説明

バルサルタンの固体経口剤形

【課題】製剤が難しく、従来の方法では各剤形の大きさが大きいバルサルタンにおいて、従来よりも剤形の大きさが小さい固体経口製剤を得る。
【解決手段】a)バルサルタンおよび必要に応じてHCTZから選択される活性成分、ならびにb)圧縮法による固体経口剤形の製造に適当な薬学的に許容される添加剤
を含む固体経口剤形に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルサルタン(valsartan)を含む固体経口剤形、特にバルサルタンおよびヒドロクロロチアジド(HCTZ)を含む固体経口剤形ならびにその同物の作製方法に関与する。
【背景技術】
【0002】
アンジオテンシン II レセプターアンタゴニスト-バルサルタンは、鬱血性心不全処置に効果的であること、年齢、性別もしくは人種に関係なく血圧を降下させることが知られ、また、よく耐溶化されている。HCTZとの配合物は、高血圧の処置にも知られている。
【0003】
錠剤もしくはカプセル等の薬学的な製剤の経口投与は、静脈注射もしくは筋肉内注射といった非経口投与よりも確実な利点がある:痛みを伴う注射製剤の処置が必要な疾患は、経口剤形で処置し得る病状よりもさらに深刻であると思われる。しかしながら、非経口製剤が殆どの場合医者もしくはパラメディカル担当者により投与しなければならないのに対し、経口製剤の主な利点は自己投与に適切なことである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、バルサルタンは製剤が難しく、今までは信用性のある確固とした方法で錠剤形態の経口製剤を製造することが出来なかった。
【0005】
低密度でありそのためかなり嵩いバルサルタンの場合、活性成分の有効量を充填するためには大きなカプセルを使用しなければならず、カプセル剤は好ましくない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
我々は、この度バルサルタンもしくはその薬学的に許容されるその塩を含み、必要に応じてHCTZを配合した、信頼性のある確固とした方法で製造され得る固体経口剤形を発見した。その固体経口剤形は、使用する活性成分の量に比較して小さい。当該経口剤形は、この活性成分の既知のどの剤形と比較しても、与えられた活性成分量に対してより小さい。
【0007】
本発明により、
a)バルサルタンもしくは薬学的に許容されるその塩の有効量を含む活性成分;
および
b)圧縮法による固体経口剤形の製造に適当な薬学的に許容される添加剤;
を含み、固体経口剤形の全重量に対し、好ましくは35重量%以上、好ましくは50重量%以上の量の活性成分を含む固体経口剤形を提供する。特に、活性成分の量は、45〜65重量%、例えば57〜62重量%の量で存在し得る。
【0008】
本発明の固体経口剤形により、これまでの活性成分の単位用量に可能であったものよりもさらに小さい経口剤形での活性成分の投与を提供する。さらに得られる経口剤形は、生産過程においても、アルミニウムブリスターパックにシールするといった通常の包装で例えば2年間の保存中においても安定である。
【0009】
“有効量”とは、処置すべき症状の進行を停止させ、減少させ、または完全にもしくは部分的に治癒させ、病状を軽減する活性成分の量を意味する。そういった量は、当業者が定型的実験を行うことにより、過度負担なしに、容易に決定し得る。
【発明を実施するための形態】
【0010】
活性成分がバルサルタンまたは薬学的に許容されるその塩のみからなる本発明の固体経口剤形においては、10〜250mg、さらに好ましくは40、80もしくは160mgといった40〜160mg、最も好ましくは40〜80mgの量の活性成分が含まれるのが好ましい。
【0011】
活性成分バルサルタンは、他の活性成分、例えばHCTZとの配合に特に適当である。
また本発明の更なる実施態様では、上記に加えて活性成分の一成分としてHCTZを含む固体経口剤形を提供する。
【0012】
