなぎ手段によりつながれるか、そうでなければ付着され得る。
【0076】
デバイスの外側の表面(複数を含む)に貼られ得る、抗付着性物質で本発明のデバイスをさらに被膜することが有利であり得る。そのような物質は、デバイスの外側の層(例えば、マトリックスまたは遮蔽層)の自己付着をそれらの水和で防止するであろう任意の不活性な、非膨潤性の物質であり得る。抗付着性物質は、例えば、セルロースまたはセルロース誘導体、ケイ酸マグネシウムまたはケイ酸アルミニウムのような、ケイ酸塩、または5.5以下のpHで実質的に不溶である溶腸性のポリマーであり得る。抗付着性層として用いられる、そのような物質についての一つの好ましい例は、微結晶性セルロースである。
【0077】
投与を容易にするために、本発明の送達デバイスを折畳まれた立体配置で投与し得る。デバイスは、カプセル、好ましくは、ゼラチンカプセル、の中に好ましくは折畳まれる。そのような態様では、デバイスを薬学的に許容される抗付着性層でさらに被膜して、その外側の層が、折畳まれた立体配置にあるときに、お互いに付着することを防止して、かくしてその投与の後で胃の内腔の中で湿潤過程の間にそれが開くのを可能にすることが好ましい。
【0078】
これに加えて、折畳まれたデバイスは、デバイスの拡大または浮力を意図しないで、むしろ内圧を与えて、カプセルの投与および胃の中でのその溶解の後に、折畳まれたデバイスが開くのを許容するために、ガス形成薬剤をさらに含み得る。ガス形成薬剤は、体温(34℃〜40℃)で沸騰する液体のガス形成薬剤、または固体のガス形成薬剤であり得る。固体の薬剤の例は、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウムまたは炭酸水素ナトリウムのような任意の炭酸塩であって、炭酸水素ナトリウムが好ましい。液体のガス形成薬剤は、ギ酸メチル、テトラメチルシラン、イソペンタン、過フルオロペンタンの異性体、ジエチルまたはジエチレンエーテルであり得る。ガス形成薬剤は、当該マトリックスと組合せて、または直接にまたは間接にそれに貼付してよい。
【0079】
本発明の送達デバイスは、所望により薬学的に許容される可塑剤をさらに任意に含んでよい。可塑剤は、デバイスの任意の部分の中に、例えば、マトリックスの中に、遮蔽層の中にまたは膜の中に含有され得る。可塑剤は、当業者に既知であるように、任意の適当な可塑性の薬剤であり得る。例えば、可塑剤は、フタル酸エステル、リン酸エステル、クエン酸エステル、脂肪酸エステルおよび酒石酸エステルのようなエステル、グリセリンまたはグリコール誘導体、またはソルビトールであり得る。遮蔽層の中に含有されるべき好ましい可塑剤は、グリセリンである。
【0080】
デバイスの部品のそれぞれは、他の部品に貼って、薬局および薬物デザインの当業者に既知の従来の方法により、例えば、それぞれの層を加熱することまたは溶融することにより、またはアルファ−シアノアクリル酸エステル、アクリル酸またはメタクリル酸接着剤、エポキシドまたは可塑化ポリビニル接着剤のような適合性の従来の接着物質を用いることにより、デバイスを製造し得る。しかしながら、層の‘糊付け’は、ポリマーを僅かに溶解する、エチルアルコール、アセトン、塩化メチレン、クロロホルムまたは四塩化炭素のような、有機溶媒で好ましくは実施される。
【0081】
本発明の送達システムの種々の部品に適する親水性ポリマーは、タンパク質、多糖、ポリアクリル酸エステル、ヒドロゲルまたはこれらのポリマーの任意の誘導体のような、必要であれば適当な処理の後で、胃液の中で直ぐには溶けない任意の親水性ポリマーであり得る。
【0082】