約6〜60mgの用量範囲のヒドロクロロチアジドと配合する約10〜250mgの用量範囲のバルサルタンもしくは薬学的に許容されるその塩が高血圧のより効果的な処置として適切であることが判明した。これらの用量範囲で配合活性成分を用いると、バルサルタンだけを単一治療(monotherapy)で同じ用量範囲で使用するときよりも高血圧を正常レベルに下げる効果が高いことがわかった。さらには、ヒドロクロロチアジドをバルサルタンと組み合わせて投与すると、利尿作用は上記用量範囲における単一治療と比べてより効果的となる。特に適当であるのは、バルサルタンもしくは薬学的に許容されるその塩が約50〜100mgならびにヒドロクロロチアジドが約10〜30mgの用量範囲である。さらに好ましいのは、約80mgのバルサルタンと12.5mgもしくは25mgのヒドロクロロチアジドならびに160mgのバルサルタンと12.5mgもしくは25mgのヒドロクロロチアジドの単位用量である。ヒドロクロロチアジドに対するバルサルタンもしくは薬学的に許容されるその塩の重量比は、約1:6〜約42:1、さらに好ましくは2:1〜13:1、最も好ましくは2:1〜10:1である。
【0013】
本発明は特に固体経口剤形に関与し、それには活性成分a)として:
バルサルタンもしくは薬学的に許容されるその塩が約10〜250mg、特に約50〜100mgの単位用量;および
ヒドロクロロチアジドが約6〜60mg、特に約10〜30mgの単位用量;
を含む。
【0014】
本発明の特に好ましい実施態様は、固体経口剤形であり、それには活性成分a)として:
バルサルタンもしくは薬学的に許容されるその塩が約80mgもしくは160mgの単位用量;および
ヒドロクロロチアジドが約12.5mgである単位用量;
を含む。
【0015】
バルサルタンの製造法は、アメリカ合衆国特許明細書番号5 399 578に記載されており、引用によりこの明細書に加える。バルサルタンの薬学的に許容される塩は、それ自体が既知の手法により調製し得る。例えば、酸付加塩は酸もしくは適当なイオン交換剤を用いる処置により得られる。そういった塩は、適当な塩基性薬剤を用いる処理により通常方法で遊離酸に転化し得る。
バルサルタンは好ましくは遊離型であり、それは塩型のうちの1つではない。
ヒドロクロロチアジドは、高血圧の処置に有用である既知の治療剤である。
【0016】
本発明の固体経口剤形には、当該剤形によく知られた添加剤を含む。錠剤製造に通常使用する錠剤化補助剤(tabletting aids)が使用でき、極めて多くの文献に記載されている。特にFiedler’s“Lexicon der Hilfstoffe”,4th Edition,ECV Aulendorf 1996があり、この文献を引用してこの明細書に加える。これらには、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、流動促進剤(glidant)、安定化剤、充填剤もしくは希釈剤、界面活性剤等が含まれ、これらに限定されない。
【0017】
崩壊剤として、特にCMC-Ca、CMC-Na、架橋PVP(Kollidon XLのCrospovidone, Polyplasdone)、アルギン酸、アルギン酸ナトリウムおよびグアールガム、最も好ましいのは架橋PVP、クロスポビドン(Crospovidone)、架橋CMC、および Ac−Di−Sol を挙げることが出来る。
【0018】
結合剤として、特にジャガイモのデンプン、小麦のデンプン、トウモロコシのデンプン、例えば商標登録Avicel,Filtrak,HewetenもしくはPharmacelとして知られる製品を含む微晶質セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースならびに5〜16重量%のヒドロキシプロピル成分を含みMw80 000〜1 150 000、さらに好ましくは140 000〜850 000であるヒドロキシプロピルセルロース等のヒドロキシプロピルメチルセルロース等を特に挙げることが出来る。
【0019】
流動促進剤として、Aerosil等のコロイド状シリカ、三ケイ酸マグネシウム、顆粒セルロース、デンプン、タルクおよび3塩基性リン酸カルシウムを特に挙げることが出来る。
【0020】
充填剤もしくは希釈剤として、粉砂糖、圧縮糖(compressible sugar)、デキストレート、デキストリン、ブドウ糖、ラクトース、マンニトール、Avicel等の特に約0.45g/cm3の密度であるマイクロセルロース、顆粒セルロース、ソルビトール、スクロースおよびタルクを挙げることが出来る。