タンパク質の例は、ゼラチンおよびコラーゲンのように、結合組織から誘導されるタンパク質、または血清アルブミン、ミルクアルブミンまたは大豆アルブミンのようなアルブミンである。好ましい態様では、親水性ポリマーは、ゼラチンまたはゼラチン誘導体、好ましくは、酵素的に加水分解されたゼラチンである。具体的な例は、10,000〜12,000の分子量を有する酵素的に加水分解されたゼラチンである。
適当な多糖の例は、アルギン酸ナトリウムまたはカルボキシメチルセルロースである。
【0083】
他の親水性ポリマーは、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンまたはポリヒドロキシエチルメタクリル酸エステルのようなポリアクリル酸エステルであり得る。
【0084】
親水性ポリマーは、適当な架橋薬剤と架橋し得る。そのような架橋薬剤は、薬局および薬物デザインの当業者に周知である。これらは、例えば、アルデヒド(例えば、ホルムアルデヒドおよびグルタルアルデヒド)、アルコール、二、三または四価のイオン(例えば、アルミニウム、クロム、チタンまたはジルコニウムイオン)、塩化アシル(例えば、塩化セバコイル、塩化テトラフタロイル)または尿素、ビス−ジアゾベンジジン、塩化フェノール−2,4−ジスルホニル、1,5−ジフルオロ−2,4−ジニトロベンゼン、3,6−ビス−(マーキュロメチル)−ジオキサン尿素、アジピミジン酸ジメチル、N,N'−エチレン−ビス−(ヨードアセタミド)またはN−アセチルホモシステインチオラクトンのような任意な他の適当な架橋薬剤であり得る。他の適当なヒドロゲルおよびそれらの適当な架橋薬剤は、例えば、Handbook of Biodegradable Polymers [A. J. Domb, J. Kost & D. M. Weisman, Eds. (1997) Harwood Academic Publishers](出典明示により本明細書の一部とする)の中にリストされている。好ましい架橋薬剤は、グルタルアルデヒドである。
【0085】
溶腸性ポリマーは、5.5以下のpHで実質的に不溶であるポリマーである。一般的に溶腸性ポリマーと呼ばれる、そのようなポリマーは、錠剤の溶腸性コーティングに製薬工業で使用されている。例は、セラック、酢酸、フタル酸セルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはメチルメタクリル酸エステル−メタクリル酸コポリマーである。
【0086】
溶腸性ポリマーは改良された機械的性質(例えば、ヤング率および降伏強度)を有するので、マトリックスまたは遮蔽層の中に溶腸性ポリマーを含むのに数個の利点がある。遮蔽層に溶腸性ポリマーの添加は、インビトロで遮蔽層の迅速な破裂を防止した。溶腸性ポリマーを用いるさらなる利点は、デバイスの部品、例えば、マトリックス、遮蔽層または膜の、腸の中での完全な溶解および/または崩壊を胃の中でそれが既に起こってなければ、保証することである。遮蔽層の中に組み込まれる好ましい溶腸性ポリマーは、遊離のカルボン酸基に対して2:1のエステルの比率で、メチルメタクリル酸エステル−メタクリル酸コポリマーであり得る。
【0087】
本発明の具体的な態様にしたがって、マトリックスは、溶腸性ポリマーの中に埋め込まれるバルサルタンを含む。マトリックス、膜および遮蔽層を含む、一つのそのような具体的な態様では、遮蔽層は、適当に架橋されて、その溶解度を低減している親水性ポリマーの約50%、約30%の溶腸性ポリマーおよび約20%の可塑剤、好ましくはグリセリン、を含む。
送達デバイスのマトリックスまたは遮蔽層は、単独でまたは併用して崩壊性のまたは非崩壊性の疎水性ポリマーを含み得る。
【0088】