滑沢剤として、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム、もしくはステアリン酸カルシウム、PEG4000-8000、およびタルクを特に挙げることが出来る。
【0021】
これらの添加剤のうち1つもしくはそれ以上は、当業者が定型的実験を行い過度の負担なく特に好ましい固体経口剤形の性質を考慮して、選択され使用され得る。
【0022】
流動促進剤、結合剤、崩壊剤、充填剤もしくは希釈剤ならびに滑沢剤等の使用添加剤の各タイプの量は、当分野において通常の範囲内で変化し得る。例えば、流動促進剤量は0.1〜10重量%、特に0.1〜0.5重量%等の0.1〜5重量%の範囲内で変化し得る;結合剤の量は20〜30重量%等の約10〜45重量%の範囲内で変化し得る;崩壊剤の量は15重量%等の2〜20重量%の範囲内で変化し得る;充填剤もしくは希釈剤の量は15〜40重量%の範囲内で変化し得る;一方、滑沢剤の量は0.1〜5.0重量%の範囲内で変化し得る。
【0023】
活性成分が高含有量となるように、添加剤を比較的少量しか含まないことが本固体経口剤形の特徴である。これにより、物理的に小さな単位剤形の製造が可能となる。得られる単位薬剤内の全添加剤量は、固体経口剤形の全重量に対して約65重量%もしくはそれ未満、さらに特に50重量%もしくはそれ未満となり得る。好ましい添加成分は、約35〜55重量%、さらに特に38〜43重量%等の45〜55重量%である。
【0024】
各添加剤の絶対量および他の添加剤に関する量は、同様に固体経口剤形の好ましい性質に依存し、当業者が定型的実験を行うことにより、過度の負担なく選択され得る。例えば、固体経口剤形により、活性成分徐放の量的コントロールを伴いもしくは伴わず活性薬剤の即効および/もしくは遅効を選択し得る。
【0025】
それゆえ、10分間以内に約90%が、さらに特に5分間で放出するような即効が好ましいとき、架橋ポリビニルピロリドン、例えばPolyplasdone XLもしくはKollidon CLの商標登録として既知のその生成物であり、特に1 000 000を越える分子量であり、さらに特に400ミクロンもしくは74ミクロン未満の粒子径が分布している崩壊剤、または反応性添加剤(発泡性混合物)が用いられる。反応性添加剤により水の存在下で錠剤は速崩壊する。これは水の中では炭酸水素ナトリウムもしくは炭酸ナトリウム等の化学結合した二酸化炭素を含む塩基に作用する固体の酸、典型的なのはクエン酸を含むいわゆる発泡性錠剤である。
【0026】
一方、遅効が好ましいならば、当分野では通常であるペッレットコーティング技術、ワックスマトリックスシステム、ポリマーマトリックス錠剤もしくはポリマーコーティングを用い得る。
【0027】
活性成分の放出の量的コントロールは、当分野では既知である通常の技術によりなされ得る。そういった剤形は、oral osmotic systems(OROS)、被覆錠剤、マトリックス錠剤、圧縮被覆錠剤、多重層錠剤等として知られる。
【0028】
活性成分が全体的にバルサルタンもしくは薬学的に許容されるその塩からなる固体経口剤形において、好ましい添加剤は、微晶質セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)もしくはCMC-Ca,ステアリン酸Mg,CaもしくはAl、疎水性コロイドシリカならびにタルクである。添加量は、どれだけ活性成分を使用するかによる。ステアリン酸Mg等のステアリン酸は、好ましくは1.5〜3.0重量%等の1.0〜5.0重量%の量である。一方、シリカは好ましくは0.5〜10重量%の量である。
【0029】
活性成分がバルサルタンもしくは薬学的に許容されるその塩およびHCTZの両方の配合からなる固体経口剤形において、前の段落に記載した添加剤および架橋ポリビニルピロリドンのうち何れかから選択する添加剤を用いるのが好ましい。そのステアリン酸は、好ましくは3重量%等の1〜5重量%の量である。微晶質セルロース等のセルロース物質は、好ましくは21%等の10〜30%量存在する。シリカは好ましくは1重量%等の0.5〜10重量%存在する。架橋ポリビニルピロリドンは、好ましくは約13重量%等の10〜20重量%存在する。特に好ましい固体経口剤形には、添加剤として微晶質セルロースおよび架橋ポリビニルピロリドン(polyvinylpyrrolidone)(PVP)を含む。
【0030】
本発明の固体経口剤形は、ドラジェー形となり、その場合、固体経口剤形は当分野では通常である典型的なコーティング剤、例えば糖、セラックもしくは他に全体的なフィルムコーティングを提供する。当分野において用いる多数の既知コーティング法が知られている。例えば Aeromatic, Glatt, WursterまたはHuettlin製の装置を用いる流動床または Accela Cota 法による穴あきパンでのスプレーコーティングまたは浸漬コーティング法(submerged sword coating method)がある。通常菓子製造に使用する添加剤は、これらの方法に用いられる。
【0031】
本発明の固体経口剤形は、収縮期もしくは拡張期、または両方において血圧を下げるのに有用である。本発明が有用となる病状には、高血圧(悪性、本態性、腎-血管性、糖尿病性、単独収縮期もしくは他の2次型)、鬱血性心不全、アンギナ(安定性もしくは不安定性の何れか)、心筋梗塞、動脈硬化症(artherosclerosis)、糖尿性腎障害、糖尿性心筋疾患、腎機能不全、末梢性血管疾患、左心室肥大、認識機能不全(例えばアルツハイマー)およびストロークが含まれるが、これらに制限されない。
【0032】
厳密な活性成分用量および特に投与剤形は、処置病状、好ましい処置継続時間および活性成分放出率等の因子数に依存する。例えば、必要な活性成分量およびその放出率は、既知のインビトロもしくはインビボ技術に基づき決定することができ、特に血漿中の活性成分濃度がどのくらいの時間、治療効果のために求められる濃度に維持されるかを決定することができる。
【0033】
本発明は、他の面において上記の固体経口剤形を製造する方法も提供する。そういった固体経口剤形は、単位剤形を製造する適当量の上記成分a)およびb)を処理することにより製造し得る。
【0034】
好ましい実施態様では、
i) 活性成分および薬学的に許容される添加剤を粉砕混合すること、
ii) 粉砕混合した添加剤および活性成分を圧縮して混合圧縮体(coprimate)とすること
iii) 混合圧縮体を粒状に変換すること、ならびに
iv) 顆粒を圧縮して固体経口剤形とすること
のステップを含む上記固体経口剤形を製造する方法を提供する。
【0035】
その方法は水がなくとも行え、すなわち、それは乾式圧縮法である。その方法は通常の温度および湿度で行うことができ、その方法は乾燥した空気中で行う必要がない。
【0036】
最初の磨り潰しステップ i) は、通常の粉砕法もしくはマイクロナイゼーション法(micronisation methods)により行える。
活性成分および添加剤は、別個にもしくは同時に粒径が約0.1μ〜約200μ、好ましくは1.0μ〜100μの粉末にすることができる。少なくとも、活性成分および添加剤の両結晶の90%が、この範囲に入る。このサイズの粒子は、エアージェットミル、ハンマーアンドスクリーンミル、ファインインパクトミル、ボールミルもしくはビブレーターミル等の通常の粉砕法により得られる。
【0037】
マイクロナイゼーションは、好ましくはBRANSON Sonifier型等の超音波破砕機を用いる既知の方法が、もしくはHOMOREX型等の高速攪拌機による懸濁液の攪拌が効果的である。
粉砕した粒子は、必要に応じてこの段階で篩にかけられ、既知の方法で混ぜ合わされる。
【0038】
混合圧縮体をつくる圧縮には、乾燥し混合した成分の圧密化(compaction)が必要である。圧密化は、スラッギング技術もしくは好ましくはローラーコンパクションを用いることにより行い得る。ローラーコンパクション装置は、通常のものであり、本質的に相対方向に回転する2つのローラーを利用する。油圧ラムが一つのローラーを他のローラーに圧しつけることにより、スクリューコンベヤーシステムを通じてローラーコンパクターに供給された粉砕粒子に対する圧密力を発揮する。
【0039】
25〜65kNの圧密力を好ましくは用いる。圧密化力のこの範囲において、特に各製剤に対して、顆粒を望ましい速度、例えば最小圧密力を超えて圧縮した固体経口剤形より凡そ6倍の速さで崩壊するような速度で分離した一次粒子に崩壊させるためには最小圧密力を使用しなければならないことが、驚くべきことに発見された。そのような高崩壊速度は錠剤には珍しく、カプセル調剤の崩壊速度に近い。この最小圧密力は製剤中の活性成分量に依存し、それゆえ添加剤の量および性質にも依存する。