本発明の送達デバイス内で使用され得る非崩壊性の疎水性ポリマーの例は、エチルセルロースまたは約5〜10%の機能性第四級アンモニウム基を有する、アクリル酸−メタクリル酸エステルのコポリマーである。他の適当なポリマーは、ポリエチレン、ポリアミド、塩化ポリビニル、酢酸ポリビニルおよびそれらの混合物である。そのような非崩壊性のポリマーは、それらがマトリックスの中で使用されるときには、侵食/崩壊を受けないので、マトリックスのサイズまたはその機械的性質は、デバイスが胃から去ることを防止すべきでない。
崩壊性の疎水性ポリマーの例は、ポリ(アルファ−ヒドロキシ酸)、例えば、ポリ(酪酸)、ポリ(グリコール酸)、同一物のコポリマーおよび混合物である。
【0089】
バルサルタンが送達デバイスの中で、それに繋がれるかまたは付着されるよりむしろ、含有されている態様では、マトリックスの役目は、バルサルタンを含有することである。マトリックスを構成しているポリマー/ポリマー混合物が胃液に直ぐには溶けない場合には、遮蔽層は所望によるが、一方ではバルサルタンが液体溶液または懸濁液の中で、ゲル、軟膏またはクリームのような任意の種類の半固体の中でまたは、更にはマトリックスの層内に埋め込まれるかマトリックスの層の間に閉じ込められる、直ぐに溶けるポリマーフイルムまたはマトリックスの中に埋め込まれる場合には、遮蔽層は必須になる。
【0090】
遮蔽層の役割は、送達システムの物理的完全性を維持すること(言い換えれば、マトリックスおよび膜の付着を助けること)、ならびに送達システムからのバルサルタンの放出速度を制御するのを助けることである。遮蔽層は、間接的に、膜へのマトリックスの付着を助けることによることを除いて、それ自身でシステムの胃での保持性を制御すべきでない。
【0091】
明らかに、本発明の送達システムの全ての部品は、不活性な、薬学的に適合性な物質である。“不活性”は、活性な薬物と反応しないことかまたは任意の他の様式でその性質に影響しないこと、または処置される対象への投与で、生物学的なまたは他の作用、特に副作用、をそれ自身で生成しないことを意味する。“薬学的に適合性”は、処置される対象への投与で、生物学的なまたは他の作用特に副作用を生成しないことを意味する。
【0092】
(投与量および投与)
バルサルタンの服用量は、薬物の濃度および投与の頻度に関して特定される。対照的に本発明の投与剤型は、バルサルタンを連続的な、制御性の放出により送達するので、閉鎖されたシステムの中で使用される医薬品の服用量は、薬物の放出速度によりおよび放出の継続時間により特定される。システムの連続的な、制御性の送達の特徴は、(a)必要なレベルのみが患者に与えられるので、薬物の副作用の低減;(b)一日当りの投与の回数の低減を許容する。バルサルタンは、典型的に約40mg〜約640mg、好ましくは、約40mg〜約320mg、および更に好ましくは、約80mg〜約320mgの範囲の量で使用される。上で指示されるバルサルタンの量は、投与剤型の中に存在する遊離のバルサルタンの量を指す。
【0093】
本発明のなおもう一つの態様では、高血圧、うっ血性心不全、狭心症、心筋梗塞、動脈硬化症、糖尿病性腎症、糖尿病性心筋疾患、腎機能不全、末梢血管疾患、発作、左心室肥大、認知機能障害、頭痛、または慢性心不全を処置する方法を提供し、本発明の薬物送達システムの治療的に有効な量をそのような処置を必要とする対象に投与することを含む。
【0094】
本発明のもう一つの態様では、高血圧、うっ血性心不全、狭心症、心筋梗塞、動脈硬化症、糖尿病性腎症、糖尿病性心筋疾患、腎機能不全、末梢血管疾患、発作、左心室肥大、認知機能障害、頭痛、または慢性心不全の処置および/または予防用の医薬品の製造のために本発明の薬物送達システムの使用を提供する。
【0095】
以下の実施例は、本発明をそれを限定せずに例示する。
【実施例1】
【0096】
下記の方法は、二層の薬物送達システムを得るために使用されたもので、その組成を表1および2に示す。
【0097】
【表1】