【0040】
80mg バルサルタンおよび12.5mg HCTZからなる活性成分ならびに適当量の適当な添加剤を含む固形経口剤形は、好ましくは混合圧縮体の製造に用いる圧密力が少なくとも30kNである方法でつくられる。この活性成分に対する適当量の適当な添加剤は、31.5mg 微晶質セルロース、1.5mg 無水コロイドシリカ、4.5mg ステアリン酸マグネシウムおよび20mg 架橋PVPである。
【0041】
160mg バルサルタンおよび12.5mg HCTZならびに適当量の適当な添加剤の単位容量を含む固形経口剤形は、好ましくは混合圧縮体の製造に用いる圧密力が少なくとも25kNである方法でつくられる。活性成分に対する適当量の適当な添加剤は、75.5mg 微晶質セルロース、3.0mg 無水コロイドシリカ、9.0mg ステアリン酸マグネシウムおよび40mg 架橋PVPである。
この情報により、当業者は、定型的実験を行うことにより、過度の負担なく他の製剤に対する最小圧密力を決定し得る。
【0042】
ローラー速度は、1〜15rpmにセットし、好ましくは1.3〜7.5rpmにセットする。ローラーが通過した後、圧密化した塊(混合圧縮体)は断片状の薄いリボンのようになる。
【0043】
混合圧縮体は顆粒状にするため篩にかけられ、粉砕される。最もシンプルな形態の篩過は、ローラーから生ずる混合圧縮体を機械的圧力で篩に通すことを含む。さらに好ましくはMGI 624 Frewitt(Key International Inc.)等の振動ミルを用いて混合圧縮体を篩にかける。
【0044】
そういった形をした顆粒は、9〜340ミクロンのようなかなり広い粒子径分布となる。ローラー圧密化法のこの段階では、通常過小粒子径および過大粒子径の粒子を選別し、再利用もしくは再循環のため目的顆粒からそれらを除去する。それゆえ、除去された過大粒子径および過小粒子径の粒子は、顆粒が好ましい粒子径分布となるよう、典型的にはさらに1回もしくはそれ以上、圧密化する。そういった過程は時間がかかり、それゆえ固体経口剤形の製造コストは増加する。さらに、その高圧密力のもと、さらにローラーコンパクターに通すことにより、活性成分には有害な影響を与え、また、固体経口剤形を製造するための圧縮により適さない顆粒にしてしまう。
【0045】
しかしながら、篩過もしくは粉砕後ローラーコンパクターから生じ、過大な粒子径および過小な粒子径の両方の粒子を含む顆粒は、固体経口剤形の性質に影響を与えず実際に固体経口剤形に圧縮され得ることが見出された。
【0046】
錠剤核(tablet core)とするための顆粒の圧縮は、EK-0 Korsch偏心打錠機もしくはロータリー打錠機等の通常の打錠機で、好ましくは2kNを超える圧縮で行い得る。錠剤核は様々な形となり、例えば丸形、卵形、長円、円筒形もしくは他の適当な形となり、そして治療剤の含量により大きさも変化し得る。本発明の錠剤の特徴は、その中に含まれる有効成分量を考慮したときに小サイズであることである。
【0047】
本発明の好ましい実施態様において上記圧縮法により得られる錠剤は、わずかに卵形である。錠剤の端は、傾斜しているかもしくは丸形となり得る。
本発明の特に好ましい実施態様において固体経口剤形は、ディメンションの比が2.5-5.0:0.9-2.0:1.0であり、好ましくは個々の錠剤の表面および裏面が相互に独立して平面もしくは縦軸に沿って凸状にカーブし、側面は平面であり、端面は如何なる形でもよく、両端は場合により傾斜もしくは丸形である、長円形をした錠剤の形に圧縮する。
【0048】
本発明の特に好ましい実施態様における固体経口剤形は、顆粒を圧縮し、縦がおおよそ10.0〜11.0mm、幅がおおよそ5.0〜6.0mmおよび高さがおおよそ3.0〜4.0mmである長円形をした錠剤とする。
本発明の他に特に好ましい実施態様における固体経口剤形は、顆粒を圧縮し、
縦がおおよそ15.0〜16.0mm、幅がおおよそ6.0〜7.0mmおよび高さがおおよそ3.5〜5.0mmである長円形をした錠剤とする。
【0049】
そのうえ本発明の、他に好ましい実施態様では、実質的にはディスク形であり上面および下面が僅かに凸表面である錠剤を提供する。好ましくは錠剤は、直径約8〜8.5mmおよび高さ(depth)約3〜3.5mmであり、もしくは直径約16mmおよび高さ(depth)約6mmである。その錠剤の体積は、約0.1cm3〜約0.45cm3、さらに特に約0.125cm3もしくは0.25cm3等の0.2〜0.3cm3となり得る。