【0098】
【表2】

【0099】
適当量のバルサルタンまたはその塩、適当なアジュバント、放出修飾剤および放出制御性の成分(重量は表1および2の中に示されている)を、本発明の製剤の全機能を達成するために、両方とも二層錠剤として組み合わされた、持続性の放出部分(1層)および胃滞留型層(2層)を製造するのに使用するために密接に混合する。
【0100】
I層については、活性薬剤を渦混合機の中で10分間、アビセル、メトセルおよび塩化ナトリウムと先ず混合する。最後に、ステアリン酸マグネシウムを混合機に加えて、更に数分間混合する。II層については、アビセル、メトセル(一以上の級)、黄色酸化鉄のような着色剤および塩化ナトリウムを渦混合機の中で10分間混合する。最後に、ステアリン酸マグネシウムを混合機に加えて、更に数分間混合する。次いで、これらの二つの粉末混合物を楕円形の鐘を用いる適当な二層の錠剤プレスを用いて打錠する。
【実施例2】
【0101】
下記の方法は、二層の薬物送達システムを得るために使用されたもので、その組成を表3および4に示す。
【0102】
【表3】

【0103】
【表4】

【0104】
適当量のバルサルタンまたはその塩、適当なアジュバント、放出修飾剤および放出制御性の成分(重量は表3および4の中に示されている)を、本発明の製剤の全機能を達成するために、両方とも二層錠剤として組み合わされた、持続性の放出部分(1層)および胃滞留型層(2層)を調製するのに使用のために密接に混合する。
【0105】
1層については、活性薬剤を渦混合機の中で10分間、アビセル、メトセルおよび塩化ナトリウムと先ず混合する。最後に、ステアリン酸マグネシウムを混合機に加えて、更に数分間混合する。2層については、アビセル、メトセル(一以上の級)、黄色酸化鉄のような着色剤および塩化ナトリウムを渦混合機の中で10間分混合する。最後に、ステアリン酸マグネシウムを混合機に加えて、更に数分間混合する。次いで、これらの二つの粉末混合物を楕円形の鐘を用いる適当な二層の錠剤プレスを用いて打錠する。
【実施例3】
【0106】
下記の方法は、二層の薬物送達システムを得るために使用されたもので、その組成を5および6に示す。
【0107】
【表5】

【0108】
【表6】

【0109】
およその重量のバルサルタンまたはその塩、適当なアジュバント、放出修飾剤および放出制御性の成分(重量は表5および6に示す)を、本発明の製剤の全機能を達成するために、両方とも二層錠剤として組み合わされた、持続性の放出部分(1層)および胃滞留型層(2層)を調製するのに使用のために密接に混合する。
【0110】
1層については、活性薬剤を渦混合機の中で10分間、アビセル、メトセルおよび塩化ナトリウムと先ず混合する。最後に、ステアリン酸マグネシウムを混合機に加えて、更に数分間混合する。2層については、アビセル、メトセル(一以上の級)、黄色酸化鉄のような着色剤および塩化ナトリウムを渦混合機の中で10分混合する。最後に、ステアリン酸マグネシウムを混合機に加えて、更に数分間混合する。次いで、これらの二つの粉末混合物を楕円形の鐘を用いる適当な二層の錠剤プレスを用いて打錠する。
【0111】
本発明のもう一つの薬物送達システムを下記表7に示す。これらの製剤は、上記の工程を用いて製造する。
【0112】
【表7】

【実施例4】
【0113】
下記の方法は、二層の薬物送達システムを得るために使用されたもので、その組成を8に示す。
【0114】
【表8】

【0115】
1層を以下のように打錠用に調製する:活性の、制御性の放出ポリマーおよび、滑沢剤を除く他の添加物を適当な収納箱に加えて、均一性が達成されるまで混合する。次いで、混合物をふるいを通して篩い分けして、再び混合する。滑沢剤を加えて、混合物を適当な回転機用に混合する。
2層を以下のように調製する:ポリマーおよび滑沢剤を除いている、他の添加物を適当な収納箱に加えて、均一性が達成されるまで混合する。次いで、混合物をふるいを通して篩い分けして、再び混合する。滑沢剤を加えて、混合物を適当な回転機用に混合する。
次いで、1層および2層を適当なプレスの上で二層の錠剤に打錠する。
【実施例5】
【0116】
本発明のもう一つの薬物送達システムを下記表9に示す。この製剤は、実施例4に記述される工程を用いて製造する。
【0117】
【表9】

【0118】
本発明は、その詳細な説明と一緒に記述されている一方で、前述の説明は、以下の請求項の範囲により定義される本発明の範囲を例示することであり、それを限定しないことが意図されることが理解される。他の態様、利点および修飾は、請求項の範囲内にある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
胃滞留型部分の膨潤がシステムの総容積の50%以下の増加をもたらす、
(a)バルサルタンを含む放出部分;
(b)膨潤可能な胃滞留型部分:
を含む、バルサルタンまたはその薬学的に許容される塩を患者の胃、十二指腸および上部小腸に送達するための胃滞留型薬物送達システム。
【請求項2】
放出部分がヒドロゲルまたは不活性な物質を含む、請求項1に記載の薬物送達システム。
【請求項3】
胃滞留型部分がそのサイズおよび形状を1cm以上に維持する物質から成る、請求項1に記載の薬物送達システム。
【請求項4】
バルサルタンが40〜320mgの量で存在する、請求項1に記載の薬物送達システム。
【請求項5】
バルサルタンがバルサルタンのカルシウム塩である、請求項1に記載の薬物送達システム。
【請求項6】
バルサルタンの第二のパルスを送達するための第二の部分をさらに含む、請求項1に記載の薬物送達システム。
【請求項7】
高血圧、うっ血性心不全、狭心症、心筋梗塞、動脈硬化症、糖尿病性腎症、糖尿病性心筋疾患、腎機能不全、末梢血管疾患、発作、左心室肥大、認知機能障害、頭痛、または慢性心不全を処置する方法であって、
胃滞留型部分の膨潤がシステムの総容積の50%以下の増加をもたらす、
(a)バルサルタンを含む放出部分;
(b)膨潤可能な胃滞留型部分:
を含む胃滞留型薬物送達システムの治療的に有効な量をそのような処置を必要とする対象に投与することを含む、方法。
【請求項8】
胃滞留型薬物送達システムを製造する方法であって、
(a)バルサルタンおよび制御性放出の成分を混合すること;
(b)得られた混合物を少なくとも一つの滑沢剤と混合して、放出部分を形成すること;
(c)添加物および少なくとも一つの滑沢剤を混合して、胃滞留型層を形成すること;ならびに
(d)部分を二層錠剤に打錠すること:
の工程を含む、方法。
【請求項9】
第二の部分を形成することならびに第二の部分を放出のおよび胃滞留型部分と共に打錠して、二層錠剤を形成することのさらに別の工程を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
胃滞留型部分の膨潤がシステムの総容積の50%以下の増加をもたらす、
(a)バルサルタンを含む放出部分;
(b)膨潤可能な胃滞留型部分:
を含む、バルサルタンまたはその薬学的に許容される塩を送達するための胃滞留型薬物送達システムの、高血圧、うっ血性心不全、狭心症、心筋梗塞、動脈硬化症、糖尿病性腎症、糖尿病性心筋疾患、腎機能不全、末梢血管疾患、発作、左心室肥大、認知機能障害、頭痛、または慢性心不全の処置および/または予防用の医薬品の製造のための、使用。
【請求項11】
胃腸管でバルサルタンを制御性放出するための折畳み可能で医薬的な胃滞留型薬物送達システムであって、そのシステムは、a)従来の投与剤型より長くは胃の中に保持されないポリマーを含む二または三次元の幾何学的立体配置を有する単層のまたは多層のマトリックスで、当該ポリマーは、(1)i)胃液に直ぐには溶けない親水性ポリマー;ii)5.5以下のpHで実質的に不溶性である溶腸性のポリマー;iii)疎水性ポリマー;およびiv)(i)、(ii)または(iii)で定義される少なくとも二つのポリマーの任意の混合物:から選択される崩壊性のポリマー;(2)非崩壊性のポリマー;および(3)(1)で定義される少なくとも一つのポリマーと(2)で定義される少なくとも一つのポリマーとの混合物からなる群より選択されて;b)相当な機械的強度を有する少なくとも一つのポリマーを含む、当該マトリックスに貼付または付着される、従来の投与剤型より長くは胃の中に保持されない、連続的なまたは非連続的な膜;およびc)微粒子の形にあるかまたは薬物を含有する手段内に所望により含有される、バルサルタン;当該マトリックスが、当該膜に貼付または付着されるときに、当該送達システムの胃からの排出を約3〜約24時間の期間の間防止する、当該マトリックスの層の中に埋め込まれるか、または当該マトリックスの少なくとも二つの層の間に閉じ込められるか、または当該送達システムに付着される、薬物を含有する手段内に含有されるバルサルタン:を含む、薬物送達システム。
【請求項12】
当該マトリックスの少なくとも一つの面をカバーして、所望により当該膜の全てまたは部分をカバーしている遮蔽層をさらに含み、当該遮蔽層は、従来の投与剤型よりさらに多く胃の中に保持しないポリマーを含み、当該ポリマーが(a)胃液に直ぐには溶けない親水性ポリマー;(b)5.5以下のpHで実質的に不溶である溶腸性のポリマー;(c)疎水性ポリマー;および(d)(a)(b)または(c)のいずれかに定義される少なくとも二つのポリマーの任意の混合物からなる群より選択される、請求項11に記載の送達システム。
【請求項13】
バルサルタンが粗製の粉末、適当な液体の中で溶解されて、分散されてまたは埋め込まれている粉末、半固体、マイクロまたはナノ粒子、マイクロまたはナノ球体、錠剤、カプセルまたは適当な特定の二または三次元のマトリックスからなる群より選択される形にある、請求項12に記載の薬物送達システム。
【請求項14】
適当な可塑剤をさらに含む、請求項11に記載の送達システム。

【図1】
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【公表番号】特表2010−502642(P2010−502642A)
【公表日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−526884(P2009−526884)
【出願日】平成19年8月29日(2007.8.29)
【国際出願番号】PCT/US2007/077071
【国際公開番号】WO2008/027945
【国際公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願人】(597011463)ノバルティス アクチエンゲゼルシャフト (942)
【Fターム(参考)】