【0050】
それらは、さらに透明、無色もしくは有色であり、この製品が独自の形状となり即時に認識できるようにマークを付け得る。色素の使用は組成物の識別ばかりでなく外観を良くするのに使用し得る。薬学的使用に適当な色素には、カロチノイド、酸化鉄もしくはクロロフィルを典型的に含む。
さらに以下では、本発明を説明する一連の例を記載する。
【実施例】
【0051】
実施例1
【表1】

【0052】
方法
ステアリン酸マグネシウムの一定部分を除く成分をコンティナーミキサーで混合する。混合した材料を篩にかけ、さらに一定時間コンティナーミキサーで前混合する。混合した材料をローラーコンパクター(Bepex Pharmapaktor L 200/50P,Hosokawa Micron Group)を用い、圧密力25-65kNおよびローラースピード1.3-7.5rpmで圧密化する。圧密化した材料を再び篩にかけ、残りのステアリン酸マグネシウムを加え、最後にコンティナーミキサーで混合する。均一混合物 150mgを卵形のパンチ(10×5.2mm)を用いて錠剤となるよう圧縮する。得られた錠剤の縦は10.0-10.2mm、幅は5.2-5.4mmそして高さは3.3-3.9mmである。
【0053】
実施例1a
実施例1により調製した固体経口剤形はフィルムコーティング剤で被覆する。
【表2】

【0054】
方法
PEGおよびセルロースを脱イオン水に溶解する。残りの成分を得られた溶液に懸濁する。スプレーコーター装置(Driacoater DRC-500,Powrex Ltd)に実施例1の固体経口剤形を供給する。コーティング剤を、その装置で6-12rpmで回転させている固体経口剤形にスプレーする。スプレー圧は1.9-2.2Kg/cm2、そしてスプレーの速さは5.9-7.9g/分である。
その後被覆した固体経口剤形をコーター装置内において40℃で、被覆した固体経口剤形の含水量が2.5重量%未満となるまで乾燥させる。
得られた錠剤は、縦10.1-10.3mm、幅5.3-5.5mmおよび高さ3.4-4.0mmである。
【0055】
実施例2
【表3】

錠剤 300.0mgを実施例1に記載の方法の通りにつくる。得られた錠剤は、縦15.0-15.2mm、幅6.0-6.2mmおよび高さ3.9-4.7mmである。
【0056】
実施例2a
実施例2の固体経口剤形を実施例1aの方法論により組成(下記調剤参照)でコーティングする。
【表4】

得られた錠剤は縦15.1-15.3mm、幅6.1-6.3mmおよび高さ4.0-4.8mmである。
【0057】
実施例3
【表5】

ヒドロキシプロピルセルロース
【0058】
方法
成分(横線より上の)をコンティナーミキサーで混合する。混合した材料を篩にかけ、さらに一定時間コンティナーミキサーで前混合する。混合した材料をローラーコンパクター(Bepex Pharmapaktor L 200/50P,Hosokawa Micron Group)を用い、圧密力25-65kNおよびローラースピード1.3-7.5rpmで圧密化する。圧密化した材料を再び篩にかけ、横線の下に示した成分を添加し、最後にコンティナーミキサーで混合する。均一混合物 200mgを卵形のパンチ(10×5.2mm)を用いて錠剤となるよう圧縮する。得られた錠剤の直径は8.5mmであり、厚さ3.9mmである。
【0059】
実施例3A
【表6】

*=ヒドロキシプロピルメチルセルロース
【0060】
方法
フィルムコーティングは、実施例1Aの方法論により実施例3の固体経口剤形に用いる。
被覆した錠剤は直径8.6mmであり、厚さ4.0mmである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)バルサルタンもしくは薬学的に許容されるその塩の有効量を含む活性成分および
b)圧縮法による固体経口剤形の製造に適当な薬学的に許容される添加剤
を含み、活性成分が固体経口剤形の全重量に対し35(重量)%以上の量で存在する固体経口剤形。
【請求項2】
活性成分が50(重量)%以上の量で存在する請求項1の固体経口剤形。
【請求項3】
活性成分が57〜62(重量)%の範囲の量で存在する請求項1もしくは2の固体経口剤形。
【請求項4】
活性成分がバルサルタンまたは薬学的に許容されるその塩のみからなり用量が約10〜250mgである請求項1〜3の何れかの固体経口剤形。
【請求項5】
用量範囲が40〜160mgである請求項1〜4の何れかの固体経口剤形。
【請求項6】
用量が40mg、80mgもしくは160mgである請求項1〜5の何れかの固体経口剤形。
【請求項7】
活性成分がバルサルタンもしくは薬学的に許容されるその塩の有効量ならびにヒドロクロロチアジド(HCTZ)の有効量からなる請求項1〜3の何れかの固体経口剤形。
【請求項8】
治療剤として、
バルサルタンもしくは薬学的に許容されるその塩の有効量;
HCTZの有効量;ならびに
圧縮法による固体経口剤形の製造に適当な薬学的に許容される添加剤
を含む固体経口剤形。
【請求項9】
バルサルタンもしくは薬学的に許容されるその塩が約10〜250mgである単位用量およびHCTZが約6〜60mgである単位用量を含む請求項7もしくは8の固体経口剤形。
【請求項10】
バルサルタンもしくは薬学的に許容されるその塩が約50〜100mgである単位用量およびHCTZが約10〜30mgである単位容量を含む請求項7〜9の何れかの固体経口剤形。
【請求項11】
バルサルタンもしくは薬学的に許容されるその塩が約80〜160mgである単位用量およびHCTZが12.5mgもしくは25mgである単位容量を含む請求項7〜9の何れかの固体経口剤形。
【請求項12】
薬学的に許容される添加剤として微晶質セルロースを含む請求項1〜11の何れかの固体経口剤形。
【請求項13】
薬学的に許容される添加剤として架橋ポリビニルピロリドン(PVP)を含む請求項1〜12の何れかの固体経口剤形。
【請求項14】
微晶質セルロースが15〜25(重量)%の量で存在する請求項12の固体経口剤形。
【請求項15】
架橋PVPが10〜30(重量)%の量で存在する請求項13の固体経口剤形。
【請求項16】
錠剤の形にした請求項1〜15の何れかの固体経口剤形。
【請求項17】
ドラジェー形にした請求項1〜16の何れかの固体経口剤形。
【請求項18】
i)活性成分および薬学的に許容される添加剤を破砕混合すること、
ii)粉砕混合した添加剤および活性成分を圧縮して混合圧縮体とすること
iii)混合圧縮体を粒状に変換すること、ならびに
iv)顆粒を圧縮して固体経口剤形とすること
のステップを含む請求項1〜17に定義した固体経口剤形を造る方法。
【請求項19】
圧縮ステップii)をローラーコンパクションを用いることにより、スラッギング技術により行う請求項18の方法。
【請求項20】
混合圧縮体を篩過もしくは粉砕することによりステップiii)を行う請求項18もしくは19の方法。
【請求項21】
顆粒を前以って大きさ分けすることなく圧縮する請求項18〜20の何れかの方法。
【請求項22】
顆粒が25〜65kNの圧密力で造られる請求項18〜21の何れかの方法。
【請求項23】
請求項19のローラーコンパクションもしくはスラッギングにより得られる混合圧縮体。
【請求項24】
請求項18の方法により得られる顆粒。
【請求項25】
請求項18〜22の何れかに定義した方法により製造した固体経口剤形。
【請求項26】
上記のように実施例の何れかを引用することにより実質的に定義される固体経口剤形。
【請求項27】
高血圧(悪性、本態性、腎-血管性、糖尿病性、単独収縮期もしくは他の2次型)、鬱血性心不全、アンギナ(安定性もしくは不安定性の何れか)、心筋梗塞、動脈硬化症(artherosclerosis)、糖尿性腎障害、糖尿性心筋疾患、腎機能不全、末梢性血管疾患、左心室肥大、アルツハイマー等の認識機能不全、ストローク、頭痛および慢性心不全の処置法における請求項1〜17の何れかに定義した固体経口剤形の使用。

【公開番号】特開2012−51948(P2012−51948A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−270429(P2011−270429)
【出願日】平成23年12月9日(2011.12.9)
【分割の表示】特願2007−170267(P2007−170267)の分割
【原出願日】平成9年6月18日(1997.6.18)
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